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NK細胞強化型血液製剤の製造方法
説明

NK細胞強化型血液製剤の製造方法

【課題】生体から採取した血液中のNK細胞等を侵襲性が低く、簡易かつ迅速に増殖させることのできるNK細胞強化型血液製剤を生産する方法を提供する。
【解決手段】血液中のNK細胞を抗CD16抗体、OK432、抗CD137抗体、及びサイトカインを含むNK細胞増殖刺激因子によって刺激し、その後に当該血液を生理的細胞温度で培養することによってNK細胞強化型血液製剤を生産する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNK細胞を活性化及び増殖させた血液製剤の製造方法、及びその血液製剤並びにNK細胞活性用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性新生物である癌は、1981年以降日本人における死因の第1位となっており、全死亡原因の約3割を占めている。医学の進歩により、癌の治癒率、生存率は、著しく改善されているが、現在もなお難治性の疾患であることに変わりはない。癌の治療方法は、外科手術療法、化学療法及び放射線療法を標準治療法とするが、近年では、免疫療法が新たな治療法として注目されている(非特許文献1)。
【0003】
免疫療法とは、体内の免疫力によって癌やウイルス感染症等の治療を行う方法である。特に、癌に対しては、外科療法、化学療法、放射線療法と並ぶ新たな治療法として注目され、これまでに様々な方法が開発されている。例えば、サイトカイン療法、ワクチン療法、BRM(生物応答調整剤:Biological Response Modifier)療法、細胞免疫療法等が挙げられる。
【0004】
サイトカイン療法とは、T細胞やNK細胞等のリンパ球を増殖若しくは活性化させる作用を有するサイトカインを、生体内に直接投与することによって、癌細胞やウイルス感染細胞を殺傷する治療法である。例えば、インターロイキン2(IL-2)やインターフェロンの投与によるサイトカイン療法等が該当する(非引用文献2)。しかし、この療法は、臨床結果では期待ほどの効果が得られず、また、臓器機能不全や体液貯留(IL-2投与の場合)、感冒症状若しくは精神障害(インターフェロン投与の場合)等の重篤な副作用を生じるという問題があった。
【0005】
ワクチン療法とは、癌細胞特異的抗原又はペプチドを直接又は間接に接種し、その抗原に対する免疫系を活性化させる治療法である(非特許文献3)。当該治療法は、有効例がいくつか報告されているが、HLAクラスIを発現していない腫瘍等に対しては効果がない等の問題があった。
【0006】
BRM療法とは、腫瘍細胞等に対する患者の生物学的応答性を修飾する物質による治療法である(非特許文献4)。BRMとしては、PSKやベスタチン、OK432等が知られている。この治療方法は、一部の癌等では有効性が認められているが、本来外科療法や化学療法のように免疫能が低下する他の治療法と併用して用いることで効果が得られる補助的療法の側面が強い。また、必ずしも免疫力が強化されるとは限らず、単独での抗癌効果等は弱いという問題があった。
【0007】
細胞免疫療法は、患者から採取した免疫細胞を生体外で活性化、増殖等の処理を行った後に再びその患者の体内に戻すことによって当該患者の免疫力を高める治療法であり、「養子免疫療法(広義の養子免疫療法)」とも呼ばれている(非特許文献5)。細胞免疫療法は、生体外で処理する免疫細胞の種類によって、活性化リンパ球療法や樹状細胞療法に分類される。このうち樹状細胞療法については、臨床試験が開始されたばかりであるため、有効性を判断するに十分な結果がまだ得られていない。
【0008】
活性化リンパ球療法は、生体外でT細胞に対して活性・増殖処理を行う狭義の活性化リンパ球療法(活性化Tリンパ球療法、又は狭義の養子免疫療法)とNK細胞に対して活性・増殖処理を行う活性化NK細胞療法とに、さらに分類される。
【0009】
狭義の活性化リンパ球療法は、例えば、LAK(リンフォカイン活性化キラー細胞)療法や、TIL(腫瘍組織浸潤リンパ球)療法、CTL(細胞傷害性リンパ球)療法等が該当する。
【0010】
LAK療法は、患者から採取したリンパ球に大量のIL-2を添加して培養し、T細胞やNK細胞を活性化若しくは増殖させた後に体内に戻す方法である(非特許文献6)。この方法は、生体内に投与したLAK活性を維持させるために大量のIL-2を生体内に投与する必要があるため、前記IL-2によるサイトカイン療法と同様の副作用を伴うことや、期待ほどの効果が得られないという問題があった。
【0011】
TIL療法は、腫瘍組織等に浸潤したリンパ球を採取し、それをLAK療法と同様に体外で培養した後に体内に戻す方法である(非特許文献7)。しかし、この方法は、リンパ球を手術摘出組織からしか採取できないことや、期待ほどの効果が得られないという問題があった。
【0012】
CTL療法は、手術で採取した癌細胞等をリンパ球と共に培養してリンパ球を刺激することにより当該癌細胞等に特異的なリンパ球を誘導させる方法である(非特許文献8)。有効例の報告もあるが、手術により癌細胞を採取しなければならず、侵襲性が高く適応症例が限られ、また、癌細胞を採取かつ培養できない場合は治療が困難となることや、主要組織適合抗原が発現している癌にしか効かない等の問題があった。
【0013】
一方、活性化NK細胞療法は、増殖及び活性化したNK細胞を体内に移入する方法である。NK細胞は、抗原に感作されることなく、癌細胞やウイルス感染細胞を殺傷できるリンパ球集団である(非特許文献9〜11)。動物実験では、癌の浸潤・転移を抑制できることが知られており(非特許文献12)、また、長期大規模コホート研究では、末梢血中のNK細胞活性が高い人は低い人より癌の発生率が有意に低いという報告もある(非特許文献13)。それ故、体外で患者のNK細胞を大量に増殖、かつ、活性化して、再びその患者体内に移入すれば、癌やウイルス感染症などを治療することができる。活性化NK細胞療法は、このような原理に基づいた治療方法である。一般的に、NK細胞は、健常者のリンパ球中にも数〜十数%程度しか存在しておらず、癌患者の場合、その数がさらに低下している。また、血中でのNK細胞の癌細胞傷害活性は、NK細胞数が同数であっても、健常者に比べ癌患者では低下していることが多い。したがって、培養による増殖と活性化が必須となる。生体外でのNK細胞増殖は、従来、困難とされてきたが、近年の多くの研究により、NK細胞増殖培養の成功例が報告されている(非特許文献14〜17)。しかしながら、それらの方法は、NK細胞を強化するために培養した癌細胞や遺伝子導入細胞を利用しており、臨床応用時の安全性・実用性において未解決な問題があった。また、NK細胞増殖効率・細胞活性についても、十分に満足するレベルに達していない状況であった。
【0014】
以上のように、従来の免疫療法は、いずれの方法も十分な治療効果が得られないことや、重篤な副作用を伴うこと、あるいはその他の改善すべき問題を抱えていた。
【0015】
そこで、本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生体から採取した血液中のNK細胞を、NK細胞を増殖する刺激因子と共に特定温度で特定時間処理することによって効率的に強化させることのできるNK細胞強化型血液製剤の製造方法を開発することに成功し、その製造方法及びNK細胞強化型血液製剤について特許を取得した(特許文献1)。この方法で得られたNK細胞強化型血液製剤は、臨床段階で実際に使用され、非常に良好な臨床結果が多数得られている(非特許文献18〜20)。しかし、この製造方法は、製造工程がやや複雑で、NK細胞の十分な活性化のためには培地を特定の温度下に比較的長時間(10〜30時間)保持しなければならず、温度管理上の手間や製剤が完成するまでに時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第4275680号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Milani V, et al., 2009, J trans Res, 7(50):1-18.
【非特許文献2】Rosenberg SA, et al., 1985, J Exp Med., 161:1169-88.
【非特許文献3】Bendandi, M. et al., 1999, Nature Med,5:1171-1177.
【非特許文献4】Fisher M,et al., 2002, Anticancer Res.,22:1737-54.
【非特許文献5】Takayama Y et al., 2000, Lancet,356:802-807.
【非特許文献6】Mule JJ,et al., 1985, J Immunol.,135:646-52.
【非特許文献7】Dudley ME, et al., 2003, J Immunother., 26:332-42.
【非特許文献8】Araki K et al.,2000, Int J Oncol., 17(6):1107-18.
【非特許文献9】Stagg J and Smyth M J., 2007, Drug News Perspect, 20(3):155-163.
【非特許文献10】Terme M et al., 2008 Nat. Immunol, 9(5):486-493.
【非特許文献11】Vivier E et al., 2008, Nat. Immunol, 9(5):503-510.
【非特許文献12】Dewan MZ et al., 2007, Breast Cancer Res Treat, 104:267-275.
【非特許文献13】Imai K et al., 2000, Lancet, 356:1795-1799.
【非特許文献14】Harada H et al., 2002, JPN J Cancer Res, 93:313-9.
【非特許文献15】Carlens S et al., 2001 Hum Immunol, 62:1092-8.
【非特許文献16】Berg M et al., 2009, Cytotherapy,11(3):341-55.
【非特許文献17】Fujisaki H et al., 2009, Cancer Res, 9:4010-7.
【非特許文献18】Brillard E et al., 2007, Exp Hemato, 35:416-425.
【非特許文献19】Cooke A and Brode S., 2008, Critical Rev immununol., 28(2):109-126.
【非特許文献20】Hsu KC et al., 2005, Blood, 105:4878-4884.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、ドナー及び患者に対する侵襲性が低く、製造工程が簡便で、かつ生体から採取した血液中のNK細胞を迅速に、また多量に強化できる新たなNK細胞強化型血液製剤の製造方法を開発し、当該方法により得られるNK細胞強化型血液製剤を安全かつ比較的安価で提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するため、NK細胞強化型血液製剤の製造方法についてさらなる研究を重ねた結果、前記特許文献1で挙げた先の出願(以下、本明細書では「先の出願」とする)に係るNK細胞強化型血液製剤の製造方法で必須の工程であった特定温度で特定時間保持する工程を必要とせずに、NK細胞増殖活性を強化する新たなNK細胞強化型血液製剤の製造方法の開発に成功した。
【0020】
本発明は、その開発結果に基づいて完成されたものであり、以下を提供する。
(1)生体から採取された血液中に含まれるNK細胞を抗CD16抗体、OK432、抗CD137抗体、及びサイトカインを含むNK細胞増殖刺激因子によって刺激する刺激工程、及び刺激工程後に当該血液を生理的細胞温度で培養する培養工程を含むNK細胞強化型血液製剤の製造方法。
(2)サイトカインがIL-2である、(1)に記載の製造方法。
(3)生理的細胞温度が36.5〜37.5℃である、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)培養工程における培養期間が7日〜30日である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)抗CD16抗体が支持体に固相化されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤。
(7)抗CD16抗体、OK432、抗CD137抗体及びサイトカインを含んでなるNK細胞強化用組成物。
(8)サイトカインがIL-2である、(7)に記載の組成物。
(9)(7)〜(8)のいずれかに記載のNK細胞強化用組成物を含むNK細胞強化型血液製造用キット。
【発明の効果】
【0021】
本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法によれば、血液中のNK細胞を従来方法よりも迅速かつ簡便に調製でき、NK細胞の増殖率をさらに向上させることができる。また、本製造方法によれば、末梢血からの製造が可能なためドナー及び患者に対する侵襲性が低いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例のサンプルa(上段)及びサンプルb(下段)における、培養0日目、14日目及び21日目のサイトグラムを示す。各サイトグラムにおいて、横軸は、PC5標識−抗CD3抗体(0日目)、ECD標識-抗CD3抗体(14及び21日目)の、縦軸は、PE標識−抗CD56抗体(0日目)、PC5標識-抗CD56抗体(14及び21日目)の蛍光強度をそれぞれ対数スケールで示している。前記各種蛍光の強度に基づいてサイトグラムを4つの区画(B1〜B4)に分画した。B1(CD3-CD56+)にはNK細胞が、B2(CD3+CD56+)及びB4(CD3+CD56-)にはTリンパ球が、そしてB3(CD3-CD56-)にはB細胞等の上記以外の細胞が、それぞれ分布する。各分画内の数値は、測定した培養細胞において当該分画に含まれる細胞の割合(%)を表す。
【図2】実施例のサンプルa及びbにおける培養日数と培養総細胞数の関係を示す細胞増殖曲線である。
【図3】実施例のサンプルa及びbにおける培養14日目及び21日目のNK細胞の細胞傷害活性を示す。X軸のE/T比は、エフェクター細胞(E)として用いた培養NK細胞と、標的K562細胞(ターゲット細胞:T)との比である。Y軸は、K562に対するNK細胞の細胞傷害活性をエフェクター細胞を加えない傷害前のコントロールに対する相対値(%)で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.NK細胞強化型血液製剤の製造方法
1−1.概要
本発明の第一の実施形態は、NK細胞強化型血液製剤の製造方法である。本実施形態では、生体より採取した血液中のNK細胞を増殖刺激因子で刺激し、その後、生理的細胞温度で培養することを特徴とする。
【0024】
本発明において「強化」とは、細胞を増殖及び/又は活性化させること又はさせたことを意味する。本明細書において細胞の「活性化」とは、細胞、特にNK細胞が有する機能が亢進又は増大することをいう。例えば、細胞傷害機能、NK細胞表面の活性及び/又は増殖に関するレセプターの発現の亢進・増大等が挙げられる。本発明において「NK細胞強化型血液製剤」とは、本実施形態の製造方法によって得られる活性化された多数のNK細胞を含む血液を主成分とする製剤をいう。
【0025】
1−2.構成
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤の製造方法は、刺激工程及び培養工程を含む。以下、各工程の構成について具体的に説明をする。なお、本実施形態において、各操作は、原則として滅菌処理済の試薬、培地、器具等を使用し、培養はクリーンルーム内のクリーンベンチ等の無菌的環境下で行うことを前提とする。これは、雑菌等のコンタミネーションを防止するためである。
【0026】
1−2−1.刺激工程
「刺激工程」とは、生体から採取された血液中に含まれるNK細胞をNK細胞増殖刺激因子によって刺激する工程である。
(1)血液
本発明において「血液」とは、NK細胞を含む血液成分をいう。例えば、全血、臍帯血、骨髄液やその成分の一部、例えば、単核球等が該当する。いずれの血液を使用することもできるが、NK細胞強化型血液製剤の製造上、赤血球や顆粒球等の血液成分は、阻害要因となり得るため、単核球が好ましい。中でも末梢血から得られる末梢血単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells:以下「PBMCs」とする)は、特に好ましい。末梢血であれば時期を選ばずに生体から容易に採取できる上にドナーへの侵襲性が低いためである。
【0027】
本発明において「生体」とは、生きている哺乳動物をいう。哺乳動物の種類は問わないが、好ましくはヒトである。対象とする生体は、本発明の製造方法で得られたNK細胞強化型血液製剤を投与する哺乳動物と同一の種類であることが望ましい。例えば、本発明のNK細胞強化型血液製剤をヒトに投与する場合、血液はヒトから採取することが好ましい。より好ましくはレシピエントのHLA(ヒト白血球抗原)遺伝子型と適合するドナーから採取することである。例えば、レシピエントが臓器移植又は幹細胞移植を行った場合であれば、通常そのドナーが該当する他、多くの場合、血縁関係者が該当する。HLA遺伝子型が適合するドナーの血液由来の血液製剤であれば、投与後の拒絶反応の可能性を限りなく排除することができるからである。したがって、最も好ましいのは本発明のNK細胞強化型血液製剤を投与するレシピエント自身がそのドナーとなること、つまり、養子免疫療法を前提とした血液採取を行うことである。養子免疫療法を前提とする場合には、採取する生体が健常体である必要はない。例えば、癌やウイルス感染症に罹患したドナーから採取した血液であってもよい。なお、本発明で養子免疫療法とは、以下、断りのない限り前述した広義の養子免疫療法を意味する。
【0028】
「生体から採取された」とは、生体由来であることを意味する。例えば、末梢血や骨髄液のように注射針等を生体に直接刺して採取されたものや、臍帯血のように分娩後の臍帯から直接採取されたものの他、移植臓器の還流液からも考えられる。前記採取された血液にヘパリン等を添加して抗凝固処理を施した後に又はさらに単核球を単離した後に、それらを一旦冷蔵若しくは冷凍で保存した保存血液等から採取された血液であってもよい。
【0029】
(2)血液の調製
本工程で使用する血液が生体から直接採取された血液である場合、その採取方法は、公知の採血方法に従えばよい。例えば、末梢血であれば末梢部の静脈等に注射をして採取すればよく、骨髄液であれば骨髄穿刺(マルク)によって採取すればよく、臍帯血であれば分娩後胎盤の娩出前の臍帯に針を刺して採取すればよい。以下、末梢血の採取について、一例を挙げて具体的に説明をする。
【0030】
末梢全血は、生体の末梢部血管、例えば、静脈又は動脈に注射針を刺して真空採血管、採血バッグ等による公知の全血採取法によって採取することができる。採取する容量は、必要とするNK細胞強化型血液製剤の量によって変動するが、例えば、大人一人に対して一回投与する前記血液製剤を製造する場合、通常20mL〜60mLあればよい。ただし、癌患者のように血中のPBMCs数が極端に低下している場合には、成分採血(アフェレーシス)により、PBMCsだけを必要量選択的に採取してもよい。採取後、血液が凝固しないように、例えば、採血管シリンジ内部等をヘパリン等の血液凝固阻止剤若しくは血液凝固阻害剤で予めコーティングしておくか、又は採取した血液にヘパリン等を添加しておくことが好ましい。また、末梢全血から血漿を分離し、血球成分のみを使用してもよい。血漿の分離は、例えば、末梢全血を遠心管に移して、2000rpm〜4000rpmで5〜20分間遠心し、その上清を除去することで達成できる。分離した血漿は、56℃にて30分間程度加温して非働化し、2000rpm〜4000rpmで5〜20分間遠心して、血小板など沈殿物を除去することで、細胞培養の栄養源として使用することもできる。
【0031】
必要に応じて、末梢全血からさらにPBMCsを分離してもよい。PBMCsは、フィコール・ハイパック(Ficoll−Hypaque)やフィコール・コンレイ(Ficoll−Conray)を比重液とした密度勾配遠心法を用いて、末梢全血又は血漿分離後の血球成分から得ることができる。これらの比重液は、市販の分離液等を利用すると便利である。例えば、Ficoll−Paque PLUS(Amersham社)やLYMPHOPREP(AXIS−SHIELD社)等が利用できる。PBMCsの分離方法については、キット添付のプロトコルに従えばよい。
【0032】
分離後のPBMCsは、比重液を除去するためにPBS(-)や培養細胞用の培地で数回洗浄する。ここで培養細胞用の培地としては、例えば、血清を含まないPBS(-)、RPMI1640培地又は培養に用いる無血清培地等を用いればよい。前記PBS(-)若しくは培地で洗浄後、回収したPBMCsの数を血球計算板でカウントしておくことが好ましい。健康なヒト成人の場合、通常、20mL〜60mLの末梢全血から2×107個以上のPBMCsを回収することができる。
【0033】
本工程で使用する血液が冷凍又は冷蔵血液である場合、公知の方法によって解凍及び加温処理して使用すればよい。例えば、凍結保存されたPBMCsにRPMI-1640培地を添加して解凍後、37℃にて、5%CO2下で3時間インキュベートする方法が挙げられる。
【0034】
(3)NK細胞増殖刺激因子
本発明において「NK細胞増殖刺激因子」とは、NK細胞を直接的に又は間接的に強化する因子をいう。直接的に強化する因子には、例えば、NK細胞表面上の受容体と特異的に結合することによって、そのNK細胞の細胞内に増殖シグナル又は活性化シグナルを伝達する機能を有する因子が挙げられる。また、間接的に誘導する因子には、例えば、NK細胞以外の単球等の細胞表面の受容体に結合してサイトカイン等の液性因子の産生・放出を誘導する因子が挙げられる。NK細胞は、放出された液性因子によって間接的に強化されることとなる。
【0035】
本発明のNK細胞増殖刺激因子は、抗CD16抗体、抗CD137抗体、OK432及びサイトカインを必須の因子として含む。
【0036】
「抗CD16抗体」とは、CD16抗原に対する抗体である。CD16抗原は、NK細胞や顆粒球のマーカーであり、休止期におけるほとんどのNK細胞の細胞表面上に存在するFcレセプターの構成タンパク質FcγRIIIとして知られている。抗CD16抗体のNK細胞増殖誘導活性については、先の特許出願において見出されたものであり、それ以前には知られていなかった。抗CD16抗体のNK細胞増殖誘導機構については明らかにされていないが、抗CD16抗体をIL-2等のサイトカインと共添加することで、サイトカイン単独で添加した場合と比較して、NK細胞の増殖誘導率を飛躍的に増大させることができる(特願2006-124630;非特許文献1)。本抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びそれらの断片のいずれであってもよい。
【0037】
本明細書において「それらの断片」とは、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の部分断片であって、その抗体が有する抗原特異的結合活性と実質的に同等の活性を有するポリペプチド鎖又はその複合体をいう。例えば、前述の抗原結合部位を少なくとも1つ包含する抗体部分、すなわち、少なくとも一組の軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)を有するポリペプチド鎖又はその複合体が該当する。具体例としては、免疫グロブリンを様々なペプチダーゼで切断することによって生じる多数の十分に特徴付けられた抗体断片等が挙げられる。例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’等が該当する。これらの抗体断片は、いずれも抗原結合部位を包含しており、抗原(すなわち、ここではCD16)と特異的に結合する能力を有している。
【0038】
また、本明細書において、モノクローナル抗体は、化学的に、又は組換えDNA法を用いることによって、合成した合成抗体であってもよい。例えば、組換えDNA法を用いて構築された抗体が挙げられる。具体的には、限定はしないが、本発明のモノクローナル抗体の一以上のVL及び一以上のVHを適当な長さと配列を有するリンカーペプチド等を介して人工的に連結させた一量体ポリペプチド分子、又はその多量体ポリペプチド(多価抗体)が該当する。このようなポリペプチドの例としては、一本鎖Fv(scFv:single chain Fragment of variable region)、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)又はテトラボディ(tetrabody)等が挙げられる。ダイアボディのような二価以上の多価抗体では、各抗原結合部位が同一エピトープと結合する必要はなく、それぞれが異なるエピトープを認識して、特異的に結合する多重特異性を有していても構わない。本発明の抗CD16抗体として、好ましい抗体は、モノクローナル抗体、すなわち抗CD16モノクローナル抗体である。ヒトCD16を抗原とする抗ヒトCD16モノクローナル抗体は、特に好ましい。このような抗体は、市販品を利用することもできる。例えば、抗ヒトCD16モノクローナル抗体であれば、3G8、B73.1等が挙げられる。
【0039】
「抗CD137抗体」とは、CD137抗原に対する抗体である。CD137抗原は、共刺激分子群TNFレセプタースーパーファミリーに属する30kDaの糖タンパク質である。抗CD137抗体による活性化は、T細胞活性化、活性T細胞とメモリーT細胞の維持に寄与することが明らかとなっている(Schwarz H, et al.1996, Blood 87:2839-2845; Croft M, et al. 2003; Nat Rev Immulo. 3:609-620)。一方、ヒトNK細胞に対する活性化等を立証した報告は、これまでなかった(Baessler T, et al. 2010; Blood 115:3058-3069)。本発明のNK細胞増殖刺激因子に使用する抗CD137抗体は、CD137抗原を特異的に認識し、結合する抗体であれば、特に限定はしない。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びそれらの断片を含み得る。好ましくはモノクローナル抗体である。本発明のモノクローナル抗体は、市販の抗体を利用することもできる。例えば、抗ヒトCD137モノクローナル抗体であれば、4-1BB、G6、4B4-1、O.N.185、BBK-2、C-20、D-20、G-1、N-16、BBEX2又はLq-14等が挙げられる。
【0040】
「OK432」(商品名:ピシバニール(Picibanil))とは、ペニシリン処理した溶連菌(ストレプトコッカス・ピオゲネスA群3型)Su株を有効成分とする抗腫瘍剤で、前述したBRMに属する。「BRM」は、前述のように、腫瘍細胞に対する宿主の生物学的応答を修飾することによって治療効果をもたらす物質をいう。OK432は免疫アジュバントとして、単球などの細胞表面TLRと結合して、単球細胞を活性化し、免疫反応を活性化できることが知られている(Ryoma Y, et al., 2004, Anticancer Res., 24:3295-301.)。
【0041】
「サイトカイン」とは、細胞間の情報伝達を担う多種多様なタンパク質性のホルモンであって、免疫系においては、前述のようにT細胞やNK細胞等のリンパ球を強化させる作用を有する。例えば、インターロイキン(Interleukin)やインターフェロン(INF)、TNF、MCP等が挙げられる。本発明のNK細胞増殖刺激因子として好適なサイトカインには、例えば、インターロイキン2(以下、「IL-2」と表す。他のインターロイキンについても同様に表す。)、IL-12、IL-15、IL-18、TNF-α、IL-1β等が挙げられる。このうち、本発明において特に好ましいサイトカインは、IL-2である。
【0042】
本発明のNK細胞増殖刺激因子は、上記必須の因子に加えて、必要に応じて、さらに、抗CD3抗体、あるいはビスホスホネート誘導体又はその塩若しくはその水和物(以下、「ビスホスホネート誘導体等」とする)、及び/又はOK432以外のBRM等を含むことができる。
【0043】
「抗CD3抗体」とは、CD3に対する抗体である。本発明のNK細胞増殖刺激因子に使用する抗CD3抗体は、CD3を特異的に認識し、結合する抗体であれば、特に限定はしない。モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよい。好ましくはモノクローナル抗体である。例えば、ムロモナブCD3(商品名:オルソクローンOKT3(登録商標)、ヤンセンファーマ社)が挙げられる。
【0044】
「ビスホスホネート誘導体」とは、下記一般式1で示される化合物をいう。
【化1】

【0045】
上記式中、R1は、水素原子(H)又は低級アルキル基を表し、R2とR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、置換された若しくは置換されていないアリール基、置換された若しくは置換されていないアルキル基、低級アルキルアミノ基、アルアルキル基、シクロアルキル基又は複素環式基を表し、又はR2とR3は、それらを含む環状構造の一部を形成し、該環状構造を形成する置換基は、R2とR3において、それぞれ独立して、ハロゲン、低級アルキル基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、アルコキシ基、アリール基、アリールチオ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキル基又は複素環式基に由来する。
【0046】
ビスホスホネート誘導体の具体例としては、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イパンドロン酸、インカドロン酸、エチドロン酸が挙げられる。
【0047】
本発明においては、一以上のビスホスホネート誘導体等をNK細胞増殖刺激因子として添加することができる。本発明において、特に好ましいビスホスホネート誘導体は、ゾレドロン酸又はNK細胞の強化活性を有するゾレドロン酸誘導体又はその塩若しくはその水和物である。
【0048】
ゾレドロン酸(商品名:ゾメタ(登録商標)、ノバルティスファーマ社)は、骨吸収抑制活性を有するビスホスホネートで、悪性腫瘍による高カルシウム血症又は多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変に対する治療薬として知られている。また、その化学構造の中に窒素含有ビスホスホネート(N-BPs:Nitrogen containing-BisphosPhonate)を包含するため、細胞内でFarnesyl PyrophosPhate (FPP)の合成を抑制して、その結果、前駆体であるIsoPentenyl Pyrophosphate(IPP)が蓄積する。それによって、その生体の免疫反応を活性化できること(van Beek E, et al., 1999, Biochem Biophys Res Commun, 264:108-11; Gober HJ, et al., 2003, J Exp Med, 197:163-8.)や、γδ T細胞の増殖活性を亢進させること(Sato K, et al.,2005, Int. J. Cancer, 116:94-99; Kondo M, et al.,2008, Cytotherapy, 10(8):842-856.)が報告されている。
【0049】
「その塩」とは、前記ビスホスホネート誘導体、好ましくはゾレドロン酸の塩基性付加塩をいう。塩基性付加塩としては、例えば、ナトリウム塩若しくはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩若しくはブロカイン塩のような脂肪族アミン塩、N,N-ジベンジルエチレンジアミンのようなアラルキルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩若しくはイソキノリン塩のような複素環芳香族アミン塩、アルギニン塩若しくはリジン塩のような塩基性アミノ酸塩、アンモニウム塩又はテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩若しくはテトラブチルアンモニウム塩のような第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0050】
「OK432以外のBRM」には、例えば、担糸菌類より抽出したタンパク質多糖複合体、より具体的にはシイタケより抽出されるレンチナン(Lentinan)やカワラタケより抽出されるクレスチンが挙げられる。
【0051】
(4)刺激方法
「刺激する」とは、上記NK細胞増殖刺激因子をNK細胞に接触させることによって、そのNK細胞を強化することをいう。
【0052】
具体的な刺激方法としては、まず、生体から採取した血液、例えば、PBMCsを、例えば、細胞密度1〜3×106個/mLとなるように培地で調製する。ここで用いる培地は、細胞培養用の適当な培地に、非働化処理をしたヒト血清若しくは血漿を容量比(V/V)で5〜10%程度添加したものを用いればよい。前記養子免疫療法での投与を前提とする場合には、前記培地は、OpTmizerのような養子免疫療法用の無血清培地に自己血漿を添加したものを用いることが望ましい。自己血漿は、前述のように、血液採取工程後に得られる血液から調製すればよい。例えば、採取した末梢全血を室温(10℃〜30℃:以下同じ。)にて3000rpmで10分間程度遠心して得た上清を自己血漿とすることができる。また、培地には必要に応じて、ストレプトマイシン、ペニシリン、カナマイシン、ゲンタマイシン等の抗生物質を添加してもよい。
【0053】
次に、予備調製したPBMCsを含む培養液にNK細胞増殖刺激因子を添加する。
抗CD16抗体による刺激は、例えば、終濃度で0.01μg/mL〜100μg/mL、好ましくは0.1μg/mL〜10μg/mL、より好ましくは1μg/mLとなるように培地に直接に添加するか、又はその抗体を支持体に固相化した状態で添加すればよい。好ましくは、支持体に固相化した状態での添加である。これは、抗CD16抗体を固相化することによってNK細胞との一定方向からの接触頻度が高まり、遊離状態のときよりも効率よくNK細胞に増殖刺激を与えることができるからである。ここでいう「支持体」とは、抗体を固定する足場である。支持体の材質は、抗体を安定した状態で固定できる材質であれば、特に限定はしない。例えば、プラスチック等の合成樹脂、ガラス、金属等が利用できる。支持体の形状は特に限定はしないが、当該支持体に固相化された抗体とNK細胞との接触頻度がより高くなるように培養液との接触表面積が大きな形状のものが好ましい。例えば、球状ビーズやリンパ球大の孔を有する多孔質キューブ等が挙げられる。
【0054】
抗CD16抗体を支持体に固相化する方法は、支持体の材質がプラスチック等のように抗体と親和性の高いものであれば、単に抗体溶液と支持体を接触(浸漬、塗布、流通、噴霧等を含む)させて、所定の温度と時間で保持するだけで固定できる。抗CD16抗体溶液は、例えば、無菌蒸留水又は細胞培養用培地で抗CD16抗体を溶解した後、必要に応じて、例えば、孔サイズ0.22μmのフイルタでろ過滅菌し、終濃度1μg/mLになるように無菌蒸留水又は培地で調整することによって得ることができる。抗CD16抗体を支持体に固相化する場合、固相化する支持体の表面積等を勘案した液量の抗CD16抗体溶液を使用することが好ましい。例えば、内壁表面積150cm2のプラスチックフラスコに固相化する場合であれば、1μg/mLの抗CD16抗体溶液を15mL程度使用すればよい。また、25cm2及び75cm2の培養フラスコの場合であれば、それぞれ5mL及び10mL使用すればよい。その後、37℃で12〜24時間インキュベートすれば、抗CD16抗体は支持体に付着する。あるいは、市販の抗体固定化キット等を用いてもよい。例えば、CarboLink(PIERCE社)等が利用できる。このような固定化キットは、支持体が抗体の付着しにくい材質の場合には有用である。
【0055】
抗CD16抗体を支持体に固相化した後は、必要に応じて、抗CD16抗体を固相化させた支持体を洗浄し、抗CD16抗体溶液を除去することが望ましい。洗浄は、例えば、支持体を適量のPBSで数回、例えば、2〜5回程度洗えばよい。このように支持体に抗CD16抗体を固相化させた培養容器は、0℃〜8℃、好ましくは3℃〜6℃に保存することによって約1月間、抗体活性能を減少又は失活させることなく使用できる。
【0056】
抗CD137抗体による刺激は、PBMCsを含む培養液に、例えば、終濃度で0.1μg/mL〜10μg/mLとなるように、PBMCsを含む培養液に添加すればよい。0.1μg/mLよりも少ない場合は増殖刺激を誘導する上で不十分であり、また10μg/mLよりも多い場合には逆にNK細胞の増殖を抑制してしまうためである。好ましくは0.3μg/mL〜6μg/mL、より好ましくは1μg/mL〜3μg/mLである。
【0057】
OK432による刺激は、PBMCsを含む培養液に、例えば、OK432溶液を終濃度で0.005KE/mL〜0.05KE/mL、好ましくは0.008KE/mL〜0.015KE/mL、より好ましくは0.01KE/mLとなるように添加すればよい。OK432溶液は、ピシバニール(5KE/本;中外製薬社)を水(例えば、注射用水)2mLで溶解して調製することができる。
【0058】
サイトカインによる刺激は、単独で添加してもよいし、複数種類を組み合わせて添加して行えばよい。コスト面等を勘案すると、IL-2単独の添加が好ましい。添加する量は、例えば、IL-2であれば、終濃度で100ユニット(U)/mL〜2000U/mLの範囲が好ましい。100U/mLよりも少ない場合は増殖刺激を誘導する上で不十分であり、また2000U/mLよりも多い場合にはIL-2の濃度の増加に応じたNK細胞の増殖が認められないためである。好ましくは、700U/mL〜2000U/mLの範囲である。
【0059】
さらに、NK細胞増殖刺激因子が抗CD3抗体及び/又はビスホスホネート誘導体等を含む場合、抗CD3抗体は、PBMCsを含む培養液に、例えば、終濃度で0.01ng/mL〜1000ng/mL、好ましくは0.1ng/mL〜10ng/mL、より好ましくは1ng/mLとなるように添加すればよい。また、NK細胞増殖刺激因子がビスホスホネート誘導体等を含む場合、ゾレドロン酸水和物注射液(2.94μmol/mL;ノバルティスファーマ社)4mg/バイアルをそのまま使用すればよい。又は、例えば、終濃度で1μM/mL〜10μM/mL、好ましくは3μM/mL〜7μM/mL、より好ましくは5μM/mLとなるように培地に添加すればよい。
【0060】
前記各NK細胞増殖刺激因子を添加後、PBMCsに十分な刺激を与えるために当該血液を生理的細胞温度(後述)に1〜3日保持することが好ましい。この期間は、次の培養工程と同時進行して行なうことが可能である。すなわち、刺激を付与しながらNK細胞等を培養することができる。
【0061】
また、上記生理的細胞温度での保持期間内に、38℃〜40℃で10時間〜30時間の期間で高温刺激を加えてもよい。この高温刺激により、NK細胞をより一層活性化させることができる。なお、刺激工程における保持温度は、37℃よりも低い場合、リンパ球を十分に活性化させることができず、また40℃よりも高い場合リンパ球が熱により変性や損傷を受ける可能性が高くなるため好ましくない。
【0062】
所定の温度に保持させる手段は、血液を一定温度に保持できれば、特に限定はしない。例えば、CO2インキュベーターを用いて、当該血液の入った容器ごと所定の温度に設定する手段が挙げられる
【0063】
1−2−2.培養工程
「培養工程」とは、刺激工程後に当該血液を生理的細胞温度で培養する工程である。本工程では、NK細胞の強化を維持しながら、その細胞数を増加させることを特徴とする。
【0064】
「生理的細胞温度」とは、細胞を培養する上で至適な温度をいう。通常は、使用した血液を提供した哺乳動物の体温である。したがって、前記哺乳動物がヒトの場合には、一般的には37℃であるが、当該温度を中心に0.5℃未満の範囲内、すなわち36.5〜37.5℃であればよい。インキュベーター内の温度は、前記温度範囲内で前後する可能性があるからである。
【0065】
本工程は、初期においては、刺激工程で付与されたNK細胞増殖刺激因子でNK細胞を十分に刺激する期間を確保することとそれらの細胞の培養を同時に行うことが可能であるが、十分な刺激を行った後は、培地から一旦NK細胞増殖刺激因子を除去し、刺激工程を解除することが好ましい。サイトカインのような因子の多くは、培養工程でもNK細胞に対して強化誘導刺激を与え続けることができるが、抗CD16抗体、抗CD137抗体、OK432、抗CD3抗体及び/又はゾレドロン酸等の長期にわたるNK細胞への刺激は、アポトシース等のようなNK細胞の強化に望ましくない影響を与える可能性があるためである。除去方法は、例えば、刺激工程後に培養液からPBMCsを回収した後、抗CD16抗体、抗CD137抗体及びOK432、さらに抗CD3抗体やゾレドロン酸等を含まない新たな培養液に移せばよい。前記因子の除去及びPBMCsの回収は、刺激工程を経た培養液に遠心処理を行い、上清を除去することで達成させる。具体な方法は、以下に述べる培地交換の方法に準じて行えばよい。
【0066】
培養は、生理的細胞温度条件下にある5%CO2インキュベーター内において、7日〜30日、好ましくは9日〜28日、12日〜26日、又は14日〜24日である。
【0067】
培養期間内は、2日から5日間隔で定期的に新しい培地を加える又は新しい培地に交換することが望ましい。培地交換の具体例は、まず、滅菌済み遠心チューブに刺激工程後のNK細胞を含む培養液を移す。続いて、約1200rpmで8分間ほど室温にて遠心した後に上清を除き、又はNK細胞を含む沈殿物を回収する。回収された細胞沈殿物は、細胞密度が0.6〜1.0×106/mLになるようにIL-2及び血漿を含む新たな培養液に移す。このとき添加するIL-2等のサイトカインは、終濃度で300U/mL〜700U/mL程度でよい。これは、刺激工程後にはNK細胞が既に活性化されており、NK細胞自身がIL-2等のサイトカインを産生しているからである。
【0068】
培養に用いる培地は、細胞培養で使用するいずれの一般的な培地も原則として使用することができる。例えば、AIM−V培地(インビトロジェン)、RPMI-1640培地(インビトロジェン)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;インビトロジェン)、OpTmizer T-cellExpansion SFM(インビトロジェン)、TIL(株式会社免疫生物研究所)、表皮角化細胞培地(KBM;コージンバイオ株式会社)、イスコフ培地(IMEM;インビトロジェン)、Alys培地(株式会社細胞科学研究所)等が挙げられる。好ましくはOpTmizer培地である。
【0069】
培養後は培養液中に細菌やエンドトキシンのコンタミネーションがないことを確認する。菌の有無はコロニー形成アッセイ法によって、またエンドトキシンの有無は市販のELISA等の比色法やリムルステスト等の懸濁法によって調べればよい。
【0070】
1−3.効果
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤の製造方法によれば、生体から採取した血液からNK細胞を強化した血液製剤を製造することができる。
【0071】
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤の製造方法によれば、先の出願で必須の工程であった所定の温度に所定の時間保持する工程(活性化工程;本発明の刺激工程における任意ステップである高温刺激に相当する)が必須ではなくなった。これにより、活性化工程に必要であった所定の温度に設定したインキュベーターを必ずしも必要としなくなったことから、本発明を実施する研究施設での設備面や実施者の操作・管理面での負担を大幅に軽減することができる。
【0072】
また、当該製造方法によれば、生体から採取する血液は、末梢血であってもよいことから、ドナーに対する身体的負荷を最小限に留めることができる。
【0073】
当該製造方法によれば、特段の専用機器等を必要とせず、細胞培養を行う一般的な検査施設や研究施設等に常備されている機器等がそのまま利用でき、必要とする試薬等はいずれも容易に入手ができる。したがって、クリーンルーム等の無菌で作業のできる研究施設であれば、初期設備投資等をほとんど必要とすることなく本実施形態の製造方法を実施できる利点がある。
【0074】
本実施形態の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤によれば、実際の臨床実験において、癌の再発予防や進行癌の有効な治療をすることができる。また、当該血液製剤の投与では副作用が認められていない等、安全な血液製剤を提供できる。
【0075】
さらに、ビスホスホネート誘導体をNK細胞増殖刺激因子の一つに使用した場合、前述のようにゾメタにはγδT細胞の増殖活性を亢進させる作用が報告されていることから、NK細胞の増殖に加え、γδT細胞の増殖の効果も期待し得る。
【0076】
2.NK細胞強化型血液製剤
2−1.概要
本発明の第二の実施形態は、実施形態1の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤である。
【0077】
2−2.構成
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤は、前記第一の実施形態において培養工程を経た培養液から得ることができる。ただし、NK細胞強化型血液製剤において培養で用いた培地や当該培地に添加した増殖刺激因子は不要である。したがって、NK細胞強化型血液製剤を使用するにあたっては、前記培養液から培地や増殖刺激因子を可能な限り除去し、強化されたNK細胞等を調製しておくことが好ましい。培地や増殖刺激因子の除去方法の一具体例として、まず、強化されたNK細胞を含む培養液を滅菌済み遠心チューブに移し、1200rpmにて8分間ほど室温にて遠心し、増殖刺激因子を含む上清の培地を除去する。NK細胞は、沈殿物として回収できる。回収されたNK細胞は、2回以上PBS(-)で洗浄することが好ましい。洗浄後のNK細胞は、血球計算板を用いて細胞数をカウントし、10mL〜200mLの乳酸リンゲル液又は生理食塩水で調整する。こうして、本実施形態のNK細胞強化型血液製剤を調製することができる。必要に応じて当該血液製剤にサイトカイン等を添加することも可能である。
【0078】
本実施形態の血液製剤を用いて十分な効果を得るためには、含有するNK細胞数の70%以上が活性化状態にあることが望ましい。NK細胞の活性化は、K562白血病細胞株を用いた細胞傷害活性又は活性化マーカーの発現によって判断できる。活性化マーカーは、CD69等の公知のマーカーが利用できる。また、それらの検出には、それぞれのマーカーに対する抗体を用いればよい。
【0079】
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤は、製造後直ちに使用することも、また0℃〜8℃の温度下で所定の期間、又は保存液等を加えて超低温下(約-80℃)若しくは液体窒素中で数年に渡る長期間保存することも可能である。前記保存液としては、市販のリンパ球保存液を用いると便利である。例えば、バンバンカー(日本ジェネティックス社)、ケーエムバンカーII(コスモバイオ社)等が利用できる。
【0080】
2−3.効果
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤によれば、20mL〜60mLの末梢全血から10×109個〜100×109個のNK細胞を包含することから、その血液製剤の投与によって被検体のNK細胞数を速やかに増大させることができる。したがって、NK細胞強化型血液製剤の投与により、腫瘍等の疾患を有する被検体の自然免疫系を増強し、その疾患の進行の抑制、治癒が可能となる。
【0081】
本実施形態のNK細胞強化型血液製剤によれば、強化されたNK細胞を多数含む血液製剤を凍結保存できることから、必要時に必要量を被検体に投与することができる。
【0082】
3.NK細胞強化用組成物
3−1.概要
本発明の第三の実施形態は、NK細胞強化用組成物である。本実施形態のNK細胞強化用組成物を血液、好ましくはPBMCsを含む培地に添加することによって、培地中のNK細胞を簡便かつ効率的に強化させることができる。
【0083】
3−2.構成
「NK細胞強化用組成物」とは、培地に添加することで、その培地中に存在するNK細胞を強化させることのできる組成物をいう。
【0084】
本実施形態のNK細胞強化用組成物は、前記第一の実施形態で説明した抗CD16抗体、抗CD137抗体、OK432及びサイトカイン、又は必要に応じて、さらに抗CD3抗体、前記式1で示されるビスホスホネート誘導体等、を含んでなる。抗CD16抗体は、3G8のような抗ヒトCD16モノクローナル抗体が好ましい。抗CD137抗体は、4-1BBのような抗ヒトCD137モノクローナル抗体が好ましい。また、サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、TNF-α、IL-1β及びIL-18からなる群から選択される化合物が好ましく、IL-2がより好ましい。また抗CD3抗体は、ムロモナブCD3のような抗ヒトCD3モノクローナル抗体が好ましい。さらに、ビスホスホネート誘導体は、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イパンドロン酸、インカドロン酸及びエチドロン酸からなる群から選択される化合物が好ましく、ゾレドロン酸がより好ましい。この他、RPMI-1640のようなリンパ球用培地の成分、pH安定剤、抗生物質等が包含されていてもよい。
【0085】
組成物における各構成成分の量は、所定量の培地に添加したときに、それぞれが所定の終濃度になるように混合されていればよい。具体的には、抗CD16抗体は終濃度で0.01μg/mL〜100μg/mL、好ましくは0.1μg/mL〜10μg/mL、より好ましくは1μg/mLとなるように、OK432は終濃度で0.005KE/mL〜0.05KE/mL、好ましくは0.008KE/mL〜0.015KE/mL、より好ましくは0.01KE/mLとなるように、抗CD137抗体は終濃度で0.1μg/mL〜10μg/mL、好ましくは0.3μg/mL〜6μg/mL、より好ましくは1μg/mL〜3μg/mLとなるように、そしてサイトカイン(好ましくはIL-2)は、200U/mL〜2000U/mL、好ましくは700U/mL〜1500U/mL、より好ましくは1000U/mLとなるように、混合されていればよい。さらに、抗CD3抗体及び/又はビスホスホネート誘導体等を包含する場合には、抗CD3抗体(好ましくはムロモナブCD3)は終濃度で0.01ng/mL〜1000ng/mL、好ましくは0.1ng/mL〜10ng/mL、より好ましくは1ng/mLとなるように、またビスホスホネート誘導体等(好ましくはゾレドロン酸)を包含する場合には、それを終濃度で1μM/mL〜10μM/mL、好ましくは3μM/mL〜7μM/mL、より好ましくは5μM/mLとなるように、混合されていればよい。
【0086】
組成物の剤形は特に問わない。適当なバッファに溶解した液体状態、粉末状態、粉末を適当な賦形剤等を添加し錠剤化したものとすることができる。あるいは異なる状態の混合物であってもよい。例えば、抗CD16抗体がプラスチックビーズ等の支持体に固相化され、かつOK432、抗CD137抗体及びサイトカイン、さらに必要に応じて抗CD3抗体及び/又は前記式1で示されるビスホスホネート誘導体等は、それを包含する溶液中に混合されているような剤形であってもよい。
【0087】
3−3.効果
本実施形態のNK細胞強化用組成物によれば、NK細胞を含有する所定量の適当な細胞培養液中に添加して、培養するだけでNK細胞を強化させることができる。
【0088】
4.NK細胞強化型血液製造用キット
4−1.概要
本発明の第四の実施形態は、NK細胞強化型血液製造用キットである。本実施形態は、血液、好ましくはPBMCsを培養する際に使用することで、簡便かつ容易にNK細胞強化型血液製剤を製造することができる。
【0089】
4−2.構成
本実施形態のNK細胞強化血液製造用キットは、前記第一の実施形態で説明した抗CD16抗体、抗CD137抗体、OK432、及びサイトカイン、そして必要に応じて抗CD3抗体、前記式1で示されるビスホスホネート誘導体及び/又はOK432以外のBRM等を含んでなる。この他、各NK細胞増殖刺激因子を溶解するために滅菌水やバッファ、使用説明書等を包含することができる。
【0090】
本キットに包含される抗CD16抗体及び抗CD137抗体、また必要に応じて加える抗CD3抗体は、それぞれCD16抗原、CD137抗原、CD3抗原を特異的に認識して結合できる抗体であればよく、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることは問わない。好ましくはモノクローナル抗体である。抗CD16抗体は、適当な支持体に固相化されていることがさらに好ましい。また、抗CD137抗体の具体例としては、4-1BBが挙げられる。さらに、サイトカインは、IL-2、IL-12、IL-15、TNF-α、IL-1β及びIL-18からなる群から選択される化合物が好ましく、IL-2がより好ましい。
【0091】
また、本キットに包含される抗CD3抗体の具体例としては、ムロモナブCD3(商品名:オルソクローンOKT3(登録商標)、ヤンセンファーマ社)が挙げられる。さらに、ビスホスホネート誘導体は、ゾレドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、リセドロン酸、イパンドロン酸、インカドロン酸及びエチドロン酸からなる群から選択される化合物が好ましく、ゾレドロン酸がより好ましい。
【0092】
それぞれのNK細胞増殖刺激因子は、単独又は二以上を組み合わせた状態でキット内に包含させることができる。例えば、抗CD16抗体以外のNK細胞増殖刺激因子は、それぞれを個別に包装して包含されていてもよいし、一部又は全部の因子を一つにまとめた状態でキット内に包含しておいてもよい。また、各NK細胞増殖刺激因子の状態は、特に限定しない。一のNK細胞増殖刺激因子が液体状態で、他のNK細胞増殖刺激因子が固体状態であってもよい。特に、抗CD16抗体はプラスチックビーズ等の適当な支持体に固相化した状態で包含されていることが好ましい。
【0093】
5.疾患を治療する細胞免疫療法
5−1.概要
本発明の第五の実施形態は、第一の実施形態で製造されたNK細胞強化型血液製剤を生体に投与して免疫力を高め、疾患を治療する細胞免疫療法に関する。
【0094】
5−2.構成
本実施形態は、第一の実施形態の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤を生体に投与する細胞免疫療法である。
【0095】
本実施形態でいう「細胞免疫療法」とは、前記第一の実施形態の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤を生体に投与することで、その生体の免疫力を高めて疾患を治療する方法である。特に、本実施形態の細胞免疫療法は、養子免疫療法を前提としたものである事が好ましい。これは、前述のように養子免疫療法が拒絶反応の危険性がほとんどないからである。
【0096】
前記投与されるNK細胞強化型血液製剤は、癌、ウイルス感染症、細菌感染症又は寄生虫感染症に対する免疫力を有するリンパ球が単位体積あたりの通常血液平均値よりも多く含まれている血液製剤である。ここでいう「癌」とは、悪性腫瘍全般を意味する。例えば、上皮性腫瘍や肉腫、白血病、骨髄腫等が該当する。具体的には、例えば、脳腫瘍、網膜芽腫、基底細胞癌、悪性黒色腫、舌癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肺癌、白血病、リンパ腫、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣腫瘍、膀胱癌、腎臓癌、肝臓癌、膵臓癌及び線維肉腫等が挙げられる。また、ここでいう「ウイルス感染症」は、ウイルス感染による疾患全般を指すが、特に治癒が難治の慢性ウイルス感染症や急性ウイルス感染症の予防が該当する。当該難治な慢性ウイルス感染症としては、例えば、AIDSを引き起こすHIV感染症、ウイルス性慢性肝炎、子宮頸癌を引き起こすヒトパピローマウイルス感染症が挙げられる。また、急性ウイルス感染症としてはインフルエンザ等のウイルス性呼吸器感染症や免疫不全状態での急性ウイルス感染症が挙げられる。「細菌感染症」とは、真正細菌(グラム陽性菌及びグラム陰性菌を含む)又は真菌(糸状菌、酵母等及び担子菌を含む)による感染症である。例えば、カンジダ感染症、ブラストミセス症、ヒストプラスマ症等が挙げられる。さらに、ここでいう「寄生虫感染症」は、原虫又は蠕虫による疾患全般を指す。例えば、マラリア、リューシュマニア症、フィラリア症、エキノコックス症、日本住血吸虫症等が挙げられる。
【0097】
「免疫力を有するリンパ球」とは、免疫系における機能が強化されたリンパ球を意味する。例えば、細胞傷害活性が活性化された状態にあるNK細胞、キラーT細胞、γδT細胞、NKT細胞が該当する。また、ここでいう「単位体積あたりの通常血液平均値」とは、健常な個体の血液で一般に観察される癌、ウイルス感染症、若しくは真菌感染症に対する免疫力を有した血中細胞数の単位体積あたりの平均値を意味する。例えば、NK細胞であれば、健常者の大人の血液1mLあたり平均して約5×105個程度のNK細胞が存在している。
【0098】
5−3.方法
本実施形態の細胞免疫療法におけるNK細胞強化型血液製剤の投与方法について、養子免疫療法を行う場合を例として以下で説明をする。当該投与方法は、実施形態1のNK細胞強化型血液製剤を投与する点を除けば、従来の養子免疫療法で知られる方法と基本的に同様である。したがって、投与方法に関しては公知の養子免疫療法における投与方法に準じて行えばよい。例えば、患者から採取した血液から実施形態1のNK細胞強化型血液製剤の製造方法によって製造された当該血液製剤を、その患者の体内に約2週間後に静脈注射又は点滴等を用いて投与する方法等が挙げられる。
【0099】
本実施形態におけるNK細胞強化型血液製剤の1回あたりの投与量は、ヒトの場合には細胞数にして20×107個から5×109個の範囲のNK細胞を含む容量であればよい。ただし、これは一般的な大人への投与量である。実際の投与では、当該血液製剤を投与する者の年齢、性別、体重、疾患の状態、体力等を勘案して適宜調節することが好ましい。
【0100】
本実施形態における細胞免疫療法の一例として、前記投与方法を1サイクルとして、約2週間間隔で1クール(6サイクル)以上投与を継続する方法が挙げられる。養子免疫療法でない場合も、自己でない生体から得られたNK細胞強化型血液製剤を投与する点を除いては、同様の方法で当該細胞免疫療法を行えばよい。
【0101】
5−4.効果
本実施形態の細胞免疫療法によれば、従来の多くの免疫療法、特に養子免疫療法と比較して、癌等の疾患に対する治癒に高い有効性を有する。また、従来の養子免疫療法と基本的な操作技術等は同様であることから、養子免疫療法の技術を有する者であれば特段の技術習得をすることなく実施できる。
【0102】
<実施例>
以下の実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、単に本発明を例示するのみであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、本実施例で使用された温度、量、時間等の数値に関して、実験上の多少の誤差及び偏差は斟酌される。
【0103】
[実施例1]
<NK細胞強化型血液製剤の製造方法>
本発明の第一実施形態について、養子免疫療法で用いる当該血液製剤の製造方法についての具体例を挙げて説明をする。なお、本明細書の実施例では、癌患者等の本来の治療対象者に代えて健常者をドナーとしている。
【0104】
(1)自己血漿の調製
まず、細胞培養用自己血漿を調製した。採血管にヘパリンを50U/mL加えて、ドナーの静脈から40mLの末梢全血を採取した。採取した末梢全血を無菌コニカル遠心管に移して、3000rpmで10分間遠心した後、上清を血漿として分離した。血漿を採取後の残りの血球成分に、血漿分離前の全血量に対して3倍量の無菌PBS(-)又は培養用培地を添加して「血球成分溶液」とし、以下のPBMCsの調製に使用した。血漿は、56℃で30分間処理して非働化し、さらに3000rpmで10分間遠心して、血小板等を除去した。その後、血漿を4℃保存した。この血漿を培地に添加する細胞培養用自己血漿として、培地調製の都度、必要量を使用した。
【0105】
(2)PBMCsの調製
血球成分溶液に比重液に重層して、密度勾配遠心法を用いて赤血球や顆粒球を除去し、PBMCsを分離した。比重液は、Ficoll-Paqu PLUS(Amersham社)を用い、手順は、添付のプロトコルに従った。回収したPBMCsに30mLの血清を含まないPBS(-)又は培養細胞用の培地を加え、2〜3回洗浄した。培養細胞用培地には、例えば、血清を含まないRPMI1640培地を用いた。洗浄後、得られたPBMCs混濁液から一部サンプリングを取って、チルク染色後、血球計算板を用いてその数をカウントした。40mLの末梢全血から、PBMCsを細胞数で3.4×107個を回収した。回収後のPBMCsは、5%(V/V)の上記自己血漿を加えたOpTmizer(Life Techelonogy社)培地に、細胞密度が1×106個/mLになるように加えて懸濁した。
【0106】
(3)刺激工程
1mLの無菌蒸留水に0.2mgの抗ヒトCD16抗体(Clone3G8、Beckman Coulter)を溶解した。この抗CD16抗体は、無菌製品ではないため、溶解後0.22μmフイルタでろ過滅菌した。無菌蒸留水で最終濃度が1μg/mLになるように199mLを添加して混合した。濾過後、抗CD16抗体溶液を25cm2培養フラスコに5mL入れ、37℃で一晩静置して抗CD16抗体溶液をフラスコ内面に固相化させた。その後、前記溶液を廃棄し、無菌PBS(-)によって2回洗浄した。
【0107】
前記調製したPBMCsの懸濁液5mLを、前記フラスコ内に移した。続いて、25μLの抗ヒトCD137抗体0.2μg/μL溶液(4-1BB、BioLegend)、4μL/mLのOK432(ピシバニール:中外製薬)水溶液を20μL、及び900U/μLのIL-2(Proleukin:Chiron社)溶液4μLを前記PBMCsの懸濁液に添加し、十分に撹拌した。
【0108】
前記各NK細胞増殖刺激因子でPBMCsを十分に刺激するため、予め庫内を37℃に設定した5%CO2インキュベーターに培養フラスコを移し、3日間保持しした。
【0109】
(4)培養工程
その後、NK細胞増殖刺激因子を培養液から除去するため、5mLの培養液をコニカ遠心管に回収して、1200rpmで8分間遠心した。遠心後、上清の培地を除去し、細胞ペレットを700U/μLのIL-2を含有する5%(V/V)の自己血漿を含有する4mLのOpTmizer培地に懸濁して回収し、抗CD16抗体の固相化されていない新たなフラスコに移した後、37℃に設定した5%CO2インキュベーターで再度21日間培養した。2〜4日毎に5%(V/V)の自己血漿を含有するOpTmizer培地を交換した。以上により、本発明の第二実施形態のNK細胞強化型血液製剤を作製した。
【0110】
実際に、NK細胞強化型血液製剤として使用する場合には、コンタミネーションテストや前処理を行う必要がある。以下、それらについて簡単に説明をする。
【0111】
(5)(コンタミネーションテスト)
培養液中のエンドトキシンの有無についての検証は、Limulus ES-II(Wako社)を用いて、添付のプロトコルに従って確認した。また、細菌やカビの有無については寒天培地に培養液の一部を塗布し、コロニー形成アッセイ法によって確認した。
【0112】
(NK細胞強化型血液製剤前処理)
培養後3週間の培養液を遠心チューブに移し、1200rpmで10分間遠心を行った後、上清を廃棄した。PBS(-)を50mL加えて沈殿を懸濁し、再度1200rpmで10分間遠心を行った後、上清を廃棄した。この操作を3度繰り返して行い、培地成分を除去した。最後に乳酸リンゲル液70mLに懸濁した。以上の操作により、最終産物であるNK細胞強化型血液製剤を得た。当該血液製剤では、NK細胞増殖率が14日後に約16000倍に、21日後には約44000倍になった。これは、従来の抗CD16抗体、IL-2及びOK432のみを用いるNK細胞強化型血液製剤の製造方法で得られるNK細胞増殖率と比較して、14日後、21日後共に4倍強であった。
【0113】
[実施例2]
<NK細胞の増殖(1)>
本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法が高温刺激を要さないことを確認するために、NK細胞の増殖率について検証した。
【0114】
(方法)
本実施例では、抗CD16抗体、抗CD137抗体、OK432及びIL-2を含むNK細胞増殖刺激因子を用いる本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法と、NK細胞増殖刺激因子に抗CD137抗体を使用しない点以外は全て本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法と同じ方法の、それぞれで得られる結果を比較するため、以下の2つのサンプルについて、インフォームドコンセントを得た健常人ドナーから得られた血液中のNK細胞の増殖率等を検証した。
・サンプルa:NK細胞増殖刺激因子として、終濃度でそれぞれ1μg/mLの抗CD16抗体、0.01KE/mLのOK432及び700U/mLのIL-2を使用した。このサンプルのNK細胞増殖刺激因子は、先の出願に用いた増殖刺激因子に相当する。
・サンプルb:NK細胞増殖刺激因子として、終濃度でそれぞれ1μg/mLの抗CD16抗体、0.01KE/mLのOK432、終濃度1μg/mLとする抗CD137抗体溶液(4-1BB、BioLegend)及び700U/mLのIL-2を使用した。このサンプルのNK細胞増殖刺激因子は、本発明のNK細胞増殖刺激因子に相当する。
【0115】
また、サンプルa及びbは、先の出願に係る製造方法と異なり、39℃による高温刺激工程を経ない。
【0116】
NK細胞強化型血液製剤の製造方法は、上記各サンプルの組成及び工程の相違点を除けば、基本的な操作は前記実施例1と変わらない。OpTmizer培地に、細胞密度が1×106個/mLになるようにPBMCs懸濁した日を0日目とし、各刺激因子による刺激を与え、10%自己血漿を培地に添加して刺激と培養を開始した日を0日目とした。培養3、5、7、10、12、14、17及び21日目で培養液の一部を回収し、それぞれの培養液中における総細胞数を測定した。
【0117】
培養液中のNK細胞の測定は、0日目、14日目、及び21日目に、フローサイトメトリー解析法を用いて行った。具体的には、血液製剤中のNK細胞を、蛍光物質で標識されたモノクローナル抗体(PC5標識あるいはECD標識-抗CD3抗体、PE標識或はPC5標識-抗CD56抗体Immunotech社)の組み合わせを用いて免疫染色した。免疫染色は、細胞浮遊液に各抗体の添付文書で推奨されている抗体量を加え、遮光室温にて15分間染色し、その後遠心して蛍光抗体を含む上清を洗い流すことで行った。続いてNK細胞の動態をフローサイトメトリーにCytomic FC500(Beckman社)よって、上記の抗体の組み合わせで測定した。測定データはCXP解析によって解析した。
【0118】
(結果)
結果を図1及び2並びに表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
図1で示すように、総細胞数におけるNK細胞の%(B1;CD3-CD56+)は、0、14及び21日目のいずれもサンプルa及びb間で大きな差は見られなかった。
【0121】
しかし、図2で示すように、培養開始後13日目あたりから、サンプルa及びb間で総細胞数に差が生じ始めた。表1で示すように、その結果に対応して、14日目にはサンプルbのNK細胞の絶対数は、サンプルaの約4倍に達した。本実施形態で用いるNK細胞強化型血液製剤は、培養に用いた血液量と同じ液量で比較した場合、(培養終了時総細胞数×そのうちのNK細胞の割合)/(培養開始時PBMCs×そのうちのNK細胞の割合)から、NK細胞数が単位体積あたりの各血球数の平均値よりも10000倍以上となることが判明した。よって、本発明の製造方法によれば、高温刺激を必要とすることなくNK細胞をより効率的に増殖できることが明らかとなった。
【0122】
[実施例3]
<活性化NK細胞の測定>
本発明のNK細胞強化型血液製剤におけるNK細胞の活性化をNK細胞の標的であるK562細胞株に対する細胞傷害活性として測定した。
【0123】
(方法)
まず、白血病細胞系株化細胞であるK562細胞を蛍光色素Calcein-AMで標識した。標識は、RPMI-1640培地(10%ウシ胎児血清を含有)に、100分の1容量のCalcein-AM溶液(同仁化学研究所)を加えて37℃で30分間インキュベートして行なった。標識後、当該細胞をPBS(-)で洗浄し、標的562細胞として用いた。次に、前記実施例2の方法で製造したサンプルa及びb由来のNK細胞強化型血液製剤におけるNK細胞をそれぞれエフェクター細胞(E)として用い、標的K562細胞(ターゲット細胞:T)との比(E/T比)が所定の値となるよう調整した後、それぞれを96ウェルプレートに入れ、37℃にてCO2濃度5%で2時間反応させた。反応後、蛍光を保持している、すなわち生存している標的細胞の量をTerascan VP(ミネルバテック社)を用いてその蛍光強度によって検出した。K562の細胞傷害活性値は、傷害前のコントロール、すなわち、エフェクター細胞を加えない状態の蛍光強度との比較により算出した。
【0124】
(結果)
前記実施例2の方法で製造したサンプルa及びb由来のNK細胞の細胞傷害活性を前記表1に、及び14日目と21日目のサンプルa及びb由来のNK細胞の細胞傷害活性を図3にそれぞれ示す。使用したE/T比は、それぞれの表又は図中に示した。
【0125】
表1及び図3から、本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法と先の出願に係るNK細胞強化型血液製剤の製造方法のそれぞれで得られたNK細胞の細胞傷害活性は、ほとんど変わらないことが明らかとなった。さらに21日目まで培養しても、細胞傷害活性が落ちることがなかった。したがって、本発明のNK細胞強化型血液製剤の製造方法は、先の出願に係る製造方法で得られたNK細胞の細胞傷害活性を維持しつつ、より多くの活性化NK細胞を得られることができることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から採取された血液中に含まれるNK細胞を抗CD16抗体、OK432、抗CD137抗体、及びサイトカインを含むNK細胞増殖刺激因子によって刺激する刺激工程、及び
刺激工程後に当該血液を生理的細胞温度で培養する培養工程
を含むNK細胞強化型血液製剤の製造方法。
【請求項2】
サイトカインがIL-2である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
生理的細胞温度が36.5〜37.5℃である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
培養工程における培養期間が7日〜30日である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
抗CD16抗体が支持体に固相化されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法で得られるNK細胞強化型血液製剤。
【請求項7】
抗CD16抗体、OK432、抗CD137抗体及びサイトカインを含んでなるNK細胞強化用組成物。
【請求項8】
サイトカインがIL-2である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項7〜8のいずれか一項に記載のNK細胞強化用組成物を含むNK細胞強化型血液製造用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71915(P2013−71915A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212828(P2011−212828)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(510035912)株式会社日本バイオセラピー研究所 (2)
【Fターム(参考)】