説明

N,N−ジメチルアミノアルケノン化合物の製法

【課題】 本発明の課題は、簡便な方法により、温和な条件下、高い収率でN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物を製造出来る、工業的に好適なN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の課題は、一般式(1)
【化1】


(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示し、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるケトアセタール化合物とジメチルアミン水溶液を反応させることを特徴とする、一般式(2)
【化2】


(式中、Rは、前記と同義である。)
で示されるN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法に関する。N,N-ジメチルアミノアルケノン化合物は、例えば、医薬・農薬等の合成中間体や原料、写真用薬品等の合成原料として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、N,N-ジメチルアミノアルケノン化合物を製造する方法としては、例えば、4,4-ジメトキシ-2-ブタノンとジメチルアミンとを、メタノール中にて、室温で一晩反応させて、収率85.7%で4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オンを製造する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、工業的に取り扱いづらいジメチルアミン又はそのメタノール溶液を用いている上に、基質濃度が低くなるために反応速度が遅く、目的物の収率が低い等の問題があった。又、4,4-ジメトキシ-2-ブタノンとジメチルアミンのテトラヒドロフランとを、5℃で1時間反応させて、収率95%で4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オンを製造する方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、工業的に取り扱いづらいジメチルアミンのテトラヒドロフラン溶液を用いている上に、低温で反応させなければならない等の問題があった。上記いずれの場合においても、種々の問題があり、工業的な製法としては満足いくものではなかった。
【非特許文献1】Org.Prep.Proc.Int.,16(1),31(1984)
【非特許文献2】J.Org.Chem.,64,3047(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、簡便な方法により、温和な条件下、高い収率でN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物を製造出来る、工業的に好適なN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の課題は、一般式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示し、Rは、炭化水素基を示す。なお、R同士は、互いに結合して環を形成していても良い。)
で示されるケトアセタール化合物とジメチルアミン水溶液を反応させることを特徴とする、一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Rは、前記と同義である。)
で示されるN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、簡便な方法により、高い収率でN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物を製造出来る、工業的に好適なN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の反応において使用するケトアセタール化合物は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0011】
前記の炭化水素基は、置換基を有していても良い。その置換基としては、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0012】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等のアルケニル基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環基;フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;アセチル基、プロピオニル基、アクリロイル基、ピバロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、トルオイル基等のアシル基(アセタール化されていても良い);カルボキシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;トリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基;シアノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0013】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0014】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロへキシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基等の第一アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N-メチル-N-メタンスルホニルアミノ基等の第二アミノ基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基;イミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0015】
前記硫黄原子を介して出来る置換基としては、例えば、メルカプト基;チオメトキシル基、チオエトキシル基、チオプロポキシル基等のチオアルコキシル基;チオフェノキシル基、チオトルイルオキシル基、チオナフチルオキシル基等のチオアリールオキシル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0016】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0017】
又、Rは、炭化水素基であるが、これはRで定義したものと同義である。なお、R同士は、互いに結合して環を形成していても良い。
【0018】
本発明の反応において使用するジメチルアミン水溶液の濃度は、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0019】
前記ジメチルアミンの使用量は、ケトアセタール化合物1モルに対して、ジメチルアミン換算で、好ましくは0.5〜10モル、更に好ましくは0.8〜5molである。
【0020】
本発明の反応は、例えば、ケトアセタール化合物とジメチルアミン化合物を混合して、攪拌する等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10〜50℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0021】
本発明の反応によって得られるN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物は、反応終了後、例えば、抽出、濾過、濃縮、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって単離・精製される。
【実施例】
【0022】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0023】
実施例1(4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オンの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積300mlのフラスコに、4,4-ジメトキシ-2-ブタノン142.7g(1.08mol)と50質量%ジメチルアミン水溶液106.7g(1.18mmol)を加え、攪拌しながら25℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、濃縮物を減圧蒸留(115〜120℃、900Pa)し、薄黄色液体として、4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オン117.1gを得た(単離収率;95%)。
4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オンの物性値は以下の通りであった。
【0024】
1H-NMR(CDCl3,δ(ppm));2.10(3H,s)、2.94(6H,brs)、5.05(1H,d,J=12.7Hz)、7.47(1H,d,J=12.7Hz)
【0025】
実施例2(4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オンの合成)
攪拌装置、温度計及び還流冷却器を備えた内容積100mlのフラスコに、4,4-ジメトキシ-2-ブタノン39.7g(0.30mol)と50質量%ジメチルアミン水溶液29.8g(0.33mmol)を加え、攪拌しながら25℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮した。次いで、得られた濃縮物にトルエン60mlを加えて、再び減圧下で濃縮し、薄黄色液体として、純度95.1%(高速液体クロマトグラフィーによる定量値)の4-(N,N-ジメチルアミノ)-3-ブテン-2-オン34.7gを得た(単離収率;97%)。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、N,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法に関する。N,N-ジメチルアミノアルケノン化合物は、例えば、医薬・農薬等の合成中間体や原料、写真用薬品等の合成原料として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは、置換基を有していても良い炭化水素基を示し、Rは、炭化水素基を示す。)
で示されるケトアセタール化合物とジメチルアミン水溶液を反応させることを特徴とする、一般式(2)
【化2】

(式中、Rは、前記と同義である。)
で示されるN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法。
【請求項2】
ジメチルアミン水溶液の濃度が10〜80質量%である請求項1記載のN,N-ジメチルアミノアルケノン化合物の製法。

【公開番号】特開2006−298873(P2006−298873A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126091(P2005−126091)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】