説明

N−アルキルピペラジン類の製造方法

【課題】一方のアミノ基を選択的にアルキル化し、高収率でN−アルキルピペラジン類を製造する方法の提供。
【解決手段】一般式(1)


[式中、R〜Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基等を表す。]で示されるピペラジン類と、特定のアルキル化剤とを酸存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アルキルピペラジン類をピペラジン類から製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピペラジン類は、有機合成用触媒、化学吸着剤、抗菌剤、医農薬中間体等として有用な化合物である。ピペラジン類は、アミノ基を2個有しているが、その一方だけをアルキルしたN−アルキルピペラジン類も極めて重要かつ有用な化合物であり、同様に有機合成用触媒、化学吸着剤、抗菌剤、医農薬中間体等として利用される。
【0003】
N−アルキルピペラジン類の合成法としては、ピペラジン類にアルキル化剤を求電子的に置換反応させる方法が一般的に知られている。
【0004】
しかしながら、ピペラジン類の一方のアミノ基だけを選択的に反応させることは難しく、ピペラジン類とアルキル化剤を当量付近で反応させると、ピペラジン類の両方のアミノ基ともアルキルされたN,N’−ジアルキルピペラジン類が大量に副生するといった問題があった。
【0005】
そこで、N−アルキルピペラジン類の選択的合成について多くの研究がなされている。例えば、ジエタノールアミンとエチルアミンをヘテロポリ酸の存在下にオートクレーブ中、高温・高圧下で反応させ、N−エチルピペラジンを得る方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、このような方法では、高温・高圧条件が必須であるため、危険であり、且つコスト的にも不利な高圧反応容器を用いる必要があり、工業的な実施には適していなかった。
【0007】
また、他の方法としては、例えば、ピペラジンとアルコールとを、活性アルミナ及びゼオライトからなる群から選択される少なくとも1種の存在下に反応させることを特徴とするN−アルキルピペラジン類の製造法(例えば、特許文献2参照)や、銅を含有する酸化物触媒系を用い、アルキレンアミンと炭素数2以上のアルキルアルコールとを反応させることにより、高い転化率及びN−モノアルキル化の選択率でN−モノアルキル置換アルキレンアミンを製造する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0008】
しかしながら、例えば、特許文献2に記載の方法は気相反応であるため、複雑な装置が必要となる。また、反応を300〜350℃といった高温で行うため、エネルギーを大量に消費する点でも工業的に不利である。
【0009】
また、例えば、特許文献3の方法においても、高温・高圧条件が必須であり、更に、水素ガスの使用が必要という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭58−35179号公報
【特許文献2】特開平6−172334号公報
【特許文献3】特開2005−41806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピペラジン類の一方のアミノ基を選択的にアルキル化し、選択的且つ高収率でN−アルキルピペラジン類を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、N−アルキルピペラジン類の製造方法について鋭意検討を重ねた結果、ピペラジン類をアルキル化剤と、酸存在下で反応させることにより、本発明の課題を解決できるという新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのN−アルキルピペラジン類の製造方法である。
【0014】
[1]下記一般式(1)
【0015】
【化1】

[上記式中、R〜Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表す。]
で示されるピペラジン類と、下記一般式(2)
【0016】
【化2】

[上記式中、Rは、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、2−ヒドロキシエチル基、炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、炭素数5〜8のアルコキシエチル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表し、Xはハロゲン原子、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を表す。]
で示されるアルキル化剤とを酸存在下で反応させることを特徴とするN−アルキルピペラジン類の製造方法。
【0017】
[2]ピペラジン類が、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,3,5,6−テトラメチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2−n−ブチルピペラジン、2−n−ペンチルピペラジン、2−n−ヘキシルピペラジン、2−n−ヘプチルピペラジン、2−n−オクチルピペラジン、2−i−プロピルピペラジン、2−i−ブチルピペラジン、2−sec−ブチルピペラジン、2−t−ブチルピペラジン、2−i−ペンチルピペラジン、2−sec−ペンチルピペラジン、2−t−ペンチルピペラジン、2−neo−ペンチルピペラジン、2−i−ヘキシルピペラジン、2−(2−エチルヘキシル)ピペラジン、2−シクロプロピルピペラジン、2−シクロブチルピペラジン、2−シクロペンチルピペラジン、2−シクロヘキシルピペラジン、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)エチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−メトキシピペラジン、2−エトキシピペラジン、2−フェニルピペラジン、2−ベンジルピペラジン、及び2−(2−フェニルエチル)ピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の製造方法。
【0018】
[3]アルキル化剤が下記一般式(2)示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の製造方法。
【0019】
[4]アルキル化剤が、ブロモメタン、ヨードメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、2−クロロプロパン、2−ブロモプロパン、2−ヨードプロパン、1−クロロブタン、1−ブロモブタン、1−ヨードブタン、2−クロロブタン、2−ブロモブタン、2−ヨードブタン、2−クロロ−2−メチルプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−ヨードペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−ヨードヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、ヨードシクロヘキサン、1−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、1−ヨードオクタン、1−クロロ−2−エチルヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ヨード−2−エチルヘキサン、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、2−ヨードエタノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−プロパノール、1−ヨード−2−プロパノール、3−クロロ−1−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ヨード−1−プロパノール、4−クロロ−1−ブタノール、4−ブロモ−1−ブタノール、4−ヨード−1−ブタノール、5−クロロ−1−ペンタノール、5−ブロモ−1−ペンタノール、5−ヨード−1−ペンタノール、6−クロロ−1−ヘキサノール、6−ブロモ−1−ヘキサノール、6−ヨード−1−ヘキサノール、1−クロロ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ヨード−2−ブタノール、1−クロロ−2−ペンタノール、1−ブロモ−2−ペンタノール、1−ヨード−2−ペンタノール、1−クロロ−2−ヘキサノール、1−ブロモ−2−ヘキサノール、1−ヨード−2−ヘキサノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−ヨード−1,2−プロパンジオール、4−クロロ−1,2−ブタンジオール、4−ブロモ−1,2−ブタンジオール、4−ヨード−1,2−ブタンジオール、5−クロロ−1,2−ペンタンジオール、5−ブロモ−1,2−ペンタンジオール、5−ヨード−1,2−ペンタンジオール、6−クロロ−1,2−ヘキサンジオール、6−ブロモ−1,2−ヘキサンジオール、6−ヨード−1,2−ヘキサンジオール、メトキシエチルクロライド、メトキシエチルブロマイド、メトキシエチルヨーダイド、エトキシエチルクロライド、エトキシエチルブロマイド、エトキシエチルヨーダイド、n−プロポキシエチルクロライド、n−プロポキシエチルブロマイド、n−プロポキシエチルヨーダイド、i−プロポキシエチルクロライド、i−プロポキシエチルブロマイド、i−プロポキシエチルヨーダイド、n−ブトキシエチルクロライド、n−ブトキシエチルブロマイド、n−ブトキシエチルヨーダイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、(2−クロロエチル)ベンゼン、(2−ブロモエチル)ベンゼン、及び(2−ヨードエチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
[5]アルキル化剤の使用量が、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
[6]酸が、硝酸、硫酸、次亜臭素酸、次亜塩素酸、亜硝酸、亜硫酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
[7]酸が、硝酸、硫酸、塩酸、ギ酸、及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法。
【0023】
[8]酸の使用量が、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲であることを特徴とする上記[1]乃至[7]のいずれかに記載の製造方法。
【0024】
[9]反応中、反応液のpHを5〜9の範囲に調整することを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれかに記載の製造方法。
【0025】
[10]反応を0〜100℃の範囲で行うことを特徴とする上記[1]乃至[9]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明は以下に示す効果を奏する。
(1)本発明の製造方法は、ピペラジン類の一方のアミノ基を選択的にアルキル化して、高収率でN−アルキルピペラジン類を製造することができ、工業的に有用な方法である。
(2)本発明の製造方法は、高温、高圧、低温、減圧等の特別な条件での操作が不要であり、省エネルギー、低コスト、低環境負荷を達成でき、安全性、操作性にも優れ、工業的に極めて有用である。
(3)本発明の製造方法は、原料が低価格で入手、若しくは製造することができるため、コスト性、生産性に優れる。
(4)本発明の製造方法は、水素を含む還元雰囲気を必要とせず、安全性に優れる。
(5)上記した特許文献1〜3に記載の方法では、原理的にヒドロキシル基を2つ以上有する化合物を原料として利用できないが、本発明の製造方法は、原料のアルキル化剤にヒドロキシル基を2つ以上有する化合物を用いることができるため、汎用性に優れる
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
本発明のN−アルキルピペラジン類の製造方法は、上記一般式(1)で示されるピペラジン類とアルキル化剤とを、酸存在下、反応させることをその特徴とする
本発明の製造方法において、原料となるピペラジン類は、上記一般式(1)で示されるピペラジン類であって、特に限定されない。
【0029】
上記一般式(1)におけるR〜Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表す。
【0030】
ここで、炭素数3〜8の直鎖状アルキル基としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。炭素数3〜8の分岐状アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜8の環式のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。ヒドロキシエチル基としては、例えば、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基等が挙げられる。ヒドロキシプロピル基としては、例えば、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。ジヒドロキシプロピル基としては、例えば、1,2−ジヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、1,3−ジヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)で示される化合物としては、特に限定するものではないが、具体的には、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,3,5,6−テトラメチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2−n−ブチルピペラジン、2−n−ペンチルピペラジン、2−n−ヘキシルピペラジン、2−n−ヘプチルピペラジン、2−n−オクチルピペラジン、2−i−プロピルピペラジン、2−i−ブチルピペラジン、2−sec−ブチルピペラジン、2−t−ブチルピペラジン、2−i−ペンチルピペラジン、2−sec−ペンチルピペラジン、2−t−ペンチルピペラジン、2−neo−ペンチルピペラジン、2−i−ヘキシルピペラジン、2−(2−エチルヘキシル)ピペラジン、2−シクロプロピルピペラジン、2−シクロブチルピペラジン、2−シクロペンチルピペラジン、2−シクロヘキシルピペラジン、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)エチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−メトキシピペラジン、2−エトキシピペラジン、2−フェニルピペラジン、2−ベンジルピペラジン、2−(2−フェニルエチル)ピペラジン等が例示される。
【0032】
本発明の製造方法において、本発明の趣旨に反しない程度であれば、上記一般式(1)で示されるピペラジン類に加えて、それ以外のピペラジン類を併用しても差し支えない。
【0033】
本発明の製造方法において、ピペラジン類は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。また、ピペラジン類の純度としては、特に限定はないが、精製工程での精製のし易さを考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0034】
本発明の製造方法において、アルキル化剤としては、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(2)で示される化合物からなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0035】
一般式(2)におけるRは、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、2−ヒドロキシエチル基、炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、炭素数5〜8のアルコキシエチル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表し、Xはハロゲン原子、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を表す。
【0036】
ここで、炭素数3〜8の直鎖状アルキル基としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。炭素数3〜8の分岐状アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜8の環式のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、7−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、8−ヒドロキシ−n−オクチル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、2−ヒドロキシ−n−ペンチル基、2−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、2−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、2−ヒドロキシ−n−オクチル基等が挙げられる。炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基としては、例えば、2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル基、2,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、3,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、2,5−ジヒドロキシ−n−ペンチル基、4,5−ジヒドロキシ−n−ペンチル基、2,6−ジヒドロキシ−n−ヘキシル、5,6−ジヒドロキシ−n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のアルコキシエチル基としては、例えば、n−プロポキシエチル基、i−プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、n−ペンタノキシエチル基、n−ヘキサノキシエチル基等が挙げられ、また、ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0037】
本発明の製造方法において、アルキル化剤としては、特に限定するものではないが、具体的には、ブロモメタン、ヨードメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、2−クロロプロパン、2−ブロモプロパン、2−ヨードプロパン、1−クロロブタン、1−ブロモブタン、1−ヨードブタン、2−クロロブタン、2−ブロモブタン、2−ヨードブタン、2−クロロ−2−メチルプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−ヨードペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−ヨードヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、ヨードシクロヘキサン、1−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、1−ヨードオクタン、1−クロロ−2−エチルヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ヨード−2−エチルヘキサン、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、2−ヨードエタノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−プロパノール、1−ヨード−2−プロパノール、3−クロロ−1−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ヨード−1−プロパノール、4−クロロ−1−ブタノール、4−ブロモ−1−ブタノール、4−ヨード−1−ブタノール、5−クロロ−1−ペンタノール、5−ブロモ−1−ペンタノール、5−ヨード−1−ペンタノール、6−クロロ−1−ヘキサノール、6−ブロモ−1−ヘキサノール、6−ヨード−1−ヘキサノール、1−クロロ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ヨード−2−ブタノール、1−クロロ−2−ペンタノール、1−ブロモ−2−ペンタノール、1−ヨード−2−ペンタノール、1−クロロ−2−ヘキサノール、1−ブロモ−2−ヘキサノール、1−ヨード−2−ヘキサノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−ヨード−1,2−プロパンジオール、4−クロロ−1,2−ブタンジオール、4−ブロモ−1,2−ブタンジオール、4−ヨード−1,2−ブタンジオール、5−クロロ−1,2−ペンタンジオール、5−ブロモ−1,2−ペンタンジオール、5−ヨード−1,2−ペンタンジオール、6−クロロ−1,2−ヘキサンジオール、6−ブロモ−1,2−ヘキサンジオール、6−ヨード−1,2−ヘキサンジオール、メトキシエチルクロライド、メトキシエチルブロマイド、メトキシエチルヨーダイド、エトキシエチルクロライド、エトキシエチルブロマイド、エトキシエチルヨーダイド、n−プロポキシエチルクロライド、n−プロポキシエチルブロマイド、n−プロポキシエチルヨーダイド、i−プロポキシエチルクロライド、i−プロポキシエチルブロマイド、i−プロポキシエチルヨーダイド、n−ブトキシエチルクロライド、n−ブトキシエチルブロマイド、n−ブトキシエチルヨーダイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、(2−クロロエチル)ベンゼン、(2−ブロモエチル)ベンゼン、(2−ヨードエチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0038】
本発明の製造方法において、本発明の趣旨に反しない程度であれば、上記した以外のアルキル化剤を使用しても差し支えない。
【0039】
本発明の製造方法において、アルキル化剤は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。また、アルキル化剤の純度としては、特に限定はないが、精製工程での精製のし易さを考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0040】
本発明の製造方法において、アルキル化剤の使用量は、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲が好ましく、反応性の面から、0.2〜1.5モルの範囲がさらに好ましく、0.5〜1モルの範囲が特に好ましい。この範囲内の場合、例えば、0.1モル以上とすることで、1バッチあたりの製造量が多くなり、釜効率が向上する。一方、2モル以下とすることで、N−アルキルピペラジン類の収量が向上する。
【0041】
また、アルキル化剤の添加方法としては、ピペラジン類を含む反応液に全量一挙に添加しても、少しずつ添加してもよいが、少しずつ添加した方が得られるN−アルキルピペラジン類の収量は増加する。
【0042】
本発明の製造方法において、用いられる酸としては、強酸、弱酸いずれを使用してもよく、特に限定するものではないが、強酸を使用した方がN−アルキルピペラジン類の収率は向上する。酸としては、例えば、硝酸、硫酸、次亜臭素酸、次亜塩素酸、亜硝酸、亜硫酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びフェノール等の有機酸が挙げられる。これらのうち、安価で入手も容易であることから、無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸が、有機酸としては、ギ酸、酢酸が好ましく用いられる。また、これらの酸は1種単独のみならず、必要に応じて、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
本発明の製造方法において、酸の使用量は、酸の種類により変動するため規定することは困難であるが、あえて規定すると、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲が好ましく、反応性の面から0.5〜1.5モルの範囲がさらに好ましい。この範囲内の場合、例えば、0.1モル以上とすることで、酸を添加した効果が十分に発揮される。一方、2モル以下とすることで、アルキル化の速度が向上する。
【0044】
本発明の製造方法において、その反応機構は必ずしも明らかではないが、アルキル化反応時に存在している酸がピペラジン類の一方のアミノ基をブロックし、そのことによりアルキル化剤がもう一方のアミノ基に反応することで、選択的にN−アルキルピペラジン類が高収率で得られるものと推定される。したがって、ピペラジン類の一方のアミノ基をブロックできる機能を有する酸であれば、特に制限無く、本発明の製造方法に用いることができるものと推測される。
【0045】
本発明の製造方法においては、反応中、反応液のpHを5〜9の範囲に調整することが好ましい。pHを5以上とすることで、反応時間が短縮され、pHを9以下とすることで選択性が向上する。
【0046】
pH調整の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、反応の最中に反応液に塩基を添加して行っても一向に差し支えない。塩基としては、アンモニア水、金属水酸化物、及び四級アンモニウム水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これらの中でも、安価で入手し易いことから、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。塩基としては市販されている高純度のものを使用することができるが、工業的に流通しているものを使用しても良い。
【0047】
本発明の製造方法において、ピペラジン類とアルキル化剤とを、酸存在下で反応させる際の反応温度としては、0〜100℃の範囲で実施することが好ましく、30〜90℃の範囲で実施することがさらに好ましい。0℃未満でも反応は進行するが、その進行速度が比較的遅くなることがあり、0℃未満に温度を下げる利点は少ない。また100℃を越える温度で反応させると、N−アルキルピペラジン類の選択率が低下するおそれがある。
【0048】
本発明の製造方法において、ピペラジン類とアルキル化剤とのアルキル化反応は、ピペラジン類を溶媒に溶かし、これにアルキル化剤を添加する方法で行うのが一般的である。
【0049】
溶媒としては、ピペラジン類、アルキル化剤、及び酸を溶解しうるものなら特に制限はない。具体的には、例えば、水、アルコール類、グリコール類、及びエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。ここで、アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ターピネオール等が挙げられる。グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらの中でも、経済性から、水、メタノールを使用するのが好ましい。
【0050】
本発明の製造方法において、アルキル化反応後は、一般に知られている方法で、N−アルキルピペラジン類を精製することができ、未反応の原料、溶媒は回収して再度使用してもよい。N−アルキルピペラジン類の精製方法を例示すると、苛性ソーダを加え、N−アルキルピペラジン類を多く含む層とそれ以外のものを多く含む層を分離し、その後N−アルキルピペラジン類を蒸留または貧溶媒を添加した後、結晶化、再結晶して得る方法、反応液中のN−アルキルピペラジン類の塩を中和し、フリーのN−アルキルピペラジン類を蒸留して分離精製する方法等があるが、どの方法を使用しても一向に差し支えない。
【0051】
以上のように、本発明の方法によりピペラジン類よりN−アルキルピペラジン類を製造することができる。このため、用いる目的に応じて反応原料のピペラジン類の構造を設定し、本発明の方法を用いることで一方のアミノ基を選択的にアルキル化し、対応するN−アルキルピペラジン類を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0053】
なお、本実施例における生成物の収率、選択率は、ガスクロマトグラフィーで確認した。
【0054】
ガスクロマトグラフィーには、ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−2014)、キャピラリーカラム(J&W Scientific社製 DB−5)、及び検出器(FID)を使用した。
【0055】
[実施例1]N−n−ブチルピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)とメタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸10.4g(0.1モル)を加えた後、内温を60℃とした。そこに、内温を60℃以下に保ちながら、1−クロロブタン13.8g(0.15モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま還流撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液42.4gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−n−ブチルピペラジンの収率は79.3%であり、選択率は、N−ブチルピペラジンが87.1%、N,N’−ジ−n−ブチルピペラジンが10.3%、不明分が2.6%であった。他の例と共に実施例1の結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸10.4g(0.1モル)を加えた後、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、2−ブロモエタノール8.7g(0.07モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液36.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの収率は84.6%であり、選択率は、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが88.5%、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが7.7%、不明分が3.8%であった。他の例と共に実施例2の結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]N−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸15.6g(0.15モル)を加えた後、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、3−クロロプロパノール5.7g(0.06モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液39.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジンの収率は67.9%であり、選択率は、N−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジンが84.3%、N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジンが15.6%、不明分が0.1%であった。他の例と共に実施例3の結果を表1に示す。
【0058】
[実施例4]N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸6.9g(0.066モル)を加えた後、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、3−クロロ−1,2−プロパンジオール5.6g(0.05モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液29.1gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの収率は91.0%であり、選択率は、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンが92.1%、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンが6.9%、不明分が1.0%であった。他の例と共に実施例4の結果を表1に示す。
【0059】
[実施例5]N−(2−メトキシエチル)ピペラジンの合成.
実施例2で2−ブロモエタノール8.7g(0.07モル)を使用した代りに、2−メトキシエチルクロライド3.8g(0.04モル)を使用した以外は全て実施例2と同様に反応を行った。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−メトキシエチル)ピペラジンの収率は70.1%であり、選択率は、N−(2−メトキシエチル)ピペラジンが83.4%、N,N’−ビス(2−メトキシエチル)ピペラジンが15.0%、不明分が1.6%であった。他の例と共に実施例5の結果を表1に示す。
【0060】
[実施例6]N−ベンジルピペラジンの合成.
実施例1で1−クロロブタン13.8g(0.15モル)を使用した代りに、ベンジルクロライド12.7g(0.10モル)を使用した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルピペラジンの収率は85.2%であり、選択率は、N−ベンジルピペラジンが91.2%、N,N’−ジベンジルピペラジンが7.4%、不明分が1.4%であった。他の例と共に実施例6の結果を表1に示す。
【0061】
[実施例7]N−n−ブチルピペラジンの合成(pH調整あり).
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)とメタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸10.4g(0.1モル)を加えた後、内温を60℃とした。そこに、内温を60℃以下に保ちながら、1−クロロブタン13.8g(0.15モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を2時間継続した。反応液のpHを測定したところ4.9であったため、25%NaOH水溶液6.1gを加え、pHを8.5とした。更に、内温を80℃に保ち、撹拌を2時間継続し、無色透明の反応液40.2gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−n−ブチルピペラジンの収率は81.1%であり、選択率は、N−n−ブチルピペラジンが90.6%、N,N’−ジ−n−ブチルピペラジンが9.1%、不明分が0.3%であった。他の例と共に実施例7の結果を表1に示す。
【0062】
[実施例8]N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの合成(pH調整あり).
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、撹拌しながら35%塩酸10.4g(0.1モル)を加えた後、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、2−ブロモエタノール8.7g(0.07モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を2時間継続した。反応液のpHを測定したところ4.2であったため、25%NaOH水溶液7.6gを加え、pHを8.5とした。更に、内温を80℃に保ち、撹拌を2時間継続し、無色透明の反応液36.2gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの収率は86.2%であり、選択率は、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが91.9%、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが6.7%、不明分が1.4%であった。他の例と共に実施例8の結果を表1に示す。
【0063】
[実施例9]N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの合成(pH調整あり).
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)を仕込み、撹拌しながら35%塩酸10.4g(0.1モル)を加えた後、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、3−クロロ−1,2−プロパンジオール5.6g(0.05モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を2時間継続した。反応液のpHを測定したところ4.8であったため、25%NaOH水溶液6.4gを加え、pHを8.7とした。更に、内温を80℃に保ち、撹拌を2時間継続し、無色透明の反応液30.2gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの収率は95.0%であり、選択率は、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンが96.8%、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンが2.9%、不明分が0.3%であった。他の例と共に実施例7の結果を表1に示す。
【0064】
[比較例1]N−n−ブチルピペラジンの合成(酸添加無し).
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、1−クロロブタン13.8g(0.15モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液31.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−n−ブチルピペラジンの収率は40.6%であり、選択率は、N−n−ブチルピペラジンが69.9%、N,N’−ジ−n−ブチルピペラジンが29.7%、不明分が0.3%であった。他の例と共に比較例1の結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2]N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの合成(酸添加無し).
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン8.6g(0.1モル)、メタノール10.4gを仕込み、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、2−ブロモエタノール8.7g(0.07モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続し、無色透明の反応液26.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの収率は41.2%であり、選択率は、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが68.6%、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが29.4%、不明分が2.0%であった。他の例と共に比較例2の結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

表1から明らかなとおり、実施例1〜実施例9と比較例1〜比較例2とを比較すると、酸を添加した場合、N−アルキル体の収率、選択率が共に向上した。
【0067】
また、実施例1、2、4と実施例7、8、9と比較すると、pH調整を行った場合、N−アルキル体の収率、選択率が共に向上し、更に反応時間が半分程度に短縮された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[上記式中、R〜Rは各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ジヒドロキシプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表す。]
で示されるピペラジン類と、下記一般式(2)
【化2】

[上記式中、Rは、メチル基、エチル基、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、2−ヒドロキシエチル基、炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、炭素数5〜8のアルコキシエチル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表し、Xはハロゲン原子、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、又はパラトルエンスルホニル基を表す。]
で示されるアルキル化剤とを酸存在下で反応させることを特徴とするN−アルキルピペラジン類の製造方法。
【請求項2】
ピペラジン類が、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,3−ジメチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,3,5,6−テトラメチルピペラジン、2−エチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2−n−ブチルピペラジン、2−n−ペンチルピペラジン、2−n−ヘキシルピペラジン、2−n−ヘプチルピペラジン、2−n−オクチルピペラジン、2−i−プロピルピペラジン、2−i−ブチルピペラジン、2−sec−ブチルピペラジン、2−t−ブチルピペラジン、2−i−ペンチルピペラジン、2−sec−ペンチルピペラジン、2−t−ペンチルピペラジン、2−neo−ペンチルピペラジン、2−i−ヘキシルピペラジン、2−(2−エチルヘキシル)ピペラジン、2−シクロプロピルピペラジン、2−シクロブチルピペラジン、2−シクロペンチルピペラジン、2−シクロヘキシルピペラジン、2−ヒドロキシメチルピペラジン、2−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシエチル)エチルピペラジン、2−(3−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(2−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、2−(2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−(1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、2−メトキシピペラジン、2−エトキシピペラジン、2−フェニルピペラジン、2−ベンジルピペラジン、及び2−(2−フェニルエチル)ピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルキル化剤が下記一般式(2)示される化合物の少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
アルキル化剤が、ブロモメタン、ヨードメタン、クロロエタン、ブロモエタン、ヨードエタン、1−クロロプロパン、1−ブロモプロパン、1−ヨードプロパン、2−クロロプロパン、2−ブロモプロパン、2−ヨードプロパン、1−クロロブタン、1−ブロモブタン、1−ヨードブタン、2−クロロブタン、2−ブロモブタン、2−ヨードブタン、2−クロロ−2−メチルプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、2−ヨード−2−メチルプロパン、1−クロロペンタン、1−ブロモペンタン、1−ヨードペンタン、1−クロロヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−ヨードヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、ヨードシクロヘキサン、1−クロロオクタン、1−ブロモオクタン、1−ヨードオクタン、1−クロロ−2−エチルヘキサン、1−ブロモ−2−エチルヘキサン、1−ヨード−2−エチルヘキサン、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、2−ヨードエタノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−プロパノール、1−ヨード−2−プロパノール、3−クロロ−1−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ヨード−1−プロパノール、4−クロロ−1−ブタノール、4−ブロモ−1−ブタノール、4−ヨード−1−ブタノール、5−クロロ−1−ペンタノール、5−ブロモ−1−ペンタノール、5−ヨード−1−ペンタノール、6−クロロ−1−ヘキサノール、6−ブロモ−1−ヘキサノール、6−ヨード−1−ヘキサノール、1−クロロ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ヨード−2−ブタノール、1−クロロ−2−ペンタノール、1−ブロモ−2−ペンタノール、1−ヨード−2−ペンタノール、1−クロロ−2−ヘキサノール、1−ブロモ−2−ヘキサノール、1−ヨード−2−ヘキサノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、3−ヨード−1,2−プロパンジオール、4−クロロ−1,2−ブタンジオール、4−ブロモ−1,2−ブタンジオール、4−ヨード−1,2−ブタンジオール、5−クロロ−1,2−ペンタンジオール、5−ブロモ−1,2−ペンタンジオール、5−ヨード−1,2−ペンタンジオール、6−クロロ−1,2−ヘキサンジオール、6−ブロモ−1,2−ヘキサンジオール、6−ヨード−1,2−ヘキサンジオール、メトキシエチルクロライド、メトキシエチルブロマイド、メトキシエチルヨーダイド、エトキシエチルクロライド、エトキシエチルブロマイド、エトキシエチルヨーダイド、n−プロポキシエチルクロライド、n−プロポキシエチルブロマイド、n−プロポキシエチルヨーダイド、i−プロポキシエチルクロライド、i−プロポキシエチルブロマイド、i−プロポキシエチルヨーダイド、n−ブトキシエチルクロライド、n−ブトキシエチルブロマイド、n−ブトキシエチルヨーダイド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、(2−クロロエチル)ベンゼン、(2−ブロモエチル)ベンゼン、及び(2−ヨードエチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
アルキル化剤の使用量が、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
酸が、硝酸、硫酸、次亜臭素酸、次亜塩素酸、亜硝酸、亜硫酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
酸が、硝酸、硫酸、塩酸、ギ酸、及び酢酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
酸の使用量が、ピペラジン類1モルに対し、0.1〜2モルの範囲であることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
反応中、反応液のpHを5〜9の範囲に調整することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
反応を0〜100℃の範囲で行うことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の製造方法。