説明

NANBVの診断用薬およびワクチン

【課題】非A非B型肝炎ウイルス(NANBV)伝染の流行を処置するための材料および方法の提供。
【解決手段】少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列からなるポリペプチド中の部位に免疫学的に結合する、抗C型肝炎ウイルス(HCV)抗体であって、ここで、上記部位は、HCVに対する抗体によって結合され得、そして上記少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列が、アミノ酸配列中に1または数個の欠失、挿入、または置換を有するアミノ酸配列から得られる、抗体の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,非A非B型肝炎ウイルス(NANBV)伝染の流行を処置するための材料および方法に関する。さらに詳しくは,本発明は,NANBVすなわちC型肝炎ウイルス(HCV)の病原因子のゲノム由来のポリヌクレオチドと,そこにコードされたポリペプチドと,これらポリペプチドに対する抗体とに関する。これらの試薬は,HCV およびその感染に対するスクリーニング剤として,ならびにその疾患に対する保護剤として有用である。
【0002】
本出願で引用される文献
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引用される特許
欧州特許出願公開第318,216号
PCT公開第WO89/04669号
米国特許第4,341,761号
米国特許第4,399,121号
米国特許第4,427,783号
米国特許第4,444,887号
米国特許第4,466,917号
米国特許第4,472,500号
米国特許第4,491,632号
米国特許第4,493,890号
【背景技術】
【0003】
非A非B型肝炎(NANBH)は,伝染性の疾患であるか,あるいはウイルスが誘発すると考えられている疾患群およびウイルスに関連する他の形態の肝臓疾患とは区別し得る疾患群に属する。これらの疾患には,周知の肝炎ウイルス(すなわち,A型肝炎ウイルス(HAV),B型肝炎ウイルス(HBV),Δ型肝炎ウイルス(HDV),およびサイトメガロウイルス(CMV)またはエプスタイン−バーウイルス(EBV))により引き起こされる肝炎が包含される。NANBHは輸血した個体において初めて同定された。ヒトからチンパンジーへの伝染およびチンパンジー間における一連の継代は,NANBHが1種または複数種の伝染性感染因子によるという証拠を与えた。
【0004】
疫学的証拠によると,NANBHには次の3つの型があると示唆される:つまり,飲料水媒介の流行型;血液または注射針に関連する型;および散発(集団獲得(communityacquired))型の3つの型である。しかしながら,NANBHの原因となり得る因子の数は知られていない。
【0005】
NANBHの臨床における診断および同定は,他のウイルスマーカーを排除することにより,まず行われてきた。推定されるNANBV抗原および抗体を検出するために用いられる方法には,寒天ゲル拡散法,対向免疫電気泳動法,免疫蛍光顕微鏡法,免疫電子顕微鏡法,放射性免疫検定法,および酵素結合免疫吸着検定法がある。しかしながら,これらの検定法はいずれも,NANBHに関する診断検査として用いるのに充分感度が高く,特異的であり,かつ再現性があるとは示されていない。
これまで,NANBH因子に関連する抗原抗体系の同一性または特異性に関しては,明確ではなく,しかも一致することはなかった。これは,その少なくとも一部は,以下のことが原因であった:つまり,個体におけるHBVの前感染またはNANBVとの同時感染;HBVに関連する溶解性の粒子状抗原の周知の複雑さ;および肝臓細胞のゲノムへのHBV DNAの組込みである。さらに,NANBHが1種より多くの病原因子により引き起こされる可能性,およびNANBHが誤診されてきた可能性がある。また,血漿学的な検定法により,NANBH患者の血清中に何が検出されるかは不明である。寒天ゲル拡散法および対向免疫電気泳動法によれば,血清検体間に時々生じる自己免疫反応または非特異的なタンパク相互作用は検出されるが,特異的なNANBV抗原−抗体反応は示されないと考えられてきた。免疫蛍光法,酵素結合免疫吸着検定法,および放射性免疫検定法によれば,NANBH患者の血清中,ならびに他の肝臓疾患および非肝臓疾患を有する患者においても,しばしば存在するリウマチ因子様物質が低レベルで検出されるようである。検出された反応性のいくつかは,宿主により定まる細胞質抗原に対して抗体を表現し得る。
【0006】
NANBVの候補となるものが,数多く存在している。例えば,Prince(1983),FeinstoneおよびHoofnagle(1984),そしてOverby(1985,1986,1987)による総説,ならびにIwarson(1987)による論文を参照にされたい。しかしながら,これらの候補がNANBHの病原因子に相当するという証拠はない。
【0007】
NANBVのキャリア,およびNANBVで汚染された血液または血液製剤をスクリーニングしかつ同定するための感度が高く特異的な方法が非常に要求されている。輸血後肝炎(PTH)は輸血された患者の約10%において発生する。この場合,90%までがNANBHによる。この疾患における大きな問題は,しばしば慢性的な肝臓損傷へ進行することである(25〜55%)。
【0008】
患者を看護し,血液および血液製剤によるNANBH感染あるいは個体が緊密に接触することにより起こるNANBH感染を予防するために,NANBVに関連する核酸,抗原,および抗体を検出する信頼性の高いスクリーニング手段,診断手段,および予診手段が必要とされている。さらに,この疾患を予防および/または処置するための効果的なワクチンおよび免疫療法剤も必要とされている。
【0009】
出願人は,新しいウイルスであるC型肝炎ウイルス(HCV)を発見したが,このウイルスは血液媒介NANBH(BB−NANBH)の主要な病原因子であることが証明されている。原形HCV単離体であるCDC/HCV1(HCV1とも呼ばれる)の部分ゲノム配列を含む,出願人の最初の研究結果は,欧州特許公開第318,216号(1989年5月31日付で公開)およびPCT公開第WO89/04669号(1989年6月1日付で公開)に記載されている。これらの特許出願およびこれに対応するすべての国内特許出願の開示内容は,本願で参考文献として採用される。これらの出願は,特に,HCV配列をクローン化して発現させる組換えDNA法,HCVポリペプチド,HCV免疫学的診断法,HCVプローブ診断法,抗HCV抗体,ならびに新しいHCV単離体の配列を含む新しいHCV配列を単離する方法について教示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(項目1)
少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列を有するポリペプチドに免疫学的に結合し得る抗C型肝炎ウイルス(HCV)モノクローナル抗体、ここで、上記抗体は、該少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列に結合し、そして該少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列は、以下のアミノ酸配列から得られる:
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
(項目2)
薬学的に受容可能な賦型剤中に、少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列を含む配列を有するポリペプチドを含有するワクチン組成物、ここで、上記少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列は、HCVに対する抗体によって結合され得る少なくとも1つの部位を有し、そして上記少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列は、以下のアミノ酸配列から得られる:
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
(発明の要旨)
本発明は,部分的に,欧州特許出願公開第318,216号またはPCT公開第WO89/04669号に開示されていない新しいHCV配列およびポリペプチドに基づいている。本発明に包含されるのは,特に,免疫学的診断法,プローブ診断法,抗HCV抗体の生産,PCR法,および組換えDNA法におけるこれらの新しい配列およびポリペプチドの応用である。さらに,本発明には,本願で開示されるHCVポリペプチドの免疫原性に基づく新しい免疫学的検定法が含まれる。本願で請求される新規事項は,例えば欧州特許出願公開第318,216号に記載の手法を使用して開発されたが,その公開またはいかなる対応特許にも先行する優先日を有する。従って,本発明は,HCV抗原および抗体について試料をスクリーニングするのに有用な,ならびにHCV感染の処置に有用な,新規な組成物および方法を提供する。
【0019】
従って,本発明のある局面は,HCV cDNAに由来する配列を有する組換えポリヌクレオチドであって,該HCV cDNAは,クローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中にあるか,あるいは該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有する。
【0020】
本発明の他の局面は,HCV cDNA内にコードされたエピトープを有する精製ポリペプチドであって,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有する。
【0021】
本発明のさらに他の局面は,HCV cDNAに由来するDNAのORFを有する組換え発現ベクターで形質転換させた細胞により生産された免疫原性ポリペプチドであって,該HCV cDNAは,クローンCA279a,またはクローンCA74a,またはクローン13i,またはクローンCA290a,またはクローン33C,またはクローン40b,またはクローン33b,またはクローン25c,またはクローン14c,またはクローン8f,またはクローン33f,またはクローン33g,またはクローン39c,またはクローン15eの中のHCV cDNA配列に由来する配列を有し,該ORFは所望の宿主と適合し得る制御配列に対して作動可能なように連結されている。
【0022】
本発明の他の局面は,HCVエピトープを有するペプチドであって,該ペプチドは次式で表される。
AAx−AAy
ここで,xおよびyは図27〜図36に示されているアミノ酸番号を表し,該ペプチドは,AA1−AA25,AA1−AA50,AA1−AA84,AA9−AA177,AA1−AA10,AA5−AA20,
AA20−AA25,AA35−AA45,AA50−AA100,AA40−AA90,AA45−AA65,AA65−AA75,
AA80−AA90,AA99−AA120,AA95−AA110,AA105−AA120,AA100−AA150,
AA150−AA200,AA155−AA170,AA190−AA210,AA200−AA250,AA220−AA240,
AA245−AA265,AA250−AA300,AA290−AA330,AA290−305,AA300−AA350,
AA310−AA330,AA350−AA400,AA380−AA395,AA405−AA495,AA400−AA450,
AA405−AA415,AA415−AA425,AA425−AA435,AA437−AA582,AA450−AA500,
AA440−AA460,AA460−AA470,AA475−AA495,AA500−AA550,AA511−AA690,
AA515−AA550,AA550−AA600,AA550−AA625,AA575−AA605,AA585−AA600,
AA600−AA650,AA600−AA625,AA635−AA665,AA650−AA700,AA645−AA680,
AA700−AA750,AA700−AA725,AA700−AA750,AA725−AA775,AA770−AA790,
AA750−AA800,AA800−AA815,AA825−AA850,AA850−AA875,AA800−AA850,
AA920−AA990,AA850−AA900,AA920−AA945,AA940−AA965,AA970−AA990,
AA950−AA1000,AA1000−AA1060,AA1000−AA1025,AA1000−AA1050,
AA1025−AA1040,AA1040−AA1055,AA1075−AA1175,AA1050−AA1200,
AA1070−AA1100,AA1100−AA1130,AA1140−AA1165,AA1192−AA1457,
AA1195−AA1250,AA1200−AA1225,AA1225−AA1250,AA1250−AA1300,
AA1260−AA1310,AA1260−AA1280,AA1266−AA1428,AA1300−AA1350,
AA1290−AA1310,AA1310−AA1340,AA1345−AA1405,AA1345−AA1365,
AA1350−AA1400,AA1365−AA1380,AA1380−AA1405,AA1400−AA1450,
AA1450−AA1500,AA1460−AA1475,AA1475−AA1515,AA1475−AA1500,
AA1500−AA1550,AA1500−AA1515,AA1515−AA1550,AA1550−AA1600,
AA1545−AA1560,AA1569−AA1931,AA1570−AA1590,AA1595−AA1610,
AA1590−AA1650,AA1610−AA1645,AA1650−AA1690,AA1685−AA1770,
AA1689−AA1805,AA1690−AA1720,AA1694−AA1735,AA1720−AA1745,
AA1745−AA1770,AA1750−AA1800,AA1775−AA1810,AA1795−AA1850,
AA1850−AA1900,AA1900−AA1950,AA1900−AA1920,AA1916−AA2021,
AA1920−AA1940,AA1949−AA2124,AA1950−AA2000,AA1950−AA1985,
AA1980−AA2000,AA2000−AA2050,AA2005−AA2025,AA2020−AA2045,
AA2045−AA2100,AA2045−AA2070,AA2054−AA2223,AA2070−AA2100,
AA2100−AA2150,AA2150−AA2200,AA2200−AA2250,AA2200−AA2325,
AA2250−AA2330,AA2255−AA2270,AA2265−AA2280,AA2280−AA2290,
AA2287−AA2385,AA2300−AA2350,AA2290−AA2310,AA2310−AA2330,
AA2330−AA2350,AA2350−AA2400,AA2348−AA2464,AA2345−AA2415,
AA2345−AA2375,AA2370−AA2410,AA2371−AA2502,AA2400−AA2450,
AA2400−AA2425,AA2415−AA2450,AA2445−AA2500,AA2445−AA2475,
AA2470−AA2490,AA2500−AA2550,AA2505−AA2540,AA2535−AA2560,
AA2550−AA2600,AA2560−AA2580,AA2600−AA2650,AA2605−AA2620,
AA2620−AA2650,AA2640−AA2660,AA2650−AA2700,AA2655−AA2670,
AA2670−AA2700,AA2700−AA2750,AA2740−AA2760,AA2750−AA2800,
AA2755−AA2780,AA2780−AA2830,AA2785−AA2810,AA2796−AA2886,
AA2810−AA2825,AA2800−AA2850,AA2850−AA2900,AA2850−AA2865,
AA2885−AA2905,AA2900−AA2950,AA2910−AA2930,AA2925−AA2950,
AA2945−末端(C’末端)からなる群から選択される。
【0023】
本発明のさらに他の局面は,HCV cDNA内にコードされたエピトープに対するモノクローナル抗体であって,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中に存在する配列である。本発明のさらに他の局面は,HCV cDNA内にコードされたエピトープを有するポリペプチドに対する精製ポリクローナル抗体の調製物であって,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中に存在する配列である。
【0024】
本発明のさらに他の局面は,HCVに対するポリヌクレオチドプローブであって,該プローブは,図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示されるHCV cDNA配列に由来するか,あるいは該HCVcDNA配列の補体に由来するHCV配列を有する。
【0025】
本発明のさらに他の局面は,HCVに由来するポリヌクレオチドの存在について試料を分析するためのキットであって,該キットは約8個またはそれ以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドプローブを有し,該ヌクレオチド配列は図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するHCV cDNAに由来し,該ポリヌクレオチドプローブは適当な容器内にある。本発明の他の局面は,HCV抗原の存在について試料を分析するためのキットであって,該キットはHCV抗原と免疫学的に反応する抗体を有し,該抗原はHCV cDNA内にコードされたエピトープを含み,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいは該HCV cDNAは,クローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中にある。
【0026】
本発明のさらに他の局面は,HCV抗体の存在について試料を分析するキットであって,該キットはHCV cDNA内にコードされたHCVエピトープを含む抗原性ポリペプチドを有し,該HCV cDNAは,図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中にある。
【0027】
本発明の他の局面は,HCV抗体の存在について試料を分析するキットであって,該キットはHCV cDNAから発現された抗原性ポリペプチドを有し,該HCVcDNAは,クローンCA279a,またはクローンCA74a,またはクローン13i,またはクローンCA290a,またはクローン33Cまたはクローン40b,またはクローン33b,またはクローン25c,またはクローン14c,またはクローン8f,またはクローン33f,またはクローン33g,またはクローン39c,またはクローン15eの中にあり,該抗原性ポリペプチドは適当な容器内に存在する。
【0028】
本発明のさらに他の局面は,試料中のHCV核酸を検出する方法であって,該検出方法は,(a)該試料の核酸を,HCVに対するポリヌクレオチドプローブと反応させること;ここで,該プローブはHCV cDNA配列由来のHCV配列を有し,該HCV cDNA配列は図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有し,かつ該反応は該プローブと該試料由来のHCV核酸との間にポリヌクレオチド二本鎖(duplex)を形成させ得る条件下で行われる;および(b)工程(a)で形成された,該プローブを含むポリヌクレオチド二本鎖を検出すること,を包含する。
【0029】
本発明のさらに他の局面は,HCV抗原を検出するための免疫学的検定法であって,該免疫学的検定法は,(a)HCV抗原を含んでいる疑いのある試料を,HCVcDNA内にコードされたHCVエピトープに対する抗体と共にインキュベートすること;ここで,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中に存在する配列であり,かつ該インキュベーションは抗原−抗体複合体を形成させ得る条件下で行われる;および(b)工程(a)で形成された,該抗体を含む抗体−抗原複合体を検出すること,
を包含する。
【0030】
本発明のさらに他の局面は,HCV抗原に対する抗体を検出するための免疫学的検定法であって,該免疫学的検定法は,(a)抗HCV抗体を含んでいる疑いのある試料を,HCVcDNA内にコードされたエピトープを含む抗原ポリペプチドと共にインキュベートすること;ここで,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中に存在する配列であり,かつ該インキュベーションは抗原−抗体複合体を形成させ得る条件下で行われる;および工程(a)で形成された,該抗原ポリペプチドを含む抗体−抗原複合体を検出すること,
を包含する。
【0031】
本発明の他の局面は,HCV感染を処置するためのワクチンであって,該ワクチンはHCV cDNA内にコードされたHCVエピトープを含む免疫原性ポリペプチドを含有し,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローン13i,またはクローン26j,またはクローン59a,またはクローン84a,またはクローンCA156e,またはクローン167b,またはクローンpi14a,またはクローンCA216a,またはクローンCA290a,またはクローンag30a,またはクローン205a,またはクローン18g,またはクローン16jhの中に存在する配列であり,かつ該免疫原性ポリペプチドは薬学的に容認し得る賦形剤中に,薬理学的に効果的な用量で存在する。
【0032】
本発明のさらに他の局面は,HCVに対する抗体を生産する方法であって,該生産方法はHCV cDNA内にコードされたHCVエピトープを含む単離された免疫原性ポリペプチドを個体に投与することを包含し,該HCV cDNAは図27〜図28または図36のヌクレオチド番号−319〜1348または8659〜8866によって示される配列を有するか,あるいはクローンCA279a,またはクローンCA74a,クローン13i,またはクローンCA290a,またはクローン33c,またはクローン40b,またはクローン33b,またはクローン25c,またはクローン14c,またはクローン8f,またはクローン33f,またはクローン33g,またはクローン39c,またはクローン15eの中に存在する配列を有し,かつ該免疫原性ポリペプチドは薬学的に容認し得る賦形剤中に,薬理学的に効果的な用量で存在する。
【0033】
本発明のさらに他の局面は,HCV cDNAに由来するアンチセンスポリヌクレオチドであって,該HCV cDNAは図27〜図36に示されるものである。
【0034】
本発明のさらに他の局面は,精製された融合ポリペプチドC100−3を調製する方法であって,該調製方法は,(a)ポリペプチドC100−3を含む粗製の細胞溶解産物を用意すること,(b)該ポリペプチドを沈澱させる量のアセトンで,該粗製の細胞溶解産物を処理すること,(c)沈澱物を単離して可溶化すること,
(d)アニオン交換クロマトグラフィーによって,該C100−3ポリペプチドを単離すること,および(e)ゲル濾過法によって,工程(d)のC100−3ポリペプチドをさらに単離すること,を包含する。
【0035】
(発明の実施の形態)
I.定義
「C型肝炎ウイルス(hepatitis Cvirus)」という用語は,非A非B型肝炎(NANBH)の従来知られていなかった病原因子に対して,この分野の研究者が保留していた用語である。従って,本願で用いる場合,「C型肝炎ウイルス」(HCV)という用語はNANBHの病原因子を意味し,またこのNANBHは,以前にはNANBVおよび/またはBB−NANBVと呼ばれていたものである。本願では,HCV,NANBV,およびBB−NANBVという用語を互換性のある語として使用する。この用語法を拡張して,以前はNANB肝炎(NANBH)と呼んでいたHCVによって発病する疾患をC型肝炎と呼ぶ。本願では,NANBHとC型肝炎という用語を互換性のある語として使用してもよい。
【0036】
「HCV」という用語は,本願で用いる場合,その病原株がNANBHを発病させるウイルス種,および弱毒化されたウイルス株または後者由来の欠損干渉粒子を意味する。後に述べるように,HCVゲノムは,RNAで構成されている。RNAを含有するウイルスの偶発変異率が比較的高いということが知られており,すなわち組込まれたヌクレオチドあたり10−3〜10−4のオーダーであると報告されている〔フィールズとナイプ(Fields& Knipe)1986年〕。それ故,後に述べるHCV種の中には,毒性または無毒性であり得る多くのウイルス株がある。本願記載の組成物と方法とによって,種々のHCV株または単離体の増殖,同定,検出,および単離を行うことができる。さらに本開示内容によれば,各種ウイルス株に対する診断薬およびワクチンを調製することができ,またHCVの複製を阻害する薬剤のような薬理学的用途の抗ウイルス剤をスクリーニングする手法に有用な組成物および方法が得られる。
【0037】
本願が提供する情報は,HCVの原形株またはHCV単離体〔以後,CDC/HCV1(HCV1とも呼ばれる)と呼ぶ〕に由来するものであり,ウイルス分離学者がこの種に属する他のウイルス株を同定するのに充分なものである。本願が提供する情報によれば,HCVがフラビ様ウイルス(Flavi−likevirus)であることが確認できる。フラビウイルス粒子の形態および組成は公知であり,ブリントン(Brinton,1986年)が考察している。形態については,一般に,フラビウイルス類は,脂質二重層で覆われた中心ヌクレオカプシドを有している。ビリオンは球形であり,その直径は約40〜50nmである。そのコアは直径が約25〜30nmである。ビリオンのエンベロープの外面には,直径が約2nmの末端ノブ(terminal knob)を有する約5〜10nm長の突起を有する。
【0038】
HCVの異なるウイスル株または単離体は,原形単離体HCV1と比較すると,アミノ酸および核酸の変異を含むことが予想される。多くの単離体は,HCV1と比較すると,全アミノ酸配列において高い(すなわち,約40%より高い)相同性を示すことが予想される。しかし,相同性の少ない他のHCV単離体も発見され得る。これらは,サイズがHCV1と類似するポリタンパクをコードする約9,000個のヌクレオチドから約12,000個のヌクレオチドからなるORF,HCV1と類似する疎水性および抗原性を有するコードされたポリタンパク,およびHCV1で保存されている共直線ペプチド配列の存在などの様々な基準に従って,HCV株として同定される。さらに,ゲノムは正鎖(positive−stranded)RNAであろう。
【0039】
HCVは,本願に記載のcDNAが誘導されるHCVゲノム内のエピトープとして免疫学的に同定可能な少なくとも1つのエピトープをコードするが,このエピトープは本願に記載のアミノ酸配列に含まれることが好ましい。このエピトープは,他の公知のフラビウイルス類と比較した場合,HCVに特有のものである。このエピトープの独自性は,抗HCV抗体との免疫学的反応性と,他のフラビウイルス種に対する抗体との免疫学的反応性の欠如とによって決定することができる。免疫学的反応性を決定する方法は当該技術分野では公知であり,例えば,放射性免疫検定法,ELISA法,血球凝集反応法などがあり,分析技術の適切ないくつかの例を本願に示す。
【0040】
上記に加えて,ウイルス株または単離体をHCVとして同定する際に,単独もしくは組合わせて,核酸相同性およびアミノ酸相同性に関する下記のパラメータを利用することができる。HCV株および単離体は,進化論的に関連しているので,ヌクレオチドレベルでのゲノムの全相同性は,おそらく約40%以上であり,おそらく約60%以上で,さらにおそらく約80%以上であり,さらに少なくとも約13個のヌクレオチドからなる対応の連続配列があると考えられる。推定上のHCV株のゲノム配列とCDC/HCV1のcDNA配列との同一性は,当該技術分野で公知の技術によって決定することができる。例えば,推定上のHCV由来のポリヌクレオチドの配列情報と,本願に記載のHCV cDNA配列とを直接比較することによって決定することができる。また例えば,相同領域間に安定な二本鎖を形成する条件下(例えば,S1消化の前に用いられる条件下)でポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションさせ,次いで一本鎖に特異的なヌクレアーゼの一種もしくは複数種で切断し,さらに切断によって生成した断片の大きさを測定することによって決定することができる。
【0041】
HCVのウイスル株または単離体には進化的類縁関係があるので,推定上のHCV株または単離体は,ポリペプチドレベルにおける,その相同性によって同定可能である。一般に,HCV株または単離体は,ポリペプチドレベルで,約40%を越える相同性を,おそらくは約70%を越える相同性を,さらにおそらくは80%を越える相同性を,さらに場合によっては約90%を越える相同性を有すると考えられる。アミノ酸配列の相同性を決定する技術は,当該技術分野で公知である。例えば,アミノ酸配列を直接決定して,本願に示した配列と比較することができる。あるいは,推定上のHCVのゲノム物質のヌクレオチド配列を(通常,cDNA中間体を介して)決定してもよく,これにコードされているアミノ酸配列は決定可能であり,そして対応する領域を比較することができる。
【0042】
本願で使用される場合,指定された配列「由来」のポリヌクレオチドとは,指定されたヌクレオチド配列の領域に対応する少なくとも約6個のヌクレオチド,好ましくは少なくとも約8個のヌクレオチド,さらに好ましくは少なくとも約10〜12個のヌクレオチド,さらに好ましくは少なくとも約15〜20個のヌクレオチドの配列からなるポリヌクレオチド配列を意味する。「対応する」とは,指定された配列に相同的または相補的であることを意味する。上記ポリヌクレオチドが誘導される領域の配列は,HCVゲノムに特有の配列に相同的または相補的であるのが好ましい。ある配列がHCVゲノムに特有のものであるか否かは当業者に公知の技術で決定することができる。例えば,その配列を,データバンク,例えばジーンバンク(Genebank)の配列と比較して,未感染の宿主または他の生物に存在するか否かを決定することができる。また,その配列は,他のウイルス因子(肝炎,例えば,HAV,HBV,およびHDVを誘発することが知られているウイルス因子を含む)の既知配列,ならびにフラビウイルス科のウイルス(Fraviviridae)の他のメンバーと比較することもできる。また,誘導された配列が他の配列と一致しているかまたは一致していないかは,適切な厳密条件下でハイブリダズさせることによって決定することができる。核酸配列の相補性を決定するためのハイブリダイゼーション技術は,当該技術分野で公知であり,後に検討する。例えば,マニアチスら(Maniatiset al,1982年)の文献を参照されたい。さらに,ハイブリダイゼーションによって形成された二本鎖ポリヌクレオチドの不整合も,公知の方法で決定することができる。この方法には,例えば,S1のようなヌクレアーゼによって,二本鎖ポリヌクレオチドの一本鎖領域を特異的に切断する方法がある。代表的なDNA配列が「誘導される」領域は,例えば,特異的なエピトープをコードする領域,ならびに転写されない領域および/または翻訳されない領域を含むが,これに限定されるものではない。
【0043】
誘導されたポリヌクレオチドは,必らずしも,提示されたヌクレオチド配列から物理的に誘導されている必要はなく,いずれの方法により生じてもよい。例えば,化学合成法,DNA複製法,逆転写法,または転写法が挙げられる。さらに,指定された配列の領域に対応する領域の組み合わせは,当該技術分野で公知の方法で改変され,意図する用途に合致させることができる。
【0044】
同様に,指定された核酸の配列「から誘導された(由来の)」ポリペプチドもしくはアミノ酸配列は,上記の配列にコードされているポリペプチドのアミノ酸配列もしくはその一部分(少なくとも3〜5個のアミノ酸,より好ましくは少なくとも8〜10個のアミノ酸,さらに好ましくは少なくとも11〜15個のアミノ酸で構成されている部分)の配列と同じアミノ酸配列を有するポリペプチド,または上記の配列にコードされているポリペプチドとして免疫学的に同定し得るポリペプチドを意味する。
【0045】
組換え体ポリペプチドもしくは誘導されたポリペプチドは,指定された核酸配列,例えば本願で示されるHCV cDNA配列から,またはHCVゲノムから必らずしも翻訳される必要はなく,例えば化学合成法,もしくは組換え体発現系の発現,もしくは変異HCVからの単離を含むいずれの方法でも生成し得る。組換え体ポリペプチドもしくは誘導されたポリペプチドは,その配列内にアミノ酸または非天然アミノ酸の1つまたはそれ以上の類似体を含み得る。アミノ酸の類似体を配列の中に挿入する方法は,当該技術分野で公知である。また,組換え体ポリペプチドもしくは誘導されたポリペプチドは,1つまたはそれ以上の標識を含み得,このことは,当該技術者に公知である。
【0046】
本願で用いる「組換え体ポリヌクレオチド」という用語は,ゲノム,cDNA,半合成,もしくは合成起源のポリヌクレオチドを意味し,その起源もしくは操作によって,(1)このポリヌクレオチドが天然で関連しているポリヌクレオチドの全体もしくは一部分と関連していないもの,(2)このポリヌクレオチドが天然で連結しているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドに連結されているもの,または(3)天然に存在しないものを意味する。
【0047】
本願で用いる「ポリヌクレオチド」という用語は,任意の長さを持ったポリマー形態のヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)を意味する。この用語は,分子の一次構造のみを意味する。したがって,この用語には,二本鎖DNAおよび一本鎖DNA,ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAが含まれる。また,この用語には,既知の改変,例えば当該技術において既知の標識,メチル化,「キャップ」,類似体による1つまたはそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換,ヌクレオチド間の改変,例えば非荷電結合を有するもの(例えば,メチルホスホネート,ホスホトリエステル,ホスホアミデート,カルバメートなど),および荷電結合を有するもの(例えば,ホスホロチオエート,ホスホロジチオエートなど),例えばタンパク(例えば,ヌクレアーゼ,トキシン,抗体,シグナルペプチド,ポリ−L−リジンなど)のようなペンダント部分を含むもの,インターカレーター(intercalators)(例えば,アクリジン,ソラレンなど)を有するもの,キレート化剤(例えば,金属,放射性金属,ホウ素,酸化性金属など)を含むもの,アルキル化剤を含むもの,修飾された結合(例えば,アルファアノマー核酸など),ならびに未修飾形態のポリヌクレオチドが含まれる。
【0048】
「精製されたウイルスポリヌクレオチド」という用語は,ウイルスのポリヌクレオチドが天然で関連するポリペプチドを実質的に含まない,すなわち約50%未満,好ましくは約70%未満,さらに好ましくは約90%未満しか含有しないようなHCVゲノムもしくはその断片を意味する。ウイルス粒子からウイルスポリヌクレオチドを精製する方法は,当該技術分野で公知であり,例えば,ウイルス粒子をカオトロピック剤で破壊する方法,およびイオン交換クロマトグラフィー,アフィニティークロマトグラフィー,および密度による遠心沈降法によってポリヌクレオチドとポリペプチドを分別抽出および分離する方法がある。
【0049】
「精製されたウイルスポリペプチド」という用語は,ウイルスポリペプチドが天然で関連する細胞成分を実質的に含まない,すなわち約50%未満,好ましくは約70%未満,さらに好ましくは約90%未満しか含有してないようなHCVポリペプチドもしくはその断片を意味する。ウイルスポリペプチドを精製する方法は,当該技術分野で公知であり,これらの方法の例については後に考察する。「精製されたウイルスポリヌクレオチド」という用語は,ウイルスのポリヌクレオチドが天然で関連するポリペプチドを実質的に含まない,すなわち約20%未満,好ましくは約50%未満,さらに好ましくは約70%未満しか含有しないような,HCVゲノムもしくはその断片を意味する。ウイルス粒子からウイルスポリヌクレオチドを精製する方法は,当該技術分野で公知であり,例えば,ウイルス粒子をカオトロピック剤で破壊する方法,およびイオン交換クロマトグラフィー,アフィニティークロマトグラフィー,および密度による遠心沈降法によってポリヌクレオチドとポリペプチドを分離する方法がある。
【0050】
単細胞因子として培養される微生物もしくは高等真核細胞系を示す「組換え体宿主細胞」,「宿主細胞」,「細胞」,「細胞系」,「細胞培養物」などの用語は,組換え体ベクターもしくは他の転移DNAの受容体として使用可能か,または使用されてきた細胞を意味し,トランスフェクトされた元の細胞の後代が含まれる。単一の親細胞の後代は,天然の,偶発的または計画的な変異によって,形態,またはゲノムもしくは全DNAの相補性が元の親細胞と,必らずしも完全に同一でなくてもよい。
【0051】
「レプリコン」には,例えばプラスミド,染色体,ウイルス,コスミッドなどの遺伝子構成成分などが含まれ,細胞内でポリヌクレオチドの複製の自律的な単位として挙動する,すなわち自ら制御しながら複製を行うことができる,あらゆる遺伝要素である。
【0052】
「ベクター」は,他のポリヌクレオチドのセグメントが結合しているレプリコンであって,複製を行い,および/または結合しているセグメントを発現する。「制御配列」は,ある種のポリヌクレオチド配列を意味し,この配列が連結しているコード配列を発現させるのに必要なものである。このような制御配列の性質は,宿主の生物によって異なる。このような制御配列としては,原核細胞内では,一般に,プロモーター,リボソーム結合部位,およびターミネーターが含まれ,真核細胞内では,一般に,プロモーター,ターミネーター,および場合によってはエンハンサーが含まれる。「制御配列」という用語は,最小限発現に必要なすべての要素を包含し,さらに発現に有利な追加の要素,例えばリーダー配列を包含し得る。
【0053】
「作動可能に連結された」という用語は,上記のような要素が,意図した方式で機能し得るような関係に並置されていることを意味する。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は,制御配列に適合した条件下でこのコード配列の発現が達成されるように,連結される。
【0054】
「オープンリーディングフレーム」(ORF)は,ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の領域であり,この領域は,コード配列の一部またはコード配列全体を意味する。
【0055】
「コード配列」は,適切な調節配列の制御下に置かれた場合に,mRNAに転写され,および/またはポリペプチドに翻訳されるポリヌクレオチド配列である。コード配列の境界は,5’末端の翻訳開始コドンと,3’末端の翻訳停止コドンとによって決定される。コード配列は,mRNA,cDNA,および組換え体ポリヌクレオチド配列を包含し得るが,これらに限定されるものではない。
【0056】
「免疫学的に…として同定可能な」という用語は,指定されたポリペプチド,通常はHCVタンパク内に存在するエピトープおよびポリペプチドが存在することを意味する。免疫学的な同一性は,抗体の結合および/または競合的結合によって決定され得るが,これらの方法は当業者には公知であり,後述する。
【0057】
本願で用いる「エピトープ」という用語は,ポリペプチドの抗原決定基を意味する。エピトープは,このエピトープに特有の立体配座で3個のアミノ酸を有し得るが,エピトープは,一般に少なくとも5個のこのようなアミノ酸で構成され,より一般的には少なくとも8〜10個のこのようなアミノ酸で構成されている。アミノ酸の立体配座の決定法は,当該技術分野では公知であり,例えば,X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴法がある。
【0058】
ポリペプチドは,このポリペプチドに含まれている特異的なエピトープが抗体を認識することによって,この抗体と結合する場合に,抗体と「免疫学的に反応性がある」という。免疫学的反応性は,抗体結合反応,特に抗体結合反応の速度論,および/または抗体に対するエピトープを含む公知のポリペプチドを,競合物として用いる競合的結合法によって決定される。ポリペプチドが抗体と免疫学的に反応性であるか否かを決定する方法は,当該技術分野で公知である。
【0059】
本願で用いる,「免疫原性を有するポリペプチド」という用語には,アジュバンドの存在下または不存在下で,単独でまたは担体に連結して細胞性応答および/または体液性応答を誘導するポリペプチドが包含される。
【0060】
「ポリペプチド」という用語は,アミノ酸の重合体を意味し,特定の長さの生産物を意味しない。したがって,ポリペプチドの定義には,ペプチド,オリゴペプチド,およびタンパクが包含される。また,この用語は,ポリペプチドの発現後修飾物,例えば,グリコシル化物,アセチル化物,リン酸化物などを意味しないか,あるいは除外する。この定義に包含されるものは,例えば,アミノ酸(例えば,非天然のアミノ酸などを含む)の1つかまたはそれ以上の類似体を含むポリペプチド,置換された結合ならびに当該技術分野で公知の天然に存在するおよび天然に存在しない他の改変を有するポリペプチドである。
【0061】
本願で用いる「形質転換」という用語は,外因性ポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することを意味する。なお,挿入法は,どんな方法でもよく,例えば,直接取込み法,形質導入法,f−交配法,またはエレクトロポレーション法がある。外因性ポリヌクレオチドは,組込まれていないベクター,例えば,プラスミドとして保持されていても,あるいは宿主ゲノムに組込まれていてもよい。
【0062】
本願で用いる「処置」という用語は,予防および/または治療を意味する。
【0063】
本願で用いる「個体」という用語は,脊椎動物,特に哺乳動物種のメンバーを意味し,家畜,競技用動物,およびヒトを含む霊長動物を包含するが,これに限定されるものではない。
【0064】
本願で用いる,核酸の「センス鎖」は,mRNAに相同的な配列を有する配列を含む。「アンチセンス鎖」は,「センス鎖」と相補的な配列を含む。
【0065】
本願で用いる,ウイルスの「正鎖ゲノム」は,RNAまたはDNAにかかわらず,一本鎖のゲノムであり,ウイルスのポリペプチドをコードする。正鎖RNAウイルスの例としては,トガウイルス科ウイルス(Togaviridae),コロナウイルス科ウイルス(Coronaviridae),レトロウイルス科ウイルス (Retroviridae),ピコルナウイルス科ウイルス(Picorna−viridae),およびカリチウイルス科ウイルス(Caliciviridae)がある。また,フラビウイルス科ウイルス(Flaviviridae)も含まれるが,これは以前にはトガウイルス科に分類されていた〔フィールドとナイプの文献(1986年)を参照されたい〕。
【0066】
本願で用いる「抗体を含有する身体成分」は,問題の抗体の起源である個体の身体の成分を意味する。抗体を含有する身体成分は,当該技術分野で公知であり,例えば,血漿,血清,脊髄液,リンパ液,呼吸器官と腸管と尿生殖器管の外側部分,涙,唾液,乳,白血球,および骨髄腫細胞が含まれるが,これに限定されるものではない。
【0067】
本願で用いる「精製されたHCV」は,ウイルスが通常関連する細胞構成要素から単離された,および感染組織中に存在する他の種のウイルスから単離されたHCV調製物を意味する。ウイルスを単離する技術は,当業者には公知であり,例えば,遠心分離法およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれるが,精製HCVの調製方法については後述する。
【0068】
本願で用いる「HCV粒子」という用語には,全ビリオンおよびビリオン形成時に中間体となる粒子が包含される。HCV粒子は,一般に,HCV核酸に関連する1つまたはそれ以上のHCVタンパクを有する。
【0069】
本願で用いる「プローブ」という用語は,このプローブにおける少なくとも1つの配列が標的領域の配列に対して相補性を有するので,この標的領域の配列とハイブリッド構築物を形成するポリヌクレオチドを意味する。しかし,このプローブは,ポリメラーゼ鎖反応のプライマーとして使用される配列に相補的な配列を含まない。
【0070】
本願で用いる「標的領域」という用語は,増幅および/または検出されるべき核酸の領域を意味する。
【0071】
本願で用いる,HCV RNAを含む「ウイルスRNA」という用語は,ウイルスゲノム,その断片,その転写物,およびそれに由来する変異配列由来のRNAを意味する。本願で用いる「生物学的試料」は,個体から単離された組織または体液の試料を意味し,それには,例えば血漿,血清,脊髄液,リンパ液,皮膚と呼吸器官と腸管と尿生殖器官の外側部分,涙,唾液,乳,血液細胞,腫瘍,器官,およびインビトロでの細胞培養構成物(細胞培養培地で細胞を増殖させて得られる馴化培地,ウイルス感染したと推定される細胞,組換え細胞,および細胞成分を包含するが,それに限定されない)の試料を包含するが,それに限定されない。
【0072】
II.発明の構成
本発明の実施においては,特に指示されない限り,当該分野の技術範囲内にある分子生物学,微生物学,組換えDNA,および免疫学における従来の手法が採用される。このような手法は,文献中に詳しく説明されている。例えば,次の文献を参照されたい:Maniatis,FitschおよびSambrook,MOLECULAR CLONING;A LABORATORY MANUAL(1982);DNA CLONING,I巻およびII巻(D.N Glover編集,1985);OLIGONUCLEOTIDESYNTHESIS(M.J.Gait 編集,1984);NUCLEIC ACID HYBRIDI−ZATION(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編集,1984);TRANSCRIPTIONANDTRANSLATION(B.D.Hamesおよび S.J.Higgins 編集,1984);ANIMAL CELL CULTURE(R.I.Freshney編集,1986);IMMOBILIZED CELLS AND ENZYMES(IRLPress,1986);B.Perbal,A PRACTICAL GUIDE TOMOLECULAR CLONING(1984);METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ(AcademicPress,Inc.);GENE TRANSFERVECTORS FOR MAMMALIAN CELLS(J.H.MillerおよびM.P.Calos編集,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods inEnzymology Vol.154およびVol.155(それぞれWuおよびGrossman;Wu編集),MayerおよびWalker編集(1987);IMMUNOCHEMICAL METHODS IN CELLAND MOLECULARBIOLOGY(Academic Press,London),Scopes,(1987);
PROTEINPURIFICATION:PRINCIPLES AND PRACTICE,Second Edition(Springer−Verlag,N.Y.),およびHANDBOOKOF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY,I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編,1986)。ここで述べられる前出および後述の全ての特許,特許出願および刊行物は参考文献としてここに取り入れられている。
【0073】
本発明の有用な材料および方法は,HCV cDNA配列を含むcDNAライブラリーから単離されたヌクレオチド配列群の供給により可能になる。これらのcDNAライブラリーは,HCV感染チンパンジーの血漿中に存在する核酸配列に由来する。これらのライブラリーの1つ,「c」ライブラリー(ATCC No.40394)の構築は欧州特
許出願公開第318,216号に報告された。ここに報告されているHCVcDNAを含むクローンのいくつかは「c」ライブラリーから得られた。ここに報告されている他のクローンは他のHCV cDNAライブラリーから得られたが,これらの配列を含むクローンが「c」ライブラリーに存在することが確認された。欧州特許出願公開第318,216号で考察されているように,「c」ライブラリーから単離されたHCV cDNA配列群は,ヒトあるいはチンパンジーを起源とするものではなく,HBVゲノム内に含まれる配列に有意な相同性を示さない。
【0074】
ここに記載されているHCV cDNAが入手可能であるので,供給血液を含む生物学的試料におけるウイルス性のポリヌクレオチドを検出するのに有用な試薬であるポリヌクレオチドプローブの構築を行うことが可能となる。例えば,これらの配列から,約8〜10個あるいはそれより長いヌクレオチドを有するDNAオリゴマーを合成することが可能である。これらのDNAオリゴマーは,例えば供給血液,ウイルスを保有している疑いがある被験者血清,あるいはウイルスが複製している細胞培養組織におけるHCV RNA の存在を検出するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。さらに,cDNA配列により,HCV感染において生じる抗体の存在を検出する診断用試薬として有用なHCVに特異的なポリペプチドの設計および生産が可能となる。cDNA由来の精製ポリペプチドに対する抗体は,例えば,供給血液の試料,NANBH患者からの血清を含む生物学的試料における,HCVcDNAの複製に使用される組織培養系におけるウイルス抗原を検出するためにも用いられ得る。さらに,図27〜図36に示されているHCV cDNAのORFの一部分にコードされた免疫原性ポリペプチドであって,ここに開示されている免疫原性ポリペプチドも,HCVスクリーニング,診断,および処置のために,またこれらの目的に有用な抗体を産生させるのに役立つ。
【0075】
さらに,ここに記載された新しいcDNA配列は,HCVゲノムをより特徴づけることを可能にする。これらの配列から得られたポリヌクレオチドプローブおよびプライマーは,cDNAライブラリーに存在する配列を増幅するのに,および/または重複している付加的なcDNA配列についてcDNAライブラリーをスクリーニングするために用いられ得る。このcDNA配列はさらに重複している別の配列を得るためにも用いられ得る。以下に述べるように,および欧州特許出願公開第318,216号において述べられているように,HCVゲノムは,大きいポリタンパクをコードする大きいオープンリーディングフレーム(ORF)から主としてなるRNAであるようである。
【0076】
ここに与えられているHCV cDNA配列群,これらの配列に由来するポリペプチド,ここに記載されている免疫原性ポリペプチド,そして,これらポリペプチドに対する抗体は,血液媒介NABV(BB−NANBV)因子の単離および同定にも有用である。例えば,cDNA由来のポリペプチドに含まれるHCVエピトープに対する抗体は,アフィニティークロマトグラフィーに基づく方法によってウイルスを単離するために用いられ得る。あるいは,これらの抗体は他の手法により単離されたウイルス粒子を同定するために用いられ得る。単離されたウイルス粒子内のウイルス抗原およびゲノム物質が,さらに特徴づけられ得る。
【0077】
上記のことに加えて,以下に与えられている情報により,付加的なHCV株あるいは単離体の同定が行われる。付加的なHCV株あるいは単離体の単離および特徴付けは,ウイルス分子および/またはウイルスRNAを含む身体成分から核酸を単離し,後述のHCV cDNAプローブに基づくポリヌクレオチドプローブを使用してcDNAライブラリーを作成し,後述のHCV cDNA配列を含むクローンについてライブラリーをスクリーニングし,そして新しい単離体からのHCV cDNAを後述のcDNAと比較することにより,達成され得る。そこにあるいはウイルスゲノム内にコードされたポリペプチドは,上記したポリペプチドおよび抗体を使用して,免疫学的交差反応についてモニターされ得る。HCVのパラメーターに適合する株および単離体は,上記の定義部分に記載されているように,容易に同定することができる。ここに与えられている情報に基づき,HCV株を同定する他の方法は,当業者に明らかである。
【0078】
HCV cDNA配列の単離
以下に述べる新しいHCV cDNA配列は,cDNAの配列を,欧州特許出願公開第318,216号で報告されているHCVゲノムにまで拡張した。クローンb114a,18g,ag30a,CA205a,CA290a,CA216a,pi14a,CA167b,CA156e,CA84a,およびCA59aに存在する配列は,報告された配列の上流にあり,合わせると,ヌクレオチド番号−319〜1348の複合HCV cDNA配列となる。(ヌクレオチド上の負の数字は,推定されるMET開始コドンから始まるヌクレオチドの上流側の距離を示す)クローンb5aおよびクローン16jhに存在する配列は報告された配列の下流にあり,複合配列のヌクレオチド番号8659〜8866を与える。上記クローンにおける配列を含む複合HCV cDNA配列は,図27〜図36に示されている。
【0079】
ここに記載された新しいHCV cDNAは,λgtll(ATCC No.40394)に存在する「c」ライブラリーを含む多くのHCV cDNAライブラリーから単離された。HCV cDNAライブラリーは,慢性HCV感染チンパンジーから,高力価のウイルスを,つまり少なくとも106チンパンジー感染量/ml(CID/ml)のウイスルを有するプール血清を使用して構築された。プール血清はウイルス粒子を単離するために使用された。これらの粒子から単離された核酸は,ウイルスゲノムに対するcDNAライブラリーの構築において鋳型として使用された。推定されるHCV粒子の単離および「c」HCV cDNAライブラリー構築のための手法は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されている。HCV cDNAライブラリーを構築する他の方法は当技術分野で公知であり,これらの方法のいくつかは以下の実施例に記載されている。配列の単離は合成ポリヌクレオチドプローブを使用してライブラリーをスクリーニングすることによって行われた。その配列は既知のHCV cDNA配列の5’領域および3’領域から誘導された。cDNA配列を得るための方法の記述は,歴史的に最も興味深い。得られた配列(およびその相補配列)は,ここに与えられており,その配列あるいはその部分的な配列は,合成法を用いて,あるいは合成法とここに記載したのと同様の方法を用いた部分配列を得る方法とを組み合わせて調製され得る。
【0080】
ウイルス性ポリペプチドおよび断片の調製
HCV cDNA配列あるいはそれらに由来するヌクレオチド配列(この配列のセグメントおよび修飾配列を含む)を利用することにより,いずれかの鎖にコードされているポリペプチドの抗原的に活性な領域をコードする発現ベクターの構築が可能となる。これらの抗原的に活性な領域は,コートまたはエンベロープ(外被)抗原,あるいはコア抗原,または非構造的な抗原由来であり得,それには例えば,ポリヌクレオチド結合タンパク,ポリヌクレオチドポリメラーゼ,およびウイルス粒子の複製および/または構築(assembly)に必要とされる他のウイルス性タンパクが包含される。所望のポリペプチドをコードする断片は,従来の制限消化法を用いて,あるいは合成法により,cDNAクローンから誘導され,例えばβ−ガラクトシダーゼあるいはスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)(好ましくは,SOD)のような融合配列の一部を有するベクター中に連結される。SODの融合配列を有するポリペプチドの生産に有用な方法およびベクターは,1986年10月1日付でに公開された欧州特許出願公開番号第0196056号に記載されている。多くのHCVクローンにコードされているSODおよびHCVポリペプチドからなる融合ポリペプチドを発現させるためのベクターは以下の実施例に記載されている。どちらのセンス鎖においても,オープンリーディングフレームを有するHCVcDNAの所望部分は,成熟タンパクあるいは融合タンパクのような組換えポリペプチドとして得られる。あるいは,このcDNAにコードされているポリペプチドは,化学合成により与えられ得る。
【0081】
所望のポリペプチドをコードするDNAは,融合型であっても成熟型であっても,分泌を可能にするシグナル配列を有していてもいなくても,適当な宿主に適した発現ベクターに組み込まれ得る。真核生物および原核生物の両宿主系が,組換えポリペプチドを形成するために現在用いられている。より一般的な制御系および宿主細胞系を,後にまとめて示す。このポリペプチドは,次に,溶解した細胞あるいは培養培地から単離され,意図された使用に必要な程度にまで精製される。精製には,当該技術分野で公知の手法が用いられ得,それには例えば,分別抽出,塩分画,イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィー,アフィニティクロマトグラフィー,遠心分離などがある。例えば,種々のタンパク精製法に関するMethods inEnzymologyを参照されたい。このようなポリペプチドは,診断用薬として用いられ得るか,あるいは中和抗体を生じるようなポリペプチドはワクチンに処方され得る。これらのポリペプチドに対して生じた抗体もまた,診断用薬として,あるいは受動免疫治療に用いられ得る。さらに,後述するように,これらポリペプチドに対する抗体は,HCV粒子の単離および同定に有用である。
【0082】
抗原性ポリペプチドの調製および担体との結合
ポリペプチドの抗原性領域は,通常は比較的小さく,代表的には8〜10個あるいはそれを下まわる長さのアミノ酸である。5個程度のアミノ酸からなる断片が抗原性領域を特徴付けている。これらのセグメントは,HCV抗原領域に対応している。従って,このHCVのcDNAを基礎として用いると,HCVポリペプチドの短いセグメントをコードするDNAを,融合タンパクとして,あるいは単離ポリペプチドとして,組換え手法により発現させることができる。さらに,短いアミノ酸配列は,化学合成によって都合よく得ることができる。合成ポリペプチドが正しいエピトープを与えるように正しく形成されているが,小さすぎて免疫原性がない場合には,このポリペプチドを,適当な担体に結合させればよい。
【0083】
このような結合を得るための多くの方法が当該分野で公知であり,それには,PierceCompany,Rockford,Illinoisから入手されるN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)およびスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)を用いてジスルフィド結合を形成する方法が包含される(このペプチドがスルフヒドリル基を欠いていれば,システイン残基を付加することにより,この基が与えられ得る)。これらの試薬は,その試薬自身と,一方のタンパクのペプチドシステイン残基との間のジスルフィド結合を形成し,かつリジンのε−アミノあるいは他方の他の遊離アミノ基によるアミド結合を形成する。このような様々なジスルフィド/アミド形成試薬は公知である。例えば,Immun.Rev.(1982)62:185を参照されたい。他の二官能性カップリング試薬は,ジスルフィド結合よりむしろチオエーテルを形成する。これらのチオエーテル形成試薬の多くは市販されており,それには6−マレイミドカプロン酸,2−ブロモ酢酸,2−ヨード酢酸,4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸などの反応性エステルが包含される。これらのカルボキシル基は,そのカルボキシル基とコハク酸イミドとを,あるいは1−ヒドロキシル−2−ニトロ−4−スルホン酸ナトリウム塩とを組み合わせることによって活性化され得る。抗原を結合する付加的な方法は欧州特許出願公開第259,149号に記載されたロタウイルス/「結合ペプチド」システムを使用しており,その開示内容は参照としてここに記載されている。上に列挙したものは,それが全てであることを意味せず,列挙した化合物の修飾物もまた明らかに用いられ得る。
【0084】
担体としては,それ自身が宿主に対して有害な抗体の生産を誘導しないものであれば,いずれの担体も用いられ得る。適当な担体は,典型的には,大きく,ゆっくり代謝される高分子物質であり,それには例えば,タンパク;ラテックス機能付与セファロース,アガロース,セルロース,セルロースビーズなどの多糖体;ポリグルタミン酸,ポリリジンなどのような重合アミノ酸;アミノ酸共重合体;および不活性ウイルス粒子がある。特に有用なタンパク基質には,血清アルブミン,キーホールリンペットヘモシアニン,免疫グロブリン分子,チログロブリン,卵アルブミン,テタヌス毒素,および当業者に公知の他のタンパクがある。
【0085】
全長のウイルス性タンパクの他に,少なくとも1つのウイルス性エピトープをコードする切形のHCVアミノ酸配列を有するポリペプチドは有用な免疫学的試薬である。例えば,このような切形配列を有するポリペプチドは免疫学的検定法の試薬として使用され得る。これらのポリペプチドは,抗血清を生産するための組成物あるいはワクチンにおけるサブユニット抗原の候補である。これらの切形配列は,天然のウイルス性タンパクについて知られている様々な処理を施すことにより調製され得るが,一般的には,HCV配列を有する合成あるいは組換えポリペプチドを作成するのが好ましい。これらの切形HCV配列を有するポリペプチドは,完全にHCV配列(連続のあるいは不連続の1つまたはそれ以上のエピトープ)あるいは融合タンパクにおけるHCV配列および異種配列から構成され得る。有用な異種配列には,組換え宿主からの分泌,HCVエピトープの免疫学的な反応を高める配列,あるいは免疫学的検定用支持体あるいはワクチン担体へのポリペプチドの結合を促進する配列がある。例えば,欧州特許出願公開第116,201号,米国特許第4,722,840号,欧州特許出願公開第259,149号,米国特許第4,629,783号を参照されたい。その開示内容は参考として,ここに取り入れられている。
【0086】
切形のHCV配列を有するポリペプチドのサイズは,非常に様々であり,最大サイズは重要ではないが,最小サイズはHCVエピトープを与えるのに充分なサイズの配列である。便宜的には,最大サイズは,通常,所望のHCVエピトープと,もしあるなら異種配列の機能とを与えるのに必要とされるサイズを実質的に越えることはない。典型的には,切形のHCVアミノ酸配列は約5〜約100の範囲内のアミノ酸長になる。しかし,さらに典型的には,HCV配列は,最大約50のアミノ酸長になり,最大約30のアミノ酸長が好ましい。通常,少なくとも約10,12,あるいは15個のアミノ酸,最大約20〜25個のアミノ酸からなるHCV配列を選択するのが望ましい。
【0087】
エピトープを有する切形のHCVアミノ酸配列は多くの方法で同定され得る。例えば,全ウイルスタンパク配列は全タンパク配列を互いに補完する一連の短かいペプチドを調製することによってスクリーニングされ得る。HCVポリタンパク領域を抗原性によってスクリーニングする例が後に示されている。さらに,例えば100merのポリペプチドから始めることにより,所望の反応性を示すエピトープの存在について各ポリペプチドを調べ,次いで,問題のエピトープの位置を決定するために,同定された100mer由来の次第に小さくなり重複している断片を調べることは通常の操作である。免疫学的検定法において,このようなペプチドをスクリーニングすることは,当該分野の技術範囲内である。タンパク配列のコンピュータ分析を行って,可能性のあるエピトープを同定し,次いでスクリーニング用の同定領域を含むオリゴヌクレオチドを調製することも知られている。このようなHCVアミノ酸配列のコンピュータ分析は図43〜図48に示されている。この図において,親水性/疎水性は,抗原指数の上部に示されている。アミノ酸は,図27〜図36に示すように,開始MET(1位)から番号付けされている。このような抗原性のコンピューター分析により,必ずしも実際に存在しているエピトープを同定することはできず,エピトープを有しているものとしてタンパク領域を間違って同定することも有り得ることは,当業者により認められている。
【0088】
有用で有り得るHCVアミノ酸配列の例は,クローン5−1−1,81,CA74a,35f,279a,C36,C33b,CA290a,C8f,C12f,14c,15e,C25c,C33c,C33f,33g,C39c,C40b,CA167bからなる発現ベクターから発現されるものであり,以下に説明されている。ここに記載されているように,有用で有り得るHCVアミノ酸配列の他の例については,以下で説明する。これらのペプチドは,1つのエピトープを必ずしも正確に位置づけるとは限らないし,免疫原性ではないHCV配列を含有し得ると理解されるべきである。この配列の免疫原性を有さないこれらの部分は,上記のように従来の方法を使用して特定され,記載した配列から削除され得る。さらに,エピトープを含むかあるいは免疫原性を有する付加的な切形のHCVアミノ酸配列は,上記のように同定され得る。以下の配列はアミノ酸番号(すなわち,「AAn」)によって与えられる。ここで,図27〜図36に示すように,nはアミノ酸番号である:
AA1−AA25;AA1−AA50; AA1−AA84; AA9−AA177; AA1−AA10;AA5− AA20; AA20−AA25;
AA35−AA45;AA50−AA100; AA40−AA90; AA45−AA65; AA65−AA75; AA80−AA90;
AA99−AA120;AA95−AA110; AA105−AA120; AA100−AA150; AA150−AA200;
AA155−AA170;AA190−AA210; AA200−AA250; AA220−AA240; AA245−AA265;
AA250−AA300;AA290−AA330; AA290−305; AA300−AA350; AA310−AA330;
AA350−AA400;AA380−AA395; AA405−AA495; AA400−AA450; AA405−AA415;
AA415−AA425;AA425−AA435; AA437−AA582; AA450−AA500; AA440−AA460;
AA460−AA470;AA475−AA495; AA500−AA550; AA511−AA690; AA515−AA550;
AA550−AA600;AA550−AA625; AA575−AA605; AA585−AA600; AA600−AA650;
AA600−AA625;AA635−AA665; AA650−AA700; AA645−AA680; AA700−AA750;
AA700−AA725;AA700−AA750; AA725−AA775; AA770−AA790; AA750−AA800;
AA800−AA815;AA825−AA850; AA850−AA875; AA800−AA850; AA920−AA990;
AA850−AA900;AA920−AA945; AA940−AA965; AA970−AA990; AA950−AA1000;
AA1000−AA1060;AA1000−AA1025; AA1000−AA1050; AA1025−AA1040;
AA1040−AA1055;AA1075−AA1175; AA1050−AA1200; AA1070−AA1100;
AA1100−AA1130;AA1140−AA1165; AA1192−AA1457; AA1195−AA1250;
AA1200−AA1225;AA1225−AA1250; AA1250−AA1300; AA1260−AA1310;
AA1260−AA1280;AA1266−AA1428; AA1300−AA1350; AA1290−AA1310;
AA1310−AA1340;AA1345−AA1405; AA1345−AA1365; AA1350−AA1400;
AA1365−AA1380;AA1380−AA1405; AA1400−AA1450; AA1450−AA1500;
AA1460−AA1475;AA1475−AA1515; AA1475−AA1500; AA1500−AA1550;
AA1500−AA1515;AA1515−AA1550; AA1550−AA1600; AA1545−AA1560;
AA1569−AA1931;AA1570−AA1590; AA1595−AA1610; AA1590−AA1650;
AA1610−AA1645;AA1650−AA1690; AA1685−AA1770; AA1689−AA1805;
AA1690−AA1720;AA1694−AA1735; AA1720−AA1745; AA1745−AA1770;
AA1750−AA1800;AA1775−AA1810; AA1795−AA1850; AA1850−AA1900;
AA1900−AA1950;AA1900−AA1920; AA1916−AA2021; AA1920−AA1940;
AA1949−AA2124;AA1950−AA2000; AA1950−AA1985; AA1980−AA2000;
AA2000−AA2050;AA2005−AA2025; AA2020−AA2045; AA2045−AA2100;
AA2045−AA2070;AA2054−AA2223; AA2070−AA2100; AA2100−AA2150;
AA2150−AA2200;AA2200−AA2250; AA2200−AA2325; AA2250−AA2330;
AA2255−AA2270;AA2265−AA2280; AA2280−AA2290; AA2287−AA2385;
AA2300−AA2350;AA2290−AA2310; AA2310−AA2330; AA2330−AA2350;
AA2350−AA2400;AA2348−AA2464; AA2345−AA2415; AA2345−AA2375;
AA2370−AA2410;AA2371−AA2502; AA2400−AA2450; AA2400−AA2425;
AA2415−AA2450;AA2445−AA2500; AA2445−AA2475; AA2470−AA2490;
AA2500−AA2550;AA2505−AA2540; AA2535−AA2560; AA2550−AA2600;
AA2560−AA2580;AA2600−AA2650; AA2605−AA2620; AA2620−AA2650;
AA2640−AA2660;AA2650−AA2700; AA2655−AA2670; AA2670−AA2700;
AA2700−AA2750;AA2740−AA2760; AA2750−AA2800; AA2755−AA2780;
AA2780−AA2830;AA2785−AA2810; AA2796−AA2886; AA2810−AA2825;
AA2800−AA2850;AA2850−AA2900; AA2850−AA2865; AA2885−AA2905;
AA2900−AA2950;AA2910−AA2930; AA2925−AA2950; AA2945−末端(C’末端)
上記HCVアミノ酸配列は,別々のペプチドとして調製されるが,あるいはより大きなペプチドに合体させ得る。そして,これらのHCVアミノ酸配列については,ここに記載したような用途が見い出される。切形のHCV配列を有する付加的なポリペプチドは,実施例に記載されている。
【0089】
HCVの推定ポリタンパクおよびフラビウイルスとの間に見られる関係により,HCV「非構造」(NS)タンパクの推定領域にについて,ある示唆が与えられる。推定フラビウイルス前駆体ポリタンパクにおける個々のNSタンパクの位置は,かなりよく知られている。さらに,これらはまた,ポリタンパクの疎水性プロファイルにおいて観察された全体の変動と一致する。フラビウイルスのNS5が,ビリオンポリメラーゼをコードすること,およびNS1が,動物の効果的なワクチンであると示されている補体結合抗原と一致することは確立されている。最近,フラビウイルス性のタンパク分解酵素機能がNS3にあることが示された。HCVとフラビウイルスとの間には,以下に述べるように,類似性が認められるので,HCVポリタンパクにおいて,対応するタンパク領域の大体の位置および機能を推理することが可能である。例えば,細菌,酵母,昆虫,および脊椎動物の細胞を包含する様々な組換え宿主細胞において,このような領域を有するポリペプチドを発現させることにより,診断,検出,およびワクチンに使用され得る重要な免疫学的試薬が得られるはずである。
【0090】
ここに記載されたHCV単離体およびフラビウイルスの推定ポリタンパクの非構造タンパク領域には,ある程度の類似性が見られるが、N末端に向かう推定の構造領域間には,類似性が少ない。この領域では,配列により多くの相違が存在し,さらに,これら2つの領域の疎水性プロファイルには類似性が少ない。このような「相違」は,HCVにおける推定NS1領域のN末端領域に始まり,推定N末端まで延びている。それにもかかわらず,HCVポリタンパク内の推定ヌクレオカプシド(N末端基本領域)およびE(一般的に疎水性の)領域の大体の位置を予想することができる。実施例では,これらの予想は,HCVポリタンパクの疎水性プロファイルに見られる変化と,フラビウイルスタンパクの位置および特性に関する知識とに基づいている。このような予想から,有用な免疫学的試薬となり得るHCVポリタンパクの大体の領域を同定し得る。例えば,フラビノウイルスのEおよびNS1タンパクが保護ワクチンとして効力があることが知られている。ここに記載されたHCV単離体において抗原性を有することが示されている領域,例えば推定NS3,C,およびNS5などの領域だけでなく,これらの領域も,診断試薬を与えるはずである。さらに,ウイルスにコードされた酵素の位置付けおよび発現により,抗ウイルス酵素阻害剤,すなわち,例えば,酵素自体との相互作用により酵素活性を妨げる阻害剤,あるいは酵素の発現を妨げ得る物質(例えば,アンチセンスRNA,または発現を妨げ得る他の薬剤)を評価し得る。
【0091】
HCVエピトープを有するハイブリッド粒子免疫原の調製
HCVのエピトープの免疫原性は,また,これらのエピトープを,粒子形成タンパク(例えば,B型肝炎の表面抗原に関連するタンパク)と融合もしくは結合させるように,哺乳動物系あるいは酵母系で調製することによって増強される。NANBVエピトープが粒子形成タンパクのコード配列に直接結合している構築物は,HCVエピトープに関して免疫原性のハイブリッドを産生する。さらに,調製したすべてのベクターは,HBVに特異的なエピトープを有し,例えばプレSペプチドのように様々な度合の免疫原性を有するエピトープを含む。このように,粒子形成タンパクから構築され,HCV配列を有する粒子は,HCVおよびHBVに関して免疫原性である。
【0092】
肝炎の表面抗原(HBSAg)は,S.cerevisiae(Valenzuelaら(1982)),および例えば哺乳動物細胞(Valenzuela,P.ら(1984))において形成され,結合して粒子となることが示されている。このような粒子の形成は,単量体のサブユニットの免疫原性を増強することが示されている。これらの構築物は,また,HBSAgの免疫的に優性なエピトープを有し,それはプレ表面(プレS)領域の55アミノ酸を含有する。Neurathら(1984)。酵母中で発現され得るプレS−HBSAg粒子の構築物は,欧州特許出願公開第174,444号(1986年3月19日付で公開)に開示されている。酵母での発現のための異種ウイルス配列を有するハイブリッドは,欧州特許出願公開第175,261号(1966年3月26日付で公開)に開示されている。これらの構築物もまた,SV40のジヒドロ葉酸還元酵素ベクターを用いてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物細胞中で発現させることができる(Michelleら(1984))。
【0093】
さらに,粒子形成タンパクをコードする配列の一部は,HCVエピトープをコードするコドンで置き換えられ得る。このような置換えよって,酵母あるいは哺乳動物中で免疫原性粒子を形成する単位の集合を媒介するのに必要とされない領域を削除することができる。このようにして,HCVエピトープと競合する部分から付加的なHBV抗原性部位が除去される。
【0094】
ワクチンの調製
ワクチンは,実施例に記載されているcDNA配列を含む,HCV cDNA由来の免疫原性ポリペプチドの1種あるいはそれ以上から調製され得る。HCVとフラビウイルスとの間に見られる相同性は,ワクチンとして最も有効であり得るポリペプチドと,それらがコードされているゲノム領域とに関する情報を提供する。フラビウイルスゲノムの一般的な構造は,Riceら(1986)により考察されている。フラビウイルスのゲノムRNAは,唯一のウイルス特異的mRNA種であると考えられ,これは,3つのウイルス構造タンパク(つまり,C,M,およびE),2つの大きい非構造タンパク(NS4およびNS5),およびより小さい非構造タンパクの複合対に翻訳される。フラビウイルスの主要な中和エピトープがE(外被)タンパクに属することは公知である(Roehrig(1986))。このように,ワクチンは,HCV Eのエピトープを有する組換えポリペプチドを含有し得る。これらのポリペプチドは,細菌,酵母,または哺乳動物細胞において発現されるか,あるいはウイルス調製物から単離され得る。他の構造タンパクが,保護抗HCV抗体を生じるエピトープを有し得ることも予期される。このように,E,C,およびMのエピトープを有するポリペプチドもまた,単独で,あるいは組み合わせて,HCVワクチンに用いられ得る。
【0095】
上記に加えて,NS1(非構造タンパク1)で免疫すると黄熱病から保護されることが示されている(Schlesingerら(1986))。たとえ,その免疫により中和抗体が生じないとしても,このことは正しい。このように,特に,このタンパクはフラビウイルスの間で高い割合で保存されるようなので,HCV NS1もまた,HCVの感染に対して保護作用を有するようである。さらに,たとえ非構造タンパクが中和抗体の産生を行わないとしても,非構造タンパクがウイルスの病原性に対して保護作用を与え得ることもまた示される。
【0096】
HCV ORFの様々な領域に及ぶクローン化されたHCVcDNAから発現されたポリペプチドの免疫原性に関して実施例で与えられた情報により,ワクチンへの用途に関して予想することもできる。
【0097】
上記のことから,HCVに対する多価ワクチンは,1あるいはそれ以上の構造タンパクに由来する1あるいはそれ以上のエピトープ,および/または1あるいはそれ以上の非構造タンパクに由来する1あるいはそれ以上のエピトープを含有し得る。これらのワクチンは,例えば,組換えHCVポリペプチド,および/またはビリオンから単離されたポリペプチドを含有し得る。特に,ワクチンは,1つあるいはそれ以上の次のタンパク:E,NS1,C,NS2,NS3,NS4およびNS5,あるいはそれから誘導されたサブユニット抗原を含有すると考えられる。特に好ましいのは,Eおよび/またはNS1,あるいはそのサブユニットを含有するワクチンである。
【0098】
活性成分として免疫原性のポリペプチドを含有するワクチンの調製は,当業者に公知である。代表的には,このようなワクチンは,液体溶液あるいは懸濁液のいずれかとして,注射可能なように調製される。注射前に液体に溶解あるいは懸濁させるのに適当な固形物の形態としても調製され得る。この調製物はまた,乳化することもでき,あるいは,リポソームにカプセル化されたタンパクであってもよい。この活性免疫原性成分は,薬学的に受容され得る賦形剤であって,この活性成分と適合し得る賦形剤と混合されることが多い。適当な賦形剤としては,例えば,水,生理食塩水,デキストロース,グリセロール,エタノールなど,およびこれらの組み合わせがある。さらに必要に応じて,このワクチンには,少量の補助物質が含有され得る。このような補助物質としては,補湿剤あるいは乳化剤,pH緩衝剤,および/またはワクチンの効果を増強するアジュバントがある。効果的なアジュバントの例としては,以下の物質が挙げられるが,これらには限定されない:水酸化アルミニウム,N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP),N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP11637,nor−MDPと呼ばれる),N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A,MTP−PEと呼ばれる),およびRIBI。ここで,RIBIは,細菌から抽出された3つの成分,すなわちモノホスホリル脂質A,トレハロースジミコール酸,および細胞壁の骨格成分(MPL+TDM+CWS)を,2%スクアレン/トゥイーン(Tween)80エマルジョン中に含んでいる。アジュバントの効力は,HCV抗原配列を有する免疫原性ポリペプチドに対する抗体の量を測定することによって決定され得る。なお,この抗体は,種々のアジュバントを含有する,ワクチン中に存在するこのポリペプチドを投与することにより生じる。
【0099】
このワクチンは,通常,非経口的に注射で投与され,その形態は,例えば,皮下注射であっても筋肉注射であってもよい。他の投与形態に適当な処方物には座薬があり,場合によっては経口処方物もある。座薬に用いられる従来のバインダーおよび担体には,例えばポリアルキレングリコールあるいはトリグリセリドがある。このような座薬は,活性成分を0.5%〜10%,好ましくは1%〜2%の範囲で含有する混合物から形成される。経口処方物には,通常使用される賦形剤が含有される。このような賦形剤には,例えば,製剤グレードのマンニトール,ラクトース,デンプン,ステアリン酸マグネシウム,サッカリンナトリウム,セルロース,炭酸マグネシウムなどがある。これらの組成物は,溶液,懸濁液,錠剤,丸剤,カプセル剤,放出を維持するような処方物,あるいは粉剤の形態を有し,活性成分を10%〜95%,好ましくは25%〜70%の割合で含有する。
【0100】
このタンパクは,そのままで,あるいは塩の形で,ワクチンに処方され得る。薬学的に受容され得る塩には,酸付加塩(ペプチドの遊離のアミノ基により形成される)が包含され,この塩は,無機酸(例えば,塩酸あるいはリン酸)あるいは有機酸(例えば酢酸,シュウ酸,酒石酸,マレイン酸など)を用いて形成される。遊離のカルボキシル基により形成される塩は,無機塩基(例えば,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,アンモニア,水酸化カルシウム,あるいは水酸化第二鉄)および有機塩基(例えば,イソプロピルアミン,トリメチルアミン,2−エチルアミノエタノール,ヒスチジン,プロカインなど)からも誘導され得る。
【0101】
ワクチンの用量および投与
ワクチンは,投薬処方に適合する様式で,そして予防効果および/または治療効果が得られる量で,投与される。投与される量は,一般に1回の投与あたり抗原が5μg 〜250μgの範囲内であり,この投与量は処置される個体,この個体の免疫系が抗体を合成する能力,および所望する保護の程度に依存する。投与に必要とされる活性成分の正確な量は,医師の判断によるものであり,各個体に特有であり得る。
【0102】
ワクチンは,1回の投与形式で与えられるか,あるいは好ましくは複数回の投与形式で与えられ得る。複数回の投与形式では,最初のワクチン投与は1〜10回に分けて行なわれ,以後の投与は引き続き免疫応答を維持もしくは強化するのに必要な時間間隔で,例えば第2回目の投与では1〜4ヶ月で行われ,そして必要であれば数ヶ月後に引き続き投与が行われる。この投与形態はまた,少なくとも部分的には,個人の必要量によって決定され,医師の判断による。
【0103】
さらに,免疫原性のHCV抗原を有するワクチンは,他の免疫調節因子,例えば免疫グロブリンと組み合わせて投与され得る。
【0104】
HCVエピトープに対する抗体の調製
上述のようにして調製される免疫原性ポリペプチドは,ポリクローナルおよびモノクローナルの両抗体を生産するのに用いられる。ポリクローナル抗体が所望であれば,HCVエピトープを有する免疫原性ポリペプチドを用いて,選択された哺乳動物(例えば,マウス,ウサギ,ヤギ,ウマなど)を免疫する。免疫された動物から得られた血清を回収し,公知の方法によって処理する。HCVエピトープに対するポリクローナル抗体を含有する血清が他の抗原に対する抗体を含んでいる場合には,このポリクローナル抗体は免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製され得る。ポリクローナルな抗血清を生産し,加工処理する方法は,当該分野では公知であり,例えばMayerおよびWalker(1987)を参照されたい。あるいは,ポリクローナル抗体は,あらかじめHCV に感染させておいた哺乳動物から単離され得る。感染個体の血清から得られるHCVエピトープに対する抗体を精製する方法の例は,欧州特許出願公開第318,216号に述べられている,これは,アフィニティークロマトグラフィーに基づき,SOD とcDNAクローン5−1−1内にコードされたポリペプチドとの融合ポリペプチドを利用する方法である。
【0105】
HCVエピトープに対するモノクローナル抗体もまた,当業者により容易に生産され得る。ハイブリドーマによってモノクローナル抗体を調製する一般的な方法は公知である。永久増殖性の抗体産生細胞系は細胞融合によって調製することができ,さらに,腫瘍原性DNAを用いたBリンパ球の直接形質転換,あるいはEpstein−Barrウイルスを用いたトランスフェクションのような他の方法によってもまた調製することができる。例えば,M.Schreierら(1980);Hammerlingら(1981);Kennettら(1980)の文献を参照されたい。さらに,米国特許第4,341,761号;第4,339,121号;第4,427,783号;第4,444,887号;第4,466,917号;第4,472,500号;第4,491,632号および第4,493,890号もまた,参照されたい。HCVエピトープに対して調製されたモノクローナル抗体のパネルは,種々の目的(例えば,アイソタイプ,エピトープ親和性など)に応じてスクリーニングされ得る。
【0106】
HCVエピトープに対して形成されたモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は,いずれも特に診断において有用であり,中和抗体は受動免疫治療に有用である。特にモノクローナル抗体は抗イディオタイプの抗体を生じさせるために用いられ得る。
【0107】
抗イディオタイプ抗体は,それに対して保護が望まれる感染因子の抗原の「内的イメージ(internal image)」を伴う免疫グロブリンである。例えば,Nisonoff,A.ら(1981)およびDreesmanら(1985)を参照されたい。
【0108】
抗イディオタイプの抗体を生じさせるための方法は,当該分野で公知である。例えば,Grzych(1985),MacNamaraら(1984),およびUytdehaagら(1985)を参照されたい。これらの抗イディオタイプ抗体は,NANBHの処置および/または診断に有用であり,またHCV抗原の免疫原性領域を解明するのにも有用である。
【0109】
HCVエピトープに対する様々なタイプの抗体を調製し得ることも,当業者によって認められる。本願で用いる「抗体」という用語は,ポリペプチド,あるいは少なくとも1つの抗体結合部位を有するポリペプチド群を意味する。「抗体結合部位」あるいは「抗体結合領域」は,抗原のエピトープの特徴を相補する内部表面形状および電荷分布を有する3次元結合空間を形成するために,抗体分子の可変領域の折りたたみから形成され,抗原との免疫学的な反応を可能にする。抗体結合部位は,抗体結合に寄与する超可変ループを形成する,重鎖領域および/または軽鎖領域(それぞれ,VHおよびVL)から形成され得る。「抗体」という用語には,例えば脊椎動物抗体,ハイブリッド抗体,キメラ抗体,変容抗体,一価抗体,Fabタンパク,および単一領域抗体が含まれる。
【0110】
「単一領域抗体」(dAb)はVH領域を有する抗体であって,指定の抗原と免疫学的に反応する。dABはVL領域を含有していないが,抗体に存在していることが知られている他の抗原結合領域,例えばκ領域およびλ領域を有し得る。dABを調製する方法は当技術分野で公知である。例えば,Wardら(1989)を参照されたい。
【0111】
抗体は,また,他の既知の抗体結合領域だけでなく,VH領域およびVL領域を有し得る。これらのタイプの抗体およびそれらを調製する方法の例は当技術分野で公知(例えば,米国特許第4,816,467号を参照されたい。この米国特許は,参考文献として,ここに採用される。)であり,以下のものを包含する。例えば,「脊椎動物の抗体」とは,四量体あるいはその集合体である抗体を意味し,通常「Y」字形に集合し,必ずしも鎖間に共有結合を有さない軽鎖および重鎖を有する。脊椎動物の抗体では,特定の抗体のあらゆる鎖のアミノ酸配列は,その場で,あるいはインビトロ(例えば,ハイブリドーマにおいて)抗体を産生するリンパ球によって産生されるある抗体に見られる鎖と相同である。脊椎動物の抗体は,典型的には,天然の抗体,例えば精製されたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。このような抗体を調製する方法の例は以下に述べられている。
【0112】
「ハイブリッド抗体」は,一方の対の重鎖および軽鎖が最初の抗体におけるそれと相同であり,他方の対の重鎖および軽鎖が異なる第2の抗体におけるそれと相同であるような抗体である。典型的には,これら二対の各々は,特に,異なる抗原上の異なるエピトープに結合する。これにより,「二価」の性質,すなわち同時に2つの抗原を結合する能力が得られる。このようなハイブリッドは,以下に述べるように,キメラ鎖を用いても形成され得る。
【0113】
「キメラ抗体」は,重鎖および/または軽鎖が融合タンパクであるような抗体である。典型的には,これらの鎖の不変領域はある特定の種および/またはクラスに由来し,可変領域は異なる種および/またはクラスに由来する。源が異なるクラスであろうと,起源の異なる種であろうと,また融合点が可変/不変領域の境界にあろうとなかろうと,重鎖または軽鎖のいずれか,あるいは両方が,異なる源の抗体における配列を凝似した配列の組み合せから構成されるような,いかなる抗体も含まれる。従って,不変領域あるいは可変領域のいずれもが既知の抗体配列を凝似していない抗体を調製することもできる。そのため,例えば,可変領域が特定の抗原に対してさらに高い特異的親和性を有する抗体,あるいは不変領域が増強された補体結合を引き出し得る抗体を構築するか,あるいは特定の不変領域が有する性質を改善することが可能になる。
【0114】
他の例は「変容抗体」であり,これは天然に存在する脊椎動物抗体のアミノ酸配列が変化しているような抗体を意味する。組換えDNA技術を利用すれば,所望の特性が得られるように抗体を再設計し得る。可能な変化は多く,1つまたはそれ以上のアミノ酸を変化させることから,1つの領域(例えば,不変領域)を完全に再設計するに至るまで様々である。一般に所望の細胞過程特性を得るための不変領域における変化は,例えば,補体結合,膜との相互作用,および他のエフェクター機能である。可変領域における変化は,抗原結合特性を変化させるようになされ得る。抗体はまた,特定の細胞あるいは組織部位への分子あるいは物質の特異的な供給を助けるように設計され得る。所望の変化は,分子生物学で公知の方法,例えば組換え技術,部位特異的変異処理などによって起こし得る。
【0115】
さらに他の例は,「一価抗体」であり,これは第2の重鎖のFc領域(すなわち,不変領域)に結合した重鎖/軽鎖二量体を含む集合体である。このタイプの抗体は抗原変質を免れる。例えば,Glennieら(1982)を参照されたい。
【0116】
抗体の定義内には,抗体の「Fab」フラグメントも含まれる。「Fab」領域は,重鎖および軽鎖の枝部分を含む配列と大体等価あるいは類似しており,特定の抗原に対する免疫学的な結合を示すとされているが,エフェクターFc部分を欠いているような,重鎖および軽鎖の部分を意味する。「Fab」には,2H鎖および2L鎖を有する四量体(F(ab)2と呼ばれる)だけでなく,1本の重鎖と1本の軽鎖との集合体(通常,Fab’として知られている)が包含され,それらは指定された抗原あるいは抗原群と選択的に反応し得る。「Fab」抗体は,上記のものに類似したサブセット,すなわち「脊椎動物Fab」,「ハイブリッドFab」,「キメラFab」,および「変容Fab」に分類され得る。抗体の「Fab」フラグメントを調製する方法は,当該技術分野の範囲内で公知であり,例えばタンパク分解,および組換え技術による合成が含まれる。
【0117】
II.H.診断用オリゴヌクレオチドプローブおよびキット
単離されたHCV cDNAの開示部分を基本として用いて,約8個あるいはそれ以上のヌクレオチドを有するオリゴマーが切断あるいは合成によって調製され得る。このオリゴマーは,HCVゲノムとハイブリダイズし,このウイルス性因子の同定,さらにこのウイルス性ゲノムの特性決定,および個々の患者のウイルスの検出に有用である。HCVポリヌクレオチドプローブ(天然あるいは誘導された)は,ハイブリダイゼーションによって独特のウイルス配列を検出し得る長さである。6〜8個のヌクレオチドが,その機能を果たし得る長さであるが,10〜12個のヌクレオチド配列が好適であり,約20のヌクレオチドが最適であると考えられる。これらの配列は異種性を欠いている領域に由来するのが好ましいであろう。これらプローブは自動化オリゴヌクレオチド合成法を含む,定型的な方法を用いて調製され得る。有用なプローブには,例えば,本明細書で開示された新たに単離されたクローン,そして,cDNAライブラリーをプローブする際に有用な後述の種々のオリゴマーがある。HCVゲノムのどの独特な部分の相補鎖も充分使用され得る。フラグメントの長さが長くなるにつれ完全に相補性を有する必要はなくなるのであるが,プローブとして使用するには完全な相補性が望ましい。
【0118】
診断用薬としてこのようなプローブを使用するには,血液あるいは血清のような分析されるべき生物学的試料は,必要であれば,そこに含有されている核酸を抽出するために処理される。この試料から得られた核酸は,ゲル電気泳動あるいは他のサイズ分離手段にかけられ得る。あるいは,この核酸試料は,サイズ分離を行うことなくドットブロットされ得る。次に,このプローブは標識化される。プローブを標識するための適当な標識物および方法は,当該技術分野では公知であり,それには例えば,ニックトランスレーションあるいはキナーゼ処理で取り込まれた放射性標識物,ビオチン,螢光プローブ,および化学発光プローブが含まれる。試料から抽出された核酸は,次に,適当な厳密さのハイブリダイゼーション条件下で,標識されたプローブと共に処理され,そして,プローブを有するポリヌクレオチド二本鎖(duplex)が検出される。
【0119】
このプローブは,HCVゲノムに完全に相補的に作成され得る。従って,偽陽性を防ぐために,通常,厳密性の高い条件が望まれる。しかし,プローブが異種性を欠くウイルスゲノム領域と相補性を有する場合のみに,厳密性の高い条件が使用される。ハイブリダイゼーションの厳密さは,ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程中の多くの因子(温度,イオン強度,時間の長さおよびホルムアルデヒドの濃度を含む)により決定される。これらの因子は,例えば〔マニアティス(Maniatis,T.)(1982年)〕により概説されている。
【0120】
一般に,このHCVゲノム配列は,感染個体の血清中に比較的低レベル(つまり,1mlあたり約102〜103個の対チンパンジー感染用量)で,存在する。このレベルでは,ハイブリダイゼーションアッセイにおいて増幅法を用いる必要があるかもしれない。そのような方法は当該技術分野では公知である。例えば,Enzo BiochemicalCorporationの「Bio−Bridge」システムでは,DNAプローブに未修飾の3’−ポリ−dTテールを付加するために,末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼを用いている。ポリdTテールを付加したプローブは標的となるヌクレオチド配列にハイブリダイズされ,次いで,ビオチン修飾ポリAにハイブリダイズされる。PCT出願84/03520およびEPA124221には,次のような方法のDNAハイブリダイゼーションアッセイが記述されている:1)被分析物を,酵素標識オリゴヌクレオチドに相補的な単鎖DNA プローブにアニールする;および2)得られたテール付加二本鎖を酵素標識オリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。EPA 204510には,次のような方法のDNAハイブリダイゼーションアッセイが記述されている。この方法では,分析すべきDNAを,例えば,ポリdTテールのようなテールを有するプローブと接触させ,次に増幅鎖と接触させる。この増幅鎖は,プローブのテールとハイブリダイズするポリA配列のような配列を有し,標識された複数の鎖を結合することが可能である。特に望ましい方法では,まず血清中の標的HCV配列が約10,000倍,つまり約106配列/mlとなるように,標的HCV配列の増幅が行われる。これは,例えば,サイキ(Saiki)ら(1986),マリス(Mullis),米国特許第4,683,195号,そしてマリス(Mullis)らの米国特許第4,683,202号により記載されたポリメラーゼ鎖反応(PCR)法によって行なわれ得る。この増幅された配列は,ハイブリダイゼーションアッセイ法を用いて検出され得る。このハイブリダイゼーションアッセイ法は,1989年5月24日付で発行された欧州特許第317,077号中に記載されている。106/mlのレベルで配列を検出するこのハイブリダイゼーションアッセイ法は,単鎖の分析すべき核酸に結合し,多数の単鎖標識オリゴヌクレオチドにも結合する核酸多量体を利用する。標識されたポリヌクレオチドプローブを用いる,適当な溶液相のサンドイッチアッセイ,およびプローブの調製法は,1987年6月16日付で発行された欧州特許出願公開第225,807号に記載されている。
【0121】
このプローブは診断用キット中に組み入れることができる。診断用キットは,プローブDNAを有し,このプローブDNAは標識されているか,あるいはこのプローブDNAは標識されておらず,標識用の成分がこのキットの別の容器中に入っている。このキットにはまた,特定のハイブリダイゼーションのプロトコルに必要な他の試薬および材料(例えば,標準品,およびこのテストを行なうための指示書)が適当に包装されて含まれる。
【0122】
イムノアッセイおよび診断用キット
HCV抗体を含有する血清と免疫的に反応するポリペプチド,およびこれらのポリペプチドのHCV特異的エピトープに対して生じる抗体は,イムノアッセイにおいて,生物学的試料におけるHCV抗体の存在,あるいはウイルスおよび/またはウイルス抗原の存在を検出するために有用である。上記HCV抗体は,例えば,後述の実施例に記載された抗原スクリーニング法により検出される抗体であり,そして,実施例に記載の単離されたクローンに由来するか,あるいはこのクローン内にコードされた抗体であり,そしてそれらの複合体である。このイムノアッセイの設計は多くの変更を行うことが可能であり,これらアッセイの多様性については当該技術分野では既知である。例えば,このイムノアッセイでは,1種のウイルスエピトープが利用され得る。あるいは,このイムノアッセイには,これらの源由来のウイルスエピトープの組合せが用いられ得る。これらのエピトープは,同一のもしくは異なったウイルスポリペプチド由来であり得,そして,それは異なった組み換えあるいは天然ポリペプチド内に存在し得,もしくはいずれも同一の組換え体ポリペプチド内に存在し得る。例えば,ウイルスのエピトープに対する1種のモノクローナル抗体,あるウイルス抗原のエピトープに対するモノクローナル抗体の組み合わせ,異なるウイルス抗原に対する複数のモノクローナル抗体,同一のウイルス抗原のエピトープに対するポリクローナル抗体,あるいは異なるウイルス抗原に対するポリクローナル抗体が使用され得る。プロトコルは,例えば,競合分析法,直接反応タイプ分析法,あるいはサンドイッチタイプ分析法を基本とすることができる。このプロトコルではまた,例えば,固体支持体を用いるか,あるいはこのプロトコルは,免疫沈澱法であり得る。ほとんどのアッセイは標識化抗体あるいはポリペプチドの使用を含む。この標識物には,例えば,螢光分子,化学発光分子,放射性分子,あるいは色素分子がある。このプローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた公知である。その例としては,ビオチンおよびアビジンを利用するアッセイ,および酵素標識および酵素媒介イムノアッセイ(例えば,ELISA アッセイ)がある。
【0123】
推定ポリタンパクの抗原性領域の一部は,地図化され,このポリタンパクの一部をコードするHCV cDNAの細菌発現産物の抗原性をスクリーニングすることにより同定されている。実施例を参照されたい。HCVの他の抗原性領域は,他の発現系(これは,酵母の発現系と,昆虫および脊椎動物に由来する細胞の発現系とを含む)においてHCV cDNAのこれらの部分を発現させることにより検出され得る。さらに,抗原指数および疎水性/親水性プロファイルが得られるような研究により,ある領域が抗原性を有する可能性に関する情報が得られる。
【0124】
HCV cDNAの発現による抗原性マッピングの研究により,これらのcDNAを有する多くのクローンが,NANBHを持つ個体に由来する血清との免疫学的な反応性を有するポリペプチドを発現することが示された。すべての血清と免疫学的な反応性を有する単一のポリペプチドは存在しなかった。これらのポリペプチドのうちの5つは,次の点において非常に免疫原性を有していた。つまり,これらのポリペプチドのHCVエピトープに対する抗原が,検出時に重複が完全ではなかったにもかかわらず,多くの異なる患者の血清中に検出された点において,免疫原性を有していた。したがって,これら種々のクローンにおいてコードされているポリペプチドが免疫原性を有するということから,効果的な検出システムは,エピトープのパネルを有し得るということが示唆される。このパネルのエピトープは,1種もしくは複数のポリペプチドに構築され得る。
【0125】
免疫診断に適し,適切に標識された試薬を有するキットは,適切な材料を適当な容器中に包装することによって得られる。この適切な材料には,HCVエピトープを有する本発明のポリペプチド,あるいはHCVエピトープに対する抗体が含まれる。このキットは,アッセイを実施するのに必要な残りの試薬および材料と,さらにアッセイの指示書の適当なセットとを含む。
【0126】
ウイルスゲノムに対するcDNA由来のプローブを用いた,HCVゲノム,ビリオンおよびウイルス抗原の他の特性決定
実施例に記載した,新たに単離されたクローンのHCV cDNA配列の情報は,HCVゲノムの配列とHCV因子の同定と単離とについての情報をさらに得るために用いられ得,その結果,ゲノムの性質,ウイルス粒子の構造,およびウイルスが有する抗原の性質を含めたウイルスの特性決定の助けになる。さらに,この情報によって,付加的なポリヌクレオチドプローブ,HCVゲノム由来のポリペプチド,およびHCVが原因のNANBHの診断および/または治療に有用なHCVエピトープに対する抗体が得られるようになる。
【0127】
上記クローンのcDNA配列の情報は,本明細書および欧州特許第316,218号に記載されたクローンのcDNAの起源であるHCVゲノムの未確定領域由来の他のcDNA配列を単離するためのプローブを設計するのに有用である。例えば,約8個またはそれ以上,好ましくは20個またはそれ以上のヌクレオチドの配列を有する標識化プローブは,図27〜図36に示すHCV複合cDNA配列の5’末端または3’末端に近い領域由来のものであり,HCV cDNAライブラリーから重複cDNA配列を単離するのに用いられ得る。あるいは,ゲノムセグメントの特性決定は,精製されたHCV粒子から単離されたウイルスゲノムで行うことができる。HCV粒子を精製し,精製工程において粒子を検出する方法は後述する。ポリヌクレオチドのゲノムのウイルス粒子からの単離工程は,当該技術分野では公知であり,利用され得る一方法が欧州特許第218,316号に開示されている。単離されたゲノムのセグメントは,次に,クローン化され配列決定され得る。クローン化されるべき配列の増幅工程を含む方法の例が,後述されており,これによりクローン16jhが得られる。
【0128】
cDNAライブラリーを構築する方法は,当該技術分野では公知であり,すでに記載し,あるいは後で述べられる。λgt11内にHCV cDNAライブラリーを構築する方法は,欧州特許出願公開第318,216号に述べられている。しかし,核酸プローブでスクリーニングするのに有用なcDNAライブラリーもまた,当該技術分野で公知の他のベクター内,例えばλgt10〔ヒューンら(Huynh et al ),1985年〕内で構築することができる。
【0129】
HCVに対する抗ウイルス剤のスクリーニング
HCVの細胞培養物と動物モデル系とを利用することによって,HCVの複製を阻害する抗ウイルス剤,特に優先的に細胞を生育・増殖させる一方でウイルスの複製を阻害する抗ウイルス剤をスクリーニングすることができる。これらのスクリーニング法は,当業者には知られている。一般に,抗ウイルス剤は,ウイルスの複製を維持する細胞培養系でウイルスの複製を阻害する効果と,動物モデル系での感染性もしくはウイルス病原性を阻害する効果(および低レベルの毒性)について種々の濃度で試験される。
【0130】
HCV抗原とHCVポリヌクレオチドを検出するためのここに記載された方法と組成物は,ウイルス複製に対する抗ウイルス剤の効果を検出する方法として,細胞プラーク検定法もしくはID50検定法の代わりにこれらの方法よりもおそらく高感度の方法を提供することから,抗ウイルス剤のスクリーニングに有用である。例えば,ここに記載したHCVポリヌクレオチドプローブは,細胞培養で産生されたウイルス核酸を定量するのに利用できる。このことは,例えば感染した細胞の核酸と標識したHCVポリヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションまたは競合ハイブリダイゼーションによって達成することができた。例えば,また抗HCV抗体は,本明細書に記載の免疫検定法を利用して細胞培養物中のHCV抗原を同定および定量するのに利用できる。さらに,感染細胞の培養物中のHCV抗原を競合検定法で定量することは望ましいことであるから,本明細書に記載したHCV cDNA内にコードされたポリペプチドは,これらの競合検定法に有用である。一般に,HCV cDNA由来の組換え体HCVポリペプチドに標識化し,この標識化ポリペプチドとHCVポリペプチドとの結合が細胞培養系内に産生された抗原によって阻害されるのを監視する。さらに,これらの方法は,HCVが細胞系内で細胞死を起こすことなく複製できる場合,特に有用である。
【0131】
これらの方法により有効性を試験し得る抗ウイルス剤は,当該技術分野では公知であり,例えば,ウイルスの結合および/または複製に必要なビリオン成分および/または細胞成分と相互作用する物質を含む。典型的な抗ウイルス剤は,例えば,前駆体ポリペプチドの切断に必要なビリオンポリメラーゼおよび/またはプロテアーゼの阻害剤を含み得る。他の抗ウイルス剤は,例えば,抗感受性ポリヌクレオチドなどの,核酸と反応してウイルス複製を妨げる物質を含み得る。
【0132】
アンチセンスポリヌクレオチド分子は,ゲノムまたはRNAの設計された領域に該ポリヌクレオチド分子を特異的にハイブリダイズさせ得る,相補的ヌクレオチド配列を含む。アンチセンスポリヌクレオチドは,例えば,mRNAに結合することにより蛋白翻訳を妨げる分子を含み得,あるいは,転写酵素によりウイルスRNAの複製を阻害する分子であり得る。さらにそれらは,例えば,ウイルスRNA内の切断を引き起こすことによりウイルスRNAを不活化する薬剤(非共有結合的に付着または共有結合している)を有する分子を含み得る。さらにそれらは,ウイルスの感染性または複製能力あるいは慢性化能力を増強し,および/またはそれらに必要とされる細胞ポリヌクレオチドに結合し得る。HCV由来のRNAにハイブリダイズするアンチセンス分子は,ここで提供されるHCVcDNAの配列情報に基づいて設計され得る。HCVのアンチセンスポリヌクレオチドに基づく抗ウイルス剤は,高度な特異性で結合し,かつ溶解度が高く,安定であり,かつ低毒性であるように設計され得る。このように,それらは,特殊な系,例えばリポソームにより,もしくは遺伝子治療により,送達され得る。さらに,それらは,アナログ,結合タンパク,塩基間の置換もしくは変化した結合を包含し得る。
【0133】
他のタイプの薬剤は,HCVゲノムの重要な制御領域に類似したポリヌクレオチド,およびウイルスの感染性または複製の原因となる系の主要成分との相互作用により治療がなされ得るようなポリヌクレオチドに基づいたものであり得る。
【0134】
一般的方法
ウイルスからのゲノムの抽出,cDNAライブラリーの調製とプロービング,クローンの配列決定,発現ベクターの構築,細胞の形質転換,ラジオイムノアッセイおよびELISA測定法のような免疫測定の実施,培地での細胞の培養などに用いられる一般的な方法は,当該技術分野で公知であり,これらの方法を記載した実験室のマニュアルを入手することができる。しかし,一般的な指針として,上記の方法およびこれを実施するのに有用な材料を現在入手できるいくつかの出所を以下に述べる。
【0135】
原核および真核の宿主細胞が,指定された宿主に適合する適切な制御配列が用いられた場合に,所望のコード配列の発現に用いることができる。原核細胞宿主のうち,大腸菌(E.coli)が最も汎用される。原核細胞の発現制御配列には,必要に応じてオペレーター部分を有するプロモーター,およびリボソーム結合部位が含まれている。原核細胞の宿主に適合するトランスファーベクターは,通常,例えば次のようなものに由来する。つまり,アンピシリンおよびテトラサイクリンに対する耐性を与えるオペロンを有するプラスミドであるpBR322および抗生物質耐性のマーカーを与える配列を有する種々のpUCベクター由来である。これらのマーカーは,適宜選択することによって,好適な形質転換細胞を得るのに利用できる。通常用いられる原核細胞の制御配列には,β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系〔チャンら(Chang et al ),1977年〕,トリプトファン(trp)プロモーター系〔ゴーデルら(Goeddelet al),1980年〕およびλ由来PlプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位〔シマタケら(Shimatake et al),1981年〕,およびtrp およびlac UV5プロモーターの配列由来のハイブリッドtacプロモーター〔ド ボールら(De Boeret al),1983年〕がある。上記の系は,特にE.coliに適合する。必要であれば,バシラスもしくはシュードモナス属の菌株のような他の原核宿主を,対応する制御配列とともに用いてもよい。
【0136】
真核宿主としては,酵母および培養系内の哺乳動物の細胞がある。サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)およびサッカロミセスカールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)が最も普通に用いられる酵母宿主であり,便利な真菌宿主である。酵母に適合するベクターは,栄養要求突然変異体に原栄養性を与えるかまたは野生型菌株に重金属に対する耐性を与えることによって成功裏に形質転換された形質転換体を選択することができるようにするマーカーを保有する。酵母に適合するベクターとしては,2ミクロンの複製起源〔ブローチら(Broach et al),1983年〕,CEN3およびARS1の組み合わせ,または確実に複製を行わせる他の手段(例えば,適切なフラグメントを宿主細胞のゲノムに組込ませるような配列)を採用することができる。酵母ベクターの制御配列は,当該技術分野で公知であり,解糖酵素合成のプロモーター〔ヘスら(Hess et al),1968年;ホーランドら(Holland et al),1978年〕を含み,このようなプロモーターには,3−ホスホグリセリン酸キナーゼ〔ハイツマン(Hitzeman),1980年〕に対するプロモーターが含まれる。ターミネーターには,例えばエノラーゼ遺伝子由来のターミネーター〔ホーランド(Holland),1981年〕が含まれ得る。特に有用な制御系は,グリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)プロモーターもしくはアルコール脱水素酵素(ADH)調節性プロモーター,GAPDH由来のターミネーター,および分泌が所望の場合には,酵母α因子由来のリーダー配列を含む系である。さらに,作動可能に連結されている転写調節領域および転写開始領域は,野生型生物に本来関係しないものであってもよい。これらの系については,欧州特許出願公開第120,551号(1984年10月3日付で公開);同第116,201号(1984年8月22日付で公開);および同第164,556号)(1985年12月18日付で公開)に詳細に記載されており,これらはすべて本発明の出願人によるものであり,本願に引用文献として記載する。
【0137】
発現のために宿主として利用可能な哺乳類の細胞系は当該技術分野で知られており,the American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの永久増殖化細胞系がある。それには,Hela細胞,チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞,ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞および多くの他の細胞系がある。哺乳類の細胞に対する適切なプロモーターも当該技術分野では公知であり,それには,シミアンウイルス40(Simian Virus)(SV40)〔フィアース(Fiers),1978年〕,ラウス肉腫ウイルス(RSV),アデノウイルス(ADV)およびウシ乳頭腫ウイルス(BPV)由来のプロモーターのようなウイルスプロモーターが含まれる。哺乳類細胞はまた,ターミネーター配列およびポリA付加配列を必要とし,発現を増大させるエンハンサー配列も含まれ,そして,遺伝子の増幅を引き起こす配列も望ましい。これらの配列は当該技術分野で公知である。哺乳類の細胞で複製させるのに適切なベクターには,ウイルスレプリコン,またはNANBVエピトープをコードする適当な配列を宿主ゲノムに確実に組込む配列が含まれる。
【0138】
形質転換は,ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する公知のいずれの方法によっても行なわれ得る。それには例えば,ポリヌクレオチドをウイルスにパッケージングし,次いでそのウイルスを宿主細胞に形質導入する方法およびポリヌクレオチドを直接取込む方法がある。使用される形質転換法は,形質転換すべき宿主に依存する。例えば,E.coli宿主細胞を,BB−NANBV配列を有するλgt11で形質転換することが後述の実施例の項で述べられている。直接取込み法による細菌の形質転換には,一般に,塩化カルシウムまたは塩化ルビジウムによる処理が用いられる〔コーヘン(Cohen),1972年;マニアティス,1982年〕。直接取込み法による酵母の形質転換は,ヒネンら(Hinnen et al),1978年,の方法を用いて行われ得る。直接取込み法による哺乳類の形質転換は,グラハム(Graham)およびファンデルエプ(Van der Eb)1978年,のリン酸カルシウム沈澱法またはこの方法の種々の公知の改変法を用いて行われ得る。
【0139】
ベクターの構築には,当該技術分野で公知の技術が用いられる。部位特異的なDNA の切断が,適切な制御酵素を用い,これら市販の酵素のメーカーによって一般に規定されている条件下で処理することによって,実施される。一般に,約1μgのプラスミドもしくはDNA配列は,約20μl緩衝溶液中で1単位の酵素を用いて37℃の条件下で1〜2時間インキュベートすることにより切断される。制限酵素とともにインキュベートした後,タンパクを,フェノール/クロロホルムによって抽出して除去し,エタノールで沈澱させてDNA が回収される。切断断片は,Methods in Enzymology,65巻,499〜560頁,1980年,に記載された一般的な方法に従って,ポリアクリルアミドもしくはアガロースゲルを用いた電気泳動法により分離することができる。
【0140】
粘着末端を有する切断断片は,混合物に存在する適当なデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)の存在下で,E.coli DNAポリメラーゼI(クレノー)を用いて平滑末端とされ得る。S1ヌクレアーゼによる処理も行なわれ得,一本鎖DNA部分の加水分解が行われる。
【0141】
T4 DNAリガーゼとATPとを用いて標準の緩衝液および温度条件下で連結反応が行われる。粘着末端の連結には,平滑末端の連結よりも,ATPおよびリガーゼの必要量が少い。ベクター断片が連結混合物の一部として用いられる場合には,ベクター断片は,細菌アルカリホスファターゼ(BAP)または子ウシ腸アルカリホスファターゼで処理され,5’末端のリン酸を除去して,ベクターの再連結を防止することが多い。あるいは,不必要な断片の制限酵素による切断を利用して連結を防止するのに利用することができる。
【0142】
連結混合物は,E.coliのような適切なクローニング宿主に形質転換され,次いで,例えば,抗生物質耐性によって成功裏に形質転換された形質転換体が選択され,そして正しい構築物がスクリーニングされる。
【0143】
合成オリゴヌクレオチドは,ワーナー(Warner)(1984年)が発表した自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製され得る。必要に応じて,合成DNA鎖は,反応の標準条件を用いて,32P−ATPの存在下,ポリヌクレオチドキナーゼで処理することによって32P で標識化され得る。
【0144】
DNA配列は,cDNAライブラリーから単離されたものも含めて,公知の方法で修飾することができる。そのような方法としては,例えば,ゾラー(Zoller)(1982年)が発表した部位特異的変異誘発法がある。概略を述べると,修飾すべきDNAを,一本鎖配列としてファージにパッケージングし,次にプライマーとして,修飾すべきDNAの部分に相補的であり,それ自体の配列内に所望の修飾が含まれている合成オリゴヌクレオチドを用いて,DNAポリメラーゼで二本鎖DNAに変換する。得られた二本鎖DNAは,ファージを保持する宿主細菌に形質転換される。形質転換された細菌の培養物(ファージの各鎖の複製物を含む)は,寒天にプレートされてプラークが得られる。理論的には,新しいプラークの50%が,変異した配列を有するファージを含有し,残りの50%はもとの配列を有する。プラークのレプリカは,正しいストランドとハイブリダイゼーション可能であり,かつ未修飾の配列とはハイブリダイゼーションを行わない温度および条件下で,標識化された合成プローブとハイブリダイゼーションを行なう。ハイブリダイゼーションにより同定された配列は,回収されクローン化される。
【0145】
DNAライブラリーは,グリンスタイン(Grunstein)およびホッグネス(Hogness)(1975年)の方法を用いてプローブ化され得る。簡単にのべれば,この方法においては,プローブ化されるべきDNAは,ニトロセルロースフィルタ上に固定され,変性され,そして,0〜50%ホルムアミド,0.75M NaCl,75mM クエン酸ナトリウム,各々0.02%(wt/V)のウシ血清アルブミン,ポリビニルピロリドンおよびフィコール,50mMリン酸ナトリウム(pH6.5),0.1% SDS,そして100μg/mlキャリヤーの変性DNAを含有する緩衝液で,プレハイブリダイゼーションが行われる。緩衝液中のホルムアミドの濃度(%),およびプレハイブリダイゼーションおよびこれに続くハイブリダイゼーション工程の時間と温度条件は,必要とされる厳密さに依存する。厳密さがそれほど必要ではない条件下でのオリゴマーのプローブは,一般に,ホルムアミドが低い濃度であり,低温および長いハイブリダイゼーションの時間で用いられる。cDNAもしくはゲノムの配列由来のような30もしくは40を越えるヌクレオチドを有するプローブを用いるときには,一般に,例えば,約40〜42℃のような高温,および50%ホルムアミドのような高濃度が採用される。プレハイブリダイゼーションに続いて,5’末端32Pで標識したオリゴヌクレオチドプローブを緩衝液に添加し,この混合物中で,ハイブリダイゼーションの条件下にて,上記フィルターをインキュベートする。洗浄後,処理されたフィルターをオートラジオグラフィーに付すとハイブリダイズしたプローブの位置が示される。もとの寒天プレート上の,対応する位置のDNAを所望のDNAの起源として利用する。
【0146】
常套手段により,ベクターを構築する際には,連結混合物を用いてE.coli HB101株もしくは他の適当な宿主を形質転換し,成功裏に形質転換された形質転換体は,抗生物質耐性もしくは他のマーカーによって選択される。次に,得られた形質転換体から,プラスミドが,クレウェルら(Clewell et al.)(1969年)の方法により調製され,通常,さらに,クロラムフェニコールによる増幅(クレウェル,1972年)が行なわれる。そのDNAは,単離され,通常,制限酵素分析法および/または配列決定法により分析される。配列決定は,サンガー(Sanger)ら(1977)の,そしてさらにメシング(Messing)ら(1981年)により述べられたジデオキシ法,あるいはマキシムら(1980年)の方法により実施され得る。GCに富んだ領域において時おり観察される,バンドが接近しすぎているという問題は,バールら(Barr et al)(1986年)の方法に従って,T−デアゾグアノシン(deazo−guanosine)を用いることによって克服された。
【0147】
ELISA法は,抗原もしくは抗体のいずれかの濃度を測定するのに利用され得る。この方法は,酵素と,抗原もしくは抗体との結合に依存し,定量の標識として,結合した酵素の活性を用いる。抗体を測定するには,既知の抗原を固相(例えば,マイクロプレートまたはプラスチック製カップ)に固定し,被検血清の希釈物とともにインキュベートし,洗浄し,酵素で標識した抗免疫グロブリンとともにインキュベートし,再び洗浄する。標識化するために好適な酵素は,当該技術分野で公知であり,例えば,西洋ワサビペルオキシダーゼがある。固相に結合した酵素活性は,特異的な基質を添加し,そして生成物の生成または基質の利用率を比色法で測定することによって測定される。結合した酵素の活性は,結合した抗体の量の一次関数である。
【0148】
抗原を測定するには,既知の特異的抗体を固相に固定し,抗原を含む被検物質を添加し,インキュベートした後,固相を洗浄し,第2の酵素で標識した抗体を添加する。洗浄後,基質を添加し,次いで酵素活性を比色法で測定し,抗原濃度に換算する。
【実施例】
【0149】
次に本発明の実施例を示す。この実施例は例示の目的のために記載されるものであり,本発明の範囲を限定するものではない。この記載にもとづき,請求の範囲に包含される種々の態様が当業者に明らかとなる。
【0150】
重複HCVcDNAクローン13i,26j,CA59a,CA84a,CA156eおよびCA167bの単離および配列決定
クローン13i,26i,CA59a,CA84a,CA156eおよびCA167bは,HCV cDNA(ATCC No.40394)を含むλ−gt11ライブラリーから単離される。その調製法は,欧州特許出願公開第318,216号(1989年5月31日付で公開)および第WO89/04669号(1989年6月1日付で公開)に記載されている。ライブラリーのスクリーニングは,後述のプローブにより,ヒューン(Huynh)(1985年)により記載された方法を用いて行なった。各プローブにより陽性のクローンが出現する頻度は,約50,000分の1であった。
【0151】
クローン13iの単離は,クローン12fa配列に由来する合成プローブを用いて達成された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号1)。
5’ GAA CGT TGC GAT CTG GAA GAC AGG GAC AGG 3’
クローン26jの単離は,クローンK9−1の5’領域に由来するプローブを用いて達成された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号2)。
5’ TAT CAG TTA TGC CAA CGG AAG CGG CCC CGA 3’
クローン12fおよびクローンK9−1(K9−1とも呼ばれる)の単離方法は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されており,それらの配列をそれぞれ図1および図2〜図3に示す。クローン13iおよび26jのHCV cDNA配列も,ぞれぞれ図5および図6に示す。さらにそこにコードされたアミノ酸,およびクローン13iとクローン12fの重複およびクローン26jとクローン13iの重複が示される。これらのクローンの配列により,クローンK9−1の配列が確認された。クローンK9−1は,異なるHCV cDNAライブラリーから既に単離されている(欧州特許第218,316号を参照されたい)。
【0152】
クローンCA59aは,クローン26jの5’領域の配列に基づいたプローブを利用して単離された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号3)。
5’ CTG GTT AGC AGG GCT TTT CTA TCA CCA CAA 3’
クローンCA59aの配列に由来するプローブは,クローンCA84aの単離に用いられた。この単離に用いたプローブの配列は次のとおりである(配列番号4)。
5’ AAG GTC CTG GTA GTG CTG CTG CTA TTT GCC 3’
クローンCA156eは,クローンCA84aの配列に由来するプローブを用いて単離された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号5)。
5’ ACT GGA CGA CGC AAG GTT GCA ATT GCT CTA 3’
クローンCA167bは,クローン156eの配列に由来するプローブを用いて単離された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号6)。
5’ TTC GAC GTC ACA TCG ATC TGC TTG TCG GGA 3’
クローンCA59a,CA84a,CA156eおよびCA167bのHCV cDNAのヌクレオチド配列を,それぞれ図7,図8,図9および図10に示す。そこにコードされるアミノ酸,および対応するクローンの配列の重複もまた,図に示す。
【0153】
「Pi」HCV cDNAライブラリーの創製
HCV cDNAのライブラリーである「pi」ライブラリーは,欧州特許出願公開第318,216号に記載されているλ−gt11 HCV cDNAライブラリー(ATCC No.40394)の構築に用いられた,感染したチンパンジーの血漿の同一バッチから,実質的に同一の手法を用いて,構築された。しかし,piライブラリーの構築には,プライマー延長法を利用し,該方法において,逆転写酵素のプライマーはクローンCA59Aの配列に基づいたプライマーを使用した。このプライマーの配列は次のとおりである(配列番号7)。
5’ GGT GAC GTG GGT TTC 3’
クローンpi14aの単離および配列決定
クローンCA167bの単離に用いたプローブ(前出参照)を用いた,前述の「pi」HCV cDNAライブラリーのスクリーニングにより,クローンpi14aが得られた。このクローンは,λgt−11 HCV cDNAライブラリー(ATCC No.40394)から単離されたクローンCA167b,CA156e,CA84aおよびCA59aと重複する,約800塩基対のDNAを含む。さらに,pi14aもまた,クローンCA167b中のHCV cDNAの上流にあるDNA約250塩基対を含む。
【0154】
クローンCA216a,CA290aおよびag30aの単離および配列決定
クローンCA167bの配列に基づいて,次の配列を有する合成プローブが調製された(配列番号8):
5’ GGC TTT ACC ACG TCA CCA ATG ATT GCC CTA 3’
上記プローブは,スクリーニングの目的のために使用され,クローンCA216aが得られた。そのHCV配列を図11に示す。
【0155】
クローンCA216aの配列に基づいて,次の配列を有する別のプローブが調製された(配列番号9):
5’ TTT GGG TAA GGT CAT CGA TAC CCT TAC GTG 3’
λ−gt11ライブラリー(ATCC No.40394)をこのプローブでスクリーニングすることにより,クローンCA290aが得られた。そのHCV配列を図12に示す。
【0156】
これと平行して,上記最初のλgt−11cDNAライブラリーにおいて使用したのと同じ感染血漿から抽出した核酸を用いて,プライマー伸張cDNAライブラリーを調製した。使用したプライマーは,クローンCA216aおよびCA290aの配列に基づいている(配列番号10):
5’ GAA GCC GCA CGT AAG 3’
このcDNAライブラリーは,クローンpi14aおよびk9−1の単離において使用したライブラリーについて使用したのと同様の前述の方法を用いて調製した。このライブラリーのスクリーニングに使用したプローブは,クローンCA290aの配列に基づいている(配列番号11)。
5’ CCG GCG TAG GTC GCG CAA TTT GGG TAA 3’
クローンag30aは,上記プローブを用いて新しいライブラリーから単離され,これは,HCV配列の約670塩基対を含んでいた。図13〜図14を参照されたい。この配列の一部は,クローン216aおよびCA290aのHCV配列と重複している。しかし,ag30aの配列の約300塩基対は,クローン290a由来の配列の上流にある。非重複配列では,HCV ORFの開始を示し得る開始コドン(*),および終止コドンが示されている。図13〜図14には,さらに,翻訳の調節にある役割を果たし得る,コードされている小さい推定ペプチド(#),および推定ポリペプチド(/)の推定第1アミノ酸,そして,そこにコードされる下流アミノ酸が示されている。
【0157】
クローンCA205aの単離および配列決定
クローンCA205aは,もとのλgt−11ライブラリー(ATCC No. 40394)から,クローンCA290a (図12) の中のHCV配列に由来する合成プローブを用いて単離された。このプローブの配列は次のとおりである(配列番号12)。
5’ TCA GAT CGT TGG TGG AGT TTA CTT GTT GCC 3’
CA205aの中のHCV cDNAの配列を図15に示す。この配列は,クローンag30aおよびCA290aの両者のcDNA配列と重複する。CA290aとの配列の重複を,配列上の点線で示す(この図には,この断片中にコードされる推定のアミノ酸もまた,示されている)。
【0158】
クローンCA205aおよびag30aの中のHCV cDNA配列から認められるように,推定HCVポリプロテインは,ATG開始コドンから始まると考えられる。これら両クローンのHCV配列は,フレーム内に,このATGから42ヌクレオチド上流に,隣接する2つの終止コドン(TGATAG)を含んでいる。HCVのORFは,これらの終止コドンのあとから始まり,少なくとも8907ヌクレオチドにわたり延長していると考えられる(図27〜図36に示す複合HCV cDNAを参照されたい)。
【0159】
クローン18gの単離および配列決定
クローンag30a(図13〜図14参照)の配列およびもとのλgt−11ライブラリー(ATCC No.40394)由来の重複するクローンCA230aの配列に基づいて,次の配列を有する合成プローブを調製した(配列番号13):
5’ CCA TAG TGG TCT GCG GAA CCG GTG AGT ACA 3’
もとのλgt−11 HCV cDNAライブラリーをこのプローブでスクリーニングしたところ,クローン18aが得られた。そのHCV cDNA配列を図16に示す。この図にはまた,クローンag30aと重複する配列,およびHCV cDNAにコードされている推定ポリペプチドが示されている。
【0160】
クローン18g(C18gまたは18g)中のcDNAは,前述のクローンag30aおよびCA205aの配列とも重複している。C18gの配列はまた,クローンag30aに認められる二重の終止コドン領域を含んでいる。これらの終止コドンの上流のポリヌクレオチド領域は,おそらく,HCVゲノムの5’領域の一部を示していると考えられる。このポリヌクレオチドは,短いORFを有し得る。このことは,精製HCVゲノムを直接配列決定することにより確認することができる。これらのコードされた推定小ペプチドは,翻訳調節の役目を果たし得る。C18gで示されるHCVゲノムの上流領域は,実質的に,クローン12fにおいてHCV cDNA配列の上流のcDNA配列を単離するために用いた,欧州特許出願公開第318,216号に記載された手法を用いて単離され,配列分析に用いられ得る。本質的には,C18gの配列に基づいた逆転写酵素の小さな合成オリゴヌクレオチドプライマーを合成し,HCVゲノムRNAの対応配列と結合させて用いた。このプライマー配列は,C18gの既知の5’末端の近位に存在するが,このプライマー配列の上流のプローブ配列を設計するためには,十分下流に存在する。プライミングおよびクローニングの既知の標準的な方法が用いられる。得られたcDNAライブラリーは,プライミング部位の上流の配列を用いてスクリーニングされる(C18gの解明された配列から推定)。HCVゲノムRNAは,NANBHを用いて個体の血漿または肝試料のいずれかから得られる。HCVがフラビ様ウイルスであると考えられるため,ゲノムの5’末端は,「キャップ」構造により修飾されている可能性がある。フラビウイルスゲノムが5’末端に「キャップ」構造を含むことは公知である(黄熱ウイルス,ライス(Rice)ら,(1988年);デングウイルス,ハーン(Hahn)ら,(1988年);日本脳炎ウイルス(1987年))。
【0161】
β−HCV cDNAライブラリーからのクローンの単離および配列決定
HCVゲノムの3’末端領域を示すcDNAを含むクローンは,欧州特許出願公開第318,216号に記載された,HCV cDNAλgt11ライブラリー(ATCC No.40394)の調製に用いられた感染チンパンジーのもとの血漿プールから構築されたcDNAライブラリーから単離された。DNAライブラリーを調製するために,血漿から抽出されたRNAに,ポリ(rA)ポリメラーゼを用いてポリrAを「付加」し,そしてcDNAを,逆転写酵素のプライマーとしてオリゴ(dT)12−18を用いて,合成した。得られたRNA:cDNAハイブリッドは,RNAaseHにより分解され,二本鎖HCV cDNAに変換された。得られたHCV cDNAは,実質的にヒューン(Huynh)(1985年)が記載した方法を用いて,λgt10aの中へクローン化され,β(またはb)HCVcDNAライブラリーが得られた。使用した方法は次に示す通りである。
【0162】
血漿の一部(12ml)をプロテイナーゼKで処理し,0.05M Tris−C1,pH7.5,0.05%(v/v)β−メルカプトエタノール,0.1%(W/V)ヒドロキシキノロン,1mM EDTAで飽和させたフェノール(等量)により抽出した。得られた水層を,このフェノール混合液で再度抽出し,その後,フェノールと,クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)との1:1混合液で3回,次いで,クロロホルムとイソアミルアルコールとの混合液(1:1)で2回抽出した。この水層のNaClが200mMとなるよう調整した後,2.5倍量の冷無水エタノールにより水層相の核酸を−20℃で一晩沈澱させた。この沈澱物を,10,000RPMにて40分間の遠心分離にかけて集め,20mM NaCl含有70%エタノールおよび100%冷エタノールで洗浄後,デシケーター内で5分間乾燥させ,そして,水に溶解させた。
【0163】
感染したチンパンジーの血漿プールから単離された核酸に,ヒト胎盤リボヌクレアーゼインヒビター(HPRI)(アメルシャム社から購入)の存在下で,キャリアーとしてMS2 RNAを利用して,ポリAポリメラーゼを用いてポリrAを付加した。血漿2ml中の核酸と等量の単離された核酸を,TMN(50mM Tris HCl,pH7.9,10mM MgCl2,250mM NaCl,2.5mM MnCl2,2mMジチオスレイトール(DTT))と,40μM α−〔32P〕ATP,HPRI(アメルシャム社)20単位と,ポリAポリメラーゼ(BRL)を含まないRNaseの約9〜10単位とを含有する溶液中でインキュベートした。インキュベーションは10分間,37℃にて行い,反応は,EDTA(最終濃度約250mM)で停止させた。この溶液を,等量のフェノール−クロロホルム液,および等量のクロロホルムにより抽出し,核酸を,200mM NaClの存在下で,2.5倍容量のエタノールにより,−20℃にて一晩沈澱させた。
【0164】
クローンb5aの単離
β−HCV cDNAライブラリーを,クローン15e中のHCV cDNA配列に基づく配列を有する合成プローブを用いて,ハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。クローン15eの単離は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されており,その配列は図4に示されている。この合成プローブの配列は次のとおりである(配列番号14):
5’ ATT GCG AGA TCT ACG GGG CCT GCT ACT CCA 3’
ライブラリーのスクリーニングにより,約1000塩基対のHCV cDNA領域を含むクローンβ−5a(b5a)が得られた。このcDNAの5’領域は,クローン35f,19g,26g,および15eと重複している(これらのクローンは前出)。3’末端ポリA配列およびクローン15eと重複する3’配列は,約200塩基対を含む。このクローンにより,HCVゲノムの3’末端配列の領域を同定し得る。
【0165】
b5aの配列は,クーロン16jhにおけるHCV cDNAの配列内に含まれている(後述する)。さらに,この配列は,もとのλgt11ライブラリー(ATCC No.40394)から単離されたCC34aにも存在する(もとのλgt11ライブラリーを,以下,「C」ライブラリーと呼ぶ)。
【0166】
HCV ゲノムの3’領域のPCR増幅により生じたクローンの単離および配列決定
HCVゲノムの3’領域由来のヌクレオチド配列を含む複数のcDNAクローンが調製されている。これは,サイキ(Saiki)ら(1986年)およびサイキ(Saiki)ら(1988年)に記載されたポリメラーゼ鎖反応法によってゲノムの目標領域を増幅することにより達成され,そしてこれは次のように修飾された。増幅されたHCV RNAは,欧州特許出願公開第318,216号に記載された,HCV cDNAλgt11ライブラリー(ATCC No.40394)の調製に用いられた,もとの感染されたチンパンジーの血漿プールから得られた。HCV RNAの単離は上述のとおりであった。単離されたRNAには,チンパンジー血清から単離された核酸が核酸基質に置換されたことを除いて,シッペル(Sippel)(1973年)に記載された方法により,その3’末端に,エセリヒアコリー(E.coli)ポリAポリメラーゼを用いてATPを付加した。付加されたRNAは,次に,実質的にハン(Han)(1987年)が記載した方法により,オリゴdTプライマーアダプターを用いて,逆転写酵素によりcDNAに逆転写された。ただし,プライマー−アダプターの成分および配列は次のとおりであった(SP6プロモーター:配列番号15)。
【0167】
スタッファー
(Stuffer) AATTC
NotI GCGGCCGC
SP6 プロモーター CATACGATTTAGGTGACACTATAGAA
プライマー T 15
得られたcDNAは,次の2種のプライマーを用いて,PCRによる増幅を行った:
プライマー 配列
JH32(30mer) ATAGCGGCCGCCCTCGATTGCGAGAT
CTAC (配列番号16)
JH11(20mer) AATTCGGGCGGCCGCCATACGA (配列番号
17)
JH32プライマーは,cDNA中の目標領域の5’末端にハイブリダイズ可能な20個のヌクレオチオドを有する配列を含んでおり,推定Tmは66℃であった。JH11は,オリゴdTプライマーアダプターの一部に由来する。つまり,cDNAの3’末端に特異的であり,Tmが64℃である。両プライマーは,増幅されたHCV cDNAのその後のクローニングに使用するために,その5’末端に,制限酵素NotIの認識部位を有するように設計された。
【0168】
このPCR反応は,次の反応混合液100μl中に,cDNAとプライマーとを懸濁することにより行われた。この反応混合液は,4種のデオキシヌクレオシド三リン酸,バッファーの塩および金属イオンと,サーマスアクアティカス(Thermus aquaticus)より単離された熱安定性DNAポリメラーゼ(Taqポリメラーゼ)とを含む。これらの混合液中の各成分は,パーキンエルマーのシータスPCRキット(Cetus PCRKit)(N801−0043またはN801−0055)に入っている。PCR反応は,パーキンエルマーのシータスDNAサーマルサイクラー中で35サイクルにわたり行った。各サイクルは,94℃における1.5分間の変性工程と,60℃における2分間のアニーリング工程と,72℃における3分間のプライマー延伸工程とからなる。このPCR産物について,クローン15eの3’末端領域の配列に基づく配列の30ヌクレオチドのプローブJH34を用いて,サザンブロット分析を行なった。JH34の配列は次のとおりである(配列番号18):
5’ CTT GAT CTA CCT CCA ATC ATT CAA AGA CTC3’
HCV cDNAにより検出されたPCR産物のサイズ範囲は,約50から約400塩基対であった。
【0169】
増幅されたHCV cDNAをクローン化するために,PCR産物をNotIで切断し,ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりサイズ選択した。300塩基対を上まわる長さのDNAは,pUC18SのNotI部位にクローン化された。このベクターpUC18Sは,pUC18のEcoRI部位とSalI部位との間にクローン化されたNotIポリリンカーを含めるようにして構築された。このクローンは,JH34プローブを用いて,HCV cDNAについてスクリーニングされた。多数の陽性クローンが得られ,配列決定された。これらのクローンのうちの1つでにある16jh中のHCV cDNA挿入物のヌクレオチド配列と,そこにコードされたアミノ酸とを,図17に示す。クローン16jh中のHCV cDNAの配列を,他のクローンと,この領域について比較することにより見い出されたヌクレオチド異質性もまた,この図に示す。
【0170】
集積HCV cDNAの配列
HCV cDNA配列は,上で述べた種々のHCV cDNAライブラリーに由来する一連の重複したクローンから集積されている。この配列において,クローンb114a,18g,ag30a,CA205a,CA290a,CA216a,pi14a,CA167b,CA156e,CA84a,およびCA59aから得られた集積HCV cDNA配列は,欧州特許出願公開第318,216号に開示されている集積HCV cDNA配列の上流にあり,これは図18〜図26に示されている。クローンb5aおよび16jh由来の集積HCV cDNA配列は,欧州特許出願公開第318,216号に開示されている集積HCV cDNA配列の下流にある。
【0171】
図27〜図36は,上記クローン由来の集積HCV cDNA配列と,欧州特許出願公開第318,216号に開示されている集積HCV cDNA配列とを示す。この配列の由来となるクローンは,b114a,18g,ag30a,CA205a,CA290a,CA216a,pi14a,CA167b,CA156e,CA84a,CA59a,K9−1(k9−1とも呼ばれる),26j,13i,12f,14i,11b,7f,7e,8h,33c,40b,37b,35,36,81,32,33b,25c,14c,8f,33f,33g,39c,35f,19g,26g,15e,b5a,および16jhである。この図において,配列の上にある3つのダッシュ記号は,推定の開始メチオニンコドンの位置を示している。
【0172】
クローンb114aは,前述のクローンb5aについて記載されたクローニング法を用いて得られた。ただし,プローブは,前出のクローン18gを検出するために使用された合成プローブであった。クローンb114aは,クローン18g中に存在する配列(つまり,5’−CA)の上流にさらに2つのヌクレオチドを含んでいること以外は,クローン18g,ag30a,およびCA205aと重複している。これらのさらに2つのヌクレオチドは,図27〜図36に示すHCVゲノム配列に含まれている。
【0173】
前述のいくつかのクローンが,もとのHCVcDNAλgt11 Cライブラリー(ATCC No.40394)以外の他のライブラリーから得られているにもかかわらず,これらのクローンがもとのライブラリーのHCV cDNA配列と重複するHCV cDNA配列を含むことは,注目すべきことである。このように,実質的にすべてのHCV配列は,最初のHCV cDNAクローン(5−1−1)の単離に用いられたもとのλgt11 Cライブラリー(ATCC No.40394)から得られる。クローン5−1−1の単離は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されている。
【0174】
融合ポリペプチドC100−3の精製(別法)
融合ポリペプチドであるC100−3(HCV c100−3もしくはc100−3とも呼ばれる)は,N末端付近にスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD),そしてC末端付近のフレーム内にC100HCVポリペプチドを有する。酵母での発現によるポリペプチド調製方法,および宿主酵母細胞抽出物の不溶性画分の分別抽出は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されている。この融合ポリペプチドを調製する別の方法を,次に示す。この方法では,アセトンを用いて抗原を粗製の細胞溶解産物から沈澱させ,次いで,アセトンにより沈澱した抗原をイオン交換クロマトグラフィーにかけ,さらにゲル濾過により精製する。
【0175】
融合ポリペプチドC100−3(HCVc100−3)は,pAB24C100−3(ATCC No.67976)により形質転換された酵母JSC308株(ATCC No.20879)で発現する。この形質転換された酵母を,発現可能な条件下で増殖させる(つまり,1%のグルコースを含有するYEP中で増殖させる;欧州特許出願公開第318,216号参照)。細胞溶解産物は,この細胞を緩衝液A(20mM Tris HCl,pH8.0,1mM EDTA,1mMPMSF)に懸濁することにより調製される。この細胞は,ダイノミル(Dynomill)型ホモジナイザーもしくはそれと同様のホモジナイザーのガラスビーズで粉砕されることにより破壊される。細胞破壊の度合は,位相差顕微鏡により細胞を計数することによりモニターする。破壊された細胞は暗く見え,生存細胞は,明るい色に見える。破壊された細胞の割合(%)を算出する。
【0176】
破壊細胞の割合が約90%またはそれ以上になったら,破壊細胞残屑を遠心分離によりガラスビーズから分離し,ガラスビーズを緩衝液Aで洗浄する。洗浄液とホモジネートとを合わせた後,溶解産物中の不溶性物質を遠心分離により得る。ペレット中の物質は,溶解性タンパクを取り除くために,緩衝液B(50mM グリシン,pH12.0,1mM DTT,500mM NaCl),次いで,緩衝液C(50mM グリシン,pH10.0,1mM DTT)に懸濁することにより洗浄される。不溶性物質は,遠心分離により回収され,SDSを含む緩衝液Cに懸濁することにより溶解する。抽出溶液は,β−メルカプトエタノール存在下で加熱され,そして,限外濾過により濃縮され得る。抽出物中のHCV c100−3は,冷アセトンにより沈澱する。必要に応じて,この沈澱物は,約−15℃またはそれ以下の温度で保存され得る。
【0177】
イオン交換クロマトグラフィーにかける前に,アセトン沈澱物は遠心分離により回収され,そして窒素下で乾燥され得る。この沈澱物は,緩衝液D(50mM グリシン,pH10.0,1mM DTT,7M 尿素)中に懸濁され,そして,不溶性物質をペレット化するため遠心分離が行われる。上清物質は,あらかじめ緩衝液Dで平衡化した陰イオン交換カラムにかけられる。画分を採取し,紫外吸収あるいはSDSポリアクリルアミドゲルによるゲル電気泳動により分析する。HCV c100−3ポリペプチドを含む画分をプールする。
【0178】
HCV c100−3ポリペプチドをゲル濾過により精製する目的で,イオン交換カラムからのプール画分を,β−メルカプトエタノールおよびSDSの存在下で加熱し,溶出液を限外濾過により濃縮する。濃縮物は,あらかじめ緩衝液E(20mM Tris HCl,pH7.0,1mMDTT,0.1% SDS)で平衡化したゲル濾過カラムにかけられる。溶出画分中のHCV c100−3および不純物の存在は,SDS存在下におけるポリアクリルアミドゲルによるゲル電気泳動,およびポリペプチドの視覚化により測定される。精製HCV c100−3を含む画分をプールする。HCV c100−3含量の高い画分は,ゲル濾過工程を繰り返すことによりさらに精製され得る。微粒子物質を取り除きたい場合には,HCV c100−3を含む物質は,0.22μのフィルターで濾過され得る。
【0179】
HCV cDNAをコードするポリペプチドの発現および抗原性
エセリヒア・コリー(E.coli)で発現するポリペプチド
HCVゲノムORFにわたる数多くのHCV cDNA中にコードされるポリペプチドは,E.coliで発現され,NANBHを有する種々の個体から得られた血清を用いてその抗原性が試験された。クローン化されたHCV cDNAを含む発現ベクターは,pSODcf1から構築された(スタイマー(Steimer)ら,1986年)。正確なリーディングフレームが得られていることを確認する目的で,3種の異なる発現ベクターpcf1AB,pcf1CD,およびpcf1EFを,次の方法で調製した。つまり,3種のリンカーAB,CD,およびEFのいずれかと,ベクターpSODcf1をEcoRIおよびBamHIにより完全に切断してアルカリフォスファターゼ処理することにより得られるBamHI−EcoRI断片とを結合させることにより,調製した。これらのリンカーは,6種のオリゴマー,A,B,C,D,E,およびFから調製された。各オリゴマーは,その相補的オリゴマーとアニールする前に,ATP存在下でキナーゼ処理することによりリン酸化された。この合成リンカーの配列は次のとおりである。
名称 DNA配列 (5’から3’へ)
A GATC CTG AAT TCC TGA TAA (配列番号19)
B GAC TTA AGG ACT ATT TTA A (配列番号20)
C GATC CGA ATT CTG TGA TAA (配列番号21)
D GCT TAA GAC ACT ATT TTA A (配列番号22)
E GATC CTG GAA TTC TGA TAA (配列番号23)
F GAC CTT AAG ACT ATT TTA A (配列番号24)
3種のリンカーにおいては,それぞれもとのEcoRI部位がなくなり,リンカー内ではあるが異なるリーディングフレーム内に新しいEcoRI 部位が形成されている。従って,これらのクローンから単離されたHCV cDNA EcoRI断片は,発現ベクター内に挿入されたときには,3つの異なるリーディングフレーム内にあった。指定されたλgt11クローン中のHCV cDNA断片は,EcoRI で切断することにより切り出され,各断片はpcf1AB,pcf1CD,およびpcf1EFに挿入された。次に,これらの発現構築物は,D1210 E.coli細胞内に導入され,その形質転換物をクローン化し,各クローン由来の組換え細菌は,IPTG存在下で増殖させることにより融合ポリペプチドを発現するように誘導された。
【0180】
前述のHCV cDNAの発現産物は,ヘルフマン(Helfman)ら(1983年)に記載された方法の変法を用いて,コロニーを直接,免疫学的にスクリーニングすることにより,抗原性について試験された。簡単に言えば,図37に示すように,アンピシリンプレート上にのせられたニトロセルロースフィルター上に細菌をプレートし,フィルターあたり約1,000個のコロニーを形成させる。コロニーを,ニトロセルロースフィルター上にレプリカし,このレプリカを,2mM IPTGおよびアンピシリンの存在下で一晩再増殖させた。細菌コロニーは,ニトロセルロースフィルターを飽和CHCl3蒸気中に約15〜20分間つり下げることにより溶菌した。次に,各フィルターを,50mMTris HCl,pH7.5,150mM NaCl,5mMMgCl23%(w/v)BSA,40μg/mlリゾチーム,および0.1μg/ml DNaseを10ml含む直径100mmのペトリ皿にそれぞれ載置した。これらのペトリ皿は,室温で少なくとも8時間,静かに振とうした。このフィルターを,TBST(50mM Tris HCl,pH8.0,150mMNaCl,0.005% Tween20) 中ですすいだ。インキュベーションの後,細胞残渣をすすぎ,10%ヒツジ血清を含むTBS(Tweenを除いたTBST)中で1時間インキュベートした。次に,このフィルターをNANBHの個体由来でありTBS中で前処理した血清とともにインキュベートした。そのNANBHの個体とは次の個体を含む:チンパンジー3個体;HCV c100−3ポリペプチド(欧州特許出願公開第318,216号に記載および前出)(C100とも呼ばれる)に対する抗体について血清が陽性である慢性NANBH患者8個体;抗C100抗体について血清が陰性である慢性NANBH患者8個体;抗C100抗体について血清が陰性である回復期の患者1個体;および集団獲得型NANBH患者6個体(抗C100抗体について血清が強陽性である患者1個体および抗C100抗体について血清がかすかに陽性である1個体を含む)。TBS中に希釈した血清は,hSODをあらかじめ吸収させることにより,前処理が行われた。フィルターを血清とともにインキュベートするのは,少なくとも2時間行われた。インキュベーション後,フィルターをTBSTで30分間にわたり2回洗浄した。発現タンパク(これに,血清中の抗体が結合する)の標識化は,125I−標識ヒツジ抗ヒト抗体と2時間インキュベートすることにより達成された。洗浄後,フィルターをTBSTで30分間にわたり2回洗浄し,乾燥し,そしてオートラジオグラフィーにかけた。
【0181】
多くのクローン(後述する)が,NANBH個体の血清と免疫学的に反応するHCV エピトープを含むポリペプチドを発現した。これらのポリペプチドのうちの5つは,これらのポリペプチド中のHCVエピトープに対する抗体が多くの異なる患者の血清において検出されたという点で,非常に免疫原性であった。これらのポリペプチドをコードするクローン,および推定HCVポリタンパク中のこのポリペプチドの位置(アミノ酸番号は,推定開始コドンから数える)は次のとおりである:クローン5−1−1,アミノ酸1694−1735;クローンC100,アミノ酸1569−1931;クローン33c,アミノ酸1192−1457;クローンCA279a,アミノ酸1−84;およびクローンCA290a,アミノ酸9−177。推定HCVポリタンパク中の免疫原性ポリペプチドの位置は,すぐ後で示す。
NANBH 患者の血清との反応性が確認されたポリペプチドをコードするクローン
クローン HCV ポリタンパク中の位置
(推定開始メチオニンから数えたアミノ酸番号)
CA279a 1−84
CA74a 437−582
13i 511−690
CA290a 9−177
33c 1192−1457
40b 1266−1428
5−1−1 1694−1735
81 1689−1805
33b 1916−2021
25c 1949−2124
14c 2054−2223
8f 2200−3325
33f 2287−2385
33g 2348−2464
39c 2371−2502
15e 2796−2886
C100 1569−1931
試験した種々のクローン内に,コードされたポリペプチドの抗原性についての結果から,有効な検出および免疫化系は,HCVポリペプチド/エピトープのパネルを含み得ることが示唆される。
【0182】
酵母でのHCV エピトープの発現
3つの異なるリーディングフレームにHCVcDNAを挿入し得る3つの異なる酵母発現ベクターが構築される。これらのベクターの1つであるpAB24C100−3 の構築は,欧州特許出願公開第318,216号に記載されている。以下の研究においては,E.coli発現産物を用いた抗原性マッピングの研究における前述の表のクローン由来のHCV cDNAを,C100HCV cDNAの代わりに用いる。他のベクターの構築では,上記E.coliの研究に記載されたアダプターが,次のアダプターのうちの1つに置き換えられる:
アダプター1
ATT TTG AAT TCC TAA TGA G (配列番号25)
AC TTA AGG ATT ACT CAG CT (配列番号26)
アダプター2
AAT TTG GAA TTC TAA TGA G (配列番号27)
AC CTT AAG ATT ACT CAG CT (配列番号28)
挿入されたHCV cDNAは,ベクターにより形質転換された酵母において,融合ポリペプチドC100−3の発現について上述したのと同様の発現条件により発現する。得られたポリペプチドは,E.coliで発現されるHCV cDNA内にコードされた免疫原性ポリペプチドのスクリーニングについて上述した,NANBH 個体由来の血清を用いてスクリーニングされる。
【0183】
HCVポリタンパクと西ナイルウイルス(West Nile Virus)ポリタンパクおよびデングウイルス(Dengue Virus)NS1との疎水性プロファイルについての比較
HCVポリタンパクセグメントの疎水性プロファイルを,典型的なフラビウイルスである西ナイルウイルス(West Nile Virus)のそれと比較した。西ナイルウイルスポリタンパクのポリペプチド配列は,このウイルスの非構造タンパクをコードする既知のポリヌクレオチド配列から推測された。HCVポリタンパク配列は,重複するcDNAクローン配列から推測された。このプロファイルは,与えられたアミノ酸残基周辺の平均的な疎水性を調べるために,7個のアミノ酸(問題のアミノ酸,およびその両側に各3残基)からなる長さのウインドーを使用する抗原プログラムを用いて決定された。各アミノ酸残基の反応疎水性(reactive hydrophobicity)を与えるパラメーターは,カイトおよびドリトル(Kyte and Doolittle)(1982年)に示されている。図38〜図42は,この2つのポリタンパクの疎水性プロファイルを示す。西ナイルウイルスの非構造タンパク,ns1からns5に対応する部分をこの図に示す。この図からわかるように,HCVポリタンパクおよび西ナイルウイルスポリタンパクのプロファイルは,全体として類似している。
【0184】
図18〜図26に示されるHCV cDNAの5’領域にコードされているアミノ酸の配列を,その疎水性および親水性の領域のプロファイルについて,前述のデングウイルスのうちの1つの株の対応領域と比較した(データは示されていない)。この比較により,この領域にコードされるHCVおよびデング由来のポリペプチド(NS1(またはその一部)をコードする領域に対応する)は,同様の疎水性/親水性プロファイルを有することが示された。
【0185】
疎水性プロファイルが類似していることと,HCVおよびデングフラビウイルスのアミノ酸配列が相同性を有することが既にわかっている(欧州特許第218,316号に開示)こととを組み合わせると,HCVがフラビウイルス科のこれらメンバーと関連性のあることが示唆される。
【0186】
HCV ORF内にコードされた推定ポリペプチドの特性決定
図27〜図36に示すHCV cDNAのセンス鎖の配列は,欧州特許出願公開第318,216号に記載された種々のクローンおよび前述のクローンにおける重複HCV cDNAから推定された。HCVゲノムが,ポリタンパクをコードする1つの長い連続したORFを主に含んでいることは,この配列から推測することできる。この配列において,番号1のヌクレオチドは,開始METコドンの第1ヌクレオチドに対応し,負の番号は,ヌクレオチドが5’方向(上流)にそれだけの距離で存在することを示し,正の番号は,ヌクレオチドが3’方向(下流)にそれだけの距離で存在することを示す。この複合配列は,HCV cDNAの「センス」鎖を示す。
【0187】
HCV cDNAセンス鎖配列から推定さた推定HCV ポリタンパクのアミノ酸配列もまた,図27〜図36に示されており,1番は推定開始メチオニンから始まる。
【0188】
コードされたHCVポリタンパクの可能なタンパク領域およびそのおよその境界は次のとおりである(括弧内に示されたポリペプチドは,フラビウイルスの領域内にコードされているポリペプチドである):
推定ドメイン およその境界
(アミノ酸番号)
「C」(ヌクレオカプシドタンパク) 1−120
「E」(ビリオンエンベロープタンパク 120−400
(S)および推定のマトリックス(M)
タンパク)
「NS1」(補体結合抗原?) 400−660
「NS2」(機能不明) 660−1050
「NS3」(プロテアーゼ?) 1050−1640
「NS4」(機能不明) 1640−2000
「NS5」(ポリメラーゼ) 2000−?末端
しかし,この疎水性プロファイル(後述する)が,特にNS2の上流領域に関して,HCVがフラビウイルスモデルと異なることを示しているのは注目すべきである。さらに,示された境界は,推定ポリペプチド間の正確な境界を示すものではない。
【0189】
さらに,図27〜図36に示す配列から大きなポリタンパクの推定開始METの上流に存在する,ATGを含む小さなORFが4つあることが,推測され得る。これらのORFのATGは,ヌクレオチド番号−310,−257,−246,および−127に存在する。
【0190】
ポリペプチドの親水性および抗原性プロファイル
図18〜図26に示すHCV cDNA配列にコードされる推定ポリタンパクの,親水性/疎水性プロファイルおよび抗原指数(antigenicindex)は,コンピューター解析により決定された。親水性/疎水性についてのプログラムは上述のとおりである。抗原指数は次の基準をもとにしたコンピュータープログラムにより決定される:1)表面抗原である確率(surface probability);2)2つの異なる方法によるα−ヘリックスを有するか否かの予測;3)2つの異なる方法によるβ−シート領域を有するか否かの予測;4)2つの異なる方法によるU字形折り返し構造を有するか否かの予測;5)親水性/疎水性;および可撓性。コンピューター解析により得られたプロファイルの記録を図43〜図48に示す。親水性プロファイルでは,横軸より上側への片寄りが親水性を示し,横軸より下側への片寄りが疎水性を示す。ポリペプチド領域が抗原性である可能性は,親水性および/または抗原性プロファイルにおいて横軸より上側への片寄りがある場合に,通常,増加すると考えられている。しかし,これらのプロファイルは,ポリペプチドの免疫原性の強さを必ずしも示すものではないことを注意すべきである。
【0191】
HCVおよびフラビウイルスにおける共直線ペプチド(co−linear peptides)の同定
HCV cDNAセンス鎖内にコードされた推定ポリタンパクのアミノ酸配列を,フラビウイルスのいくつかのメンバーの既知のアミノ酸配列と比較した。この比較によると,相同性は少ないが,相同性が見い出された領域から判断して,おそらくこの相同性は有意である。この保持された共直線性領域を図49に示す。配列の下に記されたアミノ酸番号は,推定HCVポリタンパクの番号である(図27〜図36参照)。
【0192】
これらの保持されたモチーフの間隔は,フラビウイルスとHCVとで類似しており,HCVとこれらフラビウイルス試薬との間にもある程度の類似性のあることを意味している。
【0193】
以下の表に示す物質は,アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC),12301 ParklawnDr.Rockville,Maryland 20852,にブダペスト条約に基づいて寄託され,次の受託番号が付与されている。
【0194】
λgt11 ATCC No. 寄託日
HCV cDNAライブラリー 40394 1987年12月1日
クローン81 40388 1987年11月17日
クローン91 40389 1987年11月17日
クローン1−2 40390 1987年11月17日
クローン5−1−1 40391 1987年11月18日
クローン12f 40514 1988年11月10日
クローン35f 40511 1988年11月10日
クローン15e 40513 1988年11月10日
クローンK9−1 40512 1988年11月10日
JSC 308 20879 1988年5月5日
pS356 67683 1988年4月29日
さらに,次の寄託が1989年5月11日になされた。
【0195】
菌株 リンカー ATCC No.
D1210(Cf1/5−1−1) EF 67967
D1210(Cf1/81) EF 67968
D1210(Cf1/CA74a) EF 67969
D1210(Cf1/35f) AB 67970
D1210(Cf1/279a) EF 67971
D1210 (Cf1/C36) CD 67972
D1210(CF1/13i) AB 67973
D1210(Cf1/C33b) EF 67974
D1210(Cf1/CA290a) AB 67975
HB101(AB24/C100 #3R) 67976
以下のD1210株の誘導株は,1989年5月3日に寄託された。
【0196】
誘導株 ATCC No.
pCF1CS/C8f 67956
pCF1AB/C12f 67952
pCF1EF/14c 67949
pCF1EF/15e 67954
pCF1AB/C25c 67958
pCF1EF/C33c 67953
pCF1EF/C33f 67950
pCF1CD/33g 67951
pCF1CD/C39c 67955
pCF1EF/C40b 67957
pCF1EF/CA167b 67959
以下の菌株は,1989年5月12日に寄託された。
【0197】
菌株 ATCC No.
λgt11(C35) 40603
λgt10(β−5a) 40602
D1210(C40b) 67980
D1210(M16) 67981
本出願が米国特許として許可され発行されると,これら寄託物を利用することに関する制限はすべて最終的に取り除かれる。そして上記命名された寄託物は,米国特許法施行規則 1.14および米国特許法1.22により,上記出願が係属している間に特許商標庁長官によって権利を与えられた者が,入手可能である。さらに,その寄託物は,寄託日から30年間,あるいは寄託物の最終分譲請求から5年間;あるいは,米国特許の有効期間のいずれか長い方の期間にわたって,維持される。
【0198】
ここで述べられている寄託物は便宜のためにのみ寄託されたものであり,ここに記載された内容により本発明を実施するのに必要ではない。さらに,これらの寄託物は,参考として,ここに述べられている。
【産業上の利用可能性】
【0199】
産業上の利用可能性
本発明は,ここに開示された種々の事柄について,多くの産業上の用途があり、そのうちのいくつかは以下のとおりである。HCV cDNAは,試料中のHCV核酸を検出するためのプローブの設計に使用され得る。cDNA由来のプローブは,例えば化学的な合成反応におけるHCV核酸の検出に使用され得る。それらはまた,細胞培養系および動物モデル系におけるウイルスの複製を阻害する薬剤の効果を判定するために,抗ウイウルス剤についてのスクリーニングプログラムにも使用され得る。HCVポリヌクレオチドプローブはまた,ヒトにおけるウイルス核酸を検出するのに有用であり,従ってヒトにおけるHCV感染の診断の基準として使用され得る。
【0200】
上記に加え,ここに示されたcDNAは,HCVのエピトープを含むポリペプチドの合成についての情報および手段を提供する。これらのポリペプチドは,HCV抗原に対する抗体を検出するのに有用である。HCVエピトープを含む組換えポリペプチドに基づく,HCV感染の一連の免疫学的検定法がここに記載されており,HCVにより引き起こされたNANBHの診断,HCVによる感染性肝炎について,血液バンク供血者のスクリーニングを行なうこと,および感染血液の供血者からの汚染血液の検出において,商業上の用途が見い出される。ウイルス抗原もまた,動物モデル系における抗ウイルス剤の有効性をモニターする上で有用性がある。さらに,ここに開示されているHCV cDNA由来のポリペプチドは,HCV感染を処置するためのワクチンとして有効性がある。
【0201】
HCV cDNA由来のポリペプチドは,上記用途以外に,抗HCV抗体を増加させるのにも有用である。このように,これらは,抗HCVワクチンとして使用され得る。しかし,HCVポリペプチドで免疫することにより生成する抗体は,試料中のウイルス抗原の存在を検出するためにも有用である。従って,これは,化学的な系におけるHCVポリペプチド生成のアッセイに使用され得る。抗HCV抗体はまた,抗ウイルス剤のスクリーニングプログラム(ここで,これらの試薬は組織培養系で試験される)において,抗ウイルス剤の有効性をモニターするために使用され得る。それらはまた,受動免疫療法にも使用され得,そして,供血者および受血者の両方についてウイルス抗原を検出することにより,HCVにより引き起こされるNANBHを診断するためにも使用され得る。抗HCV抗体の他の重要な用途は,ウイルスおよびウイルスポリペプチドの精製のためのアフィニティークロマトグラフィーにおける用途である。精製されたウイルスおよびウイルスポリペプチド調製物は,ワクチンに使用され得る。しかし,精製されたウイルスは,また,HCVが複製される細胞培養系の開発にも有用であり得る。
【0202】
アンチセンスポリヌクレオチドは,ウイルス複製の阻害剤として使用され得る。
【0203】
便宜上,抗HCV抗体およびHCVポリペプチドは,天然物であっても組換え体であっても,キットのなかへ組み込まれ得る。
【0204】
[配列表]
(配列番号1)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GAA CGT TGCGAT CTG GAA GAC AGG GAC AGG 30
(配列番号2)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
TAT CAG TTATGC CAA CGG AAG CGG CCC CGA 30
(配列番号3)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
CTG GTT AGCAGG GCT TTT CTA TCA CCA CAA 30
(配列番号4)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
AAG GTC CTGGTA GTG CTG CTG CTA TTT GCC 30
(配列番号5)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
ACT GGA CGACGC AAG GTT GCA ATT GCT CTA 30
(配列番号6)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
TTC GAC GTCACA TCG ATC TGC TTG TCG GGA 30
(配列番号7)
配列の長さ:15
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GGT GAC GTGGGT TTC 15
(配列番号8)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GGC TTT ACCACG TCA CCA ATG ATT GCC CTA 30
(配列番号9)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
配列
TTT GGG TAAGGT CAT CGA TAC CCT TAC GTG 30
(配列番号10)
配列の長さ:15
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GAA GCC GCA CGTAAG 15
(配列番号11)
配列の長さ:27
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
CCG GCG TAGGTC GCG CAA TTT GGG TAA 27
(配列番号12)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
TCA GAT CGTTGG TGG AGT TTA CTT GTT GCC 30
(配列番号13)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
CCA TAG TGGTCT GCG GAA CCG GTG AGT ACA 30
(配列番号14)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
ATT GCG AGATCT ACG GGG CCT GCT ACT CCA 30
(配列番号15)
配列の長さ:26
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
CATACGATTTAGGTGACACT ATAGAA 26
(配列番号16)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
ATAGCGGCCGCCCTCGATTG CGAGATCTAC 30
(配列番号17)
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
AATTCGGGCGGCCGCCATAC GA 22
(配列番号18)
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
CTT GAT CTACCT CCA ATC ATT CAA AGA CTC 30
(配列番号19)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GATC CTG AAT TCC TGA TAA 19
(配列番号20)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GAC TTA AGG ACT ATT TTA A 19
(配列番号21)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GATC CGA ATT CTG TGA TAA 19
(配列番号22)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GCT TAA GAC ACT ATT TTA A 19
(配列番号23)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GATC CTG GAA TTC TGA TAA 19
(配列番号24)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
GAC CTT AAG ACT ATT TTA A 19
(配列番号25)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:両形態
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
ATT TTG AATTCC TAA TGA G 19
(配列番号26)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:両形態
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
TC GAC TCA TTAGGA ATT CA 19
(配列番号27)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:両形態
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
AAT TTG GAATTC TAA TGA G 19
(配列番号28)
配列の長さ:19
配列の型:核酸
鎖の数:両形態
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA配列
TC GAC TCA TTAGAA TTC CA 19
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は,クローン12fにおけるHCV cDNAの配列およびこの配列内にコードされたアミノ酸を示す。
【図2】図2は,クローンk9−1におけるHCV cDNA配列およびこの配列内にコードされたアミノ酸の一部を示す。
【図3】図3は,図2の続きである。
【図4】図4は,クローン15eの配列およびこの配列内にコードされたアミノ酸を示す。
【図5】図5は,クローン13iにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびクローン12fと重複する配列を示す。
【図6】図6は,クローン26jにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびクローン13iと重複する配列を示す。
【図7】図7は,クローンCA59aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびクローン26jおよびk9−1と重複する配列を示す。
【図8】図8は,クローンCA84aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびクローンCA59aと重複する配列を示す。
【図9】図9は,クローンCA156eにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびCA84aと重複する配列を示す。
【図10】図10は,クローンCA167bにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびCA156eと重複する配列を示す。
【図11】図11は,クローンCA216aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列内にコードされたアミノ酸,およびクローンCA167bと重複するものを示す。
【図12】図12は,クローンCA290aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列にコードされたアミノ酸,およびクローンCA216aと重複するものを示す。
【図13】図13は,クローンag30aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列およびクローンCA290aと重複するものの一部を示す。
【図14】図14は,図13の続きである。
【図15】図15は,クローンCA205aにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,およびクローンCA290aにおけるHCV cDNA配列と重複するものを示す。
【図16】図16は,クローン18gにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,およびクローンag30aにおけるHCV cDNA配列と重複するものを示す。
【図17】図17は,クローン16jhにおけるHCV cDNAのヌクレオチド配列,この配列にコードされたアミノ酸,およびクローン15e におけるHCV cDNA配列と重複するヌクレオチドを示す。
【図18】図18は,クローンpi14a,CA167b,CA156e,CA84a,CA59a,K9−1,12f,14i,11b,7f,7e,8h,33c,40b,37b,35,36,81,32,33b,25c,14c,8f,33f,33g,39c,35f,19g,26g,および15eに由来するHCV cDNAのORFの一部を示す。
【図19】図19は,図18の続きである。
【図20】図20は,図19の続きである。
【図21】図21は,図20の続きである。
【図22】図22は,図21の続きである。
【図23】図23は,図22の続きである。
【図24】図24は,図23の続きである。
【図25】図25は,図24の続きである。
【図26】図26は,図25の続きである。
【図27】図27は,上記クローン由来の集積HCV cDNA配列および欧州特許出願公開第318,216号において公開された集積HCV cDNAのセンス鎖の一部を示す。配列の由来となるクローンは,b114a,18g,ag30a,CA205a,CA290a,CA216a,pi14a,CA167b,CA156e,CA84a,CA59a,K9−1(k9−1とも呼ばれる),26j,13i,12f,14i,11b,7f,7e,8h,33c,40b,37b,35,36,81,32,33b,25c,14c,8f,33f,33g,39c,35f,19g,26g,15e,b5a,および16jhである。この図において,配列の上の3つのダッシュ記号は,推定されるメチオニン開始コドンの位置を示す。また,複合HCV cDNA内にコードされた推定ポリタンパクのアミノ酸配列も,この図に示されている。
【図28】図28は,図27の続きである。
【図29】図29は,図28の続きである。
【図30】図30は,図29の続きである。
【図31】図31は,図30の続きである。
【図32】図32は,図31の続きである。
【図33】図33は,図32の続きである。
【図34】図34は,図33の続きである。
【図35】図35は,図34の続きである。
【図36】図36は,図35の続きである。
【図37】図37は,抗原マッピング研究において使用された免疫学的コロニースクリーニング法の図である。
【図38】図38は,HCVおよび西ナイル(West Nile)ウイルス内にコードされたポリタンパクの疎水性プロファイルの一部を示す。
【図39】図39は,図38の続きである。
【図40】図40は,図39の続きである。
【図41】図41は,図40の続きである。
【図42】図42は,図41の続きである。
【図43】図43は,推定HCVポリタンパクの親水性/疎水性プロファイルおよび抗原指数の記録の一部である。
【図44】図44は,図43の続きである。
【図45】図45は,図44の続きである。
【図46】図46は,図45の続きである。
【図47】図47は,図48の続きである。
【図48】図48は,図47の続きである。
【図49】図49は,HCVおよびフラビウイルスにおいて保存されている共直線ペプチドを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列からなるポリペプチド中の部位に免疫学的に結合する、抗C型肝炎ウイルス(HCV)抗体であって、
ここで、該部位は、HCVに対する抗体によって結合され得、そして該少なくとも8個のアミノ酸の連続する配列は、以下のアミノ酸配列:
【化101】


【化102】


中に1または数個の欠失、挿入、または置換を有するアミノ酸配列から得られる、抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【公開番号】特開2006−169233(P2006−169233A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325485(P2005−325485)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【分割の表示】特願平10−93767の分割
【原出願日】平成2年3月15日(1990.3.15)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】