説明

N−複素環式カルベンメタラサイクル触媒およびその方法

本発明は、一般に、遷移金属触媒性クロスカップリング反応を含む、触媒反応のための材料および方法に関する。上記材料は、特別な取り扱い条件も処理条件も要しない安定な金属錯体であり得る。いくつかの場合において、本発明の材料は、有利なことには、中間体化合物の単離を必要とすることなく、1合成工程で合成され得る。また、本発明の材料は、安価かつ容易に入手可能な出発物質から、空気、水などの排除を要しない比較的穏和な反応条件下で合成され得る。いくつかの実施形態において、上記材料は、N−複素環式カルベンメタラサイクル錯体である。このような材料および方法は、精製化学製品、先端材料および特殊ポリマーの生成において有用であり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、N−複素環式カルベンに連結したメタラサイクル触媒および前駆触媒、ならびに関連法に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属触媒クロスカップリング反応は、製薬化学および材料化学において適用を有する広い範囲の化学的変換において有用である。上記遷移金属触媒は、触媒サイクルにおいて重要な役割を果たす。例えば、遷移金属(例えば、Pd)は、金属中心を安定化し、触媒性能に必要とされる反応性パターンを与える適切なスペクテイター配位子(spectator ligand)と連結され得る。三級ホスフィンは、クロスカップリング反応のために最も広く使用される前駆触媒配位子の中にある。今日最も広く使用されるPd−ホスフィン触媒系のうちの1つは、トリフェニルホスフィン(PPh)に基づく。しかし、このような触媒系は、しばしば、中程度の反応性および基質範囲を示す。いくつかの場合において、上記触媒もしくは前駆触媒系(例えば、[Pd(PPh])は、短い貯蔵寿命を示し、貯蔵時には容易に分解する。他のホスフィン配位子が開発されてきたが、多くは、複数工程合成を要し、従って、しばしばコストが高い。さらに、多くのホスフィンは毒性で、空気感受性であり、そして自然発火性ですらある。
【0003】
ホスフィン配位子の代替として、N−複素環式カルベン(NHC)は、ホスフィンに対して、遷移金属媒介性均質触媒作用において増大した安定性および増大した触媒活性を与えることが示された。NHCは、ホスフィン配位子に対してより強いシグマ供与特性(sigma−donating property)を有し、上記遷移金属中心で形成されたより強い結合を生じる。1,3−ジアリールイミダゾール−2−イリデンおよびそれらの4,5−ジヒドロアナログに基づくNHC配位子は、しばしば、Pd金属中心で使用される。NHCは、代表的には、非常に空気感受性であり、水分感受性であり、そしてNHCを含む金属錯体は、しばしば、その対応する(4,5−ジヒドロ)イミダゾリウム塩の脱プロトンによって調製される。例えば、いくつかの触媒系は、上記触媒的に活性な種のインサイチュ形成のために、上記触媒的に活性な種(例えば、金属供給源、カルベン配位子の塩など)の種々の成分の別個の負荷を要し得る。しかし、このような触媒系は、有用であることが示されたが、多くの場合において、形成される上記触媒的に活性な種の量および/もしくは化学的組成を制御することは困難であり得る。
【0004】
従って、改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、遷移金属含有前駆触媒を合成するための方法を提供し、上記方法は、単一反応チャンバ中に全て一緒に含まれる少なくとも3つの成分を反応させて、以下の構造のうちの1つを有する遷移金属含有前駆触媒:
【0006】
【化1】

を形成する工程を包含し、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【0007】
【化2】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【0008】
【化3】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数である。
【0009】
本発明はまた、以下の構造のうちの1つを有する化合物:
【0010】
【化4】

を含む組成物に関し、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【0011】
【化5】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【0012】
【化6】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数であり;ここで上記化合物は、以下の構造を有さない:
【0013】
【化7】

本発明はまた、以下の構造を有する化合物:
【0014】
【化8】

を含む組成物に関し、
ここで
【0015】
【化9】

は、単結合もしくは二重結合である。
【0016】
本発明はまた、以下の構造を有する化合物:
【0017】
【化10−1】

を含む組成物に関し、
ここで
【0018】
【化10−2】

は、単結合もしくは二重結合である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1Aは、本発明の一実施形態に従って、前駆触媒の1ポット合成を示す。図1Bは、本発明の一実施形態に従って、アセトニトリル中のPd塩を使用する、イミダゾリウムカルベン配位子を含む前駆触媒の1ポット合成を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に従って、触媒的に活性な種を形成するための、本発明の前駆触媒の活性化についての提唱される機構を示す。
【図3A】図3Aは、飽和N−複素環式カルベン配位子前駆物質の一般的合成を示す。
【図3B】図3Bは、本発明のいくつかの実施形態に従う、N−複素環式カルベン配位子前駆物質の合成を示す。
【図3C】図3Cは、本発明のいくつかの実施形態に従って、N−複素環式カルベン配位子前駆物質の合成を示す。
【図4A】図4Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4B】図4Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4C】図4Cは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4D】図4Dは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4E】図4Eは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4F】図4Fは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4G】図4Gは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4H】図4Hは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4I】図4Iは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図4J】図4Jは、本発明のいくつかの実施形態に従って、種々の前駆触媒の合成を示す。
【図5】図5は、本発明のいくつかの実施形態に従って、前駆触媒の一般的なアニオン交換反応を示す。
【図6】図6は、(a)IPr−Pd(dmba)OAcおよび(b)IPr−Pd(dmba)OCOCFを生成するための配位子交換反応を示す。図6は、(a)IPr−Pd(dmba)OAcおよび(b)IPr−Pd(dmba)OCOCFを生成するための配位子交換反応を示す。
【図7】図7は、(a)弱塩基、および(b)強塩基、(c)2,6−ジイソプロピルアニリンでの2−クロロ−1,3−キシレンのBuchwald−Hartwigアミン化、ならびに(d)4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンとtert−ブチルアクリレートとの間のHeck−溝呂木反応を使用する、2−クロロ−1,3−キシレンおよび1−ナフチルボロン酸との間の鈴木−宮浦クロスカップリングを示す。
【図8】図8は、本発明のいくつかの実施形態に従って、パラジウム前駆触媒のライブラリーを示す。
【図9】図9は、公知のNHC連結されたパラダサイクルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
本発明は、一般に、触媒反応(遷移金属触媒性クロスカップリング反応を含む)のための材料および方法に関する。
【0021】
本発明の材料および方法は、種々の金属触媒性プロセス(例えば、炭素−炭素結合および/もしくは炭素−ヘテロ原子結合を形成するための化合物のクロスカップリング)において有用であり得る。いくつかの場合において、本発明の材料は、有利なことには、中間体化合物を単離する必要なく、1合成工程で合成され得る。上記材料は、特別な取り扱い条件も処理条件(例えば、空気、水などの排除)も要しない安定な金属錯体であり得る。また、本発明の材料は、安価かつ容易に入手可能な出発物質から、比較的穏和な条件下でかつ高収率で合成され得る。このような材料および方法は、精製化学製品、先端材料、および特殊ポリマー(specialty polymer)の生成において有用であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、カルベン配位子(例えば、N−複素環式カルベン配位子)を含む安定な(例えば、分離可能な)金属錯体を提供する。上記金属錯体は、さらなる配位子(中性配位子および荷電した配位子が挙げられる)をさらに含み得、上記さらなる配位子は、上記触媒の性能を増強し得る。いくつかの場合において、上記金属錯体は、触媒として(例えば、クロスカップリング反応において)作用し得るか、または容易に活性化して、クロスカップリング反応を触媒する前駆触媒であり得る。本明細書において使用される場合、「前駆触媒」とは、活性化の際に、ある反応において活性触媒種を生成し得る化学種に言及し得る。例えば、金属錯体は、活性化の際に、上記金属錯体から解離して、上記触媒的に活性な種を生成する配位子を含み得る。いくつかの場合において、上記前駆触媒は、安定な化合物として単離され得る。本明細書において使用される場合、用語「触媒」とは、上記飯能に関与する上記触媒の活性な形態、および上記触媒の活性な形態へとインサイチュで変換され得る触媒前駆物質(例えば、前駆触媒)を含む。いくつかの実施形態において、本発明の触媒は、上記化学組成、量、および/もしくは上記触媒的に活性な種の放出が制御され得る点で有利であり得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明の金属錯体は、触媒性金属中心に配位結合するN−複素環式カルベン配位子、および上記金属中心に結合した場合、上記金属錯体の安定化を補助し得るメタラサイクルを形成する二座配位子を含み得る。上記金属錯体を活性化剤に曝すと、上記二座配位子は、上記金属中心から解離し、上記触媒的に活性な金属種を生成し得る種に変換され得る。図2に示される例示的実施形態に示されるように、N−複素環式カルベン配位子(11)および二座配位子を含む化合物10は、活性化剤(12)での配位子交換を受けて、化合物20を生成し得る。活性化剤12と上記二座配位子との間の結合は、化合物30を生成するために還元的除去を介して形成され得、上記化合物30は、配位子解離を受けて、生成物40および上記活性触媒50を提供し得る。いくつかの実施形態において、上記活性化剤は、求核試薬であり得る。例示的実施形態において、上記活性化剤は、上記金属中心(例えば、Pd)への水素化物転移が可能な上記版の混合物の成分からインサイチュで生成される水素化物であり得る。上記活性化剤は、別個にまたは上記前駆触媒と組み合わせて(例えば、予め混合して)かのいずれかで、上記混合物に導入され得る。このような活性化剤としては、ホルメート化合物、有機金属誘導体、NaBHもしくはiBuAlHもしくはLiAlHおよびこれらに由来する化合物が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の触媒は、遷移金属触媒性クロスカップリング方法論(鈴木−宮浦クロスカップリング反応、Heck−溝呂木クロスカップリング反応、根岸クロスカップリング反応、Stilleクロスカップリング反応、熊田−玉尾−Corriuクロスカップリング反応、および園頭クロスカップリング反応などが挙げられる)において有用であり得る。上記触媒は、遷移金属中心(例えば、パラジウム、白金、もしくはルテニウム)、およびN−複素環式カルベン配位子(これは、当業者に公知であるように、触媒性能を変化させるように働き得る)を含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明は、このようなクロスカップリング反応における使用に適した遷移金属錯体を提供する。本発明は、以下の構造のうちの1つを有する化合物:
【0026】
【化11】

を含む組成物を提供し、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合して、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【0027】
【化12】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【0028】
【化13】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数であり;ここで上記化合物は、図9に示される構造のうちのいずれをも有さない。いくつかの場合において、Yは、非配位結合対イオン(例えば、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートもしくはテトラアリールボレート)である。
【0029】
いくつかの場合において、各R1−8は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;Aは、炭素、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Bは、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Dは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、硫黄、セレン、もしくはテルルであり;そしてnは、1〜3の間の整数である。
【0030】
例えば、いくつかの実施形態において、AおよびBは、窒素であり;Dは、窒素、リン、もしくは硫黄であり;RおよびRは、芳香族環であって、上記芳香族環は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、メトキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、もしくはフェニルで必要に応じて置換されており;RおよびRは、フェニル、t−ブチルであるか、またはこれらが一緒に結合して、6員環を形成し;RおよびRは、水素、t−ブチル、メトキシ、トリフルオロメチルであるか、またはこれらが一緒に結合して、アリール環を形成し;RおよびRは、メチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、ヒドロキシルであるか、RおよびRが一緒に結合して、環を形成するか;またはRおよびRのうちの少なくとも一方が、
【0031】
【化14】

の一部に結合して、環を形成する。
【0032】
1セットの実施形態において、Mは、Pdであり、RおよびRは、芳香族環であって、上記芳香族環は、エチル、メチル、イソプロピル、三級ブチル、もしくはこれらの組み合わせで置換されており、AおよびBは、窒素であり、そしてDは、窒素もしくはリンである。いくつかの場合において、RおよびRは、芳香族環であって、上記芳香族環は、Aおよび/もしくはBに対して、オルト位で置換されている。
【0033】
1セットの実施形態において、上記化合物は、上記金属錯体および対イオン(例えば、「Y」)を含む塩である。上記対イオンYは、前駆触媒の活性化が増強され得るか、そして/または所望されない副反応が低下され得るように、弱い求核性安定化イオンもしくは非求核性安定化イオン(weak or non−nucleophilic stabilizing ion)であり得る。いくつかの場合において、上記対イオンは、非配位結合イオンであり、ここで上記対イオンの、異なる基での置換は、急激におよび/もしくは容易に起こって、触媒的に活性な種を生成し得る。例えば、上記対イオンは、BF、PF、もしくはArBであり得、ここでArはアリールである。上記化合物が塩である場合、上記金属錯体は、空の配位部位を占有するために、中性配位子をさらに含み得る。例えば、上記中性配位子は、ニトリル(例えば、アセトニトリル)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、もしくはアルコール(例えば、メタノール)であり得る。上記触媒錯体は、安定な錯体を得るために必要とされる場合、さらなる配位子(例えば、ハライド、カルボキシレートなど)を含み得る。
【0034】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0035】
【化15】


【0036】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0037】
【化16】


【0038】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0039】
【化17】


【0040】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0041】
【化18】


【0042】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0043】
【化19】


【0044】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0045】
【化20】


【0046】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0047】
【化21】


【0048】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0049】
【化22】


【0050】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0051】
【化23】


【0052】
一実施形態において、上記化合物は、以下の構造を有する:
【0053】
【化24】


【0054】
いくつかの実施形態において、上記遷移金属含有前駆触媒は、酸素の存在下で安定である。いくつかの実施形態において、上記遷移金属含有前駆触媒は、水の存在下で安定である。
【0055】
本発明はまた、本明細書に記載される遷移金属含有触媒および/もしくは前駆触媒を合成するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記方法は、単一反応チャンバ中に全て一緒に含まれる少なくとも3つの成分を反応させて、以下の構造のうちの1つを有する遷移金属含有前駆触媒:
【0056】
【化25】

を形成する工程を包含し、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライドもしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【0057】
【化26】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【0058】
【化27】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数である。
【0059】
上記反応の1成分は、反応する際に、上記触媒の金属中心を形成し得る属原子を含む金属供給源であり得る。例えば、上記金属供給源は、パラジウム、白金、もしくはルテニウムの塩もしくは配位化合物を含み得る。上記反応の別の成分は、N−複素環式カルベン配位子前駆物質(例えば、イミダゾリウム塩)であり得る。本明細書において使用される場合、「N−複素環式カルベン配位子前駆物質」とは、反応して、上記金属中心に配位結合するN−複素環式カルベン配位子を形成し得る種を含む化学部分をいう。上記反応の別の成分は、本明細書に記載される二座配位子であり得る。上記方法は、上記反応を促進するために、他の試薬(例えば、塩基、無機塩、中性配位子、および/もしくは溶媒)の添加をさらに包含する。いくつかの場合において、上記試薬は、上記金属錯体との結合を形成し得る。例えば、中性配位子は、上記反応混合物に添加され得、ここで上記中性配位子は、上記金属中心に配位結合する。いくつかの場合において、上記試薬は、上記金属錯体との結合を形成しなくてもよいが、上記金属錯体の形成を別の方法で促進するように働く。
【0060】
一実施形態において、助基3つの成分のうちの少なくとも1つは、パラジウム含有化合物である。上記パラジウム含有化合物は、例えば、PdClもしくは(CHCN)PdClであり得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記3つの成分のうちの少なくとも1つは、N−複素環式カルベン配位子前駆物質である。上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造を有し得:
【0062】
【化28−1】

ここで各R1−4は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−4のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;
【0063】
【化28−2】

は、単結合もしくは二重結合であり;nは、1〜3の間の整数であり;そしてZは、ハライド、カルボキシレート、BF、PF、もしくはArBであり、ここでArはアリールである。
【0064】
本発明の前駆触媒は、さらに反応させられて、例えば、上記対イオン(例えば、アニオン)を異なる対イオンで置換し得る。例えば、本発明の前駆触媒は、上記前駆触媒の、金属塩もしくは他の種(対イオンを含む)への曝露を包含する、アニオン交換反応を介して反応させられる。いくつかの実施形態において、ハライド(例えば、クロリド)原子を上記対イオンとして含む前駆触媒は、金属塩(例えば、アニオンを含む銀塩)で処理され、上記前駆触媒上のハライドの、上記銀塩のアニオンとの置換および銀ハライドの形成を生じ得る。いくつかの場合において、上記アニオン交換は、上記銀ハライドが溶媒中に実質的に不溶性であり、上記前駆触媒の精製を容易にするように選択された溶媒(例えば、CHCl)中で行われ得る。このようなアニオン交換反応の例は、図6A〜Bに示される。当業者は、本発明の状況において有用なアニオン交換反応のための他の方法を識別することができる。
【0065】
N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、当該分野で公知の方法に従って合成され得る。例えば、一実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、N−複素環式カルベン塩であり、この塩は、置換されたエチレンジアミン誘導体およびアリールハライドもしくはアリールトリフレートのクロスカップリング、続いて、環化して、上記N−複素環式カルベン塩を形成することによって合成され得る(図3A)。他の実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、図3B〜Cにおける例示的実施形態において示されるように、アミンとグリオキサールとの縮合、続いて、環化して、上記N−複素環式カルベン塩を形成することによって、合成され得る。
【0066】
一実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造を有する:
【0067】
【化29】


【0068】
一実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造を有する:
【0069】
【化30】


【0070】
一実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造を有し:
【0071】
【化31】

ここで
【0072】
【化32】

は、単結合もしくは二重結合である。いくつかの場合において、
【0073】
【化33】

は、単結合である。いくつかの場合において、
【0074】
【化34】

は、
二重結合である。
【0075】
一実施形態において、上記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造を有し:
【0076】
【化35】

ここで
【0077】
【化36】

は、単結合もしくは二重結合である。いくつかの場合において、
【0078】
【化37】

は、単結合である。いくつかの場合において、
【0079】
【化38】

は、二重結合である。
【0080】
いくつかの実施形態において、上記3つの成分のうちの少なくとも1つは、以下の構造を有する化合物:
【0081】
【化39】

であり、ここで各R5−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR5−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライドもしくはカルボキシレートであり;
【0082】
【化40】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体である。
【0083】
いくつかの実施形態において、上記パラジウム含有化合物、上記N−複素環式カルベンおよび上記配位子は、上記反応工程の前に結合によって結合されない。
【0084】
いくつかの実施形態において、上記方法は、スキーム1によって表される:
【0085】
【化41】

いくつかの場合において、本発明の方法は、「1ポット」合成を伴い得る。すなわち、本発明は、N−複素環式メタラサイクル触媒の(少なくとも)3つの成分の1ポット合成を伴い得る。用語「1ポット」反応は、当該分野で公知であり、そして別の方法では、単一の容器において行われ得る複数工程合成、および/もしくは一連の工程を含む化学反応を要した、1工程において生成物を精製し得る化学反応をいう。1ポット手順は、中間体の単離(例えば、精製)およびさらなる合成工程の必要性を排除しつつ、廃棄物質(例えば、溶媒、不純物)の生成を減少させ得る。さらに、このような化合物を合成するために必要とされる時間および費用は、軽減され得る。図1Aは、本発明の一実施形態に従う、前駆触媒の「1ポット」合成を示す。
【0086】
一実施形態において、上記「1ポット」合成は、上記反応の少なくともいくつかの成分を、単一反応チャンバへ同時に添加することを包含し得る。一実施形態において、上記「1ポット」合成は、種々の試薬を、単一反応チャンバへ逐次的に添加することを包含し得る。
【0087】
本発明の方法は、前駆触媒のライブラリーの容易な合成を可能にし得る。すなわち、例えば、本明細書に記載される方法は、広範に種々の前駆触媒フレームワークへのコンビナトリアルアクセス(combinatorial access)を可能にし得、上記前駆触媒フレームワークは、クロスカップリング反応において触媒として使用するために迅速にスクリーニングされ得る。図8は、本明細書に記載される方法に従って合成され得る前駆触媒のライブラリーの一実施形態を示す。広範な範囲の前駆触媒の利用可能性は、特定のクロスカップリング反応、もしくはあるクラスのクロスカップリング反応の至適条件の発見を可能にし得る。
【0088】
本明細書において使用される場合、用語「求核試薬」もしくは「求核性種」とは、当該分野で通常の意味を示し、反応性電子対を有する化学的実体をいう。求核試薬の例としては、荷電していない化合物(例えば、水、アミン、メルカプタンおよびアルコール)および荷電した部分(例えば、水素化物、アルコキシド、チオレート、カルボアニオン、ならびに種々の有機アミンおよび無機アニオン)が挙げられる。有機金属試薬(例えば、有機クプラート(organocuprate)、有機亜鉛、有機リチウム、グリニャール試薬、エノラート、アセチリドなどはまた、適切な反応条件下で、適切な求核試薬であり得る。いくつかの場合において、上記活性化剤は、求核試薬(例えば、水素化物、アルコキシド、アミノ、もしくは有機金属試薬)である。当業者は、活性化剤としての使用に適切な求核試薬を選択することができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、本発明の金属錯体は、金属中心に結合した場合に、上記金属中心とともにメタラサイクル構造を形成する二座配位子を含み得る。本発明における使用に適した二座配位子は、金属中心に結合できる少なくとも2つの部位を有する種を含む。例えば、上記二座配位子は、上記金属中心に配位結合する少なくとも2つのヘテロ原子、または上記金属中心に配位結合するヘテロ原子およびアニオン性炭素原子を含み得る。上記二座配位子はまた、N−複素環式カルベン配位子を含む金属錯体を安定化することができる可能性がある。いくつかの実施形態において、上記二座配位子はキラルであってもよいし、ラセミ混合物もしくは精製された立体異性体として提供されてもよい。本発明における使用に適した二座配位子の例としては、アリール基(例えば、ビス−アリール、ヘテロアリール置換されたアリール)、ヘテロアリール基、ある部分(例えば、アミン、ホスフィン、ホスファイト、ホスフェート、イミン、オキシム、エーテル、これらのハイブリッド、これらの置換された誘導体など)のアルキルおよびアリール誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記二座配位子は、アミンもしくはアルキルアミンで置換されたアリール基であり、ここで上記金属中心への配位は、上記アリール基の炭素および上記アミン基の窒素を介して起こる。
【0091】
さらなる配位子は、上記金属中心へ配位し得、中性配位子および/もしくは荷電した配位子が挙げられる。中性配位子は、上記金属中心に配位し得るが、上記金属中心の酸化状態を変化させない配位子を含む。例えば、溶媒分子(例えば、アセトニトリル)は、中性配位子であり得る。荷電した配位子は、上記金属中心に配位し得かつ上記金属中心の酸化状態を変化させ得る配位子を含む。荷電した配位子の例としては、ハライド、カルボキシレートなどが挙げられる。
【0092】
本発明における使用に適した遷移金属としては、酸化的付加反応および/もしくは還元的脱離反応、またはクロスカップリング反応と関連する他のプロセスを受けることができるものが挙げられる。上記遷移金属は、好ましくは、クロスカップリング反応を媒介して、例えば、炭素−炭素結合および/もしくは炭素−ヘテロ原子結合を形成し得る。遷移金属としては、遷移金属(例えば、3〜12族)、ランタニド(lathanide)、およびアクチニドが挙げられ得る。いくつかの場合において、8〜12族の遷移金属が好ましい。いくつかの場合において、8〜10族の遷移金属が好ましい。例えば、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、および白金が、好ましいかもしれない。いくつかの実施形態において、パラジウムおよびルテニウムが好ましい。
【0093】
種々の金属含有化合物は、本発明の方法における使用に適切であり得る。いくつかの場合において、上記金属含有化合物は、パラジウム含有化合物である。上記パラジウム含有化合物は、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、[Pd(PPh]などであり得る。
【0094】
いくつかの場合において、本発明の材料は、N−複素環式カルベンを含み得、上記N−複素環式カルベンは、理論に拘束されることは望まないが、触媒プロセスの速度および効率を高め、かつ望ましくない副反応を低下させるために、触媒プロセスにおける補助配位子(supporting ligand)として使用され得る。N−複素環式カルベンの例としては、イミダゾール−2−イリデン、チアゾール−2−イリデン、ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、ジヒドロチアゾール−2−イリデン、環式ジアミノカルベン、および1つ以上のヘテロ原子を含む他のヘテロ原子カルベンが挙げられる。いくつかの場合において、2つより多いヘテロ原子を含むN−複素環式カルベンがまた、使用され得る(例えば、トリアゾール−5−イリデン)。
【0095】
いくつかの場合において、本発明の方法は、上記反応の成分の反応性を促進するために、さらなる試薬を要し得る(例えば、金属供給源、N−複素環式カルベン塩、二座配位子)。特に、適切な塩基を含むことは有利であり得る。例えば、上記反応は、上記金属中心の、上記二座配位子の炭素−水素への挿入(例えば、酸化的付加)を含み得、そして上記塩基は、上記金属中心を脱プロトン化する(例えば、上記水素を除去する)ように働き得る。上記塩基はまた、上記反応の間に形成され得る任意の酸性種を中和するように働き得る。一般に、種々の塩基が、本発明の実施において使用され得る(例えば、有機塩基および無機塩基)。上記塩基は、必要に応じて、このような配位が可能である環境において上記塩基の金属配位を妨げるように立体的障害され得る(すなわち、アルカリ金属アルコキシド)。塩基の例としては、アルコキシド、アルカリ金属アミド、三級アミン(例えば、トリエチルアミン、トリメチルアミン、Et(i−Pr)N、CyMeN、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、2,6−ルチジン、N−メチルピロリドン、キヌクリジンなど)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,5−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−5−エン(DBU)、アルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸塩(例えば、LiCO、NaCO、KCO、CsCO)、アルカリ金属およびアルカリ土類金属炭酸水素塩、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属およびアルカリ土類金属水素化物などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの場合において、上記塩基は、無機塩基(例えば、KCO)である。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態はまた、無機塩(金属ハライド、金属炭酸塩、および金属炭酸水素塩、金属硝酸塩、金属硫酸塩などが挙げられる)の付加を要し得る。
【0097】
いくつかの場合において、上記溶媒は、極性溶媒であり得る。極性溶媒の例としては、アセトニトリル、DMF、THF、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、DMSO、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、t−ブタノールもしくは2−メトキシエチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記溶媒は、アセトニトリルである。
【0098】
本明細書において使用される場合、用語「反応する」とは、2つ以上の成分の間で結合を形成して、安定な、単離可能な化合物を生成することをいう。例えば、第1の成分および第2の成分は、反応して、共有結合によって結合された、上記第1の成分および上記第2の成分を含む1つの反応生成物を形成し得る。すなわち、用語「反応する」とは、溶媒、触媒、塩基、配位子、もしくは上記成分との反応の発生を促進するように働き得る他の材料の相互作用には言及しない。「安定な化合物」もしくは「単離可能な化合物」とは、単離された反応生成物をいい、不安定な中間体にも移行状態にも言及しない。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書で記載されかつ例示されてきたが、当業者は、上記機能を発揮させ、そして/または上記結果および/もしくは本明細書に記載される利点のうちの1つ以上を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そしてこのようなバリエーションおよび/もしくは改変の各々は、本発明の範囲内にあると考えられる。より具体的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメーター、寸法、材料、および構成が、例示的であることを意味し、そして実際のパラメーター、寸法、材料、および/もしくは構成が、本発明の教示が使用される特定の適用に依存することを容易に理解する。当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載される発明の特定の実施形態に対する多く等価物を認識するかまたは確かめ得る。従って、前述の実施形態は、例示によって示されるに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびそれに対する等価物の範囲内で、具体的に記載されかつ特許請求されたもの以外の方法で本発明が実施され得ることは、理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法に関する。さらに、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
不定冠詞「a」および「an」とは、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0101】
語句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、そのように結合されている要素のうちの「いずれかもしくは両方」、すなわち、いくつかの場合においては接続的に(conjunctively)存在し、他の場合には、離接して(disjunctively)存在する要素を意味すると理解されるべきである。反対に明確に示されなければ、具体的に同定される要素と関連しようが関連しまいが、「および/または」節によって具体的に同定される要素以外にも、他の要素が必要に応じて存在し得る。従って、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」のような開放系の言葉とともに使用される場合、一実施形態において、Aあり、Bなし(必要に応じて、B以外の要素を含む);別の実施形態において、Bあり、Aなし(必要に応じて、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(必要に応じて、他の要素を含む);などに言及し得る。
【0102】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上記で定義される「および/もしくは」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧中の項目を分離する場合、「または」あるいは「および/または」は、包括的である、すなわち、多くのもしくは一覧の項目、および必要に応じてさらなる一覧にない項目のうちの少なくとも1つの包含、しかし、同様に1つより多くを含むと解釈されるものとする。反対に明らかに示される用語のみ(例えば、「〜のうちの1つのみ」もしくは「〜のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲において使用される場合、「〜からなる」は、多くのもしくは一覧の要素の正確に1つの要素の包含をいう。一般に、用語「または」とは、本明細書において使用される場合、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、あるいは「〜のうちの正確に1つ」が先行するときは、排他的選択肢を含むこと(すなわち、「一方もしくは他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるとされるに過ぎない。「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法分野において使用されるように、その通常の意味を有するものとする。
【0103】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つ以上の要素の一覧に言及して、語句「少なくとも1つ」とは、上記要素の一覧中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、上記要素の一覧に具体的に列挙された各要素およびあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、上記要素の一覧中の要素のいずれの組み合わせをも排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、要素が、必要に応じて、具外的に同定される要素に関連しようと関連しなかろうと、語句「少なくとも1つ」が言及する要素の一覧内に具体的に同定される要素以外に存在し得ることを可能にする。従って、非限定的例として、「AおよびBのうちの少なくとも一方」(もしくは、等しくは、「AまたはBのうちの少なくとも一方」、もしくは等しくは、「Aおよび/もしくはBのうちの少なくとも一方」)は、一実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)A、Bは存在しない(および必要に応じて、B以外の要素を含む)に言及し;別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多いを含む)B、Aは存在しない(および必要に応じて、A以外の要素を含む)に言及し;さらに別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)A、および少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多いを含む)B(および必要に応じて、他の要素を含む)に言及する;など。
【0104】
特許請求の範囲において、および上記明細書において、全ての接続する語句(transitional phrase)(例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「包含する(involving)」、「保持する(holding)」などは、開放系である、すなわち、〜が挙げられるが、これらに限定されない、を意味すると理解されるべきである。接続する語句「〜からなる(consisting of)」および「〜から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、閉鎖系もしくは半閉鎖系の接続する語句であるものとし、それぞれ、米国特許出願審査基準(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、2111.03.節に記載される。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
図3Aは、化合物ITbp・HClの概略的合成を示し、この化合物を、以下の方法に従って合成した。メタノール(50mL)および水(5mL)の混合物中の2−tert−ブチルアニリン(20.4mL,19.6g,131mmol)の溶液に、グリオキサール溶液(水中40%;7.5mL,9.43g,65mmol)を添加し、上記混合物を、1.5時間にわたって攪拌した。上記ジアザブタジエン中間体の黄色結晶の塊を濾過し、空気流で乾燥させ、次いで、Pで真空乾燥した。上記ジアザブタジエンを、黄色粉末(19.91g,96%)として得、次の工程に直接使用した。
【0106】
THF(40mL)中の上記ジアザブタジエン(6.41g,20mmol)の溶液に、クロロメチルエチルエーテル(2.0mL,2.08g,22mmol)および水(0.4mL)を、連続して添加し、上記混合物を、40℃で18時間攪拌した。上記溶媒を除去し、その残渣を、酢酸エチル(50mL)と水(50mL)との間で分配した。その有機層を、水(2×25mL)でさらに抽出した。次いで、その合わせた水層を、CHCl(4×25mL)で抽出した。その合わせたCHCl層をMgSOで乾燥させ、上記溶媒を減圧下で除去した。その残渣を、CHCl−酢酸エチル(1:5)で粉砕した。そのイミダゾリウム塩(ITBp・HCl)(1.45g,20%)を、灰白色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz): δ 11.7−9.7(幅広 s,1H); 8.4−6.7(幅広 s, 2H), 7.74(m, 2H), 7.62(td,J=8.8,1.6Hz,2H); 7.45(td,J=7.6,1.2Hz,2H), 1.36(s,9H)。13C NMR(CDCl,100MHz): δ 145.9(幅広), 140.9(幅広), 131.7, 129.1(幅広), 127.6, 125.6(幅広), 356.0, 31.8. C2329ClNの計算値(368.94): C,74.88; H,7.92; N,7.59. 実測値: C,75.05, 7.89, 7.72。
【0107】
(実施例2)
図4Aは、IPr−Pd(dmba)Cl(dmba=kN,C−N,N−ジメチルベンジルアミン)の概略的合成を示す。上記IPr−Pd(dmba)Clを、以下の方法に従って合成した。微細粉末にしたPdCl(177mg,1.00mmol)をCHCN(5mL)中に懸濁し、そしてN−ベンジルジメチルアミン(160μL,143mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、透明な橙色の溶液が形成されるまで(約20分)、攪拌しながら80℃へと加熱した。微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。その得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−Pd(dmba)Cl(543mg,82%)を、ベージュ色の固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.40(t,J=7.6Hz,2H), 7.30(d,J=7.6Hz,2H); 7.21(s,2H), 6.82−6.70(m,3H), 6.53(d,J=7.6Hz,1H), 3.46(s,2H), 3.37(m,2H), 3.15(m,2H), 2.39(s,6H), 1.49(d,J=6.8Hz,6H), 1.18(d,J=6.8Hz,6H), 1.02(d,J=6.8Hz,6H), 0.81(d,J=6.4Hz, 6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ:177.5, 150.5, 147.8, 147.8, 144.7, 136.2, 136.1, 129.7, 125.4, 124.6, 124.0, 123.8, 122.6, 121.5, 72.6, 49.8, 29.0, 28.3, 26.4, 26.2, 23.2, 23.2。C3648ClNPdの分析値(665.67):C,65.05; H,7.28; N,6.32。実測値: C,65.14; H,7.41; N,6.53。
【0108】
(実施例3)
図4Bは、IEt−Pd(dmba)Clの概略的合成を示し、上記IEt−Pd(dmba)Clを、以下の方法に従って合成した。微細粉末にしたPdCl(177mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、N−ベンジルジメチルアミン(160μL,143mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、透明な橙色溶液が形成されるまで(約20分)、攪拌しながら80℃へと加熱した。微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IEt・HCl(406mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。上記生成物をCHClで予め平衡化したシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IEt−Pd(dmba)Cl(492mg,81%)を、ベージュ色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ:7.30(t,J=7.6Hz,2H), 7.24(dd,J=7.6,1.2Hz,2H), 7.16(s,2H), 7.04(dd,J=7.6,1.2Hz,2H), 6.78(td,J=7.6,1.2Hz,1H), 6.71(d,J=7.2,1.0Hz,1H), 6.68(td,J=7.6,1.2Hz,1H), 6.58(d,J=7.2,1.0Hz,1H), 3.44(s,2H), 2.94(m,2H), 2.87(m,2H), 2.70(m,2H), 2.61(m,2H), 2.40(s,6H), 1.19(t,J=7.2Hz,6H), 1.18(d,J=7.6Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 175.7, 150.0, 147.2, 143.1, 137.0, 137.3, 137.1, 129.1, 126.3, 126.0, 124.0, 123.4, 122.7, 121.1, 72.3, 50.0, 29.0, 25.9, 25.2, 13.3, 14.7。C3241ClNPdの計算値(609.56): C,63.16; H,6.63; N,6.90。実測値: C,63.69; H,6.80; N,7.03。
【0109】
(実施例4)
図4Cは、IMes−Pd(dmba)Clの概略的合成を示し、上記IMes−Pd(dmba)Clを、以下の方法に従って合成した。微細粉末にしたPdCl(177mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中で懸濁し、N−ベンジルジメチルアミン(160μL,143mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、透明な橙色の溶液が形成されるまで、攪拌しながら80℃へと加熱した(約20分)。微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IMes・HCl(375mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。上記生成物を、CHClで予め平衡化したシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IMes−Pd(dmba)Cl(555mg,96%)を、ベージュ色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.10(s,2H), 6.99(s,2H), 6.83−6.76(m,4H), 6.70(td,J=7.6,1.2Hz,1H), 6.58(d,J=7.2,1.2Hz,1H), 3.53(s,2H), 2.45(s,6H), 2.44(s,6H), 2.29(s,6H), 2.23(s,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 175.6, 149.3, 147.6, 138.3, 138.3, 137.4, 136.2, 133.9, 129.4, 128.7, 123.9, 123.2, 123.0, 121.2, 72.2, 50.0, 21.1, 20.2, 19.8. C3037ClNPdの計算値(581.51): C,61.96; H,6.41; N,7.23。実測値: C,62.02; H,6.37; N,7.40。
【0110】
(実施例5)
図4Dは、ITbp−Pd(dmba)Clの概略的合成を示し、上記ITbp−Pd(dmba)Clを、以下の方法に従って合成した。微細粉末にしたPdCl(177mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、N−ベンジルジメチルアミン(160μL,143mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、透明な橙色溶液が形成されるまで、攪拌しながら80℃へと加熱した(約20分)。微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。ITbp・HCl(406mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、ITbp−Pd(dmba)Cl(494mg,81%)を、ベージュ色の固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.62(dd,J=8.4,1.6Hz,2H), 7.42(dd,J=8.0,1.2Hz,2H), 7.30−7.22(m,2H), 7.29(s,2H), 6.93−6.81(m,5H), 6.39(d,J=7.2Hz), 3.51(s,2H), 2.42(s,6H), 1.51(s,18H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 176.7, 151.8, 148.0, 146.7, 137.6, 137.5, 131.8, 129.8, 128.7, 125.1, 125.1, 124.7, 123.0, 121.6, 72.4, 49.6, 36.7, 32.8。C3241ClNPdの計算値(609.56): C,63.05; H,6.78; N,6.89。実測値: C,63.69; H,6.81; N,7.11。
【0111】
(実施例6)
図4Eを、SIPr−Pd(dmba)Cl(dmba=kN,C−N,N−ジメチルベンジルアミン)の概略的合成を示し、上記SIPr−Pd(dmba)Clを、以下の方法に従って合成した。微細粉末にしたPdCl(177mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、N−ベンジルジメチルアミン(160μL,143mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、透明な橙色の溶液が形成されるまで(約20分)、攪拌しながら80℃へと加熱した。微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。SIPr・HCl(469mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で48時間攪拌した。あるいは、上記混合物を、100℃で18時間加熱した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1, vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、SIPr−Pd(dmba)Cl(80℃で328mg,49%および100℃で308mg,46%)を、ベージュ色の固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.36−7.28(m,4H), 7.22(m,1H); 7.10(dd,J=7.2,1.6Hz,2H), 6.85(m,3H), 6.78(m,1H), 4.16(m,2H), 4.10(m,2H), 3.59(m,4H), 3.40(s,2H), 2.32(s,6H), 1.60(d,J=6.8Hz,6H), 1.26(d,J=6.8Hz,6H), 1.21(d,J=6.8Hz,6H), 0.74(d,J=6.8Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 205.4, 150.7, 148.0, 147.9, 146.3, 136.9, 136.0, 128.8, 125.3, 124.4, 124.0, 122.8, 121.7, 72.6, 54.2, 49.5, 29.0, 28.4, 27.0, 26.3, 24.3, 23.6。C3650ClNPdの計算値(666.68): C,64.86; H,7.56; N,6.30。実測値: C,65.19; H,7.76; N,6.39。
【0112】
(実施例7)
図4Fは、IPr−PdCl−(kN,C−(S)−α−MeBnNMe)の概略的合成を示し、上記IPr−PdCl−(kN,C−(S)−α−MeBnNMe)を、以下の方法に従って合成した。微細粉末にした(CHCN)PdCl(259mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、(S)−α,N,N−トリメチルベンジルアミン(173μL,157mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、80℃へと5分間加熱し、微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加した。その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−PdCl−(kN,C−(S)−a−MeBnNMe)(542mg,80%)を、ベージュ色の固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.46(t,J=8.0Hz,2H), 7.34(d,J=4.4Hz,2H); 7.30−7.25(m,3H), 7.24(d,J=1.6Hz,1H); 7.19(d,J=1.6Hz), 7.04(m,1H), 6.80(td,J=7.2,1.2Hz,1H), 6.74(m,1H), 6.70(dd,J=7.2,2.0Hz,1H), 6.55(d,J=6.8Hz,1H), 3.81(m,1H), 3.67(m,1H), 3.10(q,J=6.4Hz,1H), 2.92(m,1H), 2.45(m,1H), 2.37(s,3H), 2.27(s,3H), 1.52(d,J=6.8Hz,3H), 1.44(d,J=6.8Hz,3H), 1.20(d,J=6.8Hz,3H), 1.17(d,J=5.6Hz,3H), 1.15(d,J=5.6Hz,3H), 1.08(d,J=6.8Hz,3H), 0.96(d,J=6.4Hz,3H), 0.90(d,J=6.8Hz,3H), 0.46(d,J=6.4Hz,3H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 178.0, 154.5, 149.4, 147.9, 147.6, 144.8, 144.7, 136.5, 136.1, 136.0, 129.8, 129.5, 125.2, 125.2, 124.1, 123.8, 123.7, 122.7, 121.1, 75.3, 50.0, 46.6, 29.0, 29.0, 28.4, 28.2, 27.0, 26.8, 26.0, 25.3, 23.6, 23.4, 22.8, 22.6。
【0113】
(実施例8)
図4Gは、IPr−PdCl−[kN,C−3,5−(MeO)BnNMe]の概略的合成を示し、上記IPr−PdCl−[kN,C−3,5−(MeO)BnNMe]を、以下の方法に従って合成した。微細粉末にした(CHCN)PdCl(259mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中で懸濁し、3,5−ジメトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン(205mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、80℃へと5分間加熱し、微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加した。その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(3:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−PdCl−[kN,C−3,5−(MeO)BnNMe](491mg,68%)を、黄色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.39(t,J=7.6Hz,2H), 7.27(dd,J=7.6,1.6Hz,2H), 7.18(dd,J=7.6,1.2Hz,2H), 7.13(s,2H), 6.12(d,J=2.4Hz,3H), 5.99(d,J=2.4Hz,3H), 3.71(s,3H), 3.69(m,2H), 3.49(s,3H), 3.33(s,2H), 2.94(m,2H), 2.33(s,6H), 1.47(d,J=6.4Hz,6H), 1.18(d,J=6.8Hz,6H), 1.03(d,J=7.2Hz,6H), 0.99(d,J=6.4Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 175.5, 161.8, 157.4, 149.1, 148.2, 145.4, 136.8, 129.3, 127.9, 123.8, 123.7, 123.7, 99.9, 95.2, 73.4, 55.1, 54.9, 49.6, 29.0, 27.0, 26.6, 26.5, 24.2, 23.4。
【0114】
(実施例9)
図4Hは、IPr−PdCl−[kN,C−PhCH=NOH]の概略適合性を示し、上記IPr−PdCl−[kN,C−PhCH=NOH]を、以下の方法に従って合成した。微細粉末にした(CHCN)PdCl(259mg,1.00mmol)をCHCN(5mL)中に懸濁し、(E)−ベンズアルデヒドオキシム(127mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を80℃へと5分間加熱し、微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加し、その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(1:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−PdCl−[kN,C−PhCH=NOH](291mg,45%)を、黄色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.40(t,J=8.0Hz,2H), 7.24(dd,J=8.0,1.6Hz,2H), 7.18(dd,J=7.6,1.2Hz,2H), 7.15(s,1H), 7.13(s,2H), 6.72(dd,J=7.2,1.2Hz, 1H), 6.68(td,J=8.4,1.2Hz,1H), 6.46(d,J=6.4Hz,3H), 6.42(td,J=6.4,1.6Hz,3H), 3.43(s,2H), 3.00(s,2H), 1.74(幅広 s,1H), 1.14(d,J=7.2Hz,6H), 1.11(d,J=6.8Hz,6H), 0.95(d,J=6.4Hz,6H), 0.90(d,J=6.8Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 182.0, 154.2, 152.0, 146.8, 146.0, 145.2, 137.0, 136.1, 129.3, 124.5, 123.9, 123.8, 123.2, 122.2, 121.0, 28.6, 28.0, 26.3, 26.0, 23.9, 22.4。
【0115】
(実施例10)
図4Iは、IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy]の概略的合成を示し、上記IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy]を、以下の方法に従って合成した。微細粉末にした(CHCN)PdCl(259mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、2−フェニルピリジン(150μL,163mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を、80℃へと5分間加熱し、微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加した。その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(1:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy](300mg,44%)を、黄色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 9.30(d,J=0.8Hz,1H), 7.57(td,J=8.0,1.6Hz,1H), 7.45(d,J=8.4Hz,1H), 7.38(t,J=8.0Hz,2H), 7.33(dd,J=8.0,1.6Hz,2H), 7.30(dd,J=7.6,1.6Hz,1H), 7.28(s,2H), 7.18(dd,J=7.6,1.6Hz,2H), 6.96(td,J=7.6,1.2Hz,1H), 6.93(dd,J=7.6,1.6Hz,1H), 6.89(td,J=7.6,1.6Hz,3H), 6.73(dd,J=7.2,0.8Hz,3H), 3.36(m,2H), 3.30(m,2H), 1.50(d,J=6.4Hz,6H), 1.18(d,J=6.8Hz,6H), 1.05(d,J=6.8Hz,6H), 0.80(d,J=6.8Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 178.8, 164.3, 155.7, 150.1, 147.8, 146.4, 145.0, 137.8, 137.5, 135.9, 129.9, 128.9, 125.0, 124.2, 124.0, 123.1, 122.8, 121.4, 117.4, 29.0, 28.5, 26.6, 26.2, 23.2, 22.0。
【0116】
(実施例11)
図4Jは、IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy]の概略的合成を示し、上記IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy]を、以下の方法に従って合成した。微細粉末にした(CHCN)PdCl(259mg,1.00mmol)を、CHCN(5mL)中に懸濁し、2−ベンジルピリジン(170μL,178mg,1.05mmol)を添加した。上記溶液を80℃へと5分間加熱し、微細粉末にしたKCO(691mg,5.00mmol)を添加した。その攪拌を、カナリアイエロー色溶液の形成によって示されるように、パラダサイクル形成が完了するまで継続した(5〜10分)。IPr・HCl(467mg,1.10mmol)を添加し、上記混合物を、80℃で18時間攪拌した。上記反応混合物を濾過し、エバポレートした。上記得られた生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製した。CHClで予め平衡化されたシリカゲルのパッド(2.5×8cm)に上記生成物を載せる際に、CHCl(100mL)を使用して、不純物を溶出した。上記純粋なNHC−パラダサイクルを、CHCl−酢酸エチル(1:1,vol/vol,150mL)で溶出し、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物を、ヘキサン(25mL)で粉砕した。高真空中で乾燥させた後、IPr−PdCl−[kN,C−2−PhPy](464mg,66%)を、黄色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 8.80(d,J=0.8Hz,1H), 7.56(幅広 m,1H), 7.42(幅広 m,4H), 7.20(s,2H), 7.07(d,J=7.6,2H), 7.01(幅広 m,1H), 6.89(t,J=6.8Hz,1H), 6.74−6.68(m,3H), 6.61(m,1H), 3.79−3.76(幅広 m,2H), 3.37(幅広 m,3H), 2.37(幅広 m,1H), 1.64(幅広 s,3H), 1.54(幅広 s 3H), 1.30(幅広 s,3H), 1.22(幅広 s,3H), 1.00(幅広 s,3H), 0.95(幅広 s,3H), 0.42(幅広 s,3H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 176.1, 159.4, 153.2, 150.1, 149.6, 148.2(幅広), 147.5(幅広), 145.4(幅広), 140.2, 137.3, 136.5(幅広), 136.0(幅広), 130.0(幅広), 129.4(幅広), 125.7, 125.2(幅広), 125.0, 124.6(幅広), 124.2(幅広), 123.6(幅広), 123.0(幅広), 122.3, 121.1, 49.2, 28.9, 28.8, 26.7, 26.3, 24.0, 23.2。
【0117】
(実施例12)
以下の実施例は、図5に示されるように、本発明の化合物のアニオン交換反応のための一般的方法を記載する。図6Aは、IPr−Pd(dmba)OAcの概略的合成を示す。CHCl(2mL)中のAgOAc(167mg,1mmol)の懸濁物に、CHCl(3mL)中のIPr−Pd(dmba)Cl(665mg,1mmol)の溶液を添加した。上記混合物を、1時間にわたって攪拌し、シリカゲル(2g)の存在下で乾燥するまでエバポレートした。IPr−Pd(dmba)OAc(663mg,96%)を、CHCl−酢酸エチル:メタノール(5:1,vol/vol)勾配(0〜100%)でのクロマトグラフィー(Combiflash,12g カートリッジ)後に、白色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.32(t,J=7.6Hz,2H), 7.22(幅広 d,J=7.6Hz,2H), 7.12(s,2H), 7.10(幅広 d,J=7.6Hz,2H), 6.68(t,J=7.2Hz,2H), 6.61(m,3H), 6.38(d,J=7.6Hz,1H), 3.24(s,2H), 3.20(m,2H), 2.81(m,2H), 2.18(s,6H), 1.40(s,3H), 1.33(d,J=6.4Hz,6H), 1.10(d,J=6.4Hz,6H), 0.93(d,J=6.8Hz,6H), 0.79(d,J=6.4Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 178.3, 176.0, 148.2, 148.0, 147.0, 145.1, 136.0, 135.8, 129.6, 125.4, 124.2, 124.1, 123.8, 122.4, 121.7, 72.3, 49.2, 28.7, 28.5, 26.3, 25.3, 23.0, 22.8。C3851Pdの分析値(688.25): C,66.31; H,7.47; N,6.11。実測値: C,66.70; H,7.63; N,6.31。
【0118】
(実施例13)
図6Bは、IPr−Pd(dmba)OCOCFの概略的合成を示す。CHCl(2mL)中のAgOCOCF(221mg,1mmol)の懸濁物に、CHCl(3mL)中のIPr−Pd(dmba)Cl(665mg,1mmol)の溶液を添加した。上記混合物を1時間にわたって攪拌し、シリカゲル(2g)の存在下で乾燥するまでエバポレートした。IPr−Pd(dmba)OCOCF(733mg,99%)を、CHCl−酢酸エチル勾配(0〜100%)でのクロマトグラフィー(Combiflash,12gカートリッジ)の後に、白色固体として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.42(t,J=7.6Hz,2H), 7.30(d,J=7.6Hz,2H), 7.25(s,2H), 7.21(d,J=7.6Hz,2H), 6.80(td,J=6.8,1.2Hz,2H), 6.70(m,2H), 6.70(d,J=7.6Hz,1H), 3.34(s,2H), 3.29(m,2H), 2.84(m,2H), 2.24(s,6H), 1.36(d,J=6.8Hz,6H), 1.19(d,J=6.8Hz,6H), 1.03(d,J=6.8Hz,6H), 0.88(d,J=6.8Hz,6H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 177.3, 160.8(q,C−F=35Hz), 147.6, 146.7, 145.9, 145.0, 136.0, 135.8, 135.4, 129.7, 125.7, 124.5, 124.3, 123.9, 122.7, 121.0, 160.8 116.6(q,C−F=292Hz), 72.0, 49.1, 28.6, 28.5, 26.3, 26.3, 23.0, 22.4。C3848Pdの分析値(742.22): C,61.49; H,6.52; N,5.66。実測値: C,62.06; H,6.67; N,5.77。
【0119】
(実施例14)
以下の実施例は、鈴木−宮浦クロスカップリング反応における本発明の前駆触媒の使用を記載する。
【0120】
図7Aは、弱塩基を使用する、2−クロロ−1,3−キシレンと、1−ナフチルボロン酸との間の鈴木−宮浦クロスカップリングの概略的合成を示す。スターラーバー付きの試験管中に、1−ナフチルボロン酸(722mg,4.2mmol)、CsCO(1.95g,6.0mmol)およびIPr−Pd(dmba)Cl(27mg,0.040mmol)を、隔壁でシールし、上記試験管に、Ar(3×)を吹き込んだ(backfill)。乾燥DMF(12mL)を、上記試験管に添加し、上記混合物を120℃へと加熱した。2−クロロ−1,3−キシレン(530μL,562mg,4.0mmol)を滴下した。上記反応系を一晩加熱し、冷却し、エーテル(20mL)と水(20mL)との間で分配した。上記エーテル層を、水(4×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、そしてエバポレートした。上記生成物(359mg,39%)を、ヘキサンを溶出液として使用するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー後にワックス状白色固体として得た。上記H NMRおよび13C NMRのスペクトルは、文献中に記載されるように同一であった(例えば、Navarro,O.;Kelly,R.A.,III;Nolan,S.P.J.Am.Chem.Soc.2003,125,16194−16195に記載されるように)。
【0121】
図7Bは、強塩基を使用する、2−クロロ−1,3−キシレンと、1−ナフチルボロン酸との間の鈴木−宮浦クロスカップリングの概略的合成を示す。スターラーバー付きの試験管中に、1−ナフチルボロン酸(1.35g,7.9mmol)、およびt−BuONa(793mg,8.3mmol)を、隔壁でシールし、上記試験管に、Ar(3×)を吹き込んだ。2−クロロ−1,3−キシレン(1.00mL,1.06g,7.5mmol)を添加した。i−PrOH(試薬グレード,8mL)中のIPr−Pd(dmba)Cl(50mg,0.075mmol)を含む溶液を注入し、上記触媒を、ヒートガン(heat gun)で加熱することによって活性化した。上記反応を、室温で一晩攪拌し、上記溶媒を取り出し、その残渣を、CHCl(30mL)と水(50mL)との間で分配した。上記有機相を分離し、乾燥させ(MgSO)、そしてエバポレートした。上記のように、上記生成物(1.31g,75%)を、ヘキサンを溶出液として使用する、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー後にワックス状白色固体として得た。
【0122】
(実施例15)
以下の実施例は、Buchwald−Hartwigアミン化反応における本発明の前駆触媒の使用を記載する。
【0123】
図7Cは、2−クロロ−1,3−キシレンと2,6−ジイソプロピルアニリンとのBuchwald−Hartwigアミン化の概略的合成を示す。スターラーバー付きのバイアルに、t−BuONa(173mg,1.8mmol)を充填した。トルエン(試薬グレード;2mL)中のIPr−Pd(dmba)Cl(13.3mg,0.020mmol)を含む溶液を、上記バイアルに添加した。2−クロロ−1,3−キシレン(135μL,141mg,1.0mmol)および2,6−ジイソプロピルアニリン(225μL,212mg,1.2mmol)を、連続して添加した。上記バイアル上の雰囲気を、Arのストリームでパージし、上記バイアルにキャップをし、シールし、120℃で18時間加熱した。上記粗製反応混合物を、丸底フラスコへと移し、その揮発性溶媒を除去した。その残りの残渣を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(Combiflash 12g カートリッジ,5分間にわたってヘキサン,次いで、15分間にわたってヘキサン−酢酸エチル 0〜100%の勾配)によって精製した。上記生成物(167mg,59%)を、無色の油状物として得た。H NMRおよび13C NMRを、文献中に記載されるように同定した(例えば、Wolfe,J.P.;Tomori,H.;Sadighi,J.P.;Yin,J.;Buchwald,S.L. J.Org.Chem.2000,65,1158−1174に記載されるように)。
【0124】
(実施例16)
以下の実施例は、Heck−溝呂木クロスカップリング反応における本発明の前駆触媒の使用を記載する。
【0125】
図7Dは、4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンとtert−ブチルアクリレートとの間のHeck−溝呂木反応の概略的合成を示す。バイアルに、スターラーバー、4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリン(200mg,1.0mmol)、KCO(276mg,2.0mmol)およびIPr−Pd(dmba)Cl(13.3mg,0.020mmol)を充填した。上記バイアルに、Ar(3×)に吹き込み、NMP(Arでパージ;2mL)およびtert−ブチルアクリレート(175μL,154mg,1.2mmol)を、シリンジを介して添加した。上記混合物を、140℃へと一晩加熱し、冷却し、エーテル(20mL)と水(20mL)との間で分配した。上記エーテル層を、水(2×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、上記溶媒をエバポレートした。上記生成物(225mg,91%)を、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(Combiflash 12g カートリッジ,20分間にわたってヘキサン−酢酸エチル 0〜10%の勾配)によって精製した後に、淡黄色油状物として得た。H NMR(CDCl,400MHz) δ: 7.48(d,J=16.0Hz,1H), 7.15(s,2H), 6.19(d,J=16.0Hz,1H), 2.19(s,6H), 1.53(s,9H)。13C NMR(CDCl,100MHz) δ: 167.2, 145.0, 144.3, 128.6, 124.3, 121.5, 115.3, 79.8, 28.3, 17.6。同様の手順(NMP,容積0.4mL)を使用して、上記生成物(88%,217mg)を、IMes−Pd(dmba)Cl(11.6mg,0.020mmol)を、代替の前駆触媒として用いて得た。
【0126】
(定義)
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語を、以下に列挙する。
【0127】
用語「触媒量」とは、当該分野で認識されておりかつ反応物に対して準化学量論的な量をいう。
【0128】
用語「アルキル」とは、飽和脂肪族基のラジカル(直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換されたシクロアルキル基、およびシクロアルキル置換されたアルキル基(全て必要に応じて置換されている)が挙げられる)をいう。いくつかの実施形態において、直鎖もしくは分枝鎖のアルキルは、その骨格中に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC−C30、分枝鎖についてはC−C30)、およびいくつかの場合において、20個以下の炭素原子を有する。
【0129】
用語「ヘテロアルキル」とは、1個以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されている、本明細書に記載されるアルキル基をいう。適切なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンなどが挙げられる。用語「シクロへテロアルキル」とは、1個以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されているシクロアルキル基をいう。
【0130】
用語「アリール」とは、単一の環(例えば、フェニル)、複数の環(例えば、ビフェニル)、もしくは複数の縮合環(ここで少なくとも1個が、芳香族である(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、もしくはフェナントリル))を有する芳香族の炭素環式基(必要に応じて、置換されている)をいう。すなわち、少なくとも1個の環は、共役π電子系を有し得る。上記アリール基は、必要に応じて、本明細書に記載されるように、置換され得る。「炭素環式アリール基」とは、アリール基であって、上記芳香族環上の上記環原子が炭素であるものをいう。炭素環式アリール基としては、単環式の炭素環式アリール基および多環式もしくは縮合化合物(例えば、ナフチル基)が挙げられる。
【0131】
「複素環式アリール」もしくは「ヘテロアリール」基は、アリール基であって、上記芳香族環中の少なくとも1個の環原子がヘテロ原子であり、上記環原子の残りが炭素原子であるものである。適切なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンなどが挙げられる。適切なヘテロアリール基としては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロリル、ピリジル−N−オキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリルなど(全て、必要に応じて置換されている)が挙げられる。
【0132】
用語「アラルキル」とは、アリール基で置換されたアルキレン基をいう。適切なアラルキル基としては、ベンジル、ピコリルなどが挙げられ得、そして必要に応じて置換されていてもよい。上記アリール部分は、5〜14個の環原子を有し得、上記アルキル部分は、10個以上の炭素原子を有し得る。「ヘテロアリールアルキル」とは、ヘテロアリール基で置換されたアルキレン基をいう。
【0133】
用語「アミン」および「アミノ」とは、当該分野で認識されており、両方の置換されていないアミンおよび置換されたアミン(例えば、一般式:N(R’)(R’’)(R’’’)によって表され得、ここでR’、R’’、およびR’’’が各々独立して、原子価の規則によって許容される基を表す部分)をいう。
【0134】
用語トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルは、当該分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホニル、p−トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基をいう。用語トリフレート、トシレート、メシレート、およびノナフレートは、当該分野で認識されており、それぞれ、トリフルオロメタンスルホネート、p−トルエンスルホネート、メタンスルホネート、およびノナフルオロブタンスルホネート官能基、ならびに中性(例えば、エステル)形態もしくはイオン性(例えば、塩)形態のいずれかで上記基を含む分子をいう。
【0135】
用語「カルボニル」とは、当該分野で認識されており、基C=Oをいう。
【0136】
用語「カルボキシル基:、「カルボニル基」および「アシル基」は、当該分野で認識されており、以下の一般式によって表され得るような部分を含み得る:
【0137】
【化42】

ここでWは、H、OH、O−アルキル、O−アルケニル、もしくはこれらの塩である。Wが、O−アルキルである場合、上記式は、「エステル」を表す。WがOHである場合、上記式は、「カルボン酸」を表す。用語「カルボキシレート」とは、アニオン性カルボキシル基をいう。一般に、上記式の酸素原子が硫黄によって置換されている場合、上記式は、「チオールカルボニル」基を表す。WがS−アルキルである場合、上記式は、「チオールエステル」を表す。WがSHである場合、上記式は、「チオールカルボン酸」を表す。他方で、Wがアルキルである場合、上記式は、「ケトン」基を表す。Wが水素である場合、上記式は、「アルデヒド」基を表す。
【0138】
用語「アルケニル」および「アルキニル」とは、長さおよび考えられる置換が上記のアルキルに類似であるが、それぞれ、少なくとも1個の二重炭素−炭素結合もしくは三重炭素−炭素結合を含む不飽和脂肪族基をいう。用語「アルケニルアルキル」とは、アルケニル基で置換されたアルキル基をいう。用語「アルキニルアルキル」とは、アルキニル基で置換されたアルキル基をいう。
【0139】
用語「アルコキシ」もしくは「アルキルオキシ」とは、基O−アルキルをいう。
【0140】
用語「ハライド」とは、−F、−Cl、−Br、もしくは−Iをいう。
【0141】
用語「スルホネート」とは、当該分野でのその通常の意味が示され、基SOW’であって、W’が電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、もしくはアリールであり得るものをいう。
【0142】
本明細書において使用される場合、用語「置換された」とは、有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことが予測され、「許容可能」とは、当業者に公知の原子価の化学規則の状況にある。いくつかの場合において、「置換された」とは、一般に、水素の、本明細書に記載される置換基での置換をいう。しかし、「置換された」とは、本明細書において使用される場合、例えば、上記「置換された」官能基が、置換を介して異なる官能基になってしまうような、分子が同定される重要な官能基の置換および/もしくは改変を包含しない。例えば、「置換されたアルデヒド」とは、上記アルデヒド部分をなお含まなければならず、かつこの定義においては、例えば、カルボン酸になる置換によって修飾され得ない。広い局面において、上記許容可能な置換基としては、非環式および環式の、分枝状および非分枝状の、炭素環式および複素環式の、芳香族および非芳香族の、有機化合物の置換基が挙げられる。例示的置換基としては、例えば、本明細書に記載されるものが挙げられる。上記許容可能な置換基は、適切な有機化合物について1個以上であってもよいし、同じであっても異なっていてもよい。本発明の目的で、上記ヘテロ原子(例えば、窒素)は、上記ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/もしくは任意の許容可能な置換基を有し得る。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基によっていかなる様式でも限定されることを意図しない。
【0143】
置換基の例としては、アルキル、アリール、アラルキル、環式アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハライド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルバミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態が本明細書で記載されかつ例示されてきたが、当業者は、上記機能を発揮させ、そして/または上記結果および/もしくは本明細書に記載される利点のうちの1つ以上を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、そしてこのようなバリエーションおよび/もしくは改変の各々は、本発明の範囲内にあると考えられる。より一般には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメーター、寸法、材料、および構成が、例示的であることを意味し、そして実際のパラメーター、寸法、材料、および/もしくは構成が、本発明の教示が使用される特定の適用に依存することを容易に理解する。当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書に記載される発明の特定の実施形態に対する多く等価物を認識するかまたは確かめ得る。従って、前述の実施形態は、例示によって示されるに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびそれ対する等価物の範囲内で、具体的に記載されかつ特許請求されたもの以外の方法で本発明が実施され得ることは、理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法に関する。さらに、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/もしくは方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0145】
不定冠詞「a」および「an」とは、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、反対に明確に示されなければ、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0146】
語句「および/または」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、そのように結合されている要素のうちの「いずれかもしくは両方」、すなわち、いくつかの場合においては接続的に(conjunctively)存在し、他の場合には、離接して(disjunctively)存在する要素を意味すると理解されるべきである。反対に明確に示されなければ、具体的に同定される要素と関連しようが関連しまいが、「および/または」節によって具体的に同定される要素以外にも、他の要素が必要に応じて存在し得る。従って、非限定的例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」のような開放系の言葉とともに使用される場合、一実施形態において、Aあり、Bなし(必要に応じて、B以外の要素を含む);別の実施形態において、Bあり、Aなし(必要に応じて、A以外の要素を含む);さらに別の実施形態において、AおよびBの両方(必要に応じて、他の要素を含む);などに言及し得る。
【0147】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または」は、上記で定義される「および/もしくは」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧中の項目を分離する場合、「または」あるいは「および/または」は、包括的である、すなわち、多くのもしくは一覧の項目、および必要に応じてさらなる一覧にない項目のうちの少なくとも1つの包含、しかし、同様に1つより多くを含むと解釈されるものとする。反対に明らかに示される用語のみ(例えば、「〜のうちの1つのみ」もしくは「〜のうちの正確に1つ」、または特許請求の範囲において使用される場合、「〜からなる」は、多くのもしくは一覧の要素の正確に1つの要素の包含をいう。一般に、用語「または」とは、本明細書において使用される場合、排他的な用語(例えば、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、あるいは「〜のうちの正確に1つ」が先行するときは、排他的選択肢を含むこと(すなわち、「一方もしくは他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈されるとされるに過ぎない。「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲において使用される場合、特許法分野において使用されるように、その通常の意味を有するものとする。
【0148】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つ以上の要素の一覧に言及して、語句「少なくとも1つ」とは、上記要素の一覧中の要素のうちのいずれか1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、上記要素の一覧に具体的に列挙された各要素およびあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、上記要素の一覧中の要素のいずれの組み合わせをも排除しないと理解されるべきである。この定義はまた、要素が、必要に応じて、具外的に同定される要素に関連しようと関連しなかろうと、語句「少なくとも1つ」が言及する要素の一覧内に具体的に同定される要素以外に存在し得ることを可能にする。従って、非限定的例として、「AおよびBのうちの少なくとも一方」(もしくは、等しくは、「AまたはBのうちの少なくとも一方」、もしくは等しくは、「Aおよび/もしくはBのうちの少なくとも一方」)は、一実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)A、Bは存在しない(および必要に応じて、B以外の要素を含む)に言及し;別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)B、Aは存在しない(および必要に応じて、A以外の要素を含む)に言及し;さらに別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)A、および少なくとも1つの(必要に応じて、1つより多くを含む)B(および必要に応じて、他の要素を含む)に言及する;など。
【0149】
特許請求の範囲において、および上記明細書において、全ての接続する語句(transitional phrase)(例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「包含する(involving)」、「保持する(holding)」などは、開放系である、すなわち、〜が挙げられるが、これらに限定されない、を意味すると理解されるべきである。接続する語句「〜からなる(consisting of)」および「〜から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、閉鎖系もしくは半閉鎖系の接続する語句であるものとし、それぞれ、米国特許出願審査基準(United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures)、2111.03.節に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属含有前駆触媒を合成するための方法であって、該方法は、
単一反応チャンバ中に全て一緒に含まれる少なくとも3つの成分を反応させて、以下の構造のうちの1つを有する遷移金属含有前駆触媒:
【化43】

を形成する工程を包含し、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【化44】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【化45】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数である、
方法。
【請求項2】
各R1−8は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;Aは、炭素、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Cは、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Dは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、硫黄、セレン、もしくはテルルであり;そしてnは、1〜3の間の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
AおよびBは、窒素であり;Dは、窒素、リン、もしくは硫黄であり;RおよびRは、芳香族環であって、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、メトキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、もしくはフェニルで必要に応じて置換されており;RおよびRは、フェニル、t−ブチルであるか、もしくは一緒に結合されて、6員環を形成し;RおよびRは、水素、t−ブチル、メトキシ、トリフルオロメチルであるか、もしくは一緒に結合されて、アリール環を形成し;RおよびRは、メチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、ヒドロキシルであるか、RおよびRは一緒に結合されて、環を形成するか;またはRおよびRのうちの少なくとも一方は、
【化46】

の一部に結合されて、環を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Mは、Pdであり、RおよびRは、芳香族環であって、該芳香族環は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルもしくはこれらの組み合わせで置換されており、AおよびCは、窒素であり、そしてDは、窒素もしくはリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属含有前駆触媒は、以下の構造:
【化47】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属含有前駆触媒は、以下の構造:
【化48】

を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対イオンは、BF、PF、もしくはArBであり、ここでArはアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記中性配位子は、ニトリル、エーテル、もしくはアルコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記中性配位子は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、もしくはメタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属含有前駆触媒は、酸素の存在下で安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属含有前駆触媒は、水の存在下で安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記3つの成分のうちの1つは、パラジウム含有化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記パラジウム含有化合物は、PdClである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記パラジウム含有化合物は、(CHCN)PdClである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記3つの成分のうちの1つは、N−複素環式カルベン配位子前駆物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造:
【化49】

を有し、
各R1−4は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−4のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;
【化50】

は、単結合もしくは二重結合であり;nは、1〜3の間の整数であり;そしてZは、ハライド、スルホネート、カルボキシレート、BF、PF、もしくはArBであり、ここでArはアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造:
【化51】

を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記N−複素環式カルベン配位子前駆物質は、以下の構造:
【化52】

を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記3つの成分のうちの1つは、以下の構造を有する化合物:
【化53】

であり、
ここで各R5−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR5−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライドもしくはカルボキシレートであり;
【化54】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
塩基をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記塩基は、無機塩基である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基は、カーボネート、ホスフェート、ハライド、もしくはヒドリドである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記塩基は、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウムである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基は、KCOである、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒は、極性溶媒である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒は、アセトニトリルである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
無機塩をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも3つの成分は、パラジウム含有化合物、N−複素環式カルベン配位子前駆物質、および以下の構造を有する化合物:
【化55】

であり、
ここで各R5−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR5−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;
【化56】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも3つの成分は、上記反応させる工程の前に結合によって結合されない、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記方法は、スキーム1:
【化57】

によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
以下の構造のうちの一方を有する化合物:
【化58】

を含む組成物であって、
ここでMは、Pd、Pt、もしくはRuであり;各R1−8は、独立して、存在しないか、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であるか、またはここでR1−8のうちのいずれか2つが結合されて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体を形成し;Aは、炭素もしくはヘテロ原子であり;Bは、ヘテロ原子であり;Cは、アルキルもしくはアリールであり;Dは、ヘテロ原子であり;Xは、ハライド、スルホネート、もしくはカルボキシレートであり;Xは、中性配位子であり;Yは、対イオンであり;
【化59】

は、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;
【化60】

は、単結合もしくは二重結合であり;そしてnは、1〜3の間の整数であり;
ここで該化合物は、以下の構造:
【化61】

【化62】

を有さない、組成物。
【請求項34】
各R1−8は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アリール、ヘテロアリール、もしくはこれらの置換された誘導体であり;Aは、炭素、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Bは、窒素、リン、酸素、もしくは硫黄であり;Dは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、硫黄、セレン、もしくはテルルであり;そしてnは、1〜3の間の整数である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
AおよびBは、窒素であり;Dは、窒素、リン、もしくは硫黄であり;RおよびRは、芳香族環であって、該芳香族環は、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、メトキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメチル、もしくはフェニルで必要に応じて置換されており;RおよびRは、フェニル、t−ブチルであるか、または一緒に結合されて、6員環を形成し;RおよびRは、水素、t−ブチル、メトキシ、トリフルオロメチルであるか、または一緒に結合されて、アリール環を形成し;RおよびRは、メチル、イソプロピル、t−ブチル、フェニル、フェノキシ、ヒドロキシルであるか、RおよびRは一緒に結合されて、環を形成し;またはRおよびRのうちの少なくとも一方は、
【化63】

の一部に結合されて、環を形成する、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
Mは、Pdであり、RおよびRは、芳香族環であって、該芳香族環は、メチル、イソプロピル、もしくはこれらの組み合わせで置換されており、AおよびBは、窒素であり、そしてDは、窒素もしくはリンである、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記化合物は、以下の構造:
【化64】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記化合物は、以下の構造:
【化65】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
前記化合物は、以下の構造:
【化66】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記化合物は、以下の構造:
【化67】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項41】
前記化合物は、以下の構造:
【化68】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記化合物は、以下の構造:
【化69】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項43】
前記化合物は、以下の構造:
【化70】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項44】
前記化合物は、以下の構造:
【化71】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項45】
前記化合物は、以下の構造:
【化72】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項46】
前記化合物は、以下の構造:
【化73】

を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項47】
前記対イオンは、BF、PF、もしくはArBであり、ここでArは、アリールである、請求項33に記載の組成物。
【請求項48】
前記中性配位子は、ニトリル、エーテル、もしくはアルコールを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項49】
前記中性配位子は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、もしくはメタノールである、請求項33に記載の組成物。
【請求項50】
前記化合物は、酸素の存在下で安定である、請求項33に記載の組成物。
【請求項51】
前記化合物は、水の存在下で安定である、請求項33に記載の組成物。
【請求項52】
以下の構造を有する化合物:
【化74−1】

を含む組成物であって、
ここで
【化74−2】

は、単結合もしくは二重結合である、組成物。
【請求項53】
以下の構造を有する化合物:
【化75−1】

を含む組成物であって、
ここで
【化75−2】

は、単結合もしくは二重結合である、組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−531216(P2010−531216A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513170(P2010−513170)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/014393
【国際公開番号】WO2008/156451
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508201466)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (13)
【Fターム(参考)】