説明

N−カルボン酸アミドの製造方法

式I(式中、RおよびRはHまたはC〜C−アルキルを示す)の化合物を、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンでドープされた固体材料の存在下で、減圧下で、330〜750℃の温度で、シアン化水素を分解しながら熱分解し、冷却し、分離し、かつ反応生成物を単離することによって、N−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法に関し、その際、管型反応器中に配置された固体材料を、0〜250℃の範囲の温度で、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の溶液で処理し、この溶液を排出し、このようにして得られる触媒に付着した残りの溶剤を蒸発させ、かつ触媒を引き続いての活性化のために少なくとも380℃の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
【化1】

[式中、
RおよびRはHまたはC〜C−アルキルを示す]
の化合物を、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンでドープされた固体材料の存在下で、減圧下で、330〜750℃の温度で、シアン化水素を分解しながら熱分解し、冷却し、分離し、かつ反応生成物を単離することによって、N−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法に関する。
【0002】
DE-C 1 224 304から、式Iの化合物を250〜750℃の温度で、常圧または減圧下で、管型反応器中で、シアン化水素を分解しながら熱分解し、冷却し、分離し、かつ、反応生成物を単離することによって、N−ビニルカルボン酸アミド、たとえばN−ビニルホルムアミドまたはN−ビニルアセトアミドを製造する方法が知られている。管型反応器は、反応表面を拡大するために、固体、たとえば石英粉、ガラス、鉄、炭化ケイ素、フッ化アルミニウム、コークス、リン酸カルシウムまたはアルミナを含有する。反応による生じるシアン化水素は、ビニルカルボン酸アミドの分離後に凝縮させる。
【0003】
EP-A 0 184 694から、シアン化水素と塩基またはカルボニル化合物との反応生成物を製造する方法が知られており、その際、シアン化水素は、ホルムアミドまたは1−アミノ−1−シアノエタンのN−アシル誘導体またはその置換生成物を、250〜650℃の温度で、触媒としての固体材料上で、5〜200mbarの圧力で熱分解することによって製造される。熱分解ガスは、減圧下で、200〜−10℃の範囲の温度で冷却する。これに関して、熱分解の際に形成されたモノマーおよび場合によっては未変換の出発物質を凝縮する。凝縮物は、わずかな量のみのシアン化水素を含有している。シアン化水素の主要量は、減圧下で、塩基またはカルボニル化合物により化学吸着され、かつ凝縮生成物の形で放出され、かつ雰囲気圧に放圧する。この方法により、多量のシアン化水素の取り扱いが回避される。
【0004】
EP-A 0 184 074から、N−ビニルホルムアミドを製造する方法が知られており、その際、ホルミルアラニンニトリルは、触媒としての固体材料の存在下で、減圧下で、250〜650℃の範囲で熱分解する。触媒として、前記DE-C 1 224 304で示す固体材料を使用することができ、かつ、アルカリ金属炭酸塩およびアルカリ土類金属炭酸塩、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、ならびに特にα−酸化アルミニウム上のアルカリ金属炭酸塩またはアルカル土類金属炭酸塩である触媒を含むことができる。これら触媒は、α−酸化アルミニウムを水溶性の塩、たとえば酢酸カルシウムで浸漬し、かつ熱処理を行うことによって製造される。熱分解生成物は、本質的にN−ビニルホルミアミド、シアン化水素およびわずかな量の未変換ホルミルアラニンニトリルからなる。10〜150mbarの圧力で、200℃〜−10℃の温度で冷却し、その結果、N−ビニルホルムアミドとシアン化水素への本質的な分離が生じ、モノマーを凝縮物から単離し、かつ未凝縮のシアン化水素を5〜140mbarの圧力で、おおよそのモル比で、アセトアルデヒドでの化学吸着を−20〜30℃の温度で、混合酸ニトリルを形成しながら行い、かつ雰囲気での圧力調節後に単離する。この方法で同様に、多量の遊離シアン化水素の形成を回避され、それというのも危険なしに取り扱うことが可能な生成物に直接変換されるためである。
【0005】
熱分解よるN−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法を実際に行う際には、増加した製造時間による、反応率および選択率の低下が生じる。さらに、触媒は交換されるか、あるいは再活性化されなければならない。管型反応器により、触媒の交換は、顕著なコストを引き起こし、それというのも、このような反応器は、極めて多くの、大抵は数100個の管を有し、したがってこれを空にして、再度装填しなければならないためである。触媒の取り付けおよび取り外しの際には、さらに常に触媒の機械的破損が考慮される。触媒から炭素含有堆積物を除去するために、触媒をさらに反応器内部で酸素含有ガスを用いて高い温度で処理することができる。しかしながらそれによって何度でも触媒の完全な効果を再度製造することができるわけではない。したがって、触媒を取り外し、かつこれを反応器外部で、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基での処理によって再活性化し、かつ熱処理を行うことは、むしろ不可欠である。
【0006】
本発明は、熱分解によるN−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法を提供する課題に基づくものであって、その際、触媒の活性化および再活性化は、熱分解を実施する反応器中で実施することができる。
【0007】
本発明の課題は、式I
【化2】

[式中、
RおよびRはHまたはC〜C−アルキルを示す]の化合物を、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンでドープされた固体材料の存在下で、減圧下で、330〜750℃の温度で、シアン化水素を分解しながら熱分解し、冷却し、分離し、かつ反応生成物を単離することによって、N−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法により解決され、この際、管型反応器中に配置された固体材料を、0〜250℃の範囲の温度で、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の溶液で処理し、この溶液を排出し、このようにして得られる触媒に付着した残りの溶剤を蒸発させ、かつ触媒を引き続いて活性化のために少なくとも380℃の温度に加熱する。
【0008】
式Iの化合物は、たとえば技術水準に関して挙げられたEP-A 0 184 694から知られている(第2欄、第40行〜第3欄、第23行参照)。好ましくは、式Iの化合物として、ホルミルアラニンニトリル(式I中、R=HおよびR=H)を使用し、これを熱分解することによってN−ビニルホルムアミドを製造する。さらに、N−ビニルアセトアミドを製造するために、R=Hであり、R=CHである式Iの化合物、N−ビニルプロピルアミドを製造するために、R=Hであり、R=Cである式Iの化合物、N−ビニル−N−メチルホルムアミドを製造するために、R=CHであり、R=Hである式Iの化合物、およびN−ビニル−N−メチルアセトアミドを製造するために、R=CHであり、かつR=CHである式Iの化合物が重要である。
【0009】
熱分解は、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンでドープされた固体材料の存在下で実施する。適した固体材料は、たとえばDE-C 1 224 304中で、第2欄、第16行〜24行ならびにEP-A 0 184 074中、第1欄、第52行〜66行に記載されている。たとえば、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、活性炭、リン酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタンおよび酸化アルミニウムが適している。特に好ましくは使用される固体材料は、α−酸化アルミニウムである。基本的に、触媒のための担体材料としてすべての多孔性固体材料が適している。固体材料は、例えばロープ、球、管、成形体または小板の形で、管型反応器中に配置される。
【0010】
管型反応器は、単一の管から構成されるか、あるいは複数個の管から構成されていてもよい。このような反応器は、たとえば1〜35000個の管、大抵は5〜10000個の管、特に最大3000個まで、またはさらに5000個までの管を備えていてもよく、その際、管直径は0.3〜25cmの範囲、大抵は1〜14cmの範囲で可変であってもよい。管型反応器は、電気的に、過熱された水蒸気、再利用ガス(Kreisgas)または循環ガス(Waelzgas)を用いて、あるいは塩浴を用いて加熱することができる。
【0011】
固体材料は、可能な限りわずかな機械的要求がなされることから、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基での処理は、管型反応器中への固体材料の取り付け後にはじめて実施される。このため、固体材料は、0〜250℃の範囲で、アルカリ金属塩基および/またはアルカル土類金属塩基の溶液と接触する。好ましくは、これに関して水性溶液を使用する。しかしながらさらに、塩基のための溶剤として、水と混和可能な生成物、たとえばジメチルホルミアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、アルコキシ化アルコール、アルコキシ化アミンならびにこれら相互の混合物または水との混合物を使用することができる。アルキレングリコールに関する例は、エチレングリコール、プロピレングリコール−1,2、プロピレングリコール−1,3、ブチレングリコール−1,2、ブチレングリコール−1,4およびネオペンチルグリコールである。他の適した溶剤は、たとえばポリアルキレングリコール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールならびに多価アルコール、たとえばプロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリトリットまたはトリメチロールプロパンのエトキシル化生成物である。エトキシル化度は、特に、生じるエトキシ化生成物が、50mbarの圧力でせいぜい350℃の沸点を有するように選択される。反応器に配置された触媒が、溶剤の沸点を上回る温度を示す場合には、塩基溶液での触媒の処理は、高められた圧力で実施する。この際、この圧力は、たとえば、その都度の温度により調整した圧力である。特に、触媒の処理は、10〜80℃の温度で、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の水性溶液で、雰囲気圧下で実施する。
【0012】
アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基として、たとえばアルカル金属およびアルカル土類金属のすべての水溶性の塩および塩基を考慮することができ、たとえば特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸バリウム、酢酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウムである。反応器中の固体材料を処理する水性溶液は、たとえば塩基または塩を少なくとも5質量%からそれぞれの飽和濃度まで有する。水性処理溶液中の塩基または塩の濃度は、少なくとも1〜50質量%、特に30〜45質量%である。
【0013】
アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の溶液での固体材料の処理後に、溶液を排出する。その後に、反応器中で処理された固体材料に付着している残りの溶剤を蒸発させ、かつこの方法で、触媒として、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基でドープされた多孔性担体が得られる。高沸点溶剤、たとえばグリコールまたはポリアルキレングリコールは、溶剤の排出後なおも触媒を湿らせているものであって、特に270℃までの温度で、減圧下で、たとえば10〜100mbarで触媒を加熱することによって除去する。
【0014】
管型反応器中に装入された固体材料は、特に炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水性溶液を用いて処理する。特に好ましくは使用された触媒は、α−酸化アルミニウムを、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水性溶液を用いて処理することによって製造する。含浸された固体材料の乾燥は、最初にたとえば、不活性ガス流を反応器中に導き、かつ不活性ガス流の温度を連続的または段階的に上昇させることによって実施する。しかしながらさらに反応器を外部から加熱し、かつさらに不活性ガス流を触媒充填体中に導くことができる。不活性ガスとして、たとえば過熱された水蒸気、空気または窒素を考慮することができる。触媒をアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基の水性溶液を用いて処理する場合には、先ず200℃までの温度で、特に160〜195℃の温度範囲で乾燥させる。乾燥プロセスは、排ガス中で実際に水蒸気をもはや検出できない場合に終了する。乾燥後に、含浸された固体材料、すなわち触媒を活性化のために少なくとも380℃、大抵は少なくとも430℃、特に少なくとも450℃の温度で加熱する。好ましくは、触媒の活性化を、450〜550℃の温度範囲で行う。
【0015】
触媒の活性化は、一般に式Iの化合物の熱分解を実施する温度を少なくとも10℃上回る温度で実施する。特に、触媒を管型反応器中での乾燥後に、引き続いての熱分解が実施される温度を少なくとも50℃上回る温度で加熱する。触媒の温度調節は、たとえば5〜72時間に亘って継続させる。
【0016】
多孔性固体材料、特にα−酸化アルミニウムを、炭酸ナトリウムおよび/または炭酸カリウムの水性溶液であるか、あるいは、他の炭酸塩の水性溶液を用いて処理する場合には、触媒の温度調節の進行状況を、排ガスの分析により追跡することができる。たとえば、触媒を管型反応器中で少なくとも380℃の温度で温度調節し、かつ排ガスのCO含量を連続的に測定する。触媒の温度処理は、排ガス中で実際にCO−がもはや検出できなくなるやいなや終了する。それによって、触媒を引き続いての熱分解を実施する温度に冷却する。
【0017】
N−ビニルカルボン酸アミドの熱分解は、減圧下で実施する。これによって生じるモノマーの望ましくない重合および/または分解をほぼ抑制するかまたは回避する。熱分解の際に、圧力はたとえば1〜500mbarの範囲、好ましくは5〜200mbarの範囲である。熱分解の際の温度は、たとえば330〜750℃、好ましくは350〜550℃の温度範囲である。適した反応条件は、たとえばDE-C 1 224 304、EP-A 0 184 074(第1欄の第51行〜第3欄、第53行)およびEP-A 0 184 694(第2欄の第34行〜第6欄)に詳細に記載されている。ここで記載された用語は、本発明による方法にも適用される。反応条件下でガス状である熱分解の際に生じる物質を冷却し、その結果、それぞれ形成されたモノマーを凝縮する。これを連続的にまたは回分的に排出し、雰囲気で圧力調節した後に、わずかな量のシアン化水素を除去し、かつ精製する。シアン化水素は、場合によっては低温に冷却し、かつ雰囲気で圧力調節することによって、液体として得ることができる。しかしながら安全性の理由から、前記EP出願中に記載されたような塩基またはカルボニル化合物へのシアン化水素の化学吸着が好ましい。熱分解および化学吸着は連続的に実施する。
【0018】
本発明による方法にしたがって製造された、活性化された触媒は、たとえば少なくとも12週の耐用時間を有する。触媒の選択率および/または変換率が減少するやいなや、触媒を再生しなければならない。たとえば触媒は、変換率が80%、大抵は90%の値に低下するやいなや再生される。この際、一般には先ず不活性ガス流、たとえば過熱された水蒸気中で、触媒上の炭素含有堆積物を、酸素の供給下で酸化することにより行う。触媒と接触するアルカリ濃度がもはや十分でないために、触媒のこのような活性化がもはや可能でない場合には、N−ビニルカルボン酸アミドの製造を中断し、かつ管型反応器中の触媒を、その後にアルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の溶液で処理することによって触媒の本発明による再生を実施する温度に冷却する。
【0019】
たとえば反応器を、塩浴を用いて加熱し、これを触媒の活性化のためにたとえば200〜250℃の温度に冷却し、かつその後に(より高い圧力に設定する場合には)、触媒を、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の水性溶液により、塩浴を排出することなしに圧力下で処理する。但し、塩浴はその後に同様に前記範囲の温度に冷却される。しかしながら触媒の処理は、常圧で250℃を上回って、特に300℃を上回って沸騰する塩基のための溶剤または溶剤混合物を使用する場合には、周囲圧下で200〜250℃の範囲で実施することができる。塩基溶液を用いての処理後に、触媒を湿らせる残りの溶剤を除去し、かつ触媒を管型反応器中で、少なくとも380℃の温度で加熱することによって活性化させる。しかしながらさらに反応器を、例えば他の伝熱媒体、たとえば油を介して、あるいは直接電気的に、あるいはさらに熱ガスを用いて加熱することができる。
【0020】
触媒を、適した塩基の溶液を用いて、溶剤の沸点を下回る温度、たとえば10〜80℃の温度で処理しようとする場合には、管型反応器中の触媒をこの範囲の温度に冷却する。冷却は、反応器中の触媒を、最初に雰囲気圧下で200〜250℃の範囲の温度に冷却し、かつこれをその後に減圧下で不活性ガス流中で、100℃を下回る温度に冷却することによって、2段階で実施することができる。不活性ガスとして、たとえば空気、窒素または水蒸気を使用することができる。たとえば、触媒の乾燥のために水蒸気を減圧下で(たとえば10〜700mbar、特に20〜100mbar、特に好ましくは30〜50mbar)、反応器中に導入することができる。雰囲気による圧力調節および塩基溶液での触媒の含浸後に、塩基溶液を管型反応器から排出し、かつ残りの溶剤を、管型反応器中でこのような処理がなされた触媒を加熱することによって除去する。さらに、なおも不活性ガス流を反応器中に導入するか、および/または減圧下、たとえば10〜500mbarの圧力を適用することができる。最終的に触媒を活性化するために、これを管型反応器中で、少なくとも380℃の温度に加熱する。
【0021】
触媒は、技術水準によれば管型反応器から取り外され、かつ別個の装置中で含浸し、かつ場合によってはさらに温度調節しなければならないのに対して、本発明による方法によれば、活性化および再生のために反応器中に留めることができる。それによって、N−ビニルカルボン酸アミドの製造に関して、公知の工程に対して顕著な時間の節約をもたらす。さらに、触媒の機械的破損は、取り外しおよび取り付け方法に基づいて回避される。活性化後に、触媒は直ちに良好な変換率および選択率の値を示す。
【0022】
本発明による方法は、N−ビニルホルムアミドを製造するために、特に技術的重要性を有し、これは、式I(式中、R=Hであり、かつR=Hである(N−ホルミルアラニンニトリル))の化合物を熱分解することによって得られる。N−ビニルホルムアミドから、たとえば、場合によっては完全または部分的な加水分解により、固着剤、凝集剤および歩留向上剤として、紙の製造の際に使用されるポリマーが製造される。
【0023】
実施例
EP-A 0 184 074の方法によるN−ビニルホルムアミドの製造の際に、触媒上および反応器内壁(呼び径80mmを有する反応管からなる)上に、炭素含有沈殿物が形成され、これは変換率を低下させ、かつこのプラント中の圧力損失を招く。触媒は、酸化アルミニウムから成り、これはカリウムイオンで活性化された。同様に、活性は、触媒材料中の活性成分としてのカリウムの損失によって減少した。先ず、触媒上および反応器中の炭素含有堆積物を、530℃の温度で、200l/hの窒素および1kg/hの過熱された水蒸気を導入することによって除去し、次いで調整された条件下で、空気をガス流に混合した。全部で15時間後に、排ガス中のCO含量は0.05体積%であった。この時間後に、触媒および反応器からほぼ完全に炭素含有堆積物が除去された。
【0024】
続いて、反応温度を250℃に低下させ、かつ引き続いて塩溶融物を、温度調節された捕集容器中に排出した。最初に1300l/hの冷空気を通過させることによって160℃の温度に低下させた後に、1kg/hの水蒸気を用いて反応器の温度をさらに低下させた。120℃に達した際に、反応器系を100mbarの真空にし、かつ徐々に50mbar(絶対圧)に減少させて約30℃に低下させ、かつ引き続いて底部の反応器排出口を閉じた。反応器をここで、すべての触媒体を覆うまで、39.9質量%濃度の炭酸カリウム含有水性溶液で装填した。この溶液を、9時間に亘って反応器中に留め、その後に排出した。
【0025】
引き続いて触媒を、外付け空気加熱器により230℃に加熱された空気1300l/hを通過させることによって乾燥させ、かつ195℃に加熱した。続けて、反応器の伝熱媒体帯域をさらに塩溶融液で充填し、かつさらに加熱した。この際、1300l/hの空気流を触媒上に導き、かつ二酸化炭素濃度を測定した。約350℃の温度からの濃度の最初の上昇後に、再加熱により、0.05体積%の元の空値まで再度低下した。反応器が、550℃の温度に達した時点で加熱を終了させ、かつ反応器を330℃に冷却した。反応器の圧力を、その後に10mbarに低下させた。毎時2kgのホルミルアラニンニトリルを蒸気の形で管型反応器中に導入した。生じる反応ガスを、冷却した液体反応生成物で冷却し、その際、ホルミルアラニンニトリルから形成されたN−ビニルホルムアミドが凝縮した。これを連続的に排出し、かつ蒸留により精製した。ほぼシアン化水素から成る残りのガスの部分を、真空中でアセトアルデヒド中に導き、シアン化水素を化学吸着により除去した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
RおよびRはHまたはC〜C−アルキルを示す]
の化合物を、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンでドープされた固体材料の存在下で、減圧下で、330〜750℃の温度で、シアン化水素を分解しながら熱分解し、冷却し、分離し、かつ反応生成物を単離することによって、N−ビニルカルボン酸アミドを製造する方法において、管型反応器中に配置された固体材料を、0〜250℃の範囲の温度で、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基の溶液で処理し、この溶液を排出し、このようにして得られる触媒に付着した残りの溶剤を蒸発させ、かつ触媒を引き続いて活性化のために少なくとも380℃の温度に加熱することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
触媒を、管型反応器中の溶剤を蒸発させた後に、引き続いての熱分解が実施される温度を少なくとも10℃上回る温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒を、管型反応器中の溶剤を蒸発させた後に、引き続いての熱分解が実施される温度を少なくとも50℃上回る温度に加熱する、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
触媒として、アルカリ金属塩基および/またはアルカリ土類金属塩基でドープされた多孔性担体を使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
管型反応器中の固体材料を、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水性溶液で処理する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
管型反応器中の触媒を、少なくとも380℃の温度に温度調節し、その際、排ガスのCO−含量を連続的に測定し、かつ、排ガス中で実際にCOがもはや検出できなくなるやいなやこの温度調節を終了し、かつその後に触媒を、引き続いての熱分解を実施する温度に冷却する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
熱分解を、350〜550℃の範囲の温度で実施する、請求項1から4および6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式Iの化合物として、N−ホルミルアラニンニトリルを、N−ビニルホルムアミドを製造するために使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512220(P2012−512220A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541299(P2011−541299)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066387
【国際公開番号】WO2010/072543
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】