説明

N−ベンゾイルスタウロスポリンの多形相IIIおよびIV

本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび結晶形IVに関する。N−ベンゾイルスタウロスポリンは、ミドスタウリンまたはPKC412としても知られている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの新規な結晶形、およびこれらの結晶形の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼC(以後、PKCと略す)は、細胞シグナル伝達経路における重要な酵素の一つであり、細胞増殖および分化の制御に極めて重要な役割を有する。PKCは、セリン/トレオニンキナーゼのファミリーである。
【0003】
PKCの少なくとも12種のアイソフォームが同定されており、それらは一般に、それらの構造および基質要件に基づいて3群に分けられる。最近、FLT3タンパク質に突然変異をもつAML患者に対するタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤PKC412の効果を検討する臨床試験で、有望な結果が得られた。
【0004】
ミドスタウリン(Midostaurin)は、以下の式:
【0005】
【化1】

のN−[(9S,10R,11R,13R)−2,3,10,11,12,13−ヘキサヒドロ−10−メトキシ−9−メチル−1−オキソ−9,13−エポキシ−1H,9H−ジインドロ[1,2,3−gh:3’,2’,1’−lm]ピロロ[3,4−j][1,7]ベンゾジアゾニン−11−イル]−N−メチルベンズアミドである。
【0006】
ミドスタウリン[国際一般名(International Nonproprietary Name)]は、N−ベンゾイルスタウロスポリンまたはPKC412としても知られている。
【0007】
N−ベンゾイルスタウロスポリンは、天然に存在するアルカロイドスタウロスポリンの誘導体であり、欧州特許第0296110号、米国特許第5,093,330号に具体的に記載されている。
【0008】
国際公開第2006/048296号には、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIが開示されている。この化合物の融点は、国際公開第2008/021347号に開示されたとおりに約260℃である。
【0009】
N−ベンゾイルスタウロスポリンなどの多くの水難溶性治療化合物は、高度に結晶性である物理的状態で存在する。さらに、このような高結晶性治療化合物は、しばしば高い融点を有する。したがって、この治療化合物のより大きい溶解性(solubility)およびより速い溶出性(dissolution)の両方を可能にする状態のN−ベンゾイルスタウロスポリンを提供し、それにより、薬剤の生物学的利用能を増大させることは興味深い。
【0010】
特に興味深いのは、治療化合物を不活性担体と混合して、改善された溶解性および溶出性を有する固体分散系を形成するために二軸押出機を使用する溶融押出である。典型的には、二軸押出機は、加熱して、治療化合物と担体との混合を促進する。
【0011】
上に示すとおり、これまで知られているN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形は、極めて高い融点を有する。さらに、これらの多形体の融点は、医薬組成物の調製のための溶融押出におけるそれらの使用を困難にする、N−ベンゾイルスタウロスポリンの分解温度に近い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、上に概略した欠点を考慮すると、本発明の目的は、溶融押出による医薬組成物の調製に有用である形態の結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンを提供することである。特に、N−ベンゾイルスタウロスポリンの新規な結晶形は、溶融押出中の分解の危険性を最小としなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIのX線ディフラクトグラムである。
【図2】N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIのX線ディフラクトグラムである(上 形III、下 結晶形II)。
【図3】N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVのX線ディフラクトグラムである。
【図4】N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIのX線ディフラクトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、課題は、5.3、6.9、7.9、15.9±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、N−ベンゾイルスタウロスポリンの第1の結晶形(以下で結晶形IIIと称される)を提供することによって解決される。X線回折図は、CuKα線(Kα1線、波長λ=1.54060Å)によって粉末試料で測定される。
【0015】
N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIは、従来技術でこれまで記載された結晶N−ベンゾイルスタウロスポリン修飾形態の融点よりもかなり低い融点を有する。言い換えれば、結晶形IIIでは、分解温度は、その溶融温度よりもかなり高い。したがって、溶融押出中の結晶形IIIと薬学的に許容される添加剤との緊密な混合は、同時に分解の危険性を低減させながら、より低い温度で行うことができる。
【0016】
好ましくは、結晶形IIIはさらに、5.3、6.9、7.9、13.7、15.9、18.7、20.1±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す。
【0017】
さらにより好ましくは、ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIは、表1に以下に記載されるとおりの回折ピークを有するX線回折パターンを示す。
【0018】
【表1】

【0019】
当業者によって知られているように、面間隔d(d-spacing)値は、ブラッグの法則から計算され得る。
【0020】
相対強度は、ピーク高さを比較することによって決定した。相対強度は、いわゆる選択配向効果のために試料ごとに変わり得る。
【0021】
好ましい実施形態において、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIは、図1に示されるものと実質的に同じX線回折パターンを有する。
【0022】
図2は、本発明の結晶形IIIおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりの結晶形IIのX線ディフラクトグラムを示す。
【0023】
好ましくは、結晶形IIIは、示差走査熱量計DSCで測定して、206±10℃の融点Tmを有する。
【0024】
結晶形IIIは、窒素雰囲気下で20K/分の加熱速度で加熱される場合、270℃超で分解する。
【0025】
結晶形IIIは、約11℃で加熱すると蒸発する残留溶媒または水を約3.2%含有する。
【0026】
本発明において、「溶媒和物」という用語は、その一般的に受け入れられた意味に従って解釈されるべきであり、すなわち、それは、「ホスト」(この場合はN−ベンゾイルスタウロスポリン)の結晶構造中に取り込まれている溶媒分子を指す。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、課題は、10.0、12.0、15.8±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、N−ベンゾイルスタウロスポリンの第2の結晶形(以下で結晶形IVと称される)を提供することによって解決される。
【0028】
X線回折図は、CuKα線(Kα1線、波長λ=1.54060Å)によって粉末試料で測定される。
【0029】
結晶形IIIと同様に、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVは、従来技術でこれまで記載された結晶N−ベンゾイルスタウロスポリン改変の融点よりかなり低い融点を有する。言い換えれば、結晶形IVについて、分解温度は、溶融温度よりかなり高い。
【0030】
溶融押出中の結晶形IVと薬学的に許容される添加剤との緊密な混合は、同時に分解の危険性を低減させながら、より低い温度で行うことができる。
【0031】
好ましくは、結晶形IVはさらに、7.9、10.0、12.0、12.9、13.5、15.8、17.8±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す。
【0032】
さらにより好ましくは、ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVは、表2に記載されるとおりの回折ピークを有するX線回折パターンを示す。
【0033】
【表2】

【0034】
当業者によって知られているように、面間隔d値は、ブラッグの法則から計算され得る。
【0035】
相対強度は、ピーク高さを比較することによって決定した。相対強度は、いわゆる選択配向効果のために試料ごとに変わり得る。
【0036】
好ましい実施形態において、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVは、図3に示されるものと実質的に同じX線回折パターンを有する。
【0037】
図4は、本発明の結晶形IVおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりの結晶形IIのX線ディフラクトグラムを示す。
【0038】
好ましくは、結晶形IVは、示差走査熱量計DSCで測定して、215±10℃の融点Tmを有する。
【0039】
結晶形IVは、窒素雰囲気下で20K/分の加熱速度で加熱される場合、約270℃で分解する。
【0040】
結晶形IIIは、約91℃で加熱すると蒸発する残留溶媒または水を約6.2%含有する。
【0041】
本発明において、「溶媒和物」という用語は、その一般的に受け入れられた意味に従って解釈されるべきであり、すなわち、それは、「ホスト」(この場合はN−ベンゾイルスタウロスポリン)の結晶構造中に取り込まれている溶媒分子を指す。
【0042】
本発明はまた、以下のステップ:
(i)結晶化容器にアセトニトリルまたはテトラヒドロフラン中N−ベンゾイルスタウロスポリンの溶液を供給するステップ、
(ii)結晶化容器中の溶液に圧縮二酸化炭素をプロセス温度Tpで加えるステップ、および
(iii)沈殿した結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンを結晶化容器から分離するステップ
を含む、結晶N−ベンゾイルスタウロスポリン、例えば、結晶形IIIまたは結晶形IVの調製方法を提供する。
【0043】
結晶化容器は、高圧で使用され得る任意の容器(vesselまたはcontainer)であってもよい。それは、圧力上昇下で操作されるように特別に適合されている別の容器(圧力容器)の一部であってもよい。しかし、このような容器は、当業者に公知である。
【0044】
好ましくは、ステップ(i)で調製される溶液中のN−ベンゾイルスタウロスポリンの濃度は、プロセス温度Tpにおいて、1mg/mlから50mg/ml、より好ましくは5mg/mlから20mg/mlの溶解性である。
【0045】
好ましくは、非晶質N−ベンゾイルスタウロスポリンは、ステップ(i)の溶液を得るためにテトラヒドロフランに溶解させる。非晶質N−ベンゾイルスタウロスポリンの調製は、例えば、国際公開第2006/048296号に記載されている。しかし、N−ベンゾイルスタウロスポリンの他の公知の形態、例えば、国際公開第2006/048296号に開示された結晶形が、同様に使用され得る。
【0046】
ステップ(ii)において、圧縮二酸化炭素は、THF中N−ベンゾイルスタウロスポリンの溶液中に導入される。本発明において、「圧縮された」という用語は、大気圧より高い圧を有する任意の二酸化炭素を指す。好ましくは、圧縮二酸化炭素の圧は、6MPaから12MPa、より好ましくは7MPaから9MPaの範囲内である。より好ましくは、圧縮二酸化炭素は、超臨界状態である。本発明において、「超臨界の」という用語は、その一般に受け入れられた意味に従って解釈されるべきであり、すなわち、それは、その臨界点より上の温度および圧力における二酸化炭素を指す。
【0047】
本発明の方法において、圧縮二酸化炭素(超臨界二酸化炭素が好ましい)は、THF溶媒に当初に可溶化されている溶質(すなわち、N−ベンゾイルスタウロスポリン)のための貧溶媒として作用する。ステップ(i)の溶液は、圧縮二酸化炭素を加えることによって膨張させる。この溶液の体積膨張のために、THF中のN−ベンゾイルスタウロスポリンの溶解性は低下する。
【0048】
このような種類の方法は、GAS(気体貧溶媒)再結晶化とも称される。GAS再結晶化についての一般情報は、例えば、Ind. Eng.Chem. Res. 2000年、39、2260〜2268頁、M. Mullerら;およびJ. of Supercritical Fluids、27(2003年)、195〜203頁、M. Mazzottiらに見出され得る。
【0049】
好ましくは、結晶形IIIまたは結晶形IVの形成は、適切な温度および圧力条件を選択することによって制御される。
【0050】
結晶形IIIの調製のための好ましい実施形態において、ステップ(ii)のプロセス温度Tpは、圧縮二酸化炭素を添加後、結晶形IIIの沈殿した結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンを得るために、20℃から60℃、より好ましくは23℃から45℃の範囲内である。
【0051】
結晶形IVの調製のための好ましい実施形態において、ステップ(ii)のプロセス温度Tpは、圧縮二酸化炭素を添加後、20℃から60℃、より好ましくは23℃から45℃の範囲内である。
【0052】
好ましくは、圧縮二酸化炭素は、1ml/分から20ml/分、より好ましくは1ml/分から5ml/分の範囲内の流量で溶液に供給される。
【0053】
本発明の方法において、結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンの沈殿後、結晶化容器の出口バルブが開けられ、結晶化容器は二酸化炭素でパージされ、その後、減圧されて、結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンは、結晶化容器から分離されることが好ましい場合がある。
【0054】
好ましくは、パージステップは、N−ベンゾイルスタウロスポリンの溶媒を含まない、より好ましくは溶媒和を含まない結晶形を得るために時間で十分な期間継続される。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、上記のとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび/または上記のとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IV、ならびに少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0056】
賦形剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/もしくはグリセリン;ならびに/または潤沢剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸もしくはそれらの塩、典型的にはステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム;ならびに/またはPEGと一緒に活性物質を含有する錠剤またはゼラチンカプセルは、好ましくは経口投与に使用される。同様に、錠剤は、結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン(典型的にはトウモロコシ、コムギもしくはコメデンプン)、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン;ならびに、必要ならば、崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそれらの塩、典型的にはアルギン酸ナトリウム;ならびに/あるいは発泡性混合物、または吸着剤、着色剤、芳香剤および甘味剤を含有し得る。
【0057】
医薬組成物が、溶融押出ステップを含む方法によって調製される場合、好ましくは、治療化合物がその中に分散している薬学的に許容されるマトリックスポリマーを含む。好ましい種類のポリマーには、限定されるものではないが、水溶性、水膨潤性、水不溶性のポリマー、および前述の組合せが含まれる。
【0058】
ポリマーの例には、限定されるものではないが、
N−ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、N−ビニルピロリドン(例えば、ポリビニルピロリドン)のホモポリマーおよびコポリマー、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルとのコポリマー;
セルロースエステルおよびセルロースエーテル(例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、フタル酸セルロース(例えば、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシルプロピルメチルセルロース)およびコハク酸セルロース(例えば、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース);
高分子量ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー;
ポリアクリレートおよびポリメタクリレート(例えば、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート));
ポリアクリルアミド;
酢酸ビニルポリマー、例えば、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、部分けん化ポリ酢酸ビニル;
ポリビニルアルコール;ならびに
オリゴ糖および多糖、例えば、カラギーナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガム、またはそれらの1種以上の混合物が含まれる。
【0059】
好ましくは、上に定義されたとおりの医薬組成物は、様々な疾患、特に癌または腫瘍、例えば、白血病、例えば、急性骨髄芽球性白血病、例えば、骨髄増殖性症候群、例えば、肥満細胞症、炎症性疾患、細菌性疾患、および動脈硬化症、ならびに心臓血管系および中枢神経系の様々な疾患の治療用である。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明は、様々な疾患、特に癌または腫瘍、例えば、白血病、例えば、急性骨髄芽球性白血病、例えば、骨髄増殖性症候群、例えば、肥満細胞症、炎症性疾患、細菌性疾患、および動脈硬化症、ならびに心臓血管系および中枢神経系の様々な疾患の治療のための薬剤の調製のためのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび/または結晶形IVの使用を提供する。
【0061】
さらなる態様によれば、本発明は、溶融押出による医薬組成物の調製のための、上に記載されたとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび/または上に記載されたとおりのN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVの使用を提供する。
【0062】
本発明はこれから、実施例によってさらに詳細に説明される。
[実施例]
【0063】
測定方法
X線回折
結晶形IIIおよびIVのX線ディフラクトグラムは、CuKα1線によってBruker D8回折計を用いて測定した。
【0064】
融点
融点は、Mettler DSC822eを用いて示差走査熱量計(DSC)(加熱速度10K/分)によって測定し、試料質量は2〜3mgであった。
【実施例1】
【0065】
実施例1において、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIは、GAS再結晶化によって調製した。結晶形IIIのX線ディフラクトグラムを図1に示し、結晶形IIIおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりの結晶形IIのX線ディフラクトグラムを図2に示す。
【実施例2】
【0066】
実施例2において、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVは、GAS再結晶化によって調製した。結晶形IVのX線ディフラクトグラムを図3に示し、結晶形IVおよび国際公開第2006/048296号に開示されたとおりの結晶形IIのX線ディフラクトグラムを図4に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.3、6.9、7.9、15.9±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形III。
【請求項2】
さらに5.3、6.9、7.9、13.7、15.9、18.7、20.1±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、請求項1に記載の結晶形III。
【請求項3】
示差走査熱量計DSCで測定して、206±10℃の融点Tmを有する、請求項1または2に記載の結晶形III。
【請求項4】
10.0、12.0、15.8±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、N−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IV。
【請求項5】
さらに7.9、10.0、12.0、12.9、13.5、15.8、17.8±0.2°の屈折角2シータでX線回折ピークを示す、請求項4に記載の結晶形IV。
【請求項6】
示差走査熱量計DSCで測定して、215±10℃の融点Tmを有する、請求項4または5に記載の結晶形IV。
【請求項7】
以下のステップ:
(i)結晶化容器にテトラヒドロフラン中N−ベンゾイルスタウロスポリンの溶液を供給するステップ、
(ii)結晶化容器中の溶液に圧縮二酸化炭素をプロセス温度Tpで加えるステップ、および
(iii)沈殿した結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンを結晶化容器から分離するステップ
を含む、結晶N−ベンゾイルスタウロスポリンの調製方法。
【請求項8】
ステップ(i)で調製された溶液中のN−ベンゾイルスタウロスポリンの濃度が、プロセス温度Tpで、1mg/mlから50mg/mlの溶解性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
非晶質N−ベンゾイルスタウロスポリンをテトラヒドロフランに溶解して、ステップ(i)の溶液を得る、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
圧縮二酸化炭素が、超臨界状態にある、請求項7から9の一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(ii)のプロセス温度Tpが、20℃から60℃の範囲内である、請求項7から10の一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(ii)のプロセス温度Tpが、23℃から45℃の範囲内である、請求項7から11の一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から4の一項に記載のN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび/または請求項5から8の一項に記載のN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IV、ならびに少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
溶融押出による医薬組成物の調製のための、請求項1から4の一項に記載のN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IIIおよび/または請求項5から8の一項に記載のN−ベンゾイルスタウロスポリンの結晶形IVの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−512230(P2013−512230A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540449(P2012−540449)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068359
【国際公開番号】WO2011/064355
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】