説明

MUC−1抗原に対する治療用抗体およびその使用方法

【課題】癌治療における新規な治療組成物の提供。
【解決手段】腫瘍関連MUC−1に特異的に結合し、癌におけるそれらの効果を低下または阻止する結合剤を含む治療組成物。特に、このような腫瘍関連MUC−1上のペプチドと炭水化物の両方を含むエピトープに特異的に結合することができる結合剤を含む治療組成物。さらに、このような治療組成物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
本発明は、癌治療のための治療用組成物に関する。特に、本発明は、MUC−1抗原を発現する癌の治療的処置に関する。
【背景技術】
【0002】
[関連技術の概要]
腫瘍関連抗原MUC1は、多くの腺癌で発現する高分子量糖タンパク質である。Gender, et al., Biol. Chem. 265:15286, 1990, Gender, et al., P.N.A.S. U.S.A., 84:6060, 1987, Siddiqui, et al., P.N.A.S. U.S.A. 85:2320, 1988およびLigtenberg, et al., J. Biol. Chem. 265:5573 1990は、不可欠な膜糖タンパク質の細胞外ドメインは、セリン、トレオニンおよびプロリンに富む20個のアミノ酸コア配列、GSTAPPAHGVTSAPDTRPAPの30〜90タンデム型反復から主として構成されることを教示する。Burchell, et al., Cancer Surv. 18:135, 1993 は、個体によって発現される反復数は、遺伝的に決定され、サイズ多型を生じることを教示する。
【0003】
Price, et al., Breast 2:3, 1993は、ほとんどのMUC1反応性モノクローナル抗体全ての最小配列認識は、APDTRPAP内に存在し、タイプ1β-ターンであると考えられることを教示する。Burchell, et al., Cancer Surv. 18:135, 1993は、MUC1タンデム型反復中の配列SAPDTRPは、免疫優性B細胞エピトープであり、タンデム型反復のT細胞エピトープは、五量体PDTRPに位置付けられてきたことを開示する。隣接アミノ酸および糖残基は、自然の分子の結合において重要な役割を果たし得る。1分子当たり30〜90の範囲で、多数のタンデム型反復は、MUC1ムチンに存在し得る。
【0004】
腫瘍MUC−1は、一般には低グリコシル化されていて、グリコシル化部位はしばしば異常型糖鎖伸長を有する。Magnani, et al., Cancer Res. 43:5489, 1983は、この異常型グリコシル化が正常な潜在的(cryptic)ペプチドエピトープの露出および新規炭水化物エピトープの創出という結果を生じることを教示している。それらの高分子量(2×10〜5×10ダルトン)ならびに広範囲なグリコシル化のために、細胞膜ムチンは柔軟な杆状体として存在し、細胞表面から比較的大きな距離で突出している。したがって、ムチンは、多糖外皮の重要な成分を形成し、おそらく抗体と免疫系の細胞との細胞接触の第1のポイントである。
【0005】
Rittenhouse, et al., Lab. Med. 16:556, 1985; Price, et al., Breast 2:3, 1993; Metzgar, et al., P.N.A.S. U.S.A. 81:5242, 1984; Magnani et al., Cancer Res, 46:5489, 1983; Burchell, et al., Int. J. Cancer 34:763, 1984; Linsley, et al., Cancer Res. 46:5444, 1986; and Neura, et al., in Physiology of the Gastrointenstinal Tract, Johnson, L.R. ed., 2 edition, Raven Press, New York, p 975-1009, 1987は、正常組織ムチンは、通常、上皮細胞の頂端表面、特に粘膜表面上でのみ露呈および分泌されることを教示する。 Ho et al., Cancer Res. 53:641, 1993は、MUC1ムチンは、気管支、胸部、唾液腺、膵臓、前立腺および子宮の頂端膜上で多く発現され、胃表面細胞、胆嚢、小腸および結腸上皮上でわずかに発現することを教示する。細胞表面MUC−1は、タンパク質分解性の分解に対する保護を含み、微生物毒性に対するバリアをもたらす重要な機能を果たす。Jentoff, Trends Biol. Sci. 15:29 1990; Parry, et al., Exp. Cell Res. 188:302, 1990; Wong, et al., J. Immunol. 144:1455, 1990; Devine and Mackenzie, BioEssays 14:619 1993は、それらは、病原体と競合する共生株の選択のために、膜貫通シグナル変換、細胞-細胞相互作用、細胞成長の調節、ならびに極性の維持のために、上皮表面の潤滑、それらの排泄を助ける微生物のための炭水化物受容体の提示として作用することもできることを教示する。
【0006】
腫瘍ムチンは、体内の腫瘍生存の決定的機能を果たすと考えられる。それらは、腫瘍内での高い代謝活性によって生じる低pHから腫瘍細胞を保護し得る。MUC1は、腫瘍細胞が腫瘍組織と緊密凝集体を形成して、それによって転移潜在性を増加させることを阻止すると考えられている。Regimbald et al., Cancer Res. 56:4244, 1996は、MUC1は、正常細胞上に存在するICAM1との分子相互作用によって、腫瘍細胞を遠い部位へ循環するホーミングに関与していることを教示する。ムチンはまた、免疫系による認識から腫瘍細胞を保護し得る。Devine and MacKenzie, BioEssays 14:619, 1993は、MUC−1が循環中に流れると、細胞性および体液性免疫エフェクターに対する細胞表面抗原に立体障害を提供することにより、おそらく観察される腫瘍特異的免疫抑制にてある役割を果たすことを教示する。Codington, et al., in Biomembranes, Mansoe, L.A., ed., Plenum Pub. Corp, New York, pp 207-259, 1983; Miller, et al., J. Cell Biol. 72:511, 1977; Hull, et al., Cancer Commun. 1:261, 1989は、細胞膜MUC−1が他の細胞表面抗原を遮蔽し、免疫攻撃から癌細胞を保護することができることを教示する。
【0007】
患者の血清中の腫瘍関連MUC−1の濃度上昇はまた、疾病の進行を示す腫瘍負担の増加と相関してきた。Price et al., Breast 2:3, 1993 and Pihl et al., Pathol, 12:439, 1980は、MUC−1の高い血清レベルは、癌患者の予後が不十分であることと相関していることを教示する。
【0008】
したがって、腫瘍関連MUC−1に選択的に結合し、癌におけるその影響を低減、逆転または予防することができる新規治療用組成物が必要とされている。米国特許第5,506,343号(Kufe, 1996)は、完全にグリコシル化されていないペプチドが抗体によって認識されるときにのみ、腫瘍関連MUC−1抗体の特異性が達成され得ることを教示する。しかしながら、残念なことに、この抗体は、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍に対して治療的に有効であることを示してはいなかった。腫瘍関連MUC−1はグリコシル化を低減および変化させられるが、これらはなおも癌に対して特異的な炭水化物構造を保持している。したがって、ペプチドおよび腫瘍特異的炭水化物の両方を含むMUC−1のエピトープに結合することができる結合剤を含む治療用組成物が特に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[本発明の簡単な概要]
本発明は、腫瘍関連MUC−1に特異的に結合し、癌においてそれらの影響を低減、逆転または予防する結合剤を含む治療用組成物を提供する。特に、本発明は、このような腫瘍関連MUC−1上のペプチドおよび炭水化物の両方を含むエピトープに特異的に結合することができる結合剤を含む治療用組成物を提供する。さらに、本発明は、癌治療におけるこのような治療用組成物の使用方法を提供する。本発明者らはおどろくべきことに、腫瘍関連MUC−1に対する相対的特異性は、炭水化物を含むエピトープを認識する結合剤の場合に、かならずしも犠牲にされないことを見出した。本発明の組成物および方法は、腫瘍関連MUC−1抗原を産生する腫瘍の治療的処置において新しい期待を提供する。
【0010】
第1態様では、本発明は、腫瘍関連MUC−1に特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物の腫瘍負担を低減するか、または生存を延ばすことにおいて有効である結合剤を含む治療用組成物を提供する。ある好ましい実施態様では、MUC−1は、ヒトMUC−1である。好ましい結合剤は、炭水化物を含むMUC−1エピトープに対して特異的に結合する。特に好ましい結合剤としては、抗体および抗体誘導体を含むペプチドまたはペプチド擬似体が挙げられる。
【0011】
第2態様では、本発明は、腫瘍関連MUC−1抗原を含む腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、本発明の結合剤の有効量を哺乳動物へ投与することを含む。好ましくは、結合剤は低投与量で静脈内または皮下投与される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の結合剤を投与したマウスと対照マウスの生存研究の結果を示す。
【図2】本発明の結合剤を投与したマウスと対照マウスのAb2産生研究の結果を示す。
【図3】腫瘍細胞がAPCとして作用して、結合剤特異的T細胞応答を生じることを示す研究の結果を示す。
【図4】本発明の結合剤を投与したマウスと対照マウスの腫瘍低下研究の結果を示す。
【図5】本発明の結合剤を投与したhPBL−再構築SCIDマウスの腫瘍低下研究の結果を示す。
【図6】光力学剤を結合した本発明の結合剤を使用した腫瘍低下研究の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[好ましい実施形態の詳しい説明]
本発明は、癌治療のための治療用組成物に関する。特に、本発明は、MUC−1抗原を発現する癌の治療的処置に関する。本明細書中に記載する特許および刊行物は、この分野の知識を反映し、その全体を参照として本明細書に援用される。これらの参照文献のいずれかおよび本明細書の教示間に矛盾がある場合には、後者を優先させる。
【0014】
本発明は、腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、癌におけるそれらの影響を低減、逆転または予防する結合剤を含む治療用組成物を提供する。特に、本発明は、このような腫瘍関連MUC−1のペプチドおよび炭水化物の両方を含むエピトープに特異的に結合することができる結合剤を含む治療用組成物を提供する。さらに、本発明は、癌治療においてこのような治療用組成物を使用する方法を提供する。本発明の組成物および方法は、腫瘍関連MUC−1を産生する腫瘍の治療的処理において新規な期待を提供する。
【0015】
第1態様では、本発明は、腫瘍関連MUC−1に特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するに有効である結合剤を含む治療用組成物を提供する。ある好ましい態様では、MUC−1は、ヒトMUC−1である。本明細書中に使用する「治療的に処置する」または「治療的処置」との用語は、腫瘍容積において統計的に有意な低減を生じるか、あるいは腫瘍を保有する哺乳動物の生存を統計的に有意に延ばすことを意味する。「結合剤」とは、生理的条件下にてMUC−1に結合し、その生物活性を阻止する分子または高分子である。「特異的に結合する」および「生理的条件下にて結合する」とは、体内またはイオン強度に関して生理学的条件に近い条件で(例えば、140mM NaCl、5mM MgCl)、少なくとも10−1、最も好ましくは少なくとも10−1の親和性を有する共有または非共有結合を形成することを意味する。実際には、腫瘍負担の低減または延命から、体内のこのような結合が推測されるであろう。好ましい実施態様では、結合剤は、炭水化物を含む免疫学的決定基を含むエピトープを特異的に結合する。腫瘍MUC−1は、一般的には低グリコシル化されていて、グリコシル化部位は異常型糖鎖伸長で充填され、したがって、腫瘍MUC−1と通常、区別されている。異常型グリコシル化は、通常、潜在的ペプチドエピトープの露出および新規炭水化物エピトープの創出を生じる結果となる。本発明の好ましい結合剤は、これらの新規エピトープに結合することができる。「エピトープ」とは、本発明の結合剤によって生理学的条件下にて結合される抗原の一部分である。「免疫学的決定基」とは、エピトープの全体の三次元形状に寄与する三次形状である。好ましい実施態様では、結合剤は、アミノ酸配列DTRPAPを有するペプチドのアミノ酸残基からの免疫学的決定基を含むエピトープを結合する。「アミノ酸残基」とは、特定のペプチドの適所にあるアミノ酸である。本明細書中で使用する「生物活性の阻止」とは、腫瘍を保有する動物または患者において、腫瘍負担の統計的に有意な低減か、または統計的に有意な延命を意味する。このような統計的有意な阻止は、本明細書の例で説明される。本発明の結合剤のある好ましい実施態様は、非放射標識性である。本発明のある結合剤は、循環性および腫瘍結合性腫瘍関連MUC−1の両方に結合し、ここで、「腫瘍関連」とは、腫瘍へのその近接性よりもむしろ腫瘍細胞により作製されるMUC−1の改変グリコシル化を言う。特に好ましい結合剤は、Alt−1(ATCC特許寄託番号PTA−975)である。
【0016】
治療のための好ましい腫瘍としては、乳癌、結腸癌、食道扁平上皮癌、膵臓癌、前立腺癌および多発性骨髄腫が挙げられあるが、これらに特に制限されない。
【0017】
好ましくは、本発明の結合剤は、ペプチドまたはペプチド擬似体である。本発明の目的において、「ペプチド」とは、ペプチド結合によって直線配列で互いに連結したアミノ酸残基の一次元配列を含む分子である。本発明のかかるペプチドとしては、約3〜約500個のアミノ酸を含んでもよく、さらに、二次、三次または四次構造、ならびに他のペプチドまたは他の非ペプチド分子との分子間結合を含んでもよい。このような分子間結合としては、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)を介して、またはキレート化、静電気相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、または上記の組合せを介してもよいが、これらに特に限定されない。
【0018】
ある好ましい実施態様では、このような結合剤は、生理的条件下にて炭水化物を含むMUC−1エピトープに結合する抗体の相補的決定領域、またはこのような相補的決定領域のペプチド擬似体を含む。本発明の目的では、抗体の「相補的決定領域」(CDR)は、生理条件下にてエピトープに結合する抗体の一部であり、かかる結合に必要なフレームワーク領域を含み、好ましくはヒト重鎖V、DおよびJ領域、ヒト軽鎖VおよびJ領域、および/またはそれらの組合せによりコードされるアミノ酸残基のサブセットからなる。ある好ましい抗体は外因性抗体であり、すなわち、それらは抗体を投与される種とは異なる種に由来する。このような抗体は、ヒト抗外因性抗体(HAXA)の誘発を引き起こすであろう。好ましい抗体としては、マウス抗体が挙げられ、それはヒト抗マウス抗体(HAMA)応答を誘発する。
【0019】
当業者は、本明細書に開示する抗体から、当業者は様々な抗体誘導体を作製することが可能であると認識するであろう。例えば、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986)は、ヒト抗体のCDRをマウス抗体から得られるもので置換することを開示する。Marx, Science 229:445-456 (1985)は、マウス可変領域およびヒト定常領域を有するキメラ抗体について議論している。Rodwell, Nature 342:99-100(1989)は、抗体CDR情報から得られる低分子量認識要素について議論している。Clackson, Br, J. Rheumatol. 3052:36-39 (1991)は、Fv断片誘導体、1本鎖抗体、融合タンパク質キメラ抗体およびヒト化ゲッ歯類抗体を含む、遺伝子的に操作したモノクローナル抗体について議論している。Reichman et al., Nature 332:323-327 (1988)は、ラット高頻度可変領域がグラフトされているヒト抗体について議論している。Verhoeyen, et al., Science 239:1534-1536(1988)は、ヒト抗体上へのマウス抗原結合部位のグラフトを教示する。
【0020】
さらに、本明細書中に開示する抗体から、当業者はこのような相補的決定領域と同等または優れた結合特性を有するペプチド擬似体を設計および製造することが可能である(例えば、Horwell et al., Bioorg. Med. Chem. 4:153 (1996); Liskamp et al., Recl. Trav. Chim. Pays-Bas 1:113 (1994); Gante et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:1699 (1994); Seebach et al., Helv. Chim. Acta 79:913 (1996)を参照)。したがって、かかる抗体誘導体およびこれらのペプチド擬似体の全てが、本発明の範囲内にあると考えられる。本発明の組成物は、生理学的に許容可能な希釈剤、安定剤、局在化剤または緩衝剤をさらに含んでいてもよい。
【0021】
いくつかの好ましい実施態様では、本発明の結合剤は、好ましくは化学的または光力学的アプローチによって活性化される。好ましい化学的アプローチは、ホルムアミジンスルホン酸などの有機還元剤、水銀(I)イオン、スズ(II)イオン、シアニドイオン、水素化シアノホウ素ナトリウムおよび水素化ホウ素ナトリウムなどの無機還元剤、ジチオトレイトール、メルカプトエタノールおよびメルカプトエタノールアミンなどのチオール交換試薬、チオレドキシンなどのタンパク還元剤を含む。これらの試薬の使用により、結合剤内のいくつかのジスフィドの還元が生じ、いくつかのスルフヒドリル基を有する結合剤が生産される。かかる基の存在は結合剤の三次構造を変化させることができる。このような構造変化は結合剤の免疫反応性を変調することができる。このような変調は結合剤が投与される固体の抗イディオタイプ応答および/または細胞性応答を改善することにつながり得る。
【0022】
ある実施態様では、活性化は、光力学的アプローチを利用する。例えば、国際出願PCT/US93/06388を参照。好ましくは結合剤は、好ましくは約10〜約820nmのスペクトル範囲にある紫外線を照射される。より好ましくは、少なくとも90%及び最も好ましくは少なくとも99%の照射が、250〜320nmスペクトル範囲にある。このようなUV照射は、水素または重水素放出ランプ、キセノンアークランプ、または水銀ランプなどの光源から便宜的に供給される。従来のフィルターは、最適スペクトル波長を得るために使用してもよい(例えば、Photochemistry, pp. 686-798 (John Wiley & Sons, N.Y., 1996を参照)。
【0023】
ある好ましい実施態様では、本発明の好ましい結合剤は、光力学剤と任意に結合させてもよい。好ましくは、このような結合剤は、共有結合、またはリポソーム会合による。リポソーム会合は、好ましくはリポソーム形成試薬の存在下で光力剤を結合剤と混合することにより達成させる。ある好ましい実施態様では、本発明の結合剤は、リポソーム形成試薬に共有結合している。好ましい光力剤はハイポクレリン(hypocrellin)である。
【0024】
いくつかの好ましい実施態様では、本発明の結合剤は、下記モノクローナル抗体:HMPV、VU−3−C6、MF06、VU−11−D1、MF30、BCP8、DF3、BC2、B27.29、VU−3−D1、7540MR、MF11、Bc4E549、VU−11−E2、M38、E29、GP1.4、214D4、BC4W154、HMFG−1、HMFG−2、C595、Mc5およびA76−A/C7を特に除外する。これらの各名称は、抗−MUC−1抗体に関する文献で使用されている。
【0025】
理論により拘束されることを望むものではないが、本発明のある結合剤は、一般的に抗イディオタイプネットワークを含む機構中で作用すると考えられている。抗イディオタイプネットワークの誘発に加えて、本発明の結合剤の投与は、MUC−1との複合体の形成につながり、これは免疫系に対するより有効な抗原提示を誘発すると仮定される。抗原と抗体との間の複合体形成は、いくつかの効果を有し得る。本発明の好ましい結合剤は、循環性および細胞性MUC−1腫瘍関連抗原の両者に結合することができる。したがって、MUC−1抗原の可能性ある免疫抑制効果は、循環系から複合体を除去することによって不活性化され得る。抗原と抗体の複合体は、Fc受容体または膜Ig受容体(マクロファージ、樹状細胞、B細胞)を保持する抗原提示細胞に対して向けられる。特異抗原−提示細胞による抗原の取り込みの増加は、T細胞への抗原誘導ペプチドの大きな提示の増加をもたらすであろう。抗原と抗体との複合体形成は、抗原がどのように抗原提示細胞内で処理されるかを変更して、新規な免疫休眠または潜在的エピトープに露出し、しがって、腫瘍関連抗原に対する許容範囲を克服する。本発明の結合剤が、少なくとも部分的に炭水化物であるエピトープを結合するから、これらはT細胞上のレクチン受容体の炭水化物の相互作用を阻止することによって免疫抑制を阻止するようにも作用する。もちろん、光力学剤に結合する本発明の結合剤の実施形態は、腫瘍細胞への直接的な細胞毒を通じても作用することができる。
【0026】
したがって、第2の態様では、本発明は、腫瘍関連MUC−1抗原を含む腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法を提供する。本発明のこの態様における方法は、本発明の有効量の結合剤を哺乳動物に投与することを含む。好ましくは、結合剤はペプチド、またはペプチド疑似体であり、もっとも好ましくは抗体または抗体誘導体、またはこれらのペプチド疑似体である。好ましくは、哺乳動物はヒトである。結合剤は好ましくは非経口、より好ましくは静脈内または皮下投与される。ある好ましい実施形態では、静脈内注射がアジュバントの非存在下で実施される。ある好ましい実施形態では、結合剤は、RIBIなどのアジュバントの存在下で皮下投与される。ある実施形態では、結合剤はKLHまたは外因性免疫グロブリンなどの免疫原性担体分子に共有結合されている。ある好ましい実施形態では、本発明の方法は非放射性標識化されている結合剤を使用する。本発明方法のある好ましい実施形態は、循環性および腫瘍結合性腫瘍関連MUC−1の両方に結合する結合剤を使用する。ここで、「腫瘍関連」とは、腫瘍対する近接性よりも、むしろ腫瘍細胞によって作成されたMUC−1の改変グリコシル化をいう。
【0027】
好ましくは、結合剤は約8mg/30kg体重未満、好ましくは約3mg/30kg体重未満、より好ましくは約0.5〜約2mg/30kg体重、なおもより好ましくは約0.5〜約1.5mg/30kg体重、およびもっとも好ましくは約1mg/30kg体重の投与量で投与する。ある実施態様では、投与量は抗体媒介毒性を誘発しない結合剤の最大量であるであろう。ある実施態様では、投与量はADCC OR CDCを産生しない結合剤の最大量である。これらの実施態様では、ADCCは本発明の結合剤とともに51Cr−標識腫瘍細胞をインキュベートし、新鮮なヒトPBMCを添加し、続いて4時間、インキュベートして、特異的分解を測定して評価する。ADCCは、もしも特異的分解が15%未満であるなら、存在しないとみなされる。「抗体媒介毒性」は、異常血清化学、腎臓機能障害、血清病またはアナフィラキシーの徴候および症状などの臨床的毒性を意味する。ある実施態様では、単一のかかる投与量は哺乳動物を治療的に処置するであろう。他の実施態様では、処置は例えば1年に4回、3年以上、継続してもよい。
【0028】
「有効量」との用語は、哺乳動物を治療的に処置するのに十分な量を意味する。「治療的に処置する」、「治療的処置」、「結合剤」、「ペプチド」、「ペプチド疑似体」、「抗体」および「抗体誘導体」との用語は、全て本発明の第1の態様について記載したように使用される。
【0029】
下記実施例は、本発明のある好ましい実施態様をさらに説明するよう意図され、本発明の範囲を狭めるように解釈されるものではない。下記実施例に使用した結合剤は、特に断りがない限り、Alt−1である。
【実施例】
【0030】
例1
結合剤を産生するためのハイブリドーマの生成
結合剤はMUC1(Talor-Papadimitriou. Int. J. Cancer 49:1, 1990)として知られる腫瘍関連抗原(TAA)を発現する腫瘍を有する患者の免疫療法において使用するために調製された。結合剤は、活性マウスモノクローナル抗体(MAb)、IgGlkサブクラス免疫グロブリンである。結合剤は、多くの腫瘍上に発現する高分子量糖タンパク質であるMUC1へ高い親和性で結合する(Ho, et al., Cancer Res. 53:641, 1993)。結合剤は、MUC1タンデム型反復ペプチド配列内に配列DTRPAPを特異的に認識する。この結合剤は、Alt−1と呼ばれる。結合剤を分泌するマウス細胞系またはハイブリドーマは、MUC1でマウスを免疫化し、抗体−分泌脾臓細胞を収集および不死化することによって生成する。ハイブリドーマ発生に関する工程は、(a)いくつかの起源からのMUC1でのBALB/cCrAltBM雌マウスの免疫化、(b)マウスからの脾臓細胞の収集、(c)ミエローマ細胞系SP2/0−AgI4とそれらを融合することによる、脾臓細胞の不死化、(d)MUC1結合能力に関して分泌抗体をアッセイすることによる所望のクローンのスクリーニングおよび選択、(e)適当な培地中での選択クローンの増殖、(f)IgMからIgGへのクローンのイソタイプ転換、および(g)連続0.2μm濾過および配合緩衝液(10mMピロリン酸ナトリウム−HCl、pH8.0)を用いた希釈を含んでいた。MUC1発現乳癌細胞およびMUC1形質転換マウス細胞に対する結合剤の特異的結合性は、FACS、蛍光顕微鏡法および他の結合アッセイ法で実証された。
【0031】
例2
結合剤の精製、調製物活性化および配合
成長培地は例1のハイブリドーマから収集した。結合剤は、(a)0.22μmフィルターを用いた微量濾過による成長培地の清澄、(b)平衡時の40mMから溶出時の130mへのNaCl勾配を使用する50mMトリス緩衝液、pH8.0中のQセファロース(登録商標)FF(Amersham Pharmacia Biotech)上の陰イオン交換クロマトグラフィーによって、成長培地から精製した。これに続いて、0.22μm微量濾過、(c)平衡用1.0Mグリシン、3.0M NaCl、pH8.8から、200mMグリシン、150mM NaCl、pH2.8を含む溶出緩衝液への緩衝液中の変化の後に溶出させる、プロテインAセファロース(S登録商標)FF(Amersham Pharmacia Biotech)のアフィニティクロマトグラフィー、(d)pH3.5で40分間のインキュベーション、(e)0.22μm微量濾過に続くViresolveフィルター(Millipore Corporation)上でのナノメーター濾過、(e)0.22μm微量濾過に続く50kD NMWCO Biomax膜(Millipore Corporation)を用いた接線フロー限外濾過による濃縮およびダイアフィルトレーションを行った。
【0032】
次いで、精製結合剤は、以下の様式で活性化した。精製結合剤(低モル濃度リン酸塩中、5mg/ml、pH5〜10)のバルク液体を賦形剤(塩化第一スズ)および還元剤(ピロリン酸ナトリウム)と混合して、1つのランプ当たり3〜9ワットの8個のランプからの200〜400nm照射で、90%が300nm+/−20nmに曝露して、活性結合剤を得た。活性結合剤は同じ還元剤および緩衝液複合体とともに、凍結または凍結乾燥形態の活性結合剤2mgを含むバイアル中に供給した。最終配合物の調製は、結合剤の投与前4時間以内に無菌条件下で行った。結合剤は、無菌方法を用いた以下の手法で調製した。本発明者は、結合剤バイアル最上部の金属タブを折り曲げ、アルコールでゴムセプタムを消毒した。適切なシリンジ中に、塩化ナトリウム注入USP2.0mLを引き上げ、バイアルに添加した。本発明者はバイアルをゆっくり回すことによりバイアル内容物を混合して、結合剤溶液を生成させた。本発明者は泡が形成するように激しく混合しなかった。本発明者はこの工程後、直ちに時計の時刻を記録した。バイアルは溶液が外来または微粒子物質を確実に含有しないために試験した。
【0033】
例3
正常および腫瘍組織と結合剤の反応
例2の結合剤の組織反応性を、色凍結組織を染色する、アビジン−ビオチン増幅免疫ペルオキシダーゼ技法を用いた免疫組織化学的手法によって試験した。予備的研究では、結合剤を用いて、正常ヒト組織およびヒト腫瘍の選択パネル中のMUC1抗原の発現および分布を試験し、MUC−1発現組織の特異的染色のための抗体または最終生成物の最適濃度を決定した。特異的染色は乳房、大腸および肺の腫瘍細胞中、ならびに正常乳房、腎臓、大腸および肺の上皮細胞中で観察された。第2の研究では、正常ヒト組織およびヒト腫瘍のより広いパネルへの結合剤の結合および分布を、対照としてイソタイプ適合抗体(MOPC−21)を使用して行った。結合剤との特異的染色は、乳癌、大腸癌、食道扁平上皮癌、膵臓癌および前立腺癌に見られた。いくつかの特異的染色もまた、黒色腫および肉腫でも観察された。結合剤による染色は、いくつかの正常組織においても観察され、上皮細胞へ主に局在化していた。これらの結果は、正常ヒト組織およびヒト腫瘍におけるMUC1ペプチドの発現およびMUC1mRNAに関する文献報告と一致し、これらの組織への本発明の結合剤の反応性を証明している。
【0034】
例4
抗イディオタイプ応答の生成
例2の結合剤は、イディオタイプとして知られている抗原(MUC1)認識に特異的な可変領域を有する。これらの可変領域は、それ自体、免疫原性であり、Ab2として知られている一連の抗イディオタイプ抗体を生成することができる。これらのAb2のいくつかは、元の抗原(MUC1)の三次元構造またはペプチド配列を有効に模倣し、元の抗原によって誘発される免疫応答と類似した特異的な免疫応答を生じるために使用することができる。したがって、結合剤の投与は、Ab2の形態で抗原疑似体または内部の像抗原を生成すると期待され、特異的な抗MUC1免疫応答を生じることができる。結合剤によるAb2の誘発を証明するために、RASアジュバント(RIBI Adjuvant System)と組み合せて、BALB/cマウスをKLH(Keyhole Limpet Hemicyanin)に結合した結合剤で免疫化した。KLHおよびアジュバントは、マウス抗体(抗原として)に対するマウスでの通常、弱い免疫応答を増強させるために、これらの実験に含まれていた。イソタイプ適合抗体は対照として作用した。6回の各注射を投与した後(腹腔内投与と皮下投与間で交互に)、血清を固相上の結合剤のF(ab’)断片を使用したサンドイッチアッセイ法で分析した。結合マウス抗体は、トレーサーとしてヤギ抗マウスIgG−(Fc−特異的)−HPRにより検出した。KLHに結合した結合剤の注射は、イソタイプ適合対照MAbよりも大きな抗イディオタイプ抗体(Ab2)の産生を生じる結果となった。測定可能な体液応答を誘発するためには、用量50μg/マウス(0.83mg/m)で、最少4回注射を必要とした。血清中の抗結合剤(Ab2)がタイプAb2(β)であることを証明するために、結合剤に対する結合性をMUC1の存在下で試験した。この結合性はAb2(β)タイプ抗体において予期されたように、MUC1の存在によって阻止された。Ab3抗体はMUC1 ELISAを使用して血清試料中で測定した。抗−抗イディオタイプ抗体(Ab3)は対照血清に対する結合剤で免疫化されたマウスの血清中にて検出された。Ab2レベルと同様に、Ab3レベルは、6回の注射後にはそのピークに達した。さらに、結合剤に対して生じたマウスモノクローナルAb2は、次に、ラットでの抗−抗イディオタイプ(Ab3)抗体を生成するために使用された。このようにして免疫化された3匹のラット中、2匹はマウスモノクローナル抗体Ab2に対して陽性結合を示した。異なった種における抗MUC1抗体の生成が、基準抗原、すなわちMUC1によってAb1およびAb2の間の結合性を阻止する能力に加えて、Ab2βの分類においても重要な判定基準であると考えられた。
【0035】
例5
細胞応答の誘発
T細胞増殖は、例2の結合剤およびMUC1の注射に対する特異的応答を示し、イディオタイプ特異的T細胞(T2)および抗イディオタイプ特異的T細胞(T3)の存在を示した。さらに、マウスモノクローナル抗体Ab2もまたMUC1特異的T細胞によって認識される能力について評価した。Ab2に対する応答におけるこのようなT細胞の増殖は、H−チミジン取り込みによってモニターされ、MUC1と比較された。このアッセイは、H−チミジン取り込み研究として行った。脾臓を、免疫化マウスの各群から取り出し、リンパ球をHistopaque1077(Sigma)上の赤血球細胞から分離した。細胞を96ウェルU字底プレート(Becton Dickinson)中へ、AIM−V無血清培地(Gibco)100μL中、2×10細胞/ウエルの濃度で播種した。刺激剤を3倍添加し、3日間、細胞とともにインキュベートした。細胞を1ウエル当たり、1μCi[H−メチル]チミジンとともに24時間、パルスにかけた。細胞を細胞収穫器(Skatron)中に収集し、放射能をベータカウンター(Beckman)でアッセイした。刺激剤(stimulator)は、MUC−1、MUC−1ペプチド、抗MUC−1抗体、対照抗体およびフィトヘマグルチニン(PHA)を含んでいた。Ab2およびMUC1は細胞性免疫応答のさらなる証拠をもたらす同様な反応性を示す。
【0036】
例6
用量計画の決定
ラット抗マウス抗体(RtAMA)およびラット抗イディオタイプ抗体(Ab2)の発生に関する例2の結合剤の用量応答は、正常ラットにおいて検討した。雄スプラークドーリーラットを静脈内投与によって26μg〜213μgの範囲の用量、および皮下投与によって106μg1回用量にて、結合剤で免疫化した。免疫化は2週間の間隔で5回実施した。基線および試験血清試料(注射後1週間)を各ラットから得た。2つのELISAアッセイをRtAMAおよびAb2を測定するために行った。RtAMA ELISAは、マウスIgG1抗体の定常領域に結合する抗体量を測定する。Ab2 ELISAは、結合剤の結合領域に反応性を示す抗体量を測定する。53μg(1.3mg/m)の用量は、静脈内注射によりRtAMAを誘発する際に最適であることが明らかになった。アジュバントとの抗体の皮下注射は、静脈内投与された同じ用量よりも3倍高く、かつ、最も有効な静脈内用量(1.3mg/m)よりも2倍高いという、より強い応答を誘発した。用量1.3mg/mが持続性RtHAMA応答を誘発した。2.6mg/mの注射回数を増加させて応答が低下し、かつ、試験した最も高い用量(5.2mg/m)では無反応が得られたため、より高い用量はアネルギーを誘発するようである。結合剤はまた、抗イディオタイプ応答を誘発したが、その応答は注射した用量に比例していなかった。RtAMAにおいて効果的な同じ用量もまた、抗イディオタイプ抗体の誘発における最適用量であることが観察された。静脈内用量スケジュールでは、用量1.3mg/mが強いAb2応答を誘発するのに有効な唯一の用量であった。全体として最も強いAb2応答を誘発する皮下用量2.6mg/mでの抗体の皮下注射を用いて、より良い応答を生じた。全体では、RtAMAとAb2応答の間に相関関係が見られ、同じ静脈内投与用量における最適応答を示す。しかしながら、Ab2およびRtAMAの絶対量は直接的に比較できなかった。用量1.3mg/m(およそ2mg/60kg患者に等しい)が、結合剤の静脈投与後に体液応答を誘発するのに最適であるようである。RtAMAは早くも最初の免疫化後、6週間目で検出され、Ab2は4週間目(皮下免疫化)、または10週間目(静脈内免疫化)に検出することができた。静脈内経路は皮下経路よりも免疫応答を誘発するにはより強い免疫化を必要とした。このより弱い免疫応答は、この関連種、ラットでのマウスタンパクの低下した免疫原性によるものであろう。これらの実験から、治療的処置において示唆される用量は、免疫応答で循環するいかなる抗原の影響を考慮しなければ、患者当たり約2mgである。
【0037】
例7
用量計画の確認
ラットで行った研究と同様に、ウサギにおける免疫応答を誘発するのに必要な用量を検討するために用量増大研究を行った。ウサギは、ラットまたはマウスのいずれかよりもマウスMAbに対して、ヒト(外来として認識)において見られる応答に一層近接するために使用した。ウサギを種々の量の抗体で免疫化し、血清試料をAb2およびウサギ抗マウス抗体(RAMA)について分析した。雌ニュージーランド白ウサギを、静脈内投与によって3つの用量レベル(125、250および500μg)および皮下投与によって1つの用量(125μg)にて、例2の結合剤で免疫化した。基線および試験血清試料(およそ2週間毎に得た)は、各ウサギから得た。2つのELISA分析を、RAMAおよびAb2を測定するために実施した。RAMA ELISAは、マウスIgG1抗体の定常領域に結合する抗体量を測定する。Ab2 ELIAは結合剤の結合領域に反応性である抗体量を測定する。RAMA応答は注射マウス抗体の定常領域に対する宿主の体液応答を示す。用量0.575mg/mは、陽性対照として皮下注射した。3つの異なった用量:0.575、1.15および2.3mg/mを静脈内投与した。RAMA応答は250μg/ウサギのMAb−ALT−1で静脈内注射して、続いて、125μg/ウサギの皮下注射、500μg/ウサギの静脈内注射、および125μg/ウサギの静脈内注射したウサギにおいて最も強かった。Ab2およびRAMAに両方としてウサギにおいて免疫応答を誘発した結合剤は、最初から最後の出血試料中に見出された。用量250μg/ウサギ(1.15mg/m、2mg/60kg患者に等しい)は、抗体Ab2およびRAMAの両タイプにおいて最も高い応答を誘発した。この誘発Ab2は、MUC1で阻止され得るが、MUC1ペプチドまたはCA19.9によって阻止されな得なかった。結合剤はまた、ウサギにおいて抗イディオタイプ応答を誘発したが、Ab2応答は注射した用量に直接に相関していなかった。用量250μg/ウサギが3つの静脈内投与用量のうち最も高いAb2応答を生じることが観察された。125μg/ウサギでの抗体の皮下注射は、全体として最も強いAb2応答を誘発した。誘発Ab2はMUC1と競合したが、試験した濃度ではMUC1ペプチドと競合しなかった。投与経路が免疫応答のタイプに影響を与えることに注目することは興味深いことである。Ab2応答は皮下免疫化したウサギにおいて最も強かったが、一方、一般的なRAMA応答は静脈注射したウサギにおいて最も優れていた。全体として、RAMAおよびAb2応答は相関し、同じ静脈内投与用量に関して最適応答を示す。これらの結果は、用量1.15mg/m(2mg/60kg患者に等しい)がMAb−ALT−1の静脈内注射後の体液応答を誘発するのに最適であることを実証した。RAMAおよびAb2が早くも最初の免疫化から2週間目に検出することができた。したがって、ウサギの免疫応答は、ラットの抗体応答(静脈内投与の8週間目に検出)よりも優れていた。したがって、これらの実験から、治療的処置に対する示唆用量は、免疫応答の循環する抗原の影響を考慮しなければ、患者60kg当たり約2mgである。
【0038】
例8
初期腫瘍治療研究
動物モデルに使用した腫瘍細胞は、宿主適合性とMUC1発現の両方を有するべきである。マウス腫瘍細胞系にトランスフェクトしたMUC1遺伝子のみがマウスでのモデルとして認定された。2つにMUC1形質導入体細胞系、MTおよび413BCRが評価された。これらの細胞系の両者に、マウス乳癌細胞系410.4から誘導され、20個以上のタンデム型反復エピトープを含む全長MUC1遺伝子を形質導入した。両細胞系はBALB/cおよびCBGF1マウスに適合している。これらの細胞系は、FACS分析により、これらの細胞に対する例2の結合剤の結合によって分析されたように、MUC1抗原を多く発現する。MT細胞はCB6F1マウス中へ静脈内注射され、肺へ移植された。腫瘍病巣は注射後、30〜40日目に肺に見られ、マウスは処置しないで50〜60日目に死亡した。組織病理的分析からも肺中の腫瘍および腫瘍組織上のMUC1発現を確認した。この細胞系は比較的高い濃度、マウス当たり2×10個の細胞を注射した場合ですら、皮下に腫瘍を形成しない。413BCR細胞をBALB/cマウスに、種々の細胞濃度(マウス当たり2.5〜5×10個の細胞)にて脇腹(flank)または乳房脂肪パッド中へ皮下注射した。腫瘍は10〜15日目に発症し、腫瘍が乳房脂肪パッド中へ移植した場合、より低い拒絶反応速度であった。治療的研究では、腫瘍は式:(a×b)/2、(式中、aは最長直径、およびbは最短直径を示す。)により腫瘍容積について測定した。in vivoでの形質導入体のMUC1発現を証明するために、MT腫瘍保有マウスを絶命させ、肺を無菌的に取り出した。腫瘍組織を肺から除去し、小片に切断し、トリプシンで10分間、消化した。次いで、腫瘍細胞を3日間、培養して、FACS分析を行った。その結果はMT形質導入体細胞の80%以上がin vivoでの成長1ケ月後にMUC1抗原を発現していたことを示した。MUC1抗原に対する抗体−KLH結合体(KLHはマウスでのマウス抗体の免疫原性を増加させるために使用した。)の結合能力は、2つの方法、ELISAおよびRIAで測定し、in vivoでその標的を認識する免疫原性の能力を証明した。2つの異なったタイプのアジュバント、RAS(RIBI Adjuvant Systems)およびQui Aをこれらの研究で使用した。RASはフロイド完全アジュバント(FCA)の主要な成分である生物、ミコバクテリウム結核菌(Mycobacterium tuberculosis)から得た高度に精製した細菌成分を含む安定な水中油乳化液である。Qui Aは別なものとして使用される表面活性剤であるが、皮下注射のみできる。両アジュバントは別な実験で使用した。実験を通して得た血清試料は、Ab2および/またはAb3含量についてはELISAによって分析した。リンパ球増殖アッセイは、免疫化マウスの脾臓から単離したリンパ球を使用する標準的プロトコールによるH−チミジン取り込みの測定によって行った。免疫刺激剤はMUC1、MUC1ペプチド、抗MUC1抗体、対照抗体およびフェトヘマグルチニン(PHA)を含んでいた。CB6F1マウスを使用する各実験の終了時に、動物を絶命させ、肺中の腫瘍病巣数を直接計数法によって分析した。さらに、マウスの選択群に、125I−デオキシウリジンを動物の死亡4時間前にマウスへ注射した。肺はγ線カウンターで放射活性をアッセイして、腫瘍負荷を計数した。免疫応答および結合剤、結合剤−KLH、結合剤−hIgGおよび結合剤−MUC1複合体の有効性は、腫瘍保持BALB/cおよび腫瘍保持CB6F1マウスにおいて分析した。
【0039】
実験の最初のシリーズは、体液応答(抗マウス抗体、Ab2およびAb3)、細胞応答(T細胞増殖)、ならびに腫瘍成長および/または大きさにおけるこれらの化合物の影響の誘発における、例2の結合剤(KLH)の結合体(conjugate)または複合体(結合剤−MUC1)の効果を評価した。マウスには免疫シリーズの開始後、2週間目に413BCR腫瘍細胞を移植した(皮下、静脈内、または両経路の組み合せにて)。体液応答は結合および複合した結合剤の両者で処置したマウスで誘発されたことを見出した。結合剤に対するいわゆるT2細胞応答はこれらのマウスで誘発されたが、T3集合体(MUC1またはMUC1ペプチドに対する応答)は明白ではなかった(T2はAb1イディオタイプ特異的T細胞であり、T3はAb2イディオタイプ特異的T細胞である)。これらの研究で統計的有意性は示されなかったが、結合または複合結合剤で処置したマウスの腫瘍の容積および大きさにおける低下傾向も示された。
【0040】
例9
確証的腫瘍処置研究
BALB/cマウス腫瘍モデル実験から得たシリーズ1および2は、CB6F1腫瘍モデルで繰り返した。Ab2、Ab3およびT細胞増殖を体液および細胞応答を決定するために再び測定した。種々の配合剤を注射した後にマウスに生じた腫瘍病巣数は、1つのシリーズで評価し、腫瘍大きさの評価はin vivoでの125I−ウリジンの取り込みを評価しておこなった。実験のこのシリーズの最後では、肺腫瘍モデルを移植したマウスの生存に影響を与える対照MAbおよびPBSに比べて例2の結合剤の能力を評価した。実験のこの確証的セットでは、MUC1に対するT細胞応答は観察されなかったけれども、体液および細胞応答はこれらのマウス中に誘発されたようである。腫瘍負荷における有意な低下は観察されなかったが、腫瘍の大きさは減少したようであった。対照MAbまたはPBSを注射したものに比べて、結合剤を注射したマウスは有利にも生存していたようである。図1に示されるように、PBS処置マウス以上にMAb−ALT−1で処置したマウスには生存率において有意な改善があった。PBS処置以上にMAb−ALT−1を使用した処置のスチューデントT検定で測定したp−値は、<0.05であった。静脈注射によって投与した自然抗体、MAb−ALT−1は、MT−CB6F1マウス腫瘍モデルで抗腫瘍効果を示した。抗体のより少量の注射による先の実験では効果がなかったから(データは示されない)、腫瘍細胞注射前の最小量の3回注射および続いての4回注射は、この効果を示すために必要であった。
【0041】
例10
微粒子−カプセル化結合剤
抗体のリポソーム配合剤はイディオタイプ応答を増大することができるから、この研究はヒト乳癌腫瘍保有マウスに投与した微粒子−カプセル化結合剤の免疫応答を検討するために行った。結合剤は二重乳化技術によってPLGA微粒子中に混合した。各BALB/cマウスに研究0日に皮下から5×10個の413BCR腫瘍細胞の注射を行った。1週間後に、4匹の動物からなる群のマウスを、次の処置群:PBS、IgG−KLH、結合剤−KLH、微粒子(MS)、結合剤−モノホスホリル脂質A微粒子(MPLA−MS)、およびMUC−1に分けた。血清を1/100に希釈し、Ab2およびAb3応答を各免疫前にELISAで測定した。腫瘍容積を2日毎に二次元にてカリパスで測定した。微粒子カプセル化結合剤は、KLHを結合した結合剤またはMUC−1との複合体中の結合剤よりも優れたイディオタイプ免疫応答を誘発した。微粒子カプセル化結合剤は腫瘍成長のいくらかの抑制を示したが、統計的有意性は達成されなかった。これは、マウスがこの実験の抗体で前免疫化されていなかった事実によるからであろう。
【0042】
例11
腫瘍関連MUC−1の特異性
99mTc標識結合剤の生物学的配置もまた、培養ヒト乳癌(ZR−75−1)細胞を移植した免疫欠損(ヌード)マウスへのその投与によって測定した。これらの細胞は既に試験されて、MUC1抗原の発現は確認されている。99mTc標識結合剤は静脈内注射され(結合剤20μg上に20μCiの99mTc)、動物は標準的プロトコールにより注射から、3、6および24時間後に絶命させた。目的の器官および組織を取りだし、γ線カウンターで放射活性を分析した。同じサブクラスの第2の非MUC1反応性抗体(99mTc標識MOPC−21)を注射から、6および24時間後に動物の他の群にて同様に試験した。2つの抗体間における体内分布の全体的パターンは、99mTc標識MOPC−21については肝臓および脾臓での取り込みがより高かったことを例外として、ほとんどの器官において同様であった。これは、多分、調剤中に存在する一層多量の99mTc高分子量凝集体、および腫瘍部位における99mTc標識結合剤の有意により高い取り込みによるのであろう。2つの放射性標識MAbにおける平均腫瘍取り込みの差異は、不対2尾t検定を使用して分析して、注射から、6および24時間後で統計的に有意(p<0.001)であると判断した。したがって、99mTc標識結合剤の非特異的組織局在化は、他の同様に調製されたIgGマウスモノクローナル抗体のものを代表するようである。この取り込みは、トレーサー分布および抗体代謝に関連したものなど、正常な組織蓄積方法の代表例であり、高い肝臓、血液および腎臓値にそれぞれ反映する。腫瘍取り込み値は、注射から、24時間後の99mTc標識MOPC−21調製剤に比べて、99mTc標識結合剤の標的組織蓄積において、ほとんど5倍増加を示す。この非常に有意な差異は、腫瘍異種移植片組織を発現するMUC1内の特異的抗原結合性による優先的99mTc標識結合剤の保持をほとんど確かに示している。この取り込みはやがて腫瘍対血液の比率の連続上昇という結果となり、24時間で2.1の高さに達する。これはほとんどの他の組織では1.0未満の値である(腎臓の1.5を除く)のに比べての値であり、トレーサーの積極的な特異的保持を意味する。
【0043】
例12
グリコシル化MUC−1の優先的結合
その表面にMUC−1糖タンパクを発現するZR−75−1細胞は、37℃で48時間、4mMフェニル−N−α−D−グルコサミドによる処理によって脱グリコシル化された。例2の結合剤の結合を、Alt−1またはMUC−1の全てのペプチドエピトープを結合することが知られている対照抗体(SM3)を使用するFACSan分析による未処置および脱グリコシルMUC−1と比較した。表1に示されるように、未処置MUC−1の結合においてわずかな優先性が存在した。これらの結果は、結合剤が少なくともいくつかの炭水化物を含むエピトープを結合することを示す。
【0044】
【表1】

【0045】
例13
外因性抗体を使用する腫瘍免疫治療
MUC−1形質導入マウス413BCR腫瘍細胞を、BALB/cマウス中へ接種した。次いで、マウスにAlt−1単独、またはKLHまたはhIgGに結合したAlt−1を5回(皮下)注射した。対照として、KLHまたはhIgGに結合したマウスIgGを使用した。免疫応答は抗イディオタイプ抗体(Ab2)を測定して評価した。Ab2検出には、ELISAプレートを100μlのAlt−1 F(ab)(2.5μg/ml)で被覆し、希釈試料とともにインキュベートした。結合Ab2はHRPおよびABTSに結合した抗マウスIgG(Fc特異的)を使用して検出した。これらの結果は、405/492nm+SDでの平均吸光度として、図2に示される。これらの結果は、外因性コンテクスト中に現れるか、あるいはKLHに結合したAlt−1が、Ab2を産生する結果となることを示すが、一方、Alt−1または対照のいずれもはそうではなかった。
【0046】
Alt−1に特異的なT−細胞を刺激する抗原提示細胞として作用する腫瘍細胞の能力は、以下のように評価した。413BCR細胞を、PHA培地(陽性対照)、Alt−1、hIgG、hIgGに結合したAlt−1、マウス抗ヒト抗体(MAHA)、またはhIgGおよびマウス抗ヒト抗体(MAHA)に結合したAlt−1とともに、37℃で24時間インキュベートした。腫瘍細胞は、hIgGで免疫化したマウスから得た精製T細胞を刺激するために、APCとして使用した。T細胞増殖は、[H]−チミジン取り込みを使用して測定した。その結果を図3に示す。hIgGおよびマウス抗ヒト抗体(MAHA)に結合したAlt−1のみが細胞を処置した。これらの結果は、腫瘍細胞がそれを内部移行する条件下で、腫瘍細胞への異種コンテクスト中にAlt−1が提示された場合、処置された腫瘍細胞が、Alt−1に特異的なT細胞応答を生じるAPCとして作用することができることを示す。
【0047】
抗癌効果を、腫瘍質量を秤量して評価した。413BCR腫瘍保持マウスに先に記載したように異なる抗体配合剤を5回(皮下)注射した。マウスを26日目に絶命させ、腫瘍を取りだし、秤量した。その結果を、5匹のマウスから得た腫瘍の平均+SDとして、図4に示す。統計的分析はt検定によって実施した。これらの結果は、外因性コンテクスト中に提示されたAlt−1は腫瘍負荷において統計的に有意な低下をもたらすことを示す。
まとめると、これらの結果は、本発明の結合剤が、抗イディオタイプおよび細胞応答の両者を生じることができ、この応答が腫瘍治療に効果的であることを示す。
【0048】
例14
hPBL−再構成腫瘍保持SCIDマウスの処置
SCID/BGマウスに、80℃に貯蔵されていた10個のhPBLを注射した。血液を12日目にマウスから採取し、マウスが再構成されているか否かを決定するためにhIgGの存在について試験した。注射した7匹のマウスのうち、5匹は再構成されていた。再構成マウスを0日目にPBSまたは100μgのAlt−1または対照IgG1で腹腔内処置し、7日目および14日目に繰返し処置した。17日目にマウスに5×10個の腫瘍細胞(NIH OVCAR−3)+20%マトリゲルを皮下移植した。マウスを21日目に出血させて、21日目および28日目にPBSまたは100μgのAlt−1または対照IgGを静脈注射して処置した。マウスを28、32、35、39および43日目に絶命させ、その腫瘍容積を測定した。その結果を図5に示す。これらの結果は、外因性結合剤Alt−1がアジュバントまたは担体タンパク質の非存在下にですら、腫瘍容積の統計的に有意な低下をもたらすことを示す。
【0049】
例15
ハイポクレリンに結合した結合剤の調製
長期循環性、立体的安定化HBBA−R2リポソーム(SL)および免疫リポソーム(SIL)配合剤は、DPPC/マレイミド−PEG2000−DSPE(94:6モル比)およびDSPC/コレステロール/マレイミド−PEG2000−DSPE(64:30:6モル比)それぞれから構成される。対照HBBA−R2リポソーム(CL)はDPPC/DPPG(9:1モル比)から構成される。DSPC、DPPC、DPPGおよびコレステロールはAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL, USA)から購入し、マレイミド−PEG2000−DSPEはShearwater Polymers Inc.(Huntsville, AL, USA)から購入した。
【0050】
ハイポクレリンの合成は、当該分野で認識されている手法を使用する(例えば、国際出願第PCT/US98/00235号を参照)。2つの方法はリポソーム中へハイポクレリンを負荷するために使用した。HBBA−R2は溶媒注入法によって、脂質対薬剤モル比15:1にて予め形成されたSLおよびSIL中へ負荷するか、あるいは溶媒希釈法によって、CL(脂質対薬剤15:1)中に負荷した。
【0051】
溶媒希釈法では、脂質と薬剤をまず、有機溶媒のストック溶液から互いに混合し、次いで乾燥した。メタノールを最終脂質濃度200mMになるまで添加した。脂質/薬剤溶液を加熱緩衝液(20mM HEPES 140mM NaCl、pH7.4)の500μl分取量を添加して、65℃で10mM脂質になるまでゆっくりと希釈する際にリポソームを形成した。得られたリポソームはセファデックスG50を使用してゲル濾過し、上記緩衝液で溶出して精製した。
【0052】
溶媒注入法では、(HBBA−R2)−SLリポソーをまず、10mM脂質、2mM MOPSO、140mM NaCl、pH6.7の最終濃度まで、乾燥した薄フィルムを水和して調製した。HBBA−R2 (PEG300中、10mM)を65℃まで加熱し、リポソームの65℃溶液中に滴下し、15分間、インキュベートした。得られたハイポクレリン−リポソームは、平均ベシクルサイズ100nmになるLipex Biomembranes(North Vancouver, BC)押出装置を使用して、80nmポリカーボネート膜から押し出した。
【0053】
免疫リポソームは以下のようにして製造した。抗体をまず20mMピロリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、次いで、30モル過剰量の2−イミノチオレーンとともに1時間、22℃でインキュベートした。チオール化した抗体を精製し、pHを、20mM MOPSO、140mM NaCl、pH6.7緩衝液を使用するゲルクロマトグラフィーによって低下させた。チオール化した抗体は、上記マレイミド−リポソームの一部とともに、22℃で一夜、25〜50μgMAb/μモル脂質濃度でインキュベートした。リポソームのセットは、結合抗体の有無にかかわらず、双方ともセファロースCL−4Bを使用してゲル濾過し、かつ、20mM HEPES 140mM NaCl、pH7.4緩衝液を用いて溶出して精製した。約90〜95%の抗体がリポソームへ結合した。
【0054】
ハイポクレリン−リポソーム溶液は、Sartorious AG.(Goettingen, Germany) CentrisartI遠心分離濃縮器(300,000MWカットオフ)を使用して濃縮した。全てのリポソーム調製物は、Millex−GV 0.22μm無菌フィルターユニット(Millipore Bedford, MA USA)を使用してフィルター滅菌し、脂質および薬剤濃度を分析し、次いで、滅菌緩衝(20mM HEPES 140mM NaCl,pH7.4)を使用して所望濃度にまで希釈した。薬剤対最終脂質のモル比、20:1は、通常、全ての配合剤において得られた。
【0055】
長期循環性、立体的安定化HBBA−R2およびHBEA−R1/2リポソーム(SL)および免疫リポソーム(SIL)配合剤は、それぞれDPPC/マレイミド−PEG2000−DSPE(94:6モル比)およびDSPC/コレステロール/マレイミド−PEG2000−DSPE(64:30:6モル比)から構成される。対照HBBA−R2リポソーム(CL)はDPPC/DPPG(9:1モル比)から構成される。DSPC、DPPC、DPPGおよびコレステロールはAvanti Polar Lipids(Alabaster, AL, USA)から購入し、マレイミド−PEG2000−DSPEはShearwater Polymers Inc. (Huntsville, AL, USA)から購入した。
【0056】
ハイポクレリンをリポソームへ負荷するために2つの方法を使用した。HBBA−R2を予め形成したSLおよびSIL中へ、脂質対薬剤モル比15:1にて溶媒注入法で負荷した。HBBA−R2をCL(脂質:薬剤15:1)中に、およびHBEA−R1/2をSLおよびSIL(脂質:薬剤2:1)中に溶媒希釈法にて負荷した。
【0057】
溶媒注入法では、リポソームはまず、SL調製には20mM HEPES 140mM NaCl、pH7.4またはSIL調製には20mM MOPSO、140mM NaCl、pH6.7のいずれかを使用して、最終濃度10mM脂質になるまで、種々の脂質の乾燥薄膜を水和して調製した。溶媒に溶解した薬剤(メタノール中、約10〜20mMまたはPEG300中、約5〜10mM)を、65℃まで加熱し、リポソームの65℃溶液中に滴下した。
【0058】
溶媒希釈法では、脂質と薬剤をまず、有機溶媒中のストック溶液から互いに混合して、次いで乾燥した。次いで、メタノールまたはPEG300を、それぞれ最終脂質濃度200mMまたは50mMになるように添加した。脂質と薬剤溶液が、少量の加熱緩衝液(CLおよびSL調製には20mM HEPES 140mM NaCl、pH7.4またはSIL調製には20mM MOPSO、140mM NaCl、pH6.7)を添加して、65℃で10mM脂質にまで希釈されたとき、リポソームが形成された。
【0059】
得られたハイポクレリン−リポソームは、平均気孔サイズ100nmになるよう、Lipex Biomembranes(North Vancouver, BC)押出装置を使用して、80nmポリカーボネート膜から押し出す。次いでリポソームをゲル濾過によって精製し、脂質および薬剤濃度を分析する。最終脂質対薬剤モル比20:1が、通常、全ての配合剤について得られた。
【0060】
免疫リポソームは以下のようにして作製した。抗体をまず20mMピロリン酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、次いで、2−イミノチオレーンの15〜30モル過剰量とともに1時間、22℃でインキュベートした。チオール化した抗体は精製し、pHを、20mM MOPSO、140mM NaCl、pH7.4緩衝液を使用するゲルクロマトグラフィーによって低下させた。チオール化した抗体を、マレイミド−リポソーム(上記した)とともに、25〜50μgMAb/μモル脂質の濃度で一夜、22℃でインキュベートした。未結合抗体をゲル濾過で除去し、20mM HEPES 140mM NaCl、pH7.4緩衝液を使用して溶出した。約90〜95%の抗体がリポソームに結合した。
【0061】
所要に応じて、ハイポクレリン−リポソーム溶液をAmicon, Inc (Beverly, MA USA)CentriconまたはSartorious AG. (Goettingen, Germany)CentrisartI遠心分離濃縮器(それぞれ、100,000または300,000MWカットオフ)を使用して濃縮した。
【0062】
例16
腫瘍保持マウスモデルにおける光力学治療
BALB/cマウスは右脇腹中へ2×10個の413BCR細胞を皮下注射した。腫瘍は7〜10日後に出現した。腫瘍が直径約5mmに達したとき、例15の結合体、または薬剤とともに対照リポソーム、ただし異なったIgG1を用いて、1mg/kgにて静脈内投与した。2時間後、マウスに、スライドプロジェクターを使用して、>590nm(赤カットオフフィルター)、40J/cm、20mmW/cmにて照射した。対照マウスには照射しなかった。その結果を図6に示す。これらの結果は、本発明の結合体が、光の存在下で腫瘍を完全に取り除くことを示す。
【0063】
例17
マウス腫瘍生存研究
CB6F1マウスを腫瘍移植前にAlt−1結合剤、PBS、マウスIgGまたは非関連マウスモノクローナル抗体(0.2mlPBS中、50μg、静脈注射)を使用して、3回免疫化した。マウスにMT腫瘍細胞系410.4、完全長MUC−1 DNAをトランスフェクトしたマウス乳癌細胞系を移植した。腫瘍細胞を2×10細胞/マウスにて静脈注射し、肺に転移させた。腫瘍移植後、1週間目にマウスを再びAlt−1結合剤、マウスIgGまたは非関連マウスモノクローナル抗体(0.2mlPBS中、50μg)を使用して免疫化した。マウスは体重、目および柔毛を含めた一般的な状態変化を隔日に観察した。ひどい病状になるか、あるいは元の体重の25%以上を損なう徴候を示すなら、マウスを安楽死させた。
その結果を下記表に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
これらの結果は、Alt−1のみがMUC−1を発現する腫瘍細胞から統計的に有意な保護をもたらすことを示す(PBSに対して、P=0.038;非関連抗体に対してP=0.159)。
【0066】
例18
ヒト患者におけるHAMA応答の確立
17名の患者をAlt−1抗体で処置した。14名が女性であって、そのうち、11名が乳癌を発症していた。処置した他の癌は甲状腺(1)、大腸(2)、子宮内膜(1)、子宮(1)および唾液腺(1)であった。Alt−1を1、3、5、9、13および17週目に20〜30分間にわたって静脈注射によって投与した。投薬は3つの集団に、患者当たり1、2および4mgであった。1mgの集団では、5名の患者のうち、2名がHAMAのいくらかの増加を示し、1名は>200ng/mlの増加を示し、1名が2000ng/ml以上の増加を示した。2mgの集団では、5名の患者全員がHAMAのいくらかの増加を示し、2名患者は>200ng/mlの増加を示し、1名が>2000ng/mlの増加を示した。4mgの集団では、2名患者がHAMAのいくらかの増加を示し、両者は>200ng/mlであった。HAMAは抗原に対して発生した全体的免疫応答の範囲を示すものとして考えられる。したがって、これらの結果は、1〜2mgAlt−1のように僅かな量が強力な免疫応答を誘発することができることを示唆する。
【0067】
例19
腫瘍特異的抗原の低下
患者を例18に記載したように処置した。腫瘍抗原CA15.3の連続測定値は、市販のMUC−1アッセイ法を利用して得た。CA15.3レベルの安定化または低下を示す患者の割合は、1mgAlt−1では患者0%であり、2mgで80%および4mgで60%であった。最大低下は、それぞれ37%と25%の滴下を経験した2mg用量群の2名の患者において観察された。
【0068】
例20
Ab2形成
患者を例18に記載したように処置した。Ab2のレベルを本研究の最後に測定した。2mg群の2名の患者は、Ab2レベルがそれぞれ>1240U/mlおよび1784U/mlを有していた。4mg投与群の1名は?1102U/mlのAb2レベルを有していた。正常範囲は0〜200U/mlである。
【0069】
例21
抗MUC−1抗体の生成
患者を例18に記載したように処置した。抗MUC−1抗体レベルを本研究の最後に測定した。2mg用量群では、2名の患者がそれぞれ667U/mlおよび2464U/mlで、基線値を3倍以上越えた。1mg処置群の2名の患者および4mg用量群の1名の患者は、基線レベルの3倍の抗MUC−1抗体レベルを有していた。正常レベルは30〜250U/mlである。まとめると、これらのデータは2mg用量がおそらく最適であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するのに有効である非放射標識結合剤からなる治療用組成物。
【請求項2】
腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するのに有効である、HMFG1以外の結合剤を含む治療用組成物。
【請求項3】
可溶性および腫瘍結合性腫瘍関連MUC−1の両方に特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するのに有効である結合剤を含む治療用組成物。
【請求項4】
結合剤が、HMPV、VU−3−C6、MF06、VU−11−D1、MF30、BCP8、DF3、BC2、B27.29、VU−3−D1、7540MR、MF11、Bc4E549、VU−11−E2、M38、E29、GP1.4、214D4、BC4W154、HMFG−2、C595、Mc5およびA76−A/C7から選択されるモノクローナル抗体ではない、請求項2に記載の治療用組成物。
【請求項5】
結合剤が、哺乳動物において抗イディオタイプ応答および細胞免疫応答を誘発する、請求項1、2または3に記載の治療用組成物。
【請求項6】
アミノ酸配列DTRPAPを有するペプチドのアミノ酸残基からの免疫学的決定基を結合する結合剤。
【請求項7】
Alt−1と同じエピトープを結合する結合剤。
【請求項8】
Alt−1。
【請求項9】
請求項6に記載の結合剤、請求項7に記載の結合剤およびAlt−1からなる群から選択される結合剤を含む治療用組成物。
【請求項10】
腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するのに有効である活性結合剤を含む治療用組成物。
【請求項11】
結合剤が、光活性化されている、請求項9に記載の治療用組成物。
【請求項12】
結合剤が、光力学剤に結合している、請求項2に記載の治療用組成物。
【請求項13】
光力学剤は、ハイポクレリンおよびハイポクレリン誘導体を包含する、請求項12に記載の治療用組成物。
【請求項14】
エピトープは、炭水化物を含む免疫学的決定基を含む、請求項1または2に記載の治療用組成物。
【請求項15】
請求項1〜5および9〜13のいずれか1項に記載の治療用組成物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。
【請求項16】
腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置する結合剤を含む治療用組成物の有効量を哺乳動物に投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法であって、有効量は、約8mg/30kg体重未満の投与量である、前記方法。
【請求項17】
腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するに有効である結合剤を含む治療用組成物の有効量を哺乳動物に静脈内投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。
【請求項18】
腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するに有効である結合剤を含む治療用組成物の有効量を哺乳動物に皮下投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。
【請求項19】
結合剤が静脈内投与される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項20】
結合剤が皮下投与される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項21】
有効量が、8mg/30kg体重未満である、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
結合剤が、約3mg/30kg体重未満の投与量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結合剤が、約2mg/患者の投与量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
結合剤が、約0.5〜約2mg/30kg体重の投与量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
結合剤が、約0.5〜約1.5mg/30kg体重の投与量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
結合剤が、約1mg/30kg体重の投与量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結合剤が、抗体媒介毒性を誘発しない結合剤の最大量である投与量で投与される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
結合剤が、ADCCまたはCDCを産生しない結合剤の最大量である投与量で投与される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
結合剤が、HAXA応答>200U/mlを誘発する投与量で投与される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
結合剤が、HAXA応答>2000U/mlを誘発する投与量で投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
HAXA応答が、HAMA応答である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
結合剤が、腫瘍抗原CA15.3のレベルを低減させる投与量で投与される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
結合剤が、アジュバントの非存在下にて投与される、請求項17または19に記載の方法。
【請求項34】
結合剤が、アジュバントの存在下にて投与される、請求項16または18に記載の方法。
【請求項35】
有効量の請求項12または13に記載の治療用組成物を哺乳動物に投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。
【請求項36】
可視光線源で哺乳動物を照射することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
結合剤が、循環性および腫瘍結合性MUC−1の両方に結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項38】
有効量の請求項3に記載の結合剤を哺乳動物に投与することを含む、腫瘍を保有する哺乳動物を治療的に処置する方法。
【請求項39】
腫瘍を保持する哺乳動物を治療的に処置する方法であって、動物は、抗MUC−1抗体の基線レベルを有し、基線レベルに比べて抗MUC−1抗体において少なくとも3倍の増加を生じて、腫瘍関連MUC−1のエピトープに特異的に結合し、かつ、腫瘍関連MUC−1を発現する腫瘍を有する哺乳動物を治療的に処置するのに有効である結合剤を含む治療用組成物の有効量を哺乳動物に皮下投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−46518(P2012−46518A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193430(P2011−193430)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【分割の表示】特願2001−516562(P2001−516562)の分割
【原出願日】平成12年8月18日(2000.8.18)
【出願人】(504004278)アルタレックス メディカル コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】