説明

N−(1−オキシペンチル)−N−[[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)[1,1’−ビフェニル]−4−イルメチル]−L−バリン(バルサルタン)の調製の方法

4-ブロモメチル-2’-(1-トリフェニルメチルトリアゾール-5-イル)ビフェニルから出発して、式7のN-[2'(トリフェニル-メチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルをL-バリンべンジルエステルとの反応により獲得し、そして塩化バレリルとの反応及び保護基の除去により転換される。この方法は、第一段階で獲得した式7のN-[2'(トリフェニル-メチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルを、塩酸により式(III)のN-[2'(トリフェニル-メチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリドに転換することからなり、これは任意に再結晶化されて良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明の分野は、INN名バルサルタンの下で知られている式I
【化1】

のN-(1-オキソペンチル)-N-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-L-バリンの改良された調製方法に関連する。
【0002】
上記薬物は、高血圧を調節する役割を果たす、アンギオテンシンIIレセプターのアンタゴニストとして知られている薬物の集団に属する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
式Iのバルサルタンは、以下の方法を介して刊行された特許(米国特許第5,399,578号)に従い生産されている。
【0004】
方法A
【化2】

【0005】
合成は、ブロモ誘導体1及びL-バリンのメチルエステル(2)から始まり、一方で、キーとなる段階は、トリブチルスタンニルアジドによるテトラゾール環の構築である。引用された米国特許は更に、L-バリンのベンジルエステルによるこの方法の変形を記載し、ここでベンジル基は触媒による水素化により除去されている。
【0006】
上記方法の欠点は、テトラゾール環を構築するために毒性のトリブチルスタンニルアジドを使用すること及びこの段階の間にアジ化水素が発生する(develop)ことが理由で爆発することを防ぐために安全に非常に依存するからである。
【0007】
方法B
【化3】

【0008】
方法Bは、市販されて入手可能な4-ブロモメチル-2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)ビフェニル(6)から出発する。この方法の欠点は、化合物9以外の全ての中間体が結晶化できない油状の物質であるという事実である。従って、最終産物は、非常に汚染されておりそして収率が有意に損なわれる繰り返し結晶化が必要となる。
【0009】
USP 5,399, 578による方法を正確に再現することには幾分問題がある。例55に記載されている、上記遊離塩基を使用する方法Bは、2つの段階において、重要な(weighted)量に関するデータが全く無く、そして前記遊離塩基の場合(例55a)、前提となる反応と全く関係ない、例57aの類似物に言及にさえもされている。更に、この例における合成は、バルサルタンのみならずそのベンジルエステルにも完成に至っていない。我々は、例55に類似する手順を使用する場合、バルサルタンを純度がたったの85%で獲得し、それは所望の純度に至るために多数回再結晶化されなければならず、それには使用される原材料の量の増加及び労力の増加までも伴い、コストの増加を伴う。工業上、この方法は現実性に乏しい。
【発明の開示】
【0010】
発明の開示
本発明の目的は、INN名バルサルタンの下で知られている、式IのN-(1-オキソペンチル)-N-[[2'-(1H-テトラゾール-5-yl)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-L-バリンの改良された調製方法である。本質は、上記方法Bにおいて使用された、中間体産物7を、非常に純粋な形態において、そのヒドロクロリドの形態において単離することである。
【0011】
本発明の詳細な説明は次の通りである。
【0012】
方法Bの出発化合物、ブロモ誘導体6は、次のL-バリンベンジルエステルとの反応により、純度が僅か約80%の産物を提供する。同様に、かかる中間体を使用することにより、汚染されたバルサルタンがもたらされ、それは多数回再結晶化されなければならず、経済的コストの上昇を伴う。化合物7のヒドロクロリドを合成することは容易ではなく、何故なら、トリチル保護基は、酸性環境中において不安定であり、そして任意の過剰な塩化水素が、特に高温において、徐々に産物の脱トリチル化をもたらす。我々の方法において、式III
【化4】

のヒドロクロリドは、混合物6とL-バリンベンジルエステルのアセトニトリル中での反応の後の塩化水素酸での反応混合物の酸性化及び適切な溶媒、好適には、酢酸エチルによるヒドロクロリドの抽出をすることにより獲得されている。抽出物を、水で洗浄(ここでヒドロクロリドIIIが完全に溶けない)後、純度90%超を有する結晶産物が、トリエンを加えた後の抽出物の段階的脱水により又は非極性溶媒、好適にはヘキサンの添加により獲得されている。ヒドロクロリドIIIは、遊離塩基を酢酸エチル又はトルエン中に転移させて当量の塩酸、気体状塩酸を加えること又は適切な溶媒、好適にはメタノール中に溶かした塩化水素を加えることによっても獲得されて良い。
【0013】
本発明は更に詳細に以下の実施例において説明されている。本発明の方法における改良を示す例は、純粋に例示的な性質を有し、そして本発明をいかなる観点においても限定することは無い。
【実施例】
【0014】
実施例
実施例1
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリド(III)
4-ブロモメチル-2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)ビフェニル(5g、9mmol)、L-バリンベンジルエステル4-トルエンスルホネート(3.4g、9mmol)及びエチルジイソプロピルアミン(3.8ml)をアセトニトリル中で2時間に渡り還流させた。混合物を冷却した後、この混合物を酢酸エチル(40ml)、脱イオン水(20ml)で希釈し、そして塩酸で酸性化してpH 1にした。生ずる層を分離した後、有機層を、水で洗浄(4×5ml)し、3mlのトルエンを加え、それを蒸発させ、酢酸エチル(10ml)中40℃で混合した。2mlのヘキサンを加えた後、産物が結晶化した;4.62g(72%)。融点107℃〜111℃。産物の純度は、90%超であった。
【0015】
実施例2
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリド(III)
4-ブロモメチル-2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)ビフェニル(5g、9mmol)、L-バリンベンジルエステル4-トルエンスルホネート(3.4g、9mmol)及びエチルジイソプロピルアミン(3.8ml)をアセトニトリル中で2時間に渡り還流させた。冷却した後、アセトニトリルを真空蒸発器中で蒸発させ、生ずる混合物を酢酸エチル(20ml)で希釈し、水で洗浄(4×5ml)し、濃縮して10mlの体積にした。当量の濃塩酸を加えて−15℃に冷却した後、産物が結晶化した;4.0g(62%)。融点107℃〜111℃。産物の純度は、90%超であった。
【0016】
実施例3
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリド(III)
4-ブロモメチル-2'-(1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)ビフェニル(5.29kg)、L-バリンベンジルエステル4-トルエンスルホネート(3.6kg)及びエチルジイソプロピルアミン(4l)をアセトニトリル(24l)中で2時間に渡り還流した。アセトニトリルを蒸発させた後(遊離塩基のHPLC:79.7%)、この混合物を酢酸エチル(24l)で希釈し、脱イオン水(2×4l)で洗浄し、5℃に冷却した後、濃塩酸(0.83kg)を滴下して加えた。産物を吸引して乾燥させた後、5.7kg(84%)の産物を獲得した。融点107℃〜111℃、HPLC92%であった。
【0017】
実施例4
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-N-バレリル-(L)-バリンベンジルエステル
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリド(III)(625g)をトルエン(2800ml)中で混合し、そしてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(490ml)を25℃で加えた。30分に渡り撹拌した後、それを4℃に冷却して塩化バレリル(203g)を1.5時間の間に4〜10℃に冷却しながら加えた。TLCコントロールの後、50mlの水を加えて撹拌を更に30分に渡り冷却をとめて続けた。粗製の混合物をろ過し、フィルター上の沈殿物をトルエン(300ml)で洗浄し、そして生ずる溶液を水で洗浄(2×250ml)した。硫酸マグネシウム(50g)により乾燥させた後、それをろ過して蒸発させ、800gの暗赤色の油状物質を獲得した。
【0018】
実施例5
N-(1-オキソペンチル)-N-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-(L)-バリン(バルサルタン)
N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-N-バレリル-(L)-バリンベンジルエステル(660g)をメタノール(1400ml)中に沸騰下で溶かし、そしてこの混合物を更に8時間に渡り還流させた。脱トリチル化を行った後、Pd/C触媒(75g、3%、50%水)を加え、そしてこの混合物を40℃で16時間に渡り水素化(1atm)した。TLCによってチェックした後、混合物をろ過してin vacuoで蒸発させた。イソプロパノール(200ml)及び脱鉱物水(800ml)を加え、pHを、10%KOH (1350ml)を加えることによって8に調節した。それをトルエンで抽出(2×750ml)し、そして酢酸エチル(1250ml)を加えた後、水層を36%のHCl(200ml)で酸性化し、pH=1にした。有機層を分離した後、水性相を一回以上酢酸エチル(600ml)で抽出した。組み合わせた有機層を脱イオン水で洗浄(2×250ml)し、そして水の共沸分離により、50℃の溶液温度で蒸発させた。粗製の産物を酢酸エチル(1200ml)に50℃で溶かし、そしてシクロヘキサン(2500ml)を、2時間の間に生ずる溶液に滴下して加え、その間に物質が結晶化され;10℃に冷却した後、それを吸引してin vacuo、50℃で乾燥させ、250g(67%)のバルサルタン;HPLC 98.3%を獲得した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
INN名バルサルタンの下で知られている式I
【化1】

のN-(1-オキソペンチル)-N-[[2'-(1H-テトラゾール-5-イル)[1,1'-ビフェニル]-4-イル]メチル]-L-バリンを調製する方法であって、ここでN-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]- (L)-バリンベンジルエステルを、4-ブロモメチル-2'- (1-トリフェニルメチルテトラゾール-5-イル)ビフェニルから出発して、L-バリンベンジルエステルとの反応により獲得し、そしてそれを塩化バレリルとの反応及び保護基を除去することを介してバルサルタンに転換しており、
最初の段階で獲得した式7
【化2】

のN-[2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルを、塩酸との反応により、任意に再結晶化される式III
【化3】

のN-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリドに転換することを特徴とする方法。
【請求項2】
式IIIの化合物を、非極性溶媒中N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステル塩基の溶液を塩化水素酸又は塩酸により酸性化し、そして生じる式IIIのヒドロクロリドを同時抽出することにより調製することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IIIの化合物を酢酸エチルで抽出し、そしてその後それから結晶化することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
式7のN-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルの遊離塩基を酢酸エチル又はトルエン中へと移し、そしてその後、当量の塩酸、気体状塩酸又は有機溶媒、好適には、メタノール中に溶かした塩酸を加え、式IIIの化合物をそこから結晶化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式IIIの化合物の結晶化を、溶液から水を除去することもしくは非極性溶媒を加えることもしくは当該溶液を冷却することにより、任意に記載の方法の組み合わせにより行うことを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
C5〜C8脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素、もしくは任意にC6〜C9芳香族炭化水素、もしくは任意にC4〜C8エーテルを非極性溶媒として使用することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン又はジエチルエーテルを非極性溶媒として使用することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式III
【化4】

の化合物N-[(2'-(1-トリフェニルメチル-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル)メチル]-(L)-バリンベンジルエステルヒドロクロリド。
【請求項9】
前記化合物が結晶質状態である、請求項8に記載の化合物。

【公表番号】特表2007−500733(P2007−500733A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529564(P2006−529564)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/CZ2004/000029
【国際公開番号】WO2004/101534
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504236341)
【Fターム(参考)】