説明

N−アセチルシステイン組成物及び薬剤毒性治療または防止方法

【課題】本発明は、治療剤の毒性を治療または防止するための組成物、及び治療学的に有効量あるいは治療学的利益を得るために通常より多量の治療剤を用いることにより生じる毒性を治療または防止する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】治療剤の毒性を治療または防止する医薬組成物、及び毒性軽減量のN−アセチルシステインを単独若しくは治療学的に有効量あるいは治療学的利益を得るために通常より多量の治療剤であって、酸化的ストレスまたは患者の低減したシステイン/グルタチオンレベルと関連した副作用がより悪化する治療剤若しくは前記副作用がNACの投与により軽減される治療剤と共に用いることによりそのような毒性を治療または防止する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療剤投与の結果生じることがある、ヒトを含む哺乳類における薬剤毒性を治療または予防する組成物、及びそのような毒性を治療または予防する方法に関する。本発明の組成物は、毒性軽減量のN−アセチルシステイン(NAC)を、単独で、または治療有効量の治療剤若しくは治療的に有利となるように通常の治療有効量より多量の治療剤との組み合わせにおいて含み、好ましくは薬学的に許容される担体と共に含む。ヒトにおける薬剤毒性を治療または予防する方法は、毒性軽減量のNACを、単独で、または治療有効量の治療剤若しくは治療的に有利となるように通常の治療有効量より多量の治療剤との組み合わせにおいて、好ましくは薬学的に許容される担体と共に投与することを含む。
【0002】
政府サポート
本件はNIHCA42509からのグラントによって少なくとも一部サポートされている。
【背景技術】
【0003】
全ての動物細胞並びにほとんどの植物及びバクテリアにおいて通常見出されるトリペプチドであるグルタチオン(GSH)は、比較的高濃度(1-10ミリモル)において、細胞代謝若しくは、例えば薬剤の過剰投与の結果において生じる、フリーラジカル及び反応性酸化的中間体(ROI)により生じる酸化的障害からの細胞の保護を助ける。グルタチオン自身は、全ての真核型生物に存在する反応性酸化的中間体の主要なスカベンジャーであり、一般に酸化体による障害から細胞を保護するために必要とされる。グルタチオンは細胞内酸化体を低減し(よって解毒し)、この反応により消耗される。グルタチオンはジスルフィド結合二量体(GSSG)に酸化され、これは細胞外に積極的に排出され、ほとんどは還元グルタチオンへの再変換に利用できなくなる。このように、グルタチオンが他の経路により再合成されない限り、この化合物の利用は、利用可能なグルタチオンの減少をともなう。グルタチオンの抗酸化的効果はまた、他の抗酸化剤を還元型に維持することにおけるこの化合物の役割により直接調節されることはより少ない。従って、少なくとも一部において、防御メカニズムの増強を通じてグルタチオンレベルを補充または上昇させる医薬化合物は、ROI仲介による障害から組織を正常に保護するために使用されたようである。
【0004】
グルタチオン欠乏は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を含む多数の疾病の病理において密接な関係を有してきた。HIV感染において、システイン/グルタチオン欠乏は、T細胞機能を害し、また1μlの血液あたり200より少ないCD4 T細胞を有する患者の障害を受けた生存に関することが知られている。
薬剤毒性は、非常に広範な問題である。システイン/グルタチオン欠乏及び酸化的ストレス(米国特許第4,757,063号参照)は、薬剤毒性効果を強め、かつ薬剤毒性反応のメカニズムに関連してきた。
【0005】
例えば、アセトアミノフェンは、システイン/グルタチオンを欠乏させるように作用し、かつ様々な薬剤毒性症状を引き起こすことが知られている。パラセタモール及びN−アセチル−p−アミノフェノールとしても知られているアセトアミノフェンは、世界的に最も広範に使用される鎮痛性かつ解熱性薬剤の一つである。これは100を越える製品中に含有され、米国では即時放出型タブレットや遅延放出型製剤として一般に広く見られるものである。アセトアミノフェンを含む、様々な小児用咀嚼剤、懸濁剤及びエリキシル剤が存在する。アセトアミノフェンはまた、例えば、プロポキシフェン/アセトアミノフェン及びオキシコドン/アセトアミノフェンのような組合せ薬剤の成分としても見いだされる。
【0006】
アセトアミノフェンは、引き続き、毒物摂取において最も一般に遭遇する物質である。多くの場合において、アセトアミノフェン過剰投与は意図されるものではなく、実質的な障害が既に生じた後になるまで診断未確定である。許容される規模の投与量のアセトアミノフェンを繰り返し投与することにより、毒性症状を起こし得る。ドノバン(Academic Emergency Med. 6:1079-1082,(1999))により議論されているように、アセトアミノフェンの摂取後の血液レベルの検出方法は、低い予測値という問題を有する。単独急性摂取のような単純なケースにおいてさえ、肝臓障害とアセトアミノフェンの低血液レベルに対する危険因子を認識し得ない患者は依然として毒性を生じ、死ぬことさえある。
【0007】
異なる商品名において多数の会社がアセトアミノフェンをパッケージ化している結果、パッケージ上の情報を読まない知識を有さない患者及び親により、不注意にも過剰投与する結果を生じている。更に、風邪治療薬及び他の一般用医薬製剤はアセトアミノフェンをしばしば含んでおり、アセトアミノフェンは患者及び親には読むのが困難な一連の一般薬剤名の中にリストされている。従って、患者はしばしば摂取したアセトアミノフェンの量に気がつかない。こどもは、その小さな体格、一般薬処方における重複したアセトアミノフェンの存在、及びライ症候群及び腎尿細管障害の危険性によるアスピリン及び他のNSAIDの不注意な投薬のために、偶発的な暴露に特に傷つきやすい。アセトアミノフェンの解熱効果は明らかに示されており、従ってアセトアミノフェンはその目的で病院において広範に用いられている。しかし、アセトアミノフェンは、腎臓または肝臓機能が損なわれるという危険性を有する状況下では解熱剤としての選択肢ではないかもしれない。
【0008】
大量のアセトアミノフェン過剰投与が肝細胞毒性を引き起こし、いくつかのケースでは、ヒト及び実験動物における腎毒性を起こす、という事実は十分に確認されている。アセトアミノフェンの急性過剰投与により、投与量依存性及び潜在的胎児肝臓壊死並びに(まれなケースでは)腎尿細管壊死及び低血糖を起こす。アセトアミノフェンは迅速に胃及び小腸から吸収され、通常、肝臓における接合(conjugation)により非毒性薬剤に代謝され、次に尿中に排出される。急性過剰投与、または一日最大投与量を越えて長期間投与した場合、通常の代謝経路は飽和されてしまう。
【0009】
過剰アセトアミノフェンは、混合機能オキシダーゼP450系を通じて、肝臓で毒性のN-アセチル-p-ベンゾキノン-イミン(NAPQI)に代謝される。NAPQIは、非常に短い半減期を有し、迅速にスルフヒドリル供与体であるグルタチオンと結合し、系から排除される。過剰のNAPQI形成または還元グルタチオン貯蔵条件下では、NAPQIは自由に生命維持タンパク質(vital proteins)及び肝細胞の脂質二重層に結合する。これにより、肝細胞死及び続く小葉中心性の肝臓壊死を生じる。免疫組織化学的研究は、アセトアミノフェンの肝臓毒性投与量より少ない場合(sub-hepatotoxic acetoaminophen doses)においてさえも、また、まれなケースである過敏症に関連する全肝臓グルタチオン欠乏前においてさえも、NAPQIタンパク質付加物が生じることを示唆している。また、低下した細胞内システイン/グルタチオンが、NAPQIを必要としないメカニズムを通じて細胞死に寄与し得る。
【0010】
アセトアミノフェン過剰投与の直接的費用は、一年に8700万ドルであると推測された。効果的なプロトコールが開発され、試験されて、危険を層別化し、アセトアミノフェンの単一大量投与直後の患者を治療した。しかし、多くの患者が、全てのアセトアミノフェンを代謝するのに十分な程遅延した後であったり、数時間にわたる二回以上の摂取後であったり、または過剰な自己投薬数日後であったりした。これらの情況では、肝臓または腎臓障害が起こる前に有害な結果の危険性を推測することは臨床医にっとて困難である(例えば、Bond and Hite (1999) Acad. Emerg. Med. 6:1115-1120; and Donovan (1999) Acad. Emerg. Med. 6:1079-1082、参照)。しかし、アセトアミノフェン過剰投与の初期治療は非常に重要であり、中毒が重い場合には強力な支持療法が必須である。
【0011】
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(Notes)(そのピリミジンヌクレオシド類似体のアジドチミジン(AZT、ジドブジン(zidovudine))はありふれた例であるが)は、しばしば他の抗レトロウイルス剤とともにHIVを治療するための組合せ治療に用いられる。AZTを用いた長期間の治療は、通常、投与量依存性の、低赤血球数及び上昇した平均赤血球体積を示す血液学的毒性及び特に進行したHIV症の患者において筋繊維毒性を伴う。幾つかの研究は、AZT毒性相互作用が、細胞内グルタチオンと反応しそのレベルを低下させる反応性酸素種(ROI)の発生により引き起こされることを示している(参照、de la Asuncion, et al (1998) J. Clin. Invest. 102(l): 4-9; Gogu et al. (1991) Exp. Hematol. 19(7): 649-652; Gogu and Agrawal (1996) Life Sci. 59 (16): 1323-1329; Prakash et al (1997) Arch. Biochem. Biophys. 343 (2): 173-80)。
【0012】
結果は、グルタチオンレベルを低下させるアセトアミノフェンの使用は、AZT毒性を悪化させることを示した。(Richman, et al. (1987) N. Eng. J. Med. 317: 192-97)。デ・ローザは(De Rosa)らは最近、グルタチオンレベルを上昇させるNACによる治療により毒性が低下することを示した(De Rosa et al., submitted to JA MA for publication.)。
【0013】
インビトロ及び動物研究における証拠はこの結論を支持している。AZT治療は、マウスにおいて、ミトコンドリアDNAへの酸化的障害(上昇したミトコンドリア脂質過酸化を含む)と、骨格筋における上昇したレベルの酸化グルタチオンを与えた(参照、de la Asuncion, et al. (1998) J. Clin. Invest. 102(l): 4-9)。NAC及び抗酸化ビタミンC及びEは、このAZT誘導毒性を阻止することが示された(参照、Gogu, et al (1991) Exp. Hematol. 19, 649-52; and Gogu and Agrawal (1996) Life Chem. Rep. 4, 1-35)。さらに、AZT治療は、HIV-TAT遺伝子組換えマウスにおいてグルタチオン欠乏を強化し(参照、Prakash, O., et al. Arch. Biochem. Biophys. (1997) 343: 173-80)、TATタンパク質の発現は、グルタチオン生合成(参照Choi, J., et al., (2000) J. Biol. Chem. 275 (5): 3693-98)及び抗酸化酵素の活性(Flores et al. (1993) Proc. Nat. Acad. Sci. 90 (16): 7632-36)を低下させることによりグルタチオンを欠乏させることが示された。TAT遺伝子組換
えマウスの研究はまた、このグルタチオン欠乏条件下でAZT毒性が増強されることを示す(参照、Prakash et al. (1997) Arch. Biochem. Biophys. 343, 173-80)。
【0014】
HIV症におけるAZT初期の臨床試験から、AZT毒性及びアセトアミノフェンの使用の関係が明らかになった(参照、e.g., Richman, et al. (1987) New Eng. J. Med. 317(4): 192-97)。この毒性反応のメカニズムは完全に理解されていないが、AZTの崩壊率には違いが無いことが観測されているので、アセトアミノフェンはAZTの解毒を害さない。アセトアミノフェンはグルタチオンを欠乏させることが知られているので、起こり得るアセトアミノフェンとAZTの同時投与による危険な効果は、グルタチオン欠乏により仲介されるものと思われる。従って、グルタチオンが既に欠乏しているような状況下、例えばHIV症の後期段階では、アセトアミノフェンの解毒(これはさらに肝臓その他のグルタチオン貯蔵を欠乏させると予期できる)がAZT毒性の可能性を上昇させる。
【0015】
長期の抗生物質の使用はまたしばしば薬剤毒性反応を生ずる。投与された抗生物質の毒性反応は、その作用メカニズム及び経路の機能であり、これにより代謝的に弱められる。
薬剤の毒性反応の治療において一般に有効な薬剤を同定するために科学者達は長い間探索を行なってきた。薬剤過剰投与に対する保護剤が広範に研究されてきた。アセトアミノフェン過剰投与に対する既知の治療方法は、スルフヒドリル化合物を投与することである。L-メチオニン、L-システイン、及びN-アセチルシステインの精製したL-エナンチオマーまたはラセミ混合物は、動物において保護作用を有することが知られている。
【0016】
メチオニン及び他のスルフヒドリル化合物、システアミンは同じ保護を与えることが報告されている。また、シメチジン、ジメチルスルホキシド及びエタノールはアセトアミノフェン生物活性化を防止することが示された。N−アセチルシステインは、ヒトにおいて経口投与された場合に有効であることが示された。スルフヒドリル基を与える化合物の初期投与(アセトアミノフェン摂取0〜10時間後)により、アセトアミノフェン過剰投与における肝臓及び腎臓障害を阻止または最小化し得る。NACは現在多くの医師により、既知または未知のいずれの原因による肝臓障害の治療にも用いられており、シクロホスファミド毒性に対する許容された対するもの(antipode)である。NACはまた、放射線治療造影剤による毒性を防止するために、そのような治療を受けている患者において使用されている。NACが毒性を阻害または無効にするメカニズムは、主にグルタチオンの補充に関すると考えられる。しかし、NACがシステイン分子自身を介して直接作用する更なるメカニズムも無視できない。
【0017】
近年、発明者らはNACを用いた治療により、AZTを投与した患者におけるAZTの肝臓毒性を低減することを示した。NACは、HIV症において起こる過剰な硫黄欠乏を改善するために必要なシステインを提供し、また特に細胞内グルタチオンを補充するようである。これは次に、デオキシヌクレオチド合成のために必要な還元力を蓄え、かつデオキシヌクレオチドプールのサイズを、従って細胞分裂速度を、正常な範囲に戻すことに役立つ。これは、AZT仲介の赤血球成長阻害を低減させ、全体の代謝及び赤血球及びその前駆体の安定性を改良する(例えば、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ及び他のエネルギー供給経路の最適な機能を可能とすることにより)。さらに、それは、細胞内酸化剤生成のトリガーである、薬剤(例えばAZT)の導入及び分子の内部生成(例えばTNF及びHIV-TAT)により誘導された酸化剤の生成に抵抗する能力を改良する。
【0018】
長期治療の間の薬剤毒性反応を阻害する改良された処方及び方法は、そのような反応に起因する多数の命の損失、及び治療のコストを考慮すると特に興味深い。本発明はこの課題を解決するものである。
【発明の概要】
【0019】
薬剤毒性を低減するために治療剤とNACの連続または同時投与のための、医薬組成物及び治療方法が提供され、これらは患者における細胞内システイン/グルタチオンレベルの低減または上昇した酸化的ストレスにより副作用が悪化する薬剤またはNACの投与により副作用が除去される薬剤を含む。NACの連続または同時投与により、現在認識されている標準治療投与量において治療剤をより安全にし、また毒性副作用を生ずることなく有益な目的のために投与される治療剤の投与量を増加させる。
【0020】
本発明の一つの実施態様では、哺乳類における治療剤の毒性を治療または阻害するのに有用な組成物が提供され、毒性軽減量のN−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を単独で、または治療量若しくはより多量の治療剤との組合せにおいて、薬学的に許容される賦形剤若しくは担体と共に含む。他の実施態様において、そのような組成物は少なくとも約1mgのN−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を含む。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導と組合せで含み、前記治療剤は少なくとも一つの抗生物質又は抗ウイルス剤である。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤と毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体との組み合わせを含み、前記治療剤は少なくとも一つの、酸化的ストレスを生成する抗生物質または抗ウイルス剤である。他の実施態様において、そのような組成物は治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組合せで含み、前記治療剤は少なくとも一つの、治療に関連して患者のシステイン/グルタチオンレベルの低下を起こす抗生物質または抗ウイルス剤である。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組合せで含み、前記治療剤は、鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物である。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と共に含み、前記治療剤は、酸化的ストレスを生成する、鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物である。他の実施態様において、そのような組成物は治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と共に含み、前記治療剤は、治療に関連して患者のシステイン/グルタチオンレベルの低減を起こす、鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物である。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と共に含み、前記化合物はパラアミノフェノール誘導体であり、フェナセチン及びその活性代謝物であるアセトアミノフェンを含む。他の実施態様において、そのような組成物は、治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と共に含み、各投与単位は、標準投与量のアセトアミノフェンと、少なくとも約1mgのNACを含む。他の実施態様において、そのような組成物は治療有効量の治療剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組合せで含み、前記治療剤は、抗レトロウイルス剤である。他の実施態様において、そのような組成物は治療有効量のAZTを毒性軽減量のNACと共に含み、ヒトHIV患者におけるAZT毒性の主要な局面、例えば大球性貧血、を低減する。
【0021】
他の実施態様において、哺乳類における治療剤の毒性を治療または防止する方法は、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を単独で、または通常の投与量若しくは通常より大量の投与量の治療剤と共に、薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することを含む。他の実施態様において、前記方法は少なくとも約1mgのNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、非経口的に栄養を摂取している患者に投与することを含む。他の実施態様において、前記方法は、治療有効量の少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤を、NACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量の少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤を、NACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与することを含み、前記抗生物質または抗ウイルス剤は酸化的ストレスを生成する。他の実施態様において、前記方法は治療有効量の少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与することを含み、前記抗生物質又は抗ウイルス剤は治療に関連して患者のシステイン/グルタチオンレベルの低減を起こす。他の実施態様では、治療有効量の抗レトロウイルス剤を、毒性軽減量のNACと組み合わせて投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量の抗レトロウイルス剤を、毒性軽減量のNACと組み合わせて投与することを含み、前記抗レトロウイルス剤がAZTであることを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量のAZTを、毒性軽減量のNACと連続的にまたは組み合わせて、周産期(perinatally)に投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量のAZTを毒性軽減量のNACと連続的にまたは組み合わせて新生児期に投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は、HIVウイルスに暴露したことが疑われるかまたは知られている場合に、治療有効量のAZTを、毒性軽減量のNACと連続的にまたは組み合わせて投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物を、毒性軽減量のNACまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物を、毒性軽減量のNACと組み合わせて投与することを含み、前記化合物が酸化的ストレスを生成することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物を、毒性軽減量のNACと組合せで投与することを含み、前記化合物は治療に関連して患者のシステイン/グルタチオンレベルを低減することを含む。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物を、毒性軽減量のNACと組み合わせて投与することを含み、前記化合物がフェナセチン及びその活性代謝アセトアミノフェンを含むパラアミノフェノール誘導体である。他の実施態様では、前記方法は、治療有効量のアセトアミノフェンを標準投与量において、少なくとも約1mgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、正常にアセトアミノフェンに応答する患者における熱または痛みを治療することを含む。他の実施態様では、前記方法は、標準投与量より多量のアセトアミノフェンを、少なくとも約4mg/kgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、標準投与量のアセトアミノフェンに非応答性の熱を治療することを含む。他の実施態様では、本方法は、標準投与量のアセトアミノフェンを、少なくとも約1mgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、放射線造影剤に暴露している期間、アセトアミノフェンを必要とする患者を治療することを含む。
組合せ組成物及び方法は、特に過剰投与が不注意に依る場合、診断が不可能な場合またはもし毒性副作用を除去出来る場合に治療学的に望ましい場合に、毒性薬剤反応に対する保護を提供する。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、哺乳類における治療の毒性を軽減するための、いずれかの治療薬剤とNACとの連続的または同時投与を提供し、哺乳類におけるそのような治療の毒性は、酸化的ストレスまたは治療に関連した患者のシステイン/グルタチオンレベルの低下であってもよく、若しくはNAC投与により軽減されるものであってもよい。
【0023】
上述した医薬組成物及び治療方法は、医薬組成物を、経口、非経口または直腸投与のための、経口、非経口または座剤剤型とすることを含む。NACは実質的に、スルホン類または同時投与した薬剤(例、アセトアミノフェン)の生物活性型の代謝を妨害する他の化学物質を含まないことが好ましい。また、NACは実質的にその酸化型である、ジ−n−アセチルシステインを実質的に含まない事が好ましい。治療剤は、連続的または同時投与される場合にも、通常入手できるいずれの型でもよく、組成物は製造時または貯蔵時にNACに酸化を実質的に防止するように製造されるべきである。
【0024】
本発明の一つの実施態様では、組み合わせた処方を、アセトアミノフェン毒性に対する向上した感受性を有する個体に投与する。成人におけるアセトアミノフェン毒性に関して、肝臓毒性は、約7.5〜10gのアセトアミノフェンより多量の単独投与量を摂取した後に起こる場合もある。しかし、アルコール依存症及びイソニアジドを摂取している個人は上昇したP-450 2E1レベルを有し、アセトアミノフェン毒性に対する向上した感受性を有することができる。アセトアミノフェンの単一または連続投与に伴う肝臓毒性の危険性はまた、他の肝臓酵素誘導剤、特にバルビツレートまたは他の抗痙攣剤、を規則的に摂取している患者において増加し得る。さらに、サルファ剤、クロラムフェニコール、マクロライド、及びフルオロキノロンを含む、GSHを低減する抗生物質のクラスを摂取する個人は、アセトアミノフェンによる肝臓毒性について上昇した危険性を有し得る。また、ほとんどのアセトアミノフェンは、成人ではグルクロン酸抱合経路を通じて代謝されるが、いくつかは、GSH依存反応において解毒される反応中間体に変換される(参照、Thomas, S.H. (I 993) Phannacol. Ther. 60: 91-120)。思春期直前期の子ども、特に学齢より下の子どもでは、正常なグルクロン酸抱合経路が欠如し、アセトアミノフェンの解毒については、成人よりも高い割合で、GSHに依拠し、アセトアミノフェン誘導毒性に対する感受性を上昇させる。さらに、栄養を非経口的に受けている患者は、システインの適切な食事源を受けていず、若しくは酸化的ストレスを受け得る状態であるので、アセトアミノフェン毒性に対する感受性が上昇している。上昇した感受性はまた、HIV及び他の感染症、代謝性疾病、例えば、糖尿病、慢性症、敗血症、肝不全及び他の生理的酸化的ストレスによる、GSH欠乏の素因から生じ得る。
【0025】
アセトアミノフェンに関して、本発明の処方は、解熱剤及び鎮痛剤としての使用ができ、アセトアミノフェン単独で治療できる医療適用に適する。製品安全性における改良がNACを包含させることにより提供され、これにより偶発性または不注意による過剰投与の可能性を実質的に防止する。アセトアミノフェンとNACの組合せ使用により、副作用を防止しつつアセトアミノフェンの望ましい効果を増強する。例えば、アセトアミノフェンをNACと共に投与すると、そうでなければ許容できない毒性の危険性をもたらす、アセトアミノフェンのより高レベルの投与を行なうことができる。NACとの同一処方(co-formulation)は、重篤な疾病におけるアセトアミノフェン投与の安全性を増強することができ、したがって、アセトアミノフェン誘導肝臓及び腎臓障害による患者の疾病率及び死亡率を低下させることができる。NAC投与は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)及び同様に作用するサイトカイン類の負の効果を低減する傾向があるので、さらなる利点を提供し得る。
【0026】
アセトアミノフェン過剰投与は肝臓におけるグルタチオンの致死的な欠乏を引き起こすが、NACはアセトアミノフェン過剰投与後のグルタチオンを補充する。この非毒性薬剤は細胞に容易に進入し、グルタチオンを生産するのに必要な細胞内システインを補充し、グルタチオンレベルの上昇へと導く。NACは鎮痛剤または解熱剤としてアセトアミノフェンの末梢作用に影響せず、従って本発明の組合せ処方における存在は治療剤としての効能を低減するものではないことに注意することが重要である。NACの有効性は還元型の存在に依存し、それは、例えばチオール−ジスルフィド交換反応におけるホモ−及びヘテロ−ジスルフィド誘導体の還元型を遊離させてもよい。提供した処方におけるアセトアミノフェンの単位投与量は、NACを用いない従来の投与量よりも多くてもよい。典型的な単位投与量は、経口または静脈投与に適する溶液であってもよく、水、フルーツジュース、または炭酸飲料に溶解し、経口投与するのに適する発泡性タブレットであってもよく、または一日に2〜6回摂取するタブレットまたは一日に一回若しくは二回摂取する単回放出カプセル若しくはタブレットであって、比較的高濃度の活性成分を含むものであってもよい。徐放性効果は、異なるpH値において溶解するカプセル材料、浸透性圧によりゆっくり放出するカプセル、または他の公知の調整放出手段により得られるものであってもよい。単位投与剤型は、各投与単位(例えば、茶さじ一杯、テーブルスプーン一杯、ゲルカプセル、タブレット若しくは座剤)が所定量の本発明の組成物を含むように、提供されてもよい。同様に、注入または静脈投与のための単位投与剤型は、本発明の化合物を、滅菌水、正常食塩水若しくは他の薬学的に許容される担体中の溶液である組成物中に含んでいてもよい。本発明の単位投与剤型の明細は、達せられるべき効果及び目的の受容者に依存する。
【0027】
本発明の医薬組成物は、投与単位につき約80 mg〜約2000 mg、特に投与単位につき約650 mg〜約2000 mgのアセトアミノフェンを含む事が好ましい。投与単位あたりのNACの量は、好ましくは1mg〜25000 mgであり、経口投与では投与単位につき少なくとも3 mg〜2,000mgであることが好ましく、非経口投与では20-20,000 mgであることが好ましい。
【0028】
経口投与可能な固形単位剤型中に存在するアセトアミノフェンは通常少なくとも約80mg(小児用)、325mg、500mg及び650mgであり、約2000mgまで存在してもよく、さらに通常は、有効量のNACと共に約1500mgまでである。座剤は、当業技術において周知の方法で剤型とすることができ、通常、投与単位につき少なくとも約120 mg、125 mg、325 mg、500 mg及び650 mgのアセトアミノフェンを含み、約2000mgまで含んでいてもよいが、通常は、有効量のNACと共に約1500mgまで含んでいてもよい。経口液体剤型は通常、少なくとも約100 mg/ml、120 mg/2.5 ml、120 mg/S ml、160 mg/S ml、165 mg/S ml、325 mg/S mlのアセトアミノフェンを含み、約2000mgまで含んでいてもよく、さらに通常は、有効量のNACと共に約1500mgまで含んでいてもよい。
【0029】
毒性レベルのアセトアミノフェンが存在しない急性肝臓障害の治療のための、アセトアミノフェンの上記投与量のうちの一つとの組合せにおける、または単独の、NACの単位投与量は、医師の指示において通常少なくとも約1.5 mg/kg〜最大約70 mg/kg (小児用)であり、通常少なくとも約500 mg (成人用)であり、また、通常約2000mgを越えない。システイン/グルタチオンを消耗することまたは酸化的ストレスを生じることが知られている治療を受けている患者は、より多量のNACにより利益を受けてもよい。
【0030】
一般用医薬品であるNACは多様に製造され、かつパッケージされ得る。製造及びパッケージの方法は通常酸化に対して保護されていないので、NACは生物活性酸化生成物によりかなり汚染され得る。これは特に、NACの酸化形態がNACについて報告されたものと反する効果を有し、NACよりおよそ10-100倍低い(1/10−1/100)投与量において生物活性があることを示すデータと照らし合わせると重要であり得る(参照、Sarnstrand et al (1999) J. Pharmacol. Exp. Ther. 288: 1174-84)。
【0031】
チオール及びジスルフィドとしてのNACの酸化状態の分布は、酸化/還元電位に依存する。NACチオール/ジスルフィド対に対して得られる半電池電位は、約+63 mVであり、天然化合物の中で強力な還元活性を有することを示している(参照、Noszal et al. (2000) J. Med. Chem. 43:2176-2182)。本発明の好ましい実施態様において、剤型の製造及び貯蔵は、還元形態のNACが患者に投与される第一の形態であるように行なわれる。NACを含む剤型を固形状に維持することは、この目的において好ましい。溶液である場合には、NAC含有剤型は好ましくは、真空密閉された茶褐色瓶中に貯蔵することが好ましい。冷暗環境に貯蔵することもまた好ましい。
【0032】
試料中に存在する還元及び酸化種の測定は、様々な当業分野で知られている方法で行なってもよく、例えば、キャピラリー電気泳動、HPLC等、Chassaing et al. (1999) J Chromatogr B Biomed Sci AppI 735(2):219-27に記載されている方法である。
本発明の組成物は、目的により慣用的な非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤、及びビヒクルを含む投与単位剤型中において、経口、非経口または直腸投与してもよい。本明細書において、非経口という用語は、皮下注射、静脈注射、筋内注射、イントラステマル(intrastemal)注射または注入技術を含む。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオン注入装置のような経皮的投与の使用を含むものであってもよく、これらは当業分野において周知の技術及び方法により製造される。
【0033】
経口投与のための固形投与形態は、カプセル、タブレット、ピル、粉体、粒剤、及びゲルを含み得る。そのような固形投与形態では、活性化合物を、スクロース、ラクトース、またはスターチのような少なくとも一つの不活性な希釈剤とともに混合してもよい。そのような投与形態はまた、通常の実務におけるように、不活性な希釈剤以外の他の付加的な物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、を含んでいてもよい。カプセル、タブレット及びピルの場合には、投与形態はまた緩衝剤を含んでいてもよい。タブレット及びピルはさらに腸溶性コーティングを用いて製造することができる。
【0034】
小児の熱等の治療に用いる場合など、薬剤組成物の腸内投与のための座剤は、ココアバター及びポリエチレングリコール類のような適する非刺激賦形剤と薬剤を混合することにより製造することができ、それは通常の温度で固体であるが腸内温度で液体となり、従って腸内で溶解して薬剤を放出する。
【0035】
注入可能な製剤、たとえな、滅菌注入用水性または油性懸濁液は、適する分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて既知の当業技術に従い製造してもよい。滅菌注入用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)中の滅菌注入用溶液または懸濁液であってもよい。許容されるビヒクル及び溶媒の中で用いることが可能なものは、水、リンゲル液、及び等張食塩液である。更に、滅菌された不揮発性油類も、溶媒または懸濁媒体として慣用的に用いられる。
【0036】
本発明の組成物はさらに慣用的な賦形剤、すなわち、活性化合物に有害作用を示さない、非経口適用に適する薬学的に許容される有機または無機担体物質を含むことができる。適する薬学的に許容される担体としては、以下に制限されないが、水、食塩水、アルコール、植物油、ポリエチレングリコール類、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセライド類及びジグリセライド類、ペトロエトラル(petroethral)脂肪酸エステル類、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。医薬製剤は、滅菌することができ、またもし必要であれば、活性化合物に有害作用を示さない補助剤(例、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する食塩、バッファー類、着色剤、フレーバーおよび/または芳香族物質等と混合することができる。非経口用に、特に適するビヒクルは溶液、好ましくは油性または水性溶液、及び懸濁液、乳濁液、またはインプラントからなる。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質を含んでいてもよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む。任意に、懸濁液は安定剤を含んでいてもよい。
【0037】
必要な場合には、組成物はまた少量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤を含むことができる。組成物は液体溶液、懸濁液、乳濁液、タブレット、ピル、カプセル、徐放性剤であることができる。組成物は、トリグリセライドのような伝統的なバインダー及び担体を用いた座剤に形成することができる。経口剤型は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の標準的担体を含むことができる。
【0038】
本発明の治療学的に活性な薬剤を、それ自体若しくは塩形態で調剤することもできる。薬学的に許容される塩は、以下に制限されないが、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、蓚酸、酒石酸等から誘導されるような遊離アミノ基と共に形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるような遊離カルボキシル基と形成されるものが挙げられる。
【0039】
特定の疾病または症状の治療に有効な本発明の組成物中の化合物量は、その疾患または症状の性質に依存し、標準的臨床技術により決定することができる。例えば、Goodman and Gilman; The Physician's Desk Reference, Medical Economics Company, Inc., Oradell, N.J., 1995; and to Drug Facts and Comparisons, Facts and Comparisons, Inc., St. Louis, Mo., 1993を参照。NACの添加がアセトアミノフェンの治療効果に影響しない限り、通常アセトアミノフェン単独のために投与される投与量を調整する必要はなく、実際には、投与量を本発明の処方の安全性を高めるために上昇させてもよい。処方において用いるべき正確な投与量はまた投与経路、及び疾患または症状の重篤さに依存し、さらに、開業医の判断及び各患者の情況に応じて決定すべきである。
【0040】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の一以上の成分で満たされた一以上の容器を含む医薬パックまたはキットを提供する。そのような容器に、医薬品または生物製剤の製造者、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態での注意書きを添えることができ、そのような注意書きは、機関によるヒトへの投与のための製造、使用または販売の許可を反映したものである。
【0041】
本発明の他の実施態様では、NACの処方は、未知の病因の急性肝臓機能不全、例えば、アセトアミノフェンまたは他の薬剤毒性の治療を提供し、この場合、毒性薬剤の血清レベルは、酸化的ストレスまたは患者の症状の他の観点により上昇する毒性の危険性がありえる非毒性レベルを意味する。そのような患者の治療のためのNAC処方は、上述した処方を用いる。
【0042】
多くの重篤な肝臓障害を有する患者は、様々な因子により、許容される非毒性範囲のアセトアミノフェンの血清レベルを有する。そのような因子として、例えば故意の過剰投与の発生における毒性効果を示す前の空白時間(lapsed time)を含んでいてもよい。
【0043】
特定のウイルス感染、毒物暴露および薬剤使用(例えばサルファ、クロラムフェニコールおよびエリスロマイシン)に伴う通常許容される投薬レジメにも、意図しないアセトアミノフェン毒性が報告されている。これらの患者の多くは非毒性のアセトアミノフェンレベルを示すが、毒性は依然として酸化的ストレスおよび肝細胞に対する他の薬剤関連効果から生じる。
【0044】
他の患者群は酸化的ストレスを受けているか、またはそうでなければアセトアミノフェン毒性に対して通常より感受性を高くする重篤な病気を有する。そのような患者は、例えば、敗血症ショック、分配ショック(distributive shock)、出血性ショック、急性呼吸窮迫症候群、器官機能不全(organ failure)および閉塞性頭部外傷があげられる。この群の患者は機械的に、解熱剤および緩和な鎮痛剤としてアセトアミノフェンで治療され、これが逆に重篤な肝臓および腎臓障害を生じるかもしれない。
【0045】
ある範囲の値が示された場合、その範囲の上限及び下限の間に各介在する値(前後関係から明らかに違わない限り下限値の単位の10分の1まで)、及び他の記載されまたは記載された範囲に介在する値は、本発明の範囲に含まれる。それぞれ独立により小さい範囲内に含まれてもよいこれらのより狭い範囲の上限及び下限値はまた、記載された範囲において特に除外された限界値を条件として、本発明の範囲に含まれる。記載された範囲が一つまたは両方の限界値(limit)を含む場合、これらの含まれる限界値をいずれも排除した範囲もまた本発明の範囲に含まれる。
【0046】
特に規定しない限り、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業技術の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されたものと同じ若しくは同等の方法及び物質をまた本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法及び物質が以下に述べられる。本明細書に記載された全ての刊行物は、引用された刊行物に関して方法および/または物質を開示及び記載するために、本明細書に組み込まれる。
本明細書及び請求の範囲において使用されている、単数形“a”、“an”、及び“the”は、前後関係から明らかにそうでない限り、複数も含むものとする。全ての技術的及び科学的用語は同じ意味を有する。
【0047】
本明細書において議論された刊行物は本発明の出願日前の開示された技術を提供するためのみに引用される。従来の発明によってそのような刊行物より以前に本発明の権利がないことを承認するために本明細書中のいかなるものも用いられない。
更に、提供された刊行物の日付は実際の発行日とは異なるかもしれず、発行日については個々に確認する必要であろう。
【0048】
実施例
以下の実施例は、当業者に本発明をどのように製造し使用するかを示すために記載されたものであって、本発明の観点を制限することを意図するものではなく、また、以下の実験は行なった実験の全てでも、唯一のものでもない。AZT及びアセトアミノフェンを、目的とする毒性モデルの例として使用した。使用した数値(例、量、温度等)の正確さを確実にするべく努力を行なったが、幾つかの実験誤差及び偏差を考慮すべきである。特に示さない限り、“部”は質量部、分子量は平均分子量であり、温度はセ氏であり、圧力は常圧におけるものである。
【0049】
実施例1
熱がある子どもまたは成人を、15mg/kgのアセトアミノフェン及び1mg/kgの精製したNACのL-エナンチオマーまたはD-及びL-異性体等量からなるラセミ混合物を含む処方により、NACを許容できる能力は個々においてばらつきがあることを考慮して最も高い許容投与量以下で一日に3または4回、連続的にまたは同時投与して、治療することができる。NACの投与量は、摂取したアセトアミノフェン量の0.03〜4倍まで変化させてもよい。
【0050】
実施例2
標準投与レベルのアセトアミノフェンに応答しない熱を有する子供または成人を、15-50mg/kgのアセトアミノフェンおよび3-130mg/kgの精製したL-エナンチオマー若しくはNACのD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む処方を、連続的にまたは同時に、NACを許容できる能力は個々においてばらつきがあることを考慮して最大許容量まで一日に3回または4回投与することにより治療することができる。
【0051】
実施例3
低い熱を有する、正常で健康な子供および成人を、数日間、80mg/kgのアセトアミノフェンおよび3mg/kgの精製したNACのL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む処方を、連続的にまたは同時に、NAC許容能力における個々の変量により最大許容量まで一日に3回または4回投与(タブレットの数は患者の状況および体重に応じて変化しえる)することにより、正常なアセトアミノフェン投与量レベルで処理することができる。
【0052】
実施例4
非経口的に栄養を受けている子ども及び成人について、栄養処方を、3mg/kgの精製したNACのL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む処方を、連続的にまたは同時に、NAC耐性能力における個人差、全非経口栄養処方におけるシステイン量におけるばらつき、および薬剤投与に伴うばらつきを考慮して最大許容量まで一日に3回または4回投与することにより、補って処置することができる。
【0053】
実施例5
肝臓機能障害または肝臓障害を有するか又は上昇した肝臓酵素及び熱を有し、既に健康が損なわれた子ども及び成人を、4-10mg/kgのアセトアミノフェンおよび130mg/kgのNACの精製したL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む風邪、痛み、解熱または他の製剤を、これらを連続的にまたは同時に、NAC許容能力における個々の変量を考慮して最大許容量まで一日に3回または4回投与して治療することができる。
【0054】
実施例6
複数薬剤抗ウイルス療法の一部として治療有効量のAZTと、毒性軽減量の精製したNACのL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む処方を、連続的にまたは同時に、NAC許容能力における個々の変量により最大許容量まで一日に2、3または4回投与することにより、治療することができる。NACを高投与量で、水に溶解させる発泡性タブレットまたは顆粒形態の単回投与パケットとして処方し、胃に対する有害作用を防止することが好ましい。NACの投与は、ヒトHIV患者におけるAZT毒性の主要な面を低減させるのに十分である。
【0055】
実施例7
AZT及びNACを周産期及び新生児期に投与して、HIVウイルスの子どもへの垂直感染を防止することができる。出産前に、母親を、治療学的に有効量のAZTと毒性軽減量の精製したNACのL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかにより、連続的にまたは同時に、NAC許容能力における個々の変量により最大許容量まで一日に2、3または4回投与することにより治療することができる。投与量は、出産後に子どもに持続して酸化的ストレス及び他のAZT毒性を防止する。NACを高投与量で、水に溶解させる発泡性タブレットまたは顆粒形態の単回投与パケットとして処方し、胃に対する有害作用を防止することが好ましい。NACの投与は、ヒトHIV患者におけるAZT毒性の主要な面を低減させるのに十分である。
【0056】
実施例8
新たにHIVと診断された患者またはHIVが疑われる患者を、有効量のAZTまたは通常使用される他の同様の抗ウイルス剤と、毒性軽減量の精製したNACのL-エナンチオマー若しくはD−およびL−異性体の等量ラセミ混合物のいずれかを含む処方を、連続的にまたは同時に、NAC許容能力における個々の変量により最大許容量まで一日に2、3または4回投与することにより、治療することができる。NACを高投与量で、水に溶解させる発泡性タブレットまたは顆粒形態の単回投与パケットとして処方し、胃に対する有害作用を防止することが好ましい。NACの投与は、ヒトHIV患者におけるAZT毒性の主要な面を低減させるのに十分である。
【0057】
本発明を特定の実施態様を用いて説明したが、本発明の観点から離れることなく様々な変更を行なってもよく、また等価物により置換してもよいことは、当業者に理解されるべきである。さらに、特定の情況、物質、組成物、プロセス、プロセスの工程、または工程を、本発明の目的、意図及び観点に適合させるために、多数の改変を行なってもよい。全てのそのような改変は特許請求の範囲の観点に入ることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における治療剤の毒性効果を治療または防止するのに有用な医薬組成物であって、薬学的に許容される賦形剤若しくは担体と共に、単独の毒性軽減量のN−アセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体、または毒性軽減量のN−アセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と治療量若しくはより多量の治療剤との組み合わせを含む、上記医薬組成物。
【請求項2】
各投与単位が、少なくとも1mgのN−アセチルシステインまたは薬学的に許容されるその塩若しくは誘導体を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該治療剤が少なくとも一つの抗生物質または抗菌剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
該治療剤が、酸化的ストレスを生じさせる少なくとも一つの抗生物質または抗菌剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
該治療剤が、患者におけるシステイン/グルタチオンレベルを治療に関連して低下させる少なくとも一つの抗生物質または抗菌剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
該治療剤が、少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
該治療剤が、少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物であり、前記化合物が酸化的ストレスを生じさせる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
該治療剤が、少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物であり、前記化合物が患者におけるシステイン/グルタチオンレベルを治療に関連して低下させる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
該化合物がアセトアミノフェンである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項10】
各投与単位が、標準投与量のアセトアミノフェン及び少なくとも約1mgのN−アセチルシステインを含む、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
該治療剤が抗レトロウイルス剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗レトロウイルス剤がAZTである、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
哺乳類における治療剤の毒性効果を治療または防止する方法であって、薬学的に許容される賦形剤若しくは担体と共に、単独の毒性低減量のN−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体、または毒性軽減量のN−アセチルシステイン若しくはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と通常投与量の治療剤若しくは通常投与量より多量の治療剤との組み合わせを投与することを含む上記方法。
【請求項14】
少なくとも約1mgのN−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、非経口的に栄養を摂取している患者に投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤の治療有効量を、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与する、請求項13記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤の治療有効量を、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与する方法であって、該治療剤が酸化的ストレスを生じさせる、請求項13記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの抗生物質または抗ウイルス剤の治療有効量を、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与する方法であって、該治療剤が患者におけるシステイン/グルタチオンレベルを治療に関連した低下を生じさせる、請求項13記載の方法。
【請求項18】
該治療剤が抗レトロウイルス剤である、請求項13記載の方法。
【請求項19】
抗レトロウイルス剤がAZTである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
AZTが、毒性軽減量のN−アセチルシステインと連続的または組み合わせて、周産期に投与される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
AZTが、毒性軽減量のN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて、新生児期に投与される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
AZTが、毒性軽減量のN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて、HIVウイルスに対する暴露が疑わしいか若しくは既に知られている患者に投与される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物が、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与される請求項13記載の方法。
【請求項24】
治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物が、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与され、前記化合物が酸化的ストレスを生じさせる、請求項13記載の方法。
【請求項25】
治療有効量の少なくとも一つの鎮痛化合物、解熱化合物または他の治療化合物が、N−アセチルシステインまたはその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と組み合わせて投与され、前記化合物が患者におけるシステイン/グルタチオンレベルを治療に関連した低下を生じさせる請求項13記載の方法。
【請求項26】
該化合物がアセトアミノフェンである、請求項23記載の方法。
【請求項27】
アセトアミノフェンの標準投与量を、投与あたり少なくとも約1mgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、アセトアミノフェンに正常に応答する患者における熱または痛みを治療する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
アセトアミノフェンの標準投与量より多い量を、少なくとも約4mgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、アセトアミノフェンの標準投与に対し非応答性の熱を治療する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
アセトアミノフェンの標準投与量を、投与あたり少なくとも約1mgのN−アセチルシステインと連続的にまたは組み合わせて投与し、放射線造影剤に暴露される期間においてアセトアミノフェンを必要とする患者を治療する、請求項26記載の方法。

【公開番号】特開2011−225610(P2011−225610A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168224(P2011−168224)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【分割の表示】特願2002−576895(P2002−576895)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(503356989)バイオアドヴァンテックス ファーマ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】