説明

N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプラン(DMAPA)の合成方法

本発明は、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも1つの二重結合へのモノアミンの発熱付加下で、第1の反応器中で相応するモノアミンとアルケニルニトリルとを反応させてアミノアルキルニトリルにする工程、その際モノアミン並びに水が装入され、アルケニルニトリルは供給される;
(b)第1の反応器の塔底中で、アミノアルキルニトリル生成物の濃縮のために、未反応アルケニルニトリル及びモノアミンを蒸留する工程;
(c)工程(b)からのアミノアルキルニトリル塔底生成物を第2の反応器中へ移行する工程;
(d)第2の反応器中で、工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルをジアミンへと、バッチ式に、触媒により水素化する工程;その際、各バッチのために、ニトリルのアミンへの水素化のために適した触媒並びに水、所望のジアミン及び塩基が装入され、この第2の反応器には水素が導入され、かつ工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルが計量供給される、及び
(e)ジアミンを獲得し、かつ、場合により工程(a)〜(e)を繰り返す工程
を含有する、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法に関する。本発明は更に、前記ジアミンの製造のための装置並びに前記装置の使用に関する。有利なジアミンは3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアミンの、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発する、大工業的製造のための装置及び方法並びに前記装置の使用に関する。
【0002】
ジアミンは、様々に、出発物質、中間−又は終生成物として使用される、重要な化学的グループである。例えばジアミンは、ポリアミド合成及び他の重縮合反応の際の重要な構造要素である。
【0003】
特に、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA、N,N−ジメチル−1,3−ジアミンプロパン)は、工業的な製造、例えば軟石鹸の工業的な製造のための重要な中間生成物である。DMAPAは更に、凝結剤の製造のための出発生成物として使用され、かつ、自体で抗腐食性特性を有するものである。
【0004】
しばしばジアミンはそのアミン類似体と同様に、ニトリルの還元により製造される。この反応は特に、第一級アミンが得られるものである場合に有利である。
【0005】
従って、例えば、WO-A 2004/060853並びにWO-A 2004/060039は、3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)のDMAPAへの触媒による水素化を記載する。
【0006】
EP-A 0913388は、コバルト触媒を用いた、アミンの製造のためのニトリルの水素化を記載する。
【0007】
ニトリルのアミン又はジアミンへの還元のための記載された方法にもかかわらず、相応するニトリルをどのように提供することができるかの問題が残っている。
【0008】
従って、特に効率的に、比較的単純な出発材料から出発してジアミンを製造することができる、統合的な方法(integrales Verfahren)を提供するとの要求が存在する。
【0009】
ここで、大工業的な規模で使用される方法が特に重要であり、というのは、しばしば、実験室試験からの、パイロットプラント規模を越える単なるスケールアップは、所望の結果を生じないからである。本発明の課題は従って、特に効率的にジアミンの製造を可能にする、大工業的な方法を提供することにある。
【0010】
前記課題は、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも1つの二重結合へのモノアミンの発熱付加下で、第1の反応器中で相応するモノアミンとアルケニルニトリルとを反応させてアミノアルキルニトリルにする工程、その際モノアミン並びに水が装入され、アルケニルニトリルは供給される;
(b)第1の反応器の塔底中で、アミノアルキルニトリル生成物の濃縮のために、未反応アルケニルニトリル及びモノアミンを蒸留する工程;
(c)工程(b)からのアミノアルキルニトリル塔底生成物を第2の反応器中へ移行させる工程;
(d)第2の反応器中で、工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルをジアミンへとバッチ式に、触媒により水素化する工程;その際、このバッチのために、ニトリルのアミンへの水素化のために適した触媒並びに水、所望のジアミン及び塩基が装入され、この第2の反応器には水素が導入され、かつ工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルが計量供給される、及び
(e)ジアミンを獲得し、かつ、場合により工程(a)〜(e)を繰り返す工程
を含有する、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法により解決された。
【0011】
即ち、上述の方法工程に基づく大工業的な方法は、収率、選択率、エネルギーバランス、環境保全バランス(Oekobilanz)の点で、並びに、経済的観点及び更なる需要なパラメーターの観点で特に効率的に使用できることが示された。
【0012】
前記方法は、ジアミンの二工程合成を基礎とする。第1の工程において、少なくとも1つのC−C二重結合を含有するアルケニルニトリルが第一級又は第二級モノアミンと反応し、この結果前記アミンはC−C二重結合に付加する。この反応から得られるアミノアルキルニトリルは、更なる工程において、水素を用いて所望のジアミンへと還元される。
【0013】
本発明の枠内において、「相応するアルケニルニトリル」並びに「相応するモノアミン」との概念は、これらが、前述の2つの合成工程後に、所望の構造式を有するジアミンが得られるように選択されることを意味する。
【0014】
例えばアルケニルニトリルが、アクリル酸ニトリル(ACN)、そしてモノアミンが、ジメチルアミン(DMA)である場合には、まず、前記出発材料の3−ジメチルアミノプロピオニトリル(DMAPN)への反応が行われる。この引き続く水素化は、3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)を生じる。DMAPAが所望される場合に他に示されるのは、はっきりと明白に、この相応するアルケニルニトリルがACN、及び、この相応するモノアミンがDMAでなくてはならないことである。
【0015】
このアルケニルニトリルは有利にはC2〜C4−アルケンであり、これは直鎖又は分枝鎖であることができ、その際水素原子はシアノ基により置き換えられている。
【0016】
2〜C4−アルケンとの概念は、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する、2〜4個のC原子を有するアルケンを意味する。有利には、C−C二重結合はちょうど、シアノ基に対してα,β位に存在する。C2〜C4−アルケンのための例は、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペンである。
【0017】
ニトリルのための例は、アクリルニトリル、ブタ−2−エン酸ニトリル、メタクリル酸ニトリル、ペンタ−2−エン酸ニトリル、2−エチルアクリル酸ニトリル、2−メチル−ブタ−2−エン酸ニトリル並びに3−メチルブタ−2−エン酸ニトリルである。
【0018】
ACNが有利である。
【0019】
モノアミンとは、有利には、一般式R12NHの第一級又は第二級アミンであり、その際R1、R2は相互に独立してH又はC1〜C4−アルキルであり、但し、少なくとも1つの残基R1、R2は水素でないとの条件付きである。
【0020】
1〜C4−アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、1−n−ブチル、2−n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルを意味する。
【0021】
DMAが有利である。
【0022】
アルケニルニトリルがACN、そして、モノアミンがジメチルアミンである場合には、所望のジアミンとしてはDMAPAが生じ、これは有利である。
【0023】
本発明の枠内において、「大工業的製造」との概念は、アルケニルニトリルの反応の際に並びにアミノアルキルニトリルの水素化の際に、反応につき、100kg、有利には1tのオーダーで最小量が使用されることを意味する。
【0024】
本発明による方法の工程(a)は、第1の反応器中での、アルケニルニトリルの、相応するモノアミンとの、少なくとも1つの二重結合へのモノアミンの発熱的付加下での、アミノアルキルニトリルへの反応に関し、その際、前記モノアミン並びに水が装入され、かつ、アルケニルニトリルが添加される。
【0025】
この反応は有利には、気泡塔中で進行する。
【0026】
アルケニルニトリルの完全な添加後にもモノアミンが、化学量論的過剰量で存在することは、更に有利である。モノアミンが装入され、かつ、アルケニルニトリルが反応混合物へ添加されるので、これは、同様に、アルケニルニトリルの添加期間に当てはまる。これにより、このアルケニルニトリルの重合が可能な限り抑制されることが保証されることができる。アルケニルニトリルに対するモノアミンの過剰量は有利には、少なくとも1mol%、より有利には少なくとも2.5mol%、更により有利には少なくとも5mol%、そして特に有利には10mol%である。
【0027】
工程(a)での反応は、沸騰点の温度下で、かつ、モノアミンの返送下で行われることができる。第1の反応器中での上昇性の気泡により、反応混合物のより良好な混合が行われ、かつ、この熱排出は、特に経済的な手法で行われることができる。
【0028】
本発明による方法の工程(a)における反応のためには、出発材料であるモノアミンの他に、水が装入される。この際有利には、モノアミンに対して、高くとも20mol%、より有利には高くとも15mol%の、特に有利には約10mol%を越えない水が使用される。
【0029】
この存在する水のために、これは、中間沸騰物質として用いられることができ、これはモノアミンの除去並びにその凝縮、例えば還流冷却器でのその凝縮を容易にする。更に、水は、アルケニルニトリルの二重結合へのモノアミンの付加のための触媒として使用される。
【0030】
工程(a)でのアルケニルニトリルの反応の際の発熱反応は、この反応がモノアミンの還流下で実施されるように制御されることができる。これは例えば、還流冷却器により、実施されることができる。モノアミンの他にこの際更に水が蒸気相中に移動し、その一方でこの第1の反応器の塔底中には形成されたアミノアルキルニトリルが残存する。この反応は有利には、工程(a)での塔底温度が130℃未満、有利には120℃未満、より有利には100℃未満に維持されるように実施される。これは特に、DMAPAの製造の際に当てはまる。
【0031】
更にこれは、塔底温度が一定に維持される場合に有利である。有利には、この塔底温度は、温度制御された圧力低下により一定に及び/又は最高温度下で維持される。特に、これは、DMAPNの製造の場合に、5から1barへの圧力低下(過圧)により達成されることができる。
【0032】
アルケニルニトリルの完全な添加後に、典型的には、この変換を完全にするために、前記反応が更に実施される。
【0033】
本発明による方法は、特に、アルケニルニトリルとモノアミンとの反応も、形成されるアミノアルキルニトリル−中間生成物の引き続く水素化も包含する、統合的な方法として適する。しかしながら、この反応の方法工程は、自体で考慮しても既に有利な方法である。これに応じて、本発明の更なる観点は、場合により、以下により詳細に説明される工程(b)と一緒の、上記された工程(a)自体と考慮される。
【0034】
本発明の方法の方法工程(b)は、第1の反応器の塔底中での、アミノアルキルニトリル生成物の濃縮のための、未反応アルケニルニトリル及びモノアミンの蒸発に関する。行われた反応後に、この未反応出発材料は除去されなくてはならない。これは、反応器内容物の加熱により行われることができ、その際、圧倒的にモノアミンが、そして部分的に水が蒸発される。この際、しかしながら同様に、少ない割合のアミノアルキルニトリルを、蒸気相中に見出すことができる。出発材料の蒸発により、アミノアルキルニトリル生成物の濃縮が塔底で行われる。この装置の頂部を介して分離された成分モノアミン、水、並びにいくばくかのアミノアルキルニトリルは、凝縮され、かつ、少なくとも部分的に、引き続く反応において再度工程(a)のために装入されることができる。これを実施するために、典型的には、この凝縮物は容器中で中間貯蔵される。このようにして塔底で得られるアミノアルキルニトリルは、有利には、モノアミン及び水に関する、そのつど5質量%、有利には高くともそのつど3質量%、特に高くともそのつど2質量%の最高質量割合を有する。
【0035】
アミノアルキルニトリルは次いで、本発明による方法の工程(c)において、第2の反応器中に移行される。これは、相応する管導通部に連結した反応器の直接的な移行を介して行われる。典型的にはしかしながら、まず、アミノアルキルニトリルが貯蔵タンク中に中間貯蔵される。本発明の利点は、本発明による方法の工程(a)において製造されるアミノアルキルニトリル中間生成物が、後続の水素化工程で使用されるべく十分な純度を有することにある。固体の成分を相応して分離するために、単に濾過工程が行われるものである。従って、本発明による方法の有利な一実施態様は、アミノアルキルニトリル(これは、工程(c)において相応して移行される)の移行の際に、濾過工程の他には更なる精製工程が行われないことにあると理解される。
【0036】
本発明による方法の工程(d)において、工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルのジアミンへの、第2の反応器でのバッチ式の、触媒による水素化が行われ、その際各バッチのために、ニトリルのアミンへの水素化に適した触媒並びに水、所望のジアミン及び塩基が装入され、この第2の反応器に水素が導入され、かつ工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルが計量供給される。
【0037】
本発明による方法は、従って、2つの反応工程を含む。同様にしかしながら、場合によりジアミンの獲得のための工程と一緒の、工程(d)で記載した水素化方法は、既に有利である。従って、本発明の更なる観点は、以下により詳細に記載される、場合によりジアミンの獲得のための工程と一緒の、バッチ式の、触媒による水素化である。
【0038】
水素化の際に獲得されるジアミンは、水素化の制御された進行を保証するために、この水素化の際に少なくとも少量で装入されなくてはならない。
【0039】
工程(d)で触媒が反応混合物中に、この全体の添加されたアミノアルキルニトリルに対して少なくとも1質量%存在することが有利である。有利には、この最小含有量は1.25質量%、より有利には1.5質量%である。反応器中での比較的高い触媒濃度は、触媒の選択率並びに寿命を高めることができる。開始時に装入される混合物に対して、触媒の割合は、20質量%まで、有利には15質量%であることができる。
【0040】
水素化のために使用される触媒は、原則的に任意の、ニトリルのアミンへの水素化に適した触媒であることができる。そのような触媒は、ニッケルを、例えばラネーニッケルとして含有することができる。数々の触媒が技術水準において公知である。適した触媒は例えば、EP-A 913 388, WO-A 2004/060039, WO-A 2004/060853, US-A 4 739 120, JP-A 38 21 353, US-A 2 449 035, US-A 4 375 003, EP-A 1 050 527並びにDE 70877中に記載されている。
【0041】
本発明による方法の工程(d)におけるバッチ式の、触媒による水素化が更に実施される場合に有利であり、その際前記工程においては、1つ又は複数の、引き続くチャージ(バッチ)のための触媒量が、第2の反応器中に既に存在する触媒量に対して添加される。これは、各バッチ後には、この全体の触媒量が交換されないことを意味する。この際添加は、規定の間隔で、例えば10つのチャージ後に実施されることができる。しかしながら、各バッチ後に、触媒量の添加が行われることも同様に可能である。有利には、この全体的な触媒量は、比較的頻繁なサイクルの後に交換される。有利には、触媒の完全な交換は、最速で50サイクル(工程(a)〜(e)の実施)後に起こる。更に有利には、完全な触媒の交換は、最速で100チャージ後に、更により有利には少なくとも150チャージ後に起こる。
【0042】
本発明による方法の工程(d)における、バッチ式の、触媒による水素化の実施のためには、第2の反応器に水素が導入される。更にアミノアルキルニトリルは出発材料として添加される。有利には、工程(d)における反応は、各時間点で、水素が化学量論的過剰量で存在するように実施される。有利には、この化学量論的過剰量は、少なくとも5mol%、より有利には少なくとも15mol%、更により有利には少なくとも20mol%である。この水素過剰量は、連続的な又は非連続的な圧力により導入(nachpressen)される。
【0043】
本発明による方法の工程(d)における反応の際には塩基が使用される。有利には、この塩基は、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、並びにこれらの混合物である。
【0044】
水素化の終了後に、本発明による方法の工程(e)として、所望のジアミンの獲得並びに場合により、工程(a)〜(e)の繰り返しが行われる。
【0045】
工程(e)におけるジアミンの獲得は蒸留により行われる。
【0046】
蒸留前にこの反応生成物が濾過され、かつ蒸留塔中に移送されることは意味がある。この際、濾過前に触媒の主要割合が沈殿により分離されることが有利であることが分かった。更に、蒸留の際には、主として水及びモノアミンからなる前留出分画(Vorlauffraktion)が、蒸留の際に第1の反応器中に返送されることが有利であることが分かった。前留出分画が主として水及び所望のジアミンを含有する場合には、これは蒸留中に返送されることができる。
【0047】
本発明の更なる主題は、ジアミンの製造のための装置であって、
(a)モノアミンのアルケニルニトリルへの付加のための第1の反応器であって、少なくとも
i)1つ又は複数の別個の又は共通の、モノアミン、アルケニルニトリル、及び水のための入口、
ii)実質的に水及びモノアミンからなる蒸気を、第1の反応器から排出するために適した、少なくとも1つの第1の出口、及び
iii)塔底中で形成されたアミノアルキルニトリルを排出するために適した、少なくとも1つの第2の出口を備えた、第1の反応器、
(b)アミノアルキルニトリルのバッチ式水素化のための第2の反応器であって、少なくとも
i)第1の反応器の第2の出口と連結している、少なくとも1つの第1の入口、
ii)1つ又は複数の、更なる別個の又は共通の、水素、触媒、塩基、水並びに不活性ガス(有利には窒素)のための入口、並びに
iii)この反応生成物の排出のための出口を備えた、第2の反応器、及び
(c)反応生成物からのジアミンの獲得のための装置であって、少なくとも
i)第2の反応器の出口と連結している、少なくとも1つの入口、並びに
ii)獲得されたジアミンを排出するために適した、少なくとも1つの出口を備えた、装置
を含有する、ジアミンの製造のための装置である。
【0048】
有利には、第1の反応器の第1の出口は、中間容器の入口と連結していて、これは再度、第1の反応器からの、蒸発された、場合により縮合された蒸気の、第1の反応器への返送を可能にする少なくとも1つの出口を有する。
【0049】
更に、第1の反応器及び第2の反応器の間の連結部が、回収容器並びに第1のフィルターを含有することが有利である。しかしながらこれらは必ずしも必要ではない。
【0050】
同様に、第2の反応器は、沈殿したか又は沈殿すべき触媒を排出するための、少なくとも1つの更なる出口を有することが有利である。
【0051】
更に、触媒量がジアミンの獲得のための装置へと到達することを回避するために、第2の反応器と、ジアミンの獲得のための装置の間の連結部が、第2のフィルターを有することが有利である。第2のフィルター中でのこの触媒の再洗浄(Rueckspuelung)は、有利にはアミノアルキルニトリルの供給の間に行われる。
【0052】
この第2のフィルターは、第1のフィルターと同じであることができ、又は両方のフィルターは同様に同一であることができる。1つのフィルターのみが使用される場合には、これによりコストが回避されることができる。
【0053】
ジアミンの獲得のための装置は例えば、蒸留塔又は精留塔であることができる。有利には、蒸留塔には、更に蒸留釜(Destillationsblase)が前接続されていて、この結果、第2の反応器とジアミンの獲得のための装置の連結部の間に、このような蒸留釜が含有されている。
【0054】
本発明の更なる主題は、アルケニルニトリルとモノアミンとの反応及び引き続く水素化による、ジアミンの製造のための本発明に応じた装置の使用であり、その際有利には、上記したような本発明による方法が使用される。
【0055】
以下の実施例並びに図1は、限定すること無しに本発明を説明する。この際図1は、本発明による装置を示す。この実施例は、DMA並びにACNから出発したDMAPAの合成に関する。
【0056】
実施例
1.DMAPN合成
1.1通常運転での手順
この合成は非連続的に2つの並行に運転する、各9.1m3の、還流冷却器160(Wt表面積75m2)を有する、気泡塔100中で、5〜1barで、沸騰冷却及び二次的−冷却水−冷却下で、二重ジャケットを介して、<100℃で経過する。冷却器160中での冷却媒体は、塩水(TEin−5℃、TAus0℃)であり、この二次的−冷却水を、入口温度34℃及び出口温度43℃を有する。全体的なDMA(2914kg)を入口110、そして水(124kg)を入口120(このうち、2727kgが新規DMA、そして107kgが新規水、残分が中間容器170から)を介して装入し、かつ、2.5時間にわたりACN(3108kg)を入口130のノズルを介してポンプ供給する。この入口部分で、反応熱が液状DMAの蒸発のために導通し、これは、気泡塔中での反応混合物の混合に寄与する。蒸発したDMAを、出口140を介して還流冷却器中で凝縮する。温度制御された圧力調整を介して、この反応の経過において、この圧力を5から1barに低下させ、この結果一定の温度又は最大で100℃未満でDMAが蒸発されることができる。ACNの全体量の注入後に、供給ポンプ180を、この反応を完全にするために、循環に切り替える。1時間の後反応後に、この反応器内容物を二重ジャケットを介して、4barの蒸気(151℃)で加熱し、その際大部分のDMA及び部分的な水及びDMAPN(全体として308kg、このうち204kgDMA、16kg水及び88kgDMAPN)が蒸発、縮合され、そして容器170中で、次のバッチ中での使用まで中間貯蔵する。この塔底温度が130℃に上昇した場合に、この蒸発工程は終了している。この反応器充填物(5942kg)を、これは更に約1.1%のDMA及び1.8%の水を含有するが、冷却し、かつ、貯蔵タンク190中に、出口150を介して排出する。
【0057】
2.DMAPA合成
2.1 一般
水素化を、3段階の傾斜ブレード撹拌機を備える、それぞれ32m3の容積を有する、2つの並行する二重ジャケット反応器200中で、モーター出力それぞれ120kWで実施する。冷却媒体は、二次的−冷却水である。このバッチ時間は16時間であり、バッチは、前記貯蔵(Anlagerung)からの粗DMAPN15820kg(97.1%、含有率)を包含する。
【0058】
2.2 新規の触媒充填物を有する水素化反応器の始動
最初の水素化前に又はこの容器を完全に空にした後に、ポンプ280及び入口240を介して、触媒ラネーTM−Ni(水中の50%懸濁液として500kg)及び水性のKOH(25%溶液として60kg)を、並びにポンプ290を介して粗の又は純粋なDMAPA(4m3)を反応器中に装入し、混合する(anmaischen)。この反応器を、入口220を介して2×窒素で10barに加圧し、次いで、1barに放圧する。この更なる工程は2.3で記載される。
【0059】
2.3 水素化
水素化の開始前に、前記反応器は常に窒素下にある(2.2又は以下参照)。入口210を介した水素に対する窒素の交換のために反応器は、撹拌下で、入口210を介して2×水素で10barに加圧され、かつ、そのつど再度1barに放圧する。窒素の水素への交換後に、水素圧が10barに調整する。一定の撹拌下で、前記触媒混合物(Katalysatormaische)を、90℃に加熱する(二重ジャケット、1bar蒸気)。この温度に達成した際に、30barの水素に加圧し、そして、フィルター260及び入口250を介した、ポンプ290を用いた容器190からの粗DMAPNの計量供給を開始する。この際、加熱から冷却に転換する。この粗DMAPN(15820kg)を、9時間にわたり触媒へと送り込み、水素を、圧力制御して導入する。9時間後に更に1時間後水素化する。この水素取り込みが終了した後に、常圧に放圧し(フレア(Fackel))、この撹拌を止め、この結果触媒は沈下する。引き続きこの反応内容物を、上昇管を介して焼結金属フィルター260を通じて90℃で窒素を用いて蒸留釜310中に押し入れる。この反応器内容物は、DMAPA95.2%を含有する。触媒の主たる割合が存在する約5m3の充填容積が置かれる。反応器200中の濾別されたラネーニッケルを、次のバッチの出発材料計量供給の際に水素化反応器中へと再度洗浄(zurueckspuelen)する。各バッチの前でKOH(水中の25%溶液として6kg)を添加し、各10バッチの前に、更にラネーTM−Ni(水中で50%の懸濁液として50kg)及びKOH(25%水溶液として12kg)を送り込む。これにより、160バッチ後に、約650kgの触媒の全体量が達成され、これは約14%の出発濃度に相当する。
【0060】
このフィルター260を、粗DMAPNsの計量供給の際に自動的に再度洗浄し、しかしながら必要に応じて、蒸留釜310からは、粗DMAPAで又はパイプブリッジ(Rohrbruecke)からの水で洗浄する。
【0061】
3.触媒交換
160バッチ(全てで4ヶ月)後に、触媒を完全に空にし、この水素化反応器を再度新規に始動させる。このために、この容器内容物を、通常と同様に、上昇管を介して空にし、次いで4m3水を再度充填し、撹拌し、この触媒を、沈殿させ、この上清の(ueberstehend)DMAPA/水洗浄溶液をフィルター260を介して取り出す。この工程を3回繰り返す。引き続き更に2回後洗浄し、しかしながらこの洗浄溶液を前記フィルターを介して廃水中に導入する。全体として5回の洗浄工程後に、前記触媒を、底部の弁290を介して沈殿容器400中に排出し、ここでは、前記触媒は沈殿し、かつ、スクリューコンベアを用いて容器(配送容器の再循環)中に引き渡す。この容器を、再度5m3の水で後洗浄する。
【0062】
この水含有洗浄溶液を、蒸留する。水により量的に強く増加する中間分画(これは通常は容器500中で中間貯蔵される)を、返送せずに燃焼するか又は廃水中に添加する。
【0063】
4,蒸留
蒸留は、塔300中での常圧及び90〜最大150℃の塔底温度でのバッチ−蒸留である。このバッチ時間は16時間であり、バッチは粗DMAPA16500kgを含有する。まず、排ガスを取り出し(200kg、このうち16k NH3、160kgDMA及び24kg水)、次いで易沸物質(550kg、特にDMA及び水)(容器600中)、水含有中間分画(これは、蒸留中に返送される)(容器500中)、及び、DMAPA99.5%を有する純粋分画(Reinlauf)(15000kg))(容器700中)を留去し、相応する容器500、600及び700中に貯蔵する。塔底(650kg)中には、DMAPA365kg、ビス−DMAPA267kg、及びDMAPN18kgが残存し、これは燃焼される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明による装置を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
100 気泡塔、160 冷却器、110、120、130 入口、140、150 出口、180 供給ポンプ、170 容器、190 貯蔵タンク、200 反応器、280、290 ポンプ、210、220、240、250 入口、260 フィルター、290 弁、310 蒸留釜、400 沈殿容器、500、600、700 容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法であって、以下の工程:
(a)少なくとも1つの二重結合へのモノアミンの発熱付加下で、第1の反応器中で相応するモノアミンとアルケニルニトリルとを反応させてアミノアルキルニトリルにする工程、その際モノアミン並びに水が装入され、アルケニルニトリルは供給される;
(b)第1の反応器の塔底中で、アミノアルキルニトリル生成物の濃縮のために、未反応アルケニルニトリル及びモノアミンを蒸留する工程;
(c)工程(b)からのアミノアルキルニトリル塔底生成物を第2の反応器中へ移行する工程;
(d)第2の反応器中で、工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルをジアミンへとバッチ式に、触媒により水素化する工程;その際、各バッチのために、ニトリルのアミンへの水素化のために適した触媒並びに水、所望のジアミン及び塩基が装入され、この第2の反応器には水素が導入され、かつ工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルが計量供給される、及び
(e)ジアミンを獲得し、かつ、場合により工程(a)〜(e)を繰り返す工程
を含有する、少なくとも1つのC−C二重結合を含有する相応するアルケニルニトリルから出発したジアミンの大工業的製造方法。
【請求項2】
アルケニルニトリルが、アクリル酸ニトリル(ACN)であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノアミンが、ジメチルアミン(DMA)であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ジアミンが3−ジメチルアミノプロピルアミン(DMAPA)であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
工程(a)において、この全体の反応の間に、反応混合物中で、モノアミンが、アルケニルニトリルに対して、少なくとも1mol%の化学量論的過剰量で存在することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第1の反応器が気泡塔であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程(a)における反応が、沸騰点の温度下で、アミンの返送下で行われることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(a)における塔底温度が、130℃未満に維持されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
塔底温度が、温度制御された圧力低下化により第1の反応器で一定に維持されることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
工程(b)において得られる蒸気が少なくとも部分的に、後続の反応において再度工程(a)のために装入されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
工程(c)でのアミノアルキルニトリルの移行の際に、濾過工程の他に更なる精製工程が行われないことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で移行されたアミノアルキルニトリルがそのつど高くとも5質量%のモノアミン及び水を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(d)において、触媒が、反応混合物中に、この全体の添加されたアミノアルキルニトリルに対して、少なくとも1質量%存在していることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
触媒がニッケルを含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
工程(d)において、1つ又は複数の後続のチャージ(バッチ)のために触媒量が、第2の容器中に存在する触媒量に添加されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
触媒が交換される前に、工程(a)〜(e)が少なくとも50回繰り返されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
塩基が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又はこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
工程(e)における獲得を蒸留により行うことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
蒸留前にこの反応生成物が濾過され、かつ、蒸留塔中に移行されることを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
濾過前に触媒の主たる割合が沈殿により分離されることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
主として水及びモノアミンからなる前留出分画が第1の反応器に返送されることを特徴とする、請求項18から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
主として水及び所望のジアミンからなる前留出分画が、蒸留に返送されることを特徴とする、請求項18から21までのいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
(a)モノアミンのアルケニルニトリルへの付加のための第1の反応器であって、少なくとも
i)1つ又は複数の別個の又は共通の、モノアミン、アルケニルニトリル、及び水のための入口、
ii)実質的に水及びモノアミンからなる蒸気を、第1の反応器から排出するために適した、少なくとも1つの第1の出口、及び
iii)塔底中の、形成されたアミノアルキルニトリルを排出するために適した、少なくとも1つの第2の出口を備えた、第1の反応器、
(b)アミノアルキルニトリルのバッチ式水素化のための第2の反応器であって、少なくとも
i)第1の反応器の第2の出口と連結している、少なくとも1つの第1の入口、
ii)1つ又は複数の、更なる別個の又は共通の、水素、触媒、塩基、水並びに不活性ガスのための入口、並びに
iii)この反応生成物の排出のための出口を備えた、第2の反応器、及び
(c)反応生成物からのジアミンの獲得のための装置であって、少なくとも
i)第2の反応器の出口と連結している、少なくとも1つの入口、並びに
ii)獲得されたジアミンを排出するために適した、少なくとも1つの出口を備えた、装置
を含有する、ジアミンの製造のための装置。
【請求項24】
第1の反応器の第1の出口が中間容器の入口と連結していて、前記中間容器は再度、第1の反応器からの、蒸留した、場合により凝縮した蒸気の第1の反応器への返送を可能にする少なくとも1つの出口を有することを特徴とする、請求項23記載の装置。
【請求項25】
第1の反応器と第2の反応器との間の連結部が、回収容器並びに第1のフィルターを含有することを特徴とする、請求項23又は24記載の装置。
【請求項26】
第2の反応器が、沈殿した触媒を排出することができる、少なくとも1つの更なる出口を有することを特徴とする、請求項23から25までのいずれか1項記載の装置。
【請求項27】
第2の反応器と、ジアミンの獲得のための装置との間の連結部が第2のフィルターを有することを特徴とする、請求項23から26までのいずれか1項記載の装置。
【請求項28】
第1のフィルター及び第2のフィルターが同一であることを特徴とする、請求項25及び27記載の装置。
【請求項29】
ジアミンの獲得のための装置が蒸留塔であることを特徴とする、請求項23から28までのいずれか1項記載の装置。
【請求項30】
蒸留塔に、蒸留釜が前接続していることを特徴とする、請求項23から29までのいずれか1項記載の装置。
【請求項31】
アルケニルニトリルとモノアミンとの反応によるジアミンの製造及び引き続く水素化のための、特に、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法によるアルケニルニトリルとモノアミンとの反応によるジアミンの製造及び引き続く水素化のための、請求項23から30までのいずれか1項記載の装置の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−514834(P2009−514834A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538354(P2008−538354)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067952
【国際公開番号】WO2007/051786
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】