説明

N置換ピリジニウム化合物の調製のための方法及び物質

本発明は、ペンタメチン前駆体を第一級アミンと反応させることによる、N置換カルボキシル化ピリジニウム化合物の合成方法に関する。この反応では、N置換アルコキシカルボニルピリジニウム複素環式化合物が形成される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ペンタメチン前駆体を第一級アミンと反応させることにより、N置換カルボキシル化ピリジニウム化合物を合成する方法に関する。この反応において、N置換カルボキシル化ピリジニウム複素環式化合物が形成される。
【0002】
ピリジニウム化合物は、例えばドラッグデザインにおいて、又は有機合成のための一般的中間体として、特に天然物合成において、特別な興味がある(Cheng, W.-C.及びKurth, M.J., Organic Preparations and Procedures International 34 (2002) 585-608)。本発明に係る置換ピリジニウム化合物のある種のものは、NAD又はカルバ-NADそれぞれの合成において多大な有用性を有している。
【0003】
置換ピリジニウム化合物の製造における標準的な合成経路は、ピリジン誘導体のアルキル化を介する。しかしながら、この反応は第一級ハロゲン化アルキルを使用する場合にだけ簡便である。第二級又は第三級ハロゲン化アルキルが使用される場合には、望まれない副反応として脱離が生じ、収率が一般に低い。更に、不斉炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化アルキルを用いてアルキル化が実施される場合、求核置換反応中にラセミ化が生じうる。
【0004】
これらの全ての制約は、アルキル又はアリールアミンとのZincke塩の反応に基づく「Zincke反応」を使用して解消される。Zincke塩は、第一級アミン(R−NH2)と反応可能な活性化されたピリジニウム塩であり、それぞれ2又は6位の窒素において開環が誘導され、ついでこれにR置換ピリジニウム化合物への閉環が続く。Zincke反応はまたヒドラジン類、ヒドロキシルアミン類及びカルボン酸ヒドラジド類を用いて実施することができる。これらのタイプのZincke反応は溶液及び固相有機合成に使用されている(Eda, M.等, J. Org. Chem. 65 (2000) 5131-5135)。
【0005】
当該技術分野において、所望のZincke塩を調製するための主要な方法は、ピリジン誘導体を2,4ジニトロハロベンゾールと、好ましくは2,4ジニトロクロロベンゾール及び2,4ジニトロブロモベンゾールと反応させることによる。
【0006】
技術水準の方法の上記説明から明らかなように、現在使用されている活性化試薬は、毒性であり、爆発性であり、ないしは危険であり、よって小規模の研究用途に限られている。例えばマイクロ波アシスト合成を使用して、環境に優しい形でZincke反応を実施する試みは散在している。しかしながら、この試みは尚も爆発性のジニトロフェニル化合物に依存しており、費用のかかる予防策を採らないでこの方法をスケールアップすることはできない(Vianna, G.H.R.等, Letters in Organic Chemistry 5 (2008) 396-398)。
【0007】
従って、例えば危険な活性化試薬を避けることによってN置換ピリジニウム化合物の合成を改良するかなりの必要性が存在する。新規なあまり気にかけなくてもよい方法は、より大きなスケールでかかる化合物のより安全な生産手順及びより簡単で危険性が少なく、より効率的な生産を可能にするであろう。
【0008】
様々な2−アルキルアミノペンタジエンイミン誘導体が酸性条件下でNH4OAc又は第一級アミン類(R−NH2)と反応して、それぞれ対応する3−アルキル化ピリジン類、1−R−3−アルキル置換ピリジニウム化合物になることが知られている。必要とされる2−アルキルアミノペンタジエンイミン化合物は、LDAで脱プロトン化され、塩化ビナミジニウムと反応させられたアルデヒド類のN−tertブチルイミノ誘導体から到達可能である(Wypych, J.C.等, J. Org. Chem. 73 (2008) 1169-1172)。
【0009】
しかしながら、この方法の有用性は不幸にも制限されている。エステル官能性のような反応性基をアミノペンタジエンイミン系の2位には導入することができないが、これは例えばニコチン酸エステル誘導体の合成の必要条件である。
【0010】
全く新しいアプローチ法が本発明で提供される。
我々は、驚いたことに、例えばペンタメチニウム塩5−ジメチルアミノ−4−メトキシカルボニル−ペンタ−2,4−ジメチル−ジエニリデンアンモニウムテトラフルオロボレートが一工程で異なった第一級アミン類(R−NH2)と環化して対応する1−R−置換ニコチン酸メチルエステルになることを見出した。この方法を使用して、例えばNADのカルバアナログの合成における前駆体であるニコチンアミド「カルバリボシド」の(3−カルバモイル−1−((1R,2S,3R,4R)−2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウム;クロリド)を得ることができる。
【0011】
本発明に係る方法において、先ずアミノペンタジエンイミニウム化合物が提供される。第一級アミン類(R6−NH2)とのこの化合物の続く反応により、対応する1−R6−置換ピリジニウム化合物が生じる。ここに以下に開示される方法は、上述の重要な活性化試薬を避ける。更に、N置換ピリミジニウム誘導体の形成は殆ど定量的であり、容易にスケールアップすることができる。
【0012】
これらの全ての知見に基づいて、従来から知られている課題の多くを避け、解消することができる。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、N置換ピリジニウム−3カルボン酸エステルの合成方法において、a)ペンタメチニウム塩を提供し、b)工程(a)のペンタメチニウム塩を第一級アミンと反応させ、c)それによってN置換ピリジニウム−3−カルボン酸エステルを得る工程を具備する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【0014】
第一の実施態様では、本発明は、N置換ピリジニウム−3カルボン酸エステルの合成方法において、a)ペンタメチニウム塩を提供し、b)工程(a)のペンタメチニウム塩を第一級アミンと反応させ、c)それによってN置換ピリジニウム−3−カルボン酸エステルを得る工程を具備する方法に関する。
【0015】
好ましい実施態様において、本発明は、N置換カルボキシル化ピリジニウム化合物の合成方法において、
(a)式I

に係るペンタメチニウム塩を提供し、
ここで、Xは対イオンであり、
R1は、O−メチル、O−エチル、O−プロピル、及びO−イソブチルから選択されるアルコキシであり、
R2からR5は独立してメチル又はエチルであり、
b)工程(a)のペンタメチニウム塩を式II

の第一級アミンと反応させ、
ここで、R6は直鎖状、分枝状、又は環状の置換されていてもよいアルキルであり、
c)これによって、X、R1、及びR6が上の定義の通りである式III

のN置換ピリジニウム化合物を得る、工程を具備する方法に関する。
【0016】
適切で好ましい対イオンは、硫酸ドデシル、塩化物、PF6、BF4、及びClO4である。好ましくは、対イオンは硫酸ドデシル、テトラフルオロホスフェート又はテトラフルオロボレートである。
【0017】
上で定義されたように、R6は好ましくは直鎖状、分枝状、又は環状の、置換されていてもよいアルキルである。好ましい実施態様では、アルキルは、直鎖状C1−C6アルキル、又は分枝状C3−C6アルキル、又は環状C5−C6アルキルであり、又は置換アルキルは置換直鎖状C1−C6、又は置換分枝状C3−C6、又は置換環状C5−C6アルキルである。好ましくは、R6はフラノシル又はシクロペンチル残基である。好ましくは、式IIに係る化合物は直鎖状又は分枝状アルキルアミンであるか又はフラノシルアミン又はシクロペンチルミンである。
【0018】
本発明に係る合成法は、そのような合成が、第一級アミン類とプロトン化形態の該第一級アミン類の双方が存在する反応条件下で実施されるならば、所望の生成物の収率が非常に高いことが驚いたことに見出された。よって、好ましい実施態様では、本発明は、a)ペンタメチニウム塩を提供し、b)工程(a)のペンタメチニウム塩をプロトン化形態の第一級アミンの存在下で第一級アミンと反応させ、c)それによってN置換ピリジニウム-3-カルボン酸エステルを得る工程を具備するN置換ピリジニウム-3カルボン酸エステルの合成方法に関する。
【0019】
好ましくは、本発明に係る方法は、第一級アミンのその対応のプロトン化アミンに対する比が2:1から1:50である反応条件下で実施される。本発明に係る方法において更に好ましくは、第一級アミンのその対応のプロトン化アミンに対する比が1:1から1:20である。また好ましくは、第一級アミンのその対応のプロトン化アミンに対する比が1:2から1:15である。
【0020】
本発明に係る方法はアルコキシカルボニルピリジニウム化合物を製造するのに適している。好ましい実施態様では、本発明は、R1がOCH3である本発明に係る方法におけるペンタメチニウム塩の使用、つまりN置換メトキシカルボニルピリジニウム化合物の生産に関する。
更に好ましい実施態様では、本発明は、本発明に係る方法におけるペンタメチニウム塩の使用に関し、ここで、R2からR5はそれぞれメチルである。
【0021】
実施例セクションに与えられた研究の焦点は、アミノカルバリボース((1R,2S,3R,4R)−2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル)−1−アミノシクロペンタン)を用いたペンタメチニウム塩5−ジメチル−アミノ−4−メトキシカルボニル−ペンタ−2,4−ジメチル−ジエニリデンアンモニウムテトラフルオロボレートの転換についてであった。アミノカルバリボースは、例えば対イオンとしてピリジニウムテトラフルオロボレートの存在下で、ペンタメチニウム塩と略定量的に反応して、N置換ニコチン酸エステル誘導体が得られることが見出された。驚いたことに、エステル官能性は第一級アミンによっては影響を受けなかった。
【0022】
形成されたメチルニコチネートのエステル官能基に対する放出されたジメチルアミンの攻撃によるジメチルアミドの形成のような副反応を、アミノカルバリボース及び対応の塩酸塩の適切な混合物を使用して、殆ど完全に除去することができる。等モル量のメタンスルホン酸と混合したペンタメチニウム塩をゆっくりと連続して加えることが簡便である。
【0023】
しかしながら、提示された方法は他の第一級アミンに拡張することができる。当業者には分かるように、そのような第一級アミンは環化反応を妨害しない更なる置換基を含みうる。好ましい実施態様では、化合物R6−NH2は置換された第一級アルキルアミンである。
【0024】
本発明に係る方法における使用のために好ましい置換第一級アルキルアミン類は、アミノアルコール類及びアミノ酸の純粋な立体異性体である。
好ましくは、アミノアルコールは、任意の天然に生じるか又は任意の市販の非天然のアミノ酸から誘導される。好ましくは、アミノアルコールは、セリノール、スレオニノール、フェニルアラニノール、2,5−ジアミノ−1−ペンタノール(オルニチン由来)及び2,6−ジアミノ−1−ヘキサノール(リジン由来)からなる群から選択される。
【0025】
式IIに係る化合物がアミノ酸である場合、アミノ酸は、任意の天然に生じるか又は任意の市販の非天然のアミノ酸から選択されうる。好ましい実施態様では、アミノ酸は天然に生じるアミノ酸か又は天然には生じない、好ましくは市販のアミノ酸である。好ましくは、式IIに係る化合物は、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、オルニチン、リジン、ロイシンから選択されるアミノ酸である。
【0026】
所望の場合、更なる他の実施態様では、アミノ基が保護されていないジ−又はポリアミン類を、ジ-ピリジニウム又はポリ-ピリジニウム化合物を形成するために、ペンタメチニウム塩の二以上の均等物と反応させることができる。
また好ましい第一級アミン類は、フラノシル糖部分又はそのようなフラノシル糖部分のアナログで置換されたアミン類であり、それは場合によってはOH基でリン酸化され、又は保護されたヒドロキシル基で妥協する一方、保護基はベンジル、アセチル、シリル及びトリチルであり、又はOH基の代わりにF又はメトキシ基で妥協する。好ましくは、NAD又はニコチンアミドモノヌクレオシド及びそのアナログの合成に適したフラノシル糖又はそのようなアナログが使用される。
【0027】
NAD又はニコチンアミドモノヌクレオシド及びそのアナログの合成のためのフラノシルアミン類の使用は、次の文献に詳細に記載されている:Kam, B.L.等, Biochemistry 26 (1987) 3453-3461;Sicsic, S.等, European Journal of Biochemistry 155 (1986) 403-407;Kam, B.L.等, Carbohydrate Research 77 (1979) 275-280、及び米国特許第4411995号。
好ましいフラノシルアミン類はD及びLリボース、キシロース及びアラビノースのβ及びαアノマーである。
【0028】
また好ましいものは、フラノシルアミン類のカルバアナログであるシクロペンチルアミン類であり、例えばβ−D−リボフラノシルアミン類、2デオキシリボフラノシルアミン、又は2,3ジデオキシリボフラノシルアミン、つまり(1R,2S,3R,4R)−2,3 ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−1−アミノシクロペンタン、(1S,3R,4R)−3−アミノ−4−ヒドロキシ−シクロ−ペンタンメタノール、又は(1R−シス)−3−アミノ−シクロペンタン−メタノールである。
【0029】
更に好ましい実施態様では、本発明に係る方法において、ペンタメチニウム塩が第一級アミンと反応させられ、ここで、該第一級アミンは(1R,2S,3R,4R)−2,3ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−1−アミノシクロペンタンである。5−ジメチル−アミノ−4−メトキシカルボニル−ペンタ−2,4−ジメチル−ジエニリデンアンモニウムテトラフルオロボレートをこの第一級アミンと反応させると、ニコチンアミド−カルバリボシド(3−カルバモイル−1−((1R,2S,3R,4R)−2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウムクロリドの生成に至り、これはアンモニアでニコチンアミド−カルバリボシド(3−カルバモイル−1−((1R,2S,3R,4R)−2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウムテトラフルオロボレートに容易に転換される。ニコチンアミド−カルバリボシドは、カルバアナログのNADへの合成に対して重要である化合物である。カルバ−NADとその好ましい用途は国際公開第2007/012494号に詳細に記載されている。国際公開第2007/012494号の完全な開示は出典明示によりここに含められる。
【0030】
他の好ましい置換第一級アミン類は、3−アミノテトラヒドロフラン類又は保護された3−アミノ−ピロリジン類、例えば(2R,4R)−4−アミノテトラヒドロフラン−2−メタノール(2,3−ジデオキシリボシルアミンの複素環式アナログ)シクロヘキシルアミン類及びシクロヘキサ−2−エニルアミン類、例えばGoulioukina, N.等, Helvetica Chimica Acta 90 (2007) 1266-1278に開示されたような6環の糖アナログから選択される。
【0031】
リン酸化アミノ糖類の好ましい例は、(1R,4S,6S)4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−シクロヘキセン−1−メタノール−1−(ジヒドロゲンホスフェート)、2−アミノ−1,5−アンヒドロ−2−デオキシ−6−(ジヒドロゲンホスフェート)D−アルトリトール、2−アミノ−1,5−アンヒドロ−2,3−ジデオキシ−及び6−(ジヒドロゲンホスフェート)D−アラビノ−ヘキシトールである。
【0032】
当業者には分かるように、R6に更なる主に求核性の基を有する第一級アミンでさえ使用できる。この場合、更なる求核基は適切な保護基によって保護されなければならない。保護基は当該技術分野でよく知られており、標準的な教科書(Greene, T., Protective groups in organic synthesis, John Wiley&Sons, Inc. (1981) New York, Chichester, Brisbane, Toronto)において概説されている。好ましくは、アミノ基は、boc−、フタロイル−又はトリフルオロアセチル保護基によって保護され、メルカプト基はジスルフィドとして保護される。
【0033】
更に好ましい実施態様では、本発明は、例えばアミノ変性TAMRA染料のような他の第一級アミンとの併用で使用される。5−(及び6)−((N−(5−アミノペンチル)アミノ)カルボニル)−テトラメチルローダミンの混合物を用いたペンタメチニウム塩の環化(アミノカルバリボースとの反応に匹敵する条件下)によって、対応するN置換メチルニコチネートを良好な収率で得ることができる。
【0034】
得られた3−メトキシカルボニルピリジニウム系の反応性は記載された環化の使用に対して新しい機会を開く。更に好ましい実施態様では、本発明に係る方法において形成されるN置換メチル又はエチルニコチネートは、カップリング手順のための代替リンカーとして、例えばハプテン、蛍光又は発光化合物のようなエフェクター基に対するオリゴヌクレオチドのような生体分子のカップリングのために使用される。よって、本発明はリンカーとしてN置換メチル又はエチルニコチネートを含むコンジュゲートにも関する。
【0035】
次の実施例は本発明の理解を助けるために提供されるもので、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神を逸脱しないで記載された手順において変更を加えることができることは理解される。
【実施例】
【0036】
実施例1:
5−ジメチルアミノ−4−メトキシカルボニル−ペンタ−2,4−ジエニリデン−ジメチル−アンモニウムテトラフルオロボレートの合成
実施例1.1:メチル−(2E)−3−(3−ジメチルアミノ)プロパ−2−エノエートの合成

700mlの無水THF中のメチルプロピオレート(68.0ml,0.764mol)の溶液に同じ溶媒(392ml,0.783mol)中のN,N−ジメチルアミンの2M溶液を室温で1時間以内に添加した。溶媒の除去後、エバポレーターで1時間(37℃、10−20mbar)乾燥させ、淡黄色の固形物を生じた。粉砕した固形物をn−ヘキサンで洗浄して、TLC及び1H NMRに従って純粋であった93.0g(94%)のメチル−(2E)−3−(3−ジメチルアミノ)プロパ−2−エノエートを得た。
【0037】
実施例1.2:ピリジニウムテトラフルオロボレートの合成

テトラフルオロホウ酸(250ml,2.00mol)を加えてピリジン(157.7ml,1.95mol)を25分以内に冷却し(0℃)、無色沈殿物を得た。酸を完全に添加した後、混合物を同じ温度で更に30分攪拌した。ついで、反応混合物を濾過した。残留物を冷エタノールで洗浄し、高真空下で12時間乾燥させて、201.9g(60%)のピリジニウムテトラフルオロボレートを無色の結晶として得た。
【0038】
実施例1.3:5−ジメチルアミノ−4−メトキシカルボニル−ペンタ−2,4−ジエニリデン−ジメチル−アンモニウムテトラフルオロボレートの合成

ピリジニウムテトラフルオロボレート(283.7g,1.70mol)を442.5mlの無水酢酸/酢酸(2:1)中のメチル−(2E)−3−(3−ジメチルアミノ)プロパ−2−エノエートの溶液に加えた。得られた懸濁液を0℃に冷却し、激しく攪拌し、氷浴で冷却しながら3−ジメチルアミノアクロレイン(169.9ml,1.70mol)をゆっくり(3時間)加え、黄褐色の沈殿物を得た。室温で2時間更に攪拌した後、反応混合物を濾過した。残りの固形物をジエチルエーテルで数回洗浄し、減圧下で乾燥させた。i−プロパノール/エタノール(2:1)からの結晶化により、326.7g(65%)のペンタメチニウム塩が黄色結晶として得られた。
【0039】
実施例2:
3−アミノ−5−ヒドロキシメチル−シクロペンタン−1,2−ジオールの合成

EtOH中のKOHの1M溶液(54.5ml,54.5mmol)を、540mlのEtOHに溶解した塩酸塩の冷却(0℃)溶液に加えた。室温で15分攪拌した後、形成された無色の沈殿物を濾過によって除去した。濾液を減圧下で濃縮した。残りの油をエバポレーター(1時間、40℃)で乾燥させて、9.01g(112%)のアミノカルバリボースを淡黄色の油として得た。得られた生成物は、更なる精製なしに次の工程で使用される。
【0040】
実施例3:
1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−3−メトキシカルボニル−ピリジニウム−メタンスルホネートの合成

ビナミジニウム塩(298.1g,1.00mol)を1500mlのDMFに溶解させ、1当量のメタンスルホン酸(65.02ml,1.00mol)を加えた。この混合物を、1250mlのMeOH中の3−アミノ−5−ヒドロキシメチル−シクロペンタン−1,2−ジオール(165.3g,0.90mol)及び3−アミノ−5−ヒドロキシメチル−シクロペエンタン−1,2−ジオール(25.8g,0.15mol)の還流溶液(90℃)に連続的に非常にゆっくりと(5時間以内)滴下した。ビナミジニウム塩溶液を完全に添加した後、反応混合物を室温まで冷却し、再び0.15当量のメタンスルホン酸を加えた。混合物を同じ温度で12時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、赤褐色の油を得、これを更に3時間(45℃、4mbar)乾燥させた。収量:693.0g(191%,塩及び多量の溶媒を含む)。
【0041】
実施例4:
3−カルバモイル−1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウム−メタンスルホネート
実施例3からの粗1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−3−メトキシカルボニル−ピリジニウム−メタンスルホネートを更なる精製なしに対応するアミドに迅速に転換した。

粗1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−3−メトキシカルボニル−ピリジニウム−メタンスルホネート118.3g,173.7mmol)を100.0mlのメタノールに溶解させた。メタノール性アンモニア(7M,350.0ml,2.45mol)の添加後、反応混合物を2.5時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、赤褐色の油を得、これを更に3時間(40℃、10mbar)乾燥させた。この粗生成物は活性炭で前もって精製し、cNADの合成に対して直接使用される(国際公開第2007/012494号)。
【0042】
実施例5:
3−N,N−ジメチルカルバモイル−1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウム−メタンスルホネートの合成

3−N,N−ジメチルカルバモイル−1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウム−メタンスルホネートを、実施例3からのメチルエステルをTHF中のジメチルアミンの溶液と反応させることによって、3−カルバモイル−1−(2,3−ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−シクロペンチル)−ピリジニウム−メタンスルホネートと同様にして得た。
【0043】
実施例6:
ビナミジニウム塩のTAMRA染料へのカップリング
ビナミジニウム塩を変性TAMRA染料と反応させることによって、N−TAMRA−置換ニコチン酸エステルが形成される。
環化反応はアミノ修飾TAMRA染料で実施する。

アミノ修飾TAMRA染料(上記を参照−5−及び6異性体の混合物)(19.8mg,35.93μmol)をメタノールHCl(0.125M,201μl,25.15μmol)に溶解させた。混合物を65℃に加熱し、MeSO3H(MeOH/DMF(1:1)中0.154M、233μl,35.93μmol)中のビナミジニウム塩(10.7mg,35.93μmol)の溶液を同じ温度で2.5時間以内にゆっくりと添加した。ビナミジニウム塩溶液の添加後、反応混合物を室温で16時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、アセトニトリル/水勾配を用いたHPLC(Hypersil ODS)により精製した。精製した生成物をメタノール性HClに溶解させ、減圧下で蒸発させて、16.6mg(60%)のTAMRAピリジニウムコンジュゲートを得た。
MS:ESI:M+=636.98(24)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N置換カルボキシル化ピリジニウム化合物の合成方法において、
a)式I

のペンタメチニウム塩を提供し、
ここで、Xは対イオンであり、
R1は、O−メチル、O−エチル、O−プロピル、及びO−イソブチルから選択されるアルコキシであり、
R2からR5は独立してメチル又はエチルであり、
b)工程(a)のペンタメチニウム塩を式II

の第一級アミンと反応させ、
ここで、R6は直鎖状、分枝状、又は環状の置換されていてもよいアルキルであり、
c)これによって、X、R1、及びR6が上の定義の通りである式III

のN置換ピリジニウム化合物を得る、
工程を具備する方法。
【請求項2】
工程(b)において、第一級アミンと対応するプロトン化アミンの双方が存在している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一級アミンのその対応するプロトン化アミンに対する比が2:1から1:50である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一級アミンのその対応するプロトン化アミンに対する比が1:1から1:20である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
R1がOCH3である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
R2からR5がメチルである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式IIの第一級アミンが2,3ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−1−アミノシクロペンタンである請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
式IIの第一級アミンが(1R,2S,3R,4R)−2,3ジヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−1−アミノシクロペンタンである請求項1から7の何れか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−500289(P2013−500289A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522014(P2012−522014)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004524
【国際公開番号】WO2011/012271
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【Fターム(参考)】