説明

MYCER不死化肝細胞

本発明は、毒性学スクリーンまたは療法において有用な肝細胞細胞株の作製に関する。哺乳動物肝細胞は、シングルポリペプチドとして、c−mycタンパク質およびエストロゲン受容体、またはそれらの機能的断片からなる融合タンパク質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床適用および商用適用のためにスケールアップできる、条件的に不死化された肝細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、身体からの薬物および毒物の解毒を担っている。肝臓において最も多く見られる細胞種は肝細胞であり、各肝細胞は、臓器全体に必要とされる各タスクを実施する能力を有する。薬物は肝臓において代謝されるため、インビボでの毒性の可能性を評価するために、肝臓組織で薬物候補の吸収、分布、代謝、排泄および毒性(ADME/Tox)試験が実施される。
【0003】
従来、ADME/Tox試験は、新規薬物の開発プロセスの後期に実施されてきたが、毒性のために役に立たない新規薬物の数は約30%である。したがって、薬物開発プロセスの初期に適用でき、このことにより時間とコストを削減するハイスループットADME/Toxスクリーニングの開発には大きな関心が示されている。
【0004】
多数のインビトロADME/Tox研究は、肝臓の主代謝酵素であるシトクロムP450酵素ファミリーに焦点を当てているが、P−糖タンパク質に関する研究およびCaCo−2細胞株を用いる吸収研究もよく用いられる。
【0005】
シトクロムP450酵素アイソフォームを評価するためにいくつかの生物学的アッセイ系が用いられているが、それらすべてに、インビボの毒性を予測するその能力においていくつかの重大な不利点がある。現在のアッセイの主な不利点は、制限された数の肝臓酵素しか一度に調べることができないことであり、このことがアッセイと肝臓自体における状態の間の類似性を制限している1、2
【0006】
ヒト肝細胞はヒト肝臓の最も近いインビトロモデルである。ADME/Tox研究には初代肝細胞培養物が用いられることが多いが、これはこれらが「正常な」肝細胞表現型を発現するからである。しかし、これらの細胞の入手の可能性は低く、マーカーの発現はバッチ間で異なる。胎児肝細胞は、適切な培養条件下では、細胞培養液中で解離させ、播種すると容易に増殖するが、胎児肝細胞では多数の成熟酵素の発現レベルが異なる。例えば、主要代謝酵素の1つであるcyp3A4のレベルは、成熟肝細胞よりも胎児でかなり低い。また、成体の肝細胞は培養が疑わしくなる。低い増殖能のため、成長因子によって刺激を加えても、それらをインビトロで2回以上増殖するよう誘導するのは困難である
【0007】
初代肝細胞に伴う問題のために、肝細胞株が開発されることとなった。いくつかのヒト肝細胞株が現在利用可能であり、成体肝由来のものもあり、胎児肝由来のものもあり、ウイルスを用いて不死化されているか、または不死化を用いずに簡単に培養されている5、6。しかし、主に、シトクロムP450をはじめとする多数の肝細胞マーカーの発現が、細胞培養では迅速に低下するか、完全に消失するために、「正常な」ヒト肝細胞表現型を発現する細胞株はない。7つの種類の肝細胞mRNAマーカーがあり、これらを表1に各種類における例とともに示す。
【0008】
【表1】

【0009】
培地に3−メチルコラントレンおよびオンコスタチンM8、9などの物質を添加することによって、いくつかの肝マーカーの発現を誘導し、アップレギュレートすることが可能である。しかし、培地に物質を添加することによって、または培養条件を変更することによって10、すべてまたはほとんどの肝細胞酵素のレベルを「正常」レベルにアップレギュレートすることは現在可能ではない。ラットおよび霊長類をはじめとする他の種由来のいくつかの肝細胞株が利用可能であるが11、12、これらにもマーカーの低発現の問題および種間差というさらなる問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、正常肝機能およびマーカーを発現するヒト肝細胞株が求められている。このような細胞株は、細胞−細胞接触の研究をはじめ、ほとんどの第I相および第II相薬物代謝酵素を研究するために使用でき、無制限の細胞供給源であり、ハイスループット系に用いることができ、高度に再現性のあるデータが得られ、種間差がなく、費用効率が高いであろう
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、細胞培養物中に4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)が存在する場合に不死化されるが、4−OHTが存在しない場合に正常な肝細胞マーカーを発現する、条件的に不死化される肝細胞の構築に基づいている。c−myc/エストロゲン受容体融合物が、肝細胞への条件的不死特性の付与を担う。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、哺乳動物肝細胞は、シングルポリペプチド鎖として発現される、mycファミリーの癌タンパク質およびエストロゲン受容体、またはそれらの機能的断片を含む融合タンパク質を含む。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、肝細胞を条件的に不死化する方法は以下の工程を含む:
(i)肝細胞において、シングルポリペプチド鎖として発現される、mycファミリーの癌タンパク質およびエストロゲン受容体を含む融合タンパク質、またはその機能的断片を発現させ、
(ii)工程(i)で形成された肝細胞を、エストロゲン受容体のリガンドと接触させ、このことにより肝細胞を条件的に不死化する。
【0014】
本発明による肝細胞は、特に、ADME/Tox試験における、潜在的薬物のインビトロ試験にとって特に有用である。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、インビトロで薬物として使用するための化合物の適合性を評価する方法は、以下の工程を含む:
(i)シングルポリペプチド鎖として発現される、mycファミリーの癌タンパク質およびエストロゲン受容体、またはそれらの機能的断片を含む融合タンパク質を含む肝細胞を、潜在的薬物化合物と接触させ、
(ii)肝細胞の応答を測定し、このことにより肝細胞に対する化合物の効果を判定して、薬物として使用するための化合物の適合性を評価する。肝細胞は、培養培地からエストロゲン受容体リガンド、例えば、4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)が除去されると増殖停止されること、および肝細胞が十分に分化した表現型に発達することが好ましい。
【0016】
本発明のさらなる態様は、肝疾患を治療するための医薬としての、および医薬の製造における肝細胞の使用である。本発明のさらにもう1つの態様は、肝臓補助装置(LAD)における本発明の肝細胞の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、肝細胞におけるmyc/エストロゲン受容体融合タンパク質の発現が肝細胞を条件的に不死化することを記載する。肝細胞は、エストロゲン受容体のリガンドの存在下で培養されると、不死である。肝細胞からリガンドを除去すると、細胞の不死性が取り去られ、次いで、肝臓中のインサイチュの肝細胞から予測されるような肝細胞の「正常な」特徴およびマーカーを示す。
【0018】
本明細書において、用語「肝細胞」とは、肝臓によって実施される1以上の機能を実行できる、肝臓から得られる任意の上皮細胞を指す。いずれの種に由来する肝細胞も本発明の範囲内であるが、肝細胞は哺乳動物のものであることが好ましく、ヒトのものであることが最も好ましい。胎児または成人肝細胞を使用でき、同様に、インビトロで前駆体細胞から分化した肝細胞、例えば、胚幹細胞または多能性幹細胞から分化した肝細胞も使用できる(US6506574参照のこと)。
【0019】
本発明の肝細胞は、「正常な」肝細胞に特徴的なマーカーを維持する。各種類の例とともに表1に示されるように、7つの種類の肝細胞mRNAマーカーがある。本願を詳述する研究では、これらのマーカーのうち5種、すなわち、アルブミン、α−フェトプロテイン、サイトケラチン−18、cyp3A4およびcyp3A7を、ヒト胎児肝クローンの特性決定に用いた。
【0020】
本明細書において、用語「不死の」とは、長期の増殖を起こす能力を有する細胞を指す。本発明の肝細胞は、エストロゲン受容体のリガンド、例えば、4−OHTの存在下で増殖させた場合に「不死」である。単一の細胞または細胞のコロニーからインビトロで増やした細胞の培養物が「細胞株」と呼ばれることは、当業者には明らかである。これは、制限された回数、通常、10〜20回未満の分裂しかできず、その後、老化に到達し、細胞が最終的に死滅する初代細胞とは対照的である。本明細書において、用語「条件的に不死の」とは、特定の、具体的な増殖条件下では分裂しており、未成熟であるが、他の条件下では十分に成熟した細胞である細胞を指す。本発明によれば、細胞の不死化を担う環境条件は、エストロゲン受容体リガンドの存在である。
【0021】
エストロゲン受容体リガンドによって、継続して不死となり、その結果、不死化されることが可能である肝細胞の特徴は、myc/エストロゲン受容体融合タンパク質の存在である。理論に拘束されることを望むものではないが、リガンド(例えば、4−OHT)がエストロゲン受容体を活性化すると考えられる。エストロゲン受容体の活性化により、癌タンパク質mycが二量化され、核に輸送され、そこで転写因子として作用し、遺伝子の発現を開始し、増殖が起きることが可能となる。リガンドがない場合、myc癌タンパク質を含む融合タンパクは依然として発現されるが、細胞質中に残り、さらなる増殖は起こらない。したがって、リガンドを培地に加えることにより、肝細胞を(不死的に)増殖させることができ、リガンドを取り除いて、細胞が正常な非増殖性肝細胞のように挙動することが可能である。
【0022】
本発明の肝細胞は、myc/エストロゲン受容体融合タンパク質の発現により、条件的に不死である。本明細書において、用語「融合タンパク質」とは、シングルポリペプチド鎖として発現される、天然には別個に発現される2種のタンパク質またはペプチド配列を含む組換えタンパク質を指す。
【0023】
融合タンパク質は、任意のmycタンパク質および任意のエストロゲン受容体、またはエストロゲン受容体リガンドによって活性化される能力および転写を活性化し、細胞増殖を導く能力をそれぞれ維持するこれらのタンパク質の任意の断片を含み得る。mycタンパク質はc−mycであることが好ましい。エストロゲン受容体は、リガンド4−OHTとの高親和性結合には影響を及ぼさず、17β−エストラジオールとの高親和性結合を妨げる変異を有することが好ましい。この変異は、1個またはいくつかのアミノ酸残基の欠失、置換または付加であり得る。好ましい実施形態では、融合タンパク質は、マウスエストロゲン受容体と融合しているヒトc−myc遺伝子からなる。融合タンパク質は、本明細書において、配列番号2として記載されるアミノ酸配列を含むことがより好ましい。先に記載したように、配列番号2のいずれかの相同体または機能的断片は本発明の範囲内である。
【0024】
本明細書において、用語「相同体」とは、2種以上の生体高分子、例えば、DNA配列、RNA配列およびタンパク質配列の間の類似性または同一性を指す。配列同一性の概念は、当技術分野では周知であり、2種の配列間の同一性のレベルを指す。類似性の概念も同様に周知であり、2種の配列間の類似を考慮する場合には、構造または機能に大きな影響を有しない2種の配列間の保存的相違が含まれる。例えば、グルタミン酸は、タンパク質構造または機能に大きな効果を及ぼすことなく、アスパラギン酸と置換でき、これらの残基は、「類似」である。対照的に、アスパラギン酸残基は、フェニルアラニン残基には類似性を示さない。本発明の範囲内に含まれる相同体は、本明細書に記載されるマウスエストロゲン受容体およびヒトc−myc配列に対して高度の類似性を有さなくてはならない。同一性および類似性は、任意の周知のアルゴリズム、例えば、ニードルマン−ヴンシュ(Needleman-Wunsch)、スミス−ウォーターマン(Smith-Waterman)、BLASTまたはFASTAを用いて算出できる。相同性は、核酸またはアミノ酸レベルで求めることができる。本発明の範囲内の相同体は、アミノ酸または核酸レベルで少なくとも50%の相同性を有すると、デフォルト条件下でBLASTプログラムを用いて算出されることが好ましく、より好ましくは、少なくとも60%、さらにより好ましくは70%より高い、最も好ましくは80%より高い、例えば、90%の相同性を有する。
【0025】
本発明の肝細胞は、c−myc/エストロゲン受容体融合タンパク質を発現する。本明細書において「融合ポリヌクレオチド」と呼ばれる、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子は、肝細胞においてどのような形で存在してもよく、例えば、肝細胞内のプラスミドとして、または宿主ゲノムに組み込まれて存在してもよい。
【0026】
肝細胞は、肝細胞ゲノムに融合ポリヌクレオチドを組み込むことによって条件的に不死化されることが好ましい。宿主ゲノムに異種ポリヌクレオチドをインテグレートさせる方法は当技術分野では周知であり、適した方法を使用すればよい。レトロウイルス感染を用いて、肝細胞ゲノムに融合ポリヌクレオチドを組み込むことが好ましい。外来ゲノムに遺伝物質を組み込むためのレトロウイルスベクターは、当技術分野では周知であり、いずれを用いてもよい。ベクターは両種指向性レトロウイルスであることが好ましく、ベクターがpLNCX(ビーディー・バイオサイエンセズ・クローンテック(BD Biosciences Clontech))であることが最も好ましい。
【0027】
ベクターを、任意の適したウイルス産生細胞に融合ポリヌクレオチドとともにパッケージングする。ウイルスは、TEFLYウイルス産生細胞株を起源とするFly−CO42細胞によって産生されることが好ましい。
【0028】
pLNCXベクターは、ネオマイシン耐性遺伝子を働かせるLTRプロモーターを含む。ネオマイシン耐性遺伝子を発現する細胞のみが生存するよう、選抜の間、培地中にネオマイシン(ジェネテシンおよびG418としても知られる)を用いる。非感染標的細胞でネオマイシンの滴定を実施し、非感染細胞を排除するのに必要な濃度を定めることができる。感染細胞の選択を補助するために、いずれの抗生物質耐性遺伝子を使用してもよいが、抗生物質耐性は本質的な特徴ではない。
【0029】
任意のプロモーターを用いて、融合ポリヌクレオチドの発現を促進することができる。これは、抗生物質耐性遺伝子の発現を促進するために用いられるものとは異なるプロモーターであることが好ましい。cmvプロモーターが融合ポリヌクレオチドを発現させることが好ましい。
【0030】
適した融合ポリヌクレオチドの例としては、本明細書において配列番号1として記載されるc−mycERTamがある。これは、合成薬物4−OHTとの高親和性結合には影響を及ぼさずに17β−エストラジオールとの高親和性結合を排除するよう変異されているマウスエストロゲン受容体と融合しているヒトc−myc遺伝子を含む。タンパク質にこの機能的変化を引き起こすポリヌクレオチドのいずれの変異も、本発明の範囲内にあり、付加、置換または欠失を含む。変異は点変異であることが好ましい。好ましい実施形態では、アミノ酸位置681の野生型グリシンをアルギニンに変更するよう点変異が導入される。c−myc−ERTamの相同体および機能的断片は、本発明の範囲内にある。
【0031】
当業者には明らかであろうが、レトロウイルスベクターを肝細胞ゲノムに組み込むためには、肝細胞は増殖している必要がある。組み込みを最大にするために、ウイルスは、肝細胞が高率で増殖している際に加えられなければならない13。増殖率を調べるには、増殖マーカーKi67、細胞周期の後期G1、S、MおよびG2相において発現されるがG0では発現されない核タンパク質を染色することが好ましい14。感染の成功率をさらに増大させるために、感染の間、臭化ヘキサジメトリン(ポリブレンとしても知られる)のような促進物を培地に加えることができる。これは、高濃度ではいくつかの細胞にとって毒性であり得るが、ヒト胎児肝細胞の感染に用いられて成功している15〜17
【0032】
本発明の肝細胞を研究する場合には、4−OHTはシトクロムp450酵素CYP3A4に対して阻害効果を引き起こす可能性があり、また、その他の化学物質と反応する可能性もあるので、実験の前にすべての4−OHTを除去することが好ましい。
【0033】
本発明の肝細胞の適用としては、肝臓細胞に対する化学物質、例えば、薬物または毒物の効果のインビトロ評価に関するいずれかの方法、例えば、それだけには限らないが、内因性物質代謝および異物代謝、肝毒性および肝臓癌形成能、肝炎およびマラリアなどの肝臓関連のヒトに制限された病原の研究、ならびに心血管研究が挙げられる。
【0034】
本細胞は、薬物候補がインビボにおいて用いるのに適しているかどうかを調べるための、詳しくは、肝細胞(したがって肝臓)に対するその効果を評価し、毒性を調べるためのADME/Tox試験において特に有用である。当業者には知られるように、多数の技術がADME/Tox試験に用いられる。これらの技術は、通常、インビトロで肝細胞を潜在的薬物化合物と接触させ、肝細胞の応答を測定することを含む。応答は種々の方法で測定でき、それだけには限らないが、成長および増殖率の測定、発現プロフィールおよび酵素活性アッセイが挙げられる。潜在的薬物化合物の滴定を実施して、化合物が肝細胞に対して毒性である場合には毒性になる点を評価することができる。このような試験のデータに基づいて、化合物を薬物として使用するための適合性を決定する。
【0035】
好ましい実施形態では、培養条件により、十分に分化した代謝発現マーカーの長期発現を最適化する。このような培養法は当技術分野では公知であり、例えば、リチャート(Richert)ら、(2002)28に記載される、3次元培養される凝集塊、コラーゲンサンドイッチ培養が挙げられる。
【0036】
特に、細胞をハイスループットスクリーニングに使用できることが企図される。
【0037】
適したハイスループットスクリーニングアッセイは、ワーリング(Waring)ら、(2001)21、バートン(Barton)ら、(2002)22、ハマド(Hamadeh)ら(2002)23、デ・ロングビル(de Longueville)ら、(2003)24、アダム(Adam)ら、(2001)25、ショウ(Seow)ら、(2001)26およびアンダーソン(Anderson)(1991)27に開示されており、各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
4−OHTを本発明の肝細胞における増殖シグナルとして用いることの利点は、この合成化学物質がヒトでは通常存在せず、本発明の肝細胞を医薬として用いることを可能にすることである。詳しくは、肝細胞を、移植療法において用いるための治療用細胞株において使用できる18。肝細胞の移植は、罹患した肝臓または損傷を受けた肝臓への健常な肝細胞の移植によって、疾患によって損傷を受けた細胞を置き換えることができる場合には、肝臓の疾患を治療するための選択肢であることが認められている。細胞移植は、臓器移植の好ましい代替物と考えられている。それだけには限らないが、癌、肝硬変、すべての形の肝炎および薬物またはアルコールの乱用によって引き起こされた損傷をはじめ、肝機能を低下させるいずれの疾患も、本発明の肝細胞の移植によって治療できる。肝細胞に関する獣医治療も本発明の範囲内にある。
【0039】
本発明の肝細胞はまた、バイオ人工肝臓装置としても知られる肝臓補助装置(LAD)においても使用できる。LADは、例えば、急性肝不全の場合に、肝機能を実行できる装置である。LADは、透析の役割を実行する場合には体外であってもよく、患者に埋め込まれてもよい。LADの主な用途は、急性肝不全の直後の期間に患者を支援することであるが、移植後に、移植された肝臓が十分に機能するまで患者を支援するためにも使用できる。LADは、一般に、少なくとも1個の代謝的に活性な肝細胞を入れたチャンバーを含む。次いで、患者の血液を肝細胞と接触させ、肝細胞は肝臓が行うように血液を処理する。
【0040】
本発明を、以下の限定されない例によってさらに示す。
【実施例1】
【0041】
材料および方法
特に断りのない限り、すべての化学物質はシグマ(Sigma)から購入した。
【0042】
組織培養
すべての細胞は、ミレニアム(millennium)インキュベーター(ジェンコン(Jencon))において5%CO中、37℃で増殖させた。細胞には、1週間につき3回、定期的に培地交換を与えた。細胞は90%コンフルエンシーの時点で継代した。
【0043】
培地
組織培養の際には8種の培地を用いた。ヒト胎児肝細胞およびクローンは、これらの培地のすべてで培養した。培地は1Lフィルターユニット(ナルゲン(Nalgene))を用いて濾過滅菌し、使用前に37℃に予温した。培地は、培地:A、B、C、D、E、F、GおよびHと呼び、以下からなるものである:
培地A:アルギニンを含まないウィリアムズE標準培地(ギブコ(Gibco))、炭酸水素ナトリウム、2.2g/L、透析ウシ胎児血清(dFBS)(ギブコ(Gibco)26400−044)、10%、L−グルタミン、2mM、インスリン、100nM、ペニシリン−ストレプトマイシン(ギブコ(Gibco))、100IU/ml、L−オルニチン、0.4mM、ヒドロコルチゾン、5.5μM、上皮成長因子(EGF)、20ng/ml。
培地B:胎児ウシ血清(FBS)(ハイクローン(HyClone))、10%、ゲンタマイシン、50mg/ml、L−グルタミン、2mM、EGF、20ng/mlを含む「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEM)。
培地C:ウィリアムズE標準培地(ギブコ(Gibco)):DMEM(1:1)、ビタミンAを含まないB27サプリメントミックス(50×)(ギブコ(Gibco))、1:50、FBS、10%、L−グルタミン、2mM、ペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/ml、ヒドロコルチゾン、5.5μM、インスリン、100nM、ニコチンアミド、10mM、EGF20ng/ml、肝細胞増殖因子(HGF)(ペプロテック(Peprotech))、10ng/ml。
培地D:ウィリアムズE標準培地(ギブコ(Gibco)):DMEM(1:1)、FBS、10%、L−グルタミン、2mM、ペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/ml。
培地E:ウィリアムズE標準培地(ギブコ(Gibco)):DMEM(1:1)、FBS、4%、L−グルタミン、2mM、ペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/ml。
培地F:DMEM F12、ヒト血清アルブミン0.03%、トランスフェリン、ヒト100mg/ml、プトレシン二塩酸塩16.2mg/ml、インスリン、ヒト組換え型5mg/ml、プロゲステロン60ng/ml、L−グルタミン2mM、亜セレン酸ナトリウム(セレン)40ng/ml、ヘパリン、ナトリウム塩10ユニット/ml、コルチコステロン40ng/ml、ゲンタマイシン50mg/ml、ニコチンアミド、10mM、EGF20ng/ml、HGF、10ng/ml。
培地G:ウィリアムズE標準培地(ギブコ(Gibco)):DMEM(1:1)、ビタミンAを含まないB27サプリメントミックス(50×)(ギブコ(Gibco))、1:50、FBS、10%、L−グルタミン、2mM、ペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/ml、ヒドロコルチゾン、5.5μM、インスリン、100nM。
培地H:DMEM、FBS、10%、インスリン100nM、ヒドロコルチゾン、5.5μM、ペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/ml。
【0044】
コーティング
コーティングされた組織培養プラスチックウェアおよびコーティングされていない組織培養プラスチックウェアの両方を用いた。コーティングは、滅菌された容器に入った水(フレゼニウス・カビ(Fresenius Kabi))で希釈したコラーゲンタイプ1、カーフスキンの溶液を用いて行い、6μg/cmの濃度で加えた。使用前に、プラスチックウェアを最後にPBSで洗浄した。
【0045】
肝臓
ヒト胎児肝臓は中断された妊娠の後に採取した。地方NHS倫理委員会の承認は研究が開始される前に得ておいた。
【0046】
解離
ヒト胎児肝臓は、発送後、RPMI培地中の湿った氷上に受け取った。肝臓を+4℃のカルシウムを含まないHEPES pH7.2(ギブコ(Gibco))で2回およびエチレングリコール−ビス(b−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)、0.5mMを含む+4℃のカルシウムを含まないHEPES pH7.2で1回洗浄した。肝臓をメスで刻み、37℃の、コラゲナーゼA(ロシュ(Roche))、0.05%、DNアーゼI(ロシュ(Roche))、0.005%、ヒラノニダーゼ(hylaronidase)、0.0125%およびディスパーゼIl(ロシュ(Roche))、0.025%を含有し、5mM 塩化カルシウムを補給した、カルシウムを含まないハンクス平衡塩溶液(HBSS)からなる酵素溶液中に20分間入れた。解離した肝臓を、滅菌ナイロンメッシュを通して濾過し、+4℃の培地Bに回収した。いくらかの小さな血液細胞およびその他の細胞を除去するために、細胞を50gで3回回転させ、各回で上清を廃棄した。細胞および生存率カウントは、血球計算器を用いて実施した。いくつかの細胞は免疫磁気単離でさらに精製した。細胞を初期から、培地B中、コラーゲンコーティングした組織培養プラスチックウェア上にプレーティングし、4時間接着させた。次いで、細胞を37℃の、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩水pH7.4(PBS)(ギブコ(Gibco))で1回洗浄して細片および接着していない細胞を除去し、培地Aを加えた。
【0047】
免疫磁気単離
免疫磁気単離は、解離した肝臓からの肝細胞および肝芽腫のポジティブ選択として、および非上皮細胞を除去するためのさらなる精製工程として行った。解離した肝臓に由来する約10個の細胞を450μlのPBSおよび50μlの抗HEA−125(ヒト上皮抗原)抗体、マウスモノクローナルIgG1プロジェン(Progen)61004)に加え、ファルコンチューブにおいて37℃で30分間インキュベートした。抗HEA−125抗体は、上皮細胞表面糖タンパク質を認識し、この抗体は、肝細胞および肝芽腫をはじめとするほとんどの上皮細胞種を標識するが、非上皮組織は標識しないようである19。次いで、チューブを500gで2分間回転させて細胞をペレットにし、上清を廃棄して結合していない抗体を除去した。細胞を500μlの+4℃PBSおよび10μlのダイナビーズ(dynabeads)M−450(ダイナル(Dynal))に再懸濁し、これをヒツジ抗マウスIgG抗体とともにコーティングし、+4℃で30分間インキュベートした結果、ビーズが抗HEA−125抗体で標識された細胞と接着できた。ファルコンチューブに4.5mlのPBSを加え、これを+4℃で磁石(ポリATトラクトシステム(polyATtract system)1000、プロメガ(Promega))中に3分間入れた。上清を注意深く廃棄して、磁気ビーズに接着していない細胞を除去した。この工程を3回繰り返した。最後に、細胞を培地Bに再懸濁し、コラーゲンプレコーティングした組織培養プラスチックウェア上にプレーティングした。
【0048】
継代
細胞を継代するか、またはフラスコから除去する毎に、フラスコを37℃のPBSで1回洗浄した。その後、37℃の1×トリプシン−ヴェルセンミックス(バイオ・ウィテカー(Bio Whittaker))を10分間加え、細胞をプラスチックから剥離させた。トリプシン−ヴェルセンミックスと等容積の培地を加えてトリプシンを中和し、ファルコンチューブ中で細胞を500gで5分間回転させた。上清を吸引し、細胞を1mlの培地に再懸濁し、細胞カウントを血球計算器を用いて実施した。細胞を1:3の比で新規フラスコ中に継代した。
【0049】
凍結/解凍
細胞を凍結する場合には、細胞ペレットを、クリオセーフ(cryo-safe)バイアル(ヌンク(Nunc))に入れた900μlの培地および100μlのクリオシュア(cryosure)−ジメチルスルホキシド(DMSO)(クエスト・バイオメディカル(Quest biomedical))に再懸濁した。この細胞を、「ミスター・フロスティー(Mister Frosty)」凍結保存凍結容器(ナルジェン(Nalgene))中、−80℃に24時間入れ、そこで温度を約5℃/分で低下させた。24時間後、細胞を長期保存のために液体窒素に移した。解凍時には、細胞を液体窒素から回収し、解凍するまで37℃の水浴中に入れ、次いで、10mlの37℃の培地と混合し、500gで5分間回転させた。上清を廃棄し、穏やかにピペッティングすることによってペレットを新鮮培地に再懸濁し、新規フラスコにプレーティングした。
【0050】
ウイルスの回収
クローンFly−C042由来のウイルス産生細胞を、数本のT−175フラスコ中でコンフルエンスまで培養した。用いた培地は、FBS、10%、L−グルタミン、2mMおよびペニシリン−ストレプトマイシン、100IU/mlを補給したDMEMグルタマックス(glutamax)(ギブコ(Gibco))であった。コンフルエントの時点で、フラスコをPBSで3回洗浄し、ウイルス産生細胞に培地Aを18ml/T175フラスコで8時間加えた。培地を回収し、0.45μmのフィルター(サルトリウス(Sartorius))を通して濾過し、5ml培地/ファルコンチューブで分注し、液体窒素中でスナップ凍結し、−80℃中で保存した。
【0051】
感染
ヒト胎児肝臓を解離した3日後、培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、ウイルスおよび臭化ヘキサジメトリン、8μg/mlを含む解凍した培地に8時間曝露した。8時間感染させた後、通常培地を加え、翌日感染を繰り返した。感染は10cmのペトリディッシュにおいて、200個細胞/ディッシュ〜100%コンフルエントディッシュの範囲の細胞濃度を用いて行った。第2ラウンドの感染の後、細胞を異なる培地に継代し、2日間静置した後、選抜を開始した。感染後は、4−OHT、100nMを常に培地に加えた。
【0052】
選抜
感染細胞は排除しないが非感染細胞のすべてまたは大部分を排除するために、ウイルスに曝露された肝臓細胞に対して用いるネオマイシンの濃度を決定するために、ネオマイシンの力価を設定した。不死化ウイルスに一度も曝露されていない解離した肝臓に由来するヒト胎児肝臓細胞を、6ウェルプレートにプレーティングし、0〜900μg/mlの範囲のネオマイシン濃度に12日間、3連で曝露した。100、500および2000個細胞/ウェルをプレーティングし、細胞を2日間静置し、その後ネオマイシンを加えた。細胞の成長および増殖をTMS−F顕微鏡(ニコン)を用いて可視的に調べた。ネオマイシン力価からの結果に基づいて、不死化ウイルスに曝露された肝臓細胞に250μg/mlの濃度のネオマイシンを2週間用いた。
【0053】
免疫細胞化学
細胞の初期評価のために、免疫細胞化学を用いた。発現レベルを定量化することは可能ではないが、免疫細胞化学を用いる利益は、少数の細胞しか必要でないということであり、また、細胞集団中の何個の細胞が特異的マーカーを発現するかを調べることが可能であり、また、ある細胞が他のものよりもより高度の発現を有するかどうかを調べることが可能である。これは、それを用いて進める細胞および細胞株ならびに廃棄する細胞/細胞株を選択するプロセスにおいて大きな価値を有し得る。
【0054】
抗アルブミン抗体は、シグマ(Sigma)の製品規格分析書によれば、ウシアルブミンとは交差反応性がなかったが、交差反応性が、培養培地中のFBSとの非特異的結合を引き起こす可能性があった。抗線維芽細胞抗体を、プロリル−4−ヒドロキシラーゼのb−サブユニットと、およびジスルフィドイソメラーゼと反応させた。2種の肝細胞腫細胞株HepG2およびHuH7を、染色の最適化のために、また肝細胞マーカーの実験の間の陽性対照として用い、ヒト脳細胞株、CTX−08を陰性対照として用いた。すべての染色は、マルチウェル形式で実施し、以下の手順を用いた。培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒド中、室温(RT)で15分間固定した。4%パラホルムアルデヒドを吸引し、細胞をPBSで3回洗浄した。ck−18、線維芽細胞およびKi67染色のために、細胞をPBS中0.1%triton x−100中で20分間パーミュベライズした(permubelised)。アルブミンおよびAFP染色のためには、細胞を、氷冷メタノールを用いて5分間パーミュベレーズした(permubelased)。次いで、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中10%正常ヤギ血清(NGS)(ベクター(Vector))中で30分間ブロッキングした。一次抗体を、PBS中1%NGS中に、Ki−67を除き、室温で1時間、Ki−67には2時間加えた。ウェルをPBSで3×5分間洗浄し、二次抗体をPBS中にRTで1時間加えた。二次抗体は約488nmの波長で励起され、約525nmで発光を生じた(緑色発光)。1時間インキュベートした後、ウェルを、PBSで3×5分間洗浄し、ヘキスト、DNAを染色する化学物質を、PBS中1:25000で、RTで2時間加えた。ヘキストは約350nmで励起され、約425nmで発光を生じた(青色発光)。最後に、ウェルをPBSで3×5分間洗浄し、最後の洗浄液中に静置した。抗c−myc染色のためには、先に記載したように、細胞を固定し、ブロッキングし、triton x−100中でパーミュベライズした(permubelised)。次いで、一次抗体を一晩入れておき、二次抗体を1.5時間入れておいた。すべての分析は、蛍光顕微鏡ライカ(Leica) DMRAおよびデジタルカメラC4742−95(ハママツ)およびコンピュータソフトウェアハママツイメージ(Hamamatsu image)PROを用いて行った。
【0055】
全RNA抽出
全RNA抽出には、RNイージーミニキット(RNeasy mini kit)(キアゲン(Qiagen)74104)を用いた。抽出あたり最大5×10個細胞の細胞ペレットを用いた。細胞を、2メルカプトエタノール、10μl/mlを含む350μlのRLTバッファーを用いて破壊し、サンプルを20ゲージのシリンジに10回通すことによってホモジナイズした。無水アルコール(ジョセフ・ミルズ社(Joseph Mills Ltd))を70%に希釈し、350μlをサンプルに加え、ピペッティングによって混合した。サンプルをRNイージーミニカラムに移し、8000gで15秒間回転させた。350μlのRW1洗浄バッファーを加え、8000gで15秒間回転させた。70μlのRDDバッファー(キアゲン(Qiagen))中10μlのRNアーゼを含まないDNアーゼ1(キアゲン(Qiagen)79254)を、RNイージーミニカラムメンブランに15分間加えた。350μlのRW1洗浄バッファーを加え、8000gで15秒間回転させ、500μlのRPEバッファーを2回加え、サンプルを15秒間および2分間、各回8000gで回転させた。最後に、50μlのRNアーゼを含まない水をカラムに加え、8000gで1分間回転させた。50μlのRNAを含有する水を、RNアーゼを含まない試験管に回収し、分光光度計ジーンクワントプロ(GeneQuant pro)(アマシャム・ファーマシューティカル・バイオテック(Amersham pharmaceutical biotech)AB)を用いて純度および量を調べた。サンプルは−80℃で保存した。
【0056】
cDNAの作製
cDNAを作製するために、抽出した全RNAを氷上で解凍し、50ngを、氷上のDNアーゼ/RNアーゼを含まない試験管中で以下のものと混合した:RNアシン(RNasin)RNアーゼ阻害剤10000u(プロメガ(Promega)N2115)、0.25μl、ランダムプライマー3μg/μl(インビトロジェン(Invitrogen)48190−011)、0.067μlおよびバッファーRT10×、2μl、dNTP−ミックス各5mM、2μl、センシスクリプト(Sensiscript)RT、1μlおよびRNアーゼを含まない水(すべてキアゲンキット205213のもの)を混合し、最終容積20μlとした。試験管を37℃の水浴に60分間入れ、93℃ヒートブロックに5分間移し、氷上で急冷した。cDNAは−20℃の冷凍庫で保存した。
【0057】
c−myc−ERのためのPCR
c−myc−ERのPCRのために、チタンtaq PCRキット(クローンテック・ラボラトリーズ(Clontech laboratories))を用いた。用いたプライマーについては表2参照のこと。PCR反応条件は標準とした。用いたPCR機器はジーンアンプ(GeneAmp)PCRシステム2700であった。分析用に、15μlのPCR産物を、5μlの6×ローディングダイ溶液(MBI R0611)と混合し、ゲルに載せた。3μgのDNAを含有する、100bpのDNAラダー(MBI SM0241)、6μlも載せた。ゲルは、TAEバッファー(インビトロジェン(Invitrogen)15558−034)、アガロース2%、エチジウムブロマイド、267μg/mlからなる2%アガロースゲルとした。トレイHU13(ジェンコンス(Jencons))中で電気泳動電源E835(コンソート(Consort))を用いてゲルを流し、最後に、フラワー(Flour)−Sマルチイメージャー(バイオラッド(Biorad))を用いてスキャンし、ソフトウェアクワンティティーワン(Quantity One)(バイオラッド(Biorad))を用いて分析した。
【0058】
【表2】

【0059】
タックマン(TaqMan)
96ウェル光学反応プレート(ABアプライドバイオシステムズ(AB Applied biosystems))において標準タックマンプロトコールに従った。用いたすべてのプローブおよびプライマーは、MWG−バイオテック(Biotech)AGから入手し、すべてのプローブは、3’TAMRAおよび5’FAMで標識した。表3参照のこと。光学用接着性カバーフィルム(ABアプライドバイオシステムズ(AB Applied biosystems))を用いて反応プレートを密閉した。タックマンプレートを、500gで1分間遠心分離し、その後、タックマン機器(ABIプリズム(prism)7000配列検出システム)に装着した。最後に、タックマンから得た結果を、ABIプリズム7000 SDSソフトウェアを用いて分析した。
【0060】
【表3】

【0061】
テロメラーゼアッセイ
クローン20,p2に由来する細胞を、T25フラスコにおいて、0、100nM、1μMおよび10μMの4−OHTを含む培地で1週間培養した。細胞は2ヶ月培養してあった。同一肝臓から得た感染していない肝細胞も、アッセイに用いた。これらの細胞は3週間培養してあった。アッセイは、テロ(Telo)TAGGGテロメラーゼPCR ELISAPLUS(ロシェ(Roche))の使用説明書に従って実施した。プレートリーダージェニオス(GENios)(テカン(Tecan))を用いて結果を分析した。いくつかの蛍光値はプレートリーダーのスペクトルには高すぎたため、プロトコールの変更を行い、最終溶液の1/3のみから蛍光を測定した。
【0062】
結果
ヒト初代胎児肝臓細胞を用いた結果
解離したヒト胎児肝臓および細胞を、96ウェルプレートにおいて1日培養した後に、肝細胞マーカーアルブミンおよびck−18について染色した。ほとんどすべての細胞が、アルブミンとck−18の両方について陽性染色を示し、このことは、肝臓解離が良好であることおよび初期培養物中のほとんどの細胞が肝細胞または肝細胞様細胞であることを示す。HEA−125抗体によって認識される上皮表面抗原を発現する細胞の濃縮を実施し、その後、細胞をプレーティングし、いくらかの細胞を固定し、染色した。HEA−125陽性細胞はまた、アルブミンについても陽性であった。種々の培養日数で、ki67に対する染色を用いてヒト胎児肝細胞増殖率の推定を行った。4つの異なる日数について、無作為の領域の、Ki67について陽性の細胞および全細胞数を計数した。Ki67染色から得た結果は、アルギニンを含まないウィリアムズ培地では、細胞が最初の1週間の間に十分に増殖するが、増殖率は長期間の後に低下することを示し、これは、胎児肝臓細胞はアルギニンを含まないウィリアムズ培地では長期間生存しなかったという観察結果と一致する。このことは、感染が起こった場合には、十分に増殖した細胞、かつ、細胞の大部分は、肝細胞または肝細胞様細胞であるということを示唆する。アルギニンを含まない培地は、線維芽細胞およびその他の非実質性肝臓細胞の増殖を抑制し、これによって、導入遺伝子を用いる肝細胞の感染の成功が可能となる。感染混合集団の選択には、材料および方法において記載したとおり、非感染ヒト胎児肝臓細胞でネオマイシンの力価を実施した。細胞を、0〜900μg/培地1mlの範囲のネオマイシンに12日間、6ウェルプレートにおいて3連で曝露した。用いた250μm/ml濃度で2週間選抜の間、肝細胞は生存する。導入遺伝子についてのすべてのPCR結果は陽性であり、非感染細胞の大部分は選抜の間に死滅した。
【0063】
ヒト肝細胞クローンの結果
選抜後に、細胞を、組織培養プラスチックウェアに分散細胞数でプレーティングした後に、ヒト胎児肝細胞のクローンが得られた。50より多いクローンが得られた。20より多いクローンに由来する初期の継代から得られた肝細胞を、液体窒素中で凍結した。いくつかの凍結したバイアルを解凍し、さらなる組織培養およびトリパンブルー排出に用いたところ、凍結/解凍後に70〜95%の生存率を示した。PCRによって、試験したすべてのクローンにおいてc−myc−ER構築物が組み込まれていることが確認された。アルブミンについて染色したすべてのクローン(19クローン)が、陽性染色を示した。19クローンをAFPについて染色したが、染色が陽性であったものはなかった。8クローンをタックマンを用いてcyp3A7およびcyp3A4の発現について分析した。85日培養した後にこれらのクローンに由来する細胞ペレットを回収した。結果をヒトゲノムDNAに対しておよび内部ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して標準化した。cyp3A7は、85日培養した後もすべてのクローンにおいて依然存在していた。c−myc染色により、c−mycは、PCRを用いて不死化構築物の組み込みが確認された場合には、細胞株で発現されることが示された。テロメラーゼ発現アッセイにより、0.5〜10μMの4−OHTにおいて肝細胞を培養することは、テロメラーゼ発現をアップレギュレートし、したがって、不死化に適していることが示された。
【実施例2】
【0064】
材料および方法
特に断りのない限り、すべての化学物質はシグマ(Sigma)(英国、ドーセット州)から購入した。
【0065】
組織培養
細胞はミレニアム(millennium)インキュベーターにおいて5%CO中、37℃で増殖させた。培地は1週間につき3回交換し、細胞は約90%コンフルエントの時点で継代した。
培地
肝臓組織およびクローンの培養には以下の種類の培地を用いた。培地は1Lフィルターユニット(ナルゲン(Nalgene)、米国、ニューヨーク)を用いて濾過滅菌し、使用前に37℃に予温した。
培地A:「ダルベッコ改変イーグル培地」(DMEM)(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)、10%胎児ウシ血清(FBS)(ハイクローン・ペルビオ・サイエンス(Hyclone Perbio Science)、米国、ユタ州)、ゲンタマイシン(50mg/ml)、L−グルタミン(2mM)および上皮成長因子(EGF)(20ng/ml)。
培地B:アルギニンを含まないウィリアムズE標準(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー):DMEM(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)(1:1)、10%FBS、EGF(20ng/ml)。
培地C:DMEM(+グルタマックス(Glutamax))(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)、10%FBS、1×非必須アミノ酸。
培地D:DMEM(+グルタマックス(Glutamax))、10%FBS、L−グルタミン、2mMおよびペニシリン−ストレプトマイシン(100IU/ml)(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)。
培地E:アルギニンを含まないウィリアムズE標準培地、炭酸水素ナトリウム(2.2g/l)、透析FBS(10%)(ギブコ(Gibco)26400−044)、L−グルタミン(2mM)、インスリン(100nM)、ペニシリン−ストレプトマイシン100IU/ml、L−オルニチン(0.4mM)、ヒドロコルチゾン(5.5mM)、EGF(20ng/ml)。
【0066】
コラーゲンコーティング
肝臓組織およびクローンは、コラーゲンコーティングした組織培養プラスチックウェア上で維持した。カーフスキン由来のコラーゲン溶液を、滅菌水で終濃度8mg/cmに希釈した。コラーゲン溶液とともに最少2時間インキュベートした後、フラスコを滅菌ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)で2回リンスした。
【0067】
肝臓起源および処理
中断された妊娠の後にヒト胎児肝臓を集めるために、地方NHS倫理委員会の承認を得た。
【0068】
肝臓組織は、発送後、RPMI培地中の湿った氷上に受け取った。肝臓を4℃のカルシウムを含まないHEPES pH7.2(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)で2回、およびエチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EGTA)(0.5mM)を含む4℃のカルシウムを含まないHEPES pH7.2で1回洗浄した。肝臓をメスで刻み、37℃の、コラゲナーゼA(0.05%)(ロシュ(Roche)、英国、イーストサセックス州)、DNアーゼI(0.005%)(ロシュ(Roche) 、英国、イーストサセックス州)、ヒラロニダーゼ(hylaronidase))(0.0125%)およびディスパーゼIl(0.025%)(ロシュ(Roche)、英国、イーストサセックス州)を含有し、5mM 塩化カルシウムを補給した、カルシウムを含まないHBSSからなる酵素溶液中に20分間入れた。解離した肝臓を、滅菌ナイロンメッシュを通して濾過し、4℃の培地Aに回収した。いくらかの小さな血液細胞およびその他の細胞を除去するために、細胞懸濁液を50gで3回遠心分離し、各回で上清を廃棄した。細胞数および生存率カウントは、血球計算器を用いて実施した。次いで、細胞を、培地A中、プレコーティングした組織培養プラスチックウェア上にプレーティングし、37℃で4時間接着させた。この後、細胞を37℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(インビトロジェン(Invitrogen)、英国、ペーズリー)で1回洗浄して細片および接着していない細胞を除去した。次いで、培地Bを細胞に加えた。
【0069】
継代
細胞を、37℃のPBSで1回リンスし、細胞をプラスチックから剥離させるために、1×トリプシン−ヴェルセンミックス(バイオ・ウィテカー(Bio Whittaker)、米国、メイン州)を最大10分間加えた。等容積の培地を適用してトリプシンを中和し、500gで5分間遠心分離するために細胞懸濁液をファルコンチューブに移した。上清を除去し、細胞を培地に再懸濁させ、細胞カウントを血球計算器を用いて実施した。細胞をコラーゲンコーティングしたプラスチックウェアにcmあたり8,000個細胞の密度で播種した。
【0070】
細胞の凍結および解凍
細胞を凍結するために、細胞ペレットを、クリオセーフ(cryo-safe)バイアル(ヌンク(Nunc)、米国、ニューヨーク)に入れた、900mlの培地および100mlのクリオシュア(cryosure)−ジメチルスルホキシド(DMSO)(クエスト・バイオメディカル(Quest Biomedical)、英国、ウェストミッドランド州)の混合物に再懸濁した。この細胞を、「ミスター・フロスティー(Mister Frosty)」凍結保存凍結容器(ナルジェン(Nalgene)、米国、ニューヨーク)中、−80℃に24時間入れ、温度を約5℃/分で低下させた。24時間後、バイアルを長期保存のために液体窒素中に入れた。
【0071】
細胞を解凍するためには、選択したバイアルを液体窒素から回収し、解凍するまで37℃の水浴中に入れた。細胞懸濁液を10mlの培地と混合し、500gで5分間遠心分離することによってペレットを回収した。ペレットを新鮮培地に再懸濁し、細胞数および生存率カウントを実施し、細胞をコラーゲンコーティングしたプラスチックウェア上に播種した。
【0072】
ウイルスの回収
クローンFly−C042由来のウイルス産生細胞を、培地Dを用い、175cmのフラスコ中でコンフルエンスまで培養した。コンフルエントになると、フラスコをPBSで3回リンスし、その後、フラスコに培地E(175cmのフラスコあたり18ml)を加え、8時間インキュベートした。培地を回収し、0.45mmのフィルター(サルトリウス(Sartorius)、英国、サリー州)を用いて濾過し、5mlのアリコートに分け、−80℃で保存するために液体窒素中でスナップ凍結した。
【0073】
感染および選抜
細胞を、10cmのディッシュに200個細胞/ディッシュ〜100%コンフルエントの範囲の濃度で播種した。ヒト胎児肝臓を解離した3日後、細胞をPBSで1回洗浄し、臭化ヘキサジメトリン(8mg/ml)を加えた5mlのウイルス含有培地に8時間曝露した。このインキュベーション期間の後に、培地Bを一晩加え、翌日感染を繰り返した。感染後、すべての培地に4−ヒドロキシタモキシフェン(OHT)を0.1〜1.0mMの濃度で加えた。
【0074】
感染の2日後、細胞を15cmのディッシュに継代し、48時間後の選抜のための準備で、ディッシュあたり1,000個細胞で播種した。うまく感染し、c−myc−ER構築物を発現する細胞は、ネオマイシン(ジェネテシンおよびG418としても知られる)に対して耐性である。ネオマイシンの力価を実施して、非感染細胞が排除されるが、感染細胞は排除されないよう使用するための正確な濃度を求めた。力価の結果に基づいて、培地B中、250mg/mlのネオマイシンに2週間曝露することによって細胞を選抜した。
【0075】
サイクワント(Cyquant)増殖アッセイ
サイクワント(Cyquant)細胞増殖アッセイ(モレキュラー・プローブス(Molecular Probes)、英国、ベーズリー)を用いて増殖率を評価した。細胞をマルチウェルプレートまたは25cmのフラスコで増殖させ、製造業者の使用説明書に従って実験を実施した。
【0076】
免疫細胞化学
細胞株の初期評価のために、免疫細胞化学を用いた。この方法は定量化を可能にするものではないが、肝臓マーカーの存在について有用な情報を提供する。肝臓マーカーの陽性対照としてヒト肝細胞腫細胞株HuH7を用い、myc−不死化神経幹細胞株(197VM)細胞を陰性対照として用いた。
【0077】
すべての染色は、以下の方法を用いてマルチウェルプレート中で実施した。培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、その後、4%パラホルムアルデヒドを用い、室温で15分間固定した。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、その後、PBS中0.1%triton x−100を用い、15分間透過性にした。細胞をPBSでもう1度洗浄し、次いで、PBS中10%正常ヤギ血清(NGS)(ベクター・ラボラトリーズ(Vector Laboratories)、米国、カリフォルニア州)中で1時間ブロッキングした。一次抗体を、1%NGS/PBS中、室温で1時間適用した。細胞をPBSで3回洗浄し、次いで、二次抗体に、1%NGS/PBS中、室温で1時間曝露した。細胞をPBSで3回洗浄し、ヘキスト、DNAを染色する色素を室温で2分間加えた(PBS中1:25,000)。細胞をPBSでさらに3回洗浄し、最終洗浄液中に静置した。分析は蛍光顕微鏡(ライカ(Leica) DMRA)を用いて実施した。二次抗体は約488nmの波長で励起され、約525nmで発光(緑色発光)を生じたのに対し、ヘキストは約350nmで励起され、約425nmで発光を生じた(青色発光)。
【0078】
タックマン
96ウェル光学反応プレート(アプライドバイオシステムズ(Applied biosystems)、米国、カリフォルニア州)を用い、標準タックマンプロトコールに従った。すべてのプローブおよびプライマーは、MWG−バイオテック(Biotech)、ドイツ、エーバースベルク(Ebersberg)によって供給されたものであった(表3参照のこと)。すべてのプローブは、3’TAMRAおよび5’FAMで標識した。反応プレートを光学用接着性カバー(アプライドバイオシステムズ(Applied biosystems)、米国、カリフォルニア州)で密閉し、500gで1分間遠心分離し、その後、タックマン機器(ABIプリズム7000配列検出システム)に装着し、結果をABIプリズム7000 SDSソフトウェアを用いて分析した。
【0079】
【表4】

【0080】
結果
解離、感染およびクローン選抜
記載したとおりに、組織を15週の妊娠期間で受け取り、解離させ、感染させた。2週間選抜した後、個々のクローンを採取し、増殖させた。LIV0A07と名づけたクローンが見込みのある特徴を示し、さらなる特性決定に付した。それは、老化せずに長期間培養(30継代を超える)で維持された。
【0081】
組織は、選抜および初期のクローン増殖の間、0.1mM 4−OHTを補給した培地B中で維持し、次いで、クローン継代3の後にLIV0A07を、1.0mM 4−OHTを補給した培地Cに入れた。
【0082】
サイクワント(Cyquant)増殖アッセイ
サイクワント(Cyquant)細胞増殖アッセイを用いて増殖率を評価し、0〜1.0mM 4−OHT中でLIV0A07の増殖を5日間かけて比較した。
【0083】
0および0.1mM 4−OHTでは、細胞成長においてわずかな増殖しか観察されなかった。5日のアッセイにかけて、0.5および1.0mM 4−OHTの存在下での細胞成長はより大きな程度に拡大したが、1.0mM 4−OHTは、細胞に対してわずかに毒性である(播種後初期の緩慢な増殖によって明らかにされる)可能性があった。したがって、LIV0A07は、4−OHT依存性増殖を示し、最適濃度は、培地中0.5〜1.0mM 4−OHTである。
【0084】
免疫細胞化学
陽性対照細胞株、HuH7は、アルブミンおよびサイトケラチン18(CK−18)について陽性であり、197VM細胞はこれらのマーカーについて陰性であった。
【0085】
c−mycER構築物を含有する細胞では、4−OHTの添加が増殖を促進し、4−OHTの除去が、成熟表現型を示すための細胞の分化を促進する。LIV0A07は、肝細胞マーカーアルブミンおよびCK−18について陽性染色を示した。染色は、分化した培養物(4−OHTの不在下で48時間増殖したもの)においてわずかに強いようであった。
【0086】
抗線維芽細胞抗体を用いた場合には、いずれの細胞種についても陽性染色は観察されなかった。この抗体は、プロリル−4−ヒドロラーゼのb−サブユニットと、およびジスルフィドイソメラーゼと交差反応する。
【0087】
c−mycERのためのPCR
プライマー対c−myc1585SおよびM−ER 1131ASを用いて実施したPCRによって、LIV0A07におけるc−mycER構築物の発現が確認された。
【0088】
タックマン
タックマンを用いるLIV0A07 mRNAの分析によって、シトクロムP450 3A4および3A7酵素の発現が、これらの条件下では、対照細胞株、HuH7において見られるものよりも低レベルではあるが実証された。HuH7レベルは、LIV0A07について見られる最大よりも約10倍高かった。
【0089】
LIV0A07の分化した培養物(4−OHTの不在下で72時間増殖したもの)においてCYP3A4 mRNA発現の特異的増加が観察された。レベルは、分化していない培養物と比較して分化したLIV0A07において約15倍高く、HuH7細胞に由来するサンプルでは、4−OHTの効果は観察されなかった。
【0090】
CYP3A7レベルは、LIV0A07サンプルにおけるCYP3A4と同様の、分化によって誘導される増加を示さなかったが、この酵素のレベルは、播種後経時的に増加した。最低レベルは、播種後72時間で検出され、最高は1週間で検出された。この結果は、本発明の細胞が増加したcytoP450レベルを有し、したがって、より近似した普通の肝細胞であることを示す。この実施例は、複数の細胞世代(30継代を超える)にわたって維持される、肝細胞機能マーカーを発現する、クローンの、条件的に不死化された細胞株を、ヒト肝細胞から構築できるということを実証する。異なる表現型プロフィールを有するその他の細胞株が構築された。
【0091】
参照文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
mycファミリーの癌タンパク質およびエストロゲン受容体、またはそれらの機能的断片を含む融合タンパク質を、シングルポリペプチドとして含む哺乳動物肝細胞。
【請求項2】
癌タンパク質がc−mycである、請求項1に記載の肝細胞。
【請求項3】
培養培地中の、請求項1または請求項2に記載の肝細胞。
【請求項4】
ヒト肝細胞である、請求項1−3のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項5】
融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1−4のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項6】
ポリヌクレオチドがゲノムに組み込まれている、請求項5に記載の肝細胞。
【請求項7】
融合タンパク質がマウスエストロゲン受容体およびヒトc−mycタンパク質を含む、請求項1−6のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項8】
エストロゲン受容体が17β−エストラジオールに対する高親和性結合を妨げる変異を含む、請求項1−7のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項9】
配列番号1として記載されるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1−8のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項10】
インビボで肝細胞に特徴的なマーカーを発現する、請求項1−9のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項11】
マーカーが、シトクロムP450ファミリーのメンバー、アルブミン、α−フェトプロテインおよびサイトケラチン−18を含む、請求項10に記載の肝細胞。
【請求項12】
肝細胞が、エストロゲン受容体のリガンドと接触した場合に条件的に不死化される、請求項1−11のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項13】
リガンドが4−ヒドロキシタモキシフェンである、請求項12に記載の肝細胞。
【請求項14】
肝細胞を条件的に不死化する方法であって、
(i)肝細胞において、シングルポリペプチド鎖として発現される、請求項1、2、7または8のいずれかに記載される融合タンパク質を発現させ、
(ii)工程(i)で形成された肝細胞を、エストロゲン受容体のリガンドと接触させ、このことにより肝細胞を条件的に不死化する、
の各工程を含む方法。
【請求項15】
薬物として使用するための化合物の適合性をインビトロで評価する方法であって、
(i)請求項1から13のいずれかに記載の肝細胞を、潜在的薬物化合物と接触させ、
(ii)肝細胞の応答を測定し、このことにより肝細胞に対する化合物の効果を判定して、薬物として使用するための化合物の適合性を評価する、
の各工程を含む方法。
【請求項16】
医薬として使用するための、請求項1から13のいずれかに記載の肝細胞。
【請求項17】
肝臓の障害を治療するための医薬の製造のための、請求項1から13のいずれかに記載の肝細胞の使用。
【請求項18】
障害が癌、肝硬変およびすべての形の肝炎を含む、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
請求項1から13に記載の少なくとも1種の肝細胞を含む、肝臓補助装置。



【公表番号】特表2008−513002(P2008−513002A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531840(P2007−531840)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003631
【国際公開番号】WO2006/032876
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504164608)リニューロン・リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ReNeuron Limited
【Fターム(参考)】