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MSH3発現の状況に基づくPARP阻害剤及びプラチナ薬剤を用いる化学療法に対する癌細胞の応答性の測定
説明

MSH3発現の状況に基づくPARP阻害剤及びプラチナ薬剤を用いる化学療法に対する癌細胞の応答性の測定

【課題】結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者を治療する方法を提供する。
【解決手段】前記患者の結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定し、前記患者を治療するための遺伝毒性を有する抗腫瘍剤を用いる治療の有効性を予測する方法である。患者細胞のMSH3総発現が、正常な結腸直腸細胞のMSH3発現と比べて減少している場合、遺伝毒性のある抗腫瘍剤を用いる療法に対する応答素因が示される。遺伝毒性のある抗腫瘍剤を用いる療法は、有効量の遺伝毒性のある抗腫瘍剤を患者に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に癌の検出、予後及び治療の分野に関し、より具体的にはDNA損傷剤に対する結腸直腸癌細胞の感受性を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、結腸癌及び消化器癌の検出用バイオマーカーとの関連で以下に本発明の背景を記載する。
【0003】
Pant et al.に発行された米国特許第7252955号(2007年)は、結腸癌スクリーニング用の免疫アッセイ及びキットを開示している。各試料から糞便糖タンパク質を免疫原性が保持されるようにして抽出する。精製された糞便糖タンパク質を結腸−卵巣腫瘍抗原(COTA)に対する抗体と反応させる。このムチン抗原COTAは結腸直腸癌細胞に特異的に存在し、正常結腸には存在しない。糞便試料中のCOTA量を測定し、結腸癌の存在を示すことに用いる。
【0004】
Lin et al.に発行された米国特許第7575928号は、結腸直腸癌を診断するための遺伝子を開示している。簡潔に述べるとこの特許は、以下のようにして遺伝子配列を検索することにより結腸直腸癌を診断するための遺伝子を提供する。(1)正常腸、腸ポリープ及び結腸直腸癌組織から上皮細胞を得る;(2)抑制サブトラクティブハイブリダイゼーション(SSH)により高度に差次的な遺伝子発現を示す遺伝子を回収し、ライブラリーを構築する;(3)癌組織から、比較的高いシグナル強度を有するコロニーを得る;(4)ノーザンハイブリダイゼーションで癌組織をより臨床的に回収し、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と生物情報分析を併用して差次的遺伝子発現の変動を確認する;並びに(5)前記ライブラリーから最適な遺伝子を選択し、その遺伝子配列を試薬として使用することにより、早期診断、特異性、高感受性及び安全性における効果が得られる。
【0005】
Robbins et al.に発行された米国特許第7022472号は、結腸直腸癌の診断に有用なヒトMLH1遺伝子及びヒトMSH2遺伝子の変異(mutation)を開示している。簡単に述べると、ヒトMLH1遺伝子及びヒトMSH2遺伝子のバリアントを用いて遺伝性非ポリープ性結腸直腸癌(HNPCC)が診断でき、及び/又は患者におけるHNPCCの発症感受性も測定できることが見い出された。MLH1遺伝子又はMSH2遺伝子の新規バリアントを同定するための方法及び組成物も提供されている。さらに、かかるバリアント遺伝子を含む遺伝性非ポリープ性結腸直腸癌の実験モデルが提供された。
【0006】
最後に、Baker et al.が出願した米国特許出願公開公報第20090305277号は、ヒト患者が癌と診断される可能性を予測する方法であって、以下の遺伝子群、AURKB、Axin2、B1K、BRAF、BRCA2、BUB1、C20orf1、C20ORF126、CASP9、CCNE2バリアント1、CDC2、CDC4、CENPA、CENPF、CLIC1、CYR61、Cdx2、Chk1、DLC1、DUSP1、E2F1、EGR3、E124、ESPL1、FBXO5、FGF2、FOS、FUT6、GSK3B、Grb10、HES6、HLA−G、HNRPAB、HOXB13、HSPE1、KIF22、KIFC1、KLRK1、Ki−67、LAT、LMYC、MAD2L1、MSH2、MSH3、NR4A1、PDGFA、PRDX2、RAB32、RAD54L、RANBP2、RCC1、ROCK2、RhoB、S100P、SAT、SOD1、SOS1、STK15、TCF−1、TOP2A、TP53BP1、UBE2C、VCP、及びcMYCから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの測定に基づく、又はこれらに対応する発現に基づく方法を記載しており、これらの遺伝子のうち1又は2以上の遺伝子における発現亢進が、化学療法に対する正の応答性の可能性が高くなることと正の相関を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7252955号
【特許文献2】米国特許第7575928号
【特許文献3】米国特許第7022472号
【特許文献4】米国特許出願公開公報第20090305277号
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、結腸直腸癌の予後の評価及び/又は化学療法に対する癌の応答性を予測する上でのMSH3発現レベルに関して従来の知見を超える有意義かつ新規な知見をここに明らかにする。
【0009】
本発明の一実施形態では、1又は2以上の腺癌のリスクを有する患者或いは1又は2以上の腺癌と診断された患者を治療する方法において、前記患者から得、腺癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び前記患者細胞におけるMSH3総発現の測定に基づき、前記患者を治療するための抗腫瘍剤を用いる前記治療の有効性を予測するステップであって、正常細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに抗腫瘍剤療法に対する応答素因(predisposition to responsiveness)が示され、前記療法が患者に有効量の前記抗腫瘍剤を投与することを含むステップを含む方法を提供する。前記腺癌は、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、膀胱癌、膣癌、乳癌、食道癌、膵臓癌、及び胃癌からなる群から選択される。より具体的な態様では腺癌はCRCであり、固形腫瘍を含む。
【0010】
別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ、抗体プローブ又はその両方を用いるハイブリダイゼーションを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、免疫組織化学法を含む。
【0011】
関連する態様において抗腫瘍剤は、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン(busulfan)、カルムスチン(carmustine)、クロラムブシル(chlorambucil)、シクロフォスファミド(cyclophosphamide)、ダカルバジン(dacarbazine)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、エトポシド(etoposide)、イダルビシン(idarubicin)、イフォスファミド(ifosfamide)、イリノテカン(irinotecan)、ロムスチン(lomustine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、メルファラン(melphalan)、マイトマイシンC(mitomycin C)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、テモゾロミド(temozolomide)、トポテカン(topotecan)、及び電離放射線からなる群から選択される。一態様において抗腫瘍剤は鎖間架橋剤である。別の態様において抗腫瘍剤は、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、フロクマリン(furocoumarins)、及びソラレン(psoralen)からなる群から選択される鎖間架橋剤である。さらに別の態様において抗腫瘍剤は、オラパリブ(olaparib)、イソインドリノン(isoindolinone)誘導体、ベリパリブ(veliparib)、イニパリブ(iniparib)、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、腺癌のリスクがある患者又は腺癌と診断された患者を治療する方法において、(i)前記患者から得、腺癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び(ii)前記患者細胞におけるMSH3総発現の測定に基づいて前記患者を治療するための抗腫瘍剤を用いる治療の有効性を予測するステップであって、
正常細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに抗腫瘍剤療法に対する応答素因が示され、前記療法が前記患者に有効量の前記抗腫瘍剤を投与することを含むステップを含む方法を提供する。一態様において腺癌は、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、膀胱癌、膣癌、乳癌、食道癌、膵臓癌、及び胃癌からなる群から選択される。別の態様において腺癌はCRCである。さらに別の態様において腺癌は、固形腫瘍である。
【0013】
上述したMSH3総発現レベルを測定するステップは、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む。一態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ、抗体プローブ又はその両方を用いるハイブリダイゼーションを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、免疫組織化学法を含む。
【0014】
一態様において抗腫瘍剤は、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、テモゾロミド、トポテカン、及び電離放射線からなる群から選択される。別の態様において抗腫瘍剤は鎖間架橋剤である。別の態様において抗腫瘍剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される鎖間架橋剤である。さらに別の態様において抗腫瘍剤は、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。
【0015】
さらに別の実施形態において本発明は、結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者を治療する方法において、前記患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び抗腫瘍剤を用いて前記患者を治療するための抗腫瘍剤治療の有効性を予測するステップであって、正常な結腸直腸細胞におけるMSH3総発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに抗腫瘍剤療法に対する応答素因が示され、前記療法が前記患者に有効量の前記抗腫瘍剤療法を投与することを含むステップを含む方法を開示する。
【0016】
一態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3タンパク質の発現について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3核酸の発現について分析することを含む。更に別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ、抗体プローブ又はその両方を用いるハイブリダイゼーションを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、免疫組織化学法を含む。
【0017】
一態様において抗腫瘍剤は、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、テモゾロミド、トポテカン、及び電離放射線からなる群から選択される。特定の態様において抗腫瘍剤は鎖間架橋剤である。別の態様において抗腫瘍剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される鎖間架橋剤である。さらに別の態様において抗腫瘍剤は、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。
【0018】
本発明はさらに、結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者に対する癌治療法を選択する方法において、前記患者のMSH3総発現レベルを測定するステップ、及び抗腫瘍剤を用いて前記患者を治療するための抗腫瘍剤治療の有効性を予測するステップであって、前記MSH3総発現レベルが減少しているときにDNA架橋剤が前記患者にとって適切な療法であることが示されるステップを含む方法を提供する。一態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3タンパク質の発現について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3核酸の発現について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。本明細書に記載のさらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。この方法に関連する態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ及び抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、並びに免疫組織化学法を含む。この方法の特定の態様において、抗腫瘍剤は鎖間架橋剤である。別の態様において抗腫瘍剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される。別の態様において抗腫瘍剤は、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。
【0019】
本明細書に開示される別の実施形態は、患者を癌治療法の臨床試験用のサブグループに分類する方法において、前記患者から得、癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び前記患者を治療するための候補薬剤を用いる療法の有効性を予測するステップであって、正常細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに候補薬剤を用いる療法に対する応答素因が示され、前記療法が前記患者に有効量の前記候補薬剤を投与することを含み、MSH3発現レベルにより前記患者を臨床試験用のサブグループに分類できるステップを含む方法に関する。一態様において癌細胞は、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、膀胱癌、膣癌、乳癌、食道癌、膵臓癌、及び胃癌からなる群から選択される。特定の態様において、癌細胞は結腸直腸癌細胞であり、固形腫瘍に存在する癌細胞である。
【0020】
かかる方法の一態様において、MSH3総発現レベルを測定するステップは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現、又はその両方について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーションを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、免疫組織化学法を含む。関連する態様において候補薬剤は、遺伝毒性剤又はポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である。
【0021】
さらに別の態様において本発明は、患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定すること、及び正常結腸直腸細胞におけるMSH3発現と比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少することを指標に結腸直腸癌疾患進行のステージを予測すること、のステップからなる方法により、患者を結腸直腸癌のサブグループに分類するステップを記載している。前記に開示した分類方法の一態様では、疾患の進行及びMSH3発現の減少が、抗腫瘍剤療法に対する結腸直腸癌素因を示す。
【0022】
本発明はさらに、結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者を治療する方法において、(i)前記患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップであって、1又は2以上のDNA架橋剤を用いる療法に対する応答素因を示すステップ、(ii)前記患者におけるMSH3総発現の継続的減少を測定するステップ、及び(iii)MSH3発現を減少させ、結腸直腸癌細胞を除去するのに十分な量の治療有効量のDNA架橋剤を投与するステップを含む方法を開示する。
【0023】
一実施形態において本発明は、MSH3遺伝子発現に伴う疾患状態の治療に有用であると考えられる候補薬剤を評価するための臨床試験を行う方法において、a)患者グループから得た結腸直腸癌を有することが疑われる組織におけるMSH3発現レベルを測定するステップ;b)患者の第1サブグループに候補薬剤を投与し、患者の第2サブグループに偽薬を投与するステップ;c)前記候補薬剤又は前記偽薬を投与した後にステップa)を繰り返すステップ;及びd)前記候補薬剤により、MSH3発現減少を示す結腸直腸細胞の数が、前記患者の第2サブグループで生じる低減と比べて統計的に有意に低減されるか否かを測定するステップであって、統計的に有意に低減していることによって前記候補薬剤が前記疾患状態を治療するのに有用であることが示されるステップを含む方法に関する。
【0024】
別の実施形態において本発明は、哺乳動物の結腸直腸癌が、結腸直腸癌の治療のためのDNA損傷剤に対して耐性又は応答性である可能性を測定する方法において、前記癌から得た生体試料におけるMSH3総発現の減少を調べるステップと、前記DNA阻害剤に対して応答性を有する癌において、同じバイオマーカーの発現レベル又は活性レベルに対してMSH3の発現又は活性が減少している場合、前記結腸直腸癌が前記DNA損傷剤に対して応答性を示す又は増強された感受性を有すると同定するステップとを含む方法を提供する。
【0025】
さらに別の実施形態において本発明は、結腸直腸癌の疾患進行のバイオマーカーにおいて、前記バイオマーカーがMSH3であり、患者から得た結腸直腸癌細胞におけるMSH3総発現が、正常結腸直腸癌細胞又は同じ患者からより早い時期に得た結腸直腸癌細胞におけるMSH3発現と比べて減少していることが結腸直腸癌の疾患進行の指標となる、バイオマーカーを開示する。一態様においてMSH3総発現レベルは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3タンパク質の発現について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルは、結腸直腸癌であることが疑われる組織試料をMSH3核酸の発現について分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルは、個体から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルは、個体から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルは、対立遺伝子特異的プローブ及び抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、又は免疫組織化学法を含む。
【0026】
本発明はさらに、MSH3の差次的発現レベルを測定するためのバイオマーカー検出試薬と、結腸直腸癌のリスクの診断における使用のためのインストラクションとを含む結腸直腸癌診断用のキットについて記載している。一態様において、結腸直腸癌のリスクを有する患者から得た試料におけるMSH3 mRNA及びMSH3タンパク質の両方の発現レベルは、正常対象に比べて著しく減少している。別の態様では、結腸直腸癌のリスクを有する患者のMSH3mRNAの発現レベルは、正常対象と比べて減少している。さらに別の態様では、結腸直腸癌のリスクを有する患者のMSH3タンパク質の発現レベルは、正常対象と比べて減少している。
【0027】
最後に、本発明は、ヒト対象における結腸直腸癌の進行を診断又は検出する方法において、(i)結腸直腸癌に罹患していることが疑われるヒト対象を同定するステップ、(ii)前記対象から1又は2以上の生体試料を得るステップであって、前記生体試料が、組織試料、糞便試料、細胞ホモジネート、及び 1又は2以上の生体液からなる群から選択されるステップ、(iii)前記対象の前記生体試料から得た1又は2以上の細胞におけるMSH3総発現パターンを測定するステップ、並びに(iv)結腸直腸癌に罹患していることが疑われる前記対象の前記生体試料からのMSH3の総発現パターンと、正常対象の生体試料からのMSH3の総発現パターンとを比較するステップであって、前記正常対象が結腸直腸癌に罹患していない健常な対象であり、前記対象の前記生体試料におけるMSH3総発現パターンの減少が、結腸直腸癌の存在、発症リスク、又はその両方の指標となるステップを含む方法を提供する。
【0028】
上記に開示した診断方法の一態様において、MSH3 mRNA、MSH3タンパク質、又はその両方の発現レベルの著しい減少が、湿潤性結腸直腸癌の存在、発症リスク、又はその両方の指標となる。別の態様では、MSH3総発現レベルを測定するステップは、生体試料からの1又は2以上の細胞についてMSH3核酸の発現を分析することを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対象から得たMSH3核酸の質量分析を行うことを含む。さらに別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対象から得たMSH3核酸の一部についてローリングサークル増幅を行うことを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーションを含む。別の態様においてMSH3総発現レベルを測定するステップは、免疫組織化学法を含む。さらに別の態様において、かかる方法は、結腸直腸癌のリスクを有する又は結腸直腸癌に罹患している患者を治療すること、結腸直腸癌のリスクを有する又は結腸直腸癌に罹患している患者のためにDNA架橋剤療法を選択すること、患者を結腸直腸癌のサブグループ又は結腸直腸癌治療法の臨床試験用のサブグループに分類すること、結腸直腸癌治療レジメンに対する耐性又は応答性を測定すること、結腸直腸癌の診断用キットを開発すること、或いはそれらの組合せのために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のため、添付の図面と共に、発明の詳細な記載を参照する。図面は以下のとおりである。
【図1】MSH3shRNAを安定的にトランスフェクトしたHCT116+3+5由来クローンのMSH3発現に対するtet-offシステムによる制御を示す図である。(1A)HCT116、HCT116+3、HCT116+3+5、並びにHCT116+3+5由来クローン3種、G1、G2及びG5の各細胞におけるMSH3、MLH1及びβ−アクチンのウエスタンブロット分析である。(1B)1μg/mlのドキシサイクリンの存在下又は不在下の培地で培養したHCT116+3+5、G1、G2及びG5の各細胞におけるMSH3及びβ−アクチンのウエスタンブロット分析である。MSH3の相対的発現をデンシトメトリーにより計算し、個別に3回以上行った試験に基づいて結果を得た。
【図2】MSH3プロフィシェント細胞(MSH3-proficient cells)と比べ、MSH3欠損細胞のほうがシスプラチン及びオキサリプラチンに対する感受性が高いことを示す図である。(2A)シスプラチン処理したHCT116、HCT116+3、HCT116+3+5及びG5の各細胞のクローン原性生存率(clonogenic survival fraction)である。(2B)シスプラチン処理し、1μg/mlのドキシサイクリンの存在下及び不在下で培養したG5細胞のクローン原性生存率である。(2C)オキサリプラチン処理したHCT116、HCT116+3、HCT116+3+5及びG5の各細胞のクローン原性生存率である。(2D)1μg/mlのドキシサイクリンの存在下及び不在下で培養し、オキサリプラチンによる処理も施したG1、G2及びG5細胞のクローン原性生存率である。(2E)S期集団で減少がみられ、(2F)HCT116+3+5細胞及びG1細胞のサブG1期集団で増加がみられ、(2G)無処理コントロールと比べBrdUの相対的取込みが減少し、(2H)HCT116+3+5細胞及びG5細胞の免疫蛍光において、抗活性カスパーゼ−3陽性細胞の増加がみられる。データは、個別に3回以上行った試験から得た平均値±平均値の標準誤差(SE)で示す。統計的差異は、両側スチューデントt検定により測定した。アスタリスク「*」、「**」及び「***」は、それぞれp<0.05、p<0.01及びp<0.001を表す。NSはp=0.05以上を示す。3種類のMSH3欠損クローンの1種から得た代表データをこの図に示す。
【図3】siRNAによりMSH3が一時的に枯渇することによっても、HCT116+3+5細胞がシスプラチン及びオキサリプラチンに対して感作されることを示す図である。(3A)siRNAを一時的にトランスフェクトしたことによりMSH3が枯渇したHCT116+3+5細胞におけるMSH3及びβ−アクチンのウエスタンブロット分析である。非標的化(コントロール)siRNA及びMSH3siRNAをそれぞれトランスフェクトした後に、(3B)シスプラチン処理した、及び(3C)オキサリプラチン処理したHCT116+3+5細胞株におけるクローン原性生存率を比較した。(3D)非標的化siRNA及びMSH3siRNAで処理したHT29細胞におけるMSH3及びβ−アクチンのウエスタンブロット分析である。siRNAによるトランスフェクションの72時間後に細胞を抽出した。コントロールsiRNA及びMSH3siRNAをそれぞれトランスフェクトした後に、(3E)シスプラチン処理した、及び(3F)オキサリプラチン処理したHT29細胞のクローン原性生存率を比較した。データは、個別に5回行った実験の平均値±SEで表す。統計的差異は、両側スチューデントt検定により測定した。アスタリスク「*」及び「**」は、それぞれp<0.05、及びp<0.01を表す。NSはp≧0.05を表す。
【図4】siRNAによりMLH1を一時的に枯渇させても、シスプラチン及びオキサリプラチンに対するMSH3プロフィシェント細胞及びMSH3欠損細胞の耐性には影響しなかったことを示す図である。(4A)siRNAを一時的にトランスフェクトした後、MLH1が枯渇したHCT116+3+5細胞及びG5細胞におけるMLH1及びβ−1アクチンのウエスタンブロット分析である。(4B)コントロールsiRNA又はMLH1siRNAをトランスフェクトした後、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジンで処理したHCT116+3+5細胞及びG5細胞におけるクローン原性生存率である。(4C)シスプラチン処理した、及び(4D)オキサリプラチン処理したMLH1が枯渇したHCT116+3+5細胞及びG5細胞におけるクローン原性生存率の比較である。データは、個別に4回以上行った実験の平均値±SEで表す。統計的差異は、両側スチューデントt検定により測定した。アスタリスク「*」及び「**」は、それぞれp<0.05、及びp<0.01を表す。NSはp≧0.05を表す。
【図5】MSH3欠損細胞では、DNA二本鎖切断修復の効率が低下していることを示す図である。(5A)ドキシサイクリン処理したHCT116+3+5細胞及びG5細胞と、ドキシサイクリン未処理のG5細胞とを免疫蛍光染色し、pH2AX増殖巣の形成を調べた。5μMのオキサリプラチンで細胞を6時間処理し、所定時間後に免疫蛍光法で分析した。上パネル;DAPI、下パネル:pH2AX、(5B)MSH3欠損細胞におけるpH2AX陽性細胞の減少効率は低かった。(5C)ドキシサイクリン処理G5細胞及びドキシサイクリン未処理G5細胞を免疫蛍光し、53BPI増殖巣の形成を調べた。5μMのオキサリプラチンで細胞を6時間処理し、48時間後に免疫蛍光法で分析した。(5D)各スライドについて少なくとも100個の細胞をカウントした。データは、個別に3回又は4回行った実験から得た平均値±SEを示す。MSH3欠損G5細胞とMSH3プロフィシェントG5細胞との間の統計的差異は、両側スチューデントt検定により測定した。アスタリスク「*」及び「***」は、それぞれp<0.05、及びp<0.001を表す。
【図6】MSH3欠損細胞が、PARP阻害剤であるオラパリブ、及びそのオキサリプラチンとの組合せに対して感受性を有することを示す図である。(6A)2μMのオキサリプラチン、2μMのオラパリブ、及びこれら2種の薬剤の組合せでそれぞれ処理した、ドキシサイクリン未処理のHCT116+3+5細胞及びG5細胞と、ドキシサイクリン処理G5細胞のクローン原性生存率である。(6B)1μMのオキサリプラチン、2μMのオラパリブ、及びこれら2種の薬剤の組合せでそれぞれ処理したHT29細胞のクローン原性生存率である。データは、個別に3回以上行った実験から得た平均値±SEを示す。統計的差異は、両側スチューデントt検定により測定した。アスタリスク「*」、「**」及び「***」は、それぞれp<0.05、p<0.01及びp<0.001を表す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用を以下で詳細に説明するが、本発明は、広範な特定状況下で具現化され得る多くの適用可能な発明概念を提供することを認識されたい。本明細書に記載される特定の実施形態は、単に本発明を作製及び使用するための特定の手法の例示であり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0031】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書中で定義される用語は、本発明に関する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「この(the)」などの用語は、単一の存在物のみを称することを意図するものではなく、説明のために具体例を使用する場合の一般的な種類を含む。本明細書中の専門用語は、本発明の具体的な実施形態を記述するために使用されるが、これらの用語の使用は、特許請求の範囲に概説されている場合を除き本発明の範囲を定めるものではない。
【0032】
本明細書で使用する省略形としては、MMR、ミスマッチ修復;MSI、マイクロサテライト不安定性;CRC、結腸直腸癌;MeG、O6−メチルグアニン;ICLs、鎖間架橋;NER、ヌクレオチド除去修復;HR、相同組換え;RARP、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ;EMAST、テトラヌクレオチド反復におけるマイクロサテライトの変化の増加;DSB、二本鎖切断;BrdU、ブロモデオキシウリジン;pH2AX、リン酸化H2AXなどがある。
【0033】
本明細書中、「結腸直腸癌」という用語には、結腸直腸癌を、小腸下方の腸管(すなわち、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸及び直腸を含む大腸(結腸))の細胞の癌により特徴付けられる病状であると定義する、広く認められた医学的定義が含まれる。さらに、本明細書で用いる「結腸直腸癌」という用語にはさらに、十二指腸及び小腸(空腸及び回腸)の細胞の癌により特徴付けられる病状も含まれる。
【0034】
「組織試料」(用語「組織」は「組織試料」と同じ意味で使用される)という用語には、個別の細胞、又はマトリックスと複合する若しくは化学物質と会合する細胞のいずれであってもよいが、1又は2以上の細胞で構成される任意の物質が含まれると理解すべきである。この定義には、任意の生物学的物質又は有機物質、並びに任意の細胞サブポーション、それらの産物又は副産物が含まれるものとする。「組織試料」という定義には、精子、卵子、胚及び血液成分を限定されることなく含まれると理解すべきである。また、本発明の趣旨における「組織」という定義には、細胞起源であるが、もはや「細胞」とは特徴付けられない皮膚の皮層などの定義された無細胞構造体も含まれる。本明細書中で用いる「便(stool)」という用語は、ヒトが排泄する糞便に関する臨床用語である。
【0035】
本明細書中、「遺伝子」という用語は、機能性のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする単位のことを指す。当業者には理解されるが、かかる機能用語には、ゲノム配列、cDNA配列、又はそれらの断片若しくは組合せ、並びに人為的に改変されたものも含む遺伝子産物が含まれる。これらのものが、通常みられる少なくとも1つの夾雑核酸若しくは夾雑タンパク質から同定又は分離された場合に、精製された遺伝子、核酸、タンパク質等の用語を使用する。 「対立遺伝子(allele)」又は「対立遺伝子形態(allelic form)」という用語は、同じ機能性タンパク質をコードするが、同じ遺伝子の別の形態に対するヌクレオチド配列に違いがある遺伝子の改変型のことを指す。
【0036】
本明細書中、「核酸」又は「核酸分子」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)若しくはリボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作製された断片、並びに連結、切断、エンドヌクレアーゼ作用及びエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより作製された断片などのポリヌクレオチドを指す。核酸分子は、天然ヌクレオチド(DNA及びRNA等)の単量体、天然ヌクレオチドのアナログ(例:天然ヌクレオチドのα−鏡像異性体)、又は両者の組合せから構成され得る。修飾ヌクレオチドは、糖部分に、及び/又はピリミジン塩基若しくはプリン塩基部分に改変を有し得る。糖修飾には、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミン、及びアジド基による1又は2以上のヒドロキシル基の置換が含まれ、或いはエーテル又はエステルとして糖に官能性をもたせることができる。さらに、糖部分全体を、アザ糖および炭素環式糖類似体などの、立体的および電子的に類似の構造体と置換することができる。塩基部分の修飾の例には、アルキル化プリン及びアルキル化ピリミジン、アシル化プリン若しくはアシル化ピリミジン、或いはその他の周知の複素環式置換基が含まれる。核酸単量体は、ホスホジエステル結合、またはそのような結合の類似結合によって結合され得る。ホスホジエステル結合の類似結合には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート(phosphoroselenoate)、ホスホロジセレノエート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニリデート(phosphoranilidate)、ホスホロアミダートなどが含まれる。「核酸分子」という用語には、ポリアミド骨格に結合した天然または修飾核酸塩基を含む、いわゆる「ペプチド核酸」もまた含まれる。核酸は一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。
【0037】
本明細書中、「ハイブリダイゼーション」という用語は、2つの1本鎖ポリヌクレオチドが非共有結合的に結合して、安定な二本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスをいう。三本鎖ハイブリダイゼーションも理論上可能である。生じる(通常)二本鎖ポリヌクレオチドは、「ハイブリッド」である。安定なハイブリッドを形成するポリヌクレオチド集団の割合は、本明細書において「ハイブリダイゼーションの程度」といわれる。通常、ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下、例えば、塩濃度が1M以下及び温度が最低25℃という条件下で行われる。例えば、5×SSPE(750mMのNaCl、50mMのリン酸ナトリウム、5mMのEDTA、pH7.4)及び温度25〜30℃の条件が、対立遺伝子特異的なプローブハイブリダイゼーションに適している。ストリンジェントな条件については、例えば、その全文を本明細書に参照として組み込むSambrook, Fritscheand Maniatis. “Molecular Cloning A laboratory Manual” 2nd Ed. Cold Spring Harbor Press (1989)を参照されたい。
【0038】
本明細書中、「ローリングサークル増幅(RCA)」という用語は、元々の環状DNAの配列と相補的な配列の1又は2以上のコピーを含む核酸の鎖を得るためのDNA複製及び増幅方法のことをいう。この増幅(相補的複製の作製)方法には、オリゴヌクレオチドプライマーを標的環状DNAとハイブリダイズさせることと、等温サイクリングを行う(例えば、リガーゼ及びDNAポリメラーゼの存在下で)こととが含まれる。RCAを用いる増幅法を1ラウンド行うことにより環状標的の配列が多数増幅され、核酸の一本鎖上に所望のオリゴヌクレオチドが高濃度で得られる。混合物中、所望の核酸配列が優勢配列となるので(濃度において)、「RCA増幅」であるといわれる。RCAを用いると、特定の核酸配列の1個のコピーをいくつかの異なる方法(例えば、標識プローブを用いるハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーを取り込み、アビジン酵素コンジュゲートで検出する方法;dCTP又はdATP等の32P標識化デオキシヌクレオチド三リン酸を増幅セグメントに取り込む方法)で検出できる程度にまで増幅させることが可能である。
【0039】
本明細書中、「抗体プローブ」という用語は、標的抗原に特異的で、標的抗原に結合する抗体を指す。かかる標的抗原は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、抗体が特異的に結合するその他の生体高分子であり得る。
【0040】
本明細書中、数々の実施形態で使用される「バイオマーカー」という用語は、疾患の進行又は治療の効果の診断及び測定に有用となるような特別の分子特徴を備える特定の体内生化学物質を指す。例えば、ヒト呼気中の一般的な代謝産物若しくはバイオマーカー、及びかかる代謝産物を提供するヒトのそれぞれの診断状態としては、アセトアルデヒド(起源:エタノール、X−トレオニン;診断:中毒症)、アセトン(起源:アセトアセテート、診断:食事/糖尿病)、アンモニア(起源:アミノ酸の脱アミノ化、診断:尿毒症及び肝疾患)、CO(一酸化炭素)(起源:CH2Cl2、COHb割合の増加、診断:室内空気汚染)、クロロホルム(起源:ハロゲン化化合物)、ジクロロベンゼン(起源:ハロゲン化化合物)、ジエチルアミン(起源:コリン、診断:腸管細菌の過増殖)、H(水素)(起源:腸、診断:乳糖不耐症)、イソプレン(起源:脂肪酸、診断:代謝ストレス)、メタンチオール(起源:メチオニン、診断:腸管細菌の過増殖)、メチルエチルケトン(起源:脂肪酸、診断:室内空気汚染/食事)、O−トルイジン(起源:癌腫代謝物、診断:気管支原性癌腫)、ペンタンスルフィド及びスルフィド(起源:脂質過酸化、診断:心筋梗塞)、H2S(起源:代謝、診断:歯周病/排卵)、MeS(起源:代謝、診断:肝硬変)、Me2S(起源:感染症、診断:塹壕口内炎)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
本明細書中、「免疫組織化学(IHC:immunohistochemistry)」という用語は、細胞に適用する場合は「免疫細胞化学(ICC:immunocytochemistry)」としても知られ、診断病理学のツールを指し、モノクローナル抗体のパネルを未分化腫瘍の鑑別診断に用い(例えば、リンパ腫、細胞腫(carcinoma)及び肉腫を識別する)、特定の腫瘍型及び他の疾患に特異的なマーカーを突き止め、悪性リンパ腫の診断及び表現型分類を行い、ウイルス抗原、腫瘍性タンパク質、ホルモン受容体及び増殖関連核タンパク質の存在を明らかにする。
【0042】
本明細書中、「臨床試験(clinical trial)」という用語には、特定の治療に対しする応答性に関する臨床データを収集することを目的とする調査研究が含まれ、第I相臨床試験、第II相臨床試験、及び第III相臨床試験が含まれるが、これらに限定されない。患者集団を定義し、被験者を登録するのは標準的な方法によって行う。
【0043】
研究するグループ間における「統計的に有意な」違いという用語は、適切な統計分析法(例:カイ二乗検定(Chi-square test)、t−検定)を用いたときに、グループ間で同じ確率(probability)となるのが5%未満、すなわちp<0.05である状態に関するものである。言い換えれば、完全にランダムな状況において同じ結果を得る確率が、100回試行して5回未満であるということである。
【0044】
本明細書中、「候補薬剤」という用語は、本発明の方法により、MSH3発現が低下した結腸直腸細胞の数を減少させる活性のスクリーニングに適したあらゆる起源の化合物を指す。
【0045】
本明細書中、「遺伝毒性剤(genotoxicagent)」という用語の定義には、ヒトのDNA又は遺伝子を損傷させる能力を有する化学的作用物質(agent)及び物理的作用物質の両方が含まれる。発癌物質及び変異原は、化学的遺伝毒性剤の一般的な例であり、紫外線(UV)照射、γ線、X線などは、DNA酸化産物を産み出す場合に物理的遺伝毒性剤の一般例となる。
【0046】
本明細書中、「抗腫瘍剤」という用語は、ヒト等の哺乳動物において新生物(neoplasm)の発生又は進行を阻害するという機能的特徴を有する作用物質を指し、転移又は転移能を阻害することも指す。
【0047】
本明細書中、「キット」又は「試験キット」という用語は、分析に必要な試薬とアジュバントとの組合せを意味する。殆どの場合、試験キットはいくつかのユニットで構成されるが、1種類の分析エレメント(one-piece analysis element)としても可能であり、それも同様に試験キットとみなされる。
【0048】
MSH3遺伝子(アクセッション番号P20585)は、MMR欠損癌でしばしば生じる体細胞変異を受けたDNAミスマッチ修復(MMR)遺伝子の1種である。MSH3は、MSH2と一緒になってMutSβヘテロ二本鎖を形成し、シスプラチン及びソラレン等の薬剤に誘導された鎖間架橋(ICL)と相互作用する。しかし、ICL誘導剤の細胞毒性効果を仲介するにあたってのMSH3の正確な役割は依然としてよく理解されていない。本発明らは本明細書において、MSH3欠損が、シスプラチン及び別のICL誘導性プラチナ薬剤であるオキサリプラチンがもたらす細胞毒性に対するMSH3欠損による効果を示す。
【0049】
shRNA発現によってMSH3発現が制御されている同系HCT116由来クローンをtet-offシステムで使用したところ、MSH3が欠損することによって臨床関連用量のシスプラチン及びオキサリプラチンの両方に対して細胞が感作されたことが見いだされた。興味深いことに、かかる薬剤のMSH3依存性毒性は、siRNAに誘導されたMLH1タンパク質のダウンレギュレーションの影響を受けなかったことから、この方法は基準MMR経路の関与を必要としないことが示唆される。
【0050】
さらに、MSH3欠損細胞では、MSH3プロフィシェント細胞に比べ、オキサリプラチンによる処理後もリン酸化H2AX及びリン酸化53BP1が高レベルで維持され、MSH3が、DNA二本鎖切断(DSB)の修復に重要な役割を果たしていることが示唆される。かかるMSH3の役割は、MSH3欠損細胞がポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ阻害剤であるオラパリブに対して感受性を有するという本明細書における知見により更に裏付けられた。また、オキサリプラチンとオラパリブを組み合わせると、それぞれ単独による処理の場合に比べ、相乗効果が得られた。以上の結果から、MSH3の欠損が、DSBの修復欠損をとおしてプラチナ薬剤の細胞毒性に貢献していることが示される。これらのデータから、MSH3欠損を伴う癌の効果的な予測及び治療が可能になる。
【0051】
本発明の知見は、予後の評価及び/又は化学療法に対する癌の応答性の予測に有用な遺伝子(MSH3を含む)及び遺伝子セットに関する従来の知見からの顕著、かつ、新規な発展を表すものである。Baker et al.が出願した米国特許出願公開公報第20090305277号は、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの測定に基づいてヒト患者が癌と診断される可能性を予測する方法を記載しているが、これは本発明とは逆で、MSH3を含む特定の遺伝子の発現の亢進が化学療法に正の応答性を示す可能性の増加と正に相関していることを示すというものである。しかし、Baker et al.の出願には細胞又は組織に関するデータは皆無であり、むしろ、一般的な遺伝子マイニングアプローチを採用してその結論に到達している。
【0052】
DNAミスマッチ修復(MMR)系は、MLH1、MSH2、MSH6、MSH3、PMS2等のいくつかのタンパク質で構成され、複製エラーを除去し、ゲノム安定性を維持する。MSH2/MSH6へテロ二量体MutSαは、単独の塩基ミスマッチを認識するが、MSH2/MSH3へテロ二量体MutSβは、2〜4bpの挿入−欠失ループを主として認識する(Kunkel, T. A., and Erie, D. A. (2005) Annu. Rev. Biochem. 74, 681-710;Jiricny, J. (2006) Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 7, 335-346)。MutL複合体、主にMLH1/PMS2へテロ二量体MutLαは、複製時にDNAミスマッチと結合するMutSへテロ二量体との三重複合体を形成し、他のタンパク質を動員してDNAMMRのプロセスを完成させる。MMR遺伝子に生殖細胞変異が生じると、結腸、子宮内膜、卵巣及び尿路においてマイクロサテライト不安定性(MSI)を伴う癌に対する遺伝的素因により特徴付けられるリンチ症候群が生じる(Hendriks, Y. M., de Jong, A. E., Morreau, H., Tops, C. M., Vasen, H. F., Wijnen, J. T., Breuning, M. H., and Brocker-Vriends, A. H. (2006) CA Cancer J. Clin. 56, 213-225;Boland, C. R., and Goel, A. (2010) Gastroenterology 138, 2073-2087 e2073)。他方、MLH1プロモーターのメチル化に起因するMMR欠損により、結腸直腸癌(CRC)(〜15%)、子宮内膜癌(20〜25%)及び卵巣癌(〜12%)を含む孤発性MSI腫瘍が生じる(Boland, C. R., and Goel, A. (2010) Gastroenterology 138, 2073-2087 e2073;Black, D., Soslow, R. A., Levine, D. A., Tornos, C., Chen, S. C., Hummer, A. J., Bogomolniy, F., Olvera, N., Barakat, R. R., and Boyd, J. (2006) J. Clin. Oncol. 24, 1745-1753;Pal, T., Permuth-Wey, J., Kumar, A., and Sellers, T. A. (2008) Clin. Cancer Res. 14, 6847-6854)。
【0053】
MMR系は、アルキル化剤及び6−チオグアニン等のDNA損傷剤によって産生する特定のDNA付加物の修復にも関与している。アルキル化剤によって産生される主な細胞障害性領域は、O−メチルグアニン(MeG)であり、これにより、MeG−C又はMeG−Tミスペアが生じる(Duckett, D. R., Drummond, J. T., Murchie, A. I., Reardon, J. T., Sancar, A., Lilley, D. M., and Modrich, P. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93, 6443-6447)。MutSαは、これらのミスペアを認識し、その後の修復反応のためにMutLαを動員する(de Wind, N., Dekker, M., Claij, N., Jansen, L., van Klink, Y., Radman, M., Riggins, G., van der Valk, M., van'tWout, K., and te Riele, H. (1999) Nat. Genet. 23, 359-362;Abuin, A., Zhang, H., and Bradley, A. (2000) Mol. Cell. Biol. 20, 149-157)。MutSα又はMutLαが欠損すると、前記薬剤の細胞毒性効果に対して細胞が寛容性をもつことになり、前記2種類の複合体もまた、細胞増殖停止又は細胞死をもたらすシグナル誘導経路と関連していることが示唆される(Koi, M., Umar, A., Chauhan, D. P., Cherian, S. P., Carethers, J. M., Kunkel, T. A., and Boland, C. R. (1994) Cancer Res. 54, 4308-4312;Hawn, M. T., Umar, A., Carethers, J. M., Marra, G., Kunkel, T. A., Boland, C. R., and Koi, M. (1995) Cancer Res. 55, 3721-3725)。
【0054】
他方、MutSβは、ソラレン及びシスプラチン等のDNA架橋剤によって産生する鎖間架橋(ICL)を認識する。MutSβは、哺乳動物細胞抽出物におけるソラレン誘導ICLの認識及び脱共役に関与している(Zhang, N., Lu, X., Zhang, X., Peterson, C. A., and Legerski, R. J. (2002) Mol. Cell. Biol. 22, 2388-2397)。最近、MutSβが、いずれもヌクレオチド除去修復(NER)に関与するXPA−RPA又はXPC−RAD23BとソラレンICL認識において相互作用し、NERプロセスを促進することが示された(Zhao, J., Jain, A., Iyer, R. R., Modrich, P. L., and Vasquez, K. M. (2009) Nucleic Acids Res. 37, 4420-4429;Vasquez, K. M. (2010) Environ. Mol. Mutagen 51, 527-539)。ICLを修復する相同組換え(HR)の程度もまた、MutSα又はMLH1にではなく、MutSβに依存する。これらの結果から、MutSβが、ソラレン誘導ICLの修復においてNERタンパク質、HRタンパク質及びファンコニ貧血タンパク質と協同することが示唆される(Zhang, N., Liu, X., Li, L., and Legerski, R. (2007) DNA Repair (Amst) 6, 1670-1678)。また、MutSβは、PARP−1、DNAリガーゼIII、XRCC−1、Ku80及びKu70と共にシスプラチン誘導ICLにも結合し、MutSβが、他の修復経路とも協同して、プラチナ薬剤誘導ICLを認識し、修復することが示唆される(Zhu, G., and Lippard, S. J. (2009) Biochemistry 48, 4916-4925)。
【0055】
第三世代のプラチナ薬剤であるオキサリプラチンは、CRC患者の治療に現在使用されている重要薬剤(key drug)の1つである。シスプラチン同様、オキサリプラチンもまた鎖間架橋及びICLを形成する(Chaney, S. G., Campbell, S. L., Bassett, E., and Wu, Y. (2005) Crit. Rev. Oncol. Hematol. 53, 3-11)。しかし、オキサリプラチン誘導付加物、特にICLの修復及び細胞毒性効果に関与する詳細な分子機構は未だ幅広く調査されていない。
【0056】
MutSβ複合体がICL修復に役割を担っている点を考慮し、本発明者らは、MSH3欠損が、プラチナ薬剤に誘導されるICLの修復を中断させ、癌患者におけるこれら薬剤の細胞毒性が強化することを認識した。さらに、MSH3欠損によりHRが抑制され(Zhang, N., Liu, X., Li, L., and Legerski, R. (2007) DNA Repair (Amst) 6, 1670-1678)、HR欠損細胞がポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤に高感受性であることから(Bryant, H. E., Schultz, N., Thomas, H. D., Parker, K. M., Flower, D., Lopez, E., Kyle, S., Meuth, M., Curtin, N. J., and Helleday, T. (2005) Nature 434, 913-917;Farmer, H., McCabe, N., Lord, C. J., Tutt, A. N., Johnson, D. A., Richardson, T. B., Santarosa, M., Dillon, K. J., Hickson, I., Knights, C., Martin, N. M., Jackson, S. P., Smith, G. C., and Ashworth, A. (2005) Nature 434, 917-921)、本発明者らはさらに、MSH3が欠損すると、細胞がPARP阻害剤に対して感作されることを認識した。MSICRCにおいては、MSH3のエクソン7におけるモノヌクレオチド[A]リピート内でフレームシフト変異が頻繁に生じる(20〜50%)結果、MSH3の欠失又は減少が生じる(Plaschke, J., Kruger, S., Jeske, B., Theissig, F., Kreuz, F. R., Pistorius, S., Saeger, H. D., Iaccarino, I., Marra, G., and Schackert, H. K. (2004) Cancer Res. 64, 864-870;Miquel, C., Jacob, S., Grandjouan, S., Aime, A., Viguier, J., Sabourin, J. C., Sarasin, A., Duval, A., and Praz, F. (2007) Oncogene 26, 5919-5926;Hewish, M., Lord, C. J., Martin, S. A., Cunningham, D., and Ashworth, A. (2010) Nat. Rev. Clin. Oncol. 7, 197-208)。本発明者らは最近、低レベルのMSI及び/又はテトラヌクレオチド反復(EMAST)におけるマイクロサテライトの変化の増加を呈する孤発性CRC組織に、MSH3陰性癌細胞集団が存在していることを見いだした(Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。もしもMSH3欠損が、臨床現場においてプラチナ薬剤及びPARP阻害剤の毒性に影響を与えるのであれば、MSH3の状態を、MSH3欠損癌の患者における化学療法の成果に対する予測マーカーとして使用することができる。MSH3欠損癌の患者における化学療法の成果に対する予測マーカーとしてMSH3の状態を使用できることを示すため、本発明者らは、shRNAの発現を介してMSH3タンパク質の発現を調節できる同系細胞株をtet-offシステムで使用し、2種類のプラチナ薬剤及び周知のPARP阻害剤に対する細胞の感受性に及ぼすMSH3欠損の効果を調べた。これらの研究により、CRC細胞株におけるMSH3欠損が、特に、二本鎖切断(DSB)修復機能が低下する結果として、プラチナ薬剤の毒性に寄与するという新たな分子的証拠が明らかにされた。
【0057】
試薬− シスプラチン、オキサリプラチン、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)及びヨウ化プロピジウムは、Sigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)から購入した。PARP阻害剤のオラパリブは、Selleck Chemicals社(テキサス州ヒューストン)から購入した。
【0058】
細胞株及び細胞培養− ヒト結腸癌細胞株のHCT116、HCT116+ch.3(HCT116+3)、HCT116+ch.3+ch.5(HCT116+3+5)については文献に記載されている(Koi, M., Umar, A., Chauhan, D. P., Cherian, S. P., Carethers, J. M., Kunkel, T. A., and Boland, C. R. (1994) Cancer Res. 54, 4308-4312;Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。MSH3に対するshRNAをコードするテトラサイクリン調節型レトロウイルスベクターであるTMP(Open Biosystems社,アラバマ州ハンツビル)を、HCT116+3+5細胞に安定的にトランスフェクトさせた。安定的なMSH3欠損クローンG1、G2及びG5を単離した(結果及びHaugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472を参照のこと)。10%ウシ胎仔血清を添加したIMDM(Invitrogen社、メリーランド州ロックビル)中でHCT116、HCT116+3、HCT116+3+5細胞を培養した。10%ウシ胎仔血清及び0.6μg/mlのピューロマイシンを添加したIMDM中でG1、G2及びG5細胞を維持した。1μg/mlのドキシサイクリンを培養培地に加えることにより、MSH3 shRNAの発現を停止させた。
【0059】
ウエスタンブロット分析− 文献記載の手法により(Vaisman, A., Varchenko, M., Umar, A., Kunkel, T. A., Risinger, J. I., Barrett, J. C., Hamilton, T. C., and Chaney, S. G. (1998) Cancer Res. 58, 3579-3585)、細胞溶解物からタンパク質を調製し、SDS−PAGE上で分離し、PVDF膜に移した。特異的タンパク質を検出するための一次抗体として、抗hMSH3マウスモノクローナル抗体(希釈倍率;1:250、クローン52、BD Pharmingen社、カリフォルニア州サンノゼ)、抗hMLH1マウスモノクローナル抗体(1:200、G168−728、BD Pharmingen社)、及び抗β−アクチン抗体(1:10000、クローンAC−15、Sigma-Aldrich社)を用いた。二次抗体として、ヤギ抗マウス抗体(1:3000、sc−2005、Santa Cruz Biotechnology社、カリフォルニア州サンタクルーズ)を用いた。シグナルの増幅及び検出は、前記膜をECL試薬(GE Healthcare社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に暴露し、Stormイメージングシステム(Amersham社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)で視覚化することにより行った。
【0060】
クローン原性生存率− 6ウエルプレートの各ウエルに200個の細胞を播種した。シスプラチン又はオキサリプラチンにより生じた細胞毒性を測定するため、プレートに細胞が付着した後に前記薬剤で24時間細胞を処理した。オラパリブによる細胞毒性の測定には、この薬剤で細胞を実験の間中、継続的に処理した。8〜10日後、コロニー(50個を超える(>50)細胞を有するコロニー)の数を数え、無処理細胞に対する薬剤処理細胞のクローン原性生存率の相対的変化を求めた。
【0061】
細胞周期分析− 10cmプレートに100万個の細胞を播種した。細胞が付着した後に、この細胞株をオキサリプラチンで24時間処理した。それから更に48時間経過後、冷温PBSで細胞を2回洗浄し、一晩又は数日間、70%冷エタノールに−20℃で固定した。次にエタノールで固定した細胞(2×10)をPBSで2回洗浄し、PBS300μl及び0.15%RNaseAの共存下において15分間37℃でインキュベーションした。これらの細胞を75μg/mlのヨウ化プロピジウムで30分間染色し、FACSCantoIIフローサイトメトリー(BD Bioscineces社、カリフォルニア州サンノゼ)を用いてDNA含有量について分析した。Flowjoソフトウエアを用いて細胞周期データを分析した(Tree Star社、オレゴン州アッシュランド)。
【0062】
増殖アッセイ− 24時間にわたる最初のシスプラチン又はオキサリプラチン処理の48時間後に、HCT116+3+5細胞及びG5細胞へのブロモデオキシウリジン(BrdU)取込量に基づいて増殖指数を測定した(Cell Proliferation ELISA, BrdU, Roche Diagnositics、インディアナ州インディアナポリス)。実験は3回行い、個別に行った3回又は4回の実験からデータを得た。
【0063】
siRNA処理− MLH1 siRNA、MSH3siRNA及び非標的化siRNAは、Dharmacon社(コロラド州ラファイエット)から購入した。24ウエルプレートに200,000個の細胞を播種した。一晩インキュベーションした後、リポフェクタミン2000(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)を製造者指示書に基づいて使用し、これらの細胞に83nMの標的化siRNA又は非標的化siRNAをトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞を回収し、クローン原性生存アッセイに供するために再プレーティングした。
【0064】
免疫蛍光染色− 12ウエルプレート中、カバーガラス上で10,000個の細胞を培養した。細胞は、PBS中、4%パラホルムアルデヒド(pH7.5)で15分間固定し、0.3%トリトンX−100で5分間、透過処理し、10%ヤギ血清(Invitrogen社、カリフォルニア州カールスバッド)で1時間ブロッキングした。次に、これら細胞を、抗活性カスパーゼ3抗体(1:500、G748、Promega社、ウイスコンシン州マディソン)、抗リン酸化H2AX(pH2AX)抗体(1:5000、JBW301、Millipore Corporation社、マサチューセッツ州ビレリカ)、又は抗53BP1抗体(1:600、ab21083、Abcam社、マサチューセッツ州ケンブリッジ)の共存下で1時間インキュベーションし、次いで二次抗体(1:800、Alexa Fluor 555ヤギ抗マウス抗体又は抗ウサギ抗体、Invitrogen社)の共存下で40分間インキュベーションした。DAPI(Invitrogen社)を含むProlong Goldを培地にマウントした。画像は、AxioVisionソフトウエア(Carl Zeiss社、ニューヨーク州ソーンウッド)を備えたAxioSkop2マルチチャンネル落射蛍光顕微鏡を用いて得た。
【0065】
MSH3欠損クローンにおいて、MSH3の発現はドキシサイクリンによって制御されている。本発明者らは、まず、HCT116CRC細胞のG1、G2及びG5細胞クローンにおけるMSH3発現がドキシサイクリンに制御されているか否かを調べた。HCT116細胞及びHCT116+3細胞をMSH3発現に関するネガティブコントロールとして、また、HCT116+3+5細胞をポジティブコントロールとして用いた。HCT116細胞及びHCT116+3細胞ではMSH3タンパク質の検出可能な発現が示されなかったが(図1A)、これは、MSH3のエクソン7のモノヌクレオチド反復におけるホモ接合型フレームシフト変異を有するHCT116細胞の場合と一致している(Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。
【0066】
MSH3欠損HCT116+3の5番染色体のコピーを移動させることにより作製したHCT116+3+5ではMSH3が発現していた。ドキシサイクリン不在下ではG1、G2及びG5クローンにおいてMSH3は検出されなかったものの、ドキシサイクリンの添加により、これらクローンの全てにおいて、親HCT116+3+5の約40〜60%程度のレベルのMSH3発現が復活した(図1A及び1B)。これらの細胞株においてMSH3 shRNAの産生を完全に阻止しようとすることは、ドキシサイクリン存在下であっても技術的に困難かもしれないが、G5細胞におけるMSH3の前記レベルは、EMAST表現型に関するMSH3の機能をインビトロで回復させるには十分であることから、これらの結果におけるタンパク質レベルは、本研究での薬剤感受性に対するMSH3の効果を分析するには十分なものであった(Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。
【0067】
MSH3欠損細胞は、シスプラチン及びオキサリプラチンに対し、MSH3プロフィシェント細胞よりも強い感受性を示す。かかる二種類のプラチナ薬剤に対する細胞感受性がMSH3の状況によって左右されるかどうかを調べるため、シスプラチン処理細胞におけるHCT116細胞株及びHCT116由来細胞株のクローン原性生存率を調べた。MLH1とMSH3とを欠損するHCT116細胞株と、MLH1だけが欠損しているHCT116+3細胞株との間にはシスプラチン感受性の有意な差は観察されなかったが、MSH3発現(proficient)HCT116+3+5細胞株ではより高い抵抗性が観察された(図2A)。種々の細胞株の中で、MSH3欠損G5クローンが、その親HCT116+3+5より感受性が高かった(図2A)。MSH3の存在が、シスプラチンに誘導される細胞毒性に影響を及ぼしたことをさらに確認するため、ドキシサイクリンの存在下及び不在下におけるG5細胞のクローン原性生存率を比較した。MSH3発現が回復すると、細胞がシスプラチンに対して脱感作されたことが見いだされた(5μM;図2B)。これらの結果から、MSH3が枯渇すると、細胞がシスプラチンに対して感作されることが示される。その他のクローン、G1及びG2のクローン原性生存率も分析し、これらのクローンがG5と同様の挙動を示したことがわかった(データは示さず)。これにより、シスプラチンが引き起こす細胞毒性に対するMSH3の考えられる役割がさらに補強された。次に、MSH3欠損が、オキサリプラチンに対する細胞感受性にも影響を及ぼしたか否かを調べた。驚くべきことに、MSH3を欠損するHCT116、HCT116+3及びG5の各クローンは、シスプラチンの場合と同様に、その親HCT116+3+5よりもオキサリプラチンに対する感受性が著しく強かった(図2C)。さらに、MSH3欠損細胞におけるMSH3の回復により、オキサリプラチンへの非感受性が回復されたことが観察された(図2D)。次に、オキサリプラチン処理後のMSH3発現細胞とMSH3欠損細胞との増殖阻害率及びアポトーシスレベルを比較した。本発明者らは、細胞増殖阻害の程度(図2E)とアポトーシスのレベルが、MSH3発現細胞よりもMSH3欠損細胞において著しく高かった(図2F)ことをフローサイトメトリーによって見いだした。オキサリプラチン処理したMSH3欠損細胞では、細胞増殖が低下してアポトーシス画分が増加していることも、それぞれBrdUアッセイ及び免疫蛍光法で確認された。図2Gは、無処理のコントロールと比べ、相対的なBrdU取込みが減少していることを示し、図2Hは、HCT116+3+5細胞及びG5細胞において抗活性カスパーゼ3陽性細胞が増加していることを免疫蛍光法で示す。これらの結果は、クローンアッセイ(clonogenic assay)で得た増殖阻害に関する結果に関して本明細書で示す知見と一致している。
【0068】
siRNAトランスフェクションによりMSH3を枯渇させることによっても、細胞はシスプラチン及びオキサリプラチンに対して感作される。シスプラチン及びオキサリプラチンに対するMSH3関連感作の役割をさらに確認するため、MSH3siRNAと非標的化siRNAとを一時的にトランスフェクトした細胞のクローン原性生存頻度を調べた。かかる研究から、HCT116+3+5細胞においてMSH3タンパク質の発現が、siRNAトランスフェクションの72時間後に著しく減少したことが(無処理細胞に比べて98%のMSH3発現阻害)示される(図3A)。MSH3siRNAをHCT116+3+5細胞にトランスフェクトし、かかる細胞をトランスフェクションの48時間後にシスプラチン(5μM及び10μM)又はオキサリプラチン(2μM及び5μM)に暴露した。図3B及び3Cに示すように、MSH3siRNAをトランスフェクトしたHCT116+3+5細胞は、非標的化siRNAをトランスフェクトした細胞株と比べ、シスプラチン及びオキサリプラチンの両方に対してより高い感受性を示した。MSH3枯渇細胞におけるプラチナ薬剤に対する感受性の亢進をさらに確認するため、別の結腸癌細胞株HT29にMSH3siRNA又は非標的化siRNAをトランスフェクトした。HT29細胞ではMSH3がほぼ完全に抑制され(図3D)、MSH3siRNAで処理したHT29細胞は、シスプラチン及びオキサリプラチンの両方に対して感受性がさらに亢進していたことが確認された(図3E及び3F)。これらの結果により、MSH3欠損によってシスプラチン及びオキサリプラチンの両方に対して細胞が感作されるという知見がさらに補強される。
【0069】
MSH3プロフィシェント細胞及びMSH3欠損細胞におけるシスプラチン感受性又はオキサリプラチン感受性は、結腸癌細胞におけるMLH1の状況とは無関係に生じる。臨床的見地からすると、MSH3の状況が、MLH1も欠損している癌患者のシスプラチン及びオキサリプラチンへの感受性に影響するか否かを調べることが重要である。この課題に対処するため、siRNAに介されるMLH1発現のダウンレギュレーションを誘導することによる、シスプラチン及びオキサリプラチンに対するMSH3欠損G5細胞とMSH3プロフィシェント細胞の感受性を比較した(図4A)。MLH1siRNAをトランスフェクトしたHCT116+3+5細胞とG5細胞の両方においてMLH1がダウンレギュレーションされた場合、いずれの細胞株も、無処理のコントロール細胞株に比べ、MNNGに対する耐性が強くなっており(図4B)、かかる条件下でのMLH1の機能抑制が確認された(Koi, M., Umar, A., Chauhan, D. P., Cherian, S. P., Carethers, J. M., Kunkel, T. A., and Boland, C. R. (1994) Cancer Res. 54, 4308-4312;Hawn, M. T., Umar, A., Carethers, J. M., Marra, G., Kunkel, T. A., Boland, C. R., and Koi, M. (1995) Cancer Res. 55, 3721-3725)。興味深いことに、この状況では、HCT116+3+5よりもG5細胞の方が、シスプラチン及びオキサリプラチン(2μM及び5μM)に対する感受性が強かったことが観察された(図4C及び4D)。これらの結果は、シスプラチン及びオキサリプラチンに対するMSH3依存性感受性がMLH1の状況とは無関係に生じることを示している。
【0070】
MSH3欠損細胞では、オキサリプラチン処理後にpH2AX及び53BP1レベルが持続している。プラチナ薬剤は、DNA鎖間架橋及びICLを誘導し、病巣の一部では、恐らく複製フォークが崩壊したために最終的に二次的DNA二本鎖切断(DSB)が生じる(Hinz, J. M. (2010) Environ. Mol. Mutagen 51, 582-603)。MSH3がDSBの修復に関与しているか否かを調べるため、DNA二本鎖切断の代理マーカーである核内pH2AXレベルの経時変化を免疫蛍光染色法により分析した。MSH3発現細胞株及びMSH3欠損細胞株では、オキサリプラチン処理の前後でpH2AX巣陽性細胞数に違いはないことがわかった。他方、オキサリプラチン処理の48〜72時間後におけるMSH3欠損G5細胞におけるpH2AX巣陽性細胞数の減少率が、MSH3が復活したG5細胞及びHCT116+3+5細胞株のいずれと比較しても低いことが観察され(図5A及び図5B)、DSB修復が、MSH3欠損細胞株においてのみ損なわれることが示される。かかるDSB修復の非効率性をさらに確認するため、DNA二本鎖切断の別の検出マーカーである抗53BP1抗体を用いて免疫蛍光アッセイを行った。オキサリプラチン処理後にMSH3欠損G5細胞において53BP1のレベルが維持されていることが確認された(図5C及び図5D)。以上の結果から、処理によって誘導されるDNA損傷負荷の量的差異よりむしろ、DNA二本鎖切断修復の効率性の低下が、MSH3欠損細胞におけるオキサリプラチン高感受性の原因の一部であることが示される。
【0071】
MSH3欠損細胞もまた、PARP阻害剤であるオラパリブに感受性である。PARP阻害剤は、一本鎖切断数を増やし、最終的にDNA二本鎖切断が生じるが、これはHRシステムで修復される。HR欠損細胞はかかる二本鎖切断を修復できないため、PARP阻害剤に超感受性である(Bryant, H. E., Schultz, N., Thomas, H. D., Parker, K. M., Flower, D., Lopez, E., Kyle, S., Meuth, M., Curtin, N. J., and Helleday, T. (2005) Nature 434, 913-917;Farmer, H., McCabe, N., Lord, C. J., Tutt, A. N., Johnson, D. A., Richardson, T. B., Santarosa, M., Dillon, K. J., Hickson, I., Knights, C., Martin, N. M., Jackson, S. P., Smith, G. C., and Ashworth, A. (2005) Nature 434, 917-921)。前記結果(図5A〜5D)から明らかとなったDSB修復に果たすMSH3の考えられる役割により、MSH3欠損細胞がPARP阻害剤に対しても感受性を有するか否かに関するさらなる検討が促進された。図6Aに示すとおり、MSH3欠損G5細胞はMSH3が回復したG5細胞株よりも、オラパリブに対する感受性が高かった。これらのデータは、CRC細胞におけるDSB修復へのMSH3の役割を明らかに裏付けている。さらに、オキサリプラチンとオラパリブを組み合わせると、親HCT116+3+5細胞に比べ、MSH3欠損G5細胞における細胞毒性に相乗効果がもたらされた。この効果は、別の結腸癌細胞株2種、HT29(図6B)及びSW480(データは示さず)、について、MSH3siRNAを用いる一時的ノックダウンシステムにおいて確認された。これらの結果から、MSH3欠損癌に対するプラチナ薬剤とPRP阻害剤との併用療法が示される。
【0072】
本研究は、MSH3が消失することにより、プラチナ薬剤に起因する細胞感受性が影響を受けることを解明した。この観察結果は、MSH3欠損腫瘍患者に対する化学療法の成果に関する予想マーカーとしてMSH3の状況を用いる診断及び治療戦略を確立するために用いることができる。簡潔に述べると、MSH3発現がtet-offシステムによって調節されている同系結腸癌細胞株を用い、結腸癌細胞におけるMSH3発現を枯渇させると、かかる結腸癌細胞がシスプラチンだけでなくオキサリプラチン及びPARP阻害剤に対しても感作されることを明らかにした。かかる効果は、前記薬剤による処理後にみられるMSH3欠損細胞のDSB修復能減少によって最もよく説明できるだろうことが前記データから示唆されるが、MSH3がDNA二本鎖切断修復に関与する正確な機構については更なる解明がまたれる。MSH3を選択的に阻害することにより、プラチナ薬剤及びPARP阻害剤に対する細胞感受性が亢進することを明らかにしたのは本発明が始めてである。さらに前記結果は、シスプラチン及びオキサリプラチンに対する感受性のMSH3依存的亢進が、MLH1のダウンレギュレーションの影響によるものではなく、恐らく基準ミスマッチ修復システムからも独立していることを明らかにしている。
【0073】
ICLの修復におけるMutS及びMutLホモログの役割は、ソラレンICLを用いて数多く研究されてきた(Zhang, N., Lu, X., Zhang, X., Peterson, C. A., and Legerski, R. J. (2002) Mol. Cell. Biol. 22, 2388-2397;Zhao, J., Jain, A., Iyer, R. R., Modrich, P. L., and Vasquez, K. M. (2009) Nucleic Acids Res. 37, 4420-4429;Vasquez, K. M. (2010) Environ. Mol. Mutagen 51, 527-539;Zhang, N., Liu, X., Li, L., and Legerski, R. (2007) DNA Repair (Amst) 6, 1670-1678;Wu, Q., and Vasquez, K. M. (2008) PLoS Genet. 4, e1000189)。これらのデータからは、MutSβが、NERタンパク質及びHRタンパク質など他のタンパク質と協同していくつかのタイプのICLの認識及びプロセッシングの双方に関与していること、並びにMutSβがMMRにおけるその主な役割とは無関係にICL修復にも機能していることが示唆される。ここに示す知見は、MSH3枯渇細胞がシスプラチン及びオキサリプラチンに感受性を有することを示し、このことがMLH1の機能とは無関係に生じる点が、ソラレンICLを用いる知見と一致している。
【0074】
以上の結果から、ICL付加物に誘導される毒性DSBの修復にMutSβが関与していることが示される。第一に、レーザーにより(Hong, Z., Jiang, J., Hashiguchi, K., Hoshi, M., Lan, L., and Yasui, A. (2008) J. Cell Sci. 121, 3146-3154)、及びクロミウム(VI)等の発癌物質により(Reynolds, M. F., Peterson-Roth, E. C., Bespalov, I. A., Johnston, T., Gurel, V. M., Menard, H. L., and Zhitkovich, A. (2009) Cancer Res. 69, 1071-1079)誘導されたDSB病巣にMSH3が共局在するようになるという既存の証拠がある。第二に、本発明者らは、オキサリプラチン処理後、MSH3欠損細胞においてDSBと共局在するpH2AX及び53BP1のレベルがMSH3発現細胞と比べて維持されていたことを認識した。第三に、MSH3欠損細胞は、DSBを誘導するPARP阻害剤に感受性を有する。よって、これらの結果から、MSH3欠損に起因する未修復DSBが細胞死の直接の原因であることが示される。しかし、最近行われた研究では、MSH2ヌルマウスで生じる腫瘍が、MSH2G674D変異を有するマウスの腫瘍よりも、シスプラチンと、5−FU+オキサリプラチンの組合せとに対して高い耐性を有することが示された(Kucherlapati, M. H., Lee, K., Nguyen, A. A., Clark, A. B., Hou, H., Jr., Rosulek, A., Li, H., Yang, K., Fan, K., Lipkin, M., Bronson, R. T., Jelicks, L., Kunkel, T. A., Kucherlapati, R., and Edelmann, W. (2010) Gastroenterology 138, 993-1002 e1001)。興味深いことに、かかるミスセンス変異の結果、MMR活性が失われても、DNA損傷に対する感受性は依然として保たれている。これらの結果は、MSH2がMMR活性及び化学感受性に独特の機能を有することを示している(Kucherlapati, M. H., Lee, K., Nguyen, A. A., Clark, A. B., Hou, H., Jr., Rosulek, A., Li, H., Yang, K., Fan, K., Lipkin, M., Bronson, R. T., Jelicks, L., Kunkel, T. A., Kucherlapati, R., and Edelmann, W. (2010) Gastroenterology 138, 993-1002 e1001)。MSH2及びMLH1は、シスプラチン処理後にJNK及びc−Ab1等のアポトーシス経路に関与する種々のタンパク質の活性化に必要であることが示されている(Nehme, A., Baskaran, R., Nebel, S., Fink, D., Howell, S. B., Wang, J. Y., and Christen, R. D. (1999) Br. J. Cancer 79, 1104-1110)。しかし、シスプラチン又はオキサリプラチンに引き起こされるシグナル経路に、MutSα又はMutSβ又はその両方が関与しているかどうかは不明である。しかし、これらの結果から、MSH3の消失により、シスプラチン及びオキサリプラチンへの感受性が亢進することが示されているので、MutSβは主としてDNA損傷修復に関与し、MutSαはかかる修復と細胞死をもたらすシグナル経路の両方に関与している可能性が高い。今後の研究により、DNA損傷修復に、及びこれらの薬剤によって生じる損傷シグナルに果たすMutSα又はMutSβの正確な役割が解明されるであろう。
【0075】
シスプラチン及びオキサリプラチンにたいするMSH3欠損細胞の感受性に関する結果は、Vaisman et al.が以前報告した内容(Vaisman, A., Varchenko, M., Umar, A., Kunkel, T. A., Risinger, J. I., Barrett, J. C., Hamilton, T. C., and Chaney, S. G. (1998) Cancer Res. 58, 3579-3585)と矛盾している。このVaisman et al.の研究は、MSH3欠損HHUA細胞と5番染色体を追加されたMSH3発現HHUAとの間で、上記各薬剤に対する感受性に違いがなかったことを報告した(Vaisman, A., Varchenko, M., Umar, A., Kunkel, T. A., Risinger, J. I., Barrett, J. C., Hamilton, T. C., and Chaney, S. G. (1998) Cancer Res. 58, 3579-3585)。かかる研究では5番染色体の数百個にも及ぶ他の遺伝子の影響を排除することができないため、MSH3発現が必要に応じて選択的に調節されたHCT116結腸癌細胞の同系クローンが使用されている本明細書に記載のデータがより正確なものである。
【0076】
臨床的観点からすると、オキサリプラチンによる治療レジメン、PARP阻害剤、又は特にこれら2つの併用が多数のMSICRC患者にとって有効である可能性が本明細書に示される結果から明らかにされる。CRCに関しては数多くの最近の研究が、ステージIIIのMSI癌患者には5−FUアジュバント化学療法が有効ではないことを示している(Ribic, C. M., Sargent, D. J., Moore, M. J., Thibodeau, S. N., French, A. J., Goldberg, R. M., Hamilton, S. R., Laurent-Puig, P., Gryfe, R., Shepherd, L. E., Tu, D., Redston, M., and Gallinger, S. (2003) N. Engl. J. Med. 349, 247-257;Popat, S., Hubner, R., and Houlston, R. S. (2005) J. Clin. Oncol. 23, 609-618;Sargent, D. J., Marsoni, S., Monges, G., Thibodeau, S. N., Labianca, R., Hamilton, S. R., French, A. J., Kabat, B., Foster, N. R., Torri, V., Ribic, C., Grothey, A., Moore, M., Zaniboni, A., Seitz, J. F., Sinicrope, F., and Gallinger, S. (2010) J. Clin. Oncol. 28, 3219-3226)。さらに、Bertagnolli et alは、ステージIIIのMSI−CRC患者にとり、5−FU及びイリノテカンを含むアジュバント化学療法が有効であると報告したが(Bertagnolli, M. M., Niedzwiecki, D., Compton, C. C., Hahn, H. P., Hall, M., Damas, B., Jewell, S. D., Mayer, R. J., Goldberg, R. M., Saltz, L. B., Warren, R. S., and Redston, M. (2009) J. Clin. Oncol. 27, 1814-1821)、別の研究では、かかるアジュバント治療がステージIIIのMSI−CRC患者に有効ではなかったと報告されている(Tejpar, S., Bosman, F., Delorenzi, M., Fiocca, R., Yan, P., Klingbiel, D., Dietrich, D., Van Cutsem, E., Labianca, R., and Roth, A. (2009) J. Clin. Oncol. 27, 4001)。このように矛盾する結果は、MSI CRCでは、異なる化学感受性を有する患者のサブグループが存在する可能性を示している。例えば、これらの結果から、MSH3プロフィシェントCRCとMSH3欠損CRCという少なくとも2つのサブ集団のMLH1欠損CRCが存在し、それらがそのMSH3の状況に応じ、オキサリプラチン、PARP阻害剤又はそれらの併用に対して異なる応答をすることが示される。
【0077】
MSH3の他にも、いくつかの別のDNA修復リペア遺伝子がMSI癌において変異する。その産物がDSB修復複合体MRE11A−hRAD50−NBS1中で形成されるMRE11A及びRAD50は、MSI癌において最も頻繁に変異する遺伝子の一種である(Hewish, M., Lord, C. J., Martin, S. A., Cunningham, D., and Ashworth, A. (2010) Nat. Rev. Clin. Oncol. 7, 197-208)。培養細胞において、MRE11A及びRAD50における変異がイリノテカン感受性を亢進させることが示されており、それにより培養細胞における二次的DSBが誘導される(Vilar, E., Scaltriti, M., Balmana, J., Saura, C., Guzman, M., Arribas, J., Baselga, J., and Tabernero, J. (2008) Br. J. Cancer 99, 1607-1612;Rodriguez, R., Hansen, L. T., Phear, G., Scorah, J., Spang-Thomsen, M., Cox, A., Helleday, T., and Meuth, M. (2008) Clin. Cancer Res. 14, 5476-5483)。これらの結果から、MSH3欠損により、イリノテカンの活性代謝物であるSN−38に対して細胞が感作されたことが示される(データは示さず)。さらに、MSI癌においてしばしば変異する別の遺伝子であるホスファターゼ及びテンシンホモログが消失すると、HR修復の非効率性によりPARP阻害剤に対して細胞が感作されることが示されている(Mendes-Pereira, A. M., Martin, S. A., Brough, R., McCarthy, A., Taylor, J. R., Kim, J. S., Waldman, T., Lord, C. J., and Ashworth, A. (2009) EMBO Mol. Med. 1, 315-322;McEllin, B., Camacho, C. V., Mukherjee, B., Hahm, B., Tomimatsu, N., Bachoo, R. M., and Burma, S. (2010) Cancer Res. 70, 5457-5464)。よって、DSB修復に関与するこれらの遺伝子又はタンパク質を分析することが、MSI癌患者に対する治療成果を予測することに役立つ可能性がある。MSI癌における薬剤療法の予測マーカーを実証する臨床研究が必要とされる。
【0078】
本発明者らは既に、MSH3発現の消失によりEMAST及びMSIが低レベルの表現型が生じ、MSH3発現の局所的消失が散発性CRC組織におけるEMASTと関連していたことを明らかにした(Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。さらに、MSIが低レベルのCRCの殆どとMSS腫瘍の一部とがEMASTを示したが、これは、かかる組織においてMSH3欠損が起きたことを示唆している(Haugen, A. C., Goel, A., Yamada, K., Marra, G., Nguyen, T. P., Nagasaka, T., Kanazawa, S., Koike, J., Kikuchi, Y., Zhong, X., Arita, M., Shibuya, K., Oshimura, M., Hemmi, H., Boland, C. R., and Koi, M. (2008) Cancer Res. 68, 8465-8472)。MSH3欠損は、MLH1欠損CRCの疾患進行と関連している可能性があり(Plaschke, J., Kruger, S., Jeske, B., Theissig, F., Kreuz, F. R., Pistorius, S., Saeger, H. D., Iaccarino, I., Marra, G., and Schackert, H. K. (2004) Cancer Res. 64, 864-870)、MSIが低レベルのCRCでは予後不良であり(Kohonen-Corish, M. R., Daniel, J. J., Chan, C., Lin, B. P., Kwun, S. Y., Dent, O. F., Dhillon, V. S., Trent, R. J., Chapuis, P. H., and Bokey, E. L. (2005) J. Clin. Oncol. 23, 2318-2324;Wright, C. M., Dent, O. F., Newland, R. C., Barker, M., Chapuis, P. H., Bokey, E. L., Young, J. P., Leggett, B. A., Jass, J. R., and Macdonald, G. A. (2005) Gut 54, 103-108)、MSH3の消失がCRCの転移又は再発の促進と関連している可能性が示される。このシナリオでは、MSH3陰性癌細胞集団を有する散発性CRCをプラチナ薬剤若しくはPARP阻害剤、又はそれら両方を用いて治療することにより、疾患進行が抑制される可能性がある。
【0079】
以上より、恐らくDNA二本鎖切断の修復が低減する結果、MSH3欠損細胞がシスプラチン、オキサリプラチン及びPARP阻害剤に感受性を有することが本発明で明らかにされた。これらの知見は、DNA修復及び薬剤感受性におけるMSH3の役割をより良く理解すること、並びにMSH3欠損癌患者に対する治療成果の予測及び改良に貢献する。
【0080】
本明細書において説明されるいかなる実施形態も、任意の方法、キット、試薬、又は本発明の組成物に対して実施することができ、またその逆も成り立つと考えられる。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0081】
本明細書に記載の特定の実施形態は、本発明の限定としてではなく、例示として示されていることが理解されよう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な実施形態において使用することができる。当業者は、本明細書に記載された特定の手順の数々の均等物を認識し、又は慣例的にすぎない実験を用いて確認することができる。そのような同等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、特許請求の範囲に包含される。
【0082】
本明細書中で言及される刊行物及び特許出願は全て、本発明が関連する技術分野における当業者の技術のレベルを示すものである。刊行物及び特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物又は特許出願が、参照により具体的及び個別に組み込まれることが示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
「a」又は「an」という単語の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つ」を意味し得るが、「1又は2以上」、「少なくとも1つ」、及び「1又は2つ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢(alternatives)のみを指すように、又は選択肢が相互排他的であることが明示的に指定されない限り、「及び/又は」を意味するように使用されるが、本開示は、選択肢のみ、並びに「及び/又は」を指す定義に対応する。本出願全体にわたり、値が、デバイス、その値を決定するために使用されている方法、又は試験対象間に存在する変動に固有の誤差の変動を含むことを示すために、「約」という用語が使用される。
【0084】
本明細書及び特許請求の範囲において、「含む(comprising)」(並びにその任意の形、例えば「comprise」及び「comprises」)、「有する(having)」(並びにその任意の形、例えば「have」及び「has」)、「含む(including)」(並びにその任意の形、例えば「includes」及び「include」)、又は「含有する(containing)」(並びにその任意の形、例えば「contains」及び「contain」)という単語は、包含的又は非制限的であり、列挙されていない追加の要素又は方法ステップを除外しない。
【0085】
本明細書中、「又はそれらの組合せ」という用語は、その用語に先行する列挙された項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを含むことを意図し、具体的な文脈において順番が重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABもまた含むことを意図する。引き続きこの例において、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等の、1又は2以上の項目又は用語の反復を含有する組合せが、明示的に含まれる。典型的には、文脈から別の意味が明らかでない限り、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限はないことが、当業者に理解される。
【0086】
本明細書中、近似値を表す語句、限定されないが例えば「約」、「実質的」又は「実質的に」という語句は、そのように修飾した場合、必ずしも絶対又は完全ではない状態であると理解されるが、かかる状態が存在していると当業者が保証するには十分近いとみなされる。記載の変動範囲は、変化がどの程度大きいかにより左右され、かかる語句で修飾されていない特徴に要求される特徴及び能力が依然として修飾された特徴にも備わっていると当業者が認識するものでなければならない。前述の議論によるものの、一般に、本明細書における数値を「約」などの近似値を示す語句で修飾する場合、記載の数値より少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%変動する。
【0087】
本明細書で開示され、請求される組成物及び/又は方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験をせずに作成及び実行することができる。本発明の組成物及び方法は、好ましい実施形態について記載されているが、当業者にとっては、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物及び/又は方法、並びに方法のステップ又は一連のステップを変化させ得ることは明らかであろう。当業者にとって明らかなかかる類似の代替物及び変更はすべて添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神、範囲及び概念に含まれる。
【0088】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の腺癌のリスクを有する患者或いは1又は2以上の腺癌と診断された患者における治療レジメンの有効性を予測する方法において、
前記患者から得、腺癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び
前記患者細胞におけるMSH3総発現の測定に基づき、前記患者を治療するための抗腫瘍剤を用いる前記治療レジメンの有効性を予測するステップであって、正常細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに抗腫瘍剤療法に対する応答素因が示され、前記療法が前記患者に有効量の前記抗腫瘍剤を投与することを含むステップを含む、方法。
【請求項2】
腺癌が、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、膀胱癌、膣癌、乳癌、食道癌、膵臓癌、及び胃癌からなる群から選択される固形腫瘍を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
腺癌がCRCである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
MSH3総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
抗腫瘍剤が、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、テモゾロミド、トポテカン、及び電離放射線からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
抗腫瘍剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される鎖間架橋剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
抗腫瘍剤が、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者を治療する方法において、
前記患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び
前記患者細胞におけるMSH3総発現の測定に基づいて前記患者を治療するための抗腫瘍剤を用いる治療レジメンの有効性を予測するステップであって、
正常結腸直腸細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに抗腫瘍剤療法に対する応答素因が示され、
前記療法が前記患者に有効量の前記抗腫瘍剤療法を投与することを含むステップを含む、方法。
【請求項10】
MSH3総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
抗腫瘍剤が、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、テモゾロミド、トポテカン、及び電離放射線からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
抗腫瘍剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される鎖間架橋剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
抗腫瘍剤が、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者に対する癌治療法を選択する方法において、
前記患者のMSH3総発現レベルを測定するステップ、及び抗腫瘍剤を用いて前記患者を治療するための抗腫瘍剤治療の有効性を予測するステップであって、前記MSH3総発現レベルが減少しているときにDNA架橋剤が前記患者にとって適切な療法であることが示されるステップを含む、方法。
【請求項16】
MSH3総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
抗腫瘍剤が、1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロフォスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、テモゾロミド、トポテカン、及び電離放射線からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
抗腫瘍剤が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フロクマリン、及びソラレンからなる群から選択される鎖間架橋剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
抗腫瘍剤が、オラパリブ、イソインドリノン誘導体、ベリパリブ、イニパリブ、及び4−メトキシ−カルバゾール誘導体からなる群から選択されるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
患者を癌治療法の臨床試験用のサブグループに分類する方法において、
前記患者から得、癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び
前記患者を治療するための候補薬剤を用いる療法の有効性を予測するステップであって、
正常細胞におけるMSH3発現に比べて前記患者細胞におけるMSH3総発現が減少しているときに候補薬剤を用いる療法に対する応答素因が示され、
前記療法が患者に有効量の前記候補薬剤を投与することを含み、MSH3発現レベルにより前記患者を臨床試験用のサブグループに分類できるステップを含む、方法。
【請求項22】
癌細胞が、固形腫瘍に存在し、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌、精巣癌、膀胱癌、膣癌、乳癌、食道癌、膵臓癌、及び胃癌からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
癌細胞が結腸直腸癌細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
MSH3総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
候補薬剤が遺伝毒性剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
候補薬剤がポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
患者を結腸直腸癌のサブグループに分類する方法において、
前記患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップ、及び
正常結腸直腸細胞におけるMSH3発現と比べたときの前記患者細胞におけるMSH3総発現の変化に基づいて結腸直腸癌のステージを予測するステップを含む、方法。
【請求項29】
結腸直腸癌のリスクがある患者又は結腸直腸癌と診断された患者を治療する方法において、
前記患者から得、結腸直腸癌細胞であることが疑われる細胞におけるMSH3総発現を測定するステップであって、MSH3総発現が変化しているときに、1又は2以上のDNA架橋剤を用いる療法に対する応答素因が示されるステップ、
結腸直腸癌細胞におけるMSH3発現を減少させるのに十分な量の治療有効量のDNA架橋剤を投与するステップ、及び
前記患者におけるMSH3総発現の継続的減少を測定するステップを含む、方法。
【請求項30】
MSH3遺伝子発現を伴う疾患状態の治療に有用であると考えられる候補薬剤を評価するための臨床試験を行う方法において、以下のステップを含む方法。
a)患者グループから得た結腸直腸癌を有することが疑われる組織におけるMSH3発現レベルを測定するステップ;
b)患者の第1サブグループに候補薬剤を投与し、患者の第2サブグループに偽薬を投与するステップ;
c)前記候補薬剤又は前記偽薬を投与した後にステップa)を繰り返すステップ;及び
d)前記候補薬剤により、MSH3発現減少を示す結腸直腸細胞の数が、前記患者の第2サブグループで生じる低減と比べて統計的に有意に低減されるか否かを測定するステップであって、統計的に有意に低減していることによって前記候補薬剤が前記疾患状態を治療するのに有用であることが示されるステップ
【請求項31】
哺乳動物の結腸直腸癌が、結腸直腸癌の治療のためのDNA損傷剤に対して耐性又は応答性である可能性を測定する方法において、
前記癌から得た生体試料におけるMSH3総発現の減少を調べるステップ、及び
前記結腸直腸癌が前記DNA損傷剤に対して応答性を示す又は増強された感受性を有すると同定するステップであって、前記生体試料におけるMSH3の発現又は活性の減少が前記DNA損傷剤に対する応答性の指標となるステップ
を含む方法。
【請求項32】
結腸直腸癌の疾患進行のバイオマーカーにおいて、前記バイオマーカーがMSH3であり、患者から得た結腸直腸癌細胞におけるMSH3総発現が、正常結腸直腸癌細胞又は同じ患者からより早い時期に得た結腸直腸癌細胞におけるMSH3発現と比べて減少していることが結腸直腸癌の疾患進行の指標となる、バイオマーカー。
【請求項33】
MSH3総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項32に記載のバイオマーカー。
【請求項34】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項32に記載のバイオマーカー。
【請求項35】
MSH3の差次的発現レベルを測定するためのバイオマーカー検出試薬と、結腸直腸癌のリスクの診断における使用のためのインストラクションとを含む結腸直腸癌診断用のキット。
【請求項36】
結腸直腸のリスクを有する患者から得た試料におけるMSH3 mRNA及びMSH3タンパク質の両方の発現レベルが正常対象に比べて有意に減少している、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
ヒト対象における結腸直腸癌進行を診断又は検出する方法において、
結腸直腸癌に罹患していることが疑われるヒト対象を同定するステップ、
前記対象から1又は2以上の生体試料を得るステップであって、前記生体試料が、組織試料、糞便試料、細胞ホモジネート、及び を含む1又は2以上の生体液からなる群から選択されるステップ、
前記対象の前記生体試料から得た1又は2以上の細胞におけるMSH3総発現パターンを測定するステップ、並びに
結腸直腸癌に罹患していることが疑われる前記対象の前記生体試料からのMSH3の総発現パターンと、正常対象の生体試料からのMSH3の総発現パターンとを比較するステップであって、前記正常対象が結腸直腸癌に罹患していない健常な対象であり、前記対象の前記生体試料におけるMSH3総発現パターンの減少が、結腸直腸癌の存在、発症リスク、又はその両方の指標となるステップ
を含む方法。
【請求項38】
MSH3の総発現レベルを測定するステップが、腺癌細胞であることが疑われる細胞を、MSH3タンパク質の発現、MSH3 mRNA核酸の発現又はその両方について分析することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
MSH3 mRNA、MSH3タンパク質、又はその両方の発現レベルの有意な減少が、湿潤性結腸直腸癌の存在、発症リスク、又はその両方の指標となる、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
個体から得たMSH3核酸又はMSH3核酸の一部からのMSH3総発現レベルを測定するステップが、質量分析、ローリングサークル増幅、免疫組織化学分析、対立遺伝子特異的プローブ又は抗体プローブを用いるハイブリダイゼーション、或いはそれらの組合せ又は改変法を行うことを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
結腸直腸癌のリスクを有する又は結腸直腸癌に罹患している患者を治療すること、結腸直腸癌のリスクを有する又は結腸直腸癌に罹患している患者のためにDNA架橋剤療法を選択すること、患者を結腸直腸癌のサブグループ又は結腸直腸癌治療法の臨床試験用のサブグループに分類すること、結腸直腸癌治療レジメンに対する耐性又は応答性を測定すること、結腸直腸癌の診断用キットを開発すること、或いはそれらの組合せのために用いる、請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−165736(P2012−165736A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157861(P2011−157861)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年2月1日、http://www.jbc.org/content/286/14/12157にてオンライン公開
【出願人】(509004712)ベイラー リサーチ インスティテュート (38)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
【Fターム(参考)】