説明

N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドの組成物およびその使用

本発明は、マイコバクテリア感染(例えば、Mycobacterium tuberculosis)を有する患者の処置に有用なN−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミド(Timcodar)の組成物に関する。本発明はまた、結核を有する患者を処置するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、マイコバクテリア感染(例えば、結核)を有する被験体の処置に有用なN−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミド(Timcodar)の組成物に関する。本発明はまた、結核を有する被験体を処置するための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
感染症である結核(TB)は、単一のヒト病原体に由来する全世界での主要な死亡原因であり、後天性免疫不全症候群(AIDS)、マラリア、下痢、癩病および全ての他の合わさった熱帯病のような疾患より多くの成人の生命を奪う(非特許文献1)。全世界人口の約1/3が、上記疾患原因因子であるMycobacterium tuberculosis(Mtb)に現在感染している;感染者のうちの10%、特に、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)感染も有する者は、臨床的疾患を発症させる(非特許文献1)。人々がTBを発症させる割合は低下したが、WHOの数字に拠れば、症例数は、ゆっくりと増加し続けている。最もひどく打撃のある地域は、発展途上国の中にあり、そこでは、貧困、他の疾患、および不適切なヘルスケアが要因である。約160万人の人々が年間に死亡しており、TBは、全世界でHIV/AIDSに次いで、第2位の主要な感染性の死亡原因であり、HIVに感染した人々においては主要な原因である。概算して、HIVを有する4000万人のうちの1/3が、TBに感染している。
【0003】
HIV感染者は、TBを発症するリスクが高い。しかし、大部分の人々は、HIVに感染していなければ、TBに曝された場合にTBに罹らない。罹患する者のうちで、わずか数%が活動性の疾患を発症させるが、約90%は、無症候性の感染しない潜伏性のTB感染を発生させる。全世界で約20億人がキャリアであるが、潜伏性のTB感染は、数十年後に、例えば、免疫系が抑制された場合に、復活し得る。TBはしばしば、肺疾患として発現するが、播種性の形態は、ほぼ全ての身体器官に影響を及ぼし得る。
【0004】
既存のワクチンは、小さな子供がTBの重篤な播種性の形態を発症しないように保護する一助となるが、青年および成人における肺TBを予防するにあたっては当てにならない。TBは、適切に診断されかつ適切に処置された場合には治癒可能であるが、これは、未だに困難である。WHOは、4種の抗生物質(イソニアジド、リファンピシン(リファンピンともいわれる)、エタンブトール、およびピラジナミド)を2ヶ月にわたって服薬し、続いて、イソニアジドおよびリファンピシンをさらに4ヶ月服薬することからなる活発な、薬物の影響を受けやすいTBのための処置レジメンを推奨している。潜伏性のTB感染は、しばしば、9ヶ月にわたってイソニアジド単独で処置される。
【0005】
異なる作用様式を有する複数の薬物を使用することは、Mtbがいずれか1種の薬物に対する耐性を発症させないようにする。処置の程度は、免疫系から逃れ、数十年にわたって身体の中で休眠状態でいることに熟達した立ち直りの早いかつ感染性を持続する細菌を一掃するように設計される。現在のHIV治療およびTB治療は、不適合であり得、従って、別個にもしくは厳密なモニタリング下で与えられる。
【0006】
最も基本的な症例においては、複雑な、長い、かつ不快な薬物処置に伴う患者コンプライアンスは、重大な問題である。多くの患者は、わずか数ヶ月間にわたる治療を続け、この治療を完了できないことは、再発のリスクがあるのみならず、薬物耐性Mtbを作り出してしまうことがある。そして第1選択肢の(firstline)薬物であるイソニアジドおよびリファンピシンに耐性のTB(多剤耐性(MDR)TBといわれる)は、特に、中国、インド、および以前のソビエト連邦の国々において増大し続けている。
【0007】
処置するのが困難かつ高価であるが、MDR−TBは、重篤な副作用はいくらかあるものの、最大2年間にわたって、ときおり、上記時間の60%未満ではあるが、第2選択肢の(secondline)薬物の群のうちの1種以上を摂取することによって格闘することになり得る。上記制限された処置選択肢が原因で、はるかにより致死的であるのは、広範囲に薬物耐性の(XDR)TBである。この形態はまた、第2選択肢のフルオロキノリン薬物、および3種の注射物のうちの1つ(アミカシン、カプレオマイシン、もしくはカナマイシン)に耐性である。
【0008】
従って、上記TB問題は、緊急の注意を必要とする。少なくとも3種の第1選択肢の薬物(イソニアジド、リファンピシンおよびピラジナミドを含む)を最初に使用する短い過程の抗TBレジメンは、しばしば、現代の薬物に対して耐性になっている結核株数の増大に起因して、有効ではない。例えば、世界保健機関(WHO)は、米国において多剤耐性(MDR)結核を有する患者の死亡率が、約70%であることを近年報告した。現在の処置はまた、非常に高価である:3種薬物レジメンが必要とされる(患者1名あたり$500/月を超えるコスト)。従って、結核コントロールに直面した大きな問題は、診断および薬物の供給には不十分な基幹施設である。患者が完全な治療に失敗することおよび不適切な単剤治療は、あらゆる利用可能な化学療法に対して耐性であるMycobacterium tuberculosisの株の出現および分布をもたらした(非特許文献2)。このような生物は、第3世界に、もしくは先進国の貧困および困窮層に制限されたままではない。大陸の米国および欧州全体を通じての多剤耐性Mycobacterium tuberculosis(「W」株)の単一クローンの拡大についての最近の報告から、我々の全世界的な社会において空気媒介性の病原体の危険性が強調されている(非特許文献3)。
【0009】
新たな治療選択肢は、TBのための現在の治療レジメンの複数の欠点に対処することが明らかに必要とされている。TBの処置を改善する1つのアプローチは、影響されやすい疾患および/もしくは薬物耐性の疾患に対する確立されたTB薬物の効力を改善することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Zumla A,Grange J.、B M J(1998)316、1962〜1964
【非特許文献2】Bloom B RおよびMurray C J L、Science(1992)257、1055〜1064
【非特許文献3】Bifani P Jら、JAMA(1996)275、452〜457
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
Timcodarおよび特定の抗生物質の組成物が、驚くべきことに、マイコバクテリア感染(例えば、結核)の処置に対して有効であることが今や見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、A)未処置のままの感染マウス(後期コントロール)、またはB)リファンピシン(RIF)単独で、もしくはTimcodar(TIM)と組み合わせて処置した感染マウスのいずれかの肺から回収されたLog CFUの散乱プロットを示す。
【図2】図2は、Mtb H37Ra - THP−1マクロファージ感染スクリーニングアッセイからのリファンピシン(RIF)およびRIF+Timcodar(TIM)のインビトロ死滅曲線を示す。
【図3】図3は、10(黒三角)mg/kg、100mg/kg(黒四角)もしくは200mg/kg(黒丸)のいずれかでの単一経口用量のTIM後のC57BL/6マウスにおける平均(±S.D.) Timcodr(TIM)血漿濃度−時間プロフィールを示す。
【図4】図4は、未処置のままの感染マウス(後期コントロール)、またはリファンピシン(RIF)単独で、もしくは4週間にわたるイソニアジド(INH)に対して、Timcodar(TIM)と組み合わせて処置した感染マウスの肺から回収されたLog CFUの散乱プロットを示す。
【図5】図5は、9週間および12週間にわたって、未処置のままの感染マウス(後期コントロール)、またはリファンピシン(RIF)およびイソニアジド(INH)、もしくはTimcodar(TIM)と組み合わせてRIFおよびINHで処置した感染マウスのいずれかの肺から回収されたLog CFUの散乱プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
出願人は、以前に一連の化合物および薬学的組成物を記載してきた。これらは、多剤耐性細胞の処置のために、多剤耐性の発生を予防するために、および多剤耐性癌治療における使用のために特に十分に適合された(米国特許第5,330,993号、同第5,620,971号、同第5,744,485号、同第5,543,423号および同第5,726,184号(これらの開示は、本明細書に参考として援用される);米国特許出願公開第US20050090482号;およびPCT公開: WO92/19593、WO94/07858、WO92/002278、WO95/26337、WO96/15101、およびWO94/07858(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)。Timcodarおよびマイコバクテリア感染(例えば、TB)の処置に特に有効な抗生物質を含む薬学的組成物が、現在開示される。
【0014】
一局面において、本発明は、N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびリファマイシン抗生物質を含む組成物に関する。別の実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシン、リファブチン(rifabutin)、リファラジル(rifalazil)、およびリファペンチン(rifapentine)からなる群より選択される。別の実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである。別の実施形態において、上記組成物は、INHをさらに含む。
【0015】
一局面において、本発明は、N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびジアリールキノリン抗生物質を含む組成物に関する。別の実施形態において、上記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である。別の実施形態において、上記組成物は、INHをさらに含む。
【0016】
別の局面において、本発明は、N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミド、リファマイシン抗生物質、およびジアリールキノリン抗生物質を含む組成物に関する。別の実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである。別の実施形態において、上記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である。別の実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンであり、上記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である。別の実施形態において、上記組成物は、INHをさらに含む。
【0017】
別の局面において、本発明は、N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびINHを含む組成物に関する。
【0018】
別の局面において、本発明は、上記のもののうちのいずれかの組成物および薬学的キャリアを含む薬学的組成物に関する。
【0019】
別の局面において、本発明は、マイコバクテリア感染を有する被験体を処置するための方法に関し、上記方法は、上記被験体に、有効量の上記薬学的組成物を投与する工程を包含する。一実施形態において、上記マイコバクテリア感染は、結核である。
【0020】
別の局面において、本発明は、ジアリールキノリン抗生物質の細菌流出(bacterial efflux)を阻害するための方法に関し、上記方法は、上記細菌と、N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびジアリールキノリン抗生物質を含む組成物とを、接触させる工程を包含する。一実施形態において、上記細菌は、Mycobacterium tuberculosisである。別の実施形態において、上記ジアリールキノリンは、TMC−207である。
【0021】
別の局面において、本発明は、マイコバクテリアに対するリファマイシン抗生物質の活性を増大させるために方法に関し、上記方法は、上記マイコバクテリアと、リファマイシン抗生物質およびN−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドとを、接触させる工程を包含する。一実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシン、リファブチン、リファラジル、およびリファペンチンからなる群より選択される。別の実施形態において、上記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである。別の実施形態において、上記マイコバクテリアは、Mycobacterium tuberculosisである。
【0022】
本発明の目的のために、化学元素は、元素周期表(CASバージョン,Handbook of Chemistry and Physics,75th Ed)に従って同定される。さらに、有機化学の基本原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B. and March,J., John Wiley & Sons,New York:2001(これらの内容全体は、本明細書に参考として援用される)に記載される。
【0023】
別段示されなければ、本明細書中に示される構造は、上記構造の全ての異性体(例えば、鏡像異性体、ジアステレオマー、および幾何異性体(もしくは配座異性体))を含むことも意味される;例えば、各不斉中心のR配置およびS配置、(Z)二重結合異性体および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)配置異性体および(E)配置異性体。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性混合物、ジアステレオマー混合物および幾何異性混合物(もしくは配置異性混合物)は、本発明の範囲内である。
【0024】
別段示されなければ、本発明の化合物の全ての互変異性体は、本発明の範囲内である。例えば、Timcodarは、以下に示されるように、互変異性形態で存在し得るカルボニル基を含む:
【0025】
【化1】

従って、Timcodarおよび抗生物質の互変異性体は、本発明の範囲内に含まれる。
【0026】
さらに、別段示されなければ、本明細書中に示される構造はまた、1種以上の同位体が富化された原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことが意味される。例えば、式Iの化合物(ここで1個以上の水素原子が、重水素もしくはトリチウムで置換されるか、または1個以上の炭素原子が、13C富化炭素もしくは14C富化炭素によって置換される)は、本発明の範囲内である。このような化合物は、例えば、分析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブ、もしくは改善された治療プロフィールを有するナトリウム・チャネルブロッカーとして、有用である。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「Timcodar」もしくは「TIM」は、以下に示されるN−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドである:
【0028】
【化2】

Timcodarの薬学的に受容可能な塩(例えば、Timcodarのジメシレート塩が挙げられる)もまた、用語TimcodarもしくはTIMに含まれる。他の薬学的に受容可能な塩は、以下の「薬学的に受容可能な組成物」の節に記載される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「リファマイシン抗生物質」とは、細菌Amycolatopsis mediterraneiによって天然に、もしくは人工的に合成される抗生物質の群をいう。それらは、より大きな群であるアンサマイシンのサブクラスである。リファマイシンは、マイコバクテリアに対して特に有効であり、従って、結核、癩病、および非結核性抗酸菌(MAC)感染症を処置するために使用される。上記リファマイシンの群は、「古典的な」リファマイシン薬物、ならびにリファマイシン誘導体であるリファンピシン(もしくはリファンピン)(「RIF」)、リファブチン、リファラジル、およびリファペンチン、ならびにこれらの薬学的に受容可能な塩を含む。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「ジアリールキノリン抗生物質」とは、2個のアリール基を含むキノリンを含む抗生物質、およびその薬学的に受容可能な塩のクラスをいう。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「TMC−207」とは、以下の構造を有する抗結核特性を有するジアリールキノリン抗生物質:
【0032】
【化3】

およびその薬学的に受容可能な塩をいう。
【0033】
本明細書中で使用される場合、用語「U−100480」とは、マイコバクテリアに対してインビトロで活性を示すオキサゾリジノン抗生物質をいう。Barbachyn,M.R.ら J.Med.Chem.,1996,39(3),680−685(本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「イソニアジド」もしくは「INH」とは、以下の構造を有する抗結核特性を有するピリジン抗生物質:
【0035】
【化4】

およびその薬学的に受容可能な塩をいう。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語、薬学的に受容可能な組成物の「有効量」とは、マイコバクテリア感染(例えば、TB)のうちの1種以上を処置するかもしくはその重篤度を軽減するために有効な量である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」もしくは「被験体」とは、動物、好ましくは、哺乳動物、および最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0038】
(使用、処方および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
上記で議論されるように、本発明は、マイコバクテリア感染によって引き起こされる疾患(例えば、TB)の処置に有用な、Timcodarおよび抗生物質を含む組成物を提供する。よって、薬学的に受容可能な組成物が提供され、ここでこれら組成物は、本明細書中に記載される化合物のうちのいずれかを含み、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバントもしくはビヒクルを含む。特定の実施形態において、これら組成物は、必要に応じて、1種以上のさらなる治療剤をさらに含む。
【0039】
本発明の特定の化合物が、処置のために遊離形態にあり得るか、もしくは適切な場合、その薬学的に受容可能な誘導体として存在し得ることもまた、認められる。本発明によれば、薬学的に受容可能な誘導体としては、薬学的に受容可能な塩、エスエル、このようなエステルの塩、または必要な被験体への投与の際に、本明細書中に他に記載される化合物、またはその代謝産物もしくは残渣を直接的にもしくは間接的に提供し得る任意の他の付加物もしくは誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な塩」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などなしにヒトおよび下等動物の組織と接触させることにおける使用に適したそれらの塩に言及し、合理的な利益/リスク比で釣り合っている。「薬学的に受容可能な塩」とは、レシピエントへの投与の際に、直接的にもしくは間接的に、本発明の化合物、またはその阻害的に活性な代謝産物もしくは残渣を提供し得る、本発明の化合物の任意の非毒性の塩もしくはエステルの塩を意味する。本明細書中で使用される場合、用語「その阻害的に活性な代謝産物もしくは残渣」とは、その代謝産物もしくは残渣が、電位開口型ナトリウムイオンチャネルのインヒビターでもあることを意味する。
【0041】
薬学的に受容可能な塩は、当該分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に受容可能な塩を、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19(本明細書に参考として援用される)において詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、適切な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から得られるものが挙げられる。薬学的に受容可能な、非毒性の酸付加塩の例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸)と、または有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸)と、あるいは当該分野で使用される他の方法(例えば、イオン交換)を使用することによって、形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に受容可能な塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩(camphorsulfonate)、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩(digluconate)、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトネート(glucoheptonate)、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩(hydroiodide)、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(pamoate)、ペクチネート(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩(pivalate)、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適切な塩基から得られる塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中で開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化を想定する。水溶性もしくは油溶性のまたは分散性の生成物は、このような四級化によって得られ得る。代表的なアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。さらに薬学的に受容可能な塩としては、適切な場合、非毒性のアンモニウム、四級アンモニウム、および対イオン(例えば、ハライド、ヒドロキシド、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ニトレート、低級アルキルスルホネートおよびアリールスルホネート)を使用して形成されるアミンカチオンが挙げられる。
【0042】
上記のように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、アジュバント、もしくはビヒクルをさらに含み、これらは、本明細書中で使用される場合、所望される特定の投与形態に適合するように、任意のおよび全ての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散補助物質もしくは懸濁補助物質、界面活性剤、等張化剤(isotonic agent)、濃化剤(thickening agent)もしくは乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に受容可能な組成物を処方するにあたって使用される種々のキャリアおよびその調製について公知の技術を開示している。任意の従来のキャリア媒体が本発明の化合物と、任意の望ましくない生物学的影響を生じるか、さもなければ上記薬学的に受容可能な組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することによって、不適合である場合を除いて、その使用は、本発明の範囲内にあることが企図される。薬学的に受容可能なキャリアとして働き得る物質のいくつかの例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、もしくはソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド性シリカ、三ケイ酸マグネシウム)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリプロピレンブロックコポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末化トラガカントガム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤用蝋);油(例えば、落花生油、綿実油;サフラワー油;ごま油;オリーブ油;コーン油および大豆油);グリコール(例えば、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);寒天;緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびに他の非毒性の適合性の滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)が挙げられるが、これらに限定されず、同様に、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤もまた、処方者の判断に従って、上記組成物中に存在し得る。
【0043】
(化合物および薬学的に受容可能な組成物の使用)
さらに別の局面において、マイコバクテリア感染(例えば、TB)を処置するかもしくはその重篤度を軽減するための方法が提供され、上記方法は、有効量の化合物、または化合物を含む薬学的に受容可能な組成物を、それを必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0044】
上記組成物は、本発明の方法によれば、マイコバクテリア感染(例えば、TB)を処置するかもしくはその重篤度を軽減するために有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全身の状態、感染の重篤度、特定の薬剤、その投与様式などに依存して、被験体間で変動する。本発明の組成物は、好ましくは、投与の容易さおよび投与の均一性のために、投与単位形態において処方される。表現「投与単位形態」とは、本明細書中で使用される場合、処置されるべき被験体に適切な、物理的に別個の薬剤の単位に言及する。しかし、本発明の化合物および組成物の合計1日使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。任意の特定の被験体もしくは生物に特異的な有効用量レベルは、種々の要因(処置されている障害および上記障害の重篤度;使用される具体的化合物の活性;使用される具体的組成物;上記被験体の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;投与の時間、投与経路、ならびに使用される具体的化合物の排出速度;処置の継続時間;使用される具体的化合物と組み合わせてもしくは同時に使用される薬物、および医療分野で周知の同様の要因が挙げられる)に依存する。
【0045】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、処置されている感染の重篤度に依存して、ヒトおよび他の動物に、経口的に、直腸に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所に(散剤、軟膏剤、もしくは液滴によって)、口内に、口のもしくは鼻のスプレーとして、などで、投与され得る。特定の実施形態において、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上、1日あたり被験体の体重で約0.01mg/kg〜約50mg/kg、および好ましくは、約1mg/kg〜約25mg/kgの投与量レベルで経口的にもしくは非経口的に投与され得る。
【0046】
経口投与のための液体投与形態は、薬学的に受容可能なエマルジョン、ミクロエマルジョン、液剤、懸濁物、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。上記活性化合物に加えて、上記液体投与形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水もしくは他の溶媒)、可溶化剤、および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤の他に、上記経口組成物はまた、補助物質(例えば、湿潤剤(wetting agent)、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、および芳香剤)を含み得る。
【0047】
注射用調製物(例えば、滅菌注射用水性懸濁物もしくは油性懸濁物)は、適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って処方され得る。上記滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の(例えば、1,3−ブタンジオール中の液剤として)滅菌注射用液剤、懸濁物もしくはエマルジョンであり得る。使用され得る上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液(米国局方)および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌の不揮発性油が、溶媒もしくは懸濁媒体として、従来から使用されている。この目的のために、任意の刺激の強くない不揮発性油が使用され得、これらとしては、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリドが挙げられる。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射用物の調製において使用される。
【0048】
上記注射用処方物は、例えば、細菌保持フィルタを通す濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌した注射用媒体中に溶解もしくは分散し得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。
【0049】
本発明の組成物の効果を長期化するために、皮下注射もしくは筋肉内注射からの上記組成物の吸収を遅延させることは、しばしば望ましいことである。これは、水への溶解度が不十分な結晶もしくは無定形物質の液体懸濁物の使用によって達成され得る。次いで、上記組成物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された化合物形態の遅延吸収が、油ビヒクル中に上記化合物を溶解もしくは懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中に上記化合物の微小被包マトリクスを形成することによって作製される。化合物 対 ポリマーの比および使用される特定のポリマーの性質に依存して、化合物放出速度は、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用処方物はまた、身体組織と適合性のリポソームもしくはミクロエマルジョン中に上記化合物を捕捉することによって調製される。
【0050】
直腸投与もしくは膣投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物と、適切な非刺激性の賦形剤もしくはキャリア(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールもしくは坐剤用蝋(これらは、周囲温度で固体であるが、体温では液体であるので、直腸腔もしくは膣腔中で溶解し、上記活性化合物を放出する))とを混合することによって調製され得る坐剤である。
【0051】
経口投与のための固体投与形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体投与形態において、上記活性化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤もしくはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)および/またはa)充填剤(filler)もしくは増量剤(extender)(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スクロース、およびアカシアガム)、c)湿潤性物質(humectant)(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天(agar−−agar)、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート)、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、ならびにi)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物)と、混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、上記投与形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0052】
類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質充填ゼラチンカプセル剤および硬質充填ゼラチンカプセル剤中に充填剤として使用され得る。上記錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投与形態は、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティングおよび製薬処方分野において周知の他のコーティング)とともに調製され得る。それらは、必要に応じて、不透明化剤(opacifying agent)を含み得、上記固体投与形態が、上記活性成分のみを、または優先的に腸管の特定の部分において、必要に応じて遅延した様式において放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質充填ゼラチンカプセル剤および硬質充填ゼラチンカプセル剤中に、充填剤として使用され得る。
【0053】
上記活性化合物はまた、上記のように、1種以上の賦形剤とともに微小被包化形態にあり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の上記固体投与形態は、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび製薬処方分野において周知の他のコーティング)とともに調製され得る。このような固体投与形態において、上記活性化合物は、少なくとも1種の不活性希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースもしくはデンプン)と混合され得る。このような投与形態はまた、通常の実務と同様に、不活性希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤形成の滑沢剤および他の錠剤形成補助物質(例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース))を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、上記投与形態はまた、緩衝剤を含み得る。上記投与形態は、必要に応じて、不透明化剤を含み得、また、これらが上記活性成分のみを、もしくは優先的に腸管の特定の部位において、必要に応じて、遅延した様式で放出する組成物であり得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。
【0054】
本発明の化合物の局所投与もしくは経皮投与のための投与形態としては、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー、吸入剤もしくはパッチが挙げられる。上記活性成分は、薬学的に受容可能なキャリアおよび必要とされ得る場合には任意の必要とされる保存剤もしくは緩衝物質と、滅菌条件下で混合される。眼用処方物、点耳剤(eardrop)、および点眼剤がまた、本発明の範囲内にあるとして企図される。さらに、本発明は、経皮的パッチの使用を企図し、これは、身体への化合物の制御された送達を提供するという付加的な利点を有する。このような投与形態は、適切な媒体中に上記化合物を溶解もしくは分散させることによって調製される。吸収増強剤もまた、皮膚を横断する化合物のフラックスを増大させるために使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供するか、またはポリマーマトリクスもしくはゲル中に上記化合物を分散させるかのいずれかによって、制御され得る。
【0055】
また、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、組み合わせ治療において使用され得ることが認識される。すなわち、上記薬学的に受容可能な組成物は、1種以上の他の望ましい治療剤(therapeutics)もしくは医療手順と同時に、その前に、もしくはその後に投与され得る。組み合わせレジメンにおいて使用するべき治療(治療剤もしくは手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/もしくは手順の適合性、ならびに達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れる。上記使用される治療は、同じ障害について望ましい効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物は、同じ障害を処置するために使用される別の薬剤と同時に投与され得る)か、または上記使用される治療は、異なる効果(例えば、任意の有害な効果のコントロール)を達成し得ることもまた、認識される。本明細書中で使用される場合、特定の疾患もしくは状態を処置もしくは予防するために通常投与されるさらなる治療剤は、「処置されている疾患もしくは状態に適切な」として公知である。例えば、例示的なさらなる治療剤としては、非オピオイド鎮痛薬(インドール(例えば、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン);ナフチルアルカノン(例えば、ナブメトン);オキシカム(例えば、ピロキシカム);パラ−アミノフェノール誘導体(例えば、アセトアミノフェン);プロピオン酸(例えば、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン);サリチレート(例えば、アスピリン、コリンマグネシウムトリサリチレート(Choline magnesium trisalicylate)、ジフルニサル);フェナメート(例えば、メクロフェナム酸、メフェナム酸);およびピラゾール(例えば、フェニルブタゾン));またはオピオイド(麻薬性)アゴニスト(例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン、およびペンタゾシン))が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、非薬物の鎮痛アプローチが、本発明の1種以上の化合物の投与とともに利用され得る。例えば、麻酔科学的アプローチ(脊髄内注入、神経遮断(neural blocade))、神経外科的アプローチ(CNS経路の神経剥離術)、神経刺激的アプローチ(経皮的電気的神経刺激、脊髄後索刺激)、理学療法的アプローチ(理学療法、矯正器具、ジアテルミー)、もしくは心理学的アプローチ(認知的方法−催眠、バイオフィードバック、もしくは行動的方法)もまた、利用され得る。さらなる適切な治療剤もしくはアプローチは、The Merck Manual,Seventeenth Edition,Ed.Mark H.Beers and Robert Berkow,Merck Research Laboratories,1999、およびthe Food and Drug Administration website,www.fda.gov(これらの内容全体が、本明細書に参考として援用される)に広く記載されている。
【0056】
本発明の組成物に存在するさらなる治療剤の量は、唯一の活性薬剤としてのその治療剤を含む組成物において通常投与される量を超えない。好ましくは、本明細書で開示される組成物中のさらなる治療剤の量は、上記唯一の治療上活性な薬剤としてその薬剤を含む組成物に通常存在する量のうちの約50%〜100%の範囲に及ぶ。
【0057】
本発明の化合物もしくはその薬学的に受容可能な組成物はまた、移植可能な医療用デバイス(例えば、プロテーゼ、人工弁、血管グラフト、ステントおよびカテーテル)をコーティングするために組成物へと組み込まれ得る。よって、本発明は、別の局面において、上記に一般的に記載されるように、本発明の化合物、ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスにおいて、上記移植可能なデバイスをコーティングするために適したキャリアを含む移植可能なデバイスをコーティングするための組成物を含む。さらに別の局面において、本発明は、上記に一般に記載されるように本発明の化合物、ならびに本明細書中のクラスおよびサブクラスにおいて上記移植可能なデバイスをコーティングするために適したキャリアを含む組成物でコーティングした移植可能なデバイスを含む。適切なコーティングおよびコーティングされた移植可能なデバイスの一般的調製は、米国特許第6,099,562号;同第5,886,026号;および同第5,304,121号に記載される。上記コーティングは、代表的には、生体適合性ポリマー物質(例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテート、およびこれらの混合物)である。上記コーティングは、必要に応じて、上記組成物において制御放出特性を付与するために、フルオロシリコーン、ポリサッカリド、ポリエチレングリコール、リン脂質もしくはこれらの組み合わせの適切なトップコートによってさらにコーティングされ得る。
【0058】
用語「生物学的サンプル」とは、本明細書中で使用される場合、細胞培養物もしくはその抽出物;哺乳動物から得られた生検材料もしくはその抽出物;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙液、または他の体液もしくはこれらの抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0059】
(材料および方法)
化合物:Timcodarを、米国特許第5,330,993号および同第5,620971号、ならびにPCT公開WO92/19593、WO94/07858およびWO92/00278(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)に記載されるように、Vertex Pharmaceuticalsにおいて調製した。イソニアジド(INH)、エチオナミド、リファンピシン(RIF)、アクリフラビン、およびエチジウムブロミドを、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から購入した。ガチフロキサシンは、Bristol Myers Squibbによって提供された。モキシフロキサシンおよびリファペンチンは、Sequoia Research Products(Pangbourne,UK)製であった。リネゾリドおよびU−100480は、Upjohn Pharmaciaによって提供され、レボフロキサシンは、RW Johnson Pharmaceutical Research Instituteによって提供された。TMC−207は、Shanghai Chem Partnerによって提供された。
【0060】
感受性試験:全ての薬物を、100% ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、10% OADCおよび0.05% Tween 80を含む7H10ブロス中で希釈した。薬物(7H10単独、または7H10+10μg/mlのTIMのいずれかにおいて4×最大濃度で調製)を、第1のウェルに添加し、ポリスチレンの96ウェル丸底プレート(Corning Inc.,Corning,NY)において2倍連続希釈した。Mtb ATCC 35801(Erdman株)(5×10CFU/mlにて凍結)を、7H10ブロス中で最終濃度1.25×10CFU/mlへと希釈し、50μlを各薬物希釈ウェルに添加した。実際の接種物を、力価測定および7H10寒天上での播種(plating)によって決定した。プレートを、SealPlate接着シールフィルム(Excel Scientific,Wrightwood,CA)で覆い、読み取り前に、周囲空気中、18日間にわたって37℃でインキュベートした。そのMICを、眼に見える混濁を生じない最低濃度の薬剤として規定した。各薬物を、二連で試験した。
【0061】
(Mtb H37Ra−THP−1マクロファージ感染スクリーニングアッセイプロトコル)
材料:
1)L−グルタミンおよびHEPESを含むRPMI 1640培地(Lonza BioWhittaker,#12−115F) #1。
2)フェノールレッドもL−グルタミンもHEPESも含まないRPMI 1640培地(Lonza BioWhittaker,#12−918F) #2。
3)ウシ胎仔血清、特定済み(defined),(Hyclone, #SH30070.03)。
4)200mM L−グルタミン(Cellgro,#25−005−Cl)。
5)β−メルカプトエタノール(Sigma, M−7522)。
6)1M HEPES(Cellgro,#25−060−Cl)。
7)PMA(Sigma,P8139) DMSO中の5000×ストック液(Sigma,D2650)。
8)F−150通気キャップフラスコ。
9)血球計算板計数チャンバー(hemocytometer counting chamber)(Hausser #3500)。
10)96ウェルの側壁が白色の透明底の滅菌マイクロタイター培養プレート(Costar #3903)。
11)0.2% グリセロール、0.05% Tween 80、10% ADC(BD #X)および20μg/ml カナマイシンを含む7H9ブロス(BD271310)。
12)0.2% グリセロール、10% OADC(BD BBL 212351)、40μg/ml カナマイシン、50μg/ml シクロヘキサミド(cyclohexamide)(Sigma,C1988)および20μg/ml アンホテリシンB(Fungizone,Gibco Cat#15290−018)を含む7H11寒天(BD283810)プレート。
13)濾過滅菌したKrebs/tween80緩衝液(120mM NaCl;4.9mM KCl;1.2mM MgSO;1.7mM KHPO;8.3mM NaHPO;10mM グルコース;0.02% Tween 80;0.5% BSA)。
14)滅菌ディスポーザブル10μl 接種ループ。
15)o−リングシール付き滅菌微小遠心管
16)細菌細胞計数チャンバー(Hausser #3900)。
17)バスソニケーター。
【0062】
THP−1細胞の維持および拡大:THP−1ストックを、10% FBSおよび0.05mM β−メルカプトエタノールを補充したHEPES緩衝化(25mM) RPMI−1640培地(フェノールレッドおよび2mM L−グルタミンを含む;培地#1)中で維持する。2×10〜8×10細胞/mlの間の培養物密度を維持することが必須である。培養物を1×10細胞/mlを超えさせてはならない。代表的には、上記細胞は、2.0×10の密度へと1週間に2回分割される。
【0063】
Mtb H37Ra 4917の培養:培養を、0.2% グリセロール、0.05% Tween 80、10% ADC、および20μg/ml カナマイシンを補充した7H9ブロス中に維持する(フィルターキャップ 125mlプラスチック製三角フラスコ中25ml、37℃、静的インキュベーション)。これら培養物を、20%体積を新たな体積のブロスへと移すことによって1週間に1回継代する(最初のOD620 約0.04;7日間でOD620 約0.20〜0.25)。感染の5日前に、0.5〜1mlの対数増殖期中期の培養物(OD620 約0.20)を、0.2% グリセロール+10% OADC、40μg/ml カナマイシン、50μg/ml シクロヘキサミドおよび20μg/ml アンホテリシンBを補充した7H11寒天上に拡げ、37℃でインキュベートする。
【0064】
(感染アッセイ)
(−1日目)
上記細胞を使用する1日前に、上記THP−1細胞に約30% 体積の完全RPMI培地を供給し、細胞密度を2〜3×10細胞/mlへと調節する。
【0065】
(1日目)
(THP−1単球の播種および分化)
1)細胞をプールし、血球計算板を使用して計数する。200×gにおいて10分間での遠心分離によって細胞を採取する。10% FBS、2mM L−グルタミン、0.05mM β−メルカプトエタノールおよび100nM PMA(5000×ストックから希釈)を補充したHEPES(10mM)緩衝化RPMI−1640培地(フェノールレッドなし;培地#2)中で、密度4×10細胞/mlへと上記細胞を再懸濁する。
2)上記細胞懸濁物のうち100μLを、必要とされる個数の96ウェルプレート(Costar 3903)の各ウェルへと分与する。
3)60〜72時間にわたって(代表的には、月曜日に使用するために金曜日に播種)分化させる。
【0066】
(4日目)
(Mtb H37Ra細胞懸濁物の調製)
1)1白金耳の細菌細胞をプレートから掻きとり、1ml Krebs+0.02% Tween− 80を含むo−リングシール付きの滅菌微小遠心管中に集める。
2)溶液を10秒間にわたって(ウォーターバスソニケーター中で)超音波処理する;15秒間休止して3回反復する。上記溶液を室温で1時間にわたって放置して、より大きな塊へと固まらせる。0.5mlをその上部から注意深く取り出し、さらなる0.5ml Krebs+Tween−80に添加する(総容積は再び1mlである)。
3)Krebs+0.02% Tween−80中でサンプルを1:10希釈する。10秒間超音波処理し、細菌計数チャンバーにおいて直ぐに計数する。
【0067】
(感染)
1)M tbを希釈する直前に、上記細菌懸濁物を10秒間にわたって超音波処理する。
2)10% FBS、L−グルタミン、0.05mM β−メルカプトエタノールを補充した25mM HEPES緩衝化RPMI−1640培地(フェノールレッドなし;培地#2)へと1:1のMOIのために、密度4×10細胞/mlへと細菌細胞を希釈する(さらなるMOIが使用されるのであれば、細菌懸濁物を感染率に合わせて調製する;例えば、2:1のMOIのためには、8×10細胞/ml、5:1のMOIのためには、2×10細胞/ml)。
3)THP−1細胞の上にある培地をマルチチャネルピペッターで取り出し、100μlの細菌懸濁物で置き換える。37℃で2時間インキュベートする。
4)試験化合物を、1μl 体積のDMSO(0.5% DMSO最終)中、所望の濃度において滅菌丸底96ウェルプレートへと分与する。上記化合物で細胞を処理する直前に、250μlの滅菌培地を、試験化合物を含むウェルへと分与し、混合する。化合物を、上記感染アッセイウェルの意図したプレートマップに同一なテンプレートに配置すべきである。その結果、プレート全体からの上記培地+化合物は、上記試験プレートへと直接移され得る。
5)各ウェルから摂取していないMtbを含む上清を除去し、100μlの新たな培地で置換する。2回目は、各ウェルから上清を除去し、50μlの新たな培地および50μlの試験化合物含有培地(工程4から)で置換する。上記試験化合物の合計の希釈は、500×である。
6)48ウェルの非感染THP−1細胞および48ウェルの新たに感染したTHP−1細胞を含むプレート全体(各々DMSOで処理した)におけるベースラインルシフェラーゼを測定する。100μlのBright Glow試薬を各ウェルに添加し、室温で10分間にわたってインキュベートし、接着性のトップシールで覆い、最大積分時間で150の利得(gain)において、Tecan Spectrafluor plusにおいて蛍光を読み取る。
7)37℃、5% COにおいて、加湿チャンバ中、残りのプレートをインキュベートする。
8)全ての試験プレートおよびコントロールプレートのエンドポイントルシフェラーゼを、感染の5日(120時間)後に測定する。100μlのBright Glow試薬を各ウェルに添加し、室温で10分間にわたってインキュベートし、接着性トップシールで覆い、最大積分時間で150の利得において、Tecan Spectrafluor +において蛍光を読み取る。添加および読み取りのタイミングを、プレート間で3分間ずらす。
【0068】
(マウス感染モデル)
マウス。6週齢の雌性C57BL/6マウスを、Jackson Laboratories,Bar Harbor,MEから購入し、Syracuse VA Medical CenterのVeterinary Medical Unit,Syracuse,NYにおいてABSL−3内で維持した。全ての動物の手順は、動物研究小委員会(SAS)から承認を受けた。マウスを、マイクロアイソレーターケージ(lab products inc,Maywood,NJ)中に収容し、水およびProlab RMH 3000齧歯類飼料(Purina,St.Louis,MO)で維持した。
【0069】
単離物。Mtb ATCC 35801(Erdman株)を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC) Manassas,VAから入手し、10% OADC(オレイン酸、アルブミン、デキストロース、カタラーゼ)富化物(BBL Microbiology Systems,Cockeysville,MD)および0.05% Tween 80を含有する改変7H10ブロス(pH6.6;寒天およびマラカイトグリーンを省略した7H10寒天処方物)中、37℃において回転振盪機上で5〜10日間にわたって増殖させた。上記培養物を、100 Klett単位(5×10コロニー形成単位(CFU)に等しい)/mlへと希釈した(Photoelectric Colorimeter;Manostat Corp.,New York,NY)。上記培養物を、使用するまで−70℃で凍結した。感染の日に、上記培養物を融解し、超音波処理した。最終接種物サイズを、10% OADC富化物を補充した7H10寒天プレート(BBL Microbiology Systems,Cockeysville,MD)上で3連にて力価測定することによって決定した。上記プレートを、周囲空気中、37℃で4週間にわたってインキュベートした。
【0070】
感染研究。6週齢の雌性C57BL/6マウスに、Mtb Erdmanの約10CFUを鼻内感染させた。図の凡例に示されるように、マウスを6匹の群に無作為に割り当てた。処置を感染の7日後に開始し、4週間にわたって(処置を5日間行い、2日間休む)、または9週間および12週間にわたって(処置を5日間行い、2日間休む)継続した。TIMおよびRIFを、第1の研究および第2の研究(図1および図4Aと4B)のために0.5% カルボキシメチルセルロース中に溶解し、第3の研究においては、RIFをDMSO中に溶解し、蒸留水中で希釈した(DMSOの最終濃度は4%であった;図4Cおよび4D)。INHを、上記第2の研究(図4Aおよび4B)のために0.5% カルボキシメチルセルロース中に溶解し、第3の研究のために蒸留水中で希釈した(図4Cおよび4D)。TIM、RIFおよびINHを、それぞれ、200mg/kg、10mg/kg、および25mg/kgで投与した。RIFおよびINHの効力は、ビヒクルによっては影響をうけていないようであったことに注意のこと。TIMを朝に与え、RIFもしくはINHを、TIM処置の5〜6時間後に投与した。初期コントロール(EC)群を、治療の初期に安楽死させて、感染負荷を決定した。後期コントロール(LC)群を利用して、毒性を確認した;LCマウスは瀕死状態であり、感染後14日で安楽死させる必要があった。
【0071】
統計的評価。マウスの右肺から回収した生細胞数を比較するために、その数を、まず、対数cfu(log10)へと変換した。サンプルサイズが小さいことおよび帰結を正常性からの偏差に対して保護する必要があることに起因して、Mann-Whitney検定を行って、コントロール群と処置群との間の統計的な差を決定した。
【0072】
(薬物動態研究)
C57BL/6マウスにおけるTIMの経口曝露を決定するために;10mg/kg、100mg/kg、もしくは200mg/kgを、マウスに、0.5% カルボキシメチルセルロースの水溶液中、経口胃管栄養法によって投与した(10mL/kg)。投与後0.25時間、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、および24時間において、全血を眼窩採血によってサンプル採取し(時間点あたり3匹のマウス)、血液サンプルを3000×gで2分間にわたって遠心分離した後に血漿を得た。サンプルを、分析用内部標準(IS)を含むアセトニトリル(4:1)を使用して抽出し、5分間ボルテックスし、3,000×gで20分間にわたって遠心分離し、上清を、定量的LC/MSのための96ウェルプレートに移した。サンプルおよび標準(これらを、血漿マトリクス中に調製し、上記のように抽出した)を、Sepax HP C18カラムを備えたShimadzu UFLCシステムを使用して分析し、続いて、MS分析を、ESIイオン化モードおよびMRMスキャンモードにおいてSCIEX API 4000(Applied Biosystems)タンデムトリプル四重極質量分析計を使用して行った。サンプルおよび標準の定量を、上記ISに対して決定した。薬物動態パラメーターを、WinNonlinソフトウェア(Pharsight Corp.,Mountain View,CA)を使用して、上記血漿濃度データの非区画分析によって決定した。TIMをRIFと同時投与する薬物動態研究において、0.5% カルボキシメチルセルロースの水溶液中に溶解したRIF(10mg/kg)の経口投与の6時間前に、TIM(200mg/kg)をマウスに経口投与した。血液サンプル採取、血漿抽出およびLC/MS分析によるRIFの定量ならびに上記データの薬物動態分析を、上記のように行った。
【0073】
(結果および考察)
10μg/mlのTIM(経口投与によってマウスにおいて達成可能なレベル)は、抗マイコバクテリア薬物の多様なセットの抗菌活性もしくは染料アクリフラビンに影響を及ぼさなかった(表1)。
【0074】
【表1】

表1から認められ得るように、TIMは、Mtbに対するイソニアジド、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、エチオナミド、リファンピシン、リファペンチン、リネゾリド、アクリフラビン、およびU−100480の活性に対するインビトロの影響はなかった。インターカレーター(intercalator)であるエチジウムブロミド(公知の無差別流出ポンプ物質(promiscuous efflux pump substrate))を用いると、4倍の増強効果が認められた。このことは、TIMが、Mtbに対していくらかの影響を有することを示唆し、これは、流出阻害と一致する。驚くべきことに、Mtbに対するTMC−207の活性に対して、15倍の増強効果が認められた。このことは、TIMおよびTMC−207の組み合わせを、TBを有する患者の処置に特に有効にする。
【0075】
マクロファージアッセイにおいて、TIMは、表2および図2のデータによって認められ得るように、コロニー形成単位(cfu)に基づくと、Mtbに対するRIFの阻害活性に対して有意なインビトロの影響を有さなかった。
【0076】
【表2】

TIM単独が、Mtbのインビトロ増殖に対して有意な効果を有さなかった(図1)としても、驚くべきことに、RIFと組み合わせたTIMは、マウスにおいて、1 log CFUだけRIFのインビボ抗菌活性を強化した(図1)。この顕著なインビボ効果は予測されなかった。なぜなら、TIMは、Mtbに対するRIFの活性に対して、有意なインビトロ効果を有さなかったからである(表1および表2)。実際に、RIFと組み合わせたTIMは、RIFおよびINHの組み合わせと同程度に強力である(図4A)。TIMは、INH活性をインビボで増強しない一方で、RIFと同程度まででもなかった(図4B)。しかし、上記効果は、統計学的になお有意であり、TIM/RIF/INH組み合わせにおいて相乗効果があり得るということが、本発明者らによって想定される。このことは、臨床的に有用であり得、おそらく、治療を短期化するか、もしくはそれらの薬物のいずれかに対する耐性に対処しさえする。
【0077】
上記インビボマウス実験を9週間および12週間にわたって実施した場合、TIMは、統計学的に有意な(0.05未満のP値によって決定される場合)、RIFおよびINH組み合わせに対する増強効果を有するという結果が示された(図5)。
【0078】
インビボでの評価のために、TIMを、TIMをインビトロで評価するために使用される濃度と同様に、16時間超にわたって5〜15μg/mlにおいて維持した(図3)。興味深いことに、血漿中のRIFの薬物動態パラメーターは、TIMの同時投与に影響を受けなかった(表3)。このことは、RIFの活性を増強して、感染組織のレベルにおいて流出インヒビターとして、TIMがより特異的に作用している可能性があることを示唆する。
【0079】
【表3】

理論によって束縛されることは望まないが、抗生物質の抗結核活性のTIM増強の潜在的機構としては、以下が挙げられると考えられる:
a)感染の間の、Mtbへの取り込みの促進;
b)経口的吸収および感染組織における抗生物質の全身分布の増加;ならびに/または
c)薬物相互作用による他の薬物の代謝の調節。
【0080】
上記TIMの増強機構は、おそらく、異なる抗生物質薬ごとに異なると予測される。
【0081】
上記増強効果が原因で、TIMは、RIF、TMC−207、およびINHに対して効果を有し、一実施形態において、TIMと、RIF、TMC−207、およびINHとの任意の組み合わせを含む組成物が、TBの処置に非常に有効であると、本発明者らは想定する。
【0082】
本明細書中に記載される実施形態の多くの改変およびバリエーションが、当業者に明らかなように、その範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書中に記載される具体的実施形態は、例示としてのみ提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびリファマイシン抗生物質を含む、組成物。
【請求項2】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシン、リファブチン、リファラジル、およびリファペンチンからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
INHをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミドおよびジアリールキノリン抗生物質を含む、組成物。
【請求項6】
前記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
INHをさらに含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミド、リファマイシン抗生物質、およびジアリールキノリン抗生物質を含む、組成物。
【請求項9】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンであり、前記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
INHをさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
N−ベンジル−3−(4−クロロフェニル)−2−[メチル−[2−オキソ−2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)アセチル]アミノ]−N−[3−(4−ピリジル)−1−[2−(4−ピリジル)エチル]プロピル]プロパンアミド、リファマイシン抗生物質、およびINHを含む、組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物および薬学的キャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項15】
マイコバクテリア感染を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、有効量の、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項16】
前記マイコバクテリア感染は、Mycobacterium tuberculosisである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ジアリールキノリン抗生物質のマイコバクテリア流出を阻害するための方法であって、該方法は、該マイコバクテリアと、請求項5に記載の組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項18】
前記細菌は、Mycobacterium tuberculosisである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ジアリールキノリン抗生物質は、TMC−207である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
マイコバクテリアに対するリファマイシン抗生物質の活性を増大させるための方法であって、該方法は、該マイコバクテリアと、請求項1に記載の組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシン、リファブチン、リファラジル、およびリファペンチンからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記リファマイシン抗生物質は、リファンピシンである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記マイコバクテリアは、Mycobacterium tuberculosisである、請求項20に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504591(P2013−504591A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528917(P2012−528917)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048367
【国際公開番号】WO2011/031926
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】