説明

N−アシルアミノ酸の製造方法

【課題】N−アシルアミノ酸(3)を良好な収率で製造する方法方法を提供すること。
【解決手段】反応器内で、溶媒中、コバルト化合物及び水素の存在下、アルデヒド化合物(1)と、アミド化合物(2)と、一酸化炭素とを反応させることにより、N−アシルアミノ酸(3)を製造する方法であって、予め溶媒、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒を供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(1)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアルデヒド化合物〔以下、アルデヒド化合物(1)ということがある〕と、下記式(2)
【0004】
【化2】

【0005】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアミド化合物〔以下、アミド化合物(2)ということがある〕と、一酸化炭素とを反応させることにより、下記式(3)
【0006】
【化3】

【0007】
(式中、R、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−アシルアミノ酸〔以下、N−アシルアミノ酸(3)ということがある〕を製造する方法に関する。N−アシルアミノ酸(3)は、例えば医農薬やメチオニンの原料として有用である。
【背景技術】
【0008】
アルデヒド化合物(1)と、アミド化合物(2)と、一酸化炭素とを反応させてN−アシルアミノ酸(3)を製造する方法として、例えば、反応器内に、予めアルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)、溶媒及びコバルト化合物を入れて、一酸化炭素及び水素の加圧下に反応を行う方法(特許文献1及び2)や、反応器内に、予めアミド化合物(2)、溶媒及びコバルト化合物を入れて、一酸化炭素及び水素の加圧下にアルデヒド化合物(1)及び溶媒を供給して反応を行う方法(特許文献1及び2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008−501737号公報
【特許文献2】特表2008−501738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の方法では、N−アシルアミノ酸(3)の収率の点で必ずしも満足のいくものではなかった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、N−アシルアミノ酸(3)を良好な収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討の結果、上記目的を達成しうる本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、反応器内で、溶媒中、コバルト化合物及び水素の存在下、下記式(1)
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアルデヒド化合物と、下記式(2)
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアミド化合物と、一酸化炭素とを反応させることにより、下記式(3)
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−アシルアミノ酸を製造する方法であって、予め溶媒、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、式(1)で示されるアルデヒド化合物、式(2)で示されるアミド化合物及び溶媒を供給することを特徴とする式(3)で示されるN−アシルアミノ酸の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、N−アシルアミノ酸(3)を良好な収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、反応器内で、溶媒中、コバルト化合物及び水素の存在下、下記式(1)
【0021】
【化7】

【0022】
(式中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアルデヒド化合物〔アルデヒド化合物(1)〕と、下記式(2)
【0023】
【化8】

【0024】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアミド化合物〔アミド化合物(2)〕と、一酸化炭素とを反応させる。
【0025】
式(1)及び式(2)の中で、置換されていてもよい炭化水素基における炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数が1〜24のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、炭素数が2〜24のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、2−メチルアリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1−メチル−1−ペンテニル基、2−メチル−1−ペンテニル基、4−メチル−3−ペンテニル基、2−エチル−1−ブテニル基、2−ヘプテニル基、2−オクテニル基、2−ノネニル基、2−デセニル基、2−ウンデセニル基、2−ドデセニル基、2−トリデセニル基、2−テトラデセニル基、2−ペンタデセニル基、2−ヘキサデセニル基、2−ヘプタデセニル基、2−オクタデセニル基、2−ノナデセニル基、2−イコセニル基、2−エイコセニル基、2−ヘンイコセニル基、2−ヘンエイコセニル基、2−ドコセニル基、2−トリコセニル基、2−テトラコセニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、炭素数が2〜24のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−3−ブチニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、4−ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、2−ヘプチニル基、2−オクチニル基、2−ノニニル基、2−デシニル基、2−ウンデシニル基、2−ドデシニル基、2−トリデシニル基、2−テトラデシニル基、2−ペンタデシニル基、2−ヘキサデシニル基、2−ヘプタデシニル基、2−オクタデシニル基、2−ノナデシニル基、2−イコシニル基、2−エイコシニル基、2−ヘンイコシニル基、2−ヘンエイコシニル基、2−ドコシニル基、2−トリコシニル基、2−テトラコシニル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、炭素数が3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。シクロアルケニル基としては、炭素数が3〜8のシクロアルケニル基が好ましく、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
【0026】
式(1)及び式(2)の中で、置換されていてもよい複素環基における複素環基としては、例えば、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基等が挙げられる。ヘテロアリール基としては、炭素数が3〜9のヘテロアリール基が好ましく、例えば、ピリジル基、キノニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、フリル基、インドリル基、チエニル基、オキサゾリル基等が挙げられる。ヘテロアラルキル基としては、炭素数が5〜10のヘテロアラルキル基が好ましく、例えば、ピリジルメチル基、キノニルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、ピロリルメチル基等が挙げられる。
【0027】
前記炭化水素基及び複素環基は、置換されていてもよい。炭化水素基がアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基の場合、その置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素のようなハロゲン原子;シクロプロピル基、1−メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基のような炭素数が3〜6のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数が1〜4のアルコキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオブトキシ基のような炭素数が1〜4のチオアルコキシ基;アリルオキシ基、2−プロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、2−メチル−3−プロペニルオキシ基のような炭素数が3〜4のアルケニルオキシ基;炭素数が7〜20のアラルキルオキシ基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基のような炭素数が6〜18のアリ−ル基;フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基のようなアリ−ルオキシ基;炭素数が2〜7のアルカノイル基;炭素数が7〜19のアリロイル基;炭素数が2〜7のアルカノイルアミノ基;炭素数が1〜6のアルキルスルホニルアミノ基;炭素数が2〜6のアルコキシカルボニルアミノ基;ベンジルカルボニルアミノ基;炭素数が6〜18のアリ−ルスルホニルアミノ基;アミノカルボニル基;炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。炭化水素基がアルキル基の場合、炭素数が6〜18のアリ−ル基で置換されたアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリフェニルエチル基、(1−ナフチル)メチル基、(2−ナフチル)メチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0028】
前記炭化水素基がシクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基の場合、その置換基としては、例えば、上述のハロゲン原子、炭素数が3〜6のシクロアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、炭素数が1〜4のチオアルコキシ基、炭素数が3〜4のアルケニルオキシ基、炭素数が7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数が6〜18のアリ−ル基、アリ−ルオキシ基、炭素数が2〜7のアルカノイル基、炭素数が7〜19のアリロイル基、炭素数が2〜7のアルカノイルアミノ基、炭素数が1〜6のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数が2〜6のアルコキシカルボニルアミノ基、ベンジルカルボニルアミノ基、炭素数が6〜18のアリ−ルスルホニルアミノ基、アミノカルボニル基、炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基や、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数が1〜6のアルキル基や、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基のような炭素数が2〜6のアルケニル基や、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基のような炭素数が7〜20のアラルキル基等が挙げられる。複素環基における置換基としては、例えば、上述のハロゲン原子、炭素数が3〜6のシクロアルキル基、炭素数が1〜4のアルコキシ基、炭素数が1〜4のチオアルコキシ基、炭素数が3〜4のアルケニルオキシ基、炭素数が7〜20のアラルキルオキシ基、炭素数が6〜18のアリ−ル基、アリ−ルオキシ基、炭素数が2〜7のアルカノイル基、炭素数が7〜19のアリロイル基、炭素数が2〜7のアルカノイルアミノ基、炭素数が1〜6のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数が2〜6のアルコキシカルボニルアミノ基、ベンジルカルボニルアミノ基、炭素数が6〜18のアリ−ルスルホニルアミノ基、アミノカルボニル基、炭素数が1〜6のアルコキシカルボニル基や、上述の炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が2〜6のアルケニル基、炭素数が7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
【0029】
アルデヒド化合物(1)としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド、2−エチルヘキサナール、イソブチルアルデヒド、フルフラール、クロトンアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、置換ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2,4−ジヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、グリオキサル酸、α−アセトキシプロピオンアルデヒド等が挙げられ、中でも、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドを原料とする場合に、本発明の方法は有利に採用される。
【0030】
アミド化合物(2)としては、アセトアミド、ベンズアミド、プロピオンアミド、N−メチルアセトアミド、脂肪酸アミド、アクリルアミド、ケイ皮酸アミド、フェニル酢酸アミド、アセトアニリド、尿素等が挙げられ、中でも、アセトアミドを原料とする場合に、本発明の方法は有利に採用される。
【0031】
アミド化合物(2)の使用量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、通常1.00モル以上、好ましくは1.05〜2.00モルである。
【0032】
反応に使用される溶媒としては、例えば、有機溶媒、イオン液体等が挙げられ、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトニトリル、ベンゾニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸等が挙げられ、中でも、1,4−ジオキサンが好ましい。尚、溶媒は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
溶媒の使用量は、アルデヒド化合物(1)に対して、0.50〜20.0重量倍が好ましく、より好ましくは2.0〜10.0重量倍である。2種以上の溶媒を併用する場合は、その合計量が前記範囲となればよい。
【0034】
本発明では、触媒としてコバルト化合物を使用する。コバルト化合物としては、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、硝酸コバルト(II)、硫酸コバルト(II)、酢酸コバルト(II)等の2価コバルト化合物;オクタカルボニルジコバルト(0)、テトラコバルトドデカカルボニル(0)等のコバルトカルボニル錯体;ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)コバルト(II)、テトラキス(トリメチルホスフィン)メチルコバルト(I)等のコバルトホスフィン錯体等が挙げられる。中でも、得られるN−アシルアミノ酸(3)の収率の点で、コバルトカルボニル錯体が好ましい。尚、コバルト化合物は、成形して使用してもよいし、担体に担持して使用してもよいし、高分子化合物に固定化して使用してもよい。
【0035】
コバルト化合物の使用量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、通常0.00010〜0.80モルであり、好ましくは0.010〜0.090モルである。
【0036】
本発明では、水素の存在下に前記反応を行う。水素と一酸化炭素の使用割合は、水素に対する一酸化炭素のモル比(一酸化炭素/水素)が1/1〜9/1であることが好ましく、1/1〜4/1であることがより好ましく、2/1〜3/1であることがさらに好ましい。
【0037】
また、本発明においては、さらに水の存在下で前記反応を行うことができる。水の使用量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、0.1〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルである。
【0038】
本発明においては、酸の存在下に前記反応を行ってもよい。酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩化水素、リン酸等の無機酸;トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリクロロ酢酸等の有機酸;イオン交換樹脂等が挙げられ、中でも、硫酸が好ましい。無機酸や有機酸を使用する場合、その使用量は、アルデヒド化合物(1)1モルに対して、0.001〜0.02モルが好ましい。
【0039】
次に、前記反応の反応形式について説明する。本発明では、まず、反応器内に、溶媒、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を導入する。これらの導入順序には特に制限はないが、溶媒及びコバルト化合物を導入した後、水素及び一酸化炭素を導入するのが好ましい。これらを反応器内に導入した後、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒を供給する。アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒は、それぞれ単独で供給(いわゆる共フィード)してもよいし、これらの混合物を供給してもよいが、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒の混合溶液として供給するのが好ましい。アルデヒド化合物(1)は、その総量をアミド化合物(2)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよいし、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残部をアミド化合物(2)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよい。また、アミド化合物(2)も同様に、その総量をアルデヒド化合物(1)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよいし、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残部をアルデヒド化合物(1)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよい。本発明においては、溶媒、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、アルデヒド化合物(1)の総量、アミド化合物(2)の総量及び溶媒を供給するのが好ましい。また、反応器内に予め入れておく溶媒の量は、該溶媒総量に対し、好ましくは30〜90重量%である。すなわち、予め溶媒総量の30〜90重量%、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び残部の溶媒(すなわち該溶媒総量の10〜70重量%)を供給するのが好ましい。また、水の存在下で前記反応を行う場合には、予め反応器内に水を導入してもよいし、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒とともに供給してもよいし、また、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残部をアルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよいが、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒とともに供給するのが好ましい。酸の存在下で前記反応を行う場合には、予め反応器内に酸を導入してもよいし、アルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒とともに供給してもよいし、また、その一部を予め反応器内に入れておき、次いで、残部をアルデヒド化合物(1)、アミド化合物(2)及び溶媒とともに反応器内に供給してもよいが、予め反応器内に酸を導入するのが好ましい。
【0040】
尚、アルデヒド化合物(1)の供給及びアミド化合物(2)の供給は、それぞれ、間隔を空けることなく連続的に行ってもよいし、所定の間隔を空けて間歇的に行ってもよい。また、アルデヒド化合物(1)の供給開始とアミド化合物(2)の供給開始、及びアルデヒド化合物(1)の供給終了とアミド化合物(2)の供給終了は、それぞれ、必ずしもちょうど一致させる必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲でずらしてもよい。
【0041】
アルデヒド化合物(1)は、冷却して供給するのが望ましい。これにより、アルデヒド化合物(1)2分子の反応(アルドール縮合)を抑制しうるのにくわえ、この縮合体由来の副生成物を抑制することができる。アルデヒド化合物(1)の冷却温度は、その種類にもよるが、通常−20〜5℃程度である。
【0042】
反応温度は通常60〜140℃、好ましくは80〜120℃である。また、反応圧力は常圧でもよいが、絶対圧で0.1〜25MPaが好ましく、8〜18MPaの加圧下に反応を行うのがより好ましい。加圧下に前記反応を行う場合、水素及び一酸化炭素の混合ガスを用いて加圧を行えばよく、反応圧力を調整するために、窒素やヘリウム等の不活性ガスを用いてもよい。前記反応は、連続式、半連続式、回分式のいずれで行ってもよい。
【0043】
かくして、下記式(3)
【0044】
【化9】

【0045】
(式中、R、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−アシルアミノ酸〔N−アシルアミノ酸(3)〕を良好な収率で製造することができる。反応後に得られるN−アシルアミノ酸(3)を含む反応混合物の後処理操作については適宜選択でき、必要に応じて洗浄や蒸留、晶析などにより精製した後、各種用途に使用できる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、実施例中、アセチルメチオニン〔式(3)中、Rが2−チオメトキシエチル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子である化合物〕の含有量は、液体クロマトグラフィーにより分析し、収率を算出した。
【0047】
実施例1
熱電対、攪拌機、ガス供給ライン及び液供給ラインを備えたステンレス製反応器に、オクタカルボニルジコバルト(0)〔Co(CO)〕5.40g(0.016モル)及び1,4−ジオキサン39.86g(該1,4−ジオキサン総量に対し38.7重量%)を入れて攪拌し、反応器内の気相部に一酸化炭素及び水素の混合ガス〔一酸化炭素/水素=2.3/1(モル比)〕を導入して反応器内の圧力を13MPa(ゲージ圧)とした。次いで、攪拌を継続しながら反応器内の温度を68〜72℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は13MPa(ゲージ圧)であった。次いで、該反応器内に、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド〔式(1)中、Rが2−チオメトキシエチル基である化合物〕31.57g(0.30モル)と、アセトアミド〔式(2)中、Rがメチル基であり、Rが水素原子である化合物〕18.08g(0.30モル)と、1,4−ジオキサン63.14g(該1,4−ジオキサン総量に対し61.3重量%)と、水5.40gとの混合溶液を1.5時間かけて滴下した。滴下後、攪拌を継続しながら68〜72℃で4時間保温し、次いで5〜35℃に冷却し、アセチルメチオニンの1,4−ジオキサン溶液158.3gを得た。該溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドに対するアセチルメチオニンの収率は85.5%であった。
【0048】
比較例1
熱電対、攪拌機、ガス供給ライン及び液供給ラインを備えたステンレス製反応器に、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド17.36g(0.17モル)、アセトアミド9.95g(0.17モル)、オクタカルボニルジコバルト(0)2.97g(0.0087モル)及び1,4−ジオキサン56.65g(該1,4−ジオキサン総量に対し100重量%)を入れて攪拌し、反応器内の気相部に一酸化炭素及び水素の混合ガス〔一酸化炭素/水素=2.3/1(モル比)〕を導入して反応器内の圧力を13MPa(ゲージ圧)とした。次いで、攪拌を継続しながら反応器内の温度を68〜72℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は13MPa(ゲージ圧)であった。次いで、攪拌を継続しながら68〜72℃で4時間保温した後、5〜35℃に冷却し、アセチルメチオニンの1,4−ジオキサン溶液84.2gを得た。該溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドに対するアセチルメチオニンの収率は73.0%であった。
【0049】
比較例2
熱電対、攪拌機、ガス供給ライン及び液供給ラインを備えたステンレス製反応器に、アセトアミド9.95g(0.17モル)、オクタカルボニルジコバルト(0)2.97g(0.0087モル)及び1,4−ジオキサン56.65g(該1,4−ジオキサン総量に対し100重量%)を入れて攪拌し、反応器内の気相部に一酸化炭素及び水素の混合ガス〔一酸化炭素/水素=2.3/1(モル比)〕を導入して反応器内の圧力を13MPa(ゲージ圧)とした。次いで、攪拌を継続しながら反応器内の温度を68〜72℃に昇温した。このときの反応器内の圧力は13MPa(ゲージ圧)であった。次いで、該反応器内に、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒド17.36g(0.17モル)を1.0時間かけて滴下した。滴下後、攪拌を継続しながら68〜72℃で4時間保温し、次いで5〜35℃に冷却し、アセチルメチオニンの1,4−ジオキサン溶液87.8gを得た。該溶液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドに対するアセチルメチオニンの収率は81.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内で、溶媒中、コバルト化合物及び水素の存在下、下記式(1)
【化1】

(式中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアルデヒド化合物と、下記式(2)
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよい複素環基を表す。)
で示されるアミド化合物と、一酸化炭素とを反応させることにより、下記式(3)
【化3】

(式中、R、R及びRは、それぞれ前記と同じ意味を表す。)
で示されるN−アシルアミノ酸を製造する方法であって、予め溶媒、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、式(1)で示されるアルデヒド化合物、式(2)で示されるアミド化合物及び溶媒を供給することを特徴とする式(3)で示されるN−アシルアミノ酸の製造方法。
【請求項2】
予め溶媒総量の30〜90重量%、コバルト化合物、水素及び一酸化炭素を入れた反応器内に、式(1)で示されるアルデヒド化合物、式(2)で示されるアミド化合物及び残部の溶媒を供給する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
さらに水の存在下で前記反応を行い、前記供給において、さらに水を供給する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(1)で示されるアルデヒド化合物が3−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
式(2)で示されるアミド化合物がアセトアミドである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
溶媒が、1,4−ジオキサンである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
コバルト化合物が、コバルトカルボニル錯体である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−95732(P2013−95732A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242148(P2011−242148)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】