説明

N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体の製法

【課題】アミノ基保護の置換方法の提供。
【解決手段】(i)ベンジル基または置換ベンジル基以外である第一のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を、パラジウム触媒の存在下、反応させることによりその第一のアミノ基保護基を除去して、一級または二級アミン化合物を得た後、(ii)引き続いて同一反応系で、当該一級または二級であるアミン化合物を、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒドまたは置換ベンズアルデヒドと反応させ、ついで、(iii)同反応系を水素置換に付した後、前記(i)と同じパラジウム触媒の存在下に、還元反応させることにより、ベンジル基および置換ベンジル基から選択される第二のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を得ることを特徴とする、アミノ基保護の置換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病治療のための医薬等として有用なN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体の新規製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体は、ジぺプチジルぺプチダーゼIV(DPPIV)阻害薬として有用であり、医薬(糖尿病治療薬等)の有効成分又はその製造中間体として用い得ることが知られている。
(下記特許文献1〜6)。
【0003】
N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体を製造する方法としては、1−ハロアセチル−2−シアノピロリジン化合物等を原料とし、アミン化合物(1級アミン)とのカップリング(アルキル化反応)を行うことにより製造する方法が知られている(下記特許文献1〜7及び非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、かかる方法を適用した場合には、副生物が生じ、効率よく、高品質の目的物を得ることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO1998/19998(Novartis)
【特許文献2】WO2000/34241(Novartis)
【特許文献3】WO2001/96295(Novartis)
【特許文献4】WO2002/30890(田辺製薬)
【特許文献5】WO2002/30891(田辺製薬)
【特許文献6】WO2002/51836(協和醗酵工業)
【特許文献7】WO2004/92127(Novartis)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Villhauerら、J.Med.Chem.、2002年、45巻、2362-2365頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、副生物の生成を低減し、高品質のN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体を効率良く製造する方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の通り、従来より知られた方法のように、1−ハロアセチル−2−シアノピロリジンなどを原料とし、アミン化合物(1級アミン)とのカップリング(アルキル化反応)を行ってN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体を製造しようとした場合、副生物(ジアルキル体;および、シアノ基と遊離アミノ基が反応して生成したアミジン体など)が生じるため、効率よく目的物を得ることができない。
【0009】
そこで、ジアルキル化が生じないようにするために、アミン化合物(1級アミン)に代えてそのアミノ基保護体(2級アミン)を用いてカップリング(アルキル化反応)を試みたが、Boc等で保護されたアミン化合物を用いるとカップリング反応が大きく妨げられ、工業的には適用不可であった。
【0010】
一方、ベンジル基等で保護されたアミン化合物を用いると、ジアルキル体の副生なく生成物を得ることができたが、カップリング後の生成物からアミノ基保護基の除去を試みたところ、副生物のみが得られ、目的物を得ることはできなかった。
(後記、比較例1〜3参照)(ピロリジン環上のシアノ基の存在により副次的反応が生じ、閉環体などが副生するためと考えられた)。
【0011】
このように、ジアルキル体などの副生物の生成を低減させ、高品質の目的物が得られる製造方法を見出すことは困難と考えられたが、本発明者らは、かかる困難を克服すべく鋭意研究の結果、本願発明の方法を見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、一般式〔I〕
【化1】


式中の記号は、以下の意味を有する。
A:−CH−又は−S−;
R:置換されていてもよい低級シクロアルキル基、
置換されていてもよいアダマンチル基又は
置換されていてもよい低級アルキル基、
で表されるN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体又はその塩の製造方法であって、以下の如き工程からなることを特徴とする方法である:
一般式〔II〕
【化2】


式中、Zは反応性残基を表し、他の記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物と、一般式〔III〕
【化3】


式中、Rは、ベンジル基、置換ベンジル基、アリル基、シリル基及びニトロベン
ゼンスルホンアミド基から選択されるアミノ基保護基を表し、他の記号は前記と
同一意味を有する、
で示される化合物又はその塩とを反応させて、一般式〔IV〕
【化4】


式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物を得、次いでこの化合物からアミノ基保護基Rを除去して
一般式〔V〕
【化5】


式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物又はその塩を得た後、脱水反応を含む工程を経て、
これを前記一般式〔I〕で示される化合物又はその塩へ変換する。
【0013】
本発明の方法において、
一般式〔V〕で示される化合物又はその塩を一般式〔I〕で示される化合物又はその塩へ変換する工程は、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかの方法で実施することができる。
【0014】
(1)一般式〔V〕で示される化合物又はその塩を脱水反応に付した後、所望によりさらに造塩反応に付すことにより、一般式〔I〕で示される化合物又はその塩へ変換する;
(2)一般式〔V〕で示される化合物又はその塩に、アミノ基保護基を付加して、
アミノ基保護体を得、次いでこれを脱水反応に付した後、アミノ基保護基を除去し、所望によりさらに造塩反応に付すことにより、一般式〔I〕で示される化合物又はその塩へ変換する。
【0015】
また、前記(2)の場合、より詳細には、例えば以下のように実施できる。
【0016】
すなわち、一般式〔V〕で示される化合物又はその塩に、アミノ基保護基を付加して、一般式〔VI〕
【化6】


式中、Rは、酸処理にて除去可能であるアミノ基保護基を表し、他の記号は
前記と同一意味を有する、
で示されるアミノ基保護体を得、次いでこれを脱水反応に付して、一般式〔VII〕
【化7】


式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物を得た後、そのアミノ基保護基Rを除去し、所望によりさらに造塩反応に付すことにより、一般式〔I〕で示される化合物又はその塩へ変換する。
【0017】
また、本願発明は、一般式〔I〕で表されるN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体の塩の製造方法であって、一般式〔VII〕
で示される化合物からのアミノ基保護基Rの除去を酸処理にて行ない、
それにより当該保護基除去と同時に造塩反応を行なって、一般式〔I〕で示される化合物の塩へ変換することを特徴とする方法である。
【0018】
さらに、本願発明は、前記一般式〔VII〕で示される化合物を包含する。
一般式〔VII〕で示される化合物は、化合物〔I〕又はその塩を経由することなく工業的に製造し得るような方法が従来知られていなかったものである。本化合物は、本願発明の方法によって初めて工業的に製造することが可能となった新規な化合物である。
本願発明は、また、(i)ベンジル基または置換ベンジル基以外である第一のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を、パラジウム触媒の存在下、反応させることによりその第一のアミノ基保護基を除去して、一級または二級アミン化合物を得た後、
(ii)引き続いて同一反応系で、当該一級または二級であるアミン化合物を、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒドまたは置換ベンズアルデヒドと反応させ、ついで、
(iii)同反応系を水素置換に付した後、前記(i)と同じパラジウム触媒の存在下に、還元反応させることにより、ベンジル基および置換ベンジル基から選択される第二のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を得ることを特徴とする、アミノ基保護の置換方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、従来法と比べて、副生物の生成が低減され、
N−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体を、効率良く製することができ、高い品質の目的物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
で表されるアミノ基保護基は、化合物〔II〕と化合物〔III〕又はその塩とのカップリング反応を妨げない保護基であればよく、かかるアミノ基保護基としては、例えば、ベンジル基、置換ベンジル基(4−メトキシベンジル基等)、アリル基、シリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル等のトリ低級アルキルシリル基;t−ブチルジフェニルシリル基;等)及びニトロベンゼンスルホンアミド基等が好適に使用できる。これらのうち、ベンジル基及び4−メトキシベンジル基が好ましく、とりわけ、ベンジル基が好ましい。
【0021】
で表されるアミノ基保護基は、酸処理にて(好ましくは緩和な条件下の酸処理にて)除去可能なアミノ基保護基であればよい。かかるアミノ基保護基としては、例えば、t−ブトキシカルボニル基及びベンジルオキシカルボニル基等が挙げられ、これらのうち、t−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0022】
Zで表される反応性残基としては、ハロゲン原子(Cl、Br、I等)、低級アルキルスルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ等)、ハロ低級アルキルスルホニルオキシ基(トリフルオロメタンスルホニルオキシ等)、アリールスルホニルオキシ基等の慣用の反応性残基を好適に用いることができる。これらのうち、ハロゲン原子(Cl、Br、I等)、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が好ましく、とりわけ、ハロゲン原子(Cl、Br、I等)が好ましい。
【0023】
本発明の方法における工程を下図に示した。
【化8】


式中、各記号は前記と同一意味を有する。
【0024】
各工程は、以下のように実施できる。
化合物〔II〕と化合物〔III〕又はその塩との反応:
化合物〔II〕と化合物〔III〕又はその塩との反応は、脱酸剤の存在下又は非存在下、適当な溶媒中又は無溶媒で実施することができる。
【0025】
脱酸剤としては、無機塩基(例えば、水素化ナトリウムなどの水素化アルカリ金属、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属、等)又は有機塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジン等)を好適に用いることができる。これらのうち、炭酸カリウムなどの炭酸アルカリ金属が好ましく、炭酸カリウムがとりわけ好ましい。
【0026】
本反応は、0〜120℃、とりわけ室温〜80℃で好適に進行する。
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば
アセトニトリル、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、
アセトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、
ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、エーテル、ジオキサン、
酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム
又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。これらのうち、アセトニトリル、アセトン、トルエン、酢酸エチルが好ましく、アセトニトリルがとりわけ好ましい。
【0027】
化合物〔IV〕又はその塩からのアミノ基保護基(R)の除去:
化合物〔IV〕又はその塩からのアミノ基保護基(R)の除去は、常法により実施できる。例えば、ベンジル基、置換ベンジル基及びアリル基の除去は、適当な溶媒中又は無溶媒中で、パラジウム炭素触媒、パラジウム触媒などの存在下または非存在下で実施することができる。
【0028】
かかる保護基の除去は、0〜100℃、とりわけ室温〜80℃で好適に進行する。
溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、水又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。
また例えば、シリル基の除去は、酸処理又はフッ素処理により実施できる。また、ニトロベンゼンスルホンアミド基の除去は、チオール誘導体による処理にて実施できる。
【0029】
化合物〔V〕又はその塩から化合物〔I〕又はその塩を得る工程において、
化合物〔V〕又はその塩を脱水反応に付す場合:
化合物〔V〕又はその塩の脱水反応は、脱水剤の存在下、適当な溶媒中又は無溶媒で実施することができる。
【0030】
脱水剤としてトリフルオロ酢酸無水物を用いた場合は、分子内のアミノ基がトリフルオロアセトアミド化されるため、酢酸無水物以外の脱水剤を用いることが好ましい。かかる脱水剤としては、オキシ塩化リン(POCl)、五塩化リン(PCl)、T3P(商品名;Clariant社)等が挙げられる。これらのうち、オキシ塩化リン(POCl)、五塩化リン(PCl)が好ましく、オキシ塩化リン(POCl)がとりわけ好ましい。
【0031】
脱水剤としてオキシ塩化リンを用いる場合は、塩基(トリエチルアミンおよびピリジン等)の存在下で反応を行うとアミジン化(アミジンへの分解)が起こり望ましくないため、塩基(トリエチルアミンおよびピリジン等)の非存在下で反応を行うのが好ましい。
【0032】
本反応は、−20〜100℃、とりわけ0〜50℃で好適に進行する。
溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えばアセトニトリル、
アセトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、エーテル、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。これらのうち、アセトニトリル、塩化メチレンが好ましく、アセトニトリルがとりわけ好ましい。
【0033】
化合物〔V〕又はその塩から化合物〔I〕又はその塩を得る工程において、
化合物〔V〕又はその塩にアミノ基保護基を付加し、そのアミノ基保護体又はその塩を脱水反応に付す場合:
化合物〔V〕又はその塩に、アミノ基保護基(R)を付加する反応は、常法により実施できる。例えば、保護基としてtert−ブトキシカルボニル基を付加する場合、二炭酸−ジ−tert−ブチル等の試薬を用い、溶媒(アセトニトリル、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、塩化メチレン等)中で反応させる。反応は、0〜120℃、とりわけ室温〜70℃で好適に進行する。
【0034】
化合物〔VI〕の脱水反応は、脱水剤の存在下、適当な溶媒中又は無溶媒で実施することができる。
脱水剤としては、オキシ塩化リン(POCl)、五塩化リン(PCl)、T3P(商品名;Clariant社)、p−トルエンスルホニルクロリド、トリフルオロ酢酸無水物等を好適に用いることができる。これらのうち、オキシ塩化リン(POCl)、p−トルエンスルホニルクロリド、トリフルオロ酢酸無水物が好ましく、p−トルエンスルホニルクロリドがとりわけ好ましい。
【0035】
脱水剤としてp−トルエンスルホニルクロリド等を用いる場合は、反応促進のために、ピリジンおよびトリエチルアミン等の塩基を添加してもよい。
脱水剤としてオキシ塩化リンを用いる場合、本反応は低温条件下(−20℃〜室温)で行うことが好ましく、脱水剤としてp−トルエンスルホニルクロリドを用いる場合は、加熱(室温から60℃)が必要である。
【0036】
溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、エーテル、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロホルム又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。これらのうち、アセトニトリル、塩化メチレンが好ましく、アセトニトリルがとりわけ好ましい。
【0037】
化合物〔VII〕からのアミノ基保護基(R)の除去は、常法により実施できる。例えば、適当な溶媒中又は無溶媒で、酸処理(トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、その他、無機酸又は有機酸などによる処理)等により、実施することができる。
保護基の除去を酸処理にて行う場合、反応は0〜100℃、とりわけ室温〜60℃で好適に実施できる。
【0038】
溶媒は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、2−ブタノン、アセトン、メタノール、エタノール、水等の親水性溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、ジエチルエーテル又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。これらのうち、メタノール、エタノールが好ましく、エタノールがとりわけ好ましい。
【0039】
化合物〔I〕、〔III〕、〔IV〕又は〔V〕の塩は、特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩等の無機酸との塩、あるいは、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩の如き有機酸塩等が使用できる。
【0040】
化合物〔I〕を医薬品の有効成分として使用する場合における塩は、薬理的に許容し得る塩が望ましい。かかる薬理的に許容し得る塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩又は臭化水素酸塩の如き無機酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩又はマレイン酸塩の如き有機酸塩等が挙げられる。また、カルボキシル基等の置換基を有する場合には塩基との塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩又はカルシウム塩の如きアルカリ土類金属塩)が挙げられる。
【0041】
これらの塩は、慣用の造塩反応により製造できる。
また、造塩反応は、アミノ基保護基の除去(脱保護)と同時に行なってもよい。
例えば、目的物として化合物〔I〕の塩(無機酸又は有機酸との塩)を得ようとする場合、一般式〔VII〕で示される化合物からのアミノ基保護基(R)の除去を、酸処理にて行ない、それにより当該保護基の除去と同時に造塩反応を行なって、一般式〔I〕で示される化合物の塩(無機酸又は有機酸との塩)に変換することができる。
酸処理は、得ようとする目的物に対応した酸(無機酸又は有機酸)を用いて実施すればよい。
【0042】
このように化合物〔VII〕の脱保護と造塩とを同時に行なうことにより、短い工程で効率的に目的物を製造することができる。
また、化合物〔I〕のフリー体が塩と比べて不安定である場合、化合物〔VII〕の脱保護と造塩とを同時に行なうことによって、不純物(化合物〔I〕のフリー体の分解等によって生じるもの等)が混在しない高品質の目的物を得ることができるという優れたメリットが同時に得られる。
【0043】
本発明の化合物〔I〕、化合物〔VII〕もしくはそれらの原料化合物は、遊離のままあるいはその塩として単離され、精製される。単離精製は、抽出、濃縮、結晶化、ろ過、再結晶、各種クロマトグラフィーなど、通常の化学的操作を適用して実施できる。
【0044】
また、前記方法における原料化合物は、既知方法及び/または後記参考例に記載の方法、又はそれらの組合せによって製造できる。
【0045】
本発明の製造方法において、化合物〔I〕、〔III〕、〔IV〕、〔V〕、〔VI〕及び〔VII〕のRで表される基は、環式基であれば特に限定されないが、例えば、
置換されていてもよい低級シクロアルキル基
(4位及び1位において置換されていてもよいシクロヘキシル等)、
置換されていてもよいアダマンチル基及び
置換されていてもよい低級アルキル基などが挙げられる。
【0046】
Rで表される基としては、より具体的には、例えば、以下のR、R及びRで表される基が挙げられる。
【0047】
:下式で表される基。
【化9】


は、−N(RA3)−、−O−、又は−CO−を表す。
(Xとしては、これらのうち、−CO−が好ましい。)
A3は、水素原子又は低級アルキル基を表す。
A11及びRA12は、各々、水素原子、低級アルキル基、
ヒドロキシ低級アルキル基又は低級アルコキシ低級アルキル基を表す。
〔RA11及びRA12としては、水素原子又は低級アルキル(メチル等)基が好ましく、
とりわけ水素原子が好ましい。〕
【0048】
A21は、以下の(1)又は(2)を表す。
(1)置換されていてもよい環式基であって、該環式基部分が、
(i)炭素数3〜7の単環式炭化水素基;(ii)窒素原子、酸素原子及び
硫黄原子から選ばれる1〜2個の異項原子を含む単環式複素環基;又は
(iii)窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1〜4個の
異項原子を含み、5〜7員環が2個縮合してなる二環式複素環基;
である基;
(2)置換されていてもよいアミノ基。
【0049】
A22は、置換されていてもよい環式基であって、該環式基部分が、
(i)炭素数3〜7の単環式炭化水素基;(ii)窒素原子、酸素原子及び
硫黄原子から選ばれる1〜2個の異項原子を含む単環式複素環基;又は
(iii)窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる1〜4個の
異項原子を含み、5〜7員環が2個縮合してなる二環式複素環基;
である基を表す。
【0050】
:下式で表される基を表す。
【化10】


B1、RB2:RB2が水素原子を表し、RB1がヒドロキシ基、低級アルコキシ基
又は低級アルカノイルオキシ基を表すか;或は、RB1及びRB2が各々独立して
低級アルキル基を表す。
【0051】
:モノ置換アミノ低級アルキル基を表す。
【0052】
上記RA21が、置換されていてもよい環式基である時、具体的には、例えば、
以下の置換基群から選択される同一又は異なる1〜3個の置換基を有していてもよい環式基が挙げられる。ここで、環式基部分としては、
ピロリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピリジル、ピリミジニル、インドリニル、イソインドリニル、ピロロピリジル、ジヒドロピロロピリジル、及び、これらの一部又は全部が飽和している環式基から選択される基が挙げられる。
【0053】
置換基群:
ハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;オキソ基;カルバモイル基;低級(C1−6)アルキル基;低級(C1−6)アルコキシ基;低級(C2−7)アルカノイル基;低級(C1−6)アルコキシカルボニル基;低級(C1−6)アルコキシ置換低級(C1−6)アルキル基;低級(C3−8)シクロアルキル−CO−;ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はオキソ基で置換されていてもよいフェニル基;ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はオキソ基で置換されていてもよいフェニル−低級(C1−6)アルキル基;
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はオキソ基で置換されていてもよい単環式5〜6員複素環基;
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はオキソ基で置換されていてもよい単環式5〜6員複素環基−O−;及び
ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はオキソ基で置換されていてもよい単環式5〜6員複素環基−CO−。
【0054】
A21が、置換されていてもよいアミノ基である時、具体的には、例えば、
以下の置換基群から選択される同一又は異なる1又は2個の置換基を有していてもよいアミノ基が挙げられる。
【0055】
置換基群:
低級(C1−6)アルキル基、低級(C3−8)シクロアルキル基、低級(C1−6)アルコキシ置換低級(C1−6)アルキル基、ピリミジニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基。
【0056】
A22としては、具体的には、例えば、
以下の置換基群から選択される同一又は異なる1〜3個の置換基を有していてもよい環式基が挙げられる。ここで、環式基部分としては、
ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、インドリニル、イソインドリニル、チアゾロピリジル、及び、これらの一部又は全部が飽和している環式基から選択される基が挙げられる。
【0057】
置換基群:
オキソ基;低級(C2−7)アルカノイル基;低級(C4−9)シクロアルカノイル基;
低級(C1−6)アルコキシカルボニル基;及び
含窒素単環式5〜6員脂肪族複素環基−CO−。
【0058】
RがRで表される基である化合物〔I〕としては、具体的には、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン;
(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン;及び
(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン。
【0059】
で表される基としては、具体的には、例えば、以下の基が挙げられる。
【化11】

【0060】
RがRで表される基である化合物〔I〕としては、具体的には、例えば、
(2S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノピロリジンが挙げられる。
【0061】
RがRで表される基である化合物〔I〕としては、具体的には、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(2S)−2−シアノ−1−[2−[5−(ジメチルアミノスルホニル)ピリジン−2−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチルアミノ]アセチルピロリジン;
(2S)−2−シアノ−1−[2−[5−(メタンスルホニル)ピリジン−2−イルアミノ]−1,1−ジメチルエチルアミノ]アセチルピロリジン。
【0062】
一般式〔III〕で示される化合物のうち、Rがベンジル基又は置換ベンジル基(4−メトキシベンジル等)である化合物〔IIIa〕
R−NH−RX1 〔IIIa〕
式中、RX1は、ベンジル基または置換ベンジル基を表し、他の記号は前記と
同一意味を表す、
は、以下のようなアミノ基保護の置換方法を用いて好適に製造することができる。
【0063】
以下のようなアミノ基保護の置換方法もまた、本願発明に含まれる。
かかるアミノ基保護の置換方法は、すなわち、
(i)ベンジル基または置換ベンジル基以外である第一のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を、パラジウム触媒の存在下、反応させることによりその第一のアミノ基保護基を除去して、一級または二級アミン化合物を得た後、
(ii)引き続いて同一反応系で、当該一級または二級であるアミン化合物を、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒドまたは置換ベンズアルデヒドと反応させ、ついで、
(iii)同反応系を水素置換に付した後、前記(i)と同じパラジウム触媒の存在下に、還元反応させることにより、ベンジル基および置換ベンジル基から選択される第二のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を得ることを特徴とする、アミノ基保護の置換方法、である。
【0064】
(i)のアミノ基保護基の除去反応は、パラジウム触媒を用いる常法の反応条件を適用することにより実施できる。
(ii)の反応条件および反応時間は、常法の通りでよく、特に限定されないが、例えば、室温下、1〜5時間反応させることにより実施できる。
(iii)の還元反応は、室温、常圧の条件下で反応させることが好ましい。反応時間は1〜5時間が好適であり、1〜2時間がより好適である。
(iii)における水素置換は、減圧・脱気および水素導入を1〜3回行うことにより実施できる。
上記(i)、(ii)及び(iii)は同一反応系(ワンポット)で実施できる。
【0065】
上記(i)及び(iii)で用いられるパラジウム触媒としては、例えば、パラジウム炭素触媒、水酸化パラジウム炭素触媒などが挙げられ、これらのうち、パラジウム炭素触媒が好ましい。
【0066】
上記(i)の第一のアミノ基保護基は、ベンジル基以外かつ置換ベンジル基以外であり、かつパラジウム触媒により除去が可能なアミノ基保護基であればよい。
かかる第一のアミノ基保護基としては、例えば、
ベンジルオキシカルボニル基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、2−フェニルエトキシカルボニル基、O-ピペリジニルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。これらのうち、ベンジルオキシカルボニル基がとりわけ好ましい。
【0067】
上記(iii)の第二のアミノ基保護基は、ベンジル基および置換ベンジル基(4−メトキシベンジル等)から選択されるものであるが、これらのうち、ベンジル基がとりわけ好ましい。
【0068】
上記(i)の第一のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物としては、より詳細には、例えば一般式〔VIII〕
−NH−R 〔VIII〕
式中、Rは、低級アルキル基、低級アルコキシ−低級アルキル基、ヒドロキシ
低級アルキル基、アリール置換低級アルキル基、置換されていてもよい低級シク
ロアルキル基、置換されていてもよいアリール基を表す、
は、ベンジル基以外かつ置換ベンジル基以外であり、パラジウム触媒により
除去が可能なアミノ基を表す、
で示される化合物またはその塩が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
で表される基としては、より詳細には、例えば、置換されていてもよい低級シクロアルキル基(4位及び1位において置換されていてもよいシクロヘキシル等)、置換されていてもよいアダマンチル基及び置換されていてもよい低級アルキル基などがあげられ、より詳細には、R、R、及びRで表される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
上記(ii)の一級または二級であるアミン化合物は、一級または二級のいずれでもよいが、特に一級アミン化合物が好適である。かかる好適な一級アミン化合物としては、例えば一般式〔IX〕
−NH 〔IX〕
式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物またはその塩が挙げられる。
上記(iii)で得られる第二のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物としては、より詳細には、例えば一般式〔X〕
−NH−RX1 〔X〕
式中、RX1は、ベンジル基または置換ベンジル基を表し、他の記号は前記と
同一意味を有する、
で示される化合物またはその塩が挙げられる。
【0070】
本願発明のアミノ基保護の置換方法によれば、同一反応系(ワンポット)のままで、途中の生成物を単離する必要なく、また副反応を生じることもなく、極めて効率よくかつ工業的有利に、アミノ基保護基の置換(ベンジルオキシカルボニル基などからベンジル基または置換ベンジル基への置換)を行って、
目的とするベンジル基または置換ベンジル基でアミノ基保護されたアミン化合物
を製することができる。
【0071】
後記の参考例3(2)〜(3)、参考例4(2)〜(3)および参考例5は、本願発明のアミノ基保護の置換方法を、その実施例として詳しく説明するものであるが、これらは、本願発明を制限するものではない。
【0072】
本発明において、低級アルキル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルホニル基、低級アルコキシ基、低級アルキルアミノ基としては、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のものが挙げられ、とりわけ炭素数1〜4のものが挙げられる。
また、低級アルカノイル基、低級アルカノイルアミノ基としては、炭素数2〜7、とりわけ炭素数2〜5の直鎖状または分岐鎖状のものが挙げられる。
低級シクロアルキル基、低級シクロアルケニル基としては、炭素数3〜8、とりわけ炭素数3〜6のものが挙げられる。低級アルキレン基としては、炭素数1〜6、とりわけ炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のものが挙げられる。低級アルケニル基、低級アルケニレン基としては、炭素数2〜7、とりわけ炭素数2〜5のものが挙げられる。さらに、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
【0073】
本明細書中、MS・APCI(m/z)は、質量分析値(大気圧化学イオン化マススペクトル)を表す。
また、本明細書中の略号
「Me」はメチル基、
「Et」エチル基、
「Bu」はブチル基、
「Ph」はフェニル基、
「Bn」はベンジル基、
「Boc」はtert−ブトキシカルボニル基を各々表す。
【実施例】
【0074】
以下、実施例をもって本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
【0075】
実施例1
【化12】


(1)参考例1と同様にして(2S)−1−(クロロアセチル)−2−ピロリジンカルボキサミドを得、これに、N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミン(参考例3の化合物)(159g)、炭酸カリウム無水微粉(174g)、ヨウ化ナトリウム(7.9g)、アセトン(1.6L)を加え、5時間、還流下で撹拌する。不溶物をろ別し、結晶をアセトンで洗浄した後、ろ液を減圧留去する。酢酸エチル(1.6L)、水(1.1L)を加え、10%クエン酸水(0.8L)でpH4〜5に調整する。分液後、水層を酢酸エチル(1.6L)で洗浄する。水層に40%炭酸カリウム水(0.689L)を加えてアルカリ性とし、酢酸エチル(1.6L)及びイソプロピルアルコール(0.16L)で抽出する。分液後、水層を酢酸エチル(0.32L)で抽出する。有機層を合せて硫酸マグネシウム(159g)で乾燥し、ろ過後、濃縮することにより、(2S)−2−カルバモイル−1−[N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
MS・APCI(m/z): 457 [M+H]+
【0076】
(2)前記(1)で得られる化合物(濃縮残渣)を、エタノール(1.6L)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(33.5g)を仕込み、水素圧0.8MPa、50℃にて6時間反応する。不溶物をろ別し、エタノール(0.16L)で洗浄する。溶媒を留去し、(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0077】
(3)前記(2)で得られる化合物(50g)をアセトニトリル(500mL)に懸濁し、二炭酸ジ−t−ブチル(36g)を室温下で加え、25℃で3時間攪拌後、濃縮する。残渣にアセトニトリル(500mL)を加え、50℃に加熱後、ピリジン(65g)およびp−トルエンスルホニルクロリド(78g)を加える。50℃で16時間加熱後、室温に冷却し、40%炭酸カリウム水(500mL)を加え、さらに40℃で1時間攪拌する。反応混合物を氷冷し、析出した結晶をろ別し、結晶を酢酸イソプロピルで洗浄する。ろ液を濃縮し、酢酸イソプロピル、クエン酸水および26%食塩水に分配する。分液後、有機層を26%飽和食塩水で洗浄する。有機層に26%飽和食塩水および少量の40%炭酸カリウム水を加えてpH9〜10に調整して洗浄後、分液する操作を2回行う。有機層に無水硫酸マグネシウム、シリカゲルを加えて攪拌後、不溶物をろ別する。ろ液を濃縮することにより、(2S)−2−カルバモイル−1−[N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0078】
(4)前記(3)で得られる化合物を、2−ブタノンなどの親水性溶媒に溶解し、
水を加えた後、p−トルエンスルホン酸で処理して、アミノ基保護基を除去することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンのp−トルエンスルホン酸塩を得る。
【0079】
実施例2
【化13】


(1)参考例1と同様にして(2S)−1−(クロロアセチル)−2−ピロリジンカルボキサミドを得、これに、N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミン(参考例4の化合物)(180g)、炭酸カリウム無水微粉(174g)、ヨウ化ナトリウム(7.9g)、アセトン(1.8L)を加え、5時間、還流下で撹拌する。不溶物をろ別し、アセトンで洗浄した後、ろ液を減圧留去する。酢酸エチル(1.8L)、水(1.33L)を加え、10%クエン酸水(0.95L)でpH4〜5に調整する。分液後、水層を酢酸エチル(1.8L)で洗浄する。水層に40%炭酸カリウム水(0.82L)を加えてアルカリ性とし、酢酸エチル(1.8L)及びイソプロピルアルコール(180mL)で抽出する。分液後、水層を酢酸エチル(0.38L)で抽出する。有機層を合せて硫酸マグネシウム(190g)で乾燥し、ろ過後、濃縮することにより、(2S)−2−カルバモイル−1−[N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
MS・APCI(m/z): 498 [M+H]+
【0080】
(2)前記(1)で得られる化合物(濃縮残渣)を、エタノール(1.9L)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(33.5g)を仕込み、水素圧0.8MPa、50℃にて6時間反応する。不溶物をろ別し、エタノール(190mL)で洗浄する。溶媒を留去し、(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
MS・APCI(m/z): 408 [M+H]+
【0081】
(3)前記(1)で得られる化合物(50g)をアセトニトリル(500mL)に懸濁し、二炭酸ジ−t−ブチル(32g)を室温下で加え、25℃で3時間攪拌後、濃縮する。残渣にアセトニトリル(500mL)を加え、50℃に加熱後、ピリジン(58.2g)およびp−トルエンスルホニルクロリド(70.2g)を加える。50℃で16時間加熱後、室温に冷却し、40%炭酸カリウム水(500mL)を加え、さらに40℃で1時間攪拌する。反応混合物を氷冷し、析出した結晶をろ別し、結晶を酢酸イソプロピルで洗浄する。ろ液を濃縮し、酢酸イソプロピル、クエン酸水および26%食塩水に分配する。分液後、有機層を26%飽和食塩水で洗浄する。有機層に26%飽和食塩水および少量の40%炭酸カリウム水を加えてpH9〜10に調整して洗浄後、分液する操作を2回行う。有機層に無水硫酸マグネシウム、シリカゲルを加えて攪拌後、不溶物をろ別する。
ろ液を濃縮することにより、(2S)−2−カルバモイル−1−[N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
MS・APCI(m/z): 490 [M+H]+
【0082】
(4)前記(3)で得られる化合物を、2−ブタノンなどの親水性溶媒に溶解し、
水を加えた後、塩酸で処理して、アミノ基保護基を除去することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン塩酸塩を得る。
【0083】
実施例3
【化14】


(1)参考例1と同様にして(2S)−1−(クロロアセチル)−2−ピロリジンカルボキサミドを得、これに、トランス−4−ベンジルアミノ−N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(参考例5の化合物)(208g)、炭酸カリウム無水微粉(265g)、ヨウ化ナトリウム(12g)、アセトン(2.1L)を加え、5時間、還流下で撹拌する。不溶物をろ別し、結晶をアセトンで洗浄した後、ろ液を減圧留去する。酢酸エチル(2.1L)、水(1.5L)を加え、10%クエン酸水(1.25L)でpH4〜5に調整する。分液後、水層を酢酸エチル(2.1L)で洗浄する。水層に40%炭酸カリウム水(0.89L)を加えてアルカリ性とし、酢酸エチル(2.1L)及びイソプロピルアルコール(0.21L)で抽出する。分液後、水層を酢酸エチル(0.42L)で抽出する。有機層を合せて無水硫酸マグネシウム(208g)で乾燥し、ろ過後、濃縮することにより、(2S)−2−カルバモイル−1−[N−ベンジル−トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0084】
(2)前記(1)で得られる化合物を、エタノール(2.1L)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(55g)を仕込み、水素圧0.8MPa、50℃にて6時間反応する。不溶物をろ別し、エタノール(400mL)で洗浄する。溶媒を留去し(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0085】
(3)前記(1)で得られる化合物(50g)をアセトニトリル(500mL)に懸濁し、二炭酸ジ−t−ブチル(32g)を室温下で加え、25℃で3時間攪拌後、濃縮する。残渣にアセトニトリル(500mL)を加え、50℃に加熱後、ピリジン(69g)およびp−トルエンスルホニルクロリド(83.5g)を加える。50℃で16時間加熱後、室温に冷却し、40%炭酸カリウム水(500mL)を加え、さらに40℃で1時間攪拌する。反応混合物を氷冷し、析出した結晶をろ別し、結晶を酢酸イソプロピルで洗浄する。ろ液を濃縮し、酢酸イソプロピル、クエン酸水および26%食塩水に分配する。分液後、有機層を26%飽和食塩水で洗浄する。有機層に26%飽和食塩水および少量の40%炭酸カリウム水を加えてpH9〜10に調整して洗浄後、分液する操作を2回行う。有機層に無水硫酸マグネシウム、シリカゲルを加えて攪拌後、不溶物をろ別する。
ろ液を濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[N−tert−ブトキシカルボニル−トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。融点:85−87℃
【0086】
(4)前記(3)で得られる化合物を、2−ブタノンなどの親水性溶媒に溶解し、
水を加えた後、塩酸で処理して、アミノ基保護基を除去することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン塩酸塩を得る。
【0087】
実施例4
【化15】


(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(10g)をアセトニトリル(200mL)に懸濁し、オキシ塩化リン(7.6mL)を氷冷下滴下する。室温にて48時間攪拌した後、濃縮する。塩化メチレン(100mL)を加えて溶解し、氷冷下40%炭酸カリウム(60mL)を加える。20℃まで昇温して水(50mL)を加えて分液する。水層を塩化メチレン(100mL)で再抽出する。有機層を合わせて26%NaCl(30mL)で洗浄する。有機層を濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0088】
実施例5
【化16】


(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(10g)をアセトニトリル(200mL)に懸濁し、オキシ塩化リン(5.8mL)を氷冷下滴下する。室温にて60時間攪拌した後、濃縮する。塩化メチレン(100mL)を加えて溶解し、氷冷下40%炭酸カリウム(60mL)を加える。20℃まで昇温して水(50mL)を加えて分液する。水層を塩化メチレン(100mL)で再抽出する。有機層を合わせて26%NaCl(30mL)で洗浄する。有機層を濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0089】
実施例6
【化17】


(2S)−2−カルバモイル−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(10g)をアセトニトリル(200mL)に懸濁し、オキシ塩化リン(8.6mL)を氷冷下滴下する。室温にて62時間攪拌した後、濃縮する。塩化メチレン(100mL)を加えて溶解し、氷冷下40%炭酸カリウム(60mL)を加える。20℃まで昇温して水(50mL)を加えて分液する。水層を塩化メチレン(100mL)で再抽出する。有機層を合わせて26%NaCl(30mL)で洗浄する。有機層を濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得る。
【0090】
参考例1
【化18】


クロロアセチルクロリド(76.7g)、アセトニトリル(233mL)をコルベンに仕込み、10℃以下に冷却する。別途、L−プロリンアミド(77.5g、ジイソプロピルエチルアミン(87.8g)をアセトニトリル(1550mL)に懸濁し、20℃以下でクロロアセチルクロリドのアセトニトリル液に滴下する。滴下後、20℃で30分撹拌し、3L−4頚コルベンに移し替えて外浴35±5℃で減圧留去することにより、(2S)−1−(クロロアセチル)−2−ピロリジンカルボキサミドの残渣を得る。
【0091】
参考例2
【化19】


L−プロリンアミド(50g)の塩化メチレン(500mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(55.5g)を加える。この溶液をクロロアセチルクロリド(49.5g)の塩化メチレン(130mL)溶液に20℃に保ちながら1時間かけて滴下する。滴下後、20℃で30分間撹拌する。これにトリフルオロ酢酸無水物(119.6g)を加え、続けてピリジン(45g)を加えて、20℃で約1時間撹拌する。反応液を水(400mL)、飽和重曹水(400mL)、1N塩酸(400mL)、水(400mL)でそれぞれ洗浄する。分液後、濃縮し、残渣にイソプロパノール(165mL)、塩化メチレン(33mL)を加え、45℃加熱して溶解する。メチル−tert−ブチルエーテル(300mL)を加え、1時間かけて25℃まで冷却し、同温で30分撹拌する。さらに1時間かけて0℃まで冷却し同温で2時間撹拌する。結晶をろ過、乾燥することにより、(2S)−1−(クロロアセチル)−2−シアノピロリジンを得る。
【0092】
参考例3
【化20】


(1)トランス−4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロヘキサンカルボン酸(4g)のジメトキシエタン(11mL)溶液に塩化チオニル(1.37mL)、ジメチルホルムアミド(28μL)を加えて40℃で1時間攪拌する。反応液を濃縮し、ジメトキシエタン(11mL)を加え、この溶液をモルホリン(7.5g)の水(10mL)溶液中に氷冷下滴下する。2時間攪拌の後、水(16mL)を加えて氷冷し、析出結晶をろ過により分離して、N−ベンジルオキシカルボニル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。融点:161−162℃
【0093】
(2)前記(1)で得られる化合物(4.4g)をエタノール(80mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(0.8g)を加える。減圧脱気、水素導入を3回行い、室温、常圧で3時間攪拌する。
これにより、反応生成物として、トランス-4-(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。
(3)10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)を含む前記(2)の反応液に、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒド(1.62g)を加えて室温下、1時間攪拌する。減圧脱気、水素導入を3回行うことにより水素置換し、これを、室温、常圧で1時間20分攪拌する。触媒をろ過により除去し、濃縮する。残渣をヘプタン/tert−ブチルメチルエーテル(3:1)混合物にて結晶化後、ろ過により分離して、N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。
融点:63−65℃
【0094】
参考例4
【化21】


(1)トランス−4−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)シクロヘキサンカルボン酸(4g)のジメトキシエタン(11mL)溶液に塩化チオニル(1.37mL)、ジメチルホルムアミド(28μL)を加えて40℃で1時間攪拌する。反応液を濃縮し、ジメトキシエタン(11mL)を加え、この溶液を1−アセチルピペラジン(11g)の水(10mL)溶液中に氷冷下滴下する。2時間攪拌の後、水(32mL)を加えて氷冷し、析出結晶をろ過により分離し、N−ベンジルオキシカルボニル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。
融点:180−181℃
【0095】
(2)前記(1)で得られる化合物(4.4g)をエタノール(80mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(0.8g)を加える。減圧脱気、水素導入を3回行い、室温、常圧で3時間攪拌する。
これにより、反応生成物として、トランス-4-(4-アセチルピペラジン-1-イルカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。
(3)10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)を含む前記(2)の反応液に、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒド(1.45g)を加えて室温下、1時間攪拌する。減圧脱気、水素導入を3回行うことにより水素置換し、これを、室温、常圧で1時間20分攪拌する。触媒をろ過により除去し、濃縮する。残渣をイソプロピルエーテルにて結晶化後、ろ過により分離して、N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミンを得る。融点:127−128℃
【0096】
参考例5 トランス−4−ベンジルアミノ−N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド
【化22】


トランス−4−ベンジルオキシカルボニルアミノ−N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(4.4g)をエタノール(80mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(0.8g)を加える。減圧脱気、水素導入を3回行い、室温、常圧で3時間攪拌する。
これにより、反応生成物として、トランス-4-アミノ-N,N-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミドを得る。
10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)を含む前記(2)の反応液に、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒド(1.45g)を加えて室温下、1時間攪拌する。減圧脱気、水素導入を3回行うことにより水素置換し、これを、室温、常圧で1時間20分攪拌する。触媒をろ過により除去し、濃縮する。残渣を、ヘプタン/tert−ブチルメチルエーテル(3:1)混合物にて結晶化後、ろ過により分離して、トランス−4−ベンジルアミノ−N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミドを得る。融点:69℃
【0097】
比較例1
【化23】


(1)N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミン(1.0g)および(2S)−1−(クロロアセチル)−2−シアノピロリジン(0.74g)をアセトニトリル(12mL)に溶解し、炭酸カリウム無水微粉(1.1g)およびヨウ化ナトリウム(50mg)を加え、60℃で3.5時間反応させた。室温まで冷却し、不溶物をろ過により除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチル(20mL)、水(15mL)および10%クエン酸水(10mL)に分配後、分液した。水層を酢酸エチル(20mL)で洗浄、分液した。水層に40%炭酸カリウム水(5mL)を加えて中和し、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得た。
【0098】
(2)前記(1)と同様にして得られる(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(800mg)をエタノール(5mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(124mg)を加えた。窒素導入、水素導入を3回繰り返し行い、60℃で10時間攪拌した。窒素置換後、触媒をろ過により除去後、濃縮し、生成物を得た。
しかし、目的とする化合物、すなわち、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(モルホリノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得ることはできなかった。
【0099】
比較例2
【化24】


(1)N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミン(1.0g)および(2S)−1−(クロロアセチル)−2−シアノピロリジン(0.65g)をアセトニトリル(12mL)に溶解し、炭酸カリウム無水微粉(962mg)およびヨウ化ナトリウム(44mg)を加え、60℃で3.5時間反応させた。室温まで冷却し、不溶物をろ過により除去した。ろ液を濃縮し、酢酸エチル(20mL)、水(15mL)および10%クエン酸水(10mL)に分配後、分液した。水層を酢酸エチル(20mL)で洗浄、分液した。水層に40%炭酸カリウム水(5mL)を加えて中和し、酢酸エチル(20mL)で3回抽出した。有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することにより、(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得た。
【0100】
(2)前記(1)と同様にして得られる(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(800mg)をエタノール(5mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(114mg)を加えた。窒素導入、水素導入を3回繰り返し行い、60℃で10時間攪拌した。窒素置換後、触媒をろ過により除去後、濃縮し、生成物を得た。
しかし、目的とする化合物、すなわち、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(4−アセチルピペラジン−1−イルカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得ることはできなかった。
【0101】
比較例3
【化25】


(1)トランス−4−ベンジルアミノ−N,N−ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(0.17g)、(2S)−1−(クロロアセチル)−2−シアノピロリジン(0.25g)、ヨウ化ナトリウム(14.4mg)および炭酸カリウム(0.16g)をアセトン(2.5mL)に懸濁し、60℃で終夜攪拌することにより、(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得た。
【0102】
(2)前記(1)と同様にして得られる(2S)−2−シアノ−1−[N−ベンジル−トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジン(200mg)をエタノール(1.6mL)に溶解し、10%パラジウム炭素触媒(50%Wet品)(200mg)を加え、水素導入下、25℃で2時間攪拌し、生成物を得た。
しかし、目的とする化合物、すなわち、(2S)−2−シアノ−1−[トランス−4−(ジメチルアミノカルボニル)シクロヘキシルアミノ]アセチルピロリジンを得ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、工業的に有利なN−(N’−置換グリシル)−2−シアノピロリジン誘導体の製造方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ベンジル基または置換ベンジル基以外である第一のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を、パラジウム触媒の存在下、反応させることによりその第一のアミノ基保護基を除去して、一級または二級アミン化合物を得た後、
(ii)引き続いて同一反応系で、当該一級または二級であるアミン化合物を、窒素雰囲気下、ベンズアルデヒドまたは置換ベンズアルデヒドと反応させ、ついで、
(iii)同反応系を水素置換に付した後、前記(i)と同じパラジウム触媒の存在下に、還元反応させることにより、ベンジル基および置換ベンジル基から選択される第二のアミノ基保護基で保護されたアミン化合物を得ることを特徴とする、アミノ基保護の置換方法。

【公開番号】特開2012−197291(P2012−197291A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126278(P2012−126278)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2008−547016(P2008−547016)の分割
【原出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】