MTBEの分解によるイソブテンの製造
本発明の対象は、MTBEの分解によるイソブテンの製造法であり、その際、次の工程を経る:a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE−及びTBA含有の流(IV)を取得する工程、b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水及び場合によりTBAを含有する流(VI)を取得する工程、d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれたそれぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程。更に本発明の対象は、次の部材:i)管束、ii)管板、iii)偏向板、iv)内部ジャケット、v)少なくとも1つの流入口並びに流出口を含有する、耐圧性の外部ジャケット、vi)熱を放出するか又は吸収する液体を含有するジャケット空間を有する管束装置において、内部ジャケットが、ギャップ無しに又は僅かなギャップで、管束の長さにわたって取り付けられた偏向板並びに管板と接続されており、その際、ジャケット空間中に存在する液体が内部ジャケットを両側で取り囲んでいることを特徴とする管束装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MTBEの分解によるイソブテンの製造法に関する。
【0002】
イソブテンは、多数の生成物の製造用の出発物質、例えば、ブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブテンオリゴマー及びt−ブチル芳香族化合物の製造用の出発物質である。そのうえまた、イソブテンは、メタクリル酸及びそのエステルの製造用の前駆体として用いられることができる。
【0003】
工業用の流中、例えば石油分解生成物からのC4カット中には、イソブテンが飽和C4炭化水素及び不飽和C4炭化水素と一緒に頻繁に存在する。これらの混合物から、イソブテンは、イソブテンと1−ブテンとの間の僅かな沸点差若しくは非常に僅かな分離係数ゆえに、蒸留によって経済的には分離することができない。それゆえ、工業用の炭化水素混合物からのイソブテンの取得は、通常、イソブテンを誘導体(これは、残された炭化水素混合物から容易に分離され得る)に変換し、且つ、この単離された誘導体をイソブテン及び誘導体化剤へと再分解することによって行われる。
【0004】
それゆえ、蒸気分解生成物のC4カットから、通常、イソブテンが次の通り分離される:多価不飽和炭化水素の最も大きな部分、主としてブタジエンが、抽出(−蒸留)又は線状ブテンへの選択水素化によって取り除かれた後、残留する混合物(ラフィネートI又は水素化された分解C4)がアルコール又は水と反応させられる。イソブテンと水との反応に際しては、t−ブタノール(TBA)が形成され、アルコールが用いられた場合は、アルキル−t−ブチルエーテルが生じ、その際、アルキル基は、使用したアルコールによって定められている。メタノールが用いられた場合は、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)が形成され、エタノールが使用された場合は、エチル−t−ブチルエーテル(ETBE)が形成される。双方の成分は、ガソリンのオクタン価を高めるための成分として優先的に使用される。その際、イソブテンとエタノールとを反応させてETBEを得ることは、大規模工業的に、ここ最近十年でようやく重要になってきており、それというのも、法律により、燃料中での再生原料の割合が規定され、且つバイオエタノールが十分に供給可能であるからである。C3アルコール又はC4アルコールのエーテル化は、イソブテン製造法の範囲内で同様に記載されている(US4,287,379;US4,320,232)。
その分離後、エーテルのみならずTBAも、その形成とは逆にイソブテンへと分解されることができる。
アルコールとの反応の大きな利点は、この場合、イソブテンの非常に高い転化率を達成することができることである。このことは、しばしば工業的にラフィネートIIと呼ばれる残留C4炭化水素から、1−ブテンがポリマーグレードの純度で取得されるべき場合に特に必要である(Revue De Institut Francais du Petrole,第46巻,第3号,5月〜6月 1991年,第361頁〜第387頁)。このために必要な一般に>99.5%の転化率は、メタノールとの反応の場合、単段反応又は多段反応において達成することができる(Catalysis Today,1997年,第34巻,第447頁〜第455頁)。そのほかにメタノールは、そこから水の脱離によっていかなるオレフィンも形成されえないという利点を有する。
【0005】
MTBEの製造法は、70年代以降いっそう強く進展し、それというのも、MTBEは、オクタン価を上げる燃料添加物として大々的に使用されていたからである。続く数十年間での進展における決定的な歩みは、反応蒸留法の使用であった。この技術は、90年代以降、大規模工業的に使用されている。イソブテンの非常に高い転化率にも関わらず、この技術により、比エネルギー投入量を下げることが可能であった。それ以降、MTBE合成は、反応蒸留法の標準用途の1つに発展していった(例えばEP1199296)。
同様にエーテルの再分解法も、すでに久しく公知である(DE1216865)。しかし、MTBEの分解は、80年代以降になってようやく大規模工業的に使用され始め、また、殊に合成と比較して、非常に限られた程度でしかない。
【0006】
MTBEの分解は、その際、液相中又は気相中で行ってよい。典型的な副反応は、メタノールからの水及びジメチルエーテル(DME)の形成並びにイソブテンのダイマー及びオリゴマーの形成(主としてC8炭化水素、C12炭化水素)である。
【0007】
MTBE合成用に使用されるC4炭化水素は、ふつうは水飽和している(約200〜400ppmの水)。付加的に、水は、使用されたアルコールにより合成に出現してくる。殊に、MTBE分解において分離されたメタノール留分は、しばしば該分解のDME形成からの水をなお含有している。
【0008】
水は、MTBE合成において少なくとも部分的にTBAへと変換される。形成されたTBAは、合成からの搬出物の精製に際して分解前に分離されうる。それによって、イソブテン製造用の、原料中に含まれたイソブテンのこの割合が失われる。それゆえ、本発明による方法の目標は、合成において生じたTBAを少なくとも部分的にイソブテン製造用に利用することであった。酸性イオン交換体を用いたエーテル合成への水の導入が、反応速度の明らかな低下(Ind.Eng.Chem.Res 1993,32,564〜569)をもたらすことも知られている。しかし、MTBE合成における十分な反応速度は、エーテル合成の転化率が、後置された1−ブテン製造を保証するのに十分高くなければならない場合に殊に必要とされる。
【0009】
MTBE合成を、分解(そこから、生じたアルコールが合成に返送される)と結び付けた場合、成分が循環処理において蓄積し得るという問題点が知られている。合成と分解のこの結び付きは多岐にわたる特許の対象であるにも関わらず、これらの成分の分離に関する記載はほとんど見当たらず、殊にTBAに関する記載はない。
【0010】
Hydrocarbon Processing,August 1981,第101頁〜第106頁中で、その著者は、少なくとも30%のMTBEの残留量が副成分の排出のために分解において利用されない限りは、メタノールを分解から合成に返送することが可能であることを記載している。MTBEの全量が分解されることになる場合、付加的な"再循環精製ユニット(Recycle purification unit)"が必要とされる。その際、どの成分が排出され、どのようにこれらが排出されるのかは詳述されない。
【0011】
US4,570,026にも同様に、MTBEの合成と分解とを結び付けた方法が記載される。返送されたメタノール中には、なおMTBEとオリゴマーの残留量が含まれている。オリゴマーは、分解には供給されない、合成からのMTBE流により排出される。
【0012】
US5,567,860は、分解生成物からの二次エーテルの分離を記載し、その際、得られた精製された再循環流は直接的に分解に返送される。
【0013】
特許刊行物EP0869107は、1−ブテン、イソブテン及びMTBEの製造法を公開する。1−ブテン及びイソブテンを含有する炭化水素の混合物から、イソブテンが、MTBE形成及び蒸留によって分離され、引き続き接触分解される。該分解の生成物は、イソブテンに富んだ留分並びに、形成されたメタノールの最も大きな部分、場合により分解しなかったエーテル及び場合により重質化合物を含有する留分とに分けられる。この留分は、場合により部分的に合成に返送される。特別な実施形態では、MTBEの一部がエンジン燃料留分として利用される。分解反応からの、例に記載された生成物の精製に際して、水が、なお若干のメタノールを含有する、形成されたイソブテンとともに分離される。場合により合成に返送されるメタノールの主要量は、なお若干の反応しなかったMTBEとイソブテンのダイマーを含有する。該流の更なる精製は記載されない。
【0014】
いくつかの方法では、エーテルの分解に際して蒸気が混ぜられる。そうしてDE1934422は、炭化水素混合物からの第三級モノオレフィンの分離法を記載する。反応器通過後に、生成物混合物はデカンター内で水相と有機相とに分けられる水相から、含まれていたアルコールの残留量が蒸留により分離され、且つ合成に返送される。水が新たに分解において使用される。分解において蒸気を添加しない方法変法の場合、反応しなかったエーテル、アルコール及び一般に微量の水から成る留分が合成に返送される。
【0015】
MTBEの合成及び分解は、Catalysis Today 1997,第34巻,第447頁〜第455頁中での刊行物の対象でもある。それによると、メタノール循環流中で2−メトキシブタン(メチル−s−ブチルエーテル、MSBE)がひどく溜まることが回避される。そのほか、MTBE合成におけるTBAの形成及びMTBE分解の条件下でのTBAの再分解に関する記載は見当たらない。TBAの返送若しくは排出に関する記載又は水濃度の制限はなされていない。
【0016】
それゆえ、MTBE合成においてTBA形成によって結合されたイソブテンを分解用に使用可能とし、且つ同時に合成及び分解においてTBA及び/又は水が過剰に増大することを制限する、MTBEの合成及び分解のためのプロセスを開発するという課題が存在していた。
【0017】
この課題は、MTBEの分解によるイソブテンの製造法によって解決され、その際、次の工程を経る:
a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程、
b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水及び場合によりTBAを含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、
f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程。
【0018】
本発明による方法は、含水率を、工程段階e)において、留分(VIII)中で1質量%を下回る割合に下げることを特徴とする。
【0019】
本発明による方法の利点は、TBAとして結合されたイソブテンを分解用に利用するだけにとどまらない。付加的な流として、比較的僅かな排水量しか発生せず、これは、例えば浄化装置に供給されることができる。それに対して、TBAがプロセスから別個の流として排出される場合には、これは分けて利用される必要がある。一方で、文献中にしばしば記載される、例えばガソリンエンジンとして市販される残留流MTBEへの分離若しくは混合の手法は、限られてのみしか可能ではない。欧州では、例えば、市場に出回っているMTBEの代表特性はエーテル含有率98%である。
【0020】
エーテルの分解の工程段階において使用される触媒に応じて、あとに続く後処理工程が酸性pH値を有するというリスクが存在する。原因は、例えば、触媒による微量の酸の放出又は分解反応の副反応として例えばギ酸が形成されることにあり得る。この結果、あとに続くこれらの工程段階において安価な低合金鋼を使用することができず、むしろ酸性条件に基づく腐食の回避のために高価な高合金鋼を使用しなければならなくなりうる。これを避けるために、本発明による方法の工程段階d)又は工程段階e)でアルカリ液流を計量供給してよい。本発明による方法の更なる利点は、アルカリ液を簡単に、工程段階e)での水分離に際して水留分と一緒に方法から排出することができることである。それにより、アルカリ液が工程段階a)に返送され、且つここで場合により、使用される触媒の損傷を招くリスクがなくなる。
【0021】
更に本発明の対象は、次の部材:
i)管束、
ii)管板、
iii)偏向板、
iv)内部ジャケット、
v)少なくとも1つの流入口並びに流出口を含有する、耐圧性の外部ジャケット、
vi)熱を放出するか又は吸収する液体を含有するジャケット空間
を有する管束装置において、内部ジャケットが、ギャップ無しに又は僅かなギャップで、管束の長さにわたって取り付けられた偏向板並びに管板と接続されており、その際、ジャケット空間中に存在する液体が内部ジャケットを両側で取り囲むことを特徴とする管束装置である。
【0022】
供給物質
本発明による方法では、通常使用されている全ての工業用C4炭化水素混合物が使用されることができる。
適したイソブテン含有C4流は、例えば、精油所からの石油ベンジン留分、分解装置(例えば蒸気分解装置、水素化分解装置、接触分解装置)からのC4留分、フィッシャートロプシュ合成からの混合物、ブタンの脱水素からの混合物、線状ブテンの骨格異性化からの混合物及びオレフィンのメタセシスにより生じた混合物である。これらの技法は、専門文献に記載されている(K.Weissermel,H.J.Arpe,Industrielle Organische Chemie,Wiley−VCH,第5版,1998年,第23頁〜第24頁;第65頁〜第99頁;第122頁〜第124頁)。
【0023】
例えば、優先的にエテン及びプロペンの製造のために運転され、且つ原料として、例えば精油ガス、ナフサ、軽油、LPG(液化石油ガス)及びNLG(天然液化ガス)が使用される蒸気分解装置からのC4留分、又は接触分解装置からのC4留分が使用される。副生成物として発生するC4カットは、分解法に応じて、様々な量のイソブテン、1,3−ブタジエン、1−ブテン、c−2−ブテン、t−2−ブテン、n−ブタン及びi−ブタンを含有する。
【0024】
本発明による方法で使用されるイソブテン含有C4炭化水素は、好ましくは、1質量%より小さい、特に有利には0.5質量%より小さい含有率の1,3−ブタジエンを有する。典型的なイソブテン含有C4炭化水素混合物は、例えば、水素化CC4(HCC4)及びラフィネートIである。水素化CC4は、例えば、公知の工業法に従い、CC4中に含まれた多価不飽和炭化水素の選択水素化によって得られる。その際、例えば、1,3−ブタジエンから、主として1−ブテン及び2−ブテンが形成される。
【0025】
ラフィネートIは、1,3−ブタジエンと、CC4からのその他の多価不飽和炭化水素の分離によって得られる。これは、公知の方法に従い、例えば抽出蒸留によって行われることができる。
【0026】
下の第1表には、CC4、HCC4及びラフィネートIの主成分の典型的な質量割合を記載している。
【0027】
【表1】
注釈
CC4(S):蒸気分解装置(高過酷度)の分解生成物C4から触媒の付加的な調節なしに得られるC4混合物固有のもの。
全ての値は質量%記載である。
【0028】
ラフィネートI又はHCC4からのイソブテンの部分的な又は完全な分離後に得られたC炭化水素の混合物は、通例ラフィネートIIと呼ばれる。ラフィネートII中のイソブテンの残留含有率はイソブテンの分離の方法により変化し、且つ通常は5質量%未満である。イソブテンを分離するための典型的な方法は、エーテル合成(MTBE、ETBE)のほかに、TBA合成及びイソブテンの二量化である。
【0029】
工程段階a):MTBE合成
方法の工程段階a)では、他のC4炭化水素との混合物の形で含まれているイソブテン(I)が、イソブテン含有C4炭化水素(II)として使用される。特に有利には、本発明による方法では、イソブテン含有C4炭化水素(II)として、HCC4、ラフィネートI、それらの混合物又はそれらとラフィネートII流との混合物が使用される。使用されるC4炭化水素流は、飽和するまで水を含有してよい。典型的に含水量は200〜400ppmである。そのうえ、極性成分を取り除くために、C4炭化水素を工程段階a)での使用前に水で洗浄することが有利であり、それに従って、C4流は水飽和で存在する。不均一に含まれた水は、例えば、凝集を促進する内部構造物有り又は無しのデカンターにより方法工程a)での使用前に分離される。
【0030】
本発明による方法の工程段階a)では、イソブテン含有C4炭化水素(II)に含まれたイソブテン(I)がメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させられて、MTBE−及びTBA含有の反応混合物(IV)が取得される。原則的に、このために、MTBE合成のための全ての公知の方法を使用してよく、例えば、該MTBE合成は、DE10102082における記載と同じように行われることができる。
【0031】
工程段階a)におけるMTBE合成は、好ましくは、少なくとも2つの、特に有利には3つの固定層反応器中で実施される。メタノール(III)がイソブテン(I)と熱力学的平衡付近にまで反応させられる反応器として、従来の固定層反応器(管束反応器、断熱固定層反応器、循環反応器)を使用することができる。該反応器は部分的な返送有り又は無しで運転されることができ、その際、場合により返送流は冷却してよい。固定層反応器のそのつど最後の反応器から、MTBE−及びTBA含有の反応混合物(IV)が抜き出され、該反応混合物(IV)は、更なる構成成分として、なかでも、反応しなかったC4炭化水素、2−メトキシブタン、C8炭化水素、DME及びメタノール残留量を含有する。
【0032】
イソブテンの転化は、MTBE、メタノール及びイソブテンからの熱力学的平衡が成立するまで可能な限り行われ、その際、好ましくは、90%より大きい、特に有利には95%より大きい、極めて有利には98%より大きいイソブテン転化率に調節されるか若しくは達する。反応器は、好ましくは、20〜110℃の温度、有利には25〜70℃の温度、及び0.5〜5MPaの圧力、好ましくは0.7〜2MPa(絶対)の圧力で運転される。
【0033】
メタノール/イソブテンとエーテルとの間の熱力学的平衡は、低温の場合、エーテル側が優勢になるので、反応器の1つ目を、該平衡状態を利用する次に続く反応器よりも高い温度で、高い反応速度を目的に運転することが有利である。好ましくは、反応器の1つ目は、35〜70℃の温度で運転され、且つあとに続く反応器は、25〜50℃の温度で運転される。
【0034】
メタノール(III)は、1つ以上のメタノール含有流(該流は、そのうえ更に別の成分を含有してよい)により、工程a)での反応に供給される。例えば、次のメタノール含有流が使用される:新しい、つまり、本発明によるプロセスにおいて回収されなかったメタノール(MTBE排出又はDME形成によるメタノールの損失を補償するため)、メタノール含有留分(VIII)及び抽出からの水とメタノールの分留に際して発生する流。メタノール(III)は、この発明の範囲内では、これらの流中に含まれた純メタノールの合計に当てはめられる。
【0035】
更なる成分として、これらの流中には、例えばMTBE、TBA、水、C8炭化水素及びイソプレンが含まれていてよい。
【0036】
当然のことながら、これらの流を分けて、該方法の様々な箇所に送り込むことが可能である。しかしながら、有利なのは、それらを混合し、且つ共通の流として利用することである。
【0037】
工程段階a)の1つ目の反応器に向かう供給流中でのメタノール(III)対イソブテンのモル比は、好ましくは、10:1〜1:1の範囲に、特に有利には5:1〜1.1:1の範囲に、且つ極めて有利には1.8:1〜1.2:1の範囲にある。
【0038】
触媒として、MTBE合成では、スルホン酸基を有する固体の酸性イオン交換体樹脂が使用される。適したイオン交換体樹脂は、例えば、フェノール/アルデヒド縮合物のスルホン化又は芳香族ビニル化合物のコオオリゴマーのスルホン化によって製造されるイオン交換体樹脂である。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物の例は:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレン及びジビニルベンゼンである。
殊に、スチレンとビニルベンゼンとの反応によって生じるコオリゴマーは、スルホン酸基を有するイオン交換体樹脂の製造用の前駆体として用いられる。該樹脂は、ゲル状、マクロ孔状又は海綿状に製造されることができる。これらの樹脂の特性、殊に比表面積、多孔度、安定度、膨潤度若しくは収縮性及び交換容量は、製造プロセスによって変化させられることができる。
【0039】
触媒として使用されるイオン交換体樹脂の細孔容積は、好ましくは0.3〜0.9ml/g、殊に0.5〜0.9ml/gである。該樹脂の粒度は、有利には0.3mm〜1.5mm、殊に0.5mm〜1.0mmである。粒度分布は、より狭く又はより幅広く選択されることができる。そのようにして、例えば、非常に均一な粒度を有するイオン交換体樹脂(単分散樹脂)が使用されることができる。イオン交換体の容量は、供給型を基準として、有利には0.7〜2.0eq/l、殊に1.1〜2.0eq/l、若しくは、好ましくは0.5〜5.5mol/kg、殊に0.8〜5.5mol/kgである。容量(mol/kg)に関する値は、そのつど例えば105℃にて高温窒素流中で恒量になるまで乾燥されたイオン交換体樹脂に当てはめられる。
【0040】
本発明による方法において、イオン交換体樹脂はそのH型で使用されることができる。好ましくは使用されるスチレン−ジビニルベンゼンタイプの強酸樹脂は、なかでも以下の商品名で販売される:Amberlyst(R)15、Amberlyst(R)35(それぞれRohm & Haas)又はLawatit(R)K2621(Lanxess)。
【0041】
工程段階b):MTBE分離
反応混合物(IV)からのMTBE−及びTBA含有の留分(V)の蒸留分離は、最も簡単なケースにおいては、唯一の塔内で行われることができる。
その際、留分(V)が塔底生成物として得られる。留出物は、主として、メタノールとの共沸混合物形成に基づきメタノールも含有する、反応しなかったC4炭化水素、及びDMEから成る。塔底生成物は、TBA及びMTBEのほかになお2−メトキシブタン及びC8炭化水素を含有する。メタノール(III)/イソブテン(I)の選択された比と達成された転化率に依存して、メタノールもなお含まれていてよい。
【0042】
蒸留塔は、好ましくは、15〜55段の理論段、有利には20〜40段の理論段、且つ特に有利には25〜35段の理論段を有する。塔の供給流は、好ましくは、(上から)10段目から30段目の間で、有利には15段目〜25段目の間で添加される。該塔は、好ましくは、0.3〜2.5MPa(絶対)の圧力で、有利には0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力で運転される。還流比は、実現される段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には2より小さい。還流比と呼ばれるのは、本発明によれば、排出された留出物流に対しての塔内に流れる還流の比である。
【0043】
有利な実施形態AFF1では、該塔の場合、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が側留として取り出される。塔底生成物として、C8炭化水素が富化されている留分が発生し、且つ該留分はそうしてプロセスから排出される。C8炭化水素及び場合によりC8+炭化水素の該分離は、該炭化水素が分解反応器に達しないか又は非常に僅かしか分解反応器に達しないという利点を有する。それによって、触媒が、MTBE分解において高沸点物による負荷から保護され、このことによって、触媒の活性低下及び可使期間の短縮が生じるというリスクが減らされる。
【0044】
MTBE−及びTBA含有の留分(V)が側留として取り出される蒸留塔は、好ましくは、20〜65段の理論段、有利には25〜55段の理論段、且つ特に有利には30〜45段の理論段を有する。該塔の供給流は、好ましくは、(上から)10段目から30段目の間で、有利には15段目〜25段目の間で添加される。側流の取り出しは、好ましくは、供給流の添加部より下方で、有利には、供給部より5段から25段の間だけ下方で、特に有利には10段から20段の間だけ下方で、且つ好ましくは塔底流取り出し部より5段から20段の間だけ上方で、有利には10段から15段の間だけ上方で行われる。該塔は、好ましくは、0.3〜2.5MPa(絶対)の圧力で、有利には0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力で運転される。還流比は、実現される段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には2より小さい。
【0045】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF2では、塔は反応蒸留として構成される。これは、工程a)で反応しなかった付加的なイソブテンがMTBEに転化されるという利点を有する。
【0046】
反応蒸留塔は、0.3〜2.5MPa(絶対)、好ましくは0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力範囲で、且つ50〜90℃、好ましくは55〜70℃の反応ゾーン内での温度で、0.5から1.5の間の還流比、有利には0.7から0.9の間の還流比で運転される。
【0047】
有利には、該反応蒸留塔は、触媒充填物の上方で、単に蒸留分離の領域を有する。有利には、触媒充填物の上方のゾーンは、5〜25段、殊に10〜15段の分離段を有する。この触媒の下方の分離ゾーンは、10〜40段、殊に20〜30段の分離段を有する。
【0048】
反応蒸留塔への供給は、触媒ゾーンの上方又は下方で、好ましくは下方で行ってよい。反応蒸留塔への供給は、好ましくは、反応性充填物の下方で、有利には、反応性充填物より3〜13理論段下方で、特に有利には4〜10理論段下方で行われる。
【0049】
触媒ゾーンは、充填物高さ1メートル当たり1〜5段の理論段の蒸留作用を見積もることができる。触媒ゾーン/反応ゾーンの高さは、所望のイソブテン転化率に依存して、簡単な予備試験によって算出されることができる。触媒量は、好ましくは、反応蒸留のために、供給流中のイソブテン含有率を基準として、75〜99%、好ましくは85〜98%、且つ特に有利には95〜97%のイソブテン転化率が達成されるような量で選択される。
【0050】
触媒として、工程段階a)におけるように、酸性イオン交換体樹脂が用いられる。反応蒸留塔内で、触媒は、充填物中に、例えば(EP0428265に記載されるような)KataMax(R)、(EP0396650又はDE29807007.3U1に記載されるような)KataPak(R)に組み込まれていてよいか、又は(US5,244,929に記載されるように)成形体上で重合させられていてよいかのいずれかである。
【0051】
塔の触媒充填物中の液圧ローディング(hydraulische Belastung)は、そのフラッディング点ローディング(Flutpunktbelastung)の、有利には、10%〜110%、好ましくは20〜70%である。蒸留塔の液圧ローディングとは、上昇する蒸気質量流と還流する液体質量流とによる塔断面積の均一な流動工学的な負荷と解される。ローディング上限値は、蒸気及び還流液による最大ローディングを表し、それより上では、分離効果は、上昇する蒸気流による還流液の連行又は堰き止めのために下がる。ローディング下限値は最小ローディングを表し、それより下では、分離効果は、不規則な流れのために又は塔−例えばトレイが空になるために下がるか又は消失する(Vauck/Mueller,"Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik", 第626頁、VEB Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie)。
【0052】
フラッディング点では、ガスから液体に伝達された剪断応力が非常に大きいことから、液体の全量は、液滴の形態でガスにより連行されるか又は塔内で転相が生じることになる(J. Mackowiak,"Fluiddynamik von Kolonnen mit modernen Fuellkoerpern und Packungen fuer Gas/Fluessigkeitssysteme", Otto Salle Verlag 1991)。
【0053】
更なるイソブテン転化率を得るための反応蒸留技術によって、殊に、留出物中のC4混合物を基準として、1000質量ppm(wppm)より小さい、有利には800wppmより小さい、且つ特に有利には500wppmより小さいイソブテン残留濃度が得られることができる。
【0054】
塔供給流中には、依然として存在するイソブテンを完全に転化するのに使われるより多いメタノールが含まれていてよい。しかしながら、メタノール過剰分は、一方では、メタノールとC4炭化水素とからの形成される共沸混合物に十分なメタノール量が存在し、他方では、有利には、10000wppmを下回る、特に有利には5000wppmを下回るメタノール含有量を有するMTBEが得られるよう、過度に多量のメタノールが塔底生成物に含まれるほど多くはならないように制限されるべきである。
【0055】
任意に、付加的なメタノールを反応蒸留塔に送り込んでよい。これは、工程段階a)からの供給流と一緒にか又は反応蒸留塔の一箇所若しくは数カ所で行ってもよく、例えば塔頂部で並びに/又は触媒層上、触媒層間及び/若しくは触媒層下で行ってよい。
【0056】
留出物として分離されたメタノール含有C4炭化水素は、種々の後処理変法において更なる加工に供されることができる。
【0057】
有利な後処理変法では、留出物として得られたメタノール含有C4炭化水素からメタノールが分離される。塔頂生成物からのメタノールの分離は、殊に、洗浄媒体としての水又は水溶液による抽出によって行われることができる。有利には、8以上のpH値、有利には8〜12のpH値を有する水溶液が使用される。pH値の調節は、例えば、水酸化ナトリウム溶液及び/又は硫酸の添加によって行ってよい。公知の標準方法に従ったこの抽出は、例えば、抽出塔内で又はミキサーと分離容器のカスケード中で行ってよい。有利には、メタノールの分離は、抽出塔内で洗浄媒体として水又は水溶液を用いて行われる。その際、アルコールの残留含有量は、有利には0.2質量%より下に、特に有利には500wppmより下に、極めて有利には50wppmより下に低減される。該抽出塔は、有利には2〜25段の理論段、特に有利には5〜15段の理論段を有し、また10〜90℃の温度で且つC4炭化水素の蒸気圧を少なくとも0.1MPa上回る圧力で運転される。洗浄媒体対供給された塔頂生成物(工業用混合物IV+メタノール)の質量比は、好ましくは1:5〜1:40である。
【0058】
抽出からのアルコールで負荷された洗浄水は、有利には別個のユニット内で後処理され、且つ水は少なくとも部分的に抽出に返送される。後処理は、例えば蒸留によって行ってよく、その際、実際にはアルコール不含の水留分が塔底で得られ、且つメタノールが塔頂生成物として得られる。このメタノールは、本発明による方法の工程a)に返送されることができる。
【0059】
抽出から得られた、メタノール不含のC4炭化水素は、公知の方法に従って高純度1−ブテンに後処理されることができる。このために、例えば、まず選択水素化において多価不飽和炭化水素の痕跡量が水素化され(例えばDE3143647)、且つ引き続き2回の分留によって、まずn−ブタンと2−ブテンが、その後にイソブタンと更なる低沸点物が1−ブテンから分離される。1回目の分留に際して分離された2−ブテンとn−ブタンは、例えば、オリゴマー化においてC8オレフィンに(例えばOCTOLプロセス、Hydrocarbon Process,Int.Ed.(1986)65,第31頁〜第33頁を参照されたい)又はヒドロホルミル化においてバレルアルデヒドに更に加工されることができる。
【0060】
分離されたC4炭化水素の有利な第2の後処理変法では、これらはまず、イソブテン含有量を更に減少させるための更なる反応段階に供給される。この反応は、有利には1つ又は2つの断熱固定層反応器中で行われ、触媒として、工程段階a)でのものと同じ触媒が使用される。反応が実施される温度は、好ましくは、20〜60℃、有利には30〜50℃であり、圧力は、好ましくは、0.5〜5MPa、有利には0.7〜2MPaである。
有利には、反応器の出口でのメタノール含有率が、有利には1〜10質量%となるように、該反応段階に付加的なメタノールが送り込まれる。
該反応段階の搬出物は、蒸留塔内で分けられ、その際、留出物としてメタノール含有C4炭化水素が得られる。この蒸留も、反応蒸留として実施されることができる。C4炭化水素は、第1の後処理変法と同じように、抽出、選択水素化及び蒸留によって更に加工されることができる。塔底生成物としてMTBE流が発生し、これは通常、なおメタノールを含有している。該流は別途利用できるか、又は完全に若しくは部分的に工程段階a)に返送されることができる。
【0061】
この第2の後処理変法に従った後処理の場合、なお若干のMTBEが留出物流中に残留するよう、反応混合物(IV)の蒸留分離はあまり労力をかけずに運転されることができる。それによって、必要とされるエネルギー投入量を減らすことができる。
【0062】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF3では、反応混合物(IV)を分離するための第1の塔の後で、第1の塔のMTBE塔底生成物が第2の塔内で更に精製される。この塔内で、高沸点物、なかでもC8炭化水素が、塔底生成物として取り除かれる。この塔のさらに別の課題は、2−メトキシブタンの部分的又は完全な分離でありえ、それというのも、2−メトキシブタンは反応器中で線状ブテンとメタノールに分解されうるからである。線状ブテンは、濃度が過度に高い場合、場合によってはイソブテン規格を脅かしかねない。
【0063】
塔は、供給流中に含まれたTBAの大部分を可能な限り留出物に至らしめる圧力で運転される(圧力共沸混合物の形成)。それゆえ塔の圧力は、DIBのみが又は付加的に2−メトキシブタンが分離されるべきか否かに関係なく、好ましくは0.3〜2.0MPa(絶対)である。塔頂部で得られたMTBE−及びTBA含有の留分(V)の分解が、分解反応器中で、気相中で高められた圧力にて行われる場合、蒸留はより高い圧力で実施することが好ましいとされえ、この場合、塔頂凝縮器は、好ましくは分縮器として運転され、且つこの塔頂生成物(V)は蒸気状で抜き出される。蒸気状で抜き出された塔頂生成物は、次いで、反応器に直接供給されるか又は更なる予熱が行われた後に反応器に供給されることができる。蒸留と反応器との間の差圧は、この場合、有利には少なくとも0.05MPa(絶対)である。分解反応器中の反応圧力が、例えば0.7MPa(絶対)である場合、蒸留圧力は、好ましくは少なくとも0.75MPa(絶対)であるべきである。0.95MPa(絶対)より大きい運転圧力の場合、凝縮熱により(低圧−)蒸気を発生させることができ、これにより該方法の他の塔を加熱することができる。塔の加熱のために、選択された運転圧力に応じて、蒸気又は熱媒体油が使用されることができる。
【0064】
塔内で、殊にC8炭化水素のみが分離されるべき場合、該塔が15〜60段の理論段、好ましくは、20〜55段の理論段、且つ有利には30〜45段の理論段を有する場合に好ましくありうる。本発明の範囲内で、留出物の質量流量で割った還流の質量流量として定義される還流比は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び必要とされる純度に依存して、好ましくは、0.5〜7の値、有利には1〜4の値に調節される。
【0065】
塔内でDIBと付加的に2−メトキシブタンが分離されるべき場合、使用される蒸留塔は、好ましくは、50〜140段の理論段、有利には60〜120段の理論段、且つ極めて有利には80〜110段の理論段を有する。還流比は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び必要とされる純度に依存して、好ましくは、1〜20、有利には3〜10である。
2−メトキシブタンの分離が必ずしも必要とされていない場合ですら、より多くのトレイ数を有する塔の設計が不利になるとは限らず、それというのも、より大きな塔のために投入される、より高い資本費の一部が、エネルギーの節約(還流比の低下)によって補償されることができるからである。同時に、これによって、実際に運用する上での汎用性がより高まる。
【0066】
該塔の塔底生成物は、高沸点物ジイソブテン及び2−メトキシブタン並びにMTBEを含有する。塔内で、とりわけジイソブテンが分離されるべき場合、塔底生成物中のMTBE含有率は、25質量%より小さい値に減少させてよい。付加的に2−メトキシブタンが分離されるべき場合、2−メトキシブタンとMTBEとの間の小さい沸点差に基づき、分離にかける労力を減らすために、目的に応じて塔底生成物中で60〜85質量%のより高いMTBE含有率が許容される。
いずれの場合においても、この混合物は熱利用されることができ、合成ガスプラント用の供給原料として用いられることができるか又は直接的に若しくは水素化後に燃料成分として使用されることができる。
【0067】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF4では、AFF3の2つの塔の間に、副生成物を分離するための更なる蒸留塔がつながれる。この塔内では、頂部を介して中沸点成分が完全に又は部分的に留出物として分離される。中沸点成分とは、この発明の範囲内で、C4炭化水素とMTBE若しくはMTBE/メタノール共沸混合物との間の沸点を有する成分と解される。これに関する例は、ジメトキシメタン及びC5炭化水素、例えばn−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン及びイソプレンである。場合により依然として含まれるC4炭化水素の残分が、中沸点成分と一緒に分離される。塔に向かう供給流中の中沸点成分の割合は、通常高くはなく、且つ好ましくは、2%を下回り、有利には0.5%を下回る。
【0068】
中沸点成分を分離するための代替案は、通常ずっと高い量のC4炭化水素と一緒に、第1の塔の留出物を介して分離することである。これらからは、しかし、中沸点成分は蒸留により塔底生成物としてのみ分離可能である。このためにC4炭化水素全体は頂部を介して蒸留されなければならないので、この選択肢はエネルギー的により都合が悪い。
【0069】
好ましくは、中沸点成分を分離するための蒸留塔は、30〜75段の理論段、有利には40〜65段の理論段、且つ特に有利には40〜55段の理論段を有する。好ましくは、塔は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び中沸点成分の必要とされる純度に依存して、150〜350の還流比、殊に200〜300の還流比により運転される。塔は、好ましくは、0.2〜0.6MPa(絶対)の圧力で、有利には0.3〜0.4MPa(絶対)の圧力で運転される。
塔の加熱のために、例えば蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。塔の塔頂蒸気は、塔頂生成物が液状又は蒸気状のいずれかで抜き出されることができるように、完全に又は部分的にのみ凝縮してよい。塔頂生成物は、例えば熱利用されるかことができるか、又は合成ガスプラントの供給原料として利用されることができる。
【0070】
工程段階b)で分離されたMTBE−及びTBA含有の留分(V)は、好ましくは、95質量%より大きい、特に有利には98質量%より大きい含有率のMTBEを有する。TBAの割合は、好ましくは、0.05〜5質量%、有利には0.2〜2.0質量%、極めて有利には0.2〜1.0質量%である。MTBE及びTBAのほかに、メタノールが、好ましくは0〜5質量%、有利には0.1〜1質量%含まれていてよい。
【0071】
更なる成分の濃度と発生は、工程段階a)で使用された原料と工程a)及びb)での処理操作に強く依存している。2−メトキシブタンの含有率は、好ましくは、0〜1.0質量%、有利には0.05〜0.5質量%、特に有利には0.08〜0.3質量%である。C8炭化水素の含有率は、好ましくは、0〜1質量%、有利には0〜0.1質量%、特に有利には0〜0.01質量%である。
【0072】
他の含まれる典型的な成分は、3−メトキシ−1−ブテン、1−メトキシ−2−ブテン、ジメトキシメタン及びC5炭化水素である。
【0073】
工程段階c):MTBE分離
本発明による方法の工程c)では、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が完全に又は部分的に分解反応に供され、そこで、該留分は、不均一系触媒を用いて気相中で少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水並びに場合によりTBAを含有する分解生成物(VI)に分解される。その際、120〜400℃の温度範囲で、殊に180〜350℃の範囲で、MTBEからイソブテン及びメタノールへの分解を引き起こす全ての固体触媒を使用することができる。
【0074】
有利には、本発明による方法は、工程a)で作製されたMTBEの可能な限り大部分が工程c)に供給されるように行われる。それゆえ殊に、イソブテン含有C4炭化水素からの純イソブテンの製造に、C4炭化水素中に含まれるイソブテンの高い割合が純イソブテンとして得られるべき場合に適している。代替的に、該方法において発生するMTBEに富んだ流は、案分して他に、例えば燃料添加物として利用するために使用することができる。しかし、特に有利なのは、反応混合物(IV)中に含まれるMTBEの少なくとも80質量%、極めて有利には少なくとも90質量%を、留分(V)を介して工程c)に供給することである。
【0075】
本発明による方法において使用される触媒は、例えば金属酸化物、金属混合酸化物、殊に、二酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含有するもの、金属酸化物担体上の酸又はそれらの金属塩又は混合物であってよい。
【0076】
本発明による方法では、気相中でのMTBEからイソブテン及びメタノールへの分解のために、有利には、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から成る触媒が用いられる。係る触媒は、例えば、US5,171,920の中で例4に、又はEP0589557の中で記載される。
【0077】
特に有利には、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素を有し、且つ酸化マグネシウム0.5〜20質量%、有利には5〜15質量%、特に有利には10〜15質量%の割合、酸化アルミニウム4〜30質量%、有利には10〜20質量%の割合及び二酸化ケイ素60〜95質量%、有利には70〜90質量%の割合を有する触媒が使用される。触媒が酸化マグネシウムのほかにアルカリ金属酸化物を有する場合が好ましくありうる。これは、例えばNa2O又はK2Oから選択されていてよい。好ましくは、触媒はアルカリ金属酸化物としてNa2Oを有する。有利には使用される触媒は、好ましくは、200〜450m2/g、有利には200〜350m2/gのBET表面積(DIN ISO 9277による窒素を用いた容量測定)を有する。本発明による触媒が活性材料として担体上に施与される場合、活性材料のみが前述の範囲のBET表面積を有する。それに対して、触媒と担体とからなる材料は、担体の性質に応じて、明らかに相違するBET表面積、殊により小さいBET表面積を有してよい。
【0078】
触媒の細孔容積は、好ましくは、0.5〜1.3ml/g、有利には0.65〜1.1ml/gである。
【0079】
触媒の平均孔径(好ましくは、DIN66133に依拠して測定)は、好ましくは、5〜20nm、有利には8〜15nmである。特に有利には、触媒の全細孔容積(DIN66133による水銀ポロシメトリーを用いて測定した3.5nm以上の孔径を有する細孔の細孔容積の総和)の少なくとも50%、好ましくは70%を上回る分が、3.5〜50nmの直径を有する細孔(メソ孔)に当たる。
【0080】
本発明による方法では、有利には、平均粒度(ふるい分析によって測定)10μm〜10mm、好ましくは0.5mm〜10mm、特に有利には平均粒度1〜5mmを有する触媒が使用される。好ましくは、2〜4mm、殊に3〜4mmの平均粒度d50を有する固体触媒が使用される。
【0081】
本発明による方法では、触媒は成形体として使用されることができる。成形体は任意の形状をとってよい。有利には、触媒は、球、押出物又はタブレットの形状における成形体として使用される。成形体は、好ましくは、上述の平均粒度を有する。
【0082】
係るマグネシウム−アルミノケイ酸塩触媒の製造及び使用は、DE102006040432.7に記載されている。これが引用される。
【0083】
いくつかの触媒の活性及び/又は選択性にとって、反応器供給流に若干の水が添加される場合に好ましくありうる。そのようにして、例えば、JP19912201は、副成分の形成を減少させるためにアルカリ金属又はアルカリ土類金属でドープされたアルミノケイ酸塩に水を連続的に添加することを記載する。
【0084】
本発明による方法では、反応器供給流への水の添加は、例えば、流(V)中への水の添加によって行ってよい。これは、例えば、反応器に送られるガス状の流(V)中への水又は水蒸気の添加によって直接的に行われる。流(V)が反応器手前で切り離して蒸発される場合、ここで水を添加してもよい。
更に別の可能性は、すでに工程段階b)において、MTBE−及びTBA含有の留分(V)の分離に際して添加することにある。有利には、その際、水は、塔供給流中に又は塔の還流中に送り込まれる。特に有利には、これは、流(V)が分離される塔内で行われる。
【0085】
触媒を調節するための水の任意の添加は、流(V)中の水割合が、有利には0〜5質量%、特に有利には0.2〜1.5質量%となるように行われる。
供給される水として、その際、有利には完全脱塩水又は蒸留水又は水蒸気が使用される。
【0086】
MTBEの分解は、気相中で120〜400℃の温度範囲、殊に180〜350℃の温度範囲で、0.1〜2MPa(絶対)の圧力、殊に0.3〜1MPa(絶対)の圧力、極めて有利には0.5〜0.8MPa(絶対)の圧力にて行われる。
【0087】
イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解は吸熱反応であり、反応混合物が該反応に際して冷却することを意味する。有利には、反応器は、選択された圧力条件下でMTBE及び生成物の触媒への部分凝縮が生じないように運転される。特に有利には、反応器は、反応器中の最小温度が触媒層のどの箇所でも、150℃より大きくなるように、極めて有利には200℃より大きくなるように運転される。最大の温度降下は、数多くのパラメーターによって、例えば加熱のために使用される熱媒体の温度によって、並びに熱媒体がジャケットを流れる速度によって調節されることができる。有利には、触媒層中の温度プロファイルは、十分な数の温度測定によってモニタされる。
【0088】
運転の経過中、触媒の失活の増大とともに転化率を一定状態に保つために入口温度及び/又は運転温度を上げることが好ましくありうる。
【0089】
本発明による方法の工程c)でのMTBEの転化率は、40%ないし98%の間、有利には75%ないし97%の間、特に有利には85%ないし95%の間にある。
【0090】
TBAが、MTBEの分解の条件下で同様に少なくとも部分的に分解される。転化率は、その際、相応する温度での反応の平衡状態によって制限されている。
【0091】
反応器は、好ましくは、空間速度(1時間当たり触媒1kg当たりでの出発材料(kg)の重量空間速度(Weight Hourly Space Velocity)(WHSV))0.1〜5h-1、殊に1〜3h-1によりシングルパスで運転される。
【0092】
反応器として、有利には、管型反応器又は管束反応器、殊に管内径10〜60mmを有するものが使用される。
管の加熱は、反応器ジャケットを介して、蒸気、塩溶融物又は熱媒体油によって行われる。殊に、液状の加熱媒体が使用される場合、その際、ジャケット面は、可能な限り均一な温度勾配が全ての管に生じるように構造的に仕上げられる。これに必要な技術的な措置は当業者に公知であり、且つ文献に記載されている(偏向板の取り付け、ディスク構造及びドーナツ構造、反応器の種々の箇所での熱媒体の供給/排出等)。有利には、反応媒体及び熱媒体は並流で、特に有利には上方から下方に向かってトラクター管若しくは反応ジャケットに通される。有利な実施形態は、例えばDE102006040433.5に記載されている。
【0093】
従来の管束装置中では、偏向板がジャケット面で使用され、これが実際に反応器と並行する熱媒体流体を横向きの流に変えることになる。このようにして熱伝達が改善され、且つ付加的に流路長が明らかに高められる。
とはいっても、偏向板と熱媒体の外部ジャケット間で製造上のギャップが発生する。ジャケット内に管束を挿入できるようにするためには、数ミリメートル(一般に3mmより大きい)ギャップ幅を有するギャップが必要とされる。これらのギャップ損失は、伝達された熱の低下を不可避的にもたらす。
【0094】
ジャケットと偏向板間のギャップ中では、個々のセグメント間の差圧に基づき必然的にリーク流が発生し、周辺ギャップを流れる液体は実際に熱伝達には与しない。リーク流は全部合わせて、ジャケット空間を流れる流全体の約40%までであってよい。
【0095】
それゆえ、本発明による方法の特に有利な実施形態において、特別な反応器タイプが使用され、該反応器タイプの場合、特別な構造によって、偏向板と装置ジャケット間の管束装置中で発生するリーク流が完全に防止され、且つそのようにして熱伝達が明らかに改善される。
【0096】
この特別な構造とは、以下でシャツと呼ぶ、管束の周りに敷設される更に別の(薄板)ジャケットである。本来のジャケットとは異なり、このシャツはギャップ無しに偏向板に取り付けられ、且つそこで固定される。該シャツは、偏向板及び管板とギャップを形成せずに、ジャケット側の液体入口の側で連結されている。一般にこれは、このシャツがより小さいセグメントから成り、且つこれらのセグメントが偏向板に固定されることを前提とする。製造の理由から、これらのセグメントは偏向板と固定されるか、あるいはまた互いに、好ましくは溶接されるか又は他の仕方で固定される。この製造法によって、ふつうは相当に長い管束がシャツに端止めされる必要がないことから、ギャップを完全に無くすことができる。
【0097】
運転中、ジャケット空間を貫流するのは、シャツで取り囲まれた管束の内部のみである。重要なことは、シャツが最後の偏向板を超えてずに管束の周りで固定されていることであり、その結果、ジャケット空間を流れる液体は、管束とは逸れた向きでシャツを取り囲み、且つそのようにして圧力調整が行われる。シャツ構造に負荷を掛けるのは、この配置の場合、管束内部の動圧損失から生じる差圧のみである。それゆえ、記載したシャツ構造は、耐圧性ではなく、且つそれに従って、外側のジャケットと比較して寧ろより僅かな壁厚で仕上げられることができる。それゆえ、シャツには、好ましくは壁が薄い薄板構造が選択される。薄壁材料の使用によって、製造が明らかに簡素化されえ、且つ偏向板に該薄板を取り付けることが実質的に軽減される。
【0098】
代替的に、外側のジャケットを、上に記載した方法で、偏向板と直接溶接することも考えられうる。係る解決手段と比較して、ここで提示したシャツ構造は、一連の利点を生み出し、殊に製造を明らかに簡略化する。その場合、装置は多数の耐圧性の溶接箇所から成らない。偏向板は変えずに保持されることもでき、且つ高められた壁厚等を有する必要がない。シャツによって取り囲まれた管束は、これまで通り、耐圧性のジャケットに挿入されることができる。とはいっても、その際、ギャップの規模は、ほぼ任意の大きさに選択されることができ、これによって、この箇所での組み立ても簡略化される。
【0099】
ここで提示した二重ジャケット構造の使用は、偏向板と外側ジャケット間のさもなければ発生するリーク流を排除することを可能にする。リーク流が無くなることは、いくつもの形で、反応器内部の熱伝達に好ましい影響を及ぼす。この場合の最も重要な効果は、偏向板間の意図された流路を貫通する質量流量の増大である。質量流量のこの増大は、流体と管との間の熱伝達の改善に直接つながる、流速度の増加を結果もたらす。さらに、セグメント内部の熱流量が同じ場合、半径方向温度勾配が明らかに減少する。セグメントに沿った温度勾配のこの低下は、他方では、ジャケット側と管側との間のより高い平均温度差を結果もたらし、そのためこの事実によっても熱媒体の改善が想定される。
【0100】
該シャツ構造は、使用される管型反応器との組合せにおいてMTBE分解が行われる場合、2つの形で反応に好ましい影響を及ぼす。1つ目の好ましい効果は、装置中での改善された熱伝達であり、これにより管軸に沿った定常温度プロファイルが生じる。したがって、反応による温度降下は、係るシャツ構造を有さない比較可能な装置の場合より少なくなる。2つ目の重要な効果は、ジャケット空間の個々のセグメントによって質量流量が増大することであり、それによって半径方向温度プロファイルが軽減される。この効果は生成物品質に改善作用をもたらす。
【0101】
管束装置のほかに、分解反応の実施用にプレート型反応器も使用されることができる。プレート型反応器は、プレート型熱交換器と同じように構成されている。触媒が存在するプレート間の距離は、この場合、有利には10〜80mmである。
【0102】
MTBEの分解に際しては、副反応が発生する。これらは、MTBE又は分解生成物のイソブテン及びメタノールに起因するものとみなされる。
【0103】
標準的に、MTBE分解に際しては、ジメチルエーテル(DME)の形成が起こる。その際、2個の分子メタノールが反応してDMEと水になる。好ましくは、本発明によるプロセスは、反応してDMEとなるDME選択率が10%を下回り、有利には4%を下回るように運転される。(DME選択率=2×[形成されたDME(モル)]/[反応したMTBE(モル)])。
【0104】
更に別の副反応は、イソブテンの二量化によるC8炭化水素の形成である。これらは、2,4,4−トリメチルペンテン−1及び2,4,4−トリメチルペンテン−2からの混合物から主として成る。
【0105】
ふつうは明らかにより低い規模で、更に別の副生成物の形成が観察される。それらに属するのは、例えばイソブタン、イソプレン及びジメトキシメタン並びに高次オリゴマー(C12炭化水素、C16炭化水素)である。
【0106】
たいていの場合、なお並行して進行する反応が副反応にさらに付け加えられ、この場合、反応器供給流からの不純物が反応する。それに含まれるのは、例えば、MTBE中に含まれた2−メトキシブタンの分解である。これから、メタノールの分解によって1−ブテンと2−ブテンが形成しうる。MTBE中に含まれた3−メトキシ−1−ブテン又は1−メトキシ−2−ブテンから、該分解において1,3−ブタジエンが形成されうる。
【0107】
工程段階d):イソブテン分離
反応器からの分解生成物(VI)は、本発明による方法の工程d)で、該分解生成物(VI)中に含まれるメタノール量、TBA量及び水量をそのつど50質量%を超えて含有する留分(VII)の取得下で分離される。
【0108】
第2表は、0.5MPa(絶対)での反応器搬出物中に含まれる成分の純物質沸点を示す。イソブテンのほかに、低沸点物として更にC4炭化水素(1−ブテン、2−ブテン)及びDMEが含まれている。イソプレン及びジメトキシメタンは、MTBEとC4炭化水素の沸点の間にある沸点を有する中沸点物の例である。中沸点物は、一部は反応において形成されるか又は不純物として供給流を介して分解に至る。高沸点物、つまり、MTBEより高い沸点を有する成分として、例えばt−ブタノール、ジイソブテン及び2−メトキシブタンが含まれている。
【0109】
含水量に関する値は、第2表において、流(V)中への水の付加的な添加を行わない反応器の運転様式に当てはめられる。ここで付加的な水が添加される場合、一般には反応器搬出物中の水とTBAの含有量が高まる。
【0110】
【表2】
【0111】
AFF5の有利な実施形態では、分解生成物(VI)の蒸留分離がまさに1つの蒸留塔内で行われる。この蒸留塔は、好ましくは、20〜55段の理論段、有利には25〜45段の理論段、且つ特に有利には30〜40段の理論段を有する。還流比は、実現された段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には1より小さい。塔の運転圧力は、好ましくは0.1ないし2.0MPa(絶対)の間で調節されることができる。その際、塔を、分解反応器が運転される圧力より低い圧力で運転することが好ましい。それから分解生成物(VI)はガス状又は部分的にガス状で、分縮後に、蒸留塔に移送されることができる。圧力を上げるための凝縮器又は完全な凝縮は、このようにして省かれることができる。
【0112】
特に有利には、反応生成物(VI)は分縮後に蒸留塔に移送される。その際、ガス流の有利には30〜70質量%、特に有利には40〜70質量%が凝縮される。
凝縮されなかったガス流は直接、凝縮されたガス流は、必要であれば、圧力上昇後にポンプによって塔内に導入される。冷却及び分縮に際して放出される熱は、その際、熱的統合のためにプロセス内で又は他のプロセス部分とともに利用されることができる。この熱的統合は、公知の先行技術に従って、例えば塔底蒸発器又は予熱器若しくは塔供給流中の予備的蒸発により行われることができる。
【0113】
気相及び液相の供給は、その際、塔の同じ箇所又は異なる箇所で行ってよい。有利には、液相の供給は、気相の供給と同じトレイで又は気相の供給部より5段まで下のトレイで行われる。
【0114】
気相の部分的な凝縮に際して放出される熱は、有利にはプロセスの他の箇所で、例えば塔の加熱のために又は反応器供給流の予熱のために利用される。
【0115】
イソブテンを塔頂部で冷却水に対して凝縮することができるように、0.5MPa(絶対)の圧力が必要とされる。分解が、例えば0.65MPa(絶対)の圧力で操作される時は、0.55〜0.65MPa(絶対)の運転圧力により蒸留塔が実施される場合に好ましくありうる。塔の蒸発器の加熱のために、例えば0.4MPaの蒸気を使用してよい。
【0116】
塔底生成物として、分解生成物(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%を超えるメタノール量、TBA量及び水量を含有する留分(VII)が得られる。この実施形態AFF5に応じた後処理の場合、留分(VII)はそのうえなおMTBEを含有する。有利には、AFF5に従って得られた留分(VII)は、それぞれ、分解生成物(VI)中に含まれた90質量%を超えるメタノール量、分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超えるTBA量、分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超える水量及び分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超えるMTBA量を有する。特に有利には、そのようにして分離された留分は、分解生成物(VI)中に含まれるMTBE量、TBA量、2−メトキシブタン量及びジイソブテン量の全量を実際に含有する。
【0117】
分解の搬出物中に含まれた中沸点物も、有利には同様に、そのようにして得られた留分(VII)とともに、有利には60〜100質量%、特に有利には80〜98質量%分離される。
【0118】
流(VII)の代表組成は、第2表に示した濃度範囲との組合せにおいて容易に出る。
【0119】
塔の頂部では、主としてイソブテン、メタノール(C4炭化水素との共沸混合物形成に基づく)及びDMEを含有する留分(XVII)が得られる。微量分として、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン及び中沸点物、例えばイソプレン及びジメトキシメタンが含まれていてよい。有利には、中沸点物の含有量は、合わせて50ppmを下回り、特に有利には、イソプレンの含有量は20ppmを下回り、ジメトキシメタンの含有量は30ppmを下回る。
【0120】
留出物中のメタノールの含有率は、一般には2〜4質量%である。メタノールを含まずに計算した留出物流を基準として、イソプレンの濃度は、好ましくは、25ppm未満であり、有利には1ppm未満であり、ジメトキシメタンの含有量は、好ましくは、10ppm未満であり、有利には1ppm未満であり、且つMTBEの含有量は、好ましくは、5ppm未満であり、有利には0.1ppm未満である。
【0121】
更なる有利な実施形態AFF6では、第1の蒸留がAFF5の蒸留と同じように実施され、しかし、該蒸留の塔底生成物は、第2の蒸留において更に精製される。その際、主としてMTBE−及びメタノール含有の塔頂留分が得られる。そのほかに、実質的にMTBE不含で、メタノールに富んだ塔底留分が得られ、該塔底留分中には、TBAと水の非常に大きな部分も含まれている。C8炭化水素も、付加的な側留を伴わない塔の運転の場合には、同様に塔底留分の構成成分である。しかしながら、C8炭化水素を塔の側留によって少なくとも部分的に排出することが可能である。このような方法は、例えばDE102006040434に記載されている。塔底留分は、次いで留分(VII)として本発明による方法の工程e)に導かれる。
【0122】
この第2の蒸留塔は、好ましくは、20〜75段の理論段、有利には30〜65段の理論段、且つ特に有利には35〜50段の理論段を有する。塔が、実現される段数及び分解反応器中で達成されたMTBE転化率に依存して、10より小さい還流比、有利には0.5〜5の還流比で運転される場合に好ましくありうる。塔の運転圧力は、好ましくは、0.05〜1MPa(絶対)の範囲、有利には0.1〜0.3MPa(絶対)の範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば0.4MPa(絶対)の蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、冷却ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。
【0123】
このように塔底で得られた留分(VII)は、好ましくは95質量%より大きい、特に有利には97質量%より大きいメタノールを含有する。塔底生成物中のTBA含有量は、好ましくは100〜1000質量ppmであり、且つ含水率は、好ましくは0.3〜2.0質量%である。反応部で生じた中沸点物、例えばイソプレン及びジメトキシメタンは、好ましくは、200ppmより小さい量で、有利には100ppmより小さい量で、且つ特に有利には50ppmより小さい量で含まれている。
【0124】
主としてMTBE及びメタノール含有の塔頂留分は、主成分MTBEの他になおメタノールと、反応部で生じた中沸点物、例えばイソプレン及び/又はジメトキシメタンを含有する。この流は、有利には完全に又は部分的に本発明による方法の工程b)に導かれる。特に有利には、それは工程段階の実施形態AFF4と組合せて3つの塔の真ん中に導かれ、その際、中沸点物はこの塔内で塔頂生成物として一緒に分離されることができる。
【0125】
工程段階e):水分離
工程段階d)で得られた留分(VII)から、工程段階e)において留分(VIII)の取得下で水が分離される。基本的に、その際、水の分離は、技術的に適用可能な全ての方法、例えば浸透、透析蒸発、吸着(例えばモレキュラーシーブによる圧力変動吸着)又は蒸留によって行ってよい。有利には、水の分離は、1つ又は2つの蒸留塔内での蒸留によって行われる。
【0126】
有利な実施形態AFF7では、水は、唯一の蒸留塔内での蒸留によって分離される。その際、水は、塔の底部で得られ、他の全ての成分は塔の頂部で得られる。
【0127】
蒸留塔は、好ましくは、15〜50段の理論段、有利には15〜40段の理論段、且つ特に有利には20〜35段の理論段を有する。塔が、実現される段数及び分解反応器中で達成されたMTBE転化率に依存して、2より小さい還流比、有利には0.5〜1の還流比で運転される場合に好ましくありうる。塔の運転圧力は、好ましくは、0.05〜1.0MPa(絶対)の範囲、有利には0.1〜0.5MPa(絶対)の範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば0.4MPaの蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。
【0128】
更なる有利な実施形態AFF8では、水の分離は、2段圧力蒸留(Zweidruckdestillation)として運転される2つの蒸留塔内で実施される。その際、例えば、1つ目の塔は2つ目の塔より低い圧力で運転され、且つ2つ目の塔の塔頂蒸気の凝縮熱により1つ目の塔の塔底が加熱される。2つの蒸留塔の1つ目は、その際、好ましくは、5〜35段の理論段、有利には10〜20段の理論段、且つ特に有利には15〜25段の理論段を有する。還流比は、0.1〜2、有利には0.5〜1である。1つ目の塔の運転圧力は、好ましくは、0.01〜1.0MPa(絶対)の範囲、有利には0.05〜0.2MPa(絶対)の範囲の値に調節される。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。2つの蒸留塔の2つ目は、好ましくは、10〜45段の理論段、有利には18〜38段の理論段、且つ特に有利には20〜30段の理論段を有する。還流比は、1.0〜5.0、有利には1.4〜2.8である。1つ目の塔の塔底圧力と2つ目の塔の塔頂圧力との差が、1つ目の塔の蒸発器(=2つ目の塔の凝縮器)中での増大する温度差を決定する。2つ目の塔の運転圧力は、好ましくは、1つ目の塔の塔底圧力より0.05〜0.5MPa(絶対)高い範囲、有利には0.15〜0.25MPa(絶対)高い範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば蒸気を使用してよい。
場合により、塔システムの制御をより良好なものとするために、1つ目の塔には、例えば蒸気で運転される付加的な蒸発器を備え付け、且つ2つ目の塔には、選択された運転圧力に応じて、例えばブライン、冷却水又は空気で運転される付加的な凝縮器を備え付けることが目的に適っている。
【0129】
蒸気を用いて1つ若しくは2つの乾燥塔を加熱する代わりに、他のプロセス流、例えば反応器からの分解ガスとの熱的統合も行われることもできる。この熱的統合は、公知の先行技術に従って、例えば塔底蒸発器又は予熱器若しくは塔供給流中の予備的蒸発により行われることができる。
【0130】
1つの蒸留塔として水分離が行われる場合、留出物流が得られ、2つの蒸留塔として行われる場合、留分(VIII)として2つの発生する留出物流を合わせたものが得られる。留分(VIII)の主成分はメタノールとMTBEであり、留分(VIII)中の含水率は、1質量%未満、有利には0.5質量%未満、特に有利には0.1質量%未満である。得られた流(VIII)は、完全に又は部分的に本発明による方法の工程a)に返送される。
【0131】
塔若しくは2つ目の塔の塔底流(XLI)は、大部分が水と微量のメタノール及び場合により更なる有機成分から成る。好ましくは、含水率は99.9質量%より大きく、有利には99.99質量%より大きく、且つ特に有利には99.999質量%より大きい。この流は、プロセス用水として、例えば方法の中で存在する抽出工程において利用されることができるか、又は排水として、場合により更なる精製後に排出されることができるかのいずれかである。
【0132】
工程段階c)で酸性触媒が使用される場合、反応器搬出物(VI)は酸性pH値を有する可能性がある。この結果、これらのあとに続く工程段階d)及びe)において、殊に工程段階d)における塔及び2つの塔の塔底領域及び続く工程段階e)において、安価な低合金鋼を使用することができず、むしろ酸性条件に基づく腐食の回避のために高価な高合金鋼を使用しなければならなくなりうる。これを避けるために、工程段階d)又は工程段階e)ではアルカリ液流を計量供給してよい。工程段階d)では、好ましくは、流(VI)への計量供給、有利には塔内への若しくは第1の塔内への計量供給が、供給流の添加部より下方で行われる。工程段階e)では、好ましくは、流(VII)へのアルカリ液の計量供給、有利には塔内への若しくは第1の塔内へのアルカリ液の計量供給が、供給流の添加部より下方で行われる。アルカリ液は、流(XLI)により再びプロセスから排出される。それにより、アルカリ液が工程段階a)に返送され、且つここで場合により、使用される触媒の損傷を招くリスクがなくなる。
【0133】
アルカリ液として、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液が使用されることができる。有利には、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液、殊に水酸化ナトリウム溶液が使用される。水溶液中の水酸化物の濃度は、0.5〜30質量%、殊に2〜5質量%である。水酸化ナトリウム溶液の場合、水酸化ナトリウムの含有率は、好ましくは、0.5〜30質量%の範囲に、殊に1〜5質量%の範囲に、極めて有利には2.5〜3.5質量%の範囲にある。アルカリ液は、塔底流(XLI)中で、有利には、8以上のpH値、有利には8〜12のpH値が生じるように配量される。
【0134】
高純度イソブテンへの精製
市場で行き渡っているイソブテン品質は、通常、メタノールを実際に含んでいない。分解生成物(VI)の蒸留分離に際して発生するイソブテン流はなおメタノールを含有する。これは、自体公知の方法に従って、例えば抽出によって分離されることができる。イソブテンからのメタノールの抽出は、例えば、抽出剤としての水又は水溶液を用いて、例えば抽出塔内で実施されることができる。
【0135】
好ましくは、水又は水溶液による抽出は、好ましくは4〜16段の理論段を有する抽出塔内で実施される。抽出剤は、抽出塔を、抽出されるべき流を基準として、好ましくは向流で貫流する。抽出は、好ましくは、15〜50℃、有利には25〜40℃の温度で実施される。例えば、0.9MPa(絶対)及び40℃の温度で運転される、6段を上回る理論段を有する抽出塔が使用される場合、10ppmより低いメタノール含有量を有する水飽和イソブテンが得られる。
【0136】
抽出に際して得られたメタノール含有の水抽出物は、蒸留により水とメタノールに分離されることができる。水は、抽出剤として抽出段階に返送されることができる。メタノールは、有利には、本発明による方法の工程a)に返送されることができる。
【0137】
抽出塔からの湿性イソブテン流は、1つ以上の更に別の蒸留塔内で、水と場合によってはDMEの分離によって乾燥イソブテンへと後処理されることができる。その際、乾燥したイソブテンは塔底生成物として得られる。塔の頂部での凝縮系において、相分離後に水が液状で、且つイソブテン残留量を有するDMEが液状及び/又はガス状で抜き出されることができる。乾燥のために有利には使用される蒸留塔は、好ましくは、30〜80段の理論段、有利には40〜65段の理論段を有する。還流比は、実現される段数及びイソブテンの必要とされる純度に依存して、好ましくは、60より小さく、有利には40より小さい。
【0138】
塔の運転圧力は、好ましくは、0.1ないし2.0MPa(絶対)の間で調節してよい。塔の頂部で得られるDMEに富んだ流は、必要ならば、引き続き蒸留により分離してよい。
【0139】
流VIからは、そのうえDMEの一部が、蒸留塔若しくは反応蒸留塔の凝縮器が分縮器として運転されることによって、場合によりすでに工程d)での蒸留に際して分離されることができる。この場合、塔頂生成物中に含まれるC4留分が凝縮され、且つガス状のジメチルエーテルの一部が排ガス流として抜き出されることができる。
【0140】
特に有利には、本発明による方法では、DMEと水を分離するための塔が、該塔の側流中に存在する、水を分離するためのデカンターとともに使用される。該デカンターを塔の側流中に組み込むことによって、イソブテンの損失量は最小化されることができる。このような方法は、例えば出願DE10238370にも記載されている。抽出からの湿性イソブテン流は、その際、場合により、例えばデカンター又はコアレッサーによる、残留する不均一な水の分離後に塔内に送り込まれる。塔の頂部ではDEMが、塔底では乾燥したイソブテンが得られる。出発物質を導入する箇所より下方又は上方で、塔からの側流が液状で取り出され、これはデカンターに導かれる。デカンター内では、水に乏しい有機相から水相が分離される。水は排出され、有機相は塔に返送される。側方デカンターに向かう流の抜き出しは、その際、有利には、塔供給部より下方で行われ、デカンターから塔内への流の返送は取り出し部より下方で行われる。
その際、塔は、好ましくは、30〜80段の理論段数、有利には40〜65段の理論段を有する。精製されるべきイソブテンは、好ましくは、そのつど上から数えて15〜30段目の分離段より上で送り込まれる。有利には、供給箇所より2〜5段上の分離段で、この分離段の凝縮物全体が抜き出され、且つデンカンターに通される。水の分離後、有機相は1〜2段の分離段低くして塔内に返送される。
【0141】
塔の還流比は、実現される段数及びイソブテンの必要とされる純度に依存して、好ましくは、60より小さく、有利には40より小さい。塔の運転圧力は、好ましくは0.1〜20MPa(絶対)、特に有利には1.0〜1.5MPa(絶対)である。
【0142】
このように取得されたイソブテンは、例えば、第3表に挙げた組成を有していてよい。
【0143】
【表3】
【0144】
イソブテン中に含まれた線状ブテン(1−ブテン、2−ブテン)は、該イソブテンから技術的に満足できる形で分離可能ではない。線状ブテンの形成は、なかでも、MTBE中に含まれている可能性がある2−メトキシブタンの分解から行われる。それゆえ、分解前の2−メトキシブタンの完全な分離によって線状ブテンの形成は回避されることができる。蒸留コストを制限するためには、しかしながら、2−メトキシブタンの僅かな濃度を許容することが好ましくありうる。殊にこれは、方法の工程c)で、MTBEを2−メトキシブタンより素早く分解する触媒が使用される場合に可能である。
【0145】
純度の要求に応じて、しかし、必要な場合には、副成分のより僅かな濃度も有効である。
【0146】
工程a)からの分離されたC4炭化水素の後処理に際してと、水又は水溶液を用いた抽出による留分(XVII)の精製に際しては、メタノール−水混合物が発生し、該混合物は、有利には蒸留によって水とメタノールとに分離される。有利には、これらの2つの蒸留は1つの蒸留としてまとめて行われる。プロセスの中で更なる水−メタノール流が発生する場合、これらも同様にこの分離に取り入れることが好ましくありうる。例えば、水の分離を、工程e)に相応して、これらの水−メタノール蒸留と組み合わせることが可能である。その際、特に有利なのは、2段圧力切換(Zweidruckschaltung)として配置された際により高い圧力で運転される塔と組み合わせることである。
【0147】
本発明による方法により製造されたイソブテンは、例えば、ジイソブテン、イソブテンオリゴマー、ポリイソブテン、ブチルゴム、t−ブチル芳香族化合物、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタリルクロライド、又はメタリルスルホネートの製造のために使用されることができる。殊に、分解に際して得られたメタノールのみならず、イソブテンもメタクリル酸メチルの製造のために使用することが好ましくありうる。メタクリル酸メチルの係る製造方法は、例えばEP1254887に記載されており、これが明示的に参照される。
【0148】
図1〜12を手がかりにして、本発明と個々の工程段階のいくつかの実施形態を詳細に説明するが、しかながら、本発明はこれらに制限されない。
【0149】
図1は、その個々の工程段階を有する方法を具体的に示し、図2〜12は、個々の工程段階の実施形態を示す。
【0150】
図1は、個々の工程段階と、それらに対応する物質流を示す。工程段階[a]に、イソブテン含有C4炭化水素(II)、メタノール含有流(IX)及びメタノール含有留分(VIII)を供給する。流(VIII)及び(IX)中にはメタノール(III)が含まれており、該メタノール(III)は、流(II)からのイソブテン(I)と反応してMTBE−及びTBA含有の反応混合物が得られる。
【0151】
流(IX)は、例えば、新しい、つまり、本発明によるプロセス中で回収されなかったメタノール、又は水を用いたメタノール含有C4流の抽出及び引き続くメタノール/水分離に際して回収されたメタノールを含有してよい。
【0152】
反応混合物(IV)から、[b]においてMTBE−及びTBA含有の留分(V)を分離する。第2の流として、ここで、メタノール分をなお含有するC4炭化水素の流(X)が発生する。
【0153】
留分(V)を、[c]において分解生成物(VI)へと分解し、該分解生成物(VI)から、[d]において留分(VII)を分離し、該留分(VII)は、分解生成物(VI)中に含まれたメタノール、TBA及び水の50質量%を超える量を含有する。そのほかに、メタノール含有イソブテン流(XVII)と、場合によりMTBE−及びメタノール含有の流(XL)が発生する。
【0154】
[e]において、最終的に留分(VII)から水(XLI)を分離し、残留する流(VIII)を[a]に返送する。
【0155】
図2には、工程段階[a]の有利な実施形態を示している。イソブテン含有C4炭化水素(II)を、メタノール含有流(VIII)及び(IX)と一緒に混ぜ、且つ第1の反応器(R11)に送る。反応器(R11)を、断熱固定層反応器として返送を伴って運転し、続く2つの反応器(R12、R13)はシングルパスで運転する。反応器R12/R13の手前で、それぞれ温度を別個に調整する。反応器(R13)から、反応混合物(IV)が得られる。
【0156】
図3は、工程段階[b]の実施形態[b1]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分(X)並びにC8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF1に相当する。
【0157】
付加的に示してあるのは、塔頂留分(X)の有利な後処理である。メタノール含有C4炭化水素(X)から、メタノールを抽出塔(E−21)内で水(XI)との向流において洗い出す。水/メタノール混合物(XII)を、塔T−24内で蒸留により、抽出に返送される塔底生成物の水(XI)と、塔頂生成物の(XIV)とに分離する。流(XIV)は、有利には流(IX)の部分流として工程[a]で使用する。
【0158】
図4は、工程段階[b]の実施形態[b2]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、MTBE−、2−メトキシブタン、C8−及びTBA含有の塔底留分(XVI)と、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分とに分ける。
【0159】
塔T−21は、この実施形態では、有利には反応蒸留塔として運転する。反応蒸留塔としての塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF2に相当する。
【0160】
塔底留分(XVI)は、更に別の蒸留塔(T−23)内で引き続き分離する。塔頂生成物として、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が得られ、塔底生成物(XV)として、C8炭化水素と2−メトキブタンとが少なくとも部分的に分離される。MTBE/2−メトキシブタンの困難な分離タスクに基づき、一般には依然としてMTBEも含まれている。有利には、塔T−23は、留分(V)が塔の頂部でガス状で抜き出され、且つ場合により更なる加熱後に分解反応に直接導かれることができる程度の高さの圧力で運転する。塔T−23内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF3に相当する。
そのうえここでは、流(V)に付加的に水を加えて触媒を調整するという選択肢も表示している。塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように行う。
【0161】
図5は、工程段階[b]の実施形態[b3]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、MTBE−、2−メトキシブタン、C8−及びTBA含有の塔底留分(XVI)と、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分(X)とに分ける。塔T−21は、この実施形態では、有利には反応蒸留塔として運転する。反応蒸留塔としての塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF2に再び相当する。
【0162】
留分(XVI)から、塔T−22内で、頂部を介して低沸点物及び中沸点物(L)、例えばC4炭化水素及びC5炭化水素の残留量を分離する。そのようにして、例えば、0.1MPa(絶対)にて50℃を下回る沸点を有する全ての成分を、留出物を介して分離することができる。塔T−22内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF4に相当する。塔底生成物(XVIII)を、次いで塔T−23内で、頂部で得られたMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、[b2]における組成と同じ組成を有する塔底生成物(XV)とに分離する。塔T−23内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF3に再び相当する。そのうえここでも、流(V)に付加的に水を加えて触媒を調整するという選択肢も表示している。
【0163】
塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように行う。
【0164】
この実施形態[b3]の利点は、(XVI)中に含まれたC4炭化水素の残分、それに中沸点成分も簡単に分離することができるという点にある。そのため、それらはMTBE分解反応器中にも塔頂留分(X)中にも至らない。
【0165】
図6は、工程段階[b]の実施形態[b4]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、C8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔頂留分(XIX)として、C4炭化水素、メタノール及び場合によりMTBEからの混合物が得られる。この混合物を、反応器R−21中に供給し、該反応器中で、反応しなかったイソブテンの残留量を更に反応し尽くしてMTBEを形成させる。該反応器に、付加的にメタノール含有流(XX)を供給してよい。反応器搬出物(XXI)を、引き続き塔T−25内で、メタノール含有C4留分(X)と、MTBE含有塔底留分(XXII)とに分離する。この留分は別途利用するか、又は完全に若しくは部分的に該方法の工程[a]に返送してよい。塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように再び行う。この実施形態では、塔T−25を反応蒸留として配置することが好ましくありうる。
【0166】
この実施形態の利点は、該方法の工程[a]でのイソブテン転化率がより少なくてよく、それによって、形成される2−メトキシブタンも少ないという点にある。このことによって、場合により、実施形態[b2]及び[b3]において使用されるような塔T−23を完全に省くことができるか、又は塔を明らかにより小さい規模とすることができる。
【0167】
図7は、工程段階[b]の実施形態[b5]を示す。ここでは、1−ブテンの精製において、依然として残留するイソブテンの量を反応させてMTBEを形成するという特徴を伴う、高純度1−ブテンに至るまでの精製を行う。
【0168】
反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、C8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔頂留分(XXIII)として、メタノール含有C4留分(XXIII)を取り出し、該留分(XXIII)は、なおイソブテンの残留量を含有する。メタノールを、流(XXIII)から水(XXXIV)を用いて抽出塔E−21内で洗い出す。結果生じる流(XXIV)中になお含まれる1,3−ブタジエンの量を、選択水素化SHPにおいて水素と反応させてn−ブテンを得て、該水素化の搬出物(XXV)を塔T−27に導く。塔T−27内で、C4炭化水素の第1の分離を行う。塔頂生成物(XXVII)として、1−ブテン、イソブテンの残分、イソブタン及び含まれる低沸点物、なかでもMTBE合成からのDMEが得られる。n−ブタン、2−ブテン及び場合により1−ブテンの残留量が、塔の底部で流(XXVI)として抜き出される。場合により不均一に塔頂流(XXVII)中で発生する水を分離する。留出物を、反応段階R−22に供給し、そこでイソブテンをメタノール(XXVIII)と反応させる。その際、触媒及び反応条件は、本発明による方法の工程段階a)のものに相当する。
【0169】
反応から得られた混合物(XXIX)を、塔T−28内で、メタノール含有C4炭化水素(XXX)と、MTBE含有塔底留分(XXXI)とに分離する。MTBE留分は、有利にはなおメタノールを含有し、且つ(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
【0170】
流(XXX)から、抽出E−22においてメタノールを水(XXXIV)により洗い出す。2つの抽出からの水/メタノール流(XXXIII)及び(XXXII)を、共通の塔T−26内で、水(XXXIV)とメタノール(XXXV)とに分ける。流(XXXV)は、有利には流(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
【0171】
水飽和流(XXXVI)を、あとに続く蒸留T−29内で高純度1−ブテン(XXXVIII)へと蒸留する。それは塔の塔底生成物として発生する。塔の頂部では、イソブテン及び低沸点物、例えばDMEが得られる(XXXVII)。水の分離のために、塔T−29に頂部デカンターを備え付けることが目的に適っており、そこで水が第2の相として分離し、且つ排出されることができる。
【0172】
図8は、工程段階[d]の実施形態[d1]を示す。他のプロセス流との熱的統合によって部分凝縮された分解生成物(VI)の分離を、唯一の蒸留塔T−41内で行い、その際、塔底で、主成分として、メタノールと、反応しなかったMTBEを有する留分(VII)を得る。塔頂生成物(XVII)は、イソブテン、メタノール及び低沸点物、例えばDMEから成る。中沸点物、例えばC5炭化水素、イソプレン及びジメトキシメタンが、有利には塔底生成物とともに得られる。塔T−41内でのイソブテンの分離は、前に記載した実施形態AFF5に相当する。
【0173】
図9は、工程段階[d]の実施形態[d2]を示す。ここでは、分解生成物(VI)の分離は、2つの蒸留工程で行う。これは、前に記載した実施形態AFF6に相当する。塔T−42の塔頂生成物(XVII)は、イソブテン、メタノール及び低沸点物、例えばDMEから成る。中沸点物、例えばC5炭化水素、イソプレン及びジメトキシメタンが、有利には塔底生成物とともに得られる。塔T−42の塔底流(XXXIX)は、第2の塔T−43に導く。塔の頂部で、メタノールとMTBEからの共沸混合物(XL)を取り出す。塔底流として留分(VII)が得られ、これはメタノール、TBA及び水を含有するが、一方で実際にMTBEを含んでいない。
【0174】
MTBE/メタノール共沸混合物(XL)は、完全に又は部分的にプロセスに返送することができる。有利なのは、方法の工程a)又はb)への返送である。特に有利なのは、有利な実施形態[b1]、[b2]、[b3]若しくは[b4]の塔T−21、T−22若しくはT−23の1つへの返送、又は実施形態[b4]の反応器R−21への返送である。
【0175】
図10は、工程段階[e]の実施形態[e1]を示す。留分(VII)からの水の分離を、1つの蒸留塔T−51内でのみ行う。その際、塔底生成物(XLI)として水が得られ、且つ塔頂生成物として水に乏しい留分(VIII)が得られる。塔T−51内での水の分離は、前に記載した実施形態AFF7に相当する。
【0176】
図11は、工程段階[e]の実施形態[e2]を示す。留分(VII)からの水の分離は、2段圧力切換において運転される2つの蒸留塔内で行う。これは、前に記載した実施形態AFF8に相当する。より低い圧力下で運転される第1の塔T−52内では、塔頂生成物として留分(VIII)の第1の部分流が得られる。主にメタノールと水を含有する塔底流(XLII)を、より高い圧力下で運転される第2の塔内で更に分離する。その際、頂部で留分(VIII)の第2の部分流が得られ、底部では水(XLI)が発生する。塔T−52の加熱は、有利には塔T−53の蒸気により行う。
2つの塔の2段圧力切換の形態における工程段階e)の構成は、一般に、1つのみの塔内での分離より明らかにエネルギー需要量が少なくなるという利点を提供する。特に有利なのは、塔の少なくとも1つの供給流を、工程c)からの分解ガスの凝縮熱の一部を利用しながら実質的に蒸発させる変法である。
【0177】
図12は、工程[d]で得られたメタノール含有イソブテン流(XVII)の更なる後処理に関する代表的な実施形態を示す。
流(XVII)から、抽出E−71においてメタノールを水(XLIII)により洗い出す。メタノールで負荷された水(XLIV)を、塔T−72内でメタノール含有流(XLVI)と水(XLIII)とに分け、水は抽出に返送する。流(XLVI)は、有利には流(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
なおDMEを含有する水飽和イソブテン流(XLV)を、引き続き塔T−73内で更に精製する。塔の頂部で、通常はイソブテンをなお含有するDME含有流(XLVII)が得られる。水の分離のために、塔T−29に頂部デカンターを備え付けることが目的に適っており、そこで水が第2の相として分離し、且つ排出されることができる。塔の底部では、イソブテン(XLIX)が得られる。
【0178】
塔T−73の塔頂流は、頻繁になお著しい量のイソブテンを含有しているので、それを更に別の塔内で精製することが目的に適っている(非図示)。この塔では、塔頂部でイソブテンが劣化したDME流が得られ、塔底ではイソブテンが富化した流が得られる。この塔底流は、有利には塔T−73に返送する。
【0179】
本発明による方法においてMTBE合成及び分解のために適したこの手段は、他のアルコールの使用にも適用されることができる。これは、なかでも、エチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてエタノールを使用)、n−プロピル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてn−プロパノールを使用)、n−ブチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてn−ブタノールを使用)及びイソブチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてイソブタノールを使用)の合成及び分解に関する。そのうえ、これら全てのアルコールの場合、該アルコールから分解において水の脱離によってオレフィンが形成されえ、それによってプロセス中への水の付加的な導入が行われるということも付け加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】個々の工程段階と、それらに対応する物質流を示す図
【図2】工程段階[a1]の有利な実施形態を示す図
【図3】工程段階[b]の実施形態[b1]を示す図
【図4】工程段階[b]の実施形態[b2]を示す図
【図5】工程段階[b]の実施形態[b3]を示す図
【図6】工程段階[b]の実施形態[b4]を示す図
【図7】工程段階[b]の実施形態[b5]を示す図
【図8】工程段階[d]の実施形態[d1]を示す図
【図9】工程段階[d]の実施形態[d2]を示す図
【図10】工程段階[e]の実施形態[e1]を示す図
【図11】工程段階[e]の実施形態[e2]を示す図
【図12】工程[d]で得られたメタノール含有イソブテン流(XVII)の更なる後処理に関する代表的な実施形態を示す図
【実施例】
【0181】
以下の例は、本発明を詳説するものである。
【0182】
例1:
合成により製造されたラフィネートIとメタノールからの混合物に、様々な水量を計量供給した。この混合物を、次いで実験室用反応器中に導入した。該反応器は、熱媒体油(Sasol Olefins & Surfactans GmbHのMarlotherm SH)が流れる冷却ジャケットを備えた管型反応器(長さ1000mm、内径21mm)であった。
【0183】
触媒として、酸性イオン交換体−Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)−を使用した。使用した触媒は、0.6〜0.85mmの平均直径、45m2/gの表面積及び770g/lの見掛け密度を有するペレットから成っていた。
【0184】
供給材料のこの混合物を、反応器に入れる前に熱交換器中で36℃に予熱し、ジャケット温度を、全ての試験において同様に38℃に調節した(反応器ジャケットの供給流中のMarlothermの温度)。圧力を、圧力調整器により反応器の端部で常に1.2MPa(絶対)に調節した。供給流を510g/hに制御し、これは273.5mlの触媒量の場合に3.12 hー1のLHSV値に相当する。反応器に入る供給材料の混合物と、反応器を出る生成物混合物を、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0185】
【表4】
【0186】
第4表には、反応器供給流、反応器搬出物についての分析並びに達成されたイソブテン転化率を挙げている。試験1では、合成により製造されたラフィネートIとメタノールからの混合物に、付加的に水は混ぜておらず、約200ppmの含水量が、もともとメタノールとラフィネート中に含まれていた水から生じる。
【0187】
含水量の上昇とともにイソブテン転化率が明らかに衰えることが認められ、試験1では、転化率は約93.1%であり、出発物質中の水が約1100ppmである試験2では、83.5%でしかなく、且つ最後に反応器供給流中の水が約6500ppmである試験3では、約33.7%でしかない。同時に、TBA形成の上昇が含水量の上昇とともに起こり、試験3の場合、反応器搬出物中ですでに1質量%を超えるTBAが測定される。
【0188】
例2及び3についての説明:
次の例2及び3では、定常シミュレーションプログラムASPEN Plus(AspenTech社のバージョン2006.5)を用いて計算を実施し、これにより水排出がプロセス全体に及ぼす影響が表される。
【0189】
明瞭な、再現可能なデータを作成するために、一般的に入手可能な物質データのみを使用した。この簡素化によって、当業者であれば容易に計算を追試することが可能である。該例では、物性推算法"UNIFAC−DMD"(J.Gmehling,J.Li,及びM.Schiller,Ind.Eng.Chem.Res.32,(1993),第178頁〜第193頁を参照されたい)を利用した。
【0190】
反応器R11、R12及びR13、MTBE合成における塔T21内での反応蒸留並びにMTBE分解における分解反応器のモデリング用に、計算では反応速度論的反応器モデルを用い、これは、それぞれの触媒を用いた広範な実験測定データに基づいている。それゆえ、該例では、そのつど、該反応器モデリングの場合に想定した反応温度も挙げられる。反応段階の流入する流及び流出する流の組成もそのつど挙げられるので、当業者であれば、転化率をしっかりと設定して反応器を調整することによって、正確な反応速度式を知ることなく該例を試算することが可能である。
【0191】
例2:(本発明による)
例2は、図1に示される方法に相当し、その際、イソブテンの転化については、図2による変法[a1]が、MTBE蒸留については、図5による変法[b3]が、分解生成物の精製には、図8による変法[d1]が、且つ最終的に乾燥については、図10による変法[e1]を想定する。
【0192】
装置への供給流として、図1若しくは図2に従って、第5表で挙げた組成を有する10000kg/hのC4炭化水素流(II)を想定する(典型的なラフィネートI、第1表と比較されたい)。供給した新しいメタノール並びに工程段階[e]から生じる返送流(VIII)の組成も同様に第5表に示している。新しいメタノール量は、第1の反応器に向かう供給流中でのイソブテンに対するメタノールのモル比が1.14になるように調節した。
【0193】
【表5】
【0194】
C4炭化水素流(II)、新しいメタノール(IX)及びメタノール含有返送流(VIII)を混合し、且つ図2による変法[a1]において反応器R−11、R−12及びR−13に供給する。
【0195】
流(II)中に含まれたイソブテンの転化は、3つの直列に接続された断熱固定層反応器中で行い、その際、第1の反応器は、図2に示される通り、循環型反応器として構成されている。Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)で反応器を充填することを想定する。反応器R−11を、18m3の体積でモデリングし、R−12を10m3の体積で、且つR−13を5m3の体積でモデリングする。反応器R−11における流入温度は40℃であり、想定した循環流は28300kg/hである。反応器R−12中への流入温度は40℃であり、反応器R−13中への流入温度は35℃である。これらの条件下で、3つの全ての反応器にわたって約97.8%のイソブテンの転化率が生じる。副反応として、使用した反応速度論的モデルでは、イソブテンと水からのTBAの形成、イソブテンからジイソブテンへの二量化、メタノールからDME及び水への反応並びにn−ブテンからの2−メトキシブタンの形成が考慮される。それにともなって、反応器搬出物(IV)について、第6表中で挙げた組成(塔−21への供給流)が生じる。
【0196】
【表6】
【0197】
MTBE蒸留について、図5による変法[b3]を想定する。それに従って、反応器搬出物(IV)を塔T21に供給する。該塔は反応蒸留として構成されている。該塔は、触媒ゾーンを含めて、75段の理論段を有し、触媒ゾーンは15段目〜50段目に配置されており、且つ供給は、上から数えて60段目より上方で行う。触媒体積は、一段当たり0.2m3であり、その際、Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)が充填されたKataMax(R)充填物(Koch−Glitsch)を想定する。該塔は、0.9の還流比にて且つ0.6MPa(絶対)の圧力にて運転する。塔頂温度は51.4℃であり、塔底温度は120.9℃である。反応蒸留塔内でのイソブテンの転化率は、これらの条件下で98%である。
【0198】
塔底生成物(XVI)は、主にMTBE(約98質量%)から成り、且つMTBE燃料についての市場で一般的な規格を満たす。殊に、TBAの含有率は1質量%より小さい(第6表を参照されたい)。留出物(X)は、主にC4炭化水素から並びにメタノール、MTBE合成において形成されたDME並びに水から成る。水での抽出によって、図5に示してある通り、メタノールを除去することができる。抽出から得られた、メタノール不含のC4炭化水素(XIII)は、公知の方法に従って高純度1−ブテンへと後処理することができる。この関連において、イソブテン含流量が、1−ブテン含有量を基準として、流(X)中で350ppmより小さいことが重要である。それにともなって、選択水素化におけるブタジエンの分離若しくは転化後に、単に蒸留法によって、市場で一般的な規格を満たす(例えば、1−ブテン中のイソブテン<2000ppm)高純度1−ブテンを取得することができる。
【0199】
【表7】
【0200】
MTBE流(XVI)は、計約1700ppmのC4−及びC5炭化水素をなお含有する。この流から、塔T−22内で、これらのC4−及びC5炭化水素を、750質量ppmの残留含有量になるまで分離する。該塔は52段の理論段を有し、そして212の還流比にて且つ4.5MPa(絶対)の圧力にて運転する。供給(XVI)を、上から数えて22段目より上方で行う。塔頂温度は48.1℃であり、塔底温度は107.3℃である。この塔(L)の留出物は、MTBE10質量%の残留含有率を有する。還流比及び/又は分離段数を高めることによって、MTBE含有量を、更に減少させることができた。第7表は、塔T−22の留出物流(L)及び塔底流(XVIII)の組成を示す。
【0201】
実質的に低沸点物が取り除かれたMTBE流(XVIII)を塔T−23に供給し、該塔内で、とりわけジイソブテン及び2−メトキシブタンを塔底物(XV)を介して分離する。該塔は95段の理論段を有し、そして5.9の還流比にて且つ0.95MPa(絶対)の圧力にて運転する。流(XVIII)の添加は、上から数えて28段目より上方で行う。塔頂温度は144.1℃であり、塔底温度は149.16℃である。塔頂生成物(V)として、98質量%を超えるMTBEを含有するガス状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタンの含有量は、2100質量ppmに調節した(第7表を参照されたい)。還流比及び/又は分離性能を高めることによって、塔底生成物(XV)中のMTBEの含有量を減少させることができた。高められた圧力での塔の運転様式によって、供給流中に存在する全てのTBAをほぼ塔頂生成物(V)に蒸留する。
【0202】
MTBE留分(V)を、反応温度に更に加熱した後、図1の通り、工程段階[c]における分離反応器に供給する。分解反応器を、5.5m3の反応器体積によりモデリングし、その際、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から成り、且つその製造は特許DE102006040432.7に記載されている触媒を充填することを想定する。
【0203】
反応器を、298℃及び0.75MPa(絶対)にて運転する。これらの反応条件の場合、約94%のMTBEの転化率が生じ、2−メトキシブタンの転化率は約17%である。反応器供給流中の2−メトキシブタンの割合を2100質量%に制限することに基づき、一方で、2−メトキシブタンから2−ブテンへの分解が行われるにも関わらず、イソブテン生成物中の線状ブテンの市場で一般の規格は脅かされない。反応器搬出物は、DME形成及びTBA分解によって生じた水、約6000ppmを含有する。反応器搬出物(IV)の組成を、第8表が示す。
【0204】
【表8】
【0205】
分解生成物の精製について、図8による変法[d1]を想定する。それに従って、反応器搬出物(IV)を部分的に凝縮し、且つ2相で塔T−41に供給する。該塔は42段の理論段を有し、そして0.3の還流比で且つ0.65MPa(絶対)の圧力で運転する。供給流(VI)の添加は、上から数えて28段目より上方で行う。塔頂温度は50.8℃であり、塔底温度は117.0℃である。塔底生成物は、主に、反応しなかったMTBE(約15質量%)及びメタノール(約83質量%)並びに供給流中に含まれた水量の主たる部分(約1.4質量%)から成る(第8表を参照されたい)。
【0206】
塔頂生成物(XVII)は、イソブテン94質量%より大きい純度を有するイソブテンである。典型的なイソブテン規格に必要とされる線状ブテン(<1000質量ppm)及びC5炭化水素(<1000質量ppm)の範囲は確実に遵守される(第3表も参照されたい)。図12に示される通り、水での抽出によって、必要とされる場合、メタノールを除去することができる。残留水とジメチルエーテルは、引き続く蒸留によって分離することができ、且つイソブテン(XLIX)は99.9質量%より大きい純度に濃縮することができる。
【0207】
流(VII)の乾燥について、図10による変法[e1]を想定する。それに従って、塔T−41の塔底流(VII)を塔T−51に供給する。該塔は32段の理論段を有し、そして0.7の還流比にて且つ0.11MPa(絶対)の圧力にて運転する。供給流(VII)の添加は、上から数えて14段目より上方で行う。塔頂温度は61.7℃であり、塔底温度は102.3℃である。
【0208】
水を、留出物流から800ppmの残留含有量になるまで分離し(第5表中の流(VIII)を参照されたい)、且つこの留出物を工程段階a)に返送する。塔の塔底流は、実際にはメタノール5ppmの残留含有量を有する純粋な水から成る。
【0209】
例3:(本発明によらない)
例3は比較例3として用い、この例は本発明による方法を含まない。それに従って、図1による方法を観察すると、その際、しかしながら、工程段階[e]、すなわち、返送流(VII)の乾燥及び相応する水分離が省かれている。イソブテンの転化は、例2と同じように、図2による変法[a1]に従って行い、MTBE蒸留は、図5による変法[b3]に従って行い、且つ分解生成物の精製は、図8による変法[d1]に従って行う。工程段階[d]からの流(VII)は、例3では工程段階[a]に返送する。
【0210】
装置への供給流として、例2と同じように、10,000kg/hの流(II)を想定する。流(II)、供給した新しいメタノール並びに工程段階[d]から生じる返送流(VII)の組成を第9表に示している。流(II)及び流(IX)の組成は、例2と比べて変化していない(第5表を参照されたい)。新しいメタノール量は、第1の反応器に向かう供給流中でのイソブテンに対するメタノールのモル比が1.14になるように調節した。
【0211】
【表9】
【0212】
C4炭化水素流(II)、新しいメタノール(IX)及びメタノール含有返送流(VII)を混合し、そして図2による変法[a1]で反応器R−11、R−12及びR−13に供給する。反応器の配置、反応器サイズ並びに流入温度は、例2と比べて変化していない。
【0213】
返送流(VII)は、例2(そこでの流(VIII))と比べて約1.1質量%のはるかに多い水を含有する。例1から明らかなように、より高い水濃度の場合、それ以外の点では同じ周囲条件下でMTBEへのイソブテンの転化率は下がる。したがって、例3では、約68.1%に過ぎない(例2では97.8%)3つの全ての反応器にわたったイソブテンの転化率が生じる。反応器搬出物(IV)の相応する組成は、第10表中で挙げている(塔T−21への供給)。なかでも、反応器搬出物(IV)中のTBA含有量も、約8000ppmをもって明らかにより高い(例2では約2200ppm)。
【0214】
【表10】
【0215】
MTBE蒸留について、再び図5による変法[b3]を想定し、その際、塔T−21は、例2と同じように反応蒸留として構成されている。理論段数、触媒体積、還流比及び塔圧力は、例2と比べて変化せずにある。塔頂温度は51.0℃であり、塔底温度は110.7℃である。反応蒸留塔内でのイソブテンの転化率は、これらの周囲条件下で約47%である。
【0216】
塔底生成物(XVI)は、主にMTBE(約90質量%)、メタノール(約7質量%)及びTBA(約2質量%)から成る。それにともなって、MTBE燃料についての市場で一般的な規格を満たさない(代表特性 1質量%より小さいTBA含有率と1質量%より小さいメタノール含有率)。留出物(X)は、主にC4炭化水素並びにメタノール、MTBE合成において形成されたDME並びに水から成る。水での抽出によって、図5に示してある通り、メタノールを除去することができる。MTBE合成における高められた含水率によるイソブテン転化率の悪化に基づき、イソブテン含有率は、1−ブテン含有率を基準として、流(X)中で約17%である。それにともなって、メタノール不含のC4炭化水素(XIII)は、公知の方法に従って直接的に高純度1−ブテンに後処理されることはできない。選択水素化におけるブタジエンの分離若しくは転化後に、高純度1−ブテン(1−ブテン中のイソブテン2000ppmより小さい代表特性)を単に蒸留法によっては取得することができない。第2のMTBE段階(図7におけるR−22)における1−ブテン中に存在するイソブテンの転化も可能ではなく、それというのも、イソブテン含有量が、平衡による制約に基づき、場合によっては反応蒸留も伴う、単純な固定層反応器中で、所望の規定値を達成するには明らかに高すぎるからである。
【0217】
【表11】
【0218】
MTBE流(XVI)は、計約1600ppmのC4−及びC5炭化水素をなお含有する。この流から、塔T−22内で、これらのC4−及びC5炭化水素を、750質量ppmの残留含有量になるまで分離する。該塔は192の還流比で運転し、理論段数及び塔圧力は、例2と比べて変わっていない。塔頂温度は48.3℃であり、塔底温度は100.8℃である。第11表は、塔T−22の留出物流(L)及び塔底流(XVIII)の組成を示す。
【0219】
実質的に低沸点物が取り除かれたMTBE流(XVIII)を塔T−23に供給する。例3では、工程段階e)に従った水分離の本発明による工程が欠けている。それにともなって、TBA分離及びDME形成によってエーテル分解において形成された水は、完全に合成に返送され、そこで50%を上回る分が再びTBAに変換され、且つそのようにして、TBAに結び付けて、分解に返送される。それゆえ、TBAの排出なしには、TBA若しくは水が該方法において次々と蓄積すると考えられ、定常運転が可能ではなくなる。この理由から、例3では、塔T−23内でジイソブテンと2−メトキシブタンのほかに塔底物(XV)を介してTBAも分離する。そのために、塔内の圧力は、例2に対して0.2MPa(絶対)下げられ、理論段数は維持される。該塔は2.6の還流比で運転する。塔頂温度は73.2℃であり、塔底温度は87.6℃である。MTBEとTBAとの圧力共沸混合物は低い圧力で消失することに基づき、TBAをこの運転様式では塔底物を介して排出する。塔底物中のMTBE含有率は、例2と同じように、供給流(XVIII)中に含まれたMTBEの2%が塔底物を介して送られるように調節した。塔頂生成物(V)として、MTBE92質量%及びメタノール8質量%を含有する液状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタンの含有量は、例2と同じように、2100質量ppmに調節した(第11表を参照されたい)。
【0220】
例2と対照的に、塔T−23の低い圧力に基づき、MTBE留分(V)は、ガス状ではなく、圧縮せずに、工程段階[c]における分解反応器に送ることができる。それゆえ、例3では、MTBE留分(V)は塔T−23から液状で抜き出し、反応圧力より高い圧力に圧縮し、完全に蒸発し、且つ最終的に反応温度への更なる加熱後に分解反応器に供給する。分解反応器の体積及び圧力は、例2と比べて変わらない。反応器は293℃で運転する。これらの反応条件の場合、約93%のMTBEの転化率が生じ、2−メトキシブタンの転化率は約16%である。反応器排出物(IV)の組成を、第12表が示す。
【0221】
【表12】
【0222】
分解生成物の精製について、例2と同じように、図8に従った変法[d1]を想定する。塔T−41の理論段数、塔圧力及び還流比は、例2と比べて変化せずにある。塔頂温度は50.8℃であり、塔底温度は116.9℃である。塔底生成物は、主に、反応しなかったMTBE(約15質量%)及びメタノール(約83質量%)並びに供給流中に含まれた水量の主たる部分(約1.1質量%)から成る(第9表を参照されたい)。流(VII)は、例3では工程a)に直接返送される。
【0223】
例2(本発明による)と例3(本発明によらない)を対比させることによって、本発明による方法の利点を非常に明確に示すことができた。工程段階e)が欠けていることによって、例3ではイソブテン転化率が、MTBE合成での水割合が高まっていることと、それと関連付けられた反応抑制に基づき、同じ条件下で、規定に則った1−ブテンも、規定に則った燃料MTBEも製造することができない程度にまで明らかに下がる。さらに、工程段階e)が欠けていることによって、工程段階b)でのTBAの排出が必要とされる。これにより、一方では、TBA中で結合したイソブテンによってイソブテン損失量が高まり、他方では、エネルギー需要量が高まり、それというのも、塔T−23の圧力が低い場合、ガス状での抜き出しや分解反応器中への直接供給がもはや可能ではないからである。
【0224】
反応に良い影響を及ぼすために、エーテル分解において水蒸気を供給する場合、又は腐食を回避するために、エーテル分解後の工程段階にアルカリ液を配量する場合、工程e)に従った本発明による水分離なしでは方法の欠点がさらに一層強まることになる。
【符号の説明】
【0225】
II イソブテン含有C4炭化水素、 IX メタノール含有流、 IV 反応混合物、 X C炭化水素の流、 V MTBE−及びTBA含有留分、 VI 分解生成物、 XVII メタノール含有イソブテン流、 XL MTBE−及びメタノール含有流、 VII 流、 XLI 塔底流、 VIII メタノール含有留分、 XV 塔底生成物、 XIII メタノール不含C4炭化水素、 XI 水、 XII 水/メタノール混合物、 XIV 流、 XVI 塔底留分、 XVIII 塔底流、 XXI 反応器搬出物、 XXII MTBE含有塔底留分、 XXVII 塔頂流、 XXVIII メタノール、 XXX メタノール含有C4留分、 XXXI MTBE含有塔底留分、 XXXV メタノール、 XXXVI 水飽和流、 XXXVIII 高純度1−ブテン、 XXXIX 塔底流、 XLVII DME含有流、 XLVII DME含有流、 XLIII 水、 XLIV 水
【技術分野】
【0001】
本発明は、MTBEの分解によるイソブテンの製造法に関する。
【0002】
イソブテンは、多数の生成物の製造用の出発物質、例えば、ブチルゴム、ポリイソブチレン、イソブテンオリゴマー及びt−ブチル芳香族化合物の製造用の出発物質である。そのうえまた、イソブテンは、メタクリル酸及びそのエステルの製造用の前駆体として用いられることができる。
【0003】
工業用の流中、例えば石油分解生成物からのC4カット中には、イソブテンが飽和C4炭化水素及び不飽和C4炭化水素と一緒に頻繁に存在する。これらの混合物から、イソブテンは、イソブテンと1−ブテンとの間の僅かな沸点差若しくは非常に僅かな分離係数ゆえに、蒸留によって経済的には分離することができない。それゆえ、工業用の炭化水素混合物からのイソブテンの取得は、通常、イソブテンを誘導体(これは、残された炭化水素混合物から容易に分離され得る)に変換し、且つ、この単離された誘導体をイソブテン及び誘導体化剤へと再分解することによって行われる。
【0004】
それゆえ、蒸気分解生成物のC4カットから、通常、イソブテンが次の通り分離される:多価不飽和炭化水素の最も大きな部分、主としてブタジエンが、抽出(−蒸留)又は線状ブテンへの選択水素化によって取り除かれた後、残留する混合物(ラフィネートI又は水素化された分解C4)がアルコール又は水と反応させられる。イソブテンと水との反応に際しては、t−ブタノール(TBA)が形成され、アルコールが用いられた場合は、アルキル−t−ブチルエーテルが生じ、その際、アルキル基は、使用したアルコールによって定められている。メタノールが用いられた場合は、メチル−t−ブチルエーテル(MTBE)が形成され、エタノールが使用された場合は、エチル−t−ブチルエーテル(ETBE)が形成される。双方の成分は、ガソリンのオクタン価を高めるための成分として優先的に使用される。その際、イソブテンとエタノールとを反応させてETBEを得ることは、大規模工業的に、ここ最近十年でようやく重要になってきており、それというのも、法律により、燃料中での再生原料の割合が規定され、且つバイオエタノールが十分に供給可能であるからである。C3アルコール又はC4アルコールのエーテル化は、イソブテン製造法の範囲内で同様に記載されている(US4,287,379;US4,320,232)。
その分離後、エーテルのみならずTBAも、その形成とは逆にイソブテンへと分解されることができる。
アルコールとの反応の大きな利点は、この場合、イソブテンの非常に高い転化率を達成することができることである。このことは、しばしば工業的にラフィネートIIと呼ばれる残留C4炭化水素から、1−ブテンがポリマーグレードの純度で取得されるべき場合に特に必要である(Revue De Institut Francais du Petrole,第46巻,第3号,5月〜6月 1991年,第361頁〜第387頁)。このために必要な一般に>99.5%の転化率は、メタノールとの反応の場合、単段反応又は多段反応において達成することができる(Catalysis Today,1997年,第34巻,第447頁〜第455頁)。そのほかにメタノールは、そこから水の脱離によっていかなるオレフィンも形成されえないという利点を有する。
【0005】
MTBEの製造法は、70年代以降いっそう強く進展し、それというのも、MTBEは、オクタン価を上げる燃料添加物として大々的に使用されていたからである。続く数十年間での進展における決定的な歩みは、反応蒸留法の使用であった。この技術は、90年代以降、大規模工業的に使用されている。イソブテンの非常に高い転化率にも関わらず、この技術により、比エネルギー投入量を下げることが可能であった。それ以降、MTBE合成は、反応蒸留法の標準用途の1つに発展していった(例えばEP1199296)。
同様にエーテルの再分解法も、すでに久しく公知である(DE1216865)。しかし、MTBEの分解は、80年代以降になってようやく大規模工業的に使用され始め、また、殊に合成と比較して、非常に限られた程度でしかない。
【0006】
MTBEの分解は、その際、液相中又は気相中で行ってよい。典型的な副反応は、メタノールからの水及びジメチルエーテル(DME)の形成並びにイソブテンのダイマー及びオリゴマーの形成(主としてC8炭化水素、C12炭化水素)である。
【0007】
MTBE合成用に使用されるC4炭化水素は、ふつうは水飽和している(約200〜400ppmの水)。付加的に、水は、使用されたアルコールにより合成に出現してくる。殊に、MTBE分解において分離されたメタノール留分は、しばしば該分解のDME形成からの水をなお含有している。
【0008】
水は、MTBE合成において少なくとも部分的にTBAへと変換される。形成されたTBAは、合成からの搬出物の精製に際して分解前に分離されうる。それによって、イソブテン製造用の、原料中に含まれたイソブテンのこの割合が失われる。それゆえ、本発明による方法の目標は、合成において生じたTBAを少なくとも部分的にイソブテン製造用に利用することであった。酸性イオン交換体を用いたエーテル合成への水の導入が、反応速度の明らかな低下(Ind.Eng.Chem.Res 1993,32,564〜569)をもたらすことも知られている。しかし、MTBE合成における十分な反応速度は、エーテル合成の転化率が、後置された1−ブテン製造を保証するのに十分高くなければならない場合に殊に必要とされる。
【0009】
MTBE合成を、分解(そこから、生じたアルコールが合成に返送される)と結び付けた場合、成分が循環処理において蓄積し得るという問題点が知られている。合成と分解のこの結び付きは多岐にわたる特許の対象であるにも関わらず、これらの成分の分離に関する記載はほとんど見当たらず、殊にTBAに関する記載はない。
【0010】
Hydrocarbon Processing,August 1981,第101頁〜第106頁中で、その著者は、少なくとも30%のMTBEの残留量が副成分の排出のために分解において利用されない限りは、メタノールを分解から合成に返送することが可能であることを記載している。MTBEの全量が分解されることになる場合、付加的な"再循環精製ユニット(Recycle purification unit)"が必要とされる。その際、どの成分が排出され、どのようにこれらが排出されるのかは詳述されない。
【0011】
US4,570,026にも同様に、MTBEの合成と分解とを結び付けた方法が記載される。返送されたメタノール中には、なおMTBEとオリゴマーの残留量が含まれている。オリゴマーは、分解には供給されない、合成からのMTBE流により排出される。
【0012】
US5,567,860は、分解生成物からの二次エーテルの分離を記載し、その際、得られた精製された再循環流は直接的に分解に返送される。
【0013】
特許刊行物EP0869107は、1−ブテン、イソブテン及びMTBEの製造法を公開する。1−ブテン及びイソブテンを含有する炭化水素の混合物から、イソブテンが、MTBE形成及び蒸留によって分離され、引き続き接触分解される。該分解の生成物は、イソブテンに富んだ留分並びに、形成されたメタノールの最も大きな部分、場合により分解しなかったエーテル及び場合により重質化合物を含有する留分とに分けられる。この留分は、場合により部分的に合成に返送される。特別な実施形態では、MTBEの一部がエンジン燃料留分として利用される。分解反応からの、例に記載された生成物の精製に際して、水が、なお若干のメタノールを含有する、形成されたイソブテンとともに分離される。場合により合成に返送されるメタノールの主要量は、なお若干の反応しなかったMTBEとイソブテンのダイマーを含有する。該流の更なる精製は記載されない。
【0014】
いくつかの方法では、エーテルの分解に際して蒸気が混ぜられる。そうしてDE1934422は、炭化水素混合物からの第三級モノオレフィンの分離法を記載する。反応器通過後に、生成物混合物はデカンター内で水相と有機相とに分けられる水相から、含まれていたアルコールの残留量が蒸留により分離され、且つ合成に返送される。水が新たに分解において使用される。分解において蒸気を添加しない方法変法の場合、反応しなかったエーテル、アルコール及び一般に微量の水から成る留分が合成に返送される。
【0015】
MTBEの合成及び分解は、Catalysis Today 1997,第34巻,第447頁〜第455頁中での刊行物の対象でもある。それによると、メタノール循環流中で2−メトキシブタン(メチル−s−ブチルエーテル、MSBE)がひどく溜まることが回避される。そのほか、MTBE合成におけるTBAの形成及びMTBE分解の条件下でのTBAの再分解に関する記載は見当たらない。TBAの返送若しくは排出に関する記載又は水濃度の制限はなされていない。
【0016】
それゆえ、MTBE合成においてTBA形成によって結合されたイソブテンを分解用に使用可能とし、且つ同時に合成及び分解においてTBA及び/又は水が過剰に増大することを制限する、MTBEの合成及び分解のためのプロセスを開発するという課題が存在していた。
【0017】
この課題は、MTBEの分解によるイソブテンの製造法によって解決され、その際、次の工程を経る:
a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程、
b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水及び場合によりTBAを含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、
f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程。
【0018】
本発明による方法は、含水率を、工程段階e)において、留分(VIII)中で1質量%を下回る割合に下げることを特徴とする。
【0019】
本発明による方法の利点は、TBAとして結合されたイソブテンを分解用に利用するだけにとどまらない。付加的な流として、比較的僅かな排水量しか発生せず、これは、例えば浄化装置に供給されることができる。それに対して、TBAがプロセスから別個の流として排出される場合には、これは分けて利用される必要がある。一方で、文献中にしばしば記載される、例えばガソリンエンジンとして市販される残留流MTBEへの分離若しくは混合の手法は、限られてのみしか可能ではない。欧州では、例えば、市場に出回っているMTBEの代表特性はエーテル含有率98%である。
【0020】
エーテルの分解の工程段階において使用される触媒に応じて、あとに続く後処理工程が酸性pH値を有するというリスクが存在する。原因は、例えば、触媒による微量の酸の放出又は分解反応の副反応として例えばギ酸が形成されることにあり得る。この結果、あとに続くこれらの工程段階において安価な低合金鋼を使用することができず、むしろ酸性条件に基づく腐食の回避のために高価な高合金鋼を使用しなければならなくなりうる。これを避けるために、本発明による方法の工程段階d)又は工程段階e)でアルカリ液流を計量供給してよい。本発明による方法の更なる利点は、アルカリ液を簡単に、工程段階e)での水分離に際して水留分と一緒に方法から排出することができることである。それにより、アルカリ液が工程段階a)に返送され、且つここで場合により、使用される触媒の損傷を招くリスクがなくなる。
【0021】
更に本発明の対象は、次の部材:
i)管束、
ii)管板、
iii)偏向板、
iv)内部ジャケット、
v)少なくとも1つの流入口並びに流出口を含有する、耐圧性の外部ジャケット、
vi)熱を放出するか又は吸収する液体を含有するジャケット空間
を有する管束装置において、内部ジャケットが、ギャップ無しに又は僅かなギャップで、管束の長さにわたって取り付けられた偏向板並びに管板と接続されており、その際、ジャケット空間中に存在する液体が内部ジャケットを両側で取り囲むことを特徴とする管束装置である。
【0022】
供給物質
本発明による方法では、通常使用されている全ての工業用C4炭化水素混合物が使用されることができる。
適したイソブテン含有C4流は、例えば、精油所からの石油ベンジン留分、分解装置(例えば蒸気分解装置、水素化分解装置、接触分解装置)からのC4留分、フィッシャートロプシュ合成からの混合物、ブタンの脱水素からの混合物、線状ブテンの骨格異性化からの混合物及びオレフィンのメタセシスにより生じた混合物である。これらの技法は、専門文献に記載されている(K.Weissermel,H.J.Arpe,Industrielle Organische Chemie,Wiley−VCH,第5版,1998年,第23頁〜第24頁;第65頁〜第99頁;第122頁〜第124頁)。
【0023】
例えば、優先的にエテン及びプロペンの製造のために運転され、且つ原料として、例えば精油ガス、ナフサ、軽油、LPG(液化石油ガス)及びNLG(天然液化ガス)が使用される蒸気分解装置からのC4留分、又は接触分解装置からのC4留分が使用される。副生成物として発生するC4カットは、分解法に応じて、様々な量のイソブテン、1,3−ブタジエン、1−ブテン、c−2−ブテン、t−2−ブテン、n−ブタン及びi−ブタンを含有する。
【0024】
本発明による方法で使用されるイソブテン含有C4炭化水素は、好ましくは、1質量%より小さい、特に有利には0.5質量%より小さい含有率の1,3−ブタジエンを有する。典型的なイソブテン含有C4炭化水素混合物は、例えば、水素化CC4(HCC4)及びラフィネートIである。水素化CC4は、例えば、公知の工業法に従い、CC4中に含まれた多価不飽和炭化水素の選択水素化によって得られる。その際、例えば、1,3−ブタジエンから、主として1−ブテン及び2−ブテンが形成される。
【0025】
ラフィネートIは、1,3−ブタジエンと、CC4からのその他の多価不飽和炭化水素の分離によって得られる。これは、公知の方法に従い、例えば抽出蒸留によって行われることができる。
【0026】
下の第1表には、CC4、HCC4及びラフィネートIの主成分の典型的な質量割合を記載している。
【0027】
【表1】
注釈
CC4(S):蒸気分解装置(高過酷度)の分解生成物C4から触媒の付加的な調節なしに得られるC4混合物固有のもの。
全ての値は質量%記載である。
【0028】
ラフィネートI又はHCC4からのイソブテンの部分的な又は完全な分離後に得られたC炭化水素の混合物は、通例ラフィネートIIと呼ばれる。ラフィネートII中のイソブテンの残留含有率はイソブテンの分離の方法により変化し、且つ通常は5質量%未満である。イソブテンを分離するための典型的な方法は、エーテル合成(MTBE、ETBE)のほかに、TBA合成及びイソブテンの二量化である。
【0029】
工程段階a):MTBE合成
方法の工程段階a)では、他のC4炭化水素との混合物の形で含まれているイソブテン(I)が、イソブテン含有C4炭化水素(II)として使用される。特に有利には、本発明による方法では、イソブテン含有C4炭化水素(II)として、HCC4、ラフィネートI、それらの混合物又はそれらとラフィネートII流との混合物が使用される。使用されるC4炭化水素流は、飽和するまで水を含有してよい。典型的に含水量は200〜400ppmである。そのうえ、極性成分を取り除くために、C4炭化水素を工程段階a)での使用前に水で洗浄することが有利であり、それに従って、C4流は水飽和で存在する。不均一に含まれた水は、例えば、凝集を促進する内部構造物有り又は無しのデカンターにより方法工程a)での使用前に分離される。
【0030】
本発明による方法の工程段階a)では、イソブテン含有C4炭化水素(II)に含まれたイソブテン(I)がメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させられて、MTBE−及びTBA含有の反応混合物(IV)が取得される。原則的に、このために、MTBE合成のための全ての公知の方法を使用してよく、例えば、該MTBE合成は、DE10102082における記載と同じように行われることができる。
【0031】
工程段階a)におけるMTBE合成は、好ましくは、少なくとも2つの、特に有利には3つの固定層反応器中で実施される。メタノール(III)がイソブテン(I)と熱力学的平衡付近にまで反応させられる反応器として、従来の固定層反応器(管束反応器、断熱固定層反応器、循環反応器)を使用することができる。該反応器は部分的な返送有り又は無しで運転されることができ、その際、場合により返送流は冷却してよい。固定層反応器のそのつど最後の反応器から、MTBE−及びTBA含有の反応混合物(IV)が抜き出され、該反応混合物(IV)は、更なる構成成分として、なかでも、反応しなかったC4炭化水素、2−メトキシブタン、C8炭化水素、DME及びメタノール残留量を含有する。
【0032】
イソブテンの転化は、MTBE、メタノール及びイソブテンからの熱力学的平衡が成立するまで可能な限り行われ、その際、好ましくは、90%より大きい、特に有利には95%より大きい、極めて有利には98%より大きいイソブテン転化率に調節されるか若しくは達する。反応器は、好ましくは、20〜110℃の温度、有利には25〜70℃の温度、及び0.5〜5MPaの圧力、好ましくは0.7〜2MPa(絶対)の圧力で運転される。
【0033】
メタノール/イソブテンとエーテルとの間の熱力学的平衡は、低温の場合、エーテル側が優勢になるので、反応器の1つ目を、該平衡状態を利用する次に続く反応器よりも高い温度で、高い反応速度を目的に運転することが有利である。好ましくは、反応器の1つ目は、35〜70℃の温度で運転され、且つあとに続く反応器は、25〜50℃の温度で運転される。
【0034】
メタノール(III)は、1つ以上のメタノール含有流(該流は、そのうえ更に別の成分を含有してよい)により、工程a)での反応に供給される。例えば、次のメタノール含有流が使用される:新しい、つまり、本発明によるプロセスにおいて回収されなかったメタノール(MTBE排出又はDME形成によるメタノールの損失を補償するため)、メタノール含有留分(VIII)及び抽出からの水とメタノールの分留に際して発生する流。メタノール(III)は、この発明の範囲内では、これらの流中に含まれた純メタノールの合計に当てはめられる。
【0035】
更なる成分として、これらの流中には、例えばMTBE、TBA、水、C8炭化水素及びイソプレンが含まれていてよい。
【0036】
当然のことながら、これらの流を分けて、該方法の様々な箇所に送り込むことが可能である。しかしながら、有利なのは、それらを混合し、且つ共通の流として利用することである。
【0037】
工程段階a)の1つ目の反応器に向かう供給流中でのメタノール(III)対イソブテンのモル比は、好ましくは、10:1〜1:1の範囲に、特に有利には5:1〜1.1:1の範囲に、且つ極めて有利には1.8:1〜1.2:1の範囲にある。
【0038】
触媒として、MTBE合成では、スルホン酸基を有する固体の酸性イオン交換体樹脂が使用される。適したイオン交換体樹脂は、例えば、フェノール/アルデヒド縮合物のスルホン化又は芳香族ビニル化合物のコオオリゴマーのスルホン化によって製造されるイオン交換体樹脂である。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物の例は:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレン及びジビニルベンゼンである。
殊に、スチレンとビニルベンゼンとの反応によって生じるコオリゴマーは、スルホン酸基を有するイオン交換体樹脂の製造用の前駆体として用いられる。該樹脂は、ゲル状、マクロ孔状又は海綿状に製造されることができる。これらの樹脂の特性、殊に比表面積、多孔度、安定度、膨潤度若しくは収縮性及び交換容量は、製造プロセスによって変化させられることができる。
【0039】
触媒として使用されるイオン交換体樹脂の細孔容積は、好ましくは0.3〜0.9ml/g、殊に0.5〜0.9ml/gである。該樹脂の粒度は、有利には0.3mm〜1.5mm、殊に0.5mm〜1.0mmである。粒度分布は、より狭く又はより幅広く選択されることができる。そのようにして、例えば、非常に均一な粒度を有するイオン交換体樹脂(単分散樹脂)が使用されることができる。イオン交換体の容量は、供給型を基準として、有利には0.7〜2.0eq/l、殊に1.1〜2.0eq/l、若しくは、好ましくは0.5〜5.5mol/kg、殊に0.8〜5.5mol/kgである。容量(mol/kg)に関する値は、そのつど例えば105℃にて高温窒素流中で恒量になるまで乾燥されたイオン交換体樹脂に当てはめられる。
【0040】
本発明による方法において、イオン交換体樹脂はそのH型で使用されることができる。好ましくは使用されるスチレン−ジビニルベンゼンタイプの強酸樹脂は、なかでも以下の商品名で販売される:Amberlyst(R)15、Amberlyst(R)35(それぞれRohm & Haas)又はLawatit(R)K2621(Lanxess)。
【0041】
工程段階b):MTBE分離
反応混合物(IV)からのMTBE−及びTBA含有の留分(V)の蒸留分離は、最も簡単なケースにおいては、唯一の塔内で行われることができる。
その際、留分(V)が塔底生成物として得られる。留出物は、主として、メタノールとの共沸混合物形成に基づきメタノールも含有する、反応しなかったC4炭化水素、及びDMEから成る。塔底生成物は、TBA及びMTBEのほかになお2−メトキシブタン及びC8炭化水素を含有する。メタノール(III)/イソブテン(I)の選択された比と達成された転化率に依存して、メタノールもなお含まれていてよい。
【0042】
蒸留塔は、好ましくは、15〜55段の理論段、有利には20〜40段の理論段、且つ特に有利には25〜35段の理論段を有する。塔の供給流は、好ましくは、(上から)10段目から30段目の間で、有利には15段目〜25段目の間で添加される。該塔は、好ましくは、0.3〜2.5MPa(絶対)の圧力で、有利には0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力で運転される。還流比は、実現される段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には2より小さい。還流比と呼ばれるのは、本発明によれば、排出された留出物流に対しての塔内に流れる還流の比である。
【0043】
有利な実施形態AFF1では、該塔の場合、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が側留として取り出される。塔底生成物として、C8炭化水素が富化されている留分が発生し、且つ該留分はそうしてプロセスから排出される。C8炭化水素及び場合によりC8+炭化水素の該分離は、該炭化水素が分解反応器に達しないか又は非常に僅かしか分解反応器に達しないという利点を有する。それによって、触媒が、MTBE分解において高沸点物による負荷から保護され、このことによって、触媒の活性低下及び可使期間の短縮が生じるというリスクが減らされる。
【0044】
MTBE−及びTBA含有の留分(V)が側留として取り出される蒸留塔は、好ましくは、20〜65段の理論段、有利には25〜55段の理論段、且つ特に有利には30〜45段の理論段を有する。該塔の供給流は、好ましくは、(上から)10段目から30段目の間で、有利には15段目〜25段目の間で添加される。側流の取り出しは、好ましくは、供給流の添加部より下方で、有利には、供給部より5段から25段の間だけ下方で、特に有利には10段から20段の間だけ下方で、且つ好ましくは塔底流取り出し部より5段から20段の間だけ上方で、有利には10段から15段の間だけ上方で行われる。該塔は、好ましくは、0.3〜2.5MPa(絶対)の圧力で、有利には0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力で運転される。還流比は、実現される段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には2より小さい。
【0045】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF2では、塔は反応蒸留として構成される。これは、工程a)で反応しなかった付加的なイソブテンがMTBEに転化されるという利点を有する。
【0046】
反応蒸留塔は、0.3〜2.5MPa(絶対)、好ましくは0.5〜1.0MPa(絶対)の圧力範囲で、且つ50〜90℃、好ましくは55〜70℃の反応ゾーン内での温度で、0.5から1.5の間の還流比、有利には0.7から0.9の間の還流比で運転される。
【0047】
有利には、該反応蒸留塔は、触媒充填物の上方で、単に蒸留分離の領域を有する。有利には、触媒充填物の上方のゾーンは、5〜25段、殊に10〜15段の分離段を有する。この触媒の下方の分離ゾーンは、10〜40段、殊に20〜30段の分離段を有する。
【0048】
反応蒸留塔への供給は、触媒ゾーンの上方又は下方で、好ましくは下方で行ってよい。反応蒸留塔への供給は、好ましくは、反応性充填物の下方で、有利には、反応性充填物より3〜13理論段下方で、特に有利には4〜10理論段下方で行われる。
【0049】
触媒ゾーンは、充填物高さ1メートル当たり1〜5段の理論段の蒸留作用を見積もることができる。触媒ゾーン/反応ゾーンの高さは、所望のイソブテン転化率に依存して、簡単な予備試験によって算出されることができる。触媒量は、好ましくは、反応蒸留のために、供給流中のイソブテン含有率を基準として、75〜99%、好ましくは85〜98%、且つ特に有利には95〜97%のイソブテン転化率が達成されるような量で選択される。
【0050】
触媒として、工程段階a)におけるように、酸性イオン交換体樹脂が用いられる。反応蒸留塔内で、触媒は、充填物中に、例えば(EP0428265に記載されるような)KataMax(R)、(EP0396650又はDE29807007.3U1に記載されるような)KataPak(R)に組み込まれていてよいか、又は(US5,244,929に記載されるように)成形体上で重合させられていてよいかのいずれかである。
【0051】
塔の触媒充填物中の液圧ローディング(hydraulische Belastung)は、そのフラッディング点ローディング(Flutpunktbelastung)の、有利には、10%〜110%、好ましくは20〜70%である。蒸留塔の液圧ローディングとは、上昇する蒸気質量流と還流する液体質量流とによる塔断面積の均一な流動工学的な負荷と解される。ローディング上限値は、蒸気及び還流液による最大ローディングを表し、それより上では、分離効果は、上昇する蒸気流による還流液の連行又は堰き止めのために下がる。ローディング下限値は最小ローディングを表し、それより下では、分離効果は、不規則な流れのために又は塔−例えばトレイが空になるために下がるか又は消失する(Vauck/Mueller,"Grundoperationen chemischer Verfahrenstechnik", 第626頁、VEB Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie)。
【0052】
フラッディング点では、ガスから液体に伝達された剪断応力が非常に大きいことから、液体の全量は、液滴の形態でガスにより連行されるか又は塔内で転相が生じることになる(J. Mackowiak,"Fluiddynamik von Kolonnen mit modernen Fuellkoerpern und Packungen fuer Gas/Fluessigkeitssysteme", Otto Salle Verlag 1991)。
【0053】
更なるイソブテン転化率を得るための反応蒸留技術によって、殊に、留出物中のC4混合物を基準として、1000質量ppm(wppm)より小さい、有利には800wppmより小さい、且つ特に有利には500wppmより小さいイソブテン残留濃度が得られることができる。
【0054】
塔供給流中には、依然として存在するイソブテンを完全に転化するのに使われるより多いメタノールが含まれていてよい。しかしながら、メタノール過剰分は、一方では、メタノールとC4炭化水素とからの形成される共沸混合物に十分なメタノール量が存在し、他方では、有利には、10000wppmを下回る、特に有利には5000wppmを下回るメタノール含有量を有するMTBEが得られるよう、過度に多量のメタノールが塔底生成物に含まれるほど多くはならないように制限されるべきである。
【0055】
任意に、付加的なメタノールを反応蒸留塔に送り込んでよい。これは、工程段階a)からの供給流と一緒にか又は反応蒸留塔の一箇所若しくは数カ所で行ってもよく、例えば塔頂部で並びに/又は触媒層上、触媒層間及び/若しくは触媒層下で行ってよい。
【0056】
留出物として分離されたメタノール含有C4炭化水素は、種々の後処理変法において更なる加工に供されることができる。
【0057】
有利な後処理変法では、留出物として得られたメタノール含有C4炭化水素からメタノールが分離される。塔頂生成物からのメタノールの分離は、殊に、洗浄媒体としての水又は水溶液による抽出によって行われることができる。有利には、8以上のpH値、有利には8〜12のpH値を有する水溶液が使用される。pH値の調節は、例えば、水酸化ナトリウム溶液及び/又は硫酸の添加によって行ってよい。公知の標準方法に従ったこの抽出は、例えば、抽出塔内で又はミキサーと分離容器のカスケード中で行ってよい。有利には、メタノールの分離は、抽出塔内で洗浄媒体として水又は水溶液を用いて行われる。その際、アルコールの残留含有量は、有利には0.2質量%より下に、特に有利には500wppmより下に、極めて有利には50wppmより下に低減される。該抽出塔は、有利には2〜25段の理論段、特に有利には5〜15段の理論段を有し、また10〜90℃の温度で且つC4炭化水素の蒸気圧を少なくとも0.1MPa上回る圧力で運転される。洗浄媒体対供給された塔頂生成物(工業用混合物IV+メタノール)の質量比は、好ましくは1:5〜1:40である。
【0058】
抽出からのアルコールで負荷された洗浄水は、有利には別個のユニット内で後処理され、且つ水は少なくとも部分的に抽出に返送される。後処理は、例えば蒸留によって行ってよく、その際、実際にはアルコール不含の水留分が塔底で得られ、且つメタノールが塔頂生成物として得られる。このメタノールは、本発明による方法の工程a)に返送されることができる。
【0059】
抽出から得られた、メタノール不含のC4炭化水素は、公知の方法に従って高純度1−ブテンに後処理されることができる。このために、例えば、まず選択水素化において多価不飽和炭化水素の痕跡量が水素化され(例えばDE3143647)、且つ引き続き2回の分留によって、まずn−ブタンと2−ブテンが、その後にイソブタンと更なる低沸点物が1−ブテンから分離される。1回目の分留に際して分離された2−ブテンとn−ブタンは、例えば、オリゴマー化においてC8オレフィンに(例えばOCTOLプロセス、Hydrocarbon Process,Int.Ed.(1986)65,第31頁〜第33頁を参照されたい)又はヒドロホルミル化においてバレルアルデヒドに更に加工されることができる。
【0060】
分離されたC4炭化水素の有利な第2の後処理変法では、これらはまず、イソブテン含有量を更に減少させるための更なる反応段階に供給される。この反応は、有利には1つ又は2つの断熱固定層反応器中で行われ、触媒として、工程段階a)でのものと同じ触媒が使用される。反応が実施される温度は、好ましくは、20〜60℃、有利には30〜50℃であり、圧力は、好ましくは、0.5〜5MPa、有利には0.7〜2MPaである。
有利には、反応器の出口でのメタノール含有率が、有利には1〜10質量%となるように、該反応段階に付加的なメタノールが送り込まれる。
該反応段階の搬出物は、蒸留塔内で分けられ、その際、留出物としてメタノール含有C4炭化水素が得られる。この蒸留も、反応蒸留として実施されることができる。C4炭化水素は、第1の後処理変法と同じように、抽出、選択水素化及び蒸留によって更に加工されることができる。塔底生成物としてMTBE流が発生し、これは通常、なおメタノールを含有している。該流は別途利用できるか、又は完全に若しくは部分的に工程段階a)に返送されることができる。
【0061】
この第2の後処理変法に従った後処理の場合、なお若干のMTBEが留出物流中に残留するよう、反応混合物(IV)の蒸留分離はあまり労力をかけずに運転されることができる。それによって、必要とされるエネルギー投入量を減らすことができる。
【0062】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF3では、反応混合物(IV)を分離するための第1の塔の後で、第1の塔のMTBE塔底生成物が第2の塔内で更に精製される。この塔内で、高沸点物、なかでもC8炭化水素が、塔底生成物として取り除かれる。この塔のさらに別の課題は、2−メトキシブタンの部分的又は完全な分離でありえ、それというのも、2−メトキシブタンは反応器中で線状ブテンとメタノールに分解されうるからである。線状ブテンは、濃度が過度に高い場合、場合によってはイソブテン規格を脅かしかねない。
【0063】
塔は、供給流中に含まれたTBAの大部分を可能な限り留出物に至らしめる圧力で運転される(圧力共沸混合物の形成)。それゆえ塔の圧力は、DIBのみが又は付加的に2−メトキシブタンが分離されるべきか否かに関係なく、好ましくは0.3〜2.0MPa(絶対)である。塔頂部で得られたMTBE−及びTBA含有の留分(V)の分解が、分解反応器中で、気相中で高められた圧力にて行われる場合、蒸留はより高い圧力で実施することが好ましいとされえ、この場合、塔頂凝縮器は、好ましくは分縮器として運転され、且つこの塔頂生成物(V)は蒸気状で抜き出される。蒸気状で抜き出された塔頂生成物は、次いで、反応器に直接供給されるか又は更なる予熱が行われた後に反応器に供給されることができる。蒸留と反応器との間の差圧は、この場合、有利には少なくとも0.05MPa(絶対)である。分解反応器中の反応圧力が、例えば0.7MPa(絶対)である場合、蒸留圧力は、好ましくは少なくとも0.75MPa(絶対)であるべきである。0.95MPa(絶対)より大きい運転圧力の場合、凝縮熱により(低圧−)蒸気を発生させることができ、これにより該方法の他の塔を加熱することができる。塔の加熱のために、選択された運転圧力に応じて、蒸気又は熱媒体油が使用されることができる。
【0064】
塔内で、殊にC8炭化水素のみが分離されるべき場合、該塔が15〜60段の理論段、好ましくは、20〜55段の理論段、且つ有利には30〜45段の理論段を有する場合に好ましくありうる。本発明の範囲内で、留出物の質量流量で割った還流の質量流量として定義される還流比は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び必要とされる純度に依存して、好ましくは、0.5〜7の値、有利には1〜4の値に調節される。
【0065】
塔内でDIBと付加的に2−メトキシブタンが分離されるべき場合、使用される蒸留塔は、好ましくは、50〜140段の理論段、有利には60〜120段の理論段、且つ極めて有利には80〜110段の理論段を有する。還流比は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び必要とされる純度に依存して、好ましくは、1〜20、有利には3〜10である。
2−メトキシブタンの分離が必ずしも必要とされていない場合ですら、より多くのトレイ数を有する塔の設計が不利になるとは限らず、それというのも、より大きな塔のために投入される、より高い資本費の一部が、エネルギーの節約(還流比の低下)によって補償されることができるからである。同時に、これによって、実際に運用する上での汎用性がより高まる。
【0066】
該塔の塔底生成物は、高沸点物ジイソブテン及び2−メトキシブタン並びにMTBEを含有する。塔内で、とりわけジイソブテンが分離されるべき場合、塔底生成物中のMTBE含有率は、25質量%より小さい値に減少させてよい。付加的に2−メトキシブタンが分離されるべき場合、2−メトキシブタンとMTBEとの間の小さい沸点差に基づき、分離にかける労力を減らすために、目的に応じて塔底生成物中で60〜85質量%のより高いMTBE含有率が許容される。
いずれの場合においても、この混合物は熱利用されることができ、合成ガスプラント用の供給原料として用いられることができるか又は直接的に若しくは水素化後に燃料成分として使用されることができる。
【0067】
工程段階b)の更なる有利な実施形態AFF4では、AFF3の2つの塔の間に、副生成物を分離するための更なる蒸留塔がつながれる。この塔内では、頂部を介して中沸点成分が完全に又は部分的に留出物として分離される。中沸点成分とは、この発明の範囲内で、C4炭化水素とMTBE若しくはMTBE/メタノール共沸混合物との間の沸点を有する成分と解される。これに関する例は、ジメトキシメタン及びC5炭化水素、例えばn−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン及びイソプレンである。場合により依然として含まれるC4炭化水素の残分が、中沸点成分と一緒に分離される。塔に向かう供給流中の中沸点成分の割合は、通常高くはなく、且つ好ましくは、2%を下回り、有利には0.5%を下回る。
【0068】
中沸点成分を分離するための代替案は、通常ずっと高い量のC4炭化水素と一緒に、第1の塔の留出物を介して分離することである。これらからは、しかし、中沸点成分は蒸留により塔底生成物としてのみ分離可能である。このためにC4炭化水素全体は頂部を介して蒸留されなければならないので、この選択肢はエネルギー的により都合が悪い。
【0069】
好ましくは、中沸点成分を分離するための蒸留塔は、30〜75段の理論段、有利には40〜65段の理論段、且つ特に有利には40〜55段の理論段を有する。好ましくは、塔は、実現される段数、使用されるMTBEの組成及び中沸点成分の必要とされる純度に依存して、150〜350の還流比、殊に200〜300の還流比により運転される。塔は、好ましくは、0.2〜0.6MPa(絶対)の圧力で、有利には0.3〜0.4MPa(絶対)の圧力で運転される。
塔の加熱のために、例えば蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。塔の塔頂蒸気は、塔頂生成物が液状又は蒸気状のいずれかで抜き出されることができるように、完全に又は部分的にのみ凝縮してよい。塔頂生成物は、例えば熱利用されるかことができるか、又は合成ガスプラントの供給原料として利用されることができる。
【0070】
工程段階b)で分離されたMTBE−及びTBA含有の留分(V)は、好ましくは、95質量%より大きい、特に有利には98質量%より大きい含有率のMTBEを有する。TBAの割合は、好ましくは、0.05〜5質量%、有利には0.2〜2.0質量%、極めて有利には0.2〜1.0質量%である。MTBE及びTBAのほかに、メタノールが、好ましくは0〜5質量%、有利には0.1〜1質量%含まれていてよい。
【0071】
更なる成分の濃度と発生は、工程段階a)で使用された原料と工程a)及びb)での処理操作に強く依存している。2−メトキシブタンの含有率は、好ましくは、0〜1.0質量%、有利には0.05〜0.5質量%、特に有利には0.08〜0.3質量%である。C8炭化水素の含有率は、好ましくは、0〜1質量%、有利には0〜0.1質量%、特に有利には0〜0.01質量%である。
【0072】
他の含まれる典型的な成分は、3−メトキシ−1−ブテン、1−メトキシ−2−ブテン、ジメトキシメタン及びC5炭化水素である。
【0073】
工程段階c):MTBE分離
本発明による方法の工程c)では、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が完全に又は部分的に分解反応に供され、そこで、該留分は、不均一系触媒を用いて気相中で少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水並びに場合によりTBAを含有する分解生成物(VI)に分解される。その際、120〜400℃の温度範囲で、殊に180〜350℃の範囲で、MTBEからイソブテン及びメタノールへの分解を引き起こす全ての固体触媒を使用することができる。
【0074】
有利には、本発明による方法は、工程a)で作製されたMTBEの可能な限り大部分が工程c)に供給されるように行われる。それゆえ殊に、イソブテン含有C4炭化水素からの純イソブテンの製造に、C4炭化水素中に含まれるイソブテンの高い割合が純イソブテンとして得られるべき場合に適している。代替的に、該方法において発生するMTBEに富んだ流は、案分して他に、例えば燃料添加物として利用するために使用することができる。しかし、特に有利なのは、反応混合物(IV)中に含まれるMTBEの少なくとも80質量%、極めて有利には少なくとも90質量%を、留分(V)を介して工程c)に供給することである。
【0075】
本発明による方法において使用される触媒は、例えば金属酸化物、金属混合酸化物、殊に、二酸化ケイ素及び/又は酸化アルミニウムを含有するもの、金属酸化物担体上の酸又はそれらの金属塩又は混合物であってよい。
【0076】
本発明による方法では、気相中でのMTBEからイソブテン及びメタノールへの分解のために、有利には、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から成る触媒が用いられる。係る触媒は、例えば、US5,171,920の中で例4に、又はEP0589557の中で記載される。
【0077】
特に有利には、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素を有し、且つ酸化マグネシウム0.5〜20質量%、有利には5〜15質量%、特に有利には10〜15質量%の割合、酸化アルミニウム4〜30質量%、有利には10〜20質量%の割合及び二酸化ケイ素60〜95質量%、有利には70〜90質量%の割合を有する触媒が使用される。触媒が酸化マグネシウムのほかにアルカリ金属酸化物を有する場合が好ましくありうる。これは、例えばNa2O又はK2Oから選択されていてよい。好ましくは、触媒はアルカリ金属酸化物としてNa2Oを有する。有利には使用される触媒は、好ましくは、200〜450m2/g、有利には200〜350m2/gのBET表面積(DIN ISO 9277による窒素を用いた容量測定)を有する。本発明による触媒が活性材料として担体上に施与される場合、活性材料のみが前述の範囲のBET表面積を有する。それに対して、触媒と担体とからなる材料は、担体の性質に応じて、明らかに相違するBET表面積、殊により小さいBET表面積を有してよい。
【0078】
触媒の細孔容積は、好ましくは、0.5〜1.3ml/g、有利には0.65〜1.1ml/gである。
【0079】
触媒の平均孔径(好ましくは、DIN66133に依拠して測定)は、好ましくは、5〜20nm、有利には8〜15nmである。特に有利には、触媒の全細孔容積(DIN66133による水銀ポロシメトリーを用いて測定した3.5nm以上の孔径を有する細孔の細孔容積の総和)の少なくとも50%、好ましくは70%を上回る分が、3.5〜50nmの直径を有する細孔(メソ孔)に当たる。
【0080】
本発明による方法では、有利には、平均粒度(ふるい分析によって測定)10μm〜10mm、好ましくは0.5mm〜10mm、特に有利には平均粒度1〜5mmを有する触媒が使用される。好ましくは、2〜4mm、殊に3〜4mmの平均粒度d50を有する固体触媒が使用される。
【0081】
本発明による方法では、触媒は成形体として使用されることができる。成形体は任意の形状をとってよい。有利には、触媒は、球、押出物又はタブレットの形状における成形体として使用される。成形体は、好ましくは、上述の平均粒度を有する。
【0082】
係るマグネシウム−アルミノケイ酸塩触媒の製造及び使用は、DE102006040432.7に記載されている。これが引用される。
【0083】
いくつかの触媒の活性及び/又は選択性にとって、反応器供給流に若干の水が添加される場合に好ましくありうる。そのようにして、例えば、JP19912201は、副成分の形成を減少させるためにアルカリ金属又はアルカリ土類金属でドープされたアルミノケイ酸塩に水を連続的に添加することを記載する。
【0084】
本発明による方法では、反応器供給流への水の添加は、例えば、流(V)中への水の添加によって行ってよい。これは、例えば、反応器に送られるガス状の流(V)中への水又は水蒸気の添加によって直接的に行われる。流(V)が反応器手前で切り離して蒸発される場合、ここで水を添加してもよい。
更に別の可能性は、すでに工程段階b)において、MTBE−及びTBA含有の留分(V)の分離に際して添加することにある。有利には、その際、水は、塔供給流中に又は塔の還流中に送り込まれる。特に有利には、これは、流(V)が分離される塔内で行われる。
【0085】
触媒を調節するための水の任意の添加は、流(V)中の水割合が、有利には0〜5質量%、特に有利には0.2〜1.5質量%となるように行われる。
供給される水として、その際、有利には完全脱塩水又は蒸留水又は水蒸気が使用される。
【0086】
MTBEの分解は、気相中で120〜400℃の温度範囲、殊に180〜350℃の温度範囲で、0.1〜2MPa(絶対)の圧力、殊に0.3〜1MPa(絶対)の圧力、極めて有利には0.5〜0.8MPa(絶対)の圧力にて行われる。
【0087】
イソブテン及びメタノールへのMTBEの分解は吸熱反応であり、反応混合物が該反応に際して冷却することを意味する。有利には、反応器は、選択された圧力条件下でMTBE及び生成物の触媒への部分凝縮が生じないように運転される。特に有利には、反応器は、反応器中の最小温度が触媒層のどの箇所でも、150℃より大きくなるように、極めて有利には200℃より大きくなるように運転される。最大の温度降下は、数多くのパラメーターによって、例えば加熱のために使用される熱媒体の温度によって、並びに熱媒体がジャケットを流れる速度によって調節されることができる。有利には、触媒層中の温度プロファイルは、十分な数の温度測定によってモニタされる。
【0088】
運転の経過中、触媒の失活の増大とともに転化率を一定状態に保つために入口温度及び/又は運転温度を上げることが好ましくありうる。
【0089】
本発明による方法の工程c)でのMTBEの転化率は、40%ないし98%の間、有利には75%ないし97%の間、特に有利には85%ないし95%の間にある。
【0090】
TBAが、MTBEの分解の条件下で同様に少なくとも部分的に分解される。転化率は、その際、相応する温度での反応の平衡状態によって制限されている。
【0091】
反応器は、好ましくは、空間速度(1時間当たり触媒1kg当たりでの出発材料(kg)の重量空間速度(Weight Hourly Space Velocity)(WHSV))0.1〜5h-1、殊に1〜3h-1によりシングルパスで運転される。
【0092】
反応器として、有利には、管型反応器又は管束反応器、殊に管内径10〜60mmを有するものが使用される。
管の加熱は、反応器ジャケットを介して、蒸気、塩溶融物又は熱媒体油によって行われる。殊に、液状の加熱媒体が使用される場合、その際、ジャケット面は、可能な限り均一な温度勾配が全ての管に生じるように構造的に仕上げられる。これに必要な技術的な措置は当業者に公知であり、且つ文献に記載されている(偏向板の取り付け、ディスク構造及びドーナツ構造、反応器の種々の箇所での熱媒体の供給/排出等)。有利には、反応媒体及び熱媒体は並流で、特に有利には上方から下方に向かってトラクター管若しくは反応ジャケットに通される。有利な実施形態は、例えばDE102006040433.5に記載されている。
【0093】
従来の管束装置中では、偏向板がジャケット面で使用され、これが実際に反応器と並行する熱媒体流体を横向きの流に変えることになる。このようにして熱伝達が改善され、且つ付加的に流路長が明らかに高められる。
とはいっても、偏向板と熱媒体の外部ジャケット間で製造上のギャップが発生する。ジャケット内に管束を挿入できるようにするためには、数ミリメートル(一般に3mmより大きい)ギャップ幅を有するギャップが必要とされる。これらのギャップ損失は、伝達された熱の低下を不可避的にもたらす。
【0094】
ジャケットと偏向板間のギャップ中では、個々のセグメント間の差圧に基づき必然的にリーク流が発生し、周辺ギャップを流れる液体は実際に熱伝達には与しない。リーク流は全部合わせて、ジャケット空間を流れる流全体の約40%までであってよい。
【0095】
それゆえ、本発明による方法の特に有利な実施形態において、特別な反応器タイプが使用され、該反応器タイプの場合、特別な構造によって、偏向板と装置ジャケット間の管束装置中で発生するリーク流が完全に防止され、且つそのようにして熱伝達が明らかに改善される。
【0096】
この特別な構造とは、以下でシャツと呼ぶ、管束の周りに敷設される更に別の(薄板)ジャケットである。本来のジャケットとは異なり、このシャツはギャップ無しに偏向板に取り付けられ、且つそこで固定される。該シャツは、偏向板及び管板とギャップを形成せずに、ジャケット側の液体入口の側で連結されている。一般にこれは、このシャツがより小さいセグメントから成り、且つこれらのセグメントが偏向板に固定されることを前提とする。製造の理由から、これらのセグメントは偏向板と固定されるか、あるいはまた互いに、好ましくは溶接されるか又は他の仕方で固定される。この製造法によって、ふつうは相当に長い管束がシャツに端止めされる必要がないことから、ギャップを完全に無くすことができる。
【0097】
運転中、ジャケット空間を貫流するのは、シャツで取り囲まれた管束の内部のみである。重要なことは、シャツが最後の偏向板を超えてずに管束の周りで固定されていることであり、その結果、ジャケット空間を流れる液体は、管束とは逸れた向きでシャツを取り囲み、且つそのようにして圧力調整が行われる。シャツ構造に負荷を掛けるのは、この配置の場合、管束内部の動圧損失から生じる差圧のみである。それゆえ、記載したシャツ構造は、耐圧性ではなく、且つそれに従って、外側のジャケットと比較して寧ろより僅かな壁厚で仕上げられることができる。それゆえ、シャツには、好ましくは壁が薄い薄板構造が選択される。薄壁材料の使用によって、製造が明らかに簡素化されえ、且つ偏向板に該薄板を取り付けることが実質的に軽減される。
【0098】
代替的に、外側のジャケットを、上に記載した方法で、偏向板と直接溶接することも考えられうる。係る解決手段と比較して、ここで提示したシャツ構造は、一連の利点を生み出し、殊に製造を明らかに簡略化する。その場合、装置は多数の耐圧性の溶接箇所から成らない。偏向板は変えずに保持されることもでき、且つ高められた壁厚等を有する必要がない。シャツによって取り囲まれた管束は、これまで通り、耐圧性のジャケットに挿入されることができる。とはいっても、その際、ギャップの規模は、ほぼ任意の大きさに選択されることができ、これによって、この箇所での組み立ても簡略化される。
【0099】
ここで提示した二重ジャケット構造の使用は、偏向板と外側ジャケット間のさもなければ発生するリーク流を排除することを可能にする。リーク流が無くなることは、いくつもの形で、反応器内部の熱伝達に好ましい影響を及ぼす。この場合の最も重要な効果は、偏向板間の意図された流路を貫通する質量流量の増大である。質量流量のこの増大は、流体と管との間の熱伝達の改善に直接つながる、流速度の増加を結果もたらす。さらに、セグメント内部の熱流量が同じ場合、半径方向温度勾配が明らかに減少する。セグメントに沿った温度勾配のこの低下は、他方では、ジャケット側と管側との間のより高い平均温度差を結果もたらし、そのためこの事実によっても熱媒体の改善が想定される。
【0100】
該シャツ構造は、使用される管型反応器との組合せにおいてMTBE分解が行われる場合、2つの形で反応に好ましい影響を及ぼす。1つ目の好ましい効果は、装置中での改善された熱伝達であり、これにより管軸に沿った定常温度プロファイルが生じる。したがって、反応による温度降下は、係るシャツ構造を有さない比較可能な装置の場合より少なくなる。2つ目の重要な効果は、ジャケット空間の個々のセグメントによって質量流量が増大することであり、それによって半径方向温度プロファイルが軽減される。この効果は生成物品質に改善作用をもたらす。
【0101】
管束装置のほかに、分解反応の実施用にプレート型反応器も使用されることができる。プレート型反応器は、プレート型熱交換器と同じように構成されている。触媒が存在するプレート間の距離は、この場合、有利には10〜80mmである。
【0102】
MTBEの分解に際しては、副反応が発生する。これらは、MTBE又は分解生成物のイソブテン及びメタノールに起因するものとみなされる。
【0103】
標準的に、MTBE分解に際しては、ジメチルエーテル(DME)の形成が起こる。その際、2個の分子メタノールが反応してDMEと水になる。好ましくは、本発明によるプロセスは、反応してDMEとなるDME選択率が10%を下回り、有利には4%を下回るように運転される。(DME選択率=2×[形成されたDME(モル)]/[反応したMTBE(モル)])。
【0104】
更に別の副反応は、イソブテンの二量化によるC8炭化水素の形成である。これらは、2,4,4−トリメチルペンテン−1及び2,4,4−トリメチルペンテン−2からの混合物から主として成る。
【0105】
ふつうは明らかにより低い規模で、更に別の副生成物の形成が観察される。それらに属するのは、例えばイソブタン、イソプレン及びジメトキシメタン並びに高次オリゴマー(C12炭化水素、C16炭化水素)である。
【0106】
たいていの場合、なお並行して進行する反応が副反応にさらに付け加えられ、この場合、反応器供給流からの不純物が反応する。それに含まれるのは、例えば、MTBE中に含まれた2−メトキシブタンの分解である。これから、メタノールの分解によって1−ブテンと2−ブテンが形成しうる。MTBE中に含まれた3−メトキシ−1−ブテン又は1−メトキシ−2−ブテンから、該分解において1,3−ブタジエンが形成されうる。
【0107】
工程段階d):イソブテン分離
反応器からの分解生成物(VI)は、本発明による方法の工程d)で、該分解生成物(VI)中に含まれるメタノール量、TBA量及び水量をそのつど50質量%を超えて含有する留分(VII)の取得下で分離される。
【0108】
第2表は、0.5MPa(絶対)での反応器搬出物中に含まれる成分の純物質沸点を示す。イソブテンのほかに、低沸点物として更にC4炭化水素(1−ブテン、2−ブテン)及びDMEが含まれている。イソプレン及びジメトキシメタンは、MTBEとC4炭化水素の沸点の間にある沸点を有する中沸点物の例である。中沸点物は、一部は反応において形成されるか又は不純物として供給流を介して分解に至る。高沸点物、つまり、MTBEより高い沸点を有する成分として、例えばt−ブタノール、ジイソブテン及び2−メトキシブタンが含まれている。
【0109】
含水量に関する値は、第2表において、流(V)中への水の付加的な添加を行わない反応器の運転様式に当てはめられる。ここで付加的な水が添加される場合、一般には反応器搬出物中の水とTBAの含有量が高まる。
【0110】
【表2】
【0111】
AFF5の有利な実施形態では、分解生成物(VI)の蒸留分離がまさに1つの蒸留塔内で行われる。この蒸留塔は、好ましくは、20〜55段の理論段、有利には25〜45段の理論段、且つ特に有利には30〜40段の理論段を有する。還流比は、実現された段数、反応器搬出物の組成並びに留出物及び塔底生成物の必要とされる純度に依存して、好ましくは、5より小さく、有利には1より小さい。塔の運転圧力は、好ましくは0.1ないし2.0MPa(絶対)の間で調節されることができる。その際、塔を、分解反応器が運転される圧力より低い圧力で運転することが好ましい。それから分解生成物(VI)はガス状又は部分的にガス状で、分縮後に、蒸留塔に移送されることができる。圧力を上げるための凝縮器又は完全な凝縮は、このようにして省かれることができる。
【0112】
特に有利には、反応生成物(VI)は分縮後に蒸留塔に移送される。その際、ガス流の有利には30〜70質量%、特に有利には40〜70質量%が凝縮される。
凝縮されなかったガス流は直接、凝縮されたガス流は、必要であれば、圧力上昇後にポンプによって塔内に導入される。冷却及び分縮に際して放出される熱は、その際、熱的統合のためにプロセス内で又は他のプロセス部分とともに利用されることができる。この熱的統合は、公知の先行技術に従って、例えば塔底蒸発器又は予熱器若しくは塔供給流中の予備的蒸発により行われることができる。
【0113】
気相及び液相の供給は、その際、塔の同じ箇所又は異なる箇所で行ってよい。有利には、液相の供給は、気相の供給と同じトレイで又は気相の供給部より5段まで下のトレイで行われる。
【0114】
気相の部分的な凝縮に際して放出される熱は、有利にはプロセスの他の箇所で、例えば塔の加熱のために又は反応器供給流の予熱のために利用される。
【0115】
イソブテンを塔頂部で冷却水に対して凝縮することができるように、0.5MPa(絶対)の圧力が必要とされる。分解が、例えば0.65MPa(絶対)の圧力で操作される時は、0.55〜0.65MPa(絶対)の運転圧力により蒸留塔が実施される場合に好ましくありうる。塔の蒸発器の加熱のために、例えば0.4MPaの蒸気を使用してよい。
【0116】
塔底生成物として、分解生成物(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%を超えるメタノール量、TBA量及び水量を含有する留分(VII)が得られる。この実施形態AFF5に応じた後処理の場合、留分(VII)はそのうえなおMTBEを含有する。有利には、AFF5に従って得られた留分(VII)は、それぞれ、分解生成物(VI)中に含まれた90質量%を超えるメタノール量、分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超えるTBA量、分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超える水量及び分解生成物(VI)中に含まれた98質量%を超えるMTBA量を有する。特に有利には、そのようにして分離された留分は、分解生成物(VI)中に含まれるMTBE量、TBA量、2−メトキシブタン量及びジイソブテン量の全量を実際に含有する。
【0117】
分解の搬出物中に含まれた中沸点物も、有利には同様に、そのようにして得られた留分(VII)とともに、有利には60〜100質量%、特に有利には80〜98質量%分離される。
【0118】
流(VII)の代表組成は、第2表に示した濃度範囲との組合せにおいて容易に出る。
【0119】
塔の頂部では、主としてイソブテン、メタノール(C4炭化水素との共沸混合物形成に基づく)及びDMEを含有する留分(XVII)が得られる。微量分として、1−ブテン、2−ブテン、1,3−ブタジエン及び中沸点物、例えばイソプレン及びジメトキシメタンが含まれていてよい。有利には、中沸点物の含有量は、合わせて50ppmを下回り、特に有利には、イソプレンの含有量は20ppmを下回り、ジメトキシメタンの含有量は30ppmを下回る。
【0120】
留出物中のメタノールの含有率は、一般には2〜4質量%である。メタノールを含まずに計算した留出物流を基準として、イソプレンの濃度は、好ましくは、25ppm未満であり、有利には1ppm未満であり、ジメトキシメタンの含有量は、好ましくは、10ppm未満であり、有利には1ppm未満であり、且つMTBEの含有量は、好ましくは、5ppm未満であり、有利には0.1ppm未満である。
【0121】
更なる有利な実施形態AFF6では、第1の蒸留がAFF5の蒸留と同じように実施され、しかし、該蒸留の塔底生成物は、第2の蒸留において更に精製される。その際、主としてMTBE−及びメタノール含有の塔頂留分が得られる。そのほかに、実質的にMTBE不含で、メタノールに富んだ塔底留分が得られ、該塔底留分中には、TBAと水の非常に大きな部分も含まれている。C8炭化水素も、付加的な側留を伴わない塔の運転の場合には、同様に塔底留分の構成成分である。しかしながら、C8炭化水素を塔の側留によって少なくとも部分的に排出することが可能である。このような方法は、例えばDE102006040434に記載されている。塔底留分は、次いで留分(VII)として本発明による方法の工程e)に導かれる。
【0122】
この第2の蒸留塔は、好ましくは、20〜75段の理論段、有利には30〜65段の理論段、且つ特に有利には35〜50段の理論段を有する。塔が、実現される段数及び分解反応器中で達成されたMTBE転化率に依存して、10より小さい還流比、有利には0.5〜5の還流比で運転される場合に好ましくありうる。塔の運転圧力は、好ましくは、0.05〜1MPa(絶対)の範囲、有利には0.1〜0.3MPa(絶対)の範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば0.4MPa(絶対)の蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、冷却ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。
【0123】
このように塔底で得られた留分(VII)は、好ましくは95質量%より大きい、特に有利には97質量%より大きいメタノールを含有する。塔底生成物中のTBA含有量は、好ましくは100〜1000質量ppmであり、且つ含水率は、好ましくは0.3〜2.0質量%である。反応部で生じた中沸点物、例えばイソプレン及びジメトキシメタンは、好ましくは、200ppmより小さい量で、有利には100ppmより小さい量で、且つ特に有利には50ppmより小さい量で含まれている。
【0124】
主としてMTBE及びメタノール含有の塔頂留分は、主成分MTBEの他になおメタノールと、反応部で生じた中沸点物、例えばイソプレン及び/又はジメトキシメタンを含有する。この流は、有利には完全に又は部分的に本発明による方法の工程b)に導かれる。特に有利には、それは工程段階の実施形態AFF4と組合せて3つの塔の真ん中に導かれ、その際、中沸点物はこの塔内で塔頂生成物として一緒に分離されることができる。
【0125】
工程段階e):水分離
工程段階d)で得られた留分(VII)から、工程段階e)において留分(VIII)の取得下で水が分離される。基本的に、その際、水の分離は、技術的に適用可能な全ての方法、例えば浸透、透析蒸発、吸着(例えばモレキュラーシーブによる圧力変動吸着)又は蒸留によって行ってよい。有利には、水の分離は、1つ又は2つの蒸留塔内での蒸留によって行われる。
【0126】
有利な実施形態AFF7では、水は、唯一の蒸留塔内での蒸留によって分離される。その際、水は、塔の底部で得られ、他の全ての成分は塔の頂部で得られる。
【0127】
蒸留塔は、好ましくは、15〜50段の理論段、有利には15〜40段の理論段、且つ特に有利には20〜35段の理論段を有する。塔が、実現される段数及び分解反応器中で達成されたMTBE転化率に依存して、2より小さい還流比、有利には0.5〜1の還流比で運転される場合に好ましくありうる。塔の運転圧力は、好ましくは、0.05〜1.0MPa(絶対)の範囲、有利には0.1〜0.5MPa(絶対)の範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば0.4MPaの蒸気を使用してよい。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。
【0128】
更なる有利な実施形態AFF8では、水の分離は、2段圧力蒸留(Zweidruckdestillation)として運転される2つの蒸留塔内で実施される。その際、例えば、1つ目の塔は2つ目の塔より低い圧力で運転され、且つ2つ目の塔の塔頂蒸気の凝縮熱により1つ目の塔の塔底が加熱される。2つの蒸留塔の1つ目は、その際、好ましくは、5〜35段の理論段、有利には10〜20段の理論段、且つ特に有利には15〜25段の理論段を有する。還流比は、0.1〜2、有利には0.5〜1である。1つ目の塔の運転圧力は、好ましくは、0.01〜1.0MPa(絶対)の範囲、有利には0.05〜0.2MPa(絶対)の範囲の値に調節される。凝縮は、選択された運転圧力に応じて、ブライン、冷却水又は空気に対して行われることができる。2つの蒸留塔の2つ目は、好ましくは、10〜45段の理論段、有利には18〜38段の理論段、且つ特に有利には20〜30段の理論段を有する。還流比は、1.0〜5.0、有利には1.4〜2.8である。1つ目の塔の塔底圧力と2つ目の塔の塔頂圧力との差が、1つ目の塔の蒸発器(=2つ目の塔の凝縮器)中での増大する温度差を決定する。2つ目の塔の運転圧力は、好ましくは、1つ目の塔の塔底圧力より0.05〜0.5MPa(絶対)高い範囲、有利には0.15〜0.25MPa(絶対)高い範囲の値に調節される。塔の加熱のために、例えば蒸気を使用してよい。
場合により、塔システムの制御をより良好なものとするために、1つ目の塔には、例えば蒸気で運転される付加的な蒸発器を備え付け、且つ2つ目の塔には、選択された運転圧力に応じて、例えばブライン、冷却水又は空気で運転される付加的な凝縮器を備え付けることが目的に適っている。
【0129】
蒸気を用いて1つ若しくは2つの乾燥塔を加熱する代わりに、他のプロセス流、例えば反応器からの分解ガスとの熱的統合も行われることもできる。この熱的統合は、公知の先行技術に従って、例えば塔底蒸発器又は予熱器若しくは塔供給流中の予備的蒸発により行われることができる。
【0130】
1つの蒸留塔として水分離が行われる場合、留出物流が得られ、2つの蒸留塔として行われる場合、留分(VIII)として2つの発生する留出物流を合わせたものが得られる。留分(VIII)の主成分はメタノールとMTBEであり、留分(VIII)中の含水率は、1質量%未満、有利には0.5質量%未満、特に有利には0.1質量%未満である。得られた流(VIII)は、完全に又は部分的に本発明による方法の工程a)に返送される。
【0131】
塔若しくは2つ目の塔の塔底流(XLI)は、大部分が水と微量のメタノール及び場合により更なる有機成分から成る。好ましくは、含水率は99.9質量%より大きく、有利には99.99質量%より大きく、且つ特に有利には99.999質量%より大きい。この流は、プロセス用水として、例えば方法の中で存在する抽出工程において利用されることができるか、又は排水として、場合により更なる精製後に排出されることができるかのいずれかである。
【0132】
工程段階c)で酸性触媒が使用される場合、反応器搬出物(VI)は酸性pH値を有する可能性がある。この結果、これらのあとに続く工程段階d)及びe)において、殊に工程段階d)における塔及び2つの塔の塔底領域及び続く工程段階e)において、安価な低合金鋼を使用することができず、むしろ酸性条件に基づく腐食の回避のために高価な高合金鋼を使用しなければならなくなりうる。これを避けるために、工程段階d)又は工程段階e)ではアルカリ液流を計量供給してよい。工程段階d)では、好ましくは、流(VI)への計量供給、有利には塔内への若しくは第1の塔内への計量供給が、供給流の添加部より下方で行われる。工程段階e)では、好ましくは、流(VII)へのアルカリ液の計量供給、有利には塔内への若しくは第1の塔内へのアルカリ液の計量供給が、供給流の添加部より下方で行われる。アルカリ液は、流(XLI)により再びプロセスから排出される。それにより、アルカリ液が工程段階a)に返送され、且つここで場合により、使用される触媒の損傷を招くリスクがなくなる。
【0133】
アルカリ液として、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液が使用されることができる。有利には、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液、殊に水酸化ナトリウム溶液が使用される。水溶液中の水酸化物の濃度は、0.5〜30質量%、殊に2〜5質量%である。水酸化ナトリウム溶液の場合、水酸化ナトリウムの含有率は、好ましくは、0.5〜30質量%の範囲に、殊に1〜5質量%の範囲に、極めて有利には2.5〜3.5質量%の範囲にある。アルカリ液は、塔底流(XLI)中で、有利には、8以上のpH値、有利には8〜12のpH値が生じるように配量される。
【0134】
高純度イソブテンへの精製
市場で行き渡っているイソブテン品質は、通常、メタノールを実際に含んでいない。分解生成物(VI)の蒸留分離に際して発生するイソブテン流はなおメタノールを含有する。これは、自体公知の方法に従って、例えば抽出によって分離されることができる。イソブテンからのメタノールの抽出は、例えば、抽出剤としての水又は水溶液を用いて、例えば抽出塔内で実施されることができる。
【0135】
好ましくは、水又は水溶液による抽出は、好ましくは4〜16段の理論段を有する抽出塔内で実施される。抽出剤は、抽出塔を、抽出されるべき流を基準として、好ましくは向流で貫流する。抽出は、好ましくは、15〜50℃、有利には25〜40℃の温度で実施される。例えば、0.9MPa(絶対)及び40℃の温度で運転される、6段を上回る理論段を有する抽出塔が使用される場合、10ppmより低いメタノール含有量を有する水飽和イソブテンが得られる。
【0136】
抽出に際して得られたメタノール含有の水抽出物は、蒸留により水とメタノールに分離されることができる。水は、抽出剤として抽出段階に返送されることができる。メタノールは、有利には、本発明による方法の工程a)に返送されることができる。
【0137】
抽出塔からの湿性イソブテン流は、1つ以上の更に別の蒸留塔内で、水と場合によってはDMEの分離によって乾燥イソブテンへと後処理されることができる。その際、乾燥したイソブテンは塔底生成物として得られる。塔の頂部での凝縮系において、相分離後に水が液状で、且つイソブテン残留量を有するDMEが液状及び/又はガス状で抜き出されることができる。乾燥のために有利には使用される蒸留塔は、好ましくは、30〜80段の理論段、有利には40〜65段の理論段を有する。還流比は、実現される段数及びイソブテンの必要とされる純度に依存して、好ましくは、60より小さく、有利には40より小さい。
【0138】
塔の運転圧力は、好ましくは、0.1ないし2.0MPa(絶対)の間で調節してよい。塔の頂部で得られるDMEに富んだ流は、必要ならば、引き続き蒸留により分離してよい。
【0139】
流VIからは、そのうえDMEの一部が、蒸留塔若しくは反応蒸留塔の凝縮器が分縮器として運転されることによって、場合によりすでに工程d)での蒸留に際して分離されることができる。この場合、塔頂生成物中に含まれるC4留分が凝縮され、且つガス状のジメチルエーテルの一部が排ガス流として抜き出されることができる。
【0140】
特に有利には、本発明による方法では、DMEと水を分離するための塔が、該塔の側流中に存在する、水を分離するためのデカンターとともに使用される。該デカンターを塔の側流中に組み込むことによって、イソブテンの損失量は最小化されることができる。このような方法は、例えば出願DE10238370にも記載されている。抽出からの湿性イソブテン流は、その際、場合により、例えばデカンター又はコアレッサーによる、残留する不均一な水の分離後に塔内に送り込まれる。塔の頂部ではDEMが、塔底では乾燥したイソブテンが得られる。出発物質を導入する箇所より下方又は上方で、塔からの側流が液状で取り出され、これはデカンターに導かれる。デカンター内では、水に乏しい有機相から水相が分離される。水は排出され、有機相は塔に返送される。側方デカンターに向かう流の抜き出しは、その際、有利には、塔供給部より下方で行われ、デカンターから塔内への流の返送は取り出し部より下方で行われる。
その際、塔は、好ましくは、30〜80段の理論段数、有利には40〜65段の理論段を有する。精製されるべきイソブテンは、好ましくは、そのつど上から数えて15〜30段目の分離段より上で送り込まれる。有利には、供給箇所より2〜5段上の分離段で、この分離段の凝縮物全体が抜き出され、且つデンカンターに通される。水の分離後、有機相は1〜2段の分離段低くして塔内に返送される。
【0141】
塔の還流比は、実現される段数及びイソブテンの必要とされる純度に依存して、好ましくは、60より小さく、有利には40より小さい。塔の運転圧力は、好ましくは0.1〜20MPa(絶対)、特に有利には1.0〜1.5MPa(絶対)である。
【0142】
このように取得されたイソブテンは、例えば、第3表に挙げた組成を有していてよい。
【0143】
【表3】
【0144】
イソブテン中に含まれた線状ブテン(1−ブテン、2−ブテン)は、該イソブテンから技術的に満足できる形で分離可能ではない。線状ブテンの形成は、なかでも、MTBE中に含まれている可能性がある2−メトキシブタンの分解から行われる。それゆえ、分解前の2−メトキシブタンの完全な分離によって線状ブテンの形成は回避されることができる。蒸留コストを制限するためには、しかしながら、2−メトキシブタンの僅かな濃度を許容することが好ましくありうる。殊にこれは、方法の工程c)で、MTBEを2−メトキシブタンより素早く分解する触媒が使用される場合に可能である。
【0145】
純度の要求に応じて、しかし、必要な場合には、副成分のより僅かな濃度も有効である。
【0146】
工程a)からの分離されたC4炭化水素の後処理に際してと、水又は水溶液を用いた抽出による留分(XVII)の精製に際しては、メタノール−水混合物が発生し、該混合物は、有利には蒸留によって水とメタノールとに分離される。有利には、これらの2つの蒸留は1つの蒸留としてまとめて行われる。プロセスの中で更なる水−メタノール流が発生する場合、これらも同様にこの分離に取り入れることが好ましくありうる。例えば、水の分離を、工程e)に相応して、これらの水−メタノール蒸留と組み合わせることが可能である。その際、特に有利なのは、2段圧力切換(Zweidruckschaltung)として配置された際により高い圧力で運転される塔と組み合わせることである。
【0147】
本発明による方法により製造されたイソブテンは、例えば、ジイソブテン、イソブテンオリゴマー、ポリイソブテン、ブチルゴム、t−ブチル芳香族化合物、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタリルクロライド、又はメタリルスルホネートの製造のために使用されることができる。殊に、分解に際して得られたメタノールのみならず、イソブテンもメタクリル酸メチルの製造のために使用することが好ましくありうる。メタクリル酸メチルの係る製造方法は、例えばEP1254887に記載されており、これが明示的に参照される。
【0148】
図1〜12を手がかりにして、本発明と個々の工程段階のいくつかの実施形態を詳細に説明するが、しかながら、本発明はこれらに制限されない。
【0149】
図1は、その個々の工程段階を有する方法を具体的に示し、図2〜12は、個々の工程段階の実施形態を示す。
【0150】
図1は、個々の工程段階と、それらに対応する物質流を示す。工程段階[a]に、イソブテン含有C4炭化水素(II)、メタノール含有流(IX)及びメタノール含有留分(VIII)を供給する。流(VIII)及び(IX)中にはメタノール(III)が含まれており、該メタノール(III)は、流(II)からのイソブテン(I)と反応してMTBE−及びTBA含有の反応混合物が得られる。
【0151】
流(IX)は、例えば、新しい、つまり、本発明によるプロセス中で回収されなかったメタノール、又は水を用いたメタノール含有C4流の抽出及び引き続くメタノール/水分離に際して回収されたメタノールを含有してよい。
【0152】
反応混合物(IV)から、[b]においてMTBE−及びTBA含有の留分(V)を分離する。第2の流として、ここで、メタノール分をなお含有するC4炭化水素の流(X)が発生する。
【0153】
留分(V)を、[c]において分解生成物(VI)へと分解し、該分解生成物(VI)から、[d]において留分(VII)を分離し、該留分(VII)は、分解生成物(VI)中に含まれたメタノール、TBA及び水の50質量%を超える量を含有する。そのほかに、メタノール含有イソブテン流(XVII)と、場合によりMTBE−及びメタノール含有の流(XL)が発生する。
【0154】
[e]において、最終的に留分(VII)から水(XLI)を分離し、残留する流(VIII)を[a]に返送する。
【0155】
図2には、工程段階[a]の有利な実施形態を示している。イソブテン含有C4炭化水素(II)を、メタノール含有流(VIII)及び(IX)と一緒に混ぜ、且つ第1の反応器(R11)に送る。反応器(R11)を、断熱固定層反応器として返送を伴って運転し、続く2つの反応器(R12、R13)はシングルパスで運転する。反応器R12/R13の手前で、それぞれ温度を別個に調整する。反応器(R13)から、反応混合物(IV)が得られる。
【0156】
図3は、工程段階[b]の実施形態[b1]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分(X)並びにC8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF1に相当する。
【0157】
付加的に示してあるのは、塔頂留分(X)の有利な後処理である。メタノール含有C4炭化水素(X)から、メタノールを抽出塔(E−21)内で水(XI)との向流において洗い出す。水/メタノール混合物(XII)を、塔T−24内で蒸留により、抽出に返送される塔底生成物の水(XI)と、塔頂生成物の(XIV)とに分離する。流(XIV)は、有利には流(IX)の部分流として工程[a]で使用する。
【0158】
図4は、工程段階[b]の実施形態[b2]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、MTBE−、2−メトキシブタン、C8−及びTBA含有の塔底留分(XVI)と、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分とに分ける。
【0159】
塔T−21は、この実施形態では、有利には反応蒸留塔として運転する。反応蒸留塔としての塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF2に相当する。
【0160】
塔底留分(XVI)は、更に別の蒸留塔(T−23)内で引き続き分離する。塔頂生成物として、MTBE−及びTBA含有の留分(V)が得られ、塔底生成物(XV)として、C8炭化水素と2−メトキブタンとが少なくとも部分的に分離される。MTBE/2−メトキシブタンの困難な分離タスクに基づき、一般には依然としてMTBEも含まれている。有利には、塔T−23は、留分(V)が塔の頂部でガス状で抜き出され、且つ場合により更なる加熱後に分解反応に直接導かれることができる程度の高さの圧力で運転する。塔T−23内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF3に相当する。
そのうえここでは、流(V)に付加的に水を加えて触媒を調整するという選択肢も表示している。塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように行う。
【0161】
図5は、工程段階[b]の実施形態[b3]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、MTBE−、2−メトキシブタン、C8−及びTBA含有の塔底留分(XVI)と、C4炭化水素のメタノール含有塔頂留分(X)とに分ける。塔T−21は、この実施形態では、有利には反応蒸留塔として運転する。反応蒸留塔としての塔T−21の構成は、前に記載した実施形態AFF2に再び相当する。
【0162】
留分(XVI)から、塔T−22内で、頂部を介して低沸点物及び中沸点物(L)、例えばC4炭化水素及びC5炭化水素の残留量を分離する。そのようにして、例えば、0.1MPa(絶対)にて50℃を下回る沸点を有する全ての成分を、留出物を介して分離することができる。塔T−22内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF4に相当する。塔底生成物(XVIII)を、次いで塔T−23内で、頂部で得られたMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、[b2]における組成と同じ組成を有する塔底生成物(XV)とに分離する。塔T−23内でのMTBEの精製は、前に記載した実施形態AFF3に再び相当する。そのうえここでも、流(V)に付加的に水を加えて触媒を調整するという選択肢も表示している。
【0163】
塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように行う。
【0164】
この実施形態[b3]の利点は、(XVI)中に含まれたC4炭化水素の残分、それに中沸点成分も簡単に分離することができるという点にある。そのため、それらはMTBE分解反応器中にも塔頂留分(X)中にも至らない。
【0165】
図6は、工程段階[b]の実施形態[b4]を示す。反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、C8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔頂留分(XIX)として、C4炭化水素、メタノール及び場合によりMTBEからの混合物が得られる。この混合物を、反応器R−21中に供給し、該反応器中で、反応しなかったイソブテンの残留量を更に反応し尽くしてMTBEを形成させる。該反応器に、付加的にメタノール含有流(XX)を供給してよい。反応器搬出物(XXI)を、引き続き塔T−25内で、メタノール含有C4留分(X)と、MTBE含有塔底留分(XXII)とに分離する。この留分は別途利用するか、又は完全に若しくは部分的に該方法の工程[a]に返送してよい。塔頂留分(X)の後処理は、実施形態[b1]と同じように再び行う。この実施形態では、塔T−25を反応蒸留として配置することが好ましくありうる。
【0166】
この実施形態の利点は、該方法の工程[a]でのイソブテン転化率がより少なくてよく、それによって、形成される2−メトキシブタンも少ないという点にある。このことによって、場合により、実施形態[b2]及び[b3]において使用されるような塔T−23を完全に省くことができるか、又は塔を明らかにより小さい規模とすることができる。
【0167】
図7は、工程段階[b]の実施形態[b5]を示す。ここでは、1−ブテンの精製において、依然として残留するイソブテンの量を反応させてMTBEを形成するという特徴を伴う、高純度1−ブテンに至るまでの精製を行う。
【0168】
反応混合物(IV)を、塔T−21内で、側留として取り出されるMTBE−及びTBA含有の留分(V)と、C8に富んだ塔底留分(XV)とに分離する。塔頂留分(XXIII)として、メタノール含有C4留分(XXIII)を取り出し、該留分(XXIII)は、なおイソブテンの残留量を含有する。メタノールを、流(XXIII)から水(XXXIV)を用いて抽出塔E−21内で洗い出す。結果生じる流(XXIV)中になお含まれる1,3−ブタジエンの量を、選択水素化SHPにおいて水素と反応させてn−ブテンを得て、該水素化の搬出物(XXV)を塔T−27に導く。塔T−27内で、C4炭化水素の第1の分離を行う。塔頂生成物(XXVII)として、1−ブテン、イソブテンの残分、イソブタン及び含まれる低沸点物、なかでもMTBE合成からのDMEが得られる。n−ブタン、2−ブテン及び場合により1−ブテンの残留量が、塔の底部で流(XXVI)として抜き出される。場合により不均一に塔頂流(XXVII)中で発生する水を分離する。留出物を、反応段階R−22に供給し、そこでイソブテンをメタノール(XXVIII)と反応させる。その際、触媒及び反応条件は、本発明による方法の工程段階a)のものに相当する。
【0169】
反応から得られた混合物(XXIX)を、塔T−28内で、メタノール含有C4炭化水素(XXX)と、MTBE含有塔底留分(XXXI)とに分離する。MTBE留分は、有利にはなおメタノールを含有し、且つ(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
【0170】
流(XXX)から、抽出E−22においてメタノールを水(XXXIV)により洗い出す。2つの抽出からの水/メタノール流(XXXIII)及び(XXXII)を、共通の塔T−26内で、水(XXXIV)とメタノール(XXXV)とに分ける。流(XXXV)は、有利には流(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
【0171】
水飽和流(XXXVI)を、あとに続く蒸留T−29内で高純度1−ブテン(XXXVIII)へと蒸留する。それは塔の塔底生成物として発生する。塔の頂部では、イソブテン及び低沸点物、例えばDMEが得られる(XXXVII)。水の分離のために、塔T−29に頂部デカンターを備え付けることが目的に適っており、そこで水が第2の相として分離し、且つ排出されることができる。
【0172】
図8は、工程段階[d]の実施形態[d1]を示す。他のプロセス流との熱的統合によって部分凝縮された分解生成物(VI)の分離を、唯一の蒸留塔T−41内で行い、その際、塔底で、主成分として、メタノールと、反応しなかったMTBEを有する留分(VII)を得る。塔頂生成物(XVII)は、イソブテン、メタノール及び低沸点物、例えばDMEから成る。中沸点物、例えばC5炭化水素、イソプレン及びジメトキシメタンが、有利には塔底生成物とともに得られる。塔T−41内でのイソブテンの分離は、前に記載した実施形態AFF5に相当する。
【0173】
図9は、工程段階[d]の実施形態[d2]を示す。ここでは、分解生成物(VI)の分離は、2つの蒸留工程で行う。これは、前に記載した実施形態AFF6に相当する。塔T−42の塔頂生成物(XVII)は、イソブテン、メタノール及び低沸点物、例えばDMEから成る。中沸点物、例えばC5炭化水素、イソプレン及びジメトキシメタンが、有利には塔底生成物とともに得られる。塔T−42の塔底流(XXXIX)は、第2の塔T−43に導く。塔の頂部で、メタノールとMTBEからの共沸混合物(XL)を取り出す。塔底流として留分(VII)が得られ、これはメタノール、TBA及び水を含有するが、一方で実際にMTBEを含んでいない。
【0174】
MTBE/メタノール共沸混合物(XL)は、完全に又は部分的にプロセスに返送することができる。有利なのは、方法の工程a)又はb)への返送である。特に有利なのは、有利な実施形態[b1]、[b2]、[b3]若しくは[b4]の塔T−21、T−22若しくはT−23の1つへの返送、又は実施形態[b4]の反応器R−21への返送である。
【0175】
図10は、工程段階[e]の実施形態[e1]を示す。留分(VII)からの水の分離を、1つの蒸留塔T−51内でのみ行う。その際、塔底生成物(XLI)として水が得られ、且つ塔頂生成物として水に乏しい留分(VIII)が得られる。塔T−51内での水の分離は、前に記載した実施形態AFF7に相当する。
【0176】
図11は、工程段階[e]の実施形態[e2]を示す。留分(VII)からの水の分離は、2段圧力切換において運転される2つの蒸留塔内で行う。これは、前に記載した実施形態AFF8に相当する。より低い圧力下で運転される第1の塔T−52内では、塔頂生成物として留分(VIII)の第1の部分流が得られる。主にメタノールと水を含有する塔底流(XLII)を、より高い圧力下で運転される第2の塔内で更に分離する。その際、頂部で留分(VIII)の第2の部分流が得られ、底部では水(XLI)が発生する。塔T−52の加熱は、有利には塔T−53の蒸気により行う。
2つの塔の2段圧力切換の形態における工程段階e)の構成は、一般に、1つのみの塔内での分離より明らかにエネルギー需要量が少なくなるという利点を提供する。特に有利なのは、塔の少なくとも1つの供給流を、工程c)からの分解ガスの凝縮熱の一部を利用しながら実質的に蒸発させる変法である。
【0177】
図12は、工程[d]で得られたメタノール含有イソブテン流(XVII)の更なる後処理に関する代表的な実施形態を示す。
流(XVII)から、抽出E−71においてメタノールを水(XLIII)により洗い出す。メタノールで負荷された水(XLIV)を、塔T−72内でメタノール含有流(XLVI)と水(XLIII)とに分け、水は抽出に返送する。流(XLVI)は、有利には流(IX)の部分流として本発明による方法の工程a)に返送する。
なおDMEを含有する水飽和イソブテン流(XLV)を、引き続き塔T−73内で更に精製する。塔の頂部で、通常はイソブテンをなお含有するDME含有流(XLVII)が得られる。水の分離のために、塔T−29に頂部デカンターを備え付けることが目的に適っており、そこで水が第2の相として分離し、且つ排出されることができる。塔の底部では、イソブテン(XLIX)が得られる。
【0178】
塔T−73の塔頂流は、頻繁になお著しい量のイソブテンを含有しているので、それを更に別の塔内で精製することが目的に適っている(非図示)。この塔では、塔頂部でイソブテンが劣化したDME流が得られ、塔底ではイソブテンが富化した流が得られる。この塔底流は、有利には塔T−73に返送する。
【0179】
本発明による方法においてMTBE合成及び分解のために適したこの手段は、他のアルコールの使用にも適用されることができる。これは、なかでも、エチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてエタノールを使用)、n−プロピル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてn−プロパノールを使用)、n−ブチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてn−ブタノールを使用)及びイソブチル−t−ブチルエーテル(アルコールとしてイソブタノールを使用)の合成及び分解に関する。そのうえ、これら全てのアルコールの場合、該アルコールから分解において水の脱離によってオレフィンが形成されえ、それによってプロセス中への水の付加的な導入が行われるということも付け加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】個々の工程段階と、それらに対応する物質流を示す図
【図2】工程段階[a1]の有利な実施形態を示す図
【図3】工程段階[b]の実施形態[b1]を示す図
【図4】工程段階[b]の実施形態[b2]を示す図
【図5】工程段階[b]の実施形態[b3]を示す図
【図6】工程段階[b]の実施形態[b4]を示す図
【図7】工程段階[b]の実施形態[b5]を示す図
【図8】工程段階[d]の実施形態[d1]を示す図
【図9】工程段階[d]の実施形態[d2]を示す図
【図10】工程段階[e]の実施形態[e1]を示す図
【図11】工程段階[e]の実施形態[e2]を示す図
【図12】工程[d]で得られたメタノール含有イソブテン流(XVII)の更なる後処理に関する代表的な実施形態を示す図
【実施例】
【0181】
以下の例は、本発明を詳説するものである。
【0182】
例1:
合成により製造されたラフィネートIとメタノールからの混合物に、様々な水量を計量供給した。この混合物を、次いで実験室用反応器中に導入した。該反応器は、熱媒体油(Sasol Olefins & Surfactans GmbHのMarlotherm SH)が流れる冷却ジャケットを備えた管型反応器(長さ1000mm、内径21mm)であった。
【0183】
触媒として、酸性イオン交換体−Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)−を使用した。使用した触媒は、0.6〜0.85mmの平均直径、45m2/gの表面積及び770g/lの見掛け密度を有するペレットから成っていた。
【0184】
供給材料のこの混合物を、反応器に入れる前に熱交換器中で36℃に予熱し、ジャケット温度を、全ての試験において同様に38℃に調節した(反応器ジャケットの供給流中のMarlothermの温度)。圧力を、圧力調整器により反応器の端部で常に1.2MPa(絶対)に調節した。供給流を510g/hに制御し、これは273.5mlの触媒量の場合に3.12 hー1のLHSV値に相当する。反応器に入る供給材料の混合物と、反応器を出る生成物混合物を、ガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0185】
【表4】
【0186】
第4表には、反応器供給流、反応器搬出物についての分析並びに達成されたイソブテン転化率を挙げている。試験1では、合成により製造されたラフィネートIとメタノールからの混合物に、付加的に水は混ぜておらず、約200ppmの含水量が、もともとメタノールとラフィネート中に含まれていた水から生じる。
【0187】
含水量の上昇とともにイソブテン転化率が明らかに衰えることが認められ、試験1では、転化率は約93.1%であり、出発物質中の水が約1100ppmである試験2では、83.5%でしかなく、且つ最後に反応器供給流中の水が約6500ppmである試験3では、約33.7%でしかない。同時に、TBA形成の上昇が含水量の上昇とともに起こり、試験3の場合、反応器搬出物中ですでに1質量%を超えるTBAが測定される。
【0188】
例2及び3についての説明:
次の例2及び3では、定常シミュレーションプログラムASPEN Plus(AspenTech社のバージョン2006.5)を用いて計算を実施し、これにより水排出がプロセス全体に及ぼす影響が表される。
【0189】
明瞭な、再現可能なデータを作成するために、一般的に入手可能な物質データのみを使用した。この簡素化によって、当業者であれば容易に計算を追試することが可能である。該例では、物性推算法"UNIFAC−DMD"(J.Gmehling,J.Li,及びM.Schiller,Ind.Eng.Chem.Res.32,(1993),第178頁〜第193頁を参照されたい)を利用した。
【0190】
反応器R11、R12及びR13、MTBE合成における塔T21内での反応蒸留並びにMTBE分解における分解反応器のモデリング用に、計算では反応速度論的反応器モデルを用い、これは、それぞれの触媒を用いた広範な実験測定データに基づいている。それゆえ、該例では、そのつど、該反応器モデリングの場合に想定した反応温度も挙げられる。反応段階の流入する流及び流出する流の組成もそのつど挙げられるので、当業者であれば、転化率をしっかりと設定して反応器を調整することによって、正確な反応速度式を知ることなく該例を試算することが可能である。
【0191】
例2:(本発明による)
例2は、図1に示される方法に相当し、その際、イソブテンの転化については、図2による変法[a1]が、MTBE蒸留については、図5による変法[b3]が、分解生成物の精製には、図8による変法[d1]が、且つ最終的に乾燥については、図10による変法[e1]を想定する。
【0192】
装置への供給流として、図1若しくは図2に従って、第5表で挙げた組成を有する10000kg/hのC4炭化水素流(II)を想定する(典型的なラフィネートI、第1表と比較されたい)。供給した新しいメタノール並びに工程段階[e]から生じる返送流(VIII)の組成も同様に第5表に示している。新しいメタノール量は、第1の反応器に向かう供給流中でのイソブテンに対するメタノールのモル比が1.14になるように調節した。
【0193】
【表5】
【0194】
C4炭化水素流(II)、新しいメタノール(IX)及びメタノール含有返送流(VIII)を混合し、且つ図2による変法[a1]において反応器R−11、R−12及びR−13に供給する。
【0195】
流(II)中に含まれたイソブテンの転化は、3つの直列に接続された断熱固定層反応器中で行い、その際、第1の反応器は、図2に示される通り、循環型反応器として構成されている。Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)で反応器を充填することを想定する。反応器R−11を、18m3の体積でモデリングし、R−12を10m3の体積で、且つR−13を5m3の体積でモデリングする。反応器R−11における流入温度は40℃であり、想定した循環流は28300kg/hである。反応器R−12中への流入温度は40℃であり、反応器R−13中への流入温度は35℃である。これらの条件下で、3つの全ての反応器にわたって約97.8%のイソブテンの転化率が生じる。副反応として、使用した反応速度論的モデルでは、イソブテンと水からのTBAの形成、イソブテンからジイソブテンへの二量化、メタノールからDME及び水への反応並びにn−ブテンからの2−メトキシブタンの形成が考慮される。それにともなって、反応器搬出物(IV)について、第6表中で挙げた組成(塔−21への供給流)が生じる。
【0196】
【表6】
【0197】
MTBE蒸留について、図5による変法[b3]を想定する。それに従って、反応器搬出物(IV)を塔T21に供給する。該塔は反応蒸留として構成されている。該塔は、触媒ゾーンを含めて、75段の理論段を有し、触媒ゾーンは15段目〜50段目に配置されており、且つ供給は、上から数えて60段目より上方で行う。触媒体積は、一段当たり0.2m3であり、その際、Amberlyst(R)15(Rohm & Haas)が充填されたKataMax(R)充填物(Koch−Glitsch)を想定する。該塔は、0.9の還流比にて且つ0.6MPa(絶対)の圧力にて運転する。塔頂温度は51.4℃であり、塔底温度は120.9℃である。反応蒸留塔内でのイソブテンの転化率は、これらの条件下で98%である。
【0198】
塔底生成物(XVI)は、主にMTBE(約98質量%)から成り、且つMTBE燃料についての市場で一般的な規格を満たす。殊に、TBAの含有率は1質量%より小さい(第6表を参照されたい)。留出物(X)は、主にC4炭化水素から並びにメタノール、MTBE合成において形成されたDME並びに水から成る。水での抽出によって、図5に示してある通り、メタノールを除去することができる。抽出から得られた、メタノール不含のC4炭化水素(XIII)は、公知の方法に従って高純度1−ブテンへと後処理することができる。この関連において、イソブテン含流量が、1−ブテン含有量を基準として、流(X)中で350ppmより小さいことが重要である。それにともなって、選択水素化におけるブタジエンの分離若しくは転化後に、単に蒸留法によって、市場で一般的な規格を満たす(例えば、1−ブテン中のイソブテン<2000ppm)高純度1−ブテンを取得することができる。
【0199】
【表7】
【0200】
MTBE流(XVI)は、計約1700ppmのC4−及びC5炭化水素をなお含有する。この流から、塔T−22内で、これらのC4−及びC5炭化水素を、750質量ppmの残留含有量になるまで分離する。該塔は52段の理論段を有し、そして212の還流比にて且つ4.5MPa(絶対)の圧力にて運転する。供給(XVI)を、上から数えて22段目より上方で行う。塔頂温度は48.1℃であり、塔底温度は107.3℃である。この塔(L)の留出物は、MTBE10質量%の残留含有率を有する。還流比及び/又は分離段数を高めることによって、MTBE含有量を、更に減少させることができた。第7表は、塔T−22の留出物流(L)及び塔底流(XVIII)の組成を示す。
【0201】
実質的に低沸点物が取り除かれたMTBE流(XVIII)を塔T−23に供給し、該塔内で、とりわけジイソブテン及び2−メトキシブタンを塔底物(XV)を介して分離する。該塔は95段の理論段を有し、そして5.9の還流比にて且つ0.95MPa(絶対)の圧力にて運転する。流(XVIII)の添加は、上から数えて28段目より上方で行う。塔頂温度は144.1℃であり、塔底温度は149.16℃である。塔頂生成物(V)として、98質量%を超えるMTBEを含有するガス状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタンの含有量は、2100質量ppmに調節した(第7表を参照されたい)。還流比及び/又は分離性能を高めることによって、塔底生成物(XV)中のMTBEの含有量を減少させることができた。高められた圧力での塔の運転様式によって、供給流中に存在する全てのTBAをほぼ塔頂生成物(V)に蒸留する。
【0202】
MTBE留分(V)を、反応温度に更に加熱した後、図1の通り、工程段階[c]における分離反応器に供給する。分解反応器を、5.5m3の反応器体積によりモデリングし、その際、形式的に酸化マグネシウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素から成り、且つその製造は特許DE102006040432.7に記載されている触媒を充填することを想定する。
【0203】
反応器を、298℃及び0.75MPa(絶対)にて運転する。これらの反応条件の場合、約94%のMTBEの転化率が生じ、2−メトキシブタンの転化率は約17%である。反応器供給流中の2−メトキシブタンの割合を2100質量%に制限することに基づき、一方で、2−メトキシブタンから2−ブテンへの分解が行われるにも関わらず、イソブテン生成物中の線状ブテンの市場で一般の規格は脅かされない。反応器搬出物は、DME形成及びTBA分解によって生じた水、約6000ppmを含有する。反応器搬出物(IV)の組成を、第8表が示す。
【0204】
【表8】
【0205】
分解生成物の精製について、図8による変法[d1]を想定する。それに従って、反応器搬出物(IV)を部分的に凝縮し、且つ2相で塔T−41に供給する。該塔は42段の理論段を有し、そして0.3の還流比で且つ0.65MPa(絶対)の圧力で運転する。供給流(VI)の添加は、上から数えて28段目より上方で行う。塔頂温度は50.8℃であり、塔底温度は117.0℃である。塔底生成物は、主に、反応しなかったMTBE(約15質量%)及びメタノール(約83質量%)並びに供給流中に含まれた水量の主たる部分(約1.4質量%)から成る(第8表を参照されたい)。
【0206】
塔頂生成物(XVII)は、イソブテン94質量%より大きい純度を有するイソブテンである。典型的なイソブテン規格に必要とされる線状ブテン(<1000質量ppm)及びC5炭化水素(<1000質量ppm)の範囲は確実に遵守される(第3表も参照されたい)。図12に示される通り、水での抽出によって、必要とされる場合、メタノールを除去することができる。残留水とジメチルエーテルは、引き続く蒸留によって分離することができ、且つイソブテン(XLIX)は99.9質量%より大きい純度に濃縮することができる。
【0207】
流(VII)の乾燥について、図10による変法[e1]を想定する。それに従って、塔T−41の塔底流(VII)を塔T−51に供給する。該塔は32段の理論段を有し、そして0.7の還流比にて且つ0.11MPa(絶対)の圧力にて運転する。供給流(VII)の添加は、上から数えて14段目より上方で行う。塔頂温度は61.7℃であり、塔底温度は102.3℃である。
【0208】
水を、留出物流から800ppmの残留含有量になるまで分離し(第5表中の流(VIII)を参照されたい)、且つこの留出物を工程段階a)に返送する。塔の塔底流は、実際にはメタノール5ppmの残留含有量を有する純粋な水から成る。
【0209】
例3:(本発明によらない)
例3は比較例3として用い、この例は本発明による方法を含まない。それに従って、図1による方法を観察すると、その際、しかしながら、工程段階[e]、すなわち、返送流(VII)の乾燥及び相応する水分離が省かれている。イソブテンの転化は、例2と同じように、図2による変法[a1]に従って行い、MTBE蒸留は、図5による変法[b3]に従って行い、且つ分解生成物の精製は、図8による変法[d1]に従って行う。工程段階[d]からの流(VII)は、例3では工程段階[a]に返送する。
【0210】
装置への供給流として、例2と同じように、10,000kg/hの流(II)を想定する。流(II)、供給した新しいメタノール並びに工程段階[d]から生じる返送流(VII)の組成を第9表に示している。流(II)及び流(IX)の組成は、例2と比べて変化していない(第5表を参照されたい)。新しいメタノール量は、第1の反応器に向かう供給流中でのイソブテンに対するメタノールのモル比が1.14になるように調節した。
【0211】
【表9】
【0212】
C4炭化水素流(II)、新しいメタノール(IX)及びメタノール含有返送流(VII)を混合し、そして図2による変法[a1]で反応器R−11、R−12及びR−13に供給する。反応器の配置、反応器サイズ並びに流入温度は、例2と比べて変化していない。
【0213】
返送流(VII)は、例2(そこでの流(VIII))と比べて約1.1質量%のはるかに多い水を含有する。例1から明らかなように、より高い水濃度の場合、それ以外の点では同じ周囲条件下でMTBEへのイソブテンの転化率は下がる。したがって、例3では、約68.1%に過ぎない(例2では97.8%)3つの全ての反応器にわたったイソブテンの転化率が生じる。反応器搬出物(IV)の相応する組成は、第10表中で挙げている(塔T−21への供給)。なかでも、反応器搬出物(IV)中のTBA含有量も、約8000ppmをもって明らかにより高い(例2では約2200ppm)。
【0214】
【表10】
【0215】
MTBE蒸留について、再び図5による変法[b3]を想定し、その際、塔T−21は、例2と同じように反応蒸留として構成されている。理論段数、触媒体積、還流比及び塔圧力は、例2と比べて変化せずにある。塔頂温度は51.0℃であり、塔底温度は110.7℃である。反応蒸留塔内でのイソブテンの転化率は、これらの周囲条件下で約47%である。
【0216】
塔底生成物(XVI)は、主にMTBE(約90質量%)、メタノール(約7質量%)及びTBA(約2質量%)から成る。それにともなって、MTBE燃料についての市場で一般的な規格を満たさない(代表特性 1質量%より小さいTBA含有率と1質量%より小さいメタノール含有率)。留出物(X)は、主にC4炭化水素並びにメタノール、MTBE合成において形成されたDME並びに水から成る。水での抽出によって、図5に示してある通り、メタノールを除去することができる。MTBE合成における高められた含水率によるイソブテン転化率の悪化に基づき、イソブテン含有率は、1−ブテン含有率を基準として、流(X)中で約17%である。それにともなって、メタノール不含のC4炭化水素(XIII)は、公知の方法に従って直接的に高純度1−ブテンに後処理されることはできない。選択水素化におけるブタジエンの分離若しくは転化後に、高純度1−ブテン(1−ブテン中のイソブテン2000ppmより小さい代表特性)を単に蒸留法によっては取得することができない。第2のMTBE段階(図7におけるR−22)における1−ブテン中に存在するイソブテンの転化も可能ではなく、それというのも、イソブテン含有量が、平衡による制約に基づき、場合によっては反応蒸留も伴う、単純な固定層反応器中で、所望の規定値を達成するには明らかに高すぎるからである。
【0217】
【表11】
【0218】
MTBE流(XVI)は、計約1600ppmのC4−及びC5炭化水素をなお含有する。この流から、塔T−22内で、これらのC4−及びC5炭化水素を、750質量ppmの残留含有量になるまで分離する。該塔は192の還流比で運転し、理論段数及び塔圧力は、例2と比べて変わっていない。塔頂温度は48.3℃であり、塔底温度は100.8℃である。第11表は、塔T−22の留出物流(L)及び塔底流(XVIII)の組成を示す。
【0219】
実質的に低沸点物が取り除かれたMTBE流(XVIII)を塔T−23に供給する。例3では、工程段階e)に従った水分離の本発明による工程が欠けている。それにともなって、TBA分離及びDME形成によってエーテル分解において形成された水は、完全に合成に返送され、そこで50%を上回る分が再びTBAに変換され、且つそのようにして、TBAに結び付けて、分解に返送される。それゆえ、TBAの排出なしには、TBA若しくは水が該方法において次々と蓄積すると考えられ、定常運転が可能ではなくなる。この理由から、例3では、塔T−23内でジイソブテンと2−メトキシブタンのほかに塔底物(XV)を介してTBAも分離する。そのために、塔内の圧力は、例2に対して0.2MPa(絶対)下げられ、理論段数は維持される。該塔は2.6の還流比で運転する。塔頂温度は73.2℃であり、塔底温度は87.6℃である。MTBEとTBAとの圧力共沸混合物は低い圧力で消失することに基づき、TBAをこの運転様式では塔底物を介して排出する。塔底物中のMTBE含有率は、例2と同じように、供給流(XVIII)中に含まれたMTBEの2%が塔底物を介して送られるように調節した。塔頂生成物(V)として、MTBE92質量%及びメタノール8質量%を含有する液状留分が得られる。留出物中の2−メトキシブタンの含有量は、例2と同じように、2100質量ppmに調節した(第11表を参照されたい)。
【0220】
例2と対照的に、塔T−23の低い圧力に基づき、MTBE留分(V)は、ガス状ではなく、圧縮せずに、工程段階[c]における分解反応器に送ることができる。それゆえ、例3では、MTBE留分(V)は塔T−23から液状で抜き出し、反応圧力より高い圧力に圧縮し、完全に蒸発し、且つ最終的に反応温度への更なる加熱後に分解反応器に供給する。分解反応器の体積及び圧力は、例2と比べて変わらない。反応器は293℃で運転する。これらの反応条件の場合、約93%のMTBEの転化率が生じ、2−メトキシブタンの転化率は約16%である。反応器排出物(IV)の組成を、第12表が示す。
【0221】
【表12】
【0222】
分解生成物の精製について、例2と同じように、図8に従った変法[d1]を想定する。塔T−41の理論段数、塔圧力及び還流比は、例2と比べて変化せずにある。塔頂温度は50.8℃であり、塔底温度は116.9℃である。塔底生成物は、主に、反応しなかったMTBE(約15質量%)及びメタノール(約83質量%)並びに供給流中に含まれた水量の主たる部分(約1.1質量%)から成る(第9表を参照されたい)。流(VII)は、例3では工程a)に直接返送される。
【0223】
例2(本発明による)と例3(本発明によらない)を対比させることによって、本発明による方法の利点を非常に明確に示すことができた。工程段階e)が欠けていることによって、例3ではイソブテン転化率が、MTBE合成での水割合が高まっていることと、それと関連付けられた反応抑制に基づき、同じ条件下で、規定に則った1−ブテンも、規定に則った燃料MTBEも製造することができない程度にまで明らかに下がる。さらに、工程段階e)が欠けていることによって、工程段階b)でのTBAの排出が必要とされる。これにより、一方では、TBA中で結合したイソブテンによってイソブテン損失量が高まり、他方では、エネルギー需要量が高まり、それというのも、塔T−23の圧力が低い場合、ガス状での抜き出しや分解反応器中への直接供給がもはや可能ではないからである。
【0224】
反応に良い影響を及ぼすために、エーテル分解において水蒸気を供給する場合、又は腐食を回避するために、エーテル分解後の工程段階にアルカリ液を配量する場合、工程e)に従った本発明による水分離なしでは方法の欠点がさらに一層強まることになる。
【符号の説明】
【0225】
II イソブテン含有C4炭化水素、 IX メタノール含有流、 IV 反応混合物、 X C炭化水素の流、 V MTBE−及びTBA含有留分、 VI 分解生成物、 XVII メタノール含有イソブテン流、 XL MTBE−及びメタノール含有流、 VII 流、 XLI 塔底流、 VIII メタノール含有留分、 XV 塔底生成物、 XIII メタノール不含C4炭化水素、 XI 水、 XII 水/メタノール混合物、 XIV 流、 XVI 塔底留分、 XVIII 塔底流、 XXI 反応器搬出物、 XXII MTBE含有塔底留分、 XXVII 塔頂流、 XXVIII メタノール、 XXX メタノール含有C4留分、 XXXI MTBE含有塔底留分、 XXXV メタノール、 XXXVI 水飽和流、 XXXVIII 高純度1−ブテン、 XXXIX 塔底流、 XLVII DME含有流、 XLVII DME含有流、 XLIII 水、 XLIV 水
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MTBEの分解によるイソブテンの製造法であって、その際、次の工程:
a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程、
b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水及び場合によりTBAを含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、
f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程
を経る、MTBEの分解によるイソブテンの製造法方法。
【請求項2】
流(VII)からの前記水分離を2つの塔内で実施し、その際、第1の塔を、より低い圧力で運転し、且つその塔底生成物を、より高い圧力で運転される第2の塔内で更に精製することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の塔を、少なくとも部分的に、前記第2の塔の蒸気により加熱することを特徴とする、請求項1及び2記載の方法。
【請求項4】
前記第2の塔内で、付加的に水−メタノール混合物を蒸留することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
次の部材:
i)管束、
ii)管板、
iii)偏向板、
iv)内部ジャケット、
v)少なくとも1つの流入口並びに流出口を含有する、耐圧性の外部ジャケット、
vi)熱を放出するか又は吸収する流体を含有するジャケット空間
を有する管束装置において、該内部ジャケットが、ギャップ無しに又は僅かなギャップで、管束の長さにわたって取り付けられた偏向板並びに管板と接続されており、その際、ジャケット空間中に存在する該流体が内部ジャケットを両側で取り囲むことを特徴とする管束装置。
【請求項6】
前記流(V)に、水又は水蒸気を添加することを特徴とする、請求項1から5までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソブテン分離及び/又は前記水分離に際してアルカリ液流を添加することを特徴とする、請求項1から6までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ液添加用に、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を使用することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ液を、前記水分離に際して、分離される水と一緒に除去することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔の供給流中への若しくは前記第1の塔の供給流中への前記アルカリ液の添加を行うことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔内への若しくは前記第1の塔内への前記アルカリ液の添加を、前記供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7及び少なくとも請求項1から10までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔の供給流中への若しくは前記第1の塔の供給流中への前記アルカリ液の配量を行うことを特徴とする、請求項7及び請求項1から11までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔内への若しくは前記第1の塔内への前記アルカリ液の添加を、前記供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7及び請求項1から12までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項14】
反応器搬出物を移送する前記塔を、反応器より低い圧力で運転することを特徴とする、少なくとも請求項1から13までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
反応器搬出物の冷却及び部分的な凝縮からの熱を、プロセス内部で熱的統合のために利用することを特徴とする、少なくとも請求項1から14までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項1】
MTBEの分解によるイソブテンの製造法であって、その際、次の工程:
a)MTBE合成;イソブテン含有炭化水素混合物(II)を、1つ以上のメタノール含有流(VIII、IX)中に含まれたメタノール(III)と、酸性イオン交換体を用いて反応させて、MTBE及びTBAを含有する流(IV)を取得する工程、
b)MTBE分離;流(IV)から、MTBE及びTBAを含有する流(V)を蒸留分離する工程、
c)MTBE分解;流(V)を、不均一系触媒を用いて気相中で分解して、少なくともイソブテン、メタノール、MTBE及び水及び場合によりTBAを含有する流(VI)を取得する工程、
d)イソブテン分離;流(VI)を蒸留分離して、流(VI)中に含まれた、それぞれ50質量%より多いメタノール量、TBA量及び水量を含有する流(VII)、並びにイソブテンを含有する流(XVII)を取得する工程、
e)水分離;流(VII)から水を、1質量%を下回る割合に蒸留分離して、流(VIII)を取得する工程、
f)返送;メタノール含有流(VIII)をMTBE合成に完全に又は部分的に返送する工程
を経る、MTBEの分解によるイソブテンの製造法方法。
【請求項2】
流(VII)からの前記水分離を2つの塔内で実施し、その際、第1の塔を、より低い圧力で運転し、且つその塔底生成物を、より高い圧力で運転される第2の塔内で更に精製することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の塔を、少なくとも部分的に、前記第2の塔の蒸気により加熱することを特徴とする、請求項1及び2記載の方法。
【請求項4】
前記第2の塔内で、付加的に水−メタノール混合物を蒸留することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
次の部材:
i)管束、
ii)管板、
iii)偏向板、
iv)内部ジャケット、
v)少なくとも1つの流入口並びに流出口を含有する、耐圧性の外部ジャケット、
vi)熱を放出するか又は吸収する流体を含有するジャケット空間
を有する管束装置において、該内部ジャケットが、ギャップ無しに又は僅かなギャップで、管束の長さにわたって取り付けられた偏向板並びに管板と接続されており、その際、ジャケット空間中に存在する該流体が内部ジャケットを両側で取り囲むことを特徴とする管束装置。
【請求項6】
前記流(V)に、水又は水蒸気を添加することを特徴とする、請求項1から5までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソブテン分離及び/又は前記水分離に際してアルカリ液流を添加することを特徴とする、請求項1から6までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルカリ液添加用に、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の水溶液を使用することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記アルカリ液を、前記水分離に際して、分離される水と一緒に除去することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔の供給流中への若しくは前記第1の塔の供給流中への前記アルカリ液の添加を行うことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記イソブテン分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔内への若しくは前記第1の塔内への前記アルカリ液の添加を、前記供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7及び少なくとも請求項1から10までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔の供給流中への若しくは前記第1の塔の供給流中への前記アルカリ液の配量を行うことを特徴とする、請求項7及び請求項1から11までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項13】
前記水分離に際して1つ又は2つの蒸留塔を使用し、且つ前記塔内への若しくは前記第1の塔内への前記アルカリ液の添加を、前記供給流の添加部より下方で行うことを特徴とする、請求項7及び請求項1から12までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項14】
反応器搬出物を移送する前記塔を、反応器より低い圧力で運転することを特徴とする、少なくとも請求項1から13までの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
反応器搬出物の冷却及び部分的な凝縮からの熱を、プロセス内部で熱的統合のために利用することを特徴とする、少なくとも請求項1から14までの少なくとも1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−531475(P2012−531475A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518862(P2012−518862)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058424
【国際公開番号】WO2011/000696
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058424
【国際公開番号】WO2011/000696
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】
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