説明

N,N−ジハロゲン化アミノ酸および誘導体

本発明は、活性な殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の化合物および組成物、並びに療法におけるこれら組成物の新規な使用を提供する。本発明はまた、該新規な化合物および組成物の使用方法をも提供する。本発明は更に、これらの化合物の製造方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の化合物;該アミノ酸をベースとする組成物;ハロゲンを放出する能力を有するそれらの誘導体;並びに、療法におけるこれら組成物の新規な使用に関する。別の変形においては、本発明は、活性な殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の化合物;組成物;並びに、療法におけるそれら組成物の新規な使用に関する。
【0002】
本明細書はまた、新規な化合物および組成物の使用方法をも記載する。本明細書は更に、これらの化合物の製造方法を記載する。より具体的には、これらハロゲン化アミノ酸およびそれらの誘導体もまた、本明細書中でアミノ酸と呼ぶ。天然のアミノ酸の例としては、タウリン、ホモタウリン、アラニン、β−アラニン、オルニチン、およびγ−グルタミン酸、またはγ−アミノ酪酸(GABA)である。該ハロゲン化アミノ酸の製造のための非天然アミノ酸出発物質の非限定的な例としては、1−アミノ−1−メチルエタンスルホン酸、1−アミノ−1,1−ジメチルエタンスルホン酸、1,1−ジメチル−2−アミノ−2−カルボキシ−エタンスルホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、2−アミノ−5−ホスホノパンタン(pantanoic)酸、アミノエチルホスホン酸ジエステル(例えば、1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸、1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、ロイシンホスホン酸、4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、(±)−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、(±)−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、dl−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、アラニンボロン酸、β−アラニンボロン酸、またはロイシンボロン酸のジエチルエステル)、およびそれらの塩を含む。
【0003】
これらの出発物質は、それらのエステルまたは塩の形態で使用することができる。該ホスホン酸の低級アルキルエステルは、本発明のジハロアミノホスホン酸およびそれらの誘導体の製造において好ましいエステルである。本明細書中で使用する用語「ハロゲン」とは、クロロ、ブロモ、およびヨードを含む。
【0004】
N,N−ジハロアミノ酸の出発物質は、通常公知の化合物であるか、あるいは公知の方法によって製造することができる。これらの物質は、Tetrahedron: Asymmetry 1997, 8(13), FEMS Microbiol. Lett., 70, 23-28 (1990), Synth. Commun. 2725-2731 (1994), FEMS Microbiol. Lett. 108, 225-230 (1993), Neurosci. Lett. 21: 77-92 (1981), Br. J. Pharmacol. 75, 65、および例えば、Prof. R. Noyori Nobel Lecture 「Asymmetric Catalysis: Science and Opportunities」(2001年12月8日), (www. nobel. se/chemistry/laureates/2001/noyori-lecture. pdf)中に記載されている。
【0005】
多数のN,N−ジハロゲン化アミノ酸が知られる。これらのアミノ酸およびそれらの誘導体に関して、我々は、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、抗真菌性、および抗ウイルス性の性質を有する新規な組成物を提供する。
【0006】
本発明はまた、多数の新規なN,N−ジハロゲン化アミノ酸、並びに殺菌性、抗菌性、抗感染性、殺胞子性、抗微生物性、抗真菌性、および抗ウイルス性の性質を有するそれらの誘導体にも関する。
【0007】
(背景技術)
感染症を排除する能力について知られる体内の免疫細胞、好中球、およびマクロファージは、微生物、および反応性酸素代謝産物(これは、正常な細胞または新生物(癌性)細胞を破壊し、そして炎症性応答を調節する)を生成することができる。
【0008】
好中球は、炎症性の刺激、細菌感染症、および/または他の膜の変化に対する応答として活性化され得る。結果として、それらは、スーパーオキシドラジカル(例えば、HOO、O2、およびOH)を生成する。生理学的な濃度が100〜150mMの場合に、クロリドイオン(Cl)はHによって酸化され、これは、ミエロペルオキシダーゼ(好中球中の酵素)によって触媒されて、次亜塩素酸(HOCl)およびHClを与える。
【0009】
HOClの生理学的な生成は、生化学的なシグナルの複雑なネットワークによるフィードバック阻害によって厳密に制御される。HOClは、10個の活性化された好中球当たりの濃度が2×10−7Mで生成する。このHOClの量は、約150×10個の大腸菌を殺すと見積もられる。HOClが生成後に、そのものは、複雑な細胞システム内で多数の酸化可能な基質と反応することによって素早く分解する。従って、反応性の酸素代謝産物の濃度は、数時間内で検出不可能なレベルにまで低下すると予想される。しかしながら、好中球はそれらのHOClを使用して、大量のかなり長時間に生存する酸化体(例えば、N−クロラミン)を生成することができる。これらの長時間に生存する酸化体は、細胞環境のpHに依存して、タウリンのモノクラミン(NCT、またはN−クロロタウリン)、およびタウリンのジクロラミン(NNDCT、またはN,N−ジクロロタウリン)として生成する。これらの酸化体は強力な抗微生物剤であり、そしてこれは、防御システム内で、並びに宿主の体内においてサイトカインおよび成長因子をモジュレートする際に、重要な役割を果たす。
【0010】
(関連分野の記載)
独国特許出願番号4041703、W. Gottardiは、N−クロロタウリンのアルカリ金属塩を記載する。該出願は、N−クロロタウリンを純粋な物質としてだけではなく、インシチュで製造する場合には希釈溶液の形態としても単離することは不可能であると記載する。その後の研究により、N−クロロタウリンが以下に記載する通り製造することができることが確立された。該独国特許出願はまた、結晶性形態でのN−クロロタウリンの純粋なアルカリ金属塩の製造をも記載する。ヒトへの医学的な利用方法におけるこれらの塩の消毒剤および殺菌剤としての使用もまた開示されている。該独国出願は、タウリンをアルカリ金属クロラミドと反応させることによるアルカリ金属塩(例えば、N−クロロベンゼンスルホンアミドナトリウム(クロラミン−B)またはN−クロロ−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドナトリウム(クロラミン−T))の製造を記載する。クロラミン−Bおよびクロラミン−Tは、メルクインデックス, 13版, 2001, Entries 2084および2085, 356頁に例示されている。
【0011】
WO0222118において、W. Gottardiらは、真菌感染症、例えば急性または慢性の鼻副鼻腔炎、または他の真菌感染症(例えば、耳炎、皮膚炎、気管支炎、多様な形態の肺炎(例えば、ニューモシスチスカリニ))、性器の感染症(例えば、膣炎、子宮内膜症、バルニティス(Balnitis))、胃腸管の真菌感染症(例えば、口内炎、食道炎、腸炎)、または尿道の真菌感染症(例えば、腎盂腎炎(Pyelonephrititis)、尿管炎、膀胱炎、または尿道炎)の処置に有用な、N−クロロタウリン(特に、そのナトリウム塩の形態)を記載している。
【0012】
最近、Gelderらは、N,N−ジクロロタウリンを粉末として製造し、そして単離した(Gelder, N. M.; Bowers, R.による, Synthesis and characterization of N,N-dichlorinated amino acids: taurine, Homotaurine, GABA and L-Leucine, J. Neurochemical Research. 2001; 26: 575-578)。N−クロロタウリン(NCT)およびN,N−ジクロロタウリン(NNDCT)は、それらのUVスペクトルによって同定することができる。NNDCTは、302mMで最大吸光度を有し、モル吸光率は332.9M−1cm−1であった。これらの値は、Gottardi, W.; Nagl, M.による, Arch. Pharm. Med. Chem. 2002, 9, 411-42由来のものである。NCTは、252nmで最大吸光度を有し、モル吸光率は415M−1cm−1である。
【0013】
Juan M. Anteloらによる, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2, 2000, 2109-2114は、N−クロロタウリンの可逆な不均一化反応における一般的な酸−塩基の触媒反応を記載している。該筆者はまた、pHが2〜2.5でのN−クロロタウリンの不均一化によるN,N−ジクロロタウリンの溶液の製造、およびpH=1.88でのN,N−ジクロロタウリンの安定性をも記載している。N,N−ジクロロタウリンの損失は、100時間後で5%以下であった。
【0014】
(発明の概要)
本発明のいずれかの他の態様または特徴(該特徴等が好ましいと特徴付けられたりまたは好ましいと特徴付けられていないにもかかわらず)は、本発明のいずれかの他の態様または特徴(該他の特徴等が、好ましいと特徴付けられたり好ましいと特徴付けられていないにもかかわらず)と組み合わせることができる、と理解する。例えば、好ましいと記載する特徴(例えば、pHの範囲、ある組成物(例えば、具体的な式のあるN,N−ジハロアミノ酸)についての具体的なpH)を、本発明から逸脱することなく、別の組成物(別の具体的な式のN,N−ジハロアミノ酸)と組み合わせることができる。この記載はまた、いずれかの置換基の組み合わせに適用する。例えば、好ましいと特徴付けられる置換基は、好ましいと特徴付けられていない他の置換基と組み合わせることができる。従って、最も広い態様において、本発明は、式(I):
A−C(R)R(CH)−C(YZ)−X'
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含む医薬組成物を提供する。上記式中、AはハロゲンまたはHalN−であり、Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれ;Rは、炭素炭素の単結合または3〜6個の炭素原子を有する二価のシクロアルキレン基であり;Rは、水素、低級アルキル基、または−COOH基であり;Rは、水素または低級アルキルであり、nは、0または1〜13の整数であるか;あるいは、RおよびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;Yは、水素、低級アルキル、−NH、または−NHalであり;そして、Zは、水素または低級アルキルであり;そして、X'は、水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONH、−P(=O)(OH)、または−B(OH)である。Rが二価のシクロアルキレン基である場合には、nは整数11を超えない。すなわち、nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11であり得る。言い換えれば、酸性基Xを含むアミノ酸は、16個までの鎖内原子を有する。二価のシクロアルキレン基または二価の基−(CH)−においては、1個の水素は、−NHalによって置換され得る。本発明のN,N−ジハロアミノ酸は3個までの−NHal基を含み得るが、1または2個の−NHal基を有するN,N−ジハロアミノ酸が好ましい。1個の−NHal基を有するN,N−ジハロアミノ酸が最も好ましい。この基は、酸性基R(Rが−COOHである場合)またはX'のアルファ−、ベータ−、ガンマ−、デルタ−、イプシロン−など、オメガ−の位置であり得る。
【0015】
式Iの化合物の誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基X'が結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この点で、用語「低級」とは、1〜6個(1〜4個が好ましい)の炭素原子を有する残基を含む。
【0016】
好ましい実施態様において、Rは、炭素炭素の単結合であり、nは0または1〜7の整数(0または1〜5の整数がより好ましく、0または1〜3の整数(すなわち、1、2、または3である)が最も好ましい)である。n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、またはn=9であるN,N−ジハロアミノ酸もまた関心が持たれる。
【0017】
本発明の好ましい組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度が0.1〜100mMの間であり、そしてpHの範囲が約3〜約4.8、3.0〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、組成物を含む。
【0018】
別の組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度が0.1〜50mMの間であり、そしてpHの範囲が約2〜約7、約3〜約6、3〜約4.8、約3〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である。
【0019】
本発明はまた、式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含む、新規な殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗ウイルス性、および抗真菌性の組成物をも提供する。
【0020】
該式中、Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;Rは、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、Rは、水素または低級アルキルであるか;あるいは、RおよびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって(C〜C)シクロアルキル環を形成し;nは0または1〜3の整数であり;Yは、水素、低級アルキル、−NH、または−NHalであり;Zは、水素または低級アルキルであり;そして、Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである。
【0021】
式IIの化合物の誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この点で、用語「低級」とは、1〜6個(1〜4個が好ましい)の炭素原子を有する残基を含む。
【0022】
式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物の医薬的に許容し得る塩は、医薬的に許容し得るカチオンとの塩を含む。式(III)および(IV)の化合物を、以下に記載する。N,N−ジハロアミノ酸の塩は、−COOH基、−CONH基、−SOH基、または−SONH基との塩基の塩を含む。医薬的に許容し得る塩はまた、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、およびいずれかの有機アミンの塩をも含む。アルカリ金属塩、Mg塩、Ca塩、およびAl塩が、関心が持たれる。アルカリ金属塩が特に関心が持たれ、特に、リチウム塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩が挙げられる。
【0023】
酸付加塩の例としては、塩基性残基(例えば、アミン)の鉱酸または有機酸の塩;酸性残基(例えば、カルボン酸)のアルカリまたは有機塩基の塩を含むが、これらに限定されない。医薬的に許容し得る塩は例えば、ハイドロハライド塩、硫酸塩、メト硫酸塩(methosulfates)、メタン硫酸塩、トルエンスルホン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、乳酸塩などを含むが、これらに限定されない。
【0024】
適当な塩のリストは、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17版, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, 1418頁、またはThe Merck Index, Thirteenth Edition, 2001, Published by Merck Research Laboratories Division of Merck & Co., Inc., MISC-22頁およびMISC-23頁(これらは、本明細書の一部を構成する)中において知られる。
【0025】
置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の医薬的に許容し得る酸付加塩は、それ以外に、塩酸、スルホン酸、リン酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、および他の酸との塩を含む。
【0026】
式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物の更なる誘導体は、−COOH基もしくは−SOH基の低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合するアミノ基の低級アルカノイル誘導体を含む。
【0027】
式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物の更なる誘導体はまた、アミノ酸分子のある基が保護基によって保護されているN,N−ジハロアミノ酸をも含む。「保護基」とは、(a)反応性の基が所望しない化学反応に関与することを防止し;および、(b)反応性の基の保護がもはや必要とされなくなった後に容易に除去することができる、化学的な基を意味する。
【0028】
「アミノ−保護基」とは、特に断らなければ、ある化学反応によって改変される反応性のアミノ基を保存する保護基を意味する。アミノ保護基の非限定的な例は、ホルミル基;または2〜4個の炭素原子を有する低級アルカノイル基、特にアセチル基、プロピオニル基、トリチル基もしくは置換トリチル基(例えば、モノメトキシトリチル基、ジメトキシトリチル基(例えば、4,4'−ジメトキシトリチル、または4,4'−ジメトキシトリフェニルメチル基))、トリフルオロアセチル、N−(9−フルオレニル−メトキシカルボニル)もしくは「FMOC」基、アリルオキシカルボニル基;あるいは、ハロカーボネート(例えば、(C〜C12)アリール低級アルキルカーボネート)由来の他の保護基(例えば、クロロ炭酸ベンジル由来のN−ベンジルオキシカルボニル基)(例えば、ベンジルオキシカルボニル(CBZ基))、またはビフェニルアルキルハロカーボネート、第3級アルキルハロカーボネート(例えば、tert−ブチルハロカーボネート、特にtert−ブチルクロロカーボネート)、またはジ(低級)アルキルジカーボネート(特に、ジ(t−ブチル)−ジカーボネート))由来の他の保護基;並びに、フタリル基を含む。
【0029】
本明細書中で使用する用語「組成物」とは、本発明の様々な形態(例えば、固体(例えば、粉末、粉末とその他との混合物)、乳液、懸濁液、並びに溶液を含む)の化合物または組成物を意味する。
【0030】
1態様において、該組成物およびそれらの使用は、公知のN,N−ジハロアミノ酸またはそれらの誘導体を含む。別の態様において、該組成物およびそれらの使用は、新規なN,N−ジハロアミノ酸またはそれらの誘導体を含む。いずれの場合においても、該組成物は酸性形態(すなわち、pHが7以下(例えば、6.8)、pHが約2〜約7の間、pHが2.0〜6.8の間、2.5〜6.5の間、2.5〜6.0の間、2.5〜5.0の間、3.0〜5.0の間、またはpHが約3.5)で保つことができる。異なる状況下では、pHは5以下(すなわち、pHの範囲が、約3〜4.5、3.5〜4.5、またはpHが約3.5)に保つことができる。重要なことは、該組成物のpHが酸性であることである。pHの選択は、多数の因子(例えば、N,N−ジハロアミノ酸の具体的な使用(インビトロまたはインビボ)、処置する感染症のタイプ(例えば、該感染症は、細菌、酵母菌、真菌、またはウイルスを原因とする)、感染症の部位(例えば、眼、喉頭、尿道、またはいずれかの標的組織もしくは臓器の感染症)、該感染症の激しさ、または患者の感受性などを含む)に依存する。
【0031】
別の態様において、本発明の組成物および溶液は、N,N−ジハロアミノ酸を濃度の範囲が0.1〜100ミリモル(mM)で含む。
【0032】
更なる態様において、該組成物は、等張性であってそして生理学的にバランスがとれている。
【0033】
N,N−ジハロアミノ酸は、それらは有意な殺菌性の活性を有する酸化能力を維持するという理由でHOClとは有意に相違するが、その上、HOClよりも毒性が低い。N,N−ジハロアミノ酸はまた、影響を受ける標的分子を酸化する前にある距離で分散するのに十分に安定でもある。n=0または5までの整数を有する、低分子量の本発明のN,N−ジハロアミノ酸はより親水性分子である。
【0034】
驚くべきことに、本発明のN,N−ジハロアミノ酸は、強い殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性を有するが、それらは低い細胞毒性を有する。
【0035】
更なる態様において、本発明の組成物は、細菌、微生物、胞子、真菌、およびウイルスの感染症または混入を治療または予防するための組成物として使用可能であるという要求を満たすために安定化する。
【0036】
別の態様において、組成物の安定化は、細菌、微生物、胞子、真菌、およびウイルスの感染症または混入を制御するのに十分な安定性を保証する容器中に該組成物を保存することによって供される。
【0037】
本発明は、式(III):
A−C(R)R(CH)−C(YZ)−X'
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含む医薬組成物を提供する。ここで、Aは、水素またはHalN−であり、Halは、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;Rは、炭素炭素の単結合、または3〜6個の炭素原子を有する二価の(C〜C)シクロアルキレン基であり;Rは、水素、低級アルキル、および−COOH基であって、Rは、低級アルキルであるか;あるいは、RおよびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;nは、0または1〜13の整数であり;Yは、水素、低級アルキル、−NHまたは−NHalであり;Zは、水素または低級アルキルであり;そして、X'は、水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONH、−P(=O)(OH)、または−B(OH)である。Rが二価の(C〜C)シクロアルキレン基である場合には、nは整数11を超えない。言い換えれば、酸性基X'を含有するアミノ酸は、16個までの鎖内原子を有する。場合により、二価の(C〜C)シクロアルキレン基または二価の基−(CH)−においては、1個の水素は−NHalによって置換され得る。本発明のN,N−ジハロアミノ酸は3個までの−NHal基を含み得るが、1または2個の−NHal基を有するN,N−ジハロアミノ酸が好ましい。1個の−NHal基を有するN,N−ジハロアミノ酸が最も好ましい。この基は、酸性基R(Rが−COOHである場合)またはX'のアルファ−、ベータ−、デルタ−、イプシロン−など、オメガ−の位置に存在し得る。
【0038】
式IIIまたはV(これらは以下に示す)の化合物の誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基XまたはX'が結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この点で用語「低級」とは、1〜6個(1〜4個が好ましい)の炭素原子を有する残基を含む。
【0039】
好ましい実施態様において、Rは、炭素炭素の単結合であり、nは0または1〜7の整数(0または1〜5の整数がより好ましく、0または1〜3の整数が最も好ましい)である。
【0040】
別の態様において、式(IV):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X
によって示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含有する、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の活性を有する組成物を提供する。上記式中、Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;Rは、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、Rは低級アルキルであるか;あるいは、RおよびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;nは、0または1〜3の整数であり;Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;Zは、水素または低級アルキルであり;そして、Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHであり;該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれる。
【0041】
別の態様において、式(IV)で示される新規なN,N−ジハロアミノ酸を含有する上記の組成物は、Rが、水素または低級アルキルであり;nが、0、1、または2であり;Yが、水素または低級アルキルであり;Zが、水素または低級アルキルであり;そして、Xは、−SOHまたは−SONHであるもの、またはその誘導体であり、ここで、該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、および低級アルカノールとのエステルからなる群から選ばれる。
【0042】
更なる態様において、式(IV)で示される新規なN,N−ジハロアミノ酸を含有する上記の組成物は、YおよびZが水素であり;Xが−SOHであるものであり、ここで、該誘導体は、医薬的に許容し得る塩からなる群から選ばれる。
【0043】
別の態様において、Halはクロロである。
【0044】
好ましい誘導体は、医薬的に許容し得る塩である。
【0045】
別の態様において、上記の組成物は、以下の化合物またはその誘導体を含み、ここで、該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、および低級アルカノールとのエステルからなる群から選ばれる。
N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン;
N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン;
N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン;
N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン;
N,N−ジヨードタウリン;
N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン;
N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル-β−アラニン;
N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン;
N,N−ジクロロ−2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸;
N,N−ジクロロ−1−メチル−エタンスルホン酸;
N,N−ジクロロアミノトリメチレンホスホン酸;
N,N−ジブロモ−2−アミノ−5−ホスホノパンタン酸(pantanoic acid);
N,N−ジクロロアミノエチルホスホン酸ジエステル(例えば、ジエチルエステル);
N,N−ジクロロ−1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸;
N,N−ジクロロ−1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸;
N,N−ジクロロ−1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸;
N,N−ジクロロ−ロイシンホスホン酸;
N,N−ジクロロ−4−アミノ−4−ホスホノ酪酸;
(±)N,N−ジクロロ−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸;
N,N−ジクロロ(+)−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸;
N,N−ジクロロ−d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸;
N,N−ジクロロ−2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸;
N,N−ジクロロ−ロイシンボロン酸;もしくは、
N,N−ジクロロ−β−アラニンボロン酸、
または、それらの医薬的に許容し得る塩もしくはエステル。
【0046】
別の態様において、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)、またはそれらの誘導体を含有する本明細書中に記載する組成物は、Halがクロロであるものが挙げられる。
【0047】
別の態様において、本発明の組成物は更に、医薬的に許容し得る担体を含む。
【0048】
本発明のホスホン酸またはボロン酸は、2個の異なる炭素原子と結合する少なくとも2個のヒドロキシル基を有する、10個までの炭素原子を有するジヒドロキシ化合物(これは、脂環式または環式であり得る)と組み合わせることができる。該ジヒドロキシ化合物としては例えば、エチレングリコール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、マンニトール、ジエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、グリセロール、ジエタノールアミン、ピナコール、または他の同様なジヒドロキシ化合物が挙げられる。ある場合には、この組み合わせは、本発明のボロン酸またはホスホン酸の安定性を増大する。
【0049】
再び、本発明について記載する全ての特徴、特性、および範囲(いずれかの態様において、関心があるともしくは特にあると、またはそうでないと記載する)は、互いに組み合わせることができる。例えば、本明細書中に示す式中の関心ある置換基は、別のより広義に定義され、強調するものでない本明細書中に記載する置換基と組み合わせることができる。例えば、−SOHである置換基Xは、水素以外の置換基YまたはZと組み合わせることができる。
【0050】
N,N−ジハロアミノ酸およびその誘導体の製造方法
N,N−ジハロアミノ酸および誘導体は、アミノ酸またはその誘導体(該ハロゲン化アミノ酸は、アミノ酸のアミノ基上の2個の水素原子の置換を生じる反応条件下で、ハロゲン供給源を用いてこのものから製造する)と2個のハロゲン原子(すなわち、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である)とを反応させることによって製造する。これらの製造方法は、当該分野の化学者にとって知られる。
【0051】
本発明の1態様において、出発物質として使用するアミノ酸としては、例えばタウリン、ホモタウリン、β−アラニン、オルニチン、γ−グルタミン酸、γ−アミノ酪酸(GABA)、1−アミノ−1−メチルエタンスルホン酸、1−アミノ−1,1−ジメチルエタンスルホン酸、または1,1−ジメチル−2−アミノ−2−カルボキシ−エタンスルホン酸、およびその他を含む。例えば、アミノトリメチレンホスホン酸またはその塩、2−アミノ−5−ホスホノパンタン(pantanoic)酸またはその塩、アミノ化(1R,2S)−(1,2−エポキシプロピル)ホスホン酸(または、アミノ化ホスホマイシン)、アミノエチルホスホン酸ジエステル(例えば、ジエチルエステル)、1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸、1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、ロイシンホスホン酸、4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、(±)−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、(+)−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、または2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸を使用することができる。別の態様において、これら出発物質は、それらのエステルまたは塩の形態で使用することができる。別の態様において、該ホスホン酸の低級アルキルエステルは、本発明のジハロホスホン酸およびそれらの誘導体の製造のための好ましいエステルである。全てのこれらの出発物質は、よく知られているか、商業的に入手可能であるか、またはよく知られる製造方法によって製造可能であるかのいずれかである。該出発物質の多数は、例えばシグマ−アルドリッチ社から、商業的に入手可能である。
【0052】
以下の非排他的なハロゲン供給源を用いて、N,N−ジハロアミノ酸およびそれらの誘導体を製造することができる;HOClもしくはその塩(例えば、NaOClまたはKOCl)、N−ハロアリールスルホンアミド塩(ここで、該アリール基は、1もしくは2個の芳香族環と合わせて6〜15個の炭素原子を含み、6〜10個、もしくは6〜8個の炭素原子および1個の芳香族環を含み、例えばN−ハロベンゼン−スルホンアミド、もしくはN−ハロ−4−アルキルベンゼンスルホンアミドを含み、ここで、該アルキル基は、炭素数が1〜4個である低級アルキル(例えば、メチルまたはエチル)である)。該N−ハロベンゼン−スルホンアミドまたはN−ハロ−4−アルキルベンゼンスルホンアミドは、それらの塩(例えば、アルカリ塩、例えば、それらのナトリウム塩またはカリウム塩)の形態で使用することが多い。最もよく使用される試薬は、容易に商業的に入手可能であるという理由で、ナトリウム塩の形態であるN−クロロベンゼンスルホンアミドおよびN−クロロ−4−メチル−ベンゼンスルホンアミドである。他の非限定的なハロゲン放出性の剤または供給源は、HClO、N−クロロ−スクシンイミド、またはN−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、Cl、Br、I、塩化チオニル、ホスゲン、PCl、PCl、およびクロル化剤(例えば、水泳プール中で使用されるもの)、または該剤の組み合わせであり得る。
【0053】
他のアミノ酸出発物質としては例えば、2,2−ジメチルハイポタウリン、1,1,2,2−テトラメチル−ハイポタウリン、2,2−ジメチルタウリン、1,1,2,2−テトラメチルタウリン、2,2,3,3−テトラメチル−β−アラニン、および3,3−ジメチルホモタウリンを含む。
【0054】
該ハロゲン供給源の1分子が1個のハロゲンを放出する場合には、該ハロゲン供給源の少なくとも2個の分子における該アミノ酸または誘導体分子の各出発アミンについて明らかに使用される。N,N−ジハロアミノ酸およびそれらの誘導体の製造に関するより詳細は、実施例において記載する。
【0055】
商業的に入手できない場合には、本発明の化合物の製造のためのホスホン酸出発物質は、当該分野における当業者にとってよく知られる方法に従って製造することができる。例えば、Yuan, C.らによる, New Strategy for the Synthesis of Functionalized Phosphonic Acids, Heteroatom Chem. 1997, 8 (2) 102-122; Yuan, C.らによる, New strategy for the Synthesis of Functionalized Phosphonic Acids, Pure Appl. Chem. 1996, 68(4), 907-12; A Versatile Route to Substituted Organophosphonic Acids, J. Am. Chem. Soc., 1990, 31, 2933; G. M. Kosolapoffによる, The Synthesis of Phosphonic and Phosphinic Acids, Organic Reactions, 6巻 (1951)、およびそれらの中の引用文献を参照。
【0056】
ボロン酸出発物質およびそれらのエステルは、例えばAcros Organics社(Fischer Scientific)またはRyscor Science, Inc.社(Raleigh, North Carolina)およびその他の会社から商業的に入手することができ、あるいは、当該分野における当業者にとって知られる方法に従って製造することができる。例えば、Webb, K. S.およびLevy D.による, Tetrahedron Lett. 1995, 36, 5117;Suzuki, A.による, Pure Appl. Chem. 1994, 66, 213;Miyaura, N.およびSuzukiによる, A. Chem. Rev. 1995, 95, 2457-2483;Suzuki, A.による, J. Organometallic Chem. 1999, 576, 147-168;Kamatani, A.およびOverman, L. E.による, J. Org. Chem. 1999, 64, 8743-8744, Yang, W.;Gao, S.;Wang, B.による, 「Boronic Acid Compounds as Potential Pharmaceutical Agents」, Med. Res. Rev. 2003, 23, 346-368, およびそれらの中の引用文献、並びにBrown, H. C.;Midland, M. M.;Levy, A. B.;Kramer, G. W.による, 「Organic Synthesis via Boranes」, Wiley-Interscience: New York, 1975を参照。
【0057】
本発明に記載する化合物はまた、該化合物の個々の立体異性体(エナンチオマーおよびジアステレオマー)、並びにラセミ混合物を含み得る。個々の異性体(例えば、純粋なR、S、RR、SS、RS、SRなど)は、異性体混合物を光学活性な分割剤を用いて処理することによって、ジアステレオ異性体の化合物の対を得ることができる。ジアステレオ異性体の化合物は分離することができ、そして該光学的に純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーを、当該分野においてよく知られる方法を用いて単離することができる。ジアステレオマーは別個の物理学的な性質(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有するので、それらは、これらの相違点の利点を用いることによって容易に分離することができる。該ジアステレオマーは、クロマトグラフィー、または好ましくは、溶解度の差違に基づく分離もしくは分割の方法によって分離することができる。それらのラセミ混合物から化合物の立体異性体の分割に利用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques Andre Collet, Samuel H. Wilenによる, Enantiomers, Racemates and Resolutions, John Wiley & Sons, Inc. (1981)、およびそれら中の引用文献において知ることができる。
【0058】
N,N−ジハロアミノ酸を製造するための典型的な反応式は、以下の通り示すことができる:
【数1】

式中、R、R、n、X、YおよびZは、上記の意味を有する。
【0059】
該アミノ酸出発物質を、低級アルカノール(例えば、メタノールまたはエタノール)中に溶解し、そして酸性とする。この溶液に、NaOCl水溶液を加える。該反応により、該アミノ基のクロル化、および塩化ナトリウムの沈降を生じる。該溶媒を低温(例えば、30℃以下)で蒸発させ、そして残渣を得る。該残渣を溶媒中に溶かし、そしてN,N−ジハロアミノ酸を、水性の低級アルカノール層と混和しない溶媒を用いる抽出によって単離する。同様に、N,N−ジハロアミノ酸は、該アミノ酸出発物質をHOClと反応させることによって製造することができる。
【0060】
従って、該ブロモアナログはまた、ハロゲン化剤としてNaOBrを用いて製造することができる。
【0061】
J Marcinkiewiczらによる2000(J of Inflammatory Research 49, 280-289)によれば、NNDCT(N,N−ジクロロタウリン)は、HOClをタウリンとpH5で反応させることによって溶液中で製造することができる。NNDCTはまた、ブンテ(Bunte)塩(HNCHCHS−SOH)(Chinakeらによる, Oxyhalogen-sulfur chemistry: kinetics and mechanism of the oxidation of a Bunte salt 2-aminoethanethiolsulfuric acid by chlorite. Phys. Chem. Chem. Phys. 2001; 3: 4957-4964)、およびハイポタウリン(HNCHCHSOH)のクロライト(ClO)による酸化(Martincigh, B. S.; Mundoma, C.; Simoyi, R. H.による; Antioxidant chemistry: Hypotaurine-taurine oxidation by chlorite. J. Phys. Chem. A. 1998; 102: 9838-9846)において得ることもできる。
【0062】
該反応を、式1〜6において示す。
【数2】

N−クロロタウリンは不均化して、酸性溶液中でN,N−ジクロロタウリンおよびタウリンを生成する。
【数3】

HOClは、残りのハイポタウリンを素早く酸化して、タウリンを与えるか、
【数4】

あるいは、ハイポタウリンを酸化して、N,N−クロロハイポタウリンを与えることができる。
【数5】

非常に高い酸性条件下で、HOClはN−クロロハイポタウリンをN,N−ジクロロタウリンに酸化する。
【数6】

【0063】
該アミノ基が結合する炭素原子と結合する少なくとも1個の低級アルキル基を有する化合物は、より安定なジハロゲン化アミノ酸である。
【0064】
これらの化合物は、以下の通り製造することができる:
【化1】

【0065】
N,N−ジハロアミノ酸の誘導体は、該アミノ基を本明細書中に開示するアミノ基保護剤を用いて保護し(例えば、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)誘導体を形成することによる)、続いて、スルホニルクロリド(これは、例えば、低級アルキルアミン(例えば、メチルアミン)を用いてスルホンアミドに変換することができる)を形成することによって製造することができる。同様に、該スルホニルクロリドをベンジルアミンと反応させることができ、そして得られるベンジルスルホンアミドを−SONH基に変換することができる。その後に、該保護基は、本来当該分野における化学者にとって知られる方法によって除去し得る。使用することができる適当な保護基の包括的なリストは、T. W. Greeneによる, Protecting Groups in Organic Synthesis, 3版, John Wiley & Sons, Inc. 1999において知ることができる。
【0066】
本発明の化合物の医薬的に許容し得る塩は、これらの化合物の遊離の酸または塩基の形態を定量またはそれ以上の量の適当な塩基または酸と、水もしくは有機溶媒またはそれら2つの混合物(通常は例えば、非水性基質(例えば、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール))中で反応させることによって製造し得る。本発明の塩はまた、例えばイオン交換によっても製造し得る。
【0067】
塩はまた、本来知られる他の方法(例えば、W. Gottardiによる, German Patent Application 4041703中に記載されている方法に類似する方法を含む)で、N,N−ジハロアミノ酸と反応させることによっても製造し得る。
【0068】
N,N−ジハロアミノ酸のナトリウム塩は、該ナトリウム塩を硫酸低級ジアルキル(例えば、硫酸ジメチルまたは硫酸ジエチル)と炭酸水素ナトリウムの存在下で反応させることによって、低級アルキルエステルに変換し得る。
【0069】
置換基XまたはX'が−CO−NHであるアミドは、当該分野における化学者にとってよく知られる方法で製造する。
【0070】
N,N−ジハロアミノ酸および誘導体の使用方法
該N,N−ジハロアミノ酸およびそれらの誘導体は、かなり低濃度で微生物を殺す抗微生物剤であり、そしてこのものは、有意な高濃度において真核生物によって許容され得る。治療学的な活性および好ましい治療係数のこの範囲は、インビボでの病原体の破壊におけるクロルアミンの生理学的な役割を考慮すると、絶対的な臨界である。組織(例えば、眼、皮膚、または他の感覚領域)に適用される抗微生物性製品の場合には、その安全性および有効性が損なわれることはあり得ない。従って、感染症を処置するためのヒトにおける該製品の使用は、我々の肯定的な結果によって支持される。
【0071】
式(I)、(II)、(III)、または(IV)の化合物は、以下の可能な適用領域を有する:コンタクトレンズクレンザー、細菌失活、眼科、通常の外科製剤、外科装置の消毒、医学的なデバイスおよび装置の消毒、歯科装置の消毒、並びに食品衛生における適用(例えば、表面領域の消毒を含む)。それはまた、ワクチン製剤(保存的なおよび強力なアジュバントとして)中で、DNAおよびRNAの両方のクラスのウイルス(例えば、HIVウイルス、A型肝炎ウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ウエストナイルウイルス、HSV−1、HSV−2、SARS、インフルエンザウイルス、およびパラ−インフルエンザウイルス、ピコルナウイルス、およびワクシニアウイルス(ポックスウイルスについてのモデル)を含む)のウイルス失活のための殺ウイルス効果を有する化合物としても有用である。加えて、これらの化合物はまた、真菌感染症、例えば急性もしくは慢性の鼻副鼻腔炎、または他の真菌感染症(例えば、耳炎、皮膚炎、気管支炎、肺炎(例えば、ニューモシスチスカリニ))、性器の真菌感染症(例えば、膣炎、子宮内膜症、バルニティス、胃腸管の真菌感染症(例えば、口内炎、食道炎、腸炎)、または尿道の真菌感染症(例えば、腎盂腎炎(Pyelonephrititis)、尿管炎、膀胱炎、または尿道炎)の処置においても有用である。その上、本明細書中に記載する組成物は、多数の他の微生物(例えば、大腸菌、動物伝染病病原菌、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌、乳酸桿菌、酵母菌、バンコマイシン耐性菌、カビ、および胞子(例えば、炭疽菌の胞子を含む))に対する抗微生物性活性を有する。特に、本発明の溶液は、いくつかの異なる炭疽菌の菌株の処置において有用であり得る。バンコマイシン耐性菌、MRSA、およびその他は、本発明の組成物によって容易に破壊される。
【0072】
本発明の更なる態様において、様々な医学的な疾患の処置(ここで、該処置は、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、口腔消毒、抗真菌療法、眼科、歯科口腔外科、耳科学上の適用、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用の臓器中の感染性負荷の減少、自己もしくは人工の組織移植における細菌負荷の減少、口腔消毒、抗真菌性療法、嚢胞性線維症もしくはバイオフィルムを与える他の疾患のためのバイオフィルムの処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生からなる群から選ばれる)のための方法を提供し、ここで、該方法は、処置が必要とされる部位に本発明の溶液を適用することによって、本発明の溶液を使用することを含む。
【0073】
およそのサイズが25平方cmの慢性創傷における使用用量は、活性成分の2〜200mgを含有する溶液の30mLのレンジであり得る。ここで、該活性成分は、1日、1〜10回適用するNNDCTである。ある場合には、該組成物は、0.1〜100mMの活性成分を含み得る。他の適用法における用量は、該抗微生物性活性が必要とされる場所および感染症の激しさに応じて、表面領域に適合する。
【0074】
本発明の組成物
1態様において、溶液形態の組成物は、浸透圧的にバランスがとれており、そして最小の細胞毒性を有する。
【0075】
別の態様において、本明細書中に記載する組成物は、治療係数が約1,000〜約5,000を有する。これは、37℃で1時間での大腸菌ATCC 11229についてのそれらの最小殺菌濃度に対する、1時間でのL929マウス肺上皮細胞および原発性(primary)ヒト線維芽細胞の両方についてのそれらの50%阻害性濃度細胞毒性係数(IC50)の比率によって決まる。
【0076】
本発明の組成物は非毒性であって、そして抗菌性性質を有するために、それらは、抗微生物性性質が所望されるいずれかの使用法において有用である。該使用法としては例えば、創傷、火傷、および口内炎の処置;灌注;組織部位の洗浄(例えば、手術の前および後);眼科適用法(例えば、コンタクトレンズ洗浄溶液;または、眼科外科の前、その間、または後における眼の灌注);皮膚学上の適用法、乾癬;および、当該分野の当業者にとって容易に明らかな多数の使用法の処置を含むが、これらに限定されない。使用法としてはまた例えば、医学的な設備、装置、デバイス、または食物(肉、果物、野菜に限定されない)を含む表面、および食物の接触表面上の病原体の排除または減少(例えば、細菌バイオフィルムの排除または減少を含む)をも含む。同様な使用法において使用する多数の抗感染性組成物と異なって、本発明の組成物は、副作用が最小から全くない。
【0077】
式(I)、(II)、(III)、または(IV)で示されるN,N−ジハロアミノ酸およびそれらの誘導体を含む本発明の組成物は、様々な塗布剤(例えば、絆創膏または創傷被覆材を含む)中に含有することができる。生理学的にバランスのとれた酸性溶液の形態での組成物は、創傷治癒プロトコールにおいて特別に設計した絆創膏と組み合わせて使用し得る。該特殊化した絆創膏としては、開口または「ウィンドウ」(局所用の処置物質(例えば、本発明の溶液)は、そこから適用し得る)を含み得る。
【0078】
本明細書中に、容器中にパッケージされた本発明の組成物を含有する製品をも開示する。本発明の組成物と接触する容器の表面は、酸化剤と反応しない物質からなる。
【0079】
N,N−ジハロアミノ酸およびそれらの誘導体の溶解度は、患者によって使用されるのに実用的である異なる形態のパッケージングの使用を可能とする。該溶液は、いくつかの1回使用用の30mLの琥珀色ガラスボトル(これは、テフロン加工のスクリューキャップを有する)中にパッケージングし、そして気密を保証するためにテープで封することができる。1態様において、同じ溶液を、250mLの琥珀色ガラスボトルまたは250mLの非反応性のプラスチックボトル中にパッケージングし得る。しかしながら、より大きな用量は火傷の処置において実用的であるという理由で、5リットルまでのボトルを使用することができる。これらの容器中での保存は、本明細書中に詳細に記載する組成物の使用に要求される長期間の安定性を保証する。例えば、冷蔵庫中に保存するバイアル中での本明細書中に記載する濃度範囲内のN,N−ジクロロタウリンの溶液は、3ヶ月後に時間t=0で、N,N−ジクロロタウリンのわずか13%の損失を有する。加えて、パッケージングは、デュアルチャンバーシステム(ここでは、成分Aを成分Bと混合して、最終生成物であるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を生成する)を含み得る。
【0080】
1態様において、本発明の溶液は、1回使用用の容器中に保存し得る。別の態様において、本発明の溶液は、様々な異なるサイズ、配置、および本明細書中に開示する所望する適用法に適当な異なる容量を有する、1回使用用の容器中に保存し得る。ある使用法においては例えば、本発明の溶液は、1回使用用の30mLの場合により廃棄可能な容器中に保存し得る。1態様において、本発明の組成物は、不活性ガス下、室温で、医薬的に許容し得る賦形剤と一緒の粉末として保存し得る。
【0081】
本発明の組成物は、以下の医薬的に許容し得る担体;等張性を達するための塩化ナトリウム、緩衝剤、安定化剤、溶媒、芳香剤(経口または鼻咽頭の投与、および食品産業の場合)、保存剤、希釈剤、膨張剤、および他の補助的な物質または賦形剤を含み得る。使用することができる医薬的に許容し得る担体および賦形剤の具体例は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, A. Gennaro編, 20版, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA; Advances in Pharmaceutical Sciences (David Ganderton, Trevor Jones編, 1992);Advances in Pharmaceutical Sciences 7巻 (David Ganderton, Trevor Jones, James McGinity, Eds., 1995)(これらは、本明細書の一部を構成する)中に記載されている。通常、水、適当な油、生理食塩水、低級アルコール、およびグリコール(例えば、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)は、溶液に適当な担体であり得る。1態様において、溶液は、水溶性または水性の媒質の可溶形態(例えば、塩)中で、適当な安定化剤、必要ならば緩衝物質と一緒に、活性成分を含む。加えて、溶液は、保存剤(例えば、ベンザルコニウムクロリド、メチル−もしくはプロピル−パラベン、およびクロロブタノール)を含み得る。適当な医薬的な担体は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy(これは、本分野における上記の標準的な教科書である)中に記載されている。
【0082】
該組成物は更に、それらが本発明のN,N−ジハロアミノ酸の安定性または機能を妨害しない限り、他の活性成分(例えば、HOCl)または他の抗菌剤を含み得る。
【0083】
本発明の組成物中でのN,N−ジハロアミノ酸の量または濃度は、広範囲にわたって変え得る。例えば、組成物は、N,N−ジハロアミノ酸の組成の0.001〜100重量%を含み得る。100%の場合には、該組成物は、いずれかの担体物質を有しない粉末の形態で適用し得る。該組成物の典型的な範囲は、N,N−ジハロアミノ酸の組成の0.1〜95重量%、例えば0.1〜50重量%、0.1〜10重量%、0.5〜5重量%を含む。溶液の場合に、通常、N,N−ジハロアミノ酸の低濃度を使用する。例えば、リンスまたはスプレーの場合には、1〜2%の濃度が適当であり得る。
【0084】
鼻咽頭適用の場合には、pHが3.5〜5であるN,N−ジハロアミノ酸またはその塩の1%溶液を含有する鼻腔使用用のカテーテルを、各処置について約10〜15mLの溶液を用いて、数週間にわたって使用し得る。各処置後に、該すすぎ溶液は吸引して除く。
【0085】
本発明の組成物の具体的な使用方法
1態様において、本発明の組成物は、局所的に投与しまたは使用する。
【0086】
本発明の酸性溶液は、深い創傷(これは、通常の薬物療法には応答しない)を有する多数の患者を処置する際に、および局所適用処置において、使用し得る。1態様において、本発明は、様々な医学的な病気の処置のための方法(例えば、創傷治癒の促進、開口創傷における病原体の減少、創傷の汚染除去、眼の消毒もしくは汚染除去、口腔消毒、抗真菌処置、眼適用法、肺感染症における病原体の減少、火傷における病原体の減少、洗浄、移植用臓器中の感染性負荷(load)の減少、自己もしくは人工の組織移植中での細菌負荷の減少、口腔消毒、抗真菌性療法、嚢胞性線維症および関連疾患のためのバイオフィルムの処置、ウイルス感染症の処置、皮膚疾患の処置、並びに組織の修復および再生)を提供する。ここで、該方法は、本発明の溶液を処置が必要とされる部位に適用することによる、該溶液の使用を含む。本発明の溶液を用いて処置し得るバイオフィルムの非限定的な例は、総説の標題「Is there a role for quorum signals in bacterial biofilms?」(S. KjellebergおよびS. Molinによる, PMID: 12057677(PubMed-indexed for MEDLINE))中に引用されているものを含む。
【0087】
本発明の溶液は、細菌の負荷を減少するのに有効であり、従って、創傷治癒を改善し得る。該溶液は十分に許容され、創傷治癒の肉芽形成を改善し、先行技術の溶液と比較して壊死組織切除の必要性を減少し得て、患者はそれらの処置の間に痛みが減少したと報告した。
【0088】
口腔治療
本発明の酸性溶液を用いて、患部をすすぐことによって、口内炎(口腔の潰瘍)または口唇ヘルペス(cold sores)を処置し得る。例えば、該溶液を、口唇ヘルペスに1日3〜4回、毎回2〜3回の適用で浸漬し、そして該溶液を該口唇ヘルペスと20〜30秒間接触させることによって、使用し得る。該溶液はまた、歯科口腔衛生における口腔のすすぎ液として、および感染症を制御するために使用し得る。この場合には、該溶液は、咽頭感染症と闘うための含嗽用液として使用し得る。該溶液は、より特定の領域については綿棒の補助で適用し得る。該溶液は、患者の要求および症状に従って、1日に1回〜数回使用し得る。
【0089】
眼治療
本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液は、生理食塩水の代わりに使用し得て、異物を除去し、すすぎ、または眼を灌注するのに使用し得る。そのものはまた、眼および周囲組織を消毒するために、手術の前または後に典型的に適用し得る。該溶液は、患者の要求および症状に従って、1日に1回または数回使用し得る。該溶液は、必要に応じて、眼の中にそのものを直接に点滴することによって適用し得る。そのものはまた、ガーゼを浸漬し、そして該飽和ガーゼを眼に1分間または数分間、適用することによって適用し得る。そのものはまた、眼を飽和ガーゼを用いて静かに拭くことによって、眼を洗浄するのに使用し得る。該溶液はまた小さい眼用ウォッシャー中にそそぎこともでき、次いで該ウォッシャーを眼の上で反転し、眼瞼を数回、開きそして閉じる。
【0090】
本発明の生理学的にバランスのとれた酸性溶液は、眼の消毒または汚染除去の処置のために使用し得る。加えて、そのものは、新生児の眼の消毒における硝酸銀の代替物として使用し得る。
【0091】
本発明の溶液は、成人および小児の眼を洗浄するために使用し得る。例えば、様々なウイルス感染症、細菌もしくは真菌の感染症、または病原体を、本発明の溶液を用いて有効に処置することができる。本発明の溶液を用いて十分に処置することができる病原体の非限定的な例としては、トラコーマ病原体、淋病、並びに他の細菌、真菌、およびウイルスの感染症を含む。
【0092】
読者は、本発明の溶液が多数の異なる種類の創傷(例えば、糖尿病性潰瘍、壊疽、静脈内潰瘍、褥瘡性潰瘍、圧迫潰瘍、噛みつきに起因する創傷、急性外傷性創傷、外科的な創傷、および火傷を含むが、これらに限定されない)の処置における利用法を有することを知るであろう。本発明の組成物はまた、灌注溶液(例えば、歯、歯周、および眼の適用の間)としても有用である。本発明の組成物はまた、組織部位の手術の前および後の洗浄に、並びに口内炎の処置のための含嗽用液としても、使用し得る。
【0093】
皮膚消毒用の溶液の使用方法:
本発明の溶液はまた、感染している皮膚を処置するのにも使用し得る。感染症の医学的な徴候を示している患者の皮膚において、本発明の溶液は、感染している皮膚の領域に直接に適用し得る。当該分野において知られる適用の標準的な方法を用いる、該患部の皮膚上への該溶液の少なくとも1回の適用後には、該溶液の消毒性の性質に注目することができる。
【0094】
肺感染症における病原体の減少:
本発明の溶液は、肺感染症における病原体の減少のために使用し得る。例えば、様々なウイルスまたは細菌および真菌の感染症が、本発明の溶液を用いて有効に処置し得る。本発明の溶液を用いて有効に処置し得る非限定的な感染症の例は、肺中に存在する炭疽菌の胞子、および肺中の肺炎の原因となる細菌(例えば、ストレップ(strep)細菌などを含む)の減少を含む。
【0095】
産婦人科における本発明の使用方法:
本発明の組成物は、婦人科の感染症(例えば、泌尿器感染症など)の処置のために使用し得る。例えば、様々な微生物、酵母菌(例えば、モニリア症、カンジダアルビカンスなど)、細菌感染症、HSV−2、HIV、または他の病原体は、本発明の溶液を用いて有効に処置し得る。場合により、本発明の溶液の適用は、婦人科の感染症の処置のための他の薬物療法と一緒に使用し得る。例えば、性病と予想される妊娠中の女性患者における産道の洗浄液としての使用、および潜在的には、病院の分娩室内での誕生後の赤ん坊の表面(right)における入浴および洗浄の溶液としての使用、または透析室内でのカテーテルおよびシャントの消毒剤としての使用。
【0096】
局所的な感染症の処置としての使用方法
本発明の化合物は、それらを局所的な感染症において使用するためのクリーム剤、軟膏剤、またはローション剤中に含有させることによって、該疾患を処置するために使用し得る。該クリーム剤、軟膏剤、またはローション剤は、広範囲な皮膚疾患に使用し得て、そして本発明の化合物の抗微生物性活性を皮膚の外側(表皮)の真下に存在する微生物にまで運搬するために、浸透エンハンサーを含有し得る。
【0097】
外科手術部位の感染症を予防するための使用方法
本発明の等張性溶液は、外科手術部位の感染症の発症(これは、しばしば長期の入院、時には死亡を生じる)を予防するために、外科手術の間に灌注液として使用し得る。生理食塩水の代わりの本発明の溶液の使用は、特に、感染症の割合が10%程と高いこともあり得る胃の外科手術および長期間の手術の場合に、該感染症の危険を実質的に低下し得る。
【0098】
医学的なデバイスおよび外科手術の道具の消毒のための使用方法
本発明の溶液は、医学的なデバイスおよび外科手術の道具の表面上の病原体を減少して、該道具およびデバイスを使用するかまたはそれらをインプラントされる患者への感染症を予防するのに使用し得る。
【0099】
該溶液はまた、カテーテルおよびシャントのエントリーポート上で起こる感染症(これは、該感染症に特に起こり易い)の減少または排除のためにも使用し得る。
【0100】
表面の消毒のための使用方法
本発明の溶液は、室内、ビヒクルの内部またはそれら大きく制限された空間の表面に、直接的にまたは霧を作るデバイス(エアゾール適用)からの運搬によって適用して、存在すると予想され得る感染性病原体を減少しまたは排除し得る。それらの適用の場合には、そのものは、感染性病原体が検出された手術室、部屋、ビヒクル、および生物戦薬剤が撒布された他の表面を除染するのに使用し得る。
【0101】
食物の安全性を改善するための使用方法
本発明の溶液は、食物(例えば、肉、果物、および野菜を含むが、これらに限定されない)上の病原体を減少するのに使用し得る。該溶液は食物への洗浄液または霧として適用し得て、あるいは該食物を該溶液中に液浸し得る。タウリンは該適用方法の主な残留物であり、そしてタウリンはヒトの食物において安全であると考えられている必須栄養素である。
【0102】
本発明の溶液はまた、それら表面および道具から食物への病原体の移動を防止するために、食物の製造において使用される表面および装置へも適用し得る。
【0103】
抗微生物性保存剤としての使用方法
本発明の化合物は、適当な量の該化合物を製造時の該溶液中に含有させることによって、微生物が、注射および注入での使用、並びに眼での使用を意図する溶液中で生存することができないことを確認するための手法として使用し得る。
【0104】
抗微生物剤としての使用方法
本発明の溶液は、外科医および看護士の手を安全に且つすばやく消毒して、手術中に感染性病原体を運ぶという危険を低下する手法として使用し得る。加えて、本発明の溶液は、外科的な切開の領域における患者の皮膚から感染性病原体を排除する(手術の前および後)のに使用し得る。
【0105】
創傷治癒の方法
長期間の非治癒性創傷を患っている患者は、本発明の酸性組成物を用いて、1日基準で、典型的には1日に約1または2回処置する。
【0106】
本発明の溶液は、以下の通り使用し得る:ガーゼ物質またはガーゼパッドを、そのものを飽和とするために十分な量の溶液を用いて浸漬し、次いでそのものを圧迫して、過剰な量の溶液を除去する。このことにより、本発明の溶液と反応しそしてその有効性を低下するであろうガーゼ中に存在する種を除去する。この操作の後に、該ガーゼを浸潤するが、浸漬はしない。次いで、更なる溶液を適用して該ガーゼを完全に湿潤し、次いでこのものを該創傷に直ぐに適用する。別法においては、該ガーゼを該創傷に適用して、次いで更なる溶液を適用する。典型的には、該創傷部位を該溶液に浸漬したガーゼを用いて詰め、そして場合によりワセリンガーゼを該詰めた創傷の頂部に適用して、そのものが湿性を保ちそして混入する微生物がないようにすることができる。次いで、該創傷部位を、当該分野において標準である創傷包帯を用いて包む。該溶液はまた、そのものを創傷部位上に直接にそそぐことによって創傷を洗浄して、機械的な方法によるいずれかの壊死性組織を除去するのに使用し得て、そしてまたクレンザーまたは灌注液としても使用し得る。
【0107】
該患者はまた、「創傷治癒キット」(NovaCal社によって供される)の使用を可能とし得る。このものは、包帯を除去する必要なしに、本発明の溶液を創傷部位上に周期的にそそぐことが可能である。このキットは、使用の簡便さ、携帯可能性を供し、そして該創傷の再感染への/再感染からの曝露を著しく低下する。該創傷治癒キットは、本発明の溶液および絆創膏物質を含有するパッケージを含む。該キットは、本発明の溶液、および該溶液と組み合わせて使用するための特殊化した絆創膏を含有するパッケージを含む。該特殊化した絆創膏は、該創傷を処置する間、該創傷の周囲の皮膚を乾燥したままに保つ。更に、患者はコンティニュイング・ケア・アト・ホーム(continuing care at home)を受けながら、該絆創膏を医院または病院内で適用し得て;医師の指示の下、家で適用しそして使用し得て;あるいは、小さい損傷の場合には、該創傷ケアキットを患者単独による「一般用(over the counter)」処置として使用し得る。
【0108】
使用のためのパッケージング
本発明の別の態様において、本発明の溶液は、個々の1回使用容器中に該溶液を含むようにパッケージングし得る。該1回使用容器は、例えば包帯の1回の交換における適用またはその同等のために使用し得る。本発明の該1回使用容器は、通常使用する絆創膏と組み合わせて使用し得る。本発明の別の態様において、創傷治癒キットは、本発明の溶液の1回使用容器を、様々な使用法のために特殊化された絆創膏と一緒に含み得る。
【0109】
本発明の別の態様において、本発明の溶液は、第3の混合用チャンバーがあるなしの、以下の図式:
【化2】

において示す、デュアルチャンバー装置またはパッケージングを使用することによって、インシチュで製造し得る。
【0110】
該デュアルチャンバーは、2個のシリンジまたはポーチから構成し得る。pH 3.5で濃度が3.2mMを有するNNDCT溶液を製造するために、例えば、チャンバーAを12.8mM NaOCl溶液で充填し、チャンバーBは酸性化した1.8% 生理食塩水中に溶解した3.3mM タウリンで充填する。チャンバーB中の該溶液の酸性は1M HClを用いて調節し、その結果、該2個のチャンバー中の該溶液を、通常の運搬用チューブまたは混合用チャンバーCのいずれかの中で混合し、該反応は所望するNNDCT濃度およびpH値を与える。タウリンが酸性溶液中で安定であって、そしてNaOClが室温で安定であるという理由で、上記のオン−サイト(on-site)製造方法の使用により、NNDCT溶液の安定性の問題を回避することができる。
【0111】
実施例1
製造方法
試薬:全ての溶液は、脱イオン水またはミリポア(Millipore)水を用いて製造した。NaOCl(6%)溶液は、VWR社から購入した。タウリンは、シグマ社から購入した。NaClおよびHClは、試薬−グレードとした。
【0112】
N,N−ジクロロタウリン(NNDCT)の製造およびキャラクタリゼーション
この研究において、NNDCTは、タウリン粉末をHOCl溶液(pH 3.5)中に、HOCl/タウリンの比率を2で溶解することによって製造した。
【数7】

【0113】
0.9% NaCl中の1.6mM NNDCT溶液(1L)を調製するために、1000mLのメスフラスコ中に、NaCl(8.6g)を加え、次いでミリポア水(500mL)を該フラスコに加えて、該塩を溶解する。1M HCl(2mL)を該NaCl溶液中に加え、続いて0.158M NaOCl(22mL)を加える。該溶液を混合する。次いで、タウリン(0.267g)を該フラスコに加え、そして該メスフラスコを、ミリポア水を用いてマークまで満たす。該溶液を5分間撹拌する。
【0114】
NNDCTは、300nmで最大吸光度を有し、モル吸光率は370M−1cm−1である。OCl溶液(pH 9.5)を該タウリン溶液中に加えると、N−クロロタウリン(NCT)(ClHN−CH−CH−SO)が唯一の生成物であった。
【数8】

NNDCTおよびNCTは、分光光度的に識別可能である。NCTは、252nmで最大吸光度を有する。NNDCTの収率は、300nmでのその吸光度から算出した。この製造方法により、収率91%のNNDCTを得る。ヨウ素滴定法により、I/NNDCTの比率は2を与える。このことは、NNDCTがHOClの2酸化当量を保持していることを示唆する。NNDCT中の両方の塩素分子は、IをIに酸化することができる。NNDCTは溶液中で分解するが、そのものは低温でより安定である。NNDCT溶液(pH 3.5)における安定性の研究は、3個の温度:4℃、室温、および40℃で行なった。該溶液は、アンプル中で封した。3個の温度でのNNDCTの安定性は、以下の順序である:4℃>室温>40℃。4週間の間、冷蔵庫(4℃)中で保存する場合には、5.4%のNNDCTが損失した([NNDCT]初期=1.47mM)。
【0115】
N,N−ジクロロタウリンは、pHの範囲が1〜10で水に非常に可溶である。N,N−ジクロロタウリンは、UV分光学によって同定され、そして定量的に測定し得る。N,N−ジクロロタウリンは、300nmで最大UV吸光度を有し、モル分光率は370M−1cm−1である。
【0116】
NNDCTは、揮発性ではない。0.9% 生理食塩水(pH 3.5)中の1.47mM溶液を、2個のガラスボトル中に満たした。一方のボトルは密に封し、そして他方は雑に封した。室温での4週間後に、2個のボトル中のNNDCTの濃度には差違はなかった。
【0117】
NNDCTの純粋な粉末形態の単離および不活性雰囲気下での保存は、NNDCTについてのより安定な供給源を供する。加えて、丸剤型式中でのNNDCTの固体マトリックスの再構築は、NNDCTの安定化を補助する。この丸剤製剤は、意図する医薬的な適用方法における使用の容易さを供し(コンタクトレンズの消毒、他の適用方法)、一方で分解を防止するために、選択される。
【0118】
実施例2
抗微生物性活性
殺菌性活性:
殺菌性活性を測定するために、我々は大腸菌(ATCC 11229)を使用した。細菌培養物を減菌生理食塩水中で希釈して、接種菌液を調製した。様々な被験物品を、既に1.0×10〜2.0×10コロニー形成単位(CFU)/細菌のmLを含有する個々のチューブに移し、そして静かに渦巻くことによって混合し、次いで37℃で1または24時間インキュベートした。被験物品を防腐剤として使用する場合にはインビボで産生することができるという条件をできる限り模倣しようとする試みに際しては、ペトリ皿での細菌プレーティングを、中和剤を加えることなく、設計した曝露時の直後に行ない、そして別個に中和剤(コントロールとして)を加えた。従って、曝露時の1〜24時間後に、0.1mLを取り出し、そしてプレートした。プレートを37℃でインキュベートし、そして細菌の数を直接的なコロニー計数によって計数して、生存している細菌をCFU/mL単位で数えた。正の増殖コントロールは、減菌0.9% 生理食塩水を用いて調製した。全ての被験物品を、3回試験した。該結果を表にして、様々なpHレベルでのHOCl、OCl、NNDCTおよび0.9% 生理食塩水の抗微生物性の有効性の範囲の比較を示した。pH 3.5で、NNDCTは、60分間の場合では有効な抗微生物性の濃度の範囲は、0.0149〜1.49mMの間を、24時間の場合では有効な抗微生物性の濃度の範囲は、0.000149〜1.49mMの間を示し、一方で、HOClの場合の有効な抗微生物性の濃度は60分間の場合では0.016mMで、24時間の場合では0.0016mMで開始した。pH 3.5の場合には、NNDCTは、大腸菌に対してHOClより良いか、あるいは同程度に有効であった。
【0119】
これらの研究において初めて、我々は、様々な被験物品と比較して、N−クロラミンの殺菌性および細胞毒性のプロファイルを実証した(平行して)。N−クロロタウリン(NCT)およびN,N−ジクロロタウリン(NNDCT)の両方を、上記の方法に従ってpHをコントロールしたNaClの0.9%の生理学的な濃度で製造した。これらの溶液は、それらの生物学的な活性を分析する前に、それらの物理化学的な性質について試験した。NCTおよびNNDCTの希釈溶液は無色であり、等張性であり、そして例外的に速い抗微生物性活性を示す。これらの酸化体の産生は、pH−依存性であると考えられる。NCTは、アルカリ性のpHで専ら生成するが、一方で、NNDCTは酸性pH中で生成する。
【0120】
pH 5.0および3.5の本発明の溶液中のNNDCT、並びにpH 9.5のNCTを用いる比較上の抗微生物性アッセイは、37℃で60分間の曝露時間内で、pH 5.0のNNDCTよりもpH 3.5のNNDCTの場合に約300倍以上の細菌(大腸菌)死滅の効力を、およびpH 9.5のNCTと比較してpH 3.5のNNDCTの場合に1000倍以上の死滅の効力を示した(表1)。
表1:産物のまとめ:
【表1】

MBCとは、最小殺菌濃度である。
【0121】
該抗微生物性の活性および死滅時間は、濃度依存であるだけでなく、またpHを低下することによって著しく増大した。NCTは、等濃度基準でNNDCTよりも1000倍の因子で抗微生物性が低い。
【0122】
実施例3
細胞毒性アッセイ:
細胞毒性は、比色定量アッセイシステム(これは、Scudieroらによって最初に記載され、3'−(フェニルアミノ−カルボニル)−3,4−テトラゾリウム−ビス(4−メトキシ−6−ニトロ)ベンゼンスルホン酸水和物(XTT)を使用する)、プロチェック(ProCheck)(登録商標)細胞生存率アッセイ(これは、ヒトおよび他の腫瘍セルラインを用いる、培養物中の細胞増殖および薬物感受性についての可溶性テトラゾリウム/ホルマザンのアッセイの評価であり、Scudiero DA, Shoemaker RAH, Paul KD, Monks A, Tierney S, Nofziger TH, Currens MJ, Seniff D, Boyd MRによる, Cancer Res. 1988 Sep 1; 48(17): 4827-33によって記載)によって評価した。細胞生存率を測定するための同様な方法が、他の研究者によって使用されている。3個の細胞タイプを使用した:ダルベッコ変法イーグル培地、並びに対応する増殖因子および抗生物質を有するケラチノサイト限定(defined)培地中で培養した、マウス肺上皮細胞(L929)、原発性ヒト皮膚線維芽細胞、および原発性ヒトケラチノサイト細胞。細胞をトリプシン処理し、顕微鏡下で計数し、そして平底96ウェルプレートのウェル当たり1000〜2000個の細胞を播種した。細胞を37℃で終夜増殖した。翌日に、組織培地を除去し、そして細胞を新しい培地で1回ですすぎ、次いで組織培地(50μL)中に放置した。被験物品を2倍の希釈物として調製し、そして200μLを4−ウェルの各セット中に加えた(ウェル当たりの総量=250μL)。細胞を被験物品に室温で60分間、曝露した。該曝露時の直後に、各ウェルの被験物品を除去し、そして細胞を新しい培地(250μL)を用いて餌を与えた。プレートは、37℃で18〜20時間、インキュベートした。翌日、培地を再び取り出し、そして10/100μLのXTT−試薬を含有する新しい培地(100μL/ウェル)を用いて置き代えた。細胞を、着色の発生が得られるまで、増殖条件(37℃、5% COで加湿したインキュベーター)下でインキュベートし、光から防止した。吸光度を、モレキュラー・デバイス・サーモマックス・プレートリーダー(Molecular Device ThermoMax Plate reader)を用いて、750nmを対照波長として450nmで読み取った(培地のみのアッセイブランクウェル上のプレートをブランクとする)。XTT試薬を与えた未処置の細胞だけが、正の細胞増殖コントロールとして機能した。
【0123】
細胞抑制濃度毒性係数(CCI50)を測定する(細胞の50%がなお生存する時点を測定する)場合に、NNDCTのCCI50は7mMであり、そしてHOClのCI50(IC50=0.8mM)、ベタジン(IC50=0.01mM)、またはOCl(IC50=0.66mM)の場合よりも、XTTアッセイにおいて原発性ヒト皮膚線維芽細胞の実質的により高い細胞生存率を示した。同様な結果は、マウス肺上皮細胞(L929)について行なったXTTアッセイにおいて達成された。ここで、NNDCTの場合に90%以上の生存率が濃度が7mMで観察され、それに対して濃度が0.6mMでのOClおよび濃度が0.02mMでのベタジンの場合には、50%よりも実質的に低い生存率を観察した。
【0124】
細胞毒性および治療係数
NNDCTは、米国薬局方標準細胞アッセイ(United States Pharmacopoeia's standard cell assay)(マウス肺上皮細胞、L929)、並びに原発性ヒト皮膚細胞を使用するインビトロでの安全性試験を厳密に行なった。我々は、NNDCTが、他の防腐性被験物品(HOCl、およびポビドン−ヨウ素)と比較して、両方の細胞タイプ:原発性ヒト線維芽細胞およびL929細胞において非常に低い細胞毒性を有することを発見した(以下を参照)。細胞毒性が大きな問題であるポビドンヨウ素と違って、NNDCTは非常に安全な毒性プロファイルを有して、細胞と適合し得ることを示した。実際には、該治療係数(TI)(これは、NNDCTの場合の最小殺菌濃度(MBC)に対する、アッセイ細胞によって許容される濃度の比率(インビトロ細胞毒性、またはIC50)として定義する)は、HOClおよびポビドン−ヨウ素の場合にそれぞれ約300および7であるのと比較して、約5,000であった(表2)。
表2.最小殺菌濃度(MBC)および治療係数データのまとめ
【表2】

最小殺菌濃度(MBC);
治療係数;および、原発性ヒト皮膚線維芽細胞。
【0125】
特に、眼、慢性非治癒性創傷、および火傷の患者においてより安全な局所消毒剤としてのNNDCTの適用は、大きな利点であり得る。その理由は、大きな毒性の副作用を有する他の消毒剤の使用は、ヘルスケア当局(healthcare authorities)によって非常に反対されているためである。食物の安全性はまた大きな健康問題であるので、広範囲な消毒剤としてのNNDCTの適用は、食品会社にまで拡張し得る。
【0126】
実施例4
例えば、N,N−ジクロロ−1,1−ジメチルエタンスルホン酸の製造方法を、以下に記載する。
工程1:1,1−ジメチルエタンスルホン酸の製造(Braghiroli, D.; Bella, M. D.による, Tetrahedron Letters, 1996, 37, 7319-7322)
1,1−ジメチルエタンスルホン酸は、2−ヒドロキシイソブチロニトリル(アセトンシアノヒドリン)の1−アミノ−2−メチル−2−プロパノールへの還元、続く、(Boc)Oを用いる保護によって製造する。メシル化および該保護基の除去後に、得られた塩酸塩を亜硫酸ナトリウムと反応して、1,1−ジメチルエタンスルホン酸を得た。
【0127】
工程2.1,1−ジメチルエタンスルホン酸のクロル化
0.9% NaCl溶液(pH 3.5)中の1.6mM N,N−ジクロロ−1,1−ジメチルエタンスルホン酸(NNDC−DMESA)(1L)を製造するために、1000mLのメスフラスコ中にNaCl(8.6g)を加え、次いで該フラスコにミリポア水(500mL)を加えて、該塩を溶解した。該NaCl溶液中に1M HCl(2mL)を加え、続いて0.158M NaOCl(22mL)を加える。該溶液を混合する。次いで、該フラスコ中に1,1−ジメチルエタンスルホン酸(0.355g)を加え、そして該メスフラスコをミリポア水を用いてマークまで満たす。該反応が完結するまで(これは、例えばUVまたはNMRによって示される)、該溶液を撹拌する。
【0128】
我々は、N,N−クロル化オルニチン、N,N−ジクロロホモタウリン、およびN,N−ジクロロアラニンを製造した。全てのこれらのジクロロ化合物は、非常に似たUVスペクトル(λ最大値=〜300nm)およびモル吸光率を有する。
【0129】
ジクロロ−アミノ酸化合物の製造方法
酸性HOCl溶液中に、定量のアミノ酸またはそれらの塩(粉末)を加える(HOCl:アミノ酸のモル比=2:1)。次いで、該混合物溶液を約15分間撹拌する。得られた溶液のpHは、出発HOCl溶液のpHよりも低い。該生成物を同定し、そして該反応の完結をUV−可視(vis)分光光度計によって追跡する。該溶液のpHを、塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いて所望するpH値まで調節する。該溶液の濃度は、λ最大値での対応するモル吸光率を用いることによって、UV分光光度計を用いて測定する。より詳細な方法は、以下の実施例中に記載する。
【0130】
実施例:0.05M ジクロロホモタウリン溶液(1L)の製造
工程1.0.1M HOCl(pH<5)(1L)を製造する。
工程2.工程1のHOCl溶液中にホモタウリンナトリウム(3−アミノ−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、MW=161.13)(8.06g)を加える。該溶液を約15分間撹拌する。
工程3.工程2の溶液の一部を取り出し、そして100倍希釈する。該生成物を同定するために、該希釈溶液のUVスペクトル(これは、303nmでλ最大値を有する)を測定する(添付する表を参照)。
工程4.工程2において得られる該溶液のpHを、NaOHまたはHClを用いて所望するpHにまで調節する。
工程5.ジクロロホモタウリンの濃度を測定するために、工程3の方法を繰り返す(モル吸光率は329.0M−1cm−1であり、添付する表を参照)。

N,N−ジクロロおよびN,N−ジブロモ−アミノ酸化合物のモル吸光率
【表3】

Gottardi, W.; Nagl, M.による, Arch. Pharm. Pharm. Med. Chem. 2002, 9, 411-421;
Thomas, E.; Bozeman, P.; Jefferson, M.; King, C.による, J. Bio. Chem. 1995, 7, 2906-2913;
本研究における測定値;
オルニチンに対する塩素化の4:1モル比を基準とする。
【0131】
実施例5
我々の発見の結果は、0.9% 生理食塩水(pH 3.5)中でのNNDCTの抗微生物性活性を支持する。これらの抗微生物性活性は、μM単位のレンジで考慮され得るべきであると測定され、そして濃度および曝露時間を増大することによって有意に増大した。それに対して、細胞毒性は、mM単位のレンジで1000倍以上の大きいレンジで観察された。我々は、NNDCT処置細胞が該処置に対して許容であり得て、そして我々のXTTアッセイにおいて未処置コントロール細胞と比較して、正常な細胞増殖周期を受けることができることを示した。
【0132】
実施例6
pH 3.0、3.5、4.0、および5.0で濃度が1.49mMを有するNNDCT溶液を製造した。該溶液のスペクトルおよび濃度は、UV−可視分光光度計を用いて測定した。該結果は、NNDCT溶液のスペクトルおよび濃度がpHの範囲が3.0〜5.0で変わらないことを示した。
【0133】
製造法
1000mL メスフラスコ中にNaCl(8.8g)、1.0M HCl(2mL)、およびタウリン(0.278g)を加え、続いて該フラスコ中に脱イオン水(約800mL)を加えた。該フラスコを振り混ぜて、NaClおよびタウリンの粉末を溶解する。次いで、0.15Mの該NaOCl溶液(22mL)を該フラスコ中に加える。該フラスコを脱イオン水を用いてマークまで満たす。該溶液を磁気撹拌バーと一緒に5分間撹拌する。得られた溶液の濃度およびpHを、UV可視分光光度計および新たに較正したベックマン(Beckman)pHメータを用いて測定した。この溶液は、濃度が1.49mMおよびpH値が3.85である。
【0134】
上記のNNDCT溶液(pH=3.85)(100mL)を250mL ビーカー中にピペットし、1.0M HCl溶液(0.09mL)をこの溶液に加え、そして撹拌した。この溶液の最終的なpHは、3.0である。
【0135】
pH 3.85の溶液であるNNDCT(100mL)を250mL ビーカー中にピペットし、5.0M NaOH溶液(0.003mL)を該溶液中に加え、そして撹拌した。この溶液の最終的なpHは、4.85である。
【0136】
pH値を変えた溶液を、pHの範囲が3〜5内で同様な方法で製造した。適当に保存する場合には、全ての溶液が安定性を示す(それらのUVスペクトルによって示される)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
A−C(R)R(CH)−C(YZ)−X'
[式中、
Aは、水素またはHalN−であり;
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
Rは、炭素炭素の単結合、または3〜6個の炭素原子を有する二価のシクロアルキレン基であり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜13の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、−NH、または−NHalであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
'は、水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONH、−P(=O)(OH)、または−B(OH)であり;
但し、
Rが二価のシクロアルキレン基であり、nは0または11以上の整数である場合には、該二価の基Rまたは二価の基−(CH)−は、場合により−NHalで置換される]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含有する医薬組成物であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、または置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体である、該医薬組成物。
【請求項2】
は低級アルキルである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
Rは炭素炭素の単結合であり、nは0または1〜7の整数である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
nは0または1〜5の整数である、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
nは0または1〜3の整数である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
N,N−ジハロアミノ酸は1または2個の−NHal基を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
N,N−ジハロアミノ酸は1個の−NHal基を含む、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
−NHal基はX'基に対してアルファ−、ベータ−またはガンマ−位に存在する、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
Aは−NHalである、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項10】
−NHal基は二価の基Rまたは−(CH)−と結合する、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項11】
Halはクロロである、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
誘導体は医薬的に許容し得る塩である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項13】
組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を0.1〜100mMの間の濃度で有し、そしてpHの範囲は約3〜約4.8、3.0〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項14】
式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (II)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、またはヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体、および医薬的に許容し得る担体を含有する、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の活性を有する組成物であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれ;
該組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度が0.1〜100mMの間であり、そしてpHの範囲が約3〜約4.8、3.0〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、該組成物。
【請求項15】
式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (II)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体、および医薬的に許容し得る担体を含有する、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の活性を有する安定化した組成物であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれ;
該組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度が0.01〜50mMの間であり、そしてpHの範囲が約2〜約7、約3〜約6、3〜約4.8、約3〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、該組成物。
【請求項16】
組成物は、その殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、または抗ウイルス性の使用によって必要とされるその長期間の安定性を保証する容器中にある、請求項14または15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (II)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれ;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体、および医薬的に許容し得る担体を含有する組成物であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれ;
該組成物は、pHの範囲が約2〜約7、3〜約6、3.0〜6.0、3.0〜5.0の間、または約3.5であって、そして、
該組成物は、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の活性を有する、該組成物。
【請求項18】
N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度は、0.1〜100mMの間を有し、0.3〜50mMの間が好ましい、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
安定化した形態である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
その殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、または抗ウイルス性の使用によって必要とされる長期間の安定性を保証する容器中で保存する、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の使用のための医薬の製造における、式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (II)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体、および医薬的に許容し得る担体を含有する組成物の使用であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれ;
該組成物は、pHの範囲が約2〜約7、約3〜約6、3.0〜6.0、3.0〜5.0の間、または約3.5である、該使用。
【請求項22】
N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度は、0.1〜100mMの間、または0.3〜50mMの間を有する、請求項21記載の使用。
【請求項23】
医薬は、その殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、または抗ウイルス性の使用に必要とされる長期間の安定性を保証する容器中にある、請求項21または22記載の使用。
【請求項24】
哺乳動物における、細菌、微生物、胞子、真菌またはウイルスの活性が原因である感染症を予防しまたは治療する方法であって、
該方法は、式(II):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (II)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、水素または低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
によって示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の量、並びに医薬的に許容し得る担体を投与することを含み、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれる、該方法。
【請求項25】
組成物は、pHの範囲が約2〜約7、約3〜約6、3.0〜6.0、3.0〜5.0の間、または約3.5である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度は、0.1〜100mMの間、または0.3〜50mMの間である、請求項24または25のいずれか記載の方法。
【請求項27】
組成物は安定化した形態である、請求項24〜26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
組成物は、その殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、または抗ウイルス性の使用に必要とされるその長期間の安定性を保証する容器中にある、請求項24〜27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
等張性でありそして生理学的にバランスがとれている、請求項14記載の組成物。
【請求項30】
治療係数が約1,000〜約5,000であり、該治療係数は、1時間での大腸菌についてのその最小殺菌濃度に対する、1時間でのL929マウス肺上皮細胞および原発性ヒト線維芽細胞の両方についてのそのIC50の比率によって定義される、請求項1〜29のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項31】
殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、消毒性、抗真菌性、殺胞子性、および抗ウイルス性の活性を有する組成物であって、式(IV):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X (IV)
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、およびヨードからなる群から選ばれるハロゲンであり;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含有し、ここで、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれる、該組成物。
【請求項32】
は、水素または低級アルキルであり;nは、0、1または2であり;Yは、水素または低級アルキルであり;Zは、水素または低級アルキルであり;そして、Xは、−SOHまたは−SONHである、請求項31記載の組成物あるいはその誘導体であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、および低級アルカノールとのエステルからなる群から選ばれる、該組成物。
【請求項33】
YおよびZが水素である場合には、Xが−SOHである、請求項32記載の組成物、またはその誘導体であって、該誘導体は、医薬的に許容し得る塩からなる群から選ばれる、該組成物。
【請求項34】
組成物は医薬的に許容し得る担体を含む、請求項31〜33のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項35】
pHは、約2〜約7、3.0〜6.0、3.0〜5.0の間、または約3.5である、請求項31〜34のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項36】
組成物は等張性であってそして生理学的にバランスがとれている、請求項31〜35のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項37】
N,N−ジハロアミノ酸は、N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N,N−ジヨードタウリン、N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン、N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル−β-アラニン、N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N,N−ジクロロエタンスルホン酸、N,N−ジクロロ−1−メチルエタンスルホン酸、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる要素であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、および低級アルカノールとのエステルからなる群から選ばれる、請求項31記載の組成物。
【請求項38】
細菌、微生物、胞子、真菌もしくはウイルスの増殖、または感染症および感染源の繁殖を制御しまたは防止する方法であって、
該方法は、有効な量の請求項1記載の医薬組成物を増殖または繁殖の該制御または防止に必要な領域、空間または物質へ適用することを含む、該方法。
【請求項39】
組成物のpHは、約2〜7、3.0〜約6.8、3.0〜6.0、3.0〜5.0の間、または約3.5である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体はインシチュで製造する、請求項24または38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
処置する物質は、食物、動物の餌、外科的な装置、外科的な設備、医学的なデバイス、およびそれらの目的に使用する設備からなる群から選ばれる、請求項38記載の方法。
【請求項42】
式(IV):
HalN−C(R)−(CH)−C(YZ)−X
[式中、
Halは、クロロ、ブロモ、またはヨードからなる群から選ばれ;
は、水素、低級アルキル、または−COOH基であって、
は、低級アルキルであるか;あるいは、
およびRはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、(C〜C)シクロアルキル環を形成し;
nは、0または1〜3の整数であり;
Yは、水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−COOH、−CONH、−SOH、または−SONHである]
で示されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、低級アルカノールとのエステル、および置換基Xが結合する炭素原子と結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群から選ばれる、該N,N−ジハロアミノ酸。
【請求項43】
は、水素または低級アルキルであり;
nは、0、1、または2であり;
Yは、水素または低級アルキルであり;
Zは、水素または低級アルキルであり;そして、
Xは、−SOHまたは−SONHである、
請求項42記載のN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体であって、
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩、および低級アルカノールとのエステルからなる群から選ばれる、該N,N−ジハロアミノ酸。
【請求項44】
YおよびZは水素であり;
Xは−SOHであり;
該誘導体は、医薬的に許容し得る塩からなる群から選ばれる、
請求項43記載のN,N−ジハロアミノ酸。
【請求項45】
N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン;
N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン;
N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン;
N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン;
N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン;
N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル−β−アラニン;
N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン;および、
N,N−ジクロロ−1−メチル−エタンスルホン酸
からなる群から選ばれる請求項42記載のN,N−ジハロアミノ酸、またはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項46】
Halはクロロである、請求項42〜44のいずれか1つに記載のN,N−ジハロアミノ酸、またはその医薬的に許容し得る塩。
【請求項47】
請求項42〜46のいずれか1つに記載のN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含有する、医薬組成物。
【請求項48】
哺乳動物における細菌、微生物、胞子、真菌、またはウイルスの活性を原因とする感染症の予防または治療方法であって、
該方法は、殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の量の請求42〜46のいずれか1つに記載のN,N−ジハロアミノ酸を投与することを含む、該方法。
【請求項49】
細菌、微生物、胞子、真菌もしくはウイルスの増殖、または感染症および感染源の繁殖を制御しまたは予防するための方法であって、
該方法は、有効な量の請求項42〜46のいずれか1つに記載のN,N−ジハロアミノ酸を、該増殖または繁殖の制御または防止に必要な領域、空間または物質へ適用することを含む、該方法。
【請求項50】
N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度は、0.1〜100mMの間または0.3〜50mMの間であり、そしてpHは、約3〜約4.8、3.0〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、請求項47記載の組成物。
【請求項51】
組成物は、N,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体の濃度が0.1〜100mMの間、または0.1〜50mMの間であり、そしてpHが約2〜約7、約3〜約6、3〜約4.8、約3〜4.5、3.5〜4.5の間、または約3.5である、安定化した形態である、請求項47記載の組成物。
【請求項52】
組成物は、その殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、または抗ウイルス性の使用に必要とされるその長期間の安定性を保証する容器中にある、請求項47記載の組成物。
【請求項53】
殺菌性、抗菌性、抗感染性、抗微生物性、殺胞子性、消毒性、抗真菌性、および抗ウイルス性の活性の組成物の製造における、請求項42〜46のいずれか1つに記載のN,N−ジハロアミノ酸の使用。


【公表番号】特表2007−502826(P2007−502826A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523970(P2006−523970)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/026603
【国際公開番号】WO2005/020896
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(302058613)ノバカル・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】