説明

N−(4−ピリジル)エチレンジアミン誘導体

【課題】 式:
【化1】


で示される化合物の製造法を見出す。
【解決手段】 上記化合物の効率的な合成中間体として、式:
【化2】


(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、又はR2及びR3は一緒になってオキソであり、R4は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキル、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物又はその塩を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤を製造する上で重要な中間体であるN-(4-ピリジル)エチレンジアミン誘導体、それらの製造方法、及びそれらを用いた抗菌剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、抗菌剤として、式:
【化1】

(式中、R5はアルキルであり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである。)で示される化合物が記載されている。
また、その中間体として、式:
【化2】

で示される化合物が記載されている。
【特許文献1】国際公開第03/078440号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
式:
【化3】

(式中、R5はアルキルであり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである。)で示される化合物の製造方法を見出す。
【課題を解決するための手段】
【0004】
式:
【化4】

(式中、R5はアルキルであり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである。)で示される化合物の合成中間体として、以下の(1)に示す化合物又はその塩が有用であることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1) 式:
【化5】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、又はR2及びR3は一緒になってオキソであり、R4は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキル、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物又はその塩。
(2) 式:
【化6】

(式中、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物と、式:
【化7】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルである。)で示される化合物を反応させ、
式:
【化8】

(式中、R、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
(3) 式:
【化9】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物を還元し、式:
【化10】

(式中、R、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
(4) 式:
【化11】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物と、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化12】

(式中、R、R1、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物又はその塩を製造する方法。
(5) 式:
【化13】

(式中、R5はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物と、式:
【化14】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルである。)で示される化合物を反応させ、式:
【化15】

(式中、R及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
(6) 式:
【化16】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R5はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物を還元し、式:
【化17】

(式中、Rは前記と同意義であり、R5はアルキルである。)で示される化合物を製造する方法。
(7) 式:
【化18】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物に、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、
式:
【化19】

(式中、R、R1及びR5は前記と同意義である。R4はR1と同じアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物又はその塩を製造する方法。
(8) 式:
【化20】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩と、式:
【化21】

(式中、R6はアミノ保護基であり、R7及びR8はそれぞれ独立してカルボキシ保護基であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化22】

(式中、R、R1、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びXは前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
(9) (4)又は(7)記載の方法により、式:
【化23】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩を製造する工程を含む、式:
【化24】

(式中、R及びR5は前記と同意義であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである)で示される化合物を製造する方法。
(10) 式:
【化25】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、R4は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物の硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ショウノウ-10-スルホン酸塩又はそれらの水和物。
(11) 式:
【化26】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩と、式:
【化27】

(式中、R6はアミノ保護基であり、R7及びR8はそれぞれ独立してカルボキシ保護基であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化28】

(式中、R、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びXは前記と同意義である。)で示される化合物及びその塩を製造する方法。
【発明の効果】
【0005】
上記(1)に示す化合物又はその塩を用いることにより、より効率的に、式:
【化29】

(式中、R5はアルキルであり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである。)で示される化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書中、各用語の定義は以下のとおりである。
「アルキル」とは、直鎖又は分枝状のC1〜C6アルキルを包含し、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t-ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等が例示される。好ましくはC1〜C3アルキル、特に好ましくはメチル、エチルである。
「アリール」とは、炭素数6〜14個の単環又は縮合の芳香族炭素環式基を意味する。例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル等が挙げられる。特に、フェニルが好ましい。
「アラルキル」とは、1〜3個の上記アリールが置換した上記アルキルを意味し、例えば、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。特に、ベンジルが好ましい。
「アルキルオキシカルボニル」のアルキルは、上記アルキルと同意義である。
「アラルキルオキシカルボニル」のアラルキルは、上記アラルキルと同意義である。
「アリールオキシカルボニル」のアリールは、上記アリールと同意義である。
「置換されていてもよいアラルキル」、「置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル」、「置換されていてもよいアリールオキシカルボニル」、「置換されていてもよいアリールカルボニル」の置換基としては、アルキル、ハロゲン、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシ等が挙げられる。
「ハロアルキル」は、1〜3個のハロゲンで置換された上記アルキルを意味し、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル、トリクロロメチル、ジクロロメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1,1−ジクロロエチル、3,3,3−トリクロロ−n−プロピル等が挙げられる。好ましくは、トルフルオロメチル、トリクロロメチルである。
「アルコキシ」のアルキル部分は、上記アルキルと同意義であり、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i-プロポキシ、t-ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ等が例示される。好ましくはC1〜C3アルコキシ、特に好ましくはメトキシである。
「アミノ保護基」としては、アルコキシカルボニル(例えば、t-ブトキシカルボニル)、置換されていもてよいアラルキルオキシカルボニル(ベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル)、置換されていてもよいアリールカルボニル(例えば、p-ニトロベンゾイル)、置換されていてもよいアシル(例えば、ホルミル、クロロアセチル)等が例示される。
「カルボキシ保護基」としては、アルキル(例:メチル、エチル、t-ブチル)、置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル、ベンズヒドリル、p-メトキシベンジル、p-ニトロベンジル)、シリル基(t-ブチルジメチルシリル、ジフェニルt-ブチルシリル)等が例示される。
「脱離基」としては、例:ヒドロキシ、ハロゲン(F、Cl、Br、I等)、カルバモイルオキシ、置換カルバモイルオキシ、アシルオキシ、メタンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ等)が挙げられる。特にハロゲンが好ましい。
「塩」としては、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、臭化水素酸等)、有機酸塩(例えば、シュウ酸塩、酢酸塩、酪酸塩、ショウノウスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、安息香酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩、アジピン酸塩、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸等)が挙げられる。これらの中でも、結晶として単離できる塩が特に好ましい。例えば、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ショウノウ-10-スルホン酸塩等が好ましい。
「水和物」には、0.5水和物、1水和物、1.5水和物、2水和物等が含まれる。
【0007】
【化30】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)
【0008】
第1工程
式Iで示される化合物に、式IIで示される化合物を反応させ、式IIIで示される化合物を製造する工程である。
本工程は、アミンとカルボン酸からアミドを製造するために使用される一般的な合成法を使用することができる。例えば、酸クロリドを式Iで示される化合物に反応させ、混合酸無水物に変換し、式IIで示される化合物を反応させることにより、式IIIで示される化合物を製造することができる。混合酸無水物の製造は、塩基の存在下で行うことが好ましく、例えば、塩基として、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エン)等を用いることができる。
溶媒としては、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル等を用いることができる。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。
【0009】
第2工程
式IIIで示される化合物を還元して、式IVで示される化合物を得る工程である。
還元剤としては、アミドの還元に使用できる還元剤であればよく、例えば、Red−Al(ナトリウム ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド)、リチウムアルミニウムヒドリド、ボラン等を用いることができる。特に、Red−Alが好ましい。還元剤の量は、式IIIで示される化合物に対し、1〜10当量使用することができる。例えば、Red−Alの場合、1〜6当量、例えば、4当量使用することができる。溶媒としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。
【0010】
第3工程
式IVで示される化合物に、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式Vで示される化合物を製造する工程である。
本工程は、アミンと酸クロリドや酸無水物等の反応等で知られる公知の方法を用いればよい。本工程は、塩基の存在下でも行うことができる。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、酢酸エチル等を用いることができる。
【0011】
【化31】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はR1と同じアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、式VI及びVII中のR5はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、式VIII及びV中のR5はアルキルである。)
【0012】
第4工程
式VIで示される化合物に、式IIで示される化合物を反応させ、式VIIで示される化合物を製造する工程である。
本工程は、アミンとカルボン酸からアミド誘導体を製造するために使用される一般的な合成法を使用することができる。例えば、式VIで示される化合物にハロゲン化剤を反応させ、酸クロリドに変換し、式IIで示される化合物を反応させることにより、式VIIで示される化合物を製造することができる。ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、臭化チオニル、オキシ塩化リン、三塩化リン等を用いることができる。酸クロリドの製造においては、溶媒としては、酢酸エチル、塩化メチレン、アセトニトリル等を用いることができる。
酸クロリドと式IIで示される化合物の反応は、塩基の存在下で行うことが好ましい。例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ-7-エン)等を用いることができる。塩基は、混合して用いてもよい。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸エチル、アセトニトリル等を用いることができる。溶媒も混合して用いてもよい。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。
なお、式VIで示される化合物は、グリシンに、ハロゲン化炭酸アルキル、ハロゲン化炭酸アラルキル、ハロゲン化炭酸アリール、(例えば、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸フェニル)又はニ炭酸ジ-t-ブチルを反応させることにより、製造することができる。例えば、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン)の存在下で行うことができる。
【0013】
第5工程
式VIIで示される化合物を還元して、式VIIIで示される化合物を得る工程である。
還元剤としては、アミドの還元に使用できる還元剤であればよく、例えば、Red−Al(ナトリウム ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド)、リチウムアルミニウムヒドリド、ボラン等を用いることができる。特に、リチウムアルミニウムヒドリドが好ましい。還元剤の量は、式VIIで示される化合物に対し、1〜10当量使用することができる。例えば、リチウムアルミニウムヒドリドの場合、1〜5当量、例えば、3当量使用することができる。溶媒としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を用いることができる。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。
【0014】
第6工程
式VIIIで示される化合物に、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式Vで示される化合物を製造する工程である。
本工程は、アミンと酸クロリドや酸無水物等の反応等で知られる公知の方法を用いればよい。本工程は、塩基の存在下でも行うことができる。反応は、0〜100℃、例えば、室温で行うことができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を用いることができる。
【0015】
【化32】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルであり、R6はアミノ保護基であり、R7及びR8はそれぞれ独立してカルボキシ保護基であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルであり、Xは脱離基である。)
【0016】
第7工程
式IXで示される化合物に、式Vで示される化合物を反応させ、式Xで示される化合物を製造する工程である。
本工程においては、反応を促進するために、よう化ナトリウム、臭化ナトリウム等を用いてもよい。
式Vで示される化合物は、式IXで示される化合物に対して、1〜5当量、好ましくは1〜2当量、使用することができる。
溶媒としては、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等)、エステル類(例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、炭化水素類(例えば、n-へキサン、ベンゼン、トルエン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ジメチルスルホキシド、水等があげられる。
反応温度は、0〜100℃、好ましくは、0〜50℃、より好ましくは、0〜30℃である。
また、SOをSに変換するためには、還元剤を用いればよい。還元剤としては、金属(例えば、亜鉛、錫等)、ヨウ化物(例えば、よう化カリウム等)等を用いることができる。
【0017】
第8工程
式Xで示される化合物から、式XIで示される化合物を製造する工程である。
触媒として、ルイス酸(例えば、塩化アルミニウム、塩化錫(SnCl2)、四塩化チタン等)、プロトン酸(例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸、ギ酸、酢酸等)等を用いることができる。
溶媒としては、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等)、エステル類(例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等)、炭化水素類(例えば、n-へキサン、ベンゼン、トルエン等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル等)、ニトロ類(例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン)、ジメチルスルホキシド、水、等があげられる。これらは、単独で使用してもよく、混合して用いてもよい。
脱保護反応中に、アニソール等を使用することで保護基由来の共生成物を捕捉することができ、式XIで示される化合物を効率よく得ることができる。
【0018】
本発明には、式:
【化33】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、R4は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ショウノウスルホン酸塩又はそれらの水和物も含まれる。
上記式で示される化合物は、へキサン等に容易に溶解するため、収率よく単離することは困難である。また、メタノール/水系では結晶化しない。本発明者は、塩として単離することを考え、各種の塩について検討した結果、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ショウノウ-10-スルホン酸(CSA)塩(例えば、(1S)-(+)-ショウノウ-10-スルホン酸塩)が、本化合物の塩として好ましいことを見出した。
特に、以下の化合物の塩又は水和物が好ましい。これらの塩は結晶化し、融点も高いので、工業的に使用しやすく、精製も容易であり、抗菌剤を合成する上で、非常に有用である。
【化34】

【0019】
(実施例)
以下に実施例をあげて説明するが、本発明の範囲を実施例に限定するものではない。
【化35】

参考例1
【0020】
N-メチルグリシンのTHF、1N-NaOH(1:1、22.4 mL)混合溶液中にニ炭酸ジ-t-ブチル(2.45 g, 11.2 mmol) を室温で加えた。原料の消失を確認し、さらに1時間攪拌した後、2N-HCl (11.2 mL)を加え、生成した混合物を酢酸エチル(30 mL x 2)で抽出した。有機層を合わせ、水(30 mL)で洗浄し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。このものをトルエン、ヘキサンの混合溶媒から再結晶することで、N-Boc-サルコシン (1.90 g, 93.9%)を無色の結晶として得た。
mp 90.1 ℃; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ10.5 (br s, 1H), 3.73 (dd, J = 4.9, 5.3 Hz, 2H), 3.38 (dd, J = 5.3, 5.3 Hz, 2H), 2.91 (s, 3H), 1.46 (s, 9H).
【実施例1】
【0021】
N-Boc-サルコシン (1.00 g, 5.55 mmol)とピバル酸クロリド (669 mg, 5.55 mmol)のTHF (27.7 mL)溶液にトリエチルアミン(1.55 mL)を0 oCで加え30分間攪拌した。そこに、4-アミノピリジン(522 mg)を加えた。反応混合物を1時間攪拌した後、水(30 mL)を加え、生じた混合物を酢酸エチル(30 mL x 2)で抽出した。有機層を合わせ、水(30 mL)で洗浄し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。このものをトルエン、ヘキサンの混合溶媒から再結晶することで、アミド体 (936 mg, 65.8%)を無色の結晶として得た。
mp 163 ℃; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ8.90 (br s, 1H), 8.48 (m, 2H), 7.44 (m, 2H), 3.97 (s, 2H), 3.01 (s, 3H), 1.50 (s,.9H).
【実施例2】
【0022】
アミド体の (45.0 g, 170 mmol)のトルエン (225 mL)溶液に、65%Red-Al トルエン溶液 (211 g, 678 mmol)をトルエン(98.0 mL)で希釈したものを-5 ℃で2.3時間かけて滴下した。反応混合物を3時間攪拌した後、酢酸エチル(99.0 mL)を同温で加えた。生じた溶液に4M NaOH 水溶液(180 mL)を加え、生じた混合物をトルエン、THFの1:1混合溶媒で(180 mL x 3)で抽出した。有機層を合わせ、10% NaCl水溶液 (180 mL x 2)で洗浄し、減圧濃縮することで粗生成物(44.93 g)を得た。このものを次の反応に精製することなく用いた。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ8.17 (md, J = 5.3 Hz, 2H), 6.42 (md, J = 5.3 Hz, 2H), 5.14 (br s, 1H), 3.50 (m, 2H), 3.30 (td, J = 5.6, 5.9 Hz, 2H), 2.89 (s, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz)δ170.8, 153.2, 149.6, 107.1, 80.0, 47.5, 41.6, 40.5, 28.3.
【実施例3】
【0023】
得られた粗アミンのTHF (225 mL)溶液に室温でニ炭酸ジ-t-ブチル(37.1 g, 170 mmol)を1時間かけて滴下した。反応混合物を1時間攪拌した後、減圧下、溶媒を留去し、粗生成物を得た。このものをシリカゲルクロマトグラフィー(from 16% to 50% ethyl acetate in hexane)で精製し、ジ-t-ブチルオキシカルボニル体 (53.8 g, 90% for 2 steps) を無色の固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz,スペクトルは1:1の回転異性体混合物として観測される)δ8.49 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 7.32 (dd, J = 4.8, m, 2H), 3.84 (m, 2H), 3.46 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.90 (s, 3H/2), 2.83 (s, 3H/2),1.52 (s, 9H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz,スペクトルは1:1の回転異性体混合物として観測される)δ155.4 (1C/2), 155.1 (1C/2), 152.9, 150.0, 149.9, 149.7, 118.2, 118.0, 82.0 (1C/2), 81.8 (1C/2), 79.9 (1C/2), 79.5 (1C/2), 47.3 (1C/2), 47.2 (1C/2), 46.8 (1C/2), 46.6 (1C/2), 35.4 (1C/2), 34.9 (1C/2), 28.4 (3C), 28.2 (3C).
【0024】
【化36】

参考例2
【0025】
グリシン(20.0 g, 266 mmol)、THF (133 mL)、4N NaOH 水溶液 (61.6 mL)の混合物中にクロロギ酸エチル(28.9 g, 266 mmol)を0 oCで10分かけて滴下した。原料が消失するまで攪拌した後、2N HClを加え、生じた混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、水で洗浄し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。このものをトルエン、ヘキサンの混合溶媒から再結晶することで、N-エトキシカルボニルグリシン (1.90 g, 93.9%)を無色の結晶として得た。
m.p. 58.0 ~ 58.5 oC; 1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ9.06 (br s, 1H), 5.28 (br s, 1H), 4.12 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 3.94 (s, 2H), 1.27 (t, J = 6.9 Hz, 3H).
【実施例4】
【0026】
N-エトキシカルボニルグリシン(3.00 g, 20.4 mmol)の酢酸エチル(20.4 mL)溶液に塩化チオニル(2.91 g, 24.5 mmol)を室温で加えた。混合物を60℃で1.5時間攪拌した後、溶媒を減圧下留去した。このものの酢酸エチル(34.0 mL)溶液を4-アミノピリジン (1.28 g, 13.6 mmol) のDMF (6.80 mL)溶液とトリエチルアミン(5.68 mmol)の混合物中に-15℃で滴下した。30分間攪拌した後、水(25 mL)を加え、生じた混合物を酢酸エチル(50 mL x 2)で抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水(25 mL x 2)で洗浄し、減圧濃縮することで粗生成物を得た。
1H NMR (CD3OD, 300 MHz)δ8.38 (md, J = 6.3 Hz, 2H), 7.64 (md, J = 6.6 Hz, 2H), 4.12 (q, J = 6.9 Hz, 2H), 3.94 (s, 2H), 1.27 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz) d 171.1, 150.6, 147.7, 114.9, 62.2, 45.4, 15.0.
【実施例5】
【0027】
LAH(1.53 g, 40.3 mmol)のTHF(20.0 mL)懸濁液に上記で得られたアミド体のTHF(20.3 mL)の懸濁液を0℃で滴下した。反応混合物を還流下4.5 h時間攪拌した後、0℃でメタノール(10 mL)、続いて、4 M NaOH 水溶液 (5 mL)を順次ゆっくりと滴下した。有機溶媒を減圧下留去した後、生じた残渣に2M NaOH 水溶液 (50 mL)を加え、生じた混合物をクロロホルム(100 mL x 2)で抽出した。有機層を合わせ、水(50 mL x 2)で洗浄し、減圧濃縮することでジアミン (1.23 g, 59.9% for 2 steps)を無色のオイルとして得た。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz)δ8.18 (td, J = 1.3, 6.3 Hz, 2H), 6.43 (td, J = 1.3, 6.3 Hz, 2H), 4.91 (br s, 1H), 3.22 (td, J = 5.3, 6.3 Hz, 2H), 2.85 (dd, J = 5.6, 6.3 Hz, 2H), 2.46 (s, 3H), 2.34 (br s, 2H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz)δ153.3, 149.5, 107.4, 50.1, 41.6, 36.1.
【実施例6】
【0028】
得られたジアミン(1.00 g, 6.61 mmol)のTHF (5.00 mL)溶液に室温でニ炭酸ジ-t-ブチル(2.89 g, 13.2 mmol)を滴下した。反応混合物を1時間攪拌した後、減圧下、溶媒を留去し、粗生成物を得た。このものをシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/へキサン)で精製し、ジ-t-ブチルオキシカルボニル体 (53.8 g, 90% for 2 steps) を無色の固体として得た。
1H NMR (CDCl3, 300 MHz,スペクトルは1:1の回転異性体混合物として観測される)δ8.49 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 7.32 (dd, J = 4.8, m, 2H), 3.84 (m, 2H), 3.46 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.90 (s, 3H/2), 2.83 (s, 3H/2),1.52 (s, 9H), 1.43 (s, 9H); 13C NMR (CDCl3, 75 MHz,スペクトルは1:1の回転異性体混合物として観測される)δ155.4 (1C/2), 155.1 (1C/2), 152.9, 150.0, 149.9, 149.7, 118.2, 118.0, 82.0 (1C/2), 81.8 (1C/2), 79.9 (1C/2), 79.5 (1C/2), 47.3 (1C/2), 47.2 (1C/2), 46.8 (1C/2), 46.6 (1C/2), 35.4 (1C/2), 34.9 (1C/2), 28.4 (3C), 28.2 (3C).
【0029】
【化37】

【実施例7】
【0030】
攪拌棒、羽根、温度計をつけた2 L 4頚フラスコにジ-t-ブチルオキシカルボニル体(43.6 g)、DMF (0.30 L)、母核クロリド (100.0 g)を窒素雰囲気下で加えた後、10℃に冷却し、臭化ナトリウム(22.2 g)を投入した。氷水冷中で一晩攪拌し、反応終了を確認した後、DMF (0.70 L)、ヨウ化カリウム (125.0 g)を加えてから-45℃まで冷却し、塩化アセチル(0.039 L)を10分かけて滴下した。反応混合物を約1時間攪拌した後、チオ硫酸ナトリウム5水和物 (96.4 g)、塩化ナトリウム(54.0 g)を含む氷冷水(10.8 L)を加えた20 L 4頚フラスコに反応液を滴下して固体を析出させた。氷冷下一時間攪拌した後、ヌッチェでろ取し、固体を氷冷した5%食塩水で2回洗浄した。取り出した固体を乾燥させることで、ヨウ化ピリジニウム体 (169.4 g) を得た。
1H NMR (DMSO-d6 スペクトルは1:1の回転異性体混合物として観測される):δ1.20 (s, 9H/2), 1.34 (s, 9H/2), 1.46 (s, 9H), 1.54 (s, 9H), 2.73 (s, 3H/2), 2.79 (d, 3H, J = 8.7 Hz), 2.89 (s, 3H/2), 3.20-3.54 (m, 5H), 3.76 (s, 3H), 4.02-4.18 (m, 2H), 4.90 (q, 1H, J = 7.0 Hz), 5.18-5.32 (m, 3H), 5.43 (s, 2H), 5.97 (dd, 1H, J = 5.0 Hz, 8.3 Hz), 6.84 (d, 1H, J = 4.5 Hz), 6.93 (d, 2H, J = 8.4 Hz), 7.20-7.48 (m, 12H), 8.09 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 8.74 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 9.74 (d, 1H, J = 8.4 Hz).
【実施例8】
【0031】
攪拌棒、羽根、温度計をつけた5 L 4頚フラスコにヨウ化ピリジニウム体 (147.8 g, 0.095 mol相当)、CH2Cl2 (0.95 L)、MeNO2 (1.22 L) を窒素雰囲気下で加えて-40℃に冷却後、アニソール (124 mL)、2M AlCl3-MeNO2 (284 mL) を-40 ℃から-35 ℃で15分かけて滴下した。MeNO2 (0.01 L) で洗浄し-40℃で15分攪拌した後、30分かけて-5 ℃に昇温し約1時間攪拌した。反応終了を確認した後、Et2O (7.00 L)、冷却した0.5 N HCl (3.70 L) を加えた20 L 抽出機に反応液を注加し抽出、分液した。水層はEt2O (2.50 L) で洗浄し、有機層は水 (1.50 L) で抽出した。水層を合併しn-BuOH (0.23 L) を加えた後に減圧濃縮した。残液に0.5 N HCl (0.60 L)、水 (0.30 L) を加えて溶解させた後、HP-20SSクロマトグラフィーで精製した。充填後にH2O、0.01 N HCl、MeCN : 0.01 N HCl = 10 : 90の順で溶離した。溶出部を約0.26 kgまで減圧濃縮した後、一昼夜凍結乾燥し、粉体の目的物(51.3 g, 母核クロリドからの通算収率71.7%) を得た。
1H NMR (D2O) :δ1.55 (d, 3H, J = 8.0 Hz), 2.78 (s, 3H,), 3.27 (d, 1H, J = 20.0 Hz), 3.35 (t, 2H, J = 6.7 Hz), 3.63 (d, 1H, J = 20.0 Hz), 3.77 (d, 2H, J = 6.7 Hz), 4.94 (q, 1H, J = 8.0 Hz), 4.97 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 5.24 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 5.28 (d, 1H, J = 5.7 Hz), 5.89 (d, 1H, J = 5.7 Hz), 6.97 (d, 2H, J = 7.7 Hz), 8.20 (m, 2H).
元素分析 C24H34N8O9.5S2Cl3: 計算値C, 38.08; H, 4.53; N, 14.80; S, 8.47; Cl, 14.05. 実測値: C, 38.12; H, 4.40; N, 14.75; S, 8.32; Cl, 14.27.
【0032】
【化38】

【実施例9】
【0033】
ジ-t-ブチルオキシカルボニル体(500 mg, 1.42 mmol)のメタノール(2.5 mL)溶液に1当量のp-トルエンスルホン酸1水和物又は、(dl)-ショウノウ-10-スルホン酸を加え、攪拌後、溶媒を減圧下留去した。残渣をメタノール、ジイソプロピルエーテル、又は、メタノール、酢酸エチル、ヘキサンの混合溶媒から結晶化し、無色の結晶(p-トルエンスルホン酸塩の収率68.2%、(dl)-ショウノウ-10-スルホン酸塩の収率72.6%)を得た。
p-トルエンスルホン酸塩の融点:100.2〜107.6 ℃
(dl)-ショウノウ-10-スルホン酸塩の融点:118.9〜118.2 ℃
【0034】
【化39】

【実施例10】
【0035】
モノ-t-ブチルオキシカルボニル体(400 mg, 1.59 mmol)のジイソプロピルエーテル (5 mL)溶液に12N HCl (0.133 mL, 1.59 mmol)を加えた。10分間攪拌後、溶媒を減圧下留去した。残渣をトルエン、無色の結晶(64.7%)を得た。
塩酸塩の融点:193.5〜194.5 ℃
【0036】
【化40】

【実施例11】
【0037】
ジアミンのエタノール溶液に1当量の硫酸、リン酸又は、2当量の濃塩酸を加え、10分間攪拌後、溶媒を減圧濃縮した。得られた残渣を水、エタノール、メタノールの混合溶媒から結晶化させ、無色の結晶を得た。
硫酸塩1水和物の融点:248〜249 ℃
リン酸塩2水和物の融点:195〜199 ℃
2塩酸塩1水和物の融点:175〜176 ℃



【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素又はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、又はR2及びR3は一緒になってオキソであり、R4は水素又はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキル、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物又はその塩。
【請求項2】
式:
【化2】

(式中、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物と、式:
【化3】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルである。)で示される化合物を反応させ、
式:
【化4】

(式中、R、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
【請求項3】
式:
【化5】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物を還元し、式:
【化6】

(式中、R、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
【請求項4】
式:
【化7】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物と、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化8】

(式中、R、R1、R4及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物又はその塩を製造する方法。
【請求項5】
式:
【化9】

(式中、R5はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物と、式:
【化10】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルである。)で示される化合物を反応させ、式:
【化11】

(式中、R及びR5は前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
【請求項6】
式:
【化12】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R5はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物を還元し、式:
【化13】

(式中、Rは前記と同意義であり、R5はアルキルである。)で示される化合物を製造する方法。
【請求項7】
式:
【化14】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物に、式:R1X(式中、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、
式:
【化15】

(式中、R、R1及びR5は前記と同意義である。R4はR1と同じアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルである。)で示される化合物又はその塩を製造する方法。
【請求項8】
式:
【化16】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩と、式:
【化17】

(式中、R6はアミノ保護基であり、R7及びR8はそれぞれ独立してカルボキシ保護基であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化18】

(式中、R、R1、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びXは前記と同意義である。)で示される化合物を製造する方法。
【請求項9】
請求項4又は7記載の方法により、式:
【化19】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩を製造する工程を含む、式:
【化20】

(式中、R及びR5は前記と同意義であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルである)で示される化合物を製造する方法。
【請求項10】
式:
【化21】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R1は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R2は水素であり、R3は水素であり、R4は水素、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物の硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ショウノウ-10-スルホン酸塩又はそれらの水和物。
【請求項11】
式:
【化22】

(式中、Rは水素、アルキル又は置換されていてもよいアラルキルであり、R4はアルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル又は置換されていてもよいアリールオキシカルボニルであり、R5はアルキルである。)で示される化合物又はその塩と、式:
【化23】

(式中、R6はアミノ保護基であり、R7及びR8はそれぞれ独立してカルボキシ保護基であり、R9は水素、アルキル又はハロゲンであり、R10はアルキルであり、Xは脱離基である。)で示される化合物を反応させ、式:
【化24】

(式中、R、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びXは前記と同意義である。)で示される化合物及びその塩を製造する方法。



【公開番号】特開2006−206529(P2006−206529A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22598(P2005−22598)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】