説明

NFCカードの情報通信装置

【課題】それ自身が一種のパッシブカードとしては機能するNFCカードの情報通信装置を提供する。
【解決手段】NFCカードの情報通信装置1の制御部5はICチップからなり、表示部4等を制御する。操作キー8は操作者の操作に応じて制御部5に指示信号を出力する。表示部4は制御部5に制御されて、通信対象、通信内容等を表示する。電源部7はコイン電池等からなり、制御部5、表示部4等に電源を供給する。制御部5に通信アンテナ2が接続されている。情報通信装置1にNFCチップ6が設けられている。NFCチップ6にスイッチ回路9を介してNFCアンテナ3が接続されている。スイッチ回路9は制御部5によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信技術を応用したRFID(Radio Frequency Identification)カードであるNFCカードと情報通信を行なうNFCカードの情報通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RFIDカードとは、情報記録と無線通信の両機能を備えたICモジュールをカードに内蔵した、パッシブ型の非接触情報記録媒体である。このRFIDカードの範疇に属し、今後利用拡大が期待されるものとして、NFC(Near Field Communication)チップを内蔵するNFCカードがある。そして、NFCカードと情報通信を行なう携帯可搬型の情報通信装置が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−8458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなNFCカードの情報通信装置においては、それ自身が一種のパッシブカードとしては機能しない。
【0005】
本発明は上述の課題を解決するためになされたもので、それ自身が一種のパッシブカードとしては機能するNFCカードの情報通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、発明の実施態様は、携帯可搬型のNFCカードの情報通信装置であって、制御部と、上記制御部に接続された通信アンテナと、NFCチップと、上記NFCチップに接続されたNFCアンテナとを有することを特徴とする。
【0007】
また、発明の実施態様は、上記NFCアンテナがスイッチ部を介して上記NFCチップに接続され、上記スイッチ部が上記制御部によって制御されることを特徴とする。
【0008】
また、発明の実施態様は、上記スイッチ部として、上記NFCアンテナの共振周波数を変化させるスイッチ回路を用いたことを特徴とする。
【0009】
また、発明の実施態様は、上記スイッチ回路がPINダイオードを有していることを特徴とする。
【0010】
また、発明の実施態様は、上記制御部が複数種類のNFCカードからの信号を処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るNFCカードの情報通信装置においては、情報通信装置自体を一種のパッシブカードとして機能させることができる。
【0012】
また、NFCチップにスイッチ部を介してNFCアンテナを接続したときには、情報通信装置がNFCカードと通信するときに、信号干渉による誤動作が生ずることがない。
【0013】
また、スイッチ部として、NFCアンテナの共振周波数を変化させるスイッチ回路を用いたときには、機械的なスイッチを用いることなく、オン状態とオフ状態とにすることができる。
【0014】
また、スイッチ回路がPINダイオードを有しているときには、スイッチ回路は確実にオン状態とオフ状態とにすることができる。
【0015】
また、制御部が複数種類のNFCカードからの信号を処理するときには、1台の情報通信装置により複数種類のNFCカードから情報を読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係るNFCカードの情報通信装置を示すブロック図である。
【図2】図2は図1に示したNFCカードの情報通信装置の一部詳細図である。
【図3】図3は図1に示したNFCカードの情報通信装置の動作説明図である。
【図4】図4はNFCカードの無線通信インタフェースの仕様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1により本発明の実施の形態に係るNFCカードの情報通信装置を説明する。携帯可搬型のNFCカードの情報通信装置1は制御部5、操作キー8、表示部4、NFCチップ6、電源部7を有する。
【0018】
制御部5はICチップからなり、表示部4等を制御する。操作キー8は操作者の操作に応じて制御部5に指示信号を出力する。表示部4は制御部5に制御されて、通信対象、通信内容等を表示する。電源部7はコイン電池等からなり、制御部5、表示部4等に電源を供給する。そして、制御部5に通信アンテナ2が接続されている。通信アンテナ2はアンテナの伝達函数に寄与するQ特性を高め、Q>20として相手のアンテナと電磁結合するときの特性を単峰特性としている。NFCチップ6にスイッチ回路9を介してNFCアンテナ3が接続されている。スイッチ回路9は制御部5によって制御される。
【0019】
この情報通信装置1は外部装置(上位システム)30、NFCカード(TypeA)40、NFCカード(TypeB)50、NFCカード(Felica(登録商標))60と通信を行なう。外部装置30、NFCカード40、50、60はそれぞれISO/IEC 14443で規格化されたアンテナ31、41、51、61を有する。また、制御部5はNFCカード40、50、60からの信号を処理することができる。すなわち、制御部5は複数種類のNFCカードからの信号を処理することができる。操作キー8は、操作者の操作に基づいて、情報を読み出す対象がNFCカード40、50、60のうちのどれであるかというカード種別情報を制御部5に出力し、制御部5はカード種別情報に基づいてNFCカード40、50、60からの信号を処理する。
【0020】
図2によりスイッチ回路9を説明する。NFCアンテナ3の一端とNFCチップ6との間にコンデンサ19、20が設けられている。NFCアンテナ3の他端と制御部5との間にPINダイオード22、23が設けられている。NFCアンテナ3の他端とPINダイオード22のカソードとが接続され、PINダイオード22のアノードとPINダイオード23のカソードとが接続され、PINダイオード23のアノードと制御部5とが接続されている。コンデンサ19、20の間とPINダイオード22、23の間とに接続されたコンデンサ21が設けられている。NFCアンテナ3の他端とPINダイオード22との間は接地されている。
【0021】
NFCアンテナ3の静電容量をCとする。コンデンサ19〜21の静電容量をC、C、Cとする。また、PINダイオード22、23の微小静電容量をCとする。すると、静電容量C、C、C、C、Cの関係は次式の通りである。
≪C≪C,C,C
【0022】
つぎに、スイッチ回路9の動作について説明する。制御部5からスイッチ回路9に出力される制御電圧Vが0のときには、PINダイオード22、23を流れる順方向電流Iは0mAであり、PINダイオード22、23間は高インピーダンス状態となり、等価的には微小静電容量Cが1〜数pFとなる。このため、NFCアンテナ3の自己インダクタンスをLとすると、NFCアンテナ3の共振周波数fonは数1式で表される。
【数1】

また、制御電圧VがHのときすなわち1.0Vよりも大きいときには、ダイオード22、23を流れる順方向電流Iは20mA以上となり、PINダイオード22、23間は低インピーダンス(数Ω以下)状態となる。このため、NFCアンテナ3の共振周波数foffは数2式で表される。
【数2】

そして、自己インダクタンスL、静電容量Cは共振周波数fonがNFCカードの搬送周波数fc(13.56MHz)となるように設定されている。
【0023】
この場合、制御電圧Vが0のときには、NFCアンテナ3の共振周波数fonがNFCカードの搬送周波数fcとなるから、いわばオン状態となる。これに対して、制御電圧VがHのときには、共振周波数foffは共振周波数fonよりも小さくなるから、共振周波数foffはNFCカードの搬送周波数fcと一致しなくなるので、いわばオフ状態となる。
【0024】
つぎに、図3により、NFCカードの情報通信装置1の動作について説明する。Aは制御部5によるNFCチップ6の情報の読み出し動作である。Bは制御部5によるNFCカード40の情報の読み出し動作である。Cは制御部5によるNFCカード50の情報の読み出し動作である。Dは制御部5によるNFCカード60の情報の読み出し動作である。Eは外部装置30による制御部5への情報の書き込み動作である。Fは外部装置30によるNFCチップ6の情報の読み出し動作である。
【0025】
動作A〜Fはアンテナ2、3、31、41、51、61を電磁結合して実行する。制御部5が読み出した情報は表示部4に表示される。動作A〜Dはオフライン的動作に対応し、動作E、Fはオンライン的動作に対応する。
【0026】
そして、動作Aの場合には、スイッチ回路9をオン状態とし、操作キー8の操作に応じた指示に従って、制御部5によりNFCチップ6に格納された情報が読み出される。
【0027】
動作B〜Dの場合には、スイッチ回路9をオフ状態としている。このため、制御部5とNFCチップ6との間で情報交信はされない。なお、NFCカード40、50、60の無線通信インタフェースの仕様は図4に示すように異なっている。具体的には、ビットコーデング、変調方式、通信速度が異なる。なお、図4において、「ASK」は振幅偏移変調(Amplitude Shift Keying)を意味し、「OOK」はオンオフ変調(On-Off Keying)を意味し、「BPSK」は二位相偏移変調(Binary Phase Shift Keying)を意味する。そして、操作者が操作キー8を操作すると、操作キー8からカード種別情報が制御部5に出力され、制御部5はカード種別情報に基づいてNFCカード40、50、60からの信号を処理する。
【0028】
動作Eの場合は、スイッチ回路9をオフ状態とし、制御部5が外部装置30からの無線通信信号で送られてくるコマンドを実行し、その処理結果をレスポンスとして外部装置30に返信する。
【0029】
動作Fの場合は、情報通信装置1の電源をオフとし、スイッチ回路9をオン状態とし、情報交信は外部装置30の主導で実行される。そして、NFCチップ6はNFCアンテナ3を経由して外部装置30の指示コマンドを受信し、対応処理の結果をレスポンスとして外部装置30に返信する。
【0030】
なお、情報通信装置1の電源のオン、オフは操作者が操作キー8で指示する。また、動作A〜Fは制御部5または外部装置30がトリガーとなり、コマンド発行、レスポンス返信のペアで実行する。この際、動作A〜Fのシーケンスが多重化しないように、制御部5のファームウェアが管理、制御する。また、一連のデータ交信に関する正否は、制御部5のファームウェアが通信プロトコル上で規定されているエラー情報と交信時のタイムアウトチェックによるエラーとで判断する。
【0031】
このような情報通信装置1においては、NFCチップ6を有しているから、情報通信装置1を一種のパッシブカードとして機能させることができる。また、NFCチップ6にスイッチ回路9を介してNFCアンテナ3を接続しているから、情報通信装置1が外部装置30、NFCカード40、50、60と通信するときに、スイッチ回路9をオフ状態とすれば、制御部5とNFCチップ6との間で情報交信はされないので、信号干渉による誤動作が生ずることがない。また、スイッチ回路9はNFCアンテナ3の共振周波数fを共振周波数fonと共振周波数foffとに変化させ、共振周波数fonをNFCカードの搬送周波数fcとしているから、機械的なスイッチを用いることなく、オン状態とオフ状態とにすることができる。また、スイッチ回路9はPINダイオード22、23を用いてNFCアンテナ3の共振周波数fを共振周波数fonと共振周波数foffとに変化させいるから、スイッチ回路9は確実にオン状態とオフ状態とにすることができる。また、制御部5がNFCカード40、50、60からの信号を処理することができるから、1台の情報通信装置1により種類の異なるNFCカード40、50、60から情報を読み取ることができる。
【0032】
なお、携帯電話に情報通信装置1の機能を持たせることができる。
【0033】
また、上述実施の形態においては、スイッチ部としてNFCアンテナ3の共振周波数fを変化させるスイッチ回路9を用いたが、スイッチ部として機械的なスイッチを用いてもよい。
【0034】
また、上述実施の形態においては、スイッチ部としてPINダイオード22、23を用いてNFCアンテナ3の共振周波数fを変化させるスイッチ回路9を用いたが、スイッチ部としてNFCアンテナ3の共振周波数fを変化させる他のスイッチ回路を用いてもよい。
【0035】
また、上述実施の形態においては、操作キー8からカード種別情報を制御部5に出力したが、制御部5がNFCカード40、50、60の種別を判別してもよい。
【0036】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施の形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施の形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、各請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0037】
1…情報通信装置
2…通信アンテナ
3…NFCアンテナ
5…制御部
6…NFCチップ
9…スイッチ回路
22…PINダイオード
23…PINダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯可搬型のNFCカードの情報通信装置であって、
制御部と、
上記制御部に接続された通信アンテナと、
NFCチップと、
上記NFCチップに接続されたNFCアンテナと
を有することを特徴とするNFCカードの情報通信装置。
【請求項2】
上記NFCアンテナがスイッチ部を介して上記NFCチップに接続され、上記スイッチ部が上記制御部によって制御されることを特徴とする請求項1に記載のNFCカードの情報通信装置。
【請求項3】
上記スイッチ部として、上記NFCアンテナの共振周波数を変化させるスイッチ回路を用いたことを特徴とする請求項2に記載のNFCカードの情報通信装置。
【請求項4】
上記スイッチ回路がPINダイオードを有していることを特徴とする請求項3に記載のNFCカードの情報通信装置。
【請求項5】
上記制御部が複数種類のNFCカードからの信号を処理することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のNFCカードの情報通信装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−84045(P2013−84045A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221966(P2011−221966)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(301032621)株式会社藤田電機製作所 (10)
【Fターム(参考)】