説明

N−アシルヒドロキシプロリンを含む消毒剤

【課題】皮膚への刺激性が少ない新規な消毒剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含む消毒剤:


式中、Rは炭素数1から18のアルキル基を、Mは水素原子またはアルカリ金属を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な消毒剤に関する。詳しくは、黄色ブドウ球菌及び大腸菌などに対して高い抗菌活性を有し、かつ皮膚への刺激性が少ない消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌物質としては、多種のものが知られており、各種分野で実用化されている。従来から使用されている抗菌物質の多くは化学的合成品であり、安息香酸、デヒドロ酢酸などの酸誘導体、4級アンモニウム等のカチオン性化合物、フェノール、クレゾール等のフェノール性化合物など多くのものが知られている。カチオン性化合物として、界面活性剤が、抗菌・殺菌作用を有することから、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤等として広く使用されており、医療器異類や患部の消毒剤、洗浄等の医療用洗浄剤、家庭での食器等の家庭用洗浄剤、食品工業用洗浄剤、繊維や合成樹脂、木材、日用品等の抗菌加工、シャンプー、リンス、化粧品などに広く応用利用されている。
【0003】
これらのようなカチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が知られている。しかしながら、これらの4級アンモニウム塩は、皮膚等への刺激性、低い生分解性等の欠点があった。一方、アミド基を有するカチオン性界面活性剤も各種知られているが、抗菌性が必ずしも十分ではなかった。 また、フェノール系の化合物も多く抗菌剤として知られているが、抗菌性、安全性の面で十分ではなかった。
【0004】
一方、N−アシルヒドロキシプロリンは、皮膚に対して安全でかつ優れた老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られている(特許文献1参照)。しかし、これらの化合物の抗菌又は消毒作用については従来知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/51561号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、新規な消毒剤であって、皮膚への刺激性が少ない消毒剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的の達成のため鋭意研究した結果、既に老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られているN−アシルヒドロキシプロリンが優れた消毒作用を有することを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]に関するものである。
[1]下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含む消毒剤:
【0008】
【化1】

【0009】
式中、Rは炭素数1から18のアルキル基を、Mは水素原子またはアルカリ金属を示す。
[2]一般式(I)で表される化合物および水からなる[1]に記載の消毒剤。
【0010】
[3]一般式(I)で表される化合物およびエタノールからなる[1]に記載の消毒剤。
[4]一般式(I)で表される化合物、エタノール、およびステアロキシヒドロキシプロ ピルメチルセルロースからなる[1]に記載の消毒剤。
[5]一般式(I)で表される化合物、水、およびpH調整剤からなる請求項1に記載の消毒剤。
[6]一般式(I)で表される化合物が前記消毒剤全質量に対して0.1〜3質量%である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の消毒剤。
[7]一般式(I)で表される化合物からなる[1]に記載の消毒剤。
【0011】
本発明の別の観点からは、消毒剤の製造のための一般式(I)で表される化合物の使用;消毒方法であって、一般式(I)で表される化合物を対象物に接触させる工程を含む方法;および消毒方法であって、一般式(I)で表される化合物を対象物に混合する工程を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消毒剤は、高い消毒性及び消毒作用の持続性を有する。本発明の消毒剤は老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られている成分を有効成分とするため、皮膚の消毒に用いても、肌荒れを生じさせにくい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構成について詳述する。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書において、「消毒」とは、抗菌、除菌、制菌、殺菌、抗ウイルスなどの意味を含む広い概念で用いられる。すなわち、本発明の消毒剤は、皮膚表面での微生物及びウイルスなどの繁殖を抑える目的、又は皮膚表面での微生物及びウイルスなどを死滅させる目的等で用いることができる。微生物及びウイルスなどの種類は特に限定されないが、本発明の消毒剤は、例えば、黄色ブドウ球菌、大腸菌、又は緑膿菌などの細菌、カンジダなどの酵母、白癬菌、アスペルギルスなどのカビ類、インフルエンザウイルスなどのウイルス等に効果を有する。
【0014】
本発明の消毒剤は置換基として上記一般式(I)で表される4−ヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体を有効成分として含む。
上記一般式(I)において、Rは炭素数1から18のアルキル基を、Mは水素原子またはアルカリ金属を示す。
Rで表されるアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせからなる基のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。Rで表されるアルキル基は炭素数2〜18が好ましく、炭素数2〜12がより好ましい。炭素数8〜12を好ましく選択することもできる。
Mで表されるアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等があげられ、ナトリウム、カリウムが好ましい。
【0015】
本発明に係わるアシル基を有するヒドロキシプロリン誘導体の例としては、N-プロピオニルヒドロキシプロリン、N−ブチリルヒドロキシプロリン、N−ヘキサノイルヒドロキシプロリン、N−オクタノイルヒドロキシプロリン、N−デカノイルヒドロキシプロリン、N−ドデカノイルヒドロキシプロリン、N−テトラデカノイルヒドロキシプロリン、およびN−オクタデカノイルヒドロキシプロリン、ならびにこれらのアルカリ金属塩があげられる。
【0016】
上記一般式(I)で表されるヒドロキシプロリンは2つ以上の不斉炭素原子を有するので4つ以上の光学活性体を有するが、それらのいずれかについては、特に限定されない。R部分以外の立体異性については、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンと同様であることが好ましい。上記一般式(I)で表されるヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体は、当業者に公知の方法によりヒドロキシプロリンをN−アシル化して得ることができる。原料のヒドロキシプロリンは蛋白質(ゼラチン等)を加水分解していたものを用いることが好ましい。
【0017】
上述のように、ヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体は、皮膚に対して安全でかつ優れた老化抑制・肌質改善作用を示すことが知られている。本発明者らは、後述の実施例で示すように、ヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体が消毒用の有効成分として有用であることを初めて見出した。すなわち、ヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体は既に公知の肌荒れを予防する効果とともに、消毒作用を有することを見出した。
【0018】
本発明の消毒剤中のヒドロキシプロリン誘導体の含有量は用途、目的により任意であるが、そのまま皮膚などの消毒のための消毒剤として使用される場合においては、通常、製品中に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%で含まれていればよい。特に皮膚外用剤等の添加物として本発明の消毒剤を流通させる場合は、0.1〜100質量%、好ましくは0.5〜20質量%、特に1〜10質量%含有されていてもよい。
【0019】
本発明の消毒剤は、上記の有効成分のほか、その用途に応じて他の成分、例えば、水、水溶性有機溶剤、pH調整剤、キレート剤、界面活性剤、他の抗菌剤、増粘剤、減粘剤、無機塩類、香料、着色料、増量剤、研磨剤、バインダー等を含有することができる。
【0020】
本発明の消毒剤の主たる形態としては、上記有効成分を含有する水溶液および有機溶媒溶液が挙げられる。該有機溶媒溶液に使用される有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の分子量150以下の有機溶媒があげられる。これらの有機溶媒は、水または他の有機溶媒と混合して使用することもできる。
【0021】
本発明の消毒剤には、pH調節のためにpH調整剤を添加してもよい。pH調節により粘度調節が行うことができる場合もある。このような剤の添加量は目的により任意である。pH調整には、酸または塩基を使用すればよい。例えば、pH調整剤としては、クエン酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、グルタル酸、又はアジピン酸等の有機酸及びその塩、リン酸、硫酸等の無機酸及びその塩、水酸化アンモニウム又は水酸化アルカリ金属等の塩基を用いることができる。塩基を使用する場合に、使用する塩基が上記の有効成分と塩を形成していてもよい。塩基としては、無機塩基および低分子量の有機塩基が好ましい。
【0022】
本発明の消毒剤は、取り扱い性を向上させる目的で、増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ステアリン酸イヌリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト等が挙げられ、これらの一種又は複数種が、目的に合わせ適宜配合される。これらのなかでセルロース誘導体が好ましく、特に疎水化されたセルロース誘導体が好ましい。疎水化されたセルロース誘導体のなかで、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体が好ましい。また疎水化する置換基としては、炭素原子数10以上のアシル基が好ましく、具体的にはステアロイル基が好ましい。疎水化セルロース誘導体における、疎水性基の含有量は、疎水化セルロース誘導体の全質量に対して疎水性基部分の質量が好ましくは0.05〜3.0質量%、より好ましくは0.08〜1.0質量%となる程度であればよい。また疎水化セルロース誘導体の含有量は、消毒剤全質量に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%であればよい。また疎水化されたセルロース誘導体は他の増粘剤と併用してもよく、併用する増粘剤としては前述の増粘剤があげられる。
【0023】
本発明の消毒剤には、高分子化合物が含まれていてもよい。天然の水溶性高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子が挙げられる。
【0024】
半合成の水溶性高分子としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子が挙げられる。
【0025】
合成の水溶性高分子としては例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カーボポール)等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20,000、4,000 、6,000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等の共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0026】
本発明の消毒剤の使用方法は特に限定されず、種々の対象に適用することが可能である。有効成分であるヒドロキシプロリンのN−アシル誘導体をそのまま使用してもよいが、通常は水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒等で、希釈して使用することができる。本発明の消毒剤を用いた消毒は、対象物に、スプレーする方法、塗布する方法、対象物に含浸させる方法、対象物を浸漬させる方法等、通常採用される方法により実施することができる。
【0027】
本発明の消毒剤は、抗菌、殺菌、抗ウイルス、防黴等の目的で、公知の消毒剤、例えば、公知の、抗菌剤、殺菌剤、消毒剤、抗ウイルス剤、又は防黴剤等と同様に使用することができる。その使用形態としては、医療器具類や皮膚の消毒洗浄、除菌清浄を目的とする洗浄剤;食器等を除菌洗浄する家庭用洗浄剤;食品工業用洗浄剤;食品等の包装フイルム、繊維、合成樹脂、木材、日用品等を抗菌加工するための抗菌剤が挙げられる。そのほか、シャンプー、リンス、ハンドソープ、ボディーソープ、クレンジングクリーム、化粧品、水性若しくは非水性塗料等に添加して抗菌剤または防腐剤として用いる方法;ウェットティッシュ、マスク、便座クリーナー、空気清浄機用フィルター等に用いるための不織布等に含浸させて用いる方法等が挙げられる。繊維用抗菌剤として使用する場合は、セルロース、綿、ポリエステル、アクリル、ナイロン等のあらゆる繊維について、撹拌処理、浸漬処理、スプレー処理等の一般的方法で処理される。また、木材、日用品等には、表面に塗布又は噴霧、注入することもできる。合成樹脂等について使用する場合は、成形後に塗布若しくは噴霧することにより表面に付着させてもよいし、抗菌効果を持続させるために成形加工時等に練り込むこともできる。
【0028】
本発明の消毒剤は、皮膚の消毒に用いられる場合は、外皮に適用できる剤型であればよく、その剤型は特に限定されない。例えば、乳液、ローション、ジェルの剤型を挙げることができる。また、溶液系、分散系、ゲル系、軟膏系等の幅広い形態を取り得る。このうち取り扱い性の点からジェル状外用剤が、特に好ましい。
【0029】
上記のように、本発明の消毒剤は、皮膚刺激性が少なく、肌荒れを生じさせにくいため、皮膚外用剤に添加して用いることも可能である。例えば、本発明の消毒剤は、皮膚外用剤中の抗菌剤として使用することもできる。例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品に通常含まれる抗菌剤は皮膚刺激性である場合があるが、本発明の消毒剤はこのような抗菌剤を代替することが可能である。皮膚外用剤に一般的に用いられる抗菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸系化合物;グルコン酸クロルヘキシジンに代表されるクロルヘキシジン塩等のビグアナイド化合物;クレゾール、ルテオリン、カテキン等のフェノール系化合物;ヨウ素イオン、ヨウドホルム、ヨードホア等のヨウ素化合物;アクリノール、グアイアズレン等の色素系化合物、ステビア、モウソウチク等天然材料の抽出物、銀化合物、銀コロイド等が挙げられる。本発明の消毒剤は、これらのいずれか1つ以上とともに皮膚外用剤中の抗菌剤として用いてもよい。
【実施例】
【0030】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下で説明する実施例により限定されるものではない。配合量は質量部で示される。
【0031】
以下に本発明化合物の合成例を示す。
合成例1 N−プロピオニル-L-ヒドロキシプロリンの合成
トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(和光純薬工業株式会社社製)5.2gおよびプロピオン酸25mLの混合物を50℃に加温し、無水プロピオン酸5.7gを添加した。反応混合物を50℃にて10時間撹拌し、室温まで冷却後、ジイソプロピルエーテル60mLを添加し、種結晶10mgを加えた。析出した結晶を濾取し、アセトニトリル20mLで再結晶、乾燥して、N−プロピオニル-L-ヒドロキシプロリン(融点133〜134℃)を3.4g得た。
【0032】
合成例2 N−デカノイル-L-ヒドロキシプロリンの合成
トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(和光純薬工業株式会社社製)5.2g、1N水酸化ナトリウム水溶液46mLの溶液に、氷水下でデカノイルクロリド9.1mLと1N水酸化ナトリウム水溶液69mLを30分かけて同時に滴下した。反応混合物を室温下2時間撹拌した後、濃塩酸6.5mLを滴下した。反応混合物を酢酸エチル80mLで抽出した。有機相を、飽和食塩水40mLで洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。分離した有機相を、濾過、減圧濃縮した。残渣にヘキサン80mLを加え、析出した結晶を濾取した。ジイソプロピルエーテル40mLとヘキサン40mLの混合液を用いて再結晶、乾燥して、N−デカノイル-L-ヒドロキシプロリン(融点77℃)を7.2g得た。
【0033】
合成例3 N−ドデカノイル-L-ヒドロキシプロリンの合成
トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(和光純薬工業株式会社社製)5.2g、1N水酸化ナトリウム水溶液46mLの溶液に、氷水下でドデカノイルクロリド10.5mLと1N水酸化ナトリウム水溶液69mLを30分かけて同時に滴下した。反応混合物を室温下2時間撹拌した後、濃塩酸6.5mLを滴下した。反応混合物を酢酸エチル80mLで抽出した。有機相を、飽和食塩水40mLで洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた。分離した有機相を、濾過、減圧濃縮した。残渣にヘキサン80mLを加え、析出した結晶を濾取した。酢酸エチル40mLとヘキサン40mLの混合液を用いて再結晶し、乾燥後して、N−ドデカノイル-L-ヒドロキシプロリン(融点87℃)を6.7g得た。
【0034】
(試験菌の培養)
保存株(手指より分離した黄色ブドウ球菌)を、DIFCO LABORATORIES社製NUTRIENT寒天培地(pH6.6〜7.0)(以下NA培地と略す)の斜面培地において35℃で1日培養し、試験菌とした。試験菌液は、滅菌生理食塩水を用い調製した。
【0035】
(穿孔平板の作製)
培地中の菌濃度が約106CFU/mlになるように菌液をNA培地に添加し、9cmプラスチックシャーレに撒いた。プラスチックシャーレには予め、直径8mmの抗生物質検定用シリンダーカップを必要数置いて、直径8mmの穿孔を作製した。
【0036】
<抗菌力測定>
サンプルの評価に際しては、本発明サンプル及び比較用のサンプルのそれぞれ0.1mlを上記穿孔に注入し、35℃で1日間、好気培養した。培養終了後、穿孔の周囲に生じる発育阻止帯の直径を測定し、抗菌力を測定した。各測定値から穿孔の直径(8mm)を差し引いた値を抗菌力の指標とした。
【0037】
実施例1
N−プロピオニルヒドロキシプロリン1.0部を精製水99部に加え攪拌しサンプル3を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は25mmであった。
実施例2
N−プロピオニルヒドロキシプロリン0.5部を精製水99部に加え攪拌しサンプル8を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は24mmであった。
【0038】
実施例3
N−プロピオニルヒドロキシプロリン1.0部、 ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5部 をエタノール59部に添加攪拌し、可溶化した後、Lアルギニン0.5部を添加した精製水40部を加え攪拌しサンプル6を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は15mmであった。
【0039】
実施例4
N−デカノイルヒドロキシプロリン1.0部をエタノール20部と精製水99部の混合溶液に加え攪拌しサンプル4を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は25mmであった。
実施例5
N−ドデカノイルヒドロキシプロリン0.5部をエタノール20部と精製水99部の混合溶液に加え攪拌しサンプル9を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は24mmであった。
【0040】
比較例1
ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5部に精製水99部を加え攪拌し比較例サンプル2を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は0mmであった。
【0041】
比較例2
エタノール59部を精製水41部に加え比較例サンプル1を得た。抗菌力測定を上記の方法で行なった。その結果、発育阻止帯は0mmであった。
【0042】
結果
以上の実施例の結果より、本発明の抗菌物質誘導体は、高い抗菌性を有することが示された。
【0043】
実施例6
N−プロピオニルヒドロキシプロリン5部を精製水95部に溶解して液状消毒剤を得た。
実施例7
N−プロピオニルヒドロキシプロリン5部を精製水95部に溶解して、その後アルギニンを加え、溶液のpHを5.5にして液状消毒剤を得た。
【0044】
実施例8
N−アセチルヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社製)5部を精製水95部に溶解して、その後1Nリン酸2ナトリウム水で溶液のphを5.5に調整して液状抗菌物質組成物を得た。
実施例9
N−プロピオニルヒドロキシプロリン5部を精製水95部に溶解して液状消毒剤を得た。
実施例10
N−プロピオニルヒドロキシプロリン5部を59質量%エタノール95部に溶解して液状消毒剤を得た。
【0045】
実施例11
N−ドデカノイルヒドロキシプロリン5部を80質量%エタノール95部に溶解して液状消毒剤を得た。
実施例12
N−プロピオニルヒドロキシプロリン5部を80質量%エタノール95部に溶解して液状消毒剤を得た。
実施例13
N−プロピオニルヒドロキシプロリン20部をエタノール80部に溶解して液状消毒剤を得た。
実施例6〜13で調製した消毒剤は、このまま使用することもでき、抗菌剤として、化粧品、医薬品などに添加して使用することもできる。
【0046】
実施例14
N−アセチルヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社製)5部、Nプロピオニルヒドロキシプロリン15部をエタノール80部に溶解して液状抗菌物質組成物を得た。本品は抗菌剤として、化粧品、医薬品などにも利用することもできる。
実施例15
アセチルヒドロキシプロリン(協和発酵バイオ社製)0.8部、 ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5部 N−プロピオニルヒドロキシプロリン0.8部、 をエタノール60部に添加し、可溶化した後、アルギニン0.5部を溶解した精製水38部を加え除菌外用剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物を有効成分として含む消毒剤:
【化1】

式中、Rは炭素数1から18のアルキル基を、Mは水素原子またはアルカリ金属を示す。
【請求項2】
一般式(I)で表される化合物および水からなる請求項1に記載の消毒剤。
【請求項3】
一般式(I)で表される化合物およびエタノールからなる請求項1に記載の消毒剤。
【請求項4】
一般式(I)で表される化合物、エタノール、およびステアロキシヒドロキシプロピルメ チルセルロースからなる請求項1に記載の消毒剤。
【請求項5】
一般式(I)で表される化合物、水、およびpH調整剤からなる請求項1に記載の消毒剤。
【請求項6】
一般式(I)で表される化合物が前記消毒剤全質量に対して0.1〜3質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の消毒剤。
【請求項7】
一般式(I)で表される化合物からなる請求項1に記載の消毒剤。

【公開番号】特開2011−132127(P2011−132127A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289996(P2009−289996)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】