説明

MRI装置

【課題】照明によって被検者の安心感や快適感を向上させることができるMRI装置を提供する。
【解決手段】MRI装置は、静磁場を発生する静磁場磁石2、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル4及びRFパルスを送信又は受信するRFコイル5を収容すると共に、被検者を挿入するための開口部を有するガントリと、被検者を開口部へ挿入するために被検者を載置する天板を有する寝台と、RFコイルのカバー部に向かって照明を行なう照明手段16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴現象を利用して被検者の解剖学的情報や、生化学的情報を得るMRI(magnetic resonance imaging)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置として、磁気共鳴現象を利用して、被検者中の所望の検査部位における核スピンの密度分布、緩和時間分布を、計測対象から発せられる信号を計測して、断層像として画像表示するものが知られている。このMRI装置のガントリに形成されている被検者が挿入されるガントリの開口部(空間)は、被検者が入り得る程度の大きさしか有していないため、これから検査を受ける被検者に不安感を与えてしまう恐れがある。
【0003】
そこで、MRI装置には、ガントリを照明するための照明機器が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2006−110043号公報に記載されているような照明機器では、開口部を照明して、開口部内やガントリを明るくてらすことは出来るものの、被検者が開口部内に挿入される前の不安感や開口部内部に入ったときの居住性の快適感は十分に得られていない。
【0006】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、被検者の安心感や快適感を向上させることができるMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るMRI装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、静磁場を発生する静磁場磁石、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル及びRFパルスを送信又は受信するRFコイルを収容すると共に、被検者を挿入するための開口部を有するガントリと、前記被検者を前記開口部へ挿入するために前記被検者を載置する天板を有する寝台と、前記RFコイルのカバー部に向かって照明を行なう照明手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るMRI装置は、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、静磁場を発生する静磁場磁石、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル及びRFパルスを送信又は受信するRFコイルを収容すると共に、被検者を挿入するための開口部を有するガントリと、前記被検者を前記開口部へ挿入するために前記被検者を載置する天板を有する寝台と、前記寝台側とは前記開口部を挟んで反対側の反寝台側の前記開口部内又は前記反寝台側の前記開口部外から前記開口部内を照明可能な位置に設けられ、前記開口部内に向かって照明を行なう第1の照明手段と、前記寝台側の開口部内に設けられ、前記第1の照明手段からの照明によって前記開口部内の段差によってできる影に向かって照明を行なう第2の照明手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るMRI装置によると、被検者の安心感や快適感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例のMRI装置を示す構成図。
【図2】MRI装置を用いた足部検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る足部検査内の照明パターン群の概要を示す図。
【図3】MRI装置を用いた頭部検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る頭部検査内の照明パターン群の概要を示す図。
【図4】本実施例のMRI装置を構成する開口部を、寝台側から見た斜視図。
【図5】本実施例のMRI装置を構成する開口部を、反寝台側から見た斜視図。
【図6】本実施例のMRI装置を構成する開口部を示す側面図。
【図7】は、MRI装置を用いた一検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る一検査内の照明パターン群の一例を示す図。
【図8】本実施例のMRI装置を構成する照明手段の一例を、開口部の寝台側から見た斜視図。
【図9】本実施例のMRI装置を構成する照明手段の一例を、開口部の寝台側から見た斜視図。
【図10】本実施例のMRI装置を構成する照明手段の一例を、開口部の反寝台側から見た斜視図。
【図11】従来のMRI装置の照明の配置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るMRI装置の実施例を、図1乃至図11を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施例のMRI装置の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例のMRI装置は、ガントリ1とそのガントリ1に被検者が挿入されるための挿入空間を有する開口部を有し、静磁場磁石2、冷却系制御部3、傾斜磁場コイル4、RF(radio frequency)コイル5、傾斜磁場コイル駆動部6、送信部7、受信部8、冷却部9、演算装置10、照明用電源12、照明制御部13及び表示部26を備えている。
【0014】
静磁場磁石2は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石2には、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。これらは、例えば冷却部9のような冷却系によって冷却され、真空層及び円筒状の筐体によって外部と隔離されている。
【0015】
冷却系制御部3は、静磁場磁石2や傾斜磁場コイル4、RFコイル5等を冷却するための冷却部9を制御するものである。
【0016】
傾斜磁場コイル4は、静磁場磁石2よりも短軸な磁場コイルであり、静磁場磁石2の内側に設けられる。傾斜磁場コイル4は、傾斜磁場コイル駆動部6から供給されるパルス電流に基づいて、互いに直交する三方向に線形傾斜磁場分布を持つ傾斜磁場を形成する。この傾斜磁場コイル4が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0017】
RFコイル5は、撮像領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを発生するコイルである。また、例えば腹部等を撮影する場合には、受信コイルとしても使用されてもよい。例えば、RFコイル5は全身用コイル(WBコイル)である。
【0018】
傾斜磁場コイル駆動部6は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、傾斜磁場コイル4に供給する。また、傾斜磁場コイル駆動部6は、制御部14の制御に従って、傾斜磁場コイル4に供給するパルス電流の向きを切替えることにより、傾斜磁場の極性を制御する。
【0019】
送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部及び高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスをRFコイル5に送信する。この送信に従ってRFコイル5から発生した高周波によって、被検者中の検査部位の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0020】
受信部8は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ及びA/D(analog to digital)変換器(それぞれ図示せず)を有し、各レシーバから受信した各磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、個別に所定の信号処理を施す。すなわち、受信部8は、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0021】
照明用電源12は、被検者を挿入するための開口部内に備えられた後述する各照明手段16乃至19の光源15へ電力を出力する。
【0022】
照明制御部13は、制御部14からの指示に従って、照明用電源12への出力電力を制御し、各照明手段の照明内容を調整する。ここで、照明内容とは、照明手段の発光色、光量及び光り方のうち少なくとも1つを指す。なお、照明用電源12はガントリの外に設けることによって、電源のON/OFF等による磁場の乱れや画像への影響を抑えるようにしてもよい。
【0023】
また、演算装置10は、記憶部20、制御部14、照明パターン設定部21、照明パターン群設定部22、データ収集部23、再構成部24及び入力部25を有している。
【0024】
記憶部20は、受信部8を介して得られた再構成前の磁気共鳴信号データ再構成後の磁気共鳴画像データ等を被検者毎に記憶したり、照明手段毎に照明内容を記憶したり、照明パターン設定部21によって設定される照明パターンを記憶したり、照明パターン群設定部22によって設定される一検査内の照明パターン群を記憶したりする。
【0025】
照明パターン設定部21は、照明手段毎に照明内容を組み合わせて、複数の照明手段単位で照明パターンを設定する。
【0026】
照明パターン群設定部22は、照明パターン設定部21によって設定される複数の照明手段単位の照明パターンを、一検査内の各過程にそれぞれ組み合わせて、一検査内の照明パターン群を設定する。
【0027】
図2及び図3は、MRI装置を用いた一検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る一検査内の照明パターン群の概要を示す図である。
【0028】
図2は、MRI装置を用いた足部検査を、被検者の入室から被検者を天板上に載置するまでの過程(第1過程)、第1過程終了後から天板の上昇が終了するまでの過程(第2過程)、天板の撮像位置への挿入の過程(第3過程)及び被検者内の検査部位の撮像中の過程(第4過程)に分けた場合の各過程に、照明パターン設定部21によって設定される照明パターンを組み合わせて成る足部検査内の照明パターン群の概要を示している。足部検査内の照明パターン群は、足部検査内の過程毎の照明パターンを組み合わせて構成される。また、足部検査内の過程毎の照明パターンは、照明手段毎の照明内容(発光色、光量及び光り方)を組み合わせて構成される。
【0029】
図3は、MRI装置を用いた頭部検査を、第1過程、第2過程、第3過程及び第4過程に分けた場合の各過程に、照明パターン設定部21によって設定される照明パターンを組み合わせて成る頭部検査内の照明パターン群の概要を示している。
【0030】
なお、図2及び図3において、本実施例ではMRI装置を用いた検査を4つの過程に分けるが、4つの過程に限定されるものではない。また、図2及び図3は、MRI装置を用いた検査として、開口部への被検者の挿入を足部側から行なう手法(feet first)を用いる場合を例示するが、開口部への被検者の挿入を頭部側から行なう手法(Head first)を用いる場合であっても応用できる。
【0031】
また、図1に示すデータ収集部23は、受信部8によってサンプリングされたデジタル信号を収集する。
【0032】
再構成部24は、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成を実行し、被検者の検査部位内の所望の核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0033】
入力部25は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0034】
制御部14は、図示していないプロセッサとしてのCPU(central processing unit)、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、MRI装置を静的又は動的に制御する。なお、演算装置10の構成要素21乃至24の全部又は一部は、制御部14の機能としてソフトウェア的に構成されるものであってもよいし、回路によって構成されるものであってもよい。
【0035】
表示部26は、制御部14を介して演算装置10から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力装置である。
【0036】
また、MRI装置は、被検者をガントリの開口部へ挿入するために被検者を載置する天板を有する寝台(図示せず)を備える。なお、以下、開口部の挿入方向において、ガントリ1から見て寝台が配置される側を寝台側、寝台が配置されない側を反寝台側と言う。
【0037】
次に、図4乃至図10を参照して、支持部31に備えられた照明手段の配置を詳細に説明する。図4は、本実施例のMRI装置を構成する開口部を、寝台側から見た斜視図である。図5は、本実施例のMRI装置を構成する開口部を、反寝台側から見た斜視図である。
【0038】
まず、MRI装置は、図4又は図5にあるように、ガントリ1に有する開口部内の寝台側から反寝台側に向かって、照明手段としての空間内寝台側照明16と空間内側面照明17と空間内反寝台側照明18を備えている。さらに、MRI装置は、図4又は図5にあるように、反寝台側の開口部外から開口部内を照明可能な位置に、照明手段としての反寝台側照明19を備えている。
【0039】
各照明手段16乃至19は、天板が挿入される支持部31に設けられたレール25部分よりも開口部壁よりに備えられている。より好適には、各照明手段16乃至19は、寝台側から反寝台側に向かって支持部31上におよそ一直線上に備えられる。各照明手段16乃至19がほぼ一直線状に備えられることにより、照明による凹凸や被検者の圧迫感を抑えるという効果がある。以下、各照明手段16乃至19が、寝台側から反寝台側に向かって支持部31上におよそ一直線上に備えられる場合を例にとって説明する。
【0040】
また、より好適には、開口部内に備えられる各照明手段16乃至18は、開口部内の下半分の領域に備えられる。各照明手段16乃至18が開口部の下側半分に備えられることにより、被検者の挿入空間を広く確保でき、また、RFコイル5の電磁波の影響が抑えられるという効果がある。以下、各照明手段16乃至18が、開口部内の下半分の領域に備えられる場合を例にとって説明する。
【0041】
ここで、被検者を挿入するための開口部の直径や天板の大きさ・高さ等の条件によって、開口部内に備えられる各照明手段16乃至18(各照明手段16乃至19がおよそ同一線上に備えられる場合は照明手段19も含む)の天板との高さ関係が変わってくる。例えば、開口部の直径が約50乃至60cmである場合、概して、天板より下方に各照明手段16乃至18が備えられる配置となる。一方、開口部の直径が約60cmより大きい場合、概して、天板より上方に各照明手段16乃至18が備えられる配置となる。以下、天板より上方に各照明手段16乃至18が備えられる配置となる場合を例にとって説明する。
【0042】
空間内寝台側照明16は、開口部内の寝台側であって支持部31上に備えられるものである。空間内寝台側照明16は、反寝台側照明19等による光で影が出来るのを防ぐ機能、すなわち、反寝台側照明19等の補助照明としての機能を有する。空間内寝台側照明16は、三色(RGB)発光のLED(light emitting diode)ランプであることが好適である。なお、空間内寝台側照明16は、白色発光のLEDランプ等であってもよい。
【0043】
また、空間内寝台側照明16は、複数のLEDランプを所定形状に平面的に配置したLEDパネルによって形成されていてもよい。この場合、複数のLEDランプが一度に光るだけではなく、照明制御部13による制御によってパターンを持たせて複数のLEDランプを別々に光らせたり、発光色及び光量を変えたりすることも可能である。
【0044】
開口部内に段差がない場合に関しては、空間内寝台側照明16は開口部入り口34付近を照明し、開口部内に段差がある場合は、その凹凸部分を照明する。さらに、図4又は図5にあるように、開口部を広く取るために開口部内にRFコイル5がせり出している場合には、そのテーパ部33を照明する。例えば、図6は本実施例による開口部の照明の状態を開口部の側面から見た図であり、図6の反寝台側照明19からの照明の幅を示す照明方向dによる光は、RFコイル5のカバーのテーパ部33に生じる影を、空間内寝台側照明16による照明の幅を示す照明方向aが打ち消すことによって、従来のような影(図11に示すような従来技術のMRI装置に備える照明手段100による影S)が生まれることを防ぐことができる。
【0045】
空間内側面照明17は、開口部内であって支持部31上に設けられるものである。空間内側面照明17は、図6にあるように離れた位置、例えばガントリ1の下部等に天板の長手方向に延在される光源15の光を、開口部内の側面35に沿って設けられた光伝導部材に伝えることで、開口部内の側面35を照明の幅を示す照明方向bのように照明する構成をしている。これにより、複数の光源をライン上に並べた構成に対して、やわらかい光の照明を確立することができる。
【0046】
又は、空間内側面照明17を、開口部内の側面35に沿って複数の三色発光のLEDランプを並べて配置することによってライン状のLEDパネルとし、開口部壁を間接照明の要領で照らすように構成する。この場合、複数のLEDランプが一度に光るだけではなく、照明制御部13による制御によってパターンを持たせて複数のLEDランプを別々に光らせたり、発光色及び光量を変えたりすることも可能である。
【0047】
空間内反寝台側照明18は、図5にあるように、開口部内の反寝台側であって支持部31上に設けられるものである。また、空間内反寝台側照明18は、反寝台側から開口部内を照らすものであり、図6の空間内反寝台側照明18からの照明の幅を示す照明方向cで分かるように開口部内を照明するように配置されている。空間内反寝台側照明18は、三色発光のLEDランプであることが好適である。なお、空間内反寝台側照明18は、白色発光のLEDランプ等であってもよい。
【0048】
また、空間内反寝台側照明18は、LEDランプを所定形状に平面的に配置したLEDパネルによって形成されていてもよい。この場合、照明制御部13による制御によって発光色、光量や光り方を調整することも可能である。
【0049】
反寝台側照明19は、図4又は図5にあるように、反寝台側の開口部外であって支持部31上に設けられるものである。また、反寝台側照明19は、最も反寝台側から開口部内を照らすものであり、図6の反寝台側照明19からの照明の幅を示す照明方向dで分かるように、開口部内を照明するように配置されている。しかし、反寝台側照明19は支持部31ではなく、MRI装置が設置される検査室内であって反寝台側から開口部内を照明可能な位置に備えてもよい。また、反寝台側照明19は、後述のサバンナ効果を大きくするために、蛍光ランプ又は白熱ランプであることが好適である。しかし、反寝台側照明19は、LEDランプ等であってもよい。
【0050】
また、反寝台側照明19は、照明制御部13による制御によって光量を調整することも可能である。
【0051】
ここで、各照明手段16乃至19が三色発光のLEDランプによって構成されていない場合、各照明手段16乃至19にカバーをかけることによって多種多様に照明の色を変えてもよい。特に、この場合は、検査中、被検者に安心感と開口部の広さを錯覚させるための場合、暖かみのある暖色系のカバーをかけて開口部内を照らすことが好ましい。また、特に被検者に開口部の奥行を錯覚させようとする場合、空間内側面照明17にかけるカバーはグラデーションを用いて、反寝台側つまり被検者が挿入される側から見て奥に行くほど明るい色で開口部内を照らすようにしてもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。実施例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0053】
本実施例では、各照明手段16乃至19全てを備えた例を用いて説明をしたが、空間内寝台側照明16と反寝台側照明19のみの組み合わせで実施してもよいし、空間内側面照明17のみで実施してもよいし、空間内反寝台側照明18と反寝台側照明19のみの組み合わせで実施しても、被検者への安心感や快適感を向上させるという効果を得ることができる。
【0054】
次に、MRI装置を用いた一検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る一検査内の照明パターン群の具体例を説明する。
【0055】
図7は、MRI装置を用いた一検査内の各過程に照明パターンを組み合わせて成る一検査内の照明パターン群の一例を示す図である。
【0056】
図7は、図2を用いて説明したように、MRI装置を用いた検査を、第1過程、第2過程、第3過程及び第4過程に分けた場合の各過程に、照明パターン設定部21によって設定される照明パターンを組み合わせて成る一検査内の照明パターン群を例示している。なお、図7は、足部検査の場合を例示し、また、照明内容として光量のみを例示している。
[第1過程]
【0057】
第1過程では、開口部全体を明るくすることが好適である。例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、第1過程では、照明パターンの一例としての照明パターンL1によって照明手段16乃至19の全てを発光(点灯)させる。
【0058】
第1過程において開口部全体を明るくすることで、被検者が入室した際に、MRI装置に対する被検者の圧迫感や恐怖感を軽減することができる。
【0059】
なお、第1過程において、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合の照明パターンは、照明パターンL1に限定されるものではない。
[第2過程]
【0060】
第2過程では、開口部全体を明るくするか、反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくすることが好適である。例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、開口部全体を明るくするために、照明パターンL1によって照明手段16乃至19の全てを発光させる。
【0061】
また、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくするために、照明パターンの一例としての照明パターンL2によって空間内寝台側照明16を大きな光量にて発光させる一方、空間内側面照明17、空間内反寝台側照明18及び反寝台側照明19を小さな光量にて発光させる。
【0062】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくするために、照明パターンの一例としての照明パターンL3によって空間内寝台側照明16及び空間内側面照明17のみを発光させる。
【0063】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくするために、照明パターンの一例としての照明パターンL4によって空間内寝台側照明16、空間内側面照明17及び空間内反寝台側照明18のみを発光させる。
【0064】
第2過程において開口部全体を明るくすることで、被検者が載置される天板の上昇時に、MRI装置に対する被検者の圧迫感や恐怖感を軽減することができる。また、第2過程において反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくすることで、被検者が載置される天板の上昇時に、図11にあるような影Sも生まれない。また、被検者の注意を反寝台側の開口部内ではなく、寝台側の開口部内に向けることができ、開口部の奥行から注意をそらすことが出来る。さらに、第2過程において照明パターンL3及びL4を採用することで、反寝台側照明19をつけないことにより、図11にあるような影Sがうまれることがなくなる。
【0065】
なお、第2過程において、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合の照明パターンは、照明パターンL1乃至L4に限定されるものではない。
[第3過程]
【0066】
第3過程では、寝台側の開口部内と比較して反寝台側の開口部内を明るくすることが好適である。例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL5によって空間内寝台側照明16、空間内側面照明17、空間内反寝台側照明18及び反寝台側照明19の順に光量が大きくなるように発光させる。
【0067】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL6によって空間内反寝台側照明18を大きな光量にて発光させ、次いで空間内側面照明17及び反寝台側照明19を中程度の光量にて発光させ、空間内寝台側照明16を小さな光量にて発光させる。なお、その場合、空間内寝台側照明16は消灯させてもよい。
【0068】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL7によって空間内寝台側照明16及び空間内反寝台側照明18を大きな光量にて発光させ、空間内側面照明17及び反寝台側照明19を小さな光量にて発光させる。
【0069】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL8によって空間内反寝台側照明18を大きな光量にて発光させ、空間内寝台側照明16、空間内側面照明17及び反寝台側照明19を小さな光量にて発光させる。
【0070】
第3過程において寝台側の開口部内と比較して反寝台側の開口部内を明るくすることで、被検者の挿入の際、寝台側の開口部より反寝台側の開口部内がより明るくなることによりサバンナ効果が生まれるので、被検者は開口部内の奥行を実際の奥行よりも短く錯覚することになる。
【0071】
また、空間内側面照明17を、LEDパネルをライン上に複数敷き詰める構成とし、天板の開口部への挿入の程度に従って、開口部の反寝台側から寝台側に向かってLEDパネルを順々に光るように設定する。これにより、開口部内の反寝台側から寝台側に向かって広がりを持った空間であるように被検者を錯覚させることができる。さらに、色を視覚的に目立つ色にするようにして、被検者がその部分に集中して視線を送るようにしてもよい。
【0072】
なお、第3過程において、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合の照明パターンは、照明パターンL5乃至L8に限定されるものではない。
[第4過程]
【0073】
第4過程では、反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくしつつ、第3過程と比較して開口部内の反寝台側と寝台側との明暗を際立たせることが好適である。例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL9によって空間内側面照明17、空間内反寝台側照明18及び反寝台側照明19のみを被検者が眩しくない程度の光量にて発光させる。
【0074】
又は、例えば、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合には、照明パターンの一例としての照明パターンL10によって空間内側面照明17及び反寝台側照明19のみを被検者が眩しくない程度の光量にて発光させる。
【0075】
第4過程において反寝台側の開口部内と比較して寝台側の開口部内を明るくしつつ、第3過程と比較して反寝台側の開口部内と寝台側の開口部内との明暗を際立たせることで、開口部の反寝台側だけを被検者が眩しくない程度に明るくしつつ、サバンナ効果によって被検者に開口部の奥行を実際よりも短く錯覚させることができる。
【0076】
なお、第4過程において、MRI装置が照明手段16乃至19の全てを備える場合の照明パターンは、照明パターンL9及びL10に限定されるものではない。
【0077】
ここで、一検査内の照明パターン群を採用して検査を行なうと、検査中、照明パターンが切替えられることになる。例えば、図7に示すような足部検査内の照明パターン群によると、照明パターンが3回切替えられることになる。この切替えは、検査中における入力部25の操作で、照明パターンを手動的に行なうように構成してもよい。例えば、足部検査内の過程が第1過程から第2過程に移行した場合、操作者は入力部25の切替えスイッチを1回押すことによって、照明パターンを、第1過程に適した照明パターン(例えば、照明パターンL1)から第2過程に適した照明パターン(例えば、照明パターンL2)に手動的に切替えるように構成する。
【0078】
又は、例えば、足部検査内の過程が第1過程から第2過程に移行した場合、天板の位置の変化(天板の上下動や前後動)をMRI装置が認識することによって、照明パターンを、第1過程に適した照明パターンから第2過程に適した照明パターンに自動的に切替えるように構成する。
【0079】
なお、予め設定される照明パターンによる照明中であっても被検者によって照明を消して欲しいという要望があればすぐに対応できるように全ての照明手段16乃至19を消灯させる機能を入力部25にもたせてもよい。
【0080】
ここで、図7では、照明内容としての光量を用いて各照明手段16乃至19の照明パターンを説明するが、同様に、照明内容としての発光色及び光り方を用いて各照明手段16乃至19の照明パターンを構成してもよい。
【0081】
例えば、全体的に暖色系の発光色によって構成される照明パターンによって構成される照明パターン群と、全体的に寒色系の発光色によって構成される照明パターンによって構成される照明パターン群とを予め記憶部20にそれぞれ記憶させておき、検査前に、操作者や被検者の希望によって暖色系又は寒色系を手動的に選択するように構成する。また、全体的に暖色系の発光色によって構成される照明パターンによって構成される照明パターン群と、全体的に寒色系の発光色によって構成される照明パターンによって構成される照明パターン群とを予め記憶部20にそれぞれ記憶させておき、検査前に、被検者の患者情報、特に、国籍情報を基に、暖色系又は寒色系を自動的に選択するように構成する。
【0082】
ここで、MRI装置には、照明手段16乃至19の他、以下に説明する照明手段40,50及び60のうち少なくとも1つを備えてもよい。
【0083】
図8は、本実施例のMRI装置の支持部31に備えられる照明手段を、開口部の寝台側から見た斜視図である。
【0084】
図8に示すように、天板が挿入される支持部31のレール25上に、照明手段としてのレール上照明40が備えられている。このレール上照明40は、光源15とは別の第2の光源を設けて光伝導部材をレール上にそって設置し、その上に透明もしくは半透明のカバーをかけて平らにし、第2の光源からの光を伝導させるようにしてもよい。また、レール25上にLEDを複数並べて配置し、同じようにその上に透明もしくは半透明のカバーをかけて平らに設置するようにしてもよい。なお、LEDを複数並べて配置した場合は、光り方にパターンを持たせて一度に全てが光るだけではなく、一部だけ光る又は順々に光るように制御するようにしてもよい。なお、レール25上にかけるカバーは、色合いにグラデーションを持たせて設置してもよい。
【0085】
レール上照明40によって、開口部の天井部分が光ることにより、被検者は開口部の周囲を実際より広く錯覚することになる。また、天板が挿入されるにつれて、レール上照明40が天板によって遮られることにより徐々に開口部が暗くなる。さらに、天板が全て挿入されるとレール上照明40を消すようにし、電力の出力を抑えるようにする。
【0086】
図9は、本実施例のMRI装置の開口部内のRFコイル5のカバーのテーパ部に設けられる照明手段を、開口部の寝台側から見た斜視図である。
【0087】
図9に示すように、開口部内に設置されたRFコイルのカバーのテーパ部33に、照明手段としてのテーパ部照明50が備えられる。この、テーパ部照明50は、光源15とは別の第3の光源を設けて光伝導部材をテーパ部にそって設置し、第3の光源からの光を伝導させるようにしてもよいし、テーパ部にLEDを複数並べて配置してもよい。なお、LEDを複数並べて配置した場合は、光り方にパターンを持たせて一度に全てが光るだけではなく、一部だけ光る又は順々に光るように制御するようにしてもよい。
【0088】
テーパ部照明50を光らせ、空間内反寝台照明18と反寝台側照明19を光らせる。テーパ部照明50は、グラデーションを持たせて、支持部31に近くなるほど明るく、遠くなるほど暗くなるようにしてもよいし。また、LEDランプを複数備えている場合には、パターンをもたせて個々のLEDランプが光るようにしてもよい。
【0089】
さらに、反寝台側照明19にテーパ部照明50を組み合わせて設けることによって、RFコイル5のカバーによる段差の影Sを防ぐことができるので、影Sによる開口部の閉塞感を軽減することができる。
【0090】
図10は、本実施例のMRI装置の開口部内の壁の一部に設けられる残時間表示の照明手段を、開口部の反寝台側から見た斜視図である。
【0091】
図10に示すように、開口部内、例えば開口部を形成する壁に、照明を用いた残時間を表示する照明手段としての残時間表示照明60が備えられる。残時間表示照明60は、細いバー状であり、そのバーの光の増減によって残時間を表示する、又は、何色かの色の変化によって表示するようにしてもよい。
【0092】
残時間表示照明60を光らせて、被検者に検査の残時間を知らせる。残時間表示照明60は、光のバーの長さ、つまりバー内の光の増減によって残時間を表示し、それを被検者が確認することで残時間が確認できる。又は、光が何色かあり、それが変化することによって被検者が残時間を確認するようにしてもよい。
【0093】
なお、照明手段40,50及び60の発光は、照明手段16乃至19による照明パターンと連動するように構成してもよい。
【0094】
本実施例のMRI装置は、各照明手段16乃至19,40,50,60のうち少なくとも1つにカバーをかけて光の色を変え、そのカバーが自在に取り外し付け替えることが出来るように構成してもよい。その場合、検査毎の被検者の好む照明の色に簡単に変えることができる。
【0095】
さらに、本実施例のMRI装置は、検査中は被検者がまぶしく感じないように各照明手段16乃至19,40,50,60を消す又は光量を抑えるように構成してもよい。その場合、被検者が落ち着いた状態で検査を受けることができる。
【0096】
さらに、本実施例のMRI装置は、簡単な操作で照明の光量や光り方のパターンを変えることができ、被検者の要望にあわせてすぐに照明の状態を変えられるので、被検者に違和感や不安感を与えることを防ぐことが出来る。
【0097】
なお、本実施例では、本発明に係る複数の具体例を挙げたが、本発明は、本実施例以外にも各照明手段16乃至19,40,50,60の光量や光り方の組み合わせによって様々な実施例を持つことが出来る。
【符号の説明】
【0098】
1 ガントリ
13 照明制御部
15 光源
16 空間内寝台側照明
17 空間内側面照明
18 空間内反寝台側照明
19 反寝台側照明
20 記憶部
31 支持部
33 テーパ部
40 レール上照明
50 テーパ部照明
60 残時間表示照明

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する静磁場磁石、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル及びRFパルスを送信又は受信するRFコイルを収容すると共に、被検者を挿入するための開口部を有するガントリと、
前記被検者を前記開口部へ挿入するために前記被検者を載置する天板を有する寝台と、
前記RFコイルのカバー部に向かって照明を行なう照明手段と、
を備えることを特徴とするMRI装置。
【請求項2】
静磁場を発生する静磁場磁石、傾斜磁場を発生させる傾斜磁場コイル及びRFパルスを送信又は受信するRFコイルを収容すると共に、被検者を挿入するための開口部を有するガントリと、
前記被検者を前記開口部へ挿入するために前記被検者を載置する天板を有する寝台と、
前記寝台側とは前記開口部を挟んで反対側の反寝台側の前記開口部内又は前記反寝台側の前記開口部外から前記開口部内を照明可能な位置に設けられ、前記開口部内に向かって照明を行なう第1の照明手段と、
前記寝台側の開口部内に設けられ、前記第1の照明手段からの照明によって前記開口部内の段差によってできる影に向かって照明を行なう第2の照明手段と、
を備えることを特徴とするMRI装置。
【請求項3】
前記複数の照明手段単位で設定される照明パターンを、検査内の各過程に組み合わせることによって前記検査毎の照明パターン群を設定する照明パターン群設定部と、前記照明パターン群を記憶する記憶部とをさらに備え、前記検査前に前記照明パターン群を選択し、前記検査中に前記過程に相当する前記照明パターンによって照明を行なう構成とすることを特徴とする請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記照明パターンは、前記照明手段毎に設定される発光色、光量及び光り方のうち少なくとも一方の組み合わせによって構成されることを特徴とする請求項3に記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−59646(P2013−59646A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−257354(P2012−257354)
【出願日】平成24年11月26日(2012.11.26)
【分割の表示】特願2007−281507(P2007−281507)の分割
【原出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】