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MS/MS型質量分析装置及び同装置用プログラム
説明

MS/MS型質量分析装置及び同装置用プログラム

【課題】MRM測定等において予めプロダクトイオンを選択するに際し、不適切なプロダクトイオンの選択を防止し、より高い確率で最適なプロダクトイオンを選択することのできるMS/MS型質量分析装置を提供する。
【解決手段】或る成分のプリカーサイオンについて、条件を変化させた又は変化させないプロダクトイオンスキャンイベントを複数個を準備し、それら複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行した結果得られた全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出し、それをプロダクトイオンとして選択する。また、全マススペクトルの各m/zの強度の積算値/平均値や重み付け積算値/平均値でもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンを衝突誘起解離(CID=Collision-Induced Dissociation)により開裂させ、これにより生成されるプロダクトイオン(フラグメントイオン)の質量分析を行うMS/MS型質量分析装置、及びその装置に用いられるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
分子量が大きな物質の同定やその構造の解析を行うために、質量分析の1つの手法として、MS/MS分析(タンデム分析とも呼ばれる)という手法が知られている。典型的なMS/MS型質量分析装置として三連四重極(TQ)型質量分析装置がある。図2は特許文献1などに開示されている、一般的な三連四重極型質量分析装置の概略構成図である。
【0003】
この質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室1の内部に、分析対象の試料をイオン化するイオン源2と、それぞれ4本のロッド電極から成る3段の四重極3、5、6と、イオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器7と、を備える。第1段四重極3には、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加され、これにより発生する電場の作用により、イオン源2で生成された各種イオンの中で特定の質量電荷比を有する目的イオンのみがプリカーサイオンとして選別される。
【0004】
第2段四重極5は密閉性が高いコリジョンセル4内に収納されている。このコリジョンセル4内には例えばアルゴン(Ar)などのCIDガスが導入される。第1段四重極3から第2段四重極5に送られたプリカーサイオンは、コリジョンセル4内でCIDガスと衝突し、衝突誘起解離による開裂を生じてプロダクトイオンが生成される。この開裂の態様は様々であるため、通常、一種のプリカーサイオンから質量電荷比の異なる複数種のプロダクトイオンが生成される。これら各種のプロダクトイオンがコリジョンセル4を出て、第3段四重極6に導入される。通常、第2段四重極5には、高周波電圧のみが印加されるか、又は高周波電圧に直流バイアス電圧を加算した電圧が印加され、この第2段四重極5はイオンを収束させつつ後段に輸送するイオンガイドとして機能する。
【0005】
第3段四重極6には第1段四重極3と同様に、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加される。これにより発生する電場の作用により、第3段四重極6では特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンのみが選別されて検出器7に到達する。第3段四重極6に印加する直流電圧及び高周波電圧を適宜変化させることで、第3段四重極6を通過し得るイオンの質量電荷比を走査(プロダクトイオンスキャン)することができる。この場合、検出器7で得られる検出信号に基づいて、図示しないデータ処理部は、目的イオンの開裂により生じたプロダクトイオンのマススペクトル(MS/MSスペクトル)を作成することができる。そのほか、特定のプロダクトイオンを生成する全てのプリカーサイオンを検索するプリカーサイオンスキャンや、特定の部分構造が脱離する全てのプリカーサイオンを検索するニュートラルロススキャンなども実行可能である。
【0006】
また液体クロマトグラフ(LC)やガスクロマトグラフ(GC)の検出器として上記MS/MS型質量分析装置を用いたLC/MS/MS、GC/MS/MSなどの装置では、試料に含まれる多成分の一斉分析(同定及び定量)を行うためにMRM(Multiple Reaction Monitoring)と呼ばれる手法がよく用いられる。MRM測定では、各成分について、第1段四重極3で選別される1種又は複数種のプリカーサイオンの質量電荷比と、各プリカーサイオンについて第3段四重極6で選別・測定される1種又は複数種のプロダクトイオンの質量電荷比を予め定めておく。試料に含まれる複数の成分は前段のLCやGCで時間的に分離されるから、各成分の溶出時間(保持時間)に従って前記所定のプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組をそれぞれ切り替えることにより、各成分由来のイオンの信号強度を高い精度で且つ高い感度で求め、試料の定量測定を高精度・高感度で行うことができる。
【0007】
MRM測定で高精度・高感度の分析を行うためには、各成分についてプリカーサイオンとプロダクトイオンを正しく選択することが重要である。このうちプリカーサイオンは各成分について定まったものを選択するだけでよいが、プロダクトイオンはプリカーサイオンからの生成(開裂)の態様により変化するため、それに影響を与える各種パラメータ(例えば、各四重極に印加する直流・交流電圧等)の最適値を予め定めておく必要がある。従来、この最適値の選択は次のような方法で自動的に行われていた。
1) プロダクトイオンスキャン分析を行うための設定(以下、「プロダクトイオンスキャンイベント」と呼ぶ。)を、各種パラメータを変えて複数個、準備する。
2) 全てのプロダクトイオンスキャンイベントを順次実行する。
3) 全プロダクトイオンスキャンイベントの実行結果のマススペクトルの中から、強度の高いものから順に1乃至複数個のm/zを選択する。その際、許容幅(例えば±0.5m/zなど)の範囲内のm/zは一つのm/zとして扱う。
4) 選択されたm/zを生成したプロダクトイオンスキャンイベントのパラメータを最適値とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-201304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の方法では最大強度だけを条件に選択していたため、偏った条件下でのみ生成されるマススペクトルからピークを選択してしまう可能性があった。そのため、分析データの再現性などにおいて不適当なプロダクトイオンを選択してしまうことがあり、ユーザは、自動選択プロセスで得られたデータを見直し、改めて、複数の候補からプロダクトイオンを選択するという作業を行う必要が生じていた。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、より高い確率で最適なプロダクトイオンを選択することのできるMS/MS型質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本願発明は、各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する制御部と、を備えるMS/MS型質量分析装置において、該制御部が、
a) 或る成分のプリカーサイオンについて、イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出する検出部と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るMS/MS型質量分析装置では、制御部のイベント準備部が次のようなプロダクトイオンスキャンイベントの中から複数個を選択し、準備する。
1) イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント
2) 何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベント
【0013】
イベント実行部は、そのプリカーサイオンについて、このようにして準備された複数のプロダクトイオンスキャンイベントを順次実行する。実行された各プロダクトイオンスキャンイベント毎にマススペクトルが得られるが、検出部は、こうして得られた複数のマススペクトルの中から、最も出現頻度の高いマスピークを検出する。このマスピークに対応するプロダクトイオンをそのプリカーサイオンについて選択するプロダクトイオンとし、該マスピークが出現したマススペクトルに対応するプロダクトイオンスキャンイベントの条件を分析条件として、その成分の分析を行う。
【0014】
なお、最も出現頻度の高いマスピークに加えて、2番目、3番目に高いマスピーク等を選択するようにしてもよい。
【0015】
従来は、最大の強度を有するマスピークを検出していたため、或る特殊な条件下でのみ出現するマスピークを選択してしまい、適切なプロダクトイオンを選択することができなかったが、本発明に係る方法では、出現頻度の最も高いマスピークを選択するため、適切なプロダクトイオンを選択することができる。
【0016】
なお、本発明に係るMS/MS型質量分析装置では、制御部の検出部は、全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出する代わりに、全マススペクトルの加算値又は平均値を取り、その中で最も強いマスピークを検出するようにしてもよい。
【0017】
また、単純加算/単純平均ではなく、各マススペクトルに重み付けを行い、その重み付けを考慮した加算値/平均値(加重加算値/加重平均値)の中で最も強いマスピークを検出するようにしてもよい。
【0018】
いずれの場合でも、従来のように全マススペクトル中の最大強度のマスピークを取るよりは適切なプロダクトイオンを選択することができる。
【0019】
上記イベント準備部は、各プロダクトイオンスキャンイベントの条件を自動的に設定するものであってもよいし、ユーザーに入力させるようなものであってもよい。
【0020】
また、本願発明に係るMS/MS型質量分析装置用プログラムは、各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する制御部と、を備えるMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、
a) イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出する検出部と、
を備えることを特徴としている。
【0021】
このプログラムについても、上記のような各種機能(2番目以降のマスピークの選択、加算値/平均値、加重加算値/加重平均値による選択、条件自動設定/ユーザー設定等)を付与することができる。
【発明の効果】
【0022】
第1発明に係るMS/MS型質量分析装置によれば、各プリカーサイオンについて、より高い確率で最適なプロダクトイオンを選択することができるため、試料の各成分の分析をより高精度且つ高感度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例によるMS/MS型質量分析装置の全体構成図。
【図2】一般的なMS/MS型質量分析装置の全体構成図。
【図3】実施例のMS/MS型質量分析装置において、制御部がプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を定めるために予め行う処理のフローチャート。
【図4】最適プロダクトイオンを決定する方法の一つを説明するための、マススペクトル併記図。
【図5】最適プロダクトイオンを決定する別の方法を説明するための、マススペクトル重畳図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るMS/MS型質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例のMS/MS型質量分析装置の全体構成図である。なお、既に説明した従来の構成(図2)と同じ構成要素には、同一符号を付して説明を略す。
本実施例のMS/MS型質量分析装置では、第1段四重極3と第3段四重極6との間に、プリカーサイオンを開裂させて各種プロダクトイオンを生成するためにコリジョンセル4が配置され、その内部には質量分離の機能を持たない第2段四重極5が配設されている。第1段四重極3及び第3段四重極6は四重極マスフィルタであり、第2段四重極5は単なる四重極(又は多重極)のイオンガイドである。
【0025】
コリジョンセル4にあって、第2段四重極5は絶縁性部材から形成される筒状体41内に設けられ、その筒状体41のイオン入射側端面には入口側レンズ電極42が、イオン出射側端面には出口側レンズ電極44が設けられる。
【0026】
第1段四重極3には第1電源部11から、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。第2段四重極5には第2電源部12から、高周波電圧のみ、或いはこれに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。第3段四重極6には第3電源部13から、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。これら第1電源部乃至第3電源部11、12、13は、コンピュータから成る制御部10の制御の下に動作する。コリジョンセル4の入口側レンズ電極42及び出口側レンズ電極44には、直流電源部20からそれぞれ所定の電圧が印加される。
【0027】
本実施例のMS/MS型質量分析装置によりMRM測定を行う場合の制御部10の動作は次の通りである。ここでは、この質量分析装置の前段にLC又はGCが接続され、LC又はGCで時間的に分離された成分を含む試料が時間経過とともに導入され、この試料中の成分をMRM法により順次検出する場合を想定する。MRM測定では、第1段四重極3で選別されるプリカーサイオンの質量電荷比Aと、第3段四重極6で選別されるプロダクトイオンの質量電荷比a(a<A)とが固定され、測定対象成分毎に異なるA、aが設定される。したがって、第1段四重極3におけるプリカーサイオンの質量電荷比の切り替えとともに第3段四重極6におけるプロダクトイオンの質量電荷比の切り替えが行われる。このプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組は、保持時間と対応付けて、分析条件の一つとして予め分析者により操作部30で設定しておかねばならないが、これらプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を定めるために予め行う処理を次に説明する。
【0028】
まず、ユーザーが操作部30より、分析予定の成分を入力する(ステップS1)。これには、成分名を手で入力する方法の他、表示部31の画面上に表示されたものの中から選択する方法も用意されている。こうして入力された成分に対して、制御部10は予め用意されたデータベースを参照することにより、プリカーサイオンを定める。プリカーサイオンが定まると、その質量電荷比を選択するための第1段四重極3の電圧条件等が自動的に定まる。
【0029】
次に制御部10は、そのプリカーサイオンを開裂させるためのコリジョンセル4の電圧条件や、プロダクトイオンを走査するための第3段四重極6の走査条件等のプロダクトイオンスキャン条件を設定したプロダクトイオンスキャンイベントを、所定個数だけ(複数個)生成する(ステップS2〜S3)。これは、プリカーサイオンの種類毎に所定のアルゴリズムに従って自動的に生成するようにしてもよいし、一部又は全部、ユーザーのパラメータ入力値を使用するようにしてもよい。また、全ての条件が同一の複数のプロダクトイオンスキャンイベントを含めてもよい。その実行時刻が異なることにより、突発的なノイズ等による結果への影響が異なる可能性があるからである。
【0030】
所定個数のプロダクトイオンスキャンイベントが生成された後、制御部10はそれらのプロダクトイオンスキャンイベントを順次実行する(ステップS4)。すなわち、各プロダクトイオンスキャンイベントに設定された条件に従い、第1電源部11、第2電源部12、直流電源部20、第3電源部13を制御して所定のプリカーサイオンを選択し、それを開裂し、検出器7で検出することにより各プロダクトイオンスキャンイベント毎にマススペクトルを得る。
【0031】
全てのプロダクトイオンスキャンイベントを実行した後、制御部は、それらの実行により得られた全マススペクトルを解析し(ステップS5)、本プリカーサイオンについて最適なプロダクトイオンのピークを決定する。ここにおける最適プロダクトイオンピークの決定法については後に詳述する。こうして、プリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を定めた後、試料の分析を行う。その際、各成分については、上記のように定められたプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組(すなわち、プロダクトイオンスキャン条件)を用いる。
【0032】
全プロダクトイオンスキャンイベントから得られた全マススペクトルより最適なプロダクトイオンのピークを決定する方法について述べる。その一つは、全マススペクトルの中で最も高頻度で出現するピークを最適プロダクトイオンピークとする方法である。なお、この際、所定の許容幅(例えば±0.5m/zなど)の範囲内のm/zは一つのm/zとして扱うようにする。従来、何らかの偏った条件下でのみ生成されるマススペクトルからピークを選択してしまうということがあり得たが、そのようなピークは高い頻度で生ずることは殆ど無いため、そのような誤ったピーク選択が防止される。
【0033】
このような方法で最適プロダクトイオンピークを選択した例を図4により説明する。図4は、Da=455.10のプリカーサイオンについて、それぞれ異なる条件(パラメータ[0001]〜[0008])で8個のプロダクトイオンスキャンイベントを生成し、それらを実行した結果得られたマススペクトルを縦に並べて表示部31に表示したものである。この例では、最初のプロダクトイオンスキャンイベント(「プロダクトイオンスキャンイベント#1」)においてのみ特異的に、m/z=17のピークp1が現れているが、その他のプロダクトイオンスキャンイベントにおいてはそのピークは現れていない。しかも、このピークは全スペクトルの中で最も高いものであるため、従来の方法ではこれをそのプリカーサイオンのプロダクトイオンとして選択し、その条件(パラメータ[0001])をその成分の分析条件として採択していたところであった。しかし、本発明に係る質量分析装置では上記方法を用いているため、プロダクトイオンスキャンイベント#2〜#7の6個のマススペクトルにおいて現れているピーク(m/z=165)が選択される。これは、最も安定的に生成されるプロダクトイオンと言うことができるため、その成分の分析において採択するに最も適したプロダクトイオンと言える。
【0034】
また、全プロダクトイオンスキャンイベントから得られた全マススペクトルより最適なプロダクトイオンのピークを決定する別の方法としては、全マススペクトルについて各m/z毎にその強度を積算し、最大強度となるピークを最適プロダクトイオンピークとする方法がある。これによっても、何らかの偏った条件下でのみ出現するピークを誤って選択することが防止される。
【0035】
この場合の例を図5により説明する。図5は、上記例の8個のプロダクトイオンスキャンイベントで生成されたマススペクトルを表示部31の画面上に重畳表示したものである。上記の通り、m/z=17において大きなピークp1が現れているが、m/z=165のピークは7個のスペクトルにおいて現れているため、それらを積算するとm/z=17のピークより遙かに高くなる。従って、この場合も上記同様m/z=165のピークが選択される。
【0036】
なお、全スペクトルのm/z強度の積算値の最大値を選択することと全スペクトルのm/z強度の平均値の最大値を選択することは数学的には同等であるため、平均値の最大値を選択するようにしてもよい。
また、単純加算/単純平均ではなく、各マススペクトルに重み付けを行い、その重み付けを考慮した加算値/平均値(加重加算値/加重平均値)の中で最も強いピークを検出するようにしてもよい。
【0037】
上記各実施例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1…分析室
2…イオン源
3…第1段四重極
4…コリジョンセル
41…筒状体
42…入口側レンズ電極
44…出口側レンズ電極
5…第2段四重極
6…第3段四重極
7…検出器
8…データ処理部
10…制御部
101…イベント設定部
11…第1電源部
12…第2電源部
13…第3電源部
20…直流電源部
30…操作部
31…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する制御部と、を備えるMS/MS型質量分析装置において、該制御部が、
a) 或る成分のプリカーサイオンについて、イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出する検出部と、
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置。
【請求項2】
各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する制御部と、を備えるMS/MS型質量分析装置において、該制御部が、
a) 或る成分のプリカーサイオンについて、イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの加算値又は平均値を取り、その中で最も強いマスピークを検出する検出部と
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置。
【請求項3】
上記検出部が、各マススペクトルに重み付けを行い、その重み付けを行った加算値/平均値の中で最も強いマスピークを検出することを特徴とする請求項2に記載のMS/MS型質量分析装置。
【請求項4】
各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する、コンピュータを備えた制御部と、を有するMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、該コンピュータを
a) イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを検出する検出部と、
として機能させることを特徴とするMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項5】
各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、それらを制御して分析を実行し、分析実行により生成されたデータを解析する、コンピュータを備えた制御部と、を有するMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、該コンピュータを
a) イオン開裂部及び第2質量分離部のうち少なくとも一方の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント並びに何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントのうち複数個を準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
c) 実行された全プロダクトイオンスキャンイベントにより生成された全マススペクトルの加算値又は平均値を取り、その中で最も強いマスピークを検出する検出部と
として機能させることを特徴とするMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項6】
上記検出部が、各マススペクトルに重み付けを行い、その重み付けを行った加算値/平均値の中で最も強いマスピークを検出することを特徴とする請求項5に記載のMS/MS型質量分析装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104389(P2012−104389A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252271(P2010−252271)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】