説明

N−アシルビフェニルアラニンを製造するための方法

薬学的に活性な化合物、特に、中性エンドペプチダーゼ(NEP)インヒビターの合成に有用な新規な方法、新規なプロセスステップおよび新規な中間体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬学的に活性な化合物、特に、中性エンドペプチダーゼ(NEP)インヒビターの合成に有用な新規な方法、新規なプロセスステップおよび新規な中間体に関する。
【0002】
発明の背景
本発明は、ビフェニルアラニンのN−アシル誘導体を調製する方法に関する。ビフェニルアラニンのN−アシル誘導体は、薬学的に活性な化合物、特に、中性エンドペプチダーゼ(NEP)インヒビターの合成に重要な中間体であり、米国特許第4,722,810号、米国特許第5,223,516号、米国特許第4,610,816号、米国特許第4,929,641号、南アフリカ特許出願第84/0670号、UK69578、米国特許第5,217,996号、EP00342850、GB02218983、WO92/14706、EP00343911、JP06234754、EP00361365、WO90/09374、JP07157459、WO94/15908、米国特許第5,273,990号、米国特許第5,294,632号、米国特許第5,250,522号、EP00636621、WO93/09101、EP00590442、WO93/10773、WO2008/031567および米国特許第5,217,996号に記載されているものなどがある。
【0003】
一般に、ビフェニルアラニン誘導体を調製する合成方法は、非天然D−チロシンなどの高価な出発材料を使用する。さらに、前記方法は、所望のビフェニル構造をもたらすアリールカップリング反応を実施するために、これもまた高価なトリフルオロメタンスルホン酸無水物を使用してフェノール性ヒドロキシルを活性化する必要がある。そのような合成アプローチの一例についてJournal of Medicinal Chemistry、1995年、第38巻、10号に記載されている。スキーム1は、こうした方法の1つを示す:
【0004】
【化1】

【0005】
したがって、ビフェニルアラニン誘導体を調製する安価な方法の開発が強く求められている。本発明は、この目的に対処し、それにより工業的に有利な方法を提供することがわかる。
【0006】
発明の概要
本発明は、本明細書中で定義された通りの式(3)のN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法を提供する。式(3)による化合物を製造するための本発明による新しい方法の概要がスキーム2に示される。アルカリ性条件下において本明細書中で定義された通りのビフェニルホルムアルデヒドと、本明細書中で定義された通りのN−アシルグリシン(A)と、本明細書中で定義された通りの無水物(B)とを反応させることによって、本明細書中で定義された通りの式(1)の化合物が得られる。式(1)の前記化合物は、次に、本明細書中で定義された通りの式(2)の化合物に変換され、これが順次、例えば、水素および木炭上パラジウムにより水素化されて式(3)の化合物を得る。式(3)の化合物は、例えば、それぞれの開示が参照により援用されるJournal of Medicinal Chemistry、1995年、第38巻、10号、1691ページ、および本明細書の前で引用した特許文献に記載されるように、中性エンドペプチダーゼ(NEP)インヒビターに変換することができる。
【0007】
スキーム2で概要が示される合成プロセスは、安価な出発材料および試薬を使用するため、工業生産に適している。
【0008】
【化2】

【0009】
発明の詳細な説明
ステップa:
第1の実施形態において、本発明は、式(1−a)の化合物またはその塩を調製する方法に関し、
【0010】
【化3】

好ましくは、式(1−a)の化合物は、式(1)を有し、
【0011】
【化4】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、該方法は、
【0012】
【化5】

またはその塩を、アルカリ性条件下において、
式(A)の化合物またはその塩
【0013】
【化6】

[式中、R1は、式(1−a)の化合物について定義された通りのもの
および(R2CO)Oであり、R2は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはプロピル、最も好ましくはメチルもしくはエチルである]
と反応させて式(1−a)の化合物を得ることを含む。
【0014】
上記の反応は、一般に当技術分野において既知の溶媒中、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ヘプタン、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、n−酪酸、無水酢酸またはプロピオン酸無水物から選択される溶媒(溶媒Iと呼ぶ)の存在下で行うことができる。
【0015】
好ましくは、無水物(B)は、無水酢酸またはプロピオン酸無水物である。
【0016】
「アルカリ性条件下」という用語は、ステップが塩基を必要とすることを意味する。好ましくは、前記塩基は、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピロール、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウムまたはプロピオン酸カリウムから選択される。
【0017】
好ましくは、ステップaは、80℃から還流までの反応温度で、好ましくは、0.5から48時間の反応時間で行われる。
【0018】
好ましくは、ステップaでは、前記ビフェニルホルムアルデヒド:前記N−アシルグリシン(A):前記無水物(B):前記塩基のモル比が1.0:(0.7から5.0):(1.0から6.0):(0.05から2.00)であり;前記溶媒Iの量が前記ビフェニルホルムアルデヒドの供給量の重量の0から20倍である。
【0019】
ステップb:
別の実施形態において、本発明は、式(2−a)の化合物またはその塩を調製する方法に関し、
【0020】
【化7】

好ましくは、式(2−a)の化合物は、式(2)を有し、
【0021】
【化8】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、該方法は、
式(1−a)の化合物またはその塩であって、
【0022】
【化9】

好ましくは、式(1)を有する式(1−a)の化合物
【0023】
【化10】

[式中、R1は、式(2−a)の化合物について定義された通りのものである]
を水と反応させて
式(2−a)の化合物を得ることを含む。
【0024】
上記の反応は、一般に当技術分野において既知の溶媒中、例えば、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸エチル、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロールから選択される溶媒(溶媒IIと呼ぶ)の存在下で行うことができる。好ましくは、前記溶媒IIの供給量の重量がステップaにおける式(1)の化合物[生成物1と呼ぶ]の量の2から50倍であり;水の供給量の重量がステップaにおける生成物1の量の0.5から20倍である。
【0025】
好ましくは、ステップbは、室温から還流までの反応温度で行われる。
【0026】
ステップc:
別の実施形態において、本発明は、式(3)の化合物またはその塩を調製する方法に関し、
【0027】
【化11】

好ましくは、式(3)の化合物は、式(3−a)を有し、
【0028】
【化12】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、該方法は、
式(2−a)の化合物またはその塩であって、
【0029】
【化13】

好ましくは、式(2)を有する式(2−a)の化合物
【0030】
【化14】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]
を水素化条件下において処理して
式(3)の化合物を得ることを含む。
【0031】
水素化条件は、当技術分野において周知であり、したがって、例えば、参照により本明細書に援用するWO2009/090251のセクションB.3.3に記載されているような水素および遷移金属触媒の使用を指す。遷移金属触媒はパラジウムであることが好ましく、好ましくはパラジウムを1重量%から20重量%含有する木炭上パラジウムであることが好ましい。
【0032】
別の実施形態において、例えば、参照により本明細書に援用するWO2009/090251のセクションC.2に記載されるように、有機金属複合体およびキラルリガンドを含む遷移金属触媒の存在下で水素により水素化が起こる。
【0033】
上記の反応は、一般に当技術分野において既知の溶媒中、例えば、エタノール、メタノール、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロールおよびテトラヒドロフランから選択される溶媒(溶媒IIIと呼ぶ)の存在下で行うことができる。
【0034】
好ましくは、ステップcでは、前記溶媒IIIの供給量の重量は、ステップaにおける式(1)の化合物[生成物1と呼ぶ]の量の5から50倍である。好ましくは、木炭上パラジウムの量は、重量でステップbにおける式(2)の化合物[生成物2と呼ぶ]の0.1%から20%である。
【0035】
好ましくは、ステップcでは、酸性条件を維持するために氷酢酸も添加される。
【0036】
好ましくは、反応温度は、20℃から150℃の温度である。
【0037】
好ましくは、水素圧力は、0.2MPaから10.0MPaである。
【0038】
別の実施形態:
別の態様において、本発明は、本明細書中で定義された通りの式(3)の化合物またはその塩を調製する方法に関し、該方法は、
i)上記の通りのステップa);
ii)上記の通りのステップb);および
iii)上記の通りのステップc)
を含む。
【0039】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書中で定義された通りの式(3)の化合物またはその塩を調製する方法に関し、該方法は、
iv)上記の通りのステップb);および
v)上記の通りのステップc)
を含む。
【0040】
好適な実施形態:
実施形態[1]:以下のステップを特徴とするN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0041】
【化15】

式中、R1は、直鎖または分岐鎖のアルキルまたはアリールであり、R2は、メチルまたはエチルである。
【0042】
実施形態[2]:ステップaについて、前記ビフェニルホルムアルデヒド:前記N−アシルグリシン:前記無水物:前記塩基のモル比が1.0:(0.7から5.0):(1.0から6.0):(0.05から2.00)であり、前記溶媒Iの量が前記ビフェニルホルムアルデヒドの供給量の重量の0から20倍であることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0043】
実施形態[3]:ステップaについて、前記溶媒Iがベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ヘプタン、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、n−酪酸、無水酢酸またはプロピオン酸無水物から選択され;前記無水物が無水酢酸またはプロピオン酸無水物であり;前記塩基がトリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピロール、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウムまたはプロピオン酸カリウムから選択されることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0044】
実施形態[4]:ステップaが80℃から還流までの反応温度で0.5から48時間の反応時間で行われることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0045】
実施形態[5]:ステップbについて、前記溶媒IIが水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、プロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸エチル、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロールから選択されることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0046】
実施形態[6]:ステップbについて、前記溶媒IIの供給量の重量がステップaにおける生成物1の量の2から50倍であり;前記水の供給量がステップaにおける生成物1の量の0.5から20倍であることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0047】
実施形態[7]:ステップbが室温から還流までの反応温度で行われることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0048】
実施形態[8]:ステップcについて、前記溶媒IIIがエタノール、メタノール、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロールまたはテトラヒドロフランから選択され;前記木炭上パラジウムがパラジウムを1重量%から20重量%を含有することを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0049】
実施形態[9]:ステップcについて、前記溶媒IIIの供給量の重量がステップaにおける生成物1の量の5から50倍であり、前記木炭上パラジウムの量が重量でステップbにおける生成物2の0.1%から20%であることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0050】
実施形態[10]:ステップcが行われる間、pHを調節し、酸性条件を維持するために氷酢酸も添加され、反応温度の範囲が20℃から150℃であり、前記水素圧力が0.2MPaから10.0MPaであることを特徴とする、実施形態[1]によるN−アシルビフェニルアラニンを調製する方法。
【0051】
一般用語:
本発明を記載するために使用される各種用語の定義が以下に列挙される。本開示において使用される1つ、2つ以上またはすべての一般表現または記号を置き換えることによって本発明の好適な実施形態が得られるこうした定義は、個々にまたは大きな群のうちの一部として、特定の場合において別の制限がない限り、本明細書を通して使用されるような用語に好ましくは適用される。
【0052】
基または基の一部であるアルキルは、直鎖または分岐(1回または、必要に応じて可能なら、複数回)の炭素鎖であり、特に、C〜C−アルキルなどのC〜C−アルキル、特に、イソプロピルなどの分岐のC〜C−アルキルである。「低級」または「C〜C−」という用語は、最大限7個までの炭素原子を含む、特に、最大限4個までの炭素原子を含む部分を定義し、前記部分が分岐(1回または複数回)または直鎖であり、末端もしくは非末端炭素を介して結合されている。低級またはC〜C−アルキルは、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルもしくはn−ヘプチルであり、または好ましくは、C〜C−アルキル、特に、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルである。メチルまたはエチルが極めて好適である。
【0053】
基または基の一部としてのアリールは、例えば、6から22個の炭素原子を含む、フェニル、インデニル、インダニルまたはナフチル、特に、フェニルなどの単環式または二環式アリールである。
【0054】
上記および下記式において、
【0055】
【化16】

という用語は、共有結合を表し、これは(E)立体異性体ならびに(Z)立体異性体を含む。
【0056】
「還流」という用語は、反応混合物が沸騰する温度を指し、好ましくは最大180℃、好ましくは最大140℃の温度である。
【0057】
本明細書中で使用されるように、「室温」または「周囲温度」という用語は、20から25℃などの20から35℃の温度を意味する。
【0058】
「遷移金属触媒」、「有機金属複合体」および「キラルリガンド」という用語は、WO2009/090251に記載された通りのものであり、前記定義を参照により本明細書に引用したものとする。
【0059】
本出願の式において「Ph」という用語は、フェニルを意味する。
【0060】
遊離型および、例えば、化合物またはその塩の精製または同定において中間体として使用できる塩を含む塩の形態の化合物と中間体との密接な関係を考慮して、本明細書の前および後における「化合物」、「出発材料」および「中間体」についてのいかなる言及も、1つまたは複数のその塩または対応する遊離化合物、中間体もしくは出発材料と1つまたは複数のその塩との混合物も指すものとして理解されるべきであり、適切で好都合であり、明確に別の言及がない場合、そのそれぞれは、あらゆる溶媒和物、エステルもしくはアミドなどの代謝前駆体またはこれらの任意の1つまたは複数の塩も含むことが意図される。さまざまな結晶形を得ることができる場合もあり、その場合にはそれも含まれる。塩基性または酸性基などの塩形成基が存在する場合、例えば、水溶液中において4から10のpH範囲で少なくとも部分的に解離した形態で存在できる、または特に、固体形態、特に、結晶形態で単離できる塩が形成され得る。塩基性基(例えば、イミノまたはアミノ)の存在下で、塩は、好ましくは、有機または無機酸により生成されてもよい。適切な無機酸は、例えば、塩酸、硫酸またはリン酸などのハロゲン酸である。適切な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、グルタミン酸もしくはアスパラギン酸などのアミノ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸またはアスコルビン酸などの他の有機プロトン酸である。カルボキシまたはスルホなどのマイナスに帯電した基の存在下で、塩基またはN−エチル−ピペリジンもしくはN,N’−ジメチルピペラジンなど複素環式塩基により、塩が生成されてもよく、この塩は、例えば、金属塩またはアンモニウム塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、あるいはアンモニアまたは三級モノアミン、例えば、トリエチルアミンもしくはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミンなどの適切な有機アミンとのアンモニウム塩である。同じ分子中に塩基性基および酸基が存在する場合、分子内塩が生成されることもある。特に有用な塩としては、上記試薬との反応から生成される式(1)、(1−a)、(2)、(2−a)、(3)、(3−a)の化合物などの塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、トリル酒石酸、ベンゾイル酒石酸、オロチン酸、ニコチン酸、メタン−スルホン酸または4−メチルベンゼンスルホン酸の塩が挙げられる。文献、例えば、「CRC Handbook of Optical Resolutions via Diasteromeric Salt Formation」、D. Kozma、CRC Press 2002年の関連のある章、Acta Cryst、2006年、B62、498〜505ページおよびSynthesis、2003年、13、1965〜1967ページに酸付加塩を調製するための方法について記載されている。
【0061】
化合物、出発材料、中間体、塩、医薬調製物、疾患、障害および同種のものに対して複数形が使用される場合、これは、1つ(好適な)または複数の単一の化合物(複数可)、塩(複数可)、医薬調製物(複数可)、疾患(複数可)、障害(複数可)または同種のものを意味することが意図され、単数または不定冠詞(「a」、「an」)が使用される場合、これは、複数を除外することは意図されず、「1つ(one)」を意味することが好ましいに過ぎない。
【0062】
本発明の詳細な実施形態が以下の実施例で提供される。こうした実施例は、本発明をその範囲を限定することなく例示するのに役立つ一方、本発明の反応ステップ、中間体および/または方法の好適な実施形態を表す。
【実施例1】
【0063】
4−(4−ビフェニルメチレン)−2−メチル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Me)の合成
【0064】
【化17】

【0065】
36.4gのビフェニルホルムアルデヒド(日本、三菱化学株式会社、工業用、含有率>98%)、28gのアセチルグリシン、56gの無水酢酸および6gの酢酸ナトリウム無水物を乾燥したきれいな反応瓶に加える。0.5時間加熱還流する。加熱の維持を止め、80℃に冷却する。200mlの水を加え、30分間撹拌する。ろ過し、100mlの水を使用してろ過ケークを2回洗浄する。湿った生成物を30から40℃で真空乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.16 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.74-7.66 (m, 2H), 7.66-7.58 (m, 2H), 7.52-7.43 (m, 2H), 7.43-7.36 (m, 1H), 7.19 (s, 1H), 2.43 (s, 3H). M=263.
【実施例2】
【0066】
2−アセトアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Me)の合成
【0067】
【化18】

【0068】
40gの4−(4−ビフェニルメチレン)−2−メチル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Me)、450mlのアセトンおよび60mlの水道水を1000mlの反応瓶に加える。8時間加熱還流する。加熱の維持を止める。活性炭を3g加え、1時間脱色する。ろ過し、50mlのアセトンで洗浄する。アセトン約300mlを水蒸気蒸留し、その後、200mlの水を加える。20℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ12.69 (s, 1H), 9.53 (s, 1H), 7.81-7.64 (m, 6H), 7.49 (dd, J = 10.4, 4.7 Hz, 2H), 7.39 (dd, J = 8.2, 6.5 Hz, 1H), 7.26 (s, 1H), 2.01 (s, 3H). M=281,M+=280.
【実施例3】
【0069】
3−ビフェニル−2−アセトアミドアラニン酸(3、R1=Me)の合成
【0070】
【化19】

【0071】
20gの2−アセトアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Me)、300mlの無水エタノール、2mlの氷酢酸およびパラジウムを5%含有する1gの木炭上パラジウムを1Lの高圧オートクレーブに加える。反応オートクレーブを閉め、窒素を使用して空気を追い出す。内部温度70から80℃まで加熱する。水素圧力を6MPaに調節する。加熱を維持しながら20時間反応させる。反応オートクレーブを60℃に冷却する。ガスを放出する。それをろ過する。10mlのエタノールで洗浄する。ろ液を約60mlまで濃縮する。0から5℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (500MHz,DMSO-d6):1.82, 2.89-2.93, 3.08-3.12, 4.45-4.50, 7.33-7.37, 7.44-7.47, 7.58-7.60, 7.64-7.66, 8.26〜8.28, 12.75; MS(m/z):224.07(100),167.14(56),165.16(26),282.94([MH+],1).
【実施例4】
【0072】
4−(4−ビフェニルメチレン)−2−フェニル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Ph)の合成
【0073】
【化20】

【0074】
36.4gのビフェニルホルムアルデヒド(日本、三菱化学株式会社、工業用、含有率>98%)、33gのN−ベンゾイルグリシン、52gのプロピオン酸無水物および20gのN−メチルモルホリンおよび182gのクロロベンゼンを乾燥したきれいな反応瓶に加える。100℃まで加熱する。24時間加熱を維持する。80℃に冷却する。200mlの水を加え、30分間撹拌する。ろ過し、100mlの水を使用してろ過ケークを2回洗浄する。湿った生成物を真空乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ8.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.24-8.17 (m, 2H), 7.73 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.69-7.59 (m, 3H), 7.55 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.49 (dd, J = 10.2, 4.8 Hz, 2H), 7.44-7.37 (m, 1H), 7.29 (s, 1H).M=325.
【実施例5】
【0075】
2−ベンズアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Ph)の合成
【0076】
【化21】

【0077】
60gの4−(4−ビフェニルメチレン)−2−フェニル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Ph)、1000mlのテトラヒドロフランおよび150mlの水道水を1000mlの反応瓶に加える。室温まで加熱する。24時間加熱を維持する。活性炭を3g加え、1時間脱色する。ろ過し、50mlのテトラヒドロフランで洗浄する。約600mlのテトラヒドロフランを水蒸気蒸留した後、20℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ9.61 (s, 1H), 8.00 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 7.82-7.36 (m, 13H), 7.33 (t, J = 7.2 Hz, 1H). M=343, M+=342.
【実施例6】
【0078】
3−ビフェニル−2−ベンズアミドアラニン(3、R1=Ph)の合成
【0079】
【化22】

【0080】
10gの2−ベンズアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Ph)、350mlのメタノール、1mlの氷酢酸およびパラジウムを5%含有する2gの木炭上パラジウム(Pd/C)を1Lの高圧オートクレーブに加える。反応オートクレーブを閉め、窒素により空気を追い出す。内部温度140から150℃まで加熱する。窒素圧力を0.2MPaに調節する。加熱を維持しながら20時間反応させる。反応オートクレーブを60℃に冷却する。ガスを放出する。ろ過し、約10mlのエタノールで洗浄する。ろ液を約60mlまで濃縮する。0から5℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
1H NMR (500MHz,DMSO-d6): 3.12-3.17, 3.23-3.27, 4.65-4.70, 7.31-7.33, 7.34-7.45, 7.46-7.48, 7.58-7.60, 7.62-7.64, 7.83-7.84, 8.77-8.79, 12.85; MS(m/z):224.0(100),167.1(34),165.1(15),105.1(10),77.2(18),344.8([MH+],1).
【実施例7】
【0081】
4−(4−ビフェニルメチレン)−2−フェニル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Ph)の合成
【0082】
【化23】

【0083】
36.4gのビフェニルホルムアルデヒド(日本、三菱化学株式会社、工業用、含有率>98%)、33gのN−ベンゾイルグリシン、52gのプロピオン酸無水物および10gのプロピオン酸ナトリウム無水物および200gのジクロロベンゼンを乾燥したきれいな反応瓶に加える。80℃まで加熱する。48時間加熱を維持する。80℃に冷却する。200mlの水を加え、30分間撹拌する。ろ過し、100mlの水を使用してろ過ケークを2回洗浄する。湿った生成物を30から40℃で真空乾燥して表題の生成物を得る。
実施例4と同様の分光データ。
【実施例8】
【0084】
2−ベンズアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Ph)の合成
【0085】
【化24】

【0086】
50gの4−(4−ビフェニルメチレン)−2−フェニル−オキサゾール−5(4H)−ケトン(1、R1=Ph)、550mlのブタノンおよび120mlの水道水を1000mlの反応瓶に加える。40℃まで加熱する。24時間加熱を維持する。活性炭を3g加え、1時間脱色する。ろ過し、50mlのテトラヒドロフランで洗浄する。約600mlのテトラヒドロフランを水蒸気蒸留した後、20℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
実施例5と同様の分光データ。
【実施例9】
【0087】
3−ビフェニル−2−ベンズアミドアラニン(3、R1=Ph)の合成
【0088】
【化25】

【0089】
15gの2−ベンズアミド−3−ビフェニルプロペン酸(2、R1=Ph)、300mlのテトラヒドロフラン、1.5mlの氷酢酸およびパラジウムを5%含有する4gの木炭上パラジウム(Pd/C)を1Lの高圧オートクレーブに加える。反応オートクレーブを閉め、窒素により空気を追い出す。内部温度100から110℃まで加熱する。水素圧力を10.0MPaに調節する。加熱を維持しながら20時間反応させる。反応オートクレーブを60℃に冷却する。ガスを放出する。ろ過し、約10mlのエタノールで洗浄する。ろ液を約60mlまで濃縮する。0から5℃に冷却する。ろ過し、湿った生成物を60℃で乾燥して表題の生成物を得る。
実施例6と同様の分光データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−a)の化合物またはその塩を調製する方法であって、
【化26】

好ましくは、式(1−a)の化合物は、式(1)を有し
【化27】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、前記方法は、
【化28】

またはその塩を、アルカリ性条件下において、
式(A)の化合物またはその塩
【化29】

[式中、R1は、式(1−a)の化合物について定義された通りのもの
および
(R2CO)Oであり、R2は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはプロピルである]
と反応させて式(1−a)の化合物を得ることを含む方法。
【請求項2】
前記アルカリ性条件が、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピロール、N−メチルモルホリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウムおよびプロピオン酸カリウムから選択される塩基の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応が、80℃から還流までの温度で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式(2−a)の化合物またはその塩を調製する方法であって、
【化30】

好ましくは、式(2−a)の化合物は、式(2)を有し
【化31】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、前記方法は、
式(1−a)の化合物またはその塩であって、
【化32】

好ましくは、式(1)を有する式(1−a)の化合物
【化33】

[式中、R1は、式(2−a)の化合物について定義された通りのものである]
を水と反応させて
式(2−a)の化合物を得ることを含む方法。
【請求項5】
前記反応が、室温から還流までの温度で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(3)の化合物またはその塩を調製する方法であって、
【化34】

好ましくは、式(3)の化合物は、式(3−a)を有し
【化35】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]、前記方法は、
式(2−a)の化合物またはその塩であって、
【化36】

好ましくは、式(2)を有する式(2−a)の化合物
【化37】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]
を水素化条件下において処理して
式(3)の化合物を得ることを含む方法。
【請求項7】
前記水素化条件が、水素およびパラジウム、好ましくは木炭上パラジウムの使用を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
i)請求項1から3に記載の方法の任意の1つにより、好ましくは、請求項1に記載の方法により、請求項1に記載の式(1−a)の化合物を調製するステップ;
ii)請求項4または5に記載の方法により、好ましくは、請求項4に記載の方法により、請求項4に記載の式(2−a)の化合物を調製するステップ;および
iii)請求項6または7に記載の方法により、式(3)の化合物を得るステップ
を含む、請求項6に記載の式(3)の化合物を調製する方法。
【請求項9】
ii)請求項4または5に記載の方法により、好ましくは、請求項4に記載の方法により、請求項4に記載の式(2−a)の化合物を調製するステップ;および
iii)請求項6または7に記載の方法により、式(3)の化合物を得るステップ
を含む、請求項6に記載の式(3)の化合物を調製する方法。
【請求項10】
式(1−a)の化合物またはその塩であって、
【化38】

好ましくは、式(1)を有する式(1−a)の化合物
【化39】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]。
【請求項11】
式(2−a)の化合物またはその塩であって、
【化40】

好ましくは、式(2)を有する式(2−a)の化合物
【化41】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]。
【請求項12】
式(3)の化合物またはその塩であって、
【化42】

好ましくは、式(3−a)を有する式(3)の化合物
【化43】

[式中、R1は、C1〜7アルキル、好ましくはメチルもしくはC6〜10アリール、好ましくはフェニルである]。

【公表番号】特表2013−505273(P2013−505273A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530106(P2012−530106)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【国際出願番号】PCT/CN2010/071243
【国際公開番号】WO2011/035569
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(511169955)ジャージャン ジュウジョウ ファーマシューティカル シーオー.,エルティーディー. (2)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】