N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド及びN−アシルトリペプチドのアルコキシシラン誘導体、並びにそれを用いた粒子及び安定な水中油型配合物

【課題】顔料、無機物及び充填剤の粒子の反応性表面処理剤の提供。
【解決手段】親水性N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド及びN−アシルトリペプチド置換シラン誘導体。該処理剤で表面をコーティングされる処理粒子は、水中油型混合物の水性相中で安定な分散物を形成し、化粧品の用途に適している。また処理粒子は、固形パウダー及び着色化粧品配合物に使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0002]本出願は、2010年9月23日に出願された米国特許仮出願第61/385,790号の利益を主張する。前記仮出願の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の背景]
[0003]表面処理顔料は、インク、コーティング剤、樹脂及び化粧品における顔料及び充填剤の濡れ及び分散性を改善するために用いられてきた。顔料及び充填剤の表面を不動態化して、媒体との化学的相互作用を低減することは、表面修飾の別の用途である。化粧品においては、顔料及び充填剤の表面コーティングにより、皮膚感触の改善、皮膚上での広がり易さ及び混ざり易さの向上、機械的摩耗による刺激の低減、並びに、油及び水分の吸収による皮膚の乾燥の減少という、更なる利点が提供される。
【0003】
[0004]化粧品の用途で使用される表面コーティング剤の種類としては、脂肪酸、レシチン、鉱物蝋、例えば、ポリエチレン、植物蝋、澱粉、ペプチド、多糖類、アシルアミノ酸、チタン酸エステル、フルオロリン酸塩、シリコーン及びシランが挙げられる。シランを用いた基質の修飾は、当該技術分野で周知であり、参照により本明細書に組み込まれるArkles,Chemtech,7(12),766,(1977)に記載されている。シランカップリング剤及び反応性シリコーンは、処理化合物と顔料表面との間に化学結合を形成して、最終生成物の処理中にコーティングが可溶化することが防止されるため、分散系における使用に特に有用な表面処理剤である。シラン及びシリコーンで表面処理された顔料は、粉体が液相に分散された種々の化粧品配合物、例えば、ファンデーション、マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、リップカラー及びほお紅で使用されている。利用されている最も一般的な親水性シランは、PEG6〜9−シラン(メトキシポリ(エチレンオキシ)6〜9プロピルトリメトキシシラン)である。しかし、PEG6〜9−シランは、エマルションの形成に作用し、過剰な顔料浮遊を引き起こす。さらに、PEG6〜9−シランの長期酸化安定性及びエチレンオキシド由来物質の分解生成物が、健康に影響を与える可能性があり、幾つかの配合物で問題となり得る。
【0004】
[0005]顔料及び充填剤を含む微粒子の表面処理剤として修飾アミノ酸を利用することは、化粧品及びパーソナル・ケア製品の技術において周知である。例として、N−ミリストイル−L−グルタミン酸アルミニウムなどのアシルアミノ酸の塩を利用して調製される、優れた皮膚感触を有し、皮膚摩耗の可能性が低減されている、コーティングされた顔料及び充填剤(Miyoshiの米国特許第4,606,914号参照)、N−ラウロイルリジンなどのアシルアミノ酸のタルク表面上への沈殿によって調製される、改善された触感特性を有する板状顔料(例えば、Millerの米国特許第5,326,392号参照)、並びに、顔料及び充填剤をN−アシルアミノ酸、N−アシルアミノ酸塩及び脂肪酸の組み合わせによって処理することにより調製された皮膚処理剤(Hasegawaの米国特許第7,374,783号参照)が挙げられる。これらのコーティング剤の全てが、粒子上にアミノ酸を吸着又は沈殿することによって生成されている。ほとんどの場合、これらのコーティング剤は、アシル基に6個以上の炭素、大抵はラウロイル(12個の炭素)を有するN−アシル置換アミノ酸から誘導されるため、比較的疎水性である。これらの系で処理された粒子の使用は、油を基剤とする着色化粧品、即ち、無水配合物又は油中水型エマルションのいずれかに制限される。その理由は、疎水性アミノ酸が吸着した粒子は、水性連続相に分散しないと見込まれるからである。最終エマルションの顔料相は、製品のマストーンを、塗布後に皮膚上で達成されるマストーンに類似させるために、エマルションの外部相に分散していなければならない。
【0005】
[0006]アミノ酸修飾粒子の利点が、水中油型配合物において望ましいと思われる場合は多い。しかし、微粒子上に単に吸着させたアミノ酸は、水中油型エマルションを不安定にする傾向がある。また、吸着現象により、分散した油を粒子の表面上に物理的に架橋して合体させる傾向もある。さらに、親水性アミノ酸が吸着した粒子は、該アミノ酸が粒子から脱着し、粒子の表面特性を変化させると同時に、強力な双性イオンとなる傾向のある水溶性アミノ酸の導入により水性環境を変化させる傾向があるため、水−油界面で本質的に不安定になり易い。
【0006】
[0007]酵素及びアミノ酸の固定化は、Weetall(米国特許第3,652,761号)により開示されているが、これらの系は固定床触媒のために設計されたものであり、安定な分散物を形成するという目的には粒子寸法が適していない。
【0007】
[発明の簡潔な概要]
[0008]本発明は、アシル基に6個未満の炭素原子を含有する、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド及びN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体を対象とする。
【0008】
[0009]また、本発明は、アシル基に6個未満の炭素原子を含有する、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する無機物、充填剤又は顔料の粒子に関する。
【0009】
[0010]さらに、本発明は、アシル基に6個未満の炭素原子を含有する、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する無機物、充填剤及び/又は顔料の粒子を含む分散物を含有する水中油型配合物を対象とする。
【0010】
[0011]最後に、本発明は、アシル基に6個未満の炭素原子を含有する、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する無機物、充填剤及び/又は顔料の粒子を含む固形パウダー又は着色化粧品を対象とする。
【0011】
[発明の詳細な説明]
[0012]本発明は、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド及びN−アシルトリペプチドのアルコキシシラン誘導体に関し、ここでアシル置換における炭素原子の数は、6個未満の炭素であり、好ましくは2個の炭素(アセチル)である。N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド及びN−アシルトリペプチドは、アシル置換基に6個未満の炭素原子を含有する限り、制限されない。アシル基に6個より多くの炭素原子を含有する場合、得られるアミノ酸、又はジ−若しくはトリ−ペプチドは疎水性となる。例えば、例示的なアミノ酸としては、N−アセチルグリシン、N−アセチルプロリン、N−アセチルヒドロキシプロリン及びN−アセチルロイシンが挙げられる。例示的なジペプチドとしては、N−アセチルグリシルグリシン及びN−アセチルグリシルセリンが挙げられ、例示的なトリペプチドとしては、N−アセチルグリシルグリシルグリシンが挙げられる。
【0012】
[0013]アルコキシ基の長さに関する制限はないが、好ましいアルコキシ基として、メトキシ及びエトキシが挙げられる。本発明による好ましい化合物は、3つのアルコキシ基を含有する(アルコキシ基は同じでも異なっていてもよく、例えばジメトキシエトキシ又はジエトキシメトキシである)。但し、2つのアルコキシ基を含有する化合物も、本発明の範囲内である。
【0013】
[0014]本発明の化合物は、好ましくは、アルキルアルコキシシラン誘導体であり、例えばメチルアルコキシ、エチルアルコキシ及びプロピルアルコキシであり、プロピルアルコキシが現在のところ好ましい。他のアルキル基の長さも本発明の範囲内であるが、経済的な理由のために現在のところは好ましくない。従って、好ましい実施形態において、化合物は、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドのプロピルトリアルコキシシラン誘導体であり、プロピルトリメトキシシラン誘導体及びプロピルトリエトキシシラン誘導体などである。例えば、本発明における例示的な化合物としては、N−アセチルグリシルグリシルグリシルプロピルトリエトキシシラン及びN−アセチルグリシルグリシルプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0014】
[0015]水性相中で粒子の分散を向上させることが見出された、例示的なシラン修飾アミノ酸としては、以下が挙げられる。
【化1】

【0015】
[0016]これらの材料の調製方法は決定的なものではなく、該化合物は、当該技術分野で既知の又は開発される任意の有効な方法によって調製することができる。好ましい方法としては、カルボジイミドカップリングで起こすアミド形成、又はアミノ酸のアルカリ金属塩の形成及びハロゲン化アルキルシランとの反応で起こすエステル形成が挙げられる。エステル形成の方が有利であるが、その理由は、カルボジイミドなどの、皮膚に過敏な薬剤となり得る強力な脱水試薬の必要がないためである。例えば、該化合物は、ハロアルコキシシランと適切なN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの塩とのカップリング反応によって調製することができる。例えば、(N−アセチルグリシルプロピル)トリエトキシシランは、3−ヨードプロピルトリエトキシシランとN−アセチルグリシンとの反応によって調製することができる。
【0016】
[0017]また、本発明は、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドのアルコキシシラン誘導体で処理され、比較的親水性の粒子表面が生成された粒子(無機物、顔料又は充填剤の粒子など)を対象とする。言い換えると、処理された粒子は、表面に、本発明のN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを有する。修飾は、参照により本明細書に組み込まれるArkles,Chemtech,7(12),766,(1977)に記載されているように行うことができる。本発明におけるこれらの処理された粒子は、水中で優先的に濡れ、得られる顔料又は充填剤を、ゲル及び水中油型エマルションを含む水性配合物における使用に適したものとする。親水性アミノ酸又は類似のジ−及びトリペプチドの粒子上への共有結合は、劣化のない、安定な油−水系、特にエマルション界面系を形成する。安定な分散物として機能するためには、本発明の処理された粒子が、最大寸法で約200ミクロン以下であり、最小寸法で約0.01ミクロン以上であることが好ましい。
【0017】
[0018]本発明の粒子は、化粧品において特に有用である。化粧品に利用される粒子としては、雲母、タルク、絹雲母、シリカ、フッ素フロゴパイト、ホウケイ酸塩フレーク、アルミナ及びカオリンなどの充填剤材料、酸化鉄、二酸化チタン、フェロシアン化第二アンモニウム、酸化クロム、水酸化クロム、酸化亜鉛及び群青などの無機顔料、並びに、カルミン並びにFDA認可レーキである赤色6号、赤色7号、赤色21号、赤色27号、赤色33号、赤色36号、赤色40号、黄色5号、黄色6号、黄色10号及び青色1号などの有機顔料の両方が挙げられる。こうした種類の粒子は、例示であって、制限的であることを意図せず、他の種類の粒子(化粧品で有用な粒子及び化粧品では有用でない粒子の両方)を処理することも、本発明の範囲内である。
【0018】
[0019]また本発明は、本発明によるN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドのアルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する無機物、充填剤及び/又は顔料の粒子を含む、分散物を含有する水中油型配合物、制限はないが、コンシーラー又はファンデーションなど、を対象とする。親水性アミノ酸修飾粒子(又は類似のジ−及びトリ−ペプチド)の別の潜在的な利点は、単独で又は非結合型親水性アミノ酸と組み合わせて利用し、ファンデーション又はコンシーラーに配合したときに、天然の保湿因子としてスキンケアに寄与し得ることである。さらに、本発明は、そのような処理粒子を含有する固形パウダー及び着色化粧品、例えば、眼域への使用に適した固形パウダー及び着色化粧品に関する。水中油型配合物及び化粧品の更なる構成成分及び調製方法は、当該技術分野で周知であり、説明を要しない。
【0019】
[0020]ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例と共に説明する。
【実施例】
【0020】
調製実施例
実施例1:(N−アセチル−グリシルプロピル)トリエトキシシランの調製
[0021]加熱マントル、機械式撹拌機、容器温度計、滴下漏斗、及び窒素バブラーに接続した蒸留ヘッドを有する短いビグリューカラムを備えた5Lの4口フラスコに、2500gのエタノール及び146.4gのN−アセチルグリシンを入れた。この混合物を、室温で15分間撹拌した。容器温度を50℃未満に維持しながら、110.5gのカリウムエトキシドを加えた。混合物を加熱して容器温度を80℃とし、362.7gの3−ヨードプロピルトリエトキシシランを加えた。容器温度が90℃〜95℃に上がるまでエタノールを蒸留し、除去した。反応をGCで追跡し、3−ヨードプロピルトリエトキシシランが10%未満しか残存しなくなるまで加熱を約100時間続けた。フラスコ及び内容物を室温まで冷却し、次いで濾過して、25〜30%の固体を含む透明乃至わずかに濁った溶液を得た。120℃及び1mmの真空で溶液のサンプルから溶媒を取り除き、全ての溶媒及び未反応の出発材料を除去した。生成物をワイパー式薄膜蒸留により190℃、0.5mmで精製した。IR及びNMRの結果は、目的の構造と一致していた。
【0021】
実施例2:(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランの調製
[0022]加熱マントル、機械式撹拌機、容器温度計、滴下漏斗、及び窒素バブラーに接続した蒸留ヘッドを有する短いビグリューカラムを備えた5Lの4口フラスコに、2500gのエタノール及び432.9gのN−アセチルヒドロキシプロリンを入れた。この混合物を、室温で15分間撹拌した。容器温度を40℃未満に維持しながら、220.9gのカリウムエトキシドを加えた。ゆっくりと加熱して容器温度を80℃とし、500mlのエタノールを取り出し、廃棄した。容器温度80℃で、31.1gのヨウ化カリウム及び602gのクロロプロピルトリエトキシシランを加えた。さらに500mlのエタノールを蒸留により取り出し、保持した。エタノールを取り出す間に、容器温度を80℃から90℃へ徐々に上げた。反応をGCで追跡し、3−クロロプロピルトリエトキシシランが5%未満しか残存しなくなるまで加熱を続けた。保持していたエタノールをフラスコに戻し、内容物を室温まで冷却した。混合物を濾過し、25〜30%の固体を含む透明乃至わずかに濁った琥珀色の溶液約3kgを得た。溶液の密度は25℃で0.87g/cmであった。60℃及び1mmの真空で溶液のサンプルから溶媒を取り除き、ゲル状の固体を得た。IR及びNMRの結果は、目的の構造と一致していた。
【0022】
実施例3:(N−アセチル−ロイシンアミドプロピル)トリエトキシシランの調製
[0023]加熱マントル、磁気撹拌機、容器温度計、滴下漏斗、及び窒素バブラーに接続したドライアイスコンデンサを備えた1Lの4口フラスコに、125mlのジメチルホルムアミド及び25gのN−アセチルロイシンを入れた。この混合物を、室温で15分間撹拌した。14.9gのジシクロヘキシルカルボジイミドを10分割して加えた。容器温度は10℃上がった。混合物を60分撹拌すると、容器温度が24℃に戻った。32gの3−アミノプロピルトリエトキシシランを45分間かけて加え、容器温度が15℃上がった。混合物を、さらに4時間撹拌した。フラスコを40℃に加熱し、ジメチルホルムアミドを真空下で除去した。300mlのトルエンを加え、混合物を40℃に加熱し、その後、加熱せずに一晩撹拌した。混合物を濾過した。固体を100mlのトルエンで洗浄し、合わせた濾過液から揮発物を取り除き、淡黄色の固体として生成物を得た。IR及びNMRの結果は目的の構造と一致していた。生成物をエタノール中30℃に温めた後、密度が0.763の13%溶液を形成した。
【0023】
実施例4:N−(アセチルグリシンアミドプロピル)トリメトキシシランの調製
[0024]加熱マントル、機械式撹拌機、容器温度計、滴下漏斗、及び窒素バブラーに接続したドライアイスコンデンサを備えた3Lの4口フラスコに、300mlのジメチルホルムアミド及び58.5gのアセチルグリシンを入れた。この混合物を、室温で20分間撹拌した。56.1gのジシクロヘキシルカルボジイミドを10分割して加えると、容器温度が12℃上がった。この混合物を60分間撹拌すると、容器温度が25℃に戻った。44.8gの3−アミノプロピルトリメトキシシランを45分間かけて加え、容器温度が20℃上がった。混合物を、さらに4時間撹拌した。フラスコを40℃に加熱し、ジメチルホルムアミドを真空下で除去した。400mlのTHFを容器に加え、混合物を40℃に加熱し、その後、加熱せずに一晩撹拌した。混合物を室温で濾過した。固体を100mlのTHFで洗浄し、合わせた濾過液から揮発物を取り除き、淡黄色の固体として生成物を得た。IR及びNMRの結果は目的の構造と一致していた。生成物は、メタノール中25℃で密度が0.799の5%溶液を形成した。
【0024】
粒子の調製及び分析
処理した粒子の調製
実施例5:処理した黄色酸化鉄の調製
[0025]2グラムの(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン(実施例2で調製)を、2000mlの80%イソプロパノール/20%蒸留水の溶液に撹拌しながら加えた。このシランを、周囲条件で2時間加水分解させた。100グラムの黄色酸化鉄を加えて、撹拌を1時間続けた。懸濁液を濾過し、濾過液を80℃まで4時間加熱した。得られた粉体を、ハンマーミルで粉砕し、0.027”の篩に通した。
【0025】
実施例6:処理した赤色酸化鉄、黒色酸化鉄及び二酸化チタンの調製
[0026]2グラムの(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン(実施例2で調製)を、100グラムの乾燥赤色酸化鉄上に、撹拌下、タンブルミキサー中で噴霧した。粉体を、周囲条件で1時間撹拌し、次いで80℃まで4時間加熱した。冷却後、処理粉体をハンマーミルで粉砕して凝集を無くし、0.035”の篩に通した。黒色酸化鉄及び二酸化チタンの処理粒子も同様にして調製した。
【0026】
実施例7:処理した絹雲母の調製
[0027]2グラムの(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン(実施例2で調製)を、100グラムの絹雲母上に、撹拌下、タンブルミキサー中で噴霧した。粉体を、周囲条件で1時間撹拌し、次いで80℃まで4時間加熱した。冷却後、処理粉体をハンマーミルで粉砕し、0.067”の篩に通した。
【0027】
処理した顔料粒子の分析
[0028]表面修飾が顔料粒子に与える効果を決定するために、4種の処理顔料(黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄及び二酸化チタン)を分析し、種々の比較材料と比較した。
【0028】
[0029]水性分散物(視覚):0.3グラムの各処理顔料を、15mlの脱イオン水に加えた。撹拌せずに反応を観察し、結果を表1にまとめる。
【0029】
【表1】

【0030】
[0030]表1から分かるように、親水性修飾を伴った全ての顔料が、脱凝集されており、撹拌せずにある程度まで分散した。PEG6〜9シラン(メトキシ(ポリエチレンオキシ)6〜9プロピルトリメトキシシラン)、カルボキシエチルシラントリオールナトリウム及び(N−アセチルヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランで処理された顔料は、完全に分散し、一部の粒子は1か月を超えて懸濁液中に残存した。
【0031】
[0031]極性化合物のみを顔料表面上に沈着させた場合は、官能基として極性化合物を有するシランを用いた表面処理から得られる即時の分散効果は生じなかった。乾燥処理顔料は、処理プロセスの粉砕工程によって、ある程度まで脱凝集されたが、この効果は、分散試験に使用された全てのサンプルの粒径減少工程によって打ち消された。表面積が増すと濡れプロセスを遅らせるように実際に見え得るが、下記の粘度試験の結果は、処理粒子の濡れが未処理顔料と比較して改善されたことを示している。視覚評価に見られる親水性処理の劇的な分散は、定量的な測定によって確認された。
【0032】
[0032]分散粘度(ブチレングリコール):顔料の分散物は、ブチレングリコール中で1時間撹拌しながら濡らし、次いで、3本ロールミル上を3回通過させて調製した。粘度は、Brookfield粘度計を用い、20RPMの標準スピンドルを使用して測定した。異なる粘度範囲では、異なる大きさのスピンドルを使用した。結果を表2にまとめてある。同じ濃度及び分散度(粒径)では、粘度が低いほど、濡れが良好となることを示す。
【0033】
【表2】

【0034】
[0033]全ての親水性処理顔料は、未処理顔料と比較して、ブチレングリコール中の濡れ及び分散性を向上させたことが分かるが、驚くことに、二酸化チタン上のPEG6〜9シランは例外であった。(N−アセチル−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランで処理された顔料は、他の親水性処理顔料と匹敵する性能を示した。分散粘度の測定により、PEG6〜9シラン、カルボキシエチルシラントリオールナトリウム及び(N−アセチル−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランで処理した酸化鉄は、最良の濡れを示すことが示された。カルボキシエチルシラントリオールナトリウム及び(N−アセチル−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランによる処理は、二酸化チタンに対して最も効果的な処理であった。
【0035】
配合物及び化粧品の調製及び分析
実施例8:水中油型コンシーラーの調製及び分析
[0034]20%の顔料及び充填剤を含有する5種のアニオン性水中油型エマルションコンシーラーを、表3に示す成分を用いて調製した。1つの配合物は、(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン(実施例2のように調製)で処理した顔料を使用して調製し、3つの比較配合物は、PEG6〜9シラン、アミノプロピルシラン又はカルボキシエチルシラントリオールナトリウムで処理した顔料を使用して調製した。5番目の配合物は、対照として、未処理の顔料を使用して調製した。それぞれの場合において、水相の成分は、低速で均質化しながら、仕上げビーカーに順番に添加した。ビーガム(Veegum)を添加した後、水相を85〜90℃まで15分間加熱し、次いで、75℃で他の成分を添加した。油相の成分は混合し、均質になるまで75〜80℃で撹拌した。油相を水相に加え、均質化した。
【0036】
【表3】

【0037】
[0035]処理顔料の配合物中の性能を視覚的に分析した。分散の質は、分散していない色の有無によって評価し、1滴の最終エマルションを2つのスライドガラスの間に挟み、色の点を検査することによって検出した。粒子を濡らすために必要な時間を用いて、濡れの容易性を比較した。「速い」は、顔料の分散及び発色が、粉体の水相への添加直後に始まることを意味する。「遅い」は、濡れていない凝集物が、混合の5分後も存在していることを指す。「中間」は、顔料の添加と乾燥粒子の消失との間に、45〜90秒の遅れがあることを指す。最終生成物中の発色(強度)及び処理中の着色浮遊物の有無を、後の分析のために観察し、撮影した。最終生成物の粘度及びエマルション安定性も観測した。未処理の顔料及び対照処理を施した顔料についてのデータを、(N−アセチルヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランで処理した顔料と比較し、結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
[0036]データは、(N−アセチル−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン処理顔料の親水性と水中における分散性を明白に実証している。
【0040】
[0037]驚くことに、(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン処理は、種々の顔料中で最も一様な濡れをもたらした。(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン処理顔料を含む配合物は、良好な分散を示し、視認し得る凝集物も無く、個々の着色剤の濡れが十分でないことを通常示す着色浮遊物も無かった。この配合物は皮膚上に均等に広がり、繊細な眼下域上でくまや他の欠点を隠す快適な層となった。エマルションは加速加齢及び長期の試験下で安定であった。
【0041】
[0038]処理表面と他の原材料との相互作用は、実際の配合物における他の処理で観測される結果のばらつきの原因になり得る。PEG6〜9シランのPEG基の表面活性は、エマルションの形成に作用して、過剰の顔料浮遊を起こす場合があり、幾つかの増粘剤の濡れに影響を与えるようである。カルボキシエチルシラントリオールナトリウムのアニオン性は、顔料の分散を確かに安定化するが、添加した電解質が他の原材料、特に、ゲル化剤に与える作用は、エマルションの不安定性又は着色浮遊物の原因となり得る。従って、本発明の材料は、先行技術の材料によっては達成されていない結果をもたらす。
【0042】
実施例9:固形パウダーファンデーションの調製及び分析
[0039]固形パウダーファンデーションを、表5に示す構成成分を用い、高速撹拌機を備えたタンブルミキサー中で粉体相を混合することによって調製した。均一になったとき、油を混合し、分散するまで撹拌しながらバッチに加えた。粉体を適切な平鉢に750psiで圧入した。生成物は、皮膚への優れた親和力を示し、柔らかで絹のような感触でなめらかに塗布され、完全でありながら自然に見える被覆を与え、その被覆は一日中持続した。
【0043】
【表5】

【0044】
実施例10:固形パウダーアイシャドウ
[0040]固形パウダーアイシャドウは、表6に示す構成成分を使用し、高速撹拌機を備えたタンブルミキサーで粉体相を混合することによって調製した。均一になったとき、油を混合し、分散するまで撹拌しながらバッチに加えた。粉体を適切な平鉢に850psiで圧入した。生成物は、柔らかで絹のような感触で繊細な眼域になめらかに塗布された。(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシラン処理顔料の皮膚への親和力のために、アイシャドウは長持ちし、しわが寄りにくかった。
【0045】
【表6】

【0046】
実施例11:アイライナーの調製及び分析
[0041]水性アイライナーは、(N−アセチル−4−ヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランで処理した黒色酸化鉄を低速だけで均質化しながらエマルションの水相に分散させ、十分に発色する微細な粒径の顔料を得ることによって調製した。アイライナーにより、まつ毛の後ろに美しい線が引かれ、その線は一日中よく密着した。アイライナーの配合物を表7に示す。
【0047】
【表7】

【0048】
[0042]当業者であれば、上記した実施形態に、広範なその発明概念を逸脱することなく変更をなし得ることを理解するであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲内における改変を含むことを意図していることが理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル基に6個未満の炭素原子を含有する、N−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項2】
アシル基がアセチルである、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項3】
アルコキシ基がメトキシ及びエトキシからなる群から選択される、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項4】
誘導体がプロピルトリアルコキシシラン誘導体である、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項5】
誘導体が(N−アセチルグリシルプロピル)トリエトキシシランである、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項6】
誘導体が(N−アセチルグリシンアミドプロピル)トリエトキシシランである、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項7】
誘導体が(N−アセチルロイシンアミドプロピル)トリエトキシシランである、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項8】
誘導体が(N−アセチルヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランである、請求項1に記載の親水性アルコキシシラン誘導体。
【請求項9】
アシル基に6個未満の炭素原子を含有するN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する、無機物、充填剤又は顔料の粒子。
【請求項10】
親水性アルコキシシラン誘導体が、シラン中のケイ素原子と粒子との間のオキセタン架橋を介して粒子の表面に共有結合を形成している、請求項9に記載の粒子。
【請求項11】
アシル基がアセチルである、請求項9に記載の粒子。
【請求項12】
アルコキシ基がメトキシ及びエトキシからなる群から選択される、請求項9に記載の粒子。
【請求項13】
誘導体がプロピルトリアルコキシシラン誘導体である、請求項9に記載の粒子。
【請求項14】
誘導体が(N−アセチルグリシルプロピル)トリエトキシシランである、請求項9に記載の粒子。
【請求項15】
誘導体が(N−アセチルグリシンアミドプロピル)トリエトキシシランである、請求項9に記載の粒子。
【請求項16】
誘導体が(N−アセチルロイシンアミドプロピル)トリエトキシシランである、請求項9に記載の粒子。
【請求項17】
誘導体が(N−アセチルヒドロキシプロリル)プロピルトリエトキシシランである、請求項9に記載の粒子。
【請求項18】
粒子が最大寸法で約200ミクロン以下であり、最小寸法で約0.01ミクロン以上である寸法を有する、請求項9に記載の粒子。
【請求項19】
アシル基に6個未満の炭素原子を含有するN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する、無機物、充填剤及び/又は顔料の粒子を含む分散物を含有する、水中油型配合物。
【請求項20】
アシル基に6個未満の炭素原子を含有するN−アシルアミノ酸、N−アシルジペプチド又はN−アシルトリペプチドの親水性アルコキシシラン誘導体のコーティングを表面に有する、無機物、充填剤及び/又は顔料の粒子を含む、固形パウダー又は着色化粧品。


【公開番号】特開2012−72139(P2012−72139A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−209534(P2011−209534)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(511232363)ジェレスト テクノロジーズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】