説明

N−ヒドロキシホルムアミジン誘導体




(式中、Rは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、AはC1−10アルキレン基又は式


(式中、m、n及びpは各々0〜4の整数を示す。)で表される基を示し、RはN,N−ジC1−6アルキルアミノ基、ジオキサニル基、C1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基、C1−4アルコキシC1−4アルコキシ基又は式


(式中、s及びtは各々1〜4の整数を示し、Bはメチレン基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、C1−4アルキル基で置換された窒素原子、フェニル基で置換された窒素原子又はベンジル基で置換された窒素原子を示し、Rは水素原子又はC1−4アルキル基を示し、rは0〜2の整数を示す。)で表される基を示す。)で表されるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
本発明は、腎臓、脳血管等の主要臓器における微小血管収縮、拡張作用、細胞増殖惹起作用等に関与している20−HETEの産生酵素を阻害する薬剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、アラキドン酸から生合成される20−ヒドロキシエイコサテトラエン酸(20−HETE)の産生酵素を阻害するN−(4−アルキル置換フェニル)−N’−ヒドロキシホルムアミジン誘導体に関する。
【背景技術】
アラキドン酸から産生される生理活性物質として、シクロオキシゲナーゼによって産生されるプロスタグランジン類及びリポキシゲナーゲによって産生されるロイコトリエン類が広く知られている。しかし、近年、チトクロームp450属に属する酵素によってアラキドン酸から産生される20−HETEが生体内で多彩な働きをしていることが明らかとされつつある。これまでに20−HETEは腎臓、脳血管等の主要臓器において微小血管を収縮又は拡張させることや細胞増殖を惹起することが明らかにされており、生体内で重要な生理作用を演じていると共に各種腎疾患、脳血管疾患、循環器疾患等の病態に深く関与していることが示唆されている(J.Vascular Research,第32巻,79頁,1995年、Am.J.Physiol.,第277巻,R607頁,1999年、Physiol.Rev.,第82巻,131頁,2002年)。
この様な背景の中で、N’−ヒドロキシフェニルホルムアミジン誘導体やカルボン酸誘導体に強い20−HETE産生酵素阻害作用(国際特許公開WO0132164、WO01096309、WO0168610号明細書、日本公開特許公報JP01354658、JP01354646号明細書)があると報告されている。
【発明の開示】
本発明は、腎臓、脳血管等の主要臓器における微小血管収縮又は拡張、あるいは細胞増殖惹起等に関与する20−HETEの産生を阻害する薬剤を提供することを目的としている。
本発明者らは前記課題を解決する目的で鋭意探索研究した結果、ある特異な部分構造を有する芳香族化合物、すなわちN−(4−アルキル置換フェニル)−N’−ヒドロキシホルムアミジン誘導体が意外にも選択的に20−HETEの産生酵素の阻害作用を有することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、下記式

(式中、Rは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、AはC1−10アルキレン基又は式

(式中、m、n及びpは各々0〜4の整数を示す。)で表される基を示し、RはN,N−ジC1−6アルキルアミノ基、ジオキサニル基、C1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基、C1−4アルコキシC1−4アルコキシ基又は式

(式中、s及びtは各々1〜4の整数を示し、Bはメチレン基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、C1−4アルキル基で置換された窒素原子、フェニル基で置換された窒素原子又はベンジル基で置換された窒素原子を示し、Rは水素原子又はC1−4アルキル基を示し、rは0〜2の整数を示す。)で表される基を示す。)で表されるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を提供するものである。
他の本発明は、下記式

(式中、A′はC1−10アルキレン基であり、R′はN,N−ジC1−6アルキルアミノ基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、C1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基又はC1−4アルコキシC1−4アルコキシ基である。)で表されるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を提供するものである。
他の本発明は、N−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬を提供するものである。
他の本発明は、20−HETEの産生酵素の阻害剤であるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体を提供するものである。
他の本発明は、N−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする腎疾患、脳血管疾患又は循環器疾患治療薬を提供するものである。
本発明において使用される用語が以下に定義される。
本発明において、「Cx−y」とは、その後に続く基がx〜y個の炭素原子を有することを示す。
1−4アルキル基は、炭素原子を1〜4個有する直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。C1−4アルコキシ基は、炭素原子を1〜4個有する直鎖状又は分枝状のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基などが挙げられる。
N,N−ジC1−6アルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基などが挙げられる。


で表される基とはC3−7のシクロアルカンに2つのアルキレン基もしくは結合手が結合した基であり、好ましくはpは0〜3であり、m及びnは1〜3であり、例えば、下記に示す基などを示す。

ジオキサニル基は、ヘテロ原子として酸素原子を2個有する飽和六員環(ジオキサン)、好ましくは1,3−ジオキサンの環から水素を除いて誘導される1価の基を意味する。
1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基は、その基の環がC1−6アルキル基で置換されていてもよく、例えば、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル基などである。
1−4アルコキシC1−4アルコキシ基は、C1−4アルコキシ基とC1−4アルコキシ基が複合した形態を有するものである。例えば、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、n−ブトキシエトキシ基、イソブトキシエトキシ基などが好ましい。
1−10アルキレン基は、炭素原子を1〜10個有する直鎖状又は分枝状のアルキレン基を意味し、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘプチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、3,3−ジメチルプロピレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。中でも、エチレン基、3,3−ジメチルプロピレン基が好ましい。


で表される基とは、例えば、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、4−メチルピペラジン−1−イル基、3,5−ジメチルモルホリノ基などである。
また、製薬学的に許容される塩とは、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどとの塩、鉱酸又は有機酸との塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ぎ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アジピン酸塩、システインとの塩、N−アセチルシステインとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、よう化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩、アクリル酸ポリマーとの塩、カルボキシビニルポリマーとの塩などを挙げることができる。
本発明化合物は、例えば以下に示す方法によって合成することができる。
製造法1

(式中、B、R、R、r、s及びtは前記と同意義であり、R21及びR22はC1−4アルキル基あるいは両者が一体となってC3−7シクロアルカン環を形成する。)
Mannich反応を利用して合成したアルデヒド1とベンジルホスホン酸ジエチル等のHorner−Emons試薬を、適当な溶媒(テトラヒドロフラン、エーテル、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド等)中、適当な塩基(n−ブチルリチウム、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム等)の存在下、−78℃〜室温にて1〜24時間反応し、化合物2を製造することができる。次に、化合物2とパラジウム活性炭、水酸化パラジウム等の触媒の存在下、適当な溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル等)中、水素雰囲気下で反応し、化合物3を製造することができる。次に、化合物3を発煙硝酸−濃硫酸、硝酸カリウム−濃硫酸、又は硝酸2アンモニウムセリウム(IV)−濃硫酸、等の条件でニトロ化し、ニトロ誘導体4を製造することができる。次に、化合物4を適当な溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル等)中、還元剤(パラジウム活性炭/水素雰囲気下、パラジウム活性炭/ヒドラジン水和物、パラジウム活性炭/ぎ酸アンモニウム、塩化スズ(II)1水和物、鉄/塩化アンモニウム、ラネーニッケル/ヒドラジン水和物等、好ましくはパラジウム活性炭/水素雰囲気下)を用いてニトロ基を還元することでアニリン誘導体5を製造することができる。
次に、化合物5を適当な溶媒中(メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル等)、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールと室温〜150℃、好ましくは70℃〜100℃で2〜72時間反応する。ここで得られる中間体を適当な溶媒中(メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル等)、塩化ヒドロキシアンモニウムと処理することによって、本発明化合物6を製造することができる。あるいは、化合物5をオルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル等のオルト蟻酸エステル類と、触媒量の酢酸等の有機酸、塩酸等の鉱酸あるいはピリジン塩酸塩等の存在下あるいは非存在下に反応して中間体得る。反応温度は室温〜150℃、好ましくは70℃〜100℃で、反応時間は2〜72時間である。これを単離あるいは単離せずにヒドロキシルアミンと適当な溶媒中(メタノール、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル等)で処理し、本発明化合物6を製造することができる。
また、文献(J Org Chem 第53巻、第3309項、1988年)に記載された方法に準じて合成した、式

(式中、R21及びR22は前記と同意義である。)で示される化合物と式

(式中、B、R、r、s及びtは前記と同意義である)で示されるアミン類との還元的アルキル化反応によって得た合成中間体3を用いて同様の方法で本発明化合物6を製造することができる。
製造法2
文献(Org Letter 第4巻、第1951項、2002年)に記載された方法に準じて合成した式

(式中、B、R、r、s及びtは前記と同意義であり、R31及びR32はC1−4アルキル基あるいは両者が一体となってC3−7シクロアルカン環を形成する。)
で示される化合物のWolff−Kishner反応等による還元もしくは、文献(Tetrahedron、第46巻、第2111項、1990年)に記載された方法に準じて合成した、式

(式中、R31及びR32は前記と同意義である。)で示される化合物と式

(式中、B、R、r、s及びtは前記と同意義である。)で示されるアミン類との還元的アルキル化反応によって得た式

(式中、B、R、r、s、t、R31及びR32は前記と同意義)で示される合成中間体を用いて、製造法1で示した方法を用いて式

(式中、B、R、r、s、t、R31及びR32は前記と同意義である。)で示される本発明の化合物を合成することができる。
製造法3

2−(4−ニトロフェニル)マロニックアシッド ジメチルエステル(7)と式R23OH;(式中、R23は、C1−4アルコキシC1−3アルキル基、N,N−ジC1−6アルキルアミノC1−9アルキル基又は式

(式中、B、R、r、s、t、m及びpは前記と同意義であり、qは0〜3の整数を示す。)で示されるアルコールとを光延反応を利用して縮合し、化合物8を合成することができる(Tetrahedron Lett.,第42巻,第8395項,2001年)。次に、化合物8を適当な溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、DMSO、DMSO−HO等)中、NaClあるいはMgCl・6HOを作用させ化合物9を合成することができる。反応温度は100〜150℃、反応時間は5〜24時間である(Synthesis,第12巻,第1659項,2000年)。次に、製造法1に記載した同じ方法でニトロ基を還元し、アニリン誘導体10を合成することができる。最後に、製造法1に記載した同じ方法でヒドロキシホルムアミジンを構築し、本発明化合物11を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
【実施例1】
N−[4−(4−N,N−ジメチルアミノ−3,3−ジメチル−ブチル)フェニル]−N’−ヒドロキシフォルムアミジンの製造
(1)塩酸ジメチルアミン(10.8g,0.132mol)と2−プロパノール(62ml)の混合物にパラホルムアルデヒド(8.7g)とイソブチルアルデヒド(12ml,0.132mol)を加えた。反応混合物を加熱還流下、一中夜攪拌した。室温に冷却した後に、反応液を濃縮した。残査に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチル(100ml×5)で抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮し、3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド(8.4g)を無色油状物質として得た。
(2)ベンジルホスホン酸ジエチル(7.4g,0.0325mol)とTHF(32ml)の混合物を−78℃に冷却し、窒素気流下で1.6M n−BuLiのn−ヘキサン溶液(19.4mL,0.0311mol)を加えた。15分後3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド(3.5g,0.0271mol)のTHF溶液(20ml)を滴下した。30分攪拌した後に、反応液を室温まで昇温し、水(50ml)を加え、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=96:4)で精製し、(2,2−ジメチル−4−フェニル−3−ブテニル)ジメチルアミン(3.3g)を無色油状物質として得た。
(3)(2,2−ジメチル−4−フェニル−3−ブテニル)ジメチルアミン(3.0g,0.015mol)のメタノール溶液に10%パラジウム活性炭(0.3g)を加え、水素雰囲気下で一中夜攪拌した。不溶物をセライトを通して濾過し、そのろ液を濃縮し、(2,2−ジメチル−4−フェニルブチル)ジメチルアミン(2.9g)を無色結晶として得た。
(4)(2,2−ジメチル−4−フェニルブチル)ジメチルアミン(2.9g,0.014mol)、濃硫酸(15ml)とクロロホルム(29ml)の混合物に、氷冷下、激しく攪拌しながら発煙硝酸(0.58ml,0.014mol)をゆっくり滴下した。10分後、反応液に5M水酸化ナトリウム(90ml)を加え、反応液をpH8.0に調製した。さらに、反応液に水(500ml)を加え、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=92:8)で精製し、[2,2−ジメチル−4−(4−ニトロフェニル)ブチル]ジメチルアミンと[2,2−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)ブチル]ジメチルアミンの混合物(10:1;0.45g)を黄色油状物質として得た。
(4)[2,2−ジメチル−4−(4−ニトロフェニル)ブチル]ジメチルアミン(400mg,1.60mmol)のメタノール溶液に10%パラジウム活性炭(40mg)を加え、水素雰囲気下で3時間攪拌した。不溶物をセライトを通して濾過し、そのろ液を濃縮し、4−(4−ジメチルアミノ−3,3−ジメチルブチル)アニリン(290mg)を赤色油状物として得た。
次に、4−(4−ジメチルアミノ−3,3−ジメチルブチル)アニリン(200mg,0.908mmol)のメタノール溶液(4ml)にN,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール(0.48ml,3.6mmol)を加え、加熱還流下、一中夜攪拌した。反応液を室温に冷却した後に、塩化ヒドロキシアンモニウム(315mg,4.54mmol)を加え、室温で78時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、2.5M水酸化ナトリウムを加え、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残査をヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒から再結晶し、無色粉末状の標題化合物(68mg)を得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ:
0.87(s,6H),1.39−1.45(m,2H),2.08(s,2H),2.23(s,6H),2.38−2.44(m,2H),6.98−7.05(m,4H),7.38(d,J=10.7Hz,1H),8.39(d,J=10.7Hz,1H),9.73(s,1H)
融点124.0〜126.0℃
【実施例2】
N−[4−(4−N,N−ジエチルアミノ−3,3−ジメチル−ブチル)フェニル]−N’−ヒドロキシフォルムアミジンの製造
実施例1と同様な方法を用いて標題化合物を合成した。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ:
0.86(s,6H),0.93(t,J=7.2Hz,6H),1.42−1.36(m,2H),2.17(s,2H),2.39−2.45(m,2H),2.47−3.31(m,4H),6.98−7.05(m,4H),7.38(d,J=10.7Hz,1H),8.39(d,J=10.7Hz,1H),9.75(s,1H)
融点95.5〜97.5℃(無色粉末)
【実施例3】
N−[4−(4−ピロリジン−1−イル−3,3−ジメチル−ブチル)フェニル]−N’−ヒドロキシフォルムアミジンの製造
実施例1と同様な方法を用いて標題化合物を合成した。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ:
1.40−1.46(m,2H),1.64−1.68(m,4H),2.29(s,2H),2.53−2.58(m,2H),6.98−7.05(m,4H),7.38(d,J=10.7Hz,1H),8.39(d,J=10.7Hz,1H),9.75(s,1H)
融点120.0〜121.5℃(無色粉末)
【実施例4】
N−[4−(4−N,N−ジエチルアミノブチル)フェニル]−N’−ヒドロキシフォルムアミジンの製造
(1)4−(4−ニトロフェニル)酪酸(1.0g,4.78mmol)とジエチルアミン(0.699g,9.56mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)溶液にN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸(1.37g,7.17mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(0.969g,7.17mmol)を加え室温にて24時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、滅圧濃縮し、N,N−ジエチル−4−(4−ニトロフェニル)ブチルアミド(1.4g)を淡黄色油状物質として得た。
N,N−ジエチル−4−(4−ニトロフェニル)ブチルアミド(1.4g)とTHF(14ml)の混合物に1M BH・THF(9.6ml)を滴下し、室温にて一中夜攪拌した。さらに1M BH・THF(7.0ml)を滴下し、室温にて6時間攪拌した後に、反応液に50%酢酸(3ml)を加えた。反応液を濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、ジエチル−[4−(4−ニトロフェニル)ブチル]アミン(1.74g)を淡黄色油状物質として得た。
(3)ジエチル−[4−(4−ニトロフェニル)ブチル]アミン(1.74g)のメタノール溶液に10%パラジウム活性炭(0.3g)を加え、水素雰囲気下で3時間攪拌した。不溶物をセライトを通して濾過し、そのろ液を濃縮した。残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、4−(4−ジエチルアミノブチル)−アニリン(998mg)を油状物質として得た。
(4)4−(4−ジエチルアミノブチル)−アニリン(676mg,3.12mmol)のメタノール溶液(4ml)にN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.83ml,6.2mmol)を加え、加熱還流下、1時間攪拌した。反応液を室温に冷却した後に、塩化ヒドロキシアンモニウム(433mg,6.24mmol)を加え、室温で90時間攪拌した。反応混合物を濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで2回、クロロホルムで5回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:95)で精製した。得られた固体を、ヘキサン−酢酸エチルの混合溶媒から再結晶し、無色粉末状の標題化合物(314mg)を得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ:
0.92(t,J=7.3Hz,6H),1.24−1.60(m,4H),2.26−2.45(m,8H),6.99−7.08(m,4H),7.39(d,J=11.0Hz,1H),8.42(d,J=11.0Hz,1H),9.77(s,1H)
融点110.0〜113.0℃
【実施例5】
N−{4−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]フェニル}−N’−ヒドロキシホルムアミジンの製造
(1)トリフェニルホスフィン(4.81g,18.3mmol)のテトラヒドロフラン(20ml)溶液に、0℃に冷却後、ジエチルアゾジカルボキシレート(40%トルエン溶液;7.99g,18.3mmol)とジエチレングリコールモノメチルエーテル(2.21g,18.4mmol)を順次加えた。室温まで昇温し、30分間攪拌した。再び0℃に冷却し、2−(4−ニトロフェニル)マロニックアシッド ジメチルエステル(3.10g,12.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50ml)を滴下した。室温まで昇温後、室温で一晩攪拌し、次いで60℃で5.5時間反応させた。反応混合物に酢酸エチルを加え、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜2:1)、次いでNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−2−(4−ニトロフェニル)マロニックアシッド ジメチルエステル(1.80g)を淡黄色油状物質として得た。
(2)2−[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]−2−(4−ニトロフェニル)マロニックアシッド ジメチルエステル(1.13g,3.2mmol)のN,N−ジメチルアセトアミド(6ml)溶液に、塩化マグネシウム・6水和物(1.30g,6.4mmol)を加え、150℃で10時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、酢酸エチルを加え、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜2:1)で精製し、1−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]−4−ニトロベンゼン(0.52g)を黄色油状物質として得た。
(3)1−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]−4−ニトロベンゼン(0.49g,2.1mmol)のメタノール(10ml)溶液に、5%パラジウム−活性炭(0.20g)を加え、水素雰囲気下、室温にて1時間攪拌した。TLC分析により原料の消失を確認した後に、セライトを用いて不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:3〜1:1)で精製し、4−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]フェニルアミン(0.38g)を淡黄色油状物質として得た。
(4)4−[3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]フェニルアミン(0.20g,0.97mmol)のメタノール(5ml)溶液に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.24g,2.0mmol)を加え、100℃で4.5時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、ヒドロキシルアミン1塩酸(0.14g,1.9mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。さらにヒドロキシルアミン1塩酸(0.067g,0.96mmol)を加え、室温で1.5時間、50℃で5.5時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1〜1:2)で精製し、標題化合物(0.14g)を淡緑色油状物質として得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ:
1.66−1.78(m,2H),3.25(s,3H),3.26−3.39(m,4H),3.40−3.51(m,4H),7.00−7.10(m,4H),7.40(d,J=10.7Hz,1H),8.42(d,J=10.7Hz,1H),9.76(s,1H)
【実施例6】
N−{4−[6−(N,N−ジメチルアミノ)ヘキシル]フェニル}−N’−ヒドロキシホルムアミジンの製造
ジエチレングリコール モノメチルエーテルの代わりに5−(N,N−ジメチルアミノ)ペンタノールを出発原料に用いて実施例5と同様な方法にて標題化合物を合成した。
融点96.0〜97.0℃(無色粉末)
【実施例7】
N−{4−[2−(5,5−ジメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)エチル]フェニル}−N’−ヒドロキシホルムアミジンの製造
(1)エチル 4−ニトロシンナメート(3.18g,14.4mmol)のテトラヒドロフラン(30ml)溶液に、−78℃で水素化ジイソブチルアルミニウム(1.0Mトルエン溶液;14.4ml,14.4mmol)を滴下し、−78℃でそのまま1時間攪拌した。さらに水素化ジイソブチルアルミニウム(1.0Mトルエン溶液;28.7ml,28.7mmol)を加え、−78℃で30分間反応させた。反応液に1M塩酸水溶液を徐々に加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:3)で精製し、3−(4−ニトロフェニル)プロピル−2−エン−1−オール(2.16g)を黄色粉末として得た。
融点124.5〜126.0℃
(2)3−(4−ニトロフェニル)プロピル−2−エン−1−オール(0.67g,3.8mmol)のメチレンクロライド(40ml)溶液に、活性二酸化マンガン(5.01g)を加え、室温で2時間反応させた。不溶物をセライトで濾過し、不溶物をクロロホルムで洗浄した。濾液を減圧濃縮し、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:1〜3:1)で精製し、3−(4−ニトロフェニル)プロペナール(0.55g)を淡黄色粉末として得た。
融点140.0〜141.5℃
(3)3−(4−ニトロフェニル)プロペナール(0.51g,2.9mmol)のベンゼン(40ml)溶液に、p−トルエンスルホン酸1水和物(0.059g,0.3mmol)、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール(0.36g,3.5mmol)を加え、還流加熱下、5時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)を加え、酢酸エチル(100ml)で2回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1〜6:1)で精製し、5,5−ジメチル−2−[2−(4−ニトロフェニル)ビニル]−[1,3]ジオキサン(0.73g)を無色粉末として得た。
融点86.5〜88.5℃
(4)5,5−ジメチル−2−[2−(4−ニトロフェニル)ビニル]−[1,3]ジオキサン(0.64g,2.4mmol)のメタノール(20ml)溶液に、5%パラジウム−活性炭(0.26g)を加え、水素雰囲気下、室温にて4時間攪拌した。TLC分析により原料の消失を確認した後に、セライトを用いて不溶物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜2:1)で精製し、4−[2−(5,5−ジメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)エチル]フェニルアミン(0.48g)を無色粉末として得た。
融点93.5〜94.5℃
(5)4−[2−(5,5−ジメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)エチル]フェニルアミン(0.32g,1.4mmol)のメタノール(10ml)溶液に、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(0.33g,2.8mmol)を加え、100℃で4時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、ヒドロキシルアミン1塩酸(0.14g,1.9mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。さらに塩化ヒドロキシアンモニウム(0.19g,2.8mmol)を加え、室温で1時間、60℃で6.5時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、飽和食塩水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して得られた残査をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1〜1:2)で精製し、標題化合物(0.25g)を無色粉末として得た。
融点159.0〜160.0℃
【実施例8】
N−{4−[3−(5,5−ジメチル−[1,3]ジオキサン−2−イル)プロピル]フェニル}−N’−ヒドロキシホルムアミジンの製造
エチル4−ニトロシンナメートの代わりに4−(4−ニトロフェニル)ブチリックアシドを出発原料に用いて実施例7と同様な方法にて標題化合物を合成した。
融点138.0〜140.0℃(無色粉末)
実施例1〜8で合成した化合物の構造式を以下に示す。

試験例[ヒト腎ミクロソーム由来20−HETE産生酵素の阻害作用]
上記表記載の化合物について、20−HETE産生阻害作用を試験した。
本試験はJ.Pharmacol.Exp.Ther.,第268巻,474頁,1994年に記載の方法に準拠して行った。
DMSOで1μMに調製した被験薬溶液を、5mMの塩化マグネシウム及び1mMのエチレンジアミンテトラアセティックアシッド ジソディウムソルト(EDTA)を含む50mMの3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)(pH7.4)緩衝液に加え、酵素源としてヒト腎ミクロソーム画分(Human Cell Culture Center,Anatomic Gift Foundation)、基質として[5,6,8,9,11,12,14,15]トリチウム−アラキドン酸、そして補酵素としてNADPHを添加し、37度で1.5時間反応させた。反応液にギ酸を添加して反応を停止させた後、アセトニトリル(終濃度50%)を加えた。ODSカラム(バイオシルC18,バイオラッド社製)を装着した放射性物質検出器付き高速液体クロマトグラフィーを用いて20−HETEの産生量を測定した。化合物無添加時の20−HETEの産生量を100%とし、化合物を添加した時の20−HETE産生が50%阻害される化合物濃度(IC50値)を算出した。その結果について表1に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明に係る化合物は20−HETE産生阻害作用を有し、ヒト及び動物における20−HETEが関わる疾病、例えば各種腎疾患、脳血管疾患、各種循環器疾患治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】


(式中、Rは水素原子、C1−4アルキル基、C1−4アルコキシ基又はハロゲン原子を示し、AはC1−10アルキレン基又は式

(式中、m、n及びpは各々0〜4の整数を示す。)で表される基を示し、RはN,N−ジC1−6アルキルアミノ基、ジオキサニル基、C1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基、C1−4アルコキシC1−4アルコキシ基又は式

(式中、s及びtは各々1〜4の整数を示し、Bはメチレン基、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、C1−4アルキル基で置換された窒素原子、フェニル基で置換された窒素原子又はベンジル基で置換された窒素原子を示し、Rは水素原子又はC1−4アルキル基を示し、rは0〜2の整数を示す。)で表される基を示す。)で表されるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項2】


(式中、A′はC1−10アルキレン基であり、R′はN,N−ジC1−6アルキルアミノ基、ピロリジニル基、ジオキサニル基、C1−4アルキル基で置換されたジオキサニル基又はC1−4アルコキシC1−4アルコキシ基である。)で表されるN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求の範囲1又は2記載のN−ヒドロキシホルムアミジン誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬。
【請求項4】
20−HETE産生酵素阻害剤である請求項3記載の医薬。
【請求項5】
腎疾患、脳血管疾患又は循環器疾患治療薬である請求項3記載の医薬。

【国際公開番号】WO2004/024677
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535940(P2004−535940)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011603
【国際出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】