説明

N−アルキルボラジンおよびその製造方法

【課題】 N−アルキルボラジンに含まれるN−アルキルシクロボラザンやボロンエーテル化合物を除去する手段を提供する。
【解決手段】 N−アルキルボラジンを蒸留精製する段階と、N−アルキルボラジン中に析出した化合物を濾過により除去する段階とを含む、純度99.9質量%以上のN−アルキルボラジンの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アルキルボラジンおよびその製造方法に関する。N−アルキルボラジンは、例えば、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層を形成するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
情報機器の高性能化に伴い、LSIのデザインルールは、年々微細になっている。微細なデザインルールのLSI製造においては、LSIを構成する材料も高性能で、微細なLSI上でも機能を果たすものでなければならない。
【0003】
例えば、LSI中の層間絶縁膜に用いられる材料に関していえば、高い誘電率は信号遅延の原因となる。微細なLSIにおいては、この信号遅延の影響が特に大きい。このため、層間絶縁膜として用いられ得る、新たな低誘電材料の開発が所望されていた。また、層間絶縁膜として使用されるためには、誘電率が低いだけでなく、耐湿性、耐熱性、機械的強度などの特性にも優れている必要がある。
【0004】
かような要望に応えるものとして、分子内にボラジン環骨格を有するボラジン化合物が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。ボラジン環骨格を有するボラジン化合物は分子分極率が小さいため、形成される被膜は低誘電率である。その上、形成される被膜は、耐熱性にも優れる。
【特許文献1】特開2000−340689号公報
【特許文献2】特開2003−119289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ボラジン化合物の1つとして、ボラジン環を構成する窒素原子がアルキル基と結合しているN−アルキルボラジンがある。N−アルキルボラジンは、それ自体が半導体用層間絶縁膜などの原料として用いられうる。また、他のボラジン化合物を製造する際の中間体ともなる。例えば、N−アルキルボラジンのホウ素に結合している水素原子をアルキル基で置換することによって、ヘキサアルキルボラジンが製造される。
【0006】
ところが、N−アルキルボラジン中には、N−アルキルボラジンの合成反応において副生するN−アルキルシクロボラザンや溶媒中の微量成分により生成するボロンエーテル化合物が含まれる。層間絶縁膜などの精密機器への適用を考慮すると、不純物として含まれるこれらの化合物の含有量を極めて微量にまで低減させることが好ましい。しかしながら、N−アルキルボラジンに含まれるこれらの不純物は、蒸留などの通常行われる精製方法によって十分に除去することができなかった。参考までに、N−アルキルボラジンおよびN−アルキルシクロボラザンの構造を以下に示す。なお、式中Rはアルキル基を示す。
【0007】
【化1】

【0008】
そこで、本発明の目的は、N−アルキルボラジンに含まれるN−アルキルシクロボラザンやボロンエーテル化合物を除去する手段を提供することである。また本発明の目的は、純度が非常に高いN−アルキルボラジンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の総含有量が0.1質量%以下である、N−アルキルボラジンである。
【0010】
また本発明は、N−アルキルボラジンを蒸留精製する段階と、N−アルキルボラジン中に析出した化合物を濾過により除去する段階とを含む、純度99.9質量%以上のN−アルキルボラジンの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の含有量が非常に少ないN−アルキルボラジンが得られる。N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の含有量が少ないN−アルキルボラジンを用いることにより、N−アルキルボラジンを用いて製造される層間絶縁膜などの特性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明のN−アルキルボラジンの製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、N−アルキルボラジンを精製し、含まれるN−アルキルシクロボラザンまたはボロンエーテル化合物が除去される。精製されるN−アルキルボラジンの入手経路については、特に限定されない。市販のN−アルキルボラジンを入手して、このN−アルキルボラジンの精製により、高純度のN−アルキルボラジンを製造してもよい。N−アルキルボラジンを合成により得てもよい。
【0013】
N−アルキルボラジンは、ABHで表される水素化ホウ素アルカリと、RNHXで表されるアルキルアミン塩とを、溶媒中で反応させることによって、合成されうる。
【0014】
水素化ホウ素アルカリ(ABH)において、Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である。水素化ホウ素アルカリの例としては、水素化ホウ素ナトリウムや水素化ホウ素リチウムが挙げられる。
【0015】
アルキルアミン塩(RNHX)において、Rはアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。Rは、同一であっても異なっていてもよい。合成反応の収率や取り扱いの容易性を考慮すると、Rは好ましくは同一のアルキル基である。アルキル基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。アルキル基の有する炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜4個、さらに好ましくは1個である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。これら以外のアルキル基が用いられてもよい。アルキルアミン塩の例としては、モノメチルアミン塩酸塩(CHNHCl)、モノエチルアミン塩酸塩(CHCHNHCl)、モノメチルアミンシュウ酸塩(CHNHBr)、モノエチルアミンフッ酸塩(CHCHNHF)が挙げられる。
【0016】
N−アルキルボラジンは、下記式で表される化合物である。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、Rは、アルキルアミン塩について記載した通りであるため、ここでは説明を省略する。N−アルキルボラジンの例としては、N,N’,N”−トリメチルボラジン、N,N’,N”−トリエチルボラジン、N,N’,N”−トリ(n−プロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(iso−プロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(sec−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(iso−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(tert−ブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(2−メチルブチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(neo−ペンチル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1,2−ジメチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(1−エチルプロピル)ボラジン、N,N’,N”−トリ(n−ヘキシル)ボラジン、N,N’,N”−トリシクロヘキシルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−エチルボラジン、N,N’−ジエチル−N”−メチルボラジン、N,N’−ジメチル−N”−プロピルボラジンなどが挙げられる。
【0019】
使用する水素化ホウ素アルカリおよびアルキルアミン塩は、合成するN−アルキルボラジンの構造に応じて選択すればよい。例えば、ボラジン環を構成する窒素原子にメチル基が結合しているN−メチルボラジンを製造する場合には、アルキルアミン塩として、モノメチルアミン塩酸塩などの、Rがメチル基であるアルキルアミン塩を用いればよい。
【0020】
水素化ホウ素アルカリとアルキルアミンとの反応は、溶媒中で進行させうる。その際に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、モノエチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)が挙げられる。
【0021】
水素化ホウ素アルカリとアルキルアミン塩との混合比は、特に限定されないが、アルキルアミン塩の使用量を1モルとした場合に、水素化ホウ素アルカリの使用量を1〜1.5モルとすることが好ましい。
【0022】
溶媒の使用量についても、特に限定されない。原料や生成物の溶解度や溶媒の取り扱い易さなどに応じて、溶媒の使用量を選択するとよい。好ましくは、アルキルアミン塩に対して、3〜15倍の量の溶媒が用いられる。
【0023】
水素化ホウ素アルカリとアルキルアミン塩との反応条件は、特に限定されない。反応温度は、好ましくは20〜250℃、より好ましくは50〜240℃、さらに好ましくは100〜230℃である。上記範囲で反応させることによって、水素発生量を制御しやすくなる。反応温度は、K熱電対などの温度センサーを用いて測定されうる。
【0024】
N−アルキルボラジンを得たら、N−アルキルボラジンを精製し、N−アルキルボラジン中に含まれるN−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物を除去する。N−アルキルシクロボラザンの生成経路については、定かではないが、N−アルキルシクロボラザンはN−アルキルシクロボラザン生成の中間体であると考えられる。N−アルキルシクロボラザンの脱水素によってN−アルキルボラジンが生成するが、一部のN−アルキルシクロボラザンが残存すると考えられる。また、原料中の微量成分によって、ボロンエーテル化合物が生成する。ただし、これは、反応機構の推定であり、本発明の技術的範囲が、上記メカニズムによって生成したN−アルキルシクロボラザンまたはボロンエーテル化合物によって限定されるわけではない。
【0025】
N−アルキルボラジンの精製方法としては、蒸留精製と濾過とを組み合わせることが好ましい。通常行われる精製方法を用いた場合、N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の濃度は、半導体材料に用いることが可能なレベルにまで低下しないが、本発明で規定されるように、蒸留精製と濾過とを組み合わせることによって、N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物を非常に低い濃度にまで除去することが可能である。
【0026】
精製工程においては、まず、N−アルキルボラジンを蒸留精製する。蒸留精製とは、液体を熱して気体を発生させ、その気体を冷却して液化させる作業を通じて、不純物を分離する精製法である。
【0027】
蒸留精製装置の大きさや種類は、環境や規模に応じて決定されればよい。例えば、大量のN−アルキルボラジンを処理するのであれば、工業的規模の蒸留塔が用いられうる。少量のN−アルキルボラジンを処理するのであれば、蒸留管を用いた蒸留精製が用いられうる。例えば、少量のN−アルキルボラジンを処理する蒸留装置の具体例としては、3つ口フラスコにクライゼン型の連結管でリービッヒ冷却管を取り付けた蒸留装置が用いられうる。ただし、このような蒸留装置を用いる実施形態に、本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
【0028】
蒸留条件については、特に限定されない。目的とするボラジン化合物に応じて、常圧蒸留や減圧蒸留などの手法を選択すればよい。蒸留温度は、好ましくは130〜180℃、より好ましくは140〜160℃である。蒸留圧力は、好ましくは0.6kPa〜1.0kPa、より好ましくは0.8kPa〜1.0kPaである。
【0029】
蒸留精製は、場合によっては、2回以上行ってもよい。蒸留精製を2回以上行ったり、多段蒸留塔を用いたりして、蒸留精製を経た段階でのN−アルキルシクロボラザン含有量および/またはボロンエーテル化合物含有量を減らすことによって、半導体材料に適した材料となる。
【0030】
N−アルキルボラジン中においてN−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物が析出したら、N−アルキルボラジン中に析出したN−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物を濾過により除去する。N−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物の析出は、蒸留精製の過程で、留出物が冷却される際に生じる。必要であれば、別途、N−アルキルシクロボラジンを含む留出物を冷却する工程を設けてもよい。N−アルキルシクロボラザンまたはボロンエーテル化合物の一方のみが析出する場合には、析出した化合物が濾過により除去される。双方が濾過により除去されてもよい。蒸留精製によるN−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物の除去量には限界があるが、N−アルキルボラジン中においてN−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物を析出させて、濾過により除去することによって、N−アルキルシクロボラザンおよび/またはボロンエーテル化合物の含有量が極めて低いN−アルキルボラジンを得ることができる。
【0031】
濾過の条件は、特に限定されない。環境や規模に応じて、常圧濾過、加圧濾過、減圧濾過などの手法を選択すればよい。濾紙の種類も、特に限定されず、環境や規模に応じて、濾紙、濾過板、カートリッジフィルターなどを用いればよい。また、濾紙の材質についても、特に限定されないが、合成するボラジン化合物の反応性を考慮すると、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製やグラスファイバー製の濾紙等を用いることが好ましい。濾過材の孔径は、析出物の量や大きさに応じて決定すればよい。段階的に濾過材の孔径を小さくしていってもよい。濾過材の孔径は、好ましくは0.8〜0.05μm、より好ましくは0.5〜0.05μmである。
【0032】
本発明において提供されるN−アルキルボラジンは、N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の総含有量が、好ましくは0.1%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。なお、2種以上のN−アルキルシクロボラザンまたはボロンエーテル化合物が含まれる場合には、含有量とはそれらの全ての合計を意味する。N−アルキルシクロボラザンの含有量は、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下である。また、ボロンエーテル化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下である。N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の含有量が少ないほど、N−アルキルボラジンを半導体用層間絶縁膜などの高純度が要求される用途に適しているといえる。
【0033】
N−アルキルボラジン中のN−アルキルシクロボラザンの含有量およびボロンエーテル化合物の量は、ガスクロマトグラフィーなどの公知の分析装置を用いて算出することができる。なお、分析装置によって数値に有意差が生じる場合には、実施例において記載する測定方法を用いて得られた数値を、本発明における含有量とする。
【0034】
純度の点から好ましいN−アルキルボラジンを規定すると、蒸留精製および濾過によって得られるN−アルキルボラジンは、好ましくは、純度が99.9質量%以上であり、より好ましくは99.99質量%以上である。本発明によって、このような高純度のN−アルキルボラジンを製造することが可能であり、高純度のN−アルキルボラジンを用いることにより、半導体素子などの製品の品質を向上させることが可能である。
【0035】
製造されたN−アルキルボラジンは、特に限定されないが、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層、エッチストッパー層などの形成に用いられうる。その際には、N−アルキルボラジンが用いられてもよいし、N−アルキルボラジンに改変を加えた化合物が用いられてもよい。N−アルキルボラジンまたはN−アルキルボラジンの誘導体を重合させた重合体を、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層の原料として用いてもよい。
【0036】
続いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成する方法について説明する。なお、以下の説明においては、「N−アルキルボラジン」、「N−アルキルボラジンの誘導体」および「これらに起因する重合体」をまとめて、「ボラジン環含有化合物」と称する。
【0037】
ボラジン環含有化合物を用いて、半導体用層間絶縁膜、バリアメタル層またはエッチストッパー層を形成するには、ボラジン環含有化合物を含む溶液状またはスラリー状の組成物を調製し、これを塗布することによって、塗膜を形成する手法が用いられうる。その際に用いられる、ボラジン環含有化合物を溶解または分散させる溶媒は、ボラジン環含有化合物や、必要に応じて添加される他の成分を溶解し得るものであれば特に制限されない。溶媒としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジグライム、テトラグライムなどが用いられ得る。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。スピンコーティングを用いて成膜する場合には、ジグライムが好ましい。ジグライムまたはその誘導体を溶媒として用いると、製造される膜の均一性が向上する。また、膜の白濁が防止されうる。ボラジン環含有化合物を溶解または分散させる溶媒の使用量は、特に制限されるべきものではなく、低誘電材料の製造手段に応じて決定すればよい。例えば、スピンコーティングにより成膜する場合には、スピンコーティングに適した粘度になるよう、溶媒および溶媒量を決定すればよい。
【0038】
ボラジン環含有化合物を含む組成物は、所望する部位に供給され、乾燥されて、固化する。例えば、半導体用層間絶縁膜を形成するには、スピンコーティングにより、基板上に塗布し、乾燥させればよい。一度のコーティングおよび乾燥では所望する厚さの被膜が得られない場合には、コーティングおよび乾燥を、所望の厚さになるまで繰り返しても良い。スピンコーターの回転数、乾燥温度および乾燥時間などの成膜条件は、特に限定されない。
【0039】
基板への塗布は、スピンコーティング以外の手法を用いてもよい。例えば、スプレーコーティング、ディップコーティングなどが用いられ得る。
【0040】
その後、塗膜を乾燥する。塗膜の乾燥温度は、通常、100〜250℃程度である。ここでいう乾燥温度とは、乾燥処理をする際の温度の最高温度を意味する。例えば、乾燥温度を徐々に上昇させ、100℃で30分維持し、その後、冷却した場合の乾燥温度は100℃である。焼成温度は熱電対を用いて測定されうる。塗膜の乾燥時間については、特に限定されない。得られる低誘電材料についての、誘電率、耐湿性等の特性を考慮して、適宜決定すればよい。
【実施例】
【0041】
(合成例1)
コンデンサーを備えた4L反応容器に、アルキルアミン塩としてメチルアミン塩酸塩335g、溶媒としてトリグライム1000gを投入し、100℃まで昇温した。昇温後、水素化ホウ素アルカリである水素化ホウ素ナトリウム210gをトリグライム1000gに加えて調製したスラリーを、90分かけて添加した。スラリー添加後、反応溶液を200℃まで昇温し、2時間熟成して、N,N’,N”−トリメチルボラジン(TMB)を生成させた。熟成後、コンデンサーを取り外し、クライゼン連結管およびリービッヒ冷却管を取り付け、蒸留によりTMBを取り出した。
【0042】
(実施例1)
合成例1で得たTMB150gを、クライゼン連結管およびリービッヒ冷却管を備えた500mlフラスコに入れ、常圧において、蒸留温度155〜160℃で蒸留を行い、留出温度130〜133℃の留分を分取した。分取した成分を、さらに再度、同様に常圧蒸留し精製した。
【0043】
蒸留精製後、0.45μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて減圧濾過した。ろ液成分をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−14B;日立製カラムUltraALLOY(8H))により分析したところ、TMB以外の成分として、ボロンエーテル化合物0.02質量%が確認された。N−アルキルシクロボラザンの量は、検出限界以下であった。
【0044】
(比較例1)
合成例1で得たTMBを、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−14B;日立製カラムUltraALLOY(8H))により分析したところ、TMB以外の成分として、N−アルキルシクロボラザン0.2質量%、ボロンエーテル化合物0.2質量%が確認された。
【0045】
【表1】

【0046】
表に示すように、蒸留精製の後に濾過を行うことによって、N−アルキルボラジンに含まれる不純物を効果的に除去可能なことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アルキルシクロボラザンおよびボロンエーテル化合物の総含有量が0.1質量%以下である、N−アルキルボラジン。
【請求項2】
N−アルキルボラジンを蒸留精製する段階と、
N−アルキルボラジン中に析出した化合物を濾過により除去する段階と、
を含む、純度99.9質量%以上のN−アルキルボラジンの製造方法。
【請求項3】
N−アルキルボラジンは、ABH(Aは、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子である)で表される水素化ホウ素アルカリと、RNHX(Rはアルキル基であり、Xはハロゲン原子である)で表されるアルキルアミン塩とを、溶媒中で反応させて合成される、請求項2に記載のN−アルキルボラジンの製造方法。

【公開番号】特開2006−213642(P2006−213642A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28068(P2005−28068)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】