説明

N−アリールカルバミン酸エステルとハロ−ヘテロアリールとを反応させることによるN−ヘテロアリール−N−アリール−アミンの調製のためのプロセスおよび類似のプロセス

本発明は、式(I)のジアリールアミン化合物またはその塩を生成するためのプロセスに関する。このプロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式(II)の化合物と式(III)のアミンとを結合させる工程を包含し、ここで:ArおよびArは、独立してQであり;各Qは、0〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の5〜8員環に必要に応じて縮合されたアリール環系またはヘテロアリール環系であり;Qは、請求項1で定義されるように必要に応じて置換され、ここで:Xは脱離基であり;そしてYは、−C(O)−O−Zであり;そしてZは、C〜C脂肪族、ベンジル、Fmoc、−SOR’およびQから選択され、ただし、Qは、Xまたはアルキンで置換されず;ここでR’は、請求項1で定義されるものである。
【化51】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ジアリールアミンおよびそのアナログの容易な合成のためのプロセスに関する。本発明のプロセスは、高収率かつ高純度でジアリールアミンを生成する。本発明はまた、本発明のプロセスにおいて有用な中間体に関する。本発明はまた、本発明のプロセスによって生成されたジアリールアミンに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
プロテインキナーゼは、細胞外シグナルに対する細胞の種々の応答に関与する。最近、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)のファミリーが発見された。このファミリーのメンバーは、リン酸化によってその基質を活性するSer/Thrキナーゼである[B.Steinら,Ann.Rep.Med.Chem.,31,pp.289−98(1996)]。MAPKは、成長因子、サイトカイン、UV照射およびストレス誘発性因子を含む種々のシグナルによって、それ自身が活性化される。
【0003】
一つの特に興味深いMAPKは、p38である。p38は、サイトカイン抑制性抗炎症薬結合タンパク質(cytokine suppressive anti−inflammatory drug binding protein)(CSBP)およびRKとしても知られており、リポ多糖(LPS)レセプターCD14でトランスフェクトされたマウスの前B細胞から単離され、そしてLPSによって誘導される。ヒトおよびマウスにおいてp38をコードするcDNAが単離されて配列決定されたように、その後p38は、単離され、配列決定された。p38の活性化は、ストレス(例えば、リポ多糖(LPS)処理、UV、アニソマイシンまたは浸透圧ショック)によってか、またはサイトカイン(例えば、IL−1およびTNF)によって刺激された細胞において観察されている。
【0004】
p38キナーゼの抑制は、IL−1およびTNFの両方の産生のブロックを引き起こす。IL−1およびTNFは、他の炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL−6およびIL−8)の産生を刺激し、そして急性および慢性の炎症性疾患ならびに閉経後の骨粗鬆症と関係している[R.B.Kimbleら,Endocrinol.,136,pp.3054−61(1995)]。
【0005】
この知見に基づいて、p38は、他のMAPKと一緒に、炎症性刺激に対する細胞応答(例えば、白血球蓄積、マクロファージ/単球活性化、組織再吸収、発熱、急性期反応および好中球増加)を媒介する役割を有すると考えられている。さらにMAPK(例えば、p38)は、癌、トロンビン誘発性血小板凝集、免疫不全障害、自己免疫疾患、細胞死、アレルギー、骨粗鬆症、および神経変性疾患に関係している。p38のインヒビターはまた、プロスタグランジンエンドペルオキサイドシンターゼ−2の誘導の阻害を通じた疼痛処理の分野に関係している。IL−1、IL−6、IL−8またはTNFの過剰産生に関連する他の疾患は、WO 96/21654に示される。
【0006】
MAPKを含む種々の標的に対して医学的に重要な特性を有する多くの分子としては、ジアリールアミンが挙げられる。この一例は、強力なp38 MAPキナーゼインヒビターとして同定された分子のクラスである(例えば、WO 99/58502およびWO 00/17175を参照のこと)。しかし、これらは薬物としては有効であるが、多量の副生成物を含まない分子を含有するアリールアミンを生成する方法は、ほとんど存在しない。アリールアミンとアリールハライドとのパラジウム触媒による結合は、ジアリールアミンを含有する分子を生成するための伝統的な方法であった。しかし、アリールハライドパートナーのアミンへの過剰添加に関する問題は、一級アリールアミンが利用される場合、伝統的に、低収率および低純度という結果をもたらしてきた。この理由のため、一級アミンは、この転換のために一般的に利用される基質ではなく、このことは、パラジウム触媒による結合反応の範囲を限定してきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高収率かつ高純度でジアリールアミンを得るための、過アリール化の問題を回避する、ジアリールアミンおよびそのアナログの容易な合成のためのプロセスに対する必要性が存在する。このようなプロセスによって生成される中間体に対する必要性も、また存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
一実施形態に従って、本発明は、過アリール化の問題を回避し、大規模調製に従うことができ、そして高収率を提供する、ジアリールアミンの容易な合成のためのプロセスを提供する。本発明はまた、スズ化合物のような有害な試薬の使用を回避する。具体的には、本発明は、窒素に対する適切な保護基を添加することによって、一級アリールアミンが一時的に「二級」となるプロセスを提供する。一旦形成された場合、この保護されたアニリン誘導体は、アリール脱離基とのアルカリ金属塩促進性架橋結合か、または遷移金属触媒性架橋結合を受けて、中間体を形成子、この中間体は、脱保護によって、ジアリールアミン基質を生成する。この生成物は、副産物がほとんどなく、そして高収率で生成される。
【0009】
本発明は、式(I)の化合物:
【0010】
【化23】

またはその塩を生成するためのプロセスを提供し、
ここで:
ArおよびArは、以下のように規定される。
【0011】
本発明のプロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で式(II)の化合物と式(III)のアミンとを結合させて、式(I)のジアリールアミンを得る工程を包含し、
【0012】
【化24】

ここで:
Ar、Ar、XおよびYは、以下のように規定される。
【0013】
本発明のプロセスは、過アリール化の問題なしに、一級アリールアミン誘導体からの式(I)の化合物の調製を可能にするという利点を有する。本発明のプロセスは、高収率かつ高純度での、加えて大規模調製のために容易にスケールアップされる容易な反応条件での、式(I)の化合物の調製を可能にするというさらなる利点を有する。
(発明の詳細な説明)
本発明は、先行技術の困難性および欠点を克服し、そして式(I)の化合物:
【0014】
【化25】

またはその塩の生成のためのプロセスを提供し、
ここで:
ArおよびArは、独立にQであり;
ここで、各Qは、一以上の環原子において、0〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の5〜8員環に必要に応じて縮合された、アリール環系またはヘテロアリール環系であり;
ここで、Qは、ハロ;C〜C脂肪族(必要に応じて、N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)、OC(O)N(R’)、NR’COR’、NR’C(O)R’、SON(R’)、N=CH−N(R’)もしくはOPOで置換される);C〜Cアルコキシ(必要に応じて、N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)、OC(O)N(R’)、SON(R’)、NR’COR’、NR’C(O)R’、N=CH−N(R’)、もしくはOPOで置換される);Ar;CF;OCF;OR’;SR’;SON(R’);OSOR’;SCF;NO;CN;N(R’);COR’;CON(R’);C(O)N(R’);NR’C(O)R’;NR’COR’;NR’C(O)C(O)R’;NR’SOR’;OC(O)R’;NR’C(O)R;NR’CO;NR’C(O)C(O)R;NR’C(O)N(R’);OC(O)N(R’);NR’SO;NR’R;N(R);OC(O)R;OPO;およびN=CH−N(R’)から独立に選択される一以上の置換基によって、必要に応じて置換され;
R’は、水素;C〜C脂肪族;または、ハロ、C〜Cアルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、およびC〜C脂肪族より選択される1〜3個の置換基によって必要に応じて置換された5〜6員の環状炭素系もしくは複素環式環系から選択され;
は、以下:N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)もしくはSON(R’)によって必要に応じて置換されたC〜C脂肪族;または以下:N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)もしくはSON(R’)によって必要に応じて置換された炭素環式環系もしくは複素環式環系であり;
ここで、Arは、0〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の5〜8員環に必要に応じて縮合されたアリール環系またはヘテロアリール環系であり;
ここで、Arは、以下:ハロ;C〜C脂肪族(必要に応じて、N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)、OC(O)N(R’)、NR’COR、NR’C(O)R’、SON(R’)、N=CH−N(R’)、もしくはOPOで置換される);C〜Cアルコキシ(必要に応じて、N(R’)、OR’、COR’、C(O)N(R’)、OC(O)N(R’)、SON(R’)、NR’COR’、NR’C(O)R’、N=CH−N(R’)、もしくはOPOで置換される);CF;OCF;OR’;SR’;SON(R’);OSOR’;SCF;NO;CN;N(R’);COR’;CON(R’);C(O)N(R’);NR’C(O)R’;NR’COR’;NR’C(O)C(O)R’;NR’SOR’;OC(O)R’;NR’C(O)R2;NR’COR;NR’C(O)C(O)R;NR’C(O)N(R’);OC(O)N(R’);NR’SO;NR’R;N(R;OC(O)R;OPO;およびN=CH−N(R’)から独立に選択される一以上の置換基によって、一以上の環原子において、必要に応じて置換される。
【0015】
好ましい実施形態において、ArおよびArは、必要に応じて置換された以下から独立に選択される:フェニル、ナフチル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、イソキノリニル、イソインドリル、アクリジニル、ベンゾイソキサゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、テトラゾリル、フラニル、イミジザオリル(imidizaolyl)、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピロリル、チアゾリル、トリアゾリル、およびチエニル。より好ましい実施形態において、ArおよびArは、必要に応じて置換されたフェニルおよびピリジルから独立に選択される。さらにより好ましい実施形態において、Arは、必要に応じて置換されたピリジルであり、そしてArは、必要に応じて置換されたフェニルである。
【0016】
本発明のプロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式(II)の化合物と式(III)のアミンとを結合させて、式(I)のジアリールアミンを得る工程を包含する:
【0017】
【化26】

ここで、
Xは、脱離基であり;そして、
Yは、−C(O)−O−Zであり;そして、
Zは、C〜C脂肪族、ベンジル、Fmoc、−SOR’およびQから選択され、ただし、Qは、Xまたはアルキンでは置換されず;ここで、Ar、Ar、QおよびR’は、上記の通りである。
【0018】
以下のスキーム1は、好ましい本発明のプロセスを示す:
【0019】
【化27】

ここでAr、Ar、XおよびYは、上記に規定される通りである。上記に図示した工程は、以下の通りであり得る。
【0020】
(工程1)
式(II)の化合物(適切な脱離基Xを有する)は、Y−NH−部分を有する式(III)の化合物とともに反応する。この反応は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸セシウム)の存在下;または、代わりに遷移金属触媒ならびに必要に応じて塩基および一以上のリガンドの存在下で行われる。
【0021】
一実施形態において、遷移金属触媒が使用される。使用され得る例示的な遷移金属触媒は、遷移金属イオンもしくは遷移金属原子、および適切なリガンドを含む。好ましくは、遷移金属触媒は、8族金属を含む。より好ましくは、遷移金属触媒は、パラジウムを含む。好ましい実施形態に従って、2つの異なるリガンドが、同時に工程1において使用される。
【0022】
好ましい実施形態に従って、遷移金属触媒と併せて、塩基が工程1において使用される。適切な塩基としては、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCOおよびCsCOが挙げられる。より好ましくは、この塩基は、KPOである。
【0023】
遷移金属触媒を使用する場合、工程1のための好ましい溶媒としてはトルエンおよび非極性非プロトン性溶媒(例えば、MTBE、DMEおよびヘキサン)が挙げられる。
【0024】
別の実施形態において、アルカリ金属塩は工程1に使用される。好ましくは、アルカリ金属塩は、セシウム塩である。
【0025】
アルカリ金属塩を使用する場合、工程1のための好ましい溶媒としては、極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)が挙げられる。
【0026】
(工程2)
工程2において、(IV)のラジカルYが除去されて、式(I)のジアリールアミンが生成される。
【0027】
好ましい実施形態において、酸(例えば、TFA、HCl、HBr、もしくはHI)が、工程2において使用される。より好ましくは、酸は、TFAである。
【0028】
工程2のための好ましい溶媒としては、塩素化溶媒(例えば、CHCl、1,2−ジクロロエタン、およびクロロベンゼン)が挙げられる。
【0029】
本発明のプロセスは、一級アリールアミン誘導体から、過アリール化の問題なしで、式(I)の化合物の調製を可能にするという利点を有する。本発明のプロセスは、高収率かつ高純度、およびラージスケールで、式(I)の化合物の調製を可能にするというさらなる利点を有する。
【0030】
(工程1の試薬)
本発明に適切な遷移金属触媒は、遷移金属原子もしくは遷移金属イオン、および一以上のリガンドを含む。この遷移金属は、0価〜遷移金属が利用可能な任意のより高い原子価の範囲に及ぶ、任意の適切な酸化状態で存在し得る。好ましい実施形態に従い、この遷移金属触媒は、8族金属を含む。より好ましくは、この遷移金属触媒は、パラジウムを含む。触媒錯体はとしては、キレート性リガンドとしては、ホスフィンおよびビホスフィン、イミン、アルシンならびにこれらのハイブリッドのアルキル誘導体ならびにアリール誘導体が挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0031】
より好ましくは、遷移金属触媒は、式PdLのパラジウム触媒であり、ここで、各Lは、Cl、−OAc、−O−トリル、ハロゲン、PPh、dppe、dppf、およびBINAPから独立に選択され;そしてnは、1〜4の整数である。前述の遷移金属触媒は、当該分野で公知の方法を用いて調製され得る。
【0032】
種々のリガンド転換は、本発明のプロセス全体を通じて生じ得る。このリガンドは、本発明のプロセス全体を通じて、遷移金属と結合し得るか、またはこのリガンドは、このプロセスの全部もしくは一部の間、遷移金属に対して不安定な立体配置であり得る。したがって、本明細書中で使用される場合、用語「遷移金属触媒」は、任意の遷移金属触媒、および/または反応容器中に導入される場合、触媒前駆体(これは、必要な場合、その場で反応に関与する活性形態の触媒に転換される)を包含する。
【0033】
本発明のプロセスにおいて使用されるべき遷移金属触媒の量は、ジアリールアミン生成物の形成を促進する任意の量である。好ましい実施形態に従って、この量は、触媒作用量であり、触媒は、アリール成分に対して化学量論的量より少ない量で使用される。別の好ましい実施形態において、この触媒は、非アミンアリール成分に対して、約0.01モル%〜約20モル%の範囲、より好ましくは、より好ましくは、約1モル%〜約10モル%の範囲、そしてさらにより好ましくは、約1モル%〜約5モル%の範囲で存在する。
【0034】
当業者は、本発明のプロセスにおいて使用される適切な溶媒を容易に選択し得る。溶媒は、所望のプロセスを促進するのに必要な任意の量で存在し得、そして必ずしも所望のプロセスの基質および/または試薬を溶解するための量である必要はない。本発明に従う溶媒は、ジアリールアミン生成物の形成を妨害しない。適切な溶媒の例としては、ハロゲン化溶媒、炭化水素溶媒、エーテル溶媒、プロトン性溶媒、および非プロトン性溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒の混合物もまた、本発明の範囲に包含される。遷移金属触媒を用いた本発明のプロセスの工程1のために有用な、好ましい溶媒としては、トルエン、ベンゼン、または非極性溶媒(例えば、MTBE、DME、もしくはヘキサン)が挙げられる。
【0035】
一実施形態に従って、この遷移金属触媒を用いた結合工程(工程1)は、塩基の存在下で生じる。適切な塩基の例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、金属炭酸塩、リン酸塩、アルカリ金属アリールオキシド、アルカリ金属アミド、三級アミン、ヒドロカルビル(hydrocarbyl)アンモニウム水酸化物、およびジアザ有機塩基が挙げられるが、これらに限定されない。使用される塩基の量は、ジアリールアミン生成物の形成を可能にする任意の量である。好ましい本発明の塩基としては、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCO、およびCsCOが挙げられる。
【0036】
本発明に適切なアルカリ金属塩としては、ナトリウムイオンの塩、カリウムイオンの塩、ルビジウムイオンの塩またはセシウムイオンの塩が挙げられる。好ましくは、本発明に適切なアルカリ金属塩としては、カリウムイオンの塩またはセシウムイオンの塩が挙げられる。好ましいアルカリ金属塩としては、炭酸塩、リン酸塩、およびアルコシキドの塩が挙げられる。より好ましい適切なアルカリ金属塩としては、炭酸カリウムおよび炭酸セシウムが挙げられる。最も好ましくは、アルカリ金属塩は、炭酸セシウムである。
【0037】
本発明のプロセスにおいて使用されるべき遷移金属触媒の量は、ジアリールアミン生成物の形成を促進する任意の量である。
【0038】
アルカリ金属塩を用いる本発明のプロセスの工程1のために有用な、好ましい溶媒としては、極性非プロトン性溶媒(例えば、NMP)が挙げられる。
【0039】
(工程2の試薬)
好ましい実施形態に従って、保護基除去工程(工程2)は、酸の存在下で起こる。適切な酸の例としては、HCl、HBr、HI、および有機酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびトリフルオロ酢酸を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい酸としては、HCl、HBr、HI、およびTFAが挙げられる。
【0040】
本発明のプロセスの工程2のために好ましい溶媒としては、塩素化溶媒(例えば、CHCl、1,2−ジクロロエタン、およびクロロベンゼン)が挙げられる。
【0041】
本発明の一実施形態において、Xは脱離基である。好ましい実施形態によると、Xは、Cl、Br、I、F、OTf、OTs、ヨードニウムおよびジアゾからなる群より選択される。
【0042】
本発明の一実施形態において、Yは、カルバメートアミン保護基である。好ましい実施形態によると、Yは、Bocである。
【0043】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、以下の定義が適用される。また、置換基の組み合わせは、このような組合せが安定化合物を生じる場合のみ、許容される。
【0044】
本明細書全体通じて使用される略語(化学式を含む)のいくつかは、以下である:
Boc=t−ブトキシカルボニル
Fmoc=フルオレンイルメトキシカルボニル
Tf=トリフルオロメタンスルホネート
Ts=p−トルエンスルホニル
Ms=メタンスルホニル
TFA=トリフルオロ酢酸
Ac=アセチル
dba=トランス,トランス−ジベンジリデンアセトン
dppe=1,2−ビス−(ジフェニルホスフィノ)エタン
dppf=1,1’−ビス−(ジフェニルホスファニル)フェロセン
dppp=プロパン−1,3−ジイルビス(ジフェニルホスファン)
BINAP=2,2’−ビス(ジフェニルホスファニル)−1,1’−ビナフチル
MTBE=メチルt−ブチルエーテル
DME=ジメトキシエタン
CDI=1,1’−カルボニル−ジイミダゾール
DCC=N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
EDC=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド
HOBt=N−ヒドロキシベンゾトリアゾール
NMP=N−メチルピロリジノン
DMF=ジメチルホルムアミド
MCPBA=m−クロロ過安息香酸
MMPP=モノ過酸化フタル酸マグネシウム六水和物
DIBAL−H=ジイソブチル水素化アルミニウム
LAH=水素化アルミニウムリチウム
過水素化物=トリエチル水素化ホウ素リチウム
L−セレクトリド=トリ−sec−ブチル水素化ホウ素リチウム
Red−Al=ビス(メトキシエトキシ)水酸化アルミニウムナトリウム
IPA=イソプロパノール
グリム(glyme)=ジメトキシエタン
ジグリム(diglyme)=ビス(2−メトキシエチル)エーテル。
【0045】
本明細書中で使用される場合、他に示されない限り、以下の定義が適用される。語句「必要に応じて置換された」は、語句「置換または非置換の」と相互交換可能に使用される。また、置換基の組み合わせは、このような組合せが化学的に安定な化合物を生じる場合のみ、許容される。さらに、他に示されない限り、官能基ラジカルは、独立に選択される。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「脱離基」は、当業者に公知の定義を有する(本明細書で参考として援用される、March、Advanced Organic Chemistry、第4版、John Wiley&Sons、pp.352−357、1992を参照のこと)。脱離基の例としては、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrおよびI)、ジアゾ、アリール−スルホニルオキシ基およびアルキル−スルホニルオキシ基、およびトリフルオロメタンスルホニルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「脂肪族」とは、完全に飽和しているかもしくは一以上の不飽和の単位を含有する、直鎖または分枝したC〜C12炭化水素鎖を意味する。用語「脂肪族」はまた、完全に飽和しているかもしくは一以上の不飽和の単位を含有する、しかし芳香族ではない、単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C12炭化水素を含み(上記環式炭化水素鎖はまた、本明細書において、「炭素環」または「シクロアルキル」と称される)、上記二環式環系中の任意の個々の環が3員〜7員を有する分子の残りに対して単一の結合点を有する。例えば、適切な脂肪族基としては、直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、およびそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
単独またはより大きな部分の一部として用いられる用語「アルキル」、「アルコキシ」、「ヒドロキシアルキル」、「アルコキシアルキル」、および「アルコキシカルボニル」としては、1〜12個の炭素原子を含む、直鎖および分枝鎖の両方が挙げられる。単独またはより大きな部分の一部として用いられる用語「アルケニル」および「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子を含む、直鎖および分枝鎖の両方であり、ここで、アルケニルは、少なくとも一以上の二重結合を含み、そしてアルキニルは、少なくとも一以上の三重結合を含む。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「化学的に安定」または「化学的に実現可能かつ安定」とは、当該分野で公知の方法による製造および哺乳動物への投与を可能にするのに十分に安定な化合物を与える化合物構造をいう。代表的に、このような化合物は、水分および他の化学的に反応性の条件のない状態で、少なくとも1週間、40℃以下の温度で安定である。
【0050】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、および「ハロアルコキシ」、とは、場合に応じて一以上のハロゲン原子で置換された、アルキル、アルケニル、またはアルコキシを意味する。用語「ハロゲン」は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0051】
用語「ヘテロ原子」とは、N、O、またはSを意味し、そして窒素および硫黄の任意の酸化形態、ならびに任意の塩基性窒素の四級化形態を含む。
【0052】
単独またはより大きな部分の一部として用いられる用語「アミン」または「アミノ」は、三価の窒素をいい、これは、一級であり得るか、または1〜2個の脂肪族基で置換され得る.
「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」におけるように、単独またはより大きな部分の一部として用いられる用語「アリール」とは、全部で5員〜14員を有する単環式、二環式、および三環式の炭素環式環系をいう。ここで、この系における少なくとも一つの環は、芳香族であり、そしてこの系の各環は、3〜8個の環員を含む。用語「アリール」は、用語「アリール環」と相互交換可能に使用され得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、5〜14の環員を有する、非芳香族の、単環式、二環式、または三環式の環系を意味し、ここで、この環員の一以上は、ヘテロ原子であり、この系の各環は、3〜7個の環員を含む。
【0054】
当業者は、安定で化学的に実現可能な複素環式環またはヘテロ芳香族環の最大数が、環の大きさ、不飽和度およびヘテロ原子の価数によって決定されることを認識する。一般的に、複素環式環またはヘテロ芳香族環は、この複素環式環またはヘテロ芳香族環が化学的に実現可能かつ安定である限り、1〜4個のヘテロ原子を有し得る。
【0055】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」におけるように、単独またはより大きな部分の一部として用いられる用語「ヘテロアリール」は、全部で5〜14個の環員を有する単環式、二環式および三環式の環系をいう。ここで、この系の少なくとも一つの環は、芳香族であり、この系の少なくとも一つの環は、一以上のヘテロ原子を含み、そしてこの系の各環は、3〜7個の環員を含む。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「ヘテロ芳香族」と相互交換可能に使用され得る。
【0056】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)、またはヘテロアリール基(ヘテロアリールアルキルおよびヘテロアリールアルコキシなどを含む)は、一以上の置換基を含み得る。アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基またはヘテロアラルキル基の不飽和炭素原子における適切な置換基は、以下より選択される:ハロゲン;ハロアルキル;−CF;−R;−OR;−SR、1,2−メチレンジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;保護されたOH(例えば、アシルオキシ);フェニル(Ph);Rで置換されたPh;−OPh;Rで置換された−OPh;−CHPh;Rで置換された−CHPh;−CHCH(Ph);Rで置換された−CHCH(Ph);−NO;CN;N(R;−NRC(O)R;−NRC(O)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRC(O)N(R;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(O)N(R;−OC(O)N(R;−SO;−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−C(=S)N(R;−C(=NH)−N(R;−(CHNHC(O)R;−(CH;−(CHNHC(O)NHR;−(CHNHC(O)OR;−(CHNHS(O)R;−(CHNHSO;もしくは−(CHNHC(O)CH(V−R)R;ここで、各Rは、水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環、フェニル(Ph)、−O−Ph、−CH(Ph)より独立に選択され;ここで、yは、0〜6であり;そしてVは、連結基である。RがC1〜6脂肪族である場合、Rは、以下:−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、−S(O)(C1〜4脂肪族)、−SO(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、−(C1〜4脂肪族)、−OH、−O−(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O−(ハロC1〜4脂肪族)、もしくは−ハロ(C1〜4脂肪族)から選択される一以上の置換基で置換され得;ここで、各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0057】
用語「連結基」または「リンカー」とは、1つの化合物の2つの部分を結合する有機部分を意味する。リンカーは、−O−、−S−、−NR−、−C(R−、−C(O)、またはアルキリデン鎖からなる。アルキリデン鎖は、飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分枝鎖の、必要に応じて置換されたC1〜6炭素鎖であり、そしてこの鎖の2つまでの非隣接の飽和炭素は、必要に応じて、以下:−C(O)−、−C(O)C(O)−、−C(O)NR−、−C(O)NRNR−、NRNR−、−NRC(O)−、−S−、−SO−、−SO−、−NR−、−SONR−、または−NRSO−によって置換され;ここで、Rは、水素または脂肪族から選択される。アルキリデン鎖上の任意の置換基は、脂肪族基に関して以下で記載されたとおりである。
【0058】
脂肪族基または非芳香族複素環式環は、一以上の置換基を含み得る。脂肪族基または非芳香族複素環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素に関して上記に列挙された基、および以下:=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NR、−OR、=NNHC(O)R、=NNHCO、=NNHSO、または=NRから選択される、ここで、各Rは、水素または必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族より独立に選択される。RがC1〜6脂肪族である場合、Rは、−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロゲン、−OH、−O−(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O−(ハロC1〜4脂肪族)、もしくは(ハロC1〜4脂肪族)より選択される一以上の置換基で置換され得る;ここで、各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0059】
非芳香族複素環式環の窒素における置換基は、以下:−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、もしくは−NRSORから選択され;ここで、各Rは、以下:水素、必要に応じて置換されたC1〜6脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル(Ph)、必要に応じて置換された−O−Ph、必要に応じて置換された−CH(Ph)、または非置換の5〜6員のヘテロアリールもしくは複素環式環より独立に選択される。RがC1〜6脂肪族基もしくはフェニル環である場合、Rは、以下:−NH、−NH(C1〜4脂肪族)、−N(C1〜4脂肪族)、ハロgen、−(C1〜4脂肪族)、−OH、−O−(C1〜4脂肪族)、−NO、−CN、−COH、−CO(C1〜4脂肪族)、−O−ハロ(C1〜4脂肪族)、もしくは(ハロC1〜4脂肪族)より選択される一以上の置換基で置換され得;ここで、各C1〜4脂肪族は、非置換である。
【0060】
スキーム2〜8は、スキーム1のプロセスの、ピリジニルアリールアミン誘導体の合成に対する適用を図示する。本発明に従って合成されるこれらのピリジニルジアリールアミンは、p38キナーゼの強力なインヒビターである化合物を生成するために、当業者に公知の方法に従ってさらに官能化され得る。
【0061】
【化28】

ここで、
は、C1〜6脂肪族;アリール;および、以下:C1〜6脂肪族、アリール、ニトロ、CN、COR’、CON(R’)、OR’、NCOR’、NR’C(O)N(R’)、またはOC(O)N(R’)で置換されたアリールから選択され;
ただし、Rは、t−ブチルではなく;
、G、G、G、およびGは、水素、脂肪族、アリール、置換アリール、ニトロ、CN、OR’、COR’、CON(R’)、NR’COR’、NR’C(O)N(R’)、OC(O)N(R’)、F、Cl、Br、I、O−Ts、O−Ms、OS0R’、およびOC(O)R’から独立に選択され;
Xは、脱離基であり;
Yは、−C(O)−O−Zであり;
Zは、C1〜6脂肪族、ベンジル、Fmoc、−SOR’またはQから選択され、ただし、Qは、Xまたはアルキンで置換されておらず;
ここで、QおよびR’は、上記で定義されるものである。
【0062】
スキーム2に図示された種々の工程は、以下のように記載される。
【0063】
工程1:出発物質21は、当該分野で公知の手順に従うクロロニコチン酸からの合成によって得られ得る(例えば、スキーム3を参照のこと)。この出発物質21は、溶媒(例えば、NMP)中で、アルカリ金属塩(例えば、炭酸セシウム)の存在下において、保護されたアリールアミン22と結合され(例えば、スキーム3を参照のこと);または代替的に、適合性溶媒(例えば、トルエン、MTBE、DME、またはヘキサン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム)、必要に応じてリガンド(例えば、BINAPもしくはdppe)、および必要に応じて塩基(例えば、リン酸カリウム)の存在下において結合されて、式23の保護された結合生成物を生じる。
【0064】
工程2:保護された結合生成物23は、適切な溶媒(例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、またはクロロベンゼン)中で、酸(例えば、TFA)と反応して、式24の化合物を生じる。
【0065】
スキーム3aは、出発物質21の合成を図示し、そしてスキーム3bは、スキーム2の脱保護された結合生成物24の、さらなる誘導体を例示する。
【0066】
【化29】

【0067】
【化30】

ここで、R、G、G、G、G、およびGは、上記スキーム2に示されるとおりである。
【0068】
スキーム3aおよびスキーム3bに図示された種々の工程は、以下に記載される。
【0069】
工程A:ニコチン酸誘導体31は、極性非プロトン性溶媒(例えば、CHCl、1,2−ジクロロエタン、DMF、またはNMP)中で、HOBtおよびN−ヒドロキシスクシニミドの存在下で、クロロホルメート活性化剤(例えば、SOCl、フェニルクロロホルメート、もしくはp−ニトロフェニルクロロホルメート)、またはカルボジイミド活性化剤(例えば、CDI、DCC、またはEDC)と反応し、そして加熱されることによって活性化される。式ROHのアルコールが添加されて、化合物32を形成する。
【0070】
工程B:化合物32は、溶媒(例えば、トルエン、MTBE、DME、またはヘキサン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム)、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、またはリチウムt−ブトキシド)の存在下で、ボロン酸(例えば、33)と結合して、34を生じる。
【0071】
工程C:次いで、結合生成物34は、塩素化溶媒(例えば、CHClまたは1,2−ジクロロエタン)中で、試薬(例えば、MCPBA、過酢酸、またはMMPP)の存在下で、N−オキシド化されて、35を生じる。
【0072】
工程D:N−オキシド35は、試薬(例えば、POCl、POBr、SOCl、SOCl、またはSOBr)の存在下で活性化されて、21を生じる。
【0073】
工程1および工程2は、上記スキーム2において示されるとおりである。
【0074】
工程E:24の遊離アミンは、活性化されたカルボニル(例えば、XC(O)X、ここで、XおよびXは、各々独立に、Cl、Br、I、イミダゾール、O−Ph、p−ニトロフェニルオキシ、置換O−アリール、または脱離基より選択される)と反応し、次いで、溶媒(例えば、トルエン、DME、またはMTBE)中で、このカルボニルを水酸化アンモニウムと反応させて36を形成することによって、誘導体化されて、対応する尿素を形成する。
【0075】
工程F:36のエステル官能基は、溶媒(例えば、THF、DME、MTBE、MeOH、EtOH、IPA、t−BuOH、グリム、またはジグリム)中で、還元剤(例えば、DIBAL、LAH、過水素化物、L−セレクチド、LiBH、NaBH(アニリド)、Red−Al、またはNaBH)の存在下で、対応するアルコールへと還元されて、37を形成する。
【0076】
工程G:37のアルコールは、例えば、XC(O)X(ここで、XおよびXは、上記工程Eに記載されるとおりである)により活性化し、次いで、カルボニルとOH(CHNHとを反応させて38を形成することによって、さらに官能化され得る。
【0077】
スキーム4〜7のプロセスは、特定の試薬および出発物質を用いて説明されたが、適切な類似の反応物および出発物質が類似の化合物を調製するために使用され得ることが、当業者によって理解される。
【0078】
スキーム4は、本発明の方法を用いて、ジアリールアミンを生成するための例を提供する。
【0079】
【化31】

スキーム4に図示される種々の工程は、以下のように簡単に記載され得る。
【0080】
工程1:6−クロロ−2−(4−フルオロフェニル)−ニコチン酸メチルエステル41は、2−クロロニコチン酸からの合成によって得られ得る(例えば、スキーム5を参照のこと)。41は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸セシウム)および溶媒(例えば、NMP)の存在下で、保護されたアリールアミン(例えば、Boc−2、6−ジフルオロアニリン42)と結合され(例えば、スキーム5を参照のこと);または代替的に、適合性溶媒(例えば、トルエン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム、必要に応じてリガンド(例えば、BINAP)、および必要に応じて塩基(例えば、リン酸カリウム)の存在下で結合されて、式43の保護された結合生成物を生じる。
【0081】
工程2:保護された結合生成物43は、適切な溶媒(例えば、塩化メチレン)中で、酸(例えば、TFA)と反応して、式44の化合物を生じる。
【0082】
より一般的には、当業者は、式44の化合物が、41aと42aとの反応によって生成され得ることを認識する。
【0083】
【化32】

ここで、XおよびYは、上記で示されるとおりである。
【0084】
スキーム5aは、出発物質41の合成を図示し、そしてスキーム5bは、スキーム4の脱保護された結合生成物44の、さらなる誘導体化を図示する。
【0085】
【化33】

【0086】
【化34】

スキーム5aおよびスキーム5bに図示された種々の工程は、以下に簡単に記載され得る。
【0087】
工程A:6−クロロニコチン酸51は、極性非プロトン性溶媒(例えば、CHCl、1,2−ジクロロエタン、DMF、またはNMP)中で、HOBtおよびN−ヒドロキシスクシニミドの存在下で、クロロホルメート活性化剤(例えば、SOCl、フェニルクロロホルメート、もしくはp−ニトロフェニルクロロホルメート)、またはカルボジイミド活性化剤(例えば、CDI、DCC、またはEDC)と反応し、そして加熱されることによって活性化される。次いで、アルコール(例えば、メタノール)が添加され、6−クロロニコチン酸メチルエステル52を形成する。
【0088】
工程B:化合物52は、溶媒(例えば、トルエン、MTBE、DME、またはヘキサン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム)、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、またはリチウムt−ブトキシド)の存在下で、ボロン酸(例えば、53)と結合して、54を生じる。
【0089】
工程C:次いで、結合生成物54は、塩素化溶媒(例えば、CHClまたは1,2−ジクロロエタン)中で、試薬(例えば、MCPBA、過酢酸、またはMMPP)の存在下で、N−オキシド化されて、55を生じる。
【0090】
工程D:活性化N−オキシド55は、試薬(例えば、POCl、POBr、SOCl、SOCl、またはSOBr)の存在下でハロゲン化されて、41を生じる。
【0091】
工程1および工程2は、上記スキーム4において示されるとおりである。
【0092】
工程E:44の遊離アミンは、活性化されたカルボニル(例えば、XC(O)X、ここで、XおよびXは、各々独立に、Cl、Br、I、イミダゾール、O−Ph、p−ニトロフェニルオキシ、置換O−アリール、または脱離基より選択される)と反応し、次いで、溶媒(例えば、トルエン、DME、またはMTBE)中で、このカルボニルを水酸化アンモニウムと反応させて56を形成することによって、誘導体化されて、対応する尿素を形成する。
【0093】
工程F:56のエステル官能基は、溶媒(例えば、THF、DME、MTBE、MeOH、EtOH、IPA、t−BuOH、グリム、またはジグリム)中で、還元剤(例えば、DIBAL、LAH、過水素化物、L−セレクチド、LiBH、NaBH(アニリド)、Red−Al、またはNaBH)の存在下で、対応するアルコールへと還元されて、57を形成する。
【0094】
工程G:57のアルコールは、例えば、XC(O)X(ここで、XおよびXは、上記工程Eに記載されるとおりである)と反応させ、次いで、カルボニルとOH(CHNHとを反応させて58を形成することによって、さらに官能化され得る。
【0095】
スキーム6は、本発明の方法を用いて、ジアリールアミンを生成するための例を提供する。
【0096】
【化35】

スキーム6に図示される種々の工程は、以下のように簡単に記載され得る。
【0097】
工程1:6−クロロ−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−ニコチン酸エチルエステル61は、2−クロロニコチン酸からの合成によって得られ得る(例えば、スキーム7を参照のこと)。61は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸セシウム)および溶媒(例えば、NMP)の存在下で、保護されたアリールアミン(例えば、Boc−2,6−ジフルオロアニリン42)と結合され(例えば、スキーム7を参照のこと);または代替的に、適合性溶媒(例えば、トルエン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム、必要に応じてリガンド(例えば、BINAP)、および必要に応じて塩基(例えば、リン酸カリウム)の存在下で結合されて、式62の保護された結合生成物を生じる。
【0098】
工程2:保護された結合生成物62は、適切な溶媒(例えば、塩化メチレン)中で、酸(例えば、TFA)と反応して、式63の化合物を生じる。
【0099】
より一般的には、当業者は、式63の化合物が、61aと42aとの反応によって生成され得ることを認識する。
【0100】
【化36】

ここで、XおよびYは、上記で示されるとおりである。
【0101】
スキーム7aは、出発物質61の合成を図示し、そしてスキーム7bは、スキーム6の脱保護された結合生成物63の、さらなる誘導体化を図示する。
【0102】
【化37】

【0103】
【化38】

スキーム7aおよびスキーム7bに図示された種々の工程は、以下に簡単に記載され得る。
【0104】
工程A:6−クロロニコチン酸51は、極性非プロトン性溶媒(例えば、CHCl、1,2−ジクロロエタン、DMF、またはNMP)中で、HOBtおよびN−ヒドロキシスクシニミドの存在下で、クロロホルメート活性化剤(例えば、SOCl、フェニルクロロホルメート、もしくはp−ニトロフェニルクロロホルメート)、またはカルボジイミド活性化剤(例えば、CDI、DCC、またはEDC)と反応し、そして加熱されることによって活性化される。次いで、アルコール(例えば、エタノール)が添加され、6−クロロニコチン酸エチルエステル71を形成する。
【0105】
工程B:化合物71は、溶媒(例えば、トルエン、MTBE、DME、またはヘキサン)中で、触媒(例えば、酢酸パラジウム)、塩基(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、またはリチウムt−ブトキシド)の存在下で、ボロン酸(例えば、72)と結合して、73を生じる。
【0106】
工程C:次いで、結合生成物73は、塩素化溶媒(例えば、CHClまたは1,2−ジクロロエタン)中で、試薬(例えば、MCPBA、過酢酸、またはMMPP)の存在下で、N−オキシド化されて、74を生じる。
【0107】
工程D:活性化N−オキシド74は、試薬(例えば、POCl、POBr、SOCl、SOCl、またはSOBr)の存在下でハロゲン化されて、61を生じる。
【0108】
工程1および工程2は、上記スキーム6において示されるとおりである。
【0109】
工程E:63のエステル官能基は、溶媒(例えば、THF)中で、塩基(例えば、NaOH)の存在下でけん化され、次いで酸(例えば、HCl)の存在下で酸性化されて、75を形成する。
【0110】
工程F:次いで、75は、ジホスゲン、続いてNHOHと反応して、アミド−尿素化合物76を形成する。
【0111】
【化39】

スキーム8に図示される種々の工程は、以下のように簡単に記載され得る。
【0112】
工程A:6−クロロ−2−(2,4−ジフルオロフェニル)−ニコチン酸エチルエステル61は、2−クロロニコチン酸からの合成によって得られ得る。出発物質61は、アルカリ金属塩(例えば、炭酸セシウム)および溶媒(例えば、NMP)の存在下で、保護されたアリールアミン(例えば、Boc−2、6−ジフルオロアニリン42)と結合されて、保護された結合生成物を生じる。次いで、この保護された結合生成物は、適切な溶媒(例えば、塩化メチレン)中で、酸(例えば、TFA)と反応して、式63の化合物を生じる。
【0113】
工程B:63のエステル官能基は、溶媒(例えば、THF)中で、塩基(例えば、NaOH)の存在下でけん化され、次いで酸(例えば、HCl)の存在下で酸性化されて、75を形成する。
【0114】
工程C:次いで、75は、ジホスゲン、続いてNHOHと反応して、アミド−尿素化合物76を形成する。
【0115】
以下の例は、本発明が実施される本発明の様式を説明するが、以下の例は、本発明のプロセスの全体的範囲における限定として解釈されるべきではない。
【0116】
適用可能であれば、他に示されない限り、以下のHPLC法を利用した。水:アセトニトリルの勾配、0.1%TFA(90:10→10:90→90:10)を26分にわたって1mL/分および254nmで流した。この方法には、Zorbax SBフェニル4.6×25cmカラム、5μmを利用した。用語「Tret」とは、化合物に関連する、保持時間(分)をいう。
【0117】
別の実施形態に従って、本発明の方法は、式(A)または式(B)の化合物:
【0118】
【化40】

を提供する。
ここで、
、X、X、およびXの各々は、フルオロまたはクロロから独立に選択され;そして、
Rは、Hまたはメチルである。
【0119】
式(A)および式(B)の化合物は、p38のインヒビターとして有用である。国際PCT公開WO 99/58502(本明細書において今後、「‘502公開」とする)は、その開示が本明細書において参考として援用され、式(A)および式(B)の化合物を包含する化合物の属を開示する。本発明の方法は、‘502公開の化合物を生成するために、容易に使用され得る。
【0120】
式(A)の好ましい実施形態によると、X、X、X、およびXの各々は、フルオロである。式(A)の別の好ましい実施形態によると、RはHである。
【0121】
式(B)の好ましい実施形態によると、X、X、およびXの各々は、フルオロである。式(B)の好ましい実施形態によると、RはHである。
【0122】
式(B)の最も好ましい実施形態によると、本発明の方法は、以下の化合物77を生成する。
【0123】
【化41】

【実施例】
【0124】
(実施例1)
【0125】
【化42】

2−クロロ−ニコチン酸メチルエステル(52):52を、Synth.Comm.26(12)、2257−2272(1996)の方法に従って調製した。窒素パージしたフラスコを、2−クロロ−ニコチン酸(1000.0g、6.0モル、1.0等量)、続いて9Lの塩化メチレンを充填した。これに、塩化チオニル(1.4L、19.7モル、3.2等量)を添加し、そして反応物を、窒素下で激しく攪拌しながら、一晩40℃に加熱した。この酸塩化物溶液を、氷浴で冷却し、そしてメタノール(3L、74モル、12等量)を、温度を20℃に保ちながらゆっくりと添加した。速度制限パラメータは、大量のHClガスの激しい放出である。この添加後、HPLC分析[Tret出発物質=7.5分、Tret52=11分]は、生成物が直ちに形成したことを示した。揮発物を減圧下で除去し、そして残留物を、EtOAcを含む10%NaCOから抽出した。混合された有機物を乾燥させ(MgSO)、濾過し、そして濃縮して淡黄色の油とした。
【0126】
(実施例2)
【0127】
【化43】

2−(4−フルオロ−フェニル)−ニコチン酸メチルエステル(54):窒素パージしたフラスコへ、Pd(Ph(1.84g、1.6マイクロモル、0.005等量)、炭酸ナトリウム(42.8g、404マイクロモル、1.3等量)、52(55.5g、320.6マイクロモル、1.0等量)、p−フルオロフェニルボロン酸(53.8g、384.7マイクロモル、1.2等量)、続いて1.3Lの変性EtOHを充填した。この反応物を、N下で激しく攪拌しながら、一晩78℃に加熱した。この反応混合物のHPLC分析[Tret52=10分、Tret54=12分]は、出発物質が完全に消費され、そして後れて溶出するピークを生じたことを示した。この反応物を室温に冷却し、そして減圧下で溶媒を除去した。残留物をEtOAcに溶解し、洗浄し、乾燥させ(MgSO)、セライトを通して濾過し、そして濃縮して、淡黄色の固体54を得た。
【0128】
(実施例3)
【0129】
【化44】

2−(4−フルオロ−フェニル)−1−オキシ−ニコチン酸メチルエステル(55):窒素パージしたフラスコへ、尿素水素過酸化物(86.9g、924マイクロモル、4.0等量)、ジアリールピリジン54(53.4g、231マイクロモル、1.0等量)、および530mLの酢酸を充填した。鮮黄色均質な溶液を、窒素下で激しく攪拌しながら、HPLC分析[Tret54=12分、Tret55=10分]が>97%完了を示すまで、70〜75℃に加熱した。この反応物を室温に冷却し、そしてこの内容物を500gの氷上にゆっくりと注いだ。激しく攪拌された氷の混合物に、温度を30℃に維持しながら、pH7まで6N NaOHをゆっくりと添加した。水溶液がpH8〜9に達するまでEtOAcおよびNaHCO(固体)を添加し、そしてこの固体を溶解させた。層を分離し、そして水層をEtOAcで逆抽出させた。混合した有機層を、5%NaHCOで洗浄し、次いで酸化剤の存在について過酸化物テストストリップによって試験した。この有機層が過酸について陽性であった場合、試験が陰性となるまで重炭酸塩洗浄を繰り返した。一旦過酸について陰性となれば、この混合した有機物を乾燥させ(MgSO)、濾過し、そして濃縮して、淡黄色の固体55とした。
【0130】
(実施例4)
【0131】
【化45】

6−クロロ−2−(4−フルオロ−フェニル)−ニコチン酸メチルエステル(41):窒素パージしたフラスコへ、N−オキシド55(45g、182マイクロモル、1.0等量)、続いて300mLのジクロロエタンを充填した。亜リン酸オキシクロリド(101mL、1080マイクロモル、6等量)を一度に添加し、このことは、直後の17℃から19℃への温度上昇と、続いてその後の緩やかな加温を引き起こした。この溶液を、HPLC分析[Tret55=10分、Tret41=17分]が>97%完了を示すまで、窒素下で70〜75度に加熱した。この反応物を室温に冷却し、そしてこの内容物を、減圧下で濃縮して、ほとんどのPOClを除去した。残留物を、450gの氷上にゆっくりと注ぐことでクエンチした。氷が溶けた後、この生成物を塩化メチレン中に抽出した。混合した有機物を、乾燥させ(MgSO)、シリカを通して濾過し、塩化メチレンで溶出し、そして濃縮して、固体41とした。
【0132】
(実施例5)
【0133】
【化46】

6−(2,6−ジフルオロ−フェニルアミノ)−2−(4−フルオロ−フェニル)−ニコチン酸メチルエステル(44):窒素パージしたフラスコへ、酢酸パラジウム(13.2g、59マイクロモル、0.04等量)、ラセミBINAP(36.6g、59マイクロモル、0.04等量)、続いて1.9Lのトルエンを充填した。この不均質なスラリーを、窒素化で、50℃で2時間加熱し、30℃に冷却し、次いで塩化ピリジル41(386.4g、1.45モル、1.0等量)およびBoc−2,6−ジフルオロアニリン42(386.4g、1.69モル、1.2等量)、ならびにKPO(872g、4.1モル、2.8等量)を一度に添加し、続いて1.9Lのトルエンでリンスした。この不均質な反応混合物を100℃で一晩加熱し、そしてHPLCによってモニタリングした。反応物が、HPLC[Tret41=17分、Tret43=20.5分、Tret44=17.6分、229nmでのモニタリング]により、43への完全な転換を示した場合(通常18〜20時間の間)、この反応物を室温に冷却し、そしてこの内容物を1.94LのEtOAcで希釈した。これに、1×1.94Lの6N HClを添加し、そして両層を、セライトを通して濾過した。セライトの湿ったケークを2×1.9LのEtOAcでリンスした。この層を分離し、そして有機層を1×1.9Lのブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、そして濃縮して、褐色の粘性の油とした。Boc−保護基を除去するため、この油を1.94Lの塩化メチレンに溶解し、そして388mLのTFAを添加した。この反応物を一晩攪拌し、Boc除去を促進した。揮発物を減圧下で除去し、pHが2〜7となるまでEtOAc(1.9L)および十分な量の1N NaOHまたは6N NaOHを添加した。次いで、十分な量の5%NaHCOを添加し、pHを8〜9とした。この有機層を分離し、そして1×5%NaHCOで洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、濃縮して、褐色の油/液体とした。この粗製油/液体を、十分な量のトルエンで二回共沸乾燥(azeodry)した。時には、遊離塩基が析出して、スラリーを生じた。残留物を、500mLのトルエンに溶解し、そして1.6Lの1N HCl/エーテル溶液を添加した。このことは、固体の破壊を引き起こした。均質化物/固体が粉砕するまで、熱を適用した。必要な場合、200mLのEtOAcを添加して、粉砕を促進し得る。冷却後、固体44を減圧濾過で単離した。
【0134】
(実施例6)
【0135】
【化47】

6−1−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−ウレイド]−2−(4−フルオロ−フェニル)−ニコチン酸メチルエステル(56):窒素パージしたフラスコへ、44のアミノエステルHCl塩(262g、0.67モル、1.0等量)、続いて1.2Lのトルエンを充填した。この不均質な混合物にホスゲン(1.4Lの1.93Mトルエン溶液、2.7モル、4.0等量)を添加し、そしてこの反応物を窒素化で、一晩50℃に加熱した。−NC(O)Cl部分を形成するこの反応の進行を、HPLC[Tret44=17.6分、Tretカルバモイル中間体=19.7分、Tret56=16.4分、229nmでのモニタリング]によりモニタリングした。一旦窒素が完全に反応した場合、この褐色の溶液をおよそ−5℃に冷却し、そしてNHOH(0.84L、12.4モル、18.5等量)をゆっくりと滴下した。添加が完了に近づくに従って、固体が形成された。このスラリーを、1Lの水とともに攪拌し、そして減圧濾過によって回収した。この湿ったケークを1×390mLのトルエンで洗浄し、後で溶出した不純物を除去した。
【0136】
(実施例7)
【0137】
【化48】

1−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−1−[6−(4−フルオロ−フェニル)−5−ヒドロキシメチル−ピリジン−2−イル]−尿素(57):窒素パージしたフラスコへ、尿素−エステル56(10.0g、24.92mmol、1.0等量)、続いて10mLのTHFを充填した。この混合物を、0〜5℃に冷却した。この冷却した溶液に、DIBAL−H/THF溶液(149.5mL、149.5mmol、6.0等量)を、20−30分にわたって滴下した。この混合物を、15〜20℃で攪拌する一方、HPLC[Tret56=16.4分、Tret57=14.0分、229nmでのモニタリング]によって反応の進行をモニタリングした。この反応混合物を、冷却した(5〜10℃)15%HSO水溶液(150mL)中へとクエンチした。このクエンチが完了した後、この混合物を、10〜15分間攪拌した。この混合物へ、TBME(150mL)を添加した。この混合物を、50℃で60分間加熱した。この混合物を、周囲温度に冷却し、そして水層を除去した。有機層を濃縮し、約35mLの残留量とした。次いで、希釈および濃縮のプロセスを繰り返した。残留混合物を0〜2℃に冷却し、45分間その温度に保った。リンス溶媒として冷トルエン(25mL)を用いて、吸引濾過により、灰色がかった白色(off−white)の固体57を回収した。この固体を、常温で3〜5時間減圧下で乾燥させて、80%の正収率を得た。
【0138】
(実施例8)
【0139】
【化49】

(2−ヒドロキシ−エチル)−カルバミン酸6−[1−(2,6−ジフルオロ−フェニル)−ウレイド]−2−(4−フルオロ−フェニル)−ピリジン−3−イルメチルエステル(58):窒素パージしたフラスコへ、ベンジリックアルコール57(7.1g、19.0マイクロモル、1.0等量)およびCDI(6.2g、38.0マイクロモル、2.0等量)、続いて71mLのTHFを充填した。この溶液を、室温で1〜2時間攪拌し、次いで乾燥アセトニトリル/過剰エタノールアミン中へと試験クエンチした。活性化が完了しなかった場合、試験クエンチが完全な転換を示すまで、追加のCDIが添加され得る。一旦試験クエンチが58への完全な転換を示した場合、2.0等量のエタノールアミン(0.64mL、38マイクロモル)をゆっくりと添加することによって、反応物をクエンチした。HPLC分析[Tret57=14.2分、Tret58=13.6分、229nmでのモニタリング]が、58への完全な転換を示した場合すぐに、この反応物を、室温で1〜2時間攪拌した。減圧下でTHFを除去し、そして残留物を71mLの酢酸エチルに溶解して、NHCl水溶液(2×71mL)で洗浄し、続いてブライン(1×71mL)で洗浄した。有機層を、EtOAc(2×71mL)とともに共沸乾燥させた。残留物を、71mLのEtOAcで再構成し、濾過し、そして再濃縮した。最終残留物に、7.1mLのEtOAcおよび63mLのトルエンを添加し、次いで35〜40℃に穏やかに加熱した。冷却により、白色の固体が形成し、これを、減圧濾過で単離し得、そして冷トルエンで洗浄し得た。
【0140】
(実施例9)
【0141】
【化50】

2−(2,4−ジフルオロフェニル)−6−(2,6−ジフルオロフェニルアミノ)−ニコチン酸エチルエステル(63):オーバーヘッド機械式スターラー、加熱マントル、灌流凝縮器、および熱電対を備えた、1L、4頚の、丸底フラスコ中に、61(50g)、CsCO(150g)および0.15LのNMPを充填した。この溶液を激しく攪拌して、65℃に加熱し、ここで、この懸濁液に、0.10LのNMP中の42(60g)の溶液を、10分間にわたって添加した。65℃で18時間加熱すると、HPLCは、所望のBoc付加物への、61の約85%の転換を示した。この時、温度を75℃に上げ、そしてさらなる18時間の加熱後のHPLC分析は、所望のBoc付加物62(示さず)への、61の約97%の転換を示した。次いで、この混合物を20に冷却し、オーバーヘッド機械式スターラーおよび熱電対を備える、4頚の、3L丸底フラスコ中で攪拌されている2.0Lの水に、一度に注いだ。NMP溶液の添加の結果として、水の温度は、22℃から27℃までに上昇した。次いで、この懸濁液を、15度に冷却し、黄褐色の固体を濾過によって回収し、水でリンスし、そしてフィルター上で2時間引いて乾燥させた。
【0142】
オーバーヘッド機械式スターラーおよび熱電対を備えた、2L、4頚の、丸底フラスコ中に、上記黄褐色の固体および0.8LのCHClを充填した。攪拌した溶液に、70mLのTFAを一度に加えた。周囲温度で2時間攪拌した後、Boc保護物質は、HPLCによって検出されず、そしてこの混合物をロータリーエバポレータによって濃縮した。油性の残留物を、0.7LのEtOAc中に溶解し、そして0.7Lの飽和NaHCOで処理した。この間、ガスが発生した。EtOAc層を、0.25Lの飽和NaClで洗浄し、そしてロータリーエバポレータによって濃縮した。得られた褐色の油に0.2LのEtOAcを添加し、そしてこの溶液を、EtO中のHCl(0.4Lの2.0M溶液)で処理し、60分間攪拌した。生成物63(黄色の粉)を、濾過によって回収した(収率70.5%)。
【0143】
粗製生成物1g当たり4mLのEtOH中でこの粗製塩を加熱して還流し、次いで周囲温度に冷却することによって、生成物を再結晶化させた。
【0144】
本明細書の上述において、本発明の多くの実施形態が提示されたが、本発明の方法を利用する他の実施形態を提供するために基本的構成が変更され得ることは、明らかである。したがって、本発明の範囲が、本明細書の上述において実施例によって提示された特定の実施形態ではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義されるべきことが、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

のジアリールアミン化合物またはその塩を生成するためのプロセスであって、
該プロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式(II)の化合物と式(III)のアミンとを結合させる工程を包含し:
【化2】

ここで:
ArおよびArは、独立してQであり;
各Qは、0〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の5〜8員環に必要に応じて縮合されたアリール環系またはヘテロアリール環系であり;
ここでQは、1つ以上の環原子において、ハロ;必要に応じて以下:
【化3】

で置換されるC〜C脂肪族;必要に応じて以下:
【化4】

で置換されるC〜Cアルコキシ;
【化5】

から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換され、
R’は、水素;C〜C脂肪族;または、ハロ、C〜Cアルコキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、およびC〜C脂肪族から独立して選択される1〜3個の置換基で必要に応じて置換される5〜6員の炭素環式環系もしくは複素環式環系から選択され;
は、必要に応じて以下:
【化6】

で置換されるC〜C脂肪族;または、必要に応じて以下:
【化7】

で置換される炭素環式環系または複素環式環系であり;
ここでArは、0〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の5〜8員環に必要に応じて縮合されたアリール環系またはヘテロアリール環系であり;
ここでArは、1つ以上の環原子において、ハロ;必要に応じて以下:
【化8】

で置換されるC〜C脂肪族;必要に応じて以下:
【化9】

で置換されるC〜Cアルコキシ;
【化10】

から独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて置換され;
Xは、脱離基であり;
Yは、−C(O)−O−Zであり;そして
Zは、C〜C脂肪族、ベンジル、Fmoc、−SOR’またはQであり、ただし、Qは、Xまたはアルキンで置換されない、
プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、該プロセスが、Y基を、前記結合されたアミンから脱離させて、式(I)の化合物を生成する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項3】
前記プロセスが、遷移金属触媒を使用して行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記遷移金属触媒が、パラジウムを含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスであって、前記触媒がPdLであり、ここで
各Lが、独立して、−OAc、−O−トリル、ハロゲン、PPh、dppe、dppf、dba、およびBINAPから選択され;そしてnが、0〜4の整数である、
プロセス。
【請求項6】
式(II)の化合物と式(III)のアミンとを結合させる工程が、塩基の存在下で行われる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記塩基が、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCO、およびCsCOから選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスが、アルカリ金属塩を使用して行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルカリ金属塩が、カリウムイオンの塩、ラジウムイオンの塩、またはセシウムイオンの塩から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルカリ金属塩が、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムから選択される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記アルカリ金属塩が、炭酸セシウムである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
Xが、−Cl、−Br、−I、−F、−OTf、−OTs、ヨードニウム、およびジアゾからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
YがBocである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
以下の式:
【化11】

のジアリールアミン化合物を生成するための請求項1に記載のプロセスであって、該プロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式21の化合物と式22のアミンとを結合させる工程を包含し:
【化12】

ここで:
は、脂肪族、アリール、または、以下:脂肪族、アリール、ニトロ、
【化13】

で置換されるアリールから選択され;
ただし、Rはt−ブチルではなく;そして
、G、G、G、およびGは、独立して、水素、脂肪族、アリール、置換アリール、ニトロ、
【化14】

から選択され;そして
XおよびYは、請求項1で定義されるものである、
プロセス。
【請求項15】
請求項14に記載のプロセスであって、該プロセスが、Y基を、前記結合されたアミンから脱離させて、式24の化合物を生成する工程をさらに包含する、プロセス。
【請求項16】
前記プロセスが、遷移金属触媒を使用して行われる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記遷移金属触媒が、パラジウムを含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
請求項17に記載のプロセスであって、前記触媒がPdLであり、ここで
各Lが、独立して、−OAc、−O−トリル、ハロゲン、PPh、dppe、dppf、dba、およびBINAPから選択され;そしてnが、0〜4の整数である、
プロセス。
【請求項19】
式21の化合物と式22のアミンとを結合させる工程が、塩基の存在下で行われる、請求項16に記載のプロセス。
【請求項20】
前記塩基が、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCO、およびCsCOから選択される、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記プロセスが、アルカリ金属塩を使用して行われる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項22】
前記アルカリ金属塩が、カリウムイオンの塩、ルビジウムイオンの塩、またはセシウムイオンの塩から選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記アルカリ金属塩が、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムから選択される、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記アルカリ金属塩が、炭酸セシウムである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
Xが、−Cl、−Br、−I、−F、−OTf、−OTs、ヨードニウム、およびジアゾからなる群より選択される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項26】
YがBocである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項27】
以下の式:
【化15】

のジアリールアミン化合物、またはその塩を生成するための請求項1に記載のプロセスであって、
該プロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式41aの化合物と式42aのアミンとを結合させる工程を包含し:
【化16】

ここで、XおよびYは、上の請求項1で定義されるものである、
プロセス。
【請求項28】
Y基を、前記結合されたアミンから脱離させて、式44の化合物を生成する工程をさらに包含する、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記プロセスが、遷移金属触媒を使用して行われる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項30】
前記遷移金属触媒が、パラジウムを含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
請求項30に記載のプロセスであって、前記触媒がPdLであり、ここで
各Lが、独立して、−OAc、−O−トリル、ハロゲン、PPh、dppe、dppf、dba、およびBINAPから選択され;そしてnが、0〜4の整数である、
プロセス。
【請求項32】
式41aの化合物と式42aのアミンとを結合させる工程が、塩基の存在下で行われる、請求項29に記載のプロセス。
【請求項33】
前記塩基が、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCO、およびCsCOから選択される、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
前記プロセスが、アルカリ金属塩を使用して行われる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項35】
前記アルカリ金属塩が、カリウムイオンの塩、ルビジウムイオンの塩、またはセシウムイオンの塩から選択される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記アルカリ金属塩が、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムから選択される、請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記アルカリ金属塩が、炭酸セシウムである、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
Xが、−Cl、−Br、−I、−F、−OTf、−OTs、ヨードニウム、およびジアゾからなる群より選択される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項39】
YがBocである、請求項27に記載のプロセス。
【請求項40】
以下の式:
【化17】

のジアリールアミン化合物、またはその塩を生成するための請求項1に記載のプロセスであって、
該プロセスは、アルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式61aの化合物と式42aのアミンとを結合させる工程を包含し:
【化18】

ここで、XおよびYは、上の請求項1で定義されるものである、
プロセス。
【請求項41】
Y基を、前記結合されたアミンから脱離させて、式63の化合物を生成する工程をさらに包含する、請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
前記プロセスが、遷移金属触媒を使用して行われる、請求項40に記載のプロセス。
【請求項43】
前記遷移金属触媒が、パラジウムを含む、請求項42に記載のプロセス。
【請求項44】
請求項43に記載のプロセスであって、前記触媒がPdLであり、ここで
各Lが、独立して、−OAc、−O−トリル、ハロゲン、PPh、dppe、dppf、dba、およびBINAPから選択され;そしてnが、0〜4の整数である、
プロセス。
【請求項45】
式61aの化合物と式42aのアミンとを結合させる工程が、塩基の存在下で行われる、請求項42に記載のプロセス。
【請求項46】
前記塩基が、KOtBu、NaOtBu、KPO、NaCO、およびCsCOから選択される、請求項45に記載のプロセス。
【請求項47】
前記プロセスが、アルカリ金属塩を使用して行われる、請求項40に記載のプロセス。
【請求項48】
前記アルカリ金属塩が、カリウムイオンの塩、ルビジウムイオンの塩、またはセシウムイオンの塩から選択される、請求項47に記載のプロセス。
【請求項49】
前記アルカリ金属塩が、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムから選択される、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
前記アルカリ金属塩が、炭酸セシウムである、請求項49に記載のプロセス。
【請求項51】
Xが、−Cl、−Br、−I、−F、−OTf、−OTs、ヨードニウム、およびジアゾからなる群より選択される、請求項40に記載のプロセス。
【請求項52】
YがBocである、請求項40に記載のプロセス。
【請求項53】
以下の式:
【化19】

のジアリールアミン化合物、またはその塩を生成するための請求項40に記載のプロセスであって、
該プロセスは、適切なアルカリ金属塩または遷移金属触媒の存在下で、式61の化合物および式42のアミン:
【化20】

を結合させる工程を包含する、プロセス。
【請求項54】
Boc基を、前記結合されたアミンから脱離させて、式63の化合物を生成する工程をさらに包含する、請求項53に記載のプロセス。
【請求項55】
前記プロセスが、炭酸セシウムを使用して行われる、請求項53または請求項54のいずれかに記載のプロセス。
【請求項56】
請求項54に記載のプロセスであって、該プロセスが、以下の工程:
(a)式63の化合物と塩基とを反応させる工程;および
(b)工程(a)において形成された反応混合物を酸性化し、式75の化合物:
【化21】

を生成する工程、
をさらに包含する、プロセス。
【請求項57】
工程(a)における前記塩基が、NaOHである、請求項56に記載のプロセス。
【請求項58】
工程(b)における前記酸が、HClである、請求項56に記載のプロセス。
【請求項59】
請求項56に記載のプロセスであって、該プロセスが、以下の工程:
(c)式75の化合物とジホスゲンとを反応させる工程;および
(d)工程(c)において形成された反応混合物をNHOHで処理し、式76の化合物:
【化22】

を生成する工程、
をさらに包含する、プロセス。

【公表番号】特表2006−517235(P2006−517235A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503471(P2006−503471)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/003933
【国際公開番号】WO2004/072038
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】