説明

N−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミドの新規な結晶

本発明の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが、6.00±0.05°、10.54±0.05°、17.42±0.08°、18.39±0.08°、
20.13±0.10°および23.01±0.10°の位置にピークを有するN−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶は、吸湿性が低く、高湿度条件下において安定であり、優れた抗炎症剤の原薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、優れた抗炎症作用、解熱鎮痛作用、抗関節炎作用および抗アレルギー作用を有し、抗炎症剤として有用なN−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミドおよびその水和物の新規な結晶に関する。
【背景技術】
N−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミド(以下、「T−614」と略記する)は、優れた抗炎症作用、解熱鎮痛作用、抗関節炎作用および抗アレルギー作用を有し、抗炎症剤として有用であることが特開平2−49778号に記載されている。また、特開平5−97840および特開平5−125072号には、T−614を含水アセトンから晶出する製造法が記載されている。しかしながら、これらに記載された方法で製造されたT−614の結晶(以下、「T−614α」と略記する)は、容易に吸湿して水分が増加するため、品質管理が難しかった。これまで、吸湿性が低く、高湿度条件下において安定なT−614の結晶は、全く知られていなかった。
【発明の開示】
このような状況下において、本発明者らは鋭意研究を行った結果、粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが6.00±0.05°、10.54±0.05°、17.42±0.08°、18.39±0.08°、20.13±0.10°および23.01±0.10°の位置にピークを有するT−614の結晶(以下、「T−614β」と略記する)、粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが11.28±0.05°、17.44±0.08°、18.12±0.08°、19.78±0.08°、21.70±0.10°、22.68±0.10°および24.18±0.10°の位置にピークを有するT−614の結晶(以下、「T−614γ」と略記する)および粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが9.31±0.05°、9.81±0.05°、15.35±0.08°、19.48±0.08°、20.80±0.10°、24.48±0.10°および24.84±0.10°の位置にピークを有するT−614一水和物(以下、「T−614水和物」と略記する)が、吸湿性が低く、高湿度条件下において水分が増加せず、医薬の原薬として優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。特に、T−614βは、比容積が小さく、帯電しにくいため、取り扱いやすい。なお、本発明のこれらの結晶の存在は、これまで全く知られておらず、上記特許公報にも具体的な開示はない。
以下、本発明化合物の製造法について説明する。
T−614βは、たとえば、製造法1〜3にしたがって製造することができる。
[製造法1]
T−614αを2−ブタノン、ベンゼン、トルエンまたはキシレンから再結晶することにより、T−614βを製造することができる。使用される溶媒は、混合して使用してもよい。
[製造法2]
T−614α、T−614γまたはT−614水和物を2−ブタノン、ベンゼン、トルエンまたはキシレン中で攪拌することにより、T−614βを製造することができる。使用される溶媒は、混合して使用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されないが、好ましくは、溶質に対し、5〜200倍量であればよい。攪拌する時間は、特に限定されないが、好ましくは、1〜72時間であればよい。攪拌する温度は、特に限定されないが、好ましくは、10〜30℃であればよい。
[製造法3]
T−614α、T−614γまたはT−614水和物を溶媒の存在下または不存在下で加熱することにより、T−614βを製造することができる。使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンまたは水などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。加熱する温度は、溶媒の存在下においては溶媒の沸点、溶媒の不存在下においては140〜200℃が好ましい。
T−614γは、たとえば、製造法4にしたがって製造することができる。
[製造法4]
T−614水和物をアセトニトリル中で攪拌することにより、T−614γを製造することができる。アセトニトリルの使用量は特に限定されないが、好ましくは、溶質に対し、5〜200倍量であればよい。攪拌する時間は、特に限定されないが、好ましくは、1〜48時間であればよい。攪拌する温度は、特に限定されないが、好ましくは、10〜30℃であればよい。
T−614水和物は、たとえば、製造法5にしたがって製造することができる。
[製造法5]
T−614α、T−614βまたはT−614γを水中で攪拌することにより、T−614水和物を製造することができる。水の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、溶質に対し、5〜200倍量であればよい。攪拌する時間は、特に限定されないが、好ましくは、0.5〜10日間であればよい。攪拌する温度は、特に限定されないが、好ましくは、10〜30℃であればよい。
本発明化合物(T−614β、T−614γおよびT−614水和物)は、医薬として用いられる場合、単独または混合して用いられることができる。また、本発明化合物は、通常製剤化に使用される賦形剤、担体および希釈剤などの製剤補助剤と適宜混合されてもよい。これらは、常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、粉体製剤、坐剤または軟膏剤などの形態で経口または非経口で投与されることができる。
さらに、本発明化合物は、T−614αと混合されて使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1 T−614βの粉末X線回折図
図2 T−614γの粉末X線回折図
図3 T−614水和物の粉末X線回折図
図4 T−614αの粉末X線回折図
発明を実施するための最良の方法
次に本発明を試験例および実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例1 湿度の影響
本発明化合物(T−614β、T−614γおよびT−614水和物)および特開平5−97840号公報の実施例5に開示された化合物(T−614α)を、25℃で相対湿度22、51、75および93%RHの条件下に7日間放置した後、結晶の水分を測定した。結果を表1に示す。

T−614αの水分は相対湿度の上昇と共に上昇したが、T−614β、T−614γおよびT−614水和物の水分はほとんど変化しなかった。T−614β、T−614γおよびT−614水和物は高湿度条件下において安定であった。
【実施例】
粉末X線回折の測定条件
対陰極:Cu、管電圧:40kV、管電流:25mA
実施例1 T−614βの製造(1)
T−614α1.00gを2−ブタノン40mLに加え、加熱溶解した。放冷後、析出晶を濾取、風乾し、T−614β0.54gを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.07%
粉末X線回折パターンを図1、粉末X線回折データを表2に示す。

実施例2 T−614βの製造(2)
T−614α1.00gをトルエン500mLに加え、加熱溶解した。放冷後、析出晶を濾取、風乾し、T−614β0.91gを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.17%
粉末X線回折データを表3に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例3 T−614βの製造(3)
T−614α0.50gをトルエン10mLに加え、25℃で24時間攪拌した。結晶を濾取、風乾して、T−614βを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.21%
粉末X線回折データを表4に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例4 T−614βの製造(4)
T−614γ0.50gをトルエン10mLに加え、25℃で1時間攪拌した。結晶を濾取、風乾して、T−614βを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.33%
粉末X線回折データを表5に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例5 T−614βの製造(5)
T−614α0.3gを160℃で1時間放置した。放冷してT−614βを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.19%
粉末X線回折データを表6に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例6 T−614βの製造(6)
T−614γ0.3gを160℃で1時間放置した。放冷してT−614βを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1696
水分:0.23%
粉末X線回折データを表7に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例7 T−614βの製造(7)
T−614水和物0.3gを160℃で1時間放置した。放冷してT−614βを得た。
IR(KBr)cm−1:3284,1695
水分:0.15%
粉末X線回折データを表8に示す。粉末X線回折パターンは実施例1と一致した。

実施例8 T−614γの製造
T−614水和物15.0gをアセトニトリル600mLに加え、25℃で24時間攪拌した。結晶を濾取、風乾して、T−614γ13.6gを得た。
粉末X線回折パターンを図2、粉末X線回折データを表9に示す。
IR(KBr)cm−1:3279,1683
水分:0.94%


実施例9 T−614水和物の製造(1)
T−614α15.0gを水450mLに加え、25℃で7日間攪拌した。結晶を濾取、風乾し、T−614水和物15.1gを得た。
IR(KBr)cm−1:3614,1681
水分:4.04%
粉末X線回折パターンを図3、粉末X線回折データを表10に示す。

実施例10 T−614水和物の製造(2)
T−614γ0.50gを水10mLに加え、25℃で24時間攪拌した。結晶を濾取、風乾し、T−614水和物を得た。
IR(KBr)cm−1:3614,1681
水分:4.49%
粉末X線回折データを表11に示す。粉末X線回折パターンは実施例9と一致した。


参考例1
特開平5−97840号公報の実施例5に記載の方法でT−614αを製造した。
T−614αの粉末X線回折パターンを図4、粉末X線回折データを表12に示す。

【産業上の利用可能性】
粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが6.00±0.05°、10.54±0.05°、17.42±0.08°、18.39±0.08°、20.13±0.10°および23.01±0.10°の位置にピークを有するT−614の結晶、粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが11.28±0.05°、17.44±0.08°、18.12±0.08°、19.78±0.08°、21.70±0.10°、22.68±0.10°および24.18±0.10°の位置にピークを有するT−614の結晶および粉末X線回折パターンにおいて回折角2θが9.31±0.05°、9.81±0.05°、15.35±0.08°、19.48±0.08°、20.80±0.10°、24.48±0.10°および24.84±0.10°の位置にピークを有するT−614一水和物の結晶は、吸湿性が低く、高湿度条件下において安定であり、優れた抗炎症剤の原薬として有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが6.00±0.05°、10.54±0.05°、17.42±0.08°、18.39±0.08°、20.13±0.10°および23.01±0.10°の位置にピークを有するN−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶。
【請求項2】
粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが11.28±0.05°、17.44±0.08°、18.12±0.08°、19.78±0.08°、21.70±0.10°、22.68±0.10°および24.18±0.10°の位置にピークを有するN−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミドの結晶。
【請求項3】
粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが9.31±0.05°、9.81±0.05°、15.35±0.08°、19.48±0.08°、20.80±0.10°、24.48±0.10°および24.84±0.10°の位置にピークを有するN−[3−(ホルミルアミノ)−4−オキソ−6−フェノキシ−4H−クロメン−7−イル]メタンスルホンアミド一水和物の結晶。

【国際公開番号】WO2004/080991
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503530(P2005−503530)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003057
【国際出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000003698)富山化学工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】