説明

N−スルホニル化アミノ酸誘導体およびマトリプターゼ阻害剤としてのそれらの使用

本発明は、アリール基がスルホニル基を経てアミノ酸にN−末端結合し、そして少なくとも1つのイミノ基、および変形していてもよいアミノ−、アミジノ−またはグアニジノ基を表す少なくとも1つのさらなる塩基性基を含む基が、カルボニル基を経てC−末端結合している、N−スルホニル化アミノ酸誘導体に関する。本発明はまた、これら化合物の製造法およびそれらの使用、特にマトリプターゼの阻害剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、アリール基がスルホニル基を経てアミノ酸にN−末端結合し、そして少なくとも1つのイミノ基、および変形していてもよいアミノ、アミジノまたはグアニジノ基を表す少なくとも1つのさらなる塩基性基を含む基が、カルボニル基を経てC−末端結合している、N−スルホニル化アミノ酸誘導体に関する。本発明はさらに、これらの化合物の製造法、並びにそれらの好ましくは薬剤としてのおよびこれに関連して特にマトリプターゼの阻害剤としての使用に関する。
【0002】
プロテアーゼは、腫瘍細胞の成長および転移を可能にするまたは刺激する多くの生理学的プロセスを調節する。これは、特に、腫瘍細胞を囲む細胞外基質(マトリックス)たんぱく質のたんぱく分解に関係し、この分解によって、腫瘍から移動してきた腫瘍細胞が隣接組織並びにリンパ系および血液系へ侵入することが可能となる。プロテアーゼはまた、例えば、腫瘍細胞の増殖または脈管形成を刺激して腫瘍の成長を可能にする、成長因子の活性化にかかわる。これらのたんぱく分解酵素には、様々な基質メタロプロテアーゼ、膜結合メタロプロテアーゼ、リソソームシステインプロテアーゼおよび多数のセリンプロテアーゼ、例えばウロキナーゼ、プラスミン、エラスターゼ、トロンビンまたはカテプシンG、そしてさらにII型膜内外セリンプロテアーゼマトリプターゼまたはMT−SP1が含まれる(Hooper等, J. Biol. Chem. 276, 857-860, 2001)。
【0003】
プロテアーゼ阻害剤の使用により腫瘍の成長および転移を抑制する多くのの試みがなされてきたが、基質メタロプロテアーゼの阻害剤での実験は診療試験においてほとんど効果を示さなかった(Coussens等, Science 295, 2387-2392, 2002)。ウロキナーゼの阻害剤での最初の臨床研究も開始されたが、マトリプターゼは乳癌から元来単離されたトリプシン様セリンプロテアーゼであり、塩基性アミノ酸アルギニンのC−末端ペプチド結合を選択的に開裂するので、それらの有効性についての結果は今のところまだ出ていない(Shi等, Cancer Res. 53, 1409-1415, 1993; Lin等, J. Biol. Chem. 272, 9147-9152, 1997)。
【0004】
1998年に、マトリプターゼ遺伝子は、健康なおよび発癌性の腸組織が用いられたサブトラクティブハイブリダイゼーション法によって、推定上の腫瘍サプレッサーとしてクローンされた(Zhang等, Cytogenet. Cell Genet. 83, 56-57, 1998)。
【0005】
マトリプターゼおよびMT−SP1(「膜型セリンプロテアーゼ1」の略語)(Takeuchi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11054-11061, 1999; Takeuchi等, Biol. Chem. 275, 26333-26342, 2000)は同じcDNAを有する。しかしながら、交互スプライシングのため、マトリプターゼのたんぱく質配列は、MT−SP1と比べて、172アミノ酸によってN末端で切断されている。MT−SP1の遺伝子は前立腺腫瘍の上皮細胞系から単離された。
【0006】
本発明において、用語「マトリプターゼ」は、前に記載された(Takeuchi等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 11054-11061, 1999;Lin等, Biol. Chem. 274, 18231-18236, 1999)登録番号AF118224、AF133086、BANKIt257050およびNM021978(GenBank/EBIデータバンク)を有する遺伝子配列から誘導される72〜92kDaの分子量を有するあらゆるトリプシン様たんぱく質を指す。用語「マトリプターゼ」は、特に、たんぱく質の単鎖および2鎖形の両方を指す。マトリプターゼの不活性形である酵素原は単鎖たんぱく質である。マトリプターゼの2鎖形は、触媒活性を有するその活性形である。従って、本発明において、用語「マトリプターゼ」は、特に、上記の本来のマトリプターゼ、並びにMT−SP1を指す。
【0007】
酵素は上皮または癌細胞膜のトランスメンブランドメインによってつながれており、マトリプターゼのセリンプロテアーゼドメインは細胞表面に、従って細胞外空間にある(Hooper等, J. biol. Chem. 276, 857-860, 2001)。従って、マトリプターゼが、潜在成長因子および他のたんぱく分解カスケードの活性において、細胞外基質たんぱく質の分解およびトランスフォーメーションによる乳癌細胞の増殖および転移にかかわっているのではないかと考えられてきた(Shi等, Cancer Res. 53, 1409-1415, 1993; Linn等, J. Biol. Chem. 272, 9147-9152, 1997)。
【0008】
マトリプターゼを母乳から単離することは可能であるが、この場合、ほとんど全く、内因性阻害剤HAI−1とのたんぱく分解不活性複合体の形であった(Linn等, J. Biol. Chem. 274, 18237-18242, 1999)。これとは対照的に、乳癌細胞からのマトリプターゼは極めて実質的に非複合形、従って触媒活性形であり、そして少しの部分のみがHAI−1に結合している。
【0009】
マトリプターゼの第1の潜在的基質について上で説明してきた。マトリプターゼは、分散因子とも呼ばれる肝細胞因子(HGF)を活性化することができる(Lee等, J. Biol. Chem. 275, 36720-36725, 2000)。Pro−HGFは、癌細胞または間質細胞によって単鎖たんぱく質として不活性な形で分泌され、そして細胞外空間でのArg495のC−末端開裂によって活性2鎖形(HGF)へ変換される。HGFの結合は、特定のチロシン残基上で活性化されそしてリン酸化される細胞表面レセプターc−Metを生じる。c−Metの高発現、マトリプターゼおよびHAI−1と乳がん患者の予後の悪さとの間に緊密な関係があることが最近証明された(Kang等, Cancer Res. 63, 1101-1105, 2003)。また、マトリプターゼの発現が高まることが卵巣腫瘍の研究で示された。さらに、マトリプターゼが、I/II型の腫瘍とは対照的に、特にIII/IV型の進行した腫瘍においてもっぱらHAI−1なしで発現されることが分かった。これは、進行段階では、マトリプターゼとインヒビターHAI−1との間に不均衡があって、マトリプターゼのたんぱく分解活性を高め、それによっておそらく腫瘍細胞の侵略的潜在能力も高めるということを示している(Oberst等, Clin. Cancer Res. 8, 1101-1107, 2002)。
【0010】
Pro−HGFの活性化の他に、マトリプターゼはプラスミノゲン活性化物質カスケードの活性化にもかかわっている可能性がある。従って、マトリプターゼはプロ−ウロキナーゼをウロキナーゼ(uPA)へ活性化することができ(Lee等, J. Biol. Chem. 275, 36720-36725, 2000; Takeuchi等, J. Biol. Chem. 275, 26333-26342, 2000)、これはプラスミノゲンをプラスミンへ変換する。プラスミンは、細胞外基質たんぱく質の分解にかかわる基質メタロプロテアーゼの主要活性化物質であり、これは転移の必須条件とも考えられている。
【0011】
Ihara等(J. Biol. Chem. 277, 16960-16967, 2002)は、胃癌細胞が、マトリプターゼをグルコシル化することができるβ1−6−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT−V)の発現を高めることを示すことができた。この変化はマトリプターゼを分解に対してより安定にし、そしてたんぱく分解活性形で高濃度にて存在させる。
【0012】
これらの発見から、マトリプターゼの効果的で選択的な阻害剤の開発によって、腫瘍の増殖およびそれらの転移を阻止することが可能であると結論することができる。ベンズアミジンとおよびウシの膵臓チロシン阻害剤と複合したマトリプターゼの触媒ドメインのX線構造を解明することも現在では可能であるが、今までのところマトリプターゼの阻害剤はほんの少ししか知られていない(Friedrich等, J. Biol. Chem. 277, 2160-2168, 2002)。
【0013】
Enyedy等(J. Med. Chem. 44, 1349-1355, 2001)は、最も効果的な阻害剤が0.19μMのKを有するビス−ベンズアミジンについて記載している。
WO01/97794には、マトリプターゼが一部役割を果たす癌の進行を阻害する方法が記載されている。この場合に用いられる化合物は、生理学的pHで正電荷を運ぶことができる2つの基を含む。これらの基は、5〜30、好ましくは15〜24オングストロームの長さを有する化学構造単位によってさらに共に結合している。開示されている正に帯電した基は、アミノ、アミジノ、グアニジノ基、およびアミジノまたはグアニジノ基から誘導される環状基である。アミノ酸誘導体はWO01/97794には記載されておらず、従って、特にスルホニル化アミノ酸誘導体についての記載はない。それどころか、WO01/97794に明記されている化合物は、本発明で請求される化合物とは根本的に異なっている。
【0014】
C−末端アルギナルを有するトリペプチドアルデヒドはWO02/20475で公表されている。マトリプターゼをこれらの阻害剤と共に30分間予備インキュベートした後、最も効果的な化合物のIC50値は100nM未満と測定されているが、正確な阻害定数は
記載されていない。これらの阻害剤はマトリプターゼに共有結合してヘミアセタールを形成すると考えられる。しかしながら、例えば、トロンビンまたは因子Xaのような他のチロシン様セリンプロテアーゼの阻害剤を開発する場合、そのような遷移状態−類似ペプチドアルデヒドは薬剤に用いうる活性物質の開発に不適当であることが示されている。
【0015】
Long等(Bioorganic. Med. Lett. 11, 2515-1519, 2001)は、ヒマワリの種子から単離された14アミノ酸の二環式ペプチドの合成について記載している。ペプチドはマトリプターゼを0.92nMの阻害定数で阻害するが、これらの構造は活性物質の開発に不適当であるということを考えなければならない。
【0016】
従って、本発明の目的の1つは、治療用途に適しており、そしてマトリプターゼを高い活性および特異性で阻害する、活性物質を提供することである。
従って、本発明は、 式(I)
【0017】
【化1】

【0018】
の化合物またはこの化合物の塩もしくはプロドラッグに関し、式中、
(a)XおよびXは、互いに独立して、水素または1、2もしくは3個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして基XおよびXの少なくとも1つは構造(I’)
【0019】
【化2】

【0020】
の基であり、ここで、
− (I’)中のmまたはnのついたメチレン基の少なくとも1つは、ヒドロキシル、ハロゲン、プソイドハロゲンまたはCOOR’基によって少なくとも1回置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、および/または
− (I’)中のmまたはnのついたメチレン基の炭素原子の少なくとも1つは、S、NもしくはOで置き換えられていてもよく、および/または
− (I’)中の環
【0021】
【化3】

【0022】
を形成する結合の少なくとも1つは二重結合でもよく、あるいは
(b)XおよびXは、化合物(I)が構造(I”)
【0023】
【化4】

【0024】
を有するように橋をかけて環を形成し、ここで、
− (I”)中のmまたはnのついたメチレン基の少なくとも1つは、ヒドロキシル、ハロゲン、プソイドハロゲンまたはCOOR’基によって少なくとも1回置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、および/または
− (I”)中のmまたはnのついたメチレン基の炭素原子の少なくとも1つは、S、NもしくはOで置き換えられていてもよく、および/または
− スルホニル化アミノ酸にC末端結合したイミノ基を保持しながら、(I”)中の環
【0025】
【化5】

【0026】
を形成する結合の少なくとも1つは二重結合でもよく、
そして、
(i)Rは、原子O、NもしくはSの少なくとも1つを含み、5〜20個の炭素原子を有する、部分的に水素添加されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基、あるいは1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、ここで、Rは、
− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基、および/または
− ハロゲン、プソイドハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、アミジノ、グアニジノまたはカルボキシル基によって少なくとも1回置換されていてもよい1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状もしくは環状アルキルまたはアルキルオキシまたはアルキルチオ基、ここで、カルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状もしくは環状アルキル基でエステル化されていてもよく、1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状もしくは環状アルキル基はO、NおよびSよりなる群から選択される少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい、および/または
− 5〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール基、ここで、このアリールまたはヘテロアリール基は
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状または環状アルキル基および/または
−− 少なくとも1つのCOR’および/またはCOOR’基、ここで、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基である、および/または
−− 少なくとも1つのハロゲン基および/または
−−少なくとも1つのプソイドハロゲン基および/または
−− 少なくとも1つのアルコキシ基または1つのアルキルチオ基、ここで、アルキル基は各場合において1〜10個の炭素原子を有する、および/または
−− 少なくとも1つのニトロ基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのハロアルキル基
で置換されていてもよく、そしてアリールまたはヘテロアリール基は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基を経てまたは酸素原子または硫黄原子を経て基Rに結合している;
− 少なくとも1つのヒドロキシル、アミノ、シアノ、アミジノ、グアニジノ、カルボキシルまたはカルボキシアルキル基、ここで、アミノ基はアシル化されていてもよく、および/またはカルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよく;
(ii)Rは、1〜10個の炭素原子を有する少なくとも一置換されたアリール基であり、ここで、
− これらの炭素原子の少なくとも1つはS、NまたはOで置き換えられていてもよい、
− 少なくとも1つの置換基はRに従う基であり、
− Rは、ヒドロキシル、COR’またはCOOR’基でさらに置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基である;
(iii)Rは次式(II):
−T−A−R (II)
の基であり、ここで、
− Aは不在かまたは
−− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状または環状アルキル基および/または
−− 5〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたは1つのアラルキル基および/または
−− 3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基および/または
−− 少なくとも1つのヒドロキシル、シアノ、1〜10個の炭素原子を有するアルキルオキシもしくはアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシアルキル基、ここで、カルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよい1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;
− Tは不在かまたは次の基:
【0027】
【化6】

【0028】
の1つであり、ここで、Rは水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基または1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、これはAと一緒になって少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい環を形成する;
ここで、アミドまたはエステル結合はいずれの配列で組み込んでもよい、つまり、次の配列も含まれる:
【0029】
【化7】

【0030】
− Aは、N、SおよびOよりなる群から選択される少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい、1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状もしくは環状アルキレン基または1〜10個の炭素原子を有するアリール−、ヘテロアリール−もしくはアラルキレン基であり、これは、
−− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状もしくは環状アルキル基および/または
−− 5〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたは1つのアラルキル基および/または
−− 3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基および/または
−− 少なくとも1つのヒドロキシル、シアノ、1〜10個の炭素原子を有するアルキルオキシもしくはアルキルチオ基、カルボキシルもしくはカルボキシアルキル基、ここで、カルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよい;
(iv)Rは、次の変形されていてもよい塩基性基の1つであり:
【0031】
【化8】

【0032】
ここで、t=0、1であり;RおよびRは互いに独立して、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、またはAと一緒になって環を形成する1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基であるか、あるいはヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アシルまたはアルキルオキシカルボニル基であり、ここで、アルキルアミノ、アシルおよびアルキルオキシカルボニル基は互いに独立して1〜6個の炭素原子を有し、Rは、水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、またはRと一緒になって環を形成する1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基である;
(v)QはCH基またはNのいずれかであり;
(vi)j=0、1、2;
k=0、1、2、3;
m、nは互いに独立して、0、1、2、3、4、5であり、m+n=3、4、5であり;
そして式(I)の化合物は、s=0、1、2である
【0033】
【化9】

【0034】
でも、s=0、1である
【0035】
【化10】

【0036】
でもない。
本発明の上記の化合物が塩の形であるならば、鉱酸とのおよび/または適当な有機酸との塩が好ましい。本発明の化合物は塩酸塩または硫酸塩の形であるのが特に好ましい。適当な有機酸の例は、ギ酸、酢酸、メチルスルホン酸、コハク酸、リンゴ酸およびトリフルオロ酢酸である。適当な有機酸との本発明の化合物の塩は酢酸塩であるのが特に好ましい。
【0037】
好ましい態様では、本発明の化合物は、基XおよびXの少なくとも1つが構造(I’)をもつ構造を有する。(I)の中心におけるアミノ酸のカルボニル基に結合している非環状イミンのこの態様の範囲内で、好ましい化合物は、まさに基XおよびXの1つが構造(I’)を有するものである。この場合における非環状基は、特に、好ましくは水素、メチル、エチルまたはn−プロピル、さらに好ましくはメチルまたはエチル、特に好ましくはメチルである。置換された環状基に関しては、好ましい態様は、m+nが3または4であるものである。基R中に必須に存在する基Rは、上記定義の範囲内で必要に応じて一般に選択することができる。極めて特に好ましい基Rは、変形されておらず、かつ
【0038】
【化11】

【0039】
よりなる群から選択されるものである。
(I’)の環の指数mおよびnは、基Rが、中心アミノ酸のカルボニル基に結合している窒素に対して、環の大きさにより、2、3またはさらに4位置に原則として位置することができるように選択しうる。例えば、3または4位置が好ましく、m=n=2であるとき、4位置が特に好ましい。
【0040】
(I)の中心におけるアミノ酸のカルボニル基に結合している非環状イミンの態様の範囲内で、さらに好ましい基Rは、Aが不在のものである。官能基Tが不在であるかあるいは
【0041】
【化12】

【0042】
から選択される基Rがさらに好ましい。極めて特に好ましい態様は、Tが不在のものである。基Aに関しては、(I)の中心におけるアミノ酸のカルボニル基に結合している非環状イミンの範囲内で好ましいのは、1、2、3、4または5個の炭素原子を有するアルキレン基、特にメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、ブチレンおよびペンチレン基である。
【0043】
がアリール、ヘテロアリールまたはアラルキレン基である場合、例えば、vおよびwは互いに独立して0、1または2であり、2つのアルキレン基は互いに対して1、2または1、3位置に位置しうる、構造
【0044】
【化13】

【0045】
の基について述べる。例えば、1、4位置が好ましい。アリール基、および2つのアルキレン基の少なくとも1つは、いずれも、上で定義したとおりに適当に置換されていてもよい。Aがヘテロアリール基を含んでいるならば、これは1〜3個の複素原子を有しているのが好ましい。
【0046】
(I’)の環は少なくとも1つの複素原子を原則として含むことができ、これに関して好ましいものは、酸素、窒素または硫黄である。複素原子が例えば窒素であるならば、この窒素はさらなる基として、例えば水素または1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基を有していても、あるいは環の隣接C原子と共に二重結合を形成してもよい。特に好ましい態様では、(I’)のメチレン基はいずれも複素原子で置換されていない。
【0047】
(I’)の環がさらに置換されているならば、好ましいさらなる置換基は、特に、一般構造−COOR’のカルボキシアルキル基であり、R’は、好ましくは1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基、特に好ましくはメチルまたはエチル基である。
【0048】
好ましい態様では、(b)に従う本発明の化合物は、(I)の中心におけるアミノ酸のカルボニル基に結合している非環状イミンを有し、従って、(I”)を有する。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、この化合物は構造(I”)
【0049】
【化14】

【0050】
を有する化合物にも関する。
(I”)における環は、これに関連して好ましくは5、6または7個の環原子を有する。従って、基Rは、中心アミノ酸のカルボニル基に結合しているイミン窒素に対して2、3または4位置に位置していると考えられる。特に好ましい態様は、環状アミンの環が5または6個の環原子を有するものである。6員環が特に好ましい。この特に好ましい6員環では、指数mおよびnは必要に応じて選択することができる。可能な組み合わせの例は、例えば、m=0とn=4、m=1とn=3、m=2とn=2、m=3とn=1、m=4とn=0である。本発明の化合物の極めて特に好ましい態様では、m=n=2である。構造(I)における基Qは、極めて特に好ましくは、中心アミノ酸のカルボニル基に結合しているイミン窒素に対して4位置に位置する。
【0051】
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、m=n=2であることを特徴とする化合物にも関する。
本発明では、環状イミンの環は好ましく置換されていてもよい。上記置換基の中で、とりわけCOOR’基が特に好ましく、ここで、R’は1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキル基が順に好ましく、特に好ましいのはメチル基またはエチル基である。環がハロゲンで置換されているならば、フッ素、塩素および臭素が特に好ましい。ヒドロキシル基は同様に適した置換基である。環は、2つ以上の同じまたは異なる置換基、特に好ましいと記載されたものでさらに置換されていてもよい。
【0052】
(I”)の環におけるmまたはnの付いたメチレン基の少なくとも1つは複素原子、好ましくは酸素、窒素または硫黄で置換されていてもよい。例えば、複素原子が窒素であるならば、この窒素はさらなる基として、水素または1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基を有していても、あるいは環の隣接C原子と共に二重結合を形成してもよい。(I”)の環は少なくとも1つの二重結合を含むのが非常に一般的であり、これは2つの複素原子、2つのC原子または1つのC原子と1つの複素原子の間で形成されうる。従って、本発明では、少なくとも1つの二重結合を有し、そして中心アミノ酸のカルボニル基に結合しているイミン窒素が保持されている、すなわち3つの単結合によって隣接原子に結合している環について記載する。
【0053】
特に好ましい態様では、(I”)におけるメチレン基は複素原子で置換されていない。さらに特に好ましい態様では、環を構成するメチレン基は置換されない。
従って、本発明また、上記のような化合物であって、XおよびXによって形成される環が次の構造
【0054】
【化15】

【0055】
を有し、m、nが互いに独立して0、1、2、3、4、5であり、m+n=3、4、5である化合物にも関する。これに関連して、さらに好ましい化合物は、mおよびnが、6員環が形成されるように選ばれる化合物である。従って、この場合、Qは上記のようにイミン窒素に対して2、3または4位置に位置し、4位置が特に好ましい。さらにm=n=2であると特に好ましい。
【0056】
本発明では、QはCH基または窒素である。本発明はさらにまた、このCH基が水素の代わりに適当な置換基を有する化合物についても説明する。特に好ましい置換基は、環のメチレン基がやはり置換されうるものである。
【0057】
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、Qが窒素であることを特徴とする化合物についても記載する。
この態様の範囲内で、基R中に適切な場合に存在する基Aは、上記定義の範囲内で必要に応じて選択することができる。特に好ましい基Aは、メチレンまたはエチレンまたはプロピレン基、特にメチレンまたはエチレン基であり、そして置換されていてもよく、置換基として特に好ましいのは、1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチルおよびエチル、特に好ましくはメチル、および/またはハロゲン、特にフッ素、塩素および臭素、および/または好ましくは5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、および/またはカルボキシアルキル基であり、ここで、アルキル基は好ましくはメチルまたはエチルであり、カルボキシル基は好ましくはメチルまたはエチル基でエステル化されているか、あるいはアミド化されている。
【0058】
Qが窒素原子である本発明の化合物の極めて特に好ましい態様では、基Aは不在である。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、Qが窒素原子であり、そしてAが不在であることを特徴とする化合物についても記載する。
【0059】
本発明において基R中に存在してもよい官能基Tについては、上に記載の全ての基を選択することも可能である。特にQが窒素原子である場合、好ましい官能基Tは構造
【0060】
【化16】

【0061】
の基である。T基の特に好ましい構造は
【0062】
【化17】

【0063】
であり、Rが水素であるとさらに好ましい。さらに特に好ましい態様では、Tは構造
【0064】
【化18】

【0065】
の基であって、ここで、Tは極めて特に好ましくは構造
【0066】
【化19】

【0067】
の官能基である。この場合、アミドまたはエステル基はいずれの配列で組み込まれることも可能である。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、Qが窒素原子であり、そしてTが構造
【0068】
【化20】

【0069】
の官能基であることを特徴とする化合物についても記載する。
基R中に必須に存在する基Aについては、上記定義内で制限はない。
特に、Qが窒素原子であり、そしてさらに特にTがカルボニル基である場合、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基が基Aには好ましく、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基が特に好ましく、メチレン、エチレンおよびプロピレン基がとりわけ好ましい。
【0070】
がアリール、ヘテロアリールまたはアラルキル基である場合、構造
【0071】
【化21】

【0072】
の基が例に挙げられ、ここで、vおよびwは互いに独立して0、1または2であり、2つのアルキレン基は互いに対して1、2または1、3位置に位置することもできる。例えば、1、4位置が好ましい。アリール基、および2つのアルキレン基の少なくとも1つはいずれも適当に置換されていてもよい。Aがヘテロアリール基を含むならば、これは1〜3個の複素原子を有しているのが好ましい。
【0073】
基Aは上で定義したように適当に置換されていてもよい。置換基は、特にハロゲン、好ましくはフッ素、塩素または臭素、および/または好ましくは1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはメチルおよびエチル、および/またはシクロアルキル基、好ましくは5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルキル基および/またはカルボキシアルキル基であり、ここで、アルキル基は、好ましくは、メチルまたはエチルであり、そしてカルボキシル基は好ましくはメチルまたはエチル基でエステル化されているか、あるいはアミド化されている。
【0074】
本発明の極めて特に好ましい態様では、基Aは置換されていない。従って、本発明は上記のような化合物であって、Aがメチレン、エチレンまたはプロピレン基であることを特徴とする化合物について記載する。特に、本発明は上記のような化合物であって、次の構造
【0075】
【化22】

【0076】
(式中、s=1、2、3である)
を有することを特徴とする化合物について記載する。
同様に好ましい態様では、本発明は上記のような化合物であって、官能基Tとして構造
【0077】
【化23】

【0078】
の基を有し、従って、次の構造
【0079】
【化24】

【0080】
(式中、s=1、2、3、このましくはs=2である)
を有することを特徴とする化合物について記載する。
全ての上記構造は、基R中に必須に存在する基Rとして用いることができる。これに関連して、t=0が好ましい。これに関連して特に好ましいのは、次の構造:
【0081】
【化25】

【0082】
の基Rであり、ここで、さらに好ましくはRおよびRは同様に水素である。
極めて特に好ましい基Rは次の構造:
【0083】
【化26】

【0084】
のものであり、ここで、さらに好ましくはRおよびRは同様に水素である。
従って、本発明は上記のような化合物であって、R
【0085】
【化27】

【0086】
よりなる群から選択されることを特徴とする化合物に関する。
本発明のさらに好ましい態様では、QはCH基である。従って、本発明はまた上記のような化合物であって、QがCH基であることを特徴とする化合物について記載する。
【0087】
この態様の範囲内で、基R中に適切な場合に存在する基Aは、上記定義の範囲内で必要に応じて選択することができる。
特に好ましい基Aは、メチレンまたはエチレンまたはプロピレン基、特にメチレンまたはエチレン基であり、そして置換されていてもよく、置換基として特に好ましいのは、1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチルおよびエチル、および/またはハロゲン、特にフッ素、塩素および臭素、および/または好ましくは5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、および/またはカルボキシアルキル基であり、ここで、アルキル基は好ましくはメチルまたはエチルであり、カルボキシル基は好ましくはメチルまたはエチル基でエステル化されているか、あるいはアミド化されている。
【0088】
QがCH基である本発明の化合物の極めて特に好ましい態様では、基Aは不在である。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、QがCH基であり、そしてAが不在であることを特徴とする化合物についても記載する。
【0089】
本発明において基R中に存在してもよい官能基Tについては、上に記載の全ての基を選択することも可能である。特にQがCH基である場合、好ましい官能基Tは構造
【0090】
【化28】

【0091】
の基である。T基の特に好ましい構造は
【0092】
【化29】

【0093】
であり、Rが水素であるとさらに好ましい。さらに特に好ましい態様では、Tは構造
【0094】
【化30】

【0095】
の基であって、ここで、Tは極めて特に好ましくは構造
【0096】
【化31】

【0097】
の官能基である。この場合、アミドまたはエステル基はいずれの配列で組み込まれることも可能である。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、QがCH基であり、そしてTが構造
【0098】
【化32】

【0099】
の官能基であることを特徴とする化合物についても記載する。
QがCH基であり、そしてTが好ましい上記官能基の1つである場合、本発明の特に好ましい態様では基Aは不在である。
【0100】
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、次の構造:
【0101】
【化33】

【0102】
を有する化合物についても記載する。
上記構造式に明記されている基Rの4位置の他に、2または3位置がさらに可能であり、好ましいのは4位置である。
【0103】
本発明のさらに好ましい態様では、基Aおよび官能基Tは不在である。
従って、本発明はまた上記のような化合物であって、次の構造:
【0104】
【化34】

【0105】
を有する化合物についても記載する。
上記構造式に明記されている基Rの4位置の他に、2または3位置がさらに可能であり、好ましいのは4位置である。
【0106】
基R中に必須に存在する基Aについては、すでに上で論じたように、上記の定義内で制限はない。
特にQがCHであり、そしてさらに特にいずれかのTが構造
【0107】
【化35】

【0108】
の基または不在である場合、基Aは1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、特にメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基、さらに特にメチレン、エチレン、プロピレン基、極めて特にエチレン基であるのが好ましい。
【0109】
がアリール、ヘテロアリールまたはアラルキレン基である場合、、構造
【0110】
【化36】

【0111】
の基は、例えば、vおよびwが互いに独立して0、1または2であり、2つのアルキレン基が互いに1、2または1、3位置に位置していてもよい。例えば、1、4位置が好ましい。アリール基、および2つのアルキレン基の少なくとも1つはいずれも適当に置換されていてもよい。Aがヘテロアリール基を含むならば、これは1〜3個の複素原子を有するのが好ましい。
【0112】
はまた上で定義したように適当に置換されていてもよい。置換基は、特にハロゲン、好ましくはフッ素、塩素または臭素、および/または1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピル、特に好ましくはメチルおよびエチル、および/または好ましくは5、6または7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、および/またはカルボキシアルキル基であり、ここで、アルキル基は、好ましくはメチルまたはエチルであり、カルボキシル基は、好ましくはメチルまたはエチル基でエステル化されているか、あるいはアミド化されている。
【0113】
本発明の極めて特に好ましい態様では、Aは置換されていない。
従って、本発明はまた次の構造:
【0114】
【化37】

【0115】
を有することを特徴とする、上記のような化合物について記載するものである。上記構造式に明記されている基Rの4位置の他に、2または3位置も同様に可能であり、好ましいのは4位置である。
【0116】
従って、本発明はまた次の構造:
【0117】
【化38】

【0118】
を有することを特徴とする、上記のような化合物について記載するものである。上記構造式に明記されている基Rの4位置の他に、2または3位置も同様に可能であり、好ましいのは4位置である。
【0119】
上記構造はいずれも、基R中に必須に存在する基Rとして用いることができる。ここで、t=0であるのが好ましい。特に好ましいのは次の構造:
【0120】
【化39】

【0121】
の基Rであり、ここで、RおよびRは等しく水素であるとさらに好ましい。
極めて特に好ましいRは次の構造:
【0122】
【化40】

【0123】
のものであり、ここで、RおよびRは等しく水素であるとさらに好ましい。
従って、本発明はまた、R
【0124】
【化41】

【0125】
よりなる群から選択されることを特徴とする、上記のような化合物に関するものである。
基R中に存在する基Rは本発明では構造
【0126】
【化42】

【0127】
であるのが特に好ましい。
に関しては、定義(ii)の範囲に入る一般に全ての基が可能である。従って、考えられるアリール基は例えばフェニル基またはナフチル基であって、このアリール基の炭素原子の少なくとも1つは、S、NおよびOよりなる群から選択される複素原子で入れ代わっていてもよい。フェニル基は基Rとして特に好ましい。チエニルおよびピリジルは、少なくとも1つの複素原子を含むアリール基として好ましい。
【0128】
従って、本発明は、Rが少なくとも1置換されたフェニル基、チエニル基またはピリジル基であることを特徴とする、上記のような化合物に関するものである。
特に好ましい態様では、Rは少なくとも1置換されたフェニル基である。
【0129】
アリール基、特に好ましくはフェニル基では、Rは上で定義されたような少なくとも1つの置換基Rを有し、構造
【0130】
【化43】

【0131】
の1つが好ましい。
ここで、特に好ましい置換基Rは、
【0132】
【化44】

【0133】
よりなる群から選択される1つである。
構造
【0134】
【化45】

【0135】
の置換基がRとして極めて特に好ましい。置換基Rはアリール基の全ての位置に一般に位置することができる。特に好ましいフェニル基では、従って、基Rの2、3または4位置が可能であり、フェニル基上での基Rの3位置が特に好ましい。
【0136】
基Rの他に、アリール基は少なくとも1つの置換基をさらに持っていてもよい。特に好ましい態様では、アリール基は1つの置換基を有する。
(I)における中心アミノ基のα−炭素原子上で基Rが結合しているアルキレン基は0〜3個の炭素原子を一般に有する。このアルキレン基は、好ましくは1、2または3個、特に好ましくは1または2個、極めて特に好ましくは1個の炭素原子を有する。
【0137】
従って、本発明は、次の構造:
【0138】
【化46】

【0139】
を有することを特徴とする、上記のような化合物に関するものである。
上に示す構造は一般に3−アミジノフェニルアラニンのα−炭素原子においてDおよびL配置である。本発明では、L配置が特に好ましい。本発明の化合物(I)は非常に一般的には、中心α−アミノ酸に対してLまたはD配置のいずれかであるか、あるいはラセミ化合物である。
【0140】
従って、本発明はまた、k=1でありそしてRがアミジノ基によってフェニル基メタ−置換されており、それによって生じる3−アミジノフェニルアラニンがL配置であることを特徴とする、上記のような化合物に関するものである。
【0141】
原則として、上記非対称炭素原子の他にさらなる非対称炭素原子が存在するとき、あるいは非対称の別の中心が存在するとき、化合物(I)がLおよびD配置またはSもしくはR配置であることも可能である。化合物(I)がラセミ化合物の形であることも同様に可能である。D配置を有する分子の割合またはL配置を有する分子の割合、あるいはS配置を有する分子の割合またはR配置を有する分子の割合がそれぞれ優位である場合、LおよびD配置またはSおよびR配置の混合物もさらに可能である。
【0142】
上記定義(i)に記載のどの基Rも基Rとして存在することは一般に可能である。
基Rが例えば少なくとも1つのハロゲンで置換されているならば、この場合、フッ素、塩素および/または臭素が好ましい。
【0143】
基Rが例えば少なくとも1つのエステル化カルボキシル基で置換されているならば、メチルエステルおよび/またはエチルエステルが好ましい。
基Rが例えば少なくとも1つのアミノ基で置換されているならば、このアミノ基はアシル化されていてもよく、この場合、アセチル基が特に好ましい。
【0144】
特に好ましいのは、例えば、少なくとも1つの二重結合が水素化されているおよび/またはO、SおよびNから選択される少なくとも1つの複素原子を含み、またヘテロアリール基Rが2つ以上の同じまたは異なる複素原子を含むことも可能な、単環式、二環式または三環式アリール基およびヘテロアリール基である。好ましいアリール基の例は、例えば、フェニル、ナフチル、アントラシルまたはフェナントリルである。これらのアリール基は還元されたおよび/または酸化された形でもよい。ナフチル基の場合、例えば、1,2−ジヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基が可能である。酸化された形では、ナフチル基は例えば1,4−ナフトキノイル基となる。アントラキノイル基は酸化された形では、例えば1,4−もしくは9,10−アントラキノイル基または1,4−もしくは9,10−アントラヒドロキノイル基の形となり、フェナントリル基は例えばフェナントレンキノイル基となる。ヘテロアリール基の例は、例えばピロリル、フラニル、チオフェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジル、トリアジル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、インドリル、プリニル、ピロニル、ピリドニル、キノリル、イソキノリルである。同様に、インデニルまたはテトラヒドロインデニルのような基Rも含まれる。
【0145】
基Rが適当に置換されることもさらに可能であり、好ましい置換基は例えば1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基である。1、2、3もしくは4個の炭素原子を有する線状または分枝状アルキル基が特に好ましい。特に好ましい置換基の例はイソプロピルおよびt−ブチルである。環状アルキル基も同様に置換基として好ましく、5、6または7個、とくに6個の炭素原子を有する環状アルキル基が特に好ましい。置換基としてのアリールまたはヘテロアリール基については、ヘテロアリール基はO、SおよびNから選択される少なくとも1つの複素原子を含み、また2つ以上の同じまたは異なる複素原子を含むことも可能である。基Rの置換基はそれら自体適当に置換されていてもよい。
【0146】
ヘテロアリールおよびアリール基並びにアルキル基は硫黄ブリッジング原子または酸素ブリッジング原子によってあるいは1〜3個の炭素原子を有するアルキレン鎖により基Rに結合しうる。従って、基Rは例えばアルキルオキシ、アルキルチオ、アリールオキシ、アリールチオ、ヘテロアリールオキシまたはヘテロアリールチオ基で置換されていてもよい。
【0147】
置換された基Rの例は、例えば、
【0148】
【化47】

【0149】
【化48】

【0150】
である。
存在するのが好ましいアリール基は原則として1つ以上の置換基を有しうる。特に好ましい態様は、アリール基が1,2または3個の置換基を有するものである。アリール基が例えば3個の置換基を有しているならば、1、2または3個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。2または3個の炭素原子を有するアルキル基が特に好ましく、3個の炭素原子を有するアルキル基がとりわけ好ましく、とりわけ特に好ましいのはイソプロピルである。例えば、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基が特に好ましい。
【0151】
アリール基が例えば1つの置換基を有しているならば、t−ブチル基がとりわけ好ましい。
さらに適した態様では、基Rはアリール基、好ましくはフェニル基であって、これは酸素ブリッジング原子を経てあるいは1〜3個の炭素原子を有するアルキレン鎖を経てアリール、ヘテロアリールまたはアルキル基を有するさらなるアリール基またはヘテロアリール基によって置換されている。この場合、アリールまたはヘテロアリール基、例えばピリジンは、置換されていなくても、あるいはオルト、メタまたはパラ位置の適当な位置において、例えば、少なくとも1つのアルキル基、例えばメチル基で、および/または少なくとも1つのハロゲン原子、好ましくは1もしくは2つの塩素原子または1または2つのフッ素原子で、および/または少なくとも1つのトリハロメチル基、好ましくは1または2つのトリフルオロメチル基で、および/または少なくとも1つのアルコキシ基、好ましくはメトキシ基で置換されることも可能である。
【0152】
そのような基Rの例は、例えば、
【0153】
【化49】

【0154】
【化50】

【0155】
であり、ここで、2つのアリール基に結合している酸素は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン鎖で置き換えられていてもよい。
特に好ましい態様では、基Rは、t−ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントラシル、アントラキノイルおよびアントラヒドロキノイル、ピリジルオキシフェニル、フェニルオキシピリジル、C−Cアルキルを有するピリジルアルキルフェニルから選択される。
【0156】
基Rおよびスルホニル基に結合しているアルキレン基は0、1または2個の炭素原子を有する。炭素原子は、好ましくは0または1個、特に好ましくは0すなわち不在である。
【0157】
本発明の別の態様は、式I”
【0158】
【化51】

【0159】
の化合物であり、ここで、R、R、Q、jおよびkは上記定義とおりであり、m=n=2であり、Rはアリールまたはヘテロアリール基であり、アリール基は、好ましくはベンジルまたはフェノキシ基であり、ヘテロアリール基は、好ましくは、ピリジニルメチレン、ピリジニルオキソ、ピリミジニルオキソ、ピラジニルオキソ、ピリジニルチオ基から選択され、アリールまたはヘテロアリール基は置換されていないか、あるいは少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素または塩素、少なくとも1つのアルコキシ基、好ましくはメトキシ基、および/または少なくとも1つのトリフルオロメチル基で置換されている。
【0160】
さらに好ましい態様では、基Rはグアニジノオキシアルキル基である。
そのような化合物の例は、式I”の中の構造単位
【0161】
【化52】

【0162】

【0163】
【化53】

【0164】
で置き換えられている化合物であり、これらは米国コロラド州ボルダ−のアレイ・バイオファーマ社から商業的に入手しうる。
同様に、アミノ酸、好ましくはグリシンが式Iのスルホニル基と3−アミジノフェニルアラニン基との間に組み込まれている化合物が含まれる。
【0165】
上記の化合物はどのような適した方法によっても一般に製造することができる。本発明の化合物は、塩化スルホニルを第1工程でアミノ酸またはアミノ酸誘導体と反応させる方法によって製造するのが好ましい。
【0166】
従って、本発明は、上記のような化合物の製造法に関するものであって、次の工程(S1)を含む:
(S1)一般構造(E1’)
【0167】
【化54】

【0168】
の化合物を一般構造(E1”)
【0169】
【化55】

【0170】
の化合物と反応させて、一般構造(ZP1)
【0171】
【化56】

【0172】
の化合物を得る反応、ここで、式中、R”は、Rまたは適当な保護基で保護されたRのいずれか、あるいはRの前駆体である置換基で置換されたアリール基Rである。
アリール基Rが例えば好ましくはアミジノ基Rで置換されているならば、アミジノ基の前駆体を表す置換基は、例えば、ヒドロキシアミンとの反応およびその後のアミジノ基への水素添加による1つ、好ましくは2つ以上の適当な段階で変換することができるシアノ基である。このアミジノ基はその後、適当な工程で再び除去しうる適当な保護基で保護することができる。
【0173】
基Qが窒素であり、アルキレン基Aが不在である一般構造(I”)の本発明の化合物を製造するならば、好ましい方法は、構造(ZP1)の化合物を工程(S2’)で一般構造(E2’)
【0174】
【化57】

【0175】
(式中、Wは適当な保護基である)
の環状化合物とまず反応させる方法である。この場合、構造(ZP2’)
【0176】
【化58】

【0177】
の化合物を得、これから保護基Wをその後の工程(S3’)で除くのが好ましい。次の工程(S4’)では、(S3’)で得られた化合物を一般構造(E2”)
HO−T−A−R’ (E2”)
の化合物と反応させて、一般構造(P1)
【0178】
【化59】

【0179】
(式中、R’は、Rまたは適当な保護基で保護されたRのいずれか、あるいはRの前駆体である)
の化合物を得る。R’が保護基で保護された基Rであるならば、保護基は工程(S4’)の後で除くのが好ましい。
【0180】
本発明ではアミノ基が基Rとして存在することが可能である。次いで、この基からグアニジノ基を次の工程で、本技術分野における当業者に公知の方法によって、例えばピラゾールカルボキサミジンとの反応によって形成することが可能である。
【0181】
基Qが窒素であり、アルキレン基Aが不在である化合物(I”)の同様に好ましい製法は、一般構造(E2’’’)
【0182】
【化60】

【0183】
(式中、Wは適当な保護基である)
の化合物を一般構造(E2’’)
HO−T−A−R’ (E2”)
の化合物と反応させて、一般構造(ZP2”)
【0184】
【化61】

【0185】
(式中、R’は、Rまたは適当な保護基で保護されたRのいずれか、あるいはRの前駆体である)
の化合物を得る工程(S2’)を含む。従って、この方法では、(I)中の中心アミノ酸のC−末端基をまず形成する。次の工程(S3’)で、好ましくは保護基Wを除き、そして次の工程(S4’)で、(S3’)で得られた化合物を一般構造(ZP1)の化合物と反応させて一般構造(P1)の化合物を得る。基Rがこの場合、アミノ基であるならば、グアニジノ基はこれからこの場合にも上記のように形成される。
【0186】
QがCHである一般構造(I”)の本発明の化合物を製造するならば、好ましい製法は、化合物(ZP1)から出発し、これを工程(S2”)で一般構造(E3)
【0187】
【化62】

【0188】
(式中、R’は、Rまたは適当な保護基で保護されたRのいずれか、あるいはRの前駆体である)
の化合物と反応させる方法である。この好ましい反応では一般構造(P2)
【0189】
【化63】

【0190】
の化合物が生じる。R’が保護基で保護された基Rならば、保護基は工程(S2”)の後で除くのが好ましい。本発明では、アミノ基が基Rとして存在することが可能である。次いで、この基からグアニジノ基を次の工程で、本技術分野における当業者に公知の方法によって、例えばピラゾールカルボキサミジンとの反応によって形成することが可能である。
【0191】
Tが−(C=O)−NH−、QがCH、そしてAが不在である一般構造(I”)の本発明の化合物を製造するならば、好ましい製法は、まず、工程(S2’’’)で、一般構造(E3’)
【0192】
【化64】

【0193】
の化合物を一般構造(E3”)
N−A−R’ (E2”)
の化合物と反応させて一般構造(ZP3)
【0194】
【化65】

【0195】
の化合物を得る方法である。
基R’は上記のさらなる製造で記載した意味を有する。Wはこの場合においても適当な保護基である。次の工程で、保護基Wは適当な方法によって好ましくは工程(S3’’’)で除去される。好ましくは、この後に工程(S4’’’)が続き、(S3’’’)で得られた化合物を化合物(ZP1)と反応させて一般構造(P3)
【0196】
【化66】

【0197】
の化合物を得る。
’が保護基で保護された基Rであるならば、保護基は工程(S2’’’)の後に除去されるのが好ましい。本発明ではアミノ基が基Rとして存在することが可能である。次いで、この基からグアニジノ基を次の工程で、本技術分野における当業者に公知の方法によって、例えばピラゾールカルボキサミジンとの反応によって形成することが可能である。
【0198】
この最後に記載の方法を変形した方法の好ましい態様では、一般構造(E3”)の化合物として、例えば基R’として本発明の基Rの前駆体を有する化合物を用いることが可能であり、この前駆体は−CN基である。1つ以上の適当な工程で、この−CN基は、さらに好ましくは本技術分野における当業者に公知の方法によって、例えばヒドロキシルアミンとの反応、その後の無水酢酸との反応、および次の水素添加によって、アミジノ基に形成される。本発明の方法の異なる態様では、ヒドロキシアミジノ誘導体は水素添加によってアミジン誘導体に直接変換することができ、この場合、アミジノ基は適切ならば適当な保護基で中間的に保護される。ヒドロキシルアミンとの反応は工程(S2’’’)の後および工程(S3’’’)の前に行うのが極めて特に好ましい。無水酢酸との反応は同様に工程(S3’’’)の前に行うのが特に好ましい。アミジノ基をもたらす水素添加は工程(S4’’’)の後に行うのが好ましい。
【0199】
このようにして製造される化合物の最終精製は分取逆相HPLCによってまたは適当な溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化によってまたは対流蒸留によって行うのが極めて特に好ましい。
【0200】
上記化合物自体およびそれらの製法の他に、本発明はまた、上記化合物の1つを含む薬剤に関する。
従って、本発明はまた、少なくとも1種の化合物(I)またはこの化合物の塩、および適切ならば、薬学的に適した賦形剤および/または添加剤を含む薬剤に関する。
【0201】
本発明はさらに、適切ならば、薬学的に適した賦形剤および/または添加剤をさらに含む薬剤として用いるための化合物(I)について記載する。
例えば薬剤の安定化および/または防腐に役だつ適した賦形剤および/または添加剤は、例えば、H. Sucker等, Pharmazeutische Technologie, 第2版, Georg Thieme Verlag, Stuttgart (1991)に開示されており、参照することによってここに記載されたものとする。薬学的に適した賦形剤および/または添加剤は、例えば、生理食塩水、リンガーラクテート、脱ミネラル水、安定剤、酸化防止剤、錯生成剤、抗菌化合物、たんぱく分解酵素阻害剤および/または不活性剤である。
【0202】
本発明の化合物(I)は薬剤としてどのような形でも一般に用いることができる。薬剤は本発明の可能な態様において、例えば、錠剤、被覆錠剤、カプセル、ペレット、座薬、液剤、特に注射もしくは注入用液剤、点眼薬、点鼻および点耳薬、シロップ、乳剤もしくは懸濁剤、ペッサリー、棒剤、エーロゾル、粉剤、ペースト、クリームまたは軟膏の形で用いられる。
【0203】
従って、本発明はまた、錠剤、被覆錠剤、カプセル、ペレット、座薬、液剤、特に注射もしくは注入用液剤、点眼薬、点鼻および点耳薬、シロップ、乳剤もしくは懸濁剤、ペッサリー、棒剤、エーロゾル、粉剤、ペースト、クリームまたは軟膏の形で用いられることを特徴とする、上記のような薬剤に関する。
【0204】
従って、本発明はさらにまた、薬剤が、錠剤、被覆錠剤、カプセル、ペレット、座薬、液剤、特に注射もしくは注入用液剤、点眼薬、点鼻および点耳薬、シロップ、乳剤もしくは懸濁剤、ペッサリー、棒剤、エーロゾル、粉剤、ペースト、クリームまたは軟膏の形で用いられる、薬剤として用いられるための化合物(I)に関する。
【0205】
本発明の特に好ましい態様では、上記化合物(I)および/またはそれらの塩、あるいはこれらの化合物(I)および/またはそれらの塩、および適切ならば、少なくとも1種の薬学的に適した賦形剤および/または添加剤を含む上記薬剤は、腫瘍の診断および/または治療に用いられる。腫瘍の予防もさらにまたは別に可能であり、化合物を特に腫瘍転移を防ぐおよび/または減じることに用いることが可能である。
【0206】
本発明の化合物(I)またはその塩または上記薬剤はさらに、例えば、非経口、特に動脈内、静脈内、筋肉内または皮下の形で、腸用形で、特に経口または直腸使用の形で、あるいは局所使用形、特に皮膚用の薬剤として非常に一般的に用いることができる。静脈内または皮下使用が好ましい。
【0207】
これらの使用形は、腫瘍の診断におよび/または治療および/または予防に特に適している。
従って、本発明はまた、化合物(I)またはこの化合物の塩または上記薬剤を、腫瘍の診断、治療または予防を行うために並びに腫瘍転移を防ぐおよび/または減じるために、特に経口、皮下、静脈内または経皮の形で用いることに関する。
【0208】
本発明はまた、化合物(I)またはこの化合物の塩を、腫瘍の診断、治療または予防を行うための並びに腫瘍転移を防ぐおよび/または減じるための薬剤製造に用いることに関する。
【0209】
本発明はさらに、経口、皮下、静脈内または経皮使用薬剤の製造にこれを用いることに関する。
本発明の特に好ましい態様では、本発明の化合物(I)は腫瘍転移を減じることに用いられる。
【0210】
従って、本発明は、腫瘍転移形成が減じられる、化合物(I)またはこの化合物の塩または上記薬剤の上記使用に関する。
本発明はまた、腫瘍転移の形成を減じるための薬剤を製造する上記の方法に関する。
【0211】
従って、本発明はまた、特に、化合物(I)またはこの化合物の塩、あるいは化合物(I)またはこの化合物の塩を含む薬剤をマトリプターゼの阻害に用いることに関する。
本発明は特にまた、化合物(I)またはこの化合物の塩、あるいは化合物(I)またはこの化合物の塩を含む薬剤を、MT−SP1であるマトリプターゼの阻害に用いることに関する。
【0212】
従って、本発明はまた、マトリプターゼを阻害するための化合物(I)またはこの化合物の塩を含む薬剤の製造方法に関する。
本発明はまた、MT−SP1であるマトリプターゼを阻害するための化合物(I)またはこの化合物の塩を含む薬剤の製造方法に関する。
【0213】
上記の化合物はまた、プロドラッグの形でもよく、例えば、アミジノ基をヒドロキシルまたはC−Cアルキルオキシカルボニル基で変えることにより、これを体内に取り込んだ後にのみ阻害活性を有する成分に自然に変わり、および/または1種以上の内生的酵素によって、化合物の生物学的利用能および薬物速度論的性質を改善することが可能となる。
【0214】
本発明を次の実施例および図でさらに詳しく説明する。
実施例
方法
HPLC分析:シマズLC−10Aシステム、カラム:Phenomenex Luna C18、5μm、100オングストローム(250×4.6mm)溶媒A:水中のTFA0.1%、B:ACN中のTFA0.1%、勾配:60分で10%B〜70%B、1ml/分流量、220または215nmで検出。
【0215】
分取HPLC:シマズLC−8Aシステム、カラム:Phenomenex Luna C18、5μm、100オングストローム(250×30mm)溶媒A:水中のTFA0.1%、B:ACN中のTFA0.1%、勾配:120分で10%B〜55%B、10ml/分流量、220nmで検出。
【0216】
質量分析法:質量スペクトルはクラトス社(英国マンチェスター)の飛行時間測定検出器および基質としてα−シアノヒドロキシ桂皮酸を有するコンパクトプローブで、またはフィニガン社(ドイツ、ブレーメン)のESI−MS LCQで測定した。
【0217】
使用略語
Ac アセチル
AcOH 酢酸
ACN アセトニトリル
β−Ala β−アラニン
Boc t−ブチルオキシカルボニル
DAE 1,2−ジアミノエタン
DCM ジクロロメタン
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
IBCC イソブチルクロロカーボネート
iNip イソニペコチン酸
阻害定数
NMM N−メチルモルホリン
Phe(3−AcOxam) 3−(アセチルオキシアミジノ)フェニルアラニン
Phe(3−Am) 3−アミジノフェニルアラニン
Phe(3−CN) 3−(シアノ)フェニルアラニン
Phe(3−Oxam) 3−(オキサミジノ)フェニルアラニン
PyBop ベンゾトリアゾール−1−イル−N−オキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
Pzd ピペラジド
RT 室温
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Tips 2,4,6−(トリイソプロピル)フェニルスルホニル
Z ベンジルオキシカルボニル
【0218】
実施例1 アントラセンスルホニル−Phe(3−Am)−Pzd−β−Ala×TFA(表1からの化合物10)
【0219】
【化67】

【0220】
1a)Boc−Pzd−βAla−Z
2g(8.96mmol)のZ−βAla−OHを20mlのTHFに溶解し、−15℃で0.99ml(8.96mmol)のNMMおよび1.17ml(8.96mmol)のIBCCを加えた。混合物を−15℃で10分間攪拌し、次に、1.67g(8.96mmol)のBocピペラジン(フルカ社)そしてさらに400μl(3.6mmol)のNMMを加えた。混合物を−15℃で1時間攪拌し、さらに室温で一晩攪拌した。その後、溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSO、飽和NaHCO溶液およびNaCl−飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。淡色油が残留物として残り、これを冷蔵庫で一晩結晶化させた。
収量:3.2g(8.17mmol)、HPLC:51.69%B
【0221】
1b)H−Pzd−βAla−Z×HCl
3.2g(8.17mmol)のBoc−Pzd−βAla−Zを氷酢酸にある程度溶解し、氷酢酸中の1N HCl50mlと混合し、時々振とうしながら1時間室温で放置した。溶媒をある程度真空除去し、ジエチルエーテルを加えることによって生成物を沈殿させ、吸引濾過し、再びジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。
収量:2.13g(6.5mmol)の白色固体、HPLC:28.19%B
【0222】
1c)Boc−Phe(3−CN)−OH
2.5g(13.1mmol)のH−Phe(3−CN)−OHを100mlのジオキサンに溶解し、0℃で13ml(13mmol)の1N NaOHおよび3.16g(14.5mmol)のBocピロカーボネートを加えた。混合物を0℃で20分間、次いで室温で4時間攪拌した。この間、合計7ml(7mmol)の1N NaOHを分けて加え、pHを8〜8.5に一定に保った。溶媒は真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSOおよびNaCl−飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。白色固体を残留物として得た。
収量:2.11g(7.3mmol)の白色固体、HPLC:45.93%B
【0223】
1d)Boc−Phe(3−AcOxam)−OH
2.11g(7.3mmol)のBoc−Phe(3−CN)−OHを100mlのメタノールに溶解し、760mg(10.95mmol)のヒドロキシルアミン×HClおよび1.9ml(10.95mmol)のDIEAを加えた。混合物を6時間、還流攪拌した。266mg(3.84mmol)のヒドロキシルアミン×HClおよび665μl(3.84mmol)のDIEAを加え、混合物をさらに3時間、次いで室温で一晩還流攪拌した。次に溶媒を真空除去した。淡色油が残留物として残り、これを50mlの氷酢酸に溶解し、2ml(22mmol)の無水酢酸を加えた。混合物を室温で30分間攪拌した。溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSOおよびNaCl−飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。
収量:3.31g(無色油)、HPLC:26.59%B
【0224】
1e)Boc−Phe(3−AcOxam)−Pzd−βAla−Z
0.92g(2.8mmol)のH−Pzd−βAla−Z×HClおよび1.02g(2.8mmol)のBoc−Phe(3−AcOxam)−OHを40mlのDMFに溶解し、0℃で1.46g(2.8mmol)のPyBopおよび1.46ml(8.4mmol)のDIEAを加えた。混合物を0℃で20分間、そして室温でさらに2時間攪拌した。次に溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSO、飽和NaHCO溶液およびNaCl−飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。
収量:2.49g(淡色油)、HPLC:48.13%B
【0225】
1f)H−Phe(3−AcOxam)−Pzd−βAla−Z×HCl
2.49gのBoc−Phe(3−AcOxam)−Pzd−βAla−Z(粗生成物)をある程度氷酢酸に溶解し、氷酢酸中の1N HCl30mlと混合し、時々振とうしながら1時間室温で放置した。溶媒をある程度真空除去し、ジエチルエーテルを加えることによって生成物を沈殿させ、吸引濾過し、再びジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥した。
収量:1.32g(2.3mmol)の白色固体、HPLC:32.89%B
【0226】
1g)アントラセンスルホニル−Phe(3−AcOxam)−Pzd−βAla−Z
0℃で207.7mg(0.361mmol)のH−Phe(3−AcOxam)−Pzd−βAla−Z、127μl(0.73mmol)のDIEAおよび100mg(0.361mmol)のアントラセンスルホニルクロリド(フルカ社)を10mlのDMFに溶解した。混合物を0℃で20分間、次いで室温で一晩攪拌した。溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSO、飽和NaHCO溶液およびNaCl−飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。淡色油が残留物として残り、それ以上精製することなくこれを次の合成工程に直接用いた。
HPLC:57.65%B
【0227】
1h)アントラセンスルホニル−Phe(3−Am)−Pzd−βAla
粗生成物1gを50mlの90%酢酸および5mlの1N HClに溶解し、30mgの触媒(10%Pd/C)を加えた。混合物を大気圧下、40℃で一晩水素で水素添加した。次に触媒を濾去し、溶媒を真空濃縮した。粗生成物の一部を分取逆相HPCLで精製した。
HPLC:34.11%B
MS:理論値586.24(単同位体)、実験値587.79[M+H]
【0228】
実施例2: アントラセンスルホニル−Phe(3−Am)−Pzd−CO−CH−CH−グアニジノ×2TFAの合成(表1からの化合物11)
【0229】
【化68】

【0230】
1a)アントラセンスルホニル−Phe(3−Am)−Pzd−CO−CH−CH−グアニジノ
約115mgのアントラセンスルホニル−Phe(3−Am)−Pzd−βAla粗生成物(1h)を10mlのDMFに溶解し、90.3mg(0.616mmol)のピラゾ−ルカルボキサミジン×HClおよび107μl(0.616mmol)のDIEAを加えた。混合物を一晩攪拌し、次に溶媒を真空除去した。残留物を真空乾燥し、分取逆相HPCLで精製し、それ以上精製しなかった。
HPLC:35.09%B
MS:理論値628.26(単同位体)、実験値629.4[M+H]
【0231】
実施例3: 2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル−Phe(3−Am)−iNip−DAE−H×2TFA(表1からの化合物3)
【0232】
【化69】

【0233】
3a)Tips−Phe(3−CN)−OH
1当量のTips−Cl(純度97%、4.69g、15mmol)のジオキサン中の溶液を、1.05当量のH−L−Phe(3−CN)−OH(3g、15.8mmol)のジオキサン中の溶液、および2.1当量の1M NaOH(31.5ml)に室温で攪拌しながら滴加した。溶液のpHはこの間モニターし、1M NaOHでpH8〜9に保った。4時間後、溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、酸性(5%KHSO)および中性(飽和NaCl溶液)洗浄を各3回行った。有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空除去し、得られた生成物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した(黄色がかった結晶質化合物)。
収量:6.6g(96.3%)
HPLC:71.1%B
【0234】
3b)Tips−Phe(3−OAm)−OH
1当量のTips−Phe(3−CN)−OH(3g、6.6mmol)、1.5当量のヒドロキシルアミン×HCl(685mg、9.9mmol)および3当量のDIEA(3.4mg、19.8mmol)を無水エタノールに溶解し、4時間還流沸騰させ、次に、出発物質がHPLCにもはや見られなくなるまでさらにヒドロキシルアミン×HClおよび塩基(DIEA、pH8〜9)を計り入れしながら室温で攪拌した。溶媒を除去した後、残留物を酢酸エチルに取り、酸性(5%KHSO)および中性(飽和NaCl溶液)洗浄を各3回行った。有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空除去し、得られた生成物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。
収量:1.63g(白色結晶;50.4%)
HPLC:51.0%B
【0235】
3c)Tips−Phe(3−AcOAm)−OH
1当量のTips−Phe(3−OAm)−OH(2.5g、5.1mmol)を100mlの氷酢酸に溶解し、1.5当量の無水酢酸(724μl、7.6mmol)を加え、混合物を15分間攪拌した。溶媒を真空除去した後、生成物が白色粉末として得られた。
収量:2.7g(99.4%)
HPLC:64.5%B
【0236】
3d)H−iNip−DAE−Z×HCl
497mg(2.17mmol)のBoc−イソニペコチン酸を250μl(2.27mmol)のNMMと共に10mlの乾燥THFに溶解した。296μl(2.27mmol)のクロロギ酸イソブチルを−15℃で加え、混合物をさらに10分間攪拌した。次に、500mg(2.17mmol)のN−Z−1,2−ジアミノエタン×HClおよび250μl(2.27mmol)のNMMを加え、混合物を−15℃でさらに1時間、次いで室温で4時間攪拌した。溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、3回の酸性(5%KHSO)洗浄、1回の中性(飽和NaCl溶液)洗浄、3回の塩基性(NaHCO飽和)洗浄および3回の中性(飽和NaCl溶液)洗浄を行った。次に、酢酸エチル相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空除去し、生成物を非晶質物質として得た(HPLC:50.3%B)。粗生成物を氷酢酸中の1N塩化水素20mlに溶解し、室温で1時間放置した。次に溶媒を真空除去し、生成物を凍結乾燥した。
収量:722mg
HPLC:26.4%B
【0237】
3e)Tips−Phe(3−Am)−iNip−DAE−H×2TFA
150mg(0.28mmol)のTips−Phe(3−AcOAm)−OHを97mg(0.28mmol)のH−iNip−DAE−Z×HClと共に5mlのDMFに溶解し、攪拌しながら氷浴中で0℃に冷却した。122μl(0.70mmol)のDIEAおよび154mg(0.29mmol)のPyBOPを冷却溶液に加えた。15分後、氷浴を除き、混合物を室温でさらに2時間攪拌した。次に、溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、3回の酸性(5%KHSO)洗浄、1回の中性(飽和NaCl溶液)洗浄、3回の塩基性(NaHCO飽和)洗浄および3回の中性(飽和NaCl溶液)洗浄を行った。次に、酢酸エチル相をNaSOで乾燥し、溶媒を真空除去した。残留物を90%濃度氷酢酸に溶解し、10重量%の触媒(10%Pd/C)と混合し、水素で室温にてエ一晩水素添加した。触媒を濾去し、溶媒を真空乾燥して除去し、残留物を分取逆相HPLCで精製した。
収量:92mg
HPLC:43.3%B
MS:理論値626.36(単同位体)、実験値628.1[M+H]
【0238】
実施例4: 2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル−Phe(3−Am)−iNip−NH−CH−CH−グアニジノ×2TFAの合成(表1からの化合物34)
【0239】
【化70】

【0240】
4a)Tips−L−Phe(3−Am)−iNip−NH−CH−CH−グアニジノ×2TFA
85mg(0.1mmol)のTips−Phe(3−Am)−iNip−DAE−H×2TFAを5mlのDMFに溶解し、30mg(0.2mmol)のピラゾールカルボキサミジンおよび55μl(0.3mmol)のDIEAを加えた。混合物を室温で一晩攪拌した。次に溶媒を真空除去し、残留物を分取逆相HPCLで精製した。
HPLC:43.7%B
MS:理論値668.38(単同位体)、実験値669.8[M+H]
【0241】
実施例5: 2−Nas−Phe(3−Am)−4−(アミノエチル)ピペリジド×2TFA(表1からの化合物36)
【0242】
【化71】

【0243】
5a) 2−Nas−Phe(3−CN)−OH
2.49g(11mmol)の2−Nas塩化物(ジオキサンに溶解した)を30分かけて1.9g(10mmol)のH−Phe(3−CN)−OHに滴加し、100mlのジオキサン/水混合物および22mlの1N NaOH溶液に0℃で溶解した。混合物を0℃で1時間、次いで室温で一晩攪拌した。次に、溶媒を真空除去し、残留物を水に溶解した(NaOHでpH8〜9に調整した)。水性相をジエチルエーテルで2回抽出し、1N HClでpH3〜4に調整した。生成物を酢酸エチルで3回抽出し、酢酸エチル相を5%KHSOおよびNaCl飽和水で各3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。淡色油が残り、これを冷蔵庫で結晶化させた。
収量:3.51g(9mmol)、HPLC:51.02%B
【0244】
5b) 2−Nas−Phe(3−AcOxam)−OH
3.5g(9mmol)の2−Nas−Phe(3−CN)を100mlのメタノールに溶解し、1.04g(15mmol)のヒドロキシルアミン×HClおよび2.61ml(15mmol)のDIEAを加えた。混合物を6時間還流攪拌した。次に、さらに700mg(10mmol)のヒドロキシルアミン×HClおよび1.74ml(10mmol)のDIEAを加えた。混合物をさらに4時間還流攪拌し、次いで室温で一晩攪拌した。次に、溶媒を真空除去した。淡色油が残留物として残り、これを50mlの氷酢酸に溶解し、2.83ml(30mmol)の無水酢酸と混合した。混合物を室温で1時間攪拌した。溶媒を真空除去し、残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSO溶液で1回、NaCl飽和水で3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空中でほとんど除去された。生成物は徐々に結晶化し始めた。これを吸引濾過した。
収量:3.02g(6.64mmol)の淡色固体、HPLC:44.04%B
【0245】
5c) 2−Nas−Phe(3−AcOxam)−4−(アミノエチル)ピペリジド×HCl
100mg(0.22mmol)の2−Nas−Phe(3−AcOxam)−OHおよび50mg(0.22mmol)の4−(2−Boc−アミノエチル)ピペリジン(タイガー・サイエンティフィック社、ニューヨーク州プリンストン)を10mlのDMFに溶解し、0℃で115mg(0.22mmol)のPyBopおよび115μl(0.22mmol)のDIEAを加えた。混合物を0℃で20分間、そして室温でさらに3時間攪拌した。溶媒は真空除去した。残留物を酢酸エチルに取り、5%KHSO溶液で2回、NaCl飽和水で1回、飽和NaHCO溶液で2回、そしてNaCl−飽和水で3回洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒は真空除去した。
【0246】
粗生成物を氷酢酸にある程度溶解し、5mlの1N HClと共に氷酢酸中で混合し、時々振とうしながら、室温で1時間放置した。溶媒は真空除去した。淡色油が残った。
収量:105mgの油状物、HPLC:35.66%B
【0247】
5d) 2−Nas−Phe(3−Am)−4−(アミノエチル)ピペリジド×2TFA
粗生成物5cを50mlの90%酢酸に溶解し、15mgの触媒(10%Pd/C)を加えた。混合物を大気圧下、40℃にて一晩、水素で水素添加した。次に、触媒を濾去し、溶媒を真空濃縮した。1/3の粗生成物を分取逆相HPLCで精製した。
収量:17.6mg、HPLC:29.03%B
MS:理論値507.23(単同位体)、実験値508.4[M+H]
【0248】
実施例6: 2−Nas−Phe(3−Am)−4−(グアニジノエチル)ピペリジド×2TFAの合成(表1からの化合物37)
【0249】
【化72】

【0250】
6a)2−Nas−Phe(3−Am)−4−(グアニジノエチル)ピペリジド×2TFA
約80mgの2−Nas−Phe(3−AcOxam)−4−(アミノエチル)ピペリジド×HCl粗生成物(5d)を5mlのDMFに溶解し、65mg(0.45mmol)のピラゾールカルボキサミジン×HClおよび105μl(0.6mmol)のDIEAを加えた。3時間後、さらに21.5mg(0.15mmol)のピラゾールカルボキサミジン×HClおよび35μl(0.15mmol)のDIEAを加え、混合物をさらに一晩攪拌した。溶媒を真空除去し、残留物を分取逆相HPLCで精製した。
収量:42mg、HPLC:31.19%B
MS:理論値549.25(単同位体)、実験値550.4[M+H]
【0251】
実施例7: マトリプターゼの触媒ドメインの製造
クローニング: マトリプターゼの触媒ドメインは次のプライマー対を用いてPCRによって増幅した:
センスプライマー:
【0252】
【化73】

【0253】
アンチセンスプライマー:
【0254】
【化74】

【0255】
センスプライマーおよびアンチセンスプライマーは、ペプチド配列MetLys(His)が後に続くNdel開裂部位(肉太活字)が、プロテアーゼドメイン(イタリック)の前の5’末端で導入され、そしてEcoR1開裂部位(肉太活字)がマトリプターゼ(イタリック)の3’末端で挿入されるように選択した。PCR生成物はNdelおよびEcoR1により、大腸菌での発現のためのベクターであるpET24(ノバゲン社)にクローニングされた。
【0256】
マトリプターゼの触媒ドメインは不活性かつ不溶性の形で大腸菌に発現され、精製、再生、そして活性化された。工程の詳細は次のとおりである:
発現および精製: 上に記載のクローニングからのベクターを含むBL21(DE3)細胞(ノバゲン社)を、37℃および250rpmでLB、30μg/mlカナマイシン中でインキュベートした。発現は1mM IPTGを加えることによって0.6のOD600で誘導し、インキュベーションは1時間続けた。次に、細胞をペレット化し、5ml Bug Buster(登録商標)たんぱく質抽出試薬(ノバゲン社)で崩壊し、DNAをBenzonase(登録商標)ヌクレアーゼ(ノバゲン社)の細胞ペレット1g当たり25U/mlで消化した。たんぱく質凝集体を洗浄し、1gのペレット当たり、5mlの変性バッファー(6MグアニジニウムHCl、10mM トリスHCl、100mM Naホスフェート、pH8.0)で変性した。不溶性成分を遠心分離(16000g、30分、20℃)により除去し、上澄みを濾過し(0.2μm)、10mM β−メルカプトエタノールと混合し、次に金属キレートクロマトグラフィーカラム(上澄み10ml当たり、1ml NiNTA(キアゲン社))に入れて、マトリプターゼの触媒ドメインを精製した。カラムを洗浄し(8M尿素、10mM トリスHCl、100mM Naホスフェート、pH6.3)、ある程度精製されたたんぱく質を8M尿素、10mM トリスHCl、100mM Naホスフェート、pH4.5で溶出した。
【0257】
再生: マトリプターゼ含有フラクションを一緒にし、グルタチオンで誘導化し、再生のために再生バッファー(50mM トリスHCl、0.5M L−アルギニン、20mM CaCl、1mM EDTA、0.1M NaCl、pH7.5)中50μg/mlの最終濃度で希釈した。室温で3日間インキュベートした後、再生混合物を濾過し、>300μg/mlの濃度に濃縮し(Centricon Plus−80、アミコン社)、そしてバッファーをゲル濾過(PD 10カラム、ファーマシア社)によって活性化バッファー(20mM Naホスフェート、150mM NaCl、pH7.0)に変えた。
【0258】
活性化:正しく処理されたN末端は、セリンプロテアーゼの活性の必須条件であるため、ペプチドMK(His)を削除して再生マトリプターゼを活性化する必要があった。このために、再生混合物を50μg当たり2.5mUの活性化DAPase(登録商標、キアゲン社)のたんぱく質で30℃にて2時間インキュベートし、そして活性化マトリプターゼを金属キレートクロマトグラフィーによって非活性化マトリプターゼおよびDAPaseから分離した。
【0259】
活性マトリプターゼの収量は、バクテリア培養1リットル当たり約0.9mgであった。たんぱく分解活性は、色素産生基質PefachrometPA(ペンタファーム社)の開裂によって検出した。
【0260】
実施例8: マトリプターゼの表1に挙げた阻害剤での阻害効果の測定
阻害効果を測定するには、200μlのトリスバッファー(0.05M 0.154M NaCl、5%エタノール、pH8.0;阻害剤を含有する)、25μlの基質(CHSO−D−HHT−Gly−Arg−pNA;2および1mM)および50μlのマトリプターゼ(0.5μg/ml)を25℃でインキュベートした。3分後、25μlの酢酸(50%)を加えることによって反応を止め、マイクロプレートリーダー(ダイナテックMR5000)を用いて405nmでの吸収を測定した。K値は、コンピュータープログラムを用いる線状回帰によるジキソン法(Biochem. J. 55, 170-171, 1953)によって得た。K値(表1)は少なくとも3つの測定の平均である。
表1: マトリプターゼの阻害に対するK値の測定
【0261】
【表1】

【0262】
【表2】

【0263】
【表3】

【0264】
【表4】

【0265】
【表5】

【0266】
【表6】

【0267】
【表7】

【0268】
【表8】

【0269】
【表9】

【0270】
実施例9: マトリプターゼ阻害剤による侵略的な成長の阻害(マトリゲル分析)
細胞レベルでの侵略的成長に対する一般的な試験システムはマトリゲル侵略分析である。これには、細胞を人工的な細胞外基質に施すこと、およびどれくらいの細胞が定められた期間にこれを通り抜けて移動するかという調査を伴う。
【0271】
ここでは、マトリプターゼ阻害剤37および54を例として、侵略的成長が影響を受け、マトリプターゼ放出結腸癌細胞系DLD−1のマトリゲルを通しての移動が阻害されることが示される。
【0272】
「トランスウエル」プレートの穴をそれぞれ10μgのマトリゲルで被覆し、100μlの培地(RPMI 1640、2%Ultroser HY血清置換)中の160000DLD−1細胞(Dexter等, Cancer Reseach 39: 1020-1025(1979))をそれぞれに施し、侵略的成長を、阻害剤(30μM)を含むおよび含まない400μlの培地中のProHGFを加えることによって刺激した。37℃および5%COでの48時間のインキュベーションの後、基質を通して移動した細胞を固定し、染色し、そして100×の倍率の写真をとった。
【0273】
図1が示すように、DLD−1細胞の細胞外基質を通しての侵略はProHGFの添加によって刺激される。これは、細胞表面上の酵素原が活性化されることを示す。この効果はマトリプターゼ阻害剤によって明らかに阻害される。
実施例10: マトリプターゼ阻害剤による細胞分散の阻害
単離された集合からの細胞の分離および細胞のまき散らしを誘導する能力のため、HGFは分散因子(scatter factor)とも呼ばれる。この働きは、いわゆる分散分析の助けをかりて細胞レベルで検出することができる。これには、細胞が接種されること、および定められた時間の後に記録されるHGFの添加によって刺激されるそれらのまき散らしを伴う。HGFは、HGFの不活性プロフォーム(proHGF)の活性化によって形成することができる。マトリプターゼ阻害剤37および54を例として、細胞マトリプターゼによるproHGFの活性化が妨げられそしてproHGF刺激細胞の分散が低減されることを示す。
【0274】
このために、500のマトリプターゼ放出結腸癌細胞(PC−3)を96穴プレートの各穴に接種し、ウシ胎児血清を含まない培地100μl(Nut Mix. F-12、2%Ultroser HY)中で一晩インキュベートし(37℃、5%CO)、次に、分散を、マトリプターゼ阻害剤(30μM)を含むおよび含まないproHGFを加えることによって刺激した。6日後、細胞を固定し、染色し、そして100×の倍率で代表的な区分の写真をとった。
【0275】
図2が示すように、マトリプターゼ阻害剤37および54はPC−3細胞のproHGF誘導分散を阻害する。
使用濃度において、proHGFも阻害剤もPC−3細胞の増殖に影響を及ぼさない。これは、示された効果が誘導されるのは、分散作用の変化からであり、細胞世代時間の変化ではないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】実施例9からのマトリプターゼ阻害剤37および54による侵略的成長の阻害を示す。
【図2】実施例10からのマトリプターゼ阻害剤37および54によるPC−3細胞のproHGF誘導分散の阻害を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物またはこの化合物の塩もしくはプロドラッグであって、式中、
(a)XおよびXは、互いに独立して、水素または1、2もしくは3個の炭素原子を有するアルキル基であり、そして基XおよびXの少なくとも1つは構造(I’)
【化2】

の基であり、ここで、
− (I’)中のmまたはnのついたメチレン基の少なくとも1つは、ヒドロキシル、ハロゲン、プソイドハロゲンまたはCOOR’基によって少なくとも1回置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、および/または
− (I’)中のmまたはnのついたメチレン基の炭素原子の少なくとも1つは、S、NもしくはOで置き換えられていてもよく、および/または
− (I’)中の環
【化3】

を形成する結合の少なくとも1つは二重結合でもよく、あるいは
(b)XおよびXは、化合物(I)が構造(I”)
【化4】

を有するように橋をかけて環を形成し、ここで、
− (I”)中のmまたはnのついたメチレン基の少なくとも1つは、ヒドロキシル、ハロゲン、プソイドハロゲンまたはCOOR’基によって少なくとも1回置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、および/または
− (I”)中のmまたはnのついたメチレン基の炭素原子の少なくとも1つは、S、NもしくはOで置き換えられていてもよく、および/または
− スルホニル化アミノ酸にC末端結合したイミノ基を保持しながら、(I”)中の環
【化5】

を形成する結合の少なくとも1つは二重結合でもよく、
そして、
(i)Rは、原子O、NもしくはSの少なくとも1つを含み、5〜20個の炭素原子を有する、部分的に水素添加されていてもよいアリールまたはヘテロアリール基、あるいは1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基であり、ここで、Rは、
− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基、および/または
− ハロゲン、プソイドハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、アミジノ、グアニジノまたはカルボキシル基によって少なくとも1回置換されていてもよい1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状もしくは環状アルキルまたはアルキルオキシまたはアルキルチオ基、ここで、カルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状もしくは環状アルキル基でエステル化されていてもよく、1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状もしくは環状アルキル基はO、NおよびSよりなる群から選択される少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい、および/または
− 5〜20個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたはヘテロアリール基、ここで、このアリールまたはヘテロアリール基は
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状または環状アルキル基および/または
−− 少なくとも1つのCOR’および/またはCOOR’基、ここで、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基である、および/または
−− 少なくとも1つのハロゲン基および/または
−−少なくとも1つのプソイドハロゲン基および/または
−− 少なくとも1つのアルコキシ基または1つのアルキルチオ基、ここで、アルキル基は各場合において1〜10個の炭素原子を有する、および/または
−− 少なくとも1つのニトロ基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのハロアルキル基
で置換されていてもよく、そしてアリールまたはヘテロアリール基は、1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基を経てまたは酸素原子または硫黄原子を経て基Rに結合している;
− 少なくとも1つのヒドロキシル、アミノ、シアノ、アミジノ、グアニジノ、カルボキシルまたはカルボキシアルキル基、ここで、アミノ基はアシル化されていてもよく、および/またはカルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよく;
(ii)Rは、1〜10個の炭素原子を有する少なくとも一置換されたアリール基であり、ここで、
− これらの炭素原子の少なくとも1つはS、NまたはOで置き換えられていてもよい、
− 少なくとも1つの置換基はRに従う基であり、
− Rは、ヒドロキシル、COR’またはCOOR’基でさらに置換されていてもよく、R’は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基である;
(iii)Rは次式(II):
−T−A−R (II)
の基であり、ここで、
− Aは不在かまたは
−− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状または環状アルキル基および/または
−− 5〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたは1つのアラルキル基および/または
−− 3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基および/または
−− 少なくとも1つのヒドロキシル、シアノ、1〜10個の炭素原子を有するアルキルオキシもしくはアルキルチオ、カルボキシルまたはカルボキシアルキル基、ここで、カルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよい1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;
− Tは不在かまたは次の基:
【化6】

の1つであり、ここで、Rは水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基または1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、これはAと一緒になって少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい環を形成する;
− Aは、N、SおよびOよりなる群から選択される少なくとも1つの複素原子を含んでいてもよい、1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキレン基、または1〜10個の炭素原子を有するアリール、ヘテロアリールもしくはアラルキレン基であり、これは、
−− 少なくとも1つのハロゲンおよび/またはプソイドハロゲン基および/または
−− 1〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つの線状、分枝状もしくは環状アルキル基および/または
−− 5〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアリールまたは1つのアラルキル基および/または
−− 3〜10個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基および/または
−− 少なくとも1つのヒドロキシル、シアノ、1〜10個の炭素原子を有するアルキルオキシもしくはアルキルチオ基、カルボキシルもしくはカルボキシアルキル基、ここで、カルボキシアルキル基のアルキル基は1〜10個の炭素原子を有し、および/またはカルボキシル基は1〜10個の炭素原子を有する線状、分枝状または環状アルキル基でエステル化されていてもよくあるいはアミド化されていてもよい、
で置換されていてもよい;
(iv)Rは、次の変形されていてもよい塩基性基の1つであり:
【化7】

ここで、t=0、1であり;RおよびRは互いに独立して、水素または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、またはAと一緒になって環を形成する1〜5個の炭素原子を有するアルキレン基であるか、あるいはヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アシルまたはアルキルオキシカルボニル基であり、ここで、アルキルアミノ、アシルおよびアルキルオキシカルボニル基は互いに独立して1〜6個の炭素原子を有し、Rは、水素または1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、またはRと一緒になって環を形成する1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基である;
(v)QはCH基またはNのいずれかであり;
(vi)j=0、1、2;
k=0、1、2、3;
m、nは互いに独立して、0、1、2、3、4、5であり、m+n=3、4、5であり;
そして式(I)の化合物は、s=0、1、2である
【化8】

でも、s=0、1である
【化9】

でもない。
【請求項2】
Tが存在し、そしてTが請求項1で定義された基の1つであり、アミドおよびエステル基がいずれの配列でも組み込むことが可能であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
構造(I”)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
j=0であり、Rが多くても二置換されたアリール基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
アリール基が、酸素ブリッジ原子もしくは硫黄ブリッジ原子を経て、あるいはC−Cアルキレン鎖を経て、さらなるアリール基またはヘテロアリール基で置換されている、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
酸素ブリッジ原子を経てさらなるアリール基またはヘテロアリール基で置換されているアリール基が、フェニル基またはピリジル基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
アリール基またはヘテロアリール基が、塩素、フッ素、トリフルオロメチル、メチル、メトキシよりなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する、請求項3または4に記載の化合物。
【請求項8】
アリール基が少なくとも1つのアルコキシ基で置換されている、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
が、t−ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル、5,6,7,8−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントラシル、アントラキノイルおよびアントラヒドロキノイル、ピリジルオキシフェニル、フェニルオキシピリジル、C−C−アルキルを有するピリジルアルキルフェニルよりなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が、少なくとも一置換されたフェニル基、チエニル基またはピリジル基である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
k=1であり、Rが、アミジノ基でメタ置換されたフェニル基であり、これによって生じた3−アミジノフェニルアラニンがL配置を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
m=n=2である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
およびXによって形成される環が次の構造:
【化10】

を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
が不在であり、Tが
【化11】

である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
が、メチレン、エチレンまたはプロピレン基であり、R
【化12】

から選択される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
m=n=2であり、Rが、グアニジノオキシアルキル基または、アリールもしくはヘテロアリール基であり、アリール基が好ましくはベンジルまたはフェノキシ基であり、ヘテロアリール基が好ましくはピリジニルメチレン、ピリジニルオオキソ、ピリミジニルオキソ、ピラジニルオキソ、ピリジニルチオ基から選択され、アリールまたはヘテロアリール基が非置換であるかあるいは少なくとも1つのハロゲン、少なくとも1つのメトキシ基、および/または少なくとも1つのトリフルオロメチル基で置換されている、請求項2〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
アミノ酸、好ましくはグリシンが、式Iのスルフェニル基と3−アミジノフェニルアラニン残基との間に組み込まれることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物または化合物(A1)または(A2)の製造方法であって、以下の工程(S1)を含む方法:
(S1) 一般構造(E1’)
【化13】

の化合物を一般構造(E1”)
【化14】

の化合物と反応させて一般構造(ZP1)
【化15】

の化合物を得る反応、ここで、R”は、Rもしくは適当な保護基で保護されたRのいずれか、またはRの前駆体である置換基で置換されたアリール基Rである。
【請求項19】
Q=Nであり、Aが不在であり、以下の工程(S2’)、(S3’)および(S4’)をさらに含む、請求項18に記載の方法:
(S2’) 化合物(ZP1)を一般構造(E2’)
【化16】

(式中、Wは適当な保護基である)
の化合物と反応させて一般構造(ZP2’)
【化17】

の化合物を得る反応;
(S3’) 保護基Wの除去;
(S4’) (S3’)で得られた化合物を一般構造(E2”)
HO−T−A−R’ (E2”)
の化合物と反応させて一般構造(P1)
【化18】

の化合物を得る反応、ここで、R’は、Rもしくは適当な保護基で保護されたR、またはRの前駆体である;あるいは
(S2’) 一般構造(E2’’’)
【化19】

(式中、Wは適当な保護基である)
の化合物を一般構造(E2”)
HO−T−A−R’ (E2”)
の化合物と反応させて一般構造(ZP2”)
【化20】

の化合物を得る反応、ここで、R’は、Rもしくは適当な保護基で保護されたR、またはRの前駆体である;
(S3’) 保護基Wの除去;
(S4’) (S3’)で得られた化合物を一般構造(ZP1)の化合物と反応させて一般構造(P1)の化合物を得る反応。
【請求項20】
Q=CHであり、以下の工程(S2”)をさらに含む、請求項18に記載の方法:
(S2”) 化合物(ZP1)を一般構造(E3)
【化21】

(R’は、Rもしくは適当な保護基で保護されたR、またはRの前駆体である)
の化合物と反応させて一般構造(P2)
【化22】

の化合物を得る反応。
【請求項21】
T=−(C=O)−NH−、Q=CHであり、Aが不在であり、工程(S2’’’)、(S3’’’)および(S4’’’)をさらに含む、請求項18に記載の方法:
(S2’’’) 一般構造(E3’)
【化23】

の化合物を一般構造(E3”)
N−A−R’ (E3”)
の化合物と反応させて一般構造(ZP3)
【化24】

の化合物を得る反応;
(S3’’’) 保護基Wの除去;
(S4’’’) (S3’’’)で得られた化合物を化合物(ZP1)と反応させて一般構造(P3)
【化25】

の化合物を得る反応。
【請求項22】
化合物(ZP1)を一般構造(E2’)
【化26】

(式中、Q=N、m=n=2およびRは請求項15で定義されたとおりである)
の化合物と反応させる工程をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含む薬剤。
【請求項24】
錠剤、被覆錠剤、カプセル、ペレット、座薬、液剤、特に注射もしくは注入用液剤、点眼薬、点鼻薬もしくは点耳薬、シロップ、乳剤もしくは懸濁剤、ペッサリー、粘着剤、エーロゾル、粉剤、ペースト、クリーム、軟膏の形態で用いられることを特徴とする、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物または請求項23もしくは24に記載の薬剤の、腫瘍の診断、治療または予防のための、特に経口、皮下、静脈内または経皮の形での使用。
【請求項26】
腫瘍転移形成が減じられる、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物または請求項23もしくは24に記載の薬剤の、マトリプターゼを阻害するための使用。
【請求項28】
マトリプターゼがMT−SP1であることを特徴とする、請求項27に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−500734(P2007−500734A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529848(P2006−529848)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005291
【国際公開番号】WO2004/101507
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505269685)キュラサイト・ケミストリー・ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】