説明

N−ビニル環状ラクタム系重合体、その製造方法及び用途

【課題】分散性や吸着性等に優れるとともに、高いカルシウムイオン捕捉能を有し、例えば、洗剤添加物用途に好適に使用することが可能なN−ビニル環状ラクタム系重合体及びその用途、並びに、このような重合体を効率的に製造することができるN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるN−ビニル環状ラクタム系重合体であって、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、上記N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体100重量部に対して200〜9900重量部であり、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体は、固形分25質量%水溶液における25℃粘度が100000mPa・s以下であるN−ビニル環状ラクタム系重合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ビニル環状ラクタム系重合体、その製造方法及び用途に関する。より詳しくは、ポリビニルピロリドンやポリビニルカプロラクタム等のN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体を用いたN−ビニル環状ラクタム系重合体及びその製造方法、並びに、該重合体を使用した洗剤添加物及び洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルピロリドンやポリビニルカプロラクタム等のN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体は、そのN−ビニル環状ラクタム構造に起因して、各種基材に対して優れた親和性、溶解性、成膜性等を発揮し得るものである。例えば、直鎖状のビニルピロリドン−アクリル酸ランダム共重合体が市販されており、分散剤、接着剤、繊維処理剤等の用途における使用が提案されている。しかしながら、この共重合体は、ランダムであるために、用途によってはN−ビニルピロリドン環の親和性が充分とはならないことがあり、この点で改善の余地を有していた。
【0003】
ところで、従来より、基幹重合体にカルボキシル基を有するグラフト鎖を導入することにより、相溶性や密着性等を付与する手法が一般に知られているが、当該手法を利用し、N−ビニル環状ラクタム構造とカルボキシル基とがそれぞれ発揮する特性を兼ね備えた重合体が種々検討されている。例えば、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに対してカルボキシル基含有不飽和単量体が特定量グラフト重合されてなり、かつ、不純物ポリマーの含有量が特定されたN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体(例えば、特許文献1参照。)や、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹ポリマーに対してカルボキシル基含有不飽和単量体が特定量グラフト重合されてなるN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体を必須成分とする洗剤添加物(例えば、特許文献2参照。)が開示されており、これらのグラフト重合体は、工業的に非常に有用なものとなっている。しかしながら、カルシウムイオンの捕捉能等の性能を更に向上させることにより、より多くの用途で更に有用なものとするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2001−278922号公報(第2頁)
【特許文献2】特開2002−37820号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、分散性や吸着性等に優れるとともに、高いカルシウムイオン捕捉能を有し、例えば、洗剤添加物用途に好適に使用することが可能なN−ビニル環状ラクタム系重合体及びその用途、並びに、このような重合体を効率的に製造することができるN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体について種々検討したところ、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるものとすると、得られる重合体中にN−ビニル環状ラクタム構造とカルボキシル基とが存在することに起因して、吸着能や分散能等に優れたものとなることに着目し、カルボキシル基含有不飽和単量体の使用量を一定量に特定したうえで、得られる重合体の固形分25質量%水溶液における25℃粘度を特定することにより、分散性を更に向上することができるとともに、カルシウムイオン捕捉能を充分に高めることが可能となることを見いだした。そして、このような重合体を、例えば洗剤添加物用途に使用した場合には、クレイ汚れによる再汚染を防止して、高い洗浄力を発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、このような重合体の製造方法を、過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用して重合を行う工程を含むものとすると、ゲル化が充分に抑制され、容易に重合を行うことができ、効率的に上記重合体を製造することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるN−ビニル環状ラクタム系重合体であって、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、上記N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体100重量部に対して200〜9900重量部であり、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体は、固形分25質量%水溶液における25℃粘度が10万mPa・s以下であるN−ビニル環状ラクタム系重合体である。
本発明はまた、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体を含有する洗剤添加物でもある。
本発明は更に、上記洗剤添加物を含有する洗剤組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体は、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるものである。なお、重合形態としては、後述するように、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分をグラフト重合する形態であることが特に好ましく、このように、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体がN−ビニル環状ラクタム系グラフト重合体である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体において、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体(以下、「重合体(A)」ともいう。)としては、少なくともN−ビニル環状ラクタム単位を有するものであれば特に限定されず、例えば、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等を重合又は共重合させて得られるホモポリマー(単独重合体)又はコポリマー(共重合体)等が好適である。なお、上記重合体(A)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0008】
上記単独重合体としては、例えば、ポリビニルピロリドンやポリビニルカプロラクタムであることが好ましい。より好ましくは、数平均分子量1000〜3000000のポリビニルピロリドンや、数平均分子量5000〜500000のポリビニルカプロラクタムである。
上記共重合体において、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等と共重合させる単量体成分としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸エステル、マレイン酸、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、オレフィン類等の1種又は2種以上を使用することができる。なお、上記エステルとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキルエステル、ジメチルアミノアルキルエステル及びその四級塩、ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。また、本発明の単量体成分に含んでもよい他の単量体として後述する単量体等の1種又は2種以上を使用することもできる。
【0009】
上記重合体(A)としては、数平均分子量が1000〜3000000であることが好適であり、これにより、効率的かつ簡便に重合を行うことが可能となり、また、得られる重合体がより充分な分散性を発揮できることとなる。数平均分子量が1000未満であると、得られる重合体の分子量が充分とはならず、優れた分散性を発揮できないおそれがあり、3000000を超えると、重合時に充分に均一に撹拌することができないおそれがある。より好ましくは、下限が1500、上限が100万であり、更に好ましくは、下限が2000、上限が10万である。
上記数平均分子量としては、例えば、下記の条件下で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
<数平均分子量測定条件(GPC分析)>
カラム:昭和電工社製 Shodex KD−G、Shodex LF804、Shodex KD801
溶離液:0.1質量%臭化リチウム ジメチルホルムアミド溶液
溶離液流量:0.8mL/分
注入量:10μL
カラムオーブン:40℃
検出器:示差屈折計(RI)
サンプル濃度:0.5質量%
検量線:ポリスチレン換算
装置:(株)島津製作所製
システムコントローラ:SCL−10A
オートインジェクター:SIL−10A
ポンプ:LC−10AD
カラムオーブン:CTO−10A
RI検出器:RID−6A
【0010】
上記重合体(A)としてはまた、N−ビニルピロリドンやN−ビニルカプロラクタム等に由来するN−ビニル環状ラクタム単位を、全構造単位100質量%中、20質量%以上有することが好適である。これにより、重合効率を充分に向上することが可能となるため、上記重合体(A)に鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含む重合体(不純物重合体)の副生を充分に抑制することができ、各種基材への相溶性等を高めることが可能となる。より好ましくは50質量%以上である。
【0011】
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体において、重合体(A)に重合させる単量体成分としては、カルボキシル基含有不飽和単量体を必須とすることが適当である。これにより、充分な相溶性や密着性が付与され、分散性や吸着性等の各種物性に優れた重合体を得ることが可能となる。
上記カルボキシル基含有不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びこれらの塩が好適である。なお、塩としては、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン類やエタノールアミン類等の有機アミン塩が挙げられ、中でも、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましい。
【0012】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体の使用量としては、重合体(A)100重量部に対し、200〜9900重量部であることが適当である。200重量部未満であると、分散性が充分とはならず、また、カルシウムイオン捕捉能を充分なものとすることができないおそれがあり、9900重量部を超えると、重合体(A)を構成するN−ビニル環状ラクタム単位の特性がより充分に発揮されず、用途上その有用性を更に高めることができないおそれがある。より好ましくは、下限が300重量部、上限が5000重量部であり、更に好ましくは、下限が350重量部、上限が2000重量部である。
なお、上記カルボキシル基含有不飽和単量体として塩の形態のものを使用する場合、上記重量比は、当該塩を形成する酸に換算した値として算出するものとする。すなわち、例えばアクリル酸ナトリウムを使用する場合には、アクリル酸に換算して上記重量比を算出するものとする。
また全単量体成分100質量%中のカルボキシル基含有不飽和単量体の含有量としては、例えば、25質量%以上となるようにすることが好適である。より好ましくは40質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
【0013】
上記単量体成分としてはまた、必要に応じ、カルボキシル基含有不飽和単量体以外の他の単量体を含むことができる。他の単量体としては、カルボキシル基含有不飽和単量体と共重合可能なものであれば特に限定されず、例えば、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸エステル、マレイン酸、オレフィン類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、炭素数1〜20のアルキルエステル、ジメチルアミノアルキルエステル及びその四級塩、ヒドロキシアルキルエステル等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0014】
上記他の単量体としてはまた、例えば、下記の単量体等の1種又は2種以上を使用することもできる。
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアセチルアミド等のアミド基含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類単量体;スチレン、スチレンスルホン酸等の芳香族ビニル系単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン等のトリアルキルオキシシリル基含有ビニル系単量体、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等のケイ素含有ビニル系単量体;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロへキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、ビニルスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸(塩)、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基含有単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オールとそれらのアルコールのポリアルキレンオキサイド付加物;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のモノ若しくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;
【0015】
3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエ−テルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2一ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート;6−アリロキシへキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリロキシへキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、若しくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステル若しくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、若しくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステル若しくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、若しくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステル若しくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩等のその他の官能基含有単量体類等。
【0016】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体は、ゲル化していない重合体であることが好ましく、固形分25質量%水溶液における25℃粘度が100000mPa・s以下であることが適当である。10万mPa・sより大きい場合には、ゲル状物を含む重合体となるおそれがあり、その結果、充分な親水性や分散性を発揮できず、様々な用途に好適に使用することができないおそれがある。好ましくは5万mPa・s以下であり、より好ましくは3万mPa・s以下である。
上記25℃粘度としては、例えば、以下のようにして求めることができる。
<固形分25質量%水溶液における25℃粘度の求め方>
200mLのビーカーに、固形分25質量%水溶液(重合体を固形分換算で25質量%含む水溶液)200gを添加し、粘度計(BROOKFIELD社製;LVDL−I+)で♯1〜♯4のスピンドルを用いて25℃で測定する。
【0017】
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体は、上述したようにグラフト重合体であることが再汚染防止率を向上するため好ましい。グラフト体にすることによって、重合中の濁りや分離の発生がより充分に抑制され、均一な水溶液が得られることとなるため、好ましい。そのため、カオリン濁度は200mg/L以下が好ましい。これにより、長期保存下でも分離しない均一な水溶液が得られ、様々な用途により好適に使用することが可能となる。より好ましくは100mg/L以下であり、更に好ましくは50mg/L以下である。
上記カオリン濁度としては、例えば、以下のように求めることができる。
<カオリン濁度の求め方>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した固形分25質量%水溶液(重合体を固形分換算で25質量%含む水溶液)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTurbidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
【0018】
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体はまた、カルシウムイオン捕捉能が230mg・CaCO/g以上であることが好適である。この場合、様々な水系に対して好適に作用することが可能となり、例えば洗剤添加物用途に使用した場合には、更に強力な洗浄力を発揮できることとなる。より好ましくは240mg・CaCO/g以上であり、更に好ましくは250mg・CaCO/g以上である。
上記カルシウムイオン捕捉能としては、例えば、以下のように求めることができる。
<カルシウムイオン捕捉能の求め方>
検量線用カルシウムイオン標準液として、塩化カルシウム2水和物を用いて、0.01mol/L、0.001mol/L、0.0001mol/Lの水溶液を50g調製し、1.0質量%NaOH水溶液でpH9.9〜10.2の範囲に調整し、更に4mol/Lの塩化カリウム水溶液(以下、「4M−KCl水溶液」と略す)を1mL添加し、更にマグネチックスターラーを用いて充分に攪拌して検量線用サンプル液を作製する。
また試験用カルシウムイオン標準液として、同じく塩化カルウシム2水和物を用いて、0.001mol/Lの水溶液を必要量(1サンプルにつき50g)調製する。次いで、100ccビーカーに試験サンプル(重合体)を固形分換算で10mg秤量し、上記の試験用カルシウムイオン標準液50gを添加し、マグネチックスターラーを用いて充分に攪拌する。なお、試験サンプルとして用いた重合体は、固形分40質量%のときにpH=7.5となるように48質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものを用いる。次に、検量線用サンプルと同様に、1.0質量%NaOH水溶液でpH9.9〜10.2の範囲に調整し、4M−KCl水溶液を1mL添加して、試験用サンプル液を作製する。
このようにして作製した検量線用サンプル液、試験用サンプル液を平沼産業社製滴定装置COMTITE−550を用いて、オリオン社製カルシウムイオン電極93−20、比較電極90−01により測定を行う。
【0019】
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体はまた、再汚染防止率が65.0%以上であることが好適である。より好ましくは66.0%以上である。
なお、再汚染防止率とは、クレイ汚れによる再汚染を防止する性能を示す指標となるものであり、例えば、以下のように求めることができる。
<再汚染防止率の求め方>
(1)JIS L0803:1998準拠の綿布を5cm×5cmに切断し、白布10枚を作製した後、各白布の白度(Z値)を、予め、測色色差計(日本電色工業社製、ND−1001DP型)を用いて反射率にて測定し、その平均値を(A0)とする。なお、白度を測定するときは、測定を行う布の上に(測定面と反対側の面に)残りの9枚を重ね、更にその上に綿白布(財団法人洗濯科学協会製)10枚を重ねて測定を行うこととする。
(2)塩化カルシウム二水和物2.21gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した後、この硬水を25℃の恒温槽につけておく。
(3)ターゴットメーターを25℃にセットし、上記硬水1L及びクレー(社団法人日本粉体工業技術協会より入手した試験用ダスト11種)0.5gをポットに入れ、100rpmで1分間攪拌する。次いで、白布10枚を入れ、100rpmで1分間攪拌する。
(4)更に、上記ポットに、5質量%炭酸ナトリウム水溶液4g、5質量%直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)水溶液4g、合成ゼオライトA−4(平均粒径2〜5μm)0.15g、及び、固形分換算で1重量%の試料ポリマー(N−ビニル環状ラクタム系重合体)水溶液5gを入れ、100rpmで10分間攪拌する。
(5)手で白布の水を絞り、25℃に保った上記硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間攪拌する。これを2回行う。
(6)上記(3)〜(5)を3回繰り返す。
(7)10枚の白布それぞれに当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、各白布の白度(Z値)を、上記測色色差計を用い、再度、反射率にて測定し、その平均値を(A1)とする。
(8)以上のようにして得られる(A0)及び(A1)から、次式;
再汚染防止能(%)=(A1)/(A0)×100
により、再汚染防止率を求める。なお、得られる数値が高いほど、再汚染防止率に優れることを示す。
【0020】
上記N−ビニル環状ラクタム系重合体は更に、不純物重合体の含有量が40質量%以下であることが好適である。これにより、各種基材への相溶性等を高めることが可能となり、また、重合体中のカルボキシル基の反応性が充分に高められることとなり、カルボキシル基の反応性を利用する用途により好適なものとすることができる。より好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
なお、不純物重合体とは、重合体(A)に鎖として導入されていないカルボキシル基含有不飽和単量体を含む重合体を意味し、その含有量は、N−ビニル環状ラクタム系重合体100質量%中の不純物重合体の含有量(質量%)である。
【0021】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体としては、開始剤の存在下、重合体(A)に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合することにより得ることができる。中でも、開始剤として過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用して重合を行うことが特に好適であり、これにより、ゲル化が充分に防止され、効率的かつ簡便に重合を行うことが可能となる。このように、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体を製造する方法であって、過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用して重合を行う工程を含むN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。なお、重合形態としては、N−ビニル環状ラクタム単位を有する基幹重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分をグラフト重合する形態であることが特に好ましく、これにより、得られるN−ビニル環状ラクタム系重合体の再汚染防止能を更に向上することが可能となる。
ここで、本発明においては、分散性やカルシウムイオン捕捉能の向上等の観点から、多量のカルボキシル基含有不飽和単量体を用いるため、通常の重合方法では、重合途中にゲル状物が発生し、重合が困難となることがある。しかしながら、上述したように過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用することによって、多量のカルボキシル基含有不飽和単量体を使用した場合でも、ゲル化が充分に抑制され、重合を簡便に行うことが可能となり、その結果、各種性能に優れた上記重合体を高効率に生産できることとなる。
なお、開始剤として、過酸化物、連鎖移動剤及び還元剤の少なくとも3種を併用することも可能である。
【0022】
上記重合工程において、重合反応方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、沈殿重合等の通常の重合方法によって行うことができる。中でも、溶液重合によることが好適である。
なお、上記重合体(A)は、初期一括仕込みしてもよく、逐次添加してもよいが、反応時間の短縮化や生産性向上等の観点から、初期一括仕込みとする方が好適である。また、カルボキシル基含有不飽和単量体等の単量体成分は、重合効率や反応制御等の点を考慮すると、逐次添加する方が好ましいが、これに限定されるものではなく、初期に一括仕込みすることもできる。また、カルボキシル基含有不飽和単量体等の単量体成分は、予め、後述する溶媒に希釈して添加してもよい。
【0023】
上記重合工程において、過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルヘキシン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
上記連鎖移動剤としては、通常使用されるものを用いればよく特に限定されないが、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤や、また、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素原子数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤等の疎水性連鎖移動剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
上記還元剤としては、通常使用されるものを用いればよく特に限定されないが、例えば、鉄(II)塩、亜ジチオン酸塩、重亜硫酸塩(亜硫酸水素塩)、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも、重亜硫酸塩を用いることが特に好適である。
なお、亜ジチオン酸塩、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩等としては、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好ましく、金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等が好適である。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。これらの中でも、ナトリウム塩が好ましい。
【0026】
上記重合工程において、過酸化物と連鎖移動剤及び/又は還元剤との質量比としては、例えば、過酸化物100重量部に対し、連鎖移動剤及び/又は還元剤の下限が0.01重量部、上限が10重量部であることが好適である。0.01重量部未満であると、ゲル化をより充分に抑制することができないおそれがあり、10重量部を超えると、経済性に優れた製法とすることができないおそれがある。より好ましくは、下限が0.05重量部、上限が5重量部であり、更に好ましくは、下限が0.1重量部、上限が3重量部である。
また過酸化物、連鎖移動剤及び/又は還元剤の合計使用量としては特に限定されず、例えば、重合に使用する全単量体成分100重量部に対して0.1〜30重量部とすることが好ましい。0.1重量部未満であると、重合体(A)への重合率が充分とはならず、不純物重合体の副生量を充分に抑制することができないおそれがあり、30重量部を超えると、経済性に優れた製法とすることができないおそれがある。より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0027】
上記重合工程においてはまた、開始剤として、上述したもの以外の通常使用される他の開始剤を併用することもできるが、この場合、他の開始剤としては、開始剤総量100質量%中、20質量%以下とすることが好適である。より好ましくは10質量%以下である。
上記開始剤の添加方法としては特に限定されず、初期一括仕込みしてもよいし、滴下、分割投入等の連続投入方法によることとしてもよい。また、開始剤を単独で反応容器へ導入してもよく、重合体(A)や単量体成分、溶媒等と予め混合しておいてもよい。
【0028】
上記重合工程のより好ましい形態としては、開始剤として、少なくとも過酸化物と重亜硫酸塩とを使用する工程である。これにより、更に充分にゲル化が抑制されるため、各種性能に優れた上記重合体を高効率に生産できるという本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。このように、上記重合工程が、過酸化物と重亜硫酸塩とを併用する工程である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記重亜硫酸塩としては、上述したように、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。より好ましくは、ナトリウム塩、すなわち亜硫酸水素ナトリウムである。
【0029】
上記重合では、溶媒を使用してもよいが、溶媒としては、重合体(A)が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、水;アルコール類;エーテル類;ケトン類;エステル類;アミド類;スルホキシド類;炭化水素類;等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。これらの中でも、水、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トルエン、酢酸エチル及びこれらの混合溶媒が好ましく、水が特に好ましい。また、これら溶媒中には、カルボン酸の中和やpH制御の目的で有機アミン類やアンモニア等が添加されていてもよい。また、水を含む溶媒においては、アルカリ金属水酸化物を使用することもできる。
上記溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、重合濃度が後述する好適な範囲内となるように設定することが好ましい。具体的には、重合体(A)100重量部に対して5〜900重量部であることが好ましい。より好ましくは25〜400重量部である。なお、上記溶媒は、初期一括仕込みしてもよく、逐次添加してもよい。
【0030】
上記重合時の反応条件に関し、反応温度としては特に限定されず、例えば、0〜200℃とすることが好適であり、より好ましくは、50〜150℃である。また、反応圧力も特に限定されず、例えば、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。なお、常圧下又は減圧下で溶媒を沸騰させながら反応させると、効果的に除熱ができ、反応制御が容易となるので好ましい。更に、上記重合は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0031】
上記重合においては、重合濃度が20質量%以上であることが好適であり、これにより、重合効率が向上するとともに、濃縮工程等を省略又は簡略化することができるため、生産性が大幅に向上し、製造コストを充分に低減することが可能となる。より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。なお、本発明においては、上述したように過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用することにより、このような高濃度条件下であっても、より簡便かつ効率的に上記重合体を得ることが可能となる。
上記重合濃度とは、重合反応が終了した時点での溶液中の固形分濃度、すなわち重合反応系における固形成分の濃度(例えば、単量体の重合固形分濃度)であり、重合反応が終了した時点とは、例えば、上述した各成分の滴下終了後であってもよいし、また、より具体的には、上述した各成分の滴下終了後、反応溶液を保持(熟成)した後であってもよい。
【0032】
このように、上述した製造方法を用いると、本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体を効率的に得ることが可能となり、特に、重合工程を過酸化物と重亜硫酸塩とを併用する工程とすると、更に生産効率が向上するとともに、当該重合体による作用効果が更に充分に発揮されることとなるが、このような製造方法としては、下記の重合体の製造方法としても好適なものである。
すなわち、N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるN−ビニル環状ラクタム系重合体を製造する方法であって、該製造方法は、過酸化物と重亜硫酸塩とを併用して重合を行う工程を含むN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0033】
このような製造方法において、重合工程における好適な形態や種々の条件等については、上述したようにすることが好ましい。
上記製造方法で使用されるN−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体としては、通常使用されるものの1種又は2種以上を使用することができ、その好適な形態は、上述した形態が挙げられる。
また上記単量体成分において、カルボキシル基含有不飽和単量体の使用量としては、上述したように設定することが好ましい。また、上記単量体成分は、カルボキシル基含有不飽和単量体以外の他の単量体を含んでもよく、他の単量体及びその使用量等についての好適な形態もまた、上述した形態が挙げられる。
【0034】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体としては、分散性や吸着性等に優れるとともに、高いカルシウムイオン捕捉能を有し、種々の性能に優れることから、例えば、洗剤添加物、各種無機物や有機物の分散剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋剤等の種々の用途に使用することができる。より具体的には、スケール防止剤、泥土分散剤、セメント材料分散剤、セメント材料分離低減剤、セメント材料用増粘剤、凝集剤、洗剤用ビルダー、洗剤用色移り防止剤、重金属捕捉剤、金属表面処理剤、染色助剤、染料定着剤、泡安定剤、乳化安定剤、インク染料分散剤、水性インク安定剤、塗料用顔料分散剤、塗料用シックナー、感圧接着剤、紙用接着剤、医療用接着剤、貼付剤用粘着剤、スティック糊、化粧パック用粘着剤、樹脂用フィラー分散剤、記録紙用コーティング剤、インクジェット紙用表面処理剤、感光性樹脂用分散剤、帯電防止剤、保湿剤、吸水性樹脂用原料、肥料用バインダー、高分子架橋剤、樹脂相溶化剤、写真薬添加剤、化粧料調剤添加剤、整髪料助剤、ヘアスプレー添加剤、サンスクリーン組成物添加剤等の用途に好適に用いられる。中でも、洗剤添加物に用いることが好ましく、このような上記N−ビニル環状ラクタム系重合体を含有する洗剤添加物もまた、本発明の1つである。
【0035】
上記洗剤添加物は、上述した本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体を含有するものであるが、該重合体が有するN−ビニル環状ラクタム構造と、カルボキシル基とが、洗浄により繊維から水に溶けだした染料を吸着、分散するため、他の繊維への移染を効果的に防止することができる他、上述したようにクレイ汚れによる再汚染をも充分に防止することができ、高い洗浄力を充分に発揮できることとなる。
このような洗剤添加物において、本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体の含有割合としては、洗剤添加物の固形分100質量%中、1〜100質量%であることが好適であり、より好ましくは20〜100質量%である。
【0036】
本発明の洗剤添加物としては、例えば、家庭用粉末洗剤、液体洗剤、柔軟剤、工業用洗浄剤、繊維処理剤等に配合して用いることができるが、この場合の洗剤添加物の配合量としては特に限定されず、例えば、家庭用粉末洗剤、液体洗剤、柔軟剤、工業用洗浄剤、繊維処理剤等100質量%中、0.05〜20質量%となるように設定することが好適であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。
なお、家庭用粉末洗剤、液体洗剤、柔軟剤、工業用洗浄剤、繊維処理剤等の各種配合基材には、通常洗剤添加物として使用されているアクリル酸重合体やアクリル酸/マレイン酸共重合体等が配合されていてもよい。
【0037】
上記洗剤添加物の特に好適な形態としては、洗浄剤に配合して用いることであり、これにより、移染やクレイ汚れによる再汚染を充分に防止して高い洗浄力を発揮するという本発明の作用効果が充分に発揮されることとなる。このように、上記洗剤添加物を含有する洗剤組成物(洗浄剤)もまた、本発明の1つである。
上記洗剤組成物において、本発明の洗剤添加物の含有割合としては、例えば、洗剤組成物100質量%中、上記N−ビニル環状ラクタム系重合体が0.1〜40質量%となるように設定することが好適である。0.1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できないおそれがあり、40質量%を超えると、経済性に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましくは0.2〜30質量%である。
なお、上記洗剤組成物の形態としては特に限定されず、粉末状であってもよいし、液体状であってもよい。
【0038】
上記洗剤組成物としてはまた、上記洗剤添加物の他に、界面活性剤を含有することが好ましく、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等が挙げられる。なお、これらのアニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していてもよい。
【0039】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。なお、これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していてもよい。
上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシル型又はスルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0040】
上記洗剤組成物において、界面活性剤の含有割合としては、例えば、洗剤組成物100質量%中、1〜70質量%であることが好適である。1質量%未満であると、充分な洗剤性能を発揮できないおそれがあり、60質量%を超えると、経済性に優れたものとすることができないおそれがある。より好ましくは15〜60質量%である。
【0041】
上記洗剤組成物としてはまた、洗剤ビルダーを含有するものであることが好適であり、この場合の洗剤ビルダーの含有割合としては、例えば、洗剤組成物100質量%中、0.1〜60質量%であることが好適である。より好ましくは、本発明の洗剤組成物が液状で供給される場合には1〜10質量%、粉末状で供給される場合には1〜50質量%とすることである。
上記洗剤ビルダーとしては特に限定されず、例えば、各種のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、置換アンモニウムポリ酢酸塩、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリヒドロキシスルホン酸塩等の有機ビルダー;ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩等の無機ビルダー等の1種又は2種以上を使用することができる。
上記有機ビルダーにおいて、ポリ酢酸塩又はポリカルボン酸塩としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、オキシニコハク酸、メリット酸、グリコール酸、ベンゼンポリカルボン酸、クエン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩が挙げられる。
上記無機ビルダーとしては、炭酸、重炭酸、ケイ酸のナトリウム塩、カリウム塩又はゼオライト等のアルミノケイ酸塩であることが特に好適である。
【0042】
上記洗剤組成物としては更に、色移り防止剤、蛍光増白剤、起泡剤、気泡抑制剤、腐食防止剤、防錆剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、pH調整剤、殺菌剤、キレート化剤、粘度調整剤、酵素、酵素安定剤、香料、繊維軟化剤、過酸化物、過酸化物安定剤、蛍光剤、着色剤、泡安定剤、つや出し剤、漂白剤、染料等の通常使用される添加剤や、溶媒等の1種又は2種以上を含有してもよく、その含有量は、求める性能等に応じて適宜設定すればよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体は、上述のような構成からなり、分散性や吸着性等に優れるとともに、高いカルシウムイオン捕捉能を有することから、例えば、洗剤添加物;各種無機物や有機物の分散剤;スケール防止剤等の他、種々の用途に好適に用いることが可能なものであり、特に洗剤添加物用途に使用した場合には、移染やクレイ汚れによる再汚染等を充分に防止して、高い洗浄力を発揮できることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記の実施例等において、原料であるポリビニルピロリドンのK値は、以下の方法で測定した。すなわち、ポリビニルピロリドンを純水に1質量%の濃度で溶解させ、その溶液の粘度を25℃において毛細管粘度計によって測定し、この測定値を用いて次のフィケンチャー式;
(logηrel )/C=〔(75Ko)/(1+1.5Ko C)〕+KoK=1000Ko
(但し、Cは、溶液100ml中のポリビニルピロリドンのg数を表す。ηrel は、溶媒に対する溶液の粘度を表す。)から計算した。K値が高いほど、分子量は高いといえる。
【0045】
実施例1
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、ポリビニルピロリドン(K30)15重量部、イオン交換水143.5重量部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を90℃とした後、攪拌しながら、アクリル酸57重量部、37%アクリル酸ナトリウム10.6重量部、イオン交換水54.3重量部を混合したモノマー溶液、15%過硫酸アンモニウム水溶液12重量部及び35%亜硫酸水素ナトリウム7.7重量部を90分かけて滴下した。更に90℃で加熱攪拌を30分間続けた後、30%NaOH26.6重量部を加えてポリマー溶液1を得た。
得られたポリマー溶液1について、固形分25質量%水溶液における25℃粘度、濁度、カルシウム捕捉能及び再汚染防止率を上述した方法にて測定した。結果を表1に示す。
【0046】
比較例1
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、ポリビニルピロリドン(K30)30重量部、イオン交換水163.8重量部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を90℃とした後、攪拌しながら、アクリル酸42.8重量部、37%アクリル酸ナトリウム7.9重量部、イオン交換水40.7重量部を混合したモノマー溶液、15%過硫酸アンモニウム水溶液9重量部及び35%亜硫酸水素ナトリウム5.8重量部を90分かけて滴下した。更に90℃で加熱攪拌を30分間続けた後、30%NaOH20重量部を加えてポリマー溶液2を得た。
得られたポリマー溶液2について、固形分25質量%水溶液における25℃粘度、濁度、カルシウム捕捉能及び再汚染防止率を上述した方法にて測定した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例2
冷却管、窒素導入ライン、温度計を設置した重合容器に、ポリビニルピロリドン(K30)30重量部、イオン交換水163.8重量部を加え、窒素を導入して窒素雰囲気とした。重合容器を加熱し内温を90℃とした後、攪拌しながら、アクリル酸42.8重量部、37%アクリル酸ナトリウム7.9重量部、イオン交換水40.7重量部を混合したモノマー溶液、15%過硫酸アンモニウム水溶液9重量部を90分かけて滴下しようとしたが、反応途中でゲル化してしまい、ポリマー水溶液を得ることができなかった。
【0048】
【表1】

【0049】
上記表1中の記載は、以下の通りである。
「PVP」:ポリビニルピロリドン
「AA」:アクリル酸
「APS」:過硫酸アンモニウム
「SBS」:重亜硫酸ナトリウム
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のN−ビニル環状ラクタム系重合体は、上述のような構成からなり、分散性や吸着性等に優れるとともに、高いカルシウムイオン捕捉能を有することから、例えば、洗剤添加物;各種無機物や有機物の分散剤;スケール防止剤等の他、種々の用途に好適に用いることが可能なものであり、特に洗剤添加物用途に使用した場合には、移染やクレイ汚れによる再汚染等を充分に防止して、高い洗浄力を発揮できることとなる。
【0051】
本願は、2005年5月27日に出願された日本国特許出願第2005−156392号「N−ビニル環状ラクタム系重合体、その製造方法及び用途」を基礎として、優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体に、カルボキシル基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合してなるN−ビニル環状ラクタム系重合体であって、
該カルボキシル基含有不飽和単量体は、該N−ビニル環状ラクタム単位を有する重合体100重量部に対して200〜9900重量部であり、
該N−ビニル環状ラクタム系重合体は、固形分25質量%水溶液における25℃粘度が100000mPa・s以下であることを特徴とするN−ビニル環状ラクタム系重合体。
【請求項2】
前記N−ビニル環状ラクタム系重合体は、カルシウムイオン捕捉能が230mg・CaCO/g以上であることを特徴とする請求項1に記載のN−ビニル環状ラクタム系重合体。
【請求項3】
前記N−ビニル環状ラクタム系重合体は、再汚染防止率が65.0%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のN−ビニル環状ラクタム系重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のN−ビニル環状ラクタム系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、過酸化物と連鎖移動剤又は還元剤とを併用して重合を行う工程を含むことを特徴とするN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記重合工程は、過酸化物と重亜硫酸塩とを併用する工程であることを特徴とする請求項4に記載のN−ビニル環状ラクタム系重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のN−ビニル環状ラクタム系重合体を含有することを特徴とする洗剤添加物。
【請求項7】
請求項6に記載の洗剤添加物を含有することを特徴とする洗剤組成物。

【公表番号】特表2008−542448(P2008−542448A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−520538(P2006−520538)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【国際出願番号】PCT/JP2006/311043
【国際公開番号】WO2006/126744
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】