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Merの診断用および治療用の作用薬
説明

Merの診断用および治療用の作用薬

本発明は、Merの診断用および診断用および治療用の作用薬を提供する。上記作用薬は、白血病、リンパ腫および凝固障害を含む種々の疾患の診断および処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、Mer膜貫通レセプターチロシンキナーゼが関与する疾患の診断および治療に有用な組成物に関するものである。
【0002】
〔発明の背景〕
チロシンキナーゼは、正常な細胞増殖および細胞分化において重要な役割を担っている。チロシンキナーゼ活性の調節解除(deregulation)によって、ヒトの癌の進行につながる細胞の悪性転換が引き起こされ得る。Merは、トリレトロウイルス遺伝子v−eykのヒトにおける相同物であると予想される膜貫通レセプターチロシンキナーゼである。トリレトロウイルス遺伝子v−eykは、トリにおいて様々な癌の原因となる遺伝子である。ヒトMerおよびマウスMerの遺伝子およびcDNAの配列は決定され、かつ特定されている。また、Merの発現は細胞株および組織において確認されている(Grahamら、Cell Growth and Differentiation,1994,5:647−657;Grahamら、Oncogene,1995,10:2349−2359;および米国特許5,585,269号)。Merレセプターチロシンキナーゼは、ヒトのBリンパ芽球細胞株から最初にクローニングされた。Merレセプターチロシンキナーゼは、造血細胞株、上皮細胞株および間葉細胞株の細胞に発現している。興味深いことに、MerのRNA転写物が多くのTリンパ芽球細胞株およびBリンパ芽球細胞株において発見されている一方で、Mer RNAは正常なヒト胸腺細胞およびリンパ球、あるいはPMA/PHA刺激リンパ球において発見されていない。Merは、細胞外部分の2つの免疫グロブリンドメインおよび2つのフィブロネクチンIIIドメイン、ならびに細胞内部分のチロシンキナーゼドメインから構成されている(Grahamらの前述の文献(1994)およびGrahamらの前述の文献(1995))。ヒトMerは変形するがアポトーシスしないことが知られており、Merの過剰発現は、種々のヒトの癌を引き起こしている。このような癌には、B細胞およびT細胞白血病、リンパ腫、下垂体線種、胃癌および横紋筋肉腫が含まれる。
【0003】
Merは2つの異なるレセプターチロシンキナーゼAxlおよびTyro−3と関係している。Mer、AxlおよびTyro−3は、全て造血細胞株、上皮細胞株および間葉細胞株の細胞に発現している。これらのタンパク質のそれぞれが、細胞をトランスフォーム(transform)する能力を有していることがin vitroにおいて確認されている。Merの過剰発現によってNIH 3T3細胞およびBa/F3前リンパ球の悪性転換が引き起こされる(Lingら、Mol.Cell Bio.15:6582−6592(1995)およびGeorgescuら、Mol.Cell Bio.19:1171−1181(1999))。Axlは本来、初期のヒト骨髄性白血病由来のトランスフォーミング遺伝子によってコードされるタンパク質として同定された。Axlは、種々の腫瘍細胞において過剰発現しており、NIH 3T3線維芽細胞を悪性転換する(O’Bryanら、Mol.Cell Bio.11:5016−5031(1991))。Tyro−3は、哺乳類の腫瘍において高いレベルに発現している(Taylorら、J.Biol.Chem.,270:6872−6880(1995))。そして、Tyro−3の過剰発現によって、線維芽細胞の成長の悪性転換が引き起こされる(Laiら、Oncogene 9:2567−2578(1995))。
【0004】
Merレセプターチロシンキナーゼは、通常、造血細胞系のうちの単核白血球/マクロファージ、樹状細胞、巨核球および血小板に発現している。MerのRNA転写物またはタンパク質は、リンパ球または胸腺細胞において検出されていない。しかしながら、急性リンパ芽球性白血病細胞株および急性リンパ芽球性白血病患者より採取した試料中に、Mer RNA転写物およびタンパク質が存在していた(Grahamらの前述の文献(1994)、Grahamらの前述の文献(1995)、および米国特許5,585,269号)。
【0005】
Mer、AxlおよびTyro−3のすべては、リガンドGas6によって活性化された。Gas6は、構造的に、抗凝血タンパク質Cの補因子であるプロテインSに類似している。そして、Gas6は、プロテイン Sに対して48%のタンパク質同一性を示している。Gas6は凝血における役割を担っている(Angelillo−Scherrerら、Nature Medicine 7:215−21(2002))。Gas6抗体は、野生型マウスにおける致命的な血栓塞栓症予防するために用いられ得る(Angelillo−Scherrerら(2002))。不活性化Gas6および/またはMer遺伝子を有するマウスは、静脈血栓症および動脈血栓症を妨げる血小板機能障害を有している。これらの遺伝子のノックアウトマウスは、致死的なコラーゲン/エピネフリン誘因血栓塞栓症から保護されており、in vivoにおいて塩化鉄誘因血栓症が抑制された。Gas6は、血小板凝集および公知のアゴニストに対する血小板分泌反応を増幅する(Chenら、Aterioscler.Thromb.Vasc.Biol.24:1118−1123(2004))。Gas6に起因する血小板機能障害には、Mer、AxlまたはTyro−3が介在していると思われる。それゆえに、Merレセプターチロシンキナーゼが、鬱血およびヒト癌の進行に重要な役割を担っている可能性がある。
【0006】
種々の様式の血栓症および血栓症が関係する合併症は、世界の病態および死亡の主要な原因の典型的なものである。悪性腫瘍細胞成長または腫瘍(癌)もまた、世界的に主要な死因である。心臓疾患および腫瘍性疾患の効果的な治療法の開発が、研究の主要な課題である。このような疾患を治療および予防するための種々の革新的な方法が提案されているが、これらの疾患は継続して高い死亡率を有し、かつ治療するのが困難であるため、従来の治療法に比較的鈍感であるかもしれない。それゆえに当該分野において、これらの疾患を標的とし、これらの疾患の予防または治療する効果的な新規の治療法が引き続き必要とされている。
【0007】
〔発明の要旨〕
本発明の1つの形態は、白血病またはリンパ腫の診断方法に関する。上記方法は、個体からリンパ球におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)の異常な糖修飾体を検出する工程を包含する。上記方法において、個体におけるリンパ球によるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの異常な糖修飾体の発現は、白血病またはリンパ腫を示している。上記個体としては、哺乳類が好ましく、ヒトがさらに好ましい。
【0008】
1つの局面において、上記方法は、以下の群:約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体からなる群から選択されたMerの異常な糖修飾体を検出する工程を包含している。1つの局面において、上記白血病はリンパ芽球性白血病であり、上記方法は、約170kDから約190kDの間の分子量を有する、または約135kDから約140kDの間の分子量を有する、少なくとも1つのMerの糖修飾体を検出することを含む。1つの局面において、約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体が検出され、上記方法は細胞によって発現された上記Merの糖修飾体の量を検出する工程を、さらに包含する。ここで、上記細胞によってMerの発現およびCD3発現の欠如は、上記個体にとって予後不良を示す。1つの局面において、上記白血病は、骨髄性の白血病、またはリンパ腫であり、上記方法は、約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体の検出を含んでいる。
【0009】
本発明の上記診断方法において、Merの糖修飾体を検出する工程は、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼと選択的に結合する抗体、または上記抗体の抗原結合断片に試料を接触させることを含む。
【0010】
本発明の他の形態は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの特定の糖修飾体と選択的に結合するモノクローナル抗体の製造方法に関する。上記方法は、以下の工程:抗体産生細胞が産生されるような、糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを用いて、ヒトではない哺乳動物を免疫化する工程;上記抗体産生細胞を取り出す、および不死化する工程;所望の抗体を産生している不死化された上記抗体産生細胞を選択する工程;ならびに選択されかつクローン化された、不死化された上記抗体産生細胞によって産生された抗体を単離する工程を包含する。ここで、哺乳動物を免疫化する上記工程において、上記糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの全長が有する少なくとも細胞外部分であり、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの全長は、約195kD未満の分子量を有している。1つの局面において、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、以下の群:約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体からなる群から選択される。他の局面において、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、血小板、リンパ芽球性の白血病細胞、および骨髄性白血病細胞からなる群から選択された細胞種によって発現される。この形態には、モノクローナル抗体を含む、上記方法によって製造されたあらゆる抗体が含まれる。
【0011】
本発明のさらに他の形態は、糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼと選択的に結合する単離された抗体に関する。上記抗体は、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼのあらゆる糖修飾体を検出する。
【0012】
本発明の他の形態は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体(Merの糖修飾体)と選択的に結合する単離された抗体に関する。ここで、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体は、以下の群:約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体から選択される。
【0013】
1つの局面において、上記抗体の内のいずれもが、以下の群:約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体から選択されたMerの糖修飾体のすべてと選択的に結合する。他の局面において、上記抗体は、上記Merの糖修飾体の内の1つと選択的に結合し、かつ上記Merの糖修飾体の内、選択的に結合する上記1つを除いたものとは選択的に結合しない。
【0014】
本発明の他の形態は、約195kD未満の分子量を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体(Merの糖修飾体)と選択的に結合する単離された抗体に関する。1つの局面において、上記Merの糖修飾体は、約170kDから約190kDの間の、または約160kD未満の分子量を有している。他の局面において、上記Merの糖修飾体は、約170kDから約190kDの間の、または約135kDから約140kDの間の分子量を有している。さらに他の局面において、上記Merの糖修飾体は、約190kDから約195kDの間の分子量を有している。さらに他の局面において、上記抗体は、白血病細胞またはリンパ腫細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する。さらに他の局面において、上記抗体は、リンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する。さらに他の局面において、上記抗体は、骨髄性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する。
【0015】
本発明の他の形態は、ここまでに説明した抗体の内のいずれかを含有する組成物に関する。1つの局面において、上記組成物は、薬学的に受容可能な担体を、さらに含有する。
【0016】
本発明の他の形態は、白血病またはリンパ腫の診断用の組成物には、上記抗体のいずれかの利用を含む。
【0017】
本発明のさらに他の形態は、個体における癌の処置をするための薬学的製剤における、上記抗体のいずれかの利用を含む。
【0018】
本発明の他の形態は、Merの糖修飾体の細胞表面における発現が陽性である個体における癌を処置する方法に関する。上記方法は、上記Merの糖修飾体と選択的に結合し、かつMerの糖修飾体の活性を抑制する抗体を個体に投与する工程を包含する。1つの局面において、上記癌は白血病またはリンパ腫である。他の局面において、上記Merの糖修飾体は、以下の群:約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;ならびに約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体から選択される。1つの局面において、個体に投与する抗体は、ここまでに説明した抗体のいずれかである。
【0019】
本発明のさらに他の形態は、個体における凝固障害を処置または予防する方法に関する。上記方法は、約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体と選択的に結合し、かつ上記Merの糖修飾体の活性を抑制する抗体の薬学的に効果的な量を個体に投与する工程を包含する。
【0020】
本発明の他の形態は、個体における凝固障害を処置または予防する方法に関する。上記方法は、可溶性を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体の効果的な量を投与する工程を包含し、可溶性を有する上記Merの糖修飾体は、血小板において存在するMerの糖修飾体と同様の方法において糖修飾されている。1つの局面において、可溶性を有する上記Merの糖修飾体は、約165kDから約170kDの間の分子量を有している。
【0021】
ここまでに説明した本発明の形態のいずれにおいても、上記凝固障害は、これに限定されるわけではないが、血栓形成傾向を含む。
【0022】
本発明の他の形態は、単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)タンパク質に関する。ここで、上記Merタンパク質は、糖修飾されており、Merリガンドと結合し、195kDの分子量を有する全長のMerの糖修飾体または上記Merの糖修飾体の相同物の可溶性部分である。1つの局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、血小板によって発現されたMerの糖修飾体である。他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、約165kDから約170kDまでの分子量を有するMerの糖修飾体である。他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、約170kDから190kDの間の、または約160kD未満の分子量を有するMerの糖修飾体である。さらに他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、白血病細胞またはリンパ腫細胞によって発現されたMerの糖修飾体である。さらに他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、リンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である。この局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、約170kDからが約190kDの間の、または約135kDから約149kDの間の分子量を有していてもよい。他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、骨髄性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である。この局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、約190kDから約195kDの間の分子量を有していてもよい。さらに他の局面において、全長の上記Merの糖修飾体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の少なくとも約90%と一致するアミノ酸配列を含んでいる。他の局面において、上記可溶性部分は、Merリガンドと結合する全長の上記Merの糖修飾体の細胞外部分である。上記Merリガンドは、これに限定されるわけではないが、Gas6およびプロテイン Sを含む。さらに他の局面において、上記単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、プロテイン Sと結合し、かつGas6と結合しない。他の局面において、上記単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、Gas6よりも高い親和性を有するプロテイン Sと結合する。
【0023】
本発明のさらに他の形態は、非相同のタンパク質と連結された、ここまでに説明した単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを含む、融合タンパク質に関する。1つの局面において、上記非相同のタンパク質が免疫グロブリンのFc断片である。
【0024】
本発明の他の形態は、薬学的製剤における、ここまでに説明した単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、または上記融合タンパク質の利用に関する。
【0025】
本発明の他の形態は、癌を処置するための薬学的製剤における、ここまでに説明した単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、または上記融合タンパク質のある種の利用に関する。
【0026】
本発明のさらにその他の形態は、凝固障害を処置するための薬学的製剤における、ここまでに説明した単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、または上記融合タンパク質のある種の利用に関する。
【0027】
本発明の他の形態は、癌細胞におけるMerの糖修飾体の表面発現が陽性である個体における癌の処置方法に関する。上記方法は、ここまでにおいて説明したMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを含む、可溶化型のMerの糖修飾体、または可溶化型の上記Merの糖修飾体を含む融合タンパク質を個体に投与する工程を包含する。
【0028】
本発明のさらに他の形態は、個体における凝固障害を処置または予防する方法に関する。上記方法は、約165kDから約170kDの間の分子量を有する可溶化型のMerの糖修飾体、または可溶化型の上記Merの糖修飾体を含む融合タンパク質を個体に投与する工程を包含する。
【0029】
本発明の他の形態は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの切断を調節する作用薬を個体に投与する工程を包含する個体における凝固障害を処置または予防する方法に関する。1つの局面において、上記作用薬は、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの切断を抑制する。ここで、上記作用薬は、TACE抑制因子を含むが、これに限定されるわけではない。1つの局面において、上記作用薬は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの上記細胞外ドメインを切断する。ここで、上記作用薬は、TACEのような金属プロテアーゼを含むが、これに限定されるわけではない。
【0030】
ここまでに説明した凝固障害に関する方法の1つの局面において、上記障害は血栓形成傾向である。
【0031】
本発明のさらに他の形態は、血液凝固を調節する化合物のスクリーニング方法に関する。上記方法は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを発現する細胞に推定される調節性の化合物を接触させる工程、および上記化合物と接触しない細胞と比較して、培養液におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外断片を切断する化合物を検出する工程を包含する。1つの局面において、上記細胞は、血小板である。1つの局面において、上記化合物は、切断作用薬である。
【0032】
本発明の他の形態は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの特定の糖修飾体の活性を調節する化合物をスクリーニングする方法に関する。上記方法は、以下の群:約195kDから約210kDの間の分子量を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)の糖修飾体;および約195kDの分子量を有するMerの糖修飾体から選択されるMerと推定される調節性の化合物を接触させる工程、ならびに上記Merの糖修飾体と選択的に結合する化合物を検出する工程を包含する。1つの局面において、上記Merの糖修飾体は、以下の群:約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体から選択される。1つの局面において、上記Merの糖修飾体は、約170kDから約195kDの間の、または約160kD未満の分子量を有する。他の局面において、上記Merの糖修飾体は、リンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である。この局面において、上記Merの糖修飾体は、約170kDから約190kDの間の分子量、または約135kDから約140kDの間の分子量を有する。他の局面において、上記Merの糖修飾体は、骨髄性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である。この局面において、上記Merの糖修飾体は、約190kDから約195kDの間の分子量を有する。
【0033】
上述のスクリーニング方法のいずれかにおいても、1つの局面において、Merと結合する化合物を検出する上記工程が、1つのMerの糖修飾体と結合し、かつ他のMerの糖修飾体と結合しないことを検出することを含む。他の局面において、上記Merの糖修飾体は、細胞によって発現されている。さらに他の局面において、上記Merの糖修飾体は可溶性のMerの糖修飾体である。さらに他の局面において、上記スクリーニング方法は、上記化合物が細胞によって発現されたMerとMerリガンドとの結合を抑制するか否かを検出する工程を、さらに包含する。例えば、Merリガンドは、Gas6およびプロテイン Sを含んでいるが、これらに限定されるものではない。他の局面において、上記方法は、細胞によって発現されたMerとプロテイン Sとの結合を抑制し、かつ細胞によって発現されたMerに対してGas6の結合を抑制しない化合物を検出する工程を、さらに包含する。1つの局面において、上記方法は、上記化合物が細胞によって発現されたMerの活性を抑制するか否かを検出する工程を、さらに包含する。他の局面において、上記化合物は、小さい分子、核酸、タンパク質、ペプチドおよび抗体からなる群から選択される。他の局面において、上記化合物は、可溶性のMerタンパク質である。さらに他の局面において、上記Merタンパク質は、Merと化合物を検出する上記工程におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼとは異なる糖修飾体である。
【0034】
〔本発明の詳細な説明〕
本発明は、通常、固有の糖修飾型のMerは、異なる細胞種によって発現されるという本発明者らの発見に関する。糖修飾型の上記Merは、またc−Mer、Merチロシンキナーゼ、またはMer受容体チロシンキナーゼとして知られている。より詳細には、単核細胞およびマクロファージによって発現されたMerと血小板から発現されたMerは、受容体の細胞外ドメインの糖修飾に基づいて区別され、さらに、付加的な固有のMerの糖修飾体が異なる種類の腫瘍細胞によって発現される、ということを本発明者らは発見している。例えば、白血病およびリンパ腫を含むある種の癌においてMerの異所的な発現に加え、癌細胞(例えば、白血病細胞およびリンパ腫細胞など)におけるMerの細胞外ドメインは、通常の血小板、ならびに単核細胞およびマクロファージに見られるMerに存在する糖修飾とは異なる様式に糖修飾されている。さらに、異なる種類の白血病細胞は、異なるMerの糖修飾体を発現する。細胞種に特異的に関連して、固有のMerの糖修飾体が多様に存在しているという発見は、診断および治療に関して重大な可能性を有している。例えば、Merの特定の糖修飾体は、他の白血病患者およびリンパ腫患者とは、別に分類されるべき、危険性の高い白血病患者およびリンパ腫患者を同定するためのマーカーとして用いてもよい。さらに、治療方針は、特定のMerの糖修飾体および、したがって、特定の細胞種または特定種類の腫瘍を標的にするように計画されてもよい。
【0035】
本明細書において説明しているように、種々の細胞種において存在する固有のMerの糖修飾体に加えて、本発明者らは、また、(例えば、Mer遺伝子の変異、欠損または選択的スプライシングの結果生じる)白血病患者の試料においてバリアント(変異またはMerタンパク質の改変)を検出している。そのようなMer変異体またはスプライシングバリアント(まとめて、バリアントと呼ぶ)は、また本明細書に説明する種々の方法に用いる付加的な診断薬および治療薬を設計するために用いてもよい。
【0036】
したがって、診断用または予後判定用のマーカーとしてのMerの利用に加えて、本発明者らによって発見された固有のMerの糖修飾体およびMerバリアントは、癌または血栓症に関する薬剤開発用および/または生体内における処置用の有用な治療標的である。例えば、特定の細胞種によって発現された糖修飾体の特定Merタンパク質またはMerの直接の下流に存在するタンパク質を標的としている小分子の抑制因子または抑制剤は、このような疾患用の治療計画を運用してもよく、上記治療計画に使用してもよい。上記Merの糖修飾体は、さらに、固有に糖修飾された可溶性のMer(sMer)タンパク質、融合タンパク質およびキメラタンパク質のような、診断方法または治療方法に使用することができる新規作用薬の開発に使用されてもよい。例えば、本発明は、特定の細胞によって内因的に発現されたMerタンパク質の競合的な抑制因子であるMerタンパク質の生成および利用を包含する。
【0037】
また、本発明は、白血病細胞によって発現された異常な糖修飾体および異常な上記糖修飾体内にあるタンパク質のバリアントのような、Merタンパク質の異なる糖修飾体およびタンパク質のバリアントを認識することができる新規の抗体、または上記抗体の抗原結合断片に関する。また、上記抗体は、診断薬および/または治療薬として有用である。本発明の他の形態は、当業者にとっては、本明細書に与えられている記載から明らかなことであろう。
【0038】
1.Merの糖修飾体
本発明の1つの形態は、したがって、細胞種に特異的な固有のMerの糖修飾体を認識すること、ならびに新規の診断薬および治療薬(例えば、抗体、および可溶性のMerタンパク質など)の設計への上記糖修飾体の利用に関する。上記糖修飾体の利用とは、上記糖修飾体そのものと同様に、種々のMerの糖修飾体の発見を巧く利用する上記診断薬および上記治療薬を使用する方法に関する。より詳細には、本発明者らは、Merタンパク質の種々の異なる糖修飾された形態が、細胞種依存的な様式にて細胞によって発現されることを発見している。そのような糖修飾された形態(以下、“Merの糖修飾体”と呼ぶ)は、単核性の細胞(例えば、単核細胞およびマクロファージなど)によって発現されている完全に糖修飾された195〜210kDのMerタンパク質、他の細胞種によって発現されている少なく糖修飾されたMerタンパク質(単核性の細胞種よりも少ない糖修飾化を有しているMerタンパク質)を含むが、これらに限定されるものではない。195〜210kDの上記Merタンパク質は、約205kDから約210kDの間、または約205kDのような値を包括する、約195kDから約210kDの間のあらゆる値として検出され得る。単核性の細胞種によって発現された完全に糖修飾された形態よりも少ない糖によって修飾された、Merの糖修飾体は、(1)約165kDから約170kDである、血小板によって発現された糖修飾体、(2)約170kDから190kDの間(約170kDから約180kDまで、または約185kDを含んでいる)である、および/または約135kDから約140kDまでの、急性白血病(ALL)の細胞株に見られる糖修飾体を含む、Merリンパ芽球性の白血病によって発現された2つの異なる糖修飾体、ならびに(3)慢性の骨髄性の白血病において特異的に検出された約190kDから約195kDまでの新規のMerの糖修飾体を含んでいるが、これらに限定されるものではない。本発明者らは、リンパ芽球性の、または骨髄性の白血病に存在するMerの糖修飾体が、例えば、互いに異なり、かつ単核性の細胞および血小板に見られるMerの形態と異なっていることを見出した。
【0039】
本発明は、形質転換されていない(悪性に形質転換された、癌の、あるいは異常なまたは正常ではない増殖を示している状態ではない)ある種の造血性の細胞によって、または他の細胞種によって正常に(本来的に、内因性に、恒常的に)発現されたMerの糖修飾体、と同様に、異常なまたは正常ではない増殖を示している(癌の、悪性に形質転換された)、あるいは癌になりつつある、または癌になり易い細胞によって発現された“異常に糖修飾された”Merの糖修飾体を利用する。本発明によれば、“Merの糖修飾体”は、Mer受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの糖修飾の度合いによって表される、または特徴付けられるMer受容体チロシンキナーゼである。Mer受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの糖修飾の度合いは、当該分野において周知のあらゆる手法(例えば、ウエスタンブロット、他の電気泳動、クロマトグラフィー、分析用の超遠心分離など)によって決定される、Merタンパク質の糖修飾体が有する分子量に反映する。本明細書において、Merタンパク質の糖修飾状態は、(上述したような)分子量の範囲として表されてもよい。Merタンパク質が有する分子量の範囲は、用いた分析手法、標準的用法、およびに分析から分析までの標準的な変動に依存して、分子量の決定において起こり得るばらつきを反映している。また、Merタンパク質は、Merタンパク質における有効な糖修飾部位、およびそのような部位の数によって、より詳細に表されてもよい。しかし、本明細書においては、通常、タンパク質が翻訳後に修飾された結果として、有している分子量によって言及されるだろう。本発明において記載され、かつ本明細書において定義される“異常に糖修飾されたMer”、“異常に糖修飾されたMerの糖修飾体”または“異常なMerの糖修飾体”という用語は、新規なかつ固有のMerの糖修飾体を意味している。新規なかつ固有のMerの糖修飾体は、異常な増殖特性を示す細胞、または異常な増殖特性が進行している過程にある細胞のような、Merを異所的に発現する細胞によって発現される。異常な増殖特性を示す細胞は、例えば、白血病細胞およびリンパ腫細胞のように癌細胞、悪性に形質転換された細胞であり、異常な増殖特性が進行している過程にある細胞は、例えば、前癌状態の細胞である。“異常なMerの糖修飾体”という用語は、正常にMerを発現する造血性の細胞系統(例えば、単核性の細胞および血小板)によって発現されたMerを表現するためには使用しない。異常なMerの糖修飾体は、約160kD未満の分子量を有する糖修飾体のすべて、および約170kDから約190kDの間の糖修飾体を含んでいる。本発明によれば、上記Merの糖修飾体に関して用いた“約”という用語は、プラスマイナス2.5kDの値を意味している。
【0040】
2.Mer抗体
本発明の1つの実施形態は、新規の抗Mer抗体、より詳細には、新規の抗ヒトMer抗体、さらに詳細には、新規の抗ヒトMerモノクローナル抗体(mAb)の開発に関する。上記抗体の内のいずれもが、後述するような種々の診断方法および/または治療方法に加え、種々の細胞種(例えば、白血病細胞、リンパ芽球など)におけるMerの発現、特に、異所性のMerの発現に関する更なる研究に使用されてもよい。また、本実施形態には、上記抗体の抗原結合断片も含まれている。一実施例としての本発明のモノクローナル抗体は、正常なヒトの組織およびヒトの疾患において存在している一連のMer糖修飾化状態(Merの糖修飾体)を、あらゆる手法(例えば、ウエスタンブロットなど)によって、検出することができる。また、上記モノクローナル抗体は、特定のMerの糖修飾体と選択的に結合し、かつ他のMerの糖修飾体とは結合しない。本発明の抗体は、ヒトの癌、血栓症、および自己免疫疾患における診断の用途に有用である。例えば、癌の場合において、リンパ芽球性の白血病およびリンパ芽球性のリンパ腫は、同じ疾患過程の異なる臨床症状であると考えられており、同様の化学療法薬の投薬計画を用いて処置されるので、本発明は、(例えば、白血病および非ホジキンリンパ腫などにおける)診断的な、予後判断の、および治療的な利用という種々の用途を有している。さらに、本発明の抗体は、同様の条件に方向付けられた治療的な用途に有用である。また、本発明の抗体は、本発明のMerの糖修飾体の有益な研究ツールとして、および上記Merの糖修飾体の純化のために有用である。
【0041】
従って、本発明の1つの実施形態は、ヒトの疾患(例えば、正常なMerの糖修飾体および異常なMerの糖修飾体の両方)に存在する一連のMer糖修飾化状態を検出することができる(図1)抗ヒトMerのモノクローナル抗体に関する。従って、複数のMerの糖修飾体の中から1つの糖修飾体を区別することができる。発明者らの知る限りにおいて、複数のMerの糖修飾体の中から1つの糖修飾体を区別することができるという特異性を有しているMerの抗体は、始めて記述されたものである。抗ヒトMer抗体は、例えば、他の造血性の細胞統系には存在しない、白血病の細胞種において特有の170〜190kDのタンパク質を含む(図2)、複数のMerの糖修飾体を選択的に認識する“311”抗体と呼ぶ。例えば、実施例において説明しているように、糖タンパク質からN結合型糖鎖のすべて、およびO結合型糖鎖のほとんどを取り除くグリコシダーゼを用いて処理した試料について、Merモノクローナル抗体311を用いてウエスタンブロットの結果、白血病細胞種において異なるMer糖修飾化の様式が現れ、さらに、白血病細胞によって発現された固有のMerの糖修飾体の中には、区別が可能なMerタンパク質バリアントの存在が明らかになった。T細胞性の急性白血病(ALL)患者の試料において311抗体を用いて170〜190kDの糖修飾体を検出した結果、2つの異なるMerの糖修飾体(170〜190kDおよび135〜145kD)の存在が示された(図4)。さらに、変異または欠損に起因して現れる糖修飾部位の起こり得る差異(加えて、糖修飾の変化)は、ゲル電気泳動に反映されるような(図5)、Merタンパク質のサイズの差異として説明することができる。通常の治療に対して抵抗性を有する白血病細胞における上記Merの細胞外ドメインが血小板および単核細胞やマクロファージにおいて存在している糖修飾とは異なる様式において糖修飾化されている、という(上述したようなMer311mAbの利用を通して得られた)上記発見は、診断および治療への利用という可能性を有している。上記311モノクローナル抗体は、原型の抗体であると考えられ、Merに対する類似のモノクローナル抗体(同一または実質的に類似の特異性を有する抗体)は、同様の結果を得ることができると予想される。これらの311と類似のモノクローナル抗体は、白血病細胞およびリンパ種細胞のような、異なる細胞種における区別が可能なMerの糖修飾体の存在を、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロットのような種々の技術によって検出するために使用されてもよい。また、これらの311と類似のモノクローナル抗体は、免疫組織化学(IHC)およびウエスタンブロットのよう技術によって、リンパ腫を含むMer陽性の固形腫瘍を検出するために使用されてもよい。
【0042】
本発明によって包含される抗体は、好ましくは、Merタンパク質の保存された結合表面またはエピトープと選択的に結合する抗体であり、より好ましくは、Merタンパク質の細胞外ドメイン(この定義については後述する)において保存された結合表面またはエピトープと選択的に結合する。1つの形態において、本発明の抗体は、完全に糖修飾されたMerタンパク質(約195kDから210kDまでのMerタンパク質)を含む一連のMerの糖修飾体の他に、約195kD以下のMerの糖修飾体および上述したような異常なMerの糖修飾体を含む、1つまたは複数の他のMerの糖修飾体を認識することができる。他のMerの糖修飾体は、より詳細には、約165kDから約170kDであるMerの糖修飾体、約170kDから約190kD(通常、約170kDから約180kDまたは、約185kD)であるMerの糖修飾体、約135kDから約140kDであるMerの糖修飾体、および/または約190kDから約195kDであるMerの糖修飾体を含む。
【0043】
本発明によれば、あるタンパク質またはペプチドあるいは他の分子の“エピトープ”は、抗体に関して言えば、通常、抗体またはその抗体の怪訝結合断片が結合し、かつそれに対して抗体が産生される、大きな分子における1つの部分または1つの部位と定義される。エピトープという用語は、あるタンパク質または抗原の“抗原決定基”、“抗体結合部位”あるいは“保存された結合表面”という用語と交換可能に使用されてもよい。より詳細には、エピトープは、抗体の結合に関わるアミノ酸残基、および上記アミノ酸残基の三次元空間におけるコンホメーション(例えば、高次構造のエピトープまたは保存された結合表面など)の両方によって決定されてもよい。エピトープは、特に、抗体と結合するエピトープに関して言えば、約4〜6アミノ酸残基の大きさを有するペプチド、またはタンパク質の大きな断片に含まれていてもよく、エピトープの3次元構造について言えば、隣接するアミノ酸残基を含んでいる必要はない。抗体に結合するエピトープは、しばしば、連続的なエピトープ(例えば、直線的なエピトープなど)よりむしろ高次構造のエピトープであり、または、言い換えると、エピトープは、抗体が結合するタンパク質またはポリペプチドの表面上の三次元に配列したアミノ酸残基によって決定される。上述のように、高次構造のエピトープは、隣接するアミノ酸残基の配列を含んでいないが、その代わりとして、上記アミノ酸残基は、おそらくタンパク質の1次構造の配列において広く分布しており、かつ3次元における本来のコンホメーションにタンパク質が折りたたまれるという様式によって、集まって結合表面を形成する。
【0044】
本明細書に用いられているように、“と選択的に結合する”という用語は、1つのタンパク質と他のタンパク質と(例えば、抗原と、抗体、その抗体の断片、または結合相手となど)が特異的に結合することを意味しており、ここで、あらゆる通常の検定法(例えば、免疫学的検定法)によって測定されるような、結合の度合いは、上記検定法にとってのバックグラウンド対照よりも統計的に有為に高い。例えば、免疫学的検定法を実施する場合には、対照は、抗体または抗原結合断片のみを含む(例えば、抗原の非存在条件における)反応チューブや反応ウェルを算入する。ここで、抗原の非存在下における抗体またはその抗体の抗原結合断片による反応性の大きさ(例えば、上記ウェルに対する非特異的な結合)が、バックグラウンドと看做される。結合は、当該分野における通常の種々の方法を用いて測定されてもよい。当該分野における通常の種々の方法としては、ウエスタンブロット、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光分析、蛍光偏光、燐光、免疫組織化学検定法、マトリクス支援レーザイオン化−飛行型(MALDI−TOF)質量分析法、マイクロサイトメトリー(microcytometry)、マイクロアレイ、顕微鏡、FACS(fluorescence activated cell sorting)およびフローサイトメトリーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の1つの実施形態は、Merリガンド(例えば、Gas6およびプロテイン Sなど)と、特定の細胞または細胞種によって発現されるMerの糖修飾体との結合の競合的な抑制因子である、抗体またはその抗体の抗原結合断片を含む。他の実施形態において、本発明は、本明細書において説明した他の抗Mer抗体(例えば、311抗体など)の結合の競合的な抑制因子である抗体またはその抗体の抗原結合断片を含む。本発明によれば、競合的な抑制因子は、細胞によって発現されたMerと結合し、かつ本来のMerリガンド(例えば、Gas6およびプロテイン Sなど)と上記細胞によって発現された上記Merとの結合を抑制または阻害する抑制因子(例えば、その他の抗体、またはその他の抗体の抗原結合断片、あるいはポリペプチド)ある。上述の抗体と競合的な抑制因子は、本明細書に説明したその他の抗Mer抗体(例えば、mAb 311)など、本明細書に説明した抗Mer抗体の結合が抑制されるような同一または類似のエピトープにおいて、上記細胞によって発現されたMerと結合するという能力によって定義されてもよい。競合的な抑制因子は、上記Merリガンドまたは上記他の抗Mer抗体よりも標的に対して高い親和性を有する標的(例えば、Mer)と結合してもよい。可溶性のMerに関連した競合的な抑制因子の他の種類については、後述する。競合的な抑制因子は、本明細書において説明した上記抗Mer抗体と同様の様式によって使用すればよい。当該分野において通常の技術(例えば、ELISAおよび他の結合検定法など)を用いて、競合検定を行えばよい。競合的な抑制因子は、Merと他の標識された抗Mer抗体との結合を抑制する上記抑制因子の能力によって、検出および定量化されてもよい。
【0046】
本発明の単離された抗体は、上述のような抗体を含んでいる血清、または種々の程度に純化されている抗体を含む。本発明の抗体の全体は多クローン性、または単クローン性であってもよい。一方において、抗体の全体の同等物が、本発明において使用されてもよい。抗体の全体の上記同等物とは、不完全なまたは欠損を有する抗体(例えば、Fv断片、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab)断片など)、ならびに、遺伝工学的な抗体またはその抗体の抗原結合断片である。より詳細には、抗体の全体の上記同等物は、単鎖の抗体、ヒトに適応させた抗体(この定義については後述する)、完全なヒトの抗体、1つ以上のエピトープと結合することができる抗体(2重特異性抗体)、または1つ以上の異なる抗原に結合することができる抗体(例えば、2重特異性抗体および多重結合性抗体など)などである。
【0047】
プロテアーゼを用いた免疫グロブリンの限定消化によって、2つの断片を生成してもよい。抗原結合断片としては、Fab断片、Fab’断片、およびF(ab’)断片などが挙げられる。抗原と結合する能力を欠損している断片としては、Fc断片などが挙げられる。Fab断片は、V領域およびC領域の一部(CH1ドメイン)と対になったL鎖(Vドメイン+Cドメイン)を含んでいる免疫グロブリン分子の1つの腕を備えている。Fab’断片は、上記CH1ドメインと連結されたヒンジ領域の一部を備えるFab断片に該当する。F(ab’)断片は、互いのヒンジ領域において、ジスルフィド結合を介して、通常の共有結合によって結合している2つのFab’断片に該当する。
【0048】
上記Cドメインは、免疫グロブリンのアイソタイプを決定し、かつ上記アイソタイプに依存して、異なる機能的な特性を付与する。μ定常部は、IgM分子の5量体の凝集体の形成を可能にし、かつα定常部は、2量体の形成を可能にする。
【0049】
免疫グロブリン分子の他の機能的な局面は、免疫グロブリン分子のバレンシー、免疫グロブリン分子のアフィニティー、および免疫グロブリン分子のアビディティーを含んでいる。本明細書において用いられている、アフィニティーは、免疫グロブリン分子が免疫グロブリン分子(例えば、1価の抗原と結合する1価の抗体のFab断片)における単一の部位において抗原と結合する強度を意味している。アフィニティーは、1つの免疫グロブリンが1つの抗原と結合する強度の総計を意味する、アビディティーとは異なる。免疫グロブリンの結合に関するアフィニティーは、競合的な結合手法、平衡透析またはビアコア(BIAcore)のような当該分野において通常の技術を用いて測定されてもよい。本明細書において用いられている、バレンシーは、免疫グロブリン分子毎における異なる抗原結合部位の数(例えば、抗原結合断片の抗体分子毎における抗原結合部位の数)を意味している。例えば、1価の免疫グロブリン分子は、1度に1つの抗原にしか結合することができない。一方、2価の免疫グロブリン分子は、2つ以上の抗原と結合することができる。3価以上の免疫グロブリン分子についても、同様である。
【0050】
1つの実施形態において、上記抗原は、2重特異性抗原または多重特異性抗原である。2重特異性抗原(または多重特異性抗原)は、2価(または多価)の抗体であるため、2つ(またはそれ以上)の抗原と結合することができる。しかし、この場合において、複数の上記抗原のそれぞれは、複数の異なる抗原である(例えば、上記抗体は、2重またはそれよりも多くの特異性を示す)。例えば、Merと選択的に結合する抗体は、2重特異性抗体として構築されてもよい。ここで、第2の抗原結合特異性は、標的細胞における他の細胞表面マーカーなどの好ましい標的のためである。
【0051】
本発明の抗体は、中和抗体、触媒抗体、および遮断抗体(結合抗体)を含んでいるが、これらに限定されるものではない。本発明によれば、中和抗体は、感染性の作用物(通常は、ウイルス)と反応し、かつ上記作用物の感染性および毒性を破壊する抗体である。触媒抗体は、遷移状態にある中間体と結合し、かつ上記中間体を安定化させることによって化学反応を触媒するために選択された抗体である。阻止抗体は、抗原と結合し、かつ上記抗原に対してその他の抗体または作用物が結合することを阻止する抗体である。
【0052】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、ヒトに適応させた抗体である。ヒトに適応させた抗体は、ヒト以外の動物から得られた免疫グロブリンに由来する抗原結合部位を有している分子である。上記分子の免疫グロブリンが由来している残りの部分は、ヒトの免疫グロブリンに由来している。上記抗原結合部位は、ヒトの定常部と融合させた完全な可変領域、または可変領域におけるヒトのフレームワーク領域を接合させた相補性決定領域(CDRs)のいずれかである。ヒトに適応させた抗体は、例えば、上記抗体の可変部の原型を作製し、かつ(後述する)CDR接合のような遺伝工学的技術を用いて上記抗体を産生することによって、産生されてもよい。ヒトに適応させた抗体の生成のための種々に技術に関する記述が、例えば、Morrisonら、(1984) Proc Natl. Acad. Sci. USA 81:6851−55, Whittleら、(1987) Prot. Eng. 1:499−505;Coら、(1990) J. Immunol. 148:1149−1154, Coら、 (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2869−2873, Carterら、(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. 89:4285−4289; Routledgeら、(1991) Eur J. Immunol. 21:2717−2725ならびにPCT出願公開番号WO91/09967,WO91/09968およびWO92/113831に見られる。
【0053】
1つの実施形態において、本発明の抗体は、完全ヒト型抗体を含む。完全ヒト型抗体は、本質的に、完全にヒト型である。特定の結合特異性を有している上述のような抗体を賛成するための方法の1つは、免疫提供者からヒト抗体を得ることを含む(例えば、B細胞のEBV形質転換体を用いること、あるいはPCRクローニングおよびファージディスプレイによって)。さらに、より詳細には、合成したヒト抗体のV領域の無作為に抽出された組み合わせを使用する、合成したファージのライブラリが開発されている。抗原に対する選択によって、完全ヒト型抗体は、そのV領域が、本質的にヒト型と非常に類似していることを前提として作製されてもよい。ファージディスプレイライブラリの詳細については、後述する。最後に、完全ヒト型抗体は、遺伝子導入マウスから産生されてもよい。詳細には、ヒト免疫グロブリンの生殖細胞系列の遺伝子断片のすべてを有している遺伝子導入マウスが、開発されている。従って、上述のようなマウスを免疫すると、これらのマウスは、ヒト型に類似した抗体を賛成する。これらの方法の全ては、当該分野において公知のものである。
【0054】
本発明の遺伝工学的な抗体は、抗体の可変部および/または定常部をコードしているDANの操作ならびに再発現に関する通常の組換えDNA技術によって産生されたものを含む。詳細な例としては、キメラ抗体ならびにCDR接合抗体(および上記CDR接合抗体の抗原結合断片)などがある。上記キメラ抗体は、上記キメラ抗体のVH領域および/またはVL領域が、上記キメラ抗体のVH領域および/またはVL領域の残余部分と比べると、異なる供給源から由来している。上記CDR接合抗体(および上記CDR接合抗体の抗原結合断片)において、少なくとも1つのCDR配列および付加的に少なくとも1つの定常部フレームワークのアミノ酸が、1つの供給源に由来し、かつ上記可変部および定常部の残余部分(必要に応じて)が異なる供給から源由来している。キメラ抗体およびCDRについては、例えば、ヨーロッパ特許出願明細書のEP−A 0194276、EP−A 0239400、EP−A 0451216およびEP−A 0460617に記載されている。
【0055】
1つの実施形態において、キメラ抗体は、Merと結合し、かつ抗体の可変部に第2の標的部分の役割を果たすタンパク質と融合された抗体の可変部を含む本発明に従って、産生される。上記標的部分は、例えば、標的とする細胞または組織、あるいは動物における特定の系と関連するタンパク質であってもよい。
【0056】
1つの実施形態において、本発明は、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの特定の糖修飾体よ特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する方法を提供する。上記モノクローナル抗体は、阻害抗体または結合抗体、中和抗体、ならびに触媒抗体などを含むあらゆる抗体を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。上記方法は、以下の工程:(a)抗体産生細胞が動物の体内において産生されるような、特定のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(例えば、特定のMerの糖修飾体)を用いて動物を免疫する工程;(b)上記抗体産生細胞を取り出し、かつ不死化する工程;(c)所望の抗体を産生している不死化された上記抗体産生細胞を選択し、かつクローニングする工程;ならびに(d)選択されかつクローン化された、不死化された上記抗体産生細胞によって産生された抗体を単離する工程を含む。1つの実施形態において、上記抗体を産生するために用いられたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼが可溶性のMerである(例えば、Gas6およびプロテイン Sのような、本来(同種)のリガンドに結合するMerの細胞外ドメインの一部を少なくとも含むMerの断片)。可溶性のMerまたはMerの細胞外ドメインの詳細については、後述する。さらなる実施形態において、本発明は、上記方法によって産生されたモノクローナル抗体を提供する。
【0057】
通常、抗体の上記産生において、例えば、これらには限定されないが、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、マウス、ラットまたはトリのような好適な実験動物は、抗体が必要とされる抗原にさらされる。通常、動物は、上記動物に注入される抗原の効果的な量を用いて免疫される。抗原の効果的な量とは、動物によって抗体の産生を誘導するために必要とされる量である。従って、上記動物の免疫系は、予め決められた期間を超えて応答することができる。動物を免疫する上記工程は、上記動物の免疫系において上記抗原に対する抗体の産生がみられるまで、繰り返してもよい。上記抗原に対して特異性を有するポリクローナル抗体を得るために、上記動物から所望の抗体を含む血清が採取される(または、トリの場合には、抗体は卵から採取される)。そのような血清は、作用物として有用である。ポリクローナル抗体は、例えば、硫化アンモニウムを用いて上記血清を処理することによって、上記血清(または卵)からさらに純化されてもよい。
【0058】
モノクローナル抗体は、クーラーおよびミルステインの方法論(Nature 256:495−497,1975)に従って、またはヒトB細胞の融合雑種腫瘍細胞の方法(Kozbor, J., Immunol, 133:3001 (1984); Broudeurら、 Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51−63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))を用いて産生されてもよい。例えば、Bリンパ種は、免疫した動物の脾臓(または他の適当な組織)から回収され、その後、Bリンパ腫と骨髄腫細胞を融合させて、適当な培地において継続的に増殖する能力を有する融合雑種細胞の集団が得られる。所望の抗体を産生している融合雑種細胞は、上記融合雑種細胞によって産生されている抗体と所望の抗原との結合能を試験することによって、選択される。上記融合雑種細胞はクローン化されてもよく、かつ上記抗体は、産生され、上記融合雑種細胞から単離されてもよい。本発明の抗体を産生する方法は、(a)タンパク質またはペプチド(例えば、Merタンパク質またはMerタンパク質の細胞外ドメインを含むペプチドなど)の効果的な量を動物に投与して、抗体を産生させる工程、および(b)上記抗体を回収する工程を含んでいることが好ましい。本明細書においていう、“モノクローナル抗体”は、キメラモノクローナル抗体、ヒトに適応させたモノクローナル抗体、ヒト型のモノクローナル抗体を含む。モノクローナル抗体は、しばしば研究室において、細胞の単一のクローン(集団)による純粋な形態に合成される。これらの抗体は、大量に作製され、かつ細胞の表面に見られるある標的の抗原に対する特異的な親和性を有していてもよい。異常なMerの糖修飾体、または細胞外のMer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態に割り当てられたモノクローナル抗体は、連続継代細胞系によって抗体分子の産生を提供するあらゆる従来公知の方法を用いて非常に簡便に産生されてもよい。
【0059】
他の実施形態において、本発明の抗体は、組換え的に産生される。例えば、本発明に係る抗体を発現している、例えば、融合雑種細胞などの細胞系が得られたとすると、上記細胞系によって発現された抗体からcDNAをクローン化し、上記CDRをコードしている配列を含む、所望の抗体をコードしている可変部の遺伝子を同定することができる。このことから、本発明に係る抗体および抗原結合断片は、1つ以上の複製可能な発現ベクターを準備し、かつ上記抗体の産生が起こるように適当な宿主細胞の形質転換/形質移入によって得られてもよい。上記発現ベクターは、上記抗体の重鎖または軽鎖の可変部をコードしているDNA配列を少なくとも含み、かつ要望に応じて、上記重鎖または上記軽鎖の残りの部分をコードしているDNA配列を付加的に含んでいる。好適な発現宿主としては、細菌(例えば大腸菌株など)、菌類(詳細には、酵母であり、例えば、ピキア属、サッカロミセス属またはクリュイベロミセス属)および哺乳類の細胞系(例えば、マウスのNSO系またはCHO細胞などの非産生細胞系)などが挙げられる。適切な転写および翻訳が行われるように、ベクターのそれぞれにおける上記DNA配列は、上記可変部と操作可能な状態に連結されたプロモータおよびリーダ配列のような適切な制御配列を含んでいるべきである。この方法における抗体の詳細な産生方法は、公知であり、かつ通常、使用されている基本的な分子生物的な手段については、例えば、Maniatisら、Molecular Cloning, Cold Spring Habor Laboratory, New York, (1989)に記載されており、DNA配列決定は、Sangerら、PNAS 74, 5436, (1977)およびAMerershaMer International plc sequencing hand bookにおける記載を参照すればよく、部位特異的な変異の導入は、Kramerら、Nucl Acids Res. 12, 9441, (1984)およびAnglian Biotechnology Ltd. Hand bookの方法に従って実施することができる。さらに、例えば、Mountain A and Adair, J R in Biotechnology and Genetic Engineering Reviews(ed. Tombs, M P, 10, Chapter 1, 1992, Intersept, Andover, UK)および上述のヨーロッパ特許出願明細書などにおいて、DNAの操作、発現ベクターの構築および適切な細胞の形質転換によって抗体を準備するために適した技術が詳述されている。このような公表物は、特許明細書も含めて非常にたくさんある。
【0060】
例えば、ファージディスプレイ技術を採用している他の方法、または米国特許5,627,052号の選択されたリンパ腫抗体法は、ここの当業者において明確であるように、本発明の抗体および/または抗原結合断片の産生に使用されてもよい。ファージディスプレイ技術に関しては、例えば、米国特許5,969,108号、米国特許5,565,332号、米国特許5,871,907号、米国特許5,858,657号、米国特許5,223,409号、Fuchs et al. Bio/Technology, 9:1370−1372 (1991)またはGriffithsら、EMBO J., 12:725−734 (1993)を参照すればよい。異常な糖修飾を受けたMerポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、上記ポリペプチドと結合する免疫グロブリンライブラリの構成要素を単離するための上記ポリペプチドを用いて、組換え結合免疫グロブリンライブラリ(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリ)をスクリーニングすることによって、同定および単離されてもよい。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットは、公知であり、かつ購入可能である。
【0061】
異常な糖修飾を受けた上記Merポリペプチドを用いて産生された上記Mer311モノクローナル抗体、または他のモノクローナル抗体は、通常の技術(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、または免疫沈降)によって上記抗体によって特異的に認識される、あらゆるMerの糖修飾体を含んでいるMerポリペプチドの単離に用いてもよい。本発明のMerポリペプチドまたは他のペプチドに対して特異的な(選択的に結合する)抗体は、Merの発現パターン、糖修飾、およびバリアントの存在量を評価するために、Mer(例えば、細胞溶解液、細胞上清または組織試料)の検出に用いてもよい。抗体は、臨床検査の手法(例えば、ある処置計画の有効性を決定すること、またはMer特異的な治療に適した患者を選択すること)の一部として組織におけるタンパク質の程度を監視して、診断するために用いてもよい。さらに、ここにおいて請求された、Merタンパク質の糖修飾体、アイソフォームまたは変異体は、腫瘍形成に重要な役割を果たすチロシンキナーゼ活性が増強されていてもよい。従って、1つの局面において、本発明のモノクローナル抗体は、白血病細胞およびリンパ腫細胞において、本来の、異常な糖修飾体の、または改変したMerタンパク質を認識ならびに結合または不活性化するMer陽性の癌患者に使用されてもよい。本発明のこれらの実施形態については、後ほど詳述する。
【0062】
検出可能な物質との上記抗体の結合は、検出を容易にする。検出可能な物質としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質などが挙げられる。好適な酵素としては、例えば、ホースラディッシュ ペルオキシオダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる。好適な補欠分子族の複合体としては、例えば、ストレプトアビジンおよびストレプトビオチン、ならびにアビジンおよびビオチンが挙げられる。好適な蛍光物質としては、例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソシアンフルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミン(dichlorotriazinylamine)、塩化ダンシル、およびフィコエリトリンを挙げられる。好適な発光物質としては、例えば、ルミノールが挙げられる。好適な生物発光物質としては、例えば、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる。好適な放射性物質としては、例えば、125I、131I、35SおよびHが挙げられる。
【0063】
3.Merタンパク質、可溶性のMerタンパク質、およびMerタンパク質のバリアント
本発明の他の実施形態は、Merの細胞外ドメインが切断され得ること、および上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性を有する上記Merタンパク質が、上記Mer受容体チロシンキナーゼの活性の抑制に有用であるという発見に関する。さらに、本発明は、ヒトおよびマウスの血漿に存在するMer受容体チロシンキナーゼの新規な可溶性の形態を意図している。Mer受容体チロシンキナーゼの新規な可溶性の上記形態は、Mer陽性の癌の場合、および抗凝血における細胞生存シグナル伝達および細胞増殖のような上記Mer受容体チロシンキナーゼは、活性化されている場合には、疾患の状態または条件に重要な役割を果たしている。しかし、本発明者らは、本発明の実施の方法として、これらの現在の見解に限定されることを望んでおらず、この本発明の抗凝血の局面は、抗凝血性のプロテイン S(図6)およびGas6を含むMerのリガンドとsMerとの相互作用を介して機能していることを確信している。新規な上記可溶性を有するMer(sMer)は、sMerの固有の糖修飾体、特に、本明細書に詳細に説明されている上記Merの糖修飾体を含んでいる。本明細書において用いられているように、Merの“可溶性の形態”または“可溶性のMer”という用語は、上記膜貫通型受容体の近傍において切断されている、またはMerの細胞外ドメインのあらゆる部分を含む、Merリガンド(例えば、Gas6またはプロテイン S)との結合能を維持しているMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを意味している。上記Merの厳密な切断部位は、重大な意味を有していない。上記可溶性の形態は、差異的なスプライシング、組換え手法、または翻訳後におけるタンパク質分解性の切断(詳細については後述する)によって生成されてもよい。“可溶性のMerの糖修飾体”または“sMerの糖修飾体”は、上述のように、Merが有する特定の糖修飾様式または糖修飾の度合いによって付加的に特徴付けられるMerの可溶性の形態を意味している。
【0064】
上述したように、種々の異なる種から由来するMerに対応する上記核酸(ゲノムまたはmRNA)配列およびアミノ酸配列は、当該分野において公知である(例えば、米国特許番号5,585,269号を参照すればよい)。本明細書においては、ヒトのMerに対応する核酸(mRNA)配列配列番号1によって表されている。配列番号1は、配列番号2によって表されるヒトのMerタンパク質をコードしている。ネズミ科のMerに対応する核酸配列および上記核酸配列によってコードされているネズミ科のMerタンパク質アミノ酸配列は、配列番号3および配列番号4のそれぞれによって表されている。ラットのMerに対応する核酸配列および上記核酸配列によってコードされているラットのMerタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号5および配列番号6のそれぞれによって表されている。トリのMerに対応する核酸配列および上記核酸配列によってコードされているトリのMerタンパク質アミノ酸配列は、配列番号7および配列番号8のそれぞれによって表されている。ヒトのMer(配列番号2)の上記細胞外ドメインは、約1から約473番目までのアミノ酸配列に及んでいる。ヒトを除いた種における上記細胞外ドメインに対応する位置は、上記配列を合わせることによって容易に決定することができる。しかし、上述のように、本発明の1つの実施形態として、配列番号2の位置484(またはヒトを除いた種に由来するMerの対応する位置)以外の部位において切断された可溶性のMerを産生してもよい。本発明の可溶性のMerタンパク質は、Merリガンド(例えば、Gas6またはプロテイン S)との結合能を維持しているMerの細胞外ドメインあらゆる小さな部分(断片)を含んでいればよい。
【0065】
本発明の1つの実施形態において、血小板における165〜175kDのMerタンパク質および単核細胞における195〜210kDのMerタンパク質は、腫瘍壊死因子−α(TNF)転換酵素(TACE)に類似する金属プロテアーゼを介するMerの細胞外ドメインの切断によって翻訳後に処理される。上記切断の結果として、可溶性の細胞外ドメインタンパク質(約150kD)および膜結合型キナーゼドメインが生じる。Merのタンパク質分解性の切断は、リポ多糖類(LPS)およびホルボールミリステートアセテート(PMA)によって増強されてもよく(図12)、さらに、TACEの抑制因しであるTNF−αタンパク質分解酵素抑制因子(TAPI)によって抑制されてもよい(図11)。本発明の代わりの実施形態として、可溶性のMerタンパク質は、mRNAのスプライシングの結果として産生される。本発明者らは、全長のMerの試料のいくつかについて配列解析を行うことによって、終止コドンをコードしている新規のエキソンが存在していることを発見している。この新規なRNAスプライシング形態は、新規のエキソン7Aと並んで配置されたヒトMer遺伝子におけるエキソン1〜7によって構成されている。切断された結果として、可溶性のMerは、エキソン1〜7に由来する381のアミノ酸およびインフレームの終止コドンの前にあるエキソン7Aに由来する12のアミノ酸を含んでいる。
【0066】
ヒトおよびマウスの血清には、かなりの量の上記可溶性のMerが存在している(図9および10)。Merの上記可溶性の形態は、組換え法によって産生されてもよい。組換え法によって産生されたMerの上記可溶性の形態についての詳細は後ほど説明する。可溶性を有する組み換え形態は、Merの糖修飾体を用いて、または必要に応じてまったく糖修飾を受けていないMerを用いて作られてもよい。本発明の1つの実施形態において、上記可溶性のMerタンパク質は、本発明の診断方法または治療方法において有用である固有の糖修飾体として産生されることが好ましい。上記糖修飾体は、以下の糖修飾体:完全に糖修飾化された195〜210kDのMerの糖修飾体;約165kDから約170kDまでの分子量を有する糖修飾体;約170kDから約190kDまでの分子量を有する糖修飾体;約135kDから約140kDまでの分子量を有する糖修飾体;および約190kDから約195kDの分子量を有する糖修飾体の内のあらゆるものを含んでいる。
【0067】
本発明の1つの実施形態において、本発明者らによる異なる糖修飾体の発見を用いて、治療的に有用な可溶性のMerの糖修飾体を、選択的かつ有利に産生する。上記可溶性のMerの糖修飾体は、特定の細胞種によって発現されたMerの糖修飾体の競合的な抑制因子であるため、治療的な有用性を有している。例えば、特定の度合いまたは態様の糖修飾を有しているMerタンパク質は、特定の細胞種によって発現されている内因性のMer受容体よりも、Merリガンド(例えば、Gas6またはプロテイン S)に対する高い結合親和性を有していてもよい。リガンドに対する高い結合親和性を有しているようなMerの糖修飾体は、可溶性のMerタンパク質として産生され、かつ上記可溶性のMerタンパク質を用いて、例えば、凝固障害および癌の治療的な処置において、内因性の上記Mer受容体とMerリガンドとの結合を抑制してもよい。そのようなMerの糖修飾体は、必要に応じて、所定の細胞種を標的としてもよい。
【0068】
本発明者らは、可溶性のMerタンパク質がGas6(図12)およびプロテイン Sと直接に結合することを示しており、可溶性のMerタンパク質がMerリガンドと結合することによって、全長のMerの刺激を抑制している(図6および13)。また、Gas6およびプロテイン Sは、AxlおよびTyro−3にとってのリガンドである。従って、Merの切断は、Mer、AxlおよびTyro−3のリガンドが有する多数の機能を直接的に制御(上方制御または下方制御を含んでいる)するという機序を表している。Mer、AxlおよびTyro−3のリガンドが有する機能には、血小板の吸着および凝固の安定化の促進、細胞の吸着および化学走性を含む細胞増殖の刺激、ならびにアポトーシスの予防などが含まれている。最後に、本明細書に記載された、Merの切断または可溶性のMerの利用、ならびに特に、特定のMerの糖修飾体の切断または特定の上記Merの糖修飾体の利用は、プロテイン S、Gas6および他のMerリガンドの機能を調節することによって、チロシンキナーゼであるMer、AxlおよびTyro−3の活性化を非直接的に調節(制御、修飾)するという機序を表している。
【0069】
従って、本発明の実施形態は、本明細書に説明する、単離されたポリペプチドに関し、詳細には、種々のMerの糖修飾体に関し、さらに詳細には、Merバリアント(この詳細は、後ほど詳述する)をコードしている核酸によって発現された異常な異常なMerの糖修飾体および/または細胞外のMer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態を含む、Merの糖修飾体および/または細胞外のMer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態に関する。
【0070】
本明細書において使用されるように、本発明において、単離されたMerタンパク質を含んでいる単離されたタンパク質またはポリペプチドとは、全長のタンパク質、融合タンパク質またはあらゆる断片、あるいはそのようなタンパク質の他の相同物(バリアント)を含んでいる。ヒト、マウス、ラットまたはトリに由来するMerに対応するアミノ酸配列は、Merタンパク質の一例として、本明細書において説明されている(上記記載を参照すればよい)。Merタンパク質という用語は、以下のものに限定されるわけではないが、純化したMerタンパク質、組換え的に産生したMerタンパク質、膜結合Merタンパク質、脂質と複合化されたMerタンパク質、可溶性のMerタンパク質、あらゆるMerの糖修飾体、および他のタンパク質と相互作用する単離されたMerタンパク質という意味を含む。より詳細には、本発明に係るMerタンパク質ような、単離されたタンパク質は、本来の環境から(人の操作を受けて)取り出され、かつ例えば、純化されたタンパク質、部分的に純化されたタンパク質、組換え的に産生されたタンパク質、および合成的に産生されたタンパク質を含む、(ポリペプチドまたはペプチドを含んでいる)タンパク質である。“単離された”という用語自体は、上記タンパク質が純化されている状態を示しているわけではない。“ポリペプチド”という用語は、アミノ酸の重合体を意味しており、特定の長さを意味していない。従って、ペプチド、オリゴペプチドおよびタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれている。本明細書において使用されているように、ポリペプチドは、組換え体および非組換え体細胞から単離された場合には、実質的に細胞由来の物質を含んでいない状態を、または化学的に合成されている場合には化学的な前駆体または他の化学物質を含んでいない状態を、“純化されている”と表現される。しかし、ポリペプチドは、細胞内において(例えば、“融合タンパク質内において”)、通常、相互作用しない上に、“単離された”または“純化された”他のポリペプチドと接合されていてもよい。
【0071】
さらに、例示として、“ヒトMerタンパク質”とは、ヒト(ホモサピエンス)に由来するMerタンパク質(通常、自然的に生じているMerタンパク質の相同物を含む)、あるいはホモサピエンスに由来する自然的に生じているMerタンパク質の構造(例えば、配列)および予想される機能に関する知識からその他の方法によって産生されたMerタンパク質を意味する。言い換えると、ヒトMerタンパク質は、本明細書において詳細に説明しているように、ホモサピエンスから由来する自然的に生じているpMerが有する、実質的に同様の構造および機能を有するあらゆるMerタンパク質、あるいはホモサピエンスに由来する自然的に生じているMerタンパク質の生物学的に活性な(例えば、生物学的な活性を有している)相同物を含んでいる。従って、ヒトのMerタンパク質は、純化した、部分的に純化した、組換えの、変異されたまたは修飾された、ならびに合成のタンパク質を含んでいる。本発明によれば、“修飾”および“変異”という用語は、本明細書において、特に、Merのアミノ酸配列(または核酸配列)に対する修飾または変異に関して、交換可能に用いられてもよい。本発明に係る拮抗物または作用物として有用な単離されたタンパク質は、自然の供給源から単離された、組換え的に産生された、または合成的に産生されたものであってもよい。
【0072】
また、本発明のポリペプチドは、断片およびバリアントの系列を包含する。上記バリアントの系列とは、本明細書において、通常、相同物を意味している。本明細書において使用されているように、“相同物”という用語は、自然的に生じているタンパク質またはペプチド(例えば、“原型”または“野生型”)とは異なるが、自然的に生じている形態の基本的なタンパク質構造および側鎖の構造を維持しているタンパク質またはペプチドを意味している。そのような変化は、特に限定されるわけではないが、1つもしくは少数のアミノ酸側鎖における変化、1つもしくは少数のアミノ酸の変化、1つもしくは少数の原子の立体化学的な変化、および/または僅かな誘導体化を含んでいる。アミノ酸側鎖およびアミノ酸における変化は欠損を含んでおり、1つまたは少数のアミノ酸側鎖またはアミノ酸が欠損したものは、例えば、タンパク質またはペプチドの切断型である。僅かな誘導体化とは、特に限定されるわけではないが、メチル化、糖修飾化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン酸エステル化、アミド化および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加を含んでいる。相同物は、自然的に生じているタンパク質またはペプチドと比較して、増強された、低減された、または実質的に同様の性質を有していればよい。相同物は、タンパク質の作用物またはタンパク質の拮抗物を含んでいてもよい。
【0073】
バリアントまたは相同物は、生物における同じ遺伝子座によってコードされた実質的に相同なポリペプチド(例えば、対立形質のバリアントなど)だけでなく、他のスプライシングバリアントを含む。自然的に生じている、タンパク質をコードしている核酸の対立形質のバリアントは、上記タンパク質をコードしているが、変異または組換えなどの自然な変化に起因して同一の配列ではなく類似の配列を有している遺伝子として原則的にゲノムにおける同じ遺伝子座(または複数の遺伝子座)に存在する遺伝子である。通常、対立形質のバリアントは、対立形質の上記バリアントが比較されている遺伝子によってコードされたタンパク質の活性と類似の活性を有しているタンパク質をコードしている。対立形質のバリアントの1つの組は、同一のタンパク質をコードしているが、遺伝定情報の縮重に起因して異なる核酸配列を有していてもよい。また、対立形式のバリアントは、上記遺伝子の5’または3’の非翻訳領域において(例えば、調節制御領域において)、改変を含んでいてもよい。対立形質のバリアントは、当業者において周知のものである。
【0074】
また、バリアントまたは相同物は、生物における他の遺伝子座に由来するポリペプチドを含む。しかし、バリアントまたは相同物は、ここまでにおいて説明した上記異常なMerの糖修飾体または上記細胞外のMer受容体チロシンキナーゼ、あるいは、上記異常なMerの糖修飾体または上記細胞外のMer受容体チロシンキナーゼの多形性のバリアントに対する実質的な相同物である。また、バリアントは、他の生物に由来するものを除いて、原型となるポリペプチドと実質的に相同または同一であるポリペプチドを含む。また、バリアントは、原型であるポリペプチドと実質的に相同または同一である、化学合成によって産生されたポリペプチドとポリペプチドを含む。
【0075】
また、バリアントは、原型であるポリペプチドと実質的に相同または同一である、組換え法によって産生されたポリペプチドを含む。本明細書中において使用しているように、
2つのポリペプチド(またはポリペプチドの領域)は、2つのポリペプチドが有するアミノ酸配列の内の約45〜55%において、好ましくは、2つのポリペプチドが有するアミノ酸配列の内の約70〜75%において、より好ましくは、2つのポリペプチドが有するアミノ酸配列の内の約80〜85%において、最も好ましくは、2つのポリペプチドが有するアミノ酸配列の内の約95%超える割合において、実質的に相同または同一である。1つの実施形態において、Merタンパク質は、自然に生じているMerのアミノ酸配列に対して、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%(または整数の増分の全体において、45%から99%の間の同一性のパーセント)が同一であるアミノ酸配列を含む、基本的にからなる、あるいはからなる。Merの相同物は、基準の(例えば、野生体の)Merとは異なる。従って、Merの相同物は、アミノ酸配列の度合いについて基準のMerと、100%未満において一致する。野生体のMerの配列は、特に限定されるわけではないが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8によって表される配列を含む。
【0076】
本明細書において用いられているように、特に規定していない場合には、同一性のパーセント(%)は、(1)通常の初期設定の要素を用いてアミノ酸配列用のblastpおよび核酸配列用のblastnを用いたBLAST 2.0 Basic BLAST相同性検索(照会配列は、初期設定によって低い複合性領域はふるい落とされている。また、上記検索については、Altschul, S.F., Madden, T.L., Schaeaeffer, A.A., Zhang, Z., Miller, W. and Lipman, D.J. (1997)“Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs.” Nucleic Acids Res. 25:3389−3402に記載されている。なお、引用することによって、上記文献の全体が本明細書に組み入れられている。)(2)BLAST 2 整合(使用した要素については、後述する。)および/または(3)通常の初期設定の要素を用いたPSI−BLAST(Position−Specific Iterated BLAST)を用いて実施されている相同性の評価を意味している。BLAST 2.0 Basic BLASTおよびBLAST 2の間における標準の要素においていくらか差異があるために、2つの特定の配列、BLAST 2プログラムを用いて有為な相同性を有していると認識されたかもしれないが、一方において、2つの上記配列の内の1つを用いて、BLAST 2.0 Basic BLASTを実施した検索は、最高の適合相手において2つの上記配列の内の残りと一致しないかもしれない。さらに、PSI−BLASTは、配列の相同物を探すための感度の高い方法である、自動化された“タンパク質ofile”検索という使いやすいバージョンを提供している。上記プログラムは、まず、隙間が作られたBLASTデータベース検索を実施する。PSI−BLASTプログラムは、データベース検索の次の一巡のための参照配列に置き換える、部位特異的な得点母体を構築するために送られてきたあらゆる有為な配列に由来する情報を用いる。従って、同一性のパーセントは、これらのプログラムの内のいずれか1つを用いて決定されている。
【0077】
2つの特定の配列は、Tatusova and Madden,(1999),“Blast 2 sequences − a new tool for compering protein and nucleotide sequences”(この文献は、引用することによって、上記文献の全体が本明細書に組み入れられている。)に記載されているように、BLAST 2 配列を用いて互いに整列させてもよい。BLAST 2 配列の整列は、検索結果の整列に隙間(欠損および挿入)の情報を与えている2つの上記配列の間におけるGaポリペプチドed BLAST検索(BLAST 2.0)を実施するためのBLAST 2.0アルゴリズムを用いてblastpまたはblastnにおいて実施される。本明細書における説明の明確化を目的として、BLAST 2配列の整列は、以下に示す標準の初期設定の要素を用いて実施されている。
For blastn, using 0 BLOSUM62 matrix:
Reward for match = 1
Penalty for mismatch =−2
Open gap(5) and extension gap(2)penalties
gap x_dropoff(50)expect(10)word size(11)filter(on)

For blastp, using 0 BLOSUM62 Meratrix:
Open gap(11) and extension gap(1)penalties
gap x_dropoff(50)expect(10)word size(3)filter(on)
また、本発明の1つの実施形態は、低い程度の同一性、ただし、本発明のポリペプチドによって果たされるのと同じ機能の1つ以上を果たすために十分な類似性を有しているポリペプチドを包含する。バリアントのポリペプチドは、置換、欠損、挿入、転移、融合および切断、あるいはこれらのあらゆる組み合わせによって、アミノ酸配列において異なっていてもよい。さらに、バリアントのポリペプチドは、1つ以上の機能において、完全に機能的である、または機能を消失していてもよい。
【0078】
また、本発明の1つの実施形態は、本発明の上記ポリペプチドのポリペプチド断片を含んでいてもよい。また、本発明は、本明細書中において説明した上記ポリペプチドの断片を包含していてもよい。本明細書中において使用しているように、断片は、少なくとも6つの隣接するアミノ酸を包含し、かつMerの上記細胞外ドメインの全体またはMerリガンドとの結合能を保持しているMerの上記細胞外ドメインのあらゆる部分を含んでいる、本明細書中において説明される全長のMerタンパク質のあらゆる断片を含む。有用な断片としては、上記ポリペプチドの生物学的活性(例えば、リガンドとの結合能および/またはシグナル伝達能)を1つ以上保持している断片の他に、ポリペプチド特異的な抗体を産生するための免疫原として使用することができる断片などを含む。断片は、分離していて(他のアミノ酸または他のポリペプチドと融合していなくて)もよく、またはより大きいポリペプチドの中に分離していてもよい。さらに、種々の断片は、単一の大きなポリペプチドの中に含まれていてもよい。従って、断片は、全体の整数の増加分の間にあるあらゆる断片(例えば、7、8、9・・・67、68、69・・・278、279、280・・・アミノ酸)を含んでいる、約6アミノ酸および998アミノ酸の間のあらゆるサイズの断片を含んでいてもよい。
【0079】
従って、本発明の実施形態は、キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドを提供する。上記キメラポリペプチドまたは上記融合ポリペプチドは、本発明のポリペプチドと実質的に相同ではないアミノ酸配列を有している異種のタンパク質またはポリペプチドと作用が可能なように連結された本発明のポリペプチドを含む。“作用が可能なように連結された”とは、上記ポリペプチドおよび上記異種のタンパク質(また、融合セグメントまたは融合パートナーと呼ばれる)がインフレームに融合されていることを示している。上記異種のタンパク質は、上記ポリペプチドのN末端またはC末端と融合されていてもよい。キメラポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、当該分野において周知である標準の組換えDNA技術によって産生されてもよい。本発明に係る異種のタンパク質としては、以下のものに限定されるわけではないが、タンパク質の安定性を増強、他の所望の生物学的活性を提供、および/またはタンパク質の純化を補助することができるあらゆるタンパク質またはポリペプチドを含むことが好ましい。好適な異種のタンパク質は、所望の機能(例えば、増強された安定性、可溶性、作用または生物学的活性を与えること、タンパクの純化を簡略化すること、または付加的なタンパク質の機能を提供することなど)を有するあらゆるサイズのドメインである。一つの実施形態において、産生されたキメラタンパク質または融合タンパク質を用いた好適な異種のタンパク質は、抗原断片および、特に免疫グロブリンタンパク質のFc部分である。生体内におけるMerの安定性または半減期を増強する、あらゆる融合のまたはキメラのパートナーは、例えば、本発明に使用するために検討される。
【0080】
本明細書中において使用されているように、“Merの作用物”とは、本明細書において説明したような自然に生じているMerの生物学的活性に作用する(agonize)(例えば、刺激する、誘導する、増加する、増強する、または模倣する)能力によって特徴付けられているあらゆる化合物を意味し、さらに、あらゆるMerの相同物、Merとの結合タンパク質(例えば、抗体)、MerまたはMerの模倣物と相互作用する作用物質、あるいは自然に生じるMerの生物学的活性に作用する(agonize)(例えば、刺激する、誘導する、増加する、増強する、または模倣する)能力によって特徴付けられている薬物、化合物またはポリペプチドの設計または選択のあらゆる好適な産物を含んでいる。
【0081】
同様に、“Merの拮抗物”という表現は、上述したような、Merの作用物の効果を抑制する(拮抗する、低減する、減少する、阻害する、反転する、または変える)作用物あらゆる化合物意味する。より詳細には、Merの拮抗物は、天然のMerの作用物の生物学的活性のようなMerの活性について、Merの本来の作用に対して拮抗的になる(対抗する、逆転するまたは逆らう)ように減少されるように影響を与えることができる。そのような作用物としては、以下のものに限定されるわけではないが、タンパク質(例えば、可溶性のMer)、ポリペプチド、(リボザイム、RNAi、アプタマー、およびアンチセンスを含む)核酸、抗体、抗体の抗原結合断片、あるいは上記拮抗的な効果を供給するようにデザインまたは選択された薬物、化合物、またはポリペプチド産物を含む。ポリペプチドであるおよびポリペプチドではないMer(の類似物)の作用物および拮抗物を含んでいるMerの相同物は、当該分野において公知の種々の方法を用いて産生されてもよい。そのような相同物は、模倣物と呼ばれてもよい。模倣物とは、上記模倣物が、しばしば自然に生じるポリペプチドの基本構造を模倣する基本構造を有している、および/または自然に生じるポリペプチドの顕著な生物学的性質を有しているため、自然に生じるポリペプチドの生物学的な作用を模倣することができるポリペプチドまたはポリペプチドではない化合物を意味する。模倣物は、以下のものに限定されるわけではないが、ポリペプチド、抗体または抗体の断片、単離されたタンパク質の非タンパク質性の部分(例えば、糖質構造)、あるいは合成分子または自然の生体分子を含んでいてもよい。ここで、上記ポリペプチドは、自然に生じる上記ポリペプチドと類似性を有する側鎖を有していないような上記ポリペプチドの原型から実質的な修飾(例えば、分解に対する感受性が減少するような修飾)を有している。また、ここで、上記抗体は、抗イデオタイプの抗体および/または触媒抗体である。また、ここで、上記合成分子または自然の上記生体分子は、例えば、コンビナトリアルケミストリーを介して同定された核酸および薬剤を含んでいる。そのような模倣物は、当該分野において公知の種々の方法を用いてデザイン、選択および/またはそうでなければ同定されてもよい。本発明において有用な薬剤のデザイン、有用な模倣物またはたの治療的な化合物のデザインあるいは選択の方法は、Maulikら、1997, Molecular Biothechnology: Therapeutic Applications and Staratgies,Wiley−Liss, Inc.,に開示されている。なお、引用することによって、上記文献の全体が本明細書に組み入れられている。
【0082】
相同物は、以下のもの限定されるわけではないが、単離した、自然に生じる上記タンパク質に対する直接の修飾、直接のタンパク質合成、または例えば、無作為または標的を決めた突然変異生成をもたらす標準的なまたは組換えDNA技術を用いた上記タンパク質をコードしている上記核酸配列に対する修飾を含む、当該分野において公知の技術を用いて産生されてもよい。より小さいペプチド用には、化学合成法が好ましい。例えば、そのような方法は、ペプチドの液相合成または固相合成、あるいは従来の溶液法を介して結合したタンパク質断片を用いて開始する溶液における半合成のような、周知の化学的手法を含む。そのような方法は、当該分野において周知であり、以下に示すような通常の教科書および論文merrifield, 1997, Methods Enzymol. 289:3−13、Wadeら、1993,Australas Biothecnol. 3(6):332−336、Wongら、1991,Experientia 47(11−12):1123−1129、Careyら、1991,Ciba found Symp.158:187−203、Plaueら、1990, Biologicals 18(3):147−157、Bodansky, 1985, Int. J. Pept Protein Res. 25(5):449−474、またはH. Dugas and C.Penny, BIOORGANIC CHMEISTRY, (1981)の第54項〜第92項などに記載されている。なお、引用することによって、上記文献の全体が本明細書に組み入れられている。例えば、ペプチドは、購入可能なペプチド合成装置および製造会社によって提供される合成サイクルを利用して固相の方法論よって合成されてもよい。上記固相合成が、またFMOC方法およびTFA/捕捉剤分割混合物を用いて達成されることを、当業者であれば理解する。
【0083】
本発明の上記ポリペプチドは、同質に純化されてもよい。しかし、上記ポリペプチドが同質に純化されていない調製物も有用であることが理解される。相当な量の他の組成物が存在している状態において、上記調製物が上記ポリペプチドの所望の機能を果たすことが、重要な特性である。実際、本発明によって検討された検定の様式において、本来の生物学的環境は、Merおよび可溶性のMerの通常の活性に影響を与える重要な他のタンパク質を含んでいる。従って、本発明は、種々の程度の純度を包含する。1つの実施形態において、“細胞由来の物質が実質的にない”という言葉は、(乾燥重量に基づいて)約30%未満の他のタンパク質(例えば、混入しているタンパク質)を、約20%未満の他のタンパク質を、約10%未満の他のタンパク質をまたは約5%未満の他のタンパク質を含んでいる上記ポリペプチドの調製物を含んでいる。
【0084】
本発明の1つの局面において、Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態は、Merの細胞内キナーゼおよびMerの細胞内キナーゼの大部分を除いた、上記タンパク質の膜貫通ドメインの全てではないが、TACEに類似する金属プロテアーゼによって全長のMer受容体膜貫通ドメインの近傍が分割された産物である。
【0085】
本発明の1つの局面において、Merタンパク質および特に、可溶性のMerタンパク質は、特定のMerの糖修飾体として、ならびにある局面において、特定の細胞種に関連している糖修飾体、またはMerリガンドと結合するための本来のMer受容体と競合するように選択された糖修飾体を含んでいる、本明細書中において説明した特定の糖修飾体として産生されることが好ましい。糖修飾化は、翻訳後修飾である。本発明のMerタンパク質の糖修飾化は、あらゆる好適な方法によって達成される。例えば、特定の細胞種に対応するMerの糖修飾体は、特異的なMerの糖修飾体を自然に産生する上記細胞種の宿主細胞において(可溶性のMerタンパク質を含む)Merタンパク質を組み換え的に発現することによって産生されてもよい。他の方法として、Merの相同物は、所望の糖修飾の様式および/または度合いが達成される変更された(変異させた、修飾された)糖修飾部位を有しているものとして、(例えば、組換え技術を用いて)産生されてもよい。また、タンパク質の糖修飾は、細胞から産生ならびに単離または分泌された後、in vitroにおいて単離されたタンパク質を糖修飾することによって達成すればよい。
【0086】
例えば、Merタンパク質は、特異的なMerの糖修飾体を供給する特定の細胞種によって翻訳後に糖修飾化されている野生体のMerタンパク質であるMerタンパク質を含んでいることが好ましい。また、Merタンパク質は、野生体のタンパク質単核細胞によって産生された野生体のタンパク質と比較して不十分に、または十分に糖修飾化されているMerタンパク質のような野生体のタンパク質は異なる糖修飾化部位を備えているMerタンパク質のバリアント(相同物)を含んでいることが好ましい。上述のように産生された、本発明に係る所望のMerの糖修飾体は、以下のものに限定されるわけではないが、白血病細胞およびリンパ主細胞において見られる糖修飾体のように、(変化した糖修飾化に結果として、)約195から210kDまでの、約165から約170kDまでの、約160kD未満の、または約170kDから約195kDまでの間の分子量を有するMerの糖修飾体を含む。上記タンパク質において糖修飾化部位を修飾することによって産生された特に好ましい糖修飾体としては、以下のものに限定されるわけではないが、(1)約165kDから約170kDまでの糖修飾体、(2)約170kDから約190kDまでの糖修飾体、(3)約135kDから約140kDまでの糖修飾体、および(4)約190kDから約195kDまでの糖修飾体を含んでいる。上述のように、そのような糖修飾体は、Mer受容体チロシンキナーゼ上の糖修飾化部位が減少または変化する、誤った翻訳後修飾過程の結果として生じる他の細胞タンパク質における変異、切断されたまたはバリアントの細胞外ドメインを産生する変異、あるいはMerタンパク質が発現および翻訳後修飾される細胞種に起因する、核酸分子における変異の結果であってもよい。例えば、上記Mer受容体チロシンキナーゼの異常に糖修飾化された形態は、種々の糖修飾化の形態を産生する、ヒトの白血病細胞であるJurkat、ヒトの単核細胞であるU937、ヒトの慢性の骨髄性白血病細胞であるK562およびヒトの腎臓由来の細胞株であるHEK293を含む、あらゆる種類の公知の哺乳類に由来する細胞において上記タンパク質を発現することによって産生されてもよい(図14を参照すればよい)。例えば、HEK293細胞株を用いて、特異的なsMerの糖修飾体が産生される(図7Cを参照すればよい)。
【0087】
本発明によれば、生物学的に活性な相同物または上記相同物の断片を含む、単離されたMerタンパク質は、野生体の、または自然に生じるMerタンパク質としての役割(上記相同物または上記断片が、作用物、拮抗物、Merの模倣物およびMerのアイソフォームであるか否かに依存して変化する)を果たす生物学的な活性という少なくとも1つの特徴を有している。Merの生物学的な活性および上記活性の決定方法は、本明細書においてすでに説明されている。
【0088】
1つの実施形態において、Merタンパク質は、他の1つのMerリガンドと比較して、1つのMerリガンドと好適に結合する、Merタンパク質のバリアントおよび/またはMerの糖修飾体であることが特に好ましい。例えば、公知のMerリガンドとしては、Gas6およびプロテイン Sが挙げられる。本発明の1つの局面において、Merタンパク質は、上記Merタンパク質がGas6と結合する親和性よりも統計的に有為に高い親和性によってプロテイン Sと結合する、MerのバリアントまたはMerの糖修飾体のいずれか1つ、あるいはその両方である、可溶性のMerタンパク質であることが好ましい。他の局面において、上記Merタンパク質、好ましくは、可溶性のMerタンパク質は、上記Merタンパク質がプロテイン Sと結合する親和性よりも統計的に有為に高い親和性によってGas6と結合する、MerのバリアントまたはMerの糖修飾体のいずれか1つ、あるいはその両方である、可溶性のMerタンパク質である。
【0089】
本発明のMerタンパク質は、あらゆる可溶性のMerタンパク質を含んでいることがより好ましく、本明細書中において説明したあらゆる上記Merの糖修飾体のあらゆる可溶性の形態を含んでいることがさらに好ましく、本明細書中において説明した異常に糖修飾化されたあらゆる上記Merタンパク質の可溶性のあらゆる形態、または内因性のMerの細胞性の受容体と比較してMerリガンドと好適に結合する競合的な抑制因子を提供するように選択的に糖修飾化されたMerタンパク質のあらゆる可溶性の形態を含んでいることが最も好ましい。本発明の1つの実施形態において、可溶性のMerタンパク質は、上記Merの細胞外ドメイン(例えば、配列番号2の1から473の位置)、あるいは少なくとも1つのMerリガンドとの結合能を保持している、ヒトIgGのFc領域を融合された、および可溶性のMerの特異的な糖修飾体を産生するHEK293(図14を参照すればよい)のような異なる哺乳類由来の細胞株において発現された上記細胞外ドメインのより小さな部分から構成されているキメラタンパク質であることが好ましい。可溶性のMerの他の糖修飾体は、異なる様式においてMerを糖修飾する他の哺乳類の細胞株においてMer−Fc構築物を発現させることによって同様の様式において作製されてもよい(図7Cを参照すればよい)。既存の仮定に縛られることなく、本願の発明者らは、可溶性のMerの異なる糖修飾体が、プロテイン SおよびGas6を含む、異なるMerリガンドとの異なる結合親和性を有していると思われるということを確信している。Merの上記細胞外ドメインは、Merリガンドと結合するMerのあらゆる細胞外断片を含んでいてもよい。そのような可溶性のMerタンパク質は、本明細書中において説明したように、糖修飾化されて十分に糖修飾化されたsMerを形成する、または糖修飾化されていないMerタンパク質である。
【0090】
4.sMerおよびMerバリアントをコードする核酸分子
本発明の1つの実施形態は、(野生体の全長の)Merタンパク質または(バリアントおよび断片を含む)上記Merタンパク質の相同物をコードしている、単離された核酸分子または上記核酸分子のあらゆる相補物に関する。上記Merタンパク質の相同物は、異常に修飾されたMerの糖修飾体が産生されるように、コードされた上記タンパク質における糖修飾化部位を形成するアミノ酸を付加または除去するために、コードされた上記Merタンパク質のアミノ酸配列が変えられた(置換、欠損および/または挿入によって修飾された)結果として生じたMerタンパク質を含んでいてもよい。特に、本発明の1つの局面は、野生体のタンパク質とは異なる糖修飾化部位を備えるMerタンパク質をコードしている核酸分子に関する。上記Merタンパク質は、以下のものに限定されるわけではないが、白血病細胞およびリンパ腫細胞において見られるこれらの糖修飾体のような、(変化した糖修飾化の結果として、)約160kD未満の、または約170kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体を含むMerの糖修飾体のように、野生体のタンパク質とは異なる糖修飾化部位を備えている。上記Merタンパク質における糖修飾化部位を修飾することによって産生するため所望の糖修飾体は、以下のものに限定されるわけではないが、(1)約165kDから約170kDまでの糖修飾体、(2)約170kDから約190kDまでの糖修飾体、(3)約135kDから約140kDまでの糖修飾体、および(4)約190kDから約195kDまでの糖修飾体を含んでいることが好ましい。本発明の核酸分子によって、産生された上述のような糖修飾体は、切断されたまたはバリアントの細胞外ドメインを産生する変異を含む上記Mer受容体チロシンキナーゼ上の糖修飾化部位が減少または変化したことによって生じる、上記尾核酸分子における変異の結果物を含んでいてもよい。結果として異常な糖修飾体を生じる上述のような変異は、部位特異的な変異生成のような標準の細胞学の技術を用いて上記核酸分子に導入されてもよい。部位特異的な変異生成は、上記アミノ酸配列、NXS/Tによって同定されているMerの上記細胞外ドメインにおける糖修飾化部位と連結した13の潜在的なNHを対象にしてもよい。
【0091】
また、本発明は、上述のような細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態をコードしている、単離された核酸分子または上記核酸分子の相補物に関する。また、上記sMerは、上述のような技術を用いて、異常な上記形態と同一の糖修飾化の様式を有するように設計されてもよい。上述のように、本発明の1つの局面は、プロテイン SおよびGas6を含む複数のMerリガンドに対して異なる結合親和性を有している上記sMerの特定の糖修飾体を提供することである。既存の仮定に縛られることなく、本願の発明者らは、可溶性のMerの異なる糖修飾体が、プロテイン SおよびGas6を含む、異なるMerリガンドとの異なる結合親和性を有していると思われるということを確信している。結合親和性を測定するための検定法は、当該分野において周知である。1つの実施形態において、BIAcore装置は、標的タンパク質(例えば、Merの糖修飾体)と本来のリガンドとの間の複合体の結合定数を決定するために用いられてもよい。例えば、上記Merの糖修飾体は、基材上に固定されていてもよい。本来のまたは合成のリガンドは、上記基材と接触させて、複合体を形成する。上記複合体の解離定数は、緩衝液がチップ上を通過する時間に対する屈折率の変化を測定することによって決定されてもよい(O’Shannessyら、Anal. Biochem. 212:457−468 (1993)およびSchusterら、Nature 365:343−347(1993)を参照すればよい)。第1のリガンドと同様に同時に種々の濃度における第2の化合物(例えば、異なるリガンドまたは異なる可溶性のMerの糖修飾体)との接触、および反応性機能(時間に対する上記屈折率の変化)の測定は、上記複合体の解離定数を、上記第2の化合物の存在下において決定するとによって与え、かつ上記第2の化合物が上記複合体の抑制因子であるか否かを示している。可溶性の受容体のリガンドとの結合を測定する他の好適な検定法は、以下のものに限定されるわけではないが、ウエスタンブロット、免疫ブロット法、酵素結合免疫吸着剤検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、免疫沈降、表面プラズモン共鳴、化学発光分析、蛍光偏光、燐光、免疫組織化学検定法、マトリクス支援レーザイオン化−飛行型(MALDI−TOF)質量分析法、マイクロサイトメトリー(microcytometry)、マイクロアレイ、顕微鏡、FACS(fluorescence activated cell sorting)およびフローサイトメトリーが挙げられる。
【0092】
本発明の単離された核酸分子は、例えば、mRNAのようなRNA、またはcDNAおよびゲノムDNAのようなDNAであってもよい。DNA分子は、2本鎖DNAまたは1本鎖DNAであってもよく、1本鎖RNAまたは1本鎖DNAは、コーディング鎖またはセンス鎖、あるいは非コーディング鎖またはアンチセンス鎖のいずれか1つであってもよい。上記核酸分子は、上記遺伝子のコーディング配列の全てまたは一部を含み、かつ(例えば、制御配列を含む)イントロン、ならびに3’および5’末端の非コーディング配列のような付加的な非コーディング配列をさらに包含してもよい。また、上記核酸は、異常に糖修飾された上記糖修飾体をコードする配列を包含していればよい。さらに、上記核酸分子は、例えば、上記ポリペプチドの単離または純化を補助するためのポリペプチドをコードするようなマーカー配列と融合されていてもよい。
【0093】
本明細書中において使用されているように、“単離された”核酸分子は、通常、(ゲノム配列のように)遺伝子もしくは核酸配列と隣接している、および/または他の転写された配列(例えば、RNAライブラリのような)完全にもしくは部分的に純化されている核酸分子から分離されたものである。例えば、本発明の単離された核酸分子は、自然に生じている複合的な細胞内の環境に対して、組換え技術によって産生される場合には、培養液に対して、あるいは化学的に合成される場合には、化学的な前駆物質または他の化学物質に対して実質的に単離されていてもよい。ある場合において、上記単離された材料は、組成物(例えば、他の物質を含んでいる粗抽出物)、緩衝系または試薬の混合の一部を形成するであろう。他の環境において、上記材料は、例えば、PAGEまたはHPLCのようなクロマトグラフィーによって決定されるような、必須の同質性に純化されてもよい。
【0094】
上記核酸分子は、他のコーディング配列または制御配列と融合され、ならびにさらに単離されることが考慮されてもよい。従って、ベクターに含まれている組換えDNAは、本明細書中において使用されているように、“単離された”とうい定義に包含される。また、単離された核酸分子は、溶液内における部分的にまたは実質的に純化されたDNA分子だけでなく、異種の宿主細胞における組換えDNA分子を包含する。また、“単離された”核酸分子は、本発明のDNA分子の生体内および試験管内におけるRNA転写物を包含する。単離された核酸分子または核酸配列は、化学的に合成された、または組換え手法によって合成された核酸分子または核酸配列を含んでいてもよい。従って、ベクターに含まれている組換えDNAは、本明細書中において使用されているように、“単離された”という定義に包含される。また、単離された核酸配列は、溶液内における部分的または実質的に純化されたDNA分子を含んでいる。また、本発明の上記DNA分子の生体内または試験管内におけるRNA転写物は、“単離された”核酸配列によって包含されている。単離された当該核酸配列は、(例えば、他の哺乳類の種から)相同的な配列を単離するための、(例えば、染色体との因鎖いつハイブリッド形成法による)遺伝子マッピング用の、またはノザンブロット解析のような方法による組織(例えば、ヒトの組織)における遺伝子発現の検出用のプローブとして、コードされたポリペプチドの製造に有用である。
【0095】
また、本発明は、必ずしも自然に見られるものではないが、(例えば、コードされたタンパク質上の1つ以上の糖修飾化部位を変更することによる)新規の異常なMerの糖修飾体、および/または細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態をコードする変種の核酸分子に関する。従って、例えば、自然に生じる核酸配列とは異なるが、本発明の異常なMerの糖修飾体または細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼをコードする配列を含むDNA分子は、また、本発明の対象である。また、本発明は、一部(断片)をコードしている、あるいは新規のMerの糖修飾体もしくは上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態の類縁体または誘導体のような変種のポリペプチドをコードしている核酸分子を包含する。当該変種は、対立形質の変種または単一のヌクレオチドの多形の場合のように、自然に生じるもの、あるいは種々の変異原および変異性生成糧によって誘導されたもののような、自然には生じないものであってもよい。対象とする変異は、以下のものに限定されるわけではないが、付加および欠損を含む保存的または非保存的なアミノ酸の変化の結果として生じ得る、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠損および置換である。
【0096】
本発明の核酸分子の他の変化は、例えば、標識化、メチル化、無電荷結合(例えば、ホスホン酸メチル、リン酸トリエステル、ホスホロジチオネート)のようなヌクレオチド内の修飾、荷電結合(例えば、ホスホロチオネート、ホスホロジチオネート、ホスホアミデート、カルバミン酸塩)、垂れ下がった部分(例えば、ポリペプチド)、挿入(例えば、アクリジン、ソラレン)、配位子、アルキレータ(alkyator)および修飾された結合(アルファアノマー核酸)を含む。また、本発明には、水素結合および他の化学的な相互作用を介して設計された配列と結合する能力を有する核酸分子を模倣する合成分子が含まれる。当該分子は、例えば、ペプチド結合が上記分子の骨格においてリン酸結合に置き換わっているものを含む。
【0097】
また、本発明は、選択的なハイブリダイゼーション用のように、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件において、本明細書において説明されているヌクレオチド(例えば、本明細書において説明したようなポリペプチドをコードしている核酸分子、および付加的に上記ポリペプチドの活性を有する核酸分子と特異的に対合する核酸分子)と対合する核酸分子に関する。1つの実施形態において、本発明は、(例えば、選択的なハイブリダイゼーション用の)高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件において新規のMerの糖修飾体(例えば、上記タンパク質の1つ以上の糖修飾化部位が破壊されている)をコードしている核酸配列と対合する、本明細書において説明されるような、変種を包含する。ここで、新規のMerの糖修飾体は、本明細書において説明したような新規の異常なMerの糖修飾体、および/または細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態、あるいはこれらの相同物を含んでいる。
【0098】
また、本発明は、非常にストリンジェントな条件において、異常なMerの糖修飾体または細胞外のMer受容体チロシンキナーゼの可溶型、あるいはこれらの相同物と対合する断片または部分を含む核酸分子を包含する。ハイブリダイゼーションのための“ストリンジェンシーの条件”とは、例えば、特定の核酸分子と第2の核酸とが対合する温度および緩衝液の濃度インキュベーションおよび洗浄の条件を意味する技術用語である。ここで、第1核酸は、第2の核酸と完全に(100%)相補的であってもよく、また、第1および第2の核酸が、完全よりも小さい、ある程度(例えば、70%、75%、85%、95%)の相補性を共有していてもよい。例えば、ある高いストリンジェンシーの条件は、完全に相補的な核酸と完全には相補的ではない核酸とを区別して使用されてもよい。核酸のハイブリダイゼーションに対する“高いストリンジェンシーの条件”、“緩やかなストリンジェンシーの条件”および“低いストリンジェンシーの条件”は、Current protocols in Molecular Biology(Ausubel, F. M.ら、“Current protocols in Molecular Biology”, John Woley and Sons, (1998))の第2.10.1項−第2.10.16項および第6.3.1項−第6.3.6項に説明されている。上記文献の教示内容は、引用することによって、本願明細書に組み込まれる。通常の条件としては、もう一方の配列と対合している状態を維持するような、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、またはそれ以上のお互いに対する同一性を有する配列が使用される。ハイブリダイゼーションが起こらないストリンジェンシーの度合いから、ハイブリダイゼージョンが始めて観察される度合いまでハイブリダイゼーションの条件を変化させることによって、ある配列が、試料における最も類似している配列と対合するであろう条件を決定することができる。
【0099】
より詳細には、本明細書中において用いる場合には、緩やかなストリンジェンシーのハイブリダイゼージョンおよび洗浄の条件は、ハイブリダイゼージョン反応においてプローブに用いられる核酸配列を用いて少なくとも約70%の核酸配列の同一性を有している核酸分子の単離が可能である条件(例えば、30%未満のヌクレオチドの不一致が許容される条件)を意味している。本明細書中において用いる場合には、高いストリンジェンシーのハイブリダイゼージョンおよび洗浄の条件は、ハイブリダイゼージョン反応においてプローブに用いられる核酸配列を用いて少なくとも約80%の核酸配列の同一性を有している核酸分子の単離が可能である条件(例えば、20%未満のヌクレオチドの不一致が許容される条件)を意味している。本明細書中において用いる場合には、非常に高いストリンジェンシーのハイブリダイゼージョンおよび洗浄の条件は、ハイブリダイゼージョン反応においてプローブに用いられる核酸配列を用いて少なくとも約90%の核酸配列の同一性を有している核酸分子の単離が可能である条件(例えば、10%未満のヌクレオチドの不一致が許容される条件)を意味している。上述したように、当該分野における核酸分子同士のハイブリダイゼーションは、Meinkothら、ibid.に記載されている式を用いて、ヌクレオチドの不一致の特定の度合いを達成する適当なハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を計算してもよい。当該条件は、DNAとRNAと、またはDNAとDNAとの対合が形成されるのか否かに依存して、変化するであろう。DNAとDNAとが対合するための計算された融解温度は、DNAとRNAとが対合する融解温度よりも10℃低い。特定の実施形態において、DNAとDNAとが対合するストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、約20℃および約35℃の間の温度において(下位のストリンジェンシー)、より好ましくは、約28℃および約40℃の間の温度において(より高いストリンジェンシー)、さらに好ましくは、約35℃および約45℃の間の温度において(さらに高いストリンジェンシー)、適切な洗浄条件を用いて、6X SSC(0.9M Na+)のイオン強度におけるハイブリダイゼーションを含む。特定の実施形態において、DNAとRNAとが対合するストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件は、約30℃および約45℃の間の温度において、より好ましくは、約38℃および約50℃の間の温度において、さらに好ましくは、約45℃および約55℃の間の温度において、同様の適切な洗浄条件を用いて、6X SSC(0.9M Na+)のイオン強度におけるハイブリダイゼーションを含む。上述のような値は、100ヌクレオチドよりも大きい分子の融解温度、0%のホルムアミド、およびG+Cの含有量が約40%の時の計算に基づいている。別の方法としては、Tm値は、Sambrook ら、 suタンパク質aの第9.31項から第9.62項に記載のように経験的に計算されてもよい。通常、洗浄条件は、可能な限りストリンジェントであり、かつ選択されたハイブリダイゼーション条件に適しているべきである。例えば、は、塩の組み合わせ、および特定の対合の計算されたTMer値よりも低い約20−25℃の温度条件を含んでいてもよく、洗浄条件は、塩の組み合わせ、および特定の対合の計算されたTm値よりも低い約12−20℃の温度条件を含む。DNAとDNAとの対合に用いるために適しているハイブリダイゼーション条件の一例は、約42℃において6X SSC(50%ホルムアミド)における2−24時間のハイブリダイゼーションを含み、室温において約2X SSCにおける1回以上の洗浄工程に続き、次に、より高い温度およびより弱いイオン強度における付加的な洗浄(例えば、約37℃において0.1X−0.5X SSCにおける少なくとも1回の洗浄に続いて、約68℃において0.1X−0.5X SSCにおける少なくとも1回の洗浄)を含む。
【0100】
本発明に関するある局面において、本発明の核酸の断片は、本明細書において説明したような試験法におけるプローブまたはプライマーとして使用される。“プローブ”または“プライマー”とは、核酸分子の相補鎖と塩基特異的な様式において対合するオリゴヌクレオチドである。“塩基特異的な様式”による、とは、2つの配列が、上記プライマーまたは上記プローブと対合するために十分なヌクレオチドの相補性の度合いを有していなければならないことを意味している。従って、上記プライマーまたはプローブの配列は、鋳型の配列と完全に相補的である必要はない。実質的に対合を抑制しない塩基置換が供給されている、相補的ではない塩基または修飾された塩基は、上記プライマーまたは上記プローブに分散されていてもよい。また、上記核酸の鋳型は、上記プライマーまたは上記プローブに対する相補性の度合いが変化する“非特異的なプライミング配列”または“非特異的な配列”を含んでいてもよい。当該プライマーおよび当該プローブは、Nielsenら、Science, 254, 1497−1500(1991)に記載されているようなポリペプチド核酸を含んでいる。通常、プライマーまたはプローブは、異常なMerの糖修飾体(例えば、糖修飾化部位が修飾されているMerの糖修飾体)または細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態、あるいはこれらの相同物を含んでいるMerタンパク質をコードしているヌクレオチド配列を包含する核酸分子の連続的なヌクレオチドの内の少なくとも15個、より好ましくは、約20−25個、さらに好ましくは、約40、50、75、100、150、200またはそれ以上と対合するヌクレオチド配列の領域を含有している。
【0101】
上述したような本発明の核酸分子は、通常の分子生物学的な技術および本明細書において与えられている情報を用いて同定および単離されてもよい。例えば、核酸分子は、異常なMerの糖修飾体または細胞外の上記Mer受容体チロシンキナーゼの可溶性の形態、あるいはそれらの相同物に基づいて設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅および単離されてもよい。通常のPCR技術に関しては、Principlpes and Applications for DNA amplification(ed. H.A. Erlich, Freeman Press, NY, N.Y., 1992)、PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications(Eds. Innis,ら、Academic Press, San Diego, Calif., 1990)、Mttilaら、Nucleic Acids Res., 19:4967(1991)、Eckertら、PCR Methods and Applications,1:17(1991)、PCR(eds. McPherson ら、 IRL Press, Oxford)および米国特許出願4,683,202号を参照すればよい。上記核酸分子は、適切なベクターにクローン化し、かつDNA配列解析によって性質を決定したcDNA、MerRNAおよびゲノムDNAを鋳型として用いて増幅されてもよい。原則的にMerの細胞外の形態からなり、かつ上記分子のキナーゼ領域を欠損しているMerの可溶性の形態は、簡単な開示がなされている米国特許出願5,585,689号の検討から認識されてもよい。
【0102】
他の好適な増幅方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Wu and Wallance, GenoMerics, 4:560(1989)を参照すればよい)、転写増幅、(Kwohら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:1173(1989)を参照すればよい)自己配列増幅(Guateliら、Proc. Nat. Acad.Sci. USA,87:1874(1990)を参照すればよい)およびNASBA法(nucleic acid based amprlification)を含んでいる。
【0103】
上記増幅されたDNAは、(例えば、放射性同位体によって標識された分子または他のレポーター分子を用いて)標識され、かつヒトの細胞、即座に発現されるmRNA、ZAPLOXまたは他の好適なベクターに由来するcDNAライブラリをスクリーニングするためのプローブとして用いられてもよい。対応するクローンが単離され、DNAがin vivoにおいて切除の後に得られ、かつクローン化された挿入断片は、当該分野において認識されている方法によって1方向または両方向に配列決定されて、適当な分子量のポリペプチドをコードしている正しい読み枠が同定されてもよい。例えば、本発明の核酸分子のヌクレオチド配列の直接的な解析は、購入可能な周知の方法を用いて達成してもよい。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual(2nd Ed.,CSHP, New York 1989)およびZyskindら、Recombinant DNA A Laboratory Manual,(Acad. Press 1988)を参照すればよい。これらのまたは類似の方法を用いて、上記ポリペプチドおよび上記ポリペプチドをコードしている上記DNAは、単離、配列決定、およびさらに性質決定されてもよい。
【0104】
通常、本発明の単離された上記核酸配列は、サザンブロットのゲル上の分子量マーカーとして、および遺伝子位置に関する地図に標識されている染色体マーカーとして用いてもよい。また、上記核酸配列は、遺伝的な異常を同定するために患者における内因性のDNA配列との比較のために、ならびに試料に由来する関連するDNA配列を対合させ、かつ発見するための、または試料から公知の配列を取り除くためのプローブとして使用されてもよい。さらに、上記核酸配列は、遺伝子のフィンガープリンティング用のプライマーを引き出すために、DNA免疫技術を用いて抗ポリペプチド抗体を作製するために、ならびに抗DNA抗体を作製するためのまたは免疫応答を誘導するための抗原として使用してもよい。さらに、本発明の上記ヌクレオチド配列は、解析用の、性質決定用の、診断用の、治療用の、あるいは対応するポリペプチドが、恒常的に、異なる種類の間において、または疾患の状態において、発現されている組織用のマーカーとしての組換えポリペプチドを同定し、かつ発現するために好ましく使用される。さらに、上記核酸配列は、本明細書中において説明したように、スクリーニング試験および/または診断試験における試薬として使用され、かつ、本明細書において説明したスクリーニング試験および/または診断試験に使用するキット(例えば、試薬キット)の成分として含まれていてもよい。
【0105】
当該核酸配列は、宿主細胞および当該分野において周知の発現ベクターに取り込まれてもよい。本発明によれば、組換え核酸分子は、異種の核酸配列と結合された、本発明の単離された核酸分子の少なくとも1つを含んでいる。当該異種の核酸配列は、通常、組換え細胞を形成するために宿主細胞内に上記核酸分子を発現および/または導入することのような、クローニング、配列決定、および/または上記核酸分子を取り扱いに適している組換え核酸ベクター(例えば、組換えベクター)である。当該ベクターは、本来的には本発明の核酸分子と隣接して見られない核酸配列である、異種の核酸配列である。一方において、上記ベクターは、また、本来的に本発明の核酸分子と隣接して見られる調節性の核酸配列(例えば、プロモータ、非翻訳領域)を含んでいてもよい。上記ベクターは、RNAまたはDNAのいずれか1つ、原核生物または真核生物のいずれか1つに由来してもよく、通常、ウイルスまたはプラスミドである。上記ベクターは、染色体外の要素(例えば、プラスミド)に維持されていてもよく、また、染色体に統合されていてもよい。上記ベクターの全体は、宿主細胞内の所定の位置に、またはある条件において残存し、上記プラスミドDNAは、除去されて、本発明の上記核酸分子を残していてもよい。統合された上記核酸分子は、染色体のプロモータ、本来のまたはプラスミドのプロモータ、あるいは種々のプロモータに組み合わせの制御下にあってもよい。上記核酸分子の単一、または多数のコピーは、染色体内に取り込まれていてもよい。本明細書において用いられているように、“組換え核酸分子”という用語は、上記宿主細胞内においてクローン化され、操作され、転換(例えば、挿入)された上記核酸配列をライゲートされている組換えベクターを意味している。産生されるべき上記タンパク質をコードしている上記核酸配列は、上記ベクターにおける制御配列(例えば、発現制御配列)と作動的に上記配列を連結するように上記ベクターに挿入されている。ここで、上記ベクターは、上記組換え分子が宿主細胞に導入された場合に、上記核酸分子の転写および翻訳が可能である。本発明によれば、“作動的に連結される”という用語は、核酸分子が宿主細胞に形質移入(形質転換、形質導入、核酸を移入、結合、または案内)された時に上記核酸分子が発現されるように、上記核酸分子が発現制御配列(例えば、転写制御配列、および/または翻訳制御配列)に連結していることを意味している。転写制御配列は、転写の開始、伸張、または終了を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモータ配列、エンハンサ配列、オペレータ配列およびリプレッサ配列のような転写の開始を制御する配列である。好適な転写制御配列は、上記組換え核酸分子が導入されるべき宿主細胞において機能を発揮することができるような、あらゆる転写制御配列を包含する。
【0106】
また、DNAまたはRNAのいずれか1つである本発明の組換え分子は、上記組換え細胞において適合性のある、翻訳制御配列、複製開始点、および他の制御配列のような、付加的な制御配列を含んでいてもよい。また、1つ実施形態において、宿主細胞の染色体に統合される本発明の組換え分子は、発現されたタンパク質が上記タンパク質を産生する細胞から分泌されるように、分泌シグナル(例えば、シグナル断片の核酸配列)を含んでいてもよい。好適なシグナル断片は、本発明のタンパク質と本来的に関与するシグナル断片、または本発明に係るタンパク質の分泌を指示することができるあらゆる異種のシグナル断片を含んでいてもよい。
【0107】
本発明の組換え分子の1つ以上は、コードされた本発明の産物を産生するために使用されてもよい。1つの実施形態において、コードされた産物は、本明細書において説明したように、核酸分子を発現することによって、上記タンパク質を効果的に産生する条件において産生される。コードされたタンパク質を産生する方法は、1つ以上の組換え分子を用いて宿主細胞に形質移入することによって組換え細胞を形成する方法が好ましい。形質移入するための好適な細胞としては、以下のものに限定されるわけではないが、形質移入することができる、あらゆる細菌の細胞、菌類の細胞(例えば、酵母)、昆虫細胞、植物細胞、または動物細胞が挙げられる。宿主細胞は、形質移入されていない細胞または少なくとも1つの核酸分子を用いてすでに形質移入されている細胞のいずれか1つであってもよい。
【0108】
本発明によれば、“形質移入”という用語は、外来性の核酸分子(例えば、組換え核酸分子)が、上記細胞内に挿入され得る、あらゆる方法を意味するものとして使用される。“形質転換”という用語は、当該用語が、細菌および酵母のような微生物の細胞への核酸分子の導入を意味するように使用される場合には、“形質移入”という上記用語を交換可能に使用されてもよい。微生物の系において、“形質転換”という用語は、微小器官による外来性の核酸の取得が原因となって、遺伝の変化を説明するために使用され、“軽質移入”という上記用語と同義に使用される。しかし、動物細胞において、形質転換は、例えば、癌化した後に培養細胞の増殖特性に関する変化を意味する、第2の意味を有している。従って、混同を避けるために、動物細胞に外来性の核酸を導入することに関しては、“形質移入”という上記用語が、好ましく使用される。 “形質移入”という上記用語は、上記用語が細胞の中への外来性の核酸分子の導入に関する範囲として、本明細書において、通常、動物細胞の形質移入および微生物の細胞の形質移入の両方を包含するように使用される。従って、形質移入技術は、以下のものに限定されるわけでないが、形質転換、電気穿孔法、微量注入法、リポフェクション、吸着、感染および原形質融合を含む。
【0109】
(組成物)
本発明のいくつかの実施形態は、診断用、スクリーニング用、または治療目的の組成物または製剤を含む。当該組成物または当該製剤は、本明細書中において説明したような、Merの糖修飾体に対するあらゆる抗体、あらゆるMerポリペプチド(例えば、Merの可溶性の形態および/または本明細書において説明したあらゆるMerの糖修飾体)あるいは、Mer、特に、あらゆる可溶性のMerタンパク質もしくはMerの糖修飾体をコードしているあらゆる核酸分子を含んでいてもよい。1つの局面において、上述のような薬剤は、薬学的に受容可能な担体を用いて調製されてもよい。“薬学的に受容可能な”という用語は、生理学的に耐性があり、かつヒトに投与した場合に異常亢進、眩暈などのようなアレルギー性のまたは類似の不適当な反応を生成しない、分子の構成要素および組成物を意味している。本明細書において用いられているように、“薬学的に受容可能な”という用語は、連邦政府または州政府の監督官庁、あるいは米国の薬局方、または他の通常に認識されている薬局方によって、動物および特にヒトに対する使用について承認されているという意味である。“担体”という用語は、上記組成物が投与される場合に用いる希釈剤、補佐剤または賦形剤を意味している。当該薬学的な担体は、ラッカセイ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などのような、石油由来、動物由来、植物由来または合成由来のもの含んでいる水およびオイルのような無菌の液体であってもよい。水あるいは生理食塩水ならびにブドウ糖液およびグリセロール溶液は、担体、特に注射溶液の担体として好ましく採用される。通常、好適な薬学的担体は、E. W. Martinによる“Remington’s Pharmaceutical Science”に記載されている。
【0110】
本発明によれば、本発明の薬学的組成物は、非経口的に、経粘膜的、例えば、経口的(経口)、経鼻的、または経皮的に導入されてもよい。非経口の経路は、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与、腹腔内投与、脳室内投与、および頭蓋内投与を含む。例えば、脊椎穿刺によって脳髄液内に投与することが好ましい。
【0111】
他の実施形態において、上記治療的な組成物は、小胞、より詳細には、リポソームに運ばれてもよい(Langer, Science 249:1527−1533(1990)およびTreatら、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez−Berestein and Filder(eds.), Liss:New York, pp.353−365(1989))を参照すればよい)。全身性の副作用を低下させるためには、この方法が上記組成物を導入する方法として好ましい。
【0112】
さらに、他の実施形態において、上記治療的な組成物は、制御された放出系において運ばれてもよい、例えば、ポリペプチドは、持続的なポンプを用いた静脈内注入、ポリ乳酸/ポリグルタミン酸(PLGA)のようなポリマーマトリクス、皮下に埋め込まれたコレステロールと抗アミロイドペプチド抗体との混合物の粒剤(米国特許出願5,554,601号を参照すればよい)、浸透圧性のポンプ、経皮的な膏薬、リポソーム、または他の投与の様式によって投与されてもよい。
【0113】
さらに、本発明の薬学的組成物は、上述の予防または処置における共同作用を提供するような割合のそれぞれにおいて、本発明の上記モノクローナル抗体、あるいはMerおよび/またはMerの糖修飾体の可溶性を有する細胞外の形態の治療的に効果的な量を含むことが好ましい。本発明の薬学的組成物の治療的に効果的な量は、通常、治療上の目的を達成するために必要とされる量と関係している。
【0114】
5.本発明の方法
本発明は、多様な診断方法、前兆検出方法および治療方法もまた包含している。これらの方法は、本明細書中において開示した試薬と同様に、本発明者らが見出したMerの糖修飾体を特に使用するものである。本発明に係る方法において使用する試薬には、本発明に係る抗体、Merの糖修飾体、可溶性のMerタンパク質(特に可溶性のMerの糖修飾体)、および核酸分子が含まれる。この核酸分子は、可溶性のMerタンパク質および変異したグリコシル化部位を有するMerタンパク質をコードするものである。
【0115】
(本発明の診断方法)
したがって、本発明の1つの実施形態は、個体における白血病またはリンパ腫のような癌を診断する方法を提供する。本発明に係る癌を診断する方法は、患者試料中においてMer膜貫通レセプターチロシンキナーゼの特定の糖修飾体を検出する工程を包含しており、特定の癌に結びつくMer膜貫通レセプターチロシンキナーゼの特定の糖修飾体の存在を癌の指標とする、またはある特定の糖修飾体の存在を様々な治療方法に適用しやすい前兆を示すマーカーとする方法である。本発明に係る診断試験は、異常なMerの糖修飾体を評価するように設計されている。1つの実施形態において、個体が癌に冒されているか否かを決定するために、生物学的試料(例えば、血液、血清、細胞、組織)のコンテキスト中でこの試験方法は用いられる。また、好ましい実施形態においては、白血病またはリンパ腫に冒されているか否か、および疾患の深刻さを試験するために用いられる。
【0116】
本発明に係る方法は、個体において異常なMer膜貫通レセプターチロシンキナーゼの糖修飾体を検出する方法を包含しており、異常なMer膜貫通レセプターチロシンキナーゼの存在を、個体におけるMerの変異型糖修飾体を発現する癌細胞の存在の指標とする方法である。
【0117】
本発明によれば、用語「腫瘍発生」は主として、細胞または細胞群の腫瘍の状態(例えば、細胞の腫瘍性悪性転換の程度、細胞の悪性の程度、あるいは腫瘍を形成する細胞および/または腫瘍の特性を有する細胞の傾向)に関係している。そして、用語「腫瘍発生」は、細胞または細胞群の正常状態から悪性状態への変化でもある。腫瘍発生は、腫瘍細胞が試料中に存在している、および/または正常細胞から腫瘍細胞への悪性転換が進行中であることを示している。腫瘍発生は、標準的ないずれかの腫瘍の成長の測定方法によって確認される。変化には、同様の条件下において、正常細胞で観察される細胞成長よりも早い速度による細胞増殖が典型的に含まれる。このような変化は以下に示す1つ以上の特徴によって典型的に特徴付けられる。刺激因子(例えば、発癌性物質、ウイルス)がもはや存在しなくなった後さらに継続する成長;構造的構成、および/または正常組織との強調の欠如、および典型的には組織集団または腫瘍の形成。それゆえに腫瘍は、腫瘍性成長の結果として生じる最も一般的な細胞の増殖(例えば、異常増殖、腫瘍、ポリープ)と言え、最も典型的には悪性腫瘍である。腫瘍性転化の場合、異常増殖は悪性であるか、または悪性になりやすい。悪性腫瘍は、無形成である(分化の欠如によって特徴付けられる未発達の細胞成長)、浸潤的である(組織中に浸入する、または組織の周囲を破壊する)、および/または転移(体の他の部位に拡がる)するものである。ここで使用される場合、「腫瘍性転化の可能性」、「腫瘍発生の可能性」、または「腫瘍性細胞成長の可能性」は、将来のある時点において、細胞または細胞群が、無形成成長、浸潤成長および/または転移成長によって特徴付けられる急激な細胞増殖を含む腫瘍性転化の特徴を示すことの予測または見込みを意図している。本発明においては、腫瘍発生または腫瘍性転化、ならびに特異的な腫瘍性細胞成長の予測または見込み(例えば、腫瘍発生の肯定的な診断)は、細胞における特定のMerの糖修飾体の異常発現の検出に基づいて決定される。
【0118】
本発明に係る方法にはいくつかの異なる使用方法がある。初めに、本発明に係る方法は、対象中に特定の型の腫瘍細胞の存在または不在を診断するために用いられ得る。対象は、腫瘍を保持している疑いのある個体、あるいは健康であると推定される個体であるが、定期健診または腫瘍(癌)の存在の診断スクリーニングを行う個体であってよい。対象はまた、以前に癌であると診断し、治療した患者であって、現在腫瘍成長の治癒の監視下にある患者であってもよい。用語「診断する」、「診断」、「診断している」およびこれらが変形した用語は、その徴候および症状に基づいた疾患または病気の識別に関連している。ここで使用される場合、「肯定的な診断」は、疾患または病気、あるいは疾患または病気に進行する可能性が識別されていることを意図している。一方、「否定的な診断」は、疾患または病気、あるいは疾患または病気に進行する可能性が識別されていないことを意図している。それゆえに、本発明においては、腫瘍の成長または腫瘍発生(例えば、悪性のまたは不適当な細胞成長、あるいは腫瘍性転化)あるいはその可能性の肯定的な診断(例えば、肯定的な査定)は、本発明による(例えば、特定のMerの糖修飾体の発現)腫瘍の存在および/または成長の指標(例えば、徴候、症状)が、対象から得た試料中において識別されることを意味している。このような対象はその後、腫瘍の成長を抑えるまたは除くために、所定の処置がなされてもよい。同様に、腫瘍の成長またはその可能性の否定的な診断(例えば否定的な査定)、あるいは否定的な診断による腫瘍細胞不在の診断は、腫瘍の成長または腫瘍発生、あるいはここで記載した腫瘍の進行の見込みが、対象から得た試料中において識別されない(例えば、Merまたは特定のMerの糖修飾体が検出されない)ことを意図している。この場合、対象は典型的には所定のどんな処置もされないが、将来の1またはそれ以上の時点において、腫瘍の成長を再度査定するために、再度評価されてもよい。
【0119】
本発明の他の実施形態において、Merの糖修飾体の発現は、癌患者および特に白血病患者に重要な前兆を示している。例えば、本発明者らは、Merを高いレベルにおいて発現しているT細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)の患者を診断すると、CD3が発現していないリンパ芽球を有していることを見出した。このことは、胸腺細胞分化の未発達段階から白血病が生じることを示唆している(図15)。CD3が発現していない(例えば、未発達段階)T細胞白血病は、化学療法を強化しない限り、自発的な生存の機会が減少する。CD3が発現していないT細胞ALLのサブセットとMerとの関連は、T細胞ALLにおけるMer発現が重要な前兆であることを示唆している。それゆえに、Merの糖修飾体の検出に加えて、Merの糖修飾体の発現型および発現レベルを、特定の癌患者において前兆を決定するために用いることができる。
【0120】
本発明の方法を用いて診断するのに好ましい癌には、腫瘍細胞がMerおよび特に異常なMerの糖修飾体の発現に相関する、いずれの癌も含まれる。本発明の方法を用いて診断するのに好ましい癌は、特に限定されないが、白血病およびリンパ腫であり、より具体的には、急性リンパ芽急性白血病(ALL)を含むリンパ芽球性白血病および骨髄性白血病である。特に、約170kDから約190kDの間の分子量、および/または約135kDから約140kDの間の分子量を有しているMerの糖修飾体の検出は、リンパ芽球性白血病の肯定的な診断を示している。約190kDから約195kDの間の分子量を有しているMerの糖修飾体の検出は、骨髄性白血病の肯定的な診断を示している。さらに、PCRまたは定量的PCRによるリンパ芽球における異所的なMerのRNA転写物の高レベルの検出、あるいは膜面CD3の欠如を組み合わせて、ウエスタンブロットまたはフローサイトメトリーによる約170kDから約190kDの間の分子量を有するリンパ芽球におけるMerの糖修飾体の検出は、化学療法を強化しない限り、自発的な生存の機会が減少しているリンパ芽球性白血病の肯定的な診断を示している。
【0121】
本発明に係る方法は、患者から得たテスト試料中におけるMerの糖修飾体発現を検出する工程を包含している。本発明によれば、用語「テスト試料」は、一般的に、本発明によって評価される細胞から分泌された細胞または生成物を含む、いずれの型の試料にも関連して用いられ得る。このようなテスト試料は特に限定されないが、単離した細胞の試料、組織試料および/または体液試料を含んでいる。本発明によれば、単離された細胞の試料は、典型的には懸濁液中の細胞の被検物である。または、単離した細胞の試料は、in vivoにおいて組織内部の細胞に結合され得る結合組織から分離される。器官、組織または体液から、本発明の方法によって評価するために適した数の細胞を回収することができるいずれかの適切な方法によって、単離した細胞の試料は回収される。細胞試料はまた、可溶性のMerタンパク質を含有していると思われる細胞の上清または溶解分離物のようなものから可溶性生成物から得る工程であってもよい。細胞試料中の細胞は、必ずしも同じ型でなくてもよいが、好ましい評価される細胞の型を多くするために精製方法を用いることができる。細胞は、例えば組織の断片化する、個々の細胞を放出させるために組織を処理する、または体液から単離することによって得ることができる。組織は、単離した細胞と同様であるが、器官の断片または体の組織としてここで定義される。器官の断片または体の組織には、典型的に、いくつかの細胞の型および/または細胞を互いに繋ぐ細胞骨格構造が含まれる。当該技術分野における通常の知識を有するものは、用語「組織試料」がいくつかの例において、「細胞試料」と交換可能であることを理解する。しかしながら用語「組織試料」は、細胞試料よりも複雑な構造を称するのに用いられることが好ましい。組織試料は、例えば切除する、薄く切り取るまたは穴をあけることを含む、生検によって得ることができる。体液試料は、組織試料のように、Merの糖修飾体発現を評価するために細胞を含んでいる。そして体液試料は、特定の体液に適したいずれかの方法によって試料にするために得られた液体である。試料に適した体液は、特に限定されないが、血液、粘液、精液、唾液、母乳、胆汁および尿が含まれる。一般に、試料の型(例えば、細胞、組織または体液)は、腫瘍細胞の成長を評価する器官または組織の入手の容易性または構造、ならびに/あるいは評価する癌の型に基づいて選択される。
【0122】
いったん対象から試料を得れば、試料の細胞中におけるMerの糖修飾体発現の検出のために試料を評価する。用語「Mer発現」(いずれの型のMerにも当てはめることができる)は、一般にMer mRNAの転写またはMerタンパク質の翻訳に関連している。Mer転写の検出は、特定の細胞がMerを発現しているか否かを検出するのに有用である。しかしながら、Merの糖修飾体がMerをコードする核酸配列における変異が原因でなければ、Mer転写の検出はMerの糖修飾体を検出するのには役立たない。Merをコードする核酸配列における変異は、結果として発現したタンパク質における糖修飾化部位を変異させるものである。しかしながら、本発明に係る方法による診断の可能性を高めるために、Merの他のバリアントの検出を、Merの糖修飾体の検出と組み合わせてもよい。
【0123】
したがって、Mer転写を検出するのに適した方法は、細胞または細胞抽出物からmRNAレベルを検出および/または測定するのに適したいずれかの方法を包含している。このような方法には、特に限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転酵素PCR(RT−PCR)、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、配列解析、遺伝子マイクロアレイ解析(遺伝子チップ解析)およびレセプター遺伝子の検出が含まれる。転写レベルを検出するためのこのような方法は、当該技術分野においてよく知られており、このような方法の多くは添付の実施例および以下に示す参照文献に詳細に記載されている。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Labs Press,1989、および/またはGlickら、Molecular Biotechnology:Principle and Applications of Recombinant DNA,ASM Press,1998;Sambrookら(同文献)およびGlickら(同文献)のすべてを、ここに参照することによって本明細書中に組み込む。
【0124】
Merの糖修飾体発現は、Mer翻訳を検出する(例えば、試料中におけるMerタンパク質の検出)ことによって、より典型的に同定される。Merタンパク質の検出に適した方法は、細胞または細胞抽出物からタンパク質を検出および/または測定するのに適したいずれかの方法を包含している。このような方法には、特に限定されないが、免疫ブロット(例えば、ウエスタンブロット)、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫沈降、免疫組織化学および免疫蛍光が含まれる。タンパク質を検出するのに特に適した方法には、免疫組織化学および免疫蛍光解析を含むいずれかの単一細胞解析が含まれる。このような方法は、当該技術分野においてよく知られている。さらに、Merの糖修飾体の検出に特に有用であるMerに対する抗体は本発明により提供され、これらの方法に使用可能である。
【0125】
個々の試料における標的Merの糖修飾体の肯定的な診断は、得られた試料が由来する細胞または組織において、腫瘍細胞成長(腫瘍性転化)が引き起こされる、引き起こされている、または統計的に引き起こされている可能性があることを示している。個々の試料における標的Merの糖修飾体の否定的な診断(例えば、Merの糖修飾体が検出されなかった)は、ここに記載したように、腫瘍の存在の指標または腫瘍が成長している見込みが、対象から得られた試料中において同定されなかったことを意味している。この場合には、対象は典型的にはいずれの処置も指示されないが、将来の1つの時点またはそれ以上の時点において、腫瘍の成長を再び査定するために再評価してもよい。
【0126】
ここに記載された核酸、プローブ、プライマー、ポリペプチド(可溶性のMerおよびMerの糖修飾体を含む)および抗体は、特に白血病およびリンパ腫のような癌の診断方法において用いられ、特に白血病およびリンパ腫のような癌の診断に有用なキットにも同様に用いられ得る。例えば、本発明は、本発明に係る核酸(例えば、変異型Merの糖修飾体または可溶性の細胞外のMerをコードする核酸)にハイブリダイズするポリヌクレオチドの存在を同定するための方法を提供する。同様に、本発明は、Merの糖修飾体または可溶性のMerを検出する試薬(例えば、抗体またはそのフラグメントに結合する抗原)を用いて、本発明に係るポリペプチド(例えば、変異型Merの糖修飾体または可溶性細胞外Mer)の存在を同定するための方法を提供する。
【0127】
1つの実施形態において、試料中における目的する核酸分子(例えば、本発明に係る核酸とかなり高い相同性を有する核酸)の存在(または不在)は、上述したストリンジェントな条件下において本発明の核酸(例えば、異常なMerの糖修飾体または可溶性細胞外Merをコードする核酸)を含む核酸と試料を接触させ、試料にハイブリダイズする核酸が存在するか否かを評価することによって、評価することができる。好ましい実施形態において、高ストリンジェントな条件は、選択的ハイブリダイゼーションに適した条件である。他の実施形態において、目的の核酸分子を含む試料は、目的の核酸分子の一部に少なくとも部分的に相補性を有する、接触性の核酸配列(例えば、上述したようなプライマーまたはプローブ)を含む核酸に接触させ、接触した試料にハイブリダイズするか否かを評価する。好ましい実施形態において、接触性の核酸配列を含む核酸は、目的の核酸分子の一部に対して完全に相補性を有する。これらの実施形態のいずれにおいても、目的の核酸の全てまたは一部を、ハイブリダイズさせる前の遺伝子増幅の対象とすることができる。
【0128】
より具体的には、白血病またはリンパ腫を診断する一方法において、サザン解析、ノーザン解析またはin situハイブリダイゼーションのようなハイブリダイゼーション法を使用することができる。このような検出技術は当該技術分野においてよく知られている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら、John Wiley&Sons編集を、発行された全ての補足を含めて参照のこと。たとえば、試験対象(試験試料)のゲノムDNA、RNAまたはcDNA由来の生物学的試料を、白血病を有する疑いのある個体(試験個体)から得る。血液試料、羊水試料、脳脊髄液試料、肌、筋肉、頬、または結膜粘液組織試料、胎盤、胃腸管、あるいは他の器官のようなものから試験試料を得ることができる。それから、特に限定されないが、170kDから195kDの範囲内のMerアイソフォームを含む変異型アイソフォームをコードする核酸が存在するかどうかを決定するために、DNA、RNAまたはcDNA試料を試験する。患者試料に由来する核酸配列によって発現するタンパク質の糖修飾化部位における変異の結果、Merタンパク質の糖修飾化が生じている(例えば、Merをコードする核酸が変異している)場合、このような変異体はこの方法によって検出されるだろう。アイソフォームまたはスプライシング変異体の存在を、ゲノムDNA、RNAまたはcDNA中の遺伝子の核酸プローブに対するハイブリダイゼーションによって同定することができる。「核酸プローブ」は、ここで使用する場合、DNAプローブまたはRNAプローブであり得る。プローブは上述したいずれの核酸分子(例えば、遺伝子、フラグメント、遺伝子を含むベクター、プローブまたはプライマー等)であってもよい。
【0129】
試料は特異的ハイブリダイゼーションが可能であるのに十分な条件下で維持される。「特異的ハイブリダイゼーション」は、ここで使用する場合、正確なハイブリダイゼーション(例えば、ミスマッチのない)を示している。特異的ハイブリダイゼーションは、例えば上述したような高ストリンジェントの条件または中ストリンジェントの条件下で行うことが可能である。特に好ましい実施形態においては、特異的ハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェントである。ハイブリダイゼーションは、それから当該技術分野においてよく知られた標準的な方法によって検出される。
【0130】
配列解析もまた、大きさが異なることに起因するMerの変異を検出するのに用いることができる。DNAまたはmRNAの試験試料を試験個体から得る。必要であれば、遺伝子および/またはその遺伝子の端部を増幅するために、PCRまたは他の適切な方法を用いることができる。Merの配列、遺伝子フラグメントの配列、cDNAの配列、cDNAフラグメントの配列、mRNAの配列またはmRNAフラグメントの配列を、標準的な方法を用いて決定する。遺伝子、遺伝子フラグメント、cDNA、cDNAフラグメント、mRNAまたはmRNAフラグメントの配列を、遺伝子の公知の核酸配列と比較する。
【0131】
変異型糖修飾体がMer遺伝子の変異に起因する場合、上述の相違を検出する本発明に係る核酸から生成されたオリゴヌクレオチドを、ドットブロットハイブリダイゼーションを介して変異型Merの糖修飾体の存在を検出するのに用いることができる。「オリゴヌクレオチド」(ここで「プローブ」としても参照される)は、約10〜50塩基対、好ましくは約15〜30塩基対の核酸であり、変異型Merの糖修飾体をコードする配列に特異的にハイブリダイズするものである。異常なMerの糖修飾体に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを、標準的な方法(上述のCurrent Protocol in Molecular Biology参照のこと)を用いて準備することができる。このように、DNAの試験試料を個体から得る。Merの全長配列またはフラグメント、ならびにその端部配列を増幅するために、PCRを用いることができる。増幅したMer(または遺伝子のフラグメント)を、標準的な方法(上述のCurrent Protocol in Molecular Biology参照のこと)によってドットブロットし、ブロットをオリゴヌクレオチドプローブに接触させる。それから、異常なMerの糖修飾体に対するプローブの特異的ハイブリダイゼーションの存在が検出される。個体に由来するDNAに対するオリゴヌクレオチドプローブの特異的ハイブリダイゼーションは、白血病またはリンパ腫の示唆である。
【0132】
核酸解析の他の方法では、異常なMerの糖修飾体をコードする配列を直接シーケンス(配列決定)することも可能である。代表的な方法には、直接マニュアルシーケンス、自動蛍光シーケンス、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP)、クランプド変性ゲル電気泳動(CDGE)、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Sheffield,V.C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:232−236(1989))、可動性シフト解析(Orita,Mら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2766−2770(1989))、制限酵素解析(Flavellら、Cell 15:25(1978);Geeverら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:5081(1981))、ヘテロ二本鎖解析、化学ミスマッチ分割(CMC)(Cottonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4397−4401(1985))、RNase保護解析(Myers,R.M.ら、Science 230:1242(1985))が含まれる。
【0133】
他の実施形態において、本発明のポリペプチド、その断片、またはその変異体のような目的のポリペプチドの試料中における存在(または不在)は、目的のペプチドに特異的にハイブリダイズする抗体(例えば、上述したような抗体)に試料を接触させることによって評価することができる。それから、例えば、異常なMerの糖修飾体、可溶性のMerまたはMerのバリアントの診断によって、白血病またはリンパ腫のような癌を診断した試料のように、目的のポリペプチドに対して結合する抗体の存在(または不在)を評価した試料に対して、Merポリペプチドの発現および/または構成を試験することができる。Merポリペプチドの発現および/または構成の試験は、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む様々な方法によって行われる。個体に由来する試験試料は、Merの糖修飾体の存在、または特定のバリアントの存在を評価する。好ましい実施形態において、上述した抗体またはその断片に結合する抗原のいずれかを、本発明に係る方法に用いることができる。
【0134】
1つの実施形態において、例えば上述した311モノクローナル抗体、全てのMerの糖修飾体を識別する他の抗体、または上述したMerの変異型糖修飾体を特異的に識別する他の抗体を用いたウエスタンブロット解析を、試料中のMerの糖修飾体または可溶性のMerのいずれかのスペクトルの試験試料中における存在を同定することができる。Merの糖修飾体を同定する他の技術は当該技術分野においてよく知られており、本明細書中にそのいくつかを示す。約170kDから約190kD(特に185kD)の間のMerの糖修飾体、または約135kDから約140kDの間のMerの糖修飾体の存在によって、白血病(急性リンパ芽球性白血病)と診断する。190〜195kDのMerの糖修飾体の存在によって、骨髄性の白血病またはリンパ腫と診断する。
【0135】
診断方法に有用なキット(例えば、試薬キット)は、本明細書中に記載したいずれかの方法に有用な構成成分を含んでいる。このようなキットに含まれる構成成分は、例えば、上述した可溶性のMerの糖修飾体を含む可溶性のMerタンパク質、Merタンパク質および糖修飾体のようなタンパク質が発現した細胞、上述したハイブリダイゼーションプローブまたはプライマー(例えば、標識プローブまたは標識プライマー)、標識した分子を検出するための試薬、制限酵素(例えば、RFLP解析のための制限酵素)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド、抗体およびそのフラグメントに結合する抗原、核酸増幅のための手段、核酸またはアミノ酸配列解析のための手段、陽性対照などである。
【0136】
(本発明のスクリーニング試験法)
他の実施形態において、本発明は物質(例えば、融合タンパク質、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、プロドラッグ、レセプター、結合物質、抗体、小さい分子または他の薬剤、リボザイム、あるいは核酸)を同定するための方法およびスクリーニング解析を提供する。このような物質は、sMerまたは変異型Merの糖修飾体の活性を変化させる(例えば、増大または低下させる)、模倣するまたは調節するものであるか、あるいはそうでなければ上述したこれらのポリペプチドと相互作用するものである。例えば、このような物質は、上述したポリペプチドに結合する物質であり、例えば本発明に係るポリペプチドの活性を刺激または抑制する効果を有していてもよく、結合物質(例えば、レセプターまたは他の結合物質)と相互作用することによって本発明に係るポリペプチドの作用を変化させる(例えば、促進または抑制する)ものであってもよい。例えば、Merの細胞外ドメインのリガンドに対する結合に影響する分子の作用は、血液の凝固に影響する分子または特定の癌の治療に用いることが可能な分子のスクリーニング解析に利用される。同様に、TAPI(図11を参照のこと)によって例示される、細胞内に固定されたMerを放出するタンパク質加水分解を抑制する分子の作用は、血液の凝固に他の方向から影響する分子のスクリーニング解析に使用される。他の例において、sMerを用いたスクリーニング解析により、sMerに結合することによって後にMerチロシンキナーゼを調節(抑制、干渉、促進または他の影響)し、癌においてMerの活性を抑制する分子を同定することができる。例えば、このような解析は、Merのリン酸化または糖修飾化(またはこれらの欠如)を試験する形式であってもよい(図13)。細胞の生存および増殖にこれらの活性化が影響している。本発明はまた、プロテアーゼ抑制剤、より好ましくは金属プロテアーゼ抑制剤、および最も好ましくはTACE抑制剤を同定するための解析を考慮している。
【0137】
好ましい実施形態において、このような解析においては、本発明者らにより見出された種々のMerの糖修飾体の特定の発現を利用する。特に、本発明に係る方法においては、特定のMerの糖修飾体に選択的に結合する(例えば、ある糖修飾体が他の糖修飾体に優先して結合される)化合物(タンパク質、ペプチド、抗体、小さい分子等)をスクリーニングするために、上述したいずれかの糖修飾体を含むMerの特定の糖修飾体を使用することができる。加えて、本発明に係る方法は、Merリガンドの内部Merレセプターに対する結合を競合的に抑制し、治療物質として使用することができるMerの糖修飾体をスクリーニングするために用いることができる。本発明に係る方法はまた、あるMerリガンド(例えば、Gas6またはタンパク質S)に他のMerリガンドよりも選択的(優先的)に結合するMerタンパク質(特定のMerの糖修飾体を含む)をスクリーニングするために用いることができる。
【0138】
1つの実施形態において、リガンドまたは化合物に接触させたときの反応における結合親和性またはMer活性の違いを識別するために、いくつかの異なるMerの糖修飾体をMerリガンドまたは他の推定される調節化合物に接触させる。他の実施形態において、グリコシル化の結果得られる、上述したMerの糖修飾体(例えば、上述したいずれかの分子量を有する糖修飾体)以外の追加のMerの糖修飾体のうち、分子量が約109kDから約210kDの間またはそれより大きい(野生型タンパク質と比較して、追加の糖修飾化部位がタンパク質に追加されたMerのバリアントの場合)Merの糖修飾体の、Merリガンドまたは推定される調節化合物との結合を試験する。特に、Merリガンドまたは推定される調節化合物に親和することを好むMerの糖修飾体を同定するために、100kDから210kDの間またはより大きい分子量のいずれのMerの糖修飾体を試験することができる。100kDから210kDの間またはより大きい分子量のいずれのMerの糖修飾体には、100kDから200kDの間またはそれ以上のいずれの大きさの糖修飾体が含まれ、1kDづつ分子量を増加させた(例えば、100kD、101kD、102kD、・・・145kD、146kD、・・・201kD、202kD、・・・210kD、211kD・・・等)糖修飾体も含まれる。Merリガンドに対して異なる親和性を有するMerの糖修飾体、または標的細胞の型(例えば、血小板または腫瘍細胞)に発現した通常のMerの糖修飾体よりも高い親和性でMerリガンドに結合したMerの糖修飾体が特に好ましい。これらの糖修飾体は、様々な治療解析において使用される可溶性のMerの糖修飾体として(例えば、癌または凝固障害のような症状を治療するための内因性Merの競合的な抑制剤として)生成され得るからである。
【0139】
Gas6の機能を調節するMerの細胞外ドメインの機能を同定するための解析、Gas6と相互作用するMer部位を同定するための解析、および同様に同じGas6ドメインにおいて相互作用する小さい分子の擬態物を同定するための解析もまた、本発明の範囲に含まれることが理解される。
【0140】
本発明の他の局面は、本発明に係る遺伝子の発現またはポリペプチドの活性に対する物質(例えば、薬物、化合物または他の物質)の影響を監視するための解析、および同様に本発明に係る変異型Merの糖修飾体および可溶性のMerポリペプチドに結合あるいは抑制する物質を同定するための解析に関係している。
【0141】
このような方法は、(a)Merタンパク質と試験化合物とを接触させる工程と、(b)試験化合物がMerタンパク質に結合するかどうかを決定する工程とを包含している。この方法は、例えばMerチロシンキナーゼ活性に関連するシグナル伝達事象を検出することによって、試験化合物がMerレセプターの生物学的活性を活性化または抑制するかどうかを決定する追加工程を任意で包含していてもよい。Mer活性を評価する場合、細胞をベースとして解析することが可能であり、結合のみを評価する場合、細胞をベースとせずに解析することが可能である。
【0142】
本発明に係る方法において使用されるのに適した細胞は、検出可能なレベルのMer、特にMerの特定の糖修飾体を発現する、または発現を誘引することができるいずれの細胞であってもよい。Merの検出可能なレベルは、上述したMerを検出するための方法のいずれかを用いて検出することが可能なレベルである。Merは多くの哺乳類細胞の型に発現しているので、様々な細胞の型を選択することができる。好ましい細胞の型は上述したように、Merの特定の糖修飾体を内在的に発現している細胞である。これに代えて本発明に係る方法において用いるのに適した細胞は、Merをコードする組み換え核酸分子をトランスフェクトし、転写調節配列に作動可能に連結することによって、細胞中にMerが発現した細胞である。Merの特定の糖修飾体を生成するようにMerタンパク質を翻訳後調節するために、細胞を選択することができる。または、Merタンパク質のグリコシル化部位を、Merの特定の糖修飾体を生成するように設計するように、Merタンパク質をコードする核酸分子を調節することができる。組換え細胞を準備するための方法および試薬は、当該技術分野においてよく知られている。
【0143】
細胞をベースとしない解析において、可溶性のMerの糖修飾体を上述したいずれかの方法を用いて生成することが可能であり、適切な基質上に固定するか、あるいは解析容器中において試験化合物と混合する。
【0144】
ここで使用される場合、用語「推定される調節化合物」は、未知の、または特定の処理において予め十分に理解されていない調節活性を有する化合物に関する。本発明に係る化合物を同定するための上述した方法は、試験化合物をMerレセプター、特に特定のMerの糖修飾体に接触させる工程を包含している。Merを発現している細胞を用いるとき、試験細胞を液体培地中、または固体培地上において成長させることができる。この液体培地または固体培地は、試験される化合物を包含している。加えて、液体または固体培地は、同化し得る炭素、窒素および微量養分のような細胞成長のために必要な成分を包含している。
【0145】
上述した方法は、1つの局面において、推定される調節化合物とMerの糖修飾体とを相互作用させるのに十分な時間、試験される化合物と細胞とを接触させる工程を包含している。試験される化合物と接触させる時間は、測定の結果に基づいて変化させることが可能であり、当該技術分野における通常の知識を有する者によって決定されてもよい。例えば、結合解析の場合には、活性を評価する場合よりも化合物に接触させる時間が短いことが典型的に好ましい。ここで使用する場合、用語「接触時間」は、細胞が試験される化合物に接触している間の時間に関する。用語「インキュベーション時間」は、細胞が評価前に成長し得る間の全時間に関し、接触時間を包含することができる。それゆえに、インキュベーション時間は接触時間の全てを含み、また、試験される化合物は存在しないが、評価される前に成長し続ける間(細胞ベースの解析の場合)のさらなる時間を含んでいる細胞におけるMerの生物学的活性のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションが可能な十分な時間であれば、細胞の成長のためのインキュベーション時間を変化させることが可能である。化合物をより迅速にスクリーニングし得るので、より短いインキュベーション時間が好ましいことは認識されるだろう。好ましいインキュベーション時間は約1時間から約48時間の間である。
【0146】
本発明に係る細胞または細胞溶解物質を推定される調節化合物に、例えば混合することによって接触させるときの条件は、いずれかの適切な培地または解析条件であり、このような培地には、細胞を培養するのに効果的な培地、または可溶性のMerまたは固定化Merを推定される調節化合物の存在および不在時において評価するのに効果的な培地が含まれる。
【0147】
本発明に係る細胞は、様々な容器中において培養することができる。このような容器は、特に限定されないが、組織培養フラスコ、テストチューブ、マイクロタイター皿およびペトリプレートが含まれる。培養は、細胞に適した温度、pHおよび二酸化炭素濃度で行われる。このような培養条件もまた当該技術分野における通常の知識の範囲内である。容器中で接触させる細胞の数、細胞に与える推定される調節化合物の濃度、推定される調節化合物と細胞とのインキュベーション時間、および細胞に与える化合物の濃度を考慮した条件下において、細胞を推定される調節化合物に接触させる。容器の大きさ、容器中の液体の量、解析に使用する特定の細胞の型の培養に適することが知られている条件、および試験される推定される調節化合物の化学組成(例えば、大きさ、電荷等)のような変量に基づいて、当該技術分野の通常の知識により効果的なプロトコルの決定に達することができる。推定される調節化合物の好ましい量には、96ウエルプレート1つあたり約1nMから約10mMの間の推定される調節化合物が含まれる。Merタンパク質およびMerをコードする核酸分子は組換え的に発現していてもよく、タンパク質または核酸分子にそれぞれ結合する化合物を同定するために細胞をベースとしない解析を用いてもよい。細胞をベースとしない解析において、組換え的に発現したMerタンパク質またはMerをコードする核酸は、当該技術分野においてよく知られた方法によって、テストチューブ、マイクロタイターウエルまたはカラムのような固体培地に貼り付けられている。
【0148】
試験するのに適しており、本発明において用いられる化合物は、公知のまたは使用可能ないずれかのタンパク質および核酸と同様に薬剤設計された生成物を包含しており、これらはペプチド、オリゴヌクレオチド、炭水化物および/または合成有機分子を包含している。例えば、分子多様ストレージ(大きくて化学的に多様な分子ライブラリーの迅速な構築を可能にする同属ストレージの組合せ)、天然または合成化合物ライブラリーであって特に化学的または組合せライブラリー(例えば、配列または大きさは異なるが同じ構成要素を有する化合物のライブラリー、または合理的な薬剤設計によって、このような物質を得ることができる。ここに参照することによって、その全てを組み込む、Maulikら、1997,Molecular Biotechnology:Therapeutic Applications and Strategies,Wiley−Liss,Inc.を例として参照のこと。薬剤設計する方法によって最初に同定された候補化合物のMerの発現および/または生物学的活性を調節する可能性を、上述した方法を用いてスクリーニングすることができる。
【0149】
上述した方法によって同定した化合物を、以下に示す細胞成長または血栓症を調節するための方法において用いることができる。そして、このような化合物のいずれかを以下に示す方法に用いるために包含させることができる。
【0150】
(本発明の治療方法)
本発明はまた、本発明に係るポリペプチド(sMer、特にMerの特定の糖修飾体および、さらにはsMerの特定の糖修飾体)、核酸分子および/または抗体を用いるMer陽性の癌および血液凝固障害の処置(予防および/または治療)に関している。
【0151】
ここで使用する場合、「処置」は、処置される個体または細胞の自然治癒を変化させるために試みる臨床介入に関するものであり、予防のため、または臨床治療による治癒の間に行われてもよい。望ましい効果には、疾患の発生または再発の防止、症状の緩和、疾患の直接または間接のいずれかの病的継続の縮小、転移防止、疾患進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および予後の短縮または改善が含まれる。したがって、治療の有利さは、必ずしも特定の疾患または病状の回復である必要はなく、むしろ好ましくは、疾患または病状の緩和、疾患または病状の除去、疾患または病状に関連する症状の減少、初期疾患または病状の発生の結果として起こる二次疾患(例えば、初期癌から生じる転移腫瘍の成長)または病状の防止または緩和結果、および/または疾患または病状の防止を含む。有利な効果は、当該技術分野の通常の知識を有する者および/または患者を処置する訓練された臨床医によって容易に評価されることが可能である。用語「疾患」は、哺乳類における通常の健康状態からの逸脱に関するものであり、疾患症状の存在が含まれ、同様に、逸脱(例えば、感染、遺伝子変異、遺伝子欠陥等)が発生しているが、症状はまだ明白になっていない状態も含まれる。
【0152】
本発明によれば、脊椎動物綱、特に限定されないが霊長類を含む哺乳類、家畜、飼いならされたペット(例えば、同伴する動物)のようなものを含む個体に使用する場合に、ここに開示した方法および解析が適している。もっとも典型的には、患者はヒト患者であり得る。本発明によれば、用語「患者」、「個体」および「対象」は交換可能に使用されることが可能であり、必ずしも病気または不調な動物またはヒトに関する必要はない(例えば、これらの用語は、健康な個体あるいは疾患または病状のいずれかの症状のない個体に関することができる)。
【0153】
Merレセプターチロシンキナーゼ、このタンパク質のレベルまたは生物学的活性の変化(疾患または障害を患っていない対象に関する)によって特徴付けられる疾患および障害を、変化したMerレセプターチロシンキナーゼまたはそのリガンドに反作用(例えば、減少または抑制)する治療によって処置してもよい。例えば、Merの可溶性細胞外修飾体は、タンパク質SおよびGas6を含むMerリガンドに結合することによって、全長野生型MerまたはMerの変異型糖修飾体の活性化を阻止する。それにより、本発明に係る他の実施形態において、タンパク質SまたはGas6の機能、あるいはGas6レセプターの抑制剤の効果的な量は、変異型Mer発現を含むMer発現に関連する疾患および病状に対する処置として使用され得る。このような抑制剤は、上述したMerの可溶性細胞外修飾体、特にMerの特定の可溶性糖修飾体の形式で提供される。
【0154】
したがって、本発明に係る付加的な局面は、Merの糖修飾体の発現または活性を調節する方法に関係する。1つの局面において、これは治療の目的で、タンパク質SまたはGas6を含むMerのリガンドが、内在するMerレセプターに結合する作用を調節することによって達せられる。本発明に係る方法は、例えば、Merの1またはそれ以上の活性を調節する物質と細胞とを接触させる工程を包含している。このような物質には、細胞中においてMerに結合し、Mer活性を抑制する抗Mer抗体またはそのフラグメントに結合する抗原が含まれる。Mer活性を調節する他の物質は、好ましくは上述した可溶性のMerタンパク質、特にMerリガンドに結合する可溶性のMerの糖修飾体である。そしてこのような物質は、Merを発現している細胞にMerの競争的な抑制剤として供給される。加えて、特定のMerの糖修飾体を標的とする核酸分子、ペプチドおよび小分子を、本発明に係る治療の形態において使用することができる。これらの方法は、in vitro(例えば、細胞を物質と共に培養する)で行うことが可能であり、代替としてex vivoまたはin vivo(例えば、物質を対象に与える)で行うこともできる。このように、本発明は、疾患または障害、特に血液凝固障害または癌に冒された個体を処置する方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法は、試薬(例えば、上述した可溶性細胞外Merポリペプチドの特定の糖修飾体、またはMerの糖修飾体に選択的に結合する抗体)、またはMer活性を調節する試薬化合物(例えば、同族リガンドによるMerの結合および/または活性化)を与える工程を包含している。
【0155】
本発明の1つの実施形態において、特定のMerの糖修飾体の調節は、血栓症またはいずれかの血液凝固障害を、出血の副作用の原因にならずに防止することが予想される。本発明によれば、「調節」は、発現または活性のアップレギュレーション、刺激または強調、あるいは発現または活性のダウンレギュレーション、抑制、低減または阻害を含む、いずれかのタイプの調節に関する。好ましくは、本発明の方法は特に、血小板に発現したMerの糖修飾体の活性を抑制する。様々な手段によって、この抑制は成され得る。最も好ましくは、特に限定されないが、異なるグリコシル化がなされたMerタンパク質およびsMerタンパク質を含むsMerの変異体、ならびにMerの細胞外ドメインに直接結合するペプチド、またはタンパク質SおよびGas6を含むMerリガンドに結合または競争的に抑制するペプチドを提供することによって抑制が成される。また、Merの血小板糖修飾体、最も好ましくは165〜170kDの糖修飾体に結合する抗体、またはそのフラグメントに結合する抗原によっても抑制が成され得る。さらに、患者に小分子、ペプチド、核酸または他の抑制剤を提供することによっても抑制が成され得る。このような抑制剤は、血小板に発現するグリコシル化されたMerの細胞外ドメインに優先的に結合し、抑制または阻害するか、またはタンパク質SおよびGas6を含むMerリガンドに結合し、抑制または阻害するものである。より好ましくは、これらの実施形態の全ては、上述したように、血小板に特異的なMerの糖修飾体を標的とする。
【0156】
MerリガンドのGas6に対する抗体を与えることによるMer活性の調節は、自発的な出血の原因とならずに、致死的な血栓塞栓症からリガンドの遺伝的な不活性化と同レベルになるまで野生型マウスを保護することが証明されている。さらに、上述のものと同じモデルのマウスにおいて、sMerを用いた場合、in vitroで血小板の集合が抑制され(図16)、in vivoで致死的な肺塞栓症から保護された(図17)。それゆえに、さらに本発明においては、抗血栓アプローチとしてMerレセプターを介する調節情報伝達が予測される。これは、現在利用可能な抗血小板薬剤よりも安全である。それゆえにMer、特にMerの一部切り取った修飾体または可溶性修飾体ならびにその模倣物、最も好ましくは血小板に特異的なMerの可溶性糖修飾体は、血栓症または障害の処置および予防に有用な予防剤として価値がある。本発明に係る方法によって処置され得る血栓障害には、血栓発生傾向(遺伝的特性により血液凝固の可能性がより高い個体を含む)、血栓症、または血栓塞栓症が含まれるが、これらに限定されない。特にこの治療方法は、血栓症に関連する疾患(特に限定されないが、癌、骨髄増殖性障害、自己免疫障害、心臓疾患、炎症性障害、アテローム硬化症、溶血性貧血、ネフローゼおよび高脂血症が含まれる)と同様に、血液凝固の可能性が増加する薬物治療(特に限定されないが、エストロゲンおよび化学療法を含む)中の患者に適用することができる。加えて、この治療方法は、手術、外傷または妊娠を含む血液凝固を増大させる素因因子に適用することができる。最後に、この治療方法は、ヘパリン誘因血小板減少症(2〜5%の患者に対してヘパリン暴露が引き起こされる深刻な免疫介在薬剤反応)を含む抗凝血性または抗血小板治療による有害な副作用を有する患者に適している可能性がある。
【0157】
したがって、本発明は、血液凝固障害を有する、またはその進行の恐れのある個体を治療するための方法を提供する。この方法は、血液中において可溶性細胞外Mer膜貫通レセプターキナーゼのレベルを調節する工程を包含している。1つの局面において、本発明は、効果的な量の可溶性細胞外Mer膜貫通レセプターキナーゼを個体に与える(注入を含む適切な方法で)工程を包含している。この場合、特に血小板に発現したMerの糖修飾体(165−170kD)の可溶性細胞外ドメインに与えられる。効果的な量は、患者において、Merレセプターの検出可能な抑制に達するいずれかの量であるか、または少なくとも1つの凝固障害の症状において検出可能な低減に達するいずれかの量である。
【0158】
他の局面において、Mer膜貫通レセプターチロシンキナーゼの細胞外ドメインを分割する薬剤によって調節が生じる。このような薬剤は、好ましくは金属プロテアーゼであり、最も好ましくはTACE様金属プロテアーゼである。これの替わりに、Mer膜貫通レセプターの分割を抑制することによっても調節され得る。このとき、好ましくはプロテアーゼ抑制剤を用い、より好ましくは金属プロテアーゼ抑制剤を用い、最も好ましくはTACE様金属プロテアーゼ抑制剤を用いる。
【0159】
本発明の他の局面において、Merの細胞外ドメインにおける翻訳後タンパク質加水分解分割に影響する物質を与えることによって、凝固障害は治療される。分割された細胞外ドメインは、分割の後に可溶性になる。この分割によって以下に示す二重の抑制効果が得られる。(1)Merリガンドの競争的抑制(図6)および(2)Merレセプターチロシンキナーゼの機能活性の除去(図8Aおよび8B)。好ましい実施形態において、このような物質は、血小板において発現するMerの糖修飾体に特異的である。
【0160】
本発明の1つの実施形態において、分割物質はMerを分割することができるプロテアーゼであり、TACEまたはTACE様金属プロテアーゼを含む。本発明の付加的な局面において、膜結合Merの分割によって生成されるsMerは、タンパク質SまたはGas6のようなMerリガンドに直接結合し、全長Merレセプターチロシンキナーゼの活性化を妨げる。加えて、血液凝固障害を有する患者の治療は、血液中におけるsMerレベルを調節することによって行ってもよい。sMerを注入する、または内在するsMerレベルに影響を与える金属プロテアーゼ活性を標的にすることによってこのような処置は成される。
【0161】
Merの活性化は、生存経路(例えば、AktおよびErk1/2)、およびある場合には増殖経路の活性化を下流に導く(図18)。これは癌の進行に貢献することが知られている。いくつかの癌において、上述したように、Merの糖修飾体の過剰発現または位置異常発現が、癌細胞表面に見られている。さらに、Merの過剰発現および下流シグナル経路の活性化が、Merトランスジェニックマウスモデルにおいて、リンパ芽球性白血病およびリンパ腫を導く(図19)。Merの糖修飾体の異常発現が、このタンパク質を、生物学的な標的にされた癌治療にとって魅力的な標的にする。それゆえに、本発明のさらなる実施形態において、癌細胞を選択的に標的とする治療方法の一部として、Merレセプターチロシンキナーゼの変異型グリコシル化修飾体を抑制することが予想される。血液凝固障害を処置するための上述した方法および物質のいずれかを、癌治療に適用することができる。しかしながら、これらの実施形態において、治療方法により標的となるMerは、好ましくは腫瘍細胞に特異的に発現するMerの糖修飾体(例えば、変異型Merの糖修飾体)である。
【0162】
1つの実施形態において、Merレセプターチロシンキナーゼの可溶性細胞外ドメイン、特に標的癌細胞において発現するMerを選択的に抑制するsMerの糖修飾体を、Mer活性化、およびその後の生存経路の下流伝達を阻害するために用いる。生存経路には、Mer特異的増殖経路と同様に、AKTおよびErkが含まれる。
【0163】
他の実施形態において、小分子抑制剤、核酸、リボザイム、ペプチドまたは異常なMerチロシンキナーゼ糖修飾体またはMer直下の他のタンパク質を標的とする他の薬剤は生成され、Mer陽性の癌の多くを治療するのに用いられ得る。白血病、リンパ腫または他のMerタンパク質の癌に特異的な糖修飾体に結合する抗体(むき出し、または毒物または放射活性材料に結合した)はまた、癌を有するMer陽性患者を処置する治療に用いられてもよい。例えば、上述した白血病およびリンパ腫細胞に発現するMerの糖修飾体に特異的な(選択的に結合する)抗体、またはそのフラグメントに結合する抗原は、特に本発明による治療物質として特に有用である。
【0164】
本発明の他の実施形態において、Merの細胞外ドメインにおける翻訳後タンパク質加水分解分割に影響する物質を与えることによって、Merの表面発現が肯定的な癌を治療する。このような物質は、血液凝固障害の治療に関して上述しているが、本発明による癌の治療にも適用することができる。
【0165】
本発明に係る治療方法において、本発明の組成物を対象に与えるのに適した方法には、組成物を運ぶのに適したいずれかのin vivoの投与方法が含まれる。好ましい投与方法は、当該技術分野において明白であり、用いる運搬体の型、標的細胞密度、組成物がタンパク質、核酸または他の組成物(例えば、薬剤または抗体)であるかどうか、ならびに患者が冒されている疾患または病状に依存する。
【0166】
患者に投与される物質がタンパク質、小分子(例えば、薬剤設計された生成物)または抗体である場合、このような物質の好ましい一回の服用量は、動物の体重に対して、約0.01μg/kgから約10mg/kgの間を典型的に含む。この物質のより好ましい一回の服用量は、動物の体重に対して、約1μg/kgから約10mg/kgの間を含む。この物質のさらにより好ましい一回の服用量は、動物の体重に対して、約5μg/kgから約7mg/kgの間を含む。この物質のさらにより好ましい一回の服用量は、動物の体重に対して、約10μg/kgから約5mg/kgの間を含む。この物質が消化管以外において運搬されるのであれば、この物質の他の特に好ましい一回の服用量は、動物の体重に対して、約0.1μg/kgから約10μg/kgの間を含む。
【0167】
ここに一般的に記述した発明は、以下に示す実施例を参照することによって、より容易に理解されるだろう。以下に示す実施例は、単に、本発明の実施形態のある局面の例示の目的で含められる。実施例は本発明を制限するものではない。そして、当該技術分野における通常の知識を有するものは、他の技術および方法が請求項を満足させ、請求項に記載の発明の範囲から逸脱することなく使用され得ることを、上述の説明および以下に示す実施例から認識するだろう。
【0168】
6.実施例
(実施例1:ヒトMerモノクローナル抗体311は、Jurkat白血病細胞株において特異な185kDのタンパク質を認識する)
上記ヒトのMerモノクローナル抗体311は、上述したような、標準の技術によって生成され、ヒトの単核球性のマクロファージの細胞株であるU937およびT細胞白血病細胞株であるJurkatのタンパク質成分に対するウエスタンブロットにおいて試験した。また、ヒトの頚癌細胞株であるHeLaを陰性対象として含めた。U937およびJurkatの両方は、RT/PCTを用いて調べることによってMerのmRNAを発現し、一方、HeLaは、mRNAを発現しない(結果は示さず)。上記311抗体は、Merタンパク質における明らかにサイズの異なるものと認識した(図1)。単核細胞の細胞株U937は、予想された205kDのバンドを示した。予想外に、185kDのタンパク質が急性白血病細胞株(Jurkat)において見られた。図1は、ヒトのMerに方向付けられた上記モノクローナル抗体311が、ウエスタンブロットにおいて、単核細胞の細胞株U937における205kDのタンパク質を認識し、かつ白血病細胞株のJurkatにおける185kDのタンパク質を認識することを示している。RT/PCRによってMerのmRNAを発現しないHeLa細胞は、上記抗体のための陰性対照として使用された。
【0169】
(実施例2:白血病細胞株におけるヒトのMerの185kDのタンパク質は、他の造血系の細胞系におけるMerとは異なる)
細胞株U937(ヒトの単核性のマクロファージ)、K562(ヒトの骨髄性の白血病)、JurkatおよびHSB−2(いずれも骨髄性の白血病)、ならびに正常なヒトの血小板のウエスタンブロットは、311モノクローナル抗体を用いて行われた。上記ウエスタンブロットは、上記抗Mer抗体311を用いて行われた。この結果は、図2に示されている。上記311抗体は、上記細胞系の全てにおいて、明らかに移動するバンドを示す。また、血小板の試料において見られるのは、ヒトの血漿中に存在する、可溶性のMerの細胞外ドメインである(sMer、矢印によって示した)。図2は、モノクローナル抗体311を用いて行ったウエスタンブロットであり、U937(単核性の)細胞株、K562(骨髄性の)細胞株、Jurkat(T細胞白血病)細胞株およびHSB−2(T細胞白血病)細胞株、ならびに血小板における移動性の形態を、はっきりと表している。また、血小板の試料の列において見られるのは、ヒトの血漿中に存在している、可溶性のMerの細胞外ドメインである(sMer、矢印)。
【0170】
(実施例3:脱糖修飾化は、Jurkat白血病細胞における固有のMerタンパク質を確かにする)
U937、JurkatまたはK562の細胞溶解液は、未処理(−)、グリコシダーゼPNGse Fを用いて消化(+PNG)、または5つのグリコシダーゼの混合物を用いて消化(糖鎖を除去したMer)された。5つの酵素の上記混合物は、上記糖タンパク質から、N結合型(Asnと結合している)糖質のすべておよびO結合型(Serと結合している)糖質のほとんどを除去する。消化された溶解物は、SDS−PAGEによって分画され、かつ抗Mer抗体311を用いて調べられた(図3)。Jurkat白血病細胞に存在する上記Merの糖修飾体は、これら処理のいずれかの後において、他の2つの細胞株に由来するMerと比較して、糖修飾化の様式における差異が明らかであり、異なる移動をする。
【0171】
(実施例4:T細胞急性白血病患者の試料における異常なMerfdの検出)
図4は、抗ヒトのMerのモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示している。上記ウエスタンブロットには、対照の細胞株であるA459(肺癌)およびJurkat(細胞白血病)、9つのMer陽性T細胞急性白血病(ALL)患者の試料、3つの陰性の試料、および新生児に由来する胸腺細胞を用いた。付加的な4つの陰性の患者の試料は、示していない。140kDおよび185kDの2つの異なるMerの糖修飾型が、上記細胞株および患者の試料において明らかである。中央のパネルは、上記A459細胞株においてのみ、Merチロシンキナーゼファミリーの他の要素である、Axlが存在していることを表している。急性白血病のT細胞株または患者の試料においてAxlは、検出されない。アクチンによる標準化は、負荷対照として下のパネルに示している。
【0172】
(実施例5:Merタンパク質の変異/切断は、いくつかの患者の試料において存在する)
図5A−Cは、PNGase F酵素を用いて脱糖修飾した急性白血病のT細胞Jurkat(図5A)、ならびに2つの患者の試料である3877(図5B)および3554(図5C)を示しているウエスタンブロットの結果である。Merは、矢頭によって指し示されている。Jurkat細胞株および患者3877に存在する優勢なMerの糖修飾体は、脱糖修飾化の前において185kDであり、PNGaseによる処理の後において110kDである。患者3554において優勢なMerの糖修飾体は、脱糖修飾化の前において150kDであり、処理の後において90kDである。
【0173】
(実施例6:プロテイン SおよびGas6は、Merのリガンドである)
図6は、Merがプロテイン SまたはGas6によって活性化され得ることを示している。遺伝子導入マウスに由来する胸腺細胞は、無血清培地において2時間スターブされ、その後に図に示された濃度のhプロテイン SまたはGas6を用いて処理された。また、Mer/Fcを用いて共培養によってMerの活性化の抑制が行われたことが、ここには示されている。活性化されたMerは、抗リン酸化Mer抗体を用いて免疫ブロットによって評価された。
【0174】
(実施例7:可溶性のMerは、培養細胞の培地の中に見られる)
図7A−Dは、Merの細胞外ドメインが培養された細胞株の培養上清に放出されることを示している。単核球性の細胞である、J774(マウス、図7A)またはU937(ヒト、図7B)は、無血清培地におい一晩中、培養された。培養上清(CM)が回収され、10倍に濃縮された。細胞は溶解され、CMの試料のそれぞれは、PNGaseを用いて脱糖修飾化された。図7Cは、一晩の間、培養したMerヒトの細胞株に由来する濃縮されたCMを示している。図7Dは、未処理の、およびPNGase Fを用いて消化した、HSB−2細胞およびU937細胞に由来する濃縮されたCMを示している。細胞溶解液(細胞)、培地(CM)およびPNGase消化した培地(CM+PNG)は、SDS−PAGEならびにマウスのMerの細胞外ドメイン(図7A)またはヒトのMerの細胞外ドメイン(図B−D)に対する抗体を用いた免疫ブロッティングによって解析した。
【0175】
図7A−7Dに示すように、120−140kDの可溶性のMerタンパク質(sMer)は、これらのマクロファージ細胞株による培地に見られた。上記sMerは、PNGase処理の後に、60kDというあきらかなサイズに減少した。上記サイズは、Merの膜貫通配列の近傍において切断された修飾されていない細胞外ドメインの予想されたサイズである。上記可溶性のタンパク質が、ヒトの細胞においても放出されるという、同様の結果を示している。
【0176】
(実施例8:LPSおよびPMAは、Merの外部ドメインの発散を誘導する)
図8A−8Dは、LPSまたはPMAがMerの外部ドメインの放出を刺激することを示している。100ng/MerlのLPSを用いて4時間(図8A)、または50nMのPMAを用いて45分間(図8B)、処理したJ774細胞におけるMerの表面発現が、フローサイトメトリーによって評価された。種々の時点のそれぞれにおいて未処理の細胞における発現が、比較対照として示されている(図8C)。J774細胞は、100ng/MerlのLPSを用いた、または用いていない無血清の培地、あるいは50nMのPMAを用いて処理した無血清の培地において、図に示されている時間、培養された。細胞溶解液に存在するMerおよび培地におけるsMerは、種々の時点のそれぞれにおいて、免疫ブロッティングによって解析された。
【0177】
(実施例9:マウスにおける可溶性のMer)
正常のマウスの血清に存在するMerと同様に、腹膜のマクロファージ(PMΦ)および脾細胞から発散された可溶性のMerは、解析された(図9)。野生体のマウスは、腹膜腔にマクロファージの蓄積を誘導するためのチオグリコール酸を注入された。注入から3日後に、腹腔のマクロファージが、回収され、かつ無血清培地を用いて7時間、培養された。野生体のマウスに由来する脾臓は、細胞ろか器を通され、単一の細胞懸濁液を作製した。脾細胞も無血清培地を用いて7時間、培養された。培養したマクロファージおよび脾細胞から得られた、細胞の溶解物および培養上清、ならびに野生体のマウスまたはMerをノックアウトしたマウス(KO)から得られた血清は、SDS−PAGEおよび免疫ブロッティングによって解析された。この実験は、可溶性の形態を有するMerが、脾臓の細胞(さらに、培養した細胞)から放出されていることを示している。大量の可溶性のMerは、上記血清中において検出された。抗マウスのMer抗体を用いても、KOマウスの血清にはタンパク質が検出されなかった。
【0178】
図9は、sMerが、初代の培養細胞から放出されることおよびマウスの血液において検出されることを示している。野生体のC57/B6マウスはチオグリコール酸を注入された3日後に、腹腔のマクロファージが回収され、かつ無血清培地を用いて7時間、培養された。野生体のマウスからの脾臓は、細胞ろか器を通され、単一の細胞懸濁液を作製した。脾細胞も無血清培地を用いて7時間、培養された。培養したマクロファージおよび脾細胞から得られた、細胞の溶解物および培養上清、ならびに野生体のマウスまたはMer遺伝子を崩壊させたマウス(KO)から得られた5 1血清は、SDS−PAGEおよび免疫ブロッティングによって解析された。
【0179】
(実施例10:可溶性のMerは、ヒトの血液に存在している)
ヒトの肺における血管内皮細胞(MVEC)、ヒトの血小板およびヒトの血清の試料は、ウエスタンブロットによってMerの存在について調べられた(図10)。165kDのMerタンパク質は、小球状の血小板において検出され、110−140kDの可溶性のMer細胞外ドメインタンパク質が上記血小板の調製物(“血小板CM”と記した)からの血清において大量に検出された。U937細胞の溶解物は、Mer受容体発現に対する陽性対象であった。右のパネルは、血小板調製物の血漿と2つの試料である、正常なドナーに由来する(George King Bio−Medical, Inc)または抗凝固剤クーマジンを用いて処理された患者に由来する、溜まった血漿を示している。上記抗凝固剤を用いた処理は、Merの切断の増加が現れ、可溶性のMerの検出量が増加した。
【0180】
図10は、ヒトの肺における血管内皮細胞(MVEC)、血小板、および血漿の試料がウエスタンブロットによってMerの存在について調べられた結果を示している。培養されたMerVEC細胞は、185kDのMerの糖修飾体を発現し、可溶性のMerが、上記細胞からの培養上清に存在していた。165kDのMerタンパク質は、小球状の血小板において検出され、110−140kDの可溶性のMer細胞外ドメインタンパク質正常なドナーに由来する、溜まった血漿(George King Bio−Medical, Inc)および浮動性の血液(血漿)、ならびに同じドナーに由来する、凝固の後の血清において大量に存在した。
【0181】
(実施例11:特異的な金属プロテアーゼ抑制因子(TAPI)は、可溶性のMerの産生を阻害する)
培養したマウスのJ774細胞は、上記Merの細胞外ドメインの切断を刺激するために、50ng/mlのリポ多糖(LPS)を用いて処理された。金属プロテアーゼは、図に示されているように電化された。細胞内に残っているMerおよび処理のそれぞれの後に培養液に放出されたsMerは、抗マウスのMer抗体を用いてウエスタンブロットによって検出された(図11)。予想されたように、大量の可溶性のMerが、LPSによる処理の後に培養液において増加した。Merの切断は、EDATの添加によって低下し、タンパク質o−TNFαおよび他の膜貫通型タンパク質を切断する金属プロテアーゼTACEの特異的な抑制因子である、TAPIによって、ほぼ完全に阻害された。(TAPIを溶解するために使用された)DMSOは、LPSによって誘導されたMerの切断には影響を与えなかった。
【0182】
図11は、LPSによって誘導されたsMerの産生が、金属プロテアーゼの抑制因子によって阻害されることを示している。J774細胞は、Merの上記細胞外ドメインの切断を刺激するために50ng/mlのLPSを用いて処理された。5mMのEDTA、200MのTAPI−0、またはDMSO(TAPIを溶解させるために用いた媒質)が、培養細胞に2時間、添加された細胞内に残っているMerおよび処理のそれぞれの後に培養液に放出されたsMerは、ウエスタンブロットによって検出された。
【0183】
(実施例12:Mer/Fc(sMer)は、Gas6と結合する)
可溶性のMer受容体の外部ドメインが、試験管内におけるプルダウンアッセイにおいて、MerのリガンドであるGas6と結合することが示された(図12A−12B)。ヒトのIgGのFc領域と融合されたMerの細胞外ドメインからなるキメラタンパク質は、純化されたGas6とともに培養された。非特異的な結合に対する対照として、TNFαの外部ドメイン/Fcキメラタンパク質とGas6とを用いた並行した実験を行った。複合体は、プロテイン Aセファロースビーズを用いて引き落とされ、SDFS−PAGEにかけられ、Gas6との結合が、抗マウスのGas6抗体を用いた免疫ブロッティングによって決定された。受容体/Fcタンパク質は、R&D SysteMerから購入した。
【0184】
図12Aおよび12Bは、Merの可溶性の外部ドメインがGas6と結合することを示している。ヒトのIgGのFc領域と融合されたMerの細胞外ドメインからなるキメラタンパク質は、マウスのGas6の組換え体とともに培養された。非特異的な結合に対する対照として、並行した実験が、TNFαの外部ドメイン/Fcキメラタンパク質とGas6とを用いて行われた。プロテイン Gセファロースビーズを用いてプルダウンされ、かつrmGas6を投入した複合体は、SDFS−PAGEにかけられ、Gas6と結合した複合体は、抗マウスのGas6抗体を用いた免疫ブロッティングによって検出された。
【0185】
(実施例13:Mer/Fcは、Gas6のシグナル伝達を抑制する)
可溶性のMerの外部ドメインは、マウスの細胞においてMerによるGas6の活性化を阻害することができる。図13A−13Bは、Merの可溶性の外部ドメインが、Gas6のシグナル伝達を抑制することを示している。J774細胞は、無血清培地において2時間、スターブされた後、図に示しているように、200nM mGas6および200nMのMer/FcまたはRet/Fcを用いて処理された。細胞溶解液は、リン酸化されたMerおよびMerの要素のすべてについて解析された。図13AおよびBに示すように、J774は、ネズミのGas6およびMer/Fcを用いて、または用いずに培養され(図13A)、リン酸化されたAKTおよびAKTの総量が観察された(図13B)。
【0186】
(実施例14:Mer/Fc(sMer)タンパク質は、動物細胞および昆虫細胞において異なるように糖修飾される)
図14はMer/Fc(sMer)タンパク質は、哺乳類の細胞および昆虫細胞において異なるように糖修飾されることを示している。HEK293細胞は、ヒトIgGのFc領域とけち号されたヒトのMerの細胞外ドメインをコードしているプラスミドを用いて形質移入された。形質移入されたHEK293細胞による培養液に分泌されたMer/Fc(sMer)および昆虫細胞Sf21(R&D System)においてバキュロウイルスベクターから発現されたMer/Fcの試料が示されている。
【0187】
(実施例15:Merの発現は、表面CD3の欠如に関与している)
図15は、16のT細胞ALL患者の二重盲式の遡及的なグラフの検討において、リンパ芽球におけるMerの検出とCD3の表面発現の消失と間において統計的に有為な相関が見られたことを示している。CD3を欠如しているリンパ芽球は、胸腺の分化の未成熟な段階から由来し、表面におけるCD3陽性のリンパ芽球と比較して、現象に依存しない減少した生存率と関与している。
【0188】
(実施例16:Mer/Fc(sMer)は、試験管内における血小板の凝固を抑制する)
図16A−16Dは、Merの細胞外ドメインが、ADPおよびコラーゲンによって誘導された血小板の凝集を抑制することを示している。試験管内における、血小板の凝集は、ヒトの血小板が豊富に含まれた血漿を用いて実施され、かつBioData凝集測定器を用いて解析された。図15Aおよび図15Bに示すように、2mMのADP(図16A)または4mMのADP(図16B)に対する血小板の凝集反応は、異なるMer/Fcの異なるを用いた前培養の後に行った。図16Cは、血小板の凝集が、Mer/Fcを用いた前培養の後に、4mMのADPによって誘導されたことを示している。図16Dは、Mer/Fcを用いた前培養とともに、および上記前培養をせずに、10g/mlのコラーゲンに対する血小板の凝集を示している。X軸における1つの四角は、15秒の間隔を表している。でーたは、3回の独立したな実験の標本を示している。
【0189】
(実施例17:Mer/Fc(sMer)は、致命的な血栓塞栓症から保護する)
図17は、Mer遺伝子の不活性化またはMer活性の抑制が、血栓症からマウスを保護することを示している。コラーゲン−エピネフリンの注入によって誘導された血栓塞栓症は、対照の野生体のマウス、Mer/Fcを用いて前処理された野生体のマウス、およびMer遺伝子が破壊されたマウス(KO)において観察された。
【0190】
(実施例18:Gas6を伴うMerの活性化は、AKTおよびERK1/2生存経路の活性化を導く)
図18は、Gas6を伴うMerの活性化は、AKTおよびERK1/2生存経路の活性化を導くことを示している。野生体(WT)、Merノックアウト(Mer KO)およびMer形質転換(Mer Tg)の胸腺細胞が、無血清培地を用いて3時間スターブされ、かつ10分間、150nMGas6を用いて処理された血清であった。細胞溶解液は、リン酸化された、Mer、Mer、リン酸化されたAKT、リン酸化されたERK1/2、ERKおよびアクチンについて解析された。
【0191】
(実施例19:Mer形質転換マウスは、リンパ芽球性の白血病/リンパ腫を進行させる)
図19は、Mer形質転換マウスが、リンパ芽球性の白血病/リンパ腫を進行させることを示している。図19Aは、Mer形質転換マウスにおける、リンパ芽球性の白血病/リンパ腫に伴う肝脾腫大症を示している。図19Bおよび19Cに示すように、脾腫大(図19B)および腹腔内のリンパ腫(図19C)は、リンパ芽球性の白血病/リンパ腫に罹っているMer形質転換マウスにおいて顕著である。図19Dには、腹腔内のリンパ腫のHおよびE染色して、リンパ芽球の存在を確かめた結果を示している。図19Eおよび19Fにおいて、Merの形質転換マウスに由来するリンパ芽球は、T細胞(Thy 1.2陽性)(図19E)およびMer陽性(図19F)のようにフローサイトメトリーによって特徴付けられている。
【0192】
本明細書において引用されている公開物のそれぞれは、その全体を引用することによって本明細書に組み込まれている。
【0193】
本発明の種々の実施形態が詳細に記載されている、一方において、種々の上記実施形態に対する変更および付加が存在しているであろうことは、当該分野の当業者にとっては、明らかなことである。しかし、当該変更および付加は、添付の特許請求の範囲に記載されている、本発明の範囲内に含まれていることは、明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】図1は、ヒトMerに対するモノクローナル抗体311が、単核白血球細胞系U937の205kDタンパク質、およびJurkat白血病細胞系の185タンパク質を識別するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図2】図2は、白血病細胞のヒトMer185kDタンパク質が、他の造血細胞系のMerと異なることを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図3】図3は、Jurkat白血病細胞が特有のMerタンパク質を発現することを、脱グリコシル化を介して確認するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図4】図4は、白血病細胞系およびT細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の試料において、Merの2つの異なるグリコシル化修飾体である、185kDおよび140kD修飾体を検出したことを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図5A】図5Aは、いくつかの白血病患者の試料中にMerタンパク質の変異体/奇形体が存在することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図5B】図5Bは、いくつかの白血病患者の試料中にMerタンパク質の変異体/奇形体が存在することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図5C】図5Cは、いくつかの白血病患者の試料中にMerタンパク質の変異体/奇形体が存在することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図6】図6は、Gas6およびタンパク質Sの両方が、Merのリガンドであることを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図7A】図7Aは、培養細胞の培地中に放出された可溶性のMerを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図7B】図7Bは、培養細胞の培地中に放出された可溶性のMerを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図7C】図7Cは、培養細胞の培地中に放出された可溶性のMerを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図7D】図7Dは、培養細胞の培地中に放出された可溶性のMerを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図8A】図8Aは、LPSおよびPMAがMer細胞外ドメインの分割(放出)を誘引することを証明するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。
【図8B】図8Bは、LPSおよびPMAがMer細胞外ドメインの分割(放出)を誘引することを証明するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。
【図8C】図8Cは、LPSおよびPMAがMer細胞外ドメインの分割(放出)を誘引することを証明するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図8D】図8Dは、LPSおよびPMAがMer細胞外ドメインの分割(放出)を誘引することを証明するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図9】図9は、可溶性のMerが培養マウスマクロファージおよび脾臓細胞を培養する培地中に放出されること、および可溶性のMerがマウス血液中に存在することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図10】図10は、可溶性のMerがヒト血液中に存在することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図11】特定の金属プロテアーゼ阻害剤(TAPI)が可溶性のMerの生成を阻害することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図12A】図12Aは、可溶性のMer(Mer/Fc)がGas6に結合することを示す概略図である。
【図12B】図12Bは、可溶性のMer(Mer/Fc)がGas6に結合することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図13A】図13Aは、可溶性のMer(Mer/Fc)がGas6情報伝達を抑制することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図13B】図13Bは、可溶性のMer(Mer/Fc)がGas6情報伝達を抑制することを示すウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図14】図14は、哺乳類細胞および昆虫細胞において可溶性のMer(Mer/Fc)のグリコシル化が異なることを証明するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図15】図15は、リンパ芽球表面のCD3の欠如に関連するMerの発現を示すグラフである。
【図16A】図16Aは、sMer(Mer/Fc)が血小板の凝集を抑制することを示す血小板凝集メータ図である。
【図16B】図16Bは、sMer(Mer/Fc)が血小板の凝集を抑制することを示す血小板凝集メータ図である。
【図16C】図16Cは、sMer(Mer/Fc)が血小板の凝集を抑制することを示す血小板凝集メータ図である。
【図16D】図16Dは、sMer(Mer/Fc)が血小板の凝集を抑制することを示す血小板凝集メータ図である。
【図17】図17は、sMer(Mer/Fc)が致死的な血栓塞栓症を防止することを示すグラフである。
【図18】図18は、Merの活性化が前生存経路AKTおよびERK1/2の下流の活性化を導くことを証明するウエスタンブロット解析の結果を示す図である。
【図19A】図19Aは、リンパ芽球性白血病/リンパ腫の存在を証明するMerトランスジェニックマウスの電子画像を示す図である。
【図19B】図19Bは、リンパ芽球性白血病/リンパ腫の存在を証明するMerトランスジェニックマウスの電子画像を示す図である。
【図19C】図19Cは、リンパ芽球性白血病/リンパ腫の存在を証明するMerトランスジェニックマウスの電子画像を示す図である。
【図19D】図19Dは、リンパ芽球性白血病/リンパ腫の存在を証明する病理組織学的な組織の電子画像を示す図である。
【図19E】図19Eは、Mer陽性腫瘍の起源がT細胞であることを証明するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。
【図19F】図19Fは、Mer陽性腫瘍の起源がT細胞であることを証明するフローサイトメトリー解析の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体から、リンパ球におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)の異常な糖修飾体(glycoforMer)を検出する工程を包含し、
個体におけるリンパ球による、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの異常な糖修飾体の発現は、白血病またはリンパ腫を示している
白血病またはリンパ腫の診断方法。
【請求項2】
上記個体が、哺乳類である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記哺乳類が、ヒトである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
以下の群:
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
からなる群から選択されたMerの異常な糖修飾体を検出することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記白血病が、リンパ芽球性の白血病であり、
約170kDから約190kDの間の分子量を有する、または約135kDから約140kDの間の分子量を有する、少なくとも1つのMerの糖修飾体を検出することを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体が検出されたとき、上記リンパ球において発現された上記Merの糖修飾体の量を検出する工程を、さらに包含し、
上記リンパ球によるMerの発現およびCD3発現の消失は、上記個体にとって予後不良を示している
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記白血病が、骨髄性の白血病またはリンパ腫であり、
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体を検出する工程を包含する
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
検出する上記工程は、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体に選択的に結合する、抗体または上記抗体の抗原結合断片に試料を接触させることを含む
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
抗体産生細胞が産生されるような、糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを用いて、ヒトではない哺乳動物を免疫化する工程(a)、
上記抗体産生細胞を取り出す、および不死化する工程(b)、
所望の抗体を産生している不死化された上記抗体産生細胞を選択する工程(c)、ならびに
選択されかつクローン化された、不死化された上記抗体産生細胞によって産生された抗体を単離する工程(d)
を包含し、
哺乳動物を免疫化する上記工程において、上記糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの全長が有する少なくとも細胞外部分であり、Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの全長は、約195kD未満の分子量を有している
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの特定の糖修飾体と選択的に結合するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項10】
上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼが、以下の群:
約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼは、血小板、リンパ芽球性の白血病細胞、および骨髄性白血病細胞からなる群から選択された細胞種によって発現される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法によって産生されたモノクローナル抗体。
【請求項13】
糖修飾されたMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体と選択的に結合する単離された抗体であって、上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼのあらゆる糖修飾体を検出する単離された抗体。
【請求項14】
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体(Merの糖修飾体)と選択的に結合する単離された抗体であって、
上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体が、以下の群:
約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
から選択される
単離された抗体。
【請求項15】
以下の群:
約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
から選択されたMerの糖修飾体のすべてと選択的に結合する
請求項13または14に記載の単離された抗体。
【請求項16】
上記Merの糖修飾体の内の1つと選択的に結合し、かつ上記Merの糖修飾体の内の、選択的に結合する上記1つを除いたものとは選択的に結合しない請求項14に記載の単離された抗体。
【請求項17】
約195kD未満の分子量を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体(Merの糖修飾体)と選択的に結合する
単離された抗体。
【請求項18】
上記Merの糖修飾体は、約170kDから約190kDの間の、または約160kD未満の分子量を有している請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項19】
上記Merの糖修飾体は、約170kDから約190kDの間の、または約135kDから約140kDの間の分子量を有している請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項20】
上記Merの糖修飾体は、約190kDから約195kDの間の分子量を有している請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項21】
白血病細胞またはリンパ腫細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項22】
リンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項23】
骨髄性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体と選択的に結合する請求項17に記載の単離された抗体。
【請求項24】
請求項12〜23のいずれか1項に記載の単離された抗体を含有する組成物。
【請求項25】
薬学的に受容可能な担体を、さらに含有する請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
白血病またはリンパ腫を診断するための組成物における、請求項12〜23のいずれか1項に記載の単離された抗体の利用。
【請求項27】
個体における癌を処置するための薬学的製剤における、請求項12〜23のいずれか1項に記載の単離された抗体の利用。
【請求項28】
Merの糖修飾体と選択的に結合し、かつMerの糖修飾体の活性を抑制する抗体を個体に投与する工程を包含する
Merの糖修飾体の細胞表面における発現が陽性な、個体における癌を処置する方法。
【請求項29】
上記癌が、白血病またはリンパ腫である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記Merの糖修飾体が、以下の群:
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;ならびに
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
上記抗体が請求項12〜23のいずれか1項に記載の単離された抗体である請求項28に記載の方法。
【請求項32】
約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体と選択的に結合し、かつ上記Merの糖修飾体の活性を抑制する抗体の薬学的に効果的な量を個体に投与する工程を包含する個体における凝固障害を処置または予防する方法。
【請求項33】
可溶性を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの糖修飾体の効果的な量を投与する工程を包含し、
可溶性を有する上記Merの糖修飾体は、血小板において存在するMerの糖修飾体と同様の方法において糖修飾されている
個体における凝固障害を処置または予防する方法。
【請求項34】
可溶性を有する上記Merの糖修飾体が、約165kDから約170kDの間の分子量を有している請求項33に記載の方法。
【請求項35】
上記障害が、血栓形成傾向である請求項32〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)タンパク質であって、
上記Merタンパク質が、
糖修飾されており、
Merリガンドと結合し、
195kDの分子量を有する全長のMerの糖修飾体または上記Merの糖修飾体の相同物の可溶性部分である
単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項37】
全長の上記Merの糖修飾体が血小板によって発現されたMerの糖修飾体である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項38】
全長の上記Merの糖修飾体が約165kDから約170kDまでの分子量を有するMerの糖修飾体である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項39】
全長の上記Merの糖修飾体が約170kDから190kDの間の、または約160kD未満の分子量を有するMerの糖修飾体である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項40】
全長の上記Merの糖修飾体が白血病細胞またはリンパ腫細胞によって発現されたMerの糖修飾体である請求項36の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項41】
全長の上記Merの糖修飾体がリンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項42】
全長の上記Merの糖修飾体が約170kDからが約190kDの間の、または約135kDから約149kDの間の分子量を有する請求項41に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項43】
全長の上記Merの糖修飾体が骨髄性白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項44】
全長の上記Merの糖修飾体が約190kDから約195kDの間の分子量を有する請求項43に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項45】
全長の上記Merの糖修飾体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列の内の少なくとも約90%と一致するアミノ酸配列を含んでいる請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項46】
上記可溶性部分が、Merリガンドと結合する全長の上記Merの糖修飾体の細胞外部分である請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項47】
上記MerリガンドがGas6およびプロテイン Sからなる群から選択される請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項48】
プロテイン Sと結合し、かつGas6と結合しない請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項49】
Gas6よりも高い親和性を有するプロテイン Sと結合する請求項36に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ。
【請求項50】
非相同のタンパク質と連結された、請求項36〜49のいずれか1項に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを含む融合タンパク質。
【請求項51】
上記非相同のタンパク質が免疫グロブリンのFc断片である請求項50に記載の融合タンパク質。
【請求項52】
薬学的製剤における、請求項36〜49のいずれか1項に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、あるいは請求項50または51に記載の融合タンパク質の利用。
【請求項53】
癌を処置するための薬学的製剤における、請求項36、または39〜49のいずれか1項に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、あるいは請求項50または51に記載の融合タンパク質の利用。
【請求項54】
凝固障害を処置するための薬学的製剤における、請求項36〜38のいずれか1項に記載の単離された可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ、あるいは請求項50または51に記載の融合タンパク質の利用。
【請求項55】
可溶化型のMerの糖修飾体、または可溶化型の上記Merの糖修飾体を含む融合タンパク質を個体に投与する工程を包含する
癌細胞におけるMerの糖修飾体の表面発現が陽性である個体における癌の処置方法。
【請求項56】
可溶化型の上記Merの糖修飾体が、請求項36、または39〜49のいずれか1項に記載の可溶性のMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
約165kDから約170kDの間の分子量を有する可溶化型のMerの糖修飾体、または可溶化型の上記Merの糖修飾体を含む融合タンパク質を個体に投与する工程を包含する個体における凝固障害を処置または予防する方法。
【請求項58】
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの切断を調節する作用薬を個体に投与する工程を包含する個体における凝固障害を処置または予防する方法。
【請求項59】
上記作用薬が上記Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの切断を抑制する請求項58に記載の方法。
【請求項60】
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインの切断を抑制する上記作用薬がTACE抑制因子である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
上記作用薬がMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの上記細胞外ドメインを切断する請求項58に記載の方法。
【請求項62】
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外ドメインを切断する上記作用薬がTACEのような金属プロテアーゼである請求項61に記載の方法。
【請求項63】
上記凝固障害が血栓形成傾向である請求項57〜62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼを発現する細胞に推定される調節性の化合物を接触させる工程(a)、および
上記化合物と接触しない細胞と比較して、培地におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの細胞外断片を切断する化合物を検出する工程(b)
を包含する血液凝固を調節する化合物のスクリーニング方法。
【請求項65】
上記細胞が血小板である請求項64に記載の方法。
【請求項66】
上記化合物が切断作用薬である請求項64に記載の方法。
【請求項67】
以下の群:
約195kDから約210kDの間の分子量を有するMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼ(Mer)の糖修飾体、および
約195kDの分子量を有するMerの糖修飾体
から選択されるMerと推定される調節性の化合物を接触させる工程(a)、ならびに
上記Merの糖修飾体と選択的に結合する化合物を検出する工程(b)
を包含する
Mer膜貫通型受容体チロシンキナーゼの特定の糖修飾体の活性を調節する化合物をスクリーニングする方法。
【請求項68】
上記Merの糖修飾体が以下の群:
約195kDから約210kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約165kDから約170kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約170kDから約190kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;
約135kDから約140kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体;および
約190kDから約195kDの間の分子量を有するMerの糖修飾体
から選択される請求項67に記載の方法。
【請求項69】
上記Merの糖修飾体が約170kDから約195kDの間の、または約160kD未満の分子量を有する請求項67に記載の方法。
【請求項70】
上記Merの糖修飾体がリンパ芽球性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である請求項67に記載の方法。
【請求項71】
上記Merの糖修飾体が約170kDから約190kDの間の分子量を有する請求項70に記載の方法。
【請求項72】
上記Merの糖修飾体が約135kDから約140kDの間の分子量を有する請求項70に記載の方法。
【請求項73】
上記Merの糖修飾体が骨髄性の白血病細胞によって発現されたMerの糖修飾体である請求項67に記載の方法。
【請求項74】
上記Merの糖修飾体が約190kDから約195kDの間の分子量を有する請求項70に記載の方法。
【請求項75】
Merと結合する化合物を検出する上記工程(b)が、1つのMerの糖修飾体と結合し、かつ他のMerの糖修飾体と結合しないことを検出することを含む請求項67〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
上記Merの糖修飾体が細胞によって発現されている請求項67〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
上記Merの糖修飾体が可溶性のMerの糖修飾体である請求項67〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
上記化合物が細胞によって発現されたMerとMerリガンドとの結合を抑制するか否かを検出する工程を、さらに包含する請求項67〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
上記MerリガンドがGas6およびプロテイン Sからなる群から選択される請求項78に記載の方法。
【請求項80】
細胞によって発現されたMerとプロテイン Sとの結合を抑制し、かつ細胞によって発現されたMerとGas6との結合を抑制しない化合物を検出する工程を、さらに包含する請求項79に記載の方法。
【請求項81】
上記化合物が細胞によって発現されたMerの活性を抑制するか否かを検出する工程を、さらに包含する請求項67〜77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
上記化合物が、小さい分子、核酸、タンパク質、ペプチドおよび抗体からなる群から選択される請求項67〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
上記化合物が可溶性のMerタンパク質である請求項67〜81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
上記Merタンパク質が、Merと化合物を検出する上記工程(a)におけるMer膜貫通型受容体チロシンキナーゼとは異なる糖修飾体である請求項83に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図19F】
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【公表番号】特表2008−522162(P2008−522162A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543518(P2007−543518)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/042724
【国際公開番号】WO2006/058202
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(303044077)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド (11)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of Colorado
【Fターム(参考)】