説明

NEP阻害剤としての3−(1−[3−(1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルカルバモイル]シクロアルキル)プロパン酸誘導体

本発明は、式(I)の中性エンドペプチダーゼ酵素(NEP)阻害剤、その使用、その製造の方法、その製造に使用する中間体、及び前記阻害剤を含有する組成物に関する。これらの阻害剤は、男性及び女性の性機能不全、特に女性の性機能不全(FSD)の治療が含まれる多様な治療領域において有用性を有し、具体的には、ここでFSDは、女性の性的興奮障害(FSAD)である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、中性エンドペプチダーゼ酵素(NEP)の阻害剤、その使用、その製造の方法、その製造に使用する中間体、及び前記阻害剤を含有する組成物に関する。これらの阻害剤は、男性及び女性の性機能不全、特に女性の性機能不全(FSD)の治療が含まれる多様な治療領域において有用性を有し、具体的には、ここでFSDは、女性の性的興奮障害(FSAD)である。
【0002】
NEP阻害剤は、WO91/07386、WO91/10644、WO02/02513、WO02/079143、及びEP1,258,474に開示されている。
FSDを治療するためのNEP阻害剤の使用は、EP1,097,719−A1に開示されている。男性の性機能不全(MSD)を治療するためのNEP阻害剤の使用は、WO02/03995に開示されている。
【0003】
本発明は、可溶型分泌エンドペプチダーゼ(SEP)に優ってNEPに選択的であるという利点を有する、強力なNEP阻害剤の群を提供する。本発明の化合物はまた、ACEに優ってNEPに選択的である。その選択性に加えて、本発明の化合物はまた、予想外に良好な薬物動態特性、特に、良好な経口バイオアベイラビリティと in vivo 効力に適した作用時間を保有する。
【0004】
第一の側面によれば、本発明は、一般式(I):
【0005】
【化1】

【0006】
の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形を提供する[式中:
は、H又はCHであり;
は、C〜Cアルキルであり;そして
nは、1又は2である]。
【0007】
本発明の好ましい側面は、nが1である式(I)の化合物である。
別の好ましい態様では、Rがメチルである。
さらに別の好ましい態様では、Rがメチルである。
【0008】
本発明の特に好ましい態様は、Rがメチルであり、Rがメチルであり、nが1である;Rが水素であり、Rがエチルであり、nが1である;Rがメチルであり、Rがエチルであり、nが1である;そしてRが水素であり、Rがエチルであり、nが2である、式(I)の化合物である。
【0009】
本発明の化合物は、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例1)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例2)、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例4)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例3)、
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例5)、
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例6)、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸、及び
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸である。
【0010】
本発明の好ましい化合物は、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例1)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例2)、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例4)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例3)、
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例5)、及び
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例6)である。
【0011】
最も好ましい化合物は:
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例1)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例2)、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例4)、及び
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例3)である。
【0012】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩には、その酸付加塩と塩基性塩(二塩が含まれる)が含まれる。
好適な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸より形成される。例には、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシラート、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩、カムシラート、クエン酸塩、エジシレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩(hibenzate)、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、リン酸水素、イセチオン酸塩、D及びL−乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシレート、メチル硫酸塩、2−ナプシレート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、パルモエート(palmoate)、リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、D及びL−酒石酸塩、及びトシラートの塩が含まれる。
【0013】
好適な塩基性塩は、無毒の塩を形成する塩基より形成される。例には、アルミニウム、アンモニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、及び亜鉛の塩が含まれる。
【0014】
好適な塩に関する概説については、Stahl and Wermuth,「医薬塩の手引き:性質、選択、及び使用(Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)」Wiley-VCH, ワンハイム、ドイツ(2002)を参照のこと。
【0015】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩は、式(I)の化合物の溶液と所望の酸又は塩基を一緒に適宜混合することによって容易に製造することができる。塩は、溶液より沈殿させて濾過により採取しても、溶媒の蒸発により回収してもよい。
【0016】
本発明による医薬的に許容される溶媒和物には、水和物と溶媒和物が含まれ、ここで結晶化の溶媒は、同位体(例えばDO、アセトン−d、DMSO−d)により置換してよい。
【0017】
また、本発明の範囲内にあるのは、クラスレート、薬物−ホスト(host)封入複合体であり、ここでは、上記の溶媒和物と対照的に、薬物とホストが非化学量論量で存在する。このような複合体の概説については、Haleblian による J Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288(1975年8月)を参照のこと。
【0018】
以下、式(I)の化合物へのすべての言及には、その塩と、式(I)の化合物とその塩の溶媒和物及びクラスレートへの言及が含まれる。
本発明には、上記に定義される式(I)の化合物のすべての多形が含まれる。
【0019】
また、本発明の範囲内には、式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」が含まれる。従って、それ自身では薬理活性をほとんど又はまったく有さない式(I)の化合物のある種の誘導体は、身体中又は身体上への投与時に代謝されるとき、望ましい活性を有する式(I)の化合物を生じる場合がある。そのような誘導体は、「プロドラッグ」と呼ばれる。
【0020】
本発明によるプロドラッグは、例えば H Bundgaard による「プロドラッグの設計(Design of Prodrug)」(エルセヴィエ、1985)に記載のように、例えば、式(I)の化合物に存在する適切な官能基を「プロ部分」として当業者に知られているある種の部分で置き換えることによって生成することができる。
【0021】
最後に、式(I)のある化合物は、それ自身が式(I)の他の化合物のプロドラッグとして作用する場合がある。
1以上の不斉炭素原子を含有する式(I)の化合物は、2以上の光学異性体として存在する場合がある。式(I)の化合物がアルケニル又はアルケニレン基を含有する場合、幾何cis/trans(又はZ/E)異性体が可能であり、そして該化合物が、例えば、ケト又はオキシム基を含有する場合、互変異性の異性(「互変異性」)が生じる場合がある。つまり、単一の化合物が1以上の種類の異性を明示する場合があることになる。
【0022】
本発明の範囲内に含まれるのは、式(I)の化合物のすべての光学異性体、幾何異性体、及び互変異性型であり、1以上の種類の異性を明示する化合物とそれらの1以上の混合物が含まれる。
【0023】
cis/trans異性体は、当業者によく知られた慣用技術、例えば、分別結晶化及びクロマトグラフィーによって分離することができる。
個別の立体異性体の製造/単離の慣用技術には、光学的に純粋な好適な前駆体の変換、例えばキラルHPLCを使用するラセミ体(又は、塩又は誘導体のラセミ体)の分割、又は、好適な光学活性の酸又は塩基、例えば酒石酸とラセミ体の反応により形成されるジアステレオ異性塩の分別結晶化が含まれる。
【0024】
本発明にはまた、式(I)の化合物のすべての医薬的に許容される同位体変異が含まれる。同位体変異は、少なくとも1つの原子が、同一の原子数でも、天然に通常見出される原子量とは異なる原子量を有する原子に置き換えられているものと定義される。
【0025】
本発明の化合物における包含に適した同位体の例には、H及びHのような水素、13C及び14Cのような炭素、15Nのような窒素、17O及び18Oのような酸素、32Pのようなリン、35Sのようなイオウ、18Fのようなフッ素、及び36Clのような塩素の同位体が含まれる。
【0026】
本発明の化合物を重水素、即ちHのような同位体で置換すると、より大きな代謝安定性(例えば、in vivo 半減期の増加、又は投与必要量の減少)より生じるある種の治療上の利点をもたらす場合があり、それ故にある状況において好ましい場合がある。
【0027】
式(I)の化合物のある種の同位体変異、例えば、放射活性同位体を取り込むものは、薬物及び/又は基質の組織分布試験に有用である。放射活性同位体のトリチウム、即ちHと炭素−14、即ち14Cは、その取込みの容易さと容易な検出手段に照らして、この目的に特に有用である。
【0028】
一般に、式(I)の化合物の同位体変異は、好適な試薬の適切な同位体変異を使用して、当業者に知られた慣用技術により製造しても、付帯の「実施例」及び「製法」の記載に類似した方法により製造してもよい。
【0029】
式(I)の化合物は、凍結乾燥、スプレー乾燥、又は蒸発乾燥させて、結晶性又は非結晶性材料の固体プラグ、粉末、又はフィルムを提供することができる。この目的にマイクロ波又は高周波乾燥を使用してよい。
【0030】
式(I)の化合物は、以下のスキーム(I)に記載の方法によって製造することができる:
【0031】
【化2】

【0032】
式(IV)の化合物は、方法工程(a)「アミド結合形成」の条件下に式(II)及び(III)の化合物を反応させることによって製造してよく、こうした反応は、当業者によく知られた多種多様な条件の下で行なってよい。
【0033】
典型的には、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、フルオロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(TFFH)のような薬剤、又はアザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(PyAOP)及び1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)のような試薬の組合せでの処理によってカルボン酸を活性化することができる。あるいは、この反応は、酸及びアミンの混合物へO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−ウラニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(HATU)又はO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−ウラニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、又はN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)のようなペプチドカップリング剤を加えることによって行ってよい。この反応は、CHCl、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)又は1−メチル−2−ピロリジノンのような好適な溶媒において、0℃と溶媒の沸点の間で行う。
【0034】
好ましくは、この変換は、CDI、トリエチルアミン、及び酢酸イソプロピルを溶媒として使用して実施する。
次いで、方法工程(a)の生成物を方法工程(b)「保護基PGの除去」の条件下で処理する。好適な基は、T. W. Greene と P. G. M. Wuts による「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社(1991)に記載されている。
【0035】
保護基の除去に必要とされる条件は、しばしばその保護基に特異的であり、その除去の条件は、Greene T. W.、Wuts, P. G. M.「有機合成の保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」(ウィリー・インターサイエンス)と Kocienski, P. J.「保護基(Protecting Groups)」(Thieme)のような参考文献に見出すことができる。
【0036】
好ましくは、PGはtert−ブチル基であり、脱保護は、好適な溶媒を室温で使用して酸触媒される。好ましい条件は、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸である。
【0037】
【化3】

【0038】
代わりの方法において、式(IV)の化合物は、アリール−アリルカップリングを含んでなる方法工程(a)によって、式(X)及び(VI)の化合物より製造することができる。好適な条件は、当業者によく知られている。式(X)の化合物は、アミド結合形成を含んでなる方法工程(b)によって、式(II)の化合物とアリルアミンより製造することができる。こうした反応は、当業者によく知られた多種多様な条件の下で行ってよい。
【0039】
式(II)及び(III)の化合物は、WO02/079143に記載の方法に従って製造することができる。
さらに、式(III)の化合物は、以下に記載のように製造してよい:
【0040】
【化4】

【0041】
式(VII)の化合物は、方法工程(c)「アリール−アリルカップリング」の条件の下で式(V)及び(VI)の化合物より製造することができる。好適な条件は、当業者によく知られている。特に好適な条件は、適切に保護されたアリルアミン誘導体(例、アリルイミド二炭酸ジ(tert−ブチル)、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 1999, 7, 1625-1636)と9−BBNのようなボラン誘導体より製造されるヒドロホウ酸化中間体を用いた Suzuki-Miyata カップリング反応[Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40(24), 4544-4568]のものである。
【0042】
式(III)の化合物は、本明細書に記載する方法工程(b)「保護基PGの除去」の条件の下で式(VII)の化合物より製造することができる。
【0043】
【化5】

【0044】
あるいは、アミン(III)は、炭素−炭素及び炭素−窒素の多重結合の還元を含んでなる方法工程(a)によって、式(VIII)の化合物より製造してよい。好適な条件は、当業者によく知られている。特に好適な条件は、上記のように、BocO、NiCl及びNaBHでの処理に続く、生じる三級ブチル基の脱保護を含む。式(VIII)の化合物は、アリール−アルキルカップリングを含んでなる方法工程(b)によってアクリロニトリルと式(VI)の化合物より製造することができる(ここで、Xはハロゲン、好ましくはヨウ素である)。好適な条件は、当業者によく知られている。特に好適な条件は、DMF中のPd(OAc)、P(o−トリル)、及びNaOAcでの処理を含む。
【0045】
【化6】

【0046】
あるいは、式(VIII)の化合物は、方法工程(a)「縮合」によって、シアノ酢酸と式(IX)の化合物より製造してよい。好適な条件は、当業者によく知られている。好適な条件は、Jerry March による、「最新有機化学(Advanced Organic Chemistry)」、第4版、ウィリー・インターサイエンス、945頁に記載されている。式(IX)の化合物は、文献(例、Zhurnal Obshchei Khimii (1964), 34(11), 3801-6)に知られている。
【0047】
先述の方法に使用する新規の出発材料の上記反応及び製法は、いずれも慣用的である。その実施又は製造に適した試薬及び反応条件、並びに所望の生成物を単離するための手順は、先行文献と以下の「実施例」及び「製法」を参照すれば、当業者によく知られることになろう。
【0048】
本発明の化合物は、SEPに優ってNEPに選択的なNEP阻害剤の群である。
一般に、薬物は、所望の標的酵素について可能な限る選択的であることが重要であるが、これは余分の活性が副作用の可能性を生じるためである。SEPは、比較的最近同定されて、その正確な生理学的機能は、まだ完全には決定されてはいない。しかしながら、SEPがどんな役割を担っているか、又はいないかにかかわらず、どんな薬物も、未知の生理学的機能に近縁した機械的な標的に優る選択性を有することを確実にするのが健全な医化学の指針である。
【0049】
どの理論にも束縛されずに、エンケファリン、エンドセリン(ET)、ビッグエンドセリン(Big ET)、ブラジキニン、サブスタンスP、アンジオテンシン1、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、及び性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のような同じくらい生物学的に重要なペプチドの多くをNEPとSEPが加水分解することが可能であることが明らかになりつつある。
【0050】
NEP及びSEPを阻害する薬物で患者を治療すれば、これらのペプチド(そのほとんどは、NEP阻害に関連した性機能の改善に関与しない)の多くの加水分解を抑制することができて、故に、これらのペプチドのレベルは増加するだろう。これらのペプチドのレベルの上昇に関連したいくつかの副作用を想定することができる:ANPレベルが増加するとき血圧は低下する場合があり;エンケファリンレベルの増加は疼痛知覚の変化をもたらす場合があり;エンドセリン−1は強力な血管収縮剤であるので、ビッグETのETへの変換のレベルを低下させるか、又はET−1の加水分解が血圧の変化をもたらす場合がある。
【0051】
従って、患者にNEP選択阻害剤を与えれば、活性のあるSEP酵素は依然として存在しているので、これら基質ペプチドのレベルの増加はより小さいだろう。故に、これらのペプチドのレベルの変化に関連したどの副作用もより軽いだろう。
【0052】
さらに、SEPのmRNAは、精巣、心臓、脳、腎臓、唾液腺、甲状腺、胎盤、小腸、及び卵巣が含まれる、他の組織において様々なレベルで見出すことができる(自社データと Bonvouloir et al)。マウスの場合、SEP RNAはまた、脾臓と副腎にも検出されている。故に、SEPを阻害しないNEP阻害剤には、より明瞭な生理学的プロフィールのポテンシャルがより大きい利点を有する可能性がある。
【0053】
驚くべきことに、SEPに優って選択的なNEP阻害剤の群を同定しているときに、上記の化合物が経口投与に好ましい薬物動態特性を有することを発見した。
経口投与される薬物は、良好なバイオアベイラビリティ(即ち、胃腸(GI)管を容易に横断する能力)を有し、GI管から体循環へ通過するときに広汎な代謝を受けないような代謝速度を有するべきである。速やかに代謝される分子はより低いバイオアベイラビリティを有し、体循環へ通過するときにより多くの化合物が代謝によって除去されるものである。薬物が体循環にあるときも、薬物の体内での貯留時間を決定するのに代謝速度が重要であり、薬物の速い代謝は、それが短い作用時間を有することになる。
【0054】
従って、薬物分子は、GI管を容易に横断できることと、体内でごくゆっくり代謝されることの特性を有することが明らかに好ましい。
CACO−2アッセイは、所与の分子のGI管を横断する能力を予測するための広く受け入れられたモデルである。本発明の化合物は、良好なCACO−2流出を有する。
【0055】
薬物分子の代謝の大多数は、概して肝臓で起こる。故に、ヒト肝ミクロソーム(HLM)の使用は、所与の分子の肝臓における代謝に対する感受性を測定するための広く受け入れられた方法である。本発明の化合物は、HLMに対して安定である。
【0056】
良好なCACO−2流出を有し、HLMに対して安定である化合物は、良好な経口バイオアベイラビリティ(GI管を通した良好な吸収と、肝臓を通過するときの化合物の最小の抽出)と薬物が有効であるのに十分長い体内貯留時間を有すると予測される。
【0057】
さらに、本発明の化合物は、塩形成によらずに、遊離酸型において結晶性であるので、取扱いが特に容易である。
本発明の化合物は、亜鉛依存型中性エンドペプチダーゼ、EC.3.4.24.11の阻害剤であり、本発明の化合物は、以下に収載する病態を治療することが提唱されている。この酵素は、いくつかの生物活性オリゴペプチドの分解に関与して、疎水性アミノ酸残基のアミノ側でペプチド結合を切断する。代謝されるペプチドには、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、ボンベシン、ブラジキニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、エンドセリン、エンケファリン、ニューロテンシン、サブスタンスP、及び血管作動性腸管ペプチドが含まれる。これらペプチドのなかには、強力な血管拡張及び神経ホルモン機能、利尿及びナトリウム利尿活性を有するか、又は行動効果に仲介するものがある。
【0058】
従って、本発明の化合物は、中性エンドペプチダーゼ、EC.3.4.24.11を阻害することによって、生物活性ペプチドの生物学的効果を増強することかできる。従って、特に、本化合物は、高血圧、肺性高血圧、末梢血管系疾患、心不全、狭心症、腎不全、急性腎不全、周期性浮腫、メニエール病、アルドステロン過剰症(原発性及び続発性)及び高カルシウム血症が含まれる、いくつかの障害の治療に有用性を有する。用語、高血圧には、本態性高血圧、肺性高血圧、二次性高血圧、収縮期高血圧、糖尿病に関連した高血圧、動脈硬化症に関連した高血圧、及び腎血管性高血圧のような正常以上の血圧を特徴とするすべての疾患が含まれ、さらに、上昇血圧が既知の危険因子となる状態へ拡張される。故に、用語「高血圧の治療」には、高血圧より生じる合併症と、鬱血性心不全、狭心症、卒中、緑内障、腎不全が含まれる腎機能障害、肥満、及び代謝性疾患(代謝症候群が含まれる)が含まれる他の関連した併発症の治療又は予防が含まれる。代謝性疾患には、特に、糖尿病と糖耐性障害が含まれ、糖尿病性網膜症及び糖尿病性神経障害のようなその合併症も含まれる。
【0059】
さらに、ANFの効果を増強する能力のために、本化合物は、緑内障の治療に有用性を有する。中性エンドペプチダーゼ、EC.3.4.24.11を阻害する能力のさらなる結果として、本発明の化合物は、例えば、月経障害、早期分娩、子癇前症、子宮内膜症、及び生殖系障害(具体的には、男性及び女性の不妊症、多房性卵巣症候群、着床不全)の治療が含まれる、他の治療領域において活性を有する可能性がある。また、本発明の化合物は、喘息、炎症、白血病、疼痛、癌性疼痛、うつ病、薬物乱用、肝硬変、てんかん、情緒障害、痴呆症及び老人性錯乱、肥満、及び胃腸障害(具体的には、下痢と過敏性腸管症候群)、創傷治癒(具体的には、糖尿病性及び静脈性潰瘍と褥瘡)、敗血症ショック、胃酸分泌の変調、高レニン血症、嚢胞性線維症、再狭窄、糖尿病性合併症、及び動脈硬化症を治療するはずである。
【0060】
好ましい態様において、本発明の化合物は、男性及び女性の性機能不全の治療に有用である。本発明の化合物は、FSD(具体的には、FSAD)と男性の性機能不全(具体的には、男性の勃起不全(MED))の治療に特に有益である。
【0061】
本発明によれば、FSDは、女性が性的表現において満足を見出すことが困難であるか又はできないことと定義することができる。FSDは、いくつかの多様な女性の性的障害の総称である(Leiblum, S. R. (1998).「女性の性的障害の定義及び分類(Definition and Classification of female sexual disorders)」Int. J. Impotence Res., 10, S104-S106; Berman, J. R., Berman, L & Goldstein, I. (1999).「女性の性機能不全:発症、病態生理、評価、及び治療選択肢(Female sexual dysfunction: Incidence, pathology, evaluations and treatment options)」Urology, 54, 385-391)。前記の女性は、欲望の不足、興奮又はオルガスムの困難さ、性交時の疼痛、又はこれらの問題の組合せを有する場合がある。いくつかの種類の疾患、医薬品、損傷、又は生理学的な問題がFSDを引き起こす場合がある。開発中の治療法は、特定のFSDのサブタイプ、主として欲望及び興奮の障害を治療することを目標としている。
【0062】
FSDのカテゴリーは、正常な女性の性的応答:欲望、興奮、及びオルガスムの諸相へそれらを対比することによって最もよく定義される(Leiblum, S. R. (1998).「女性の性的障害の定義及び分類(Definition and Classification of female sexual disorders)」Int. J. Impotence Res., 10, S104-S106)。欲望又はリビドーは、性的発現の衝動である。その表出には、しばしば、関心のあるパートナーと交際中にあるとき、又は他の性愛の刺激へ曝されるときの性的考えが含まれる。興奮は、性的刺激に対する血管系の応答(その重要な構成要素は、性器の充血である)であり、膣潤滑の増加、膣の拡張、及び性器の感覚/感受性の増加が含まれる。オルガスムは、興奮の間に最高潮に達した性的緊張の放出である。
【0063】
従って、FSDが生じるのは、これらの相のいずれか、通常は欲望、興奮、又はオルガスムにおいて女性が不十分又は不満足な応答を有するときである。FSDのカテゴリーには、性欲低下障害、性的興奮障害、オルガスム障害、及び性的疼痛障害が含まれる。本発明の化合物は、性的刺激に対する性器の応答(女性の性的興奮障害にあるような)を改善するが、そうするときには、性交に関連した疼痛、不安、及び不快感も改善し、他の女性の性的障害も治療する可能性がある。
【0064】
性欲低下障害が存在するのは、女性がセクシュアルであろうとする欲望を全く又はほとんど有さず、性的な考えや幻想を全く又はほとんど有さない場合である。この種のFSDは、自然閉経又は外科的閉経のいずれかによる低テストステロンレベルにより引き起こされる場合がある。他の原因には、病気、医薬品、疲労、うつ病、及び不安が含まれる。
【0065】
女性の性的興奮障害(FSAD)は、性的刺激に対する不十分な性器応答を特徴とする。性器は、正常な性的興奮を特徴づける充血に至らない。膣壁がほとんど潤滑化しないので、性交は苦痛になる。オルガスムも妨げられる場合がある。興奮障害は、閉経時又は出産後、及び授乳期の、並びに糖尿病や動脈硬化症のような血管系の構成要素を伴う病気によるエストロゲン低下により引き起こされる場合がある。他の原因は、利尿剤、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬(例、SSRI)、又は降圧剤での治療より生じる。
【0066】
性的疼痛障害(例、性交疼痛症と膣痙)は、挿入より生じる疼痛を特徴とし、潤滑を抑制する医薬品、子宮内膜症、骨盤炎症性疾患、炎症性腸疾患、又は尿路の問題によって引き起こされる場合がある。
【0067】
FSDの罹患率は、この用語にいくつかの種類の問題(その中には測定することが困難なものがある)が含まれるために、そしてFSDを治療することへの関心が比較的最近のことであるために、評価することが困難である。多くの女性の性的問題は、女性の老化プロセスに直接関連しているか、又は糖尿病及び高血圧のような慢性疾患のいずれかに関連している。
【0068】
FSDは、性的応答サイクルの別々の相で症状を発現するいくつかのサブタイプからなるので、単一の療法はない。FSDの現行の治療法は、主に、心理学的課題や(人間)関係の課題に集中している。この医学的問題の検討へより多くの臨床及び基礎科学の研究が注がれるにつれて、FSDの治療法は徐々に進歩している。女性の性的不満は、必ずしも病態生理において心理学的ではなく、女性の性的不満の全体に貢献する血管形成の機能不全(例、FSAD)という構成要素を有する場合がある個人については特にそうである。現在、FSDの治療用に認可された薬物はない。経験的な薬物療法には、エストロゲン投与(局所的、又はホルモン置換療法として)、アンドロゲン、又はブスピロンやトラゾドンのような気分転換薬が含まれる。これらの治療選択肢は、低い効力と受け容れ難い副作用のためにしばしば不満足である。
【0069】
FSDを薬理学的に治療することへの関心は比較的最近のものであるので、療法は、以下よりなる:心理学的カウンセリング、店頭薬の性的潤滑剤、及び、他の状態について承認された薬物が含まれる、研究中の候補薬。これらの医薬品は、ホルモン剤、テストステロン又はエストロゲン及びテストステロンの組合せと、男性の勃起機能不全に有効であることが証明された、より最近の血管系薬物からなる。これら薬剤の中で、FSDを治療するのにきわめて有効であることが実証されたものはひとつもない。
【0070】
女性の性的興奮障害(FSAD)は、米国精神学会の診断及び統計マニュアル(DSM)IVにより「性的活動の完了までに性的興奮の十分な潤滑−膨張応答を達成又は維持することの継続性又は再発性の不能状態」と定義されている。「この障害は、著しい不安感と個人間の難題を引き起こすはずである」。
【0071】
興奮応答は、骨盤における血管鬱血、膣の潤滑、及び外性器の拡張及び膨張からなる。この障害は、著しい不安感、及び/又は個人間の難題を引き起こす。
FSADは、閉経の前、間、及び後の(±HRT)女性が罹患する、きわめて蔓延した性的障害である。これは、うつ病、心臓血管系疾患、糖尿病、及びUG障害のような併発疾患に関連する。
【0072】
FSADの一次結果は、充血/膨張の不足、潤滑の不足、及び享楽し得る性器感覚の不足である。FSADの二次結果は、性的欲望の低下、性交時の疼痛、及びオルガスムに到達することの困難である。
【0073】
最近、FSADの症状を有する患者の少なくとも一部については、血管系の基底原因があるとの仮説が提唱され(Goldstein et al., Int. J. Impot. Res., 10, S84-S90, 1998)、動物データは、この見解を裏付けている(Park et al., Int. J. Impot. Res., 9, 27-37, 1997)。
【0074】
効力が検討されている、FSADを治療するための候補医薬品は、主に男性の性器への循環を促進する勃起不全治療薬である。それらは、2種類の製剤、経口又は舌下の医薬品(アポモルヒネ、フェントラミン、ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害剤、例えばシルデナフィル)と、男性では経尿道的に、女性では性器へ局所的に注射又は投与されるプロスタグランジン(PGE)である。
【0075】
本発明の化合物は、正常な性的興奮応答(即ち、膣、陰核、及び陰唇の充血をもたらす性器血流の増加)を回復させる手段を提供することによって有利である。このことは、血漿濾出を介した膣潤滑の増加、膣コンプライアンスの増加、及び性器感受性の増加をもたらすだろう。従って、本発明の化合物は、正常な性的興奮応答を回復させるか又は増強する手段を提供する。
【0076】
理論に束縛されずに、我々は、血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)のような神経ペプチドが女性の性的興奮応答の制御において、具体的には性器血流の制御において主要な神経伝達物質候補であると考える。VIPと他の神経ペプチドは、NEP EC3.4.24.11によって分解/代謝される。従って、NEP阻害剤は、興奮時に放出されるVIPの内因性の血管弛緩効果を増強するだろう。これにより、性器血流の亢進、即ち性器充血を介するようなFSADの治療がもたらされる。我々は、NEP EC3.4.24.11の選択阻害剤が骨盤神経刺激性及びVIP起因性の膣及び陰核の血流増加を亢進させることを示した。さらに、選択NEP阻害剤は、単離した膣壁のVIP及び神経仲介性の弛緩を亢進させる。
【0077】
このように、本発明は、正常な性的興奮応答(即ち、膣、陰核、及び陰唇の充血をもたらす性器血流の増加)を回復させる手段を提供することに役立つので有利である。このことは、血漿濾出を介した膣潤滑の増加、膣コンプライアンスの増加、及び膣感受性の増加をもたらすだろう。従って、本発明は、正常な性的興奮応答を回復させるか又は増強する手段を提供する。
【0078】
男性の性機能不全には、男性の勃起不全、早漏(PE)のような射精障害、不感症(オルガスムに到達できないこと)、及び性欲低下障害(セックスへの関心の不足)のような欲望障害が含まれる。
【0079】
本明細書における治療へのあらゆる言及には、治癒的、緩和的及び予防的治療が含まれることを理解されたい。
本発明の化合物は、FSD患者の以下の亜集団に適用される:ホルモン置換療法を受けているか又は受けていない、若年、高齢、閉経前、閉経期、閉経後の女性。
【0080】
本発明の化合物は、以下より生じるFSDを有する患者に適用される:
i)血管形成上の病因、例えば心臓血管系又は動脈硬化の疾患、高コレステロール血症、喫煙、糖尿病、高血圧、放射線及び会陰の外傷、腸骨下腹部の陰部血管系への外傷性損傷。
【0081】
ii)脊髄損傷又は中枢神経系の疾患のような神経原性の病因(多発性硬化症、糖尿病、パーキンソン病、脳血管系の事故、末梢性ニューロパシー、外傷、又は根治骨盤手術が含まれる)。
【0082】
iii)視床下部/下垂体/性腺軸の機能不全、又は卵巣の機能不全、膵臓の機能不全、外科的又は内科的去勢術、アンドロゲン欠乏、高循環レベルのプロラクチン(例えば、高プロラクチン血症)、自然閉経、早熟卵巣不全、甲状腺機能亢進/低下症のような、ホルモン/内分泌腺の病因。
【0083】
iv)うつ病、強迫異常症、不安異常症、産後うつ病/「ベビーブルー」、感情及び関係の課題、パフォーマンス不安、性の不一致、性機能不全の態度、セックス恐怖症、宗教上の阻害、又は過去のトラウマ経験のような心因性の病因。
【0084】
v)選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)での治療や他の抗うつ療法(三環系化合物とメジャートランキライザー)、降圧療法、交感神経遮断薬、慢性的な経口避妊薬療法より生じる薬剤起因性の性機能不全。
【0085】
軽度〜中等度MEDの患者は、本発明の化合物での治療より利益を得るはずであり、重度MEDの患者も応答する可能性がある。しかしながら、初期の研究は、軽度、中等度、重度MEDの患者の応答率は、PDE5阻害剤との組合せにおいてより大きいことを示唆する。軽度、中等度、及び重度MEDは、当業者に知られた用語であるが、The Journal of Urology, vol 151, 54-61 (Jan 1994) にガイダンスを見出すことができる。
【0086】
本発明の化合物は、MED患者の以下の亜集団に適用される:心因性、内分泌、神経原性、動脈原性、薬剤起因性の性機能不全(乳腺刺激性)と陰茎の要因、特に静脈原性の原因に関連した性機能不全。これらの患者群は、Clinical Andrology vol 23, no. 4, p773-782 と、I. Eardley and K. Sethia による書籍「勃起機能不全−現行の研究及び管理(Erectile Dysfunction-Current Investigation and Management)」(出版社 Mosby-Wolfe)の3章により詳しく記載されている。
【0087】
アッセイ条件
ネーティブNEP酵素の産生:
NEPは、Kenny and Booth (Booth, A. G. & Kenny, A. J. (1974) Biochem. J. 142,575-581) に記載の方法に従って腎臓より単離する。
【0088】
組換えSEP酵素は、2つの代替法の1つを使用して産生する。
方法1:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養物を、リポフェクタミン試薬プロトコール(インビトロゲン社、ペーズリー、イギリス)に記載のリポフェクタミン法を使用して、プラスミドNCIMB寄託番号41110でトランスフェクトする。この細胞培養基をトランスフェクションから24又は48時間後に採取し、3000gで5分間の遠心分離により細胞残滓を取り除く。次いで、この培地を、ピアス・アンド・ワーナー(チェスター、イギリス)製の「slide a lyser」を使用して、50mM HEPES(pH7.4)/10%グリセロールに対して4℃で一晩透析する。次いで、透析した試料をアリコートで凍結し、液体窒素下に保存する。
【0089】
方法2:組換えSEPを産生する安定したヒト胚性腎(HEK)細胞系を、標準の分子及び細胞生物学の方法に従って、自前で作製した。このHEK−SEP細胞系を、HEK細胞の標準プロトコールに従って、ヒグロマイシンBを補充した培地においてフラスコ又はローラーボトル中で培養する。培地を採取し、室温で15分間、3000gで遠心分離して細胞残滓を除去してから、ピアス・アンド・ワーナー(チェスター、イギリス)製の「slide a lyser」を使用して、透析緩衝液(50mM HEPES(pH7.4)/10%グリセロール)で少なくとも6時間透析し、この6時間の間に少なくとも1回透析緩衝液を交換する。
【0090】
SEP又はNEPペプチダーゼ活性のアッセイ
SEP又はNEPのペプチダーゼ活性は、合成ペプチド基質のローダミングリーン−Gly−Gly−dPhe−Leu−Arg−Arg−Val−Cys(QSY7)−βAla−NHをタンパク分解する能力についてモニタリングすることによって測定する:
はじめにアッセイ用の試薬を以下のように調製する:
2mM/100% DMSOのローダミングリーン−Gly−Gly−dPhe−Leu−Arg−Arg−Val−Cys(QSY7)−βAla−NHストック溶液を50mM HEPES緩衝液(pH7.4)(シグマ、イギリス)で2μMの濃度へ希釈することによって基質溶液を作製する。
【0091】
次いで、上記に記載のSEP又はNEP酵素のアリコートを融解してから、25mlにつき1つのEDTAフリープロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(ロッシュ・ジアグノスティクス、イギリス)を含有する50mM HEPES(pH7.4)で希釈する。希釈は、各酵素バッチに特別な予め決定された倍率により、このアッセイの間にほぼ30%の基質を産物へ変換するのに十分な酵素が15μlに含まれるようにする。
【0092】
4ml DMSO+96ml 50mM HEPES(pH7.4)からなる4% DMSO溶液を調製する。500μlの基質溶液を250μlの酵素溶液+250μlの4% DMSO溶液へ加えて、37℃で16時間インキュベートすることによって産物溶液を調製する。
【0093】
アッセイを以下のように設定する:
黒色の384ウェル・マイクロタイタープレートにおいて、15μlの酵素溶液を15μlの4% DMSO溶液へ加える。15μlの4% DMSO溶液がさらに40μMホスホラミドンを含有する、同様の非特異的なバックグラウンド・ブランクも設定する。次いで、30μlの基質溶液をアッセイとブランクの両方へ加えてから、プレートを37℃で1時間インキュベートする。インキュベーションに続き、蛍光測定(Ex485/Em538)を行う。BMGギャラクシー蛍光リーダー(BMG Labテクノロジーズ、オッフェンベルグ、ドイツ)。
【0094】
酵素のタンパク分解活性は、試料の蛍光と非特異バックグラウンド・ブランクの蛍光の差に相当する。
同一のマイクロタイタープレート上のウェル中の60μlの生成物より得た蛍光測定値を利用することができる。必要であれば、SEPアッセイからの測定蛍光単位と一緒にこの数値を使用して、1時間のインキュベーション時間の間にタンパク分解された基質の百分率(%)を計算するか、又は測定される蛍光増加をタンパク分解基質(ng)/分/酵素(ml)のような他の有用な単位へ変換する。
【0095】
このアッセイを使用して、NEP及びSEP阻害剤のIC50を決定する:
SEP又はNEP阻害剤(例えば、ホスホラミドン)のIC50を決定するために、上記に記載のように、15μlのDMSO溶液に含まれるある範囲の試験濃度の阻害剤を用いて、多数のアッセイを実施する(阻害剤の10mM 100% DMSOストックの4% DMSO/50mM HEPES(pH7.4)での適切な希釈によって作製する)。好適な標準グラフ適合コンピュータ・プログラムを使用して、S字状の用量反応曲線を「阻害剤の対数濃度」対「阻害%」又は「活性%」のプロットへ適合させる。IC50は、50%最大阻害を引き起こす阻害剤濃度として計算される。典型的には、所与のIC50決定には、半対数単位の増分において異なって使用する、少なくとも10の阻害剤濃度の用量範囲を使用する。
【0096】
ほぼ2nM未満のIC50結果を与える阻害剤については、変更アッセイ条件の下でこのアッセイを繰り返す。ここでは、使用する酵素の量をほぼ1/10倍〜1/20倍へ減らして、基質濃度は5μMへ増やし、インキュベーション時間を3時間へ増やす。このことにより、そのKiが約0.2〜2nMの範囲にある化合物のIC50推定値が酵素濃度によって制限されないレベルまでアッセイの力価限界(緊密結合限界)を低下させる
本発明の化合物を上記のアッセイにおいて試験した。いずれの化合物も、20ナノモル濃度未満のIC50と、少なくとも1000倍のSEPに優るNEPへの選択性を有する強力なNEP阻害剤である。
【0097】
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例1)は、1nMのIC50として表されるNEPに対する活性と、SEPに優るNEPへの1900倍の選択性を有する。
【0098】
FSD及びMEDを治療する、本発明の化合物の有用性は、WO02/079143に記載の技術を使用して、さらに決定することができる。
本発明の化合物の有利な薬物動態は、CaCO−2試験を使用することによって実証することができる。CACO−2アッセイは、所与の分子のGI管を通過する能力を予測するための広く受け入れられたモデルである。本発明の化合物は、以下のように明確化される良好なCACO−2流出を有する。CACO−2細胞において>5x10−6cm/s(pH7.4で)及び>15x10−6cm/s(pH6.5で)の見かけ透過度(Papp)値を有する化合物は、良好な透過性を有するとみなされ、GI管を通過してよく吸収されると予測される。
【0099】
この試験は、以下に記載のように実施する:
細胞培養
Caco−2細胞を24ウェルFalcon Multiwell(登録商標)プレートに4.0x10細胞/ウェルで接種した。この細胞を、20%胎仔ウシ血清、1%非必須アミノ酸、2mM L−グルタミン、及び2mMピルビン酸ナトリウムを補充した最少必須培地(Gibco 21090−022)からなる培養基において増殖させた。この培養基は毎週3回交換して、細胞は、37℃、5% CO、及び90%相対湿度に維持した。透過性試験は、単層が15〜18日齢の間にあるときに実施した。継代数23〜40の間の細胞を使用した。
【0100】
透過性試験
それぞれの試験化合物を10mM DMSO溶液として調製してから、この溶液の62.5μlを25mLの輸送緩衝液へ加えた。膜完全性のマーカーとしてナドロール(25μM)を各ウェルへ加えた。次いで、これらの溶液を輸送緩衝液と一緒に37℃まで温めた。輸送緩衝液は、pH7.4又はpH6.5のHBSS(ハンクス平衡化塩溶液)であった。それぞれの試験を始める前に、各単層をHBSSで3回洗浄した。化合物を加えていない輸送緩衝液を各受容ウェルに(250μlを尖端側へ、1mLを基底側部ウェルへ)入れた。薬物溶液を各供与ウェルへ(250μlを尖端ウェルへ、1mLを基底側部ウェルへ)加えることによって試験を開始した。37℃で2時間の2時間インキュベーションに続き、すべてのウェルより試料をLC−MS−MS分析のために取り出した。
【0101】
本発明の化合物は、5より大きいCACO−2 A−B流出を有する。
ヒト肝ミクロソームは、肝臓における代謝に対する薬物分子の代謝安定性を予測するための広く受け入れられたモデルである。本発明の化合物は、HLMによる代謝に対して安定である。HLM中半減期が90分未満の化合物は、あまりに速やかに代謝されるので、体内での極度に短い滞留時間と、代謝的に安定した化合物に比較して低下したバイオアベイラビリティを示すと予測される。本発明の化合物は、HLMにおいて110分より大きい半減期を有する。
【0102】
この試験は、以下のように実施する:
ミクロソームのインキュベーション
インキュベーションは、いずれも37℃のサーモスタット調温の振とう水浴中で行った。各インキュベートは、0.5μM CYPを含有した。NADPH再生系として補助因子を加えた。これは、1mM NADP、5mM MgClx6HO、5mM DL−イソクエン酸、及び1ユニット/mlの高度精製イソクエン酸デヒドロゲナーゼより構成された。すべての試薬をリン酸緩衝液(50mM;pH7.4)に溶かした。基質濃度は、1μMであった。基質をアセトニトリルに溶かし、インキュベーション混合物中の最終アセトニトリル濃度を0.1%(v/v)より低くした。対照インキュベーション液からはNADPを省いた。すべての実験において、試料をミクロソーム、基質、及び再生系とともにNADPの非存在下に37℃で5分間プレインキュベートした。NADPの添加により反応を開始させた。インキュベーション時間は1時間であった。0、3、5、10、15、20、30、45、及び60分後に100μlのアリコートを取り出した。このアリコートを400μlの1M酢酸と2.0mlの酢酸エチルで抽出し、LC−MS−MSにより分析した。
【0103】
本発明の化合物は、以下のリストより選択される1以上のさらなる有効成分と組み合わせてよい:
1)1以上の天然に存在するか又は合成のプロスタグランジン又はそのエステル。本明細書での使用に適したプロスタグランジンには、アルプロスタジル、プロスタグランジンE、プロスタグランジンE、13,14−ジヒドロプロスタグランジンE、プロスタグランジンE、エプロスチノール、WO−00033825及び/又は2000年3月14日発行の米国6,037,346号(いずれも参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものが含まれる、天然合成及び半合成のプロスタグランジンとその誘導体、PGE、PGE、PGA、PGB、PGFα、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGE、PGB、19−ヒドロキシ−PGA、19−ヒドロキシ−PGB、PGEα、カルボプロスト、トロメタミンジノプロスト、トロメタミン、ジノプロストン、リポプロスト、ゲメプロスト、メテノプロスト、スルプロスツン、チアプロスト、及びモキシシレートのような化合物が含まれる。
【0104】
2)α−アドレナリン受容体又はα−受容体又はα−ブロッカーとしても知られる、1以上のα−アドレナリン作用性受容体アンタゴニスト化合物。本明細書での使用に適した化合物には:1998年6月14日公開のPCT出願WO99/30697号(α−アドレナリン作用性受容体に関連した開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるようなα−アドレナリン作用性受容体ブロッカーが含まれ、選択的α−アドレナリン受容体若しくはα−アドレナリン受容体ブロッカーと非選択的アドレナリン受容体ブロッカーが含まれ、好適なα−アドレナリン受容体ブロッカーには:フェントラミン、メシル酸フェントラミン、トラゾドン、アルフゾシン、インドラミン、ナフトピジル、タムスロシン、ダピプラゾール、フェノキシベンズアミン、イダゾキサン、エファラキサン、ヨヒンビン、ラウオルフィアアルカロイド、Recordati 15/2739、SNAP 1069、SNAP 5089、RS17053、SL 89.0591、ドキサゾシン、テラゾシン、アバノキル、及びプラゾシン;US6,037,346[2000年3月14日]からのα−ブロッカー、ジベナルニン、トラゾリン、トリマゾシン、及びジベナルニン;米国特許第4,188,390;4,026,894;3,511,836;4,315,007;3,527,761;3,997,666;2,503,059;4,703,063;3,381,009;4,252,721、及び2,599,000号(このいずれも参照により本明細書に組み込まれる)に記載のようなα−アドレナリン作用性受容体が含まれ;α−アドレナリン受容体ブロッカーには:随意にピルキサミンのような強心薬の存在下での、クロニジン、パパベリン、塩酸パパベリンが含まれる。
【0105】
3)1以上のNOドナー(NOアゴニスト)化合物。本明細書での使用に適したNOドナー化合物には、三硝酸グリセリン(ニトログリセリンとしても知られる)が含まれる、モノ、ジ、又はトリ硝酸又は有機硝酸エステルのような有機硝酸エステル、5−モノ硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、四硝酸ペンタエリスリトール、四硝酸エリスリチル、ニトロプルシドナトリウム(SNP)、3−モルホリノシドノニミンモルシドミン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン(SNAP)、S−ニトロソ−N−グルタチオン(SNO−GLU)、N−ヒドロキシ−L−アルギニン、硝酸アミル、リンシドミン、リンシドミンクロロ水和物、(SIN−1)S−ニトロソ−N−システイン、ジアゼニウムジオレート、(NONOエート)、1,5−ペンタン二硝酸、L−アルギニン、チョウセンニンジン、zizphi fructus、モルシドミン、Re−2047、公開PCT出願WO0012075に記載のNMI−678−11及びNMI−937のようなニトロシル化マキシシライト(maxisylyte)誘導体が含まれる。
【0106】
4)1以上のカリウムチャネルオープナー又はモジュレーター。本明細書での使用に適したカリウムチャネルオープナー/モジュレーターには、ニコランジル、クロモカリム、レブクロマカリム、レマカリム、ピナシジル、クリアゾキシド、ミノキシジル、カリブドトキシン、グリブリド、4−アミノピリジン、BaClが含まれる。
【0107】
5)1以上のドパミン作用剤、好ましくは、アポモルヒネ、又はプラミペキソール及びロピリノール(WO0023056号に特許請求される)のような選択的D、D、又はD/Dアゴニスト、PNU95666(WO0040226号に特許請求される)。
【0108】
6)1以上の血管拡張剤。本明細書での使用に適した血管拡張剤には、ニモデピン、ピナシジル、シクランデレート、イソクスプリン、クロロプロマジン、ハロペリドール、Rec 15/2739、トラゾドンが含まれる。
【0109】
7)1以上のトロンボキサンA2アゴニスト。
8)1以上のCNS活性剤。
9)1以上の麦角アルカロイド。好適な麦角アルカロイドは、2000年3月14日発行の米国特許第6,037,346号に記載され、アセテルガミン、ブラゼルゴリン、ブロメルグリド、シアネルゴリン、デロルゴトリル、ジスレルギン、マレイン酸エルゴノビン、酒石酸エルゴタミン、エチスレルギン、レルゴトリル、リセルギド、メスレルギン、メテルゴリン、メテルゴタミン、ニセルゴリン、ペルゴリド、プロピセルギド、プロテルグリド、テルグリドが含まれる。
【0110】
10)ナトリウム利尿因子、特に心房性ナトリウム利尿因子(心房性ナトリウム利尿ペプチドとしても知られる)、B及びC型ナトリウム利尿因子の作用を変調させる、中性エンドペプチダーゼ阻害剤のような、1以上の化合物。
【0111】
11)エナラプリルのような、アンジオテンシン変換酵素を阻害する1以上の化合物と、オマパトリラットのような、アンジオテンシン変換酵素及び中性エンドペプチダーゼの組合せ阻害剤。
【0112】
12)ロサルタンのような、1以上のアンジオテンシン受容体アンタゴニスト。
13)L−アルギニンのような、1以上のNOシンターゼ基質。
14)アムロジピンのような、1以上のカルシウムチャネルブロッカー。
【0113】
15)1以上のエンドセリン受容体アンタゴニスト及びエンドセリン変換酵素阻害剤。
16)スタチン(例、アトルバスタチン/Lipitor(商標))及びフィブラートのような、1以上のコレステロール低下剤。
【0114】
17)1以上の抗血小板及び抗血栓剤、例えば、tPA、uPA、ワルファリン、ヒルジンと他のトロンビン阻害剤、ヘパリン、トロンボプラスチン活性化因子阻害剤。
18)レズリンのような1以上のインスリン増感剤と、グリピジドのような血糖降下剤。
【0115】
19)L−ドーパ又はカルビドーパ。
20)ドネジピルのような、1以上のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤。
21)1以上のステロイド性又は非ステロイド性抗炎症剤。
【0116】
22)1以上のエストロゲン受容体モジュレーター、及び/又はエストロゲンアゴニスト、及び/又はエストロゲンアンタゴニスト、好ましくは、ラロキシフェン、チボロン、又はラソフォキシフェン、(−)−cis−6−フェニル−5−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オールとその医薬的に許容される塩(この製法はWO96/21656号に詳述されている)。
【0117】
23)1以上のカンナビノイド受容体モジュレーター。
24)1以上のNPY(神経ペプチドY)阻害剤、より特定すると、NPY1若しくはNPY5阻害剤、好ましくはNPY1阻害剤。好ましくは、前記NPY阻害剤(NPY Y1及びNPY Y5が含まれる)は、100nM未満、より好ましくは50nM未満のIC50を有する。NPY阻害剤を同定するためのアッセイは、WO−A−98/52890(96頁、2〜28行目)に提示されている。
【0118】
25)1以上の血管作動性腸管タンパク質(VIP)、VIP模擬体、VIP類似体、より特別には、1以上のVIP受容体サブタイプ、VPAC1、VPAC、又はPACAP(下垂体細胞アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド)により仲介される。1以上のVIP受容体アゴニスト又はVIP類似体(例、Ro−125−1553)、又はVIP断片、VIPと組み合わせた1以上のα−アドレナリン受容体アンタゴニスト(例、Invicorp,Aviptadil)。
【0119】
26)メラノタンII、PT−14、PT−141、又はWO−09964002、WO−00074679、WO−09955679、WO−00105401、WO−00058361、WO−00114879、WO−00113112、WO−09954358号において特許請求される化合物のような、1以上のメラノコルチン受容体アゴニスト若しくはモジュレーター、又はメラノコルチンエンハンサー。
【0120】
27)WO−09902159、WO−00002550、及び/又はWO−00028993号に記載されるものが含まれる、1以上のセロトニン受容体アゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーター、より特別には、5HT1A(VML670が含まれる)、5HT2A、5HT2C、5HT3、及び/又は5HT6受容体のアゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーター。
【0121】
28)アンドロステロン、デヒドロアンドロステロン、テストステロン、アンドロスタンジオン、及び合成アンドロゲンのような、1以上のアンドロゲン。
29)エストラジオール、エストロン、エストリオール、及び安息香酸エストロゲンのような合成エストロゲンといった、1以上のエストロゲン。
【0122】
30)ブプロピオン、GW−320659のような、ノルアドレナリン、ドパミン、及び/又はセロトニンの輸送体の1以上のモジュレーター。
31)1以上のプリン作動性受容体アゴニスト及び/又はモジュレーター。
【0123】
32)WO−09964008号に記載されるものが含まれる、1以上のニューロキニン(NK)受容体アンタゴニスト。
33)1以上のオピオイド受容体アゴニスト、アンタゴニスト、又はモジュレーター、好ましくは、ORL−1受容体のアゴニスト。
【0124】
34)1以上のオキシトニン/バソプレッシン受容体アゴニスト又はモジュレーター、好ましくは選択的オキシトシンアゴニスト又はモジュレーター。
35)1以上のPDE阻害剤、より特別には、PDE2、3、4、5、7又は8阻害剤、好ましくはPDE2若しくはPDE5阻害剤、そして最も好ましくは、PDE5阻害剤(以下を参照のこと)。前記阻害剤は、好ましくは、各酵素に対して100nM未満のIC50を有する。本発明による使用に適したcGMP PDE5阻害剤には:
EP−A−0463756に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;EP−A−0526004に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;国際特許出願公開公報WO93/06104に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;国際特許出願公開公報WO93/07149に開示される異性体のピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−4−オン;国際特許出願公開公報WO93/12095に開示されるキナゾリン−4−オン;国際特許出願公開公報WO94/05661に開示されるピリド[3,2−d]ピリミジン−4−オン;国際特許出願公開公報WO94/00453に開示されるプリン−6−オン;国際特許出願公開公報WO98/49166に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;国際特許出願公開公報WO99/54333に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;EP−A−0995751に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−4−オン;国際特許出願公開公報WO00/24745に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;EP−A−0995750に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−4−オン;国際特許出願公開公報WO95/19978に開示される化合物;国際特許出願公開公報WO99/24433に開示される化合物、及び国際特許出願公開公報WO93/07124に開示される化合物;国際特許出願公開公報WO01/27112に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;国際特許出願公開公報WO01/27113に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;EP−A−1092718に開示される化合物、及びEP−A−1092719に開示される化合物が含まれる。
【0125】
本発明による使用にさらに適したPDE5阻害剤には:1−[[3−(6,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−メチルピペラジンとしても知られる5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルスルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル)(EP−A−0463756を参照のこと);5−(2−エトキシ−5−モルホリノアセチルフェニル)−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(EP−A−0526004を参照のこと);3−エチル−5−[5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)−2−n−プロポキシフェニル]−2−(ピリジン−2−イル)メチル−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO98/49166を参照のこと);3−エチル−5−[5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)−2−(2−メトキシエトキシ)ピリジン−3−イル]−2−(ピリジン−2−イル)メチル−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO99/54333を参照のこと);3−エチル−5−{5−[4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル]−2−([(1R)−2−メトキシ−1−メチルエチル]オキシ)ピリジン−3−イル}−2−メチル−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オンとしても知られる(+)−3−エチル−5−[5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)−2−(2−メトキシ−1(R)−メチルエトキシ)ピリジン−3−イル]−2−メチル−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO99/54333を参照のこと);1−{6−エトキシ−5−[3−エチル−6,7−ジヒドロ−2−(2−メトキシエチル)−7−オキソ−2H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル]−3−ピリジニルスルホニル}−4−エチルピペラジンとしても知られる5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO01/27113、実施例8を参照のこと);5−[2−イソブトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−(1−メチルピペリジン−4−イル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO01/27113、実施例15を参照のこと);5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−フェニル−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO01/27113、実施例66を参照のこと);5−(5−アセチル−2−プロポキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−イソプロピル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO01/27112、実施例124を参照のこと);5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(WO01/27112、実施例132を参照のこと);(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラジノ[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351)、即ち国際特許出願公開公報WO95/19978の実施例78及び95の化合物、並びに実施例1、3、7、及び8の化合物;1−[[3−(3,4−ジヒドロ−5−メチル−4−オキソ−7−プロピルイミダゾ[5,1−f]−as−トリアジン−2−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−4−エチルピペラジンとしても知られる2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル)、即ち国際特許出願公開公報WO99/24433の実施例20、19、337、及び336の化合物;及び、国際特許出願公開公報WO93/07124(エーザイ)の実施例11の化合物;及び、Rotella D P, J. Med. Chem., 2000, 43, 1257 からの化合物3及び14が含まれる。
【0126】
なお他の好適なPDE5阻害剤には:4−ブロモ−5−(ピリジルメチルアミノ)−6−[3−(4−クロロフェニル)−プロポキシ]−3(2H)ピリダジノン;1−[4−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)アミノ]−6−クロロ−2−キノゾリニル]−4−ピペリジン−カルボン酸、一ナトリウム塩;(+)−cis−5,6a,7,9,9,9a−ヘキサヒドロ−2−[4−(トリフルオロメチル)−フェニルメチル−5−メチル−シクロペント−4,5]イミダゾ[2,1−b]プリン−4(3H)オン;フラズロシリン;cis−2−ヘキシル−5−メチル−3,4,5,6a,7,8,9,9a−オクタヒドロシクロペント[4,5]−イミダゾ[2,1−b]プリン−4−オン;3−アセチル−1−(2−クロロベンジル)−2−プロピルインドール−6−カルボキシレート;3−アセチル−1−(2−クロロベンジル)−2−プロピルインドール−6−カルボキシレート;4−ブロモ−5−(3−ピリジルメチルアミノ)−6−(3−(4−クロロフェニル)プロポキシ)−3(2H)ピリダジノン;1−メチル−5−(5−モルホリノアセチル−2−n−プロポキシフェニル)−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ(4,3−d)ピリミジン−7−オン;1−[4−[(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)アミノ]−6−クロロ−2−キナゾリニル]−4−ピペリジンカルボン酸、一ナトリウム塩;Pharmaprojects No.4516(グラクソウェルカム);Pharmaprojects No.5051(バイエル);Pharmaprojects No.5064(協和発酵;WO96/26940を参照のこと);Pharmaprojects No.5069(シェーリングプラウ);GF−196960(グラクソウェルカム);E−8010及びE−4010(エーザイ);Bay−38−3045及び38−9456(バイエル)、及びSch−51866が含まれる。
【0127】
FSDを治療するには、好ましくは、本発明の化合物を以下のリストより選択される1以上の有効成分と組み合わせてよい:
a)PDE5阻害剤、より好ましくは、5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルスルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル);(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−ピラジノ[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351);2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル);5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;及び5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オンとこれらの医薬的に許容される塩;
b)NPY Y1阻害剤;
c)アポモルヒネのようなドパミンアゴニスト、又はプラミペキソール及びロピリノールのような選択的D、D、又はD/Dアゴニスト;
d)メラノコルチン受容体アゴニスト若しくはモジュレーター、又はメラノコルチンエンハンサー、好ましくはメラノタンII、PT−14、PT−141;
e)5HT2Cのアゴニスト、アンタゴニスト又はモジュレーター;
f)エストロゲン受容体モジュレーター、エストロゲンアゴニスト、及び/又はエストロゲンアンタゴニスト、好ましくは、ラロキシフェン、チボロン、又はラソフォキシフェン;
g)アンドロステロン、デヒドロアンドロステロン、テストステロン、アンドロスタンジオン、及び合成アンドロゲンのようなアンドロゲン;並びに
h)エストラジオール、エストロン、エストリオールのようなエストロゲンと、安息香酸エストロゲンのような合成エストロゲン。
【0128】
MEDを治療するには、好ましくは、本発明の化合物を以下のリストより選択される1以上の有効成分と組み合わせてよい:
a)PDE5阻害剤、より好ましくは、5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルスルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル);(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラジノ[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351);2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル);5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;及び5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オンとこれらの医薬的に許容される塩;
b)NPY Y1阻害剤;
c)ドパミンアゴニスト(好ましくは、アポモルヒネ)、又はプラミペキソール及びロピリノールのような選択的D、D、又はD/Dアゴニスト;
d)メラノコルチン受容体アゴニスト若しくはモジュレーター、又はメラノコルチンエンハンサー、好ましくはメラノタンII、PT−14、PT−141;並びに
e)5HT2Cのアゴニスト、アンタゴニスト又はモジュレーター。
【0129】
FSDを治療するのに特に好ましい組合せは、本発明の化合物と以下のリストより選択される1以上の有効成分である:
5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルスルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル);
(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラジノ[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351);
2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル);
5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;
5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;
アポモルヒネ;
メラノタンII;
PT−141;
ラソフォキシフェン;
ラロキシフェン;
チボロン;
アンドロステロン、デヒドロアンドロステロン、テストステロン、アンドロスタンジオン、及び合成アンドロゲンのようなアンドロゲン;並びに
エストラジオール、エストロン、エストリオールのようなエストロゲンと、安息香酸エストロゲンのような合成エストロゲン。
【0130】
MEDを治療するのに特に好ましい組合せは、本発明の化合物と以下のリストより選択される1以上の有効成分である:
5−[2−エトキシ−5−(4−メチル−1−ピペラジニルスルホニル)フェニル]−1−メチル−3−n−プロピル−1,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン(シルデナフィル);
(6R,12aR)−2,3,6,7,12,12a−ヘキサヒドロ−2−メチル−6−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピラジノ[2’,1’:6,1]ピリド[3,4−b]インドール−1,4−ジオン(IC−351);
2−[2−エトキシ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル−1−スルホニル)−フェニル]−5−メチル−7−プロピル−3H−イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−4−オン(バルデナフィル);
5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;
5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;
アポモルヒネ;
メラノタンII;並びに
PT−141。
【0131】
心臓血管系障害、特に高血圧を治療するには、本発明の化合物を以下のリストより選択される1以上の有効成分と組み合わせてよい:
a)ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、エプロサルタン、及びオルメサルタンのような、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB);
b)アムロジピンのようなカルシウムチャネルブロッカー(CCB);
c)アトルバスタチンのようなスタチン;
d)シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、5−[2−エトキシ−5−(4−エチルピペラジン−1−イルスルホニル)ピリジン−3−イル]−3−エチル−2−[2−メトキシエチル]−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;5−(5−アセチル−2−ブトキシ−3−ピリジニル)−3−エチル−2−(1−エチル−3−アゼチジニル)−2,6−ジヒドロ−7H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン、及び;WO00/27848に開示されるピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−4−オン、特にN−[[3−(4,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]−ピリミジン−5−イル)−4−プロポキシフェニル]スルホニル]−1−メチル−2−ピロリジンプロパンアミド[DA−8159(WO00/27848の実施例68)];
e)アテノロール又はカルベジロールのようなβ−ブロッカー;
f)キナプリル、エナラプリル、及びリシノプリルのようなACE阻害剤;
g)ドキサゾシンのようなα−ブロッカー;
h)エプレレノン又はスピロノラクトンのような選択的アルドステロン受容体アンタゴニスト(SARA);並びに
i)リルメニジン及びモキソニジンのようなイミダゾリンIアゴニスト。
【0132】
有効成分の組合せを投与する場合、それらは、同時に、個別に、又は連続的に投与してよい。
本発明の化合物は、単独で投与することができるが、ヒトの治療においては、一般的には、企図される投与経路と標準的な製剤実技に関して選択される、好適な医薬賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
【0133】
本発明は、式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形と医薬的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる医薬組成物を提供する。
経口投与
本発明の化合物は、経口投与することができる。経口投与は、化合物が胃腸管に入るような嚥下を伴っても、又は化合物が口から直接血流に入る頬内又は舌下投与を利用してもよい。
【0134】
経口投与に適した製剤には、錠剤、粒子を含有するカプセル剤、液剤、又は散剤、甘味入り錠剤(液体充填剤が含まれる)、噛み剤(chews)、多粒子剤及びナノ粒子剤、ゲル剤、フィルム剤(粘接着剤が含まれる)、丸剤(ovules)、スプレー剤のような固体製剤と液体製剤が含まれる。
【0135】
液体製剤には、懸濁液剤、溶液剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が含まれる。そのような製剤は、軟又は硬カプセル剤中の充填剤として利用してよく、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、メチルセルロース、又は好適なオイルと、1以上の乳化剤及び/又は懸濁剤を含む。液体製剤は、固形物の復元によって、例えば、サシェ剤より調製してもよい。
【0136】
本発明の化合物は、Liang and Chen による Expert Opinion in Therapeutic Patents, 11(6), 981-986 (2001) に記載されるような速溶解性、速崩壊性の剤形で使用してもよい。
【0137】
典型的な錠剤は、製剤化学者に知られた標準法を使用して、例えば、直接圧縮、造粒(乾式、湿式、又は融解)、融解凝結、又は押出しによって調製することができる。錠剤製剤は、1以上の層を含む場合があり、被覆しても被覆しなくてもよい。
【0138】
経口投与に適した賦形剤の例には、担体(例えば、セルロース、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、マンニトール、及びクエン酸ナトリウム)、造粒結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びゼラチン)、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコラート、及びケイ酸塩)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、保存剤、抗酸化剤、芳香剤、及び着色剤が含まれる。
【0139】
経口投与用の固体製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。高エネルギー分散剤、浸透及び被覆粒子のような好適な修飾放出技術の詳細は、Verma et al, Pharmaceutical Technology On-line, 25(2), 1-14 (2001) に見出すことができる。他の修飾放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。
【0140】
非経口投与
本発明の化合物は、血流、筋肉、又は内臓へ直接投与してもよい。非経口投与に適した手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、鞘内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、及び皮下投与が含まれる。非経口投与に適したデバイスには、針(ミクロ針が含まれる)注射器、無針注射器、及び注入技術が含まれる。
【0141】
非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは、3〜9のpHへ)のような賦形剤を含有し得る水溶液であるが、いくつかの応用では、それらは、より好適には、無菌の非水性溶液として、又は無菌の発熱物質を含まない水のような好適な担体と一緒に使用すべき乾燥型として製剤化してよい。
【0142】
非経口製剤の無菌条件下での、例えば凍結乾燥による調製は、当業者によく知られた標準の製剤技術を使用して、容易に達成することができる。
非経口溶液剤の調製に使用する式(I)の化合物の溶解性は、好適な処理、例えば高エネルギースプレー乾燥分散の使用(WO01/47495を参照のこと)によって、及び/又は溶解促進剤の使用のような適切な製剤技術の使用によって高めてよい。
【0143】
非経口投与用の製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。
【0144】
局所投与
本発明の化合物はまた、皮膚(好ましくは、性器へ)又は粘膜へ、皮膚からか又は経皮的に局所投与してよい。この目的のための典型的な製剤には、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤、粒子散剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、カシェ剤、インプラント、スポンジ、ファイバー、包帯、及びミクロエマルジョンが含まれる。リポソームも使用してよい。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、グリセリン、及びプロピレングリコールが含まれる。浸透エンハンサーを取り込んでよく、例えば、Finnin and Morgan, J Pharm Sci, 88(10), 955-958 (1999年10月) を参照のこと。
【0145】
局所投与の他の手段には、イオン導入、エレクトロポレーション、ホノフォレーシス(phonophoresis)、超音波導入(sonophoresis)、及び、無針又はミクロ針注射による送達が含まれる。
【0146】
局所投与用の製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。このように、本発明の化合物は、この活性化合物の長期放出を提供する埋込みデポー剤としての投与のためにより硬い形態に製剤化してよい。
【0147】
吸入/鼻腔内投与
本発明の化合物はまた、典型的には乾燥粉末の形態で(例えば乳糖との乾燥混和物中の混合物として単独で、又は、例えばリン脂質と混合した混合成分粒子として)、乾燥粉末吸入器からか、又は加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気水力学を利用して微細粒子を産生するアトマイザー)、又はネブライザーより、ジクロロフルオロメタンのような好適な推進剤の使用を伴うか又は伴わずに、エアゾールスプレーとして鼻腔内又は吸入により投与することができる。
【0148】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、又はネブライザーは、例えば、エタノール(場合により、水性エタノール)、又は活性化合物を分散、可溶化、又はその放出を拡張するのに適した他の薬剤、溶媒としての推進剤、及びソルビタントリオレエート又はオリゴ乳酸のような随意の界面活性剤を含んでなる、活性化合物の溶液又は懸濁液を含有する。
【0149】
乾燥粉末又は懸濁製剤における使用に先立って、医薬生成物は、吸入による送達に適したサイズ(典型的には、5ミクロン未満)へ微小化する。このことは、らせんジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を形成する超臨界流体処理、高圧均質化、又はスプレー乾燥のような、どの適切な粉砕法によっても達成してよい。
【0150】
電気水力学を利用して微細粒子を産生するアトマイザーにおける使用に適した溶液製剤は、1回の作動につき本発明の化合物の1μg〜10mgを含有し、この作動量は、1μl〜100μlへ変動してよい。典型的な製剤は、式(I)の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、及び塩化ナトリウムを含む場合がある。プロピレングリコールの代わりに使用し得る代替溶媒には、グリセロールとポリエチレングリコールが含まれる。
【0151】
吸入器又は通気器における使用のカプセル剤、ブリスター剤、及びカートリッジ剤(例えば、ゼラチン又はHPLCより作製する)は、本発明の化合物の粉末混合物、乳糖又はデンプンのような好適な粉末基剤、及び、l−ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムのような性能修飾剤を含有するように製剤化してよい。
【0152】
乾燥粉末の吸入剤及びエアゾール剤の場合、投与量単位は、目盛り量を送達する栓によって決定される。本発明による単位は、典型的には、式(I)の化合物の1μg〜50mgを含有する目盛量又は「パフ」を投与するように配置される。全体の1日量は、典型的には、1mg〜50mgのように、1μg〜50mgの範囲であり、これは単回用量か又は、より通常は、1日全体で分割された用量として投与してよい。
【0153】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。
【0154】
直腸/膣内投与
本発明の化合物は、例えば、坐剤、ペッサリー、又は浣腸剤の形態で、直腸又は膣内に投与してよい。ココア脂が従来の坐剤基剤であるが、様々な代替物を適宜使用してよい。直腸/膣投与用の製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。
【0155】
眼/耳からの投与
本発明の化合物は、典型的には、pH調節した等張の無菌生理食塩水中の微小化した懸濁液又は溶液の滴剤の形態で、眼又は耳へ直接投与してもよい。眼及び耳への投与に適した他の製剤には、軟膏剤、生物分解性(例、吸収ゲルスポンジ、コラーゲン)及び非生物分解性(例、シリコーン)のインプラント、カシェ剤、レンズ、及び粒子や、ニオソーム又はリポソームのような小胞系が含まれる。架橋結合性ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースのポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はメチルセルロース)、又はヘテロ多糖ポリマー(例えば、ゼラチンゴム)のようなポリマーを、塩化ベンザルコニウムのような保存剤と一緒に取り込んでよい。このような製剤は、イオン導入によって送達してもよい。
【0156】
眼/耳からの投与用の製剤は、即時及び/又は修飾放出であるように製剤化してよい。修飾放出製剤には、遅延、持続、拍動、制御、二重、標的化、及びプログラムされた放出が含まれる。
【0157】
可能にする技術
本発明の化合物は、シクロデキストリン又はポリエチレングリコール含有ポリマーのような可溶性の高分子実体と組み合わせて、その可溶性、溶解速度、味のマスキング、バイオアベイラビリティ、及び/又は安定性を改善してよい。
【0158】
例えば、薬物−シクロデキストリン複合体は、ほとんどの剤形及び投与経路に概ね有用であることが見出されている。封入と非封入の両方の複合体を使用してよい。薬物との直接複合化に代わるものとして、シクロデキストリンは、補助添加剤として、即ち、担体、希釈剤、又は可溶化剤として使用してよい。これらの目的に最も一般的に使用されるのは、α、β及びγ−シクロデキストリンであり、その例は、国際特許出願番号WO91/11172、WO94/02518、及びWO98/55148に見出すことができる。
【0159】
投与量
ヒト患者への投与では、本発明の化合物の全1日量は、当然ながら、投与の形式に依存して、典型的には0.1mg〜1000mgの範囲にある。例えば、経口投与では、5〜500mgのように、5mg〜1000mgの全1日量が必要とされる場合があるのに対し、静脈内用量では、0.1〜10mg/kgのような、0.01〜30mg/kg体重、より好ましくは、0.1〜1mg/kg体重だけが必要とされる場合がある。全1日量は、単回量又は分割量で投与してよい。
【0160】
これらの投与量は、約65〜70kgの体重を有する平均のヒト被検者に基づく。医師は、幼児や高齢者のように、体重がこの範囲の外側に該当する被検者の用量を容易に決定することができるだろう。
【0161】
当業者はまた、ある種の状態(FSD及びMEDが含まれる)の治療において、本発明の化合物が「要求される」(即ち、必要とされるか又は望まれる)ことに基づいて単回用量として服用される場合があることを理解されよう。
【0162】
好ましい態様において、本発明の化合物は、全身的に(経口、頬内、及び舌下のように)、より好ましくは経口で送達される。好ましくは、このような全身(最も好ましくは、経口)投与は、女性の性機能不全、好ましくはFSADを治療するために使用される。
【0163】
従って、特に好ましい態様において、FSD、より好ましくはFSADの治療又は予防のために全身的に送達される(好ましくは、経口で送達される)医薬品の製造における、本発明の化合物の使用が提供される。
【0164】
好ましい経口製剤は、即時放出錠剤;又は速分散又は溶解性の投与製剤(FDDF)を使用する。
さらに好ましい態様において、本発明の化合物は、局所的に、好ましくは女性の性器、具体的には膣へ直接投与される。
【0165】
NEPは、身体全体に存在するので、本発明の化合物が全身投与されて、忍容し得ない(有害な)副作用を起こすことなく女性の性器において治療応答を達成することはあまり期待できない。EP1097719−A1と以下の動物モデルにおいて、我々は、ウサギモデル(in vivo)へ全身投与したNEP阻害剤が、性的興奮(骨盤神経刺激により模倣される)時に、有意な低血圧又は高血圧を引き起こすことのような心臓血管系のパラメータに悪影響を及ぼすことなく、性器の血流を増加させることを示した。
【0166】
好ましくは、本発明の化合物は、性的に刺激された患者におけるFSDの治療のために投与される(性的刺激には、視覚、聴覚、又は触覚の刺激が含まれるものとする)。この刺激は、前記投与の前でも、後でも、その間でもよい。
【0167】
このように、本発明の化合物は、女性の性器における性的興奮の根底にある経路/機序を亢進して、性的刺激への性的興奮応答を回復又は改善させる。
従って、好ましい態様は、被刺激患者におけるFSDの治療又は予防のための医薬品の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。
【0168】
獣医学上の使用では、本発明の化合物が、通常の獣医学的治療に従って好適に許容される製剤として投与され、獣医は、特別の動物に最も適正である投薬処方と投与経路を決定するものである。
【0169】
以下の製剤例は、例示でしかなく、本発明の範囲を制限するものではない。「有効成分」は、本発明の化合物を意味する。
製剤1:以下の成分を使用して錠剤を調製する:
重量/mg
有効成分 250
微結晶性セルロース 400
二酸化シリコン、フュームド 10
ステアリン酸 5
全量 665
上記成分を混和し、圧縮して錠剤を成型する。
【0170】
製剤2:静脈内製剤は、以下のように調製することができる:
有効成分 100mg
等張生理食塩水 1,000ml
本発明の化合物を性器へ局所投与するのに有用な典型的な製剤は、以下の通りである:
製剤3:スプレー剤
イソプロパノール(30%)及び水中の有効成分(1.0%)。
【0171】
製剤4:フォーム剤
有効成分、氷酢酸、安息香酸、セチルアルコール、パラヒドロキシ安息香酸メチル、リン酸、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ステアリン酸、ジエチルステアラミド、van Dyke香料6301号、精製水、及びイソブタン。
【0172】
製剤5:ゲル剤
有効成分、ドクサートナトリウムBP、イソプロピルアルコールBP、プロピレングリコール、水酸化ナトリウム、カルボマー934P、安息香酸、及び精製水。
【0173】
製剤6:クリーム剤
有効成分、安息香酸、セチルアルコール、ラベンダー、化合物13091、メチルパラベン、プロピルパラベン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、トリエタノールアミン、氷酢酸、ヒマシ油、水酸化カリウム、ソルビン酸、及び精製水。
【0174】
製剤7:ペッサリー
有効成分、セトマクロゴール1000BP、クエン酸、PEG1500及び1000、及び精製水。
【0175】
本発明には、さらに以下が含まれる:
(i)本発明の化合物が医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と一緒に含まれる医薬組成物。
【0176】
(ii)医薬品としての使用のための、本発明の化合物又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形。
(iii)中性エンドペプチダーゼの阻害によって有益な治療応答を得ることができる状態を治療又は予防するための医薬品としての、本発明の化合物の使用。
【0177】
(iv)性欲低下障害、性的興奮障害、オルガスム障害、又は性的疼痛障害、好ましくは性的興奮障害、オルガスム障害、又は性的疼痛障害、より好ましくは性的興奮障害を治療又は予防するための医薬品としての、本発明の化合物の使用。
【0178】
(v)本発明の化合物の有効量で哺乳動物を治療することが含まれる、FSD又はMEDを前記哺乳動物において治療する方法。
(vi)本発明の化合物を医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、又は担体と一緒に含んでなる、FSD又はMEDを治療する医薬組成物。
【0179】
(vii)FSD又はMEDを治療することに使用の本発明の化合物。
(viii)FSD又はMEDを治療又は予防するための医薬品の製造における本発明の化合物の使用。
【0180】
本発明を以下の非限定的な実施例において例示するが、ここでは以下の略号及び定義を使用する:
Arbocel(登録商標) 濾過剤
br ブロード
brm ブロード多重項
Boc tert−ブトキシカルボニル
CDI 1,1’−カルボニルジイミダゾール
δ 化学シフト
d 二重項
Δ 加熱
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン
DMA ジメチルアセトアミド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
ES エレクトロスプレーイオン化ポジティブ走査
ES エレクトロスプレーイオン化ネガティブ走査
Ex 実施例
h 時間
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
m 多重項
m/z 質量スペクトルピーク
min 分
m.p. 融点
MiBK メチルイソブチルケトン
MS 質量スペクトル
NMR 核磁気共鳴
Prec 前駆体
Prep 製法
q 四重項
quin 五重項
s 一重項
t 三重項
t−BMA tert−ブチルメチルエーテル
Tf トリフルオロメタンスルホニル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TS サーモスプレーイオン化ポジティブ走査
WSCDI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、いずれの事例でも、仮定した構造に一致した。特徴的な化学シフト(δ)を、主要ピークを明示する慣用の略号を使用して、テトラメチルシランからの百万分率下方磁場(downfield)で示す:例えば、s,一重項;d,二重項;t,三重項;q,四重項;m,多重項;br,ブロード。通常の溶媒について以下の略号を使用した:CDCl,重水素クロロホルム;DMSO,ジメチルスルホキシド。略号psiは、ポンド/平方インチを意味し、LRMSは、低解像質量分析法を意味する。薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用する場合、それは、シリカゲル60 F254プレートを使用するシリカゲルTLCを意味し、Rは、TLCプレート上での化合物の移動距離を溶媒フロントの移動距離で割ったものである。融点は、Perkin Elmer DSC7を20℃/分の加熱速度で使用して決定した。
【0181】
実施例1
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸
【0182】
【化7】

【0183】
(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル(製法7及び製法8)(7.4g,16.7ミリモル)をジクロロメタン(10mL)に溶かし、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、この混合物を室温で5時間撹拌した。この反応物を炭酸カリウム(10%水溶液)の添加により失活させ、pHを約3へ調整した(約120mLを必要とした)。生じた混合物をジクロロメタン(3x100mL)で抽出し、合わせた有機層をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー[SiO;ジクロロメタン中1%〜2%メタノール]により精製して、所望の酸(5.66g,87%)を澄明なオイルとして得た。このバッチを先の操作からの1.4gの材料と合わせ、ペンタン(100mL)中で3時間撹拌した。ペンタン層を除去し、残渣をかき集めてこのゴム状の残渣を砕き、さらなる分量のペンタン(100mL)とともにさらに2時間撹拌した。生じた白色の粉末を焼結漏斗に採取し、45℃で真空乾燥させて、表題化合物(6.52g)(融点105〜106℃)を浮遊性の白色粉末として得た。C2128Sの実測値:C,64.93;H,7.29;N,7.18。計算値:C,64.92;H,7.26;N,7.21。
【0184】
【化8】

【0185】
m/Z(エレクトロスプレー陰イオン)387(M−H)。
メタノール溶液(5mL中5.7mg)において旋光度測定を行って、以下の結果を得た:
【0186】
【表1】

【0187】
5つの異なる逆相カラムを使用するHPLC分析によって、純度を>99%と評価した:
【0188】
【表2】

【0189】
HPLC条件 分析用
温度 周囲温度
検出 225,254nm
移動相 A:水:MeCN:TFA=95:5:0.1%(v/v)
B:MeCN,線形勾配溶出(以下を参照のこと)
流速 1ml/分
溶媒勾配条件:
【0190】
【表3】

【0191】
以下に記載の条件を使用して、類似の経路により製造した反対のエナンチオマーの標準試料との比較により、キャピラリー電気泳動によってキラル純度を98%と評価した:
【0192】
【表4】

【0193】
表題化合物の生成の代替法を以下に示す:
(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル(製法7及び製法8)(2.4g,5.4ミリモル)をトルエン(7mL)に溶かし、トリフルオロ酢酸(4.1mL)を加え、この混合物を17℃で6時間撹拌した。この反応物を炭酸ナトリウム(9%水溶液)の添加により失活させ、pHを3へ調整した(30mLを必要とした)。MiBK(15ml)を加えた。有機相を分離させ、生成物を炭酸ナトリウム(9%水溶液、2x5ml)へ抽出した。この生成物を、1時間にわたる5M HClでのpH4.5へのpH調整によって酢酸イソプロピル(35ml)へ抽出した。大気蒸留により、有機相を出発材料に関して1gにつき5mlへ濃縮した。このオイルを周囲温度へ冷やし、0〜−5℃で1時間、結晶させて、粒状化した。真空濾過を使用してこの固形物を採取し、酢酸イソプロピル(5ml)で洗浄し、40℃で一晩真空乾燥させて、表題化合物[1.3g,3.3ミリモル、(62%)](融点105〜106℃)を浮遊性の白色粉末として得た。
【0194】
実施例2
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸
【0195】
【化9】

【0196】
この化合物は、製法9からの3−[1−({[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチルより出発して、実施例1の記載に類似した手順を使用して製造した。
【0197】
【化10】

【0198】
2128Sの実測値:C,64.74;H,7.28;N,7.14。計算値:C,64.92;H,7.26;N,7.21。
3つの異なる逆相カラムを使用するHPLC分析によって、純度を>98%と評価した:
【0199】
【表5】

【0200】
HPLC条件 分析用
温度 周囲温度
検出 225,254nm
移動相 A:水:MeCN:TFA=95:5:0.1%(v/v)
B:MeCN,勾配溶出(以下を参照のこと)
流速 1ml/分
溶媒勾配条件:
【0201】
【表6】

【0202】
実施例3
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸
【0203】
【化11】

【0204】
この化合物は、製法12からの3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸tert−ブチルより出発して、実施例1の記載に類似した手順を使用して製造した。
【0205】
【化12】

【0206】
実施例4
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸
【0207】
【化13】

【0208】
表題化合物は、製法10からの(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチルより出発して、実施例1に記載の手順を使用して製造した。
【0209】
【化14】

【0210】
実施例5
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸
【0211】
【化15】

【0212】
表題化合物は、製法13からの3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸tert−ブチルより出発して、実施例1の記載に類似した手順を使用して製造した。
【0213】
【化16】

【0214】
2128S・0.25HOの実測値:C,64.05;H,7.39;N,8.82。計算値:C,64.18;H,7.31;N,7.13。
実施例6
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸
【0215】
【化17】

【0216】
表題化合物は、製法14からの3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸tert−ブチルより出発して、実施例1の記載に類似した手順を使用して製造した。
【0217】
【化18】

【0218】
製法1
3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルイミド二炭酸ジ(tert−ブチル)
【0219】
【化19】

【0220】
アリルイミド二炭酸ジ(tert−ブチル)[Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 1997, 7, 1625-1636](8.75g,34ミリモル)を0℃に9−BBN[アルドリッチ](136mL,テトラヒドロフラン中0.5M溶液、2当量、68ミリモル)で処理し、この溶液を室温で45分間撹拌した。リン酸カリウム(23mL,3M水溶液、2.0当量、69ミリモル)を慎重に加えてから、反応フラスコをアルミホイルで覆った。6−ブロモ−2−メチルベンゾチアゾール[J. Chem. Soc. 1936, 1225;DE3528032A1](7.80g,34ミリモル、1当量)のジメチルホルムアミド(50mL)溶液に続き、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム二塩化物−ジクロロメタン1:1複合体(2.77g,3.4ミリモル、0.1当量)を加え、この反応混合物を室温で18時間撹拌した。この反応混合物を真空で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー[SiO,ペンタン:酢酸エチル、5:1、次いで3:1]により精製して、所望の生成物(11.2g,84%)を澄明なオイルとして得た。H NMR分析は、この材料が微量の溶媒と9−BBNの残渣のわずかな混在を示すことを示した。
【0221】
【化20】

【0222】
製法2
3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルイミド二炭酸ジ(tert−ブチル)
【0223】
【化21】

【0224】
この2−エチルチアゾール中間体は、6−ブロモ−2−エチルベンゾチアゾール[Bull. Soc. Chim. Fr. 1967, 2812-23]を臭化アリール成分として使用して、製法1に類似したやり方で製造した。
【0225】
【化22】

【0226】
製法3
3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩
【0227】
【化23】

【0228】
N,N−ジtert−ブトキシカルボニル−3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン(11.2g,27.5ミリモル)を1,4−ジオキサン(30mL)に溶かし、塩化水素(25mL,1,4−ジオキサン中4M溶液、100ミリモル)で処理し、この溶液を室温で18時間撹拌した。この反応混合物を蒸発させて白色の固形物として、これをペンタン及びジエチルエーテル(3:1)の混合物で摩砕して、所望のアミン・ビスHCl塩(6.05g,78%)を白色の固形物として得た。
【0229】
【化24】

【0230】
この表題化合物の生成の代替法を以下の製法4及び5に示す。
製法4
3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩(代替法)
工程(1):
3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−6−イル)−アクリロニトリル
【0231】
【化25】

【0232】
6−ヨード−2−メチル−ベンゾチアゾール[WO2002090443A1](13.1g,47.64ミリモル)のDMF(500mL)撹拌溶液へ室温でN下にアクリロニトリル(6.27mL,95.28ミリモル)、次いでNaOAc(2.86g,47.04ミリモル)、次いでPd(OAc)(1.07g,4.76ミリモル)、そして次いでP(o−トリル)(2.90g,9.53ミリモル)を加えた。生じた混合物をN下に130℃で約24時間、次いで室温で2日間撹拌した。水(750mL)で失活させてから、抽出(EtO,3x200mL)した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)させ、濾過して、真空で濃縮した。生じた残渣を、10:1のペンタン:EtOAcに次いで3:1のペンタン:EtOAcで溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(9.00g,94%)をオイルとして、そしてtrans:cis異性体の約3:1混合物として得た。
【0233】
【化26】

【0234】
工程(2):
[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−6−イル)−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【0235】
【化27】

【0236】
3−(2−メチルベンゾチアゾール−6−イル)−アクリロニトリル(9.00g,45.00ミリモル)のMeOH(1L)撹拌溶液へ室温でN下にBocO(19.64mL,90.00ミリモル)に次いでNiCl(5.84g,45.00ミリモル)を加えた。生じた混合物へ約20分にわたり注意しながらNaBH(13.62g,300.00ミリモル)を少しずつ加えた。生じた混合物をN下に室温で約1.5時間撹拌し、Arbocelに通して濾過し、真空で濃縮した。生じた残渣を、3:1のペンタン:EtOAcに次いで1:1のペンタン:EtOAcで溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物(5.00g,36%)をオイルとして得た。
【0237】
【化28】

【0238】
工程(3):
3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−6−イル)−プロピルアミン二塩酸塩
【0239】
【化29】

【0240】
[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−6−イル)−プロピル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(248mg,0.78ミリモル)のDCM(10mL)撹拌溶液へ室温でN下にジオキサン中4N HCl(5mL)を加え、生じた混合物をN下に室温で4時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、残渣をEtO(3x10mL)で摩砕した。濾液を真空で濃縮して、表題化合物(195mg,99%)を、さらに精製せずに次の工程で使用するのに十分な純度であるとH NMRにより判定される無色のフォームとして得た。
【0241】
製法5
3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩(代替法)
工程(1):
2−[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−5−イル)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン
【0242】
【化30】

【0243】
2−(2−プロペニル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(18.7g,0.1モル)(アリルフタルイミド:Journal of Organic Chemistry (1952), 17, 68-76)のTHF(38ml,2ml/g)スラリーへ9−BBNのTHF溶液(240ml,1.2当量)溶液(0.5M)を45分にわたって、0℃と5℃の間に温度を維持しながら加えた。次いで、この溶液を1時間にわたり周囲温度へ温めて、さらに1時間撹拌した。KCO(27.6g,0.20モル、2当量)の50ml水溶液を15分にわたり加え、続いてDMF(120ml)に溶かした2−メチル−6−ブロモベンゾチアゾール(20.5g,0.09モル、0.9当量)とジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(2.4g,0.03当量)を加えた。この反応物を1時間にわたり50℃まで温めてから、すぐに周囲温度へ冷やした。水(260ml,19ml/g)とt−BME(560ml,30ml/g)を加え、この溶液を撹拌した。この反応物をフィルターエイドに通して濾過し、あらゆる粒状物を除去した。相分離を実施して、上部の有機相を残した。この有機相を真空濾過により濃縮して、理論生成物に関して1gにつき約3mlとした。この黒ずんだスラリーを0℃〜−5℃で30分間粒状にし、真空で濾過してから、冷却t−BME(0.4L,4.5ml/g)で洗浄した。生じた固形物を55℃で一晩真空乾燥させて、2−[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−5−イル)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(20.5g,0.061モル、68%)を得た。
【0244】
【化31】

【0245】
工程(2)
3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩:
【0246】
【化32】

【0247】
2−[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−5−イル)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオン(20g,0.06モル)の水(130ml,6.5ml/g)及びエチルアルコール(200ml,10ml/g)スラリーへ水性メチルアミン(40%(w/w)溶液、117g,1.54モル、26当量)を10分にわたり加えて、溶液とした。この溶液を25℃で18時間撹拌した。ジクロロメタン(300ml,15ml/g)を加え、この反応物を15分間撹拌した。相分離を実施して、有機生成物の相を残した。残余の生成物を水相からジクロロメタン(100ml,5ml/g)で抽出した。合わせた有機相を1M KCO(300ml,15ml/g)で洗浄した。相分離を実施し、有機相を水(300ml,15ml/g)で洗浄した。有機相を真空でストリッピングして少量とし、イソプロピルアルコールと交換して、2−[3−(2−メチル−ベンゾチアゾール−5−イル)−プロピル]−イソインドール−1,3−ジオンに関して1gにつき10mlの最終反応量を得た。このイソプロピルアルコール溶液を70℃まで温めて、濃HCl(12.5ml,0.125モル、2.1当量)を10分にわたり加えた。IPA(90ml,4.5ml/g)を大気圧での蒸留によって除去した。このスラリーを25℃まで冷やし、0℃〜−5℃で1時間粒状にし、真空で濾過して、冷却IPA(40mL,2ml/g)で洗浄した。生成物を55℃で一晩真空乾燥させて、3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩[12.0g,0.058モル(72%)]を得た;融点215℃。
【0248】
製法6
3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩
【0249】
【化33】

【0250】
この2−エチルチアゾール中間体は、最初の溶媒としてジオキサンの代わりにジクロロメタンを使用すること以外は、製法3に類似したやり方で製造した。
【0251】
【化34】

【0252】
製法7
(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル
【0253】
【化35】

【0254】
1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]シクロペンタンカルボン酸[WO0279143A1](6.8g,26.5ミリモル)の酢酸イソプロピル(30mL)溶液を1,1’−カルボニルジイミダゾール(4.76g,29.3ミリモル、1.1当量)の酢酸イソプロピル(60mL)溶液へ加え、この混合物を60℃で3時間、次いで室温で一晩加熱した。アリコートを取り出し、蒸発乾固させて、H NMR分光法によって試験した。これは、反応がほぼ90%の変換へ進行したことを示した(出発の酸のMe二重項:δ1.15,アシルイミダゾールのMe二重項:δ1.05)。さらなる分量の1,1’−カルボニルジイミダゾール(645mg,4ミリモル、0.15当量)を加え、この混合物を60℃でさらに1時間撹拌した。この反応混合物を40℃へ冷やし、トリエチルアミン(4.3mL,31ミリモル、1.1当量)と製法3、4又は5からの3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩(7.1g,25.4ミリモル、0.96当量)を加え、この混合物を60℃で一晩加熱した。薄層クロマトグラフィーがこの反応の完了していないことを示したので、さらなる分量の二塩酸アミン(650mg,2.3ミリモル、0.09当量)をトリエチルアミン(330μL,2.3ミリモル、0.09当量)と一緒に加え、この混合物を60℃で一晩加熱した。この反応混合物を室温へ冷やしてから、水(120mL)と2M塩酸(120mL)で希釈した。この混合物をジエチルエーテル(2x400mL)で抽出し、合わせた抽出物を2M NaOH(2x100mL)で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。得られた油状の残渣をフラッシュクロマトグラフィー[SiO;ジクロロメタン中0.5%〜1.5%メタノール]により精製して、表題化合物(11.5g,98%)を澄明なオイルとして得た。
【0255】
【化36】

【0256】
表題化合物の代替法を以下の製法8に示す:
製法8
(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル(代替法)
【0257】
【化37】

【0258】
60℃に維持した1,1’−カルボニルジイミダゾール(154.6g,1.02モル)の酢酸イソプロピル(2.5ml/g)スラリーへ1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]シクロペンタンカルボン酸[WO0279143A1](238.4g,0.93ミリモル)の酢酸イソプロピル(2.2mL/g)溶液を窒素ガスの覆い下に2時間にわたり加えた。残余の1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]シクロペンタンカルボン酸溶液を酢酸イソプロピル(0.3ml/g)で洗浄した。この溶液を60℃でさらに5時間撹拌して維持してから、室温へ冷やした。この溶液へ製法3、4又は5からの3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩(259.8g,0.93モル)を加えた。トリエチルアミン(188.3g,1.86モル)を30分にわたり加えた。この混合物を10分にわたり加熱して還流させてから、還流に4時間維持し、次いで室温へ冷やした。この混合物を濾過して不溶性の材料を除去し、酢酸イソプロピル(2.0ml/g)で洗浄した。この洗液を濾液と合わせた。水(2.0ml/g)を加え、5M塩酸(375ml)を加えることによってこの混合物をpH5.0へ酸性化した。この混合物を濾過して不溶性の材料を除去した。相分離を実施して、上部の有機層を残した。次いで、これを0.5M炭酸カリウム溶液(238ml)で洗浄し、相分離を実施して、上部の有機相を残した。これをpHが9.0未満になるまで飽和塩水溶液で洗浄した。この溶液を酢酸イソプロピルで5ml/gへ希釈してから蒸留し、一定量を維持しながら、大気圧でトルエンと交換した。分析目的に、試料を蒸発乾固させて生成物(389g,0.87モル、収率94%)をオイルとして得ることができた。
【0259】
製法9
3−[1−({[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル
【0260】
【化38】

【0261】
1−(3−tert−ブトキシ−3−オキソプロピル)シクロペンタンカルボン酸[WO0279143A1](180mg,0.7ミリモル)をジメチルホルムアミド(7mL)中の製法6からの3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩(180mg,0.65ミリモル)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(135mg,0.7ミリモル)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(95mg,0.7ミリモル)及びトリエチルアミン(400μL,2.8ミリモル)と一緒に混合した。この反応混合物を60℃で一晩撹拌した。室温へ冷却後、この混合物を真空で蒸発させ、残渣を水(50mL)で希釈した。この混合物をジエチルエーテル(3x50mL)で抽出し、合わせた有機分画をMgSOで乾燥させてから、蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー[SiO;ペンタン中酢酸エチル(15%〜20%)]による精製によって、所望の化合物を淡褐色のオイルとして得た。
【0262】
【化39】

【0263】
あるいは、表題化合物は、製法7の記載に類似した方法を使用して作製した。
製法10
(2R)−2−メチル−3−[1−({[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]アミノ}カルボニル)シクロペンチル]プロパン酸tert−ブチル
【0264】
【化40】

【0265】
表題化合物は、製法9の記載に類似の方法を使用して、製法6からの3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩を1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]シクロペンタンカルボン酸[WO0279143A1]と一緒にカップリングすることによって製造した。
【0266】
【化41】

【0267】
製法11
1−(2−tert−ブトキシカルボニル−エチル)−シクロへキサンカルボン酸
【0268】
【化42】

【0269】
シクロヘキサンカルボン酸(2.89g,22.6ミリモル)をTHF(30mL)に溶かし、この溶液を、−15℃へ冷却したリチウムジイソプロピルアミド溶液(THF/n−ヘプタン/エチルベンゼン中2M,アルドリッチ)24.3mL(48.6ミリモル)へ温度を0℃未満に保つような速度で加えた。次いで、この反応混合物を0℃で2.5時間撹拌した後で、−15℃へ再冷却し、THF(50mL)中の3−ブロモプロピオン酸tert−ブチルを、温度を0℃未満に保つような速度で加えた。この反応混合物を室温へ達せしめて一晩撹拌した後で、この反応混合物を2M HClの添加によって失活させ、酢酸エチル(2x200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥(MgSO)させてから、蒸発させて橙色のオイルとした。フラッシュクロマトグラフィー[SiO;ジクロロメタン/メタノール/.880NH(97:3:0.5)]による精製によって、表題化合物(800mg,14%)をゴム状のオイルとして得た。
【0270】
【化43】

【0271】
製法12
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸tert−ブチル
【0272】
【化44】

【0273】
表題化合物は、製法6からの3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩を製法11からの1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]−シクロへキサンカルボン酸と一緒に使用して、製法9の記載に類似の方法によって製造した。
【0274】
【化45】

【0275】
製法13
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸tert−ブチル
【0276】
【化46】

【0277】
表題化合物は、製法3、4又は5からの3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩を製法11からの1−[(2R)−3−tert−ブトキシ−2−メチル−3−オキソプロピル]−シクロへキサンカルボン酸と一緒に使用して、製法9の記載に類似の方法によって製造した。
【0278】
【化47】

【0279】
製法14
3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸tert−ブチル
【0280】
【化48】

【0281】
表題化合物は、製法9の記載に類似の方法を使用して、製法3、4又は5からの3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピルアミン二塩酸塩を3−(1−カルボキシシクロペンチル)プロピオン酸tert−ブチル[WO0279143A1]と一緒にカップリングすることによって製造した。
【0282】
【化49】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
は、H又はCHであり;
は、C〜Cアルキルであり;そして
nは、1又は2である]の化合物、その互変異性体、又は前記化合物又は互変異性体の医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形。
【請求項2】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルである、請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
がメチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
がエチルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例1)、
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例2)、
(R)−2−メチル−3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロペンチル)プロパン酸(実施例4)、及び
3−(1−{[3−(2−エチル−1,3−ベンゾチアゾール−6−イル)プロピル]カルバモイル}シクロヘキシル)プロパン酸(実施例3)より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形と医薬的に許容される希釈剤又は担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
医薬品としての使用のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形。
【請求項10】
NEPの阻害が哺乳動物において有益な効果をもたらすことが知られているか又は示すことができる障害又は状態の治療の方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形の治療有効量を前記哺乳動物へ投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項11】
NEPの阻害が有益な効果をもたらすことが知られているか又は示すことができる障害又は状態の治療用医薬品の製造における、請求項1〜7のいずれか1項に記載の式(I)の化合物、又はその医薬的に許容される塩、溶媒和物又は多形の使用。
【請求項12】
障害又は状態が、高血圧、本態性高血圧、肺性高血圧、二次性高血圧、収縮期高血圧、糖尿病に関連した高血圧、動脈硬化症に関連した高血圧、及び腎血管性高血圧、末梢血管系疾患、心不全、狭心症、腎不全、急性腎不全、周期性浮腫、メニエール病、アルドステロン過剰症(原発性及び続発性)、高カルシウム血症、卒中、緑内障、肥満、代謝性疾患、代謝症候群、糖尿病、糖耐性障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、月経障害、早期分娩、子癇前症、子宮内膜症、及び生殖系障害、男性及び女性の不妊症、多房性卵巣症候群、着床不全、喘息、炎症、白血病、疼痛、癌性疼痛、うつ病、薬物乱用、肝硬変、てんかん、情緒障害、痴呆症及び老人性錯乱、胃腸障害、下痢、過敏性腸管症候群、創傷治癒、糖尿病性及び静脈性潰瘍と褥瘡、敗血症ショック、胃酸分泌、高レニン血症、嚢胞性線維症、再狭窄、動脈硬化症、女性の性機能不全(FSD)、性的興奮障害、女性の性的興奮障害(FSAD;Female Sexual Arousal Disorder)、男性の性機能不全(MSD)、男性の勃起不全(MED)、性欲低下障害、オルガスム障害、及び性交疼痛症より選択される、請求項9に記載の化合物、請求項10に記載の方法、又は請求項11に記載の使用。
【請求項13】
障害又は状態が、女性の性機能不全(FSD)、性的興奮障害、女性の性的興奮障害(FSAD)、男性の性機能不全(MSD)、男性の勃起不全(MED)、性欲低下障害、オルガスム障害、及び性交疼痛症より選択される、請求項12に記載の化合物、方法、又は使用。
【請求項14】
障害又は状態が、女性の性機能不全(FSD)、女性の性的興奮障害(FSAD)、男性の性機能不全(MSD)、及び男性の勃起不全(MED)より選択される、請求項13に記載の化合物、方法、又は使用。

【公表番号】特表2006−526572(P2006−526572A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500337(P2006−500337)
【出願日】平成16年3月9日(2004.3.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000822
【国際公開番号】WO2004/080985
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】