説明

N−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド誘導体

ある種のN−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド誘導体はPPARγのアゴニスト又は部分アゴニスト又はアンタゴニストであり、2型糖尿病の症候である高血糖症と、2型糖尿病に併発することが多い脂質代謝異常、高脂血症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、及び肥満症の治療及び抑制に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に2型糖尿病とこの疾患に併発することが多い症状(例えば肥満症や脂質代謝障害)の治療において治療用化合物として有用なN−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は複数の原因因子に起因する疾患であり、絶食状態又は経口グルコース負荷試験時のグルコース投与後の血漿グルコース値の上昇(高血糖症)を特徴とする。糖尿病には一般に2種類の型が認められている。1型糖尿病ないしインスリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者はグルコース利用を調節するホルモンであるインスリンを殆ど又は全く生産しない。2型糖尿病ないし非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)では、まだ体内でインスリンが生産されている。2型糖尿病患者はインスリン過剰症(血漿インスリン値上昇)を伴うことが多いが、これらの患者はインスリン抵抗性であり、即ち、筋肉、肝臓及び脂肪組織である主要インスリン感受性組織でグルコース及び脂質代謝を刺激するインスリンの効果に抵抗性をもつ。インスリン抵抗性であるが、糖尿病ではない患者は多量のインスリンを分泌することによりインスリン抵抗性を補償するので、血清グルコース値は2型糖尿病の基準を満たすほど上昇しない。2型糖尿病患者では、血漿インスリン値が上昇するが、著しく高いインスリン抵抗性を補償するには不十分である。
【0003】
糖尿病に併発する持続性又は無制御な高血糖症は罹患率と死亡率の増加と早発に結び付けられる。多くの場合にグルコース恒常性異常は肥満、高血圧、脂質、リポ蛋白質及びアポリポ蛋白質代謝の変化や他の代謝及び血流疾患に直接及び間接的に結び付けられる。2型糖尿病患者はアテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、脳卒中、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経症、及び網膜症等の大血管及び微小血管合併症の危険が非常に大きい。従って、糖尿病の臨床管理及び治療にはグルコース恒常性、脂質代謝、肥満、及び高血圧の治療抑制が極めて重要である。
【0004】
多くのインスリン抵抗性又は2型糖尿病患者はX症候群又は代謝症候群と呼ばれる数種の症状をもつことが多い。この症候群の患者は以下の5種の症状から構成される群から選択される3種以上の症状をもつことを特徴とする。(1)腹部肥満;(2)高グリセリド血症;(3)高密度リポ蛋白質コレステロール(HDL)低下;(4)高血圧;及び(5)患者が糖尿病でもある場合には、2型糖尿病の特徴的範囲でよい高い空腹時血糖値。これらの症状の各々は最近発表されたThird Report of the National Cholesterol Education Program Expert Panel on Detection,Evaluation and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults(Adult Treatment Panel IIIないしATP III),National Institutes of Health,2001,NIH Publication No.01−3670に定義されている。顕在的糖尿病を発症しているか否かに拘わらず、代謝症候群患者は2型糖尿病に併発する上記大血管及び微細血管合併症(例えばアテローム性動脈硬化症や冠動脈性心臓病)を発症する危険が大きい。
【0005】
インスリン抵抗性は主にインスリン受容体数の減少に起因するのではなく、まだ完全に解明されていないインスリン受容体結合後の欠陥に起因する。このインスリンに対する応答の欠如の結果、筋肉ではグルコース取込み、酸化及び貯蔵がインスリンにより十分に活性化されなくなり、脂肪組織における脂肪分解と肝臓におけるグルコース生産及び分泌がインスリンにより十分に抑制されなくなる。
【0006】
2型糖尿病には数種の治療法を利用できるが、各々固有の欠点と潜在的危険がある。運動と食物摂取カロリーの低下は糖尿病症状を劇的に改善することが多く、2型糖尿病の最良の最前線治療法である。座りがちな生活習慣と特に脂肪含量の高い食物の過剰な消費が定着していることため、この治療のコンプライアンスは非常に低い。広く使用されている薬剤治療はインスリン分泌促進薬であるメグリチニドやスルホニル尿素(例えばトルブタミドやグリピジド)の投与である。これらの薬剤はインスリン分泌を増すように膵臓β細胞を刺激することにより血漿インスリン値を上昇させる。スルホニル尿素やメグリチニドが無効になる場合には、インスリン抵抗性組織をも刺激するに十分に高いインスリン濃度とするようにインスリン注射により体内インスリン量を補充することができる。しかし、インスリン及び/又はインスリン分泌促進薬の投与の結果として血漿グルコース値が危険なほど低レベルになったり、血漿インスリン値の上昇によりインスリン抵抗性レベルが増加する恐れがある。
【0007】
ビグアニドは2型糖尿病を治療するために広く使用されている別の類の薬剤である。フェンホルミンとメトホルミンの2種のビグアニドが最もよく知られており、低血糖症を生じる危険なしに高血糖症をある程度改善する。ビグアニドは低血糖症の危険を増すことなしにインスリン又はインスリン分泌促進薬と併用することができる。しかし、フェンホルミンとメトホルミンは乳酸アシドーシスや悪心/下痢を誘発する恐れがある。メトホルミンはフェンホルミンよりも副作用の危険が少なく、2型糖尿病の治療に広く処方されている。
【0008】
グリタゾン(即ち5−ベンジルチアゾリジン−2,4−ジオン)は高血糖症と2型糖尿病の他の症状を緩和することができる新規類の化合物である。これらの薬剤は数種の2型糖尿病動物モデルで筋肉、肝臓及び脂肪組織におけるインスリン感受性を実質的に増加し、その結果、低血糖症を生じずに血漿グルコース値の上昇を部分的又は完全に補正している。現在市販されているグリタゾン(ロシグリタゾンとピオグリタゾン)はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γサブタイプのアゴニストである。PPARγアゴニズムは一般にグリタゾンで観察されるインスリン増感の改善に関与すると考えられている。2型糖尿病及び/又は脂質代謝異常の治療用に新規PPARアゴニストが開発中である。新規PPAR化合物の多くはPPARα、γ及びδサブタイプの1種以上のアゴニストである。PPARα及びPPARγサブタイプの両者のアゴニスト(PPARα/γデュアルアゴニスト)である化合物は高血糖症を抑制すると共に脂質代謝を改善するので有望である。
【0009】
PPARアゴニスト、特にグリタゾンはこれまでその魅力を減じる欠点があった。所定の化合物、特にトログリタゾンは肝毒性を示している。トログリタゾンは結局、肝毒性により市場から撤退している。現在市販されているPPARアゴニストの別の欠点は2型糖尿病の単独療法では効力が弱く、平均血漿グルコース低下は約20%であり、ヘモグロビンA1Cの低下は約9.0%から約8.0%に過ぎない。現状の化合物は更に脂質代謝もさほど改善せず、実際には脂質プロフィルに負の効果をもつ場合もある。これらの欠点に鑑み、同様の作用メカニズムにより機能する2型糖尿病のより良好なインスリン増感剤の開発に拍車がかかっている。
【0010】
最近、PPARγアンタゴニスト又は部分アゴニストである化合物が報告されている。WO01/30343は肥満症と2型糖尿病の治療に有用なPPAR部分アゴニスト/アンタゴニストである特定化合物を記載している。WO02/08188はインドール誘導体であり、2型糖尿病の治療に有用であり、体重及び心臓重量増加に関する副作用の少ない類のPPARアゴニスト及び部分アゴニストを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書に記載する類の化合物は1,3−チアゾリジンジオン部分を含まない新規類のPPARアゴニストである。この類の化合物にはPPARγ部分アゴニストである多くの化合物だけでなく、PPARγ完全アゴニスト及び/又はPPARγアンタゴニストも含まれる。化合物によってはPPARγ活性に加えて又はその代わりにPPARα活性をもつものもある。化合物によっては混合完全又は部分PPARα/γアゴニストであるものもある。この類の化合物にはPPARδ活性をもつものもある。これらの化合物は糖尿病、高血糖症、及びインスリン抵抗性の治療及び抑制に有用である。
【0012】
化合物はLDL−C及び/又は非HDL−C上昇、高アポBリポ蛋白血症、高グリセリド血症、トリグリセリド含有率の高いリポ蛋白の増加、及びHDLコレステロール濃度低下により発現され得る1種以上の脂質代謝障害(例えば混合又は糖尿病性脂質代謝異常)、孤立性高コレステロール血症の治療にも有用であると思われる。化合物はアテローム性動脈硬化症、肥満症、血管再狭窄、炎症症状、乾癬、多嚢胞性卵巣症候群、及び他のPPARに媒介される疾患、障害及び症状の治療又は改善にも有用であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は式I:
【0014】
【化2】

の構造をもつ化合物とこれらの化合物の医薬的に許容可能な塩及びプロドラッグを提供する。
【0015】
式Iにおける置換基については次のセクションに定義する。
【0016】
本発明の化合物は糖尿病患者におけるグルコース、脂質、及びインスリンを低下させると共に、グルコース耐性に障害をもつか及び/又は前糖尿病状態の非糖尿病患者におけるインスリン抵抗性を改善することにより患者が糖尿病を発症する危険を減らすのに有効であると思われる。化合物はヒト及び哺乳動物患者における非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)の治療と、NIDDMに併発する症状(例えば高血糖症、高脂血症、脂質代謝異常、肥満症、高コレステロール血症、高グリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、炎症症状、腫瘍症状、並びにPPARに媒介される他の疾患、障害及び症状)の治療と抑制に有効であると期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は以下に要約するような多数の態様がある。式Iの化合物において:
はH、Cl、F、及びC1−4アルキルから構成される群から選択され、C1−4アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲン原子で置換されている。好適群の化合物において、Rは場合により1〜3個のF原子で置換されたC2−3アルキルである。他の好適群の化合物において、Rはn−プロピルである。
【0018】
はH、Cl、F、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、及び−S(O)CHから構成される群から選択され、C1−4アルキル及びOC1−4アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲン原子で置換されている。好適群の化合物において、RはH、F、−OC1−3アルキル、及び−S(O)CHから選択され、−OC1−3アルキルは場合により1〜3個のF原子で置換されている。他の好適群の化合物において、Rは−OCHCH又は−OCHCFである。
【0019】
、R及びRは水素、F、Cl、C1−3アルキル、及び−OC1−3アルキルから構成される群から独立して選択され、C1−3アルキル及び−OC1−3アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲンで置換されている。好適群の化合物において、RはHであり、R及びRは各々独立してH、F、CH、CF、−OCH、−OCF、−OCHCH及び−OCHCFから選択される。他の好適群の化合物において、RとRはHであり、RはH、F、CH、CF、−OCH、−OCF、−OCHCH及び−OCHCFから構成される群から選択される。
【0020】
他の好適群の化合物において、RはCl及びn−プロピルから選択され;RはH及びFから選択され;R、R及びRはHである。
【0021】
X及びYは各々独立してO、S、SO、及びSOから構成される群から選択される。好適群の化合物において、X及びYは各々独立してO及びSから選択される。他の好適群の化合物において、X及びYは各々Oである。X基は場合によりスルホンアミド基に対してメタ位又はパラ位でN−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド部分のフェニルに結合している。多くの好適サブグループの化合物において、Xはスルホンアミド基に対してパラ位に結合している。
【0022】
nは1、2、3、及び4から選択される整数を表す。好適サブグループの化合物において、nは3又は4とすることができる。他のサブグループの化合物において、nは1〜3である。更に他のサブグループの化合物において、nは3である。
【0023】
好適化合物の多くにおいて、X及びYはOであり;nは1〜3から選択される整数であり;R、R及びRはHであり;Rはn−プロピル及びClから選択され;RはH、F、及び−S(O)CHから選択される。
【0024】
本発明の化合物の特定態様は実施例と後記表に記載する。
【0025】
上記化合物は以下の疾患及び以下の疾患以外の疾患を治療するために使用することができる。
【0026】
(1)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における非インスリン依存性糖尿病(2型糖尿病)の治療方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(2)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における高血糖症の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(3)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における代謝症候群の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(4)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における肥満症の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(5)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における高コレステロール血症の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(6)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における高グリセリド血症の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(7)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における1種以上の脂質代謝障害(例えば混合又は糖尿病性脂質代謝異常)、低HDLコレステロール、高LDLコレステロール、高脂血症、高コレステロール血症、及び高グリセリド血症の治療又は抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;
(8)治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における代謝症候群に関連する後遺症の危険の低減方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法;並びに
(9)治療を必要とするか又はアテローム性動脈硬化症もしくはアテローム性動脈硬化症の後遺症を発症する危険のある哺乳動物又はヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療及び後遺症の発症の危険低減及び/又は後遺症の発症遅延方法として、治療有効量の式Iの化合物を患者に投与する方法。アテローム性動脈硬化症の後遺症としては例えば狭心症、跛行、心臓発作、脳卒中等が挙げられる。
【0027】
定義
「Ac」はアセチルであり、CHC(O)−である。
【0028】
「アルキル」とは炭素鎖を特に指定しない限り、直鎖でも分枝鎖でもその組合せでもよい飽和炭素鎖を意味する。「アル」で始まる他の基(例えばアルコキシ及びアルカノイル)も炭素鎖を特に指定しない限り、直鎖でも分枝鎖でもその組合せでもよい。アルキル基の例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−及びtert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル等が挙げられる。
【0029】
「シクロアルキル」とは特に指定しない限り、各々炭素原子数3〜10の単環又は二環式飽和炭素環を意味する。この用語はアリール基に融合した単環も含む。シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が挙げられる。
【0030】
「ハロゲン」とフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。
【0031】
「Me」はメチルを表す。
【0032】
医薬組成物等における「組成物」なる用語は活性成分とキャリヤーを構成する不活性成分を含有する製剤と、成分の任意2種以上の配合、錯化もしくは凝集、又は成分の1種以上の解離、又は成分の1種以上の他の型の反応もしくは相互作用により直接又は間接的に得られる任意製剤を含むものとする。従って、本発明の医薬組成物は本発明の化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを混合することにより製造される任意組成物を含む。
【0033】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
式Iの化合物は1個以上の不斉中心を含むことができ、従ってラセミ化合物、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。本発明は式Iの化合物のこのような全異性形を包含するものである。
【0034】
本明細書に記載する化合物にはオレフィン二重結合を含むものもあり、特に指定しない限り、E及びZ両者の幾何異性体を含むものとする。
【0035】
本明細書に記載する化合物には異なる水素結合点と共に存在するもの(互変異性体と言う)もある。1例はケトンとそのエノール形であり、ケト−エノール互変異性体として知られる。個々の互変異性体とその混合物が式Iの化合物に含まれる。
【0036】
1個以上の不斉中心をもつ式Iの化合物は当分野で周知の方法によりジアステレオマー、エナンチオマー等に分離することができる。
【0037】
あるいは、光学的に純粋な出発材料及び/又は公知構造の試薬を使用して立体特異的合成によりエナンチオマー及びキラル中心をもつ他の化合物を合成することもできる。
【0038】

「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウム塩が特に好ましい。固体形態の塩は2種以上の結晶構造で存在することもできるし、水和物形態でもよい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。
【0039】
本発明の化合物が塩基性である場合には、無機及び有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸が特に好ましい。
【0040】
当然のことながら、本明細書で式Iの化合物という場合には医薬的に許容可能な塩も含むものとする。
【0041】
代謝産物−プロドラッグ
患者に投与している間又は患者に投与した後に請求の範囲に記載する本発明の化学物質に変換される化学物質であるプロドラッグも本発明の化合物である。どのような方法で患者に送達されたかに関係なく、これらのプロドラッグの代謝産物も、代謝産物が式Iの化合物である場合には本発明の化合物である。
【0042】
用途
本発明の化合物は各種ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体サブタイプの1種以上、特にPPARγに対してアゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニスト活性をもつ強力なリガンドである。これらの化合物はPPARαサブタイプとPPARγのリガンドないしアゴニスト、部分アゴニスト又はアンタゴニストでもよく、その結果、混合PPARα/γアゴニズム又は主にPPARαサブタイプのアゴニズムが得られる。化合物によってはPPARδリガンドでもよく、PPARδ活性をもつことができる。本発明の化合物は個々のPPARサブタイプ(例えばγ又はα)又はPPARサブタイプの組み合わせ(例えばα/γ)の1種以上のリガンドにより媒介される疾患、障害又は症状の治療又は抑制に有用である。本発明の1側面は哺乳動物におけるこのような疾患、障害又は症状の治療及び抑制方法として、治療有効量の式Iの化合物を前記哺乳動物に投与する方法を提供する。本発明の化合物はPPARに媒介される多数の疾患及び症状の治療又は抑制に有用であると考えられ、限定されないが、(1)糖尿病、特に非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、(2)高血糖症、(3)低グルコース耐性、(4)インスリン抵抗性、(5)肥満症、(6)脂質代謝障害、(7)脂質代謝異常、(8)高脂血症、(9)高グリセリド血症、(10)高コレステロール血症、(11)低HDL値、(12)高LDL値、(13)アテローム性動脈硬化症とその後遺症、(14)血管再狭窄、(15)過敏性腸症候群、(16)クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、(17)他の炎症症状、(18)膵炎、(19)腹部肥満、(20)神経変性疾患、(21)網膜症、(22)乾癬、(23)代謝症候群、(24)卵巣高アンドロゲン血症(多嚢胞性卵巣症候群)、及びインスリン抵抗性を伴う他の疾患又は障害が挙げられる。本発明の化合物は高血圧、腫瘍症状、脂肪細胞腫瘍、脂肪細胞癌(例えば脂肪肉腫)、前立腺癌及び他の癌(例えば胃癌、乳癌、膀胱癌及び結腸癌)、血管新生、及びアルツハイマー病の治療にも有用であると考えられる。
【0043】
本発明の化合物は骨粗鬆症の治療にも有用であると考えられる。本発明の化合物は骨粗鬆症をもつか又は骨粗鬆症を発症する危険のある患者における骨密度低下を遅延又は停止させることにより骨粗鬆症を治療するか又は骨粗鬆症の発症の危険を低減することができる。本発明の化合物は既に骨量が低下し始めている患者における骨量低下を逆行させることもできる。
【0044】
本発明の1側面は混合又は糖尿病性脂質代謝異常、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDL値、高LDL値、高脂血症、及び/又は高グリセリド血症の治療及び抑制方法として、治療を必要とする患者に治療有効量の式Iの化合物を投与する方法を提供する。化合物は単独で使用してもよいが、コレステロール生合成阻害剤、特にロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、又はZD−4522等のHMG−CoAレダクターゼ阻害剤と併用投与すると有利である。化合物はコレステロール吸収阻害剤(例えばスタノールエステル、チクエシド等のステロールエステル、及びエゼチミブ等のアゼチジノン)、ACAT阻害剤(例えばアバシミブ)、ナイアシン、胆汁酸溶解剤、ミクロソームトリグリセリド輸送阻害剤、及び胆汁酸再取り込み阻害剤等の他の脂質低下剤と併用しても有利である。これらの併用治療は高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、高グリセリド血症、脂質代謝異常、高LDL、及び低HDLから構成される群から選択される1種以上の関連症状の治療又は抑制にも有効であると考えられる。
【0045】
本発明の別の側面は治療を必要とする患者に治療有効量の本発明の化合物を投与することにより、炎症性腸疾患、クローン病及び潰瘍性大腸炎等の炎症症状を治療する方法を提供する。本発明により治療することができる他の炎症性疾患としては痛風、リウマチ様関節炎、骨関節炎、多発性硬化症、喘息、ARDS、乾癬、血管炎、虚血/再潅流傷害、凍傷、及び関連疾患が挙げられる。
【0046】
投与と用量範囲
哺乳動物、特にヒトに有効用量の本発明の化合物を投与するためには適切な任意投与経路を使用することができる。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、肺、鼻腔内等の経路を使用することができる。剤形としてはタブレット、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアゾール等が挙げられる。式Iの化合物は経口投与することが好ましい。
【0047】
使用される活性成分の有効用量は使用する特定化合物、投与方式、治療する症状及び治療する症状の重篤度によって異なる。このような用量は当業者が容易に確定することができる。
【0048】
糖尿病及び/又は高血糖症又は高グリセリド血症又は式Iの化合物の適応症である他の疾病を治療又は抑制する場合には、約0.1mg〜約100mg/kg動物体重の1日用量で本発明の化合物を投与すると一般に満足な結果が得られ、1日用量を一度又は1日2〜6回に分けるか又は徐放形態で投与することが好ましい。大半の大型哺乳動物では、総1日用量は約1.0mg〜約1000mgであり、約1mg〜約50mgが好ましい。体重70kgの成人の場合には、総1日用量は一般に約1mg〜約350mgである。この投与レジメンは最適治療応答が得られるようにこの範囲内又はこの範囲外で調節することができる。
【0049】
医薬組成物
本発明の別の側面は式Iの化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は式Iの化合物又は医薬的に許容可能なその塩もしくはプロドラッグを活性成分として含有しており、更に医薬的に許容可能なキャリヤーと場合により他の治療成分を含有する。「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機塩基又は無機酸と有機塩基又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。
【0050】
組成物としては経口、直腸、局所、非経口(例えば皮下、筋肉内及び静脈内)、眼内(眼科薬)、肺(鼻腔内又は口腔吸入)、又は鼻腔内投与に適した組成物が挙げられるが、任意所与症例に最適な経路は治療する症状の種類と重篤度及び活性成分の種類により異なる。組成物は単位剤形とすると簡便であり、製薬分野で周知の任意方法により製造することができる。
【0051】
実地使用では、式Iの化合物を活性成分として慣用薬剤配合技術に従って医薬キャリヤーと混和することができる。キャリヤーは投与に所望される製剤形態、例えば経口か非経口(例えば静脈内)かに応じて多様な形態をとることができる。経口剤形用組成物を製造する場合には、通常の医薬媒体の任意のものを使用することができ、例えば懸濁液、エリキシル剤及び溶液等の経口液体製剤の場合には例えば水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等を使用することができ、例えば散剤、ハードカプセル、ソフトカプセル、及びタブレット等の経口固体製剤の場合には澱粉、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等のキャリヤーを使用することができ、固体経口製剤のほうが液体製剤よりも好ましい。
【0052】
投与し易いという理由からタブレットとカプセルが最も有利な経口単位剤形であり、その場合には当然のことながら固体医薬キャリヤーを使用する。所望により、標準水性又は非水性技術によりタブレットにコーティングしてもよい。このような組成物及び製剤は少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。これらの組成物における活性化合物の百分率は当然のことながら変えることができ、単位重量の約2%〜約60%とすると好都合である。このような治療的に有用な組成物における活性化合物の量は有効用量が得られるような量である。活性化合物は例えば滴剤又はスプレーとして鼻腔内投与することもできる。
【0053】
タブレット、ピル、カプセル等は更に結合剤(例えばトラガカントガム、アラビアガム、コーンスターチ又はゼラチン);賦形剤(リン酸2カルシウム);崩壊剤(例えばコーンスターチ、ジャガイモ澱粉、アルギン酸);滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム);及び甘味料(例えばスクロース、ラクトース又はサッカリン)を添加することができる。単位剤形がカプセルである場合には、上記型の材料に加え、脂肪油等の液体キャリヤーを添加することができる。
【0054】
コーティングとして又は用量単位の物理的形状を変化させるために他の種々の材料を使用してもよい。例えば、タブレットはシェラック、糖又はその両者でコーティングすることができる。シロップ又はエリキシル剤は活性成分に加え、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、色素及びフレーバー(例えばチェリー又はオレンジフレーバー)を添加することができる。
【0055】
式Iの化合物は非経口投与することもできる。水中でこれらの活性化合物の溶液又は懸濁液を製造することができ、ヒドロキシ−プロピルセルロース等の界面活性剤と混合すると適切である。グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びその油中混合物中で分散液を製造することもできる。通常の保存及び使用条件下で、これらの製剤は微生物増殖を防ぐために防腐剤を添加することができる。
【0056】
注射用に適した医薬形態としては滅菌水溶液又は分散液と、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用滅菌粉末が挙げられる。いずれの場合も、剤形は無菌でなければならず、注射針を容易に通過する程度まで流動性でなければならない。製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌や真菌等の微生物の汚染作用から保護しなければならない。キャリヤーは例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、適切なその混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒とすることができる。
【0057】
併用療法
式Iの化合物は式Iの化合物が有用である疾患又は症状の治療又は改善に同様に有用であると考えられる他の薬剤と併用することができる。このような他の薬剤はこのような薬剤に通常使用されている経路と量で式Iの化合物と同時又は順次投与することができる。式Iの化合物を1種以上の他の薬剤と同時に使用する場合には、このような他の薬剤と式Iの化合物を含有する単位剤形の医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は式Iの化合物と1種以上の他の薬剤を別個のオーバーラップするスケジュールで投与する療法も含む。1種以上の他の活性成分と併用する場合には、本発明の化合物と他の活性成分を各々単独使用する場合よりも低用量で使用できるとも考えられる。従って、本発明の医薬組成物は式Iの化合物に加えて1種以上の他の活性成分を含有するものを含む。
【0058】
別々又は同一医薬組成物として式Iの化合物と併用投与することができる他の活性成分の例としては限定されないが、以下のものが挙げられる。
(a)(i)グリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン等)やWO97/27857、97/28115、97/28137及び97/27847に開示されている化合物等の他のPPARアゴニスト;(ii)メトホルミンやフェンホルミン等のビグアニド;(iii)蛋白質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(b)インスリン又はインスリンミメティクス;
(c)スルホニル尿素(例えばトルブタミドやグリピジド)、又は関連物質;
(d)αグルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース);
(e)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及び他のスタチン類)、(ii)胆汁酸溶解剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレート)等のPPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト(例えばKRP−297)、(vi)コレステロール吸収阻害剤(例えばβ−シトステロール)、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばエゼチミブやアバシミブ)、及び(viii)フェノール性抗酸化剤(例えばプロブコール);
(f)PPARδアゴニスト(例えばWO97/28149に開示されているもの);
(g)抗肥満化合物(例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY阻害薬、及びβアドレナリン作用性受容体アゴニスト);
(h)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;並びに
(i)炎症症状用薬剤(例えばアスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコイド、アザルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤);
(j)グルカゴン受容体アンタゴニスト;
(k)GLP−1、GIP−1、及びGLP−1アナログ(例えばエキセンディン)。
【0059】
上記併用は本発明の化合物と他の1種の活性化合物との併用のみならず、2種以上の他の活性化合物との併用も含む。非限定的な例としては式Iの化合物とビグアニド、スルホニル尿素、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、他のPPARアゴニスト、PTP−1B阻害剤、DP−IV阻害剤、及び抗肥満化合物から選択される2種以上の活性化合物との併用が挙げられる。
【0060】
生物アッセイ
A)PPAR結合アッセイ
組換えヒトPPARγ、PPARδ、及びPPARαを作製するために、ヒトPPARγ、ヒトPPARδ及びヒトPPARαをgst融合蛋白として大腸菌で発現させた。PPARγの全長ヒトcDNAをpGEX−2T発現ベクター(Pharmacia)にサブクローニングした。PPARδとPPARαの全長ヒトcDNAをpGEX−KT発現ベクター(Pharmacia)にサブクローニングした。各プラスミドを導入した大腸菌を増殖させ、誘導し、遠心により回収した。再懸濁したペレットをフレンチプレスで破砕し、破片を12,000Xgで遠心により除去した。組換えヒトPPAR受容体をグルタチオンセファロースでアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。カラムにアプライし、1回洗浄した後に受容体をグルタチオンで溶出した。グリセロール(10%)を加えて受容体を安定化し、アリコートを−80℃で保存した。PPARγと結合させるために、Bergerら(Novel peroxisome proliferator−activated receptor (PPARγ) and PPARδ ligands produce distinct biological effects.J.Biol.Chem.(1999),274:6718−6725)に記載されているようにTEGM(10mM Tris,pH7.2,1mM EDTA,10%グリセロール,7μL/100mLβ−メルカプトエタノール,10mMモリブデン酸Na,1mMジチオスレイトール、5μg/mLアプロチニン,2μg/mLロイペプチン,2μg/mLベンズアミジン及び0.5mM PMSF)に0.1%脱脂粉乳と10nM[]AD5075(21Ci/mmole)を加え、±試験化合物下に受容体アリコートをインキュベートした。アッセイを〜16時間4℃で最終容量150μLとなるようにインキュベートした。デキストラン/ゼラチン被覆活性炭100μLと共に氷上で〜10分間インキュベートすることにより未結合リガンドを除去した。3000rpmで10分間4℃にて遠心後、上清フラクション50μLをトップカウントでカウントした。
【0061】
PPARδと結合させるために、Bergerら(Novel peroxisome proliferator−activated receptorγ (PPARγ) and PPARδ ligands produce distinct biological effects.1999 J Biol Chem 274:6718−6725)に記載されているようにTEGM(10mM Tris,pH7.2,1mM EDTA,10%グリセロール,7μL/100mLβ−メルカプトエタノール,10mMモリブデン酸Na,1mMジチオスレイトール、5μg/mLアプロチニン,2μg/mLロイペプチン,2μg/mLベンズアミド及び0.5mM PMSF)に0.1%脱脂粉乳と2.5nM[]L−783483(17Ci/mmole)を加え、±試験化合物下に受容体アリコートをインキュベートした。(L−783483はWO97/28137の実施例20に記載されている3−クロロ−4−(3−(7−プロピル−3−トリフルオロメチル−6−ベンズ−[4,5]−イソキサゾールオキシ)プロピルチオ)フェニル酢酸である)。アッセイを〜16時間4℃で最終容量150μLとなるようにインキュベートした。デキストラン/ゼラチン被覆活性炭100μLと共に氷上で〜10分間インキュベートすることにより未結合リガンドを除去した。3000rpmで10分間4℃にて遠心後、上清フラクション50μLをトップカウントでカウントした。
【0062】
PPARαと結合させるために、TEGM(10mM Tris,pH7.2,1mM EDTA,10%グリセロール,7μL/100mLβ−メルカプトエタノール,10mMモリブデン酸Na,1mMジチオスレイトール、5μg/mLアプロチニン,2μg/mLロイペプチン,2μg/mLベンズアミド及び0.5mM PMSF)に0.1%脱脂粉乳と5.0nM[]L−797773(34Ci/mmole)を加え、±試験化合物下に受容体アリコートをインキュベートした。(L−797733はWO97/28137の実施例62に記載されている(3−(4−(3−フェニル−7−プロピル−6−ベンズ−[4,5]−イソキサゾールオキシ)ブチルオキシ))フェニル酢酸である)。アッセイを〜16時間4℃で最終容量150μLとなるようにインキュベートした。デキストラン/ゼラチン被覆活性炭100μLと共に氷上で〜10分間インキュベートすることにより未結合リガンドを除去した。3000rpmで10分間4℃にて遠心後、上清フラクション50μLをトップカウントでカウントした。
【0063】
B)Gal−4hPPARトランス活性化アッセイ
夫々hPPARγ、hPPARδ、hPPARαのリガンド結合ドメイン(LBD)に隣接するように酵母GAL4転写因子DBDを挿入することによりキメラ受容体発現構築物pcDNA3−hPPARγ/GAL4、pcDNA3−hPPARδ/GAL4、pcDNA3−hPPARα/GAL4を作製した。ヘルペスウイルス最小チミジンキナーゼプロモーターとルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流にGAL4応答エレメント5コピーを挿入することによりレポーター構築物pUAS(5X)−tk−lucを作製した。pCMV−lacZはサイトメガロウイルスプロモーターの制御下にガラクトシダーゼZ遺伝子を含む。活性炭に吸着させた10%ウシ胎仔血清(Gemini Bio−Products,Calabasas,CA)、非必須アミノ酸、ペニシリンG100単位/ml及び硫酸ストレプトマイシン100mg/mlを加えた高グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を96ウェル細胞培養プレートに加え、10%COの加湿雰囲気下に37℃でCOS−1細胞12×10個/ウェルを播種した。24時間後にLipofectamine(GIBCO BRL,Gaithersburg,MD)を製造業者の指示に従って使用してトランスフェクションを実施した。要約すると、Lipofectamine 0.48μl、pcDNA3−PPAR/GAL4発現ベクター0.00075μg、pUAS(5X)−tk−lucレポーターベクター0.045μg及びトランス活性化効率の内部対照としてpCMV−lacZ 0.0002μgから各ウェルのトランスフェクション混合物を構成した。細胞を10%COの雰囲気下に37℃で5時間トランスフェクション混合物中にてインキュベートした。次に活性炭に吸着させた5%ウシ胎仔血清、非必須アミノ酸、ペニシリンG100単位/ml及び硫酸ストレプトマイシン100mg/mlを加えた新鮮な高グルコースDMEM中で±漸増濃度の試験化合物下に細胞を〜48時間インキュベートした。化合物をDMSOで可溶化したので、対照細胞を等濃度のDMSOと共にインキュベートし、最終DMSO濃度はトランス活性化活性を生じないことが分かっている濃度である≦0.1%とした。レポーター溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)を製造業者の指示に従って使用して細胞溶解液を作製した。ルシフェラーゼアッセイ緩衝液(Promega,Madison,WI)を使用してML3000ルミノメーター(Dynatech Laboratories,Chantilly,VA)で細胞抽出液中のルシフェラーゼ活性を測定した。β−D−ガラクトピラノシド(Calbiochem,San Diego,CA)を使用してβ−ガラクトシダーゼ活性を測定した。
【0064】
最大トランス活性化活性をロシグリタゾンやピオグリタゾン等の標準PPARアゴニストと比較することによりアゴニズムを測定した。一般に、トランス活性化の最大刺激がロシグリタゾンで観察される効果の50%未満である場合に化合物は部分アゴニストであると言う。トランス活性化の最大刺激がロシグリタゾンで観察される効果の50%を上回る場合に化合物は完全アゴニストであると言う。
【0065】
C)In Vivo試験
雄性db/dbマウス(10〜11週齢C57Bl/KFJ,Jackson Labs,Bar Harbor,ME)を5頭ずつケージに入れ、粉末Purina齧歯類飼料と水を自由に摂取させた。動物とその飼料を2日おきに計量し、ビークル(0.5%カルボキシメチルセルロース)±指定用量の試験化合物を毎日強制給餌した。薬剤懸濁液を毎日調製した。試験期間中に3〜5日間隔で尾から採血し、血漿グルコース及びトリグリセリド濃度を測定した。グルコース及びトリグリセリド測定は正常食塩水で6倍(v/v)に希釈したヘパリン処理血漿を使用してBoehringer Mannheim Hitachi 911自動アナライザー(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)で実施した。痩せた動物は同様に飼育した年齢一致ヘテロ接合マウスであった。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を例証するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲により決定される。
【0067】
(実施例1)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−4−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミド
【0068】
【化3】

【0069】
ステップA:1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フェノキシ−2−プロピルベンゼンの製造
【0070】
【化4】

【0071】
標記化合物は米国特許第6,008,237号、実施例11、ステップAに記載の方法に従って製造した。
【0072】
ステップB:4−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミドの製造
【0073】
【化5】

【0074】
1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フェノキシ−2−プロピルベンゼン(1.01g,2.9mmol)と4−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド(0.5g,2.9mmol)の無水DMF(29mL)溶液に炭酸セシウム(1.04g,3.2mmol)を加えた。得られた懸濁液を50℃油浴中で5時間撹拌した。室温まで冷却後、反応懸濁液を減圧濃縮して残渣を得た後、酢酸エチルと水に分配した。酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して油状物を得た。ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を溶離液として油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、標記化合物を単離した。
【0075】
ステップC:N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−4−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミドの製造
【0076】
4−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミド(0.045g,0.102mmol)とアセトン(3mL)の溶液に炭酸カリウム(0.028g,0.204mmol)を加えた。得られた懸濁液にイソシアン酸シクロヘキシル(0.026mL,0.204mmol)を滴下した。反応懸濁液を次に65℃油浴中で6時間撹拌した。室温まで冷却後、反応懸濁液を濃縮して残渣を得た。残渣を酢酸エチルと水に分配した。酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して油状物を得た。ヘキサン/酢酸エチル(4:1)とヘキサン/酢酸エチル(3:1)を溶離液として油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、標記化合物を得た。
【0077】
【化6】

【0078】
(実施例2)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−3−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミド
【0079】
【化7】

【0080】
ステップA:3−ヒドロキシベンゼンスルホンアミドの製造
【0081】
【化8】

【0082】
3−アミノベンゼンスルホンアミド(2.35g,13.6mmol)の30%硫酸(18mL)溶液に0℃氷水浴中で撹拌下に亜硝酸ナトリウム(1.22g,17.7mmol)の水(10mL)溶液を滴下した。得られた反応溶液を氷水浴中で30分間撹拌し続けた。溶液を次に100℃油浴中で30分間撹拌した。室温まで冷却後、反応溶液を酢酸エチルとブラインに分配した。震盪後、水相を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮すると、黄色固体が得られた(2.11g,89%収率)。
【0083】
ステップB:1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フェノキシ−2−プロピルベンゼンの製造
【0084】
【化9】

【0085】
標記化合物は米国特許第6,008,237号、実施例11、ステップAに記載の方法に従って製造した。
【0086】
ステップC:3−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミドの製造
【0087】
【化10】

【0088】
3−ヒドロキシベンゼンスルホンアミド(0.5g,2.89mmol)と1−(3−ブロモプロポキシ)−4−フェノキシ−2−プロピルベンゼン(1.01g,2.89mmol)と炭酸セシウム(1.04g,3.18mmol)の無水DMF(10mL)溶液を50℃で5時間撹拌した。反応懸濁液を室温まで冷却し、減圧濃縮してオレンジ色残渣を得た。残渣を酢酸エチルと水に分配した。酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して油状物を得た。ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を溶離液として油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、標記化合物を得た。
【0089】
ステップD:N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−3−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミドの製造
【0090】
3−[3−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミド(0.04g,0.0906mmol)とアセトン(3mL)の溶液に炭酸カリウム(0.025g,0.181mmol)を加えた。得られた懸濁液にイソシアン酸シクロヘキシル(0.023mL,0.181mmol)を滴下した。反応懸濁液を次に65℃油浴中で5時間撹拌した。室温まで冷却後、反応懸濁液を濃縮して残渣を得た。残渣を酢酸エチルと水に分配した。酢酸エチル相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して油状物を得た。ヘキサン/酢酸エチル(4:1)とヘキサン/酢酸エチル(3:1)を溶離液として油状物をシリカゲルクロマトグラフィーにかけ、標記化合物を得た。
【0091】
【化11】

【0092】
(実施例3〜9)
【0093】
以下の実施例3〜9の化合物は容易に製造されるか又は容易に入手可能な化合物から出発して実施例1及び2に記載した方法を使用して製造した。合成は当業者により容易に実施される。
【0094】
(実施例3)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−4−{3−[4−(4−フルオロフェノキシ)−2−プロピルフェノキシ]プロポキシ}ベンゼンスルホンアミド
【0095】
【化12】

【0096】
(実施例4)
4−{3−[2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]プロポキシ}−N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]ベンゼンスルホンアミド
【0097】
【化13】

【0098】
(実施例5)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−4−(3−{4−[4−(メチルスルホニル)フェノキシ]−2−プロピルフェノキシ}プロポキシ)ベンゼンスルホンアミド
【0099】
【化14】

【0100】
(実施例6)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−4−[3−(4−フェノキシフェノキシ)プロポキシ]ベンゼンスルホンアミド
【0101】
【化15】

【0102】
(実施例7)
3−{3−[2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]プロポキシ}−N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]ベンゼンスルホンアミド
【0103】
【化16】

【0104】
(実施例8)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−3−{3−[4−(4−フルオロフェノキシ)−2−プロピルフェノキシ]プロポキシ}ベンゼンスルホンアミド
【0105】
【化17】

【0106】
(実施例9)
N−[(シクロヘキシルアミノ)カルボニル]−3−[4−(4−フェノキシ−2−プロピルフェノキシ)ブトキシ]ベンゼンスルホンアミド
【0107】
【化18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
はH、Cl、F、及びC1−4アルキルから構成される群から選択され、C1−4アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲン原子で置換されており;
はH、Cl、F、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、及び−S(O)CHから構成される群から選択され、C1−4アルキル及びOC1−4アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲン原子で置換されており;
、R及びRは水素、F、Cl、C1−3アルキル、及び−OC1−3アルキルから構成される群から独立して選択され、C1−3アルキル及び−OC1−3アルキルは場合によりF及びClから独立して選択される1〜3個のハロゲンで置換されており;
X及びYは各々独立してO、S、SO、及びSOから構成される群から選択され;
nは1、2、3、及び4から選択される整数を表す]の化合物及び医薬的に許容可能なその塩。
【請求項2】
がH、F、−OC1−3アルキル、及び−S(O)CHから選択され、−OC1−3アルキルは場合により1〜3個のF原子で置換されている請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がCl及びn−プロピルから選択され;
がH及びFから選択され;
、R及びRがHである請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が−OCHCH又は−OCHCFである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がHであり;R及びRが各々独立してH、F、CH、CF、−OCH、−OCF、−OCHCH及び−OCHCFから選択され、他の好適群の化合物ではRとRがHであり、RがH、F、CH、CF、−OCH、−OCF、−OCHCH及び−OCHCFから構成される群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
X及びYが各々独立してO及びSから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
X及びYが各々Oである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
X基がスルホンアミド基に対してメタ位でN−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド部分のフェニルに結合している請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
X基がスルホンアミド基に対してパラ位でN−シクロヘキシルアミノカルボニルベンゼンスルホンアミド部分のフェニルに結合している請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
nが1〜3である請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
nが3又は4である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
X及びYがOであり;nが1〜3から選択される整数であり;R、R及びRがHであり;Rがn−プロピル及びClから選択され;RがH、F、及び−S(O)CHから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
が場合により1〜3個のF原子で置換されたC2−3アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
がn−プロピルである請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
実施例1〜9の化合物と医薬的に許容可能なその塩から選択される化合物。
【請求項16】
請求項1に記載の化合物と医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。
【請求項17】
非インスリン依存性(2型)糖尿病をもつ哺乳動物又はヒト患者における高血糖症の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項18】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における2型糖尿病の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項19】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における脂質代謝障害、高脂血症、及び低HDLの治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項20】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における肥満症の治療又は抑制方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項21】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における高コレステロール血症の治療又は抑制方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項22】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における高グリセリド血症の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項23】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者における脂質代謝異常及び/又は低HDLコレステロールの治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項24】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療又はその発症の危険の低減方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を前記患者に投与する前記方法。
【請求項25】
(1)非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、(2)高血糖症、(3)低グルコース耐性、(4)インスリン抵抗性、(5)肥満症、(6)脂質代謝障害、(7)脂質代謝異常、(8)高脂血症、(9)高グリセリド血症、(10)高コレステロール血症、(11)低HDL値、(12)高LDL値、(13)アテローム性動脈硬化症とその後遺症、(14)血管再狭窄、(15)過敏性腸症候群、(16)クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、(17)他の炎症症状、(18)膵炎、(19)腹部肥満、(20)神経変性疾患、(21)網膜症、(22)腫瘍症状、(23)脂肪細胞腫瘍、(24)脂肪細胞癌(例えば脂肪肉腫)、(25)前立腺癌及び他の癌(例えば胃癌、乳癌、膀胱癌及び結腸癌)、(26)血管新生、(27)アルツハイマー病、(28)乾癬、(29)高血圧、(30)X症候群、(31)卵巣高アンドロゲン血症(多嚢胞性卵巣症候群)、及びインスリン抵抗性を伴う他の障害から構成される群から選択される1種以上の疾患、障害、又は症状の治療又は抑制方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与する前記方法。
【請求項26】
(1)糖尿病、特に非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)、(2)高血糖症、(3)低グルコース耐性、(4)インスリン抵抗性、(5)肥満症、(6)脂質代謝障害、(7)脂質代謝異常、(8)高脂血症、(9)高グリセリド血症、(10)高コレステロール血症、(11)低HDL値、(12)高LDL値、(13)アテローム性動脈硬化症とその後遺症、(14)血管再狭窄、(15)過敏性腸症候群、(16)クローン病や潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患、(17)他の炎症症状、(18)膵炎、(19)腹部肥満、(20)神経変性疾患、(21)網膜症、(22)腫瘍症状、(23)脂肪細胞腫瘍、(24)脂肪細胞癌(例えば脂肪肉腫)、(25)前立腺癌及び他の癌(例えば胃癌、乳癌、膀胱癌及び結腸癌)、(26)血管新生、(27)アルツハイマー病、(28)乾癬、(29)高血圧、(30)X症候群、(31)卵巣高アンドロゲン血症(多嚢胞性卵巣症候群)、及びインスリン抵抗性を伴う他の障害から構成される群から選択される1種以上の疾患、障害、又は症状の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物と、
(a)2型糖尿病の治療に使用される他の化合物、例えば(i)グリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン等)やWO97/27857、97/28115、97/28137及び97/27847に開示されている化合物等のPPARアゴニスト;(ii)メトホルミンやフェンホルミン等のビグアニド;(iii)蛋白質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(b)インスリン又はインスリンミメティクス;
(c)スルホニル尿素(例えばトルブタミドやグリピジド)、又は関連物質;
(d)αグルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース);
(e)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及び他のスタチン類)、(ii)胆汁酸溶解剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレート)等のPPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト(例えばKRP−297)、(vi)コレステロール吸収阻害剤(例えばβ−シトステロール)、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばアバシミブ)、及び(viii)抗酸化剤(例えばプロブコール);
(f)PPARδアゴニスト(例えばWO97/28149に開示されているもの);
(g)抗肥満化合物(例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY阻害薬、及びβアドレナリン作用性受容体アゴニスト);
(h)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;並びに
(i)炎症症状用薬剤(例えばアスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコイド、アザルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤)から構成される群から選択される1種以上の他の治療有効量の化合物を投与する前記方法。
【請求項27】
高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDL値、高LDL値、高脂血症、高グリセリド血症、及び脂質代謝異常から構成される群から選択される1種以上の症状の治療方法であって、前記治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与する前記方法。
【請求項28】
高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、低HDL値、高LDL値、高脂血症、高グリセリド血症、及び脂質代謝異常から構成される群から選択される1種以上の症状の治療方法であって、前記治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物とHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の組み合わせを投与する前記方法。
【請求項29】
HMG−CoAレダクターゼ阻害剤がスタチンである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
スタチンがロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及びリバスタチンから構成される群から選択される請求項29に記載の方法。
【請求項31】
炎症症状、炎症性腸疾患、クローン病及び潰瘍性大腸炎から選択される1種以上の症状の治療方法であって、前記治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者に治療有効量の請求項1に記載の化合物を投与する前記方法。
【請求項32】
治療を必要とする哺乳動物又はヒト患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物とHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の組み合わせを前記患者に投与する前記方法。
【請求項33】
(1)請求項1に記載の化合物と;
(2)(a)インスリン増感剤、例えば(i)グリタゾン(例えばトログリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾン、MCC−555、ロシグリタゾン等)やWO97/27857、97/28115、97/28137及び97/27847に開示されている化合物等のPPARγアゴニスト;(ii)メトホルミンやフェンホルミン等のビグアニド;(iii)蛋白質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤、及び(iv)ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IV)阻害剤;
(b)インスリン又はインスリンミメティクス;
(c)スルホニル尿素(例えばトルブタミドやグリピジド)、又は関連物質;
(d)αグルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース);
(e)コレステロール低下剤、例えば(i)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、リバスタチン、イタバスタチン、ZD−4522及び他のスタチン類)、(ii)胆汁酸溶解剤(コレスチラミン、コレスチポール、及び架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体)、(iii)ニコチニルアルコール、ニコチン酸又はその塩、(iv)フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレート及びベンザフィブレート)等のPPARαアゴニスト、(v)PPARα/γデュアルアゴニスト(例えばKRP−297)、(vi)コレステロール吸収阻害剤(例えばβ−シトステロール)、(vii)アシルCoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えばアバシミブ)、及び(viii)抗酸化剤(例えばプロブコール);
(f)PPARδアゴニスト(例えばWO97/28149に開示されているもの);
(g)抗肥満化合物(例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、オルリスタット、ニューロペプチドY阻害薬、及びβアドレナリン作用性受容体アゴニスト);
(h)回腸胆汁酸トランスポーター阻害剤;並びに
(i)炎症症状用薬剤(例えばアスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、グルココルチコイド、アザルフィジン、及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤)から構成される群から選択される治療有効量の1種以上の化合物と;
(3)医薬的に許容可能なキャリヤーを含有する医薬組成物。

【公表番号】特表2007−504285(P2007−504285A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536529(P2006−536529)
【出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/000689
【国際公開番号】WO2004/066963
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】