説明

N,N’−ビス(フルオロフェニルアルキル)で置換されたペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミド、ならびにその製造および使用

本発明は、式(I)のN,N’−ビス(フルオロフェニルアルキル)で置換されたペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドと、その製造と、電荷輸送材料、励起子輸送材料、またはエミッタ材料としてのその使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題
本発明は、N,N’−ビス(フルオロフェニルアルキル)で置換されたペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドと、その製造と、電荷輸送材料、励起子輸送材料、またはエミッタ材料としてのその使用とに関する。
【0002】
従来技術
エレクトロニクス産業の多くの分野において、将来的には、古典的な無機半導体だけではなく、低分子材料または高分子材料を主成分とする有機半導体がますます使用されるようになることが予想されている。多くの場合、そのような有機半導体は、古典的な無機半導体より優れた利点を有する。この利点には、例えば、より良好な基板相溶性、およびそのような有機半導体に基づく半導体コンポーネントのより良好な加工性がある。有機半導体は、フレキシブル基板上での加工を可能にし、それらの界面の軌道エネルギーを分子モデリング法によって特定の応用分野に応じて正確に調整できるようにする。このようなコンポーネントの著しいコスト削減によって、有機エレクトロニクス研究の分野に復興がもたらされた。「有機エレクトロニクス」は、主に、有機半導体層に基づく電子コンポーネントの生産のための新しい材料および製造方法の開発に関わっている。これには、具体的には、有機電界効果トランジスタ(OFET)および有機発光ダイオード(OLED)、ならびに光電素子が含まれる。開発の大きな可能性は、例えば記憶素子および集積光電子デバイスにおける有機電界効果トランジスタが担っている。有機発光ダイオード(OLED)は、電流によって励起されたときに発光する材料の特性を利用している。OLEDは、平面型表示装置を製造するための陰極線管および液晶ディスプレイに代わるものとして特に興味深い。非常にコンパクトな設計と本質的に低い消費電力によって、OLEDを備えるデバイスは、携帯用途、例えば携帯電話やラップトップ型コンピュータ用途に特に適している。また、光誘起励起状態の最大輸送幅および高移動度(大きい励起子拡散長)を有し、そのためいわゆる励起子太陽電池における活物質としての使用に有利に適する材料も開発の大きな可能性を握っている。そのような材料に基づく太陽電池を用いると、非常に良好な量子収率を達成することが一般に可能である。
【0003】
Min−Min Shi等は、Acta Chimica Sinica,第64巻,2006年,No.8,第721−726頁において、N,N’−ビスパーフルオロフェニル−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシイミドおよびN,N’−ビス(1,1−ジヒドロパーフルオロオクチル)−3,4:9,10−ペリレンテトラカルボキシイミドの電子移動度を記載している。これらの化合物の電子移動度は、有機電界効果トランジスタとしての使用、および有機光電素子における使用に関して、依然として改善が必要とされる。励起子太陽電池における使用の可能性は記載されていない。
【0004】
Z.Bao等は、Chem.Mater.2007年,19,816−824頁において、薄膜トランジスタ(TFT)における、n型半導体としてのペリレンジイミドのフッ素化誘導体の使用を記載している。この事例では、イミド窒素原子がフッ素化アリール基を担持するペリレンジイミドが使用される。
【0005】
国際公開第2007/074137号は、一般式(A)
【化1】

[式中、
基、R基、R基、およびR基のうちの少なくとも1つは、Br、F、およびCNから選択された置換基であり、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
およびZは、それぞれ独立して、OまたはNR(式中、Rはオルガニル基である)であり、
およびZは、それぞれ独立して、OまたはNR(式中、Rはオルガニル基である)であり、
がNRであり、Z基およびZ基のうちの少なくとも1つがNRである場合、Rは1個のR基と一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となってもよく、
がNRであり、Z基およびZ基のうちの少なくとも1つがNRである場合、Rは1個のR基と一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となってもよい]の化合物と、有機電界効果トランジスタにおけるn型半導体としてのその使用を記載している。
【0006】
国際公開第2007/093643号は、一般式(B)
【化2】

[式中、
nは、2、3または4であり、
n1基、Rn2基、Rn3基、およびRn4基のうちの少なくとも1つはフッ素であり、
適切な場合には、Rn1基、Rn2基、Rn3基、およびRn4基のうちのさらに少なくとも1つは、ClおよびBrから独立して選択された置換基であり、残りの基はそれぞれ水素であり、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
、Z、Z、およびZは、それぞれOであり、
がNRである場合、Z基およびZ基のうちの1つがNRであることも可能であり、この場合、R基とR基とが一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となり、
がNRである場合、Z基およびZ基のうちの1つがNRであることも可能であり、この場合、R基とR基とが一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となる]の化合物の、有機電子装置における、特に有機電界効果トランジスタ、太陽電池、および有機発光ダイオードのための半導体、特にn型半導体としての使用を記載している。
【0007】
未公開の米国特許出願第60/945,704号は、一般式(C)
【化3】

[式中、
およびRは、それぞれ独立して、パーフルオロ−C〜C−アルキルである]の化合物の、電荷輸送材料または励起子輸送材料としての使用を記載している。
【0008】
驚くべきことに、N,N’−ビス(フルオロフェニルアルキル)で置換されたペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドが、電荷輸送材料、励起子輸送材料、またはエミッタ材料として特に有利に適していることが発見された。これらは、高い電荷移動度を有するn型半導体として特に注目に値する。さらに、得られるコンポーネントは、空気中で安定である。
【0009】
本発明の要約
本発明は、第1に、一般式(I)
【化4】

[式中、
mは、2、3、4または5であり、
nは、1、2または3であり、
xは、0または2である]の化合物を提供する。
【0010】
本発明は、上記に定義したとおりの一般式Iの化合物を製造するための方法をさらに提供する。この方法では、一般式II
【化5】

[式中、xは、0または2である]の化合物を、一般式III
【化6】

[式中、
nは、1、2または3であり、
mは、2、3、4または5である]のアミンと反応させる。
【0011】
本発明は、上記に定義したとおりの一般式Iの化合物の、電荷輸送材料、励起子輸送材料、またはエミッタ材料としての使用をさらに提供する。
【0012】
本発明は、上記に定義したとおりの一般式Iの化合物の、有機電子装置における半導体材料としての使用をさらに提供する。
【0013】
本発明は、上記に定義したとおりの一般式Iの化合物の、有機光電素子(OPV)における活物質としての使用、特に励起子太陽電池における励起子輸送材料としての使用をさらに提供する。
【0014】
本発明は、少なくとも1つのゲート構造体とソース電極とドレイン電極とを有する基板および、n型半導体としての少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物とを含む、有機電界効果トランジスタ(OFET)をさらに提供する。
【0015】
本発明は、多数の有機電界効果トランジスタを備える基板であって、これらの有機電界効果トランジスタのうちの少なくともいくつかが、n型半導体として、少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物を含む基板をさらに提供する。また本発明は、少なくとも1つのそのような基板を備える半導体装置も提供する。
【0016】
本発明は、少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物を含む有機発光ダイオード(OLED)をさらに提供する。
【0017】
本発明は、少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物を含む有機太陽電池をさらに提供する。
【0018】
発明の詳細な説明
一般式Iの化合物において、mは、好ましくは5である。
【0019】
一般式Iの化合物において、nは、好ましくは2である。
【0020】
一般式Iの化合物において、xは、好ましくは0である。
【0021】
一般式Iの化合物において、フルオロフェニルアルキル基は、式
【化7】

[式中、#は、イミド窒素原子との結合部位を表わす]のものであり、
【化8】

[式中、#は、イミド窒素原子との結合部位を表わし、
Aは、CH、(CH、または(CHである]から選択される。
【0022】
一般式Iの化合物において、フルオロフェニルアルキル基は、特に好ましくは、式
【化9】

[式中、#は、イミド窒素原子との結合部位を表わし、
Aは、CH、(CH、または(CHである]の群から選択される。
【0023】
上記に挙げた式中のAは、特に(CHである。
【0024】
一般式Iの化合物において、式
【化10】

のフルオロフェニルアルキル基は、好ましくは双方とも、
【化11】

[式中、#は、イミド窒素原子との結合部位を表わす]である。
【0025】
式Iのいくつかの好適な化合物を例として下記に示す:
【化12】

【0026】
一般式Iの化合物を製造するために、一般式II
【化13】

[式中、xは、0または2である]の化合物を一般式III
【化14】

[式中、
nは、1、2、または3であり、
mは、2、3、4、または5である]のアミンと反応させることができる。
【0027】
カルボン酸無水物基のイミド化が、原則として知られている。極性非プロトン性溶媒の存在下で、二無水物を1級アミンと反応させることが好ましい。適切な極性非プロトン性溶媒は、窒素複素環化合物、例えばピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、キナルジン、N−メチルピペリジン、N−メチルピペリドン、およびN−メチルピロリドンである。
【0028】
反応は、イミド化触媒の存在下で実施してもよい。適切なイミド化触媒は、有機酸および無機酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、およびリン酸である。また、適切なイミド化触媒には、遷移金属、例えば亜鉛、鉄、銅、およびマグネシウムの有機塩および無機塩もある。これらには、例えば、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酸化亜鉛、酢酸鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、酢酸銅(II)、酸化銅(II)、および酢酸マグネシウムが含まれる。使用するイミド化触媒の量は、イミド化すべき化合物の総質量に対して、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%である。
【0029】
アミンと二無水物のモル比は、好ましくは約2:1〜10:1、より好ましくは2.2:1〜8:1である。
【0030】
反応温度は、一般に約20℃〜250℃、好ましくは80℃〜200℃である。脂肪族アミンおよび脂環式アミンは、好ましくは約60℃〜100℃の温度範囲内で反応させる。芳香族アミンは、好ましくは約120℃〜160℃の温度範囲内で反応させる。
【0031】
保護ガス雰囲気下、例えば窒素下で反応を実施することが好ましい。
【0032】
反応は、標準気圧下で実施しても、あるいは所望であれば高圧下で実施してもよい。適切な圧力範囲は、約0.8〜10バールの範囲である。揮発性アミン(沸点約≦180℃)を使用する場合、高圧下での作業が好ましい。
【0033】
一般的に、得られたジイミドは、さらに精製せずに、その後の反応に使用することができる。しかしながら、この生成物を半導体として使用する場合、この生成物にさらなる精製を行なうことは有利となり得る。例には、クロマトグラフィー法があるが、この方法では、生成物を好ましくはハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、またはテトラクロロエタン、芳香族化合物、例えばトルエンまたはキシレン、あるいはそれらの混合物に溶解し、シリカゲル上で分離または濾過を行なう。最終的に、溶媒は除去する。
【0034】
一般式IIIのアミンは、当業者に既知の常用の方法によって得ることができる。これらは例えば、式IV
【化15】

のニトリルから開始して、例えば、アンモニア存在下での水素による還元、または錯体水素化物、例えばLiAlHやNaBHなどによる還元によって得られる。相当するニトリル、例えば2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルアセトニトリルなどは、多くの場合市販されているか、あるいは標準的な方法によって製造することができる。
【0035】
本発明の化合物(I)は、有機半導体として、特に有利に適している。これらは一般に、n型半導体として機能する。本発明によって使用される式(I)の化合物を別の半導体と組み合わせて、エネルギー準位の位置がその別の半導体をn型半導体として機能させる場合、化合物(I)は、例外的にp型半導体として機能することもできる。
【0036】
式(I)の化合物は、その空気安定性で注目に値する。
【0037】
式(I)の化合物は、高い電荷輸送移動度を有し、および/または高いオン/オフ比を有する。これらは、有機電界効果トランジスタ(OFET)に、特に有利に適している。
【0038】
本発明の化合物は、現在まで常用されているnチャネルMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET))が使用される集積回路(IC)の製造に有利に適している。これらは、例えばマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、スタティックRAM、およびその他のデジタル論理装置用のCMOS様の半導体装置である。
【0039】
半導体材料を製造する場合には、本発明の式(I)の化合物を以下の方法:印刷(オフセット、フレキソ、グラビア、スクリーン、インクジェット、電子写真)、蒸着、レーザ転写、フォトリソグラフィー、ドロップキャスティング、のうちの1つによってさらに処理することができる。これらは、表示装置(特に大面積ディスプレイおよび/またはフレキシブルディスプレイ)およびRFIDタグにおける使用に特に適している。
【0040】
また、本発明の化合物は、OLEDにおける蛍光エミッタとしても特に適しており、これはOLED中で、エレクトロルミネセンスによって、あるいは相当するリン光エミッタによるFoersterエネルギー移動(FRET)によって励起される。
【0041】
また、本発明の式(I)の化合物は、電気泳動効果に基づいて、添加した顔料色素により色の表示と非表示とを切り替える表示装置にも特に適している。このような電気泳動ディスプレイは、例えば米国特許第2004/0130776号に記載されている。
【0042】
本発明は、少なくとも1つのゲート構造体とソース電極とドレイン電極とを有する基板および、n型半導体としての少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物とを含む有機電界効果トランジスタをさらに提供する。本発明は、多数の有機電界効果トランジスタを備える基板であって、それらの電界効果トランジスタのうちの少なくともいくつかが、n型半導体として、少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物を含む基板をさらに提供する。また本発明は、少なくとも1つのそのような基板を備える半導体装置も提供する。
【0043】
特定の実施形態は、有機電界効果トランジスタのパターン(トポグラフィ)を有する基板であって、各トランジスタが、
− 基板上に配置された有機半導体と、
− 導電性チャネルの導電率を制御するためのゲート構造体と、
− チャネル両端の導電性のソース電極およびドレイン電極と、
を備え、有機半導体が、少なくとも1つの式(I)の化合物からなるか、あるいは式(I)の化合物を含む基板である。さらに、有機電界効果トランジスタは、一般に誘電体を備える。
【0044】
さらなる特定の実施形態は、有機電界効果トランジスタのパターンを有する基板であって、各トランジスタが、集積回路を形成するか、あるいは集積回路の一部であり、トランジスタのうちの少なくともいくつかが、少なくとも1つの式(I)の化合物を含む基板である。
【0045】
適切な基板は、原則としてこの目的で知られている材料である。適切な基板は、例えば、金属(好ましくは周期表の8族、9族、10族、または11族の金属、例えばAu、Ag、Cu)、酸化物材料(例えば、ガラス、石英、セラミックス、SiO)、半導体(例えば、ドープしたSi、ドープしたGe)、金属合金(例えば、Au、Ag、Cuなどに基づくもの)、半導体合金、ポリマー(例えばポリビニルクロリド、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ならびにそれらの混合物および複合物)、無機固体(例えば、塩化アンモニウム)、紙、ならびにそれらの組み合わせを含む。基板は、所望の用途に応じて、フレキシブル基板または非フレキシブ基板であってよく、曲面形状または平面形状を有してよい。
【0046】
半導体装置用の典型的な基板は、マトリクス(例えば石英もしくはポリマーマトリクス)と、場合によっては誘電体上層とを備える。
【0047】
適切な誘電体は、SiO、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブテン)、ポリビニルカルバゾール、フッ素化ポリマー(例えば、Cytop、CYMM)、シアノプルラン、ポリビニルフェノール、ポリ−p−キシレン、ポリビニルクロリド、あるいは熱または大気中水分によって架橋可能なポリマーである。具体的な誘電体は、「自己組織化ナノ誘電体」、すなわちSiCl官能基を含むモノマー、例えばClSiOSiCl、ClSi−(CH−SiCl、ClSi−(CH12−SiClから得られるポリマー、および/または大気中水分によって、または溶媒で希釈した水の添加によって架橋するポリマーである(例えば、Faccietti Adv.Mat.2005年,17,1705−1725頁を参照)。水の代わりに、ヒドロキシル含有ポリマー、例えばポリビニルフェノールまたはポリビニルアルコール、あるいはビニルフェノールとスチレンとのコポリマーが架橋成分としての機能を果たすことも可能である。また、架橋操作中に、少なくとも1つのさらなるポリマー、例えばポリスチレンが存在することも可能であり、このポリマーもその後架橋する(Facietti、米国特許出願第2006/0202195号を参照)。
【0048】
基板は、さらに電極、例えばOFETのゲート電極、ドレイン電極、およびソース電極を有してもよく、これらは通常は基板上に位置付けられる(例えば、誘電体上の非導電層に堆積されるか、またはその層に埋め込まれる)。基板は、さらにOFETの導電性ゲート電極を備えてもよく、これらは典型的には誘電体上層(すなわち、ゲート誘電体)の下方に配置される。
【0049】
特定の実施形態において、ゲート絶縁層は、基板表面の少なくとも一部上に存在する。ゲート絶縁層は、少なくとも1つの絶縁体を備え、これは好ましくは無機絶縁体、例えばSiO、SiNなど、強誘電性絶縁体、例えばAl、Ta、La、TiO、Yなど、有機絶縁体、例えばポリイミド、ベンゾシクロブテン(BCB)、ポリビニルアルコール、ポリアクリレートなど、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
ソース電極およびドレイン電極に適した材料は、原則として導電性の材料である。これには金属、好ましくは周期表の8族、9族、10族、および11族の金属、例えばPd、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Crなどが含まれる。また、導電性ポリマー、例えばPEDOT(=ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、PSS(=ポリ(スチレンスルホネート))、ポリアニリン、表面改質した金なども適している。好適な導電性材料は、比抵抗値が10−3Ω×メートル未満、好ましくは10−4Ω×メートル未満、特に10−6もしくは10−7Ω×メートル未満である。
【0051】
特定の実施形態において、ドレイン電極およびソース電極は、有機半導体材料の少なくとも一部上に存在する。基板が、半導体材料またはICに常用されているさらなるコンポーネント、例えば絶縁体、抵抗器、コンデンサー、導体トラックなどを備えてもよいことは理解されるであろう。
【0052】
電極は、常用の方法、例えば蒸着、リソグラフィー法、または別の構造化法によって塗布することができる。
【0053】
また、半導体材料は、分散相中に適切な助剤(ポリマー、界面活性剤)を用いて、印刷によって処理することもできる。
【0054】
好適な実施形態において、少なくとも1つの一般式Iの化合物(および適切な場合には、さらなる半導体材料)の堆積は、気相堆積法(物理気相堆積、PVD)によって実施する。PVD法は、高真空条件下で実施し、この方法は、蒸発工程と、輸送工程と、堆積工程とを含む。驚くべきことに、一般式Iの化合物は、本質的に分解しない、および/または望ましくない副生成物を形成しないことから、PVD法における使用に特に有利に適していることが発見された。堆積された材料は、高純度で得られる。特定の実施形態において、堆積された材料は、結晶の形態で得られるか、あるいは高い結晶含有量を備える。一般的に、PVDでは、少なくとも1つの一般式Iの化合物をその蒸発温度を上回る温度まで加熱し、結晶化温度を下回るまで冷却することによって基板上に堆積させる。堆積時の基板の温度は、好ましくは約20〜250℃の範囲、より好ましくは50〜200℃の範囲である。
【0055】
得られる半導体層は、一般にソース電極とドレイン電極との間のオーム接触に十分な厚さを有する。堆積は、不活性雰囲気下、例えば窒素下、アルゴン下、またはヘリウム下で行なってもよい。
【0056】
堆積は、典型的には周囲圧力で、または減圧下で行なう。適切な圧力範囲は、約10−7〜1.5バールである。
【0057】
式(I)の化合物は、基板上に、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは15〜250nmの厚さで堆積させる。特定の実施形態において、式Iの化合物は、少なくとも部分的に結晶の形態で堆積させる。この目的で、特に上述のPVD法が適している。さらに、事前に作製した有機半導体の結晶を使用することも可能である。そのような結晶を得るための適切な方法は、参考として本明細書で援用される、R.A.Laudise等による"Physical Vapor Growth of Organic Semi−Conductors",Journal of Crystal Growth 187(1998年),第449−454頁、および"Physical Vapor Growth of Centimeter−sized Crystals of α−Hexathiophene",Journal of Crystal Growth 1982(1997年),第416−427頁に記載されている。
【0058】
また、一般式(I)の化合物は、溶液から有利に処理することもできる。その場合、少なくとも1つの一般式(I)の化合物(および適切な場合には、さらなる半導体材料)の基板上への堆積は、例えばスピンコーティングによって実施する。また、式(I)の化合物は、印刷法による、半導体素子、特にOFETの製造にも適している。この目的で、常用の印刷法(インクジェット、フレキソ、オフセット、グラビア、凹版印刷、ナノプリンティング)を用いることが可能である。印刷法において式(I)の化合物を用いる場合に好適な溶媒は、芳香族溶媒、例えばトルエン、キシレンなどである。また、増粘性物質、例えばポリマー、例えばポリスチレンなどをこのような「半導体インク」に添加することも可能である。この場合、使用する誘電体は、前述の化合物である。
【0059】
特定の実施形態において、本発明の電界効果トランジスタは、薄膜トランジスタ(TFT)である。常用の構造体において、薄膜トランジスタは、基板上に配置されたゲート電極と、その上でありかつ基板上に配置されたゲート絶縁層と、ゲート絶縁層上に配置された半導体層と、半導体層上のオーム接触層と、オーム接触層上のソース電極およびドレイン電極とを有する。
【0060】
好適な実施形態において、少なくとも1つの一般式(I)の化合物(および適切な場合には、少なくとも1つのさらなる半導体材料)の堆積前に、基板の表面に改質を行なう。この改質は、半導体材料を結合させる領域、および/または半導体材料を堆積できない領域を形成する役割を果たす。基板の表面は、好ましくは、基板の表面および式(I)の化合物に結合させるのに適した少なくとも1つの化合物(C1)で改質する。適切な実施形態において、基板の表面の一部または表面全体を少なくとも1つの化合物(C1)で被覆することにより、少なくとも1つの一般式(I)の化合物(および適切な場合には、さらなる半導体化合物)の堆積を改善することができる。さらなる実施形態は、相当する製造法によって、一般式(C1)の化合物のパターンを基板上に堆積させることを含む。これには、この目的で知られているマスク法およびいわゆる「パターニング」法が含まれるが、これらは例えば、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第11/353934号に記載されている。
【0061】
適切な式(C1)の化合物は、基板および少なくとも1つの一般式Iの半導体化合物の両者との結合相互作用が可能である。「結合相互作用」という用語は、化学結合(共有結合)、イオン結合、配位相互作用、ファンデルワールス相互作用、例えば双極子間相互作用など、およびそれらの組み合わせの形成を包含する。適切な一般式(C1)の化合物は以下のとおりである。
− シラン、ホスホン酸、カルボン酸、ヒドロキサム酸、例えばアルキルトリクロロシラン、例えばn−オクタデシルトリクロロシラン;トリアルコキシシラン基を有する化合物、例えばアルキルトリアルコキシシラン、例えばn−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリ(n−プロピル)オキシシラン、n−オクタデシルトリ(イソプロピル)オキシシラン;トリアルコキシアミノアルキルシラン、例えばトリエトキシアミノプロピルシランおよびN−[(3−トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン;トリアルコキシアルキル3−グリシジルエーテルシラン、例えばトリエトキシプロピル3−グリシジルエーテルシラン;トリアルコキシアリルシラン、例えばアリルトリメトキシシラン;トリアルコキシ(イソシアナトアルキル)シラン;トリアルコキシシリル(メタ)−アクリロイルオキシアルカン、およびトリアルコキシシリル(メタ)アクリルアミドアルカン、例えば1−トリエトキシシリル−3−アクリロイルオキシプロパン
− アミン、ホスフィン、および硫黄含有化合物、特にチオール。
【0062】
化合物(C1)は、好ましくは、アルキルトリアルコキシシラン、特にn−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン;ヘキサアルキルジシラザン、および特にヘキサメチルジシラザン(HMDS);C〜C30−アルキルチオール、特にヘキサデカンチオール;メルカプトカルボン酸およびメルカプトスルホン酸、特にメルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、ならびにそれらのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩から選択される。
【0063】
また、本発明の半導体を備える種々の半導体構成、例えばトップコンタクト型、トップゲート型、ボトムコンタクト型、ボトムゲート型、あるいは縦型構造、例えばVOFET(縦型有機電界効果トランジスタ)(例えば、米国特許第2004/0046182号に記載)も考えられる。
【0064】
層厚は、例えば、半導体では10nm〜5μm、誘電体では50nm〜10μmであり、電極は、例えば20nm〜1μmであってよい。また、OFETを組み合わせて、別のコンポーネント、例えばリング発振器またはインバータを形成することもできる。
【0065】
本発明のさらなる態様は、n型および/またはp型半導体であってよい、複数の半導体コンポーネントを備える電子コンポーネントの提供である。このようなコンポーネントの例には、電界効果トランジスタ(FET)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、トンネルダイオード、変換器、発光コンポーネント、生物学的および化学的検出器またはセンサ、温度依存性検出器、光検出器、例えば偏光感受性光検出器、ゲート、ANDゲート、NANDゲート、NOTゲート、ORゲート、TORゲート、およびNORゲート、抵抗器、スイッチ、タイマー装置、静的もしくは動的記憶装置、およびその他の動的もしくは順序論理装置またはプログラマブル回路を含むその他のデジタルコンポーネントがある。
【0066】
特定の半導体素子は、インバータである。デジタル論理において、インバータは、入力信号を反転するゲートである。インバータは、NOTゲートとも称される。実際のインバータ回路は、入力電流とは逆の構成の出力電流を有する。典型的な値は、例えば、TTL回路の場合(0、+5V)である。デジタルインバータの性能により、電圧伝達曲線(VTC)、すなわち出力電流に対する入力電流のプロットが再現される。理想的にはこれは段階関数であり、実測曲線がそのような段階に近似していればいるほど、インバータは優れている。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、インバータにおける有機n型半導体として使用される。
【0067】
本発明の式Iの化合物は、有機光電素子(OPV)における使用にも特に有利に適している。
【0068】
有機太陽電池は、一般に層構造体を有し、また一般に少なくとも以下の層:陽極、保護層、および陰極を備える。これらの層は、一般に、それらに常用されている基板上に配置される。有機太陽電池の構造は、例えば、開示内容全体が参考として本明細書で援用される、米国特許第2005/0098726号および米国特許第2005/0224905号に記載されている。
【0069】
本発明は、光活性材料として少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iの化合物を含む有機太陽電池をさらに提供する。
【0070】
有機太陽電池に適した基板は、例えば、酸化物材料(例えば、ガラス、セラミック、SiO、特に石英)、ポリマー(例えば、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ならびにそれらの混合物および複合物)、ならびにそれらの組み合わせである。
【0071】
適切な電極(陰極、陽極)は、原則として金属(好ましくは周期表の8族、9族、10族、または11族の金属、例えばPt、Au、Ag、Cu、Al、In、Mg、Ca)、半導体(例えば、ドープしたSi、ドープしたGe、インジウムスズ酸化物(ITO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO))、金属合金(例えば、Pt、Au、Ag、Cuなどに基づくもの、特にMg/Ag合金)、半導体合金などである。使用する陽極は、好ましくは、入射光に対して本質的に透明の材料である。これには例えば、ITO、ドープしたITO、ZnO、TiO、Ag、Au、Ptが含まれる。使用する陰極は、好ましくは、入射光を本質的に反射する材料である。これには例えば、金属膜、例えばAl、Ag、Au、In、Mg、Mg/AL、Caの金属膜が含まれる。
【0072】
光活性層はそれ自体が、本発明による方法によって得られた層を少なくとも1つ含むか、または少なくとも1つのそのような層からなり、また有機半導体材料として、少なくとも1つの上記に定義したとおりの式Iaおよび/またはIbの化合物を含む。光活性層に加え、1つ以上のさらなる層があってもよい。これには例えば、以下の層
− 電子伝導特性を有する層(ETL、電子輸送層)
− 吸収してはならない、正孔伝導材料を含む層(正孔輸送層、HTL)
− 吸収すべきではない、励起子阻止層および正孔阻止層(例えば、励起子阻止層、EBL)
− 増倍層が含まれる。
【0073】
適切な励起子阻止層および正孔阻止層は、例えば、米国特許第6,451,415号に記載されている。
【0074】
励起子阻止層に適した材料は、例えば、バソクプロイン(BCP)、4,4’,4’’−トリス[3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、またはポリ−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)である。
【0075】
本発明の太陽電池は、光活性ドナー−アクセプタヘテロ接合に基づいていてよい。少なくとも1つの式Iの化合物をHTM(正孔輸送材料)として使用する場合、相当するETM(励起子輸送材料)は、化合物の励起後、ETMへの速やかな電子遷移が行なわれるように選択しなければならない。適切なETMは、例えば、C60およびその他のフラーレン、ペリレン−3,4;9,10−ビス(ジカルボキシイミド)(PTCDI)である。少なくとも1つの式Iの化合物をETMとして使用する場合、相補的なHTMは、化合物の励起後、HTMへの速やかな正孔遷移が行なわれるように選択しなければならない。このヘテロ接合は、平面(平坦)設計を有してもよい(Two layer organic photovoltaic cell,C.W.Tang,Appl.Phys.Lett.,48(2),183−185頁(1986年)、またはN.Karl,A.Bauer,J.Holzaepfel,J.Marktanner,M.Moebus,F.Stoelzle,Mol.Cryst.Liq.Cryst,252,第243−258頁(1994年)を参照)。また、このヘテロ接合は、バルクヘテロ接合または相互貫入ドナー−アクセプタネットワークとして設計することもできる(例えば、C.J.Brabec,N.S.Sariciftci,J.C.Hummelen,Adv.Funct.Mater.,11(1),15(2001年)を参照)。
【0076】
式Iの化合物は、MiM構造、pin構造、pn構造、Mip構造、またはMin構造を有する太陽電池における光活性材料として使用することができる(M=金属、p=pドープした有機もしくは無機半導体、n=nドープした有機もしくは無機半導体、i=有機層から構成される真性導電性の系;例えば、B.J.Drechselら,Org.Eletron.,5(4),175(2004年)、またはMaennigら,Appl.Phys.A79,第1−14頁(2004年)を参照)。
【0077】
また、式Iの化合物は、P.Peumans、A.Yakimov、S.R.Forrestによって、J.Appl.Phys,93(7),第3693−3723頁(2003年)に記載されているように、タンデムセルにおける光活性材料としても使用することもできる(米国特許第4,461,922号、米国特許第6,198,091号、および米国特許第6,198,092号を参照)。
【0078】
また、式Iの化合物は、2個以上の積層されたMiM、pin、Mip、もしくはMinダイオードから構成されるタンデムセルにおける光活性材料として使用することもできる(独国特許出願第10313232.5号を参照)(J.Drechselら,Thin Solid Films,451452,第515−517頁(2004年))。
【0079】
M層、n層、i層、およびp層の層厚は、典型的には10〜1000nm、好ましくは10〜400nm、より好ましくは10〜100nmである。薄層は、減圧下または不活性ガス雰囲気中での蒸着によって、レーザーアブレーションによって、あるいは溶液もしくは分散液処理が可能な方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、キャスティング法、噴霧、ディップコーティング、または印刷(例えば、インクジェット、フレキソ、オフセット、グラビア、凹版印刷、ナノインプリンティング)によって製造することができる。
【0080】
適切な有機太陽電池は、上記に記載したように、少なくとも1つの本発明の式Iの化合物を電子供与体(n型半導体)または電子受容体(p型半導体)として含む。一般式Iの化合物に加え、以下の半導体材料が、有機光電素子における使用に適している:
【0081】
ハロゲン化されたフタロシアニン、またはハロゲン化されていないフタロシアニン。これには、無金属フタロシアニン、あるいは二価金属または金属原子を含有する基を含むフタロシアニン、特にチタニルオキシ、バナジルオキシ、鉄、銅、亜鉛などのフタロシアニンが含まれる。適切なフタロシアニンは、特に銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、および無金属フタロシアニンである。特定の実施形態では、ハロゲン化されたフタロシアニンを使用する。
【0082】
これには以下:
2,6,10,14−テトラフルオロフタロシアニン、例えば、銅2,6,10,14−テトラフルオロフタロシアニンおよび亜鉛2,6,10,14−テトラフルオロフタロシアニン;
1,5,9,13−テトラフルオロフタロシアニン、例えば、銅1,5,9,13−テトラフルオロフタロシアニンおよび亜鉛1,5,9,13−テトラフルオロフタロシアニン;
2,3,6,7,10,11,14,15−オクタフルオロフタロシアニン、例えば、銅2,3,6,7,10,11,14,15−オクタフルオロフタロシアニンおよび亜鉛2,3,6,7,10,11,14,15−オクタフルオロフタロシアニン;
ヘキサデカクロロフタロシアニンおよびヘキサデカフルオロフタロシアニン、例えば銅ヘキサデカクロロフタロシアニン、亜鉛ヘキサデカクロロフタロシアニン、無金属ヘキサデカクロロフタロシアニン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン、ヘキサデカフルオロフタロシアニン、または無金属ヘキサデカフルオロフタロシアニンが含まれる。
【0083】
ポルフィリン、例えば、5,10,15,20−テトラ(3−ピリジル)ポルフィリン(TpyP)、あるいはテトラベンゾポルフィリン、例えば無金属テトラベンゾポルフィリン、銅テトラベンゾポルフィリン、または亜鉛テトラベンゾポルフィリン。特に好適なものは、本発明によって使用される式(I)の化合物と同様に、可溶性前駆体として溶液から処理され、基板上で熱分解によって顔料を生じる光活性要素に変換されるテトラベンゾポルフィリンである。
【0084】
アセン、例えばアントラセン、テトラセン、ペンタセンであり、これらはそれぞれ置換されていなくても、置換されていてもよい。置換アセンは、好ましくは、電子供与性置換基(例えば、アルキル、アルコキシ、エステル、カルボキシレート、またはチオアルコキシ)、電子求引性置換基(例えば、ハロゲン、ニトロ、またはシアノ)、およびそれらの組み合わせから選択された少なくとも1つの置換基を含む。これらには、2,9−ジアルキルペンタセンおよび2,10−ジアルキルペンタセン、2,10−ジアルコキシペンタセン、1,4,8,11−テトラアルコキシペンタセン、ならびにルブレン(5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン)が含まれる。適切な置換ペンタセンは、参考として本明細書で援用される、米国特許第2003/0100779号および米国特許第6,864,396号に記載されている。好適なアセンはルブレンである。
【0085】
液晶(LC)材料、例えば、コロネン、例えばヘキサベンゾコロネン(HBC−PhC12)、コロネンジイミド、またはトリフェニレン、例えば2,3,6,7,10,11−ヘキサヘキシルチオトリフェニレン(HTT)、2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(4−n−ノニルフェニル)トリフェニレン(PTP)、または2,3,6,7,10,11−ヘキサキス(ウンデシルオキシ)トリフェニレン(HAT11)。ディスコチック液晶材料が特に好ましい。
【0086】
チオフェン、オリゴチオフェン、およびそれらの置換誘導体。適切なオリゴチオフェンは、クアテルチオフェン、キンクチオフェン、セキシチオフェン、α,ω−ジ(C〜C)−アルキルオリゴチオフェン、例えばα,ω−ジヘキシルクアテルチオフェン、α,ω−ジヘキシルキンクチオフェン、およびα,ω−ジヘキシルセキシチオフェン、ポリ(アルキルチオフェン)、例えばポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ビス(ジチエノチオフェン)、アントラジチオフェン、およびジアルキルアントラジチオフェン、例えばジヘキシルアントラジチオフェン、フェニレン−チオフェン(P−T)オリゴマー、およびその誘導体、特にα,ω−アルキルで置換されたフェニレン−チオフェンオリゴマーである。
【0087】
また、α,α’−ビス(2,2−ジシアノビニル)キンクチオフェン(DCV5T)型化合物、3−(4−オクチルフェニル)−2,2’−ビチオフェン(PTOPT)型化合物、ポリ(3−(4’−(1,4,7−トリオキサオクチル)フェニル)チオフェン)(PEOPT)型化合物、ポリ(3−(2’−メトキシ−5’−オクチルフェニル)チオフェン)(POMeOPT)型化合物、ポリ(3−オクチルチオフェン)(POT)型化合物、ポリ(ピリドピラジン−ビニレン)−ポリチオフェンブレンド、例えばEHH−PpyPz、PTPTBコポリマー、BBLコポリマー、FBTコポリマー、PFMOコポリマー(Brabec C.,Adv.Mater.,2996,18,2884頁を参照)、(PCPDTBT)ポリ[2,6−(4,4−ビス(2−エチルヘキシル)−4H−シクロペンタ[2,1b;3,4b’]ジチオフェン)−4,7−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)も適している。
【0088】
パラフェニレンビニレン、およびパラフェニレンビニレンを含むオリゴマーまたはポリマー、例えばポリパラフェニレンビニレン、MEH−PPV(ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)、MDMO−PPV(ポリ(2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン))、PPV、CN−PPV(さまざまなアルコキシ誘導体を含む)。
【0089】
フェニレンエチニレン/フェニレンビニレンハイブリッドポリマー(PPE−PPV)。
【0090】
ポリフルオレン、および交互ポリフルオレンコポリマー、例えば4,7−ジチエン−2’−イル−2,1,3−ベンゾチアジアゾールとのコポリマー。また、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ベンゾチアジアゾール)(FBT)、ポリ(9,9’−ジオクチルフルオレン−コ−ビス−N,N’−(4−ブチルフェニル)ビス−N,N’−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(PFB)も適している。
【0091】
ポリカルバゾール、すなわちカルバゾールを含むオリゴマーおよびポリマー。
【0092】
ポリアニリン、すなわちアニリンを含むオリゴマーおよびポリマー。
【0093】
トリアリールアミン、ポリトリアリールアミン、ポリシクロペンタジエン、ポリピロール、ポリフラン、ポリシロール、ポリホスホール、TPD、CBP、Spiro−MeOTAD。
【0094】
有機太陽電池中に、少なくとも1つの本発明の化合物とハロゲン化フタロシアニンとを含む半導体材料の組み合わせを使用することが特に好ましい。
【0095】
本発明によって使用される式Iの化合物以外のリレン。これに関連して、「リレン」という用語は、一般にペリ位で連結したナフタレン単位から構成される分子部分を有する化合物を指す。ナフタレン単位の数によって、これらはペリレン(n=2)、テリレン(n=3)、クアテリレン(n=4)、またはより高級のリレンであってよい。したがって、これらは次式
【化16】

[式中、
n1基、Rn2基、Rn3基、およびRn4基は、n=1〜4の場合、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、またはハロゲン以外の基であってよく、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
は、OまたはNR(式中、Rは、水素またはオルガニル基である)であり、
、Z、Z、およびZは、それぞれOであり、
がNRである場合、Z基およびZ基のうちの1つがNRであってもよく、この場合R基とR基とが一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となり、
がNRである場合、Z基およびZ基のうちの1つがNRであってもよく、この場合R基とR基とが一緒になって、隣接結合間に2〜5個の原子を有する架橋基となる]のペリレン、テリレン、またはクアテリレンであってよい。
【0096】
適切なリレンは、例えば、参考として本明細書で援用される、PCT/EP2006/070143号、PCT/EP2007/051532号、およびPCT/EP2007/053330号に記載されている。
【0097】
有機太陽電池中に、少なくとも1つの本発明の式Iのリレンを含む半導体材料の組み合わせを使用することが特に好ましい。
【0098】
また、前述の半導体材料は全てドープされていてもよい。特定の実施形態では、したがって、本発明の有機太陽電池中に、式Iの化合物および/または(存在するならば)それとは異なるさらなる半導体材料を少なくとも1つのドーパントと組み合わせて使用する。n型半導としての化合物Iの使用に適したドーパントは、例えば、ピロニンBおよびローダミン誘導体である。
【0099】
本発明は、さらに、少なくとも1つの本発明の式Iの化合物を含む有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【0100】
有機発光ダイオードは、原則として複数の層から形成される。これらの層には、1.陽極、2.正孔輸送層、3.発光層、4.電子輸送層、および5.陰極が含まれる。また、有機発光ダイオードが、上記の層全てを有さないことも可能である。例えば、(1)(陽極)、(3)(発光層)、および(5)(陰極)の層を備える有機発光ダイオードも同様に適している。この場合、(2)(正孔輸送層)および(4)(電子輸送層)の層の機能は、隣接する層によって果たされる。(1)、(2)、(3)、および(5)の層または(1)、(3)、(4)、および(5)の層を有するOLEDも同様に適している。有機発光ダイオードの構造と、その製造のための方法は、原則として当業者には周知である(例えば、国際公開第2005/019373号から)。OLEDの個々の層に適した材料は、例えば国際公開第00/70655号において開示されている。本明細書において、これらの文書の開示を参考にする。化合物Iは、常用の技法による、すなわち熱蒸発、化学蒸着、およびその他の技法による気相からの堆積によって、基板に塗布することができる。
【0101】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0102】
実施例
実施例1:2−ペンタフルオロフェニルエチルアミンの調製
370mgのLiAlHを10mlの乾燥ジエチルエーテルに懸濁させる。次に1.24gのAlClを6mlのエーテルに溶解させて、この懸濁液に速やかに添加する。5分後、6mlのエーテルに溶解させた2.00gのペンタフルオロフェニルアセトニトリルをゆっくりと滴加する。室温で1時間攪拌した後、残留LiAlHを水で慎重にクエンチングし、その後16mlの6N 硫酸および8mlの水を添加する。分液漏斗中で、1回当たり20mlのエーテルで2回振盪してエーテル相を除去し、水相を抽出する。最後に、氷浴で冷却しながら、KOHペレットを用いて水相をpH11にし、1回当たり30mlのエーテルで3回振盪して、再び水相を抽出する。この3つの有機相を混合し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、低真空下で溶媒を除去する。
収率:1.70g(0.85mmol、理論値の85%)

【化17】

【0103】
実施例2:N,N’−ビス(2−ペンタフルオロフェニルエチル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシイミドの調製
50mg(0.127mmol)のペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物と、200mg(0.984mmol)の2−ペンタフルオロフェニルエチルアミンと、5mgの酢酸亜鉛とをアルゴン下で、0.7mlのキノリンに懸濁させ、その混合物を一晩180℃に加熱する。次にこの反応混合物を2N HClに添加し、100mlのクロロホルムで3回振盪して抽出する。有機相を混合し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、カラムクロマトグラフィー(CHCl)によって精製する。最後の微量副産物を除去するために、シリカゲル上でクロロホルム/トルエン(9/1)を用いて、この混合物を再び溶出させる。
収率:15mg(理論値の15%)(赤色粉末)

【化18】

HR−MS(apci(posモード、アセトニトリル/クロロホルム:1/1)):calc.m/z C401710([M+H])799,1023;found779,1025
電気化学(CHCl,0.1M TBAHFP対フェロセン):
red1/2(PBI/PBI)=−1.01V、Ered1/2(PBI/PBI2−)=−1.21V
【0104】
電界効果トランジスタ中に使用した場合の性能結果:
気相からの堆積による半導体基板の製造
使用した基板は、誘電体(面積に基づくキャパシタンスC=10nF/cm)として熱堆積させた酸化物層(300nm)を備える、nドープしたシリコンウエハー(2.5×2.5cm、導電率<0.004Ω−1cm)である。被覆した基板をアセトンおよびイソプロパノールで濯いで洗浄した。真空蒸着装置(Angstrom Engineering Inc.(カナダ))内で、所定の温度(125℃)で基板上に半導体化合物をPVD堆積させた(堆積速度:0.3〜0.5Å/s、圧力:10−6トール)。得られた物質の電荷移動度を測定するために、トップコンタクト構造にTFTを備えた。この目的で、フォトリソグラフィーおよび気相堆積によって、チャネル長さ100μm、長さ/幅比約20のソース電極およびドレイン電極である、60nmの金層を4nmのクロム上に堆積させた。基板の表面は、以下に記載のとおりにOTSで改質するか、または改質しないままにした。OFETの電気特性をKeithley 4200−SCS半導体パラメータ分析器を用いて判定した。
【0105】
表面処理
SiO被覆ウエハーをアセトンおよびイソプロパノールで濯いで洗浄した後、その表面をn−オクタデシルトリエトキシシラン(OTS、C1837Si(OC)で改質した。この目的で、真空デシケータ内で、数滴のOTS(Aldrich Chem.社製)を予熱した表面上(約100℃)に加えた。デシケータを真空にし、基板を真空下(25mmHg)で5時間維持した。最後に、基板を110℃で15分間焼成し、イソプロパノールで濯ぎ、窒素流中で乾燥させた。
【0106】
トランジスタ性能の試験結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
mは、2、3、4または5であり、
nは、1、2または3であり、
xは、0または2である]の化合物。
【請求項2】
式中、mが5である、請求項1に記載の一般式Iの化合物。
【請求項3】
式中、nが2である、請求項1から2までのいずれか1項に記載の一般式Iの化合物。
【請求項4】
式中、xが0である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の一般式Iの化合物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に定義されたとおりの一般式Iの化合物を製造するための方法であって、一般式II
【化2】

[式中、xは0または2である]の化合物を、一般式III
【化3】

[式中、
nは、1、2または3であり、
mは、2、3、4または5である]のアミンと反応させる方法。
【請求項6】
電荷輸送材料、励起子輸送材料、またはエミッタ材料としての、請求項1から4までのいずれか1項に定義されたとおりの一般式Iの化合物の使用。
【請求項7】
有機電子装置における半導体材料としての、請求項1から4までのいずれか1項に定義されたとおりの一般式Iの化合物の使用。
【請求項8】
有機電界効果トランジスタにおけるn型半導体としての、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
有機光電素子における活物質として、特に励起子太陽電池における励起子輸送材料としての、請求項1から4までのいずれか1項に定義されたとおりの一般式Iの化合物の使用。
【請求項10】
少なくとも1つのゲート構造体とソース電極とドレイン電極とを有する基板と、n型半導体としての少なくとも1つの請求項1から4までのいずれか1項に定義されるとおりの式Iの化合物とを含む、有機電界効果トランジスタ。
【請求項11】
多数の有機電界効果トランジスタを備える基板であって、前記電界効果トランジスタのうちの少なくともいくつかが、n型半導体として、少なくとも1つの請求項1から4までのいずれか1項に定義されるとおりの式Iの化合物を含む基板。
【請求項12】
請求項11に定義されるとおりの少なくとも1つの基板を備える、半導体装置。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項1から4までのいずれか1項に定義されるとおりの式Iの化合物を含む、有機発光ダイオード(OLED)。
【請求項14】
少なくとも1つの請求項1から4までのいずれか1項に定義されるとおりの式Iの化合物を含む、有機太陽電池。

【公表番号】特表2011−519350(P2011−519350A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500214(P2011−500214)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053201
【国際公開番号】WO2009/115553
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】