説明

NDフィルタの成形方法及びこの方法によって成形されたNDフィルタ並びにこのNDフィルタを用いた光量調整装置

【課題】平坦な透過率特性と表面反射防止特性及び裏面反射防止特性を有する薄膜型NDフィルタを提供し、あるいは薄膜型NDフィルタを絞りに用い、表面、裏面反射によって生じるゴースト、フレアーの改善可能なカメラ等の撮影装置を提供する。
【解決手段】薄膜型NDフィルタにおいて、透明基板の片面に、吸収性を有する1種類の金属酸化物による吸収膜と透明な誘電体膜の交互層を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラに搭載される絞り装置やシャッタ装置等の光量調整装置に用いられ、特に光量調整装置の開口部に対し進退し、開口部を通過する光の透過を制限する透過率を備えたNDフィルタの成形方法及びこの方法によって成形されたNDフィルタ並びにこのNDフィルタを用いた光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラやビデオカメラ等の光学機械において、高輝度撮影時に絞りが極めて小さくなることによって画質が低下する等の不具合を防止するために、絞り羽根にNDフィルタを取り付けたものが知られている。このNDフィルタは、絞りが小さくなったときに光路中に位置して光量を減少させるため、高輝度撮影時においても絞りが極端に小さくなることを防止する。
【0003】
従来、このようなNDフィルタを絞り羽根に取り付けた場合に、撮像素子の撮像面とNDフィルタとが平行に配置されるため、撮像面とNDフィルタの相互反射によってゴーストが発生する等の不具合があった。このため、NDフィルタを傾斜させてNDフィルタと撮像面とが平行とならないようにしたもの(特許文献1)や、NDフィルタを逆V字状に屈曲させてNDフィルタと撮像面とが平行にならないようにしたもの(特許文献2)や、NDフィルタを半円状に突出させてNDフィルタと撮像面とが平行にならないようにしたもの(特許文献3)が提案されている。
【特許文献1】実開昭61−53739号公報
【特許文献2】実開平3−63125号公報
【特許文献3】特開2000−36917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の提案されている上記NDフィルタのゴースト防止策としての傾斜、逆V字状屈曲、半円状突出等の形状とする成形方法としては、第一の方法として球面加工されたプレスパンチによる面加圧プレス、第二の方法として球面冶具でサンドイッチした状態で加熱プレス(アニーリング)が一般に知られ、いずれの方法も球体形状部材で素材面を直接的に加工する方法といえる。ところが、当該加工方法によると肝心な光量透過面に加圧、過熱等が直接加えられることから、その光量透過面に歪み生じ、結果、分光特性の劣化や、特に蒸着フィルタの場合にあっては成膜が剥離するといった問題を抱えている。また、蒸着膜を成形する前に基材をゴースト防止用の面処理を施した場合には成膜装置の成膜構造の関係で思うような成膜(均一な成膜、一定に変化するグラデーション成膜)が出来ないのが現実である。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、NDフィルタにゴースト防止用の面処理を施超す際に、少なくとも光量透過面に分光特性の劣化や成膜剥離等が生じ得ない加工方法で、撮像素子の撮像面とNDフィルタとの相互反射によるゴーストの発生を防止できるNDフィルタの成形方法及びこの方法によって成形されたNDフィルタ並びにこのNDフィルタを用いた光量調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、光量調整装置の開口部に進退可能に設けられ、開口部を通過する光の透過を制限する透過率を備えたNDフィルタの成形方法において、フラットな面を有する透明フィルム基材の表面に光の透過を適宜抑制する蒸着膜を成膜してなるNDフィルタを成形する第一の工程と、この第一の工程により製作されたNDフィルタを所望のサイズに切断する第二の工程と、この第二の工程により切断されたNDフィルタチップを、置き台プレートとほぼ中空円筒状のパンチとからなる成形冶工具の置き台プレートにセットし、そのNDフィルタチップの所望箇所を置き台プレート上から前記パンチで強打し、NDフィルタチップのパンチ中空円筒内に中心部からパンチ強打部に順次傾斜する曲面を形成する第三の工程と、によって成形されるNDフィルタの成形方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のNDフィルタの成形方法によれば、NDフィルタを光量透過面に歪みが生じることが無く、結果、少なくとも光量透過面に分光特性の劣化や成膜剥離等が生じ得ない加工方法で、撮像素子の撮像面とNDフィルタとの相互反射によるゴーストの発生を防止できるNDフィルタの成形方法及びこの方法によって成形されたNDフィルタ並びにこのNDフィルタを用いた光量調整装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明の撮像装置に組込まれる光量調節装置を示す分解斜視図、図2はその撮像装置に組み込まれる各種態様に応じたNDフィルタ付き絞り羽根部材を示す斜視図及び断面図、図3はその撮像装置の絞り羽根部材とシャッタ羽根部材の夫々動作状態を説明するための概略図、図4はNDフィルタの成形方法を説明する状態図及び断面図、図5は本発明の撮像装置での制御系を示すブロック図、図6は本発明の撮像装置での一駒撮影時における動作フローである。
【0009】
まず本発明の光量調節装置について説明すると、図1に示す装置は装置基板(以下地板という)Fにシャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cとを組込んだユニットとして構成され、地板Fにはシャッタ羽根部材Eの駆動手段Hと絞り羽根部材Cとを区割する中間板(仕切板)であり、図示Bは押さえ板である。この光量調節装置は以下の構成から成り後述する撮像装置の結像レンズ内に組込まれる。
【0010】
地板Fは樹脂などのモールド成形で形成され、シャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cとこの両羽根部材を開閉駆動する駆動手段HとGとを取付け支持する適宜形状に構成される。地板Fには撮影光軸と一致する開口F01が形成されこの開口F01は後述の中間板Dに形成される露出開口D01より大きい口径にしてある。地板Fにはシャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cとを回動自在に軸支するそれぞれピン形状の絞り羽根支軸F02とシャッタ羽根支軸F03が一体に形成されている。そしてこの地板Fにはシャッタ羽根Eが組込まれ、次いで中間板(仕切板)Dが、その上に絞り羽根部材Cが、更にその上に押さえ板Bが重ね合わせて組込まれる。
【0011】
シャッタ羽根部材Eはシャッタ羽根支軸F03に回動自在に支持され地板Fに形成されたガイドリブF06に案内されて前記開口F01を覆う位置(閉位置、以下クローズ位置という)とこの開口F01から退避した開放位置(開位置、以下オープン位置という)との間で移動自在に支持されることとなる。このシャッタ羽根Eには後述のシャッタ羽根駆動手段Hの作動ピンH12が係合する長孔F05が形成してあり、地板Fには作動ピンH12を貫通する長孔F05が設けてある。シャッタ羽根部材Eは、前レンズAから入光し中間板Dに形成された露出開口を通過しCCD等の固体撮像素子Jにより受光される被写体光を適宜遮断し、絞り羽根部材Cと共に適正露光を得るためのシャッタで、ポリエステルフィルム、テトロンフィルム等を素材に黒色顔料を塗装、蒸着したシートからなる。図中、E01は回転中心孔で、地板Fのシャッタ羽根支軸F03が貫通し、このシャッタ羽根支軸F03に回転可能に軸支される。E02は作動スリット孔で、シャッタ羽根駆動手段Hの作動ピンH12が貫通し、回転中心孔E01を中心にシャッタ羽根部材Eを揺動するためのものである。
【0012】
また地板Fには開閉自在に支持したシャッタ羽根部材Eの運動を規制する突起から成るストッパF08とF09が一体に設けてあり、シャッタ羽根部材Eはクローズ位置でストッパF09に当接し、オープン位置でストッパF08に当接し、それ以上の回動を規制される。従ってこのストッパF08、F09がシャッタ羽根部材Eの運動を規制する規制部材となる。
【0013】
このように地板Fに開閉自在に支持されたシャッタ羽根部材Eは中間板(仕切板)Dで覆われる。この中間板Dは地板Fに一体形成した突起F10、F11に支持され、地板Fと中間板Dとの間にはシャッタ羽根部材Eが回動するギャップが形成されている。上記シャッタ羽根部材Eは樹脂フィルムで形成され、この中間板Dも同一素材など樹脂フィルムで形成してある。この中間板Dには地板の開口F01と一致する露出開口D01が形成され、図示のものは4mm径に形成してある。この露出開口D01はシャッタ羽根部材Eがオープン状態で最大の撮影光量を後述の撮像装置の固体撮像素子に導くこととなるがその口径を4mm以下にする。これによって太陽光などの強い光がCCDなどの撮像素子に送られても焼付く恐れがなく、実験によって求めた限界値である。
【0014】
中間板Dには絞り羽根支軸F02が貫通する孔D02とシャッタ羽根支軸F03が貫通する孔D03が形成され、同様に絞り羽根駆動手段Gの作動ピンG12が貫通するスリットD04とシャッタ羽根駆動手段Hの作動ピンH12が貫通するスリットD05が形成されている。尚図示D06は絞り羽根部材Cとシャッタ羽根部材Eが露出開口D01から退避したときの退避エリアである。シャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cとは露出開口D01に進入した姿勢と退避エリアD06に位置する姿勢とにそれぞれ露出開口D01を挟んで直線的に対向する位置に回動中心となる絞り羽根支軸F02とシャッタ羽根支軸F03が配置されている。図示D07は位置決め凹溝孔で地板Fに形成したピンF12が嵌合し、D08は位置決め孔で地板FのピンF13が嵌合する。
【0015】
次に絞り羽根部材Cについて説明すると、後述の撮像装置の前レンズAから入光した被写体光が中間板Dに形成された露出開口D01から固体撮像素子Jに至る光量を調節するための絞り羽根部材Cは以下のように構成する。樹脂フィルムの打抜きで形成した絞り羽根部材Cには前記中間板Dの露出開口D01より大径の絞り開口C03が設けられ、前記地板Fに形成された絞り羽根支軸F02と係合する回転中心孔C01と後述の絞り羽根駆動手段Gの作動ピンG12と係合するスリットC02が形成されている。絞り開口C03には図2で説明するNDフィルタC16が取付けられている。
【0016】
この絞り羽根部材Cについて説明すると図2(a)は上述のNDフィルタ付き絞り羽根部材Cを示し、同(b)はそのNDフィルタC16の略中央部位を基準に切断した断面図を示している。
【0017】
従って、露出開口D01を通過した光はNDフィルタC16によって減衰されることとなり、このように構成することによって開口C14の製作精度をラフにすることが出来る。また羽根には地板Fに一体成形した絞り羽根支軸F02に係合する回転中心孔C01、C05、C07、C12と絞り羽根駆動手段Gの作動ピンG12と係合するスリットC02、C06、C08、C13が打抜成形によって一体に形成される。
【0018】
次に押さえ板Bについて図1を参照し説明すると、金属板で略地板Fと同一形状に形成された押さえ板Bは地板Fとの間に上述のシャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cを組込んでユニットを構成している。この押さえ板Bには露出開口D01と中心が一致する開口B01が形成され、この開口B01は露出開口D01より大きい径に形成されている。B02は地板Fに形成した絞り羽根支軸F02と係合し、B03はシャッタ羽根支軸F03と係合する逃げ孔であり、同様にB04は絞り羽根駆動手段Gの作動ピンG12が運動する逃げ孔であり、B05はシャッタ羽根駆動手段Hの作動ピンH12の逃げ孔である。B07は前記ストッパF08、B08は前記ストッパF09のそれぞれ逃げ孔である。
【0019】
図中B09及びB10は位置決め孔であり、地板Fに形成したピンF12とF13がそれぞれ係合する。これによって地板Fと押さえ板Bとは位置合わせされる。そして押さえ板Bには同様に適宜数図示のものは6個所にギャップ調整用の折曲部B11が形成してあり地板Fと中間板Dと押さえ板Bとの間の隙間を形成している。また係止凹部B12が2個所に設けてあり地板Fに形成した爪F14、F15と嵌合して地板Fと一体化(固定)してある。尚図中D08は位置決め孔で地板Fの中間板位置決めピンF13が貫通する為の逃げ孔である。
【0020】
絞り羽根駆動手段G、シャッタ羽根駆動手段Hについて説明すると、絞り羽根駆動手段Gは、絞り羽根部材Cを適宜中間板Dの露出開口D01に対し待避した絞り待避位置と露出開口D01に対し進入した絞り込み位置との間で駆動するものである。図中、G02はコイル枠で、上下2体で構成され、内部にマグネットロータG01を回動自在に軸支し、外側に電導コイルG03を巻廻する凹溝を有し電導コイルG03を巻廻するものである。G03は電導コイルで、コイル枠G02に巻廻され、駆動電流の供給とその供給方向によりマグネットロータG01を適宜回動するものである。G04はシールド用ヨークで、マグネットロータG01を内側に軸支した状態でコイル枠G02の外周に電導コイルG03を巻廻した状態でその外周を包み込むよう装着され、マグネットロータG01への外部磁界を遮蔽するものである。このシールド用ヨークG04は、断面がC字形状に一部にスリット状の切り欠きが形成してある。この切り欠き部にマグネットロータG01の着磁極NSを結ぶ線が直交する位置を安定点(中立点)としてロータはこの切り欠き部に回転する力が常に及ぶ。
【0021】
従ってこのシールド用ヨークG04の切り欠き部の装置電源がオフになったときに絞り羽根部材Cを待避位置に保持するようなマグネットロータG01に常時作用する付勢手段を構成し、この付勢手段と前記地板FのストッパF08が絞り羽根部材Cを退避位置に保持する保持手段を構成している。このことにより、電源がオフになっても常時絞り羽根部材Cを確実に絞り待避位置に保持することが可能で、従前のものは電源オンで必ず確認用のトリガー(イニシャライズ動作)を行う必要があったものに対し、その必要が無く制御が容易である。また、付勢手段を断面C字形状のシールド用ヨークG04で、絞り羽根駆動手段GがマグネットロータG01を駆動手段とし、そのマグネットロータG01に磁気的作用を及ぼす磁性体から構成することにより、係止機構等が不要で単に駆動電流の遮断、電源のオフにより制御が出来、制御が容易である。尚、上記付勢手段が磁気的作用を用いることなく、絞り羽根駆動手段Gに常時作用する付勢バネから構成することも可能で、磁気的吸引作用によるものに比べ常時絞り羽根部材Cを確実に絞り待避位置に保持することが可能である。
【0022】
シャッタ羽根駆動手段Hは、シャッタ羽根部材Eを適宜中間板Dの露出開口D01に対し待避したシャッタ開放位置と露出開口D01に対し進入したシャッタ閉鎖位置との間で駆動するものである。図中、H02はコイル枠で、上下2体で構成され、内部にマグネットロータH01を回動自在に軸支し、外側に電導コイルH03を巻廻する凹溝を有し電導コイルH03を巻廻するものである。H03は電導コイルで、コイル枠H02に巻廻され、駆動電流の供給とその供給方向によりマグネットロータH01を適宜回動するものである。H04はシールド用ヨークで、電導コイルH03の巻廻方向に平行に平坦部を備えている。
【0023】
このシールド用ヨークH04は、断面C字形状をしていて前述のヨークと同一の構成から同一の作用を得るようになっている。従ってこのヨークの切り欠き部が装置電源がオフになったときにシャッタ羽根部材Eを待避位置に保持するようなマグネットロータH01に常時作用する付勢手段を構成している。尚、付勢手段が磁気的作用を用いることなく、シャッタ羽根駆動手段Hに常時作用する付勢バネから構成することも可能で、磁気的吸引作用によるものに比べ常時シャッタ羽根部材Eを確実にシャッタ開放位置に保持することが可能である。H12は図4で説明するマグネットロータH01の作動ピンで、シャッタ羽根部材Eの作動スリット孔E02に嵌合、シャッタ羽根部材Eを回転中心孔E01を中心に適宜揺動するためのものである。
【0024】
次に図3に基づいて上述のシャッタ羽根部材Eと絞り羽根部材Cとの動作状態(開閉運動)を説明する。図3において、(a)は、図1において、押さえ板B側から見た中間板Dの露出開口D01に対する絞り羽根部材Cの動作状態を示すものである。二点鎖線で示す状態は、絞り羽根部材Cが地板Fの絞り羽根用ストッパF07に当接し、中間板Dの露出開口D01から待避した絞り待避位置に有る状態を示している。また、点線で示す状態は、絞り羽根部材Cが地板Fの絞り羽根/シャッタ羽根共用ストッパF09に当接し、中間板Dの露出開口D01に進入した絞り込み位置に有る状態を示している。尚、この絞り込み位置にあっては、絞り羽根駆動手段Gの電導コイルG03には当接時の駆動電流と同方向の電流が供給され、絞り羽根駆動手段Gの駆動力によりその当接状態が維持され、磁気的な作用による保持に比べ衝撃等に強く、絞り込み状態を確実に保持することで、画像斑が無い。
【0025】
同図(b)は、図1において、押さえ板B側から見た中間板Dを透視しその中間板Dの露出開口D01に対するシャッタ羽根部材Eの動作状態を示すものである。二点鎖線で示す状態は、シャッタ羽根部材Eが地板Fのシャッタ羽根用ストッパF08に当接し、中間板Dの露出開口D01から待避したシャッタ開放位置に有る状態を示している。
【0026】
また、点線で示す状態は、シャッタ羽根部材Eが地板Fの絞り羽根/シャッタ羽根共用ストッパF09に当接し、中間板Dの露出開口D01に進入したシャッタ閉鎖位置に有る状態を示している。尚、このシャッタ閉鎖位置にあっては、シャッタ羽根駆動手段Hの電導コイルH03には当接時の駆動電流と同方向の電流が供給され、シャッタ羽根駆動手段Hの駆動力によりその当接状態が維持され、磁気的な作用による保持に比べ衝撃等に強く、シャッタ閉鎖状態を確実に保持することで、露光ミスが無い。
【0027】
以上説明した光量調節装置はカメラ装置のレンズ鏡筒に組込まれ撮像装置を構成し例えば図5に示すように結像レンズを構成する前レンズAと後レンズIの間に組込まれ次のように制御される。図5は概念ブロック図であり、Eはシャッタ羽根部材を、Cは絞り羽根部材を、Gは絞り羽根駆動手段、Hはシャッタ羽根駆動手段を、JはCCDなどの固体撮像素子を示している。
【0028】
以上説明した光量調節装置はデジタルカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に組込まれ、被写体からの光が固体撮像素子Jに至る撮像光路の光量を遮断するシャッタ或いは光量を大小調節する絞り等の光量調節を行う。図5は撮像装置の概略を示し、Aは撮像レンズの前レンズであり、Iは後レンズを示している。通常複数のレンズアレイから構成される撮像レンズは焦点位置調節の為撮像光路(以下光路という)に沿って移動自在に鏡筒(図示せず)に組込まれその可動レンズには駆動モータが連結されている。その構造は広く知られているので省略する。
【0029】
このフォーカシング機構のモータには駆動回路FMが接続されている。撮像レンズの結像面には固体撮像素子Jが配置され、この固体撮像素子Jは解像度に応じた画像数の光電変換素子が配列され、結像された被写体像を電気的に変換する。例えばCCDとして知られるディバイスは光によって電荷を生起するチャージ層とこのチャージ層の電荷を外部に転送するトランスファー層とから構成され、トランスファー層にはCCD制御回路J01が結線されている。このCCD制御回路J01はトランスファー層からの電荷を蓄積するバッファーメモリと、増幅回路と、A/D変換回路とが組込まれ、基準クロックからの信号に応じて各画素の電荷をトランスファー層からバッファーメモリに転送する。前述の光量調節装置はユニット化され前レンズAと後レンズIとの間に組込まれ、シャッタ羽根駆動手段(駆動メータ)Hにはシャッタ駆動回路SHが絞り羽根駆動手段(駆動メータ)Gには絞り駆動回路IRが設けられている。これ等の制御回路はカメラ装置全体を制御するCPU100に連結されCPU100で各動作が制御される。CPU100にはレリーズスイッチSW2と電源スイッチSW1の信号が伝達されるように結線されている。
【0030】
そこで図6に基づいてその動作を説明する。カメラの電源スイッチがON操作(ST01)されるとCPU100は各駆動構成部に電源を供給する。例えば液晶などの表示画面を備えたカメラにあっては液晶のバックライトが点灯し表示可能となり、固体撮像素子Jも生起した電荷を画像処理回路に転送し表示画面に送る。この時光量調節装置のシャッタ羽根部材E及び絞り羽根部材Cはその駆動手段H、Gの電導コイルH03、G03に電源が供給されていない。(電源スイッチSW1がOFFのときと同一の状態)。この状態でシャッタ羽根部材Eはオープン位置に、絞り羽根部材Cは退避位置に位置し被写体からの光量は固体撮像素子Jに結像され表示画面に表示される。
【0031】
この装置電源操作(ST01)と同時に表示画面に複写体像が表示されモニタ(ST02)が実行される。次いで使用者がこのモニタに表示された状態で撮影(動画撮影モード)するか静止画状態で撮影(スチール撮影モード)するかモード選択スイッチを操作する(ST03)。スチール撮影モード(一駒撮影モードと云う)が選択されると、使用者はモニタ表示で或いはファインダーから被写体を確認しレリーズ操作を実行する。このレリーズ操作を行わず電源スイッチSW01をOFFすると全ての操作が終了し電源供給が断たれ撮影終了となる(ST04)。レリーズ操作はまずシャッタ釦を半押状態に操作する(ST05)。するとその信号でCPU100はモータFMを駆動しフォーカシング動作を実行しピント調整を行う。同時にCPU100はCCDの受光量から適正露光量を演算し絞り羽根を使用するか否かを決定する。シャッタ釦が全押状態に操作されると(ST06)CPU100は絞り羽根を使用(小絞り撮影)する場合は絞り駆動回路IRに電導コイルG03に電源供給する指示信号を発する。この信号を受けて絞り駆動回路IRは電導コイルG03に所定の電流を供給し、電導コイルG03に生起した磁界でロータは回転する。このロータの回転で作動ピンG12は絞り羽根部材Cを図3時計方向に回転し二点鎖線の状態から一点鎖線位置へ移動しストッパ(絞り羽根規制手段)F09に突き当たり、電導コイルG03に所定電流が供給される間絞り羽根部材Cはこの状態に維持される(ST07)。
【0032】
この絞り羽根Cの動作の見込み時間の後CPU100はCCD制御回路J01にリセット信号を発する。このリセット信号でCCD制御回路J01はバッファーメモリに貯えられた画像データを無効としてリセットする(ST08)。このリセット完了で露光が開始され被写体からの光はCCDのチャージ層で光電変換される。
【0033】
CPU100は演算によって得た所定の時間(露出時間)が経過するとシャッタ駆動回路SHにシャッタ閉鎖の指示信号を発する。シャッタ駆動回路SHはこの信号を得てシャッタ駆動手段(駆動メータ)Hの電導コイルH03に所定電流を通電する。この電流の供給で電導コイルH03に生起した電流はロータを図3(b)で反時計方向に回転しシャッタ羽根部材Eを二点鎖線で示すオープン位置から点線で示すクローズ位置に移動する。この羽根の移動で被写体からの光は完全に閉じられ、CCDの露光が終了する(ST09)。シャッタ駆動回路SHは羽根がクローズ位置に移動した後も電導コイルH03に所定の電流を通電し続け電導コイルH03の生起磁界は、ロータを反時計方向に回転する力を付与する。従ってシャッタ羽根部材Eはストッパ(シャッタ羽根規制手段)F09に突き当たって静止した状態を維持する(ST10)。この時外部から衝撃など外力が及んでも羽根はクローズ位置に保持されることとなる。
【0034】
次いでCPU100はCCD制御回路J01に露出終了の信号を発しCCDのチャージ層に帯電した電荷をトランスファー層を介して画像処理回路に転送する。このデータの転送はCCDの各画素の電荷は順次X・Y方向に走査信号に従って行われ、その制御はCCD制御回路J01の基準クロックに基づいて行われる。従ってCCDおよび制御回路の特性によってデータ転送時間が定められる。
【0035】
そこでCPU100はこのデータ転送時間に基づいて予め設定した時間(少なくともデータ転送時間より長い時間)電導コイルH03に所定電流を供給する。するとシャッタ羽根部材Eは図示Dの点線状態(クローズ位置)(図3参照)に保持され、データ転送過程で外部の光がCCDに到達することがない(ST11)。
【0036】
次にCPU100は所定の設定時間が経過すると絞り駆動回路IRとシャッタ駆動回路SHに動作終了信号を発する。この信号で絞り駆動回路IRは電導コイルに逆方向の電流を供給し、絞り羽根部材Cを図3(a)の点線(作動位置)から二点鎖線(退避位置)に移動する(ST12)。この動作の後電流の供給を断つ。するとシャッタ羽根部材Eは駆動手段のロータがヨークに形成されたカット(スリット)部に永久磁石の磁力で吸引されストッパF08に突き当たって静止する(ST13)。
【0037】
同様にシャッタ駆動回路SHは電導コイルH03に逆方向の電流を供給し、シャッタ羽根部材Eを図3(b)の点線クローズ位置から二点鎖線のオープン位置に移動する(ST14)。この状態で電導コイルH03への通電を断つと、シャッタ羽根駆動手段Hのロータはシールド用ヨークH04に形成したスリット部に吸引されシャッタ羽根部材EはストッパF07に突き当たった状態でオープン位置に保持される。かかる動作で光量調節装置は初期状態となり次の撮影動作に備える。
【0038】
尚、以上の絞り羽根及びシャッタ羽根の動作は電導コイルに供給する電流を正逆反転することによって開閉する場合を説明したが、絞り羽根部材Cに退避方向の力を付与するスプリング(クローズスプリング)同様にシャッタ羽根部材Eにオープン方向の力を付与するスプリングを設けた場合には上記ST12及びST14で逆電流を通電することなく単に供給電源をOFFすれば良い。またこの場合には駆動メータのヨークにスリットを設けて磁石ロータを一方向に吸引する必要もない。その他の動作は上述と同様となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係る撮像装置の分解斜視図。
【図2】図1に示す撮像装置に組み込まれる羽根部材を示し、(a)はNDフィルタを装着した絞り羽根部材の斜視図であり、(b)はNDフィルタの断面図。
【図3】(a)(b)図1に示す撮像装置の絞り羽根部材とシャッタ羽根部材の夫々動作状態を説明するための概略図。
【図4】図2に示すNDフィルタの説明図であり、(a)は加工状態図を示し、(b)は(a)の断面図。
【図5】本発明の撮像装置での制御系を示すブロック図。
【図6】図1に示す撮像装置での一駒撮影時における動作フロー。
【符号の説明】
【0040】
A 前レンズ
B 押さえ板
C 絞り羽根部材
C16 NDフィルタ
D 中間板(仕切板)
D01 露出開口
E シャッタ羽根部材
F 地板(装置基板)
F02 絞り羽根支軸
F03 シャッタ羽根支軸
G 絞り羽根駆動手段
G01 マグネットロータ
G02 コイル枠
G03 電導コイル
G04 シールド用ヨーク
G12 作動ピン
H シャッタ羽根駆動手段
H01 マグネットロータ
H02 コイル枠
H03 電導コイル
H04 シールド用ヨーク
H12 作動ピン
I 後レンズ
J CCD等の固体撮像素子
100 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量調整装置の開口部に進退可能に設けられ、開口部を通過する光の透過を制限する透過率を備えたNDフィルタの成形方法において、
フラットな面を有する透明フィルム基材の表面に光の透過を適宜抑制する蒸着膜を成膜してなるNDフィルタを成形する第一の工程と、
この第一の工程により製作されたNDフィルタを所望のサイズに切断する第二の工程と、
この第二の工程により切断されたNDフィルタチップを、置き台プレートとほぼ中空円筒状のパンチとからなる成形冶工具の置き台プレートにセットし、そのNDフィルタチップの所望箇所を置き台プレート上から前記パンチで強打し、NDフィルタチップのパンチ中空円筒内に中心部からパンチ強打部に順次傾斜する曲面を形成する第三の工程と、によって成形されるNDフィルタの成形方法。
【請求項2】
光量調整装置の開口部に進退可能に設けられ、開口部を通過する光の透過を制限する透過率を備えたNDフィルタであって、
フラットな面を有する透明フィルム基材の表面に光の透過を適宜抑制する蒸着膜が成膜され、所望のサイズに切断された後、前記基板の開口部に臨む範囲のフィルム面が順次傾斜する曲面を形成して成るNDフィルタ。
【請求項3】
開口部を有する基板と、この基板の開口部に進退可能に設けられ、開口部を通過する光の透過を制限する透過率を備えたNDフィルタとを備えた光量調整装置において、
前記NDフィルタは、フラットな面を有する透明フィルム基材の表面に光の透過を適宜抑制する蒸着膜が成膜され、前記基板の開口部に臨む範囲のフィルム面が順次傾斜する曲面を形成して成る光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−216379(P2008−216379A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50494(P2007−50494)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】