説明

N−BOC化合物の脱保護

【課題】t−ブトキシカルボニルで保護された窒素原子の脱保護方法の提供。
【解決手段】t−ブトキシカルボニルで保護された窒素原子を有する有機化合物は、フッ素化アルコール溶液中で加熱することにより効率的に脱保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に合成化学の分野に関連している。より詳細には、本発明はフッ素化アルコールを使用して、N−BOC保護された有機化合物を脱保護するための方法に関連している。
【0002】
有機化学におけるさまざまな窒素保護基の中で、おそらくt−ブトキシカルボニル(BOC)基は、さまざまな試薬および反応条件に関してその優れた安定性のため、最も広く使用されるものの1つである(T.W. Greene & P.G.M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”,第3版, (1999) John Wiley and Sons, New York; A. Ganesan ら, Mol. Divers. (2005) 9:291-93)。結果として、BOC基の除去は、有機合成において依然として最も重大である。窒素上のBOCの開裂は、一般的に酸性条件下で達成されるが(Greene & Wuts, supra)、しかしながら、塩基性条件、熱分解性条件、およびマイクロ波に援助された条件もまた、文献に記載されている(M. Chakrabarty & T. Kundu, Synth. Comm. (2006) 36:2069-77; J.N. Tomら, Tet. Lett. (2004) 45:905-06; V.H. Rawal and M.P. Cava, Tet. Lett. (1985) 26(50):6141-42; J.G. Siroら, Synlett (1998) 147-48)。
【発明の概要】
【0003】
我々は、ここに、フッ素化アルコールを使用して有機化合物中の窒素原子からBOC保護基を除去するための方法を発明した。反応条件は中性であり、さらなる試薬(溶媒は別として)を必要としない。こうして、生成物はいかなる後処理なしに単純な溶媒蒸発により回収され、場合によっては、さらなる精製は必要でない。
【0004】
本発明の1つの態様は、フッ素化アルコール中にN−BOC保護された化合物を溶解する工程、および溶液を加熱して前記BOC−保護された窒素原子からBOCを除去する工程を含む、窒素原子からBOC保護基を除去するための方法である。
【0005】
本発明のもう1つの態様は、第一のフッ素化アルコール中に異なる不安定性を有する第一および第二のBOC−保護された窒素原子を含む化合物を溶解し、第一の溶液を形成する工程;前記第一の溶液を加熱して前記第一のBOC−保護された窒素原子からBOCを除去して、部分的に脱保護された化合物を提供する工程;前記第一のフッ素化アルコール溶媒より高い反応性を有する第二のフッ素化アルコール溶媒中に前記部分的に脱保護された化合物を溶解して、第二の溶液を形成する工程;ならびに、前記第二の溶液を加熱して前記第二のBOC−保護された窒素原子からBOCを除去する工程を含む、異なる反応性を有する第一および第二のフッ素化アルコール溶媒を使用して同じ化合物中における異なる不安定性を有する複数の窒素原子から複数のBOC保護基を順次除去するための方法である。
【0006】
特に明記しない限り、明細書および請求の範囲を包含する、本出願で使用される以下の用語は、定義が以下の通りである。文脈が明らかに別途に指示をしない限り、明細書および添付の請求の範囲で使用される単数形の「a」、「an」および「the」は、複数形の指示対象を包含することを留意しなければならない。
【0007】
用語「BOC」は、t−ブトキシカルボニル基、(CH3)3CC(O)O−をいう。
【0008】
用語「BOC−保護された窒素」および「N−BOC」は、BOC基が共有結合している窒素原子をいう。同様に、「BOC−保護された化合物」は、BOC−保護された窒素を含む有機化合物をいう。
【0009】
用語「脱保護された化合物」は、BOCがBOC−保護された窒素から除去された化合物をいう。ここで留意すべきは、この発明の範囲内の脱保護された化合物は、一般的に本発明の方法により影響を受けない、まだ他の保護基を保有していてもよいことである。
【0010】
用語「フッ素化アルコール」は、R1がフッ素化低級アルキル基であり、R2およびR3がそれぞれ独立してHまたはフッ素化低級アルキル基である、式R1R2R3C−OHの化合物をいう。例示的なフッ素化アルコールとしては、2,2,2−トリフルオロエタノール(「TFE」)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(「HFIP」)、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブタン−2−オール(「PFB」)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
用語「低級アルキル」は、炭素および水素から構成され、不飽和を有しない一価の炭化水素基をいう。低級アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、1〜6個(両端値を含む)の炭素原子を含有する。
【0012】
用語「フッ素化低級アルキル」は、1個以上の水素原子がフッ素に置き換えられた低級アルキル基をいう。例示的なフッ素化低級アルキル基としては、CF−、CHF−、CFCF−、CHFCF−などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用されているような用語「不安定な」は、関係のある結合の強度およびBOC保護基を除去することの容易性をいう。
【0014】
本明細書で確認されているすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照として本明細書に援用される。
【0015】
本発明は、定量的収率において、溶媒として2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)またはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)のようなフッ素化アルコールを使用してBOC−窒素を正確に脱保護するための新規で実用的な方法を提供する。
【0016】
実際には、N−BOC保護された化合物を、最初にTFEまたはHFIPのようなフッ素化アルコールに溶解する。保護された化合物を溶解するために必要であるフッ素化アルコールの量は、一般に化合物の溶解度に依存する。出発点として、約1mmolの保護された化合物 対 約5mLのフッ素化アルコールの比率から始めることができ、その比率は結果を最大限にするための所定の実験により調整することができる。保護された化合物が、フッ素化アルコールに十分に可溶でない場合、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサン、テトラヒドロフランまたは同種のもののような共溶媒を加えてもよい。
【0017】
溶液を、従来方法(例えば、ガスバーナー、油浴など)により加熱してもよい。好ましくは、溶液をBiotage INITIATOR(商標)60集中マイクロ波反応器のようなマイクロ波照射器を使用して加熱する。溶液を、好ましくは加熱している間、撹拌する。
【0018】
一般に、必要とする反応時間および温度は、脱保護する化合物の性質および加熱方法に依存する。最も保護された化合物および溶媒の還流温度での従来の加熱とともに、TFEまたはHFIPを使用する場合、約30分間〜約48時間の反応時間が一般的に必要である。最も保護された化合物およびマイクロ波加熱とともに、TFEまたはHFIPを使用する場合、約80℃と約200℃との間の温度が十分であり、好ましくは約100℃と170℃との間である。反応時間は、約1分間〜約6時間、代表的には約1時間〜約4時間まで一般的には変動してもよい。最適な反応時間およびフッ素化アルコールの選択を、所定の実験により、例えば以下に説明する実施例にしたがって決定する。一般に、不安定性がより少ないBOC基は、(a)反応時間を増加することにより、(b)より反応性の高いフッ素化アルコールに切り替えることにより(例えば、TFEからHFIPへ)、および/または(c)温度を上昇させることにより、除去することができる。
【0019】
脱保護反応の完了後、フッ素化アルコールを、蒸発により除去して、そして脱保護された化合物を回収して、従来方法(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、再結晶など)により精製してもよい。フッ素化アルコールは、好ましくは回収されて再使用される。
【0020】
与えられた化合物が、異なる不安定性を有する複数の異なる窒素原子を有する場合に、最も不安定な窒素を処理して、複数のBOC−保護された窒素原子を連続して脱保護することが可能である。例えば、芳香族窒素および脂肪族窒素を有する化合物において、脂肪族窒素のBOCを阻害することなしに芳香族窒素からBOC基を除去して、次に、別の工程において脂肪族窒素からBOC基を除去することが可能である。これは、脂肪族窒素を同時に修飾することなしに芳香族窒素を修飾することを可能にする。そのような順次的な脱保護を達成するために、最も反応性の低いフッ素化アルコール(例えば、TFE)を使用して第一の(最も不安定な)BOCを除去する。フッ素化アルコール、反応温度および反応時間の最適な選択を決定するために、所定の実験を必要とすることができる。出発点として、芳香族窒素は、2時間、150℃で、マイクロ波反応器中でTFEを使用することにより、BOC−保護された脂肪族窒素の存在下で脱保護してもよい。第一のBOCを除去した後、脂肪族N−BOCを定位置に残存させながら、芳香族アミンを修飾または誘導体化してもよい。脂肪族窒素の保護をもう必要としない場合、BOC基を、HFIPのようなより反応性の高いフッ素化アルコールを(例えば、2時間、150℃でマイクロ波反応器中で)使用して除去することができる。
【実施例】
【0021】
実施例1
(A) TFE(2,2,2−トリフルオロエタノール)またはHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)(5mL)中のN−Boc保護されたアミン(1mmol)の溶液を、密閉マイクロ波バイアルに入れた。出発物質の消失が観察されるまで、反応混合物を撹拌しながらBiotage−Initiator(商標)Sixtyマイクロ波反応器中で加熱した(100℃または150℃)。室温に冷却後、混合物を減圧下で蒸発乾固した。粗生成物をフラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製した。H NMRおよび13C NMRを、プロトン(H)周波数300.13MHzおよびカーボン(13C)周波数75.43MHzで操作する、Bruker Avance DPX−300 NMRまたはBruker Avance−300 NMR分光計で測定した。
【0022】
(B) 3−ベンジル−5−メチル−2,4−ジオキソ−3,4−ジヒドロ−2H−ピリミジン−1−BOC(1mmol)を、(a)還流で、1時間、TFE(5mL)中で加熱するか、または(b)TFE(5mL)中、5分間、100℃で、マイクロ波反応器中で加熱することにより脱保護して、フラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製して、83%収率(a)および97%収率(b)で3−ベンジル−5−メチル−1H−ピリミジン−2,4−ジオンを得た。生成物融点207-208℃; 1H NMR(DMSO-d6) 11.00 (broad s, 1H), 7.35(s, 1H), 7.22-7.34(m, 5H), 4.97(s, 2H), 1.80(s, 3H,); 13C NMR(DMSO-d6) 164.15, 151.74, 137.81, 136.97, 128.65, 127.94, 127.41, 107.62, 43.20, 12.85; MS ESI:m/z (%) 217 (M+H+, 100); C12H12N2O2についての解析的計算値:C, 66.64; H, 5.59; N, 12.95。実測値:C, 66.66; H, 5.46; N, 13.01。
【0023】
(C) N−BOC−2−ホルミル−ピロール(1mmol)を、(a)還流で、6時間、TFE(5mL)中で加熱するか、または(b)TFE(5mL)中、30分間、100℃で、マイクロ波反応器中で加熱することにより脱保護して、フラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製して、65%収率(a)および91%収率(b)で1H−ピロール−2−カルバルデヒドを得た。生成物融点=44−45℃; 1H NMR(CDCl3)9.56-9.86(broad s, 1H), 9.54(s, 1H), 7.15(s, 1H), 6.92-7.05(m, 1H), 6.27-6.43(m, 1H); 13C NMR(CDCl3) 180.49, 132.92, 126.44, 121.40, 111.36。MS ESI:m/z (%) 96 (M+H+, 100); HRMS ESI m/z 96.04388 (M+H+)。計算値96.04439。
【0024】
(D) 5−クロロ−(1−BOC)−1H−インドール−3−カルボン酸アミド(1mmol)を、(a)還流で、12時間、TFE(5mL)中で加熱するか、または(b)TFE(5mL)中、1時間、100℃で、マイクロ波反応器中で加熱することにより脱保護して、フラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製して、99%収率(a)および98%収率(b)で5−クロロ−1H−インドール−3−カルボン酸アミドを得た。生成物融点248-249℃; 1H NMR(DMSO-d6) 11.72(broad s, 1 H), 8.15(d, J=2.26Hz, 1 H), 8.09(d, J=3.01Hz, 1 H), 7.60-7.40(broad s, 1H), 7.45(d, J=8.67Hz, 1 H), 7.15(dd, J=8.48, 2.07Hz, 1 H), 7.00-6.75(broad s, 1 H); 13C NMR(DMSO-d6) 166.42, 134.99, 130.17, 127.83, 125.43, 122.15, 120.55, 113.74, 110.54; MS ESI:m/z (%) 195 (M+H+, 100); HRMS ESI m/z (M+H+) 195.03188。計算値195.03197。
【0025】
(E) N−BOC−4−クロロフェニルアミン(1mmol)を、(a)還流で、36時間、HFIP(5mL)中で加熱するか、または(b)HFIP(5mL)中、1時間、150℃で、マイクロ波反応器中で加熱することにより脱保護して、フラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製して、81%収率(a)および80%収率(b)で4−クロロフェニルアミンを得た。生成物融点71-72℃; 1H NMR(CDCl3), 7.04-7.16(m, 2H), 6.54-6.67(m, 2H), 3.65(broad s., 2H); 13C NMR(CDCl3) 144.92, 129.10, 123.14, 116.21; MS ESI m/z (%) 128 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 128.02576。計算値=128.02615。
【0026】
(F) N−BOC−2−(2,6−ジメチルフェノキシ)−1−メチルエチルアミン(1mmol)を、150℃で、2時間、HFIP中、マイクロ波反応器中で加熱することにより脱保護して、フラッシュ−カラムクロマトグラフィーにより精製して、81%収率で2−(2,6−ジメチルフェノキシ)−1−メチルエチルアミンを得た。生成物:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.06-6.86(m, 3H); 3.59-3.51(m, 1H), 3.70-3.62(m, 1H), 3.46-3.29(m, 1H), 2.30(s, 6H), 1.72(broad s, 2H), 1.18(d, J=6.78Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) 155.49, 130.81, 128.88, 123.83, 78.23, 47.29, 19.78, 16.32; MS ESI m/z (%) 180 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 180.13782。計算値180.13829。
【0027】
実施例2
上記実施例1(A)に記述されている手順にしたがって、インドール誘導体を、下記表1に記述されているように、マイクロ波反応器中、150℃でTFEまたはHFIPを使用して脱保護した。
【0028】
【表1】

【0029】
生成物データ
化合物1:融点248-249℃; 1H NMR(DMSO-d6) 11.72(broad s, 1 H), 8.15(d, J=2.26Hz, 1 H), 8.09(d, J=3.01Hz, 1 H), 7.60-7.40(broad s, 1H), 7.45(d, J=8.67Hz, 1 H), 7.15(dd, J=8.48, 2.07Hz, 1 H), 7.00-6.75(broad s, 1 H); 13C NMR(DMSO-d6) 166.42, 134.99, 130.17, 127.83, 125.43, 122.15, 120.55, 113.74, 110.54; MS ESI:m/z (%) 195 (M+H+, 100); HRMS ESI m/z (M+H+) 195.03188。計算値195.03197。
【0030】
化合物2:融点50-51℃; 1H NMR(CDCl3)s 8.08(broad s, 1H), 7.65(dd, 1H), 7.38(m, 2H), 7.23-7.09(m, 2H), 6.56-6.54(m, 1H); 13C NMR(CHCl3-d) 135.74, 127.82, 124.10, 121.97, 120.72, 119.80, 111.00, 102.61; MS EI:m/z (%) 117 (M+, 100)。
【0031】
化合物3:融点196-197℃; 1H NMR(DMSO-d6) 12.14(broad s, 1H), 9.95(s, 1H), 8.30-8.09(m, 2H), 7.56-7.20(m, 3H); 13C NMR(DMSO-d6) 185.34, 138.85, 137.43, 124.49, 123.84, 122.50m 121.20, 118.54, 112.80; MS ESI:m/z (%) 146 (M+H+; 100); HRMS ESI m/z (M+H+) 146.05963。計算値146.06004。
【0032】
化合物4:融点74-75℃; 1H NMR(CDCl3), 8.13(broad s, 1H, D2O exch.), 7.61(s, 1H), 7.31-7.12(m, 3H), 6.50-6.48(m, 1H); 13C NMR(CDCl3) 134.11, 128.94, 125.51, 125.46, 122.31, 120.11, 111.97, 102.41; MS EI:m/z (%) 151 (M+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 152.02585。計算値152.02615。
【0033】
化合物5:融点55-56℃; 1H NMR(CDCl3), 8.03(broad s, 1H, D2O exch.), 7.28-6.84(m, 4H), 6.49-6.47(m, 1H), 3.85(s, 3H); 13C NMR(CDCl3) 154.19, 130.94, 128.27, 124.85, 112.35, 111.70, 102.38, 102.30, 55.85; MS ESI:m/z (%) 148 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 148.07531。計算値148.07569。
【0034】
化合物6:融点102-104℃; 1H NMR(CDCl3), 8.68(broad s, 1H, D2O exch.), 8.00-7.99(m, 1H), 7.49-7.40(m, 2H), 7.36-7.34(m,1H), 6.64-6.62(m, 1H); 13C NMR(CDCl3) 137.50, 127.66, 126.48, 126.41, 124.87, 120.87, 112.02, 103.43, 102.79; MS EI:m/z (%) 142 (M+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 143.06006。計算値143.06037。
【0035】
化合物7:融点141-142℃; 1H NMR(CDCl3), 8.62(d, 1H), 8.60-8.45(broad s, 1H, D2O exch.), 8.15-8.10(m, 1H), 7.46-7.37(m, 2H), 6.76-6.74(m, 1H); 13C NMR(CDCl3) 141.20, 139.03, 127.75, 126.95, 117.57, 116.83, 111.10, 104.05; MS EI:m/z (%) 162 (M+, 100%); C8H6N2O2についての解析的計算値:C, 59.26; H, 3.73; N, 17.28。実測値:C, 59.11; H, 3.46; N, 17.14。
【0036】
化合物8:融点129-130℃; 1H NMR(CDCl3), 7.98(d, 1H), 7.21(d, 1H), 7.14(t, 1H), 6.96(d, 1H), 6.68(dd, 1H), 6.39(s, 1H), 3.51(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 139.54, 130.63, 128.77, 124.69, 112.95, 111.49, 105.52, 101.56; MS ESI m/z (%) 133 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 133.07560。計算値133.07602。
【0037】
実施例3
次に、一連のアニリン類の脱保護を、上記実施例2に記述されているプロトコルを使用して検討した。結果を下記表2に要約する。電子求引性置換基を有するアニリンは、電子供与基を有するアニリンより反応が早いことが分かった。用いた反応条件は、−NCbz、−NAllocおよび−OTIPSのような他の保護基に適合することが分かった。
【0038】
【表2】

【0039】
生成物データ
化合物9:融点71-72℃; 1H NMR(CDCl3), 7.04-7.16(m, 2H), 6.54-6.67(m, 2H), 3.65(broad s., 2H); 13C NMR(CDCl3) 144.92, 129.10, 123.14, 116.21; MS ESI m/z (%) 128(M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 128.02576。計算値128.02615。
【0040】
化合物10:融点63-64℃; 1H NMR(CDCl3), 7.33(d, J=8.67Hz, 1H), 6.79(d, J=2.64Hz, 1H), 6.45(dd, J=8.67, 2.64Hz, 1H), 3.74(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 146.64, 134.62, 133.88, 116.38, 114.92, 109.75; MS ESI m/z (%) 205 (M+H+, 53%); HRMS ESI m/z (M+H+) 205.93645。計算値205.93667。
【0041】
化合物11:融点147-148℃; 1H NMR(CDCl3), 8.08(d, J=9.04Hz, 2H), 6.63(d, J=9.04Hz, 2H), 4.41(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 153.41, 138.37, 126.34, 113.16; MS EI m/z (%) 138 (M+, 47%); C6H6N2O2についての解析的計算値:C, 52.17; H, 4.38; N, 20.28。実測値:C, 52.50; H, 4.40; N, 19.99。
【0042】
化合物12:融点59-60℃; 1H NMR(CDCl3), 6.72-6.79(m, 2H), 6.63-6.70(m, 2H), 3.76(s, 3H), 3.43(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 152.78, 139.90, 116.40, 114.78, 55.72; MS ESI m/z (%) 124 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 124.07530。計算値124.07569。
【0043】
化合物13:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.08(t, J=8.10Hz, 1H), 6.21-6.39(m, 3H), 3.78(s, 3H), 3.68(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 160.72, 147.78, 130.10, 107.90, 103.92, 101.04, 55.07; MS ESI m/z (%) 124 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 124.07526。計算値124.07569。
【0044】
化合物14:融点56-57℃; 1H NMR(CDCl3), 7.63(dd, J=7.91, 1.32Hz, 1H), 7.04-7.19(m, 1H), 6.75(dd, J=8.10, 1.51Hz, 1H), 6.38-6.54(m, 1H), 4.07(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3) 146.71, 138.96, 129.31, 119.95, 114.70, 84.15; MS ESI m/z (%) 220 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 219.96147。計算値219.96177。
【0045】
化合物15:融点135-136℃; 1H NMR(CDCl3), 6.58(s, 4H), 3.35(broad s, 4H); 13C NMR(CDCl3) 138.57, 116.70; MS ESI m/z (%) 109(M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 109.07565。計算値109.07602。
【0046】
化合物16:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.00(t, J=8.01Hz, 1H), 6.30-6.20(m, 3H), 3.60(broad s, 2H), 1.19-1.33(m, 3H), 1.09-1.14(d, J=6.78Hz, 18H); 13C NMR(CDCl3) 157.48, 148.03, 130.26, 110.76, 108.64, 107.40, 18.36, 13.48; MS ESI m/z (%) 266 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 266.19327。計算値266.19347。
【0047】
化合物17:融点86-87℃; 1H NMR(CDCl3), 7.30-7.46(m, 5H), 7.16(d, J=7.54Hz, 2H), 6.61-6.69(m, 2H), 6.51(broad s, 1H), 5.19(s, 2H), 3.57(broad s, 2H); 13C NMR(DMSO-d6) 153.97, 144.70, 137.35, 128.76, 128.56, 128.32, 128.26, 120.59, 114.34, 65.66; MESI m/z (%) 243 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 243.11249。計算値243.11280。
【0048】
化合物18:融点=52-53℃; 1H NMR(CDCl3), 7.16(d, J=7.91Hz, 2H), 6.69-6.59(m, 2H), 6.50(broad s, 1 H), 6.08-5.87(m, 1H), 5.41-5.30(m, 1H), 5.29-5.20(m, 1H), 4.57-4.73(m, 2H), 3.58(broad s, 2H); 13C NMR(DMSO-d6) 153.82, 144.70, 134.00, 128.33, 120.66, 117.57, 114.32, 64.61; MS ESI m/z (%) 193 (M+H+,100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 193.09683。計算値193.09715。
【0049】
実施例4
この脱保護法の総合的潜在力を拡大するために、このプロトコルをHFIP中の広範囲のN−Bocアミン類までさらに拡大した。いずれの場合にも(特に指定のない限り)、保護された化合物1mmolを、150℃で、HFIP(5mL)中、示された時間でマイクロ波加熱して、脱保護された化合物をクロマトグラフィーにより回収した。結果を表4に示す。すべての場合において、脱保護生成物を良好〜優れた収率で得た。
【0050】
【表3】

【0051】
生成物データ
化合物19:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.06-6.86(m, 3H); 3.59-3.51(m, 1H), 3.70-3.62(m, 1H), 3.46-3.29(m, 1H), 2.30(s, 6H), 1.72(broad s, 2H), 1.18(d, J=6.78Hz, 3H); 13C NMR(CDCl3) 155.49, 130.81, 128.88, 123.83, 78.23, 47.29, 19.78, 16.32; MS ESI m/z (%) 180(M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 180.13782。計算値180.13829。
【0052】
化合物20:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.14(d, J=6.78Hz, 1H), 7.04(t, J=7.72Hz, 1H), 6.77-6.70(m, 1H), 6.67(d, J=7.91Hz, 1H), 3.57(t, J=8.48Hz, 2H), 3.05(t, J=8.29Hz, 2H); 13C NMR(CDCl3) 151.57, 123.31, 127.19, 124.62, 118.64, 109.43, 47.32, 29.82; MS ESI m/z (%) 120(M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 120.08030。計算値120.08078。
【0053】
化合物21:融点=104-105℃; 1H NMR(CDCl3), 7.92(d, J=9.04Hz, 2H), 6.87(d, J=9.04Hz, 2H), 3.87(s, 3H), 3.34-3.23(m, 4H), 3.08-2.94(m, 4H), 1.74(s, 1H); 13C NMR(CDCl3) 167.15, 154.56, 131.18, 119.67, 113.60, 51.65, 54.16, 48.65, 47.50, 45.89; MS ESI m/z (%) 221 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 221.12805。計算値221.12845。
【0054】
化合物22:油状物;1H NMR(CDCl3), 5.86-5.81(m, 1H), 5.80-5.74(m, 1H), 4.75-4.66(m, 1H), 3.78-3.69(m, 1H), 2.72-2.60(m, 1H), 1.96(broad s, 2H), 1.38-1.22(m, 1H), 0.90(s, 9H), 0.09(s, 6H); 13C NMR(CDCl3) 137.92, 135.57, 76.37, 56.50, 45.88, 26.32, 18.19, -4.21; MS ESI m/z (%) 214 (M+H+, 25%); HRMS ESI m/z (M+H+) 214.16183。計算値214.16217。
【0055】
化合物23:油状物;1H NMR(CDCl3), 6.04-5.97(m, 1H), 5.88-5.79(m, 1H), 5.58-5.47(m, 1H), 3.93-3.78(m, 1H), 2.86-2.69(m, 1H), 2.05(s, 3H), 1.62(broad s, 2H), 1.48-1.32(m, 1H); 13C NMR(CDCl3) 170.79, 141.32, 130.67, 78.46, 56.49, 41.80, 21.65; MS ESI m/z (%) 142 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 142.08592。計算値142.08626。
【0056】
化合物24:油状物;1H NMR(CDCl3), 7.10-7.34(m, 5H), 3.75-3.71(dd, J=, 1H), 3.71(s, 3H), 3.08(dd, J=13.38, 5.09Hz, 1H), 2.84(dd, J=13.56, 7.91Hz, 1H), 1.52(broad s, 2H); 13C NMR(CDCl3), 175.34, 137.12, 129.16, 128.47, 126.73, 55.73, 51.87, 41.00; MS ESI m/z (%) 180 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 180.10156。計算値180.10191。
【0057】
化合物25:融点=111-112℃; 1H NMR(CDCl3), 8.35(broad s, 1H), 7.64(d, J=7.91Hz, 1H), 7.44-7.32(m, 1H), 7.26-7.18(m, 1H), 7.18-7.09(m, 1H), 7.04(d, J=2.26Hz, 1H), 1.36(broad s, 2H), 3.11-3.01(m, 2H), 2.99-2.86(m, 2H); 13C NMR(CDCl3) 136.44, 127.49, 122.06, 121.96, 119.21, 118.87, 113.69, 111.16, 42.34, 29.49; MS ESI m/z (%) 161 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 161.10693。計算値161.10732。
【0058】
化合物26:油状物;1H NMR(CDCl3), 3.34-3.48(m, 1H), 3.27(t, J=6.78Hz, 2H), 3.12(t, 2H), 2.55-2.69(m, 1H), 2.25-2.40(m, 2H), 1.85-2.02(m, 4H), 1.45-1.62(m, 2H), 1.36(broad s, 2H), 1.14-1.30(m, 2H); 13C NMR(CDCl3)52.56, 49.75, 47.07, 41.54, 35.50, 29.41, 18.70; MS ESI m/z (%) 219 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 219.11609。計算値219.11618。
【0059】
実施例5
一般に、N−BOC脱保護反応に関して、HFIPがTFEより反応性が高い溶媒であることがわかった。こうして、類似条件下で同じ基質上での、TFEを超えてのHFIPの使用は、常に反応時間を短縮した(上記実施例2および3参照)。TFEとHFIPとの間の反応性差異に基づいて、4−N−BOC−4−(4−BOC−ピペラジン−1−イル)−インドールを順次脱保護した。下記のスキームに記述されているように、TFE(2時間、150℃でマイクロ波加熱する)を使用して、良好な収率(80%)においてインドールBOC部分を選択的に除去した。HFIP(2時間、150℃でマイクロ波加熱する)を用いた部分的に脱保護された化合物のさらなる処理により、ピペラジン環上の残存N−BOC基の開裂を効率的に完了した(収率=81%)。他方では、選択性が必要ない場合、両方のBOC基を、溶媒としてHFIPを使用して、同時に除去することができる。
【0060】
【化1】

【0061】
4−(1H−インドール−4−イル)−ピペラジン−1−カルボン酸t−ブチルエステル:融点=139-140℃; 1H NMR(CDCl3), 8.27(broad s, 1H), 7.25-7.07(m, 3H), 6.60-6.54(m, 2H), 3.67(t, 4H), 3.19(t, 4H), 1.50(s, 9H); 13C NMR(CDCl3), 154.94, 145.53, 136.97, 122.87, 122.66, 121.36, 106.87, 106.18, 100.94, 76.60, 51.31, 43.69, 28.47; MS ESI m/z (%) 302 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 302.18616。計算値302.18630。4−ピペラジン−1−イル−1H−インドール:融点=198-199℃(分解); 1H NMR(CDCl3), 8.37(broad s, 1H), 7.19-7.03(m, 3H), 6.67-6.51(m, 2H), 3.24-3.18(m, 4H), 3.19-3.05(m, 4H), 2.01(broad s, 1H); 13C NMR(DMSO-d6), 145.99, 136.96, 123.25, 121.57, 120.78, 105.75, 105.30, 99.93, 52.28, 45.98; MS ESI m/z (%) 202 (M+H+, 100%); HRMS ESI m/z (M+H+) 202.13351。計算値202.13387。
【0062】
本発明は、その具体的な実施態様に関連して記述されたが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が可能であり、均等物を代用してもよいことが当業者により理解されるべきである。加えて、本発明の客観的精神および範囲にまで、多くの変更が可能であり、特定の状況、物質、組成物、方法、方法工程(単数)または工程(複数)を適合させることができる。全てのそのような変更は、本明細書に添付された特許請求の範囲内であることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BOC−保護された窒素原子を有する化合物を脱保護するための方法であって、
a) フッ素化アルコール中にBOC−保護された窒素原子を有する化合物を溶解し、溶液を形成する工程;
b) 該BOC−保護された窒素からBOCを除去するために十分な時間、該溶液を加熱して、それによって脱保護された化合物を提供する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記加熱工程がマイクロ波照射により加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
c) 前記溶液から前記脱保護された化合物を回収する工程
をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化アルコールが、2,2,2−トリフルオロエタノールおよび1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールからなる群より選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
異なる反応性を有する第一および第二のフッ素化アルコール溶媒を使用して同じ化合物中における異なる不安定性を有する複数の窒素原子から複数のBOC保護基を順次除去するための方法であって、
a) 第一のフッ素化アルコール中に異なる不安定性を有する第一および第二のBOC−保護された窒素原子を含む化合物を溶解し、第一の溶液を形成する工程;
b) 該第一の溶液を加熱して、該第一のBOC−保護された窒素原子からBOCを除去して、部分的に脱保護された化合物を提供する工程;
c) 該第一のフッ素化アルコール溶媒より高い反応性を有する第二のフッ素化アルコール溶媒中に該部分的に脱保護された化合物を溶解して、第二の溶液を形成する工程;ならびに
d) 該第二の溶液を加熱して、該第二のBOC−保護された窒素原子からBOCを除去する工程
を含む方法。
【請求項6】
前記第一のフッ素化アルコールが、2,2,2−トリフルオロエタノールを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第二のフッ素化アルコールが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパン−2−オールを含む、請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2009−143918(P2009−143918A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−316616(P2008−316616)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】