MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法、システムおよび装置
MSn質量分析計においてイオンを多重化するための方法および装置を提供する。イオンは、関心のイオン群であって、MSn質量分析計の空間電荷制限を下回るイオン群を生成するようにフィルタリングされる。イオン群の少なくとも一部分は、断片化したイオン群を形成するように断片化される。断片化した群の少なくとも一部分は、質量分析のために、断片化した群の複数の部分を連続的に選択することができるように貯蔵される。断片化した群の複数の部分のそれぞれは、質量分析の前に、連続的に選択され、再断片化される。いったん断片化した群の複数の部分のそれぞれが断片化されると、断片化した群の複数の部分のそれぞれは、質量分析を介して分析される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(分野)
本明細書は、概して、質量分析に関し、具体的には、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(導入部)
MSn(またはMSn)は、関心の化合物に対するマルチレベル断片化経路に基づいて構造/定量的情報を抽出する、質量分析技法である。MSnは、概して、以下のように行われる。関心のイオンを含有する質量スペクトル領域が選択され、残りのイオンがフィルタリングして取り除かれる。残りの関心のイオンが断片化される。1つの関心のイオンが選択される一方で、残りのイオンがフィルタリングして取り除かれる。関心の断片が断片化され、2次断片のスペクトルおよび/または特定2次断片の強度が記録される。順序(フィルタリング・断片)は、各レベルの断片化によるさらなる断片生成を得るように継続し、イオンの構造に関する新しい情報を潜在的に提供することができる。しかしながら、フィルタリングの各ステップが、典型的に10から100という因数のイオン電流の低減につながり、低感度をもたらすため、高レベルMSn分析はめったに実践されない。MS−MSおよびMSn多重化がイオン利用を向上させることができる一方で、多重化を伴うイオンの連続断片化は、より長い分析サイクル、および1次イオンの空間電荷の増加につながる。質量分析計の空間電荷制限を超過した場合は、不正確な結果につながる。したがって、このアプローチでは、空間電荷を制御するために1次イオン電流を減衰させなければならず、イオン信号の低減を通した器具効率の損失をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書の第1の局面は、MSn質量分析計においてイオンを多重化するための方法を提供する。方法は、関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップを含み、イオン群は、MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る。方法はさらに、断片化したイオン群を形成するように、イオン群の少なくとも一部分を断片化するステップを含む。方法はさらに、質量分析のために、断片化した群の複数の部分を連続的に選択することができるように、断片化した群の少なくとも一部分を貯蔵するステップを含む。方法はさらに、質量分析の前に、断片化した群の複数の部分のそれぞれを連続的に選択し、再断片化するステップを含む。方法はさらに、いったん断片化した群の複数の部分のそれぞれが断片化されると、質量分析を介して、断片化した群の複数の部分のそれぞれを分析するステップを含む。方法はさらに、断片化した群の複数の部分のそれぞれの少なくとも一部が、所与の回数で再断片化されるように、分析するステップの前に、断片化した群の複数の部分のそれぞれについて、貯蔵するステップと、連続的に選択し、再断片化するステップとを、所与の回数で繰り返すステップを含むことができる。貯蔵するステップは、MSn質量分析計のイオン経路に沿って、断片化した群を後に進行させるステップを含むことができる。
【0004】
連続的に選択し、再断片化するステップは、質量分析計のイオン経路に沿って、イオンの前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含むことができる。
【0005】
連続的に選択し、再断片化するステップは、MSn質量分析計を通して、断片化した群の複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を選択的に移動させるステップを含むことができ、選択的移動は、断片化した群の複数の部分のそれぞれの所与の質量範囲を選択するステップを含むことができる。
【0006】
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップは、イオンの所与の質量範囲に基づいてイオンをフィルタリングするステップを含むことができる。
【0007】
本明細書の第2の局面は、多重化MSn質量分析計を提供する。多重化MSn質量分析計は、イオンを生成するためのイオン源を含む。多重化MSn質量分析計はさらに、関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするための、イオン源に接続されるフィルタモジュールを備え、イオン群は、MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る。多重化MSn質量分析計はさらに、少なくとも関心のイオン群を貯蔵するための、フィルタモジュールに接続される貯蔵モジュールであって、断片化および質量分析のために、少なくとも関心のイオン群の複数の部分を連続的に選択するためにさらに使用可能である、少なくとも1つの貯蔵モジュールを備える。多重化MSn質量分析計はさらに、少なくとも1つの貯蔵モジュールにおいて連続的に選択されたイオンを断片化するための、貯蔵モジュールに接続される断片化モジュールを含む。多重化MSn質量分析計はさらに、質量分析を介して断片化したイオンを分析するための、断片化モジュールに接続される質量分析モジュールを備える。
【0008】
貯蔵モジュールおよび断片化モジュールは、質量分析モジュールによる分析の前に、少なくとも各一部が所与の回数で断片化されるように、貯蔵モジュールおよび断片化モジュールのそれぞれの間で、複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を所与の回数で前後に移動させるために使用可能となり得る。断片化モジュールから貯蔵モジュールまでの少なくとも各一部の移動は、非選択的に発生することができ、貯蔵モジュールから断片化モジュールまでの少なくとも各一部の移動は、選択的に発生することができる。貯蔵モジュールはさらに、関心のイオン群が断片化モジュールへとそこを通過するために使用可能となり得る。少なくとも1つの貯蔵モジュールは、フィルタリングモジュールを備えることができる。多重化MSn質量分析計はさらに、イオン源と貯蔵モジュールとの間に位置する第2の貯蔵モジュールであって、イオン貯蔵と、断片化および質量分析のためにその中に貯蔵されたイオン群の複数の部分の連続的選択とのために、使用可能な第2の貯蔵モジュールを備えることができる。第2の貯蔵モジュールはさらに、イオン源からのイオンが貯蔵モジュールへとそこを通過することを可能にするために使用可能となり得る。第2の貯蔵モジュールおよび貯蔵モジュールは、貯蔵モジュールに貯蔵されたイオンを第2の貯蔵モジュールに移動させるために使用可能となり得る。
【0009】
断片化モジュールはさらに、断片化したイオンを貯蔵するために使用可能となり得る。
【0010】
貯蔵モジュールおよび断片化モジュールのうちの少なくとも1つは、その中に位置するイオンの残りの部分を廃棄するために使用可能となり得る。
【0011】
多重化MSn質量分析計はさらに、貯蔵モジュールの中の関心のイオン群を貯蔵する前に、関心のイオン群を断片化するための、貯蔵モジュールと第2の断片化モジュールとの間に位置する第2の断片化モジュールを備えることができる。
【0012】
多重化MSn質量分析計はさらに、第2の断片化モジュールと貯蔵モジュールとの間に位置する、所与の数の通過/貯蔵モジュールを備えることができ、各通過/貯蔵モジュールは、断片化したイオンの所与の生成を貯蔵するために使用可能であり、各通過/貯蔵モジュールは、貯蔵モジュールへのそれを通るイオンの非選択的移動のために使用可能であり、さらに、貯蔵モジュールから第2の断片化チャンバへの非選択的移動のために使用可能である。
【0013】
イオン源は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、電子衝撃イオン源、MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0014】
断片化モジュールは、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、および光断片化のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0015】
貯蔵モジュールは、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および移動度分離イオントラップのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0016】
質量分析モジュールは、扇形電界質量分析器、飛行時間分析器、四重極質量分析器、イオントラップ、四重極イオントラップ、線形四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、TOF(飛行時間)分析器、およびFT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0017】
フィルタモジュールは、四重極質量フィルタ、磁場質量フィルタ、イオン移動度フィルタ、およびイオントラップ質量フィルタうちの少なくとも1つを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
当業者であれば、以下で説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、決して出願者の教示の範囲を限定することを目的としない。
【図1】図1は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図2】図2は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法を描写する。
【図3】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図4】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図5】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図6】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図7】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図8】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図9】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図10】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図11】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図12】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図13】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図14】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図15】図15は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100であって、コンピュータデバイス105と通信している多重化MSn質量分析計101を備えるシステム100を描写する。一般に、コンピュータデバイス105は、コンピュータデバイス105のメモリ112に貯蔵することができ、コンピュータデバイス105の処理ユニット114によって処理することができる、アプリケーション110を処理することによって、質量分析計101の動作を制御する。コンピュータデバイス105は、適宜、制御信号を質量分析計101の各要素に伝送し、例えば、コンピュータデバイス105および質量分析計101のそれぞれにおけるインターフェースおよびコンピュータバス構造を介して、質量分析計101の動作を制御する。実際に、質量分析計101の要素のそれぞれは、それらの動作を制御することができるように、制御信号を受け取り、それに応じて応答するために使用可能であることが、以下の説明で理解される。いくつかの非限定的実施形態では、質量分析計101は、コンピュータデバイス105を備える。
【0020】
非限定的実施形態では、質量分析計101は、フィルタモジュール122に接続されるイオン源120を備える。イオン源120は、例えば、イオン群を生成するように、イオン源120に導入されるサンプルをイオン化することによって、質量分析用のイオンを生成するために使用可能である。さらに、イオン源120は、概して、イオン群をフィルタモジュール122に伝達するために使用可能である。イオン源120は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、または電子衝撃イオン源(MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源等のパルスイオン源を含むが、それらに限定されない)を含むが、それらに限定されない、任意の好適なイオン源技術を含むことができる。しかしながら、他の種類のイオン源技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0021】
フィルタモジュール122は、概して、質量分析用のイオンの質量範囲を選択する、および/または、以下で説明される、質量分析計101の断片化および/または貯蔵モジュールの空間電荷制限を下回るイオンの全空間電荷を低減するために、イオン源120からイオンを受け取り、空間、時間、およびエネルギーのうちの少なくとも1つにおいてイオンをフィルタリングするために使用可能である。フィルタモジュール122は、四重極質量フィルタ、イオントラップに基づいた質量フィルタ、TOF(飛行時間)に基づいた質量フィルタ、または磁場質量フィルタを含むが、それらに限定されない、任意の好適な質量フィルタを含むことができる。しかしながら、他の種類の質量フィルタが当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。実際に、概して、関心の質量範囲を選択し、空間電荷を低減するように、イオン源120からイオンをフィルタリングすることによって、1次イオンビーム(すなわち、イオン源120によって生成されるイオン)の減衰のステップが排除され、質量分析計101の効率が増加させられる。さらに、この空間電荷の標的化低減は、以下で説明される、質量分析モジュール130において記録される質量スペクトルの質に影響を及ぼす。言い換えれば、フィルタリングは、質量分析計101における空間電荷制限に対処するように発生し、正味の結果は、以下で説明されるように、空間電荷が質量分析計の他のモジュールのうちのいずれも圧倒しないような、質量分析計101におけるより少ないイオンである。さらに、断片化および分析の前に関心の質量範囲を選択することによって、フィルタリングしたイオンから抽出される後続の情報は、フィルタリングが発生しない場合よりも詳細となり得る。
【0022】
質量分析計101はさらに、フィルタモジュール122に接続される第1の断片化モジュール124であって、フィルタモジュール122からイオンを受け取り、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、光断片化を含むが、それらに限定されない、任意の好適な断片化技術を使用してイオンを断片化するために使用可能な第1の断片化モジュール124を備える。しかしながら、他の種類の断片化技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。断片化がガスとの衝突を介して発生する実施形態では、第1の断片化モジュール124は、イオンの断片化を達成するためのガスの入力を備えることができる。
【0023】
質量分析計101はさらに、第1の断片化モジュール124に接続される貯蔵/多重化モジュール126であって、第1の断片化モジュール124から断片化したイオンを受け取り、断片化したイオンを貯蔵するために使用可能な貯蔵/多重化モジュール126を備える。貯蔵/多重化モジュール126は、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、および/または円筒形イオントラップを含むが、それらに限定されない、任意の好適なイオン貯蔵技術を含むことができる。しかしながら、他の種類の貯蔵技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。貯蔵/多重化モジュール126はさらに、残りの部分が貯蔵/多重化モジュール126内に貯蔵されたままである間に、以下で説明される他のモジュールにおいて、質量分析のために貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵された断片化したイオンの複数の部分の連続的選択および移動のために、使用可能である。さらなる分析のための選択した部分の連続的選択および移動は、多重化としても知られている。多重化設定は、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および/または移動度分離を含むことができるが、それらに限定されない。しかしながら、他の種類の多重化技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0024】
質量分析計101はさらに、貯蔵/多重化モジュール126に接続される第2の断片化モジュール128を備え、第2の断片化モジュール128は、上記で説明されるように、第1の断片化モジュール124と機能が実質的に同様となり得る。第2の断片化モジュール128は、貯蔵/多重化モジュール126から連続的に選択され、移動させられると、断片化したイオンの複数の部分のそれぞれを受け取り、質量分析のために断片化したイオンの複数の部分のそれぞれを断片化するために使用可能である。
【0025】
質量分析計101はさらに、第2の断片化モジュール128に接続される質量分析モジュール130を備える。質量分析モジュール130は、いったん断片化したイオンの複数の部分のそれぞれが第2の断片化モジュール128の中で断片化されると、それらに質量分析を行うために使用可能である。質量分析モジュール130はさらに、分析および貯蔵のために、質量分析データをコンピュータデバイス105に出力するために使用可能である。質量分析モジュール130は、イオントラップ、四重極イオントラップ、TOF分析器、FT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器、扇形電界質量分析器、四重極質量分析器、四重極イオントラップ、および線形四重極イオントラップ等の質量分析器を含むが、それらに限定されない、任意の好適な質量分析技術を含むことができる。しかしながら、他の種類の質量分析技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0026】
質量分析計101の要素のそれぞれは、概して、イオン源120において生成されるイオンを、フィルタリングのためにフィルタモジュール122に移動させることができ(矢印150によって表されるように)、フィルタモジュール122からのイオンを、断片化のために第1の断片化モジュール124に移動させることができ(矢印152によって表されるように)、第1の断片化モジュール124からの断片化したイオンを、貯蔵のために貯蔵/多重化モジュール126に移動させることができるように(矢印154によって表されるように)、相互接続される。次いで、断片化したイオンの複数部分を、選択的に選択し、断片化のために第2の断片化モジュール128に移動させ(矢印156によって表されるように)、次いで、質量分析のために質量分析モジュール130に移動させることができる(矢印158によって表されるように)。一般に、第1の断片化モジュール124の中で断片化される(すなわち、第2の断片化モジュール128の中での後続断片化を伴わずに)イオンに行われるMS分析は、MS−MS(MS2)分析を含む。第2の断片化モジュール128の中で断片化される(すなわち、第1の断片化モジュール124の中での第1の断片化の後に)イオンに行われるMS分析は、MS3分析を含む。
【0027】
いったん断片化したイオンの各部分が選択され、第2の断片化チャンバ128に移動させられると、断片化および質量分析のために、断片化したイオンのさらなる部分を順に選択することができるように、断片化したイオンの残りの部分は、貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵されたままである。貯蔵/多重化モジュール126によって連続的に選択される各部分は、他の部分の同じ質量範囲または異なる質量範囲内にあり得る。さらに、選択される各部分は、質量分析における所望の感度を提供するために好適なサイズを有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、各後続断片化ステップ中に、断片化したイオン群全体のフィルタリングがなく、したがって、イオン電流の必要以上の損失がない。他の実施形態では、各後続断片化ステップ中に、(例えば、断片化したイオン群全体の大部分である、群全体の一部を選択するように)断片化したイオン群全体の限定されたフィルタリングがあり得るため、イオン電流の有意な損失がない。さらなる実施形では、例えば、断片化したイオン群全体の限定された部分である、群全体の一部を選択するように、断片化したイオンの大幅なフィルタリングがあり得るため、分析のために限定数の構成要素を選択する。後者の実施形態は、概して、分析ステップの数を低減することによって、総分析時間を低減するが、依然として、複数の構成要素が分析のために選択されることを可能にする。
【0028】
いくつかの実施形態では、イオン源120とフィルタモジュール122との間で、イオンをゲート制御することができる。他の実施形態では、フィルタモジュール122と第1の断片化モジュール124との間で、イオンをゲート制御することができる。そのようなゲーティングは、概して、入力MS2イオン(すなわち、イオン源からのイオン、および/または、さらに、第1の断片化したイオン群が貯蔵/多重化モジュール126に移動させられた後に、第1の断片化モジュール124の中で断片化されているイオン)による貯蔵/多重化モジュール126の汚染を防止する。
【0029】
さらに、質量分析計101は、真空ポンプ、真空コネクタ、電力供給部、電気コネクタ、電極等を含むが、それらに限定されない、質量分析計101を通したイオンの移動を可能にするための任意の数の付加的な要素を備えることができることが理解される。
【0030】
さらなる実施形態では、質量分析計101がN個の断片化チャンバを備える場合に、MSN+1分析を行うことができるように、質量分析計101は、第2の断片化モジュール128と質量分析モジュール130との間に位置する、さらなる複数対の貯蔵/多重化および断片化モジュールを含むことができる。
【0031】
ここで、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法200を描写する図2に注目する。方法200の説明を支援するために、方法200はシステム100を使用して行われると仮定される。さらに、方法200の以下の考察は、システム100およびその種々の構成要素のさらなる理解につながる。特に、アプリケーション110が処理ユニット114によって処理される時に、システム100を使用して方法200を行うことができることが理解される。しかしながら、システム100および/または方法200は、変化させることができ、相互と併せて本明細書で論議されるように正確に稼働する必要はなく、そのような変化例は、本実施形態の範囲内であることを理解されたい。
【0032】
方法200では、好適なサンプルがイオン源120に導入されており、好適なサンプルは、分析のためのイオンを生成するようにイオン源120によってイオン化されていることが仮定される。
【0033】
ステップ205では、図3(類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である)で描写されるように、イオン源からのイオンが、関心のイオン群Gを生成するように、フィルタモジュール122を介してフィルタリングされる。一般に、イオンは質量選択によってフィルタリングされ、イオン群Gは関心の質量範囲である。断片化ステップ(下記参照)を行う前にイオンをフィルタリングすることによって、質量分析計101内の空間電荷が、質量分析計101の(例えば、質量分析計101の後続のモジュールの)空間電荷制限を下回るまで低減される。したがって、フィルタリングが発生しない場合に関して、空間電荷の影響が低減される。
【0034】
ステップ205はさらに、断片化のためにイオン群Gを第1の断片化モジュール124に移動させるステップ(矢印152)を含む。
【0035】
ステップ210では、図3で描写されるように、イオン群Gの少なくとも一部分が、イオンの断片化した群Fを形成するように断片化される。例えば、イオン群Gは、イオンの断片化した群Fを形成するように、第1の断片化モジュール124によって断片化することができる。次いで、イオンの断片化した群Fは、類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である図4で描写されるように、貯蔵/多重化モジュール126に移動させられる(矢印154)。
【0036】
ステップ220では、断片化した群Fは、質量分析のために、断片化した群Fの複数の部分を連続的に選択することができるように貯蔵される。例えば、断片化した群Fは、概して、図4で描写されるように、任意の好適な貯蔵技法を介して(例えば、上記で説明されるようなイオントラップ等を介して)貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵される。
【0037】
ステップ230では、断片化した群Fの一部分Pが、質量分析のために選択され、図5(類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である)で描写されるように、第2の断片化モジュール128に選択的に移動させられる(矢印156)。例えば、貯蔵/多重化モジュール126は、概して、第2の断片化モジュール128へのイオンの質量選択的移動のために使用可能であるため、部分Pは、断片化した群Fの任意の所望の/好適な質量範囲となり得る。さらに、次いで、断片化した群Fは、量Pだけ低減され、図5で描写されるように、断片化したイオンFの残りの部分F'を残す。いくつかの実施形態では、部分Pを質量分析モジュール130に移動させることによって、質量分析分析(MS2)を部分Pに行うことができる。
【0038】
しかしながら、MS3が所望される場合、ステップ240では、部分Pが、部分PFを生成するように、第2の断片化チャンバ128の中で断片化され、ステップ250では、断片化した部分PFが、質量分析のために質量分析モジュール130に移動させられ(矢印158)、後に、分析および貯蔵のためにコンピュータデバイス110に転送される質量分析データを生じる。ステップ240および250は、類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である、図6で描写されている。
【0039】
ステップ260では、貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵された断片化した群F(例えば、残りの部分F')が除去しているかどうかが判定される。そうでなければ、ステップ280では、断片化した群Fの別の部分(例えば、残りの部分F'の一部分)が質量分析のために順に選択されるかどうかが判定される。そうであれば、ステップ230乃至260が、断片化した群Fの別の部分で繰り返される。例えば、アプリケーション110は、断片化した群Fの所与の数の部分に質量分析を受けさせるように構成することができる。連続的に選択された部分の数が所与の数以下である場合、ステップ230乃至260が繰り返される。そうでなければ、連続的に選択された部分の数は所与の数よりも多く、次いで、ステップ290では、例えば、さらなる断片化または分析を伴わずに、残りの部分を第2の断片化モジュール128および質量分析計モジュール130に通過させることによって、残りの部分F'が廃棄される。次いで、方法200は、ステップ295で終了する。代替として、残りの部分は、貯蔵/多重化モジュール126および/または第2の断片化チャンバ128内の電極の中へイオンビームを誘導することによって、廃棄することができる。
【0040】
代替として、断片化した群Fの別の部分が選択されることを質量分析データが示す場合に、ステップ230乃至260が繰り返される。そのような決定の規準は、アプリケーション110内で事前構成する、および/またはシステム100のユーザによって作製することができる。
【0041】
したがって、断片化した群Fの複数の部分のそれぞれが、質量分析の前に連続的に選択され、断片化される。さらに、いったん断片化した群Fの複数の部分のそれぞれが断片化されると、断片化した群Fの複数の部分のそれぞれは、質量分析を介して分析される。
【0042】
ステップ260に戻って、断片化した群が除去している場合、ステップ270では、イオン源からのより多くのイオンが生成やフィルタリング等を受けるかどうかが判定される。そうであれば、例えば、質量分析のためにさらなるサンプルを導入することによって、いったんイオン源においてさらなるイオンが生成され、フィルタリングモジュール101においてフィルタリングされると、上記で説明されるように、ステップ210乃至290が繰り返される。そうでなければ、方法200はステップ295で終了する。
【0043】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100aを描写する図7に注目する。システム100aは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100と実質的に同様である。システム100aは、質量分析計101と実質的に同様である質量分析計101aを備え、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aを含む、各断片化モジュールは、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である。したがって、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aのそれぞれは、それぞれ、第1の断片化モジュール124および第2の断片化モジュール128、ならびに貯蔵/多重化モジュール126と同様に、機能的に使用可能である。これは、質量分析計101aが上記で説明されるような方法200を行うことを可能にし、断片化した部分Fが貯蔵モジュールに貯蔵されている間に、第2の断片化した群を生成するように、さらなるイオンを断片化することができ、断片化した群Fが連続的に選択され、断片化され、質量分析を介して分析されている間に、第2の断片化した群は、断片化した群Fとは無関係に第1の断片化/貯蔵モジュール124aに貯蔵されるため、第2の断片化した群は、例えば、断片化した群Fが除去または廃棄された後に、連続的に選択され、断片化し、質量分析を介して分析することができる。
【0044】
これはさらに、断片化および/または分析が質量分析計101aの要素のうちのもう1つで行われている間に、イオンおよび/または断片化したイオンが、第1の断片化/貯蔵モジュール124a、貯蔵/多重化モジュール126、および第2の断片化/貯蔵モジュール128aのうちのいずれかに貯蔵されることを可能にする。そのような貯蔵および断片化等は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110aを介して制御することができる。アプリケーション110aは、アプリケーション110と実質的に同様であるが、アプリケーション110aはさらに、質量分析計101aの複数の要素において質量分析計101aに同時断片化/貯蔵を行わせるために使用可能である。
【0045】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100bを描写する図8に注目する。システム100bは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100と実質的に同様である。システム100bは、質量分析計101aと同様である質量分析計101bを備えるが、第1の断片化/貯蔵モジュール124aと同様の1つだけの断片化/貯蔵モジュール124bと、フィルタモジュール122と断片化/貯蔵モジュール124bとの間に位置する通過/貯蔵/多重化モジュール126bとを備える。通過/貯蔵/多重化モジュール126bは、上記で説明されるような(その中に貯蔵されたイオンの連続選択的移動を含む)貯蔵/多重化モジュール126と同様に、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能であるが、通過/貯蔵/多重化モジュール126bはさらに、断片化のために、フィルタモジュール122からのイオンが断片化/貯蔵チャンバ124bを通過することを可能にするために使用可能である。
【0046】
方法200は、以下の違いを伴って、システム100bを使用して行うことができる。ステップ210では、断片化した群Fを形成するように、イオン源からのイオンが断片化/貯蔵モジュール124bの中で断片化される。この段階で、MS2分析を行うことができる。しかしながら、断片化した群Fは、図8のように、ステップ220における貯蔵のために、通過/貯蔵/多重化モジュール126bへとイオン源120に向かって逆移動させる(すなわち、質量分析計101bのイオン経路に沿って後方に)ことができる(矢印156b)。図9(類似番号を有する類似要素を伴って、図8と実質的に同様である)で描写されるように、ステップ230では、断片化した群の部分Pが選択され、断片化/貯蔵チャンバ124bに戻され、そこで、ステップ240で断片化され(断片化した部分PFを生成する)、MS3分析のために質量分析計モジュール130に移動させられる。
【0047】
付加的な断片化が所望される場合(MSn、n>3)、所望の程度の断片化を達成するために必要な回数で、断片化した群Fを、通過/貯蔵/多重化モジュール126bと断片化/貯蔵モジュール124bとの間で前後に移動させることができる。例えば、断片化した群Fの複数の部分Pのそれぞれの少なくとも一部が所与の回数で再断片化されるように、分析するステップ250の前に、選択するステップ230および断片化するステップ240が、断片化した群Fの複数の部分Pのそれぞれについて所与の回数で繰り返される。したがって、選択するステップ230および断片化するステップ240は、質量分析計101bのイオン経路に沿って、複数の部P分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含む。
【0048】
この幾何学形状は、概して、1つだけの断片化チャンバを使用して、MSnを可能にするように質量分析計101bを通るイオンの逆移動を可能にすることによって、質量分析計101または質量分析計101aに対して、質量分析計101bの構成要素の数を低減する。さらに、イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110bを介して制御することができる。アプリケーション110bは、アプリケーション110と実質的に同様であるが、アプリケーション110bはさらに、質量分析計101aの複数の要素において質量分析計101aに同時断片化/貯蔵を行わせるために使用可能である。
【0049】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100cを描写する図10に注目する。システム100cは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100bと実質的に同様である。システム100cは、質量分析計101bと同様である質量分析計101cを備えるが、イオン源120と断片化/貯蔵モジュール124cとの間に複合フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cを備える(したがって、矢印150および152が組み合わせられている)。断片化/貯蔵モジュール124cは、断片化/貯蔵モジュール124bと実質的に同様である。フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cは、組み合わせられたフィルタモジュール122および通過/貯蔵/多重化モジュール126bと実質的に同じ機能を果たし、さらに、単一構成要素におけるフィルタリングおよび貯蔵を可能にすることによって、質量分析計101、質量分析計101a、および質量分析計101bに対して質量分析計101cの構成要素の数を低減する。質量分析計101bのように、断片化した群Fは、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cにおける貯蔵および連続的選択のために、イオン源120に戻される(矢印156b)。さらに、イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110cを介して制御することができる。アプリケーション110cは、アプリケーション110bと実質的に同様であるが、アプリケーション110bはさらに、必要に応じてフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cにフィルタリングおよび/または貯蔵させるために使用可能である。
【0050】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100dを描写する図11に注目する。システム100dは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100cと実質的に同様である。システム100dは、質量分析計101cと同様の質量分析計101dを備えるが、質量分析計101dは、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cと同様のフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dに順に接続される、通過/貯蔵/多重化モジュール126bと同様の通過/貯蔵モジュール1126に接続されるイオン源120を備える。いくつかの実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、その中に貯蔵されたイオンの連続的選択のために使用可能である。他の実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、その中に貯蔵されたイオンの連続的選択のために使用可能でない。むしろ、これらの実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、フィルタ貯蔵/多重化モジュール126へのその中に貯蔵されたイオンの非選択的移動のために使用可能でない。
【0051】
フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dは、順に質量分析モジュール130に接続される、断片化/貯蔵モジュール124cと同様の断片化/貯蔵モジュール124dに順に接続される。したがって、質量分析計101dの構成要素の配設は、質量分析計101cの構成要素の配設と同様であるが、イオン源120とフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dとの間に位置する通過/貯蔵モジュール1126を伴う。
【0052】
質量分析計101dは、概して、上記で説明されるように、イオンをフィルタリングするように、イオン源120からフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dを通してイオンおよび/または断片化したイオンを移動させるために使用可能であり、フィルタリングしたイオンは、後に断片化/貯蔵モジュール124dに移動させられる(例えば、矢印150d、152d、154d、および158d)。質量分析計101dはさらに、断片化/貯蔵モジュール124dからフィルタ/貯蔵モジュール(矢印1156−1)に、およびフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dから通過/貯蔵モジュール1126(矢印1156−2)に(すなわち、イオン経路に沿って後方に)、イオンおよび/または断片化したイオンを移動させるために使用可能である。さらに、通過/貯蔵モジュール1126、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126d、および断片化/貯蔵モジュール124dのそれぞれは、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である。これは、さらなる断片化および/または質量分析が質量分析計101dの別の要素において発生している間に、質量分析計101dが、通過/貯蔵モジュール1126、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126d、および断片化/貯蔵モジュール124dのそれぞれにイオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵することを可能にする。したがって、断片化および分析が、それぞれ、断片化/貯蔵モジュール124dおよび質量分析モジュール130において発生している間に、イオンおよび/または断片化したイオンを、通過/貯蔵モジュール1126および/またはフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dに貯蔵することができる。さらに、分析が質量分析モジュール130において発生している間に、断片化したイオンを断片化/貯蔵モジュール124dを貯蔵することができる。イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110dを介して制御することができる。アプリケーション110dは、アプリケーション110bと実質的に同様であるが、アプリケーション110dはさらに、必要に応じて通過/貯蔵モジュール1126にイオンを通過/貯蔵させるために使用可能である。
【0053】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100hを描写する図15に注目する。システム100hは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100aと実質的に同様であり、それぞれ、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aと実質的に同様である、第1の断片化/貯蔵モジュール124hおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128hを伴い、かつ貯蔵/多重化モジュール126と実質的に同様である貯蔵/多重化モジュール126hを伴う。しかしながら、第1の断片化/貯蔵モジュール124hと貯蔵/多重化モジュール126hとの間には、通過/貯蔵モジュール1126h−1、1126h−2、1126h−3(概して、通過/貯蔵モジュール1126h、まとめて通過/貯蔵モジュール1126h)が位置し、各通過/貯蔵モジュール1126hは、上記で説明されるような通過/貯蔵モジュール1126と実質的に同様である。さらに、質量分析計101hは、イオン経路に沿って、イオン源120から質量分析モジュール130に(例えば、矢印1500−1514)イオンを移動させるために使用可能であり、貯蔵/多重化モジュール126hから第2の断片化モジュール128hへのイオン移動は選択的に発生する(すなわち、矢印1512、イオンの連続的選択)。質量分析計101hはさらに、所望に応じて非選択的に、イオン経路に沿って第2の断片化/貯蔵チャンバ128hから通過/貯蔵モジュール1126h−1に(すなわち、矢印1516−1522)にイオンを戻すために使用可能である。モジュール間のイオンの移動(選択的および非選択的)、ならびにイオンおよび断片化したイオンの貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110hを介して制御することができる。
【0054】
一般に、第1の断片化モジュール124hによって断片化されるイオン(例えば、MS2用のイオン、またはMS2イオン)は、通過/貯蔵モジュール1126h(矢印1504−1510)を介して、貯蔵/多重化モジュール126hに移動させることができ、そこで、第2の断片化/貯蔵モジュール128hへの断片化したイオンの選択的移動(矢印1512)が発生する。残りのMS2イオンは、イオン経路に沿って、貯蔵のために貯蔵/多重化モジュール126hから通過/貯蔵モジュール1126h−1に(すなわち、矢印1518−1522)戻すことができる。いったんMS2イオンから選択されたイオンが第2の断片化/貯蔵モジュール128hにおいて断片化されると(すなわち、MS3イオン)、それらは、イオン経路に沿って通過/貯蔵モジュール1126h−2に(すなわち、矢印1516−1520)に戻すことができる。しかしながら、その際に、MS3イオンを最初に貯蔵/多重化モジュール126hに戻すことができ、そこで、さらなる断片化のために、イオンのさらに別の一部を選択し、断片化/貯蔵モジュール128hに戻すことができる(すなわち、MS4イオンが生成される)。次いで、MS4イオンは、イオン経路に沿って、貯蔵のために通過/貯蔵モジュール1126h−3に(すなわち、矢印1516−1518)に戻すことができる。次いで、MS2、MS3、MS4イオンのそれぞれは、それぞれ、通過/貯蔵モジュール1126h−1、1126h−2、および1126h−3に貯蔵される。順に、それぞれは、MS4イオンから開始して、所望に応じて、さらなる連続的選択および/断片化のために、貯蔵/多重化モジュール126hに戻すことができる。断片化したイオンの各連続生成に行われる質量分析は、どのようにさらなる質量分析を初期生成に行うことができるかを通知するために使用することができる(すなわち、さらなる分岐生成を作成するように、残りのMS2およびMS3イオンを処理する方法を判定するために、MS4データを使用することができる)。非選択的移動のために使用可能な通過/貯蔵モジュールは、概して、貯蔵/多重化モジュールよりも経済的であるため、複数の貯蔵/多重化モジュールを伴う質量分析計と比べて、費用節約を達成することができる。さらに、断片化したイオンのさらなる生成の貯蔵が所望される場合(例えば、MS5、MS6等)、通過/貯蔵モジュール1126hの数Xが、断片化したイオンのX+1の生成を同時に貯蔵することを可能にするように、さらなる通過/貯蔵モジュール1126hを提供できることが理解される。
【0055】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101eを描写する図12に注目する。質量分析計101eは、質量分析計101cと実質的に同様であるが、イオンは、イオン源120の後に位置するゲート1210を介してゲート制御され、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126の機能性は、第1の四重極1220を介して発生し、断片化/貯蔵モジュール124cの機能性は、第2の四重極1230を介して発生する。したがって、イオンを、第2の四重極1230における断片化のために第1の四重極1220から第2の四重極1230に(矢印1254)移動させ、連続的選択のために第1の四重極1220に戻し(矢印1256)、第2の四重極1230に選択的に戻し(矢印1257)、質量分析モジュール130における分析の前に(矢印1258)断片化することができる。
【0056】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101fを描写する図13に注目する。質量分析計101fは、質量分析計101eと実質的に同様であるが、質量分析計101fは、ゲート1210と第1の四重極1220との間に位置する第3の四重極1340(図13で「四重極0」と標識される)を備える。第3の四重極1340は、通過/貯蔵モジュール1126と同じ機能性で使用可能である。この観点から、質量分析計101fはまた、同様の機能性で、質量分析計101dと実質的に同様である。したがって、イオンを、第3の四重極1324から第1の四重極1220に(矢印1352)に、および第2の四重極1230における断片化のために第1の四重極1220から第2の四重極1230に(矢印1354)を移動させることができる。また、イオンを、質量分析モジュール130における分析の前のさらなる断片化のための、連続的選択および第2の四重極1230への選択的逆移動のために、第1の四重極1220に戻すこともできるし(矢印1356−1)。また、他のイオンおよび他の断片化したイオンの貯蔵および/または断片化が、質量分析計101fの他の構成要素において発生している間に、イオンを、貯蔵のために第1の四重極1220から四重極1340に移動させることもできる(矢印1356−2)。
【0057】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101gを描写する図14に注目する。質量分析計101gは、質量分析計101fと同様に、イオン源120、ゲート、1210、および質量分析モジュール130、および以下で説明される3つの四重極、ならびに、同様に以下で説明されるイオン収集モジュール1410を備える。四重極1420は、ゲート1210に接続され、通過/貯蔵モジュール126bと同様に、イオンを伝達および貯蔵するために使用可能である。四重極1430は、四重極1420に接続され、フィルタモジュール122、貯蔵/多重化モジュール126、および第1の断片化モジュール124の組み合わせと同様に、イオンをフィルタリングし、貯蔵し、断片化するために使用可能である。四重極1430はさらに、生成され、その中に貯蔵された断片化したイオンの複数部分を、連続的に選択し、半径方向噴出を介してイオン収集モジュール1410に移動させるために使用可能である。イオン収集モジュール1410は、連続的に選択され、半径方向噴出を介して四重極1430から移動させられたイオン(すなわち、断片化したイオン)を収集し、イオンを四重極1440に移動させるために使用可能であり、それは、四重極1440が四重極1430と略垂直となることを可能にする。四重極1440は、イオン収集モジュール1410から移動させられたイオンを断片化し、分析のために断片化したイオンを質量分析モジュール130に移動させるために使用可能である。
【0058】
好適なアプリケーションが、質量分析計の各構成要素に所望の機能性を行わせるために使用可能である限り、質量分析計101e−101gのうちのいずれかを、アプリケーション110と同様の好適なアプリケーションの制御下で、システム100−100d、100hに代入することができる。
【0059】
当業者であれば、いくつかの実施形態では、事前にプログラムされたハードウェアまたはファームウェア要素(例えば、特定用途向け集積回路ASIC)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)等)、または他の関連構成要素を使用して、アプリケーション110−110dおよび110hの機能性を実装できることを理解するであろう。他の実施形態では、コンピュータ装置の動作のためのコンピュータ読み取り可能プログラムを記憶する、コードメモリ(図示せず)にアクセスできるコンピュータ装置を使用して、アプリケーション110−110dおよび110hの機能性を達成することができる。コンピュータ読み取り可能プログラムは、固定され、有形であり、かつこれらの構成要素によって直接読み取り可能である、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に記憶することができる(例えば、可撤性ディスケット、CD−ROM、ROM、固定ディスク、USBドライブ)。代替として、コンピュータ読み取り可能プログラムコードは、遠隔で記憶することができるが、伝送媒体上で、ネットワーク(無制限にインターネットを含む)に接続されたモデムまたは他のインターフェースを介して、これらの構成要素に伝送可能となり得る。伝送媒体は、非無線媒体(例えば、光および/またはデジタルおよび/またはアナログ通信回線)または無線媒体(例えば、マイクロ波、赤外線、自由空間光学、または他の伝送スキーム)、あるいはそれらの組み合わせとなり得る。
【0060】
本明細書で使用される項の見出しは、編成目的のためにすぎず、決して本主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0061】
当業者であれば、実施形態を実装するために可能である、さらなる代替実装および修正があり、上記の実装および実施例は、1つ以上の実施形態の例証にすぎないことを理解するであろう。さらに、出願者の教示が種々の実施形態と併せて説明されているが、出願者の教示が種々の実施形態に限定されることは意図されない。逆に、出願者の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替案、修正、および同等物を包含する。
【技術分野】
【0001】
(分野)
本明細書は、概して、質量分析に関し、具体的には、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(導入部)
MSn(またはMSn)は、関心の化合物に対するマルチレベル断片化経路に基づいて構造/定量的情報を抽出する、質量分析技法である。MSnは、概して、以下のように行われる。関心のイオンを含有する質量スペクトル領域が選択され、残りのイオンがフィルタリングして取り除かれる。残りの関心のイオンが断片化される。1つの関心のイオンが選択される一方で、残りのイオンがフィルタリングして取り除かれる。関心の断片が断片化され、2次断片のスペクトルおよび/または特定2次断片の強度が記録される。順序(フィルタリング・断片)は、各レベルの断片化によるさらなる断片生成を得るように継続し、イオンの構造に関する新しい情報を潜在的に提供することができる。しかしながら、フィルタリングの各ステップが、典型的に10から100という因数のイオン電流の低減につながり、低感度をもたらすため、高レベルMSn分析はめったに実践されない。MS−MSおよびMSn多重化がイオン利用を向上させることができる一方で、多重化を伴うイオンの連続断片化は、より長い分析サイクル、および1次イオンの空間電荷の増加につながる。質量分析計の空間電荷制限を超過した場合は、不正確な結果につながる。したがって、このアプローチでは、空間電荷を制御するために1次イオン電流を減衰させなければならず、イオン信号の低減を通した器具効率の損失をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書の第1の局面は、MSn質量分析計においてイオンを多重化するための方法を提供する。方法は、関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップを含み、イオン群は、MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る。方法はさらに、断片化したイオン群を形成するように、イオン群の少なくとも一部分を断片化するステップを含む。方法はさらに、質量分析のために、断片化した群の複数の部分を連続的に選択することができるように、断片化した群の少なくとも一部分を貯蔵するステップを含む。方法はさらに、質量分析の前に、断片化した群の複数の部分のそれぞれを連続的に選択し、再断片化するステップを含む。方法はさらに、いったん断片化した群の複数の部分のそれぞれが断片化されると、質量分析を介して、断片化した群の複数の部分のそれぞれを分析するステップを含む。方法はさらに、断片化した群の複数の部分のそれぞれの少なくとも一部が、所与の回数で再断片化されるように、分析するステップの前に、断片化した群の複数の部分のそれぞれについて、貯蔵するステップと、連続的に選択し、再断片化するステップとを、所与の回数で繰り返すステップを含むことができる。貯蔵するステップは、MSn質量分析計のイオン経路に沿って、断片化した群を後に進行させるステップを含むことができる。
【0004】
連続的に選択し、再断片化するステップは、質量分析計のイオン経路に沿って、イオンの前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含むことができる。
【0005】
連続的に選択し、再断片化するステップは、MSn質量分析計を通して、断片化した群の複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を選択的に移動させるステップを含むことができ、選択的移動は、断片化した群の複数の部分のそれぞれの所与の質量範囲を選択するステップを含むことができる。
【0006】
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップは、イオンの所与の質量範囲に基づいてイオンをフィルタリングするステップを含むことができる。
【0007】
本明細書の第2の局面は、多重化MSn質量分析計を提供する。多重化MSn質量分析計は、イオンを生成するためのイオン源を含む。多重化MSn質量分析計はさらに、関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするための、イオン源に接続されるフィルタモジュールを備え、イオン群は、MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る。多重化MSn質量分析計はさらに、少なくとも関心のイオン群を貯蔵するための、フィルタモジュールに接続される貯蔵モジュールであって、断片化および質量分析のために、少なくとも関心のイオン群の複数の部分を連続的に選択するためにさらに使用可能である、少なくとも1つの貯蔵モジュールを備える。多重化MSn質量分析計はさらに、少なくとも1つの貯蔵モジュールにおいて連続的に選択されたイオンを断片化するための、貯蔵モジュールに接続される断片化モジュールを含む。多重化MSn質量分析計はさらに、質量分析を介して断片化したイオンを分析するための、断片化モジュールに接続される質量分析モジュールを備える。
【0008】
貯蔵モジュールおよび断片化モジュールは、質量分析モジュールによる分析の前に、少なくとも各一部が所与の回数で断片化されるように、貯蔵モジュールおよび断片化モジュールのそれぞれの間で、複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を所与の回数で前後に移動させるために使用可能となり得る。断片化モジュールから貯蔵モジュールまでの少なくとも各一部の移動は、非選択的に発生することができ、貯蔵モジュールから断片化モジュールまでの少なくとも各一部の移動は、選択的に発生することができる。貯蔵モジュールはさらに、関心のイオン群が断片化モジュールへとそこを通過するために使用可能となり得る。少なくとも1つの貯蔵モジュールは、フィルタリングモジュールを備えることができる。多重化MSn質量分析計はさらに、イオン源と貯蔵モジュールとの間に位置する第2の貯蔵モジュールであって、イオン貯蔵と、断片化および質量分析のためにその中に貯蔵されたイオン群の複数の部分の連続的選択とのために、使用可能な第2の貯蔵モジュールを備えることができる。第2の貯蔵モジュールはさらに、イオン源からのイオンが貯蔵モジュールへとそこを通過することを可能にするために使用可能となり得る。第2の貯蔵モジュールおよび貯蔵モジュールは、貯蔵モジュールに貯蔵されたイオンを第2の貯蔵モジュールに移動させるために使用可能となり得る。
【0009】
断片化モジュールはさらに、断片化したイオンを貯蔵するために使用可能となり得る。
【0010】
貯蔵モジュールおよび断片化モジュールのうちの少なくとも1つは、その中に位置するイオンの残りの部分を廃棄するために使用可能となり得る。
【0011】
多重化MSn質量分析計はさらに、貯蔵モジュールの中の関心のイオン群を貯蔵する前に、関心のイオン群を断片化するための、貯蔵モジュールと第2の断片化モジュールとの間に位置する第2の断片化モジュールを備えることができる。
【0012】
多重化MSn質量分析計はさらに、第2の断片化モジュールと貯蔵モジュールとの間に位置する、所与の数の通過/貯蔵モジュールを備えることができ、各通過/貯蔵モジュールは、断片化したイオンの所与の生成を貯蔵するために使用可能であり、各通過/貯蔵モジュールは、貯蔵モジュールへのそれを通るイオンの非選択的移動のために使用可能であり、さらに、貯蔵モジュールから第2の断片化チャンバへの非選択的移動のために使用可能である。
【0013】
イオン源は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、電子衝撃イオン源、MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0014】
断片化モジュールは、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、および光断片化のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0015】
貯蔵モジュールは、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および移動度分離イオントラップのうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0016】
質量分析モジュールは、扇形電界質量分析器、飛行時間分析器、四重極質量分析器、イオントラップ、四重極イオントラップ、線形四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、TOF(飛行時間)分析器、およびFT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器のうちの少なくとも1つを備えることができる。
【0017】
フィルタモジュールは、四重極質量フィルタ、磁場質量フィルタ、イオン移動度フィルタ、およびイオントラップ質量フィルタうちの少なくとも1つを備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
当業者であれば、以下で説明される図面が例証目的のみのためであることを理解するであろう。図面は、決して出願者の教示の範囲を限定することを目的としない。
【図1】図1は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図2】図2は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法を描写する。
【図3】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図4】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図5】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図6】図3〜図6は、非限定的実施形態による、動作中の図1のシステムを描写する。
【図7】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図8】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図9】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図10】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図11】図7〜図11は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【図12】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図13】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図14】図12〜図14は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計を描写する。
【図15】図15は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステムを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100であって、コンピュータデバイス105と通信している多重化MSn質量分析計101を備えるシステム100を描写する。一般に、コンピュータデバイス105は、コンピュータデバイス105のメモリ112に貯蔵することができ、コンピュータデバイス105の処理ユニット114によって処理することができる、アプリケーション110を処理することによって、質量分析計101の動作を制御する。コンピュータデバイス105は、適宜、制御信号を質量分析計101の各要素に伝送し、例えば、コンピュータデバイス105および質量分析計101のそれぞれにおけるインターフェースおよびコンピュータバス構造を介して、質量分析計101の動作を制御する。実際に、質量分析計101の要素のそれぞれは、それらの動作を制御することができるように、制御信号を受け取り、それに応じて応答するために使用可能であることが、以下の説明で理解される。いくつかの非限定的実施形態では、質量分析計101は、コンピュータデバイス105を備える。
【0020】
非限定的実施形態では、質量分析計101は、フィルタモジュール122に接続されるイオン源120を備える。イオン源120は、例えば、イオン群を生成するように、イオン源120に導入されるサンプルをイオン化することによって、質量分析用のイオンを生成するために使用可能である。さらに、イオン源120は、概して、イオン群をフィルタモジュール122に伝達するために使用可能である。イオン源120は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、または電子衝撃イオン源(MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源等のパルスイオン源を含むが、それらに限定されない)を含むが、それらに限定されない、任意の好適なイオン源技術を含むことができる。しかしながら、他の種類のイオン源技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0021】
フィルタモジュール122は、概して、質量分析用のイオンの質量範囲を選択する、および/または、以下で説明される、質量分析計101の断片化および/または貯蔵モジュールの空間電荷制限を下回るイオンの全空間電荷を低減するために、イオン源120からイオンを受け取り、空間、時間、およびエネルギーのうちの少なくとも1つにおいてイオンをフィルタリングするために使用可能である。フィルタモジュール122は、四重極質量フィルタ、イオントラップに基づいた質量フィルタ、TOF(飛行時間)に基づいた質量フィルタ、または磁場質量フィルタを含むが、それらに限定されない、任意の好適な質量フィルタを含むことができる。しかしながら、他の種類の質量フィルタが当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。実際に、概して、関心の質量範囲を選択し、空間電荷を低減するように、イオン源120からイオンをフィルタリングすることによって、1次イオンビーム(すなわち、イオン源120によって生成されるイオン)の減衰のステップが排除され、質量分析計101の効率が増加させられる。さらに、この空間電荷の標的化低減は、以下で説明される、質量分析モジュール130において記録される質量スペクトルの質に影響を及ぼす。言い換えれば、フィルタリングは、質量分析計101における空間電荷制限に対処するように発生し、正味の結果は、以下で説明されるように、空間電荷が質量分析計の他のモジュールのうちのいずれも圧倒しないような、質量分析計101におけるより少ないイオンである。さらに、断片化および分析の前に関心の質量範囲を選択することによって、フィルタリングしたイオンから抽出される後続の情報は、フィルタリングが発生しない場合よりも詳細となり得る。
【0022】
質量分析計101はさらに、フィルタモジュール122に接続される第1の断片化モジュール124であって、フィルタモジュール122からイオンを受け取り、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、光断片化を含むが、それらに限定されない、任意の好適な断片化技術を使用してイオンを断片化するために使用可能な第1の断片化モジュール124を備える。しかしながら、他の種類の断片化技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。断片化がガスとの衝突を介して発生する実施形態では、第1の断片化モジュール124は、イオンの断片化を達成するためのガスの入力を備えることができる。
【0023】
質量分析計101はさらに、第1の断片化モジュール124に接続される貯蔵/多重化モジュール126であって、第1の断片化モジュール124から断片化したイオンを受け取り、断片化したイオンを貯蔵するために使用可能な貯蔵/多重化モジュール126を備える。貯蔵/多重化モジュール126は、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、および/または円筒形イオントラップを含むが、それらに限定されない、任意の好適なイオン貯蔵技術を含むことができる。しかしながら、他の種類の貯蔵技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。貯蔵/多重化モジュール126はさらに、残りの部分が貯蔵/多重化モジュール126内に貯蔵されたままである間に、以下で説明される他のモジュールにおいて、質量分析のために貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵された断片化したイオンの複数の部分の連続的選択および移動のために、使用可能である。さらなる分析のための選択した部分の連続的選択および移動は、多重化としても知られている。多重化設定は、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および/または移動度分離を含むことができるが、それらに限定されない。しかしながら、他の種類の多重化技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0024】
質量分析計101はさらに、貯蔵/多重化モジュール126に接続される第2の断片化モジュール128を備え、第2の断片化モジュール128は、上記で説明されるように、第1の断片化モジュール124と機能が実質的に同様となり得る。第2の断片化モジュール128は、貯蔵/多重化モジュール126から連続的に選択され、移動させられると、断片化したイオンの複数の部分のそれぞれを受け取り、質量分析のために断片化したイオンの複数の部分のそれぞれを断片化するために使用可能である。
【0025】
質量分析計101はさらに、第2の断片化モジュール128に接続される質量分析モジュール130を備える。質量分析モジュール130は、いったん断片化したイオンの複数の部分のそれぞれが第2の断片化モジュール128の中で断片化されると、それらに質量分析を行うために使用可能である。質量分析モジュール130はさらに、分析および貯蔵のために、質量分析データをコンピュータデバイス105に出力するために使用可能である。質量分析モジュール130は、イオントラップ、四重極イオントラップ、TOF分析器、FT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器、扇形電界質量分析器、四重極質量分析器、四重極イオントラップ、および線形四重極イオントラップ等の質量分析器を含むが、それらに限定されない、任意の好適な質量分析技術を含むことができる。しかしながら、他の種類の質量分析技術が当業者に思い浮かび、本実施形態の範囲内である。
【0026】
質量分析計101の要素のそれぞれは、概して、イオン源120において生成されるイオンを、フィルタリングのためにフィルタモジュール122に移動させることができ(矢印150によって表されるように)、フィルタモジュール122からのイオンを、断片化のために第1の断片化モジュール124に移動させることができ(矢印152によって表されるように)、第1の断片化モジュール124からの断片化したイオンを、貯蔵のために貯蔵/多重化モジュール126に移動させることができるように(矢印154によって表されるように)、相互接続される。次いで、断片化したイオンの複数部分を、選択的に選択し、断片化のために第2の断片化モジュール128に移動させ(矢印156によって表されるように)、次いで、質量分析のために質量分析モジュール130に移動させることができる(矢印158によって表されるように)。一般に、第1の断片化モジュール124の中で断片化される(すなわち、第2の断片化モジュール128の中での後続断片化を伴わずに)イオンに行われるMS分析は、MS−MS(MS2)分析を含む。第2の断片化モジュール128の中で断片化される(すなわち、第1の断片化モジュール124の中での第1の断片化の後に)イオンに行われるMS分析は、MS3分析を含む。
【0027】
いったん断片化したイオンの各部分が選択され、第2の断片化チャンバ128に移動させられると、断片化および質量分析のために、断片化したイオンのさらなる部分を順に選択することができるように、断片化したイオンの残りの部分は、貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵されたままである。貯蔵/多重化モジュール126によって連続的に選択される各部分は、他の部分の同じ質量範囲または異なる質量範囲内にあり得る。さらに、選択される各部分は、質量分析における所望の感度を提供するために好適なサイズを有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、各後続断片化ステップ中に、断片化したイオン群全体のフィルタリングがなく、したがって、イオン電流の必要以上の損失がない。他の実施形態では、各後続断片化ステップ中に、(例えば、断片化したイオン群全体の大部分である、群全体の一部を選択するように)断片化したイオン群全体の限定されたフィルタリングがあり得るため、イオン電流の有意な損失がない。さらなる実施形では、例えば、断片化したイオン群全体の限定された部分である、群全体の一部を選択するように、断片化したイオンの大幅なフィルタリングがあり得るため、分析のために限定数の構成要素を選択する。後者の実施形態は、概して、分析ステップの数を低減することによって、総分析時間を低減するが、依然として、複数の構成要素が分析のために選択されることを可能にする。
【0028】
いくつかの実施形態では、イオン源120とフィルタモジュール122との間で、イオンをゲート制御することができる。他の実施形態では、フィルタモジュール122と第1の断片化モジュール124との間で、イオンをゲート制御することができる。そのようなゲーティングは、概して、入力MS2イオン(すなわち、イオン源からのイオン、および/または、さらに、第1の断片化したイオン群が貯蔵/多重化モジュール126に移動させられた後に、第1の断片化モジュール124の中で断片化されているイオン)による貯蔵/多重化モジュール126の汚染を防止する。
【0029】
さらに、質量分析計101は、真空ポンプ、真空コネクタ、電力供給部、電気コネクタ、電極等を含むが、それらに限定されない、質量分析計101を通したイオンの移動を可能にするための任意の数の付加的な要素を備えることができることが理解される。
【0030】
さらなる実施形態では、質量分析計101がN個の断片化チャンバを備える場合に、MSN+1分析を行うことができるように、質量分析計101は、第2の断片化モジュール128と質量分析モジュール130との間に位置する、さらなる複数対の貯蔵/多重化および断片化モジュールを含むことができる。
【0031】
ここで、MSn質量分析においてイオンを多重化するための方法200を描写する図2に注目する。方法200の説明を支援するために、方法200はシステム100を使用して行われると仮定される。さらに、方法200の以下の考察は、システム100およびその種々の構成要素のさらなる理解につながる。特に、アプリケーション110が処理ユニット114によって処理される時に、システム100を使用して方法200を行うことができることが理解される。しかしながら、システム100および/または方法200は、変化させることができ、相互と併せて本明細書で論議されるように正確に稼働する必要はなく、そのような変化例は、本実施形態の範囲内であることを理解されたい。
【0032】
方法200では、好適なサンプルがイオン源120に導入されており、好適なサンプルは、分析のためのイオンを生成するようにイオン源120によってイオン化されていることが仮定される。
【0033】
ステップ205では、図3(類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である)で描写されるように、イオン源からのイオンが、関心のイオン群Gを生成するように、フィルタモジュール122を介してフィルタリングされる。一般に、イオンは質量選択によってフィルタリングされ、イオン群Gは関心の質量範囲である。断片化ステップ(下記参照)を行う前にイオンをフィルタリングすることによって、質量分析計101内の空間電荷が、質量分析計101の(例えば、質量分析計101の後続のモジュールの)空間電荷制限を下回るまで低減される。したがって、フィルタリングが発生しない場合に関して、空間電荷の影響が低減される。
【0034】
ステップ205はさらに、断片化のためにイオン群Gを第1の断片化モジュール124に移動させるステップ(矢印152)を含む。
【0035】
ステップ210では、図3で描写されるように、イオン群Gの少なくとも一部分が、イオンの断片化した群Fを形成するように断片化される。例えば、イオン群Gは、イオンの断片化した群Fを形成するように、第1の断片化モジュール124によって断片化することができる。次いで、イオンの断片化した群Fは、類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である図4で描写されるように、貯蔵/多重化モジュール126に移動させられる(矢印154)。
【0036】
ステップ220では、断片化した群Fは、質量分析のために、断片化した群Fの複数の部分を連続的に選択することができるように貯蔵される。例えば、断片化した群Fは、概して、図4で描写されるように、任意の好適な貯蔵技法を介して(例えば、上記で説明されるようなイオントラップ等を介して)貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵される。
【0037】
ステップ230では、断片化した群Fの一部分Pが、質量分析のために選択され、図5(類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である)で描写されるように、第2の断片化モジュール128に選択的に移動させられる(矢印156)。例えば、貯蔵/多重化モジュール126は、概して、第2の断片化モジュール128へのイオンの質量選択的移動のために使用可能であるため、部分Pは、断片化した群Fの任意の所望の/好適な質量範囲となり得る。さらに、次いで、断片化した群Fは、量Pだけ低減され、図5で描写されるように、断片化したイオンFの残りの部分F'を残す。いくつかの実施形態では、部分Pを質量分析モジュール130に移動させることによって、質量分析分析(MS2)を部分Pに行うことができる。
【0038】
しかしながら、MS3が所望される場合、ステップ240では、部分Pが、部分PFを生成するように、第2の断片化チャンバ128の中で断片化され、ステップ250では、断片化した部分PFが、質量分析のために質量分析モジュール130に移動させられ(矢印158)、後に、分析および貯蔵のためにコンピュータデバイス110に転送される質量分析データを生じる。ステップ240および250は、類似番号を有する類似要素を伴って、図1と実質的に同様である、図6で描写されている。
【0039】
ステップ260では、貯蔵/多重化モジュール126に貯蔵された断片化した群F(例えば、残りの部分F')が除去しているかどうかが判定される。そうでなければ、ステップ280では、断片化した群Fの別の部分(例えば、残りの部分F'の一部分)が質量分析のために順に選択されるかどうかが判定される。そうであれば、ステップ230乃至260が、断片化した群Fの別の部分で繰り返される。例えば、アプリケーション110は、断片化した群Fの所与の数の部分に質量分析を受けさせるように構成することができる。連続的に選択された部分の数が所与の数以下である場合、ステップ230乃至260が繰り返される。そうでなければ、連続的に選択された部分の数は所与の数よりも多く、次いで、ステップ290では、例えば、さらなる断片化または分析を伴わずに、残りの部分を第2の断片化モジュール128および質量分析計モジュール130に通過させることによって、残りの部分F'が廃棄される。次いで、方法200は、ステップ295で終了する。代替として、残りの部分は、貯蔵/多重化モジュール126および/または第2の断片化チャンバ128内の電極の中へイオンビームを誘導することによって、廃棄することができる。
【0040】
代替として、断片化した群Fの別の部分が選択されることを質量分析データが示す場合に、ステップ230乃至260が繰り返される。そのような決定の規準は、アプリケーション110内で事前構成する、および/またはシステム100のユーザによって作製することができる。
【0041】
したがって、断片化した群Fの複数の部分のそれぞれが、質量分析の前に連続的に選択され、断片化される。さらに、いったん断片化した群Fの複数の部分のそれぞれが断片化されると、断片化した群Fの複数の部分のそれぞれは、質量分析を介して分析される。
【0042】
ステップ260に戻って、断片化した群が除去している場合、ステップ270では、イオン源からのより多くのイオンが生成やフィルタリング等を受けるかどうかが判定される。そうであれば、例えば、質量分析のためにさらなるサンプルを導入することによって、いったんイオン源においてさらなるイオンが生成され、フィルタリングモジュール101においてフィルタリングされると、上記で説明されるように、ステップ210乃至290が繰り返される。そうでなければ、方法200はステップ295で終了する。
【0043】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100aを描写する図7に注目する。システム100aは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100と実質的に同様である。システム100aは、質量分析計101と実質的に同様である質量分析計101aを備え、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aを含む、各断片化モジュールは、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である。したがって、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aのそれぞれは、それぞれ、第1の断片化モジュール124および第2の断片化モジュール128、ならびに貯蔵/多重化モジュール126と同様に、機能的に使用可能である。これは、質量分析計101aが上記で説明されるような方法200を行うことを可能にし、断片化した部分Fが貯蔵モジュールに貯蔵されている間に、第2の断片化した群を生成するように、さらなるイオンを断片化することができ、断片化した群Fが連続的に選択され、断片化され、質量分析を介して分析されている間に、第2の断片化した群は、断片化した群Fとは無関係に第1の断片化/貯蔵モジュール124aに貯蔵されるため、第2の断片化した群は、例えば、断片化した群Fが除去または廃棄された後に、連続的に選択され、断片化し、質量分析を介して分析することができる。
【0044】
これはさらに、断片化および/または分析が質量分析計101aの要素のうちのもう1つで行われている間に、イオンおよび/または断片化したイオンが、第1の断片化/貯蔵モジュール124a、貯蔵/多重化モジュール126、および第2の断片化/貯蔵モジュール128aのうちのいずれかに貯蔵されることを可能にする。そのような貯蔵および断片化等は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110aを介して制御することができる。アプリケーション110aは、アプリケーション110と実質的に同様であるが、アプリケーション110aはさらに、質量分析計101aの複数の要素において質量分析計101aに同時断片化/貯蔵を行わせるために使用可能である。
【0045】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100bを描写する図8に注目する。システム100bは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100と実質的に同様である。システム100bは、質量分析計101aと同様である質量分析計101bを備えるが、第1の断片化/貯蔵モジュール124aと同様の1つだけの断片化/貯蔵モジュール124bと、フィルタモジュール122と断片化/貯蔵モジュール124bとの間に位置する通過/貯蔵/多重化モジュール126bとを備える。通過/貯蔵/多重化モジュール126bは、上記で説明されるような(その中に貯蔵されたイオンの連続選択的移動を含む)貯蔵/多重化モジュール126と同様に、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能であるが、通過/貯蔵/多重化モジュール126bはさらに、断片化のために、フィルタモジュール122からのイオンが断片化/貯蔵チャンバ124bを通過することを可能にするために使用可能である。
【0046】
方法200は、以下の違いを伴って、システム100bを使用して行うことができる。ステップ210では、断片化した群Fを形成するように、イオン源からのイオンが断片化/貯蔵モジュール124bの中で断片化される。この段階で、MS2分析を行うことができる。しかしながら、断片化した群Fは、図8のように、ステップ220における貯蔵のために、通過/貯蔵/多重化モジュール126bへとイオン源120に向かって逆移動させる(すなわち、質量分析計101bのイオン経路に沿って後方に)ことができる(矢印156b)。図9(類似番号を有する類似要素を伴って、図8と実質的に同様である)で描写されるように、ステップ230では、断片化した群の部分Pが選択され、断片化/貯蔵チャンバ124bに戻され、そこで、ステップ240で断片化され(断片化した部分PFを生成する)、MS3分析のために質量分析計モジュール130に移動させられる。
【0047】
付加的な断片化が所望される場合(MSn、n>3)、所望の程度の断片化を達成するために必要な回数で、断片化した群Fを、通過/貯蔵/多重化モジュール126bと断片化/貯蔵モジュール124bとの間で前後に移動させることができる。例えば、断片化した群Fの複数の部分Pのそれぞれの少なくとも一部が所与の回数で再断片化されるように、分析するステップ250の前に、選択するステップ230および断片化するステップ240が、断片化した群Fの複数の部分Pのそれぞれについて所与の回数で繰り返される。したがって、選択するステップ230および断片化するステップ240は、質量分析計101bのイオン経路に沿って、複数の部P分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含む。
【0048】
この幾何学形状は、概して、1つだけの断片化チャンバを使用して、MSnを可能にするように質量分析計101bを通るイオンの逆移動を可能にすることによって、質量分析計101または質量分析計101aに対して、質量分析計101bの構成要素の数を低減する。さらに、イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110bを介して制御することができる。アプリケーション110bは、アプリケーション110と実質的に同様であるが、アプリケーション110bはさらに、質量分析計101aの複数の要素において質量分析計101aに同時断片化/貯蔵を行わせるために使用可能である。
【0049】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100cを描写する図10に注目する。システム100cは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100bと実質的に同様である。システム100cは、質量分析計101bと同様である質量分析計101cを備えるが、イオン源120と断片化/貯蔵モジュール124cとの間に複合フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cを備える(したがって、矢印150および152が組み合わせられている)。断片化/貯蔵モジュール124cは、断片化/貯蔵モジュール124bと実質的に同様である。フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cは、組み合わせられたフィルタモジュール122および通過/貯蔵/多重化モジュール126bと実質的に同じ機能を果たし、さらに、単一構成要素におけるフィルタリングおよび貯蔵を可能にすることによって、質量分析計101、質量分析計101a、および質量分析計101bに対して質量分析計101cの構成要素の数を低減する。質量分析計101bのように、断片化した群Fは、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cにおける貯蔵および連続的選択のために、イオン源120に戻される(矢印156b)。さらに、イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110cを介して制御することができる。アプリケーション110cは、アプリケーション110bと実質的に同様であるが、アプリケーション110bはさらに、必要に応じてフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cにフィルタリングおよび/または貯蔵させるために使用可能である。
【0050】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100dを描写する図11に注目する。システム100dは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100cと実質的に同様である。システム100dは、質量分析計101cと同様の質量分析計101dを備えるが、質量分析計101dは、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126cと同様のフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dに順に接続される、通過/貯蔵/多重化モジュール126bと同様の通過/貯蔵モジュール1126に接続されるイオン源120を備える。いくつかの実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、その中に貯蔵されたイオンの連続的選択のために使用可能である。他の実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、その中に貯蔵されたイオンの連続的選択のために使用可能でない。むしろ、これらの実施形態では、通過/貯蔵モジュール1126は、フィルタ貯蔵/多重化モジュール126へのその中に貯蔵されたイオンの非選択的移動のために使用可能でない。
【0051】
フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dは、順に質量分析モジュール130に接続される、断片化/貯蔵モジュール124cと同様の断片化/貯蔵モジュール124dに順に接続される。したがって、質量分析計101dの構成要素の配設は、質量分析計101cの構成要素の配設と同様であるが、イオン源120とフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dとの間に位置する通過/貯蔵モジュール1126を伴う。
【0052】
質量分析計101dは、概して、上記で説明されるように、イオンをフィルタリングするように、イオン源120からフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dを通してイオンおよび/または断片化したイオンを移動させるために使用可能であり、フィルタリングしたイオンは、後に断片化/貯蔵モジュール124dに移動させられる(例えば、矢印150d、152d、154d、および158d)。質量分析計101dはさらに、断片化/貯蔵モジュール124dからフィルタ/貯蔵モジュール(矢印1156−1)に、およびフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dから通過/貯蔵モジュール1126(矢印1156−2)に(すなわち、イオン経路に沿って後方に)、イオンおよび/または断片化したイオンを移動させるために使用可能である。さらに、通過/貯蔵モジュール1126、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126d、および断片化/貯蔵モジュール124dのそれぞれは、イオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である。これは、さらなる断片化および/または質量分析が質量分析計101dの別の要素において発生している間に、質量分析計101dが、通過/貯蔵モジュール1126、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126d、および断片化/貯蔵モジュール124dのそれぞれにイオンおよび/または断片化したイオンを貯蔵することを可能にする。したがって、断片化および分析が、それぞれ、断片化/貯蔵モジュール124dおよび質量分析モジュール130において発生している間に、イオンおよび/または断片化したイオンを、通過/貯蔵モジュール1126および/またはフィルタ/貯蔵/多重化モジュール126dに貯蔵することができる。さらに、分析が質量分析モジュール130において発生している間に、断片化したイオンを断片化/貯蔵モジュール124dを貯蔵することができる。イオンおよび断片化したイオンの移動および貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110dを介して制御することができる。アプリケーション110dは、アプリケーション110bと実質的に同様であるが、アプリケーション110dはさらに、必要に応じて通過/貯蔵モジュール1126にイオンを通過/貯蔵させるために使用可能である。
【0053】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するためのシステム100hを描写する図15に注目する。システム100hは、類似番号を有する類似要素を伴って、システム100aと実質的に同様であり、それぞれ、第1の断片化/貯蔵モジュール124aおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128aと実質的に同様である、第1の断片化/貯蔵モジュール124hおよび第2の断片化/貯蔵モジュール128hを伴い、かつ貯蔵/多重化モジュール126と実質的に同様である貯蔵/多重化モジュール126hを伴う。しかしながら、第1の断片化/貯蔵モジュール124hと貯蔵/多重化モジュール126hとの間には、通過/貯蔵モジュール1126h−1、1126h−2、1126h−3(概して、通過/貯蔵モジュール1126h、まとめて通過/貯蔵モジュール1126h)が位置し、各通過/貯蔵モジュール1126hは、上記で説明されるような通過/貯蔵モジュール1126と実質的に同様である。さらに、質量分析計101hは、イオン経路に沿って、イオン源120から質量分析モジュール130に(例えば、矢印1500−1514)イオンを移動させるために使用可能であり、貯蔵/多重化モジュール126hから第2の断片化モジュール128hへのイオン移動は選択的に発生する(すなわち、矢印1512、イオンの連続的選択)。質量分析計101hはさらに、所望に応じて非選択的に、イオン経路に沿って第2の断片化/貯蔵チャンバ128hから通過/貯蔵モジュール1126h−1に(すなわち、矢印1516−1522)にイオンを戻すために使用可能である。モジュール間のイオンの移動(選択的および非選択的)、ならびにイオンおよび断片化したイオンの貯蔵は、処理モジュール114による処理時に、アプリケーション110hを介して制御することができる。
【0054】
一般に、第1の断片化モジュール124hによって断片化されるイオン(例えば、MS2用のイオン、またはMS2イオン)は、通過/貯蔵モジュール1126h(矢印1504−1510)を介して、貯蔵/多重化モジュール126hに移動させることができ、そこで、第2の断片化/貯蔵モジュール128hへの断片化したイオンの選択的移動(矢印1512)が発生する。残りのMS2イオンは、イオン経路に沿って、貯蔵のために貯蔵/多重化モジュール126hから通過/貯蔵モジュール1126h−1に(すなわち、矢印1518−1522)戻すことができる。いったんMS2イオンから選択されたイオンが第2の断片化/貯蔵モジュール128hにおいて断片化されると(すなわち、MS3イオン)、それらは、イオン経路に沿って通過/貯蔵モジュール1126h−2に(すなわち、矢印1516−1520)に戻すことができる。しかしながら、その際に、MS3イオンを最初に貯蔵/多重化モジュール126hに戻すことができ、そこで、さらなる断片化のために、イオンのさらに別の一部を選択し、断片化/貯蔵モジュール128hに戻すことができる(すなわち、MS4イオンが生成される)。次いで、MS4イオンは、イオン経路に沿って、貯蔵のために通過/貯蔵モジュール1126h−3に(すなわち、矢印1516−1518)に戻すことができる。次いで、MS2、MS3、MS4イオンのそれぞれは、それぞれ、通過/貯蔵モジュール1126h−1、1126h−2、および1126h−3に貯蔵される。順に、それぞれは、MS4イオンから開始して、所望に応じて、さらなる連続的選択および/断片化のために、貯蔵/多重化モジュール126hに戻すことができる。断片化したイオンの各連続生成に行われる質量分析は、どのようにさらなる質量分析を初期生成に行うことができるかを通知するために使用することができる(すなわち、さらなる分岐生成を作成するように、残りのMS2およびMS3イオンを処理する方法を判定するために、MS4データを使用することができる)。非選択的移動のために使用可能な通過/貯蔵モジュールは、概して、貯蔵/多重化モジュールよりも経済的であるため、複数の貯蔵/多重化モジュールを伴う質量分析計と比べて、費用節約を達成することができる。さらに、断片化したイオンのさらなる生成の貯蔵が所望される場合(例えば、MS5、MS6等)、通過/貯蔵モジュール1126hの数Xが、断片化したイオンのX+1の生成を同時に貯蔵することを可能にするように、さらなる通過/貯蔵モジュール1126hを提供できることが理解される。
【0055】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101eを描写する図12に注目する。質量分析計101eは、質量分析計101cと実質的に同様であるが、イオンは、イオン源120の後に位置するゲート1210を介してゲート制御され、フィルタ/貯蔵/多重化モジュール126の機能性は、第1の四重極1220を介して発生し、断片化/貯蔵モジュール124cの機能性は、第2の四重極1230を介して発生する。したがって、イオンを、第2の四重極1230における断片化のために第1の四重極1220から第2の四重極1230に(矢印1254)移動させ、連続的選択のために第1の四重極1220に戻し(矢印1256)、第2の四重極1230に選択的に戻し(矢印1257)、質量分析モジュール130における分析の前に(矢印1258)断片化することができる。
【0056】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101fを描写する図13に注目する。質量分析計101fは、質量分析計101eと実質的に同様であるが、質量分析計101fは、ゲート1210と第1の四重極1220との間に位置する第3の四重極1340(図13で「四重極0」と標識される)を備える。第3の四重極1340は、通過/貯蔵モジュール1126と同じ機能性で使用可能である。この観点から、質量分析計101fはまた、同様の機能性で、質量分析計101dと実質的に同様である。したがって、イオンを、第3の四重極1324から第1の四重極1220に(矢印1352)に、および第2の四重極1230における断片化のために第1の四重極1220から第2の四重極1230に(矢印1354)を移動させることができる。また、イオンを、質量分析モジュール130における分析の前のさらなる断片化のための、連続的選択および第2の四重極1230への選択的逆移動のために、第1の四重極1220に戻すこともできるし(矢印1356−1)。また、他のイオンおよび他の断片化したイオンの貯蔵および/または断片化が、質量分析計101fの他の構成要素において発生している間に、イオンを、貯蔵のために第1の四重極1220から四重極1340に移動させることもできる(矢印1356−2)。
【0057】
ここで、非限定的実施形態による、MSn質量分析においてイオンを多重化するための質量分析計101gを描写する図14に注目する。質量分析計101gは、質量分析計101fと同様に、イオン源120、ゲート、1210、および質量分析モジュール130、および以下で説明される3つの四重極、ならびに、同様に以下で説明されるイオン収集モジュール1410を備える。四重極1420は、ゲート1210に接続され、通過/貯蔵モジュール126bと同様に、イオンを伝達および貯蔵するために使用可能である。四重極1430は、四重極1420に接続され、フィルタモジュール122、貯蔵/多重化モジュール126、および第1の断片化モジュール124の組み合わせと同様に、イオンをフィルタリングし、貯蔵し、断片化するために使用可能である。四重極1430はさらに、生成され、その中に貯蔵された断片化したイオンの複数部分を、連続的に選択し、半径方向噴出を介してイオン収集モジュール1410に移動させるために使用可能である。イオン収集モジュール1410は、連続的に選択され、半径方向噴出を介して四重極1430から移動させられたイオン(すなわち、断片化したイオン)を収集し、イオンを四重極1440に移動させるために使用可能であり、それは、四重極1440が四重極1430と略垂直となることを可能にする。四重極1440は、イオン収集モジュール1410から移動させられたイオンを断片化し、分析のために断片化したイオンを質量分析モジュール130に移動させるために使用可能である。
【0058】
好適なアプリケーションが、質量分析計の各構成要素に所望の機能性を行わせるために使用可能である限り、質量分析計101e−101gのうちのいずれかを、アプリケーション110と同様の好適なアプリケーションの制御下で、システム100−100d、100hに代入することができる。
【0059】
当業者であれば、いくつかの実施形態では、事前にプログラムされたハードウェアまたはファームウェア要素(例えば、特定用途向け集積回路ASIC)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)等)、または他の関連構成要素を使用して、アプリケーション110−110dおよび110hの機能性を実装できることを理解するであろう。他の実施形態では、コンピュータ装置の動作のためのコンピュータ読み取り可能プログラムを記憶する、コードメモリ(図示せず)にアクセスできるコンピュータ装置を使用して、アプリケーション110−110dおよび110hの機能性を達成することができる。コンピュータ読み取り可能プログラムは、固定され、有形であり、かつこれらの構成要素によって直接読み取り可能である、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に記憶することができる(例えば、可撤性ディスケット、CD−ROM、ROM、固定ディスク、USBドライブ)。代替として、コンピュータ読み取り可能プログラムコードは、遠隔で記憶することができるが、伝送媒体上で、ネットワーク(無制限にインターネットを含む)に接続されたモデムまたは他のインターフェースを介して、これらの構成要素に伝送可能となり得る。伝送媒体は、非無線媒体(例えば、光および/またはデジタルおよび/またはアナログ通信回線)または無線媒体(例えば、マイクロ波、赤外線、自由空間光学、または他の伝送スキーム)、あるいはそれらの組み合わせとなり得る。
【0060】
本明細書で使用される項の見出しは、編成目的のためにすぎず、決して本主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0061】
当業者であれば、実施形態を実装するために可能である、さらなる代替実装および修正があり、上記の実装および実施例は、1つ以上の実施形態の例証にすぎないことを理解するであろう。さらに、出願者の教示が種々の実施形態と併せて説明されているが、出願者の教示が種々の実施形態に限定されることは意図されない。逆に、出願者の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替案、修正、および同等物を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSn質量分析計においてイオンを多重化するための方法であって、
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップであって、前記イオン群は、前記MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る、ステップと、
断片化したイオン群を形成するように、前記イオン群の少なくとも一部分を断片化するステップと、
質量分析のために、前記断片化した群の複数の部分を連続的に選択することができるように、前記断片化した群の前記少なくとも一部分を貯蔵するステップと、
前記質量分析の前に、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれを連続的に選択し、再断片化するステップと、
いったん前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれが断片化されると、質量分析を介して、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれを分析するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部が、所与の回数で再断片化されるように、前記分析するステップの前に、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれについて、前記貯蔵するステップと、前記連続的に選択し、再断片化するステップとを、前記所与の回数で繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貯蔵するステップは、前記MSn質量分析計のイオン経路に沿って、前記断片化した群を後に進行させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連続的に選択し、再断片化するステップは、前記質量分析計のイオン経路に沿って、前記イオンの前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続的に選択し、再断片化するステップは、前記MSn質量分析計を通して、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を選択的に移動させるステップを含み、前記選択的移動は、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの所与の質量範囲を選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップは、前記イオンの所与の質量範囲に基づいて前記イオンをフィルタリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
イオンを生成するためのイオン源と、
関心のイオン群を生成するように前記イオンをフィルタリングするための、前記イオン源に接続されるフィルタモジュールであって、前記イオン群は、前記MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る、フィルタモジュールと、
少なくとも前記関心のイオン群を貯蔵するための、前記フィルタモジュールに接続される貯蔵モジュールであって、断片化および質量分析のために、少なくとも前記関心のイオン群の複数の部分を連続的に選択するためにさらに使用可能である、少なくとも1つの貯蔵モジュールと、
前記少なくとも1つの貯蔵モジュールにおいて連続的に選択されたイオンを断片化するための、前記貯蔵モジュールに接続される断片化モジュールと、
質量分析を介して断片化したイオンを分析するための、前記断片化モジュールに接続される質量分析モジュールと
を備える、多重化MSn質量分析計。
【請求項8】
前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールは、前記質量分析モジュールによる分析の前に、少なくとも各一部が所与の回数で断片化されるように、前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールのそれぞれの間で、前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前記所与の回数で前後に移動させるために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項9】
前記断片化モジュールから前記貯蔵モジュールまでの少なくとも各前記一部の移動は、非選択的に発生し、前記貯蔵モジュールから前記断片化モジュールまでの少なくとも各前記一部の移動は、選択的に発生する、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項10】
前記貯蔵モジュールはさらに、前記関心のイオン群が前記断片化モジュールへとそこを通過するために使用可能である、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項11】
前記少なくとも1つの貯蔵モジュールは、前記フィルタリングモジュールを備える、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項12】
前記イオン源と前記貯蔵モジュールとの間に位置する第2の貯蔵モジュールであって、イオン貯蔵と、断片化および質量分析のためにその中に貯蔵されたイオン群の複数の部分の連続的選択とのために、使用可能な前記第2の貯蔵モジュールをさらに備える、請求項11に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項13】
前記第2の貯蔵モジュールはさらに、前記イオン源からのイオンが前記貯蔵モジュールへとそこを通過することを可能にするために使用可能である、請求項12に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項14】
前記第2の貯蔵モジュールおよび前記貯蔵モジュールは、前記貯蔵モジュールに貯蔵されたイオンを前記第2の貯蔵モジュールに移動させるために使用可能である、請求項13に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項15】
前記断片化モジュールはさらに、前記断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項16】
前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールのうちの少なくとも1つは、その中に位置するイオンの残りの部分を廃棄するために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項17】
前記貯蔵モジュールの中の前記関心のイオン群を貯蔵する前に、前記関心のイオン群を断片化するための、前記貯蔵モジュールと前記第2の断片化モジュールとの間に位置する第2の断片化モジュールをさらに備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項18】
前記第2の断片化モジュールと前記貯蔵モジュールとの間に位置する、所与の数の通過/貯蔵モジュールをさらに備え、各前記通過/貯蔵モジュールは、断片化したイオンの所与の生成を貯蔵するために使用可能であり、各前記通過/貯蔵モジュールは、前記貯蔵モジュールへのそれを通るイオンの非選択的移動のために使用可能であり、さらに、前記貯蔵モジュールから前記第2の断片化チャンバへの非選択的移動のために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項19】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、電子衝撃イオン源、MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項20】
前記断片化モジュールは、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、および光断片化のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項21】
前記貯蔵モジュールは、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および移動度分離イオントラップのうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項22】
前記質量分析モジュールは、扇形電界質量分析器、飛行時間分析器、四重極質量分析器、イオントラップ、四重極イオントラップ、線形四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、TOF(飛行時間)分析器、およびFT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項23】
前記フィルタモジュールは、四重極質量フィルタ、磁場質量フィルタ、イオン移動度フィルタ、およびイオントラップ質量フィルタうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項1】
MSn質量分析計においてイオンを多重化するための方法であって、
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップであって、前記イオン群は、前記MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る、ステップと、
断片化したイオン群を形成するように、前記イオン群の少なくとも一部分を断片化するステップと、
質量分析のために、前記断片化した群の複数の部分を連続的に選択することができるように、前記断片化した群の前記少なくとも一部分を貯蔵するステップと、
前記質量分析の前に、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれを連続的に選択し、再断片化するステップと、
いったん前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれが断片化されると、質量分析を介して、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれを分析するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部が、所与の回数で再断片化されるように、前記分析するステップの前に、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれについて、前記貯蔵するステップと、前記連続的に選択し、再断片化するステップとを、前記所与の回数で繰り返すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貯蔵するステップは、前記MSn質量分析計のイオン経路に沿って、前記断片化した群を後に進行させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記連続的に選択し、再断片化するステップは、前記質量分析計のイオン経路に沿って、前記イオンの前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前後に進行させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続的に選択し、再断片化するステップは、前記MSn質量分析計を通して、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を選択的に移動させるステップを含み、前記選択的移動は、前記断片化した群の前記複数の部分のそれぞれの所与の質量範囲を選択するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
関心のイオン群を生成するようにイオンをフィルタリングするステップは、前記イオンの所与の質量範囲に基づいて前記イオンをフィルタリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
イオンを生成するためのイオン源と、
関心のイオン群を生成するように前記イオンをフィルタリングするための、前記イオン源に接続されるフィルタモジュールであって、前記イオン群は、前記MSn質量分析計の空間電荷制限を下回る、フィルタモジュールと、
少なくとも前記関心のイオン群を貯蔵するための、前記フィルタモジュールに接続される貯蔵モジュールであって、断片化および質量分析のために、少なくとも前記関心のイオン群の複数の部分を連続的に選択するためにさらに使用可能である、少なくとも1つの貯蔵モジュールと、
前記少なくとも1つの貯蔵モジュールにおいて連続的に選択されたイオンを断片化するための、前記貯蔵モジュールに接続される断片化モジュールと、
質量分析を介して断片化したイオンを分析するための、前記断片化モジュールに接続される質量分析モジュールと
を備える、多重化MSn質量分析計。
【請求項8】
前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールは、前記質量分析モジュールによる分析の前に、少なくとも各一部が所与の回数で断片化されるように、前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールのそれぞれの間で、前記複数の部分のそれぞれの少なくとも一部を前記所与の回数で前後に移動させるために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項9】
前記断片化モジュールから前記貯蔵モジュールまでの少なくとも各前記一部の移動は、非選択的に発生し、前記貯蔵モジュールから前記断片化モジュールまでの少なくとも各前記一部の移動は、選択的に発生する、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項10】
前記貯蔵モジュールはさらに、前記関心のイオン群が前記断片化モジュールへとそこを通過するために使用可能である、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項11】
前記少なくとも1つの貯蔵モジュールは、前記フィルタリングモジュールを備える、請求項8に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項12】
前記イオン源と前記貯蔵モジュールとの間に位置する第2の貯蔵モジュールであって、イオン貯蔵と、断片化および質量分析のためにその中に貯蔵されたイオン群の複数の部分の連続的選択とのために、使用可能な前記第2の貯蔵モジュールをさらに備える、請求項11に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項13】
前記第2の貯蔵モジュールはさらに、前記イオン源からのイオンが前記貯蔵モジュールへとそこを通過することを可能にするために使用可能である、請求項12に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項14】
前記第2の貯蔵モジュールおよび前記貯蔵モジュールは、前記貯蔵モジュールに貯蔵されたイオンを前記第2の貯蔵モジュールに移動させるために使用可能である、請求項13に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項15】
前記断片化モジュールはさらに、前記断片化したイオンを貯蔵するために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項16】
前記貯蔵モジュールおよび前記断片化モジュールのうちの少なくとも1つは、その中に位置するイオンの残りの部分を廃棄するために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項17】
前記貯蔵モジュールの中の前記関心のイオン群を貯蔵する前に、前記関心のイオン群を断片化するための、前記貯蔵モジュールと前記第2の断片化モジュールとの間に位置する第2の断片化モジュールをさらに備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項18】
前記第2の断片化モジュールと前記貯蔵モジュールとの間に位置する、所与の数の通過/貯蔵モジュールをさらに備え、各前記通過/貯蔵モジュールは、断片化したイオンの所与の生成を貯蔵するために使用可能であり、各前記通過/貯蔵モジュールは、前記貯蔵モジュールへのそれを通るイオンの非選択的移動のために使用可能であり、さらに、前記貯蔵モジュールから前記第2の断片化チャンバへの非選択的移動のために使用可能である、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項19】
前記イオン源は、エレクトロスプレーイオン源、ナノスプレーイオン源、APCI(大気圧化学イオン化)イオン源、APPI(大気圧光イオン化)イオン源、電子衝撃イオン源、MALDI(マトリクス支援レーザ脱離イオン化)イオン源、およびSIMS(2次イオン質量分析)イオン源のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項20】
前記断片化モジュールは、衝突誘起解離(CID)、表面誘起解離(SID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、準安定原子衝撃、および光断片化のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項21】
前記貯蔵モジュールは、線形イオントラップ、線形イオントラップの配列、3Dイオントラップの配列、ペニングトラップ、四重極イオントラップ、円筒形イオントラップ、軸方向噴出を伴うイオントラップ、半径方向噴出を伴うイオントラップ、飛行時間分離システム、および移動度分離イオントラップのうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項22】
前記質量分析モジュールは、扇形電界質量分析器、飛行時間分析器、四重極質量分析器、イオントラップ、四重極イオントラップ、線形四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、TOF(飛行時間)分析器、およびFT−MS(フーリエ変換質量分析質量)分析器のうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【請求項23】
前記フィルタモジュールは、四重極質量フィルタ、磁場質量フィルタ、イオン移動度フィルタ、およびイオントラップ質量フィルタうちの少なくとも1つを備える、請求項7に記載の多重化MSn質量分析計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−504751(P2012−504751A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529425(P2011−529425)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001369
【国際公開番号】WO2010/037216
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001369
【国際公開番号】WO2010/037216
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】
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