説明

N−(ピリジン−2−イル)−スルホンアミド誘導体

本発明は、新規化合物、本明細書に記載した化合物を含む医薬組成物、それらの医薬上許容される塩、水和物及び溶媒和物、並びに医療における、及びヒト11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型酵素(11βHSD1)に作用する医薬の製造のための、該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2005年6月16日出願の米国仮出願第60/691,350号及び2005年12月9日出願の米国仮出願第60/748,778号の利益を請求しており、それらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規化合物、該化合物を含む医薬組成物、並びに医療における該化合物の使用、及びヒト11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型酵素(11βHSD1)に作用する医薬の製造のための該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
半世紀超にもわたって、グルココルチコイドは糖尿病において中心的役割を有することが知られている。例えば、糖尿病動物から下垂体又は副腎を除去すると、糖尿病の最も重症な症状を緩和し、そして血中グルコース濃度を低下させる (Long, C. D. and F. D. W.
Leukins (1936) J. Exp. Med. 63: 465-490; Houssay, B. A. (1942) Endocrinology 30: 884-892)。加えて、グルココルチコイドが肝臓に対するグルカゴンの効果を可能にすることも、よく確立されている。局所グルココルチコイド効果の、従って肝臓でのグルコース生成の重要なレギュレーターとしての11βHSD1の役割は、よく実証されている (例えばJamieson et al. (2000) J. Endocrinol. 165: p. 685-692参照)。肝臓インスリン感受性は、非特異的 11βHSD1 阻害剤カルベノキソロンで治療された健康ヒトボランティアにおいて改善された (Walker, B.R., et al. (1995) J. Clin. Endocrinol. Metab. 80: 3155-3159)。更に、期待された機構は、マウス及びラットを用いた異なる実験により確立されている。これらの研究は、肝臓でのグルコース生成における二つの重要な酵素の mRNA レベル及び活性が低下したこと、すなわち、グルコース新生における律速酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK)、及びグルコース−6−ホスファターゼ (G6Pase) が、グルコース新生及びグリコーゲン分解の最後の共通段階を触媒することを示した。最後に、血糖値及び肝臓でのグルコース生成は、11βHSD1遺伝子がノックアウトされたマウスにおいて減少した。このモデルからのデータはまた、PEPCK及びG6Paseの基礎レベルがグルココルチコイドから独立して調節されるので、11βHSD1の阻害は予測されたように低脂血症を引き起こさないだろうことを確認する (Kotelevtsev, Y., et al., (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 14924-14929)。
【0004】
腹部肥満は、耐糖能障害、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、及びいわゆるメタボリック症候群の他の要因(例えば血圧の上昇、HDL レベルの低下及びVLDLレベルの上昇)と密接に関連している (Montague & O'Rahilly, Diabetes 49: 883-888, 2000)。肥満は、メタボリック症候群のほかに2型糖尿病の大部分 (>80%) においても重要な要因であり、そして主として大網脂肪が重要であるように見える。前脂肪細胞(間質細胞)における酵素の阻害は、脂肪細胞への分化速度を低下させることが示されている。これは、大網脂肪貯蔵の拡大の減少(おそらく縮小)、すなわち、中心性肥満の減少という結果を生じると予測される (Bujalska, I.J., Kumar, S., and Stewart, P.M. (1997) Lancet 349: 1210-1213)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の化合物は 11βHSD1 阻害剤として有用である。
【0006】
一つの態様において、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】

(式中、
1は、H又は(C1−C4)アルキルであり;
2は、H又は(C1−C4)アルキルであり;
3は、H、ハロ、(C1−C6)アルキル又は(C1−C6)アルコキシであり;
そして該化合物がキラル化合物である場合には、該化合物はその(+)鏡像体である)、
及びその医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物を提供する。
【0007】
一つの実施形態において、本発明は、R1がHである化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に向けられる。もう一つの実施形態において、本発明は、R3がH又はCH3である化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に向けられる。更にもう一つの実施形態において、本発明は、R2が−CH2CH3である化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物に向けられる。
【0008】
別の態様において、本発明は、下記の式Iの化合物:
【化2】

(ここで、該化合物がキラル化合物である場合には、該化合物はその(+)鏡像体である)、又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物
からなる群から選択される化合物を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、下記の式IIの化合物:
【化3】

又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、有効量の上記の式I若しくはIIの化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の何れか、及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、哺乳動物に、有効量の上記の式I若しくはIIの化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の何れかを投与することを含む、11βHSD1 阻害剤での治療により利益を得るであろう疾患、症状又は障害(例えば2型糖尿病)の治療方法を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、哺乳動物に、有効量の上記の式I若しくはIIの化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の何れかを投与することを含む、メタボリック症候群、インスリン抵抗症候群、肥満、緑内障、脂質異常症、高血糖症、高インスリン血症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、認知症、うつ病、又は肝臓が標的臓器である疾患の治療方法を提供する。
【0013】
別の態様において、本発明は、哺乳動物に、有効量の上記の式I若しくはIIの化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の何れかを、プロスタノイド受容体作動剤と組み合わせて投与することを含み、該作動剤がラタノプロストである、緑内障の治療方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、医薬として使用するための、式I若しくはIIの化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、11βHSD1 阻害剤での治療により利益を得るであろう疾患、症状又は障害(例えば2型糖尿病)を治療するための医薬の製造における、式I若しくはIIの化合物、又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0016】
〔定義〕
本明細書において用語「含むこと(comprising)」及び「包含すること(including)」は、それらのオープンな非限定的な意味で使用される。
本明細書において用語「アルキル」は、別に指示しない限り、直鎖状又は分枝状部分を有する飽和の1価炭化水素基を指す。
【0017】
本明細書において用語「アルケニル」は、別に指示しない限り、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するアルキル部分を指し、ここで、アルキルは上記定義の通りであり、そして該アルケニル部分のE及びZ異性体を包含する。
【0018】
本明細書において用語「アルキニル」は、別に指示しない限り、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有するアルキル部分を指し、ここで、アルキルは上記定義の通りである。
【0019】
本明細書において用語「アルコキシ」は、別に指示しない限り、O−アルキル基を指し、ここで、アルキルは上記定義の通りである。
本明細書において用語「アミノ」は、別に指示しない限り、−NH2 基及びN原子の任意の置換体を指す。
【0020】
本明細書において用語「ハロゲン」及び「ハロ」は、別に指示しない限り、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素を指す。
本明細書において用語「トリフルオロメチル」は、別に指示しない限り、−CF3 基を指す。
【0021】
本明細書において用語「トリフルオロメトキシ」は、別に指示しない限り、−OCF3基を指す。
本明細書において用語「シアノ」は、別に指示しない限り、−CN基を指す。
【0022】
本明細書において用語「Ms」は、別に指示しない限り、メタンスルホネート(−SO2CH3)を指す。
本明細書において用語「Me」は、別に指示しない限り、メチルを指す。
本明細書において用語「MeOH」は、別に指示しない限り、メタノールを指す。
【0023】
本明細書において用語「Et」は、別に指示しない限り、エチルを指す。
本明細書において用語「Et2O」は、別に指示しない限り、ジエチルエーテルを指す。
本明細書において用語「EtOH」は、別に指示しない限り、エタノールを指す。
本明細書において用語「Et3N」は、別に指示しない限り、トリエチルアミンを指す。
【0024】
本明細書において用語「TEA」は、別に指示しない限り、トリエチルアミンを指す。
本明細書において用語「EtOAc」は、別に指示しない限り、酢酸エチルを指す。
本明細書において用語「AlMe2Cl」は、別に指示しない限り、ジメチルアルミニウムクロリドを指す。
【0025】
本明細書において用語「Ac」は、別に指示しない限り、アセチルを指す。
本明細書において用語「TFA」は、別に指示しない限り、トリフルオロ酢酸を指す。
本明細書において用語「HATU」は、別に指示しない限り、N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェートを指す。
【0026】
本明細書において用語「THF」は、別に指示しない限り、テトラヒドロフランを指す。
本明細書において用語「TlOH」は、別に指示しない限り、水酸化タリウム(I)を指す。
本明細書において用語「TlOEt」は、別に指示しない限り、タリウム(I)エトキシドを指す。
【0027】
本明細書において用語「Pcy3」は、別に指示しない限り、トリシクロヘキシルホスフィンを指す。
本明細書において「Pd2(dba)3」は、別に指示しない限り、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)を指す。
【0028】
本明細書において用語「Pd(OAc)2」は、別に指示しない限り、酢酸パラジウム(II)を指す。
本明細書において「Pd(PPh3)2Cl2」は、別に指示しない限り、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を指す。
【0029】
本明細書において用語「Pd(PPh3)4」は、別に指示しない限り、テトラキス (トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を指す。
本明細書において用語「Pd(dppf)Cl2」は、別に指示しない限り、 (1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン)ジクロロパラジウム(II)のジクロロメタンとの錯化合物(1:1)を指す。
【0030】
本明細書において用語「G6P」は、別に指示しない限り、グルコース−6−リン酸を指す。
本明細書において用語「NIDDM」は、別に指示しない限り、非インスリン依存性糖尿病を指す。
【0031】
本明細書において用語「NADPH」は、別に指示しない限り、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型を指す。
本明細書において用語「CDCl3又はCHLORFORM-D」は、別に指示しない限り、デューテロクロロホルムを指す。
【0032】
本明細書において用語「CD3OD」は、別に指示しない限り、デューテロメタノールを指す。
本明細書において用語「CD3CN」は、別に指示しない限り、デューテロアセトニトリルを指す。
【0033】
本明細書において用語「DEAD」は、別に指示しない限り、アゾジカルボン酸ジエチルを指す。
本明細書において用語「TsCH2NC」は、別に指示しない限り、トシルメチルイソシアニドを指す。
【0034】
本明細書において用語「CISO3H」は、別に指示しない限り、クロロスルホン酸を指す。
本明細書において用語「DMSO-d6 又は DMSO-D6」は、別に指示しない限り、デューテロジメチルスルホキシドを指す。
【0035】
本明細書において用語「DME」は、別に指示しない限り、1,2−ジメトキシエタンを指す。
本明細書において用語「DMF」は、別に指示しない限り、N,N−ジメチルホルムアミドを指す。
【0036】
本明細書において用語「DMSO」は、別に指示しない限り、ジメチルスルホキシドを指す。
本明細書において用語「DIPEA」は、別に指示しない限り、ジイソプロピルエチルアミンを指す。
【0037】
本明細書において用語「DI」は、別に指示しない限り、脱イオン化を指す。
本明細書において用語「KOAc」は、別に指示しない限り、酢酸カリウムを指す。
本明細書において用語「ニート」は、別に指示しない限り、溶剤の不存在を指す。
本明細書において用語「mmol」は、別に指示しない限り、ミリモルを指す。
本明細書において用語「equiv」は、別に指示しない限り、当量を指す。
本明細書において用語「mL」は、別に指示しない限り、ミリリットルを指す。
本明細書において用語「U」は、別に指示しない限り、単位を指す。
本明細書において用語「mm」は、別に指示しない限り、ミリメートルを指す。
本明細書において用語「g」は、別に指示しない限り、グラムを指す。
本明細書において用語「kg」は、別に指示しない限り、キログラムを指す。
本明細書において用語「h」は、別に指示しない限り、時間を指す。
本明細書において用語「min」は、別に指示しない限り、分を指す。
本明細書において用語「μL」は、別に指示しない限り、マイクロリットルを指す。
本明細書において用語「μM」は、別に指示しない限り、マイクロモル濃度を指す。
本明細書において用語「μm」は、別に指示しない限り、マイクロメートルを指す。
本明細書において用語「M」は、別に指示しない限り、モル濃度を指す。
本明細書において用語「N」は、別に指示しない限り、規定度を指す。
本明細書において用語「nm」は、別に指示しない限り、ナノメートルを指す。
本明細書において用語「nM」は、別に指示しない限り、ナノモル濃度を指す。
本明細書において用語「amu」は、別に指示しない限り、原子質量単位を指す。
本明細書において用語「℃」は、別に指示しない限り、セ氏目盛りを指す。
本明細書において用語「m/z」は、別に指示しない限り、質量/電荷比を指す。
本明細書において用語「wt/wt」は、別に指示しない限り、質量/質量を指す。
本明細書において用語「v/v」は、別に指示しない限り、容量/容量を指す。
本明細書において用語「mL/min」は、別に指示しない限り、ミリリットル/分を指す。
本明細書において用語「UV」は、別に指示しない限り、紫外線を指す。
【0038】
本明細書において用語「APCI-MS」は、別に指示しない限り、大気圧化学イオン化質量分析を指す。
本明細書において用語「HPLC」は、別に指示しない限り、高速液体クロマトグラフィーを指す。
本明細書において用語「LC」は、別に指示しない限り、液体クロマトグラフィーを指す。
本明細書において用語「LCMS」は、別に指示しない限り、液体クロマトグラフィー質量分析を指す。
【0039】
本明細書において用語「SFC」は、別に指示しない限り、超臨界流体クロマトグラフィーを指す。
本明細書において用語「sat」は、別に指示しない限り、飽和を指す。
本明細書において用語「aq」は、別に指示しない限り、水性を指す。
本明細書において用語「ELSD」は、別に指示しない限り、蒸発光散乱検出を指す。
本明細書において用語「MS」は、別に指示しない限り、質量分析を指す。
本明細書において用語「HRMS (ESI)」は、別に指示しない限り、高分解能質量分析(エレクトロスプレーイオン化)を指す。
【0040】
本明細書において用語「Anal. 」は、別に指示しない限り、元素分析を指す。
本明細書において用語「Calcd」は、別に指示しない限り、計算値を指す。
本明細書において用語「NT」は、別に指示しない限り、試験せずを指す。
本明細書において用語「NA」は、別に指示しない限り、試験せずを指す。
本明細書において用語「RT」は、別に指示しない限り、室温を指す。
本明細書において用語「Mth.」は、別に指示しない限り、方法を指す。
本明細書において用語「Celite(登録商標)」は、別に指示しない限り、Los Angeles, California USA 所在の World Minerals から市販されている白色固体珪藻土濾過剤を指す。
【0041】
本明細書において用語「Ki」は、別に指示しない限り、酵素阻害定数の値を指す。
本明細書において用語「Ki app」は、別に指示しない限り、見掛けKiを指す。
本明細書において用語「IC50」は、別に指示しない限り、少なくとも50%の酵素阻害のために必要な濃度を指す。
【0042】
本明細書において用語「置換された」は、別に指示しない限り、特定の基又は部分が1個又はそれ以上の置換基を有する部分を指す。用語「置換されていない」は、特定の基が置換基を持たないことを意味する。
【0043】
本明細書において用語「場合により置換された」は、別に指示しない限り、特定の基が置換されていないか、又は1個又はそれ以上の置換基で置換されていることを指す。
【0044】
本発明によれば、本明細書の幾つかの構造式において、炭素原子及びそれらに結合した水素原子は明確に描かれておらず、例えば、
【化4】

はメチル基を示し、
【化5】

はエチル基を示し、
【化6】

はシクロペンチル基を示す、その他である。
【0045】
本明細書において用語「シクロアルキル」は、別に指示しない限り、本明細書に記載した、合計で3〜10個の炭素原子、好適には5〜8個の環炭素原子を含有する、非芳香族の、飽和若しくは部分飽和の、単環式若しくは縮合した、スピロの若しくは縮合していない、二環式又は三環式の炭化水素を指す。シクロアルキルの例は、3〜10個の炭素原子を有する環、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びアダマンチルを包含する。
【0046】
本明細書において用語「アリール」又は「(C6−C10)アリール」は、別に指示しない限り、芳香族炭化水素から1個の水素を除去することにより誘導される有機基、例えばフェニル又はナフチルを指す。
【0047】
本明細書において用語「ヘテロアリール」又は「(5−10)員ヘテロアリール」は、別に指示しない限り、それぞれO、S及びNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する有機基であって、各ヘテロアリール基がその環系にそれぞれ5〜10個の原子を有し、但し、該基の環は二つの隣接するO又はS原子を含有しないものを指す。ヘテロアリール基は、ベンゾ縮合環系を包含する。5員ヘテロ環式基の例はチアゾリルであり、7員ヘテロ環式基の例はアゼピニルであり、そして10員ヘテロ環式基の例はキノリニルである。ヘテロアリール基の他の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサニリル、ナフチリジニル及びフロピリジニルである。
【0048】
別に指示しない限り、用語「オキソ」は、=Oを指す。
【0049】
本明細書において本発明の化合物は、式I及びIIの化合物の溶媒和物、水和物及び医薬上許容される塩、並びにそれらの特定の実施形態を包含することを意図している。
【0050】
本明細書において「溶媒和物」は、特定の化合物の医薬上許容される溶媒和物形態であって、このような化合物の生物学的有効性を保持しているものを意味することを意図している。溶媒和物の例は、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、酢酸又はエタノールアミンと一緒になった本発明の化合物を包含する。
【0051】
本明細書においてフレーズ「医薬上許容される塩」は、別に指示しない限り、特許請求した化合物に存在することのある酸性基又は塩基性基の塩を包含する。性質が塩基性である特許請求した化合物は、種々の無機酸及び有機酸との多種多様な塩を形成することができる。本発明の塩についての更なる説明は以下に記載される。
【0052】
本明細書において用語「標的臓器が肝臓である疾患」は、別に指示しない限り、糖尿病、肝臓炎、肝臓癌、肝臓線維症及びマラリアを意味する。
【0053】
本明細書において用語「メタボリック症候群」は、別に指示しない限り、乾癬、糖尿病、傷の治癒、炎症、神経変性性疾患、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、フェニルケトン尿症、高サルコシン血症、チミンウラシル尿症、スルフィン尿症、イソ吉草酸血症、サッカロピン尿症、4−ヒドロキシ酪酸尿症、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症、及びピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠乏症を意味する。
【0054】
本明細書において用語「治療すること」は、別に指示しない限り、このような用語が適用される障害若しくは症状、又はこのような障害若しくは症状の一つ又はそれ以上の徴候の進行を逆転すること、軽減すること、抑制すること、又は上記の障害、症状若しくは徴候を予防することを指す。本明細書において用語「治療」は、別に指示しない限り、「治療すること」が上記直前で定義されたとおりである治療することの行為を指す。
【0055】
本明細書において用語「調節する」又は「調節すること」は、モジュレーターがステロイド/甲状腺スーパーファミリーの構成員に対して直接的(受容体にリガンドとして結合することによる)又は間接的(リガンドの前駆体又は前駆体からのリガンドの生成を促進するインデューサーとして)の何れかで、ホルモン発現制御下に維持された遺伝子の発現を誘発する能力、又はこのような制御下に維持された遺伝子の発現を抑制する能力を指す。
【0056】
本明細書においてフレーズ「眼疾患」は、別に指示しない限り、緑内障、滲出性(ウェット AMD)及び非滲出性(ドライ AMD)を包含する加齢関連黄斑変性、脈絡膜血管新生、網膜症、例えば糖尿病性網膜症、網膜色素変性及び未熟網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜炎、ブドウ膜炎、類嚢胞性黄斑浮腫、緑内障を包含する眼の疾患、及び眼の他の疾患又は症状を指す。
【0057】
本明細書において用語「肥満症」又は「肥満」は、彼/彼女の年齢、性別及び身長の割には平均体重が少なくとも約20〜30%超過している個体を一般的に指す。技術的には、「肥満」は、男性については、ボディー・マス・インデックスが 27.8kg/m2より大きい個体、そして女性については、ボディー・マス・インデックスが 27.3kg/m2より大きい個体と定義される。当業者は、本発明の方法が上記の基準に該当する人々に限られないことを容易に認識する。実際に、本発明の方法は、これらの伝統的な基準に該当しない個体、例えば肥満になりやすい個体によっても有利に実施できる。
【0058】
本明細書において用語「炎症性障害」は、別に指示しない限り、関節リウマチ、強直性脊髄炎、乾癬性関節炎、乾癬、軟骨石灰化症、痛風、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛及び悪液質のような障害を指す。
【0059】
本明細書においてフレーズ「治療有効量」は、別に指示しない限り、研究者、獣医師、医師又はその他によって追求されている組織、システム、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を誘発するであろう薬剤又は医薬品の量を指す。
【0060】
本明細書においてフレーズ「血糖値を低下するのに有効な . . . 量」は、別に指示しない限り、所望の効果を達成するのに十分な高い循環濃度を与えるのに十分である化合物のレベルを指す。このような濃度は、典型的には約10nMから2μMまでの範囲内にあり;約100nMから500nMまでの範囲の濃度が好ましい。先に述べたように、上記の異なる化合物の活性はかなり変化し得るので、そして個々の被験者は症状の多種多様な重症度を提示するので、治療に対する被験者の反応を決定し、それにより用量を変更することは専門家に委ねられる。
【0061】
本明細書においてフレーズ「インスリン抵抗性」は、別に指示しない限り、全身又は個々の組織、例えば骨格筋組織、心筋組織、脂肪組織若しくは肝臓組織におけるインスリンの作用に対する感受性の低下を指す。インスリン抵抗性は、糖尿病を有するか又は有しない多くの個体において生じる。
【0062】
本明細書においてフレーズ「インスリン抵抗症候群」は、別に指示しない限り、インスリン抵抗性、高インスリン血症、NIDDM、動脈性高血圧、中心性(内臓)肥満及び脂質異常症を包含する一群の徴候を指す。
【0063】
本発明の化合物内に含有される特定の官能基は、バイオイソステリック基で、すなわち、親基と類似した空間的又は電気的要件を有するが、異なるか又は改善された物理化学的又は他の特性を示す基で置き換えることができる。好適な例は当業者に周知であり、そして Patini et al., Chem. Rev, 1996, 96, 3147-3176 及びそこで引用された文献に記載された部分を包含するが、これらに限定されない。
【0064】
同位体標識した本発明化合物は、以下のスキーム及び/又は実施例に開示された手順を行うことにより、同位体標識していない試薬の代わりに同位体標識した入手容易な試薬を用いることによって、一般的に製造される。
【0065】
本発明の他の態様、利点及び特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【0066】
下記のスキームは、本発明の化合物の製造を説明する。
【化7】

【0067】
上記のスキーム1を参照して、式Aの化合物は、式Bの化合物をAr−スルホニルハライド、Ar−スルフィニルハライド又はAr−スルフィネートと、好適な塩基、例えばアミンの存在下に好適な溶剤中で反応させることにより製造することができる。好適な塩基は、ピリジン、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミンを包含する。好適な溶剤は、ピリジン、ジクロロメタン又はTHFを包含する。上記の反応は、用いられる溶剤系に応じて、ほぼ室温(約20℃)で又は加熱して、適切な時間、例えば2時間〜16時間行うことができる。反応が実質的に終了した後、塩基を真空で除去することができ、そして生成した残留物を慣用の精製技術を用いて精製することができる。
【0068】
上記の式Iの化合物の何れも、標準的な化学操作により他の類似の化合物に変換することができる。全ての出発物質、試薬及び溶剤は市販されており、そして別に述べない限り当業者に公知である。これらの化学操作は当業者に公知であり、そして (a) T. W. Greene and P.G.M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Second Edition, John Wiley and Sons, New York, 1991 に概説された方法による保護基の除去;(b) 脱離基(ハライド、メシレート、トシレート等)を第一級若しくは第二級アミン、チオール又はアルコールで置き換えて、それぞれ第二級若しくは第三級アミン、チオエーテル又はエーテルを形成すること;(c) 第一級又は第二級アミンをイソシアネート、酸クロリド(又の活性化されたカルボン酸誘導体)、アルキル/アリールクロロホルメート又はスルホニルクロリドで処理して、対応する尿素、アミド、カルバメート又はスルホンアミドを与えること;(d) アルデヒドを用いて第一級又は第二級アミンを還元的アミノ化することを包含する。
【0069】
本発明の化合物は不斉炭素原子を有することがある。ジアステレオマー混合物は、それらの物理化学的相違に基づいて、当業者に公知の方法により、例えばクロマトグラフィー又は分別結晶化により、それらの個々のジアステレオマーに分離することができる。鏡像体は、鏡像体混合物を適切な光学活性化合物(例えばアルコール)との反応によりジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、そして個々のジアステレオマーを対応する純粋な鏡像体に変換する(例えば加水分解する)ことによって分離することができる。別に除外しない限り、このような全ての異性体は、ジアステレオマー混合物及び純粋な鏡像体を含めて、本発明の一部であると考えられる。
【0070】
性質が塩基性である本発明化合物は、種々の無機酸及び有機酸と多種多様な異なる塩を形成することができる。このような塩は、動物に投与するためには医薬上許容される必要があるが、実際には、最初に本発明の化合物を反応混合物から医薬上許容されない塩として単離し、次いで後者をアルカリ試薬での処理により単純にもとの遊離塩基化合物に変換し、その後に後者の遊離塩基を医薬上許容される酸付加塩に変換することが、しばしば望ましい。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を水性溶剤媒質又は好適な有機溶剤、例えばメタノール若しくはエタノール中で、実質的に当量の選択した鉱酸又は有機酸で処理することによって容易に製造することができる。溶剤を注意深く蒸発させると、所望の個体の塩が容易に得られる。所望の酸塩は、有機溶剤中の遊離塩基の溶液から適切な鉱酸又は有機酸の添加により沈殿させることもできる。
【0071】
性質が酸性である化合物は、種々の薬理的に許容される陽イオンと塩基塩を形成することができる。このような塩の例は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、特にナトリウム及びカリウム塩を包含する。これらの塩は全て慣用の技術により製造される。本発明の医薬上許容される塩基塩を製造するために用いられる化学塩基は、本発明の酸性化合物と無毒性の塩基塩を形成するものである。このような無毒性塩基塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム及び又はマグネシウム等のような薬理学的に許容される陽イオンから誘導されるものを包含する。これらの塩は、相当する酸性化合物を、所望の薬理学的に許容される陽イオンを含有する水溶液で処理し、次いで生成した溶液を好ましくは減圧下に蒸発乾固することにより容易に製造することができる。別法として、それらは、酸性化合物の低級アルカノール溶液を所望のアルカリ金属アルコキシドと一緒に混合し、次いで生成した溶液を前記と同じ方法で蒸発乾固することによっても製造することができる。何れの場合にも、完全な反応及び所望の最終化合物の最大収量を確保するために、化学量論的量の試薬が好ましく用いられる。
【0072】
本発明の化合物は11βHSD1のモジュレーターであり得る。本発明の化合物は、11βHSD1により仲介されるプロセスを調節することができ、これらは、本明細書に記載の 11βHSD1 阻害剤に反応する受容体又は受容体の組み合わせにより仲介される生物学的、生理学的、内分泌学的及び他の身体プロセス(例えば、糖尿病、脂質異常症、肥満、耐糖能異常、高血圧、脂肪肝、糖尿病合併症(例えば網膜症、腎症、神経症、白内障及び冠動脈疾患等)、アテローム性動脈硬化症、妊娠糖尿病、多嚢胞性卵巣症候群、心臓血管疾患(例えば虚血性心疾患等)、アテローム性動脈硬化症又は虚血性心疾患により誘発される細胞傷害(例えば卒中により誘発される脳傷害等)、痛風、炎症性疾患(例えば骨関節炎、疼痛、発熱、関節リュウマチ、炎症性腸炎、挫創、日焼け、乾癬、湿疹、アレルギー疾患、喘息、GI潰瘍、悪液質、自己免疫疾患、膵臓炎等)、癌、骨粗鬆症及び白内障を指す。このようなプロセスの調節はインビトロ又はインビボで行うことができる。インビボ調節は広範囲の被験者、例えばヒト、ネズミ、ヒツジ、ブタ、ウシ等で行うことができる。
【0073】
本発明に係る化合物は、11βHSD1 酵素の調節を伴う幾つかの適応症に使用することができる。従って、本発明に係る化合物は、認知症(WO97/07789 参照)、骨粗鬆症(Canalis E 1996, “Mechanisms of Glucocorticoid Action in Bone: Implications to Glucocorticoid-Induced Osteoporosis”, Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism, 81, 3441-3447 参照)に対して使用することができ、そしてまた免疫系の障害(Franchimont, et. al, “Inhibition of Th1 Immune Response by Glucocorticoids: Dexamethasone Selectively Inhibits IL-12-induced Stat 4 Phosphorylation in T Lymphocytes”, The Journal of Immunology 2000, Feb 15, vol 164 (4), pages 1768-74 参照)及び上記の適応症にも使用することができる。
【0074】
単離されたネズミ膵臓β細胞における 11βHSD1 の阻害は、グルコース刺激インスリン分泌を改善する(Davani, B., et al. (2000) J. Biol. Chem. Nov. 10, 2000; 275(45):
34841-4)。グルココルチコイドは、膵臓インスリン放出をインビボで減少させることが既に知られている(Billaudel, B. and B. C. J. Sutter (1979) Horm. Metab. Res. 11:
555-560)。従って、11βHSD1 の阻害は、肝臓及び脂肪に対する効果のほかに、糖尿病治療のための他の有益な効果を生じることが予測される。
【0075】
最近のデータは、グルココルチコイド標的受容体及び 11βHSD1 酵素のレベルが緑内障への感受性を決定することを示唆している(Stokes, J., et al., (2000) Invest. Ophthalmol. 41:1629-1638)。更に、11βHSD1 の阻害は眼内圧を低下させるための新規なアプローチとして最近提示された(Walker E. A., et al, poster P3-698 at the Endocrine society meeting Jun. 12-15, 1999, San Diego)。11βHSD1 の非特異的阻害剤であるカルベノキソロンの摂取は、正常被験者において眼内圧を20%だけ低下させることが示された。眼内では、11βHSD1 の発現は、角膜上皮及び角膜の非色素上皮の基底細胞(水溶液生成の部位)、毛様体筋、並びに虹彩の括約筋及び散大筋に限局している。それとは対照的に、アイソザイム 11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型は、非色素毛様体上皮及び角膜内皮において高度に発現される。排液部位である小柱網では、どの酵素も見出されない。従って、11βHSD1 は、排液よりはむしろ水溶液生成において役割を有することが示唆されるが、これがグルココルチコイド若しくはミネラルコルチコイド受容体、又は両者の活性化の妨害によるかどうかは、現在のところ未知である。
【0076】
胆汁酸は 11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型を阻害する。これは、尿代謝物の割合の研究により示されるように (Quattropani C, Vogt B, Odermatt A, Dick B, Frey B M, Frey F J. 2001. J Clin Invest. Nov; 108(9): 1299-305. “Reduced Activity of 11-beta-hydroxysteroid dehydrogenase in Patients with Cholestasis”)、全体的身体平衡がコルチゾンよりもコルチゾールの方にシフトする結果を生じる。選択的阻害剤により肝臓における11βHSD1の活性を低下させることは、この不均衡を逆転させ、そして高血圧のような症状に強く対抗すると予測されるが、待ち受けている外科治療は胆道閉塞を除去する。
【0077】
本発明の化合物はまた、グルコース利用障害及びインスリン抵抗性に関連する他のメタボリック障害の治療に有用であり、これらは NIDDM の重大な末期合併症、例えば糖尿病性血管症、アテローム性動脈硬化症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症、及び糖尿病性眼科系合併症、例えば網膜症、白内障形成及び緑内障、並びに NIDDM に結びついた他の多くの症状、例えば脂質異常症グルココルチコイド誘発インスリン抵抗性、脂質異常症、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、高血糖症、高脂血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高インスリン血症及び高血圧を包含する。これらの症状の簡単な定義は、任意の医学辞典、例えば Stedman's Medical Dictionary (10th Ed.) から入手することができる。
【0078】
〔11βHSD1 活性の阻害〕
11βHSD1 酵素アッセイ
11βHSD1アッセイは、200mMのNaCl、0.02%のn−ドデシルβ−D−マルトシド、5% のグリセロール、5mMのβ−メルカプトエタノールを含有する 100mM トリエタノールアミン緩衝液 pH 8.0の中で行った。Kiapp値を決定するための典型的な反応は、Corning(登録商標)U底96ウェルプレートにおいて室温で行ったが、下記のように説明される:11βHSD1 酵素 (最終濃度5nM) をアッセイ緩衝液中で阻害剤及び NADPH (最終濃度 500μM) の存在下に少なくとも30分間前インキュベートした。前インキュベーションが終了したとき、再生系 (2mMのグルコース−6−リン酸、1U/mLのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ及び6mMのMgCl2、報告した全ての濃度はアッセイ緩衝液中の最終濃度である)、及び3H−コルチゾン (最終濃度 200nM) の添加により反応を開始した。60分後に、60μLのアッセイ混合物を第二の96ウェルプレートに移し、同量のジメチルスルホキシドと混合して反応を停止した。反応混合物からの15μLのアリコートを、Tampa, Floridaから市販されているIN/USからのβ−RAM モデル 3 Radio-HPLC 検出器を備えた、Cohesive Technologies により開発されFranklin, Massachusettsから市販されている自動ハイスループット液体クロマトグラフィー装置に接続された C-18 カラム (Varian からの Polaris C18-A, 50×4.6mm, 5μ, 180 オングストローム) に負荷した。43:57のメタノール:水 (v/v) の定組成混合物を1.0mL/minの流速で使用することにより、基質及び生成物のピークを分離した。
【0079】
反応を60minで停止し、そして種々の濃度の阻害剤の不存在下及び存在下の生成物形成の面積を測定することによって、初期反応速度を測定した。Morrison, JF. により開発
された強束縛阻害剤のための方程式 (Morrison JF. Biochim Biophys Acta. 1969; 185:
269-86) を用いて、Kiapp値を決定した:
【数1】

式中、vi及びvoは、それぞれ阻害剤の存在下及び不存在下のコルチゾール形成の速度であり、Iは阻害剤濃度であり、Eはアッセイ緩衝液中の11βHSD1濃度である。報告した全ての濃度はアッセイ緩衝液中の最終濃度である。
【0080】
Morrison, J.F., “Kinetics of the reversible inhibition of enzyme-catalysed reactions by tight-binding inhibitors,” Biochim Biophys Acta., 1969; 185: 269-86 も参照されたい。
【0081】
11βHSD1 酵素に対する本発明の化合物のKiapp値は、典型的には約10nM〜約10μMにあってよい。試験した本発明の化合物は全て、上記のSPAアッセイの少なくとも一つにおいて1μM未満、好ましくは100nM未満のKiapp値を有する。化合物の一定の好ましい群は、種々の 11−β−HSD に対して異なる選択性を有する。好ましい化合物の一つの群は、11β−HSD−2よりも11βHSD1に対して選択的活性を有する。化合物の別の好ましい群は、11βHSD1よりも11βHSD−2に対して選択的活性を有する。(Morrison JF. Biochim Biophys Acta. 1969; 185: 269-86)。
【0082】
阻害のパーセンテージは、100mMのトリエタノールアミン緩衝液 pH 8.0、200mMのNaCl、0.02%のn−ドデシルβ−D−マルトシド及び5mMのβ−ME の中で行った。典型的な反応は、Corning(登録商標)U底 96ウェルプレートにおいて行ったが、下記のように説明される:11βHSD1 酵素 (最終濃度 5nM) をアッセイ緩衝液中で阻害剤及び NADPH (最終濃度 500μM) の存在下に少なくとも30分間前インキュベートした。前インキュベーションが終了したとき、再生系 (2mMのグルコース−6−リン酸、1U/mLのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ及び6mMのMgCl2 、報告した全ての濃度はアッセイ緩衝液中の最終濃度である)、及び3H−コルチゾン (最終濃度 200nM) の添加により反応を開始した。60分後に、60μLのアッセイ混合物を第二の96ウェルプレートに移し、同量のジメチルスルホキシドと混合して反応を停止した。反応混合物からの15μLのアリコートを、Tampa, Floridaから市販されている IN/US からのβ-RAM モデル 3 Radio-HPLC 検出器を備えた、Cohesive Technologies により開発され Franklin, Massachusettsから市販されている自動ハイスループット液体クロマトグラフィー装置に接続された C-18 カラム (Varian からの Polaris C18-A, 50×4.6mm, 5μ, 180 オングストローム) に負荷した。43:57 のメタノール:水 (v/v) の定組成混合物を1.0mL/min の流速で使用することにより、基質及び生成物のピークを分離した。
【0083】
パーセント阻害は、次の方程式に基づいて計算した:(100−(阻害剤を加えた3H−コルチゾールのピーク面積/阻害剤を加えない3H−コルチゾールのピーク面積)× 100)。化合物の一定の群は、種々の 11−β−HSD 酵素に対して異なる選択性を有する。化合物の一つの群は、11βHSD1−2 酵素よりも 11βHSD1 酵素に対して選択的活性を有する。一方、化合物の別の群は、11βHSD1 酵素よりも 11βHSD−2 酵素に対して選択的活性を有する。
【0084】
[1,2−3H]−コルチゾンは、St. Louis, Missouri USA の American Radiolabeled Chemicals Inc. から市販されている。NADPH、グルコース−6−リン酸及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼは Sigma(登録商標)から購入した。
【0085】
HEK293−11βHSD1/GRE−ルシフェラーゼ細胞に基づくアッセイ
また、11βHSD1 酵素活性の阻害を、ヒト 11βHSD1 を過剰発現するヒト腎臓 HEK293 安定トランスフェクト細胞、及びグルココルチコイドで活性化されたグルココルチコイド受容体 (GRE) の特定認識のための DNA 配列を含有するリポータープラスミドを用い、Bujalska et al, Human 11β-hydroxysteroid dehydrogenase: Studies on the stably transfected isoforms and localization of the type 2 isozyme within renal tissue, Steroids, 62(1), 1991, 77-82 に記載されたのと同様の方法を用いて測定した。これらの配列を、11βHSD1 酵素調節の定量を可能にするルシフェラーゼリポーター遺伝子 (Luc) に融合した。11βHSD1 は、不活性から活性グルココルチコイドに(ヒトではコルチゾンからコルチゾールに)変換に関与する。コルチゾール(コルチゾンではない)は、グルココルチコイド受容体 (GR) を結合して活性化する。これは結果としてルシフェラーゼの活性化及び光の発生(アッセイの読み出し)をもたらすだろう。11βHSD1を阻害する能力を有する化合物は、コルチゾン対照(酵素基質)と比較して、ルシフェラーゼ信号を減少させるだろう。
【0086】
細胞を、384ウェル平底白色ポリスチレン TC−処理マイクロプレートに、血清不含 DME 培地中に20,000細胞/ウェルで40μl/ウェルの量で平板培地した。プレートを37℃、5%の CO2で一夜インキュベートした後、阻害剤化合物を加えた。種々の濃度の阻害剤化合物を 10% (v/v) ジメチルスルホキシド (5μL/ウェル) に加え、次いで3μMのコルチゾン (5μL/ウェル) を加え、細胞を37℃ (5% CO2) で6時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、25μL/ウェルの SteadyLite HTSを加え、プレートをシェーカー上で室温で10min インキュベートした。次いでプレートを Top Count 上で 384HSD1 プログラムを用いて読み取った。光信号の50%阻害を引き起こす阻害剤化合物の濃度を、特別注文の Excel Macro により決定した。全ての結果を100%活性化対照と、すなわちコルチゾンのみで(阻害剤を加えずに)処理した細胞と比較した。
【0087】
ヒト Fa2N-4 不死化細胞に基づくアッセイ
Fa2N-4 は、ヒト肝臓細胞から誘導された細胞系であり、MultiCell Technologies, Inc. により開発され (米国特許第6,107,043号)、そして XenoTech LLC によって独占的ライセンスにより商品化された。これらの細胞は、形態学的及び機能的の両方で、初代培養物と非常に類似しており、それ故に正常ヒト肝臓細胞の多くの特性を示し、従って薬剤の発見を支持するための実際上無制限のかつ再現可能な細胞源を提供する。11βHSD1 酵素活性の阻害を、この細胞モデルにおいて、コルチゾン(酵素基質)及び可能性のある酵素阻害剤で一緒に処理した培養物中のコルチゾール(酵素産物)蓄積の減少を測定することによって評価した。コルチゾール信号を、処理した細胞の上澄み液中で Correlate-Enzyme Immunoassay (EIA)TMCortisol キット (Assay Designs, Inc.) により定量的に決定した。
【0088】
細胞を、96ウェル平底コラーゲン被覆マイクロプレートに、抗生物質(ペニシリン−ストレプトマイシン)を含有し、そして10%の加熱不活化ウシ胎仔血清を補充した200μL/ウェルのMFETM (Multi-functional Enhancing − XenoTech, LLC) 培地中、20,000細胞/ウェルで平板培地した。プレートを 37℃、5%のCO2で一夜インキュベートした。翌日に、かつコルチゾン及び阻害剤化合物を加える前に、培地を、抗生物質のみを含有する Hepatocyte Basal Medium (HBM − Cambrex Bio ScienceWalkersVille, Inc) と交換した。種々の濃度の阻害剤化合物 (20μL/ウェル) と共に 30分間前インキュベートし、次いで5μMのコルチゾン (20μL/ウェル) を加え、そして細胞を 37℃、5%のCO2で一夜インキュベートした。インキュベーションの終わりに、100μL の各上澄み液を、Assay Designs からの Cortisol-EIA キットを用いて製造業者の指示によりコルチゾール含有量について分析した。プレートをプレートリーダー (Spectra MAX PLUS − Molecular Devices Corporation) 上で405nmで読み取り、580nmで補正した。全ての結果を、100% 活性化対照と、すなわちコルチゾンのみで(阻害剤を加えずに)処理した細胞と比較した。
【0089】
医薬組成物/製剤、投与量及び投与方式
特許請求した化合物の医薬上許容される塩は、その酸付加塩及び塩基塩を包含する。
【0090】
好適な酸付加塩は、無毒性塩を形成する酸から形成される。その例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/クロリド、臭化水素酸塩/ブロミド、ヨウ化水素酸塩/ヨージド、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプチル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩及びキシナホ酸塩を包含する。
【0091】
好適な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成される。その例は、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン及び亜鉛の塩を包含する。
【0092】
酸及び塩基の半塩、例えば半硫酸塩及び半カルシウム塩も形成できる。
【0093】
好適な塩についての概説に関しては、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use by Stahl and Wermuth (Wiley-VCH, 2002) を参照されたい。
【0094】
特許請求した化合物の医薬上許容される塩は、下記の三つの方法の一つ又はそれ以上によって製造することができる:
(i) 特許請求した化合物を所望の酸又は塩基と反応させることによる;
(ii) 特許請求した化合物の好適な前駆体から酸若しくは塩基に不安定な保護基を除去するか、又は好適な環状前駆体、例えばラクトン若しくはラクタムを、所望の酸若しくは塩基を用いて開環することによる;又は
(iii) 特許請求した化合物の一つの塩を、適切な酸若しくは塩基との反応によるか、又は好適なイオン交換カラムにより、別の塩に変換することによる。
【0095】
三つの全ての反応は、典型的には溶液中で行われる。生成した塩は析出し、そして濾過により集めることができ、又は溶剤の蒸発により回収することができる。生成した塩のイオン化の程度は、完全イオン化から殆ど非イオン化まで変動することができる。
【0096】
本発明の化合物は、完全無定形から完全結晶性までの範囲の固体状態の連続体として存在することができる。用語「無定形」は、その物質が分子レベルで長距離秩序を欠き、そして温度に応じて固体又は液体の物理的特性を示し得る状態を指す。典型的には、このような物質は明確なX線回折パターンを与えず、そして固体の特性を示す一方で、より形式的には液体と記述される。加熱すると、固体特性から液体特性への変化が起こり、これは状態の変化、典型的には二次(「ガラス転移」)の変化を特徴とする。用語「結晶性」は、その物質が分子レベルで規則的に秩序付けられた内部構造を有し、そして定められたピークを有する明確なX線回折パターンを与える固相を指す。このような物質は十分に加熱すると、液体の特性をも示すだろうが、固体から液体への変化は、相変化、典型的には一次(「融点」)の変化を特徴とする。
【0097】
本発明の化合物は、溶媒和されていない形態及び溶媒和された形態で存在することもできる。本明細書において用語「溶媒和物」は、本発明の化合物及び1個又はそれ以上の医薬上許容される溶剤分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記述するために使用される。用語「水和物」は、該溶剤が水である場合に採用される。
【0098】
有機水和物のために現在認められた分類体系は、隔離部位、チャンネル、又は金属イオン配位の水和物を定義するものである − Polymorphism in Pharmaceutical Solids by K. R. Morris (Ed. H. G. Brittain, Marcel Dekker, 1995) 参照。隔離部位水和物は、水分子が有機分子の介在によって相互の直接接触から隔離されているものである。チャンネル水和物において、水分子は、それらが他の水分子に隣接している格子チャンネル内に存在する。金属イオン配位水和物において、水分子は金属イオンに結合している。
【0099】
溶剤又は水が強固に結合している場合には、その複合体は湿度から独立して明確な化学量論を有するだろう。しかしながら、チャンネル溶媒和物及び吸湿性化合物におけるように、溶剤又は水が弱く結合している場合には、溶剤/水の含有量は湿度及び乾燥条件に依存するだろう。このような場合には、非化学量論が標準的である。
【0100】
同様に本発明の範囲内に包含されるものは、薬剤及び少なくとも一つの他の成分が化学量論的又は非化学量論的な量で存在する、多成分複合体(塩及び溶媒和物を除く)である。この種の複合体は、クラスレート(薬剤−ホスト包接複合体)及び共結晶を包含する。後者は、典型的には、非共役相互作用により一緒に結合した中性分子成分の結晶性複合体と定義されるが、中性分子と塩との複合体でもありうるだろう。共結晶は、溶融結晶化、溶剤からの再結晶、又は成分の一緒の物理的磨砕により製造することができる − Chem Commun, 17, 1889-1896, by O. Almarsson and M. J. Zaworotko (2004) 参照。多成分複合体の一般的概説に関しては、J Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288, by Haleblian (August 1975) 参照。
【0101】
本発明の化合物はまた、好適な条件に付した場合に中間状態(中間相又は液晶)として存在することができる。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(溶融又は溶液の何れか)との中間体である。温度変化の結果として生じる中間現象は、「サーモトロピック」と記述され、そして第二成分、例えば水又は別の溶剤の添加により生じるそれは、「リオトロピック」と記述される。リオトロピック中間相を形成する潜在能力を有する化合物は、「両親媒性」と記述され、そしてイオン性(例えば−COO-Na+、−COO-+又は−SO3-Na+)又は非イオン性(例えば−N-+(CH3)3)の極性頭部基を有する分子から構成される。更なる情報に関しては、Crystals and the Polarizing Microscope by N. H. Hartshorne and A. Stuart, 4th Edition (Edward Arnold, 1970) を参照されたい。
【0102】
以下、特許請求した化合物への全ての言及は、その塩、溶媒和物、多成分複合体及び液晶、並びにその塩の溶媒和物、多成分複合体及び液晶への言及を包含する。
【0103】
本発明化合物は、上記定義の通りの特許請求した化合物を包含し、これらは下記定義の通りのその全ての多形及び晶癖、そのプロドラッグ及び異性体(光学、幾何及び互変異性体を包含する)、並びに同位体標識した特許請求した化合物を包含する。
【0104】
上記のように、特許請求した化合物のいわゆる「プロドラッグ」もまた、本発明の範囲内にある。従って、それら自体が薬理活性を全く又は殆ど持たない特許請求した化合物の一定の誘導体は、体内又は身体上に投与したときに、例えば加水分解により、所望の活性を有する特許請求した化合物に変換することができる。このような誘導体は、「プロ
ドラッグ」と呼ばれる。プロドラッグの使用についての更なる情報は、Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series (T. Higuchi and W. Stella) 及び Bioreversible Carriers in Drug Design, Pergamon Press, 1987 (Ed. E. B. Roche, American Pharmaceutical Association) に見出すことができる。
【0105】
本発明に係るプロドラッグは、例えば、特許請求した化合物に存在する適切な官能基を、Design of Prodrugs by H. Bundgaard (Elsevier, 1985) に記載された「プロ部分」として当業者に知られている一定の部分で置き換えることによって製造することができる。
【0106】
本発明に係るプロドラッグの幾つかの例は、
(i) 特許請求した化合物がカルボン酸官能基(−COOH)を含有する場合には、そのエステル、例えば、特許請求した化合物のカルボン酸官能基の水素が(C1−C8)アルキルで置き換えられた化合物;
(ii) 特許請求した化合物がアルコール官能基(−OH)を含有する場合には、そのエーテル、例えば、特許請求した化合物のアルコール官能基の水素が(C1−C6)アルカノイルオキシメチルで置き換えられた化合物;及び
(iii) 特許請求した化合物が第一級又は第二級アミノ官能基(−NH2又は−NHR、ここで、R≠H)を含有する場合には、そのアミド、例えば、場合によっては、特許請求した化合物のアミノ官能基の一方又は両方の水素が(C1−C10)アルカノイルで置き換えられた化合物
を包含する。
【0107】
上記の例による置換基の更なる例及び他の種類のプロドラッグの例は、上記の文献に見出すことができる。
【0108】
更に、一定の特許請求した化合物は、それら自体が他の特許請求した化合物のプロドラッグとして作用することができる。同様に本発明の範囲内に包含されるものは、特許請求した化合物の代謝物、すなわち、薬剤を投与したときにインビボで形成される化合物である。本発明に係る代謝物の例は、
(i) 特許請求した化合物がメチル基を含有する場合には、そのヒドロキシメチル誘導体(−CH3 → −CH2OH):
(ii) 特許請求した化合物がアルコキシ基を含有する場合には、そのヒドロキシ誘導体(−OR → −OH);
(iii) 特許請求した化合物が第三級アミノ基を含有する場合には、その第二級アミノ誘導体(−NR12 → −NHR1又は−NHR2);
(iv) 特許請求した化合物が第二級アミノ基を含有する場合には、その第一級誘導体(−NHR1 → −NH2);
(v) 特許請求した化合物がフェニル部分を含有する場合には、そのフェノール誘導体(−Ph → −PhOH);及び
(vi) 特許請求した化合物がアミド基を含有する場合には、そのカルボン酸誘導体 (−CONH2 → COOH)
を包含する。
【0109】
1個又はそれ以上の不斉炭素原子を含有する特許請求した化合物は、2種又はそれ以上の立体異性体として存在することができる。特許請求した化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含有する場合には、幾何シス/トランス(又はZ/E)異性体が可能である。構造異性体が低いエネルギー障壁により相互変換可能である場合には、互変異性体異性(「互変異性」)が起こり得る。これは、例えばイミノ、ケト若しくはオキシム基を含有する特許請求した化合物においてはプロトン互変異性の形態、又は芳香族部分を含有する化合物においては、いわゆる原子価互変異性の形態を取ることができる。その結果として、単一化合物が2種以上の異性体を示し得ることとなる。
【0110】
本発明の範囲内に包含されるものは、2種以上の異性を示す化合物を含めて、特許請求した化合物の全ての立体異性体、幾何異性体及び互変異性体形態、その1種又はそれ以上の混合物を包含する。同様に包含されるものは、対イオンが光学活性である酸付加塩又は塩基塩、例えばd−乳酸塩若しくはl−リジン塩、又はラセミ体、例えばdl−酒石酸塩若しくはdl−アルギニンである。
【0111】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の慣用技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化により分離することができる。
【0112】
個々の鏡像体を製造/単離するための慣用技術は、好適な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えばキラル高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いるラセミ体(又は塩若しくは誘導体のラセミ体)の分割を包含する。
【0113】
別法として、ラセミ体(又はラセミ前駆体)を、好適な光学活性化合物と、例えばアルコールと、又は特許請求した化合物が酸性若しくは塩基性部分を含有する場合には、塩基若しくは酸と、例えば1−フェニルエチルアミン若しくは酒石酸と反応させることができる。生成したジアステレオマー混合物を、クロマトグラフィー及び/又は分別結晶により分離することができ、そしてジアステレオ異性体の一方又は両方を、当業者に周知の方法により相当する純粋な鏡像体に変換することができる。
【0114】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、不斉樹脂上のクロマトグラフィー、典型的にはHPLC を用い、炭化水素からなる移動相、典型的には、0〜50容量%、典型的には2%〜20%のイソプロパノール、及び0〜5容量%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有するヘプタン又はヘキサンからなる移動層を用いて、鏡像異性体的に富化した形態で得ることができる。
【0115】
何れかのラセミ体が結晶化する場合には、二つの異なる型の結晶が可能である。第一の型は、上記のラセミ化合物(真のラセミ体)であり、ここでは結晶の一つの均質形態が生成しており、両方の鏡像体を等モル量で含有している。第二の型は、ラセミ混合物又はコングロマリットであり、ここでは結晶の二つの形態が等モル量で生成しており、それぞれが単一鏡像体を含んでいる。
【0116】
ラセミ混合物中に存在する両方の結晶形態は同一の物理的特性を有する一方で、それらは真のラセミ体と比較して異なる物理的特性を有することがある。ラセミ混合物は、当業者に公知の慣用技術により分離することができる − 例えば Stereochemistry of Organic Compounds by E. L. Eliel and S. H. Wilen (Wiley, 1994) 参照。
【0117】
本発明は、1個又はそれ以上の原子が、同じ原子番号を有するが自然界に豊富にある原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子で置き換えられている、全ての医薬上許容される同位体標識した特許請求した化合物を包含する。
【0118】
本発明の化合物に含めるための好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば2H及び3H、炭素の同位体、例えば11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば36Cl、フッ素の同位体、例えば18F、ヨウ素の同位体、例えば123I及び125I、窒素の同位体、例えば13N及び15N、酸素の同位体、例えば15O、17O及び18O、リンの同位体、例えば32P、並びに硫黄の同位体、例えば35Sを包含する。
【0119】
一定の同位体標識した特許請求した化合物、例えば放射性同位体を導入したものは、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究に有用である。放射性同位体トリチウム、すなわち3
H、及び炭素−14、すなわち14Cは、それらの導入の容易さ及び素早い検出手段から見て、この目的のために特に有用である。
【0120】
より重い同位体、例えばジューテリウム、すなわち2Hによる置換は、より大きな代謝安定性、例えばインビボ半減期の増加又は投与必要量の減少に起因する一定の治療上の利点を提供することができ、従って幾つかの状況では好ましいことがある。
【0121】
陽電子放出同位体、例えば11C、18F、15O及び13Nによる置換は、基質受容体占有を検査するための Positron Emission Topography (PET) 研究に有用であり得る。
【0122】
放射性同位体標識した特許請求した化合物は、当業者に公知の慣用技術により、又は添付の実施例及び製造例に記載したのと同様の方法により、先に採用した標識していない試薬の代わりに放射性同位体標識した試薬を用いて一般的に製造することができる。
【0123】
本発明に係る医薬上許容される溶媒和物は、結晶化の溶剤が同位体で置換されていてもよいもの、例えばD2O、d6−アセトン、d6−DMSOであるものを包含する。
【0124】
同様に本発明の範囲内にあるものは、上記定義の通りの特許請求した化合物の中間体化合物、その全ての塩、溶媒和物及び複合体、並びに特許請求した化合物のために上記で定義した通りのその塩の全ての溶媒和物及び複合体である。本発明は、上記の種の全ての多形及びその晶癖を包含する。
【0125】
本発明に係る特許請求した化合物を製造する場合に、この目的のために特性の最良の組み合わせを与える化合物の形態を日常的に選択することは、当業者にオープンである。このような特性は、中間体形態の融点、溶解性、加工性及び収量、並びに生成物を単離時に精製できるという結果として生じる容易さを包含する。
【0126】
薬剤生成物
特許請求した化合物は、提案された適応症の治療に対して最も適切な投与形態及び投与経路を選択するために、それらの生物薬剤学的特性、例えば溶解性及び溶液安定性(pH全域で)、浸透性等について評価されるべきである。
【0127】
医薬上の用途を意図した本発明の化合物は、結晶性又は無定形の生成物として投与することができる。それらは、例えば、固体プラグ状物、粉末又はフィルムとして、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥又は蒸発乾燥のような方法により得ることができる。マイクロ波又はラジオ波周波数乾燥をこの目的のために使用することができる。
【0128】
それらは、単独で、又は1種又はそれ以上の本発明の他の化合物と組み合わせて、又は1種又はそれ以上の他の薬剤と組み合わせて(又はその任意の組み合わせとして)投与することができる。組み合わせに有用な医薬活性剤の例は、以下のものを包含し得る:抗感染剤、制限なしに抗生物質、抗ウイルス剤及び抗真菌剤を包含する;抗アレルギー剤及び肥満細胞安定剤;ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症剤(例えばネパフェナク);シクロオキシゲナーゼ阻害剤(制限なしに Cox I 及び Cox II 阻害剤を包含する);抗感染剤及び抗炎症剤の組み合わせ;充血除去剤;抗緑内障剤(制限なしにアドレナリン作動剤、ベータ−アドレナリン遮断剤、アルファ−アドレナリン作動剤、副交感神経興奮剤、コリンエステラーゼ阻害剤、カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤及びプロスタグランジンを包含する);抗緑内障剤の組み合わせ;抗酸化剤;栄養補給剤;類嚢胞性黄斑浮腫を治療するための薬剤(制限なしに非ステロイド性抗炎症剤を包含する);非滲出性(ドライ AMD)及び滲出性(ウェット AMD)を包含する加齢関連黄斑変性を治療するための薬剤(制限なしにアンギオテンシン阻害剤を包含し、これはタンパク質キナーゼ受容体(VEGF 受容体であるタンパク質キナーゼ受容体を包含する)を阻害する血管形成阻害剤を包含する);及び栄養補給剤;肝臓感染症及びCMV眼感染症を治療するための薬剤;増殖性硝子体網膜症を治療するための薬剤(制限なしに代謝拮抗剤及び線維素溶解剤を包含する);傷治癒剤(制限なしに成長因子を包含する);代謝拮抗剤;神経保護剤(制限なしにエリプロジルを包含する);並びに後眼部26の疾患又は症状を治療するためのアンギオスタティックステロイド(該疾患又は症状は、制限なしに非滲出性(ドライ AMD)及び滲出性(ウェット AMD)を包含する加齢関連黄斑変性、脈絡膜血管新生、網膜症、網膜炎、ブドウ膜炎、黄斑浮腫並びに緑内障を包含する)。このようなアンギオスタティックステロイドは、米国特許第5,679,666及び5,770,592号に更に詳細に記載されている。類嚢胞性黄斑浮腫を治療するための非ステロイド性抗炎症剤は、ネパフェナクである。
【0129】
一般的に、本発明の医薬組成物は、1種又はそれ以上の医薬上許容される賦形剤と組合せた製剤として投与されるだろう。本明細書において用語「賦形剤」は、本発明の化合物以外の任意の成分を記述するために使用される。賦形剤の選択は、大部分は、特定の投与方式、溶解性及び安定性に対する賦形剤の効果、並びに投与形態の性質のような要因に依存するだろう。
【0130】
本発明の化合物の送出に適する医薬組成物及びそれらの製造方法は、当業者に明らかであろう。このような組成物及びそれらの製造方法は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995) に見出すことができる。
【0131】
経口投与
本発明の化合物は経口投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るように嚥下を伴ってよく、そして/又は化合物が口から直接血流に入る口腔、舌又は舌下による投与を伴ってもよい。
【0132】
経口投与に適する製剤は、固体、半固体及び液体の系、例えば、錠剤;マルチ−若しくはナノ微粒子、液体又は粉末を含有する軟質又は硬質カプセル;トローチ(液体充填を包含する);チューズ;ゲル;急速分散性投与形態;フィルム;小卵形物 (ovules);及び頬側/粘膜接着性パッチを包含する。
【0133】
液体製剤は、懸濁液、溶液、シロップ及びエリキシルを包含する。このような製剤は、軟質又は硬質カプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースで作成されている)の充填物として用いることができ、そして典型的には、担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース又は好適な油、並びに1種又はそれ以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤はまた、例えば小袋からの固体の再構成によって製造することができる。
【0134】
本発明の化合物はまた、急速溶解性、急速崩壊性の投与形態(例えば Expert Opinion in Therapeutic Patents, 11 (6), 981-986, by Liang and Chen (2001) に記載されたもの)で使用することができる。
【0135】
錠剤投与形態のために、用量に応じて、薬剤は投与形態の1質量%〜80質量%、より典型的には投与形態の5質量%〜60質量% を占めることができる。薬剤に加えて、錠剤は一般的に崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、澱粉グリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、前ゼラチン化澱粉及びアルギン酸ナトリウムを包含する。一般的に、崩壊剤は、投与形態の1質量%〜25質量%、好ましくは5質量%〜20質量%を占めるだろう。
【0136】
結合剤は、錠剤製剤に凝着特性を与えるために一般的に用いられる。好適な結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成ゴム、ポリビニルピロリドン、前ゼラチン化澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース並びにヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤はまた、希釈剤、例えば乳糖(一水和物、噴霧乾燥した一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、蔗糖、ソルビトール、微結晶性セルロース、澱粉及び二塩基性リン酸カルシウム二水和物を包含する。
【0137】
錠剤はまた、場合により界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80、並びに流動促進剤、例えば二酸化ケイ素及びタルクを含むことができる。存在する場合には、界面活性剤は錠剤の0.2質量%〜5質量%を占めることができ、そして流動促進剤は錠剤の0.2質量%〜1質量%を占めることができる。
【0138】
錠剤はまた、潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、及びステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物を一般的に含有する。潤滑剤は、一般的に錠剤の0.25質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜3質量%を占める。
【0139】
他の可能な成分は、抗酸化剤、着色料、矯味矯臭剤、保存剤及び味マスキング剤を包含する。
【0140】
典型的な錠剤は、約80質量%までの薬剤、約10質量%〜約90質量%の結合剤、約0質量%〜約85質量%の希釈剤、約2質量%〜約10質量%の崩壊剤及び約0.25質量%〜約10質量%の潤滑剤を含有する。
【0141】
錠剤ブレンドを直接又はローラーにより圧縮して錠剤を形成することができる。別法として、錠剤ブレンド又はブレンドの部分を湿式−、乾式−若しくは溶融造粒、溶融凝固又は押し出した後に製錠することができる。最終製剤は一つ又はそれ以上の層を有してよく、そして被覆されていても又は被覆されていなくてもよい;それはカプセル封入されていてもよい。
【0142】
錠剤の製剤は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1, by H. Lieberman and L. Lachman (Marcel Dekker, New York, 1980) で論じられている。
【0143】
ヒト又は家畜に使用するための消耗性経口フィルムは、典型的には、急速溶解性又は粘膜接着性であってよい柔軟な水溶性又は水膨潤性の薄膜投与形態であり、そして典型的には、特許請求した化合物、フィルム形成性ポリマー、結合剤、溶剤、保湿剤、可塑剤、安定剤又は乳化剤、粘度変更剤及び溶剤を含む。製剤の幾つかの成分は、二つ以上の機能を果たすことができる。
【0144】
特許請求した化合物は、水に可溶性又は不溶性であってよい。水溶性化合物は、典型的には溶質の1質量%〜80質量%、より典型的には20質量%〜50質量% を占める。溶解性の低い化合物は、組成物のより大きい割合、典型的には溶質の88質量%までを占めることができる。別法として、特許請求した化合物はマルチ微粒子ビーズの形態にあってよい。
【0145】
フィルム形成性ポリマーは、天然多糖、タンパク質又は合成親水コロイドから選択することができ、そして典型的には0.01質量%〜99質量%の範囲、より典型的には30〜80質量%の範囲で存在する。
【0146】
他の可能な成分は、抗酸化剤、着色料、矯味矯臭剤及び香味向上剤、保存剤、唾液刺激剤、清涼剤、共溶剤(油を包含する)、エモリエント剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤及び味マスキング剤を包含する。
【0147】
本発明に係るフィルムは、典型的には、剥離可能な裏支持体又は裏紙上に塗布した水性薄膜の蒸発乾燥により製造される。これは、乾燥炉又はトンネル中で、典型的には組合せコータードライヤーで、又は凍結乾燥若しくは真空化により行うことができる。
【0148】
経口投与のための固体製剤は、即時及び/又は調節放出するように製剤化することができる。調節放出製剤は、遅延−、持続−、パルス化−、制御−、標的−及びプログラム化放出を包含する。
【0149】
本発明の目的のために好適な調節放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されており、これは全体として参照により本明細書に組み込まれる。他の好適な放出技術、例えば高エネルギー分散並びに浸透及び被覆粒子の詳細は、Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14, by Verma et al (2001) に見出される。制御放出を達成するためのチューインガムの使用は、WO 00/35298 に記載されている。
【0150】
非経口投与
本発明の組成物はまた、直接に血流中、筋肉中、又は内臓に投与することができる。非経口投与のための好適な手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内及び皮下を包含する。非経口投与のための好適な装置は、針(極微針を包含する)注射器、針なし注射器及び注入技術を包含する。
【0151】
非経口製剤は、典型的には、賦形剤、例えば塩、炭水化物、緩衝剤(好ましくはpH3〜9まで)を含有し得る水溶液であるが、幾つかの用途のために、それらは、より好適には、発熱物質不含の滅菌水のような好適なビヒクルと共に使用するための非水性滅菌溶液として又は乾燥形態として製剤化することができる。
【0152】
滅菌条件下での、例えば凍結乾燥による、非経口製剤の製造は、当業者に周知の標準的製薬技術を用いて容易に行うことができる。
【0153】
非経口溶液の製造に用いられる特許請求した化合物の溶解性は、適切な製剤技術、例えば溶解性向上剤の混入の使用により高めることができる。
【0154】
非経口投与のための製剤は、即時及び/又は調節放出するように製剤化することができる。調節放出製剤は、遅延−、持続−、パルス化−、制御−、標的−及びプログラム化放出を包含する。従って、本発明の化合物は、活性化合物の調節放出を与える埋め込みデポーとして投与するための、懸濁液として又は固体、半固体若しくはチキソトロピー液体として製剤化することができる。このような製剤の例は、薬剤で被覆したステント及び半固体、並びに薬剤を負荷したdl−乳酸−グリコール酸共重合体 (PGLA) 微小球を含む懸濁液を包含する。
【0155】
局所投与
本発明の化合物はまた、局所的、皮膚(皮内)又は経皮的に、皮膚又は粘膜に投与することができる。この目的のための典型的な製剤は、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布用粉末、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハー、インプラント、スポンジ、繊維、包帯及びマイクロエマルジョンを包含する。リポソームも使用できる。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを包含する。浸透促進剤を混入してもよい − 例えば、J Pharm Sci, 88 (10), 955-958, by Finnin and Morgan (October 1999) 参照。
【0156】
局所投与の他の手段は、エレクトロポレーション、イオン導入、フォノホレーシス、ソノホレーシス及び極微針又は針なし(例えば PowderjectTM、BiojectTM 等)注射を包含する。
【0157】
局所投与のための製剤は、即時及び/又は調節放出であるように製剤化することができる。調節放出製剤は、遅延−、持続−、パルス化−、制御−、標的−及びプログラム化放出を包含する。
【0158】
吸入/鼻内投与
本発明の化合物はまた、鼻内に又は吸入により、典型的には、乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末の形態で(単独で、混合物として、例えば乳糖との乾燥ブレンドとして、又は混合成分粒子として、例えばホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合しての何れか)、好適な噴射剤、例えば 1,1,1,2−テトラフルオロエタン又は 1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを使用するか若しくは使用しない、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは微細ミストを生成するために電気流体力学を用いるアトマイザー)若しくはネブライザーからのエアゾールとして、又は点鼻剤として投与することができる。鼻内使用のための、粉末はバイオ接着剤、例えばキトサン又はシクロデキストリンを含むことができる。
【0159】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー又はネブライザーは、例えば、エタノール、水性エタノール、又は活性物質の分散、可溶化若しくは長期放出のための好適な代替物質、溶剤としての噴射剤及び場合による界面活性剤、例えば三オレイン酸ソルビタン、オレイン酸若しくはオリゴ乳酸を含む、本発明の化合物の溶液又は懸濁液を含有する。
【0160】
乾燥粉末又は懸濁液製剤で使用する前に、薬剤生成物は、吸入による送出に適するサイズ(典型的には5ミクロン未満)まで微粉化される。これは、任意の適切な粉砕方法、例えばスパイラルジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化又は噴霧乾燥により達成することができる。
【0161】
吸入器又は吹送器において使用するためのカプセル(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロースで作成されている)、ブリスター及びカートリッジは、本発明の化合物、好適な粉末基剤、例えば乳糖又は澱粉、及び性能調節剤、例えばl−ロイシン、マンニトール又はステアリン酸マグネシウムの粉末混合物を含有するように製剤化することができる。乳糖は、無水であるか又は一水和物の形態、好ましくは後者であってよい。他の好適な賦形剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース及びトレハロースを包含する。
【0162】
微細ミストを生成するために電気流体力学を用いるアトマイザーに使用するための好適な溶液製剤は、作動当たり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有することができ、そして作動量は1μl〜100μlで変動することができる。典型的な製剤は、特許請求した化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール及び塩化ナトリウムを含むことができる。プロピレングリコールの代わりに使用できる代替溶剤は、グリセロール及びポリエチレングリコールを包含する。
【0163】
好適な香味料、例えばメントール及びレボメントール、又は甘味料、例えばサッカリン若しくはサッカリンナトリウムを、吸入/鼻内投与のために意図される本発明の製剤に加えることができる。
【0164】
吸入/鼻内投与のための製剤は、例えばPGLAを用いて、即時及び/又は調節放出するように製剤化することができる。調節放出製剤は、遅延−、持続−、パルス化−、制御−、標的−及びプログラム化放出を包含する。
【0165】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、直腸又は膣に、例えば坐剤、ペッサリー又は浣腸剤の形態で投与することができる。カカオ脂は伝統的な坐剤基剤であるが、種々の代替物を必要に応じて使用することができる。
【0166】
直腸/膣投与のための製剤は、即時及び/又は調節放出するように製剤化することができる。調節放出製剤は、遅延−、持続−、パルス化−、制御−、標的−及びプログラム化放出を包含する。
【0167】
眼/耳投与
眼に投与するために、本発明の化合物は、該化合物を角膜及び/又は強膜、並びに例えば前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜及び強膜を包含する眼の内部領域に浸透させるのに十分な時間、該化合物が眼表面と接触したままであるように、医薬上許容される眼科用ビヒクルで送出される。医薬上許容される眼科用ビヒクルは、軟膏、植物油又は封入材料であってよい。本発明の化合物はまた、硝子体液又は房水中に直接注射することができる。
【0168】
更に、化合物を周知の許容される方法、例えば腱下 (subtebnon) 及び/又は結膜下注射により投与することができる。強膜及びテノン嚢は眼球の外表面を定める。ARMD、CNV、網膜症、毛膜炎、ブドウ膜炎、類嚢胞黄斑浮腫 (CME)、緑内障、及び後眼部の他の疾患又は症状を治療するために、眼科上許容される医薬活性成分の特定量のデポー剤を、強膜外表面の上及びテノン嚢の下に直接配置することが好ましい。加えて、ARMD 及び CME の場合には、デポー剤を、強膜外表面の上、テノン嚢の下、及び一般的には黄斑の上側に配置することが最も好ましい。
【0169】
上記の製剤に加えて、本化合物はまた、デポー調製物として製剤化することができる。このような長期作用製剤は、植え込み(例えば、皮下に又は筋肉内に)、筋肉内注射又は上記の腱下(subtenon)若しくは硝子体内注射により投与することができる。
【0170】
本発明の特別の実施形態の範囲内で、本化合物を局所投与のために食塩水(眼用調製物に普通に用いられる保存剤及び抗菌剤の何れかと組み合わせて)中に調製し、そして点眼剤の形態で投与することができる。溶液又は懸濁液をその純粋な形態で製造し、そして毎日数回投与することができる。別法として、上記のように調製した本発明の組成物はまた、角膜に直接投与することができる。
【0171】
別法として、活性成分は、使用前に好適なビヒクルと、例えば発熱物質不含の滅菌水と構成するための粉末形態であってよい。
【0172】
更なる代替実施形態の範囲内で、組成物は、角膜に結合する粘膜接着性ポリマーを用いて調製される。従って、例えば、本化合物は、好適な高分子若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)若しくはイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤することができる。
【0173】
更なる代替実施形態の範囲内で、本発明の組成物は、従来のステロイド療法の添加物として利用することができる。
【0174】
疎水性化合物のための製薬用担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機高分子及び水性相を含む共溶剤系である。共溶剤系はVPD共溶剤系であってよい。VPDは、3% w/vのベンジルアルコール、8% w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80、及び65% w/vのポリエチレングリコール300の溶液であって、無水エタノールで体積を補充したものである。VPD共溶剤系 (VPD:5W) は、水溶液中の5%デキストロースで1:1に希釈したVPDを含有する。この共溶剤系は疎水性化合物をよく溶解し、そしてそれ自体が全身投与に際して低い毒性を生じる。共溶剤系の割合は、その溶解性及び毒性の特性を損なうことなくかなり変動することができる。更に、共溶剤成分は変動することができる:例えば、他の低毒性の非極性界面活性剤をポリソルベート80の代わりに使用でき;ポリエチレングリコールの割合を変動でき;ポリエチレングリコールを他の生体適合性高分子と、例えばポリビニルピロリドンと交換でき;そして他の糖又は多糖をデキストロースの代わりに使用できる。
【0175】
別法として、疎水性医薬化合物のための他の送出系を用いることができる。リポソーム及びエマルジョンは、疎水性薬剤のための送出ビヒクル又は担体の公知の例である。一定の有機溶剤、例えばジメチルスルホキシドも使用できるが、通常はより大きい毒性を犠牲とする。更に、本化合物は、持続放出系、例えば治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを用いて送出することができる。種々の持続放出材料が確立されており、そして当業者に知られている。持続放出カプセルは、それらの化学的性質に応じて、本化合物を数週間ないし100日以上まで送出することができる。治療剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加の戦略を使用することができる。
【0176】
医薬組成物はまた、適切な固相若しくはゲル相の担体又は賦形剤を含むことができる。このような担体又は賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリマー、例えばポリエチレングリコールを包含する。
【0177】
他の技術
本発明化合物は、上記の投与方法の何れかで使用するためのそれらの溶解性、解離速度、味マスキング、生物適合性及び/又は安定性を改善するために、可溶性高分子構成要素、例えばシクロデキストリン及びその好適な誘導体又はポリエチレングリコール含有ポリマーと組み合わせることができる。
【0178】
例えば、薬剤−デキストリン複合体は、大部分の投与形態及び投与経路のために一般的に有用であることが認められている。包接及び非包接複合体の両者を使用することができる。薬剤との直接複合体形成に導く別法として、シクロデキストリンを補助添加物として、すなわち、担体、希釈剤又は可溶化剤として使用することができる。これらの目的のために最も普通に用いられるものは、アルファ−、ベータ−及びガンマ−シクロデキストリンであり、その例は国際特許出願番号 WO 91/11172、WO 94/02518 及び WO 98/55148 に見出すことができる。
【0179】
部分のキット
例えば、特定の疾患又は症状を治療する目的のために、活性化合物の組み合わせの投与が望ましいことがあるので、二つ又はそれ以上の医薬組成物(その少なくとも一つは本発明に係る化合物を含有する)を、組成物の共投与に適するキットの形態で便利に組み合わせることができる。
【0180】
従って、本発明のキットは、二つ又はそれ以上の個々の医薬組成物(その少なくとも一つは本発明に係る化合物を含有する)、及び該組成物を別々に保持するための手段、例えば容器、分割ボトル又は分割フォイルパケットを含む。このようなキットの例は、錠剤、カプセル等を包装するために用いられるよく知られたブリスターパックである。
【0181】
本発明のキットは、異なる投与形態、例えば経口及び非経口形態を投与するために、個々の組成物を異なる投与間隔で投与するために、又は個々の組成物を相互に対して力価決定するために特に適している。コンプライアンスを補助するために、キットは典型的には投与についての指示書を含み、そしていわゆるメモリーエイドを備えることができる。
【0182】
投与量
ヒト患者に投与するために、本発明の化合物の1日当たりの総量は、当然のことながら投与方式に応じて、典型的には0.5mg/kg体重〜約100mg/kgの範囲内にある。好ましい投与量は、30mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。1日当たりの総量は単回又は分割投与で投与することができ、そして医師の裁量で、本明細書に記載した典型的な範囲の外にあってもよい。
【0183】
これらの投与量は、約60kg〜70kgの体重を有する平均的なヒト被験者に基づく。医師は、体重がこの範囲に入らない被験者、例えば幼児及び高齢者のための用量を容易に決定できるだろう。
【0184】
疑義を避けるために、本明細書において「治療」への言及は、治癒的、緩和的及び予防的治療を包含する。
【実施例】
【0185】
以下に提供する実施例、方法及び製造は、本発明の化合物及びこのような化合物の製造方法を更に説明し、かつ例示する。本発明の範囲は、下記の実施例及び製造例の範囲には決して限定されないと理解すべきである。下記の実施例において、単一のキラル中心を有する分子は、別に記載しない限り、ラセミ混合物として存在する。2個又はそれ以上のキラル中心を有する分子は、別に記載しない限り、ジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一の鏡像体/ジアステレオマーは、当業者に公知の方法により得ることができる。
【0186】
化合物の構造は、元素分析又は NMR の何れかにより確認され、後者では適切ならば、表題の化合物中の特徴的プロトンに割り当てられたピークが示される。1H NMR シフト (δH) は、内部参照基準からファイルされた百万分の一 (ppm) ダウンで与えられる。
【0187】
本発明を以下の実施例を参照して説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定すると見なされてはならず、実例となる形で役立てるべきである。
【0188】
方法A
〔実施例1〕
N−(6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)−2−(4−シアノフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−スルホンアミド
【0189】
【化8】

【0190】
i. (6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸 tert−ブチルの製造
【化9】

テトラヒドロフラン (18mL) 中の 4−メチル−ピリジン−2,6−ジアミン (2.13g, 17.3mmol, 1equiv) の溶液に0℃で、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド (34.6mL, 1M) を加えた。30minの後、二炭酸ジ−tert−ブチル (3.78g, 17.3mmol) を反応混合物に加えた。終了したとき、反応物を24℃に温め、真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。飽和塩化アンモニウム水溶液及びブラインの1:1 溶液 (100mL) を生成した固体に加えた。生成した混合物を酢酸エチル (3×100mL) で抽出した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン中0→30% 酢酸エチル) による精製はカルバメート中間体を与えた (1.94g, 50%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz),δ: 7.12 (s, 1 H), 7.09 (br s, 1 H), 6.02 (br s, 2 H), 2.23 (s, 3 H), 1.51 (s, 9 H); LRMS (ESI) m/z: 224.2。
【0191】
ii. [6−({[2−(アセチルアミノ)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル]スルホニル}アミノ)−4−メチルピリジン−2−イル]カルバミン酸 tert−ブチルの製造
【化10】

ピリジン (30mL) 中の (6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸 tert−ブチル (1.2g, 6.0mmol) の溶液に、2−アセトアミド−4−メチル−5−チアソールスルホニルクロリド (1.5g, 6.0mmol) を加えた。生成した混合物を24℃で16時間攪拌した。反応物を真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ジクロロメタン中 0→5% メタノール) による精製は中間体を与えた (2.1g, 80%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.43 (br s, 1 H), 6.99 (s, 1 H), 5.31 (s, 1 H), 2.34 (s, 3 H), 2.31 (s, 3 H), 2.22 (s, 3 H), 1.54 (s, 9 H); LRMS (ESI) m/z: 342 [M-CO2C(CH3)3]+
【0192】
iii. (6−{[(2−アミノ−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)スルホニル]アミノ}−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸tert−ブチルの製造
【化11】

メタノール (30mL) 中の [6−({[2−(アセチルアミノ)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル]スルホニル}アミノ)−4−メチルピリジン−2−イル]カルバミン酸 tert−ブチル (2.1g, 4.8mmol, 1equiv) 及び1N 水酸化ナトリウム水溶液 (7.2mL) の溶液を、50℃に48時間加熱した。24℃に冷却したとき、反応混合物を真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。生成した固体を水 (20mL) に溶解した。この溶液を濃塩酸でpH=7まで中和した。生成した固体を濾過により集め、水 (30 mL) 及びジエチルエーテル (2×30mL) で洗浄した (1.59g, 83%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.29 (br s, 1 H), 7.48 (s, 1 H), 6.91 (s, 1 H), 2.40 (s, 3 H), 2.33 (s, 3 H), 1.52 (s, 9 H); LCMS (ESI) m/z : 400.2。
【0193】
iv. (6−{[(2−ブロモ−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)スルホニル]アミノ}−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸tert−ブチルの製造
【化12】

アセトニトリル (30mL) 中の (6−{[(2−アミノ−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)スルホニル]アミノ}−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸tert−ブチル (1.59g, 3.98mmol, 1equiv) 及び臭化銅 (II)(0.55g, 2.47mmol, 0.62equiv) の懸濁液に65℃で、亜硝酸 tert−ブチル (0.71mL, 5.97mmol, 1.5equiv) を加えた。反応混合物は緑色から赤色に変わり、ガスの発生が観察された。10分後にガス発生が止んだとき、反応混合物を24℃に冷却し、真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。生成した固体を酢酸エチル (30mL) に溶解し、生成した溶液を、硫酸 (0.5mL) で酸性にしておいた水 (30mL) で洗浄した。集めた有機物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ジクロロメタン中 0→1.5% メタノール) による精製は上記の中間体を与えた (0.96g, 52%)。LRMS (ESI) m/z: 463。
【0194】
v. [6−({[2−(4−シアノフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル]スルホニル}アミノ)−4−メチルピリジン−2−イル]カルバミン酸 tert−ブチルの製造
【化13】

2:1 ジメトキシエタン/水 (30mL) 中の (6−{[(2−ブロモ−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル)スルホニル]アミノ}−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸tert
−ブチル (0.96g, 2.08mmol, 1equiv)、4−シアノフェニルボロン酸 (0.336g, 2.29mmol, 1.1equiv) 及び炭酸セシウム (2.03g, 6.24mmol, 3equiv) の溶液を、窒素で15分間パージした。次いでジクロロ[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン]パラジウム (II) クロリド (0.068g, 0.08mmol, 0.04equiv) を加え、生成した混合物を窒素で更に15分間パージした。反応物を 80℃に1時間加熱した。24℃に冷却した後、この溶液を真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。生成した水性混合物を酢酸エチル (60mL) で抽出した。集めた有機物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン中 0→10% 酢酸エチル) による精製は中間体を与えた (0.334g, 33%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.97 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.73 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.63 (br s, 1 H), 7.43 (s, 1 H), 6.90 (s, 1 H), 2.65 (s, 3 H), 2.32 (s, 3 H), 1.50 (s, 9 H); LRMS (ESI) m/z: 486.1。
【0195】
vi. N−(6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)−2−(4−シアノフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−スルホンアミドの製造
ジクロロメタン (3mL) 中の [6−({[2−(4−シアノフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−イル]スルホニル}アミノ)−4−メチルピリジン−2−イル]カルバミン酸 tert−ブチル (0.334g, 0.68mmol, 1equiv) の溶液に、トリフルオロ酢酸 (0.21mL, 4equiv) を加えた。反応混合物を24℃で48時間攪拌した。この溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で中和し、生成した溶液をジクロロメタン (3×20mL) で抽出した。集めた有機物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ジクロロメタン中 0→1% メタノール) による精製は表題の生成物 N−(6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)−2−(4−シアノフェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−スルホンアミドを与えた (0.22g, 81%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6),δ: 12.08 (br s, 1 H), 8.09 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.95 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 6.62 (br s, 2 H), 6.12 (s, 1 H), 5.79 (s, 1 H), 2.59 (s, 3 H), 2.08 (s, 3 H); HRMS (ESI): C17H16N5O2S2 について計算した m/z 386.0740; 実測値: 386.0745; Anal. C17H15N5O2S2 の計算値: C, 52.97; H, 3.92; N, 18.17; 実測値: C, 52.75; H, 3.76; N, 18.03。
【0196】
方法B
〔実施例2〕
(+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド及び (−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド
【化14】

【0197】
i. N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−2,2−ジメチルプロパンアミドの製造
【化15】

テトラヒドロフラン (30mL) 中のN−(6−ホルミルピリジン−2−イル)−2,2−ジメチルプロパンアミド (4.0g, 19.4mmol) の氷冷溶液に、メチルマグネシウムクロリド (13.6mL, 40.7mmol, THF中3M) を滴下した。2h後に、反応液を飽和NH4Cl水溶液 (10mL) でクエンチし、酢酸エチル (50mL) で希釈した。この混合物を飽和NaHCO3水溶液 (2×50mL) で洗浄した。有機層を無水 Na2SO4 上で乾燥し、濾過し、濃縮した。生成した残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー (2:1 ヘキサン/EtOAc) により精製し、中間体を透明油状物として与えた (0.56g, 49%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.14 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 8.00 (br s, 1 H), 7.70 (t, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.00 (d, J = 7.5 Hz, 1 H), 4.82 (m, 1 H), 3.81 (d, J = 5.0 Hz, 1 H), 1.49 (d, J =6.5 Hz, 3 H), 1.35 (s, 9H); LRMS (ESI): m/z: 223.2。
【0198】
ii. 1−(6−アミノピリジン−2−イル)エタノールの製造
【化16】

ジオキサン (20mL) 中の N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−2,2−ジメチルプロパンアミド (2.0g, 9.6mmol) の溶液に、9N HCl 水溶液 (10mL) を加えた。反応混合物を100℃に24時間加熱した。25℃に冷却した後、この溶液を固体NaOHでpH=9まで中和し、EtOAc (50mL) で希釈した。生成した混合物を飽和NaHCO3水溶液 (2×30mL) で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、濃縮した。生成した残留物をジクロロメタン (10:1, 5mL) に溶解した。ジエチルエーテル (10mL) を加え、この溶液を24時間放置した。生成した結晶を濾過し、ジエチルエーテル (2×10mL) ですすいで上記表題の中間体を白色固体として得た (0.65g, 49%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.43 (t, J = 7.5 Hz, 1 H), 6.59 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 6.39 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 4.72 (q, J = 6.3 Hz, 1 H), 4.43 (bs, 2 H), 4.21 (bs, 1 H), 1.45 (d, J = 6.3 Hz, 3 H); LRMS (ESI): m/z: 139.1。
【0199】
iii. (+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド及び (−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド
ジクロロメタン (5mL) 中の 1−(6−アミノピリジン−2−イル)エタノール (0.20g, 1.4mmol) 及びジイソプロピルエチルアミン (0.22mL, 1.8mmol) の溶液に、クロロ(トリメチル)シラン (0.48mL, 2.9mmol) を加えた。1hの後、反応混合物を濃縮し、生成した残留物をジクロロメタン (2mL) 及びピリジン (2mL) に溶解した。次いで 4'−シアノビフェニル−4−スルホニルクロリド (0.43g, 1.53mmol) を反応混合物に加えた。3hの後、反応混合物を真空濃縮した。生成した残留物を酢酸 (1mL) 及びメタノール (1mL) で希釈し、0.5h攪拌した。次いで反応混合物を酢酸エチル (50mL) で希釈し、飽和 NaHCO3 水溶液 (2×30mL) で洗浄した。有機層を濃縮し、生成した残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー (1:1 ヘキサン/酢酸エチル) により精製した。ラセミ生成物を、ジエチルエーテル (5mL) に溶解し、HCl (Et2O中1N) を加えることにより塩酸塩に変換して表題のラセミ生成物を白色固体として得た (0.21g, 37%)。1H NMR (400 MHz, CD3OD),δ: 8.01 (d, J = 8.3, 2 H), 7.96 (t, J = 8.1, 1 H), 7.81 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.78-7.73 (m, 4 H), 7.21-7.16 (m, 2 H), 4.86 (q, J = 6.6 Hz, 1 H), 1.38 (d, J = 6.6 Hz, 3 H). HRMS (ESI): C20H18N3O3S の計算値 m/z: 380.1069; 実測値: 380.1061; Anal. C20H17N3O3S・HClの計算値: C, 57.76; H, 4.36; N, 10.10; 実測値: C, 57.87; H, 4.58; N, 9.88。
【0200】
ラセミ遊離塩基を分取鏡像体分離法によって分離し、この方法は超臨界液体クロマトグラフィー (SFC) 技術を用いて、移動相のバルクを与える超臨界二酸化炭素で展開した。キラル鏡像体の分離及び単離を Berger SFC MultiGramTM Purification System (MettlerToledo AutoChem, Inc.) 上で行った。鏡像体の分離に用いた分取クロマトグラフィー条件は、キラル固定相としての Chiralpak AD-H(トリス−(3,5−ジメチルフェニルカルバミン酸)アミロース)250×21mm, 5μのセミ分取カラム (Chiral Technologies, Inc.) からなっていた。カラム温度を35℃に保持した。用いた移動相は、50mL/minの流速及び100bar の一定圧力で定組成に保持された、調節剤としての40%のエタノールを含む超臨界CO2であった。
鏡像体1 [α]D (MeOH) = −66.67°。
鏡像体2 [α]D (MeOH) = +100°。
【0201】
〔実施例3〕
(−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド及び (+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド
【化17】

上記表題のラセミ混合物は、メチルマグネシウムクロリドの代わりにエチルマグネシウムブロミドを用いた以外は、上記実施例2の製造について上記した手順を用いて製造した。このラセミ混合物を塩に変換することなく遊離塩基として保持した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン中 15→60% EtOAc) による精製は生成物を与えた (0.267g, 83%) 1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.05 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.76 (m, 2 H), 7.58-7.71 (m, 6 H), 7.15 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 6.81 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 4.62 (dd, J = 7.2, 4.9 Hz, 1 H), 1.60-1.87 (m, 2 H), 0.89 (t, J = 7.5 Hz, 3 H); LRMS (ESI): m/z: 394.0。
【0202】
分取鏡像体分離法は上記実施例2として用いた方法と同様であった。鏡像体の分離に用いた分取クロマトグラフィー条件は、キラル固定相としての Chiralpak AD-H(トリス−(3,5−ジメチルフェニルカルバミン酸)アミロース)250×21mm, 5μのセミ分取カラム (Chiral Technologies, Inc.) からなっていた。カラム温度を35℃に保持した。用いた移動相は、55mL/minの流速及び140bar の一定圧力で定組成に保持された、調節剤としての45%のエタノールを含む超臨界CO2であった。サンプルをメタノール中で100mg/mLに可溶化し、1mLの注入当たり50mgのカラム負荷能を達成した。各注入のための総ランタイムは6.1分であった。最初の鏡像体(−) の保持時間は4.0分であったが、二番目に溶離する鏡像体(+) は5.0分でカラムから溶離した。(−) 及び (+) についての比旋光度、[α]D は、それぞれ−17.34°及び+22.29°と決定された。
鏡像体1: (−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド。[α]D (MeOH) = −17.34°; Anal. C21H19N3O5S・0.17 H2Oの計算値: C, 63.61; H, 4.92; N, 10.60. 実測値: C, 63.59; H, 4.93; N, 10.60。
鏡像体2: (+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシプロピル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド。[α]D (MeOH) = +22.29°; Anal. C21H19N3O5S・0.14 H2Oの計算値: C, 63.70; H, 4.91; N, 10.61. 実測値: C, 63.68; H, 4.92; N, 10.45。
【0203】
〔実施例4〕
(+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−3−メチルビフェニル−4−スルホン−アミド及び (−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−3−メチルビフェニル−4−スルホン−アミド
【化18】

試薬 4−ブロモ−2−メチル−N−(6−{1−[(トリメチルシリル)オキシ]エチル}ピリジン−2−イル)ベンゼンスルホンアミドを、上記実施例2で 4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミドの製造について記載した手順により製造した。このスルホンアミド試薬 (0.11g, 0.3mmol) に、4−シアノフェニルボロン酸 (0.087g, 0.59mmol)、Pd(PPh3)4 (0.034, 0.03mmol)、炭酸ナトリウム (0.1g, 1.18mmol)、DMF (2mL) 及び水 (1mL) を加え、この混合物をマイクロ波管に入れ、マイクロ波で200℃で30分間加熱した。この混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、水及びブラインで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン中 15→70% EtOAc) による精製は上記表題の生成物を与えた (0.081g, 74%)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.19 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 7.70-7.77 (m, 2 H), 7.63-7.69 (m, 2 H), 7.57 (t, J = 8.0 Hz, 1 H), 7.46-7.53 (m, 2 H), 7.00 (m, 1 H), 6.81 (m, 1 H), 4.78 (m, 1 H), 2.78 (s, 3 H), 1.44 (d, J = 6.6 Hz, 3 H); C21H20N3O5S の 計算値 HRMS (ESI) m/z 394.1220, 実測値 394.1215;
分取鏡像体分離法は上記実施例2のために用いたのと同様であった。鏡像体の分離に用いた分取クロマトグラフィー条件は、キラル固定相としての Chiralcel OJ-H (トリス−(4−メチル安息香酸)セルロース, 250×21mm, 5μのセミ分取カラム (Chiral Technologies, Inc.) からなっていた。カラム温度を35℃に保持した。用いた移動相は、50mL/minの流速及び140barの一定圧力で定組成に保持された、調節剤としての25%のイソプロパノールを含む超臨界CO2であった。
【0204】
鏡像体1: (−)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−3−メチルビフェニル−4−スルホン−アミド。[α]D (MeOH) = −12.12°; Anal. C21H19N3O5S・0.21 H2Oの計算値: C, 63.49; H, 4.93; N, 10.58. 実測値: C, 63.45; H, 4.73; N, 10.54。
鏡像体2: (+)−4'−シアノ−N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−3−メチルビフェニル−4−スルホン−アミド。[α]D (MeOH) = +11.43°; Anal. C21H19N3O5S・0.20 H2Oの計算値: C, 63.52; H, 4.92; N, 10.58. 実測値: C, 63.55; H, 4.85; N, 10.51。
【0205】
〔実施例5〕
N−(6−アミノピリジン−2−イル)−4−クロロ−2−フルオロ−5−メチルベンゼンスルホンアミド
【化19】

ピリジン (7mL) 中の 2,6−ジアミノピリジン(178mg, 1.6mmol, 2.2equiv) の溶液に24℃で、4−クロロ−2−フルオロ−5−メチルベンゼンスルホニルクロリド (188mg, 0.735mmol, 1equiv) を加えた。18h後に、反応混合物を真空濃縮した。生成した残留物を飽和塩化アンモニウム水溶液 (20mL) 及び酢酸エチル (20mL) の間に分配した。有機層を分離し、水層を酢酸エチル (2×20mL) で抽出した。集めた有機物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。分取HPLC による精製は生成物を与えた (69 mg, 27%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.80 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 7.42 (t, J = 8.3 Hz, 1 H), 7.08 (d, J = 9.4 Hz, 1 H), 6.83 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 6.00 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 5.91 (s, 2 H), 2.38 (s, 3 H); C12H12N3O2ClFSとしての計算値 m/z 316.0318; 実測値: 316.0322; Anal. C12H11N3O2ClFS・0.27 CH3CO2H の 計算値: C, 45.37; H, 3.67; N, 12.66; 実測値: C, 45.08; H, 3.67; N, 12.65。
【0206】
〔実施例9〕
4'−シアノ−N−[6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド
【化20】

【0207】
i. N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−2,2−ジメチルプロパンアミドの製造
【化21】

メタノール (10mL) 中の N−(6−ホルミルピリジン−2−イル)−2,2−ジメチルプロパンアミド (3.0g, 14.9mmol) の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム (1.37g, 37.1mmol) を加え、3時間攪拌した。この混合物を酢酸エチル (50mL) で希釈した。この混合物を塩酸水溶液 (2×30mL, 0.1N) 及び飽和重炭酸ナトリウム (2×50mL) で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥し、濾過し、濃縮して上記表題の中間体を白色固体として得た (2.49g, 80%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.16 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 8.00 (br s, 1 H), 7.71 (t, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.12 (d, J = 7.5 Hz, 1 H), 4.05-3.96 (m, 2 H), 1.35 (s, 9H); LRMS (ESI): m/z: 209.2。
【0208】
ii. 6−(アミノピリジン−2−イル)メタノールの製造
【化22】

ジオキサン (15mL) の溶液に、N−[6−(1−ヒドロキシエチル)ピリジン−2−イル]−2,2−ジメチルプロパンアミド (1.5g, 7.2mmol) 及び塩酸水溶液 (6N, 15mL) を加え、この混合物を90℃で14h攪拌した。この溶液を0℃に冷却し、ジエチルエーテル (2×30 L) と共に磨砕し、水層を水酸化ナトリウムの使用により約pH8に中和した。この混合物をクロロホルム/IPA (10:1, 50mL) で希釈した。この混合物を飽和ブライン溶液 (2×50mL) で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、濃縮して上記表題の中間体を白色固体として得た (0.86g, 96%)。HPLC: Rt 0.628min. (99.5% 面積)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.48 (t, J = 7.4 Hz, 1 H), 6.66 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 6.50
(d, J = 8.4 Hz, 1 H), 4.58 (s, 2 H), 4.23 (bs, 2 H). LCMS (ESI): m/z: 125.2。
【0209】
iii. 6−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)ピリジン−2−アミン
の製造
【化23】

ジクロロメタン (15mL) の溶液に、(6−アミノピリジン−2−イル)メタノール (0.72g, 5.8mmol)、tert−ブチル(クロロ)ジメチルシラン (1.05g, 6.95mmol) 及びトリエチルアミン (1.05mL, 7.53mmol) を加えた。この混合物を24h攪拌し、飽和重炭酸ナトリウム (2×30mL) 及び塩酸水溶液 (2×30mL, 0.1N) で洗浄した。有機層を無水 Na2SO4 上で乾燥し、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル (1:1) で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーを用い、精製を行い、画分を一緒にし、濃縮して表題の生成物を白色固体として得た (1.06g, 70%)。HPLC: Rt 2.58 min. (96.5% 面積)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3), (: 7.34 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 6.75 (d, J = 7.6 Hz, 1 H), 6.25 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 4.54 (s, 2 H), 4.27 (bs, 2 H), 0.84 (s, 9 H), 0.11 (s, 6 H); LRMS (ESI): m/z: 239.2。
【0210】
iv. N−[6−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)ピリジン−2−イル]−4'−シアノビフェニル−4−スルホンアミドの製造
【化24】

ジクロロメタン (3mL) の溶液に、6-({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)ピリジン−2−アミン (0.15g, 0.63mmol)、4'−シアノビフェニル−4−スルホニルクロリド (0.18g, 0.63mmol) 及びピリジン (1.0mL) を加えた。この混合物を3時間攪拌し、次いで飽和重炭酸ナトリウム (2×30mL) 及び塩酸水溶液 (2×30mL, 0.1N) で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル (1:1) で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーを用い、精製を行い、一緒にした画分を濃縮して上記表題の中間体を白色固体として得た (0.21g, 76%)。HPLC: Rt 4.236 min. (81% 面積)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 7.89 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.52-7.49 (m, 4 H), 7.43 (t, J = 7.6 Hz, 1 H), 6.87 (d, J = 8.6 Hz, 1 H), 6.59 (d, J = 7.3 Hz, 1 H), 6.22 (d, J = 8.0 Hz, 1 H), 4.55 (s, 2 H), 0.82 (s, 9 H), 0.05 (s, 6 H); LRMS (ESI): m/z: 480.1。
【0211】
v. 4'−シアノ−N−[6−(ヒドロキシメチル)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミドの製造
エタノール (5mL) の溶液に、N−[6−({[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)ピリジン−2−イル]−4'−シアノビフェニル−4−スルホンアミド (0.21g, 0.44mmol) 及び塩酸水溶液 (1.0mL, 1N) を加えた。この混合物を2時間攪拌し、次いで酢酸エチル (40mL) で希釈した。この混合物を飽和重炭酸ナトリウム (2×30mL) 及び塩酸水溶液 (2×30mL, 0.1N) で洗浄した。有機層を無水 Na2SO4 上で乾燥し、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチル (1:1) で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーを用い、精製を行い、精製した画分を一緒にし、濃縮した。残留物を酢酸エチルから再結晶し、真空乾燥して上記表題の生成物をオフホワイト色結晶性固体として得た (0.13g, 79%)。HPLC: Rt 2.450min. (99.5% 面積)。 1H NMR (400 MHz, CD3OD), (: 7.92 (d, J = 8.6 Hz, 2 H), 7.71-7.66 (m, 6 H), 7.53 (t, J = 8.1 Hz, 1 H), 6.94(d, J = 8.6 Hz, 1 H), 6.83 (d, J = 8.1 Hz, 1 H), 4.39 (s, 2 H); HRMS (ESI): m/z: 計算値 (C19H16N3O3S): 366.0912; 実測値: 366.0914。
【0212】
方法C
〔実施例6〕
N−(6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)−4−クロロ−2−フルオロ−5−メチルベンゼンスルホンアミド
【化25】

ピリジン (3mL) 中の (6−アミノ−4−メチルピリジン−2−イル)カルバミン酸tert−ブチル (146mg, 0.652mmol, 1equiv) の溶液に24℃で、4−クロロ−2−フルオロ−5−メチルベンゼンスルホニルクロリド (200mg, 0.782mmol, 1.2equiv) を加えた。24hの後、反応混合物を真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。残留物を飽和塩化アンモニウム水溶液 (10mL) で希釈し、生成した溶液を酢酸エチル (3×5mL) で抽出した。集めた有機物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。
ジクロロメタン (3mL) 中の粗生成物の溶液に、トリフルオロ酢酸 (1mL) を24℃で加えた。16hの後、反応混合物を真空 (〜25mm Hg) で濃縮した。高速フラッシュクロマトグラフィー (0.5→3% メタノール/ジクロロメタン) による精製により指名された化合物を得た (212mg, 98%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6),δ: 12.00 (br s, 1 H), 7.82 (d, J = 7.8 Hz, 1 H), 7.49 (d, J = 9.6 Hz, 1 H), 6.51 (br s, 2 H), 6.03 (s, 1 H), 5.74 (s, 1 H), 2.34 (s, 3 H), 2.05 (s, 3 H); C13H14N3O2ClFS としての計算値 m/z: 330.0474; 実測値: 330.0470。
【0213】
〔実施例7〕
N−(6−アミノピリジン−2−イル)−4−ブトキシベンゼンスルホンアミド
【化26】

4−ブトキシフェニルスルホニルクロリド (160μmol, 2.0eq, 無水ピリジン中0.40Mの400μL) 及び (6−アミノピリジン−2−イル)カルバミン酸 tert−ブチル (80μmol, 1.0eq, 無水ピリジン中0.20Mの400μL) を、攪拌棒を備えた試験管 (75×10mm, 使用前に110℃で16hの加熱により乾燥) に加えた。試験管をParafilmで覆い、周囲温度で24h攪拌した。溶剤 (ピリジン) を真空蒸発した。トリフルオロ酢酸 (320μL, 52.0eq., 過剰, 無希釈) を試験管に加えた。試験管に蓋をし、周囲温度で5hボルテックスした。過剰の FAを真空除去し、残留物を DMSO (1.340mL) に溶解し、HPLCにより精製した。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ: 7.73 (d, J = 7.7 Hz, 2 H), 7.21 (t, J = 7.2 Hz, 1 H), 6.96 (d, J = 6.9 Hz, 1 H), 6.10 (d, J = 6.1 Hz, 1 H), 5.92 (d, J = 5.9 Hz, 1 H), 3.96 (t, J = 6.6 Hz, 1 H), 1.64 (m, 2 H), 1.37 (m, 2 H), 0.87 (t, J = 7.4 Hz, 3 H)。 LRMS m/z: 322.0。
【0214】
方法D
〔実施例8〕
4'−シアノ−N−[6−(エチルアミノ)ピリジン−2−イル]ビフェニル−4−スルホンアミド
【化27】

メタノール (1mL) 中の N−(6−アミノピリジン−2−イル)−4'−シアノビフェニル−4−スルホンアミド (0.08g, 0.23mmol) の懸濁液に、アセトアルデヒド (0.02mL, 0.34mmol)) 及びモレキュラーシーブ (4Å) を加えた。生成した懸濁液を30分間攪拌した後、シアノ水素化ホウ素ナトリウム (0.043g, 0.70mmol) を加えた。6hの後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、水層をジクロロメタン (2×10mL) で抽出した。一緒にした有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。高速フラッシュクロマトグラフィー (ヘキサン中 25% EtOAc) による精製により生成物を得た (0.055g, 63%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3),δ: 8.03 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.73 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.65 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.62 (d, J=8.6 Hz, 2 H), 7.40 (t, J=8.3 Hz, 1 H), 6.64 (d, J=8.1 Hz, 1 H), 5.88 (d, J=8.3 Hz, 1 H), 3.10 - 3.21 (m, 2 H) 1.23 (t, J=7.2 Hz, 3 H); LRMS (ESI) m/z: 379.12; Anal. C20H18N4O2S としての計算値: C, 63.47; H, 4.79; N, 14.80. 実測値: C, 63.11; H, 4.82; N, 14.63。
【0215】
更に、表1に示す残りの実施例は、上記実施例に記載した方法により適切な出発物質を用いて当業者によって製造できる。
【表1】

【0216】
【表2】

【0217】
【表3】

【0218】
表1において、用語「min」は分を指し;用語「MS」は質量分析を指し;用語 m/z は質量/電荷比を指し;用語「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを指し;用語「Ki」は上記のアッセイにより測定した 11βHSD1 に対する活性を指し;そして用語N/Aは試験せずを指す。
【0219】
【表4】

【0220】
本発明の種々の実施形態を上記で説明してきたが、当業者は本発明の範囲内に入るであろう更なる僅かな変更を行なうことができることを明確に理解する。本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態の何れによっても限定されず、請求項及びそれらの均等物によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物、又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
式中、
1は、H又は(C1−C4)アルキルであり;
2は、H又は(C1−C4)アルキルであり;
3は、H、ハロ、(C1−C6)アルキル又は(C1−C6)アルコキシであり;
そして該化合物がキラル化合物である場合には、該化合物はその(+)鏡像体である。
【請求項2】
1がHである、請求項1に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物。
【請求項3】
3がH又はCH3である、請求項1又は2に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物。
【請求項4】
2が−CH2CH3である、請求項1〜3の何れか1項に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物。
【請求項5】
下記式の化合物:
【化2】

(ここで、該化合物がキラルである場合には、該化合物はその(+)鏡像体である)
又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物からなる群から選択される化合物。
【請求項6】
式II:
【化3】

を有する化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物。
【請求項7】
有効量の請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物又はその医薬上許容される塩、水和物若しくは溶媒和物、及び医薬上許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
哺乳動物に、有効量の請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物を投与することを含む、11βHSD1 阻害剤での治療により利益を得るであろう疾患、症状又は障害の治療方法。
【請求項9】
疾患、症状又は障害が2型糖尿病である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
疾患、症状又は障害が、メタボリック症候群、インスリン抵抗症候群、肥満、緑内障、脂質異常症、高血糖症、高インスリン血症、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、認知症、うつ病、又は肝臓が標的臓器である疾患から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
疾患、症状又は障害が緑内障であり、そして上記の方法が、哺乳動物に、有効量の請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物を、プロスタノイド受容体作動剤と組み合わせて投与することを含み、該作動剤がラタノプロストである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
医薬として使用するための、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物。
【請求項13】
11βHSD1 阻害剤での治療により利益を得るであろう疾患、症状又は障害(例えば2型糖尿病)を治療するための医薬の製造における、請求項1〜6の何れか1項に記載の化合物、その医薬上許容される塩、水和物又は溶媒和物の使用。
【請求項14】
実施例に関連して本明細書に実質的に記載された新規化合物、塩、水和物、溶媒和物、中間体、治療方法、医薬組成物又は使用。

【公表番号】特表2008−543825(P2008−543825A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516436(P2008−516436)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001581
【国際公開番号】WO2006/134467
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】