説明

NF−カッパB阻害剤としてのフマル酸誘導体

【課題】本発明は、NF−カッパBにより影響される病気治療のための薬剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】NF−カッパBにより影響される疾患の治療用薬剤組成物を調製するために1種又は2種以上のフマル酸誘導体を使用する。フマル酸誘導体は、任意に置換されていてもよいフマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルの遊離酸又はその塩、及びそれらの混合物からなる一群から選択され、具体的には、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸メチルエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸メチルカルシウム、フマル酸エチルカルシウム、フマル酸メチルマグネシウム、フマル酸エチルマグネシウム、フマル酸メチル亜鉛、フマル酸エチル亜鉛、フマル酸メチル鉄、及びフマル酸エチル鉄からなる一群から選択される1種又は2種以上、及びこれらの混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は2種以上のフマル酸誘導体をNF−カッパB阻害剤として用いることに関する。同時に、本発明はフマル酸誘導体を、NF−カッパBにより影響される疾病治療のための薬剤組成物を調製するために用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
投与後の生物学的分解によりクエン酸サイクルに入る、又はその不可欠な要素となるフマル酸のような調剤は、特に高用量の場合、原因不明で起こる病気を緩和したり治癒することができるため、治療上その重要性を増している。さらに、フマル酸は、マウスのエールリッヒ腹水腫瘍の増殖を抑制し、マイトマイシンC及びアフラトキシンの中毒作用を減少させ、抗乾癬作用や抗菌作用を示す。
【0003】
その最も重要な実用化は、すでに多数の特許、たとえば、特許文献1〜4に開示されている種々のフマル酸誘導体を用いた乾癬の治療である。
特定のフマル酸誘導体、すなわちフマル酸モノアルキルの他の使用については、特許文献5、6に開示されており、それによると、これらの特別なフマル酸誘導体が、多発性関節炎、多発性硬化症、及び移植片対宿主反応のような自己免疫疾病の治療のために用いられることが述べられている。さらに、特許文献6、7にはフマル酸モノアルキル及びフマル酸ジアルキルを移植薬に用いることが示されている。乾癬の治療におけるフマル酸誘導体の作用機序の個々の研究もなされてはいるが、この点に関しては特に注目すべき情報は存在しない。
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0188479号明細書
【特許文献2】独国特許発明第2530372号明細書
【特許文献3】独国特許発明第2621214号明細書
【特許文献4】欧州特許第0312697号明細書
【特許文献5】独国特願第19721099.6号明細書
【特許文献6】独国特願第19853487.6号明細書
【特許文献7】独国特願第19839566.3号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、NF−カッパBにより影響される病気治療のための薬剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の構成を備えた本発明によって解決することができる。
(1)NF−カッパBにより影響される疾患の治療用薬剤組成物を調製するための1種又は2種以上のフマル酸誘導体の使用。
(2)前記フマル酸誘導体が、任意に置換されていてもよいフマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルの遊離酸又はその塩、及びそれらの混合物からなる一群から選択されたものであることを特徴とする(1)記載の使用。
(3)前記フマル酸ジアルキルエステルが下記式で示されるものである(2)記載の使用。
【化1】

(ここで、R及びRは同一でも異なっていても良く、それぞれが直鎖状、分岐状、環状の飽和又は不飽和のC1〜24のアルキル基、又はC5〜20のアリール基を表わし、これらの基は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、水酸基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基で任意に置換されていてもよい。)
(4)前記R及びRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルへキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、又は、2−又は3−メトキシプロピル基であることを特徴とする)(3)記載の使用。

(5)前記フマル酸モノアルキルエステルが下記式で示されるものである(2)記載の使用。
【化2】

(ここで、Rは請求項3又は4で定義したものであり、An+は水素、アルカリ又はアルカリ土金属カチオン、又は生理的許容遷移金属カチオンであり、好ましくはLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、及びMn2+から選択され、nはAの価数に対応して1又は2である。)
(6)前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸メチルエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸メチルカルシウム、フマル酸エチルカルシウム、フマル酸メチルマグネシウム、フマル酸エチルマグネシウム、フマル酸メチル亜鉛、フマル酸エチル亜鉛、フマル酸メチル鉄、及びフマル酸エチル鉄からなる一群から選択される1種又は2種以上、及びこれらの混合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の使用。
(7)前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジメチルエステル(フマル酸ジメチル)であることを特徴とする(6)記載の使用。
(8)下記の一群から選択されるNF−カッパBにより影響される疾患の治療用薬剤組成物調製のための1種又は2種以上のフマル酸誘導体の使用: 進行性全身性鞏皮症、梅毒性骨軟骨炎(ウエゲナー病)、大理石様皮膚(網状皮斑)、ベーチェット病、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、骨関節炎、痛風、動脈硬化、ライテル病、肺肉芽腫症、脳炎、内毒性ショック(敗血性毒性ショック)、敗血症、肺炎、脳脊髄炎、神経性食欲不良、肝炎(急性肝炎、慢性肝炎、中毒性肝炎、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、黄疸、肝不全、サイトメガロウイルス性肝炎)、レナートT−リンパ腫症、メサンギウム腎炎、血管形成術後再狭窄、虚血再潅流症候群、サイトメガロウイルス性網膜症、アデノウイルス性風邪、アデノウイルス咽頭結膜熱及びアデノウイルス性眼炎等のアデノウイルス性病、エイズ、ギラン・バレー症候群、帯状疱疹後疼痛、炎症性脱髄性多発神経炎、多発性単神経炎、膵線維症、ベヒテレフ病、バレット食道、エプスタイン−バルウィルス(EBV)感染、心筋リモデリング、間質性膀胱炎、糖尿病TYPEII、ヒト腫瘍放射線増感、化学療法薬に対する悪性細胞の多剤耐性(化学療法での多剤耐性)、環状肉芽腫瘍及び乳癌、大腸癌、黒色腫、原発性肝細胞癌、腺癌、カポジ肉腫、前立腺癌、急性骨髄性白血病等の白血病、多発性骨髄腫(形質細胞腫)、バーキットリンパ腫及びキャッスルマン癌等の癌。
(9)前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルの遊離酸又はその塩、又はそれらの混合物からなる一群から選択されたものであることを特徴とする(8)記載の使用。
(10)前記フマル酸ジアルキルエステルが下記式で示されるものである(9)記載の使用。
【化3】

(ここで、R及びRは同一でも異なっていても良く、それぞれが直鎖状、分岐状、環状の飽和又は不飽和のC1〜24のアルキル基、又はC5〜20のアリール基を表わし、これらの基は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、水酸基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基で任意に置換されていてもよい。)
(11)前記R及びRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルへキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、又は、2−又は3−メトキシプロピル基であることを特徴とする(10)記載の使用。
(12)前記フマル酸モノアルキルエステルが下記式で示されるものである(9)記載の使用。
【化4】

(ここで、Rは請求項3又は4で定義したものであり、An+は水素、アルカリ又はアルカリ土金属カチオン、又は生理的許容遷移金属カチオンであり、好ましくはLi、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、及びMn2+から選択され、nはAの価数に対応して1又は2である。)
(13)前記薬剤組成物の1回の投与量が、フマル酸1〜500mg、好ましくは10〜300mg、最も好ましくは10〜200mgに相当する量のフマル酸誘導体を含有することを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の使用。
(14)薬剤組成物が、経口投与、非経口投与、直腸投与、経皮投与、表皮投与、鼻部投与、肺投与(吸入)、又は眼投与されるように、好ましくは経口投与されるように調製されることを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の使用。
(15)経口投与のための薬剤組成物が、投与単位の錠剤、マイクロ錠剤、マイクロペレット、もしくは顆粒(前記マイクロ錠剤、マイクロペレット、又は顆粒は、任意にカプセルに封入される、又は小袋に充填される)、カプセル、又は液状の飲み薬の形態であることを特徴とする(14)記載の使用。
(16)固形状の投与形態に、腸溶性のコーティングが施されていることを特徴とする(15)記載の使用。
(17)薬剤組成物の投与単位が、好ましくは以下のいずれかであるか又は混合物であり: 10〜500mgのフマル酸ジアルキルエステル、特にフマル酸ジメチルエステル及び/又はフマル酸ジエチルエステル;
10〜500mgのフマル酸アルキルカルシウム、特にフマル酸メチルカルシウム及び/又はフマル酸エチルカルシウム;
0〜250mgのフマル酸アルキル亜鉛、特にフマル酸メチル亜鉛及び/又はフマル酸エチル亜鉛;
0〜250mgのフマル酸モノアルキルエステル、特にフマル酸モノメチルエステル及び/又はフマル酸モノエチルエステル、及び
0〜250mgのフマル酸アルキルマグネシウム、特にフマル酸メチルマグネシウム及び/又はフマル酸エチルマグネシウム
上記総量がフマル酸10〜500mg、好ましくは10〜300mg、最も好ましくは100mgに相当することを特徴とする(8)記載の使用。
(18)前記マイクロ錠剤又はマイクロペレットの形態の薬剤組成物が、大きさ5000μm以下、好ましくはペレットとしては大きさ300〜1000μmであり、マイクロ錠剤としては大きさ1000〜2500μmであることを特徴とする(15)又は(16)に記載の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
NF−カッパB(核内因子カッパB)は、真核細胞の転写因子である。NF−カッパBは、いわゆるRelドメインを特徴とする転写因子の1種であるRelタンパク質ファミリーに属する。Relドメインは、最初のメンバーがオンコジーンとしてトリのウィルス中に発見されたことに因んで名付けられた。300のアミノ酸からなるこの相同Relドメイン(Relホモロジードメイン=RHD)の特別なサイトは、カッパBサイトへのDNAの結合、Relファミリーの他のタンパク質との二量化、及びI−カッパBとの反応を誘発する。
【0008】
これまで、Relファミリーの5つのメンバーが哺乳動物に関して知られている。これらは、c−Rel、NF−カッパB1(p105/p50)、NF−カッパB2(p100/p52)及びRelBである。理論的には、これらのRelタンパク質ファミリーの5つのメンバーは、生体内でほんのわずか特別な結合が観察されるだけであるが、ホモ−及びヘテロダイマーのどんな形態で結合していてもよい。標準的な最も特徴的なNF−カッパB分子は、p50/p65サブユニットNF−カッパB1/RelAのヘテロダイマーである。このヘテロダイマーは、最も代表的な複合体であり、実際にすべての型の細胞に見つけることができる。
【0009】
細胞活性化とI−カッパBの解離の後、NF−カッパBのヘテロダイマーp50/p65が細胞核へ拡散し、コンセンサス配列5’−GGGRNNYYCC−3’と結びつく。この過程において、p50サブユニットは主としてDNA−結合サブユニットとして働き、p65サブユニットは転写促進作用を提供する。
【0010】
異なる結合の結果として、これらのヘテロダイマーの各々は、細胞の型の特異性、DNA−結合に関する選択、イソ型I−カッパBとの相互作用の差異、反応要求の差異及び活性化の速動性に関する限り、特別な特徴を示す。
【0011】
NF−カッパBの速誘発性は、該因子が細胞質中で、不活性体、すなわちNF−カッパB阻害因子であるI−カッパBと結合した複合体で存在するという事実によると考えられている。そのため、活性化のために新しいタンパク質合成を必要とはせず、単にI−カッパBとの複合体の解離、即ちこの阻害因子の破壊、それに引き続いて活性化されたNF−カッパB二量体が核中へトランスローケーションするだけでよい。
【0012】
NF−カッパBは、種々の生理的な及び非生理的な刺激によって活性化される。これらは、サイトカイン、マイトジエン、ウィルス、ウィルス性物質、T−及びB−リンパ球での抗原レセプターの架橋結合、カルシウムイオノフォア、ホルボールエステル、UV−線、酸化ストレス、ホスファターゼ阻害因子等を含む。多くのNF−カッパBにより制御される又は活性化される遺伝子の範囲は、多様であり、その転写はヘテロダイマーが上述のコンセンサス配列へ結合することにより活性化され、誘発され、増進される。特に、TNF−アルファ、IL−1、IL−2及びリポ多糖類は重要な誘発剤として挙げられる。
【0013】
制御される遺伝子としては、一般に免疫性機能、炎症反応、細胞接着、細胞成長、又細胞死に関する遺伝子が含まれる。細胞接着分子の遺伝子、サイトカイン、サイトカインレセプター、急性期タンパク質、成長因子、及びウィルス性遺伝子を特に挙げることができる。NF−カッパBにより誘導されるこれらの遺伝子の中で特別なものは、インターフェロン−β、免疫グロブリン軽鎖、T−細胞レセプター、TNF−α及びTNF−β、及び以前は組織トロンボプラスチン又は因子IIIと呼ばれていた組織因子(CD142)に関する遺伝子である。
【0014】
上記の免疫反応及び炎症反応の制御でのその中心的な役割により、又組織因子、サイトカイン等の制御に関与することにより、抗炎症剤で既に知られているような効果が、転写因子NF−カッパBの選択阻害剤の開発に期待されており、ステロイド性の抗炎症剤、インターフェロン又はシクロスポリンが例示される。
【0015】
驚くべきことに、本発明において個々のフマル酸誘導体又はそれらの混合物がNF−カッパB阻害効果を有することが見出された。この効果を用いて、NF−カッパBにより左右される又は影響される疾病治療のために、これらのフマル酸誘導体を個々に又は混合物として含む医薬組成物を調製することが好ましい。特に、NF−カッパBにより影響を受ける疾病としては、進行性全身性鞏皮症、梅毒性骨軟骨炎(ウェゲナー病)、大理石様皮膚(網状皮斑)、ベーチェット病、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、骨関節炎、痛風、動脈硬化、ライテル病、肺肉芽腫症、脳炎、内毒素性ショック(敗血性毒性ショック)、敗血症、肺炎、脳脊髄炎、神経性食欲不良、肝炎(急性肝炎、慢性肝炎、中毒性肝炎、アルコール性肝炎、ウイルス性肝炎、黄疸、肝不全、サイトメガロウイルス性肝炎)、レナートT−リンパ腫症、メサンギウム腎炎、血管形成術後再狭窄、虚血再潅流症候群、サイトメガロウイルス性網膜症、及びアデノウイルス性風邪、アデノウイルス咽頭結膜熱、アデノウイルス性眼炎等のアデノウイルス性病、エイズ、ギラン・バレー症候群、帯状疱疹後疼痛、炎症性脱髄性多発神経炎、多発性単神経炎、膵線維症、ベヒテレフ病、バレット食道、EBV(エプスタイン−バルウィルス)感染、心筋リモデリング、間質性膀胱炎、糖尿病TYPEII、ヒト腫瘍放射線増感、化学療法薬に対する悪性細胞の多剤耐性(化学療法での多剤耐性)、環状肉芽腫瘍及び乳癌、大腸癌、黒色腫、原発性肝細胞癌、腺癌、カポジ肉腫、前立腺癌、急性骨髄性白血病等の白血病、多発性骨髄腫(形質細胞種)、バーキットリンパ腫及びキャッスルマン癌がある。
【0016】
本発明によると、遊離酸又は塩の形態のフマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルからなる一群から選択される1種又は2種以上のフマル酸誘導体及びそれらの混合物が、NF−カッパB阻害剤として、及び薬剤組成物を調製するために好ましく用いられる。
【0017】
フマル酸ジアルキルエステルは、好ましくは下記式で表され、
【化5】

ここで、R及びRは同一でも異なっていてもよく、それぞれが直線状、分岐状、環状の飽和又は不飽和のC1〜24のアルキル基、又はC5〜20のアリール基を表わし、これらの基はハロゲン(F、Cl、Br、I)、水酸基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基、又はシアノ基で任意に置換されていてもよい。
【0018】
及びRは、好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルヘキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、又は、2−又は3−メトキシプロピル基である。
【0019】
フマル酸モノアルキルエステルは、好ましくは下記式で表され、
【化6】

ここで、Rは上記定義したものであり、An+は水素、アルカリ又はアルカリ土金属カチオン、又は生理的許容遷移金属カチオンであり、好ましくは、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Zn2+、Fe2+、及びMn2+から選択され、nはAの価数に対応して1又は2である。
【0020】
本発明では、好ましくはフマル酸ジメチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸メチルエチルエステル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸メチルマグネシウム、フマル酸エチルマグネシウム、フマル酸メチル亜鉛、フマル酸エチル亜鉛、フマル酸メチル鉄、フマル酸エチル鉄、フマル酸メチルカルシウム、及び/又はフマル酸エチルカルシウムからなる一群から選択されるフマル酸誘導体の1種又は2種以上が用いられる。
【0021】
本発明によると、薬剤組成物のためのフマル酸誘導体は、好ましくは薬剤組成物の1回の投与量が、1〜500mg、好ましくは10〜300mg、最も好ましくは10〜200mgのフマル酸に相当する又は等価となる量の1種以上のフマル酸誘導体を含むような量で用いられる。
【0022】
薬剤組成物の好ましい適用方法としては、経口投与、非経口投与、直腸投与、経皮的投与、表皮投与、鼻部投与、肺投与(吸入)、又は眼投与(点眼液の形で)であり、経口投与が好ましい。薬剤組成物はそれぞれの投与の形態に応じて適切な剤形とする。
【0023】
経口投与の場合、薬剤組成物はシングルユニット錠剤、マイクロ錠剤(複数ユニット投与錠剤)もしくはミニ錠剤、マイクロペレットもしくは顆粒(前記マイクロ錠剤、マイクロペレット、又は顆粒を任意にカプセルに封入、又は小袋に充填してもよい)、カプセル、又は液状の飲み薬の形態である。好ましい実施の形態において、固形状の投薬形態に、腸溶性コーティングが施されている。このようなコーティングはまた、カプセル化された又は充填された投薬形態においても適用することができる。
【0024】
注射(静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射)により非経口投与する場合、薬剤組成物は適切な形態とする。注射に適したすべての通常の液体担体を用いることができる。
【0025】
本発明の薬剤組成物は、10〜500mgフマル酸ジアルキルエステル、特にフマル酸ジメチルエステル及び/又はフマル酸ジエチルエステル;10〜500mgのフマル酸アルキルカルシウム、特にはフマル酸メチルカルシウム及び/又はフマル酸エチルカルシウム;0〜250mgのフマル酸アルキル亜鉛、特にフマル酸メチル亜鉛及び/又はフマル酸エチル亜鉛;0〜250mgのフマル酸モノアルキル、特にフマル酸モノメチル及び/又はフマル酸モノエチル;及び0〜250mgのフマル酸アルキルマグネシウム、特にフマル酸メチルマグネシウム及び/又はフマル酸エチルマグネシウムのいずれか又は混合物を含み、上記の総量が、10〜500mg、好ましくは10〜300mg、最も好ましくは100mgのフマル酸に相当する量となることが好ましい。
本発明による好ましい組成物は、フマル酸ジメチルのみを10〜300mg含有する。
【0026】
特に好ましい実施態様によると、薬剤組成物は、マイクロ錠剤又はマイクロペレットの剤形である。これらは、その大きさ又は平均直径がマイクロペレットとしては好ましくは5000μm以下、より好ましくは300〜2500μm、特に好ましくは300〜1000μmであり、マイクロ錠剤としては好ましくは1000〜2500μmである。本発明の好ましい態様であるマイクロ錠剤の剤形でフマル酸誘導体を投与すると、通常のシングルユニット服用錠剤の投与では制御できなかった胃腸の炎症又は副作用をさらに減少させることができる。これは全体量としては、その服用量が通常どおりであっても、マイクロ錠剤、好ましくは腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤の場合は、胃ですでに分散されることから、分割して腸壁に到達し、そこで活性成分が更に少量ずつ局所的に放出されると考えられる。これは、つまり、上皮腸細胞の局部的な炎症を回避するのを助け、通常の錠剤に比べマイクロ錠剤が胃腸の耐性を改良する結果となる。
【0027】
例えば、本発明の組成物に含まれるフマル酸誘導体は、前記特許文献4に記載の方法により調製される。
【0028】
製造例
基本的には、錠剤又はマイクロ錠剤の剤形の本発明の経口組成物は、標準的な錠剤手順により調製することができる。このような標準的な錠剤手順の代わりに、溶融法又はスプレー乾燥法によって固体分散液を調製する方法、並びに直接錠剤法等の他の錠剤製法を用いてもよい。
【0029】
錠剤は腸溶性コーティングが施されていてもよい。腸溶性コーティングは従来のコーティングパン内で又はスプレーで施される。コーティングはまた、Boegelコーティング装置を用いて施してもよい。さらに、錠剤はフィルムコートされていてもよい。
【0030】
本発明による用途を説明するために、以下に好ましい薬剤を調製する種々の実施例を示す。これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0031】
実施例1
フマル酸78mgに相当するフマル酸モノメチル−カルシウム塩100.0mgを含有する腸溶性コーティングが施されたフィルム錠剤の調製
必要な防護的措置(呼吸マスク、手袋、保護衣等)を講じて、フマル酸モノメチル−カルシウム塩10kgを粉砕し、激しく混合し、シーブ800により均質にする。次に、下記の組成の賦形剤混合物を調製する:澱粉誘導体(STA−RX1500(登録商標))21kg、微結晶セルロース(AvicelPH101(登録商標))2kg、ポリビニルピロリドン(PVP、Kollidon(登録商標)25)0.6kg、プリモゲル(Primogel)(登録商標)4kg、コロイドケイ酸(Aerosil(登録商標))0.3kg。
【0032】
活性成分を上記粉体混合物全体に加え、混合し、シーブ200により均質にし、通常の方法によりポリビニルピロリドン(PVP、Kollidon(登録商標)25)の2%水溶液で処理してバインダー顆粒とし、次に、乾燥状態で、外部相と混合する。外部相はタルク80%、ケイ酸10%、ステアリン酸マグネシウム10%を含有するいわゆるFST錯体2kgからなる。
【0033】
その後、その混合物を通常の方法で質量400mg、及び直径10.0mmの凸状の錠剤にプレス成形する。この標準的な錠剤成形方法に代えて、直接成形法や、溶融及びスプレー乾燥法によって固体分散体をつくる方法等の他の方法を用いて錠剤を成形してもよい。
【0034】
腸溶性コーティング剤:
ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP、Pharmacoat HP(登録商標)50)2.250kgの溶液を、脱イオン水2.50リットル、アセトンPh.Helv.VII 13リットル、及びエタノール(94重量%)13リットルからなる混合溶媒に溶解し、次にひまし油(Ph.Eur.II)0.240kgをその溶液に加える。その溶液を通常の方法で分割してコーティングパン内の錠剤のコアに注ぐかスプレーする、又は好適な構造の流動床装置を用いてコートする。
【0035】
乾燥後、フィルムコーティングを行なう。前記コーティング剤は、2−プロパノールPh.Helv.VII8.2kg、グリセリントリアセテート(トリアセチン(登録商標))0.06kg、及び脱イオン水0.2kgの混合溶媒中に、EudragitE12.5%(登録商標)4.8kg、タルクPh.Eur.II0.34kg、酸化チタン(VI)(Cronus RN56(登録商標))0.52kg、カラーラッカーZLT−2ブルー(Siegle)0.21kg及びポリエチレングリコール6000Ph.Helv.VII0.12kgを溶解した溶液からなる。コーティングパン又は流動床で均質に分散した後、混合物を通常の方法で乾燥させ、仕上げる。
【0036】
実施例2
総量でフマル酸150mgに相当するフマル酸モノエチル−カルシウム塩86.5mgとフマル酸ジメチル110.0mgを含有し、腸溶性コーティングが施されたカプセルの調製
必要な防護的措置(呼吸マスク、手袋、保護衣等)を講じて、フマル酸モノエチル−カルシウム塩8.65kg、及びフマル酸ジメチル11kgを、澱粉15kg、ラクトースPh.Helv.VII6kg、微結晶セルロース(Avicel(登録商標))2kg、ポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標)25)1kg、及びプリモゲル(Primogel)(登録商標)4kgからなる混合物と激しく混合し、シーブ800により均質にする。
【0037】
同時にポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標)25)の2%水溶液と共に、上記粉体混合物全体を通常の方法により処理してバインダー顆粒とし、乾燥状態で、外部相と混合する。前記外部相はコロイドケイ酸(Aerosil(登録商標))0.35kg、ステアリン酸マグネシウム0.5kg、及びタルクPh.Helv.VII1.5kgからなる。均質な混合物は次に好適なカプセルに500.0mgずつ充填され、次に既知の方法によりヒドロキシプロピルエチルセルロースステアレートと、軟化剤としてのひまし油からなる腸溶性の(耐胃酸性の)コーティング剤が施される。硬質ゼラチンカプセルの代わりに、混合物は、セルロースアセテートフタレート(CAP)とヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート(HPMCP)の混合物からなる好適な耐胃酸性のカプセルに充填されてもよい。
【0038】
実施例3
総量でフマル酸164mgに相当するフマル酸モノエチル−カルシウム塩87.0mg、フマル酸ジメチル120mg、フマル酸モノエチル−マグネシウム塩5.0mg及びフマル酸モノエチル−亜鉛塩3.0mgを含有し、カプセルに封入された、腸溶性コーティングが施されたマイクロ錠剤の調製(“フォルテ”錠剤)
必要な防護的措置(呼吸マスク、手袋、保護衣等)を講じて、フマル酸モノエチル−カルシウム塩8.7kg、フマル酸ジメチル12kg、フマル酸モノエチル−マグネシウム塩0.5kg、及びフマル酸モノエチル−亜鉛塩0.3kgを粉砕し、激しく混合し、シーブ800によって均質にする。次に、下記の組成の賦形剤混合物を調製する:澱粉誘導体(STA−RX1500)18kg、微結晶セルロース(AvicelPH101)0.3kg、PVP(Kollidon120)0.75kg、プリモゲル(Primogel)4kg、コロイドケイ酸(Aerosil)0.25kg。活性成分混合物中に上記粉体混合物全体を加え、シーブ200により均質にし、通常の方法によりポリビニルピロリドン(KollidonK25)の2%水溶液で処理してバインダー顆粒を得、乾燥状態で、ステアリン酸マグネシウム0.5kgとタルク1.5kgからなる外部相と混合する。次に、この粉体混合物を通常の方法で総質量10.0mg、及び直径2.0mmの凸状のマイクロ錠剤にプレス成形する。この標準的な錠剤成形方法に代えて、直接錠剤成形法や、溶融及びスプレー乾燥法による固体分散体形成法等の他の錠剤成形方法を用いて錠剤を成形してもよい。
【0039】
耐胃酸性のコーティング剤は、通常のコーティングパン内で注がれるか又はスプレーされる、あるいは流動床装置内で適用される。胃酸に対する耐性を得るために、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP、PharmacoatHP50)2.250kgの溶液を分けて以下の混合溶媒に溶解する:アセトン13L、2%ケトンで変性した94重量%エタノール13.5L、及び脱イオン水2.5L。ひまし油0.240kgを軟化剤としてその最終溶液に加え、通常の方法で錠剤のコアに分けて適用する。
【0040】
フィルム−コート:乾燥が完了した後、以下の組成物の懸濁液をフィルム−コートとして同じ装置で適用する:タルク0.340kg、酸化チタン(VI)(CronusRN56)0.4kg、カラーラッカーLレッドラッカー86837を0.324kg、EudragitE12.5%を4.8kg、及びポリエチレングリコール6000pH11 XIを0.12kgを次の組成の混合溶媒中に混合する:2−プロパノール8.17kg、脱イオン水0.2kg、及びグリセリントリアセテート(トリアセチン)0.6kg。
【0041】
耐胃酸性のマイクロ錠剤は、次に硬質ゼラチンカプセルに正味質量500.0mgで充填され、密閉される。
【0042】
実施例4
フマル酸96mgに相当するフマル酸ジメチル120.0mgを含有し、カプセルに封入された、腸溶性コーティングが施されたマイクロ錠剤の調製
必要な防護的措置(呼吸マスク、手袋、保護衣等)を講じて、フマル酸ジメチル12kgを粉砕し、シーブ800によって均質にする。次に、下記の組成の賦形剤混合物を調製する:澱粉誘導体(STA−RX1500(登録商標))17.5kg、微結晶セルロース(AvicelPH101(登録商標))0.30kg、PVP(Kollidon(登録商標)120)0.75kg、プリモゲル(Primogel(登録商標))4kg、コロイドケイ酸(Aerosil(登録商標))0.25kg。活性成分を上記粉体混合物全体に加え、混合し、シーブ200により均質にし、通常の方法によりポリビニルピロリドン(Kollidon(登録商標)25)の2%水溶液で処理してバインダー顆粒を得、次に乾燥状態で外部相と混合する。外部相は、ステアリン酸マグネシウム0.5kgとタルク1.5kgからなる。
【0043】
その後、この粉体混合物を通常の方法で総質量10.0mg、及び直径2.0mmの凸状の錠剤にプレス成形する。
胃酸に対する耐性を得るため、2.25kgのヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP、PharmacoatHP(登録商標)50)溶液を下記の混合溶媒に溶解する。:アセトン13リットル、2%ケトンで変性した94重量%エタノール13.5リットル、及び脱イオン水1.5L。次にひまし油(0.240kg)を軟化剤としてその最終溶液に加え、通常の方法で錠剤のコアに適用する。
【0044】
乾燥後、以下の組成物の懸濁液をフィルム−コートとして同じ装置で適用する:タルク0.34kg、酸化チタン(VI)(CronusRN56(登録商標))0.4kg、カラーラッカーL−レッド86837を0.324kg、EudragitE12.5%(登録商標)を4.8kg、及びポリエチレングリコール6000pH11 XIを0.12kgを次の組成の混合溶媒中に混合する:2−プロパノール8.17kg、脱イオン水0.2kg、及びグリセリントリアセテート(トリアセチン(登録商標))0.6kg。
【0045】
腸溶性コートティングされたマイクロ錠剤は、次に硬質ゼラチンカプセルに正味質量400mgで充填され、密閉される。
【0046】
実施例5
フマル酸96mgに相当するフマル酸ジメチル120.0mgを含有し、カプセルに封入された、腸溶性コーティングが施されたマイクロ錠剤の調製
フマル酸ジメチル12kgを上記のように粉砕し、均質にする。次に、下記の組成の賦形剤混合物を調製する:微結晶セルロース(AvicelPH200(登録商標))23.2kg、クロスカルメロースナトリウム(AC−Si−SOL−SD−711)3kg、タルク2.5kg、無水ケイ酸(Aerosil(登録商標)200)0.1kg、及びステアリン酸マグネシウム1kg。その後、粉体混合物は通常の方法で総質量10.0mg、及び直径2.0mmの凸状の錠剤にプレス成形する。
【0047】
その後、イソプロパノールに0.94kgのEudragit(登録商標)Lを溶解した溶液を調製し、これにさらにジブチルフタレート0.07kgを含有させる。この溶液を上記錠剤のコアにスプレーする。次に17.32kgのEudragit(登録商標)LD−55と、水中にマイクロタルク2.8kg、Macrogol6000を2kg、ジメチコン0.07kgを溶解した混合物との分散液を調製し、前記コア上にスプレーする。
その後、腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤は、硬質ゼラチンカプセルに正味質量650mgで充填され、密閉される。
【0048】
実施例6
細胞核中でのNF−カッパBのトランスローケーション
NF−カッパB(p65)を、サイトメガロウィルスプロモーター(Clontech)と結合しているEGFP(緑色蛍光タンパク質)を含有するpEGFP−C1ベクターへ挿入した。これにより蛍光性NF−カッパBが発現される。HUVEC細胞は、12のウェルを持つゼラチンで被覆された培養皿(Costar)の3番目と4番目の通路間で培養し、それぞれ80〜90%のコンフルエントとなるまで成長させた。次にこれらの細胞をリン酸カルシウム析出法を用いてトランスフェクションさせた。特に細胞はダルベッコの変法イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagles Medium(DMEM))を用いて調整し、それぞれのウェルにつき1μgのDNAを含有する沈殿物を24時間後に加え、細胞をさらに4時間培養した。HBBS(Hanksbalanced salt solution)で洗浄した後、培養液を加え、細胞に刺激を与える前にさらに18時間成長させた。
【0049】
試験のために、細胞を40μM/Lのフマル酸ジメチル(DMF)を用いて調整し、平行して対照試験としてDMFの作用なしで調整した。調整の開始から2時間後、細胞に10ng/mlのTNF−αで表1記載の時間刺激を与えた。
その後、細胞を溶解させ、上澄みを捨て、細胞核をプロテアーゼ阻害剤(10mMのトリス塩酸、pH7.6、0.5mMのMgCl、10μg/mlのロイペプチン、10μg/mlのアプロチニン、1mMのフェニルメチルスルフォニルフルオライド、1.8μg/mlのイオドアセトアミド)を用いて、Dounce緩衝液に集めた。1200g、4℃で遠心機に10分間かけた後、細胞核をFACスキャンフローサイトメーター(Becton Dickinson)で分析した。
【0050】
【表1】

この表は、40μM/Lの濃度のフマル酸ジメチルが、細胞核へのNF−カッパBのTNF−誘発トランスローケーションを阻害したことを示している。
【0051】
実施例7
NF−カッパB刺激された転写の阻害
SpeI結合サイト(図示せず)の側面に位置するAP−1のコンセンサスサイト(結合サイト)の三重リピート(48bp、3×TGTGATGACTCAGGTT)及びNF−カッパBコンセンサスサイトの三重リピート(60bp、3×AATCGTGGAATTTCCTCTGA)を、pTK−UBT−lucベクター(de Martin、Gene124、137−138、1993)のSpeIサイトに挿入した。塩基対−1285から+482の範囲のE−セレクチンプロモータの1.3kbコンストラクトをpMAMNeo−lucベクター(Clontech)のNdeIサイトに挿入した。
【0052】
HUVEC細胞を実施例6で述べたようにして得られたコンストラクトでトランスフェクションさせた。このトランスフェクションのために、1ウェルにつき2.5μgの適切なプロモータコンストラクトを添加した。トランスフェクション効果を確認するために、それぞれの試験の対照試験として500ngのpSV−ベータガラクトシダーゼコントロールベクター(Promega Corp.Madison、WI、U.S.A.)を用いて、共にトランスフェクションを行った。トランスフェクションして2日後、細胞に2時間、10ng/mlのTNF−アルファと6μg/mlのフマル酸ジメチル(DMF)を添加したもの及び添加しないもので刺激を与えた。次に細胞をトリプシン化により採取し、小球状にし、洗浄し、そして製造会社によって処方されるように、“リポーター分解緩衝液”(Promega)200μl中に15分間再懸濁させた。
【0053】
ルシフェラーゼ活性は、ルシフェラーゼ試験システム(Promega)を用いてBertholdAuto Lamat LB9507ルミノメータの手段により測定した。ベータ−ガラクトシダーゼ活性は、Promegaベータ−ガラクトシダーゼ酵素試験システムを用いて決定した。適切なプロモーターコンストラクトを用いて得られたルシフェラーゼ活性は、ベータ−ガラクトシダーゼ活性を標準にしたものである。個々の実験におけるベータ−ガラクトシダーゼ活性の変化の範囲は、10%未満であった。表2にベースラインに対してX倍として個々の結果を示す。
【0054】
【表2】

表2は、フマル酸ジメチルがNF−カッパB依存性遺伝子のTNF誘発転写を阻害することを示しており、AP−1依存性遺伝子の転写を阻害することを示していない。したがって、フマル酸ジメチル阻害は、NF−カッパBに対して特異的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NF−カッパBにより影響される疾患の治療用薬剤組成物を調製するための1種又は2種以上のフマル酸誘導体の使用。
【請求項2】
前記フマル酸誘導体が、任意に置換されていてもよいフマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルの遊離酸又はその塩、及びそれらの混合物からなる一群から選択されたものであることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記フマル酸ジアルキルエステルが下記式で示されるものである請求項2記載の使用。
【化1】

(ここで、R及びRは同一でも異なっていても良く、それぞれが直鎖状、分岐状、環状の飽和又は不飽和のC1〜24のアルキル基、又はC5〜20のアリール基を表わし、これらの基は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、水酸基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基で任意に置換されていてもよい。)
【請求項4】
前記R及びRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルへキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、又は、2−又は3−メトキシプロピル基であることを特徴とする請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記フマル酸モノアルキルエステルが下記式で示されるものである請求項2記載の使用。
【化2】

(ここで、Rは請求項3又は4で定義したものであり、An+は水素、アルカリ又はアルカリ土金属カチオン、又は生理的許容遷移金属カチオンであり、nはAの価数に対応して1又は2である。)
【請求項6】
前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸メチルエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸メチルカルシウム、フマル酸エチルカルシウム、フマル酸メチルマグネシウム、フマル酸エチルマグネシウム、フマル酸メチル亜鉛、フマル酸エチル亜鉛、フマル酸メチル鉄、及びフマル酸エチル鉄からなる一群から選択される1種又は2種以上、及びこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジメチルエステル(フマル酸ジメチル)であることを特徴とする請求項6記載の使用。
【請求項8】
下記の一群から選択されるNF−カッパBにより影響される疾患の治療用薬剤組成物調製のための1種又は2種以上のフマル酸誘導体の使用:
進行性全身性鞏皮症、梅毒性骨軟骨炎、大理石様皮膚、ベーチェット病、結節性動脈周囲炎、潰瘍性大腸炎、脈管炎、骨関節炎、痛風、動脈硬化、ライテル病、肺肉芽腫症、脳炎、敗血性毒性ショック、敗血症、肺炎、脳脊髄炎、神経性食欲不良、肝炎、レナートT−リンパ腫症、メサンギウム腎炎、血管形成術後再狭窄、虚血再潅流症候群、サイトメガロウイルス性網膜症、アデノウイルス性風邪、アデノウイルス咽頭結膜熱及びアデノウイルス性眼炎からなる群から選ばれるアデノウイルス性病、エイズ、ギラン・バレー症候群、帯状疱疹後疼痛、炎症性脱髄性多発神経炎、多発性単神経炎、膵線維症、ベヒテレフ病、バレット食道、エプスタイン−バルウィルス感染、心筋リモデリング、間質性膀胱炎、糖尿病TYPEII、ヒト腫瘍放射線増感、化学療法薬に対する悪性細胞の多剤耐性、環状肉芽腫瘍及び乳癌、大腸癌、黒色腫、原発性肝細胞癌、腺癌、カポジ肉腫、前立腺癌、白血病、形質細胞腫、バーキットリンパ腫及びキャッスルマン癌からなる群から選ばれる癌。
【請求項9】
前記フマル酸誘導体が、フマル酸ジアルキルエステル及びフマル酸モノアルキルエステルの遊離酸又はその塩、又はそれらの混合物からなる一群から選択されたものであることを特徴とする請求項8記載の使用。
【請求項10】
前記フマル酸ジアルキルエステルが下記式で示されるものである請求項9記載の使用。
【化3】

(ここで、R及びRは同一でも異なっていても良く、それぞれが直鎖状、分岐状、環状の飽和又は不飽和のC1〜24のアルキル基、又はC5〜20のアリール基を表わし、これらの基は、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、水酸基、C1〜4のアルコキシ基、ニトロ基又はシアノ基で任意に置換されていてもよい。)
【請求項11】
前記R及びRが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、2−エチルへキシル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、ビニル基、アリル基、2−ヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、又は、2−又は3−メトキシプロピル基であることを特徴とする請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記フマル酸モノアルキルエステルが下記式で示されるものである請求項9記載の使用。
【化4】

(ここで、Rは請求項3又は4で定義したものであり、An+は水素、アルカリ又はアルカリ土金属カチオン、又は生理的許容遷移金属カチオンであり、nはAの価数に対応して1又は2である。)
【請求項13】
前記薬剤組成物の1回の投与量が、フマル酸1〜500mgに相当する量のフマル酸誘導体を含有することを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
薬剤組成物が、経口投与、非経口投与、直腸投与、経皮投与、表皮投与、鼻部投与、肺投与、又は眼投与されるように調製されることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
経口投与のための薬剤組成物が、投与単位の錠剤、マイクロ錠剤、マイクロペレット、もしくは顆粒(前記マイクロ錠剤、マイクロペレット、又は顆粒は、任意にカプセルに封入される、又は小袋に充填される)、カプセル、又は液状の飲み薬の形態であることを特徴とする請求項14記載の使用。
【請求項16】
固形状の投与形態に、腸溶性のコーティングが施されていることを特徴とする請求項15記載の使用。
【請求項17】
薬剤組成物の投与単位が、以下のいずれかであるか又は混合物であり:
10〜500mgのフマル酸ジアルキルエステル;
10〜500mgのフマル酸アルキルカルシウム;
0〜250mgのフマル酸アルキル亜鉛;
0〜250mgのフマル酸モノアルキルエステル、及び
0〜250mgのフマル酸アルキルマグネシウム
上記総量がフマル酸10〜500mgに相当することを特徴とする請求項8記載の使用。
【請求項18】
前記マイクロ錠剤又はマイクロペレットの形態の薬剤組成物が、大きさ5000μm以下であることを特徴とする請求項15又は16に記載の使用。

【公開番号】特開2009−73854(P2009−73854A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290821(P2008−290821)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願2002−555801(P2002−555801)の分割
【原出願日】平成14年1月8日(2002.1.8)
【出願人】(500295405)フーマファーム アーゲー (5)
【住所又は居所原語表記】Haldenstrasse 24a 6006 Luzern SWITZERLAND
【Fターム(参考)】