説明

N−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法

【課題】N−置換−4−ホルミルピペリジンを収率よく容易に得ることができる工業的な製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)


(式中、RとRは、同一又は異なっても良いアルキル基を示し、また、相互に結合して環を形成しても良い。)
で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して、そのN位にアミノ基の保護基またはアルキル基を導入することにより、N−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得た後、該化合物の脱アセタール化を行うことにより、N−置換−4−ホルミルピペリジンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬等の原料として有用であるN−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、N−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法としては、(1)N−置換−4−ヒドロキシメチルピペリジン類を酸化する方法、(2)N−置換−4−ピペリジンカルボン酸エステル誘導体を還元する方法、(3)N−置換−4−ピペリドン類を原料とする方法が知られている。
このうち(1)の酸化方法としては、[1−a]塩化オキサリルとジメチルスルホキシドを用いる方法(特許文献1)、[1−b]三硫化硫黄ピリジン錯体を用いる方法(特許文献2)、[1−c]クロロクロム酸ピリジニウムを用いる方法(特許文献3)、[1−d]デス・マーチン・ペルヨージナンを用いる方法(特許文献4)、[1−e]過ルテニウム酸テトラアルキルアンモニウムとN−メチルモルホリン−N−オキシドを用いる方法(特許文献5)、[1−f]ニトロキシド化合物と次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩を用いる方法(特許文献6)などが知られている。
【0003】
しかしながら、[1−a]は、毒性のある塩化オキサリルを使用するうえ、反応温度として−78℃等の極低温を必要とするため工業的方法として好ましくない。[1−b][1−c]も毒性の高い試剤を使用し、有害な廃棄物を生じるなど、工業的方法として好ましくない。[1−d]で用いる試剤は高価なうえ、ヨウ素の高原子価化合物であることから潜在的な危険を有するため、工業的方法として好ましくない。[1−e]の方法は、ルテニウム含有触媒が高価であるうえ、収率67%と低く、満足できるものではない。また、[1−f]の方法ではこのような問題はないものの収率は71%と低く、満足できるものではない。
【0004】
(2)の還元方法としては、[2−a] N−置換−4−ピペリジンカルボン酸エチルエステルやN−置換−4−ピペリジンカルボン酸アミドを水素化ジイソブチルアルミニウムで還元する方法(特許文献7)がある。しかし、水素化ジイソブチルアルミニウムは発火性、引火性が高いため工業的方法としては好ましくない。これを回避する方法として、[2−b] N−置換−4−ピペリジンカルボン酸エチルエステルを、環状アミンを作用させた水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムを用いて還元する方法(特許文献8)が知られているが、還元剤を1等量以上必要とするため、反応後に相応量のアルミニウムを含有する廃棄物を処理しなければならないという問題がある。
【0005】
(3)の方法としては、[3−a] N−置換−4−ピペリドンにジメチルオキソスルホニウムメチリドを反応させた後、三フッ化ホウ素・エーテル錯体で処理する方法(非特許文献1)、[3−b] N−置換−4−ピペリドンにメトキシメチルトリフェニルホスホニウム塩を反応させた後、加水分解する方法(特許文献9、非特許文献1)、[3−c] N−置換−4−ピペリドンに塩基の存在下、トリメチルシリルジアゾメタンを反応させる方法(特許文献10)、[3−d]塩基存在下、N−置換−4−ピペリドンにハロゲン化酢酸エステルを反応させた後、酸性水で処理する方法(特許文献11)が知られている。しかしながら、[3−a]は不安定で市販もされていないジメチルオキソスルホニウムメチリドを用いるため、工業的方法として好ましくない。[3−b]は非常に高価なトリフェニルホスホニウム塩を用いるうえ、収率が40%と低く、満足できるものではない。[3−c]はヘキサン溶液として市販されているトリメチルシリルジアゾメタンを用いるが、引火性が高いため、工業的方法として好ましくない。[3−d]は工程が多段階にわたり、総収率は40%と低く、満足できるものではない。このように従来の方法は、毒性の強いまたは取り扱いに危険を伴う原料の使用、有害な廃棄物の発生、さらに収率の点で問題点を有しており、安全で取扱いが容易な原料から、有害な廃棄物を副生せず、工業的に容易に収率良く、N-置換-4-ホルミルピペリジンを製造できる方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4175885号公報
【特許文献2】特開2007−297283号公報
【特許文献3】特開2009−19013号公報
【特許文献4】特表2008−510006号公報
【特許文献5】特表2006−505590号公報
【特許文献6】特開2008−290974号公報
【特許文献7】特表2006−501293号公報
【特許文献8】特許第4027539号公報
【特許文献9】特表2002−541104号公報
【特許文献10】WO03/082808号公報
【特許文献11】WO2007/077443号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Industrie Chemique Belge, (1967), 32, 64−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、N−置換−4−ホルミルピペリジンを収率よく容易に得ることができる工業的な新規ルートによる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前述の課題を解決するため、N−置換−4−ホルミルピペリジンを工業的に収率よく製造する方法について鋭意検討を重ねた結果、4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を原料として、そのN位へアミノ基の保護基またはアルキル基を導入した後、該化合物を選択的に脱アセタール化することにより、N−置換−4−ホルミルピペリジンを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)
【化1】

(式中、RとRは、同一又は異なっても良いアルキル基を示し、また、相互に結合して環を形成しても良い。)
で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して、そのN位にアミノ基の保護基またはアルキル基を導入することにより、下記一般式(2)
【化2】

(式中、RとRは前記と同じ。Rはアミノ基の保護基またはアルキル基を示す。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得た後、該化合物の脱アセタール化を行うことにより、下記一般式(3)
【化3】

(式中、Rは前記と同じ。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、N−置換−4−ホルミルピペリジンを工業的な方法で収率よく、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。下記一般式(1)
【化4】

(式中、RとRは、同一又は異なっても良いアルキル基を示し、また、相互に結合して環を形成しても良い。)
で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体において、RとRは、同一又は異なっても良いアルキル基を示し、また、相互に結合して環を形成しても良い。アルキル基としては炭素数1〜10の直鎖または分岐状の炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。アルキル基が相互に結合して環を形成した場合としては、1,3−ジオキソラニル基、4−メチル−1,3−ジオキソラニル基、1,3−ジオキサニル基などが挙げられる。
【0013】
4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体の具体的化合物としては、4−ホルミルピペリジンジメチルアセタール、4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール、4−ホルミルピペリジンジプロピルアセタール、4−ホルミルピペリジンジイソプロピルアセタール、4−ホルミルピペリジンジブチルアセタール、4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン、4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン、4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピペリジンなどが挙げられる。
【0014】
本発明で用いられる4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体の入手源又は製造方法は限定されないが、たとえば、本出願人と同一の出願人に係る特願2010−028512に記載の方法で製造することができる。当該特許出願によれば、容易に入手可能な4−ホルミルピリジン又は4−シアノピリジンを出発原料として4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を製造することができる。
【0015】
なお、得られた4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体は、単離精製して後工程に使用するほか、後工程に悪影響を与えない限り、未単離の状態で使用することもできる。
【0016】
4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体は、そのN位にアミノ基の保護基またはアルキル基を導入することにより、下記一般式(2)
【化5】

(式中、RとRは前記と同じ。Rはアミノ基の保護基またはアルキル基を示す。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得ることができる。
【0017】
はアミノ基の保護基またはアルキル基である。アミノ基の保護基としては、一般的に用いられているアミノ基の保護基であれば特に制限されない。例えば、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などのアラルキル基;アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基などのアルカノイル基;ベンゾイル基などのアロイル基;エトキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニル基;ベンジルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。なお、本明細書の以降の記載においてアミノ基の保護基またはアルキル基を単に保護基という。
【0018】
保護基の導入は、公知の文献記載の方法(例えば、Greene‘s Protective Groups in organic synthesis fourth edition、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)により行うことができる。
【0019】
得られたN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体は、脱アセタール化を行うことにより、下記一般式(3)
【化6】

(式中、Rは、前記と同じ。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンを製造することができる。
【0020】
脱アセタール化は、公知の文献記載の方法(例えば、Greene‘s Protective Groups in organic synthesis fourth edition、2007年、John Wiley & Sons,Inc.)により行うことができる。たとえば、本発明においてN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体の脱アセタール化反応は、酸触媒を用いることができる。
【0021】
保護基がtert−ブトキシカルボニル基の場合には、脱アセタール化の酸触媒の条件下で保護基が脱離する懸念があるため、本化合物への適用が難しいと考えられた。しかしながら、驚くことに酸触媒を用いる方法でも高選択的に脱アセタール化を行えることを本発明者らは見出した。その結果、tert−ブトキシカルボニル基の場合においても高収率でN−置換−4−ホルミルピペリジンを製造することができる。
【0022】
以下、保護基を例示して、N−置換−4−ホルミルピペリジンを製造する方法を説明する。
(A)保護基としてベンジル基を用いた場合、すなわち、N−ベンジル−4−ホルミルピペリジンは、以下の方法により製造することができる。
【0023】
<第1工程>
前記の一般式(1)で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を一般式(4)
【化7】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化ベンジルと、塩基の存在下に反応させて、一般式(5)
【化8】

(式中、RとRは前記と同じ。)
で表されるN−ベンジル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得ることができる。
ハロゲン化ベンジルにおいて、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子を表す。
ハロゲン化ベンジルの使用量は、4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1〜2倍モルである。
塩基としては、トリエチルアミン、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。塩基の使用量は4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあれば十分であり、好ましくは1〜2倍モルである。
反応は通常、溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどのエーテル類、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドンなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常、0℃〜還流温度である。
【0024】
<第2工程>
前記一般式(5)で表されるN−ベンジル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を酸触媒存在下で脱アセタール化を行うことにより、下記一般式(6)
【化9】

で表される1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンを製造することができる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸などが挙げられる。酸触媒の使用量は、N−ベンジル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して触媒量あればよいが、溶媒を兼ねて酸性水溶液を使用する場合など、反応操作の都合上、多量に用いてもよい。酸触媒の使用量は、通常、アセタール誘導体に対して、0.1〜10倍モルである。
反応は通常、溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジオキサンなどのエーテル類、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常、0℃〜還流温度である。反応の進行を促進するために、生成するアルコールを留去しながら反応させることもできる。
【0025】
(B)保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を用いた場合、すなわち、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンは、以下の方法により製造することができる。
なお、tert−ブトキシカルボニル基以外の保護基を有するN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体の場合に脱アセタール化で用いる酸触媒の使用量は、上述のベンジル基と同様にアセタール誘導体に対して通常、0.1〜10倍モルである。
【0026】
<第1工程>
前記の一般式(1)で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を二炭酸ジ−tert−ブチルと反応させて、下記一般式(7)
【化10】

(式中、RとRは前記と同じ。t−Buはtert−ブチル基を示す。)
で表されるN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得ることができる。
二炭酸ジ−tert−ブチルの使用量は、4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して化学量論量、すなわち等モルあればよく、好ましくは1〜2倍モルである。
反応の進行を助けるためにトリエチルアミン、ピリジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの塩基を用いてもよい。塩基を用いる場合、その使用量は少量でよく、通常、0.1〜2倍モルである。
反応は通常、溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどのエーテル類、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドンなどのアミド類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常、0〜50℃である。
【0027】
<第2工程>
前記一般式(7)で表されるN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を酸触媒存在下で脱アセタール化を行うことにより、下記一般式(8)
【化11】

(式中、t−Buはtert−ブチル基を示す。)
で表されるN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンを製造することができる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、パラトルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸などが挙げられる。酸触媒の使用量は、N−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して触媒量あればよいが、溶媒を兼ねて酸性水溶液を使用する場合など、反応操作の都合上、一定量用いてもよい。酸触媒の使用量は、通常、アセタール誘導体に対して、0.1〜1倍モルである。
反応は通常、溶媒を用いて行うことができる。溶媒を用いる際は、反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジオキサンなどのエーテル類、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、N,N−ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いても良い。
反応温度は、原料(溶媒を含む)によって異なるが、通常、0℃〜還流温度である。反応の進行を促進するために、生成するアルコールを留去しながら反応させることもできる。
本発明の各反応において反応終了後、常法に従って目的物を単離、精製することができる。例えば、反応液をろ過して不要物を除去したり、目的物を分液抽出し、溶媒を留去した後、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどにより、目的物を精製することができる。
また、単離精製して後工程へ使用するほか、後工程に影響を与えない限り、未単離の状態で使用することもできる。
【実施例】
【0028】
以下、調製例及び実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の調製例および実施例中のGC面百値とはガスクロマトグラフィーの分析による当該化合物の面積百分率を表す。
【0029】
〔調製例1〕4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの合成
(i)4−ホルミルピリジンジメチルアセタールの合成
3L反応フラスコに攪拌下、4−ホルミルピリジン160.7g(1.5モル)、メタノール480.6g(15モル)、濃硫酸220.7g(2.3モル)を仕込み、50℃で3時間反応を行った。反応混合物を濃縮後、30%水酸化ナトリウム水溶液600g、トルエン8000gを用いて中和抽出・分液を行った。得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−ホルミルピリジンジメチルアセタール140.2g(0.92モル、GC面百値99%、収率61%)を得た。
(ii)4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの合成
200mLのオートクレーブに、上記(i)で得られた4−ホルミルピリジンジメチルアセタール1.5g(9.8ミリモル)、メタノール4.5g、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)75mg(金属換算で原料に対して0.13質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度80℃で6時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮することにより、無色液体の粗の4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの粗製物1.6g(9.8ミリモル、粗収率100%)を得た。ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、目的とする4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの面百値は95%であり、副生物の4−メトキシメチルピペリジンの面百値は3%であった。
【0030】
〔実施例1〕1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの合成
30mL反応フラスコに攪拌下、調製例1で得られた粗の4−ホルミルピペリジンジメチルアセタール1.3g(100%仮換算で8.2ミリモル)、トルエン3.2g、トリエチルアミン1.0g、ベンジルクロリド1.05gを仕込み、還流下で3時間反応を行った。反応液を冷却後、10%炭酸ナトリウム水溶液3gを用いて分液を行い、得られた有機層を濃縮することにより、黄色液体の粗の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジメチルアセタール1.8g(100%仮換算で7.2ミリモル)を得た。GC分析の結果、1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジメチルアセタールの面百値は81%、1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの面百値は4%であった。
(ii)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
10mL反応フラスコに攪拌下、上記(i)で得られた粗の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジメチルアセタール1.8g、20%塩酸1.8g(9.9ミリモル)を仕込み、室温で2時間反応を行った。反応混合物をGC分析した結果、1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの面百値は98%(メタノールのピークを除く)であった。
【0031】
〔調製例2〕4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの合成
(i)4−ホルミルピリジンジエチルアセタールの合成
300L反応槽に攪拌下、4−ホルミルピリジン30kg(280モル)、エタノール129kg(280モル)、濃硫酸27.5kg(280モル)を仕込み、80℃で2時間反応を行った。反応混合物を濃縮後、オルトギ酸トリエチルを加え、70℃で1時間反応を行った。20%水酸化ナトリウム水溶液112kg、トルエン75kgを用いて中和抽出・分液を行い、得られた有機層を濃縮することにより、橙色液体の4−ホルミルピリジンジエチルアセタール46.2kgを含有する溶液(255モル、収率91%)を得た。
(ii)4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの合成
200Lの反応槽に、上記(i)で得られた4−ホルミルピリジンジエチルアセタールを含有する溶液19kg(4−ホルミルピリジン仕込み基準 112モル)、エタノール51.0kg、水30.6kg、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)2.0kg(金属換算で原料に対して0.25質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度80℃で8時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮することにより、褐色液体の粗の4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール17.8kg(94.8モル、粗収率85%)を得た。GC分析の結果、目的とする4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの面百値は95%であり、副生物の4−エトキシメチルピペリジンの面百値は4%であった。本粗製物を蒸留することにより、面百値98%の4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールを得た。
【0032】
〔実施例2〕1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの合成
50L反応槽に攪拌下、調製例2で得られた4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール11kg(58.7モル)、トルエン33kg、トリエチルアミン6.5kg、ベンジルクロリド8.2kgを仕込み、80℃で7時間反応を行った。反応液を冷却後、水22kgを用いて分液を行ことにより、淡褐色液体の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールを含有する有機層(100%仮換算で58.7モル)を得た。GC分析の結果、1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの面百値は98%(トルエンのピークを除く)であった。
(ii)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
50L反応槽に攪拌下、上記(i)で得られた1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール粗製物全量、濃硫酸5.8kg(59.1モル)、水13kgを仕込み、分液操作により有機層を除去後、室温で7時間反応を行った。トルエン22kg、20%水酸化ナトリウム水溶液23kgを用いて中和抽出・分液を行い、淡褐色液体の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジン11.3kg〔55.5モル、収率95%(4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール仕込み基準)〕を含有する有機層を得た。GC分析の結果、1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの面百値は96%(トルエンのピークを除く)であった。
【0033】
〔調製例3〕4−ホルミルピペリジンジブチルアセタールの合成
(i)4−ホルミルピリジンジブチルアセタールの合成
3Lのオートクレーブに、4−シアノピリジン104.1g(1.0モル)、水460g、濃硫酸232.3g(2.3モル)、5%パラジウム−1%銅/カーボン触媒(含水率50質量%)3g(金属換算で原料に対して0.07質量%)、硫酸銅・五水和物300mgを仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度60℃で8時間反応した。反応混合物から触媒をろ別、濃縮した。これにブタノール593.0g(8.0モル)を添加し、攪拌下、還流温度で水とブタノールの共沸成分を留去しながら4時間反応を行った。反応液を冷却後、メチルシクロヘキサン500g、30%水酸化ナトリウム水溶液500gを用いて中和抽出・分液を行い、得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−ホルミルピリジンジブチルアセタール154.3g(0.65モル、GC面百値97%、収率65%)を得た。
(ii)4−ホルミルピペリジンジブチルアセタールの合成
1Lのオートクレーブに、上記(i)で得られた4−ホルミルピリジンジブチルアセタール65.0g(0.27モル)、イソプロピルアルコール260g、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)6.5g(金属換算で原料に対して0.25質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度80℃で8時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−ホルミルピペリジンジブチルアセタール53.3g(0.22モル、収率81%)を得た。GC分析の結果、目的とする4−ホルミルピペリジンジブチルアセタールの面百値は98%であり、副生物の4−ブトキシメチルピペリジンの面百値は1%であった。
【0034】
〔実施例3〕1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジブチルアセタールの合成
500mL反応フラスコに攪拌下、調製例3で得られた4−ホルミルピペリジンジブチルアセタール40.0g(0.16モル)、トルエン120g、トリエチルアミン19.9g(0.20モル)、ベンジルクロリド20.7g(0.16モル)を仕込み、還流下で3時間反応を行った。反応液を冷却後、水50gを用いて分液を行い、得られた有機層を濃縮することにより、無色液体の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジブチルアセタール40.2g(0.13モル、GC面百値97%、収率81%)を得た。
(ii)1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
300mL反応フラスコに攪拌下、上記(i)で得られた1−ベンジル−4−ホルミルピペリジンジブチルアセタール35.0g(0.11モル)、20%塩酸35.0g(0.19モル)を仕込み、50℃で2時間反応を行った。反応液を冷却後、トルエン100g、20%水酸化ナトリウム水溶液38gを用いて、中和抽出・分液を行い、得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の1−ベンジル−4−ホルミルピペリジン19.8g(0.10モル、GC面百値99%、収率91%)を得た。
【0035】
〔調製例4〕4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの合成
(i)4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジンの合成
500mL反応フラスコに攪拌下、4−ホルミルピリジン32.1g(0.30モル)、エチレングリコール20.5g(0.33モル)、濃硫酸39.2g(0.4モル)を仕込み、100℃で3時間反応を行った。反応混合物を冷却後、トルエン150g、30%水酸化ナトリウム水溶液110gを用いて中和抽出・分液を行い、得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジン27.2g(0.18モル、GC面百値99%、収率60%)を得た。
(ii)4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの合成
200mLのオートクレーブに、上記(i)で得られた4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジン1.0g(6.6ミリモル)、イソプロピルアルコール9.0g、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)50mg(金属換算で原料に対して0.13質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧1MPa、反応温度100℃で5時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮することにより、無色液体の粗の4−(1,3ジオキソラン−2−イル)ピペリジン1.0g(6.6ミリモル、粗収率100%)を得た。GC分析の結果、目的とする4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの面百値は98%であり、副生物の4−モノアルコキシ体は検出されなかった。
【0036】
〔実施例4〕N−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)N−ベンジル−4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの合成
500mL反応フラスコに攪拌下、調製例4で得られた4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン50.0g(0.29モル)、トルエン76g、トリエチルアミン35.5g(0.35モル)、ベンジルクロリド38.8g(0.31モル)を仕込み、還流下で3時間反応を行った。反応液を冷却後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100gを用いて分液を行い、得られた有機層を濃縮することにより、黄色液体のN−ベンジル−4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン64.9g(0.25モル、GC面百値98%、収率86%)を得た。
(ii)N−ベンジル−4−ホルミルピペリジンの合成
100mL反応フラスコに攪拌下、上記(i)で得られたN−ベンジル−4−(1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン10.0g(38.3ミリモル)、ホルマリン15.4g、10%硫酸24.6g(25.1ミリモル)を仕込み、副生する1,3−ジオキサンを減圧留去しながら60℃で3時間反応を行った。反応液を冷却後、炭酸水素ナトリウム14.3gを添加し、濃縮、蒸留することにより、無色液体のN−ベンジル−4−ホルミルピペリジン2.3g(11.4ミリモル、GC面百値98%、収率30%)を得た。
【0037】
〔調製例5〕4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピペリジンの合成
(i)4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピリジンの合成
3Lのオートクレーブに、4−シアノピリジン208.2g(2.0モル)、1,3−プロパンジオール304.4g(4.0モル)、水360g(10.0モル)、濃硫酸464.6g(4.5モル)、5%パラジウム−1%銅/カーボン触媒(含水率50質量%)6g(金属換算で原料に対して0.07質量%)、硫酸銅・五水和物700mgを仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度60℃で36時間反応した。反応混合物から触媒をろ別した後、トルエン900g、30%水酸化ナトリウム水溶液870gを用いて中和抽出・分液を行った。得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピリジン214.7g(1.3モル、GC面百値99%、収率65%)を得た。
(ii)4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピペリジンの合成
1Lのオートクレーブに、上記(i)で得られた4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピリジン100.0g(0.61モル)、イソプロピルアルコール300g、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)5g(金属換算で原料に対して0.13質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度100℃で6時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピペリジン90.1g(0.53モル、収率87%)を得た。GC分析の結果、目的とする4−(1,3−ジオキサン−2−イル)ピペリジンの面百値は97%であり、副生物の4−モノアルコキシ体は検出されなかった。
【0038】
〔実施例5〕N−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)N−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの合成
500mL反応フラスコに攪拌下、調製例2と同様にして得られた4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール粗製物(100%仮換算で37.5g、0.20モル)に、トルエン150g、トリエチルアミン24.3g、0.24モル、クロロ炭酸エチル21.7g(0.20モル)を仕込み、撹拌下に80℃で2時間反応を行った。反応液を冷却後、10%炭酸水素ナトリウム水溶液27gを用いて分液を行い、得られた有機層を濃縮することにより、黄色液体の粗のN−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール56g(GC面百値87%)を得た。
(ii)N−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンの合成
200mL反応フラスコに攪拌下、上記(i)で得られた粗のN−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール23.2g(100%仮換算で0.082モル)、20%硫酸100g(0.20モル)を添加し、攪拌下、100℃で副生するエタノールを留去しながら1時間反応を行った。反応液を冷却後、炭酸水素ナトリウム21.6gを添加し、濃縮、蒸留することにより、無色液体のN−エトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジン25.9g(0.14モル、GC面百値98%、収率70%)を得た。
【0039】
〔調製例6〕4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの合成
(i)4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジンの合成
200mL反応フラスコに攪拌下、4−ホルミルピリジン10.7g(100ミリモル)、1,2−プロパンジオール15.2g(0.20モル)、濃硫酸19.6g(0.20モル)を仕込み、100℃で3時間反応を行った。反応液を冷却後、トルエン100g、30%水酸化ナトリウム水溶液50gを用いて中和抽出・分液を行った。得られた有機層を濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジン12.1g(73ミリモル、GC面百値99%、収率73%)を得た。
(ii)4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジンの合成
200mLのオートクレーブに、上記(i)で得られた4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピリジン1.7g(10.3ミリモル)、イソプロピルアルコール15g、5%ロジウムカーボン触媒(含水率50質量%)85mg(金属換算で原料に対して0.13質量%)を仕込み、攪拌下、水素圧0.8MPa、反応温度100℃で5時間反応した。反応混合物から触媒をろ別し、濃縮、蒸留することにより、無色液体の4−(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)ピペリジン1.6g(9.2ミリモル、収率89%)を得た。GC分析の結果、4−モノアルコキシ体は検出されなかった。
【0040】
〔実施例6〕N−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンの合成
(i)N−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタールの合成
3L反応フラスコに攪拌下、調製例2と同様にして得られた4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール300g(1.6モル)、トルエン600gを仕込み、25〜60℃で二炭酸ジ−tert−ブチル350g(1.6モル)を滴下し、室温で1時間反応を行った。反応混合物を濃縮することにより、淡黄色液体の粗のN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール480g(100%仮換算で1.6モル)を得た。
(ii)N−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンの合成
2L反応フラスコに攪拌下、上記(i)で得られたN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジンジエチルアセタール粗製物全量にアセトン460g、1N塩酸460g(0.4モル)を仕込み、内温15〜40℃で1時間反応を行った。トルエン920gを用いて分液し、得られた水層にトルエン920gを添加して分液した。得られた有機層を合し、濃縮、蒸留することにより、無色液体のN−tert−ブトキシカルボニル−4−ホルミルピペリジン256g(1.2モル、GC面百値97%、収率75%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化12】

(式中、RとRは、同一又は異なっても良いアルキル基を示し、また、相互に結合して環を形成しても良い。)
で表される4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体に対して、そのN位にアミノ基の保護基またはアルキル基を導入することにより、下記一般式(2)
【化13】

(式中、RとRは前記と同じ。Rはアミノ基の保護基またはアルキル基を示す。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンアセタール誘導体を得た後、該化合物の脱アセタール化を行うことにより、下記一般式(3)
【化14】

(式中、Rは前記と同じ。)
で表されるN−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法。
【請求項2】
アミノ基の保護基またはアルキル基がベンジル基である、請求項1記載のN−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法。
【請求項3】
アミノ基の保護基またはアルキル基がtert−ブトキシカルボニル基である、請求項1記載のN−置換−4−ホルミルピペリジンの製造方法。

【公開番号】特開2011−162495(P2011−162495A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28516(P2010−28516)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000246398)有機合成薬品工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】