説明

N−アシルヒドラゾンのアリル化に用いられる不斉触媒

【課題】一価インジウムを用いてN-アシルヒドラゾンをアリル化する反応に用いる不斉触媒を提供する。
【解決手段】一価のインジウムと、式V


(式中、Rは水素原子又はアルキル基;R10は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R11は、水素原子、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基)又はその鏡像体で表される不斉配位子とからなる不斉触媒であって、N−アシルヒドラゾンのアリル化に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アリル化剤によってN-アシルヒドラゾンをアリル化する反応に用いる不斉触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
イミン類のアリル化は重要な炭素-炭素結合生成物であり(非特許文献1)、生成物のホモアリルアミン類は生理活性物質等の有用な中間体となる(非特許文献2)。イミンのアリル化は、通常はハロゲン化アリルをBarbier型反応条件で調製したアリルインジウム試薬を用いるが(非特許文献3)、最近ではアリルパラジウム(非特許文献4)やアリル水銀(非特許文献5)から金属交換反応でアリルインジウムを調製する方法も報告されている。
しかしながら、他のアリル化反応方法では毒性の高いアリルスズ(非特許文献6)や腐食性のあるアリルケイ素試薬(非特許文献7)、又は活性化されたイミン誘導体(非特許文献8)を用いる必要がある。一方、アシルヒドラゾン類は対応するカルボニル化合物から調製され、イミンに比べて非常に安定性が高い(非特許文献9)。しかしながらアシルヒドラゾンを用いる触媒的アリル化反応は、ごく限られた基質でしか報告されていない(非特許文献10)。
【0003】
一方、1価インジウムは低毒性であり、ハライドの形で市販されているが、一般的な有機溶媒に対する溶解度は極端に低い。また、特に1価インジウムはルイス酸性およびルイス塩基性の両方の性質を備え、ルイス塩基性の強い溶媒中では不均化が進行することがあり、0価と3価のインジウムへと変換される。特に水中かつ酸存在下ではこの傾向が顕著である。このようなことから、1価インジウム種を有機合成に用いた例は少ない。
特に、炭素-炭素結合生成反応を触媒量の1価インジウムを用いて行った例はこれまでに知られていない。
【0004】
【非特許文献1】Kobayashi, S.; Ishitani, H. Chem. Rev. 1999, 99, 1069
【非特許文献2】Ding, H.; Friestad, G. K. Synthesis 2005, 2815
【非特許文献3】Loh, T.-P.; Ho, D. S.-C.; Xu, K.-C.; Sim, K.-Y. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 865
【非特許文献4】Cooper, I. R.; Grigg, R.; MacLachlan, W. S.; Sridharan, V.; Thornton-Pett, M. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 403
【非特許文献5】Chan, T. H.; Yang, Y. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3228
【非特許文献6】Nakamura, H.; Nakamura, K.; Yamamoto, Y. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 4242
【非特許文献7】Nakamura, K.; Nakamura, H.; Yamamoto, Y. J. Org. Chem. 1999, 64, 2614
【非特許文献8】Ferraris, D.; Dudding, T.; Young, B.; Drury, W. J. III; Lectka, T. J. Org. Chem. 1999, 64, 2168
【非特許文献9】Oyamada, H.; Kobayashi, S. Synlett 1998, 249
【非特許文献10】Cook, G. R.; Maity, B. C.; Kargbo, R. Org. Lett. 2004, 6, 1741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、一価インジウムを用いてN-アシルヒドラゾンをアリル化する反応に用いる不斉触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、一価のインジウムでN-アシルヒドラゾンのアリル化反応が進行することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の不斉触媒は、一価のインジウムと、式V
【化5】

又は、式VI
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基;R10、R12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R11、R14は、水素原子、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R13はシアノ基またはアミノ基)又はその鏡像体で表される不斉配位子とからなる不斉触媒であって、N-アシルヒドラゾンのアリル化に用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一価インジウムを用いてN-アシルヒドラゾンをアリルボロネートによりアリル化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、一価インジウムの存在下、N-アシルヒドラゾンをアリルボロネートによりアリル化するものである。
【0010】
N-アシルヒドラゾンのアリル化の触媒として、N-アシルヒドラゾンに対し1〜50mol%の1価のインジウムを用い、好ましくは1〜20mol%、より好ましくは5〜20mol%である。
1価のインジウムとしては、ヨウ化インジウム、臭化インジウム、塩化インジウム等のハロゲン化インジウム、またはインジウムトリフラートを好適に用いることができる。
【0011】
本発明で用いるインジウムは、有機溶媒中に溶解又は分散させて用いることができ、有機溶媒としては、トルエンや塩化メチレンが特に望ましい。テトラヒドロフランを用いると、1価のインジウムが不均化して0価と3価のインジウム種が生じることがある。
又、反応系に、添加剤としてアルコールやフェノールを加えると、収率および選択性が向上する。このようなアルコールとしては、例えばメタノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。
【0012】
N-アシルヒドラゾンは、式I
【化1】

(式中、R1は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又はアルコキシカルボニル基;R2は、水素原子又はアルキル基;R3は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基)で表される。
【0013】
アリルボロネート又はα-置換アリルボロネートは、式II
【化2】

(式中、R4はそれぞれ同じであっても異なっていてもよいアルキル基;R5は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン基、又はアルコキシ基;R6〜Rは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい水素原子又はアルキル基)で表される。
ここで、式II において、R5が水素原子の場合は(α-無置換の)アリルボロネートであり、R5が水素原子以外の場合はα-置換アリルボロネートである。(α-無置換の)アリルボロネートは、後述する不斉配位子を用いるエナンチオ選択的反応に主に利用されるので、後述する不斉配位子と併用するのが好ましい。α-置換アリルボロネートは、ジアステレオ選択的かつα位選択的なアリル化反応に主に利用される。
【0014】
前記アリルボロネート又はα-置換アリルボロネートとしては、式IV
【化4】

で表されるものを用いることができる。
【0015】
さらに、式V
【化5】

又は、式VI
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基;R10、R12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R11、R14は、水素原子、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R13はシアノ基またはアミノ基)又はその鏡像体で表される不斉配位子の存在下で反応を行うことが好ましい。
上記アミノ基は一つまたは二つの炭化水素基を有するものが好ましく、さらに好ましくはメチルアミノ基、ジメチルアミノ基またはエチルアミノ基である。
R10〜R12としては、フェニル基が好ましい。R11としては水素原子が望ましい。
上記式V、VIの不斉配位子は、一価インジウムと不斉触媒を構成するため、生成物をエナンチオ選択的に得られる。
【0016】
特に、R13がシアノ基である式VIの不斉配位子(セミコリン配位子)と用いると、式Vの不斉配位子(ビスオキサゾリン配位子等)と同様高い収率及びエナンチオ選択性が得られる。
【0017】
式IIのα-置換アリルボロネートとして、Rがメチル基で表されるものを用いると、収率、シアステレオ選択性(アンチ/シン選択性)、エナンチオ選択性がいずれも高いので好ましい。
また、式IIのα-置換アリルボロネートとして、RがClで表されるものを用いても、収率、エナンチオ選択性がいずれも高いので好ましい。なお、RがClのα-置換アリルボロネートを用いると、医薬品開発の有用な中間体となる生成物が得られる。
【0018】
本発明において、反応系の溶媒中の各成分の濃度はそれぞれ0.01〜5mol/lであることが好ましい。
この反応の温度は、好ましくは-78〜60℃である。
この反応時間は、数分〜数10時間程度である。
この反応系には上記成分のほか、適宜、触媒や界面活性剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
【0019】
本発明の製造方法によって、式III
【化3】

で表されるホモアリルヒドラジドが、ジアステレオ選択的(アンチ選択的)に得られる。又、上記した不斉触媒を用いた場合は、ホモアリルヒドラジドがエナンチオ選択的反応に得られる。
生成物は、抽出、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の一般的精製法を利用して回収できる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
【0021】
なお、以下の各実施例において、1価のヨウ化インジウム(粉末, 99.999%、Aldrich社)は、アルゴン雰囲気下で保存し、精製せずに用いた。アリルボロネートである2-Allyl-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane ( Aldrich社)は蒸留して使用した。α-メチルアリルボロネートである2-(But-3-en-2-yl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane) 及びその他のアリルボロネートは報告例に基づいて合成した(以下の報告例1〜3)。添加剤は精製して用いた。他の試薬(東京化成社又はAldrich社)は精製せずに用いた。
報告例1;α-メチルアリルボロネート、α-アルコキシアリルボロネート:Hoffmann, R. W.; Wolff, J. J. Chem. Ber. 1991, 124, 563.
報告例2;α-クロロアリルボロネート:Hoffmann, R. W.; Landmann, B. Chem. Ber. 1986, 119, 1039.
報告例3;α-置換アリルボロネート合成の中間体:Matteson, D. S.:Majumdar, D. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 7588.
【0022】
<1価のヨウ化インジウムによる、α-メチルアリルボロネートのN-アシルヒドラゾンへの付加反応の一般操作>
【化7】

アルゴン雰囲気下、1価のヨウ化インジウム(3.0 mg, 0.0125 mmol) 及び 3-フェニルプロパナール由来の N-ベンゾイルヒドラゾン(63.1 mg, 0.250 mmol) をフラスコに加えた。次にトルエン (0.50 mL) およびイソプロピルアルコール (96 μL, 1.25 mmol) を加えた。さらにα-メチルアリルボロネート(78 μL, 0.375 mmol) を加えて室温で48時間撹拌した。1 M K2CO3 水溶液(2.0 mL)を加えて反応を停止し、塩化メチレンで3回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 2/1) で精製し、生成物であるN'-(4-methyl-1-phenylhex-5-en-3-yl)benzohydrazideを85%で与えた(65.5 mg, 0.213 mmol, α:γ = 97:3, syn:anti = 5:95)。生成物の分析データは、報告例(Kobayashi, S.; Hirabayashi, R. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 6942.)のものと一致した。
【0023】
上記式VIIにおいて、N-ベンゾイルヒドラゾンを種々に変えて同様に反応を行った(式XVII)。
N-ベンゾイルヒドラゾンは、以下のいずれかの方法で調製した。
(1) N-ベンゾイルヒドラジンと小過剰量のアルデヒドのテトラヒドロフラン溶液に、濃塩酸を数滴加え、N-ベンゾイルヒドラジンが消失するまで室温で撹拌した。沈殿が生じた場合は、濾過し、洗浄した後に適当な溶媒(酢酸エチル、酢酸エチル/ヘキサン、塩化メチレン)から再結晶した。沈殿が生じなかった場合は、溶媒を減圧留去し、残さを再結晶かシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。
(2) N-ベンゾイルヒドラジンと小過剰量のアルデヒドのジメチルホルムアミド溶液を数時間加熱還流した。室温に戻した後、(1)の方法で精製した。
【化17】

得られた生成物を以下の(1)〜(8)に示す。
【0024】
(1)N'-(1-(4-methoxyphenyl)-2-methylbut-3-enyl)benzohydrazide:(式XVIIでRが4-MeOC6H4;RがHのもの)
生成物の収率98%、α:γ = 99:1, syn:anti = 9:91であった。
【化8】

Mp 87.4-88.2 C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.76 (major, d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.06 (minor, d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.35-2.48 (major, m, 1H), 2.57-2.63 (minor, m, 1H), 3.75 (br d, J = 9.6 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 4.97-5.05 (minor, br, 1H), 5.22 (dd, J = 10.0, 1.6 Hz, 1H), 5.28 (dd, J = 16.8, 1.6 Hz, 1H), 5.36-5.40 (major, br, 1H), 5.72-5.85 (minor, m, 1H), 5.86-5.99 (major, m, 1H), 6.87 (dd, J = 8.8, 2.4 Hz, 2H), 7.14-7.55 (m, 8H); 13C NMR(100 MHz, CDCl3) δ15.6 (minor), 17.8 (major), 41.9 (minor), 44.1 (major), 55.2, 68.0 (major), 68.1 (minor), 113.5 (minor), 113.8 (major), 116.6, 126.7, 128.6, 129.5, 131.6, 132.6, 132.9, 140.1 (minor), 141.5 (major), 159.1, 166.8; IR (KBr) 3291, 3065, 3033, 2961, 2932, 2907, 2836, 2247, 1639, 1613, 1579, 1512, 1461, 1304, 1249, 1177, 1037, 910, 827, 810, 733, 693 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C19H23N2NaO2 ([M+Na]+) 311.1754; Found: 311.1762.
【0025】
(2)N' -(1-(4-chlorophenyl)-2-methylbut-3-enyl)benzohydrazide: (式XVIIでRが4-Cl C6H4;RがHのもの)
生成物の収率96%、α:γ = 99:1, syn:anti = 4:96であった。
【化9】

Mp 121.9-123.0 C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.78 (dd, J = 6.9, 2.1 Hz, 3H), 2.41 (dq, J = 8.9, 6.9 Hz, 1H), 3.82 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 5.23 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 5.28 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 5.35 (br d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.92 (ddd, J = 18.5, 8.9, 3.2 Hz, 1H), 7.28-7.32 (m, 5H), 7.36 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.46 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 7.53 (d, J = 7.6 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ17.7, 44.0, 67.9, 116.9, 126.7, 128.6, 128.6, 129.8, 131.8, 132.7, 133.3, 139.4, 141.0, 167.2; IR (KBr) 3435, 3290, 3066, 2976, 2928, 2870, 2248, 1639, 1603, 1578, 1530, 1489, 1458, 1312, 1091, 1027, 1014, 997, 908, 821, 794, 733, 693, 648 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C18H19N2NaO ([M+Na]+) 337.1078; Found: 337.1074.
【0026】
(3)N'-(1-(2-methoxyphenyl)-2-methylbut-3-enyl)benzohydrazide: (式XVIIでRが2-MeO C6H4;RがHのもの)
生成物の収率75%、α:γ = 99:1, syn:anti = 6:94であった。
【化10】

Mp 89.1-90.8 C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ0.85 (major, d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.07 (minor, d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.53 (major, dd, J = 16.0, 9.2 Hz, 1H), 2.70-2.77 (minor, m, 1H), 3.72 (major, s, 3H), 3.76 (minor, s, 3H), 4.43 (major, br d, J = 10.0 Hz, 1H), 4.56 (minor, br d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.21 (dd, J = 10.0, 2.0 Hz, 1H), 5.27 (dd, J = 17.2, 1.2 Hz, 1H), 5.42 (br d, J = 5.6 Hz, 1H), 5.97-6.06 (m, 1H), 6.87 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.00 (dd, J = 8.0, 6.8 Hz, 1H), 7.20-7.58 (m, 8H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ14.4 (minor), 17.5 (major), 40.4 (minor), 43.5 (major), 55.2 (minor), 55.4 (major), 61.0 (major), 61.6 (minor), 110.6 (minor), 110.7 (major), 114.7 (minor), 116.1 (major), 120.2 (minor), 120.8 (major), 126.7, 128.0, 128.2, 128.5, 129.0, 131.5, 133.1 (minor), 133.2 (major), 141.0 (minor), 141.8 (major), 157.8 (minor), 158.5 (major), 166.6 (minor), 166.7 (major); IR (KBr) 3445, 3292, 3065, 2962, 2932, 2837, 2249, 1652, 1612, 1579, 1512, 1457, 1442, 1420, 1304, 1249, 1176, 1068, 1037, 998, 909, 827, 734, 693, 648 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C19/H23N2O2 ([M+H]+) 311.1754; Found: 311.1746.
【0027】
(4)N'-(4-methyhexa-1,5-dien-3-yl)benzohydrazide: (式XVIIでRがCH2= CH;RがHのもの)
生成物の収率85%、α:γ = 99:1, syn:anti = 9:91であった。
【化11】

1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ1.00 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.24 (dq, J = 8.6, 6.8 Hz, 1H), 3.25 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 5.12-5.29 (m, 5H), 5.66 (ddd, J = 16.8, 10.0, 8.8 Hz, 1H), 5.84 (ddd, J = 16.8, 10.0, 8.8 Hz, 1H), 7.41 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.50 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 6.8 Hz, 2H), 7.77 (br s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ17.3, 41.5, 67.9, 116.4, 119.5, 126.8, 128.7, 131.7, 133.0, 137.7, 160.9, 166.9; IR (neat) 3446, 3290, 3080, 2978, 2929, 2871, 2249, 1645, 1604, 1578, 1531, 1457, 1419, 1315, 1066, 1027, 996, 909, 734, 694, 648 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C14H18N2NaO ([M+Na]+) 253.1311; Found: 253.1299.
【0028】
(5)N'-(4-methyl-1-phenylhex-5-en-1-yn-3-yl)benzohydrazide: (式XVIIでRがPhC≡C;RがHのもの)
生成物の収率99%、α:γ = 99:1, syn:anti = 5:95であった。
【化12】

Mp 101.8-104.3 C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ1.24 (dd, J = 6.9, 2.1 Hz, 3H), 2.53 (dq, J = 6.9, 6.2 Hz, 1H), 4.00 (dd, J = 6.8, 3.4 Hz, 1H), 5.15 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 5.21 (d, J = 16.5 Hz, 1H), 5.25 (br s, 1H), 5.89 (ddd, J = 18.3, 8.3, 2.0 Hz, 1H), 7.26-7.41 (m, 7H), 7.49 (t, J = 6.9 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 8.18 (br d, J = 6.2 Hz, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ16.7, 41.7, 57.8, 85.1, 87.3, 116.4, 122.7, 126.9, 128.2, 128.6, 131.7, 131.8, 132.7, 140.1, 167.1; IR (KBr) 3299, 3065, 3034, 2975, 2931, 2902, 2860, 2248, 1646, 1602, 1579, 1506, 1490, 1457, 1442, 1372, 1339, 1313, 1169, 1087, 1070, 1027, 1010, 995, 908, 862, 840, 798, 760, 733, 690, 650 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C20H21N2O5 ([M+H]+) 305.1648; Found: 305.1645.
【0029】
(6)Methyl 2,3-dimethyl-2-(2-(phenylcarbonyl)hydrazinyl)pent-4-enoate: (式XVIIでRがMeO2C;RがMeのもの)
生成物の収率95%、α:γ = 91:9, syn:anti = 8:92であった。
【化13】

Mp 61.8-63.7 C; 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ1.11 (major, d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.12 (minor, d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.35 (major, s, 3H), 1.36 (minor, s, 3H), 2.65-2.77 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 5.10-5.20 (m, 3H), 5.80-5.92 (m, 1H), 7.43 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.50 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.71-7.85 (m, 3H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ14.3 (minor), 14.8 (major), 18.1 (minor), 18.7 (major), 43.6 (minor), 44.0 (major), 52.1 (minor), 52.2 (major), 67.7 (major), 68.0 (minor), 116.6 (minor), 117.6 (major), 126.8, 128.6, 131.7, 132.8 (minor), 132.9 (major), 137.7 (major), 138.6 (minor), 166.4 (major), 166.6 (minor), 175.2 (minor), 175.3 (major); IR (KBr) 3282, 3067, 2981, 2950, 2877, 2840, 1733, 1644, 1603, 1579, 1541, 1457, 1381, 1312, 1261, 1191, 1130, 1071, 1027, 997, 922, 793, 694 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C15H21N2O5 ([M+H]+) 277.1547; Found: 277.1540.
【0030】
(7)N'-(2-chloro-1-phenylbut-3-enyl)benzohydrazide: (式XVIIでRがPh;RがHのもの、但し、式XVIIのボロネートの代わりに式IVのボロネート(R5=Cl, R6=R7=R8=H)を用いた)
生成物の収率92%、α:γ = 95:5, major:minor = >95:<5であった。
【化14】

1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ4.39 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 4.57 (dd, J = 9.2, 6.4 Hz, 1H), 5.28 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 5.33 (br s, 1H), 5.35 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 6.00 (ddd, J = 17.2, 9.6, 9.6 Hz, 1H), 7.33-7.48 (m, 8H), 7.57-7.62 (m, 2H), 7.71 (br s, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ64.4, 68.4, 119.5, 126.9, 128.4, 128.4, 128.6, 128.8, 131.9, 132.5, 135.2, 137.6, 167.4; IR (neat) 3282, 3062, 3032, 1644, 1603, 1578, 1531, 1494, 1455, 1420, 1356, 1313, 1266, 1073, 1027, 989, 933, 801, 738, 699 cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C17H18ClN2O ([M+H]+) 301.1102; Found:301.1110.
【0031】
(8)N'-(2-(benzyloxy)-1-phenylbut-3-enyl)benzohydrazide:(式XVIIでRがPh;RがHのもの、但し、式XVIIのボロネートの代わりに式IVのボロネート(R5=ベンジルオキシ, R6=R7=R8=H)を用いた)
生成物の収率>99%、α:γ =97:3, major:minor = >94:<6であった。
【化15】

1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ3.97 (dd, J = 7.2, 6.4 Hz, 1H), 4.31 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 4.38 (d, J = 11.6 Hz, 1H), 4.61 (d, J = 12.0 Hz, 1H), 5.25 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 5.38 (d, J = 10.4 Hz, 1H), 5.43 (br d, J = 6.0 Hz, 1H), 5.93 (ddd, J = 19.6, 9.6, 8.0 Hz, 1H), 7.16-7.18 (m, 2H), 7.24-7.34 (m, 8H), 7.38-7.44 (m, 3H), 7.49 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.54 (br d, J = 4.4 Hz, 1H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ67.3, 70.2, 82.8, 120.4, 126.7, 127.5, 127.7, 127.8, 128.2, 128.3, 128.5, 128.6, 131.6, 132.8, 135.0, 138.1, 138.5, 166.4; IR (neat) 3440, 3065, 3032, 2870, 2250, 1654, 1604, 1579, 1523, 1496, 1455, 1387, 1362, 1306, 1205, 1091, 1071, 1027, 994, 909, 792, 734, 701cm-1; HR-ESIMS: Calcd for C24H25N2O2 ([M+H]+) 373.1911; Found: 373.1927.
【0032】
<1価のヨウ化インジウムと不斉配位子(ビスオキサゾリン)からなる不斉触媒による、アリルボロネートのN-アシルヒドラゾンへの不斉付加反応の一般操作>
【化16】

アルゴン雰囲気下、1価のヨウ化インジウム(3.0 mg, 0.0125 mmol) 及び ベンズアルデヒド由来の N-ベンゾイルヒドラゾン(56.1 mg, 0.250 mmol)および不斉配位子である2,2'-methylenebis[(4R,5S)-4,5-diphenyl-2-oxazoline] (Ph2-Box, 5.7 mg, 0.0125 mmol)をフラスコに加えた。次にトルエン (0.50 mL) およびメタノール(10 μL, 0.25 mmol)を加え、反応容器を0度に冷却した。さらにアリルボロネート(70 μL, 0.375 mmol)をゆっくり加えて0度で48時間撹拌した。1 M K2CO3 水溶液(2.0 mL)を加えて反応を停止し、温度を室温まで上げ、塩化メチレンで3回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、粗生成物を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 2/1) で精製し、生成物であるN'-(1-phenylbut-3-enyl)benzohydrazideを83%収率(55.4 mg、0.208 mmol)、94% eeで与えた。
【0033】
<1価のヨウ化インジウムと不斉配位子(セミコリン)からなる不斉触媒による、アリルボロネートのN-アシルヒドラゾンへの不斉付加反応の一般操作>
【化18】

アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5ml-スクリュー管瓶に、ヨウ化インジウム(I)(5 mol%)及び不斉配位子L*3d(式XVIIIの構造式参照) (5 mol%)を秤量した。メタノール(3当量)を加えた後、トルエン溶媒中、室温で1時間攪拌して触媒調製を行った。ヒドラゾン1(0.2−0.3mmol;1.0等量)を加えた後、アルゴンで置換し、0℃まで冷却した。表1に示した種々のヒドラゾンアリルボロネート2(0.30-0.45mmol;1.5等量)を滴下して加え、それぞれ表1に示した時間攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンで(by factor 10)希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)を加え、反応を停止し、室温に戻した。有機相を分離した後、ジクロロメタンで有機相を抽出する操作を3回繰り返し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して(ヘキサン/酢酸エチル=19:1-4:1)、目的のホモアリルヒドラジド4(それぞれ実験例1〜16の4a〜4pに相当)を得た。
得られた結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実験例1〜16の生成物4a〜4pのうち、4a, 4b, 4c, 4d, 4e, 4f, 4h, 4k, 4m, 4o, 4pは既知化合物であった。なお、生成物4a,4b,4c,4d,4h,4kの分析値は、それぞれ文献A(R. Berger, P. M. A. Rabbat, J. L. Leighton, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 9596-9597.)、文献B(U. Schneider, I-H. Chen, S. Kobayashi, Org. Lett. 2008, 10, 737-740.)、文献C(F. Garcia-Flores, L. S. Flores-Michel, E. Juaristi, Tetrahedron Lett. 2006, 47, 8235-8238.)、文献D(S. Kobayashi, C. Ogawa, H. Konishi, M. Sugiura, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 6610-6611.)、文献E(D. Hui, G. K. Friestad, Synthesis 2004, 2216-2221.)、文献F(K. L. Tan, E. N. Jacobsen, Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 1315-1317.)の値と一致した。
また、生成物4e,4mの分析値は、上記非特許文献2の値と一致した。生成物4f,4pの分析値は、上記非特許文献4の値と一致した。生成物4oの分析値は、上記非特許文献6の値と一致した。
【0036】
一方、生成物4g,4i,4j,4l,4nは、それぞれ新規の化合物であり、これらの化合物のデータを以下に示す。
【0037】
生成物4g(N-[(R)-1-(4-phenylphenyl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XIX、実験例7)
【化19】

生成物4gのデータ:白色固体(収率: 98%; er = 98:2); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 2.47-2.60 (m, 2H), 4.21 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 5.11-5.30 (m, 3H), 5.80-5.92 (m, 1H), 7.31-7.46 (m, 8H), 7.55-7.70 (m, 7H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ= 40.3, 63.5, 118.1, 126.7 (2C), 126.9 (3C), 127.1 (2C), 127.2, 128.0 (2C), 128.5 (2C), 128.7 (2C), 131.7, 132.6, 134.3, 140.4, 140.6, 167.1; HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 13.0 (R), 16.6 (S).
【0038】
生成物4j(N-[(R)-1-(naphthalene-2-yl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XX、実験例10)
【化20】

生成物4jのデータ:薄黄色固体(収率: 90%; er = 98:2); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 2.51-2.63 (m, 2H), 4.32 (dd, J = 6.8 Hz, J = 7.3 Hz, 1H), 5.09-5.21 (m, 2H), 5.33 (br s, 1H), 5.79-5.89 (m, 1H), 7.27-7.32 (m, 2H), 7.39-7.49 (m, 3H), 7.51-7.57 (m, 4H), 7.78-7.85 (m, 4H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ= 40.3, 64.0, 118.1, 125.4, 125.8, 126.0, 126.7 (3C), 127.6, 127.8, 128.3, 128.5 (2C), 131.7, 132.6, 133.0, 133.3, 134.3, 139.0, 167.1; HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 18.8 (R), 21.7 (S).
【0039】
生成物4l(N-[(R)-1-(furan-3-yl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XXI、実験例12)
【化21】

生成物4lのデータ:白色固体(収率: 97%; er = 95:5); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 2.32-2.47 (m, 2H), 4.05 (t, J = 6.8 Hz, 1H), 4.95-5.15 (m, 3H), 5.68-5.78 (m, 1H), 6.35 (s, 1H), 7.28-7.34 (m, 4H), 7.38-7.43 (m, 1H), 7.56-7.60 (m, 2H), 7.74 (br s, 1H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ= 38.9, 55.4, 109.0, 117.9, 125.4, 126.7, 128.5 (2C), 131.8, 132.6, 134.3, 140.3 (2C), 143.2, 167.1; HPLC (DAICEL CHIRALPAK IC, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 10.6 (R), 12.5 (S).
【0040】
生成物4n(N-[(R)-1-(pyridin-4-yl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XXII、実験例14)
【化22】

生成物4lのデータ:薄黄色固体(収率: 98%; er = 92:8); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 2.41-2.54 (m, 2H), 4.16 (dd, J = 6.8 Hz J = 7.3 Hz, 1H), 5.12-5.26 (m, 3H), 5.76-5.86 (m, 1H), 7.24-7.28 (m, 2H), 7.34-7.39 (m, 2H), 7.44-7.49 (m, 1H), 7.66-7.72 (m, 2H), 8.34-8.45 (m, 3H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ= 39.8, 63.0, 118.8, 122.9 (2C), 126.9 (2C), 128.5 (2C), 131.8, 132.5, 133.3, 149.6 (2C), 151.2, 167.6; HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 25.5 (R), 29.7 (S).
【0041】
<α位がメチル基のα-置換アリルボロネートを用いたN-アシルヒドラゾンへの不斉付加反応の一般操作>
【化23】

アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5ml-スクリュー管瓶に、ヨウ化インジウム(I)(10 mol%)及び不斉配位子L*3d(式XVIIIの構造式参照) (10 mol%)を秤量した。それぞれ実験例21〜31に対応するよう、表2に示す溶媒を加えた後、室温で1時間攪拌して触媒調製を行った。ヒドラゾン1(0.2−0.3mmol;1.0等量)を加えた後、アルゴンで置換し、所定温度まで冷却した。表1に示した種々のヒドラゾンアリルボロネートrac-5(0.30-0.45mmol;1.5等量)を滴下して加え、0℃で8〜96時間(各実験例で異なる)攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンで(by factor 10)希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)を加え、反応を停止し、室温に戻した。有機相を分離した後、ジクロロメタンで有機相を抽出する操作を3回繰り返し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して(ヘキサン/酢酸エチル=19:1-4:1)、目的のホモアリルヒドラジド6(それぞれ実験例21〜31の6a〜6rに相当)を得た。
得られた結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
生成物6a〜6rのジアステレオマー比(α-付加物のanti:syn比)の値、構造異性体比 (α:γ比比)の値、は1H NMR 分析により決定した。
生成物6a〜6rのうち、6a,6dは既知化合物であり、それぞれ上記非特許文献1,4の値と一致した。
一方、生成物6c,6e,6f,6i,6j,6k,6l,6o,6pのエナンチオマーはそれぞれ新規の化合物である。各生成物の絶対配置は6a,6dの文献値との比較により決定した。これらの化合物のデータを以下に示す。
【0044】
生成物6c(N-[(1R,2R)-1-(3-methoxyphenyl)-2-methylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXIV、実験例22)
【化24】

生成物6cのデータ:薄黄色液体(収率: 90%;α:γ=>99:1;anti:syn=6.1:1(α-adduct); er = 94:6(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 0.80 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.08 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.39-2.49 (anti; m, 1H), 2.63-2.68 (syn; m, 1H), 3.79 (anti; s, 3H), 3.81 (syn; s, 3H), 5.02-5.06 (syn; m, 4H), 5.21-5.32 (anti; m, 3H), 5.39 (anti; br s, 1H), 5.80-5.89 (syn; m, 1H), 5.90-5.99 (anti; m, 1H), 6.81-6.95 (m, 4H), 7.22-7.55 (m, 6H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 19:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 14.5 (anti-R,R), 18.5 (anti-S,S), 22.7 (syn, major enantiomer), 27.4 (syn, minor enantiomer).
なお、実験例22は反応時間24時間で行った。
【0045】
生成物6e(N-{(1R,2R)-1-[4-(dimethylamino)phenyl]-2-methylbut-3-enyl}benzohydrazide、式XXV、実験例24)
【化25】

生成物6eのデータ:薄黄色液体(収率: 72%;α:γ=>99:1;anti:syn=2.8:1(α-adduct); er = 94:6(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 0.78 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.07 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.41-2.49 (anti; m, 1H), 2.59-2.65 (syn; m, 1H), 2.94 (anti; s, 6H), 2.95 (syn; s, 6H), 3.70 (anti; d, J = 9.6 Hz, 1H), 3.97 (syn; d, J = 5.6 Hz, 3H), 5.01-5.06 (syn; m, 2H), 5.19-5.32 (anti; m, 2H), 5.77-5.86 (syn; m, 1H), 5.90-6.00 (anti; m, 1H), 6.69-6.74 (m, 2H), 7.18-7.22 (m, 2H), 7.31-7.36 (m, 3H), 7.41-7.46 (m, 2H), 7.52-7.58 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ= 15.7 (syn), 17.9 (anti), 40.6 (2C), 41.9 (syn), 44.0 (anti), 68.1 (anti), 68.2 (syn), 112.2 (syn), 112.5 (anti), 114.8 (syn), 116.3 (anti), 126.7 (2C), 128.5 (2C), 129.2 (2C), 131.5, 132.9 (syn), 133.0 (anti), 140.3 (syn), 141.7 (anti), 149.7 (syn), 149.9 (anti), 166.6 (anti), 166.8 (syn); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 8.8 (anti-R,R), 10.8 (anti-S,S), 13.2 (syn, major enantiomer), 20.0 (syn, minor enantiomer).
なお、実験例24は反応時間84時間で行った。
【0046】
生成物6f(N-[(1R,2R)-2-methyl-1-p-tolylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXVI、実験例25)
【化26】

生成物6fのデータ:薄黄色液体(収率:quant;α:γ=>99:1;anti:syn=5.2:1(α-adduct); er = 96:4(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 0.78 (anti; d, J = 7.3 Hz, 3H), 1.07 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.33 (syn; s, 3H), 2.35 (anti; s, 3H), 2.43-2.47 (anti; m, 1H), 2.61-2.65 (syn; m, 1H), 3.78 (anti; d, J = 9.6 Hz, 1H), 4.04 (syn; d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.99-5.05 (syn; m, 2H), 5.20-5.31 (anti; m, 2H), 5.38 (br d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.77-5.86 (syn; m, 1H), 5.90-5.99 (anti; m, 1H), 7.11-7.57 (m, 9H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 19:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 10.2 (anti-R,R), 11.7 (anti-S,S), 15.9 (syn, major enantiomer), 18.0 (syn, minor enantiomer).
なお、実験例25は反応時間24時間で行った。
【0047】
生成物6i(N-[(1S,2S)-1-(4-hydroxyphenyl)-2-methylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXVII、実験例26)
【化27】

生成物6iのデータ:薄黄色液体(収率:98%;α:γ=>99:1;anti:syn=8.1:1(α-adduct); er = 93:7(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.75 (anti; d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.05 (syn; d, J = 6.7 Hz, 3H), 2.39-2.51 (anti; m, 1H), 2.57-2.65 (syn; m, 1H), 3.72 (anti; d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.98 (syn; d, J = 5.6 Hz, 1H), 4.96-5.03 (syn; m, 2H), 5.17-5.31 (anti; m, 2H), 5.44 (br s, 1H), 5.70-5.78 (syn; m, 1H), 5.85-5.96 (anti; m, 1H), 6.75-6.82 (m, 2H), 7.14-7.56 (m, 7H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 21.0 (anti, major), 30.8 (anti, minor), 40.1 (syn, major), 50.9 (syn, minor).
なお、実験例26は反応時間8時間で行った。
【0048】
生成物6j(N-[(1R,2R)-2-methyl-1-(naphthalen-2-yl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XXVIII、実験例27)
【化28】

生成物6jのデータ:薄黄色液体(収率:94%;α:γ=>32:1;anti:syn=11:1(α-adduct); er = 97:3(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.80 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.10 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.51-2.60 (anti; m, 1H), 2.65-2.76 (syn; m, 1H), 4.99-5.06 (syn; m, 2H), 5.24-5.36 (anti; m, 2H), 5.48 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 5.80-5.88 (syn; br s, 1H), 5.95-6.04 (anti; m, 1H), 7.25-7.57 (m, 8H), 7.77-7.87 (m, 4H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 0.8 mL/min): tR (min) = 10.5 (anti-R,R), 11.9 (anti-S,S), 14.5 (syn, major enantiomer), 17.7 (syn, minor enantiomer).
なお、実験例27は反応時間24時間で行った。
【0049】
生成物6k(N-[(1R,2R)-1-(furan-2-yl)-2-methylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXIX、実験例28)
【化29】

生成物6kのデータ:薄黄色固体(収率:85%;α:γ= 49:1;anti:syn=4.5:1(α-adduct); er = 96:4(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.88 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.10 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.63-2.70 (anti; m, 1H), 2.72-2.80 (syn; m, 1H), 3.96 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 3.96 (anti; d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.16 (syn; br, 1H), 5.04-5.15 (syn; m, 2H), 5.19-5.31 (anti; m, 2H), 5.84-5.96 (syn + anti; m, 1H), 6.25-6.35 (m, 2H), 7.25-7.64 (m, 8H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ODH, nhexane-iPrOH = 40:1, 0.8 mL/min): tR (min) = 32.7 (anti-R,R), 41.0 (anti-S,S), 46.0 (syn, major enantiomer), 66.4 (syn, major enantiomer).
なお、実験例28は反応時間96時間で行った。
【0050】
生成物6l(N-[(1R,2R)-1-(furan-3-yl)-2-methylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXX、実験例29)
【化30】

生成物6lのデータ:無色液体(収率:quant;α:γ=>99:1;anti:syn=4.9:1(α-adduct); er = 96:4(anti-diastereisomer)); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ODH, nhexane-iPrOH = 19:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 12.8 (anti-S,S), 16.9 (anti-R,R), not visible (syn, minor enantiomer), 21.4 (syn, major enantiomer).
なお、実験例29は反応時間24時間で行った。
【0051】
生成物6o(N-[(1R,2R)-2-methyl-1-(thiophen-2-yl)but-3-enyl]benzohydrazide、式XXXI、実験例30)
【化31】

生成物6oのデータ:薄黄色固体(収率:quant;α:γ=>99:1;anti:syn=11:1(α-adduct); er = 94:6(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 0.89 (anti; d, J = 6.8 Hz, 3H), 1.12 (syn; d, J = 6.8 Hz, 3H), 2.42-2.49 (anti; m, 1H), 2.64-2.67 (syn; m, 1H), 4.17 (anti; d, J = 7.9 Hz, 1H), 4.41 (syn; d, J = 6.0 Hz, 1H), 5.11-5.18 (syn; m, 2H), 5.21-5.32 (anti; m, 2H), 5.43 (br, 1H), 5.89-5.96 (syn + anti; m, 1H), 6.96 (br, 2H), 7.25-7.60 (m, 6H); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ODH, nhexane-iPrOH = 19:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 11.6 (anti-S,S), 15.6 (anti-R,R), 23.3 (syn, minor enantiomer), 25.8 (syn, major enantiomer).
なお、実験例30は反応時間24時間で行った。
【0052】
生成物6q(N-[(1R,2R)-1-(4-chlorophenyl)-2-methylbut-3-enyl]benzohydrazide、式XXXII、実験例31)
【化32】

生成物6qのデータ:薄黄色固体(収率:83%;α:γ=>99:1;anti:syn=13:1(α-adduct); er = 92:8(anti-diastereisomer)); 13C NMR (CDCl3, 125 MHz): δ= 15.7 (syn), 17.9 (anti), 40.6 (2C), 41.9 (syn), 44.0 (anti), 68.1 (anti), 68.2 (syn), 112.2 (syn), 112.5 (anti), 114.8 (syn), 116.3 (anti), 126.7 (2C), 128.5 (2C), 129.2 (2C), 131.5, 132.9 (syn), 133.0 (anti), 140.3 (syn), 141.7 (anti), 149.7 (syn), 149.9 (anti), 166.6 (anti), 166.8 (syn); HPLC (DAICEL CHIRALPAK ADH, nhexane-iPrOH = 9:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 8.8 (anti-R,R), 10.8 (anti-S,S), 13.2 (syn, major enantiomer), 20.0 (syn, minor enantiomer).
なお、実験例31は反応時間84時間で行った。
【0053】
<α位がClのα-置換アリルボロネートを用いたN-アシルヒドラゾンへの不斉付加反応の一般操作>
【化33】

アルゴン雰囲気下、加熱乾燥した5ml-スクリュー管瓶に、ヨウ化インジウム(I)(10 mol%)及び不斉配位子L*3d(式XVIIIの構造式参照) (10 mol%)を秤量した。溶媒としてジクロロメタンーエタノール (1:1) を加えた後、室温で1時間攪拌して触媒調製を行った。ヒドラゾン1a(0.2−0.3mmol;1.0等量)を加えた後、アルゴンで置換し、所定温度まで冷却した。アリルボロネートrac-7(0.30-0.45mmol;1.5等量)を滴下して加え、-20℃で96時間攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンで(by factor 10)希釈し、炭酸カリウム水溶液(1M)を加え、反応を停止し、室温に戻した。有機相を分離した後、ジクロロメタンで有機相を抽出する操作を3回繰り返し、無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、得られた粗製化合物を分取薄層クロマトグラフィーにより精製して(ヘキサン/酢酸エチル=19:1-4:1)、目的のホモアリルヒドラジド8aを得た。
生成物8aのジアステレオマー比(α-付加物のanti:syn比)の値、構造異性体比 (α:γ比)の値、は1H NMR 分析により決定した。生成物8aの絶対配置は、N−boc保護基のホモアリルヒドラジドのX線解析によって決定した。
生成物8aは新規の化合物であり、そのデータを以下に示す。
生成物8a(N-[(1S,2R)-2-chloro-1-phenylbut-3-enyl]benzohydrazide)のデータ:薄黄色固体(収率:84%;α:γ=49:1;anti:syn=49:1(α-adduct); er = 92:8(anti-diastereisomer)); 1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ= 4.41 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 4.57 (dd, J = 6.8 Hz, J = 9.1 Hz, 1H), 5.30-5.41 (m, 3H), 5.98-6.08 (m, 1H), 7.31-7.51 (m, 9H), 7.57 (d, J = 7.9 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3, 500 MHz): ? = 64.3, 68.4, 119.6, 126.7 (2C), 128.4 (3C), 128.6 (2C), 128.7 (2C), 131.9, 132.4, 135.1, 137.6, 167.2; HPLC (DAICEL CHIRALPAK ODH, nhexane-iPrOH = 19:1, 1.0 mL/min): tR (min) = 29.4 [minor enantiomer: anti-(R,S)], 35.9 [major enantiomer: anti-(S,R)], other signals were not detected.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価のインジウムと、式V
【化5】

又は、式VI
【化6】

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基;R10、R12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R11、R14は、水素原子、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R13はシアノ基またはアミノ基)又はその鏡像体で表される不斉配位子とからなる不斉触媒であって、N-アシルヒドラゾンのアリル化に用いられる不斉触媒。

【公開番号】特開2013−78760(P2013−78760A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230416(P2012−230416)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2009−58632(P2009−58632)の分割
【原出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】