説明

NAS電池の充電制御装置及び方法

【課題】NAS電池に並列に接続された複数の電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの各々のNAS電池に対して最適の充電量を確保できるNAS電池の補充電制御を提供することである。
【解決手段】主制御装置14は、NAS電池システム全体のNAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行い、各相制御装置15R、15S、15Tは、充電停止電圧になったNAS電池12に対して主充電時の電力よりも低い電力で順次段階的に予め定めた回数まで補充電制御を行い、その際に、自己相のカスケード接続されたNAS電池12ごとに補充電の回数をカウントするとともに、NAS電池12の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池12の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池として電力貯蔵などに利用されるNAS電池の充電制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会を実現するためには、太陽光発電設備や風力発電設備などの再生可能エネルギーの普及拡大が望まれる。しかし、自然エネルギーを用いて発電する太陽光発電設備や風力発電設備の発電量は天候に左右されるので、出力変動が激しく周波数変動や電圧変動の増大、さらには余剰電力の発生などの様々な問題が顕在化する恐れがある。
【0003】
太陽光発電設備や風力発電設備の出力変動対策や余剰電力対策としては、二次電池の設置が効果的であると考えられ、電力変換器をカスケードに接続してカスケード変換器を構成し、各々の電力変換器に二次電池を接続して構成された電力貯蔵装置が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。カスケード変換器の直流電圧部はそれぞれ独立しており、二次電池と単相ブリッジコンバータを1つのセル構造としており、拡張性が高く高耐圧設計や低歪みの出力波形を実現できる。
【0004】
また、二次電池としてNAS電池(ナトリウム−硫黄電池)を用い、複数のNAS電池を直列接続して構成されたストリングを所定数並列に接続してブロックを構成し、さらに、そのブロックを基本単位として所定数直列に接続して集合電池を構成し、この集合電池を充電するに際し、第1段階で定格充電を行い、所定電圧に達した後、第2段階で第1段階の定格充電電流よりも低い電流を通電して充電を行い、過電圧を避けながら充電量を充分に確保し、単電池毎の充電量のばらつきを抑えるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−235331号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】平成21年電気学会全国大会、4−166、2009/3/17〜19北海道、電池電力貯槽装置に使用するカスケードPWM変換器の実験的検討
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のものは集合電池を充電するものであるので、NAS電池の充電状態にばらつきがあると、集合電池を構成するNAS電池のうち充電深度の大きいNAS電池に合わせた充電となる。このことから、充電深度に余裕のあるNAS電池は、充電深度に余裕を残した状態で充電が終了し、必ずしも集合電池全体として最適の充電量を確保できるとは限らない。
【0008】
本発明の目的は、NAS電池に並列に接続された複数の電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの各々のNAS電池に対して最適な充電量を確保できるNAS電池の充電制御装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係るNAS電池の充電制御装置は、NAS電池に並列に電力変換器を接続し、前記電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの前記NAS電池を充電制御するNAS電池の充電制御装置において、前記NAS電池システム全体の前記NAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行う主制御装置と、前記三相の各相ごとに設けられ前記主制御装置による主充電により自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池が充電停止電圧になったときは充電停止電圧になったNAS電池に対して主充電時の電力よりも低い電力で順次段階的に予め定めた回数まで補充電する各相制御装置とを備え、前記各相制御装置は、自己相のカスケード接続されたNAS電池ごとに補充電の回数をカウントするとともに、前記NAS電池の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係るNAS電池の充電制御方法は、NAS電池に並列に電力変換器を接続し、前記電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの前記NAS電池を充電制御するNAS電池の充電制御方法において、前記NAS電池システム全体の前記NAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行い、自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池が充電停止電圧になったときは充電停止電圧になったNAS電池に対して主充電時の電力よりも低い電力で補充電し、補充電をした回数をカスケード接続されたNAS電池ごとにカウントし、NAS電池の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、NAS電池システム全体のNAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行い、自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池が充電停止電圧になったときは充電停止電圧になったNAS電池に対して主充電時の電力よりも低い電力で補充電し、補充電をした回数をカスケード接続されたNAS電池ごとにカウントし、NAS電池の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電するので、同一相のカスケード接続されたNAS電池の補充電回数が一定値以上ばらつかないため、カスケード接続された変換器の出力電圧のばらつきも小さいためカスケード変換器の特徴である高調波抑制の効果も確保でき、かつNAS電池システムの各々のNAS電池に対して最適の充電量を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るNAS電池の充電制御装置の一例を示す構成図。
【図2】本発明の実施形態で使用するNAS電池システムの一例を示す構成図。
【図3】本発明の実施形態における補充電係数算出部から出力される補充電係数の説明図。
【図4】本発明の実施形態における補充電回数計数部及び補充電回数補正部の動作の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における補充電電流補正部から出力される電流補正係数の説明図。
【図6】本発明の実施形態における補充電電力補正部から出力される電力補正係数の説明図。
【図7】本発明の実施形態に係るNAS電池の充電制御装置の補充電制御の動作の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係るNAS電池の充電制御装置の一例を示す構成図、図2は本発明の実施形態で使用するNAS電池システムの一例を示す構成図である。
【0014】
図2において、NAS電池システムは、三相交流系統のR相、S相、T相に対応して、各相毎にカスケード変換器システム11R、11S、11Tが設けられている。カスケード変換器システム11R、11S、11Tは、NAS電池12が並列接続された複数の電力変換器13をカスケードに接続して構成され、各相のカスケード変換器システム11R、11S、11Tは、Y接続されてNAS電池システムを構成している。
【0015】
図2では、各々のカスケード変換器システム11R、11S、11Tには、それぞれ3個の電力変換器13がカスケードに接続された場合を示している。R相のカスケード変換器システム11Rには、3個の電力変換器13R1、13R2、13R3がカスケード接続され、それらにNAS電池12R1、12R2、12R3が並列接続されている。同様に、S相のカスケード変換器システム11Sには、3個の電力変換器13S1、13S2、13S3がカスケード接続され、それらにNAS電池12S1、12S2、12S3が並列接続され、T相のカスケード変換器システム11Tには、3個の電力変換器13T1、13T2、13T3がカスケード接続され、それらにNAS電池12T1、12T2、12T3が並列接続されている。
【0016】
このようなNAS電池システムでは、カスケード接続された各々の電力変換器13R1、13R2、13R3、電力変換器13S1、13S2、13S3、電力変換器13T1、13T2、13T3のPWMキャリアを位相シフトすることによって高調波の発生を抑制できるものである。
【0017】
図1において、充電制御装置は、NAS電池システム全体のNAS電池の主充電を行う主制御装置14と、三相の各相ごとに補充電を行う各相制御装置15R、15S、15Tとを有している。
【0018】
主制御装置14は、NAS電池システム全体のNAS電池12の主充電を行うものであり、NAS電池システム全体のNAS電池12のうちのいずれかが充電停止電圧になると、各相制御装置15R、15S、15Tが起動され、主制御装置14による主充電に各相制御装置15R、15S、15Tによる補充電のための補正が掛かる。
【0019】
各相制御装置15R、15S、15Tは、主制御装置14による主充電により自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池12が充電停止電圧になったときに起動し、充電停止電圧になったNAS電池12に対して主充電時の電力よりも低い電力で順次段階的に予め定めた回数まで補充電するものである。
【0020】
各相制御装置15R、15S、15Tは、補充電回数計数部16R、16S、16T、補充電回数補正部17R、17S、17T及び補充電係数算出部18R、18S、18Tを有する。
【0021】
補充電回数計数部16R、16S、16Tは、自己相のカスケード接続されたNAS電池12R1、12R2、12R3、NAS電池12S1、12S2、12S3、NAS電池12T1、12T2、12T3ごとに補充電の回数をカウントするものである。例えば、補充電として、主充電時の充電電力基準値Paを1/nずつ段階的に減少させた電力Pa{1−(1/n)・k}で補充電を行う場合には、k(=1〜n−1)をカウントすることになる。すなわち、補充電を開始した1回目(k=1)は、Pa{1−(1/n)}の電力で補充電を行い、補充電の最終回(k=n−1)では、Pa{1−(1/n)・(n−1)}の電力で補充電を行う。k=nのときは補充電の電力が零となるので、補充電の回数は最大でk=n−1となる。
【0022】
補充電は、主充電制御装置14からの主充電制御指令に、補充電係数算出部18R、18S、18Tからの補充電係数GR1、GR2、GR3、補充電係数GS1、GS2、GS3、補充電係数GT1、GT2、GT3を乗算器で乗算することによって得られた補充電制御指令により、電力変換器13R1、13R2、13R3、電力変換器13S1、13S2、13S3、電力変換器13T1、13T2、13T3のPWM制御部19R1、19R2、19R3、PWM制御部19S1、19S2、19S3、PWM制御部19T1、19T2、19T3を制御することによって行われる。
【0023】
図3は、補充電係数算出部18R、18S、18Tから出力される補充電係数GR1、GR2、GR3、補充電係数GS1、GS2、GS3、補充電係数GT1、GT2、GT3の説明図である。図3では、前述のnが10である場合、つまり、主充電時の充電電力基準値Paを1/10ずつ段階的に減少させた電力Pa{1−(1/10)・k}で補充電を行う場合を示している。補充電の回数kは、各相のNAS電池12R1、12R2、12R3、NAS電池12S1、12S2、12S3、NAS電池12T1、12T2、12T3毎に、補充電回数NR1、NR2、NR3、補充電回数NS1、NS2、NS3、補充電回数NT1、NT2、NT3で示している。
【0024】
次に、補充電回数補正部17R、17S、17Tは、NAS電池12R1、12R2、12R3、NAS電池12S1、12S2、12S3、NAS電池12T1、12T2、12T3の補充電回数NR1、NR2、NR3、補充電回数NS1、NS2、NS3、補充電回数NT1、NT2、NT3と自己相の他のNAS電池12のいずれかの補充電の回数NRi(NSi、NTi)との差が所定値以上となったときは、補充電回数の一番小さなNAS電池12Rj(12Sj、12Tj)の補充電の回数NRj(NSj、NTj)を強制的に1カウントアップし、補充電回数を補正する。そして、補正した補充電回数が予め定めた回数k=n−1になるまで補充電する。これにより、補充電回数を補正されたNAS電池12Rj(12Sj、12Tj)については、実際の補充電回数は予め定めた回数k=n−1より少なくなる。以下、n=10の場合について説明する。
【0025】
図4は補充電回数計数部16及び補充電回数補正部17の動作の一例を示すフローチャートであり、R相の補充電回数計数部16R及び補充電回数補正部17Rの動作の一例を示している。充電開始により主充電が開始される。R相の補充電回数計数部16Rは、自己相のNAS電池12R1、12R2、12R3の補充電回数NR1、NR2、NR3をカウントする。補充電回数NR1、NR2、NR3は初期値として0が設定されている。
【0026】
補充電回数計数部16RはNAS電池12R1の電圧が充電終止電圧になったか否かを判定し(S11)、NAS電池12R1の電圧が充電終止電圧となったときは、補充電回数NR1を1だけカウントアップし(S12)、補充電回数NR1は予め定めた回数(n−1=9)となったか否かを判定する(S13)。補充電回数NR1が予め定めた回数(n−1=9)となったときはNAS電池12R1の充電を停止する。補充電回数NR1が予め定めた回数(n−1=9)となっていないときはステップS11に戻る。
【0027】
一方、ステップS11の判定で、NAS電池12R1の電圧が充電終止電圧になっていないときは、補充電回数補正部17Rは、補充電回数NR1が同じR相の他のNAS電池12R2、12R3の補充電回数NR2、NR3より所定値以上小さいか否かを判定する(S14)。図4では、この場合の所定値として2の場合を示している。すなわち、補充電回数NR1が同じR相のNAS電池12R1、12R2、12R3の補充電回数NR1、NR2、NR3の最大値{MAX(NRn)}より所定値(=2)以上であるか否かを判定する。
【0028】
補充電回数NR1が同じR相の他のNAS電池12R2、12R3の補充電回数NR2、NR3より所定値(=2)以上であるときはステップS12に移行し、補充電回数NR1を1だけカウントアップする(S12)。つまり、充電終止電圧となっていない場合であっても補充電回数NR1を1だけ強制的にカウントアップすることになる。
【0029】
R相のNAS電池12R2、NAS電池12R3についても同様に、ステップS21〜S24、ステップS31〜S34の処理を行う。これにより、R相のNAS電池12R1、12R2、12R3の各々に充電量のばらつきがあってもNAS電池12R1、12R2、12R3に対して最適の充電量を確保できる。
【0030】
再び、図1を参照する。次に、各相制御装置15R、15S、15Tの補充電回数計数部16R、16S、16Tで計測された補充電回数NR1、NR2、NR3、補充電回数NS1、NS2、NS3、補充電回数NT1、NT2、NT3は、主制御装置14の補充電電流補正部20及び補充電電力補正部21に入力される。
【0031】
補充電電流補正部20は、補充電制御により三相各相電流IR、IS、ITが変化したときにその変化分を補正し、主充電制御のときの三相各相電流IR、IS、ITにするものである。これは、補充電制御は、主充電制御のときの三相各相電流IR、IS、ITを基準にして、補充電係数GR1、GR2、GR3、{(GS1、GS2、GS3)、(GT1、GT2、GT3)}を算出して主制御装置14からの主充電制御指令に乗算しているので、主制御装置14からの充電制御指令は、主充電制御のときの三相各相電流IR、IS、ITを基準にしておく必要があるからである。
【0032】
また、補充電電力補正部21についても、同様に、補充電制御により三相電力Pが変化したときにその変化分を補正し、主充電制御のときの三相電力Pにする。これにより、主制御装置14からの充電制御指令は、補充電制御のときであっても、主充電制御のときの三相各相電流IR、IS、IT及び三相電力Pを基準とした充電制御指令となる。
【0033】
図5は、補充電電流補正部20から出力される電流補正係数GNR、GNS、GNTの説明図である。図5では、前述のnが10、各々のNAS電池12の容量が200kWである場合を示している。
【0034】
R相は、容量が200kWの3個のNAS電池12R1、12R2、12R3であるので、主充電制御の場合にはR相全体として600kWの容量となる。一方、補充電制御の際には、NAS電池12R1については、200kW−(200kW/10)・NR1となる。同様に、NAS電池12R2については、200kW−(200kW/10)・NR2となり、NAS電池12R3については、200kW−(200kW/10)・NR3となる。従って、R相の電流補正係数GNRは、600/(600−20・ΣNR)となる。なお、ΣNRは、(NR1+NR2+NR3)である。
【0035】
S相及びT相についても、同様に、S相の電流補正係数GNSは、600/{600−(200/10)・ΣNS}となり、T相の電流補正係数GNTは、600/{600−(200/10)・ΣNT}となる。なお、ΣNSは(NS1+NS2+NS3)、ΣNTは(NT1+NT2+NT3)である。
【0036】
図6は、補充電電力補正部21から出力される電力補正係数GPNの説明図である。R相、S相、T相の三相分の全体では、各相が600kWであるので、主充電制御の場合には、3倍の1800kWの容量となる。一方、補充電制御の際には、1800kW−(200kW/10)・ΣNとなる。なお、ΣNは(ΣNR+ΣNS+ΣNT)である。従って、電力補正係数GPRは、1800/(1800−20・ΣN)となる。
【0037】
再び、図1を参照する。次に、NAS電池システム全体に充電される三相有効電力Pは、図示省略の電力検出器で検出され乗算器22に入力され、補充電電力補正部21からの電力補正係数GPNが乗算される。主充電の際には補充電電力補正部21からの電力補正係数GPNは「1」である。乗算器22の出力は加算器23に入力され、充電有効電力基準値Paと比較され、電力制御要素24によりその制御指令が演算される。その制御指令及び充電有効電力基準値Paは加算器25により加算され、加算器26に出力される。
【0038】
NAS電池システムの各相に流れる三相電流IR、IS、ITは、図示省略の電流検出器で検出され乗算器27R、27S、27Tに入力され、補充電電流補正部20からの電流補正係数GNR、GNS、GNTが乗算される。主充電の際には補充電電流補正部20からの電流補正係数GNR、GNS、GNTはそれぞれ「1」である。乗算器27R、27S、27Tの出力は三相/dq変換部28に入力される。
【0039】
三相/dq変換部28は、乗算器27R、27S、27Tからの三相電流IR、IS、ITをdq軸の電流に変換するものであり、このd軸電流と加算器25の出力とが加算器26で比較され、d軸電流制御要素29によりその制御指令が演算され、加算器30に出力される。
【0040】
三相/dq変換部31は、図示省略の電圧検出器で検出されたNAS電池システムの接続端の系統電圧VR、VS、VTをdq軸の電圧に変換するものであり、このd軸電圧は加算器30に出力され、d軸電流制御要素29からの制御指令に加味され、dq/三相変換部32に出力される。
【0041】
三相電流IR、IS、ITに対するq軸の電流に関しても同様に、図示省略の電力検出器で検出された無効電力Qは無効電力基準値Qaと加算器33で比較され、無効電力制御要素34によりその制御指令が演算される。この制御指令及び無効電力基準値Qaは加算器35により加算され、加算器36に出力される。
【0042】
そして、加算器36により、三相/dq変換部28からのq軸電流が加算器35の出力に加味され、q軸電流制御要素37によりその制御指令が演算され、加算器38に出力される。加算器38では、q軸電流制御要素37からの制御指令に三相/dq変換部31からのd軸電圧が加味され、dq/三相変換部32に出力される。
【0043】
dq/三相変換部32は、dq軸電流指令値三相電流IR、IS、ITに対するそれぞれの指令値に変換し、乗算器39R1、39R2、39R3、乗算器39S1、39S2、39S3、乗算器39T1、39T2、39T3を介して、PWM制御部19R1、19R2、19R3、PWM制御部19S1、19S2、19S3、PWM制御部19T1、19T2、19T3に出力する。
【0044】
これにより、主制御部14からの主充電制御指令に、各相制御装置15R、15S、15Tからの補充電係数GR1、GR2、GR3、補充電係数GS1、GS2、GS3、補充電係数GT1、GT2、GT3が乗算されて、電力変換器12R1、12R2、12R3、電力変換器12S1、12S2、12S3、電力変換器12T1、12T2、12T3が制御される。従って、図3に示すように、補充電回数が「0」のときは補充電係数が「1」であり主充電制御となる。補充電回数が1〜9であると補充電制御となる。
【0045】
図7は本発明の実施形態に係るNAS電池の充電制御装置の補充電制御の動作の一例を示すタイムチャートであり、R相制御装置15Rの動作の一例を示している。主充電制御中では、R相のNAS電池12R1、12R2、12R3は、200kWで充電されている。
【0046】
いま、時点t1でNAS電池12R1が充電停止電圧となったとすると、1回目の補充電となるので、{200kW−200kW・(1/10)=180kW}の充電電力で補充電制御を行う。この時点t1では、NAS電池12R1の補充電回数は「1」であり、NAS電池12R2、R3の補充電回数は「0」であり、その差は「1」である。補充電回数補正部17では、その差が所定値(=2)以上となったときに、補充電回数を補正するものであることから、NAS電池12R2、R3の補充電回数を補正しない。
【0047】
次に、時点t2でNAS電池12R2が充電停止電圧となったとすると、NAS電池12R2に対し、1回目の補充電を開始し、{200kW−200kW・(1/10)=180kW}の充電電力で補充電制御を行う。この場合、時点t2では、NAS電池12R1、12R2の補充電回数は「1」であり、NAS電池12R3の補充電回数は「0」であり、その差は「1」である。補充電回数補正部17では、その差が所定値(=2)以上となっていないので、NAS電池12R3の補充電回数は補正しない。
【0048】
以下、時点t3〜t10までにおいて、NAS電池12R1、12R2、12R3の補充電回数が増えていくが、NAS電池12R1、12R2、12R3の補充電回数の差は「1」であり、所定値(=2)以上となっていないので、NAS電池12R1、12R2、12R3のいずれの補充電回数も補正されることはない。
【0049】
次に、時点t11において、NAS電池12R1が4回目の補充電制御中において充電停止電圧となったとすると、5回目の補充電制御に移行する。従って、補充電回数は「5」となる。その際、NAS電池12R2は4回目の補充電制御中であるので、NAS電池12R1の補充電回数との差は「1」である。一方、NAS電池12R3は3回目の補充電制御中であり、NAS電池12R1の補充電回数との差は「2」となる。従って、NAS電池12R1の補充電回数と、NAS電池12R3の補充電回数との差は「2」であることから、NAS電池12R3の補充電回数は、強制的に1がカウントされ「3」から「4」に補正される。これにより、R相のNAS電池12R1、12R2、12R3の補充電回数は平均化され、一部のNAS電池の充電が過充電になることを防止できる。
【0050】
以上の説明では、R相について説明したが、S相のNAS電池12S1、12S2、12S3の補充電、T相のNAS電池12T1、12T2、12T3の補充電についても同様である。
【0051】
以上述べたように、本発明の実施の形態によれば、カスケードに接続されたNAS電池の補充電の回数を平均化するので、一部のNAS電池の充電が過充電になることを防止でき、NAS電池システムの各々のNAS電池に対して最適の充電量を確保できる。
【符号の説明】
【0052】
11…カスケード変換器システム、12…NAS電池、13…電力変換器、14…主制御装置、15…各相制御装置、16…補充電回数計数部、17…補充電回数補正部、18…補充電係数算出部、19…PWM制御部、20…補充電電流補正部、21…補充電電力補正部、22…乗算器、23…加算器、24…電力制御要素、25…加算器、26…加算器、27…乗算器、28…三相/dq変換部、29…d軸電流制御要素、30…加算器、31…三相/dq変換部、32…dq/三相変換部、33…加算器、34…無効電力制御要素、35…加算器、36…加算器、37…q軸電流制御要素、38…加算器、39…乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NAS電池に並列に電力変換器を接続し、前記電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの前記NAS電池を充電制御するNAS電池の充電制御装置において、
前記NAS電池システム全体の前記NAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行う主制御装置と、
前記三相の各相ごとに設けられ前記主制御装置による主充電により自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池が充電停止電圧になったときは充電停止電圧になったNAS電池に対して主充電時の電力よりも低い電力で順次段階的に予め定めた回数まで補充電する各相制御装置とを備え、
前記各相制御装置は、自己相のカスケード接続されたNAS電池ごとに補充電の回数をカウントするとともに、前記NAS電池の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電することを特徴とするNAS電池の充電制御装置。
【請求項2】
NAS電池に並列に電力変換器を接続し、前記電力変換器を三相の各相にカスケードに接続して構成されたNAS電池システムの前記NAS電池を充電制御するNAS電池の充電制御方法において、
前記NAS電池システム全体の前記NAS電池のうちのいずれかが充電停止電圧になるまで主充電を行い、
自己相のカスケード接続されたいずれかのNAS電池が充電停止電圧になったときは充電停止電圧になったNAS電池に対して主充電時の電力よりも低い電力で補充電し、
補充電をした回数をカスケード接続されたNAS電池ごとにカウントし、
NAS電池の補充電の回数と自己相の他のNAS電池のいずれかの補充電の回数との差が所定値以上となったときは、一番小さいカウント数のNAS電池の補充電の回数を強制的に1カウントアップし、予め定めた回数まで補充電することを特徴とするNAS電池の充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−85374(P2012−85374A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226906(P2010−226906)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】