NK細胞活性を制御するための組成物及び方法
【課題】NK細胞の細胞表面上に存在する2以上の阻害的受容体と交叉反応し、哺乳類対象又は生物試料中のNK細胞の細胞毒性を増強する抗体、抗体断片及びそれらの誘導体を提供する。
【解決手段】NK細胞の活性を制御して、哺乳類対象中のNK細胞の細胞毒性を強化することができる特異的抗体、かかる抗体の断片及び誘導体、並び、前記抗体、抗体の断片及び誘導体を含む薬学的組成物及びそれらの使用、特に対象者のNK細胞活性又は細胞毒性を増加させるための治療におけるそれらの使用。
【解決手段】NK細胞の活性を制御して、哺乳類対象中のNK細胞の細胞毒性を強化することができる特異的抗体、かかる抗体の断片及び誘導体、並び、前記抗体、抗体の断片及び誘導体を含む薬学的組成物及びそれらの使用、特に対象者のNK細胞活性又は細胞毒性を増加させるための治療におけるそれらの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞の細胞表面上に存在する2以上の阻害的受容体と交叉反応し、哺乳類対象又は生物試料中のNK細胞の細胞毒性を増強する抗体、抗体断片及びそれらの誘導体に関する。本発明は、かかる抗体、断片、変異形及び誘導体を作製する方法、かかる抗体、断片、変異形及び誘導体を含む薬学的組成物、並びにかかる分子及び組成物の使用、特に対象中のNK細胞活性又は細胞毒性を増加させるための治療におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、リンパ球の亜集団であり、非従来的免疫に関与する。NK細胞は、血液試料、白血球/顆粒球除去療法、収集物などから、当該技術において公知の様々な技術によって取得することができる。
【0003】
NK細胞の特徴及び生物学的特性には、CD16、CD56及び/又はCD57などの表面抗原の発現;細胞表面上に、α/β又はγ/δTCR複合体が存在しないこと;「自己」MHC/HLA抗原を発現していない細胞に結合し、特異的な細胞溶解酵素を活性化することによって、これを死滅させることができること;NK活性化受容体−リガンドを発現する腫瘍細胞又はその他の異常細胞を死滅させることができること;免疫応答を刺激又は阻害するサイトカインを放出することができること;並びに複数回の細胞分裂を行って、親細胞と類似の生物特性を有する娘細胞を産生できること、が含まれる。本発明において、「活性な」NK細胞とは、生物学的に活性なNK細胞を表し、より具体的には、標的細胞を溶解させる能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、且つ「自己」MHC/HLA抗原を発現していない細胞(KIR非適合性細胞)を死滅させることができる。
【0004】
それらの生物学的特性に基づいて、NK細胞の調節に依拠した様々な治療及びワクチン戦略が当該技術において提案されている。しかしながら、NK細胞の活性は、刺激信号と阻害信号の両方が関与する複雑な機序によって制御される。従って、NK細胞によって媒介される有効な療法には、これらの細胞の刺激と阻害信号の中和がともに必要となり得る。
【0005】
NK細胞は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI特異的阻害受容体によって、負の制御を受けている(Karre et al., 1986;Ohlen et al., 1989)。これらの特異的受容体は、MHCクラスI分子の多型性決定基又は他の細胞上に存在するHLAに結合し、NK細胞の溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と称される受容体ファミリーに属するメンバーの一部が、HLAクラスI対立遺伝子の群を認識する。
【0006】
KIRは、NK細胞を含む、リンパ球のサブセットの一部に存在する受容体の巨大なファミリーである。KIRの命名は、細胞外ドメイン(KIR2D又はKIR3D)の数及び細胞質尾部が長い(KIR2DL又はKIR3DL)か、又は短い(KIR2DS又はKIR3DS)どうかに基づいている。ヒトの中では、特定のKIRの有無は、単一固体中に存在するNK集団内で、NK細胞ごとに変動し得る。ヒト集団内では、KIR分子の多型性レベルも比較的高く、ある種のKIR分子は一部の個体に存在するが、全ての個体に存在するわけではない。ある種のKIR遺伝子産物は、適切なリガンドに結合したときに、リンパ球活性の刺激を引き起こす。確認されている刺激性KIRは全て、免疫刺激モチーフ(ITAM、immunostimulatory motif)を有するアダプター分子と会合する、帯電した膜貫通残基を有する短い細胞質尾部を有している。他のKIR遺伝子産物は、性質上、阻害的である。確認された阻害性KIRは全て、長い細胞質尾部を有しており、KIRのサブタイプに応じて、HLA抗原の異なるサブセットと相互作用するようである。阻害的KIRは、ホスファターゼを動員する一又は数個の阻害的モチーフを、それらの細胞質内部分の中に提示する。公知の阻害的KIR受容体には、KIR2DLとKIR3DLサブファミリーのメンバーが含まれる。2つのIgドメイン(KIR2D)を有するKIR受容体は、HLA−Cアロタイプ:KIR2DL2(以前は、p58.2と表記されていた。)を特定し、又は密接に関連する遺伝子産物KIR2DL3はグループ2 HLA−Cアロタイプ(Cw1、3、7及び8)によって共有されるエピトープを認識するのに対して、KIR2DL1(p58.1)は、相反性のグループ1 HLA−Cアロタイプ(Cw2、4、5及び6)によって共有されるエピトープを認識する。KIR2DL1による認識は、HLA−C対立遺伝子の80位に位置するLys残基の存在によって支配されている。KIR2DL2及びKIR2DL3の認識は、80位に位置するAsn残基の存在によって支配されている。重要なことは、HLA−C対立遺伝子の大部分は、80位にAsn又はLys残基の何れかを有しているということである。3つのIgドメインを有するKIDの1つ、KIR3DL1(p70)は、HLA−Bw4対立遺伝子によって共有されるエピトープを認識する。最後に、3つのIgドメインKIR3DL2を有する分子のホモ二量体(p140)は、HLA−A3及びーA11を認識する。
【0007】
阻害的KIRとその他のクラスI阻害的受容体(Moretta et al, 1997;Valiante et al, 1997a;Lanier, 1998)が、NK細胞によって同時発現される場合があり得るが、任意の特定の個体のNKレパートリーでは、単一のKIRを発現する細胞が存在するので、対応するNK細胞は、特定のクラスI対立遺伝子グループを発現する細胞によってのみ遮断される。
【0008】
KIRがミスマッチであるNK細胞集団又はクローン(すなわち、宿主のHLA分子と適合しないKIRを発現するNK細胞の集団)は、同種異系間移植で見られる移植片抗白血病効果の媒介因子である可能性が最も高いことが示されている(Ruggeri et al.,2002)。ある個体で、この効果を再現する一つの方法は、KIR/HLA相互作用を遮断する試薬を使用することであろう。
【0009】
KIR2DL1に対して特異的なモノクローナル抗体は、KIR2DL1のCw4(などの)対立遺伝子との相互作用を遮断することが示されている(Moretta et al., 1993)。KIR2DL2/3に対するモノクローナル抗体は、KIR2DL2/3のHLACw3(などの)対立遺伝子との相互作用を遮断することも記載されている(Moretta et al., 1993)。しかしながら、臨床の現場でこのような試薬を使用するためには、所定の患者がクラス1又はクラス2 HLA−C対立遺伝子の何れを発現しているかに関わらず、全ての患者を治療するために、2つの治療用mAbを開発することが必要であろう。さらに、何れの治療用抗体を使用するかを決定する前に、各患者が発現しているHLA型を予め決定しなければならないため、治療の費用がずっと高くなるであろう。
【0010】
「Watzl et al., Tissue Antigens, 56, p.240(2000)」は、KIRの複数のイソタイプを認識する交叉反応抗体を作製したが、それらの抗体は、NK細胞活性の増強を引き起こさなかった。「G.M. Spaggiara et al., Blood, 100, pp. 4098-4107 (2002)」は、様々なKIRに対する数多くのモノクローナル抗体を用いて実験を行った。それらの抗体の一つNKVSF1は、CD185a(KIR2DL1)、CD158b(KIR2DL2)及びp50.3(KIR2DS4)の共通エピトープを認識すると述べられている。NKVSF1はNK細胞活性を増強できることは示唆されておらず、治療用に使用できることも示唆されていない。従って、NK細胞活性の調節における実際的且つ効果的なアプローチは、当該技術において、これまで使用することはできず、特異的試薬を用いたHLA対立遺伝子特異的介入がなお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、NK細胞の活性化における現行の問題を克服する新規抗体、組成物及び方法を提供し、さらなる有利な特徴及び利点を提供する。一つの典型的な側面において、本発明は、実質的に全てのヒトにおいて、ヒトNK細胞の活性化を促進する単一の抗体を提供する。より具体的には、本発明は、様々な阻害的KIR群と交叉反応し、それらの阻害的シグナルを中和して、このような阻害的KIR受容体を発現するNK細胞中で、NK細胞の細胞毒性の増強をもたらす、新規な特異的抗体を提供する。本発明の抗体は、このように複数のKIR遺伝子産物と交叉反応できるので、ヒト対象のHLAタイプを予め決定する負担又は支出なしに、ほとんどのヒト対象においてNK細胞活性を増加させるために効果的に使用することができる。
【0012】
第一の側面において、本発明は、NK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的KIR受容体と交叉反応し、NK細胞の阻害的シグナルを中和し、NK細胞の活性を増強する抗体、抗体の断片及びそれらのうち何れかの誘導体を提供する。より好ましくは、前記抗体は、ヒトKIR2DL受容体の共通の決定基を結合する。さらに具体的には、本発明の抗体は、少なくともKIR2DL1、KIR2DL2及びKIR2DL3受容体を結合する。本発明において、「KIR2DL2/3」という用語は、KIR2DL2及びKIR2DL3受容体の一方又は両方を表す。これらの2つの受容体は、極めて高い相同性を有し、おそらく、同一遺伝子の対立遺伝子形態であると思われ、当該技術によって、互換的であると考えられる。従って、KIR2DL2/3は、本発明において、単一の阻害的KIR分子であると考えられるので、KIR2DL2及びKIR2DL3のみと交叉反応し、他の阻害的KIR受容体とは交叉反応しない抗体は、本発明の範囲に属しない。
【0013】
本発明の抗体は、少なくとも2つの阻害的KIR受容体へのMHC又はHLA分子の結合を特異的に阻害し、NK細胞活性を促進する。両活性は、本明細書において使用される、「KIRの阻害的活性を中和する」という用語によって推定される。本発明において、「NK細胞活性を促進する」、「NK細胞の細胞毒性を促進する」、「NK細胞を促進する」、「NK細胞活性を増強する」、「NK細胞の細胞毒性を促進する」又は「NK細胞を増強する」本発明の抗体の能力とは、本発明の抗体によって、表面上に阻害的KIR受容体を発現しているNK細胞が、当該阻害的KIR受容体に対応するリガンド(例えば、特定のHLA抗原)を表面上に発現する細胞を溶解させ得ることを意味する。特定の側面において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3受容体へのHLA−C分子の結合を特異的に阻害する抗体を提供する。別の具体的な側面において、本発明は、NK細胞活性をインビボで促進する抗体を提供する。
【0014】
少なくとも約90%のヒト集団に、KIR2DL1又はKID2DL2/3のうち少なくとも一つが存在するので、本発明のより好ましい抗体は、HLA−Cアロタイプ関連細胞のほとんど(それぞれ、グループ1 HLA−Cアロタイプと、グループ2 HLA−Cアロタイプ)に対して、NK細胞活性を促進することができる。このため、本発明の組成物は、ほとんどのヒト個体において、典型的には、約90%以上のヒト個体において、NK細胞を効果的に活性化し、又は増強するために使用することができる。従って、本発明に係る単一の抗体組成物をほとんどのヒト対象を治療するために使用することができ、対立遺伝子群を決定し、又は抗体カクテルを使用する必要はめったにない。
【0015】
本発明は、阻害的KIRに対して交叉反応し、阻害的KIRを中和する抗体を作製することができ、このような抗体は、幅広い範囲のヒトの群で、NK細胞を効果的に活性化できることを初めて実証する。
【0016】
このため、本発明の具体的な目的は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3 ヒト受容体の両方を特異的に結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させる抗体に存する。一実施形態において、前記抗体は、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200と競合する。場合によっては、抗体DF200と競合する前記抗体は、抗体DF200自体ではない。
【0017】
別の実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体NKVSF1と競合し、必要に応じて、抗体NKVSF1と競合する前記抗体は抗体NKVSF1でない。
【0018】
別の実施形態において、前記抗体は抗体1−7F9と競合する。好ましくは、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0019】
「競合する」という用語は、特定のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)に対して言及する場合、ある抗体が、組換えKIR分子又は表面に発現されたKIR分子の何れかを用いた結合アッセイにおいて、モノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)と競合することを意味する。例えば、ある抗体が、結合アッセイにおいてDF200のKIR分子への結合を減少させれば、その抗体は、DF200と「競合する」。DF200と「競合する」抗体は、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方への結合に関して、DF200と競合し得る。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させ、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方への結合に関して、DF200、1−7F9又はNKVSF1と競合する抗体を提供する。必要に応じて、前記抗体はNKVSF1でない。必要に応じて、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させ、並びにKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合し、KIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合し、又はKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合し且つKIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合する抗体を提供する。必要に応じて、前記抗体はNKVSF1でない。必要に応じて、前記抗体はDF200でない。必要に応じて、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0022】
有利な側面において、本発明は、DF200と競合し、モノクローナル抗体DF200と実質的若しくは本質的に同じ、又は同じ、KIR分子上のエピトープ又は「エピトープ部位」を認識し、結合し、前記エピトープ又は「エピトープ部位に対して免疫特異性を有する抗体を提供する。好ましくは、前記KIR分子は、KIR2DL1ヒト受容体又はKIR2DL2/3ヒト受容体である。
【0023】
本発明の具体的な目的は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に存在する共通の決定基を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させる抗体に存する。該抗体は、より具体的には、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200又はハイブリドーマNKVSF1によって産生される抗体NKVSF1と実質的に同一のKIR上エピトープを結合する(該抗体は、NKVSF1ではない。)。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最も好ましい抗体は、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200である。
【0025】
抗体DF200を産生するハイブリドーマは、2004年6月10日に「Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, Rue du Docteur Roux, F-75724 Paris Cedex 15, France」に登録された、識別番号「DF200」、登録番号CNCM「CNCM I−3224」として、CNCM culture collectionに寄託された。抗体NKVSF1は、Serotec(Cergy Sainte-Christophe,France)から、カタログ番号MCA2243で入手できる。NKVSF1は、本明細書において、pan2D mAbとも称される。
【0026】
本発明は、実質的に同様の抗原特異性と活性を有する(例えば、親抗体と交叉反応することができ、阻害的KIR受容体を発現するNK細胞の細胞毒性活性を増強する。)、Fab断片、Fab’2断片、イムノアドヘシン、二重特異性抗体(diabody)、CDR及びScFvなどの(これらに限定されない。)、本明細書に記載されている抗体の機能的断片及び誘導体も提供する。さらに、本発明の抗体は、ヒト化、ヒト又はキメラであり得る。
【0027】
本発明は、毒素、放射性核種、検出可能部分(例えば、蛍光)又は固相支持体に抱合され、又は共有結合された本発明の抗体を含む抗体誘導体も提供する。
【0028】
本発明は、上述されているような抗体、それらの断片、又はそれら何れかの誘導体を含む薬学的組成物も提供する。従って、本発明は、医薬を製造するための方法における、本明細書に開示されている抗体の使用にも関する。好ましい実施形態において、前記医薬又は薬学的組成物は、癌若しくはその他の増殖性疾患、感染症の治療用であり、又は移植に使用するためのものである。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を含む組成物を提供し、前記抗体は、前記二つの異なるヒト阻害的KIR受容体の少なくとも一つを発現するNK細胞に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、前記抗体はリポソーム中に取り込まれる。必要に応じて、前記組成物は、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸分子;NK細胞中の遺伝子を抑制するためにアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸分子;又は前記リポソーム中に追加して取り込まれた、NK細胞を標的として死滅させるための毒素若しくは薬物から選択される追加の物質を含む。
【0030】
本発明は、インビトロ、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞活性を制御する方法であって、有効量の本発明の抗体、かかる抗体の断片、これらのうち何れかの誘導体又はこれらの何れかの少なくとも一つを含む薬学的組成物に、ヒトHK細胞を接触させることを含む、方法も提供する。好ましい方法は、有効量の本発明の薬学的組成物を投与することを含み、癌、感染性疾患又は免疫疾患を有する患者において、最も好ましくは、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞の細胞毒性活性を増加させることを目的する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、阻害的KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含む抗原で免疫化された哺乳類宿主(典型的には、ヒト以外の哺乳動物宿主)から得られ、(b)不死化された細胞(例えば、ミエローマ細胞)に融合された(a)B細胞を含むハイブリドーマを提供し、該ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体を結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体を発現するNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を少なくとも実質的に阻害することができる。必要に応じて、前記ハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生しない。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3受容体を結合する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1受容体への結合、及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、KIR2DL1又はKIR2DL2/3又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方の何れかの上に存在する、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する。このようなハイブリドーマの例は、DF200である。
【0032】
本発明は、複数のKIR2DL遺伝子産物と交叉反応し、かかるKIRの阻害的活性を中和する抗体を作製する方法であって、
(a)KIR2DLポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
(b)前記免疫された哺乳動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する、(c)の抗体を選択する工程と;
を含む方法も提供する。一実施形態において、前記ヒト以外の哺乳動物は、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物である(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子座と固有の免疫グロブリン遺伝子の欠失を有するヒト以外の哺乳動物、XenomouseTM(Abgenix−Fremont,CA,USA)など、又はヒトIgをコードする遺伝子の微小遺伝子座(minilocus)を有するヒト以外の哺乳動物、HuMab−マウスTM(Medarex−Princeton,NJ,USA)など)。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される、方法を含む。
【0033】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)阻害的KIR2ポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIRポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(c)の抗体を選択する工程と;を含み、工程(c)及び(d)の順序が必要に応じて逆転され、任意の数の前記工程が必要に応じて一回以上反復される、方法も提供する。好ましくは、免疫化に使用される阻害的KIRポリペプチドはKIR2DLポリペプチドであり、工程(c)で選択される抗体は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する。好ましくは、前記抗体は、少なくとも二つの異なるKIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を認識し、最も好ましくは、前記KIRは、KIR2DL1及びKIR2DL2/3である。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される、方法を含む。
【0034】
必要に応じて、上記方法では、工程c)又はd)で選択される抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、上記方法の工程(b)で調製される抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、上記方法の工程(c)で選択される抗体は、80位にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1受容体への結合及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、上記方法の工程(d)で選択される抗体は、NK細胞毒性に増強、例えば任意の実質的な増強、すなわち、少なくとも5%、10%、20%、30%以上のNK細胞毒性の増強、例えば、標的NK細胞毒性の少なくとも約50%の増強(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%(例えば、約65から100%など)の、NK細胞の細胞毒性の増強)を引き起こす。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体DF200と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製し、(例えば、放射性核種、細胞毒性剤、レポーター分子などに抱合することによって)選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製し、又はこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列から生成され、若しくはこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列を含む抗体断片の誘導体を作製する追加の工程を含む。
【0035】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体又は抗体断片を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体を選択する工程と;を含む方法をさらに提供する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。必要に応じて、工程(b)で選択される前記抗体は、NKVSF1でない。好ましくは、工程(b)で選択される抗体は、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、工程(b)で選択される抗体は、NK細胞毒性に増強、例えば任意の実質的な増強、又は少なくとも5%、10%、20%、30%以上のNK細胞毒性の増強、例えば、標的NK細胞毒性の少なくとも約50%の増強(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%(例えば、約65から100%など)の、NK細胞の細胞毒性の増強)を引き起こす。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体DF200と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製する工程、選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又は選択されたモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。
【0036】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)前記モノクローナル抗体の産生が可能な条件下で、本発明のハイブリドーマを培養する工程と;
b)前記モノクローナル抗体を前記ハイブリドーマから分離する工程と;を含む方法を提供する。必要に応じて、前記方法は、前記モノクローナル工程の断片を作製する工程、前記モノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又はかかるモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。
【0037】
また、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)前記モノクローナル抗体をコードする核酸を、本発明のハイブリドーマから単離する工程と;
b)前記核酸を修飾して、前記モノクローナル抗体の機能的配列に対応するアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に実質的に類似する(例えば、このような配列と少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%(約70から99%など)同一である。)アミノ酸配列を含み、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体の免疫反応性断片、又はこのような免疫反応性断片を含む融合タンパク質から選択される、修飾され又は誘導体化された抗体をコードする配列を含む修飾された核酸を取得する、必要に応じて実施される工程と、
c)前記核酸又は修飾された核酸(すなわち、同一アミノ酸配列をコードする関連核酸)を発現ベクター中に挿入し、適切な条件下で増殖された宿主細胞中に前記発現ベクターが存在するときに、前記コードされる抗体又は抗体断片が発現されることが可能である、工程と;
d)形質移入がなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞に、前記発現ベクターを形質移入する工程と;
e)前記抗体又は抗体断片の発現を引き起こす条件下で、前記形質移入された宿主細胞を培養する工程と;
f)前記形質移入された宿主細胞によって産生された抗体又は抗体断片を単離する工程と;を含む、方法が提供される。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。
【0038】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体と、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含み、前記抗体が、前記2つの異なるヒト阻害的KIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、前記抗体が、患者又はNK細胞を含む生物学的試料において、NK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で存在する、組成物も提供することが理解されるであろう。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。前記組成物は、例えば、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、阻害的KIR受容体に結合し、これを阻害する第二の抗体、抗感染剤、標的誘導剤又は補助化合物から選択される、第二の治療剤を必要に応じてさらに含むことができる。有利な免疫調節剤は、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β又はIFN−γから選択され得る。前記化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、他のビンカアルカロイド及びそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。ホルモン剤の例には、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミド アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール メドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤及び他のプロゲスターゲンが含まれる。好ましくは、阻害的KIR受容体に結合して、これを阻害する前記第二の抗体は、少なくとも二つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合する前記抗体によって結合されるエピトープとは異なる阻害的KIR受容体のエピトープに結合する抗体又は抗体の誘導体若しくは断片である。
【0039】
本発明は、さらに、NK細胞活性を検出可能に増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、NK細胞活性を検出可能に増強する方法を提供する。NK細胞活性の増強を必要とする患者は、このような増強が、治療効果を促進し、強化し、及び/又は誘導し得る(又は、疾病若しくは疾患を有し、患者と実質的に同じような特徴を有する(例えば、臨床試験によって決定し得る。)患者の少なくともかなりの割合において、このような効果を促進し、強化し、及び/又は誘導する)疾病又は疾患を有する任意の患者であり得る。このような治療を必要とする患者は、例えば、癌、別の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫疾患に罹患し得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、阻害的KIR受容体に結合し、これを阻害する第二の抗体、抗感染剤、標的誘導剤又は補助化合物から選択される、適切な追加の治療剤を前記患者に投与する追加の工程を含み、前記追加の治療剤は、前記抗体ともに単一剤形として、又は別個の剤形として、前記患者に投与される。抗体(又は抗体断片/誘導体)の投薬と追加の治療剤の投薬は、両者で、NK細胞活性の増強を含む前記患者における治療応答を検出可能に誘導し、促進し、及び/又は強化するのに十分である。別個に投与される場合、前記抗体、断片又は誘導体と前記追加の治療剤は、検出可能な総合的な治療的有用性を患者にもたらす条件下で(例えば、タイミング、投薬の数に関して)、望ましく投与される。
【0040】
さらに、本発明によって包含されるのは、ヒト以外の霊長類、好ましくはサルのNK細胞及び/又はサルのKIR受容体を特異的に結合できる本発明の抗体である。候補医薬である本発明の抗体の毒性、投与量及び/又は活性又は効力を評価する方法も、包含される。一側面において、本発明は、HK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体の用量を決定する方法を包含する。別の側面において、本発明は、HK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体を同定する方法である。別の側面において、本発明は、感染、疾病又は癌の、ヒト以外の霊長類モデルに、本発明の抗体を投与し、前記感染、疾病若しくは癌又はそれらの症候を軽減する抗体を同定することによって、感染された疾病又は腫瘍の治療に有効である抗体を同定する方法である。好ましくは、本発明の前記抗体は、(a)ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応し、及び(b)ヒト以外の霊長類のNK細胞又はKIR受容体と交叉反応する抗体である。
【0041】
さらに、本発明によって包含されるのは、生物学的試料又は生物中で、細胞表面上に阻害的KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法であって、
a)検出可能な部分に抱合され、又は共有結合されている本発明の抗体に、前記生物学的試料又は生物を接触させる工程と;
b)前記生物学的試料又は生物における前記抗体の存在を検出する工程と;
を含む方法である。
【0042】
本発明は、細胞表面上に阻害的KIRを有するNK細胞を試料から精製する方法であって、
a)細胞表面上に阻害的KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合できる条件下で、固相支持体(例えば、ビーズ、マトリックスなど)に抱合され、又は共有結合された本発明の抗体を前記試料に接触させる工程と;
b)固相支持体に抱合され、又は共有結合された前記抗体から、前記結合されたNK細胞を溶出する工程と;
を含む方法も提供する。
【0043】
さらなる側面において、本発明は、図12に示されているように、抗体DF200又は抗体Pan2Dの軽鎖可変領域又は一以上の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、DF200若しくはPan2Dの軽鎖可変領域配列又はこれらの抗体の一方又両方の一以上の軽鎖可変領域CDRの全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0044】
さらなる側面において、本発明は、図13に示されているように、抗体DF200の重鎖可変領域又は一以上の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、DF200の重鎖可変領域配列の全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0045】
本発明の、これらの及びその他の有利な側面及び特徴は、さらに、本明細書のその他の箇所に記載されているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、様々なヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合するモノクローナル抗体DF200を図示している。
【図2】図2は、Cw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するモノクローナル抗体DF200を図示している。
【図3】図3は、モノクローナル抗体DF200、DF200のFab断片、並びにCw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害及びCw3陽性標的細胞に対するKIR2DL2/3陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図4】図4は、DF200及びEB6抗体のF(ab’)2断片の存在下における、HLA Cw4陽性標的細胞のNKクローンによる細胞溶解の再構成を図示している。
【図5】図5及び図6は、モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1並びにCw4陽性標的細胞(図5ではCw4形質移入細胞、図6ではEBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図6】図5及び図6は、モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1並びにCw4陽性標的細胞(図5ではCw4形質移入細胞、図6ではEBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図7】図7は、KIR2DL1に対する抗KIR抗体を用いた表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DL1への結合の重複を表している。結果から、1−7F9は、KIR2DL1に対して、EB6及び1−4F1と競合するが、NKVSF1及びDF200とは競合しないことが明らかである。次に、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1及び1−7 F9と競合する。抗体NKVSF1は、KIR2DL1に対して、DF200、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL1に対して、NKVSF1、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図8】図8は、KIR2DL3に対する抗KIR抗体を用いたBIAcore(登録商標)分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DL3への結合の重複を表している。結果は、KIR2DL3に対して、1−4F1が、NKVSF1、DF200及びgl183及び1−7F9と競合することを示している。1−7F9は、KIR2DL3に対して、DF200、gl183及び1−4F1と競合するが、NKVSF1とは競合しない。NKVSF1は、KIR2DL3に対して、DF200、1−4F1及びGL183と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL3に対して、NKVSF1、1−4F1及び1−7F9と競合するが、GL183とは競合しない。
【図9】図9は、KIR2DS1に対する抗KIR抗体を用いたBIAcore(登録商標)分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DS1への結合の重複を表している。結果は、KIR2DS1に対して、抗体1−4F1は、NKVSF1、DF200及び1−7F9と競合することを示している。抗体1−7F9は、KIR2DS1に対して、1−4F1と競合するが、DF200及びNKVSF1とは競合しない。NKVSF1は、KIR2DS1に対して、DF200及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DS1に対して、NKVSF1及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図10】図10は、カニクイザルNK細胞へのmAbno結合を実証するNKVSF1(pan2D)mAb滴定を図示している。カニクイザルNK細胞(NKバルク16日)を異なる量のPan2D mAbとともにインキュベートし、続いて、PE抱合されたヤギ(Fab’)2断片抗マウスIgG(H+L)抗体とともにインキュベートした。陽性細胞のパーセントは、アイソタイプ対照(精製されたマウスIgG1)を用いて決定した。試料は、二つ組みで行った。平均蛍光強度=MFI。
【図12】図12は、抗体DF200及びPan2D mAbの軽鎖可変領域及び軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を比較のために並列した図である。
【図13】図13は、抗体DF200の重鎖可変領域を表す。
【発明の詳細な説明】
【0047】
抗体
本発明は、ヒト阻害的KIR受容体の共通の決定基、好ましくは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を結合し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす新規抗体及び断片又はそれらの誘導体を提供する。本発明は、予想外の結果を示し、特にヒト対象において、NKをベースとした新規且つ効果的な療法に対する道筋を開く、このような交叉反応する中和抗体を作製できることを初めて開示する。好ましい実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体NKVSF1ではない。
【0048】
本発明において、「共通の決定基」とは、ヒト阻害的KIR受容体の複数の遺伝子産物によって共有される決定基又はエピトープを表す。好ましくは、共通の決定基は、KIR2DL受容体グループの少なくとも2つのメンバーによって共有される。より好ましくは、前記決定基は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3によって共有される。本発明の幾つかの抗体は、KIR2DLの複数の遺伝子産物を認識することに加えて、KIR3DL受容体グループの遺伝子産物など、他の阻害的KIR上に存在する決定基も認識する。決定基又はエピトープは、前記メンバーによって共有されるペプチド断片又はコンフォメーションエピトープを表し得る。より具体的な実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体DF200によって認識されるエピトープと実質的に同一のエピトープに特異的に結合する。この決定基は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上にともに存在する。
【0049】
本発明において、共通の決定基を「結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性をもって、前記決定基を結合する抗体を表す。
【0050】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を表す他、特段の記載がなければ、又は明確に反対の記載がなければ、前記ポリクローナル及びモノクローナル抗体の断片及び誘導体も表す。重鎖中の定常ドメインの種類に応じて、完全長の抗体は、典型的には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらのうち幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのように、サブクラス又はイソタイプにさらに分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」及び「μ」と称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知である。IgG及び/又はIgMは、生理的な状況において最も一般的な抗体であり、且つ実験室条件で最も簡単に作製されるので、本発明で使用される抗体の好ましいクラスである。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最終目標の一つは、NK細胞を枯渇させることなく、阻害的KIRとその対応するHLAリガンドとの相互作用をインビボで遮断することなので、低エフェクター機能を媒介するFc受容体に対応するアイソタイプ(IgG4など)が典型的には好ましい。
【0051】
本発明の抗体は、当該技術で公知の様々な技術によって作製することができる。典型的には、本発明の抗体は、ヒト以外の動物、好ましくはマウスを、阻害的KIRポリペプチド、好ましくはKIR2DLポリペプチド、より好ましくはヒトKIR2DLポリペプチドを含む免疫原で免疫することによって作製される。前記阻害的KIRポリペプチドは、ヒト阻害的KIRポリペプチドの完全長配列、又はそれらの断片若しくは誘導体、典型的には免疫原性断片(すなわち、阻害的KIR受容体を発現している細胞の表面上に暴露されるエピトープを含むポリペプチドの一部)を含み得る。このような断片は、典型的には、成熟したポリペプチド配列の少なくとも約7個、さらに好ましくは成熟したポリペプチド配列の少なくとも約10個の連続するアミノ酸を含有する。断片は、典型的には、受容体の細胞外ドメインに実質的に由来する。さらに好ましいのは、完全長KIRDLポリペプチドの細胞外Igドメインの少なくとも一つ、より好ましくは両方を含み、KIR2DL受容体中に存在する少なくとも一つのコンフォメーションエピトープを模倣することができるヒトKIR2DLポリペプチドである。別の実施形態において、前記ポリペプチドは、KIR2DL1ポリペプチドのアミノ酸1から224位の細胞外Igドメインの、少なくとも約8つの連続するアミノ酸を含む(KIR遺伝子ファミリーを記載するPROWウェブサイトに従ったアミノ酸の付番、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/prow/guide/1326018082.htm)。
【0052】
最も好ましい実施形態において、前記免疫原は、脂質膜中に、典型的には細胞の表面に、野生型KIR2DLポリペプチドを含む。具体的な実施形態において、前記免疫原は、必要に応じて処理又は溶解された、無傷のNK細胞、特に無傷のヒトNK細胞を含む。
【0053】
ヒト以外の哺乳動物を抗原で免疫化する工程は、マウスでの抗体の産生を刺激するために、当該技術で周知の任意の様式で実施することができる(例えば、E. Harlow and D. Lane, Antibodies:A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照)。次いで、必要に応じて、完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、緩衝液中に、免疫原を懸濁し、又は溶解する。免疫原の量、緩衝液の種類及びアジュバントの量を決定する方法は、当業者に周知であり、いかなる意味においても、本発明を限定するものではない。これらのパラメータは、異なる免疫原については異なる場合があり得るが、容易に解明される。
【0054】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫化の位置及び頻度も、当該技術において周知である。典型的な免疫化プロトコールでは、1日目に、ヒト以外の動物に抗原を腹腔内注射し、約1週後に再度抗原を腹腔内注射する。この後、必要に応じて、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、20日目前後に、抗原のリコール注射を行う。リコール注射は、静脈内に行われ、連続数日間、反復することができる。その後、通例、アジュバントなしに、静脈内又は腹腔内の何れかで、40日目に強化注射を行う。このプロトコールによって、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が産生される。免疫化に使用される抗原に対して誘導される抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、他のプロトコールも使用することができる。
【0055】
ポリクローナル抗体の調製の場合、免疫されたヒト以外の動物から血清を得て、その中に存在する抗体を周知の技術によって単離する。阻害的KIR受容体と反応する抗体を得るために、固相支持体に連結された上記免疫原の何れかを用いて、血清をアフィニティー精製することもできる。
【0056】
別の実施形態では、免疫化されていないヒト以外の哺乳動物からリンパ球を単離し、インビトロで増殖し、次いで、細胞培養において免疫原に曝露する。次いで、リンパ球を採集し、以下に記載された融合工程を実施する。
【0057】
モノクローナル抗体の場合、次の工程は、免疫されたヒト以外の哺乳動物から脾細胞を単離した後、これらの脾細胞を不死化された細胞と融合して、抗体を産生するハイブリドーマを形成させる。ヒト以外の哺乳動物からの脾細胞の単離は当該技術において周知であり、典型的には、麻酔されたヒト以外の哺乳動物から脾臓を取り出し、脾臓を小片に切断し、脾臓カプセル(splenic capsule)から細胞ろ過器のナイロンメッシュを通して、脾細胞を適切な緩衝液中に絞り取り、単一細胞の懸濁液を得る。細胞を洗浄し、遠心し、全ての赤血球を溶解する緩衝液中に再懸濁する。この溶液を再び遠心し、最後に、ペレット中に残存するリンパ球を新鮮な緩衝液中に再懸濁する。
【0058】
一旦単離され、単一の細胞懸濁液中に存在した時点で、リンパ球は不死化細胞株に融合することができる。これは、典型的には、マウスのミエローマ細胞株であるが、ハイブリドーマの作製に有用な他の多くの不死化細胞株も、当該技術において公知である。好ましいマウスのミエローマ株には、「Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. U.S.A」から入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、並びに「American Type Culture Collection, Rockville, Maryland U.S.A」から入手可能なX63、Ag8653及びSP−2細胞から得られるマウスのミエローマ株が含まれるが、これらに限定されるものではない。融合は、ポリエチレングリコールなどを用いて行われる。次いで、得られたハイブリドーマを、融合されていない親ミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する一以上の物質を含有する選択培地中で増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠如していれば、ハイブリドーマに対する培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を抑える物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0059】
ハイブリドーマは、典型的には、マクロファージの支持細胞上で増殖される。マクロファージは、脾細胞を単離するために使用されるヒト以外の哺乳動物の同腹仔から得ることが好ましく、典型的には、ハイブリドーマを播種する数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激される。融合法は、「Goding, “Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,” pp. 59-103 (Academic Press, 1986)」に記載されており、参照により、その開示内容は本明細書に援用される。
【0060】
前記細胞は、コロニー形成と抗体産生に十分な時間、選択培地中で増殖させる。これは、通常、約7日から約14日の間である。次いで、複数の阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する抗体の産生について、このハイブリドーマコロニーをアッセイする。その中でハイブリドーマが増殖されるウェルに適合できる任意のアッセイを使用し得るが、このアッセイは、典型的には、比色分析のELISAタイプのアッセイである。他のアッセイには、免疫沈降及びラジオイムノアッセイが含まれる。一以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定するために、所望の抗体の産生に関して陽性のウェルを調べる。二以上のコロニーが存在すれば、細胞を再度クローニングし、単一の細胞のみが、所望の抗体を産生するコロニーを確実に生じるように増殖させ得る。モノクローナル抗体が唯一つ検出され、産生されるように、典型的には、単一の明白なコロニーを有する陽性細胞を再クローニングし、再アッセイする。抗体は、例えば、「Ward et al., Nature, 341 (1989) p. 544」に開示されているように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーを選択することによって作製することもできる。
【0061】
本発明の抗体は、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害、具体的には、KIR2DL受容体によって媒介される阻害、より具体的には、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方による阻害を中和することができる。このように、これらの抗体は、MHCクラスI分子と相互作用したときに、少なくとも部分的に且つ検出可能に、KIR受容体によって媒介される阻害的シグナル伝達経路を遮断するという意味で、「中和」又は「阻害的」抗体である。より重要なことは、これらの抗体が高い効力で様々な対象に使用できるように、この阻害活性が、数個のタイプの阻害的KIR受容体、好ましくは数個のKIR2DL受容体遺伝子産物、より好ましくは少なくともKIR2DL1とKIR2DL2/3の両方に対して表される。KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害は、結合又は細胞アッセイなど、様々なアッセイ又は検査によって評価することができる。
【0062】
複数の阻害剤KIR受容体と交叉反応する抗体がいったん同定されると、無傷のNK細胞中のKIR受容体の阻害的効果を中和する能力について、抗体を検査することができる。特定の変異形において、KIR2DL陽性NKクローンによるHLA−C陽性標的の溶解を前記抗体が再生させる能力によって、中和活性を表すことができる。別の特定の実施形態では、抗体の中和活性は、KIR2DL1及びKIR2DL3(又は密接に関連するKIR2DL2)受容体へのHLA−C分子の結合を阻害する抗体の能力によって定義され、さらに好ましくは、
−Cw1、Cw3、Cw7及びCw8から選択されるHLA−C分子の(又は80位にAsn残基を有するHLA−C分子の)、KIR2DL2/3への結合;並びに
−Cw2、Cw4、Cw5及びCw6から選択されるHLA−C分子の(又は80位にLys残基を有するHLA−C分子の)、KIR2DL1への結合;
を変化させる抗体の能力として定義される。
【0063】
別の変異形では、本発明の抗体の阻害的活性は、本明細書に記載されている実施例に開示されているように、細胞を用いた細胞毒性アッセイにおいて評価することができる。
【0064】
別のバリアントでは、NK細胞のサイトカイン産生(例えば、IFN−γ及び/又はGM−CSF産生)を刺激するために、試験抗体、及びNK集団のKIR分子によって認識される一つのHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞株とともに、NK細胞がインキュベートされるサイトカイン放出アッセイにおいて、本発明の抗体の阻害的活性を評価することができる。典型的なプロトコールでは、PBMCからのIFN−γ産生は、培養から約4日後に、フローサイトメトリーによる細胞表面及び細胞質内の染色及び分析によって、評価される。簡潔に述べると、Brefeldin A(Sigma Aldrich)は、少なくとも約4時間の培養の間、約5μg/mLの最終濃度で添加することができる。次いで、透過処理(IntraPrepTM、Beckman Coulter)及びPE−抗−IFN−γ又はPE−IgG1(Pharmingen)による染色の前に、抗CD3及び抗CD56 mAbとともに細胞をインキュベートすることができる。ポリクローナル活性化されたNK細胞からのGM−CSF及びIFN−γ産生は、ELISA(GM-CSF:DuoSet Elisa, R&D Systems, Minneapolis, MN;IFN-γ:OptE1A set, Pharmingen)を用いて、上清中で測定することができる。
【0065】
本発明の抗体は、KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害を部分的に又は完全に中和し得る。本明細書によって使用される「KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害を中和する」という用語は、細胞毒性の古典的なクロム放出試験によって測定した場合、所定のKIRを発現するNK細胞集団を、同族のMHCクラスI分子(NK細胞上に発現されているKIRによって認識される。)を発現する標的細胞と接触させたときに、抗体なしで得られた特異的な溶解レベルに比べて、それらのKIRによって遮断されないNK細胞又はNK細胞株を使用した場合と同じ比で得られる特異的溶解の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%以上(例えば、約25から100%)まで増加させる能力を意味する。例えば、本発明の好ましい抗体は、一致した、又はHLA適合性の、又は自家の標的細胞集団(すなわち、前記抗体の不存在下で、NK細胞によって効果的に溶解されないと思われる細胞集団)の溶解を誘導することができる。従って、本発明の抗体は、インビボでNK細胞活性を促進すると定義することもできる。
【0066】
あるいは、「KIRによって媒介される阻害を中和する」という用語は、NK細胞クローン又は一若しくは数個の阻害的KIRを発現する形質移入体と、NK細胞上のKIRの一つによって認識されるHLA対立遺伝子を一つだけ発現する標的細胞とを使用するクロムアッセイにおいて、抗体を用いて得られた細胞毒性のレベルが、公知の遮断抗MHCクラスI分子(W6/32抗MHCクラスI抗体など)を用いたときに得られた細胞毒性の、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%以上(例えば、約25から100%)となるべきことを意味する。
【0067】
特定の実施形態において、前記抗体は、(ハイブリドーマDF200によって産生される)モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープを結合する。このような抗体は、本明細書では、「DF様抗体」と称される。さらに好ましい実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体である。より好ましくは、本発明の「DF200様抗体」は、モノクローナル抗体NKVSF1以外の抗体である。最も好ましい抗体は、(ハイブリドーマDF200によって産生される)モノクローナル抗体DF200である。
【0068】
対象の抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、その抗体が対象の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、その抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。一般的に、対象のモノクローナル(例えば、DF200、NKVSF1、17F9)抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」抗体とは、一以上の任意のKIR分子に関して、好ましくは、KIR2DL1及びKIR2DL2/3からなる群から選択されるKIR分子に関して、その抗体が、前記対象の抗体と「競合する」ことを意味する。別の例では、対象の抗体と実質的に同一の、KIR2DL1分子上のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL1への結合に関して、前記対象の抗体と「競合する」。対象の抗体と実質的に同一の、KIR2DL2/3分子上のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL2/3への結合に関して、前記対象の抗体と「競合する」。
【0069】
対象の抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、前記対象の抗体が特異的に結合するあらゆる全てのKIR分子に関して、ある抗体が前記対象の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、DF200が特異的に結合する、あらゆる全てのKIR分子に関して、ある抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。例えば、モノクローナル抗体DF200又はNKVSF1と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DS1及びKIR2DS2への結合に関して、それぞれ、前記DF200又はNKVSF1と「競合する」。
【0070】
本明細書に記載されているモノクローナル抗体と実質的に又は本質的に同一のエピトープに結合する一又は複数の抗体を同定することは、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのうち任意の一つを用いて、容易に決定することができる。このような多数のアッセイは、一般的に実施され、当該技術で周知である(例えば、米国第5,660,827号を参照、1997年8月26日に付与、参照により、本明細書に明確に援用される。)。本明細書に記載されているモノクローナル抗体と同一又は実質的に同一のエピトープに結合する抗体を同定するために、本明細書に記載されている抗体が結合するエピトープを実際に決定することは、全く必要でないことが理解されるであろう。
【0071】
例えば、検査すべき試験抗体が、異なる採取源の動物から取得され、あるいは、異なるIgアイソタイプの抗体である場合には、対照(例えば、DF200)及び試験抗体が混合(又は予め吸着)され、KIR2DL1とKIR2DL2/3(何れも、DF200によって結合されることが知られている。)の両方を含有する試料に与えられる、単純な競合アッセイを使用することができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティングを基本とするプロトコール、及びBIACOREの使用(例えば、実施例の部に記載されているように)は、このような単純な競合研究での使用に適している。
【0072】
ある種の実施形態では、阻害的KIR抗原試料に与える前に、ある期間にわたって、様々な量の試験抗体(例えば、約1:10又は約1:100)を対照抗体(例えば、DF200)と予め混合するであろう。別の実施形態では、KIR抗原試料への曝露の間、対照抗体及び様々な量の試験抗体を単純に混合することができる。結合した抗体を遊離抗体と区別することができ(例えば、非結合抗体を除去するために、分離又は洗浄技術を使用することによって)、及びDF200を試験抗体から区別することができる限り(例えば、種特異的若しくはアイソタイプ特異的二次抗体を用いることによって、又は検出可能な標識で特異的に標識されているDF200によって)、試験抗体は、2つの異なるKIR2DL抗原へのDF200の結合を減少させるかどうかを決定することができ、試験抗体がDF200と実質的に同一のエピトープを認識することが示唆されるであろう。完全に無関係な抗体の不存在下での(標識された)対照抗体の結合は、対照の高値としての役割を果たすことができる。対照の低値は、正確に同じ種類(DF200)の非標識抗体とともに、標識(DF200)抗体をインキュベートすることによって取得することができ、この場合、競合が起こり、標識抗体の結合を減少させるであろう。試験アッセイでは、試験抗体の存在下において、標識された抗体の反応性が有意に減少することが、試験抗体が実質的に同じエピトープを認識する(すなわち、標識された(DF200)抗体と「交叉反応する」)ことの指標となる。約1:10から約1:100の間の任意のDF200:試験抗体比で、KIR2DL1及びKIR2DL2/3抗原の各々へのDF200の結合を、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、又は、より好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65から100%)減少させる全ての試験抗体は、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えられる。好ましくは、このような試験抗体は、KIR2DL抗原の各々へのDF200の結合を、少なくとも約90%(例えば、約95%)減少させるであろう。
【0073】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。このような試験では、所定のKIRを有する細胞は、例えば、まずDF200とともにインキュベートし、次いで、蛍光色素又はビオチンで標識された試験抗体とともにインキュベートすることができる。飽和量のDF200とともにプレインキュベーションを行った際に得られた結合が、DF200とのプレインキュベーションを行わない抗体によって得られる結合(蛍光を用いて測定される。)の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、DF200と競合すると呼ばれる。あるいは、飽和量の試験抗体とともにプレインキュベーションを行った細胞に対して、(蛍光色素又はビオチンによって)標識されたDF200を用いて得られた結合が、抗体とのプレインキュベーションを行わずに得られた結合の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、DF200と競合すると呼ばれる。
【0074】
試験抗体を予め吸着し、両KIR2DL1とKIR2DL2/3の両方が固定化されている表面に、飽和濃度で与えられる単純な競合アッセイも、有利に使用することができる。単純な競合アッセイにおける表面は、好ましくは、BIACOREチップ(又は表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)である。次いで、対照抗体(例えば、DF200)を、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の飽和濃度で、前記表面に接触させ、対照抗体のKIR2DL1とKIR2DL2/3表面結合を測定する。対照抗体のこの結合を、試験抗体の不存在下における、KIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面への対照抗体の結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下において、対照抗体によるKIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面の結合が有意に減少することが、試験抗体が対照抗体と「交叉反応する」ように、試験抗体が対照抗体と実質的に同一のエピトープを認識することを示す。KIR2DL1及びKIR2DL2/3抗原の各々への対照(DF200など)抗体の結合を、少なくとも約30%、又はより好ましくは約40%減少させる全ての試験抗体は、対照(例えば、DF200)と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えることができる。好ましくは、このような試験抗体は、KIR2DL抗原の各々への対照抗体(例えば、DF200)の結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上)減少させるであろう。対照抗体と試験抗体の順序は入れ替えることができることが理解されるであろう。すなわち、まず対照抗体を表面に結合することができ、試験抗体は、その後、競合アッセイにおいて、前記表面と接触される。第二の抗体(抗体は交叉反応すると仮定する。)について見られた結合の減少の程度がさらに大きくなると予想されるので、KIR2Dl1及びKIR2DL2/3抗原に対してさらに高い親和性を有する抗体を、まず、KIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面に結合することが好ましい。このようなアッセイのさらなる例は、実施例、及び、例えば、「Saunal and Regenmortel, (1995) J. Immunol. Methods 183:33-41」(参照により、その内容が本明細書に援用される。)に記載されている。
【0075】
例示のために、DF200に関して記載されているが、上記免疫学的スクリーニングアッセイは、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183及び本発明に係る他の抗体と競合する抗体を同定するために使用できることも理解されるであろう。
【0076】
脊椎動物又は細胞中で免疫化及び抗体の産生が行われたら、抗体を単離するために、特許請求の範囲に記載されているように、具体的な選択工程を実施することができる。この点に関して、具体的な実施形態において、本発明は、
a)阻害的KIR2ポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なる阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体を選択する工程と;
を含む、このような抗体を作製する方法にも関する。少なくとも2つの異なる阻害的KIR遺伝子産物と交叉反応する抗体の選択は、例えば、上記のように、2以上の異なる阻害的KIR抗原に対する抗体をスクリーニングすることによって達成することができる。
【0077】
さらに好ましい実施形態において、工程(b)で調製される抗体はモノクローナル抗体である。このように、本明細書において使用される「前記免疫された動物から抗体を調製する」という用語には、免疫された動物からB細胞を取得すること、及び抗体を発現するハイブリドーマを産生するためにこれらのB細胞を使用すること、並びに免疫された動物の血清から抗体を直接取得することが含まれる。別の好ましい実施形態において、工程(c)で選択される抗体は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する抗体である。
【0078】
さらに別の好ましい実施形態では、工程(d)で選択された抗体は、KIRによって遮断されないNK細胞を、同じエフェクター/標的比で用いたときに得られる溶解又は細胞毒性と比較して、同族のHLAクラスI分子を発現する標的細胞に対して、(標準的なクロム放出アッセイで測定した場合に)該抗体によって認識される少なくとも一つのKIRを提示するNK細胞によって媒介される少なくとも約10%の特異的溶解を引き起こし、好ましくは、少なくとも約40%の特異的溶解、少なくとも約50%の特異的溶解、又はより好ましくは、少なくとも約70%の特異的溶解(例えば、約60から100%の特異的溶解)を引き起こす。あるいは、一若しくは数個の阻害的KIRを発現するNK細胞クローンと、NKクローン上のKIRの一つによって認識されるHLA対立遺伝子を一つだけ発現する標的細胞とを使用するクロムアッセイで使用したときに、工程(d)で選択された抗体は、抗体を用いて得られた細胞毒性のレベルは、遮断抗MHCクラスI mAb(W6/32抗MHCクラスI mAbなど)を用いたときに得られた細胞毒性の、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%以上となるべきである。
【0079】
直前に記載されている方法の工程(c)と(d)の順序は、変更することができる。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、例えば、本明細書の他の部分に記載されているように、前記モノクローナル抗体の断片を作製する工程又は前記モノクローナル抗体若しくはこのような断片の誘導体を作製する追加の工程をさらに含み得る。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明の適用可能な方法に従って抗体を作製するために使用される、ヒト以外の動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物である。また、ヒト以外の哺乳動物は、XenomouseTM(Abgenix)又はHuMAb−MouseTM(Medarex)などの、「ヒト」抗体を産生するように、遺伝的に改変し、又は操作することができる。
【0081】
別の改変において、本発明は、抗体を取得する方法であって、
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体の断片、又はそれらのうち何れかの誘導体を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体、断片又は誘導体を選択する工程と;
を含む方法をさらに提供する。
【0082】
前記レパートリーは、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によって必要に応じて提示される、抗体又はその断片のあらゆる(組換え)レパートリーであり得る。阻害的抗体の選択は、上に開示されているように、及び実施例においてさらに説明されているように、実施することができる。
【0083】
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基を結合して、前記受容体の阻害的活性を中和することができる抗体を産生する、ヒト以外の宿主から得られるB細胞を含む、ハイブリドーマを提供する。より好ましくは、本発明の該側面のハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生するハイブリドーマではない。本発明の該側面に係るハイブリドーマは、ヒト以外の免疫された哺乳動物から得られる脾細胞を不死化細胞株と融合させることによって、上述のように作製することができる。この融合によって産生されたハイブリドーマは、本明細書の他の箇所に記載されているように、このような交叉反応抗体の存在に関してスクリーニングすることができる。好ましくは、前記ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす抗体を産生する。より好ましくは、前記ハイブリドーマは、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合して、NK細胞活性を増強する抗体を産生する。最も好ましくは、このハイブリドーマは、モノクローナル抗体DF200を産生するハイブリドーマDF200である。
【0084】
本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されているハイブリドーマは、DMEM又はRPMI−1640などの、適切な培地中で、さらに大量に増殖させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物内の腹水癌として、インビボで増殖させることができる。
【0085】
所望のモノクローナル抗体を産生するまで十分に増殖させた後、モノクローナル抗体を含有する増殖培地(又は腹水液)を細胞から分離し、その中に存在するモノクローナル抗体を精製する。典型的には、精製は、ゲル電気泳動、透析、プロテインA若しくはプロテインG−セファロース、又はアガロース又はセファロースビーズなどの固相支持体に連結された抗マウスIgを用いたクロマトグラフィーによって達成される(全て、例えば、「Antibody Purification Handbook, Amersham Biosciences, publication No. 18-1037-46, Edition AC」に記載されており、その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。)。結合された抗体は、典型的には、低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシン又は酢酸緩衝液)を使用することによって、プロテインA/プロテインGカラムから溶出され、抗体含有画分を直ちに中和する。必要に応じて、これらの画分をプールし、透析し、濃縮する。
【0086】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基を結合する抗体をコードするDNAが、本発明のハイブリドーマから単離され、適切な宿主に形質移入するために、適切な発現ベクター中に配置される。次いで、抗体、又はそれらの変異形(ヒト化された様式のモノクローナル抗体、抗体の活性断片、又は抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体など)を組換え産生するために、宿主を使用する。好ましくは、本実施形態で使用されるDNAは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす抗体をコードする。より好ましくは、前記DNAは、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合して、NK細胞活性を増強する抗体をコードする。最も好ましくは、このDNAは、モノクローナル抗体DF200をコードする。
【0087】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定される。DNAを単離したら、DNAは発現ベクター中に配置することができ、次いで、発現ベクターを宿主細胞(形質移入が行われていない状態で、免疫グロブリンタンパク質を産生しない、E.コリ細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞など)中に形質移入して、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現は、当該技術で周知である(例えば、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5, pp. 256 (1993); and Pluckthun, Immunol. Revs., 130, pp. 151 (1992)を参照)。
【0088】
モノクローナル抗体の断片及び誘導体
本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体の断片及び誘導体(別段の記載又は明確に反対の記載がなければ、本願で使用される「抗体」という用語に包含される。)、当該技術で公知である技術によって作製することができる。「免疫反応性断片」は、無傷の抗体の一部(一般的には、抗原結合部位又は可変領域)を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、Fab’−SH,F(ab’)2及びFv断片;二重特異性抗体;連続するアミノ残基の一つの連続配列からなる一次構造を有するポリペプチド(本明細書において、「一本鎖抗体断片」又は「一本鎖ポリペプチド」と称される。)である任意の抗体断片((1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)軽鎖可変ドメインを一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する重鎖部分を伴わないそれらの断片、及び(3)重鎖可変領域を一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は重鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する軽鎖部分を伴わないそれらの断片などが含まれるが、これらに限定されない。);並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。例えば、Fab又はF(ab’)2断片は、従来の技術に従って、前記単離された抗体をプロテアーゼ消化することによって作製することができる。免疫反応性断片は、公知の方法を用いて修飾することが可能であり、例えば、インビボでのクリアランスを遅らせ、より望ましい薬物動態特性を得るために、前記断片をポリエチレングリコール(PEG)で修飾し得ることを理解できるであろう。PEGをFab’断片に連結し、部位特異的に抱合する方法は、例えば、「Leong et al, Cytokine 16(3):106-119 (2001) and Delgado et al, Br. J. Cancer 73(2):175-182 (1996)」(その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。)に記載されている。
【0089】
ある側面において、本発明は、図12に示されている、DF−200の軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図12に示されている、Pan2Dの軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図12に示されている、DF−200の一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、図12に示されている、Pan2Dの一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又はそれらの誘導体を提供する。このような配列の機能的な変異形/類縁体は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。このように、例えば、Pan2DとDF−200の間で保存されているCDR残基は、本明細書に開示されている他の抗体に関してこれらの抗体が有する、競合プロファイルの差に寄与しておらず(但し、Pan2DとDF−200は競合する。)、従って、それらの特定の各エピトープに対するこれらの抗体の特異性に寄与し得ない限り、このような残基は修飾に適した標的であり得る。別の側面では、これらの抗体の一つの配列中に残基が存在するが、別の抗体には存在しない位置は、欠失、置換及び/又は挿入に適切であり得る。
【0090】
ある側面において、本発明は、図13に示されている、DF−200の重鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片及び抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図13に示されている、DF−200の一又は複数の重鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片及びそれらの抗体誘導体を提供する。このような配列の機能的な変異形/類縁体は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。別の側面では、これらの抗体の一つの配列中に残基が存在するが、別の抗体には残基が存在しない位置は、欠失、置換及び/又は挿入に適切であり得る。
【0091】
あるいは、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、本発明の断片をコードするように修飾することができる。次いで、修飾されたDNAは発現ベクター中に挿入され、適切な細胞を形質転換し、又は形質移入するために使用され、次いで、前記細胞が所望の断片を発現する。
【0092】
別の実施形態において、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、例えば、相同な非ヒト配列に代えて、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することによって(e.g., Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984))、又は、非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全部又は一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって、発現ベクター中に挿入する前に修飾することができる。このように、元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代用とされる。
【0093】
このように、別の実施形態によれば、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体は、ヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化された」形態は、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は、マウス免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、それらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列など)である。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、元の抗体の望ましい特異性、親和性及び能力を維持しつつ、元の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されることができる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又は導入されたCDR若しくはフレームワーク配列中の何れにも存在しない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良し、最適化するために施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体中では、元の抗体のCDR領域に対応する全て又は実質的に全てのCDR領域及び全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、通例ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、「Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Reichmann et al., Nature, 332, pp. 323(1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2, pp. 593 (1992)」を参照されたい。
【0094】
本発明の抗体をヒト化する方法は、当該技術で周知である。一般的に、本発明のヒト化抗体は、元の抗体からヒト化抗体中に導入されたアミノ酸残基を一又は複数有する。これらのマウス又は他の非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、通例、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、Winter及び共同研究者の方法に従って、実施することができる(Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Riechmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239, pp. 1534 (1988))。従って、このような「ヒト化」抗体は、元の抗体由来の対応する配列によって、原型のヒト可変ドメインが僅かに置換されているキメラ抗体である(Cabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567)。実際、本発明のヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基と、おそらくは幾つかのFR残基とが、元の抗体中の類似の部位から得られる残基によって置換されているヒト抗体である。
【0095】
ヒト化抗体の製造に使用すべきヒト可変ドメインの選択(軽鎖及び重鎖ドメインの両方)は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、本発明の抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として受容される(Sims et al., J. Immunol., 151, pp. 2296(1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196, pp. 901(1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列から得られるフレームワークを使用する。同じフレームワークを、数個の異なるヒト化抗体に対して使用することができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, pp.4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 51, pp. 1993))。
【0096】
さらに、複数の阻害的KIR受容体に対する高親和性と他の好ましい生物特性を保持しながら、抗体をヒト化することが重要である。この最終目標を達成するために、好ましい方法に従い、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念上のヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想三次元立体構造を描き、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることによって、候補免疫グロブリン配列の機能において、残基が果たしていると思われる役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原への結合能に影響を与える残基の分析が可能となる。このように、所望の抗体特性(標的抗原に対する増加した親和性など)が達成されるように、コンセンサス配列及び移入配列から、FR残基を選択し、合体させることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与える上で、直接且つ最も大きく関与している。
【0097】
「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫化に使用されるマウスとして、XenoMouse(登録商標)(Abgenix, Fremont, CA)を使用することである。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって、免疫グロブリン遺伝子が置換されている、本発明のマウス宿主である。このため、本マウスによって産生される抗体、又は本マウスのB細胞から作製されるハイブリドーマ中で産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号(参照により、その全体が本明細書に援用される。)に記載されている。HuMAb−Mouse(登録商標)(Medarex)を用いて、類似の方法を行うことが可能である。
【0098】
ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作された他のトランスジェニック動物を免疫化のために使用することによって(Jakobovitz et al., Nature 362 (1993) 255)、又はファージディスプレイ法を使用して、抗体レパートリーを選択することによって、様々な他の技術に従って作製することもできる。このような技術は当業者に公知であり、本願に開示されているモノクローナル抗体から出発して、実施することができる。
【0099】
本発明の抗体、好ましくはDF200様抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(キメラ抗体においては、重鎖及び/又は軽鎖の一部は元の抗体中の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りは別の種に由来し、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である。)に誘導化することも可能であり、所望の生物活性を発揮する限りにおいて、かかる抗体の断片に誘導化することも可能である(Cabilly et al., supra; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984)。
【0100】
本発明の範囲に属する他の誘導体には、機能化された抗体(すなわち、トキシン(リシン、ジフテリアトキシン、アブリン及びシュードモナスのエキソトキシンなど)、検出可能な部分(蛍光部分、放射性同位体又は造影剤など)、又は固相支持体(アガロースビーズなど)に抱合され、又は共有結合されている抗体)が含まれる。これらの他の因子を抗体に抱合又は共有結合させる方法は、当該技術で周知である。
【0101】
トキシンへの抱合は、その細胞表面上の交叉反応性KIR受容体の一つを提示するNK細胞を標的として死滅させるのに有用である。本発明の抗体が、このような細胞の細胞表面に結合すると、抗体は内部に取り込まれて、細胞の内部でトキシンが放出され、その細胞を選択的に死滅させる。このような使用は、本発明の別の実施形態である。
【0102】
本発明の抗体を診断目的で使用する場合には、検出可能な部分への抱合が有用である。このような目的には、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在について、生物学的試料をアッセイすること、及び交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在を生物中に検出することが含まれるが、これらに限定されるものではない。このようなアッセイ法及び検出法も、本発明の別の実施形態である。
【0103】
固相支持体への本発明の抗体の抱合は、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞を、生体液などの採取源からアフィニティー精製するためのツールとして有用である。この精製法は、本発明の別の実施形態であり、得られたNK細胞の精製集団も同様である。
【0104】
別の実施形態において、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合し、前記二つの異なるヒト阻害的KIR受容体の少なくとも一つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞毒性の、KIRによって媒介される阻害を中和することができる本発明の抗体(NKVSF1を含む。)を、単独で、又は動物に誘導して送達するための別の物質とともに、リポソーム(イムノリポソーム)中に取り込むことができる。このような他の物質には、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸;又はNK細胞中の遺伝子を抑制するためにアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸;又はNK細胞を標的として死滅させるための毒素若しくは薬物が含まれる。
【0105】
それらの公表されている結晶構造(Maenaka et al. (1999), Fan et al. (2001), Boyington et al. (2000))に基づく、KIR2DL1、−2及び−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1及びKIR2DL1−3交叉反応性マウスモノクローナル抗体DF200とNKVSF1との相互作用において、一部の領域又はKIR2DL1、−2及び−3が関与していることを予想した。このため、一実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域内で、KIR2DL1に専ら結合する抗体を提供する。別の実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域外のアミノ酸残基と相互作用せずに、KIR2DL1及びKIR2DL2/3に結合する抗体を提供する。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR131がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR157がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR158がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1残基に結合する抗体(131,157,158)を提供する。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DS3(R131W)に結合し、野生型KIR2DS3に結合しない抗体を提供する。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方並びにKIR2DS4に結合する抗体を提供する。
【0112】
ある抗体が、上記定義のエピトープ領域の一つの中で結合するかどうかの決定は、当業者に公知の方法で実施することができる。このようなマッピング/性質決定法の一例として、抗KIR抗体に対するエピトープ領域は、KIR2DL1又はKIR2DL2/3タンパク質中の露出したアミン/カルボキシルの化学的な修飾を用いた、エピトープ「フットプリンティング」によって決定され得る。このようなフットプリンティング技術の一つの具体例は、HXMS(質量分析法によって検出される、水素−重水素交換)の使用であり、HXMSにおいては、受容体及びリガンドタンパク質のアミドプロトンの水素/重水素交換、結合及び逆交換が起こり、タンパク質結合に関与している骨格アミド基は、逆交換から保護されるので、重水素化されたままとなるであろう。この時点で、ペプシンによるタンパク質分解、高速小孔高性能液体クロマトグラフィー分離及び/又はエレクトロスプレイイオン化質量分析によって、該当する領域を同定することができる。例えば、「Ehring H, Analytical Biochemistry, Vol. 267 (2) pp. 252-259(1999)」及び/又は「Engen, J.R. and Smith, D.L. (2001) Anal. Chem. 73, 256A-265A」を参照されたい。適切なエピトープ同定技術の別の例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)である。核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)においては、典型的には、遊離抗原及び抗原結合ペプチド(抗体など)と複合体を形成した抗原の、二次元NMRスペクトルのシグナルの位置が比較される。抗原は、典型的には、抗原に対応するシグナルのみが、NMRスペクトルに観察され、抗原結合ペプチドからのシグナルが観察されないように、15Nで選択的に同位体標識されている。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、典型的には、遊離抗原のスペクトルと比べて、複合体のスペクトルにおける位置がシフトしており、このようにして、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。例えば、「Ernst Schering Res Found Workshop. 2004;(44):149-67; Huang et al, Journal of Molecular Biology, Vol. 281 (1) pp. 61-67 (1998);及び「Saito and Patterson, Methods. 1996 Jun;9(3):516-24」を参照されたい。エピトープマッピング/特定は、質量分析法を用いて実施することも可能である。例えば、「Downward, J Mass Spectrom. 2000 Apr;35(4):493-503」及び「Kiselar and Downard, Anal Chem. 1999 May 1;71(9):1792-801」を参照されたい。
【0113】
エピトープマッピング及び同定においては、プロテアーゼ消化技術も有用であり得る。抗原性決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化(例えば、37℃及びpH7から8でのo/n消化において、KIR2DL1又はKIR2DL2/3に対して約1:50の比率のトリプシンを使用することによって)の後に、ペプチド同定のため質量分析(MS)を行うことによって決定することができる。抗KIR結合物質によってトリプシン切断から保護されたペプチドは、続いて、トリプシン消化を行った試料と、抗体とともにインキュベートされ、次いで、例えばトリプシンによる消化を行った試料(これにより、結合物質に対するフットプリントが明らかとなる。)とを比較するによって同定することができる。類似のエピトープ特定法では、キモトリプシン、ペプシンなどの他の酵素も使用することができ、又は他の酵素を代わりに使用することができる。さらに、酵素消化は、抗原決定配列である可能性を有する配列が、表面に露出されていない抗KIRポリペプチドに関して、KIR2DL1の領域内に存在するかどうか、従って、免疫原性/抗原性に関連していない可能性が最も高いかどうかを分析するための簡易な方法となり得る。同様の技術の論述については、例えば、「Manca, Ann Ist Super Sanita. 1991;27(1):15−9」を参照されたい。
【0114】
カニクイザルとの交叉反応性
抗体NKVSF1は、カニクイザルから得られたNK細胞にも結合することが明らかとなった。実施例7を参照されたい。従って、本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応し、さらにカニクイザル由来のNK細胞にも結合する抗体、並びにその断片及び誘導体を提供する。この一実施形態において、前記抗体は抗体NKVSF1ではない。本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応する抗体並びにその断片及び誘導体の毒性を検査する方法であって、カニクイザルにおいて前記抗体を検査することを含む、方法も提供する。
【0115】
組成物及び投与
本発明は、NK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的KIR受容体と交叉反応し、それらの阻害的シグナルを中和し、これらの細胞の活性を増強する抗体、その断片及び誘導体を、任意の適切なビヒクル中に、患者又はNK細胞を含む生物試料中でNK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で、含む薬学的組成物も提供する。該組成物は、さらに、薬学的に許容される担体を含む。このような組成物は、「本発明の抗体組成物」とも称される。一実施形態において、本発明の抗体組成物は、上記抗体の実施形態で開示されている抗体を含む。抗体NKVSF1は、本発明の抗体組成物中に存在し得る抗体の範囲に属する。
【0116】
本明細書において使用される「生物学的試料」という用語には、生体液(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞試料又は組織試料(例えば、骨髄)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
これらの組成物に使用することができる薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂などの塩又は電解質が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本発明の組成物は、患者又は生物試料中のNK細胞の活性を増強する方法で使用することができる。本方法は、前記組成物を前記患者又は生物試料と接触させる工程を含む。このような方法は、診断目的と治療目的の両方に対して有用であろう。
【0119】
生物試料とともに使用する場合、前記抗体組成物は、試料の性質に応じて(液体又は固体)、前記試料と単純に混合し、又は前記試料に直接加えることによって投与することができる。前記生物試料は、任意の適切な装置(プレート、袋、フラスコなど)中で、前記抗体と直接接触させることができる。患者とともに使用する場合、前記組成物は、患者に投与するために調合されなければならない。
【0120】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、口腔、経膣、又は埋め込まれた容器を介して、投与され得る。本明細書において「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下内、肝臓内、病変部内及び頭蓋内注射又は注入技術が含まれる。好ましくは、前記組成物は、経口、腹腔内又は静脈内に投与される。
【0121】
本発明の前記組成物の無菌注射可能形態は、水性又は油性懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術において公知の方法に従って調合し得る。無菌の注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容される無毒の希釈剤又は溶媒中の無菌注射可能溶液又は懸濁液とすることもできる。使用することができる許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として、都合よく使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドなど、任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油又はひまし油(特に、ポリオキシエチル化された様式)などの、薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、エマルジョン及び懸濁液などの薬学的に許容される剤形の調合において一般的に使用されているカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤など、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤も含有することができる。Tweens、Spansなどの一般的に使用される他の界面活性剤、及び薬学的に許容される固体、液体又はその他の剤形の製造において一般的に使用されるその他の乳化剤又は生物学的利用度の増強剤も、製剤の目的に対して使用することができる。
【0122】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液などの経口的に許容される任意の剤形(これらに限定されない。)で経口的に投与され得る。経口用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥されたコーンスターチが含まれる。経口用途のために水性懸濁液が必要とされる場合には、活性成分が乳化剤及び懸濁剤と混合される。所望であれば、ある種の甘味剤、着香剤又は着色剤も添加し得る。
【0123】
あるいは、本発明の組成物は、直腸投与するために、坐薬の形態で投与することもできる。これらは、室温で固体であるが、直腸の温度では液体であり、従って、直腸内で溶けて薬物を放出し得る、適切な非刺激性賦形剤と、薬剤を混合することによって調製することができる。このような物質には、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0124】
特に、眼、皮膚又は下部消化管の疾病など、治療の標的が局所適用によって容易に近づきやすい領域又は臓器を含む場合には、本発明の組成物は、局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、これらの領域又は臓器の各々に対して、容易に調製される。
【0125】
下部消化管に対する局所適用は、直腸坐剤調合物(上記参照)又は適切な浣腸調合物で実施することができる。局所経皮パッチも使用することができる。
【0126】
局所適用の場合、前記組成物は、一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切な軟膏中に調合することができる。本発明の化合物の局所投与用の担体には、ミネラル油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、前記組成物は、薬学的に許容される一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切なローション又はクリーム中に調合することができる。適切な担体には、ミネラル油、ソルビタンモノステアリン酸、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
眼科用途の場合には、前記組成物は、PH調整された等張無菌生理的食塩中の微粉化された懸濁液として、又は、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を加えた、又は加えない、PH調整された等張の無菌生理的食塩中の溶液として、調合することができる。あるいは、眼科用途の場合、前記組成物は、ワセリンなどの軟膏中に調合することができる。
【0128】
本発明の組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入によって、投与することもできる。このような組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な防腐剤、生物的利用可能性を増強するための吸収促進物質、過フッ化炭素及び/又は従来の可溶化又は分散剤を用いて、生理的食塩水中の溶液として調製し得る。
【0129】
Rituxan(Rituximab)、Herceptin(Trastuzumab)又はXolair(Omalizumab)など、幾つかのモノクローナル抗体が、臨床現場において有効であることが示されており、同様の投与計画(すなわち、調剤及び/又は投与量及び/又は投与プロトコール)を、本発明の抗体とともに使用することができる。本発明の薬学的組成物中の抗体の投与に関するスケジュール及び投与量は、例えば、製造業者の指示書を用いて、これらの製品に対して公知の方法に従って決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物中に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアル中に、10mg/mLの濃度で与えることができる。前記製品は、静脈内投与のために、9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート 80、及び注射用無菌水の中に調合される。pHを6.5に調整する。本発明の薬学的組成物中の抗体に対する典型的な適切な投与量範囲は、約10mg/m2から500mg/m2の間であり得る。しかしながら、これらのスケジュールは典型的なものであり、薬学的組成物中の具体的な抗体の親和性と許容性(これらは、臨床試験において決定しなければならない。)を考慮しながら、最適なスケジュール及び投薬計画を適合できることが理解されるであろう。24時間、48時間、72時間又は一週間又は一ヶ月間、NK細胞を飽和させる、本発明の薬学的組成物中の抗体の注入量及びスケジュールは、抗体の親和性及び抗体の薬物動態的なパラメータを考慮しながら決定されるであろう。
【0130】
別の実施形態に従えば、本発明の抗体組成物は、前記抗体が投与される具体的な治療目的のために通常使用される薬剤を含む、別の治療剤をさらに含み得る。追加される治療剤は、治療されている当該疾病又は症状に対する単剤療法において、その治療剤に対して典型的に使用される量で、前記組成物中に存在するのが通常であろう。このような治療剤には、癌の治療に使用される治療剤、感染性疾患を治療するために使用される治療剤、他の免疫療法に使用される治療剤、サイトカイン(IL−2又はIL−15など)、他の抗体及び他の抗体の断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
例えば、癌の治療に対して、多数の治療剤を使用することができる。本発明の抗体組成物及び方法は、特定の疾病、特に、腫瘍、癌疾患、又は患者が発病するその他の疾病又は疾患の治療で一般的に使用される他の任意の方法とともに組み合わせることができる。ある治療的アプローチが、それ自体で、患者の症状に対して有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物中の抗体の活性を著しく打ち消さない限り、本発明との併用が想定される。
【0132】
充実性腫瘍の治療に関していえば、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などの、古典的なアプローチとともに使用することができる。従って、本発明は、手術若しくは放射線治療と同時に、手術若しくは放射線治療の前に若しくは後に、本発明の薬学的組成物が使用され;又は従来の化学療法、放射線療法若しくは抗血管新生剤、若しくは標的に誘導される免疫毒素若しくは凝固リガンド(coaguligand)とともに、それらの前に若しくは後に患者に投与される、併用療法を提供する。
【0133】
治療計画において、本発明の抗体含有組成物とともに、一又は複数の薬剤を使用する場合には、併用した結果が、各治療が別個に実施されたときに観察される効果を加算したものである必要はない。少なくとも加算的な効果が一般に望ましいが、単剤療法の一つを上回る、何らかの増加した抗癌効果は、有益であろう。また、相乗効果を発揮することは確かに可能であり、有利であるが、併用治療が相乗効果を発揮することは必要ではない。併用抗癌療法を実施するためには、併用された抗癌作用を動物内にもたらすのに有効な様式で、別の抗がん剤とともに、本発明の抗体組成物を動物に単に投与すればよいであろう。従って、前記薬剤は、それらが腫瘍脈管構造内に同時に存在し、腫瘍環境中で併合作用をもたらすのに有効な量及び期間で、与えられるであろう。この目標を達成するために、本発明の抗体組成物と抗癌剤は、単一の併用組成物中に入れて、又は異なる投与経路を用いる2つの別個の組成物として、動物に同時に投与し得る。
【0134】
あるいは、本発明の抗体組成物の投与は、例えば、分から週及び月単位にわたる間隔を置き、抗癌剤治療の前又は後に行うことができる。抗癌剤と本発明の抗体組成物中の抗体が、癌に対して、有利に併用効果を発揮することを確保するであろう。
【0135】
抗血管新生治療では、多くの抗癌剤は、本発明の阻害的KIR抗体組成物に先立って与えられるであろう。しかしながら、抗体の免疫抱合体を本発明の抗体組成物に使用するときには、様々な抗癌剤を、同時又は順次に投与することができる。
【0136】
幾つかの状況では、治療のための期間を著しく延長することが望ましい場合さえあり得、この場合、抗癌剤又は抗癌治療と本発明の抗体組成物の各投与との間には、数日(2、3、4、5、6又は7)、数週(1、2、3、4、5、6、7又は8)、又は数ヶ月(1、2、3、4、5,6、7又は8)が経過する。これは、抗癌治療が腫瘍を実質的に破壊することを目的とし、本発明の抗体組成物の投与が微小転移又は腫瘍の再増殖を抑えることが目的とされる状況(手術又は化学療法など)において有利であろう。
【0137】
本発明の阻害的KIR抗体をベースとした組成物又は抗癌剤のうち何れかを2回以上投与することも想定される。これらの薬剤は、隔日若しくは隔週に、交互に投与してもよく、又は、本発明の阻害的KIR抗体組成物を用いた治療を繰り返した後、抗癌剤療法を繰り返してもよい。何れにしろ、併用療法を用いて、腫瘍の退化を達成するために必要なものは、投与の回数にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに有効な併合量で、両薬剤を送達することだけである。
【0138】
手術に関しては、任意の外科的介入を、本発明と組み合わせて実施することができる。放射線療法に関しては、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、さらには電子放射など、DNAの損傷を癌細胞内に局所的に誘導するための任意の機序が想定される。放射線同位体を癌細胞へ誘導して送達することも想定され、これは、標的誘導抗体又はその他の標的誘導手段と組み合わせて使用することができる。
【0139】
他の側面では、免疫調節化合物又は療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて、又は本発明の抗体組成物の一部として、投与することができる。免疫調節化合物の好ましい例には、サイトカインが含まれる。このような併用アプローチでは、様々なサイトカインを使用することができる。本発明によって想定される、前記組み合わせにおいて有用なサイトカインの例には、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、IFN−γが含まれる。本発明の併用治療又は組成物に使用されるサイトカインは、患者の症状及びサイトカインの相対的毒性などの臨床的指標に合わせて、標準的な投薬計画に従って投与される。
【0140】
一部の実施形態において、交叉反応する阻害的KIR抗体を含む本発明の治療用組成物は、化学療法剤若しくはホルモン治療剤とともに投与することができ、又は化学療法剤若しくはホルモン治療剤をさらに含むことができる。様々なホルモン療法剤及び化学療法剤は、本明細書に開示されている併用治療法において使用することができる。典型的なものとして想定される化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシン アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、並びにそれらの誘導体及びプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
ホルモン剤には、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン及びブセレリンなどのLHRHアゴニスト;タモキシフェン及びトレミフェンなどの抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、シプロテロン及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール及びファドロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;並びにメドロキシ、クロルマジノン及びメゲストロールなどの黄体ホルモンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
当業者であれば自明であるように、化学療法剤の適切な用量は、化学療法剤が単独で投与され、又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される、臨床療法で既に使用されている用量に近いであろう。単なる例示であるが、シスプラチンなどの薬剤及びその他のDNAアルキル化剤を使用することができる。シスプラチンは、癌を治療するために広く使用されており、臨床用途で使用される有効用量は、計三つの治療単位にわたって、三週ごとに、5日間、20mg/m2である。シスプラチンは、経口で吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内又は腹腔内注射によって、送達されなければならない。
【0143】
さらなる有用な化学療法剤には、DNAの複製、有糸分裂及び染色体分離を妨害する化合物、並びにポリヌクレオチド前駆体の合成及び忠実度を乱す薬剤が含まれる。併用療法のための典型的な数多くの化学療法剤が、米国特許6,524,583号の表Cに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。列記されている薬剤の各々は典型例であり、限定的なものではない。当業者は、「“Remington's Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, chapter 33, 特に、pages 624-652」を参照されたい。投薬量の変動は、治療されている症状に応じて、起こり得るであろう。治療を施す医師は、各対象者に対する適切な用量を決定することができるであろう。
【0144】
本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体組成物は、一若しくは複数の他のあらゆる抗血管新生療法とともに使用することができ、又は抗血管新生剤をさらに含むことができる。このような薬剤の例には、各々VEGF又はVEGF受容体に対して誘導された中和抗体、アンチセンスRNA,siRNA、RNAi、RNAアプタマー及びリボザイムが含まれる(米国特許第6,524,583号、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)。WO 98/16551号(参照により、本明細書に明確に組み込まれる。)に記載されているように、アンタゴニスト特性を有するVEGFの変異形を使用することもできる。併用療法とともに使用される典型的な抗血管新生剤が、さらに、米国特許6,524,583号の表Dに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。
【0145】
本発明の阻害的KIR抗体組成物は、アポトーシスを誘導するための方法と組み合わせて有利に使用することもでき、又はアポトーシス剤を含むこともできる。例えば、アポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)を阻害する多数の癌遺伝子が同定されている。このカテゴリーに属する典型的な癌遺伝子には、bcr−abl、bcl−2(bc−1、サイクリンD1とは異なる;GenBank受託番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号;及び第5,539,094号、それぞれ、参照により、本明細書に援用される。)、Bcl−x1、Mcl−1、Bak、A1及びA20を含むファミリーメンバーが含まれるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現は、T細胞リンパ腫で初めて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax(アポトーシス経路中のタンパク質)に結合し、Baxを不活化させることによって機能する。bcl−2機能の阻害は、Baxの不活化を抑制し、アポトーシス経路を進行させる。このクラスの癌遺伝子の阻害は、例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNA又は小分子化学化合物を用いて、アポトーシスの強化を得るために、本発明に使用することが想定される(米国特許第5,650,491号;5,539,094号;及び5,583,034号、それぞれ、参照により、本明細書に組み込まれる。)。
【0146】
本発明の阻害的KIR抗体組成物は、標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)の特異的マーカーに対して誘導される、標的誘導部分(例えば、抗体、リガンド、又はそれらの抱合体)を含む分子(「標的誘導因子」)も含むことができ、又は前記分子とともに使用することができる。一般的に言えば、本発明のこのような追加の側面において使用するための標的誘導因子は、好ましくは、腫瘍部位で、優先的に又は特異的に発現される、接近可能な腫瘍抗原を認識するのが好ましいであろう。一般的に、標的誘導因子は、表面に発現された、表面に接近可能な、又は表面に限局された腫瘍細胞の成分に結合するであろう。標的誘導因子は、高親和性特性を発揮することも好ましく、心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、大腸、乳房、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、又はヒトの身体で生命を支えるその他の臓器若しくは組織から選択される一以上の組織など、生命を支える正常な組織に対して、インビボで著しい副作用を発揮しないことが好ましいであろう。本明細書において使用される「著しい副作用を発揮しない」という用語は、インビボに投与したときに、標的誘導因子が、化学療法中に通常遭遇されるような副作用を、無視できる程度に又は臨床的に管理可能なようにのみ生じ得る事実を表す。
【0147】
腫瘍の治療において、本発明の抗体組成物は、補助化合物をさらに含むことができ、又は補助化合物とともに使用することができる。補助化合物には、一例として、セロトニンアンタゴニストなどの制吐剤、並びにフェノチアジン、置換されたベンズアミド、抗ヒスタミン、ブチロフェノン、コルチコステロイド、ベンゾジアゼピン及びカンナビノイドなどの治療;ゾレドロン酸及びパミドロン酸などのビスフォスフォネート;並びにエリスロポエチン及びG−CSFなどの造血系増殖因子、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチム及びダルベポエチンが含まれ得る。
【0148】
別の実施形態では、可能な限り多くの阻害的KIR遺伝子産物の阻害的効果を中和するために、異なる交叉反応性を有する本発明の二以上の抗体(NKVSF1を含む。)を、単一の組成物中に組み合わせることができる。本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体又はそれらの断片若しくは誘導体の組み合わせを含む組成物は、単一の交叉反応抗体によって認識される各疎外的KIR遺伝子産物を欠如することがある、僅かなパーセントのヒト集団に存在する可能性があるので、さらに広く使用することが可能であろう。同様に、本発明の抗体組成物は、単一の阻害的KIRサブタイプを認識する一又は複数の抗体をさらに含み得る。このような組み合わせも、治療的な場面で、さらに広い用途を提供するであろう。
【0149】
本発明は、NK細胞活性を増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、前記患者中のNK細胞活性を増強する方法も提供する。本方法は、より具体的には、増加したNK細胞活性が有益であり、NK細胞による溶解に対して感受性のある細胞によって生じ、影響を受け、若しくは引き起こされ、又は不十分なNK細胞活性によって引き起こされ、若しくは不十分なNK細胞活性を特徴とする疾病(癌、その他の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫疾患など)を有する患者中のNK細胞活性を増加させることに向けられる。より具体的には、本発明の方法は、癌腫(膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺及び皮膚の癌腫を含み、扁平上皮癌を含む。);リンパ系の造血系腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burketts)リンパ腫を含む。);骨髄細胞系列の造血系腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む。);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫及び横紋筋肉腫を含む。);他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫及び神経膠腫を含む。);中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む。);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む。);並びにその他の腫瘍(黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌を含む。)を含む(これらに限定されない。)、様々な癌及び他の増殖性疾患の治療のために使用される。
【0150】
本発明によって治療することができる好ましい疾患には、リンパ系統の造血系腫瘍(例えば、小細胞及び脳細胞タイプのものを含む、T前リンパ球性白血病(T−PLL);大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、好ましくはT細胞タイプのもの;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/後胸腺T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球型;及びリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)などのT細胞疾患を含む(これらに限定されない。)、T細胞及びB細胞腫瘍)が含まれる。
【0151】
例えば、過形成、繊維症(特に肺繊維症、腎繊維症などその他の種類の繊維症)、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化、及び血管中の平滑筋増殖(血管形成術後の狭窄又は再狭窄など)を含む、その他の増殖性疾患も、本発明に従って治療することができる。本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体は、好ましくはウイルス、細菌、原虫、カビ又は真菌によって引き起こされる任意の感染症を含む、感染性疾患を治療又は予防するために使用することができる。このようなウイルス性感染性生物には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI(HSV−1)、単純疱疹ウイルス2(HSV−1)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス(huntavirus)、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス及びヒト免疫不全症候群ウイルスI型又は2型(HIV−1、HIV−2)が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
本発明に従って治療することができる細菌性感染症には、以下のもの:ブドウ球菌(Staphylococcus);連鎖球菌(Streptococcus)(S. pyogenesを含む。);腸球菌(Enterococcl);棹菌(Bacillus)(Bacillus anthracis及びLactobacillusを含む。);リステリア菌(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);ガルドネレラ属(Gardnerella)(G. vaginalisを含む。);ノカルジア菌(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponema);カンピロバクター菌(Camplyobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)(Raeruginosaを含む。);レジオネラ(Legionella);ナイセリア(Neisseria)(N.gonorrhoea及びN.meningitidesを含む。);フラボバクテリウム(Flavobacterium)(F. meningosepticum及びF. odoraturnを含む。);ブルセラ(Brucella);ボルデテラ(Bordetella)(B. pertussis及びB. bronchisepticaを含む。);エシェリキア属(Escherichia)(E. coliを含む)、クレブシエラ菌(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)(S. marcescens及びS. liquefaciensを含む。);エドワードシエラ属(Edwardsiella);プロテウス属(Proteus)(including P. mirabilis及びP. vulgarisを含む。);ストレプトバシラス属(Streptobacillus);リケッチア科(Rickettsiaceae)(R. fickettsfiを含む。)、クラミジア(Chlamydia)(C. psittaci及びC. trachornatisを含む。);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(M. tuberculosis, M. intracellulare、M. folluiturn、M. laprae、M. avium、M. bovis、M. africanum、M. kansasii、M. intracellulare及びM. lepraernuriumを含む。); 及びノカルジア(Nocardia)によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
本発明に従って治療され得る原虫感染症には、リーシュマニア、コクジディオア(kokzidioa)及びトリパノソーマによって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。感染性疾患の完全なリストは、疾病対策センター(CDC)にある国立感染症センター(NCID)のホームページ上に記載されており(http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/)、このリストは、参照により、本明細書に組み込まれる。前記疾病の全てが、本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体を用いた治療の候補である。
【0154】
様々な感染性疾患を治療するこのような方法は、単独で、又は他の処置及び/又はこのような疾病を治療することが知られている治療剤(抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗生物質、抗寄生虫剤及び抗原虫剤を含む。)と組み合わせて、本発明の抗体組成物を使用することができる。これらの方法が、追加の治療剤を用いた追加の処置を含む場合には、これらの治療剤は、単一剤形として、又は別個の複数剤形として、本発明の抗体とともに投与することができる。別個の剤形として投与されるときには、前記追加の治療剤は、本発明の抗体の投与の前、同時、後に投与することができる。
【0155】
本発明のさらなる側面及び利点は、以下の実験の部に開示されている。以下の実験の部は例示であり、本願の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0156】
<実施例1>
PBLの精製及びポリクローナル又はクローナルNK細胞株の作製
PBLは、Ficoll Hypaqueグラジエント及びプラスチック接着細胞の枯渇によって、健康なドナーから得た。濃縮されたNK細胞を得るために、抗CD3、抗CD4及び抗HLA−DR mAb(4℃で30分)とともにPBLをインキュベートした後、ヤギ抗マウス磁気ビーズ(Dynal)(4℃で30分)とともにインキュベートし、当該技術で公知の方法によって免疫磁気選択を行った(Pende et al.,1999)。放射線照射された支持細胞、及び100U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1.5ng/mL フィトヘマグルチニンA(Gibco BRL)上でCD3−、CD4−、DR−細胞を培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。限界希釈によって、NK細胞をクローニングし、細胞表面受容体の発現について、フローサイトメトリーにより、NK細胞のクローンの特性を決定した。
【0157】
使用したmAbは、JT3A(IgG2a、抗CD3)、EB6及びGL183(それぞれ、IgG1抗KIR2DL1及びKIR2DL3)、XA−141 IgM(EB6と同一の特異性を有する抗KIR2DL1)、抗CD4(HP2.6)及び抗DR(D1.12、IgG2a)であった。出願人によって作製されたJT3A、HP2.6及びDR1.12の代わりに、同一の特異性を有する市販のmAbを使用することができる(Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)。EB6及びGL183は、市販されている(Beckman Coulter Inc., Fullerton,CA)。XA−141は市販されていないが、既述のように、溶解の対照再生用として、EB6を使用することができる(Moretta et al.,1993)。
【0158】
適切な抗体(4℃で30分)により、細胞を染色した後、PE又はFITC抱合ポリクローナル抗マウス抗体(Southern Biotechnology Associates Inc)によって染色した。FACSAN装置(Becton Dickinson, Mountain View, CA)での細胞蛍光測定分析によって、試料を分析した。
【0159】
本研究では、以下のクローンを使用した。CP11、CN5及びCN505は、KIR2DL1陽性クローンであり、EB6(IgG1抗KIR2DL1)又はXA−141(EB6抗体と比べて同一の特異性を有するIgM抗KIR2DL1)によって染色され、CN12及びCP502は、KIR2DL3陽性クローンであり、GL183抗体(IgG1抗KIR2DL3)によって染色される。
【0160】
NKクローンの細胞溶解活性は、NK細胞溶解に対して感受性があることが知られているCw3又はCw4陽性細胞株に対してエフェクターNK細胞を検査する、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。全ての標的は、マイクロタイタープレート中、5000細胞/ウェルで使用した。エフェクター:標的の比は、図に記されている(通常は、4エフェクター/標的細胞)。1/2希釈の表記モノクローナル抗体の上清を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。手順は、(Moretta et al.,1993)に記載されているものと実質的に同じであった。
【0161】
<実施例2>
新しいmAbの作製
(Moretta et al., 1990)に記載されているように、活性化されたポリクローナル又はモノクローナルNK細胞株で、5週齢のBalb Cマウスを免疫することによって、mAbを作製した。異なる細胞融合の後、まず、EB6及びGL183陽性NK細胞株及びクローンと交叉反応する能力について、MAbを選択した。さらに、それぞれ、Cw4又はCw3陽性標的のEb6陽性又はGL183陽性NKクローンによって、溶解を再生する能力について、陽性モノクローナル抗体のスクリーニングを行った。
【0162】
細胞の染色は、以下のように行った。抗体のパネル(1μg/mL又は50μL上清、4℃で30分)で細胞を染色し、続いて、PE抱合ヤギF(ab’)2断片抗マウスIgG(H+L)又はPE抱合ヤギF(ab’)2断片抗ヒトIgG(Fcγ)抗体(Beckman Coulter)で染色した。細胞蛍光測定分析は、Epics XL.MCL装置(Beckman Coulter)で行った。
【0163】
モノクローナル抗体のうちの一つ、DF200 mAbは、KIR2DL1、KIR2DL2/3を含む、KIRファミリーの様々なメンバーと反応することが明らかとなった。KIR2DL1+及びKIR2DL2/3+ NK細胞の両方が、DF200mAbで明るく染色された(図1)。
【0164】
これらのHLAクラスI特異的な阻害的受容体の一方又は他方(又は、ある場合には両方)を発現するNKクローンを、一または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した。細胞毒性アッセイは、以下のように行った。YTS−KIR2DL1又はYTS−Eco細胞株の細胞溶解活性は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。エフェクター細胞は、HLA−Cw4陽性又は陰性EBV細胞株及びHLA−Cw4をトランスフェクトされた721.221細胞に対して検査された。全ての標的は、マイクロタイタープレート中、3000細胞/ウェルで使用した。エフェクター/標的比は、図に記されている。モノクローナルマウス又はヒト抗体の表記完全長又はF(ab’)2断片を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。予想通り、KIR2DL1+ NKクローンは、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対して細胞溶解活性をほとんど示さず、KIR2DL3+ NKクローンは、Cw3陽性標的に対して、殆ど又は全く活性を示さなかった。しかしながら,DF200mAb(NKクローンのKIR2DL受容体を遮蔽するために使用された。)の存在下では、NKクローンはそれらのHLA−Cリガンドを認識することが不可能となり、Cw3又はCw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。
【0165】
例えば、C1R細胞株(CW4+ EBV細胞株、ATCCn°CRL 1993)は、KIR2DL1+ NKクローン(CN5/CN505)によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200又は従来の抗KIR2DL1 mAbのうち何れかの使用によって、効率的に元に戻すことができた。これに対して、KIR2DL2/3+ KIR2DL1−表現型を発現するNKクローン(CN12)は、C1R細胞を効率的に死滅させ、この死滅は、DF200mAbによって影響を受けなかった(図2)。Cw3陽性標的に対してKIR2DL2−又はKIR2DL3−陽性NKクローンを用いた場合にも、同様の結果が得られる。
【0166】
同様に、Cw4+221 EBV細胞株は、KIR2DL1+トランスフェクトNK細胞によって死滅されなかったが、DF200、DF200 Fab断片又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6若しくはXA141の何れかを使用することによって、効率的に阻害を元に戻すことができた。また、Cw3+221 EBV細胞株は、KIR2DL2+NK細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200又はDF200 Fab断片のうち何れかを使用することによって元に戻すことができた。最後に、後者のCw3+221EBV細胞株は、KIR2DL3+NK細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200 Fab断片又は従来の抗KIR2DL3 mAb GL183若しくはY249の何れかを使用することによって、元に戻すことができた。結果を図3に示す。
【0167】
Cw4陽性標的の溶解を再生する能力について、F(ab’)2断片も検査した。DF200及びEB6 AbsのF(ab’)2断片は何れも、Cw4をトランスフェクトされた221細胞株及びCw4+TUBO EBV細胞株の、KIR2DL1−トランスフェクトNK細胞による溶解の阻害を回復させることができた。結果を図4に示す。
【0168】
<実施例4>
新しいヒトmAbの作製
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを、組換えKIRタンパク質で免疫することによって、ヒトモノクローナル抗KIR Abを作製した。異なる細胞融合の後、まず、固定されたKIR2DL1及びKIR2DL2タンパク質と交叉反応する能力について、MAbを選択した。1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1を含む数個のモノクローナル抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3と反応しないことが見出された。
【0169】
さらに、Cw4陽性標的細胞のKIR2DL1を発現するEB6陽性NK形質移入体による溶解を再生する能力について、陽性モノクローナル抗体のスクリーニングを行った。HLAクラスI特異的な阻害的受容体を発現するNK細胞を、一または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した(図5及び6)。細胞毒性アッセイは、上記のように行った。エフェクター/標的比は、図に記されており、抗体は10μg/mL又は30μg/mLの何れかで使用した。
【0170】
予想通り、KIR2DL1+ NK細胞は、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対する細胞溶解活性を殆ど示さなかった。しかしながら,1−7F9 mAbの存在下では、NK細胞はそれらのHLA−Cリガンドを認識することが不可能となり、Cw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。例えば、検査した2つの細胞株(HLA−Cw4トランスフェクト721.221及びCW4+EBV細胞株)は、KIR2DL1+ NKクローン細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、Mab 1−7F9又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6のうち何れかを使用することによって、効率的に元に戻すことができた。Abs DF200及びpanKIR(NKVSF1とも表記される。)を1−7F9と比較した。これに対して、抗体1−4F1、1−6F5及び1−6F1は、Cw4陽性標的に対する、NK細胞による細胞溶解を再生することができなかった。
【0171】
<実施例5>
DF200 mAb/KIR2DL1及びDF200 mAb/KIR2DL3相互作
用のBiacore分析
組換えタンパク質の作製と精製
KIR2DL1及びKIR2DL3組換えタンパク質を、E.コリ中で作製した。以下のプライマーを用いて、それぞれ、pCDM8クローン47.11ベクター(Biassoni et al, 1993)及びRSVS(gpt)183クローン6 ベクター(Wagtman et al, 1995)から、KIR2DL1及びKIR2DL3の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、PCRによって増幅した。
【0172】
センス::5’−GGAATTCCAGGAGGAATTTAAAATGCATGAGGGAGTCCACAG−3’
アンチセンス:5’−CGGGATCCCAGGTGTCTGGGGTTACC−3’
ビオチン化シグナルをコードする配列とともに、それらをpML1発現ベクター中にイ
ンフレームにクローニングした(Saulquin et al, 2003)。
【0173】
タンパク質発現は、BL21(DE3)細菌株(Invitrogen)の中で行った。アンピシリン(100μg/mL)を補充した培地中にて、37℃で、OD600=0.6になるまで、トランスフェクトされた細菌を増殖させ、1mM IPTGで発現を誘導した。
【0174】
変性条件下(8M尿素)で、タンパク質を封入体から回収した。組換えタンパク質の再折り畳みは、6段階の透析で尿素濃度を減少させることによって(それぞれ、4、3、2、1、0.5 及び0Mの尿素)、室温で、L−アルギニン(400 mM, Sigma)及びβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20 mM Tris, pH 7.8、NaCl 150 mM緩衝液中において行った。0.5及び0Mの尿素透析工程の間に、還元されたグルタチオン及び酸化されたグルタチオン(それぞれ、5mM及び0.5mM、Sigma)を添加した。最後に、10 mM Tris, pH 7.5、NaCl 150 mM緩衝液に対して、タンパク質を徹底的に透析した。再折り畳みされた可溶性タンパク質を濃縮し、次いで、Superdex 200サイズ排除カラム(Pharmacia; AKTA system)上で精製した。
【0175】
表面プラズモン共鳴測定は、Biacore装置(Biacore)によって行った。全てのBiacore実験では、0.05%の界面活性剤P20を補充したHBS緩衝液が、ランニングバッファーとしての役割を果たした。
【0176】
タンパク質の固定
上記のように作製された組換えKIR2DL1及びKIR2DL3タンパク質を、Sensor Chip CM5(Biacore)上にあるデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合により固定した。センサーチップの表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド及びN−ヒドロキシスクシンイミド、Biacore)で活性化した。カップリング緩衝液(10mM 酢酸塩、pH4.5)中のタンパク質を注入した。残存する活性化された基の非活性化は、100mM エタノールアミン pH8(Biacore)を用いて実施した。
【0177】
親和性測定
速度論の測定のために、様々な濃度の可溶性抗体(1×10−7から4×10−10M)を、前記固定された試料上に与えた。測定は、20μL/分の継続的な流速で実施した。各サイクルについて、センサーチップの表面、5μL注入の10mM NaOH pH11によって再生した。データ解析には、BIAlogue Kinetics Evaluation program (BIAevaluation 3.1, Biacore)を使用した。可溶性検体(様々な濃度で40μL)を、20μL/分の流速で、HBS緩衝液中、それぞれ、500又は540反射ユニット(RU)及び1000又は700RUのKIR2DL1及びKIR2DL3を含有するデキストラン層上に注入した。データは、6つの独立した実験を代表するものである。結果を下表1に示す。
【0178】
表1 固定されたKIR2DL1及びKIR2DL3に結合するDF200 mAbの
BIAcore分析
【表1】
【0179】
KD:解離定数
【0180】
<実施例6>
マウス及びヒト抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
以前に記載されたとおりに(Gauthier et al 1999, Saunal and van Regenmortel 1995)、マウス抗KIR 2D抗体DF200、Pan2D、gl183及びEB6並びにヒト抗KIR2D抗体1−4F1、1−6F5及び1−7F9を用いて、固定されたKIR 2DL1(900 RU)、KIR 2DL3(2000 RU)及びKIR 2DS1(1000 RU)に対して、エピトープマッピング分析を行った。
【0181】
全ての実験は、15μg/mLで様々な抗体を2分間注入し、HBS緩衝液中、5μL/分の流速で行った。抗体の各対に対して、競合結合分析を2段階で実施した。第一段階では、KIR 2D標的タンパク質上に第一のモノクローナル抗体(mAb)を注入した後、(第一のmAbを除去せずに)第二のmAbを注入し、第二のmAbのRU値(RU2)をモニターした。第二段階では、まず、裸のKIR 2Dタンパク質上に第二のmAbを直接注入し、mAb RU値(RU1)をモニターした。第一のmabによる、KIR 2Dタンパク質への第二のmAbの結合のパーセント阻害を、100*(1−RU2/RU1)によって計算した。
【0182】
結果を表2、3及び4に示す。表2、3及び4において、「第一の抗体」と表記される抗体が縦の欄に列記されており、「第二の抗体」が横の欄に列記されている。検査した各抗体の組み合わせについて、チップへの抗体の直接結合レベル(RU)の値が表中に列記されている。表中では、第二の抗体のKIR2Dチップへの直接結合が欄の上部に列記されており、第一の抗体が存在する際の、KIR2Dチップへの第二の抗体の結合に対する値が欄の下部に列記されている。各欄の右側に列記されているのは、第二の抗体結合のパーセント阻害である。表2は、KIR2DL1チップ上への結合を示しており、表3は、KIR2DL3チップへの抗体の結合を示しており、表4は、KIR2DS1チップへの抗体の結合を示している。
【0183】
固定されたKIR2DL1、KIR2DL2/3及びKIR2DS1への、マウス抗体DF200、NKVSF1及びEB6並びにヒト抗体1−4F1、1−7F9及び1−6F1の競合結合を評価した。KIR2DL1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図7)は、(a)抗体1−7F9がEB6及び1−4F1と競合するが、NKVSF1及びDF200とは競合しないこと、(b)次に、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1及び1−7 F9と競合すること; (c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。KIR2DL3への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図8)は、(a)1−4F1がNKVSF1、DF200、gl183及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9がDF200、gl183及び1−4F1と競合するが、NKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びGL183と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及び1−7F9と競合するが、GL183とは競合しないことを、示した。KIR2DS1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図9)は、(a)抗体1−4F1がNKVSF1、DF200及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9は、1−4F1と競合するが、DF200及びNKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。
【0184】
<実施例7>
カニクイザルNK細胞を用いた抗KIR mAb滴定
カイクイザルから得られたNK細胞への結合能について、抗KIR抗体NKVSF1を検査した。サルのNK細胞への抗体の結合が図10に示されている。
【0185】
サルPBMCの精製及びポリクローナルNK細胞バルクの作製
カニクイザルのPBMCを Sodium citrate CPTチューブ(Becton Dickinson)から調製した。NK細胞の精製は、陰性の枯渇によって行った(Macaque NK cell enrichment kit, Stem Cell Technology)。放射線照射されたヒト支持細胞、300U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1ng/mL フィトヘマグルチニンA(Invitrogen, Gibco)上でNK細胞を培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。
【0186】
カニクイザルNK細胞を用いたPan2D mAb滴定
カニクイザルNK細胞(NKバルク16日)を異なる量のPan2D mAbとともにインキュベートし、続いて、PE抱合されたヤギ(Fab’)2断片抗マウスIgG(H+L)抗体とともにインキュベートした。陽性細胞のパーセントは、アイソタイプ対照(精製されたマウスIgG1)を用いて決定した。試料は、二つ組みで行った。平均蛍光強度=MFI。
【表2】
【表3】
【表4】
【0187】
<実施例8>
KIR2DL1へのDF200及びpan2D結合のエピトープマッピング それらの公表されている結晶構造(Maenaka et. al. (1999), Fan et al. (2001), Boyington et al. (2000))に基づく、KIR2DL1、−2及び−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1及びKIR2DL1−3交叉反応性マウスモノクローナル抗体(mAb)DF200とpan2Dとの相互作用において、アミノ酸R1311が関与していることを予想した(1:一文字アミノ酸コード)。これを確かめるために、ヒトFc(hFc)に融合されたKIR2DL1(野生型又は点変異されたもの(例えば、R131W2))の完全な細胞外ドメイン(アミノ酸H1−H224)からなる融合タンパク質を調製した(2:KIR2DL1中の(N末端から)131位のアミノ酸におけるRのWへの置換)。様々なKIR2DL1−hFc融合タンパク質を作製し、評価するために使用した材料と方法は、既に記載されている(Winter and Long (2000))。要約すると、野生型KIR2DL1−hFcの作製用に公表されているcDNA−ベクターであるCL42−Ig(Wagtmann et al. (1995))を、PCRを用いて変異導入(Quickchange II,Promega)することによって、KIR2DL1(R131W)−hFcをコードするcDNAベクターを作製した。実質的に記載のとおり((Wagtmann et al.1995))、COS7細胞中でKIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcを産生させ、組織培地から単離した。それらが正しく折りたたまれたかどうかを調べるために、HLA−Cw3(KIR2DL1リガンドなし)又はHLA−Cw4(KIR2DL1リガンド)の何れかを発現するLCL721.221細胞とともに、KIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcをインキュベートし、KIR−Fc融合タンパク質と細胞間の相互作用をFACS(細胞表面でのタンパク質の相互作用を調べるための標準的な技術)によって分析した。独立した実験の例が、図11、パネルAに記されている。文献から予測されたように、KIR2DL1−hFc融合は何れも、LCL721.221細胞を発現するHLA−Cw3を結合しなかった。これに対して、KIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcは何れも、LCL721.221細胞を発現するHLA−Cw4に結合し、これにより、それらの折り畳みが正しいことが確認された。
【0188】
KIR2DL1(R131W)−hFc及びKIR2DL1−hFcの、KIR特異的mAb(DF200、pan2D、EB6及びGL183)への結合は、タンパク質の相互作用を調べるための標準的な技術であるELISAを用いて調べた。要約すると、ヤギ抗ヒト抗体を介して、KIR2DL1(R131W)−hFc及びKIR2DL1−hFcを96ウェルプレートに連結した後、KIR特異的mAbを様々な濃度(PBS中、0−1μg/mL)で添加した。KIR2DL1−hFc変異形とmAb間の相互作用は、TMB基質を変換するためにマウス抗体に対して特異的なペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いた、分光光度法(450nm)によって可視化した。独立した実験の例が、図11、パネルBに記されている。KIR2DL2−3特異的mAb GL183が、何れのKIR2DL1−hFc融合タンパク質にも結合できなかったのに対して、KIR2DL1特異的mAbであるEB6、DF200及びpan2Dは、用量依存的に、KIR2DL1−hFc変異形に結合した。単一の点変異(R131W)は、DF200及びpan2Dの結合に影響を及ぼし、最高濃度のmAb(1μg/mL)での、野生型の約10%と比べて、結合が減少しており、R131が、KIR2DL1の細胞外ドメイン2の中で、DF200及びpan2Dの結合部位の一部であることが確認された。
【参考文献】
【0189】
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Pende, D., Parolini, S., Pessino, A., Sivori, S., Augugliaro, R., Morelli, L., Marcenaro, E., Accame, L., Malaspina, A., Biassoni, R., et al. (1999). Identification and molecular characterization of NKp30, a novel triggering receptor involved in natural cytotoxicity mediated by human natural killer cells. J Exp Med 190, 1505-1516.
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Boyington JC; Motyka SA; Schuck P; Brooks AG; Sun PD. Nature, Vol. 405 (6786) pp. 537-543 (2000)
Fan QR; Long EO; Wiley DC. Nature immunology, Vol. 2 (5) pp. 452-460 (2001)
Maenaka K; Juji T; Stuart DI; Jones EY. Structure with Folding and design, Vol. 7 (4) pp. 391-398 (1999)
Wagtmann N; Rajagopalan S; Winter CC; Peruzzi M; Long EO. Immunity, Vol. 3 (6) pp. 801-809 (1995)
Winter CC; Long EO. Natural Killer Cells Protocols (edited by Campbell KS and Colonna M). Human Press. pp. 219-238 (2000)。
【0190】
公報、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用された全ての参考文献は、各参考文献が個別的且つ具体的に参照により援用され、その全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0191】
本明細書で使用されている全ての見出し及び小見出しは、便宜的に使用されているものにすぎず、いかなる意味においても、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0192】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、考えられる全ての変形における上記要素のあらゆる組み合わせが、本発明によって包含される。
【0193】
本発明を記載する際に使用される「a」及び「an」及び「the」という用語及び類似の指示記号は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、単数及び複数の両方を包含するものと解釈しなければならない。
【0194】
本明細書において値の範囲を引用することは、当該範囲に含まれる各別の値を個別的に表すための簡略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、本明細書中に別段の記載がなければ、各個別の値は、本明細書に個別的に記載されている場合と同様に、明細書中に取り込まれる。別段の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての正確な値は、対応する近似値を代表している(例えば、具体的な因子又は測定に関して記載されている全ての正確な典型値は、適宜、「約」と修飾される、対応する近似的測定も表すと考えることができる。)。
【0195】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。
【0196】
本明細書に記載されている、全てのあらゆる例又は例示的言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をさらに明瞭にすることを意図したものにすぎず、別段の記載がなければ、本発明の範囲に限定を加えるものではない。明示の記載がなければ、本明細書中の言語は、何らかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示唆するものと解釈すべきでない。
【0197】
本明細書中の特許文書の引用及び援用は、便宜のために行っているものにすぎず、かかる特許文書の妥当性、特許性及び/又は法的効力の観点を反映するものではない。
【0198】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、ある要素に関して「含む」、「有する」、「含む」又は「含有する」などの用語を使用して、本発明の任意の側面又は実施形態を本明細書で記載することは、当該要素「からなる」、「実質的に〜からなる」、「実質的に〜を含む」本発明の類似の側面又は実施形態に対する支持を与えることを意図するものである(例えば、ある要素を含むと本明細書に記載されている組成物は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、その要素からなる組成物も記載するものとして理解すべきである。)。
【0199】
本発明は、本明細書に提示されている前記側面又は特許請求の範囲に記載されている主題のあらゆる修飾及び均等物を、適用法によって許容される最大限度まで含む。
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞の細胞表面上に存在する2以上の阻害的受容体と交叉反応し、哺乳類対象又は生物試料中のNK細胞の細胞毒性を増強する抗体、抗体断片及びそれらの誘導体に関する。本発明は、かかる抗体、断片、変異形及び誘導体を作製する方法、かかる抗体、断片、変異形及び誘導体を含む薬学的組成物、並びにかかる分子及び組成物の使用、特に対象中のNK細胞活性又は細胞毒性を増加させるための治療におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、リンパ球の亜集団であり、非従来的免疫に関与する。NK細胞は、血液試料、白血球/顆粒球除去療法、収集物などから、当該技術において公知の様々な技術によって取得することができる。
【0003】
NK細胞の特徴及び生物学的特性には、CD16、CD56及び/又はCD57などの表面抗原の発現;細胞表面上に、α/β又はγ/δTCR複合体が存在しないこと;「自己」MHC/HLA抗原を発現していない細胞に結合し、特異的な細胞溶解酵素を活性化することによって、これを死滅させることができること;NK活性化受容体−リガンドを発現する腫瘍細胞又はその他の異常細胞を死滅させることができること;免疫応答を刺激又は阻害するサイトカインを放出することができること;並びに複数回の細胞分裂を行って、親細胞と類似の生物特性を有する娘細胞を産生できること、が含まれる。本発明において、「活性な」NK細胞とは、生物学的に活性なNK細胞を表し、より具体的には、標的細胞を溶解させる能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、且つ「自己」MHC/HLA抗原を発現していない細胞(KIR非適合性細胞)を死滅させることができる。
【0004】
それらの生物学的特性に基づいて、NK細胞の調節に依拠した様々な治療及びワクチン戦略が当該技術において提案されている。しかしながら、NK細胞の活性は、刺激信号と阻害信号の両方が関与する複雑な機序によって制御される。従って、NK細胞によって媒介される有効な療法には、これらの細胞の刺激と阻害信号の中和がともに必要となり得る。
【0005】
NK細胞は、主要組織適合複合体(MHC)クラスI特異的阻害受容体によって、負の制御を受けている(Karre et al., 1986;Ohlen et al., 1989)。これらの特異的受容体は、MHCクラスI分子の多型性決定基又は他の細胞上に存在するHLAに結合し、NK細胞の溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と称される受容体ファミリーに属するメンバーの一部が、HLAクラスI対立遺伝子の群を認識する。
【0006】
KIRは、NK細胞を含む、リンパ球のサブセットの一部に存在する受容体の巨大なファミリーである。KIRの命名は、細胞外ドメイン(KIR2D又はKIR3D)の数及び細胞質尾部が長い(KIR2DL又はKIR3DL)か、又は短い(KIR2DS又はKIR3DS)どうかに基づいている。ヒトの中では、特定のKIRの有無は、単一固体中に存在するNK集団内で、NK細胞ごとに変動し得る。ヒト集団内では、KIR分子の多型性レベルも比較的高く、ある種のKIR分子は一部の個体に存在するが、全ての個体に存在するわけではない。ある種のKIR遺伝子産物は、適切なリガンドに結合したときに、リンパ球活性の刺激を引き起こす。確認されている刺激性KIRは全て、免疫刺激モチーフ(ITAM、immunostimulatory motif)を有するアダプター分子と会合する、帯電した膜貫通残基を有する短い細胞質尾部を有している。他のKIR遺伝子産物は、性質上、阻害的である。確認された阻害性KIRは全て、長い細胞質尾部を有しており、KIRのサブタイプに応じて、HLA抗原の異なるサブセットと相互作用するようである。阻害的KIRは、ホスファターゼを動員する一又は数個の阻害的モチーフを、それらの細胞質内部分の中に提示する。公知の阻害的KIR受容体には、KIR2DLとKIR3DLサブファミリーのメンバーが含まれる。2つのIgドメイン(KIR2D)を有するKIR受容体は、HLA−Cアロタイプ:KIR2DL2(以前は、p58.2と表記されていた。)を特定し、又は密接に関連する遺伝子産物KIR2DL3はグループ2 HLA−Cアロタイプ(Cw1、3、7及び8)によって共有されるエピトープを認識するのに対して、KIR2DL1(p58.1)は、相反性のグループ1 HLA−Cアロタイプ(Cw2、4、5及び6)によって共有されるエピトープを認識する。KIR2DL1による認識は、HLA−C対立遺伝子の80位に位置するLys残基の存在によって支配されている。KIR2DL2及びKIR2DL3の認識は、80位に位置するAsn残基の存在によって支配されている。重要なことは、HLA−C対立遺伝子の大部分は、80位にAsn又はLys残基の何れかを有しているということである。3つのIgドメインを有するKIDの1つ、KIR3DL1(p70)は、HLA−Bw4対立遺伝子によって共有されるエピトープを認識する。最後に、3つのIgドメインKIR3DL2を有する分子のホモ二量体(p140)は、HLA−A3及びーA11を認識する。
【0007】
阻害的KIRとその他のクラスI阻害的受容体(Moretta et al, 1997;Valiante et al, 1997a;Lanier, 1998)が、NK細胞によって同時発現される場合があり得るが、任意の特定の個体のNKレパートリーでは、単一のKIRを発現する細胞が存在するので、対応するNK細胞は、特定のクラスI対立遺伝子グループを発現する細胞によってのみ遮断される。
【0008】
KIRがミスマッチであるNK細胞集団又はクローン(すなわち、宿主のHLA分子と適合しないKIRを発現するNK細胞の集団)は、同種異系間移植で見られる移植片抗白血病効果の媒介因子である可能性が最も高いことが示されている(Ruggeri et al.,2002)。ある個体で、この効果を再現する一つの方法は、KIR/HLA相互作用を遮断する試薬を使用することであろう。
【0009】
KIR2DL1に対して特異的なモノクローナル抗体は、KIR2DL1のCw4(などの)対立遺伝子との相互作用を遮断することが示されている(Moretta et al., 1993)。KIR2DL2/3に対するモノクローナル抗体は、KIR2DL2/3のHLACw3(などの)対立遺伝子との相互作用を遮断することも記載されている(Moretta et al., 1993)。しかしながら、臨床の現場でこのような試薬を使用するためには、所定の患者がクラス1又はクラス2 HLA−C対立遺伝子の何れを発現しているかに関わらず、全ての患者を治療するために、2つの治療用mAbを開発することが必要であろう。さらに、何れの治療用抗体を使用するかを決定する前に、各患者が発現しているHLA型を予め決定しなければならないため、治療の費用がずっと高くなるであろう。
【0010】
「Watzl et al., Tissue Antigens, 56, p.240(2000)」は、KIRの複数のイソタイプを認識する交叉反応抗体を作製したが、それらの抗体は、NK細胞活性の増強を引き起こさなかった。「G.M. Spaggiara et al., Blood, 100, pp. 4098-4107 (2002)」は、様々なKIRに対する数多くのモノクローナル抗体を用いて実験を行った。それらの抗体の一つNKVSF1は、CD185a(KIR2DL1)、CD158b(KIR2DL2)及びp50.3(KIR2DS4)の共通エピトープを認識すると述べられている。NKVSF1はNK細胞活性を増強できることは示唆されておらず、治療用に使用できることも示唆されていない。従って、NK細胞活性の調節における実際的且つ効果的なアプローチは、当該技術において、これまで使用することはできず、特異的試薬を用いたHLA対立遺伝子特異的介入がなお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、NK細胞の活性化における現行の問題を克服する新規抗体、組成物及び方法を提供し、さらなる有利な特徴及び利点を提供する。一つの典型的な側面において、本発明は、実質的に全てのヒトにおいて、ヒトNK細胞の活性化を促進する単一の抗体を提供する。より具体的には、本発明は、様々な阻害的KIR群と交叉反応し、それらの阻害的シグナルを中和して、このような阻害的KIR受容体を発現するNK細胞中で、NK細胞の細胞毒性の増強をもたらす、新規な特異的抗体を提供する。本発明の抗体は、このように複数のKIR遺伝子産物と交叉反応できるので、ヒト対象のHLAタイプを予め決定する負担又は支出なしに、ほとんどのヒト対象においてNK細胞活性を増加させるために効果的に使用することができる。
【0012】
第一の側面において、本発明は、NK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的KIR受容体と交叉反応し、NK細胞の阻害的シグナルを中和し、NK細胞の活性を増強する抗体、抗体の断片及びそれらのうち何れかの誘導体を提供する。より好ましくは、前記抗体は、ヒトKIR2DL受容体の共通の決定基を結合する。さらに具体的には、本発明の抗体は、少なくともKIR2DL1、KIR2DL2及びKIR2DL3受容体を結合する。本発明において、「KIR2DL2/3」という用語は、KIR2DL2及びKIR2DL3受容体の一方又は両方を表す。これらの2つの受容体は、極めて高い相同性を有し、おそらく、同一遺伝子の対立遺伝子形態であると思われ、当該技術によって、互換的であると考えられる。従って、KIR2DL2/3は、本発明において、単一の阻害的KIR分子であると考えられるので、KIR2DL2及びKIR2DL3のみと交叉反応し、他の阻害的KIR受容体とは交叉反応しない抗体は、本発明の範囲に属しない。
【0013】
本発明の抗体は、少なくとも2つの阻害的KIR受容体へのMHC又はHLA分子の結合を特異的に阻害し、NK細胞活性を促進する。両活性は、本明細書において使用される、「KIRの阻害的活性を中和する」という用語によって推定される。本発明において、「NK細胞活性を促進する」、「NK細胞の細胞毒性を促進する」、「NK細胞を促進する」、「NK細胞活性を増強する」、「NK細胞の細胞毒性を促進する」又は「NK細胞を増強する」本発明の抗体の能力とは、本発明の抗体によって、表面上に阻害的KIR受容体を発現しているNK細胞が、当該阻害的KIR受容体に対応するリガンド(例えば、特定のHLA抗原)を表面上に発現する細胞を溶解させ得ることを意味する。特定の側面において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3受容体へのHLA−C分子の結合を特異的に阻害する抗体を提供する。別の具体的な側面において、本発明は、NK細胞活性をインビボで促進する抗体を提供する。
【0014】
少なくとも約90%のヒト集団に、KIR2DL1又はKID2DL2/3のうち少なくとも一つが存在するので、本発明のより好ましい抗体は、HLA−Cアロタイプ関連細胞のほとんど(それぞれ、グループ1 HLA−Cアロタイプと、グループ2 HLA−Cアロタイプ)に対して、NK細胞活性を促進することができる。このため、本発明の組成物は、ほとんどのヒト個体において、典型的には、約90%以上のヒト個体において、NK細胞を効果的に活性化し、又は増強するために使用することができる。従って、本発明に係る単一の抗体組成物をほとんどのヒト対象を治療するために使用することができ、対立遺伝子群を決定し、又は抗体カクテルを使用する必要はめったにない。
【0015】
本発明は、阻害的KIRに対して交叉反応し、阻害的KIRを中和する抗体を作製することができ、このような抗体は、幅広い範囲のヒトの群で、NK細胞を効果的に活性化できることを初めて実証する。
【0016】
このため、本発明の具体的な目的は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3 ヒト受容体の両方を特異的に結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させる抗体に存する。一実施形態において、前記抗体は、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200と競合する。場合によっては、抗体DF200と競合する前記抗体は、抗体DF200自体ではない。
【0017】
別の実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体NKVSF1と競合し、必要に応じて、抗体NKVSF1と競合する前記抗体は抗体NKVSF1でない。
【0018】
別の実施形態において、前記抗体は抗体1−7F9と競合する。好ましくは、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である。
【0019】
「競合する」という用語は、特定のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)に対して言及する場合、ある抗体が、組換えKIR分子又は表面に発現されたKIR分子の何れかを用いた結合アッセイにおいて、モノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)と競合することを意味する。例えば、ある抗体が、結合アッセイにおいてDF200のKIR分子への結合を減少させれば、その抗体は、DF200と「競合する」。DF200と「競合する」抗体は、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方への結合に関して、DF200と競合し得る。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させ、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方への結合に関して、DF200、1−7F9又はNKVSF1と競合する抗体を提供する。必要に応じて、前記抗体はNKVSF1でない。必要に応じて、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させ、並びにKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合し、KIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合し、又はKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合し且つKIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合する抗体を提供する。必要に応じて、前記抗体はNKVSF1でない。必要に応じて、前記抗体はDF200でない。必要に応じて、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0022】
有利な側面において、本発明は、DF200と競合し、モノクローナル抗体DF200と実質的若しくは本質的に同じ、又は同じ、KIR分子上のエピトープ又は「エピトープ部位」を認識し、結合し、前記エピトープ又は「エピトープ部位に対して免疫特異性を有する抗体を提供する。好ましくは、前記KIR分子は、KIR2DL1ヒト受容体又はKIR2DL2/3ヒト受容体である。
【0023】
本発明の具体的な目的は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に存在する共通の決定基を結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させる抗体に存する。該抗体は、より具体的には、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200又はハイブリドーマNKVSF1によって産生される抗体NKVSF1と実質的に同一のKIR上エピトープを結合する(該抗体は、NKVSF1ではない。)。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最も好ましい抗体は、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200である。
【0025】
抗体DF200を産生するハイブリドーマは、2004年6月10日に「Collection Nationale de Cultures de Microorganismes, Institut Pasteur, 25, Rue du Docteur Roux, F-75724 Paris Cedex 15, France」に登録された、識別番号「DF200」、登録番号CNCM「CNCM I−3224」として、CNCM culture collectionに寄託された。抗体NKVSF1は、Serotec(Cergy Sainte-Christophe,France)から、カタログ番号MCA2243で入手できる。NKVSF1は、本明細書において、pan2D mAbとも称される。
【0026】
本発明は、実質的に同様の抗原特異性と活性を有する(例えば、親抗体と交叉反応することができ、阻害的KIR受容体を発現するNK細胞の細胞毒性活性を増強する。)、Fab断片、Fab’2断片、イムノアドヘシン、二重特異性抗体(diabody)、CDR及びScFvなどの(これらに限定されない。)、本明細書に記載されている抗体の機能的断片及び誘導体も提供する。さらに、本発明の抗体は、ヒト化、ヒト又はキメラであり得る。
【0027】
本発明は、毒素、放射性核種、検出可能部分(例えば、蛍光)又は固相支持体に抱合され、又は共有結合された本発明の抗体を含む抗体誘導体も提供する。
【0028】
本発明は、上述されているような抗体、それらの断片、又はそれら何れかの誘導体を含む薬学的組成物も提供する。従って、本発明は、医薬を製造するための方法における、本明細書に開示されている抗体の使用にも関する。好ましい実施形態において、前記医薬又は薬学的組成物は、癌若しくはその他の増殖性疾患、感染症の治療用であり、又は移植に使用するためのものである。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を含む組成物を提供し、前記抗体は、前記二つの異なるヒト阻害的KIR受容体の少なくとも一つを発現するNK細胞に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、前記抗体はリポソーム中に取り込まれる。必要に応じて、前記組成物は、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸分子;NK細胞中の遺伝子を抑制するためにアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸分子;又は前記リポソーム中に追加して取り込まれた、NK細胞を標的として死滅させるための毒素若しくは薬物から選択される追加の物質を含む。
【0030】
本発明は、インビトロ、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞活性を制御する方法であって、有効量の本発明の抗体、かかる抗体の断片、これらのうち何れかの誘導体又はこれらの何れかの少なくとも一つを含む薬学的組成物に、ヒトHK細胞を接触させることを含む、方法も提供する。好ましい方法は、有効量の本発明の薬学的組成物を投与することを含み、癌、感染性疾患又は免疫疾患を有する患者において、最も好ましくは、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞の細胞毒性活性を増加させることを目的する。
【0031】
さらなる側面において、本発明は、阻害的KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含む抗原で免疫化された哺乳類宿主(典型的には、ヒト以外の哺乳動物宿主)から得られ、(b)不死化された細胞(例えば、ミエローマ細胞)に融合された(a)B細胞を含むハイブリドーマを提供し、該ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体を結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体を発現するNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を少なくとも実質的に阻害することができる。必要に応じて、前記ハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生しない。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3受容体を結合する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1受容体への結合、及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、KIR2DL1又はKIR2DL2/3又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方の何れかの上に存在する、ハイブリドーマDF200によって産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する。このようなハイブリドーマの例は、DF200である。
【0032】
本発明は、複数のKIR2DL遺伝子産物と交叉反応し、かかるKIRの阻害的活性を中和する抗体を作製する方法であって、
(a)KIR2DLポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
(b)前記免疫された哺乳動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する、(c)の抗体を選択する工程と;
を含む方法も提供する。一実施形態において、前記ヒト以外の哺乳動物は、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物である(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子座と固有の免疫グロブリン遺伝子の欠失を有するヒト以外の哺乳動物、XenomouseTM(Abgenix−Fremont,CA,USA)など、又はヒトIgをコードする遺伝子の微小遺伝子座(minilocus)を有するヒト以外の哺乳動物、HuMab−マウスTM(Medarex−Princeton,NJ,USA)など)。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される、方法を含む。
【0033】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)阻害的KIR2ポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIRポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(c)の抗体を選択する工程と;を含み、工程(c)及び(d)の順序が必要に応じて逆転され、任意の数の前記工程が必要に応じて一回以上反復される、方法も提供する。好ましくは、免疫化に使用される阻害的KIRポリペプチドはKIR2DLポリペプチドであり、工程(c)で選択される抗体は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する。好ましくは、前記抗体は、少なくとも二つの異なるKIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を認識し、最も好ましくは、前記KIRは、KIR2DL1及びKIR2DL2/3である。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される、方法を含む。
【0034】
必要に応じて、上記方法では、工程c)又はd)で選択される抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、上記方法の工程(b)で調製される抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、上記方法の工程(c)で選択される抗体は、80位にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1受容体への結合及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、上記方法の工程(d)で選択される抗体は、NK細胞毒性に増強、例えば任意の実質的な増強、すなわち、少なくとも5%、10%、20%、30%以上のNK細胞毒性の増強、例えば、標的NK細胞毒性の少なくとも約50%の増強(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%(例えば、約65から100%など)の、NK細胞の細胞毒性の増強)を引き起こす。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体DF200と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製し、(例えば、放射性核種、細胞毒性剤、レポーター分子などに抱合することによって)選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製し、又はこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列から生成され、若しくはこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列を含む抗体断片の誘導体を作製する追加の工程を含む。
【0035】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体又は抗体断片を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体を選択する工程と;を含む方法をさらに提供する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。必要に応じて、工程(b)で選択される前記抗体は、NKVSF1でない。好ましくは、工程(b)で選択される抗体は、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合及び80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、工程(b)で選択される抗体は、NK細胞毒性に増強、例えば任意の実質的な増強、又は少なくとも5%、10%、20%、30%以上のNK細胞毒性の増強、例えば、標的NK細胞毒性の少なくとも約50%の増強(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%(例えば、約65から100%など)の、NK細胞の細胞毒性の増強)を引き起こす。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体DF200と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製する工程、選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又は選択されたモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。
【0036】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)前記モノクローナル抗体の産生が可能な条件下で、本発明のハイブリドーマを培養する工程と;
b)前記モノクローナル抗体を前記ハイブリドーマから分離する工程と;を含む方法を提供する。必要に応じて、前記方法は、前記モノクローナル工程の断片を作製する工程、前記モノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又はかかるモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。
【0037】
また、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、
a)前記モノクローナル抗体をコードする核酸を、本発明のハイブリドーマから単離する工程と;
b)前記核酸を修飾して、前記モノクローナル抗体の機能的配列に対応するアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に実質的に類似する(例えば、このような配列と少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%(約70から99%など)同一である。)アミノ酸配列を含み、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体の免疫反応性断片、又はこのような免疫反応性断片を含む融合タンパク質から選択される、修飾され又は誘導体化された抗体をコードする配列を含む修飾された核酸を取得する、必要に応じて実施される工程と、
c)前記核酸又は修飾された核酸(すなわち、同一アミノ酸配列をコードする関連核酸)を発現ベクター中に挿入し、適切な条件下で増殖された宿主細胞中に前記発現ベクターが存在するときに、前記コードされる抗体又は抗体断片が発現されることが可能である、工程と;
d)形質移入がなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞に、前記発現ベクターを形質移入する工程と;
e)前記抗体又は抗体断片の発現を引き起こす条件下で、前記形質移入された宿主細胞を培養する工程と;
f)前記形質移入された宿主細胞によって産生された抗体又は抗体断片を単離する工程と;を含む、方法が提供される。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。
【0038】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を結合する抗体と、薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含み、前記抗体が、前記2つの異なるヒト阻害的KIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、前記抗体が、患者又はNK細胞を含む生物学的試料において、NK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で存在する、組成物も提供することが理解されるであろう。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基を結合する。前記組成物は、例えば、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、阻害的KIR受容体に結合し、これを阻害する第二の抗体、抗感染剤、標的誘導剤又は補助化合物から選択される、第二の治療剤を必要に応じてさらに含むことができる。有利な免疫調節剤は、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β又はIFN−γから選択され得る。前記化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、他のビンカアルカロイド及びそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。ホルモン剤の例には、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミド アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール メドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤及び他のプロゲスターゲンが含まれる。好ましくは、阻害的KIR受容体に結合して、これを阻害する前記第二の抗体は、少なくとも二つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合する前記抗体によって結合されるエピトープとは異なる阻害的KIR受容体のエピトープに結合する抗体又は抗体の誘導体若しくは断片である。
【0039】
本発明は、さらに、NK細胞活性を検出可能に増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、NK細胞活性を検出可能に増強する方法を提供する。NK細胞活性の増強を必要とする患者は、このような増強が、治療効果を促進し、強化し、及び/又は誘導し得る(又は、疾病若しくは疾患を有し、患者と実質的に同じような特徴を有する(例えば、臨床試験によって決定し得る。)患者の少なくともかなりの割合において、このような効果を促進し、強化し、及び/又は誘導する)疾病又は疾患を有する任意の患者であり得る。このような治療を必要とする患者は、例えば、癌、別の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫疾患に罹患し得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、阻害的KIR受容体に結合し、これを阻害する第二の抗体、抗感染剤、標的誘導剤又は補助化合物から選択される、適切な追加の治療剤を前記患者に投与する追加の工程を含み、前記追加の治療剤は、前記抗体ともに単一剤形として、又は別個の剤形として、前記患者に投与される。抗体(又は抗体断片/誘導体)の投薬と追加の治療剤の投薬は、両者で、NK細胞活性の増強を含む前記患者における治療応答を検出可能に誘導し、促進し、及び/又は強化するのに十分である。別個に投与される場合、前記抗体、断片又は誘導体と前記追加の治療剤は、検出可能な総合的な治療的有用性を患者にもたらす条件下で(例えば、タイミング、投薬の数に関して)、望ましく投与される。
【0040】
さらに、本発明によって包含されるのは、ヒト以外の霊長類、好ましくはサルのNK細胞及び/又はサルのKIR受容体を特異的に結合できる本発明の抗体である。候補医薬である本発明の抗体の毒性、投与量及び/又は活性又は効力を評価する方法も、包含される。一側面において、本発明は、HK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体の用量を決定する方法を包含する。別の側面において、本発明は、HK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体を同定する方法である。別の側面において、本発明は、感染、疾病又は癌の、ヒト以外の霊長類モデルに、本発明の抗体を投与し、前記感染、疾病若しくは癌又はそれらの症候を軽減する抗体を同定することによって、感染された疾病又は腫瘍の治療に有効である抗体を同定する方法である。好ましくは、本発明の前記抗体は、(a)ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応し、及び(b)ヒト以外の霊長類のNK細胞又はKIR受容体と交叉反応する抗体である。
【0041】
さらに、本発明によって包含されるのは、生物学的試料又は生物中で、細胞表面上に阻害的KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法であって、
a)検出可能な部分に抱合され、又は共有結合されている本発明の抗体に、前記生物学的試料又は生物を接触させる工程と;
b)前記生物学的試料又は生物における前記抗体の存在を検出する工程と;
を含む方法である。
【0042】
本発明は、細胞表面上に阻害的KIRを有するNK細胞を試料から精製する方法であって、
a)細胞表面上に阻害的KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合できる条件下で、固相支持体(例えば、ビーズ、マトリックスなど)に抱合され、又は共有結合された本発明の抗体を前記試料に接触させる工程と;
b)固相支持体に抱合され、又は共有結合された前記抗体から、前記結合されたNK細胞を溶出する工程と;
を含む方法も提供する。
【0043】
さらなる側面において、本発明は、図12に示されているように、抗体DF200又は抗体Pan2Dの軽鎖可変領域又は一以上の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、DF200若しくはPan2Dの軽鎖可変領域配列又はこれらの抗体の一方又両方の一以上の軽鎖可変領域CDRの全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0044】
さらなる側面において、本発明は、図13に示されているように、抗体DF200の重鎖可変領域又は一以上の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、DF200の重鎖可変領域配列の全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0045】
本発明の、これらの及びその他の有利な側面及び特徴は、さらに、本明細書のその他の箇所に記載されているであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、様々なヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合するモノクローナル抗体DF200を図示している。
【図2】図2は、Cw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するモノクローナル抗体DF200を図示している。
【図3】図3は、モノクローナル抗体DF200、DF200のFab断片、並びにCw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害及びCw3陽性標的細胞に対するKIR2DL2/3陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図4】図4は、DF200及びEB6抗体のF(ab’)2断片の存在下における、HLA Cw4陽性標的細胞のNKクローンによる細胞溶解の再構成を図示している。
【図5】図5及び図6は、モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1並びにCw4陽性標的細胞(図5ではCw4形質移入細胞、図6ではEBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図6】図5及び図6は、モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1並びにCw4陽性標的細胞(図5ではCw4形質移入細胞、図6ではEBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞毒性の、KIR2DL媒介性阻害を中和するKIR2DL1又はKIR2DL2/3特異的な従来抗体を図示している。
【図7】図7は、KIR2DL1に対する抗KIR抗体を用いた表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DL1への結合の重複を表している。結果から、1−7F9は、KIR2DL1に対して、EB6及び1−4F1と競合するが、NKVSF1及びDF200とは競合しないことが明らかである。次に、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1及び1−7 F9と競合する。抗体NKVSF1は、KIR2DL1に対して、DF200、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL1に対して、NKVSF1、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図8】図8は、KIR2DL3に対する抗KIR抗体を用いたBIAcore(登録商標)分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DL3への結合の重複を表している。結果は、KIR2DL3に対して、1−4F1が、NKVSF1、DF200及びgl183及び1−7F9と競合することを示している。1−7F9は、KIR2DL3に対して、DF200、gl183及び1−4F1と競合するが、NKVSF1とは競合しない。NKVSF1は、KIR2DL3に対して、DF200、1−4F1及びGL183と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL3に対して、NKVSF1、1−4F1及び1−7F9と競合するが、GL183とは競合しない。
【図9】図9は、KIR2DS1に対する抗KIR抗体を用いたBIAcore(登録商標)分析によって得られた競合結合実験の結果を示すエピトープマップを図示しており、重複する円はKIR2DS1への結合の重複を表している。結果は、KIR2DS1に対して、抗体1−4F1は、NKVSF1、DF200及び1−7F9と競合することを示している。抗体1−7F9は、KIR2DS1に対して、1−4F1と競合するが、DF200及びNKVSF1とは競合しない。NKVSF1は、KIR2DS1に対して、DF200及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DS1に対して、NKVSF1及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図10】図10は、カニクイザルNK細胞へのmAbno結合を実証するNKVSF1(pan2D)mAb滴定を図示している。カニクイザルNK細胞(NKバルク16日)を異なる量のPan2D mAbとともにインキュベートし、続いて、PE抱合されたヤギ(Fab’)2断片抗マウスIgG(H+L)抗体とともにインキュベートした。陽性細胞のパーセントは、アイソタイプ対照(精製されたマウスIgG1)を用いて決定した。試料は、二つ組みで行った。平均蛍光強度=MFI。
【図12】図12は、抗体DF200及びPan2D mAbの軽鎖可変領域及び軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を比較のために並列した図である。
【図13】図13は、抗体DF200の重鎖可変領域を表す。
【発明の詳細な説明】
【0047】
抗体
本発明は、ヒト阻害的KIR受容体の共通の決定基、好ましくは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を結合し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす新規抗体及び断片又はそれらの誘導体を提供する。本発明は、予想外の結果を示し、特にヒト対象において、NKをベースとした新規且つ効果的な療法に対する道筋を開く、このような交叉反応する中和抗体を作製できることを初めて開示する。好ましい実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体NKVSF1ではない。
【0048】
本発明において、「共通の決定基」とは、ヒト阻害的KIR受容体の複数の遺伝子産物によって共有される決定基又はエピトープを表す。好ましくは、共通の決定基は、KIR2DL受容体グループの少なくとも2つのメンバーによって共有される。より好ましくは、前記決定基は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3によって共有される。本発明の幾つかの抗体は、KIR2DLの複数の遺伝子産物を認識することに加えて、KIR3DL受容体グループの遺伝子産物など、他の阻害的KIR上に存在する決定基も認識する。決定基又はエピトープは、前記メンバーによって共有されるペプチド断片又はコンフォメーションエピトープを表し得る。より具体的な実施形態において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体DF200によって認識されるエピトープと実質的に同一のエピトープに特異的に結合する。この決定基は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上にともに存在する。
【0049】
本発明において、共通の決定基を「結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性をもって、前記決定基を結合する抗体を表す。
【0050】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を表す他、特段の記載がなければ、又は明確に反対の記載がなければ、前記ポリクローナル及びモノクローナル抗体の断片及び誘導体も表す。重鎖中の定常ドメインの種類に応じて、完全長の抗体は、典型的には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらのうち幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのように、サブクラス又はイソタイプにさらに分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」及び「μ」と称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知である。IgG及び/又はIgMは、生理的な状況において最も一般的な抗体であり、且つ実験室条件で最も簡単に作製されるので、本発明で使用される抗体の好ましいクラスである。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最終目標の一つは、NK細胞を枯渇させることなく、阻害的KIRとその対応するHLAリガンドとの相互作用をインビボで遮断することなので、低エフェクター機能を媒介するFc受容体に対応するアイソタイプ(IgG4など)が典型的には好ましい。
【0051】
本発明の抗体は、当該技術で公知の様々な技術によって作製することができる。典型的には、本発明の抗体は、ヒト以外の動物、好ましくはマウスを、阻害的KIRポリペプチド、好ましくはKIR2DLポリペプチド、より好ましくはヒトKIR2DLポリペプチドを含む免疫原で免疫することによって作製される。前記阻害的KIRポリペプチドは、ヒト阻害的KIRポリペプチドの完全長配列、又はそれらの断片若しくは誘導体、典型的には免疫原性断片(すなわち、阻害的KIR受容体を発現している細胞の表面上に暴露されるエピトープを含むポリペプチドの一部)を含み得る。このような断片は、典型的には、成熟したポリペプチド配列の少なくとも約7個、さらに好ましくは成熟したポリペプチド配列の少なくとも約10個の連続するアミノ酸を含有する。断片は、典型的には、受容体の細胞外ドメインに実質的に由来する。さらに好ましいのは、完全長KIRDLポリペプチドの細胞外Igドメインの少なくとも一つ、より好ましくは両方を含み、KIR2DL受容体中に存在する少なくとも一つのコンフォメーションエピトープを模倣することができるヒトKIR2DLポリペプチドである。別の実施形態において、前記ポリペプチドは、KIR2DL1ポリペプチドのアミノ酸1から224位の細胞外Igドメインの、少なくとも約8つの連続するアミノ酸を含む(KIR遺伝子ファミリーを記載するPROWウェブサイトに従ったアミノ酸の付番、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/prow/guide/1326018082.htm)。
【0052】
最も好ましい実施形態において、前記免疫原は、脂質膜中に、典型的には細胞の表面に、野生型KIR2DLポリペプチドを含む。具体的な実施形態において、前記免疫原は、必要に応じて処理又は溶解された、無傷のNK細胞、特に無傷のヒトNK細胞を含む。
【0053】
ヒト以外の哺乳動物を抗原で免疫化する工程は、マウスでの抗体の産生を刺激するために、当該技術で周知の任意の様式で実施することができる(例えば、E. Harlow and D. Lane, Antibodies:A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照)。次いで、必要に応じて、完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、緩衝液中に、免疫原を懸濁し、又は溶解する。免疫原の量、緩衝液の種類及びアジュバントの量を決定する方法は、当業者に周知であり、いかなる意味においても、本発明を限定するものではない。これらのパラメータは、異なる免疫原については異なる場合があり得るが、容易に解明される。
【0054】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫化の位置及び頻度も、当該技術において周知である。典型的な免疫化プロトコールでは、1日目に、ヒト以外の動物に抗原を腹腔内注射し、約1週後に再度抗原を腹腔内注射する。この後、必要に応じて、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、20日目前後に、抗原のリコール注射を行う。リコール注射は、静脈内に行われ、連続数日間、反復することができる。その後、通例、アジュバントなしに、静脈内又は腹腔内の何れかで、40日目に強化注射を行う。このプロトコールによって、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が産生される。免疫化に使用される抗原に対して誘導される抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、他のプロトコールも使用することができる。
【0055】
ポリクローナル抗体の調製の場合、免疫されたヒト以外の動物から血清を得て、その中に存在する抗体を周知の技術によって単離する。阻害的KIR受容体と反応する抗体を得るために、固相支持体に連結された上記免疫原の何れかを用いて、血清をアフィニティー精製することもできる。
【0056】
別の実施形態では、免疫化されていないヒト以外の哺乳動物からリンパ球を単離し、インビトロで増殖し、次いで、細胞培養において免疫原に曝露する。次いで、リンパ球を採集し、以下に記載された融合工程を実施する。
【0057】
モノクローナル抗体の場合、次の工程は、免疫されたヒト以外の哺乳動物から脾細胞を単離した後、これらの脾細胞を不死化された細胞と融合して、抗体を産生するハイブリドーマを形成させる。ヒト以外の哺乳動物からの脾細胞の単離は当該技術において周知であり、典型的には、麻酔されたヒト以外の哺乳動物から脾臓を取り出し、脾臓を小片に切断し、脾臓カプセル(splenic capsule)から細胞ろ過器のナイロンメッシュを通して、脾細胞を適切な緩衝液中に絞り取り、単一細胞の懸濁液を得る。細胞を洗浄し、遠心し、全ての赤血球を溶解する緩衝液中に再懸濁する。この溶液を再び遠心し、最後に、ペレット中に残存するリンパ球を新鮮な緩衝液中に再懸濁する。
【0058】
一旦単離され、単一の細胞懸濁液中に存在した時点で、リンパ球は不死化細胞株に融合することができる。これは、典型的には、マウスのミエローマ細胞株であるが、ハイブリドーマの作製に有用な他の多くの不死化細胞株も、当該技術において公知である。好ましいマウスのミエローマ株には、「Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. U.S.A」から入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、並びに「American Type Culture Collection, Rockville, Maryland U.S.A」から入手可能なX63、Ag8653及びSP−2細胞から得られるマウスのミエローマ株が含まれるが、これらに限定されるものではない。融合は、ポリエチレングリコールなどを用いて行われる。次いで、得られたハイブリドーマを、融合されていない親ミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する一以上の物質を含有する選択培地中で増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠如していれば、ハイブリドーマに対する培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を抑える物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0059】
ハイブリドーマは、典型的には、マクロファージの支持細胞上で増殖される。マクロファージは、脾細胞を単離するために使用されるヒト以外の哺乳動物の同腹仔から得ることが好ましく、典型的には、ハイブリドーマを播種する数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激される。融合法は、「Goding, “Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,” pp. 59-103 (Academic Press, 1986)」に記載されており、参照により、その開示内容は本明細書に援用される。
【0060】
前記細胞は、コロニー形成と抗体産生に十分な時間、選択培地中で増殖させる。これは、通常、約7日から約14日の間である。次いで、複数の阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する抗体の産生について、このハイブリドーマコロニーをアッセイする。その中でハイブリドーマが増殖されるウェルに適合できる任意のアッセイを使用し得るが、このアッセイは、典型的には、比色分析のELISAタイプのアッセイである。他のアッセイには、免疫沈降及びラジオイムノアッセイが含まれる。一以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定するために、所望の抗体の産生に関して陽性のウェルを調べる。二以上のコロニーが存在すれば、細胞を再度クローニングし、単一の細胞のみが、所望の抗体を産生するコロニーを確実に生じるように増殖させ得る。モノクローナル抗体が唯一つ検出され、産生されるように、典型的には、単一の明白なコロニーを有する陽性細胞を再クローニングし、再アッセイする。抗体は、例えば、「Ward et al., Nature, 341 (1989) p. 544」に開示されているように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーを選択することによって作製することもできる。
【0061】
本発明の抗体は、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害、具体的には、KIR2DL受容体によって媒介される阻害、より具体的には、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方による阻害を中和することができる。このように、これらの抗体は、MHCクラスI分子と相互作用したときに、少なくとも部分的に且つ検出可能に、KIR受容体によって媒介される阻害的シグナル伝達経路を遮断するという意味で、「中和」又は「阻害的」抗体である。より重要なことは、これらの抗体が高い効力で様々な対象に使用できるように、この阻害活性が、数個のタイプの阻害的KIR受容体、好ましくは数個のKIR2DL受容体遺伝子産物、より好ましくは少なくともKIR2DL1とKIR2DL2/3の両方に対して表される。KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害は、結合又は細胞アッセイなど、様々なアッセイ又は検査によって評価することができる。
【0062】
複数の阻害剤KIR受容体と交叉反応する抗体がいったん同定されると、無傷のNK細胞中のKIR受容体の阻害的効果を中和する能力について、抗体を検査することができる。特定の変異形において、KIR2DL陽性NKクローンによるHLA−C陽性標的の溶解を前記抗体が再生させる能力によって、中和活性を表すことができる。別の特定の実施形態では、抗体の中和活性は、KIR2DL1及びKIR2DL3(又は密接に関連するKIR2DL2)受容体へのHLA−C分子の結合を阻害する抗体の能力によって定義され、さらに好ましくは、
−Cw1、Cw3、Cw7及びCw8から選択されるHLA−C分子の(又は80位にAsn残基を有するHLA−C分子の)、KIR2DL2/3への結合;並びに
−Cw2、Cw4、Cw5及びCw6から選択されるHLA−C分子の(又は80位にLys残基を有するHLA−C分子の)、KIR2DL1への結合;
を変化させる抗体の能力として定義される。
【0063】
別の変異形では、本発明の抗体の阻害的活性は、本明細書に記載されている実施例に開示されているように、細胞を用いた細胞毒性アッセイにおいて評価することができる。
【0064】
別のバリアントでは、NK細胞のサイトカイン産生(例えば、IFN−γ及び/又はGM−CSF産生)を刺激するために、試験抗体、及びNK集団のKIR分子によって認識される一つのHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞株とともに、NK細胞がインキュベートされるサイトカイン放出アッセイにおいて、本発明の抗体の阻害的活性を評価することができる。典型的なプロトコールでは、PBMCからのIFN−γ産生は、培養から約4日後に、フローサイトメトリーによる細胞表面及び細胞質内の染色及び分析によって、評価される。簡潔に述べると、Brefeldin A(Sigma Aldrich)は、少なくとも約4時間の培養の間、約5μg/mLの最終濃度で添加することができる。次いで、透過処理(IntraPrepTM、Beckman Coulter)及びPE−抗−IFN−γ又はPE−IgG1(Pharmingen)による染色の前に、抗CD3及び抗CD56 mAbとともに細胞をインキュベートすることができる。ポリクローナル活性化されたNK細胞からのGM−CSF及びIFN−γ産生は、ELISA(GM-CSF:DuoSet Elisa, R&D Systems, Minneapolis, MN;IFN-γ:OptE1A set, Pharmingen)を用いて、上清中で測定することができる。
【0065】
本発明の抗体は、KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害を部分的に又は完全に中和し得る。本明細書によって使用される「KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害を中和する」という用語は、細胞毒性の古典的なクロム放出試験によって測定した場合、所定のKIRを発現するNK細胞集団を、同族のMHCクラスI分子(NK細胞上に発現されているKIRによって認識される。)を発現する標的細胞と接触させたときに、抗体なしで得られた特異的な溶解レベルに比べて、それらのKIRによって遮断されないNK細胞又はNK細胞株を使用した場合と同じ比で得られる特異的溶解の少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%以上(例えば、約25から100%)まで増加させる能力を意味する。例えば、本発明の好ましい抗体は、一致した、又はHLA適合性の、又は自家の標的細胞集団(すなわち、前記抗体の不存在下で、NK細胞によって効果的に溶解されないと思われる細胞集団)の溶解を誘導することができる。従って、本発明の抗体は、インビボでNK細胞活性を促進すると定義することもできる。
【0066】
あるいは、「KIRによって媒介される阻害を中和する」という用語は、NK細胞クローン又は一若しくは数個の阻害的KIRを発現する形質移入体と、NK細胞上のKIRの一つによって認識されるHLA対立遺伝子を一つだけ発現する標的細胞とを使用するクロムアッセイにおいて、抗体を用いて得られた細胞毒性のレベルが、公知の遮断抗MHCクラスI分子(W6/32抗MHCクラスI抗体など)を用いたときに得られた細胞毒性の、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%以上(例えば、約25から100%)となるべきことを意味する。
【0067】
特定の実施形態において、前記抗体は、(ハイブリドーマDF200によって産生される)モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープを結合する。このような抗体は、本明細書では、「DF様抗体」と称される。さらに好ましい実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体である。より好ましくは、本発明の「DF200様抗体」は、モノクローナル抗体NKVSF1以外の抗体である。最も好ましい抗体は、(ハイブリドーマDF200によって産生される)モノクローナル抗体DF200である。
【0068】
対象の抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、その抗体が対象の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、その抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。一般的に、対象のモノクローナル(例えば、DF200、NKVSF1、17F9)抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」抗体とは、一以上の任意のKIR分子に関して、好ましくは、KIR2DL1及びKIR2DL2/3からなる群から選択されるKIR分子に関して、その抗体が、前記対象の抗体と「競合する」ことを意味する。別の例では、対象の抗体と実質的に同一の、KIR2DL1分子上のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL1への結合に関して、前記対象の抗体と「競合する」。対象の抗体と実質的に同一の、KIR2DL2/3分子上のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL2/3への結合に関して、前記対象の抗体と「競合する」。
【0069】
対象の抗体と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、前記対象の抗体が特異的に結合するあらゆる全てのKIR分子に関して、ある抗体が前記対象の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する」という用語は、DF200が特異的に結合する、あらゆる全てのKIR分子に関して、ある抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。例えば、モノクローナル抗体DF200又はNKVSF1と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DS1及びKIR2DS2への結合に関して、それぞれ、前記DF200又はNKVSF1と「競合する」。
【0070】
本明細書に記載されているモノクローナル抗体と実質的に又は本質的に同一のエピトープに結合する一又は複数の抗体を同定することは、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのうち任意の一つを用いて、容易に決定することができる。このような多数のアッセイは、一般的に実施され、当該技術で周知である(例えば、米国第5,660,827号を参照、1997年8月26日に付与、参照により、本明細書に明確に援用される。)。本明細書に記載されているモノクローナル抗体と同一又は実質的に同一のエピトープに結合する抗体を同定するために、本明細書に記載されている抗体が結合するエピトープを実際に決定することは、全く必要でないことが理解されるであろう。
【0071】
例えば、検査すべき試験抗体が、異なる採取源の動物から取得され、あるいは、異なるIgアイソタイプの抗体である場合には、対照(例えば、DF200)及び試験抗体が混合(又は予め吸着)され、KIR2DL1とKIR2DL2/3(何れも、DF200によって結合されることが知られている。)の両方を含有する試料に与えられる、単純な競合アッセイを使用することができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティングを基本とするプロトコール、及びBIACOREの使用(例えば、実施例の部に記載されているように)は、このような単純な競合研究での使用に適している。
【0072】
ある種の実施形態では、阻害的KIR抗原試料に与える前に、ある期間にわたって、様々な量の試験抗体(例えば、約1:10又は約1:100)を対照抗体(例えば、DF200)と予め混合するであろう。別の実施形態では、KIR抗原試料への曝露の間、対照抗体及び様々な量の試験抗体を単純に混合することができる。結合した抗体を遊離抗体と区別することができ(例えば、非結合抗体を除去するために、分離又は洗浄技術を使用することによって)、及びDF200を試験抗体から区別することができる限り(例えば、種特異的若しくはアイソタイプ特異的二次抗体を用いることによって、又は検出可能な標識で特異的に標識されているDF200によって)、試験抗体は、2つの異なるKIR2DL抗原へのDF200の結合を減少させるかどうかを決定することができ、試験抗体がDF200と実質的に同一のエピトープを認識することが示唆されるであろう。完全に無関係な抗体の不存在下での(標識された)対照抗体の結合は、対照の高値としての役割を果たすことができる。対照の低値は、正確に同じ種類(DF200)の非標識抗体とともに、標識(DF200)抗体をインキュベートすることによって取得することができ、この場合、競合が起こり、標識抗体の結合を減少させるであろう。試験アッセイでは、試験抗体の存在下において、標識された抗体の反応性が有意に減少することが、試験抗体が実質的に同じエピトープを認識する(すなわち、標識された(DF200)抗体と「交叉反応する」)ことの指標となる。約1:10から約1:100の間の任意のDF200:試験抗体比で、KIR2DL1及びKIR2DL2/3抗原の各々へのDF200の結合を、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、又は、より好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65から100%)減少させる全ての試験抗体は、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えられる。好ましくは、このような試験抗体は、KIR2DL抗原の各々へのDF200の結合を、少なくとも約90%(例えば、約95%)減少させるであろう。
【0073】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。このような試験では、所定のKIRを有する細胞は、例えば、まずDF200とともにインキュベートし、次いで、蛍光色素又はビオチンで標識された試験抗体とともにインキュベートすることができる。飽和量のDF200とともにプレインキュベーションを行った際に得られた結合が、DF200とのプレインキュベーションを行わない抗体によって得られる結合(蛍光を用いて測定される。)の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、DF200と競合すると呼ばれる。あるいは、飽和量の試験抗体とともにプレインキュベーションを行った細胞に対して、(蛍光色素又はビオチンによって)標識されたDF200を用いて得られた結合が、抗体とのプレインキュベーションを行わずに得られた結合の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、DF200と競合すると呼ばれる。
【0074】
試験抗体を予め吸着し、両KIR2DL1とKIR2DL2/3の両方が固定化されている表面に、飽和濃度で与えられる単純な競合アッセイも、有利に使用することができる。単純な競合アッセイにおける表面は、好ましくは、BIACOREチップ(又は表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)である。次いで、対照抗体(例えば、DF200)を、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の飽和濃度で、前記表面に接触させ、対照抗体のKIR2DL1とKIR2DL2/3表面結合を測定する。対照抗体のこの結合を、試験抗体の不存在下における、KIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面への対照抗体の結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下において、対照抗体によるKIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面の結合が有意に減少することが、試験抗体が対照抗体と「交叉反応する」ように、試験抗体が対照抗体と実質的に同一のエピトープを認識することを示す。KIR2DL1及びKIR2DL2/3抗原の各々への対照(DF200など)抗体の結合を、少なくとも約30%、又はより好ましくは約40%減少させる全ての試験抗体は、対照(例えば、DF200)と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えることができる。好ましくは、このような試験抗体は、KIR2DL抗原の各々への対照抗体(例えば、DF200)の結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上)減少させるであろう。対照抗体と試験抗体の順序は入れ替えることができることが理解されるであろう。すなわち、まず対照抗体を表面に結合することができ、試験抗体は、その後、競合アッセイにおいて、前記表面と接触される。第二の抗体(抗体は交叉反応すると仮定する。)について見られた結合の減少の程度がさらに大きくなると予想されるので、KIR2Dl1及びKIR2DL2/3抗原に対してさらに高い親和性を有する抗体を、まず、KIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面に結合することが好ましい。このようなアッセイのさらなる例は、実施例、及び、例えば、「Saunal and Regenmortel, (1995) J. Immunol. Methods 183:33-41」(参照により、その内容が本明細書に援用される。)に記載されている。
【0075】
例示のために、DF200に関して記載されているが、上記免疫学的スクリーニングアッセイは、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183及び本発明に係る他の抗体と競合する抗体を同定するために使用できることも理解されるであろう。
【0076】
脊椎動物又は細胞中で免疫化及び抗体の産生が行われたら、抗体を単離するために、特許請求の範囲に記載されているように、具体的な選択工程を実施することができる。この点に関して、具体的な実施形態において、本発明は、
a)阻害的KIR2ポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なる阻害的KIR受容体遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体を選択する工程と;
を含む、このような抗体を作製する方法にも関する。少なくとも2つの異なる阻害的KIR遺伝子産物と交叉反応する抗体の選択は、例えば、上記のように、2以上の異なる阻害的KIR抗原に対する抗体をスクリーニングすることによって達成することができる。
【0077】
さらに好ましい実施形態において、工程(b)で調製される抗体はモノクローナル抗体である。このように、本明細書において使用される「前記免疫された動物から抗体を調製する」という用語には、免疫された動物からB細胞を取得すること、及び抗体を発現するハイブリドーマを産生するためにこれらのB細胞を使用すること、並びに免疫された動物の血清から抗体を直接取得することが含まれる。別の好ましい実施形態において、工程(c)で選択される抗体は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する抗体である。
【0078】
さらに別の好ましい実施形態では、工程(d)で選択された抗体は、KIRによって遮断されないNK細胞を、同じエフェクター/標的比で用いたときに得られる溶解又は細胞毒性と比較して、同族のHLAクラスI分子を発現する標的細胞に対して、(標準的なクロム放出アッセイで測定した場合に)該抗体によって認識される少なくとも一つのKIRを提示するNK細胞によって媒介される少なくとも約10%の特異的溶解を引き起こし、好ましくは、少なくとも約40%の特異的溶解、少なくとも約50%の特異的溶解、又はより好ましくは、少なくとも約70%の特異的溶解(例えば、約60から100%の特異的溶解)を引き起こす。あるいは、一若しくは数個の阻害的KIRを発現するNK細胞クローンと、NKクローン上のKIRの一つによって認識されるHLA対立遺伝子を一つだけ発現する標的細胞とを使用するクロムアッセイで使用したときに、工程(d)で選択された抗体は、抗体を用いて得られた細胞毒性のレベルは、遮断抗MHCクラスI mAb(W6/32抗MHCクラスI mAbなど)を用いたときに得られた細胞毒性の、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%以上となるべきである。
【0079】
直前に記載されている方法の工程(c)と(d)の順序は、変更することができる。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、例えば、本明細書の他の部分に記載されているように、前記モノクローナル抗体の断片を作製する工程又は前記モノクローナル抗体若しくはこのような断片の誘導体を作製する追加の工程をさらに含み得る。
【0080】
好ましい実施形態において、本発明の適用可能な方法に従って抗体を作製するために使用される、ヒト以外の動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物である。また、ヒト以外の哺乳動物は、XenomouseTM(Abgenix)又はHuMAb−MouseTM(Medarex)などの、「ヒト」抗体を産生するように、遺伝的に改変し、又は操作することができる。
【0081】
別の改変において、本発明は、抗体を取得する方法であって、
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体の断片、又はそれらのうち何れかの誘導体を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体、断片又は誘導体を選択する工程と;
を含む方法をさらに提供する。
【0082】
前記レパートリーは、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によって必要に応じて提示される、抗体又はその断片のあらゆる(組換え)レパートリーであり得る。阻害的抗体の選択は、上に開示されているように、及び実施例においてさらに説明されているように、実施することができる。
【0083】
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基を結合して、前記受容体の阻害的活性を中和することができる抗体を産生する、ヒト以外の宿主から得られるB細胞を含む、ハイブリドーマを提供する。より好ましくは、本発明の該側面のハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生するハイブリドーマではない。本発明の該側面に係るハイブリドーマは、ヒト以外の免疫された哺乳動物から得られる脾細胞を不死化細胞株と融合させることによって、上述のように作製することができる。この融合によって産生されたハイブリドーマは、本明細書の他の箇所に記載されているように、このような交叉反応抗体の存在に関してスクリーニングすることができる。好ましくは、前記ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす抗体を産生する。より好ましくは、前記ハイブリドーマは、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合して、NK細胞活性を増強する抗体を産生する。最も好ましくは、このハイブリドーマは、モノクローナル抗体DF200を産生するハイブリドーマDF200である。
【0084】
本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されているハイブリドーマは、DMEM又はRPMI−1640などの、適切な培地中で、さらに大量に増殖させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物内の腹水癌として、インビボで増殖させることができる。
【0085】
所望のモノクローナル抗体を産生するまで十分に増殖させた後、モノクローナル抗体を含有する増殖培地(又は腹水液)を細胞から分離し、その中に存在するモノクローナル抗体を精製する。典型的には、精製は、ゲル電気泳動、透析、プロテインA若しくはプロテインG−セファロース、又はアガロース又はセファロースビーズなどの固相支持体に連結された抗マウスIgを用いたクロマトグラフィーによって達成される(全て、例えば、「Antibody Purification Handbook, Amersham Biosciences, publication No. 18-1037-46, Edition AC」に記載されており、その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。)。結合された抗体は、典型的には、低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシン又は酢酸緩衝液)を使用することによって、プロテインA/プロテインGカラムから溶出され、抗体含有画分を直ちに中和する。必要に応じて、これらの画分をプールし、透析し、濃縮する。
【0086】
別の実施形態によれば、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基を結合する抗体をコードするDNAが、本発明のハイブリドーマから単離され、適切な宿主に形質移入するために、適切な発現ベクター中に配置される。次いで、抗体、又はそれらの変異形(ヒト化された様式のモノクローナル抗体、抗体の活性断片、又は抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体など)を組換え産生するために、宿主を使用する。好ましくは、本実施形態で使用されるDNAは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、これらのKIR受容体のうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす抗体をコードする。より好ましくは、前記DNAは、DF200と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合して、NK細胞活性を増強する抗体をコードする。最も好ましくは、このDNAは、モノクローナル抗体DF200をコードする。
【0087】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定される。DNAを単離したら、DNAは発現ベクター中に配置することができ、次いで、発現ベクターを宿主細胞(形質移入が行われていない状態で、免疫グロブリンタンパク質を産生しない、E.コリ細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞など)中に形質移入して、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現は、当該技術で周知である(例えば、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5, pp. 256 (1993); and Pluckthun, Immunol. Revs., 130, pp. 151 (1992)を参照)。
【0088】
モノクローナル抗体の断片及び誘導体
本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体の断片及び誘導体(別段の記載又は明確に反対の記載がなければ、本願で使用される「抗体」という用語に包含される。)、当該技術で公知である技術によって作製することができる。「免疫反応性断片」は、無傷の抗体の一部(一般的には、抗原結合部位又は可変領域)を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、Fab’−SH,F(ab’)2及びFv断片;二重特異性抗体;連続するアミノ残基の一つの連続配列からなる一次構造を有するポリペプチド(本明細書において、「一本鎖抗体断片」又は「一本鎖ポリペプチド」と称される。)である任意の抗体断片((1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)軽鎖可変ドメインを一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する重鎖部分を伴わないそれらの断片、及び(3)重鎖可変領域を一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は重鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する軽鎖部分を伴わないそれらの断片などが含まれるが、これらに限定されない。);並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。例えば、Fab又はF(ab’)2断片は、従来の技術に従って、前記単離された抗体をプロテアーゼ消化することによって作製することができる。免疫反応性断片は、公知の方法を用いて修飾することが可能であり、例えば、インビボでのクリアランスを遅らせ、より望ましい薬物動態特性を得るために、前記断片をポリエチレングリコール(PEG)で修飾し得ることを理解できるであろう。PEGをFab’断片に連結し、部位特異的に抱合する方法は、例えば、「Leong et al, Cytokine 16(3):106-119 (2001) and Delgado et al, Br. J. Cancer 73(2):175-182 (1996)」(その開示内容は、参照により、本明細書に援用される。)に記載されている。
【0089】
ある側面において、本発明は、図12に示されている、DF−200の軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図12に示されている、Pan2Dの軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図12に示されている、DF−200の一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、図12に示されている、Pan2Dの一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又はそれらの誘導体を提供する。このような配列の機能的な変異形/類縁体は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。このように、例えば、Pan2DとDF−200の間で保存されているCDR残基は、本明細書に開示されている他の抗体に関してこれらの抗体が有する、競合プロファイルの差に寄与しておらず(但し、Pan2DとDF−200は競合する。)、従って、それらの特定の各エピトープに対するこれらの抗体の特異性に寄与し得ない限り、このような残基は修飾に適した標的であり得る。別の側面では、これらの抗体の一つの配列中に残基が存在するが、別の抗体には存在しない位置は、欠失、置換及び/又は挿入に適切であり得る。
【0090】
ある側面において、本発明は、図13に示されている、DF−200の重鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片及び抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、図13に示されている、DF−200の一又は複数の重鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片及びそれらの抗体誘導体を提供する。このような配列の機能的な変異形/類縁体は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。別の側面では、これらの抗体の一つの配列中に残基が存在するが、別の抗体には残基が存在しない位置は、欠失、置換及び/又は挿入に適切であり得る。
【0091】
あるいは、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、本発明の断片をコードするように修飾することができる。次いで、修飾されたDNAは発現ベクター中に挿入され、適切な細胞を形質転換し、又は形質移入するために使用され、次いで、前記細胞が所望の断片を発現する。
【0092】
別の実施形態において、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、例えば、相同な非ヒト配列に代えて、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することによって(e.g., Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984))、又は、非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全部又は一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合することによって、発現ベクター中に挿入する前に修飾することができる。このように、元の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代用とされる。
【0093】
このように、別の実施形態によれば、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体は、ヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化された」形態は、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は、マウス免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、それらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列など)である。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、元の抗体の望ましい特異性、親和性及び能力を維持しつつ、元の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されることができる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又は導入されたCDR若しくはフレームワーク配列中の何れにも存在しない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良し、最適化するために施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体中では、元の抗体のCDR領域に対応する全て又は実質的に全てのCDR領域及び全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、通例ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、「Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Reichmann et al., Nature, 332, pp. 323(1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2, pp. 593 (1992)」を参照されたい。
【0094】
本発明の抗体をヒト化する方法は、当該技術で周知である。一般的に、本発明のヒト化抗体は、元の抗体からヒト化抗体中に導入されたアミノ酸残基を一又は複数有する。これらのマウス又は他の非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入」残基と称され、通例、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、Winter及び共同研究者の方法に従って、実施することができる(Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Riechmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239, pp. 1534 (1988))。従って、このような「ヒト化」抗体は、元の抗体由来の対応する配列によって、原型のヒト可変ドメインが僅かに置換されているキメラ抗体である(Cabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567)。実際、本発明のヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基と、おそらくは幾つかのFR残基とが、元の抗体中の類似の部位から得られる残基によって置換されているヒト抗体である。
【0095】
ヒト化抗体の製造に使用すべきヒト可変ドメインの選択(軽鎖及び重鎖ドメインの両方)は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、本発明の抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として受容される(Sims et al., J. Immunol., 151, pp. 2296(1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196, pp. 901(1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列から得られるフレームワークを使用する。同じフレームワークを、数個の異なるヒト化抗体に対して使用することができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, pp.4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 51, pp. 1993))。
【0096】
さらに、複数の阻害的KIR受容体に対する高親和性と他の好ましい生物特性を保持しながら、抗体をヒト化することが重要である。この最終目標を達成するために、好ましい方法に従い、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念上のヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想三次元立体構造を描き、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることによって、候補免疫グロブリン配列の機能において、残基が果たしていると思われる役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原への結合能に影響を与える残基の分析が可能となる。このように、所望の抗体特性(標的抗原に対する増加した親和性など)が達成されるように、コンセンサス配列及び移入配列から、FR残基を選択し、合体させることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与える上で、直接且つ最も大きく関与している。
【0097】
「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫化に使用されるマウスとして、XenoMouse(登録商標)(Abgenix, Fremont, CA)を使用することである。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって、免疫グロブリン遺伝子が置換されている、本発明のマウス宿主である。このため、本マウスによって産生される抗体、又は本マウスのB細胞から作製されるハイブリドーマ中で産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号(参照により、その全体が本明細書に援用される。)に記載されている。HuMAb−Mouse(登録商標)(Medarex)を用いて、類似の方法を行うことが可能である。
【0098】
ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作された他のトランスジェニック動物を免疫化のために使用することによって(Jakobovitz et al., Nature 362 (1993) 255)、又はファージディスプレイ法を使用して、抗体レパートリーを選択することによって、様々な他の技術に従って作製することもできる。このような技術は当業者に公知であり、本願に開示されているモノクローナル抗体から出発して、実施することができる。
【0099】
本発明の抗体、好ましくはDF200様抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(キメラ抗体においては、重鎖及び/又は軽鎖の一部は元の抗体中の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りは別の種に由来し、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である。)に誘導化することも可能であり、所望の生物活性を発揮する限りにおいて、かかる抗体の断片に誘導化することも可能である(Cabilly et al., supra; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984)。
【0100】
本発明の範囲に属する他の誘導体には、機能化された抗体(すなわち、トキシン(リシン、ジフテリアトキシン、アブリン及びシュードモナスのエキソトキシンなど)、検出可能な部分(蛍光部分、放射性同位体又は造影剤など)、又は固相支持体(アガロースビーズなど)に抱合され、又は共有結合されている抗体)が含まれる。これらの他の因子を抗体に抱合又は共有結合させる方法は、当該技術で周知である。
【0101】
トキシンへの抱合は、その細胞表面上の交叉反応性KIR受容体の一つを提示するNK細胞を標的として死滅させるのに有用である。本発明の抗体が、このような細胞の細胞表面に結合すると、抗体は内部に取り込まれて、細胞の内部でトキシンが放出され、その細胞を選択的に死滅させる。このような使用は、本発明の別の実施形態である。
【0102】
本発明の抗体を診断目的で使用する場合には、検出可能な部分への抱合が有用である。このような目的には、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在について、生物学的試料をアッセイすること、及び交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在を生物中に検出することが含まれるが、これらに限定されるものではない。このようなアッセイ法及び検出法も、本発明の別の実施形態である。
【0103】
固相支持体への本発明の抗体の抱合は、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞を、生体液などの採取源からアフィニティー精製するためのツールとして有用である。この精製法は、本発明の別の実施形態であり、得られたNK細胞の精製集団も同様である。
【0104】
別の実施形態において、少なくとも2つの異なるヒト阻害的KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合し、前記二つの異なるヒト阻害的KIR受容体の少なくとも一つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞毒性の、KIRによって媒介される阻害を中和することができる本発明の抗体(NKVSF1を含む。)を、単独で、又は動物に誘導して送達するための別の物質とともに、リポソーム(イムノリポソーム)中に取り込むことができる。このような他の物質には、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸;又はNK細胞中の遺伝子を抑制するためにアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸;又はNK細胞を標的として死滅させるための毒素若しくは薬物が含まれる。
【0105】
それらの公表されている結晶構造(Maenaka et al. (1999), Fan et al. (2001), Boyington et al. (2000))に基づく、KIR2DL1、−2及び−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1及びKIR2DL1−3交叉反応性マウスモノクローナル抗体DF200とNKVSF1との相互作用において、一部の領域又はKIR2DL1、−2及び−3が関与していることを予想した。このため、一実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域内で、KIR2DL1に専ら結合する抗体を提供する。別の実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域外のアミノ酸残基と相互作用せずに、KIR2DL1及びKIR2DL2/3に結合する抗体を提供する。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR131がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0107】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR157がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR158がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1残基に結合する抗体(131,157,158)を提供する。
【0110】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DS3(R131W)に結合し、野生型KIR2DS3に結合しない抗体を提供する。
【0111】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方並びにKIR2DS4に結合する抗体を提供する。
【0112】
ある抗体が、上記定義のエピトープ領域の一つの中で結合するかどうかの決定は、当業者に公知の方法で実施することができる。このようなマッピング/性質決定法の一例として、抗KIR抗体に対するエピトープ領域は、KIR2DL1又はKIR2DL2/3タンパク質中の露出したアミン/カルボキシルの化学的な修飾を用いた、エピトープ「フットプリンティング」によって決定され得る。このようなフットプリンティング技術の一つの具体例は、HXMS(質量分析法によって検出される、水素−重水素交換)の使用であり、HXMSにおいては、受容体及びリガンドタンパク質のアミドプロトンの水素/重水素交換、結合及び逆交換が起こり、タンパク質結合に関与している骨格アミド基は、逆交換から保護されるので、重水素化されたままとなるであろう。この時点で、ペプシンによるタンパク質分解、高速小孔高性能液体クロマトグラフィー分離及び/又はエレクトロスプレイイオン化質量分析によって、該当する領域を同定することができる。例えば、「Ehring H, Analytical Biochemistry, Vol. 267 (2) pp. 252-259(1999)」及び/又は「Engen, J.R. and Smith, D.L. (2001) Anal. Chem. 73, 256A-265A」を参照されたい。適切なエピトープ同定技術の別の例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)である。核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)においては、典型的には、遊離抗原及び抗原結合ペプチド(抗体など)と複合体を形成した抗原の、二次元NMRスペクトルのシグナルの位置が比較される。抗原は、典型的には、抗原に対応するシグナルのみが、NMRスペクトルに観察され、抗原結合ペプチドからのシグナルが観察されないように、15Nで選択的に同位体標識されている。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、典型的には、遊離抗原のスペクトルと比べて、複合体のスペクトルにおける位置がシフトしており、このようにして、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。例えば、「Ernst Schering Res Found Workshop. 2004;(44):149-67; Huang et al, Journal of Molecular Biology, Vol. 281 (1) pp. 61-67 (1998);及び「Saito and Patterson, Methods. 1996 Jun;9(3):516-24」を参照されたい。エピトープマッピング/特定は、質量分析法を用いて実施することも可能である。例えば、「Downward, J Mass Spectrom. 2000 Apr;35(4):493-503」及び「Kiselar and Downard, Anal Chem. 1999 May 1;71(9):1792-801」を参照されたい。
【0113】
エピトープマッピング及び同定においては、プロテアーゼ消化技術も有用であり得る。抗原性決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化(例えば、37℃及びpH7から8でのo/n消化において、KIR2DL1又はKIR2DL2/3に対して約1:50の比率のトリプシンを使用することによって)の後に、ペプチド同定のため質量分析(MS)を行うことによって決定することができる。抗KIR結合物質によってトリプシン切断から保護されたペプチドは、続いて、トリプシン消化を行った試料と、抗体とともにインキュベートされ、次いで、例えばトリプシンによる消化を行った試料(これにより、結合物質に対するフットプリントが明らかとなる。)とを比較するによって同定することができる。類似のエピトープ特定法では、キモトリプシン、ペプシンなどの他の酵素も使用することができ、又は他の酵素を代わりに使用することができる。さらに、酵素消化は、抗原決定配列である可能性を有する配列が、表面に露出されていない抗KIRポリペプチドに関して、KIR2DL1の領域内に存在するかどうか、従って、免疫原性/抗原性に関連していない可能性が最も高いかどうかを分析するための簡易な方法となり得る。同様の技術の論述については、例えば、「Manca, Ann Ist Super Sanita. 1991;27(1):15−9」を参照されたい。
【0114】
カニクイザルとの交叉反応性
抗体NKVSF1は、カニクイザルから得られたNK細胞にも結合することが明らかとなった。実施例7を参照されたい。従って、本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応し、さらにカニクイザル由来のNK細胞にも結合する抗体、並びにその断片及び誘導体を提供する。この一実施形態において、前記抗体は抗体NKVSF1ではない。本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的ヒトKIR受容体と交叉反応する抗体並びにその断片及び誘導体の毒性を検査する方法であって、カニクイザルにおいて前記抗体を検査することを含む、方法も提供する。
【0115】
組成物及び投与
本発明は、NK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害的KIR受容体と交叉反応し、それらの阻害的シグナルを中和し、これらの細胞の活性を増強する抗体、その断片及び誘導体を、任意の適切なビヒクル中に、患者又はNK細胞を含む生物試料中でNK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で、含む薬学的組成物も提供する。該組成物は、さらに、薬学的に許容される担体を含む。このような組成物は、「本発明の抗体組成物」とも称される。一実施形態において、本発明の抗体組成物は、上記抗体の実施形態で開示されている抗体を含む。抗体NKVSF1は、本発明の抗体組成物中に存在し得る抗体の範囲に属する。
【0116】
本明細書において使用される「生物学的試料」という用語には、生体液(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞試料又は組織試料(例えば、骨髄)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0117】
これらの組成物に使用することができる薬学的に許容される担体には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダル・シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースをベースとした物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂などの塩又は電解質が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本発明の組成物は、患者又は生物試料中のNK細胞の活性を増強する方法で使用することができる。本方法は、前記組成物を前記患者又は生物試料と接触させる工程を含む。このような方法は、診断目的と治療目的の両方に対して有用であろう。
【0119】
生物試料とともに使用する場合、前記抗体組成物は、試料の性質に応じて(液体又は固体)、前記試料と単純に混合し、又は前記試料に直接加えることによって投与することができる。前記生物試料は、任意の適切な装置(プレート、袋、フラスコなど)中で、前記抗体と直接接触させることができる。患者とともに使用する場合、前記組成物は、患者に投与するために調合されなければならない。
【0120】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、口腔、経膣、又は埋め込まれた容器を介して、投与され得る。本明細書において「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下内、肝臓内、病変部内及び頭蓋内注射又は注入技術が含まれる。好ましくは、前記組成物は、経口、腹腔内又は静脈内に投与される。
【0121】
本発明の前記組成物の無菌注射可能形態は、水性又は油性懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術において公知の方法に従って調合し得る。無菌の注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、非経口的に許容される無毒の希釈剤又は溶媒中の無菌注射可能溶液又は懸濁液とすることもできる。使用することができる許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として、都合よく使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドなど、任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油又はひまし油(特に、ポリオキシエチル化された様式)などの、薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、エマルジョン及び懸濁液などの薬学的に許容される剤形の調合において一般的に使用されているカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤など、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤も含有することができる。Tweens、Spansなどの一般的に使用される他の界面活性剤、及び薬学的に許容される固体、液体又はその他の剤形の製造において一般的に使用されるその他の乳化剤又は生物学的利用度の増強剤も、製剤の目的に対して使用することができる。
【0122】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液などの経口的に許容される任意の剤形(これらに限定されない。)で経口的に投与され得る。経口用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥されたコーンスターチが含まれる。経口用途のために水性懸濁液が必要とされる場合には、活性成分が乳化剤及び懸濁剤と混合される。所望であれば、ある種の甘味剤、着香剤又は着色剤も添加し得る。
【0123】
あるいは、本発明の組成物は、直腸投与するために、坐薬の形態で投与することもできる。これらは、室温で固体であるが、直腸の温度では液体であり、従って、直腸内で溶けて薬物を放出し得る、適切な非刺激性賦形剤と、薬剤を混合することによって調製することができる。このような物質には、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0124】
特に、眼、皮膚又は下部消化管の疾病など、治療の標的が局所適用によって容易に近づきやすい領域又は臓器を含む場合には、本発明の組成物は、局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、これらの領域又は臓器の各々に対して、容易に調製される。
【0125】
下部消化管に対する局所適用は、直腸坐剤調合物(上記参照)又は適切な浣腸調合物で実施することができる。局所経皮パッチも使用することができる。
【0126】
局所適用の場合、前記組成物は、一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切な軟膏中に調合することができる。本発明の化合物の局所投与用の担体には、ミネラル油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、前記組成物は、薬学的に許容される一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切なローション又はクリーム中に調合することができる。適切な担体には、ミネラル油、ソルビタンモノステアリン酸、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
眼科用途の場合には、前記組成物は、PH調整された等張無菌生理的食塩中の微粉化された懸濁液として、又は、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を加えた、又は加えない、PH調整された等張の無菌生理的食塩中の溶液として、調合することができる。あるいは、眼科用途の場合、前記組成物は、ワセリンなどの軟膏中に調合することができる。
【0128】
本発明の組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入によって、投与することもできる。このような組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な防腐剤、生物的利用可能性を増強するための吸収促進物質、過フッ化炭素及び/又は従来の可溶化又は分散剤を用いて、生理的食塩水中の溶液として調製し得る。
【0129】
Rituxan(Rituximab)、Herceptin(Trastuzumab)又はXolair(Omalizumab)など、幾つかのモノクローナル抗体が、臨床現場において有効であることが示されており、同様の投与計画(すなわち、調剤及び/又は投与量及び/又は投与プロトコール)を、本発明の抗体とともに使用することができる。本発明の薬学的組成物中の抗体の投与に関するスケジュール及び投与量は、例えば、製造業者の指示書を用いて、これらの製品に対して公知の方法に従って決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物中に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアル中に、10mg/mLの濃度で与えることができる。前記製品は、静脈内投与のために、9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート 80、及び注射用無菌水の中に調合される。pHを6.5に調整する。本発明の薬学的組成物中の抗体に対する典型的な適切な投与量範囲は、約10mg/m2から500mg/m2の間であり得る。しかしながら、これらのスケジュールは典型的なものであり、薬学的組成物中の具体的な抗体の親和性と許容性(これらは、臨床試験において決定しなければならない。)を考慮しながら、最適なスケジュール及び投薬計画を適合できることが理解されるであろう。24時間、48時間、72時間又は一週間又は一ヶ月間、NK細胞を飽和させる、本発明の薬学的組成物中の抗体の注入量及びスケジュールは、抗体の親和性及び抗体の薬物動態的なパラメータを考慮しながら決定されるであろう。
【0130】
別の実施形態に従えば、本発明の抗体組成物は、前記抗体が投与される具体的な治療目的のために通常使用される薬剤を含む、別の治療剤をさらに含み得る。追加される治療剤は、治療されている当該疾病又は症状に対する単剤療法において、その治療剤に対して典型的に使用される量で、前記組成物中に存在するのが通常であろう。このような治療剤には、癌の治療に使用される治療剤、感染性疾患を治療するために使用される治療剤、他の免疫療法に使用される治療剤、サイトカイン(IL−2又はIL−15など)、他の抗体及び他の抗体の断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
例えば、癌の治療に対して、多数の治療剤を使用することができる。本発明の抗体組成物及び方法は、特定の疾病、特に、腫瘍、癌疾患、又は患者が発病するその他の疾病又は疾患の治療で一般的に使用される他の任意の方法とともに組み合わせることができる。ある治療的アプローチが、それ自体で、患者の症状に対して有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物中の抗体の活性を著しく打ち消さない限り、本発明との併用が想定される。
【0132】
充実性腫瘍の治療に関していえば、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などの、古典的なアプローチとともに使用することができる。従って、本発明は、手術若しくは放射線治療と同時に、手術若しくは放射線治療の前に若しくは後に、本発明の薬学的組成物が使用され;又は従来の化学療法、放射線療法若しくは抗血管新生剤、若しくは標的に誘導される免疫毒素若しくは凝固リガンド(coaguligand)とともに、それらの前に若しくは後に患者に投与される、併用療法を提供する。
【0133】
治療計画において、本発明の抗体含有組成物とともに、一又は複数の薬剤を使用する場合には、併用した結果が、各治療が別個に実施されたときに観察される効果を加算したものである必要はない。少なくとも加算的な効果が一般に望ましいが、単剤療法の一つを上回る、何らかの増加した抗癌効果は、有益であろう。また、相乗効果を発揮することは確かに可能であり、有利であるが、併用治療が相乗効果を発揮することは必要ではない。併用抗癌療法を実施するためには、併用された抗癌作用を動物内にもたらすのに有効な様式で、別の抗がん剤とともに、本発明の抗体組成物を動物に単に投与すればよいであろう。従って、前記薬剤は、それらが腫瘍脈管構造内に同時に存在し、腫瘍環境中で併合作用をもたらすのに有効な量及び期間で、与えられるであろう。この目標を達成するために、本発明の抗体組成物と抗癌剤は、単一の併用組成物中に入れて、又は異なる投与経路を用いる2つの別個の組成物として、動物に同時に投与し得る。
【0134】
あるいは、本発明の抗体組成物の投与は、例えば、分から週及び月単位にわたる間隔を置き、抗癌剤治療の前又は後に行うことができる。抗癌剤と本発明の抗体組成物中の抗体が、癌に対して、有利に併用効果を発揮することを確保するであろう。
【0135】
抗血管新生治療では、多くの抗癌剤は、本発明の阻害的KIR抗体組成物に先立って与えられるであろう。しかしながら、抗体の免疫抱合体を本発明の抗体組成物に使用するときには、様々な抗癌剤を、同時又は順次に投与することができる。
【0136】
幾つかの状況では、治療のための期間を著しく延長することが望ましい場合さえあり得、この場合、抗癌剤又は抗癌治療と本発明の抗体組成物の各投与との間には、数日(2、3、4、5、6又は7)、数週(1、2、3、4、5、6、7又は8)、又は数ヶ月(1、2、3、4、5,6、7又は8)が経過する。これは、抗癌治療が腫瘍を実質的に破壊することを目的とし、本発明の抗体組成物の投与が微小転移又は腫瘍の再増殖を抑えることが目的とされる状況(手術又は化学療法など)において有利であろう。
【0137】
本発明の阻害的KIR抗体をベースとした組成物又は抗癌剤のうち何れかを2回以上投与することも想定される。これらの薬剤は、隔日若しくは隔週に、交互に投与してもよく、又は、本発明の阻害的KIR抗体組成物を用いた治療を繰り返した後、抗癌剤療法を繰り返してもよい。何れにしろ、併用療法を用いて、腫瘍の退化を達成するために必要なものは、投与の回数にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに有効な併合量で、両薬剤を送達することだけである。
【0138】
手術に関しては、任意の外科的介入を、本発明と組み合わせて実施することができる。放射線療法に関しては、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、さらには電子放射など、DNAの損傷を癌細胞内に局所的に誘導するための任意の機序が想定される。放射線同位体を癌細胞へ誘導して送達することも想定され、これは、標的誘導抗体又はその他の標的誘導手段と組み合わせて使用することができる。
【0139】
他の側面では、免疫調節化合物又は療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて、又は本発明の抗体組成物の一部として、投与することができる。免疫調節化合物の好ましい例には、サイトカインが含まれる。このような併用アプローチでは、様々なサイトカインを使用することができる。本発明によって想定される、前記組み合わせにおいて有用なサイトカインの例には、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、IFN−γが含まれる。本発明の併用治療又は組成物に使用されるサイトカインは、患者の症状及びサイトカインの相対的毒性などの臨床的指標に合わせて、標準的な投薬計画に従って投与される。
【0140】
一部の実施形態において、交叉反応する阻害的KIR抗体を含む本発明の治療用組成物は、化学療法剤若しくはホルモン治療剤とともに投与することができ、又は化学療法剤若しくはホルモン治療剤をさらに含むことができる。様々なホルモン療法剤及び化学療法剤は、本明細書に開示されている併用治療法において使用することができる。典型的なものとして想定される化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシン アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、並びにそれらの誘導体及びプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
ホルモン剤には、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン及びブセレリンなどのLHRHアゴニスト;タモキシフェン及びトレミフェンなどの抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、シプロテロン及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール及びファドロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;並びにメドロキシ、クロルマジノン及びメゲストロールなどの黄体ホルモンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
当業者であれば自明であるように、化学療法剤の適切な用量は、化学療法剤が単独で投与され、又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される、臨床療法で既に使用されている用量に近いであろう。単なる例示であるが、シスプラチンなどの薬剤及びその他のDNAアルキル化剤を使用することができる。シスプラチンは、癌を治療するために広く使用されており、臨床用途で使用される有効用量は、計三つの治療単位にわたって、三週ごとに、5日間、20mg/m2である。シスプラチンは、経口で吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内又は腹腔内注射によって、送達されなければならない。
【0143】
さらなる有用な化学療法剤には、DNAの複製、有糸分裂及び染色体分離を妨害する化合物、並びにポリヌクレオチド前駆体の合成及び忠実度を乱す薬剤が含まれる。併用療法のための典型的な数多くの化学療法剤が、米国特許6,524,583号の表Cに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。列記されている薬剤の各々は典型例であり、限定的なものではない。当業者は、「“Remington's Pharmaceutical Sciences” 15th Edition, chapter 33, 特に、pages 624-652」を参照されたい。投薬量の変動は、治療されている症状に応じて、起こり得るであろう。治療を施す医師は、各対象者に対する適切な用量を決定することができるであろう。
【0144】
本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体組成物は、一若しくは複数の他のあらゆる抗血管新生療法とともに使用することができ、又は抗血管新生剤をさらに含むことができる。このような薬剤の例には、各々VEGF又はVEGF受容体に対して誘導された中和抗体、アンチセンスRNA,siRNA、RNAi、RNAアプタマー及びリボザイムが含まれる(米国特許第6,524,583号、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。)。WO 98/16551号(参照により、本明細書に明確に組み込まれる。)に記載されているように、アンタゴニスト特性を有するVEGFの変異形を使用することもできる。併用療法とともに使用される典型的な抗血管新生剤が、さらに、米国特許6,524,583号の表Dに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。
【0145】
本発明の阻害的KIR抗体組成物は、アポトーシスを誘導するための方法と組み合わせて有利に使用することもでき、又はアポトーシス剤を含むこともできる。例えば、アポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)を阻害する多数の癌遺伝子が同定されている。このカテゴリーに属する典型的な癌遺伝子には、bcr−abl、bcl−2(bc−1、サイクリンD1とは異なる;GenBank受託番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号;及び第5,539,094号、それぞれ、参照により、本明細書に援用される。)、Bcl−x1、Mcl−1、Bak、A1及びA20を含むファミリーメンバーが含まれるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現は、T細胞リンパ腫で初めて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax(アポトーシス経路中のタンパク質)に結合し、Baxを不活化させることによって機能する。bcl−2機能の阻害は、Baxの不活化を抑制し、アポトーシス経路を進行させる。このクラスの癌遺伝子の阻害は、例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNA又は小分子化学化合物を用いて、アポトーシスの強化を得るために、本発明に使用することが想定される(米国特許第5,650,491号;5,539,094号;及び5,583,034号、それぞれ、参照により、本明細書に組み込まれる。)。
【0146】
本発明の阻害的KIR抗体組成物は、標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)の特異的マーカーに対して誘導される、標的誘導部分(例えば、抗体、リガンド、又はそれらの抱合体)を含む分子(「標的誘導因子」)も含むことができ、又は前記分子とともに使用することができる。一般的に言えば、本発明のこのような追加の側面において使用するための標的誘導因子は、好ましくは、腫瘍部位で、優先的に又は特異的に発現される、接近可能な腫瘍抗原を認識するのが好ましいであろう。一般的に、標的誘導因子は、表面に発現された、表面に接近可能な、又は表面に限局された腫瘍細胞の成分に結合するであろう。標的誘導因子は、高親和性特性を発揮することも好ましく、心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、大腸、乳房、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、又はヒトの身体で生命を支えるその他の臓器若しくは組織から選択される一以上の組織など、生命を支える正常な組織に対して、インビボで著しい副作用を発揮しないことが好ましいであろう。本明細書において使用される「著しい副作用を発揮しない」という用語は、インビボに投与したときに、標的誘導因子が、化学療法中に通常遭遇されるような副作用を、無視できる程度に又は臨床的に管理可能なようにのみ生じ得る事実を表す。
【0147】
腫瘍の治療において、本発明の抗体組成物は、補助化合物をさらに含むことができ、又は補助化合物とともに使用することができる。補助化合物には、一例として、セロトニンアンタゴニストなどの制吐剤、並びにフェノチアジン、置換されたベンズアミド、抗ヒスタミン、ブチロフェノン、コルチコステロイド、ベンゾジアゼピン及びカンナビノイドなどの治療;ゾレドロン酸及びパミドロン酸などのビスフォスフォネート;並びにエリスロポエチン及びG−CSFなどの造血系増殖因子、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチム及びダルベポエチンが含まれ得る。
【0148】
別の実施形態では、可能な限り多くの阻害的KIR遺伝子産物の阻害的効果を中和するために、異なる交叉反応性を有する本発明の二以上の抗体(NKVSF1を含む。)を、単一の組成物中に組み合わせることができる。本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体又はそれらの断片若しくは誘導体の組み合わせを含む組成物は、単一の交叉反応抗体によって認識される各疎外的KIR遺伝子産物を欠如することがある、僅かなパーセントのヒト集団に存在する可能性があるので、さらに広く使用することが可能であろう。同様に、本発明の抗体組成物は、単一の阻害的KIRサブタイプを認識する一又は複数の抗体をさらに含み得る。このような組み合わせも、治療的な場面で、さらに広い用途を提供するであろう。
【0149】
本発明は、NK細胞活性を増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、前記患者中のNK細胞活性を増強する方法も提供する。本方法は、より具体的には、増加したNK細胞活性が有益であり、NK細胞による溶解に対して感受性のある細胞によって生じ、影響を受け、若しくは引き起こされ、又は不十分なNK細胞活性によって引き起こされ、若しくは不十分なNK細胞活性を特徴とする疾病(癌、その他の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫疾患など)を有する患者中のNK細胞活性を増加させることに向けられる。より具体的には、本発明の方法は、癌腫(膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺及び皮膚の癌腫を含み、扁平上皮癌を含む。);リンパ系の造血系腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burketts)リンパ腫を含む。);骨髄細胞系列の造血系腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む。);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫及び横紋筋肉腫を含む。);他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫及び神経膠腫を含む。);中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む。);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む。);並びにその他の腫瘍(黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌を含む。)を含む(これらに限定されない。)、様々な癌及び他の増殖性疾患の治療のために使用される。
【0150】
本発明によって治療することができる好ましい疾患には、リンパ系統の造血系腫瘍(例えば、小細胞及び脳細胞タイプのものを含む、T前リンパ球性白血病(T−PLL);大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、好ましくはT細胞タイプのもの;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/後胸腺T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球型;及びリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)などのT細胞疾患を含む(これらに限定されない。)、T細胞及びB細胞腫瘍)が含まれる。
【0151】
例えば、過形成、繊維症(特に肺繊維症、腎繊維症などその他の種類の繊維症)、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化、及び血管中の平滑筋増殖(血管形成術後の狭窄又は再狭窄など)を含む、その他の増殖性疾患も、本発明に従って治療することができる。本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体は、好ましくはウイルス、細菌、原虫、カビ又は真菌によって引き起こされる任意の感染症を含む、感染性疾患を治療又は予防するために使用することができる。このようなウイルス性感染性生物には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI(HSV−1)、単純疱疹ウイルス2(HSV−1)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス(huntavirus)、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス及びヒト免疫不全症候群ウイルスI型又は2型(HIV−1、HIV−2)が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
本発明に従って治療することができる細菌性感染症には、以下のもの:ブドウ球菌(Staphylococcus);連鎖球菌(Streptococcus)(S. pyogenesを含む。);腸球菌(Enterococcl);棹菌(Bacillus)(Bacillus anthracis及びLactobacillusを含む。);リステリア菌(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);ガルドネレラ属(Gardnerella)(G. vaginalisを含む。);ノカルジア菌(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponema);カンピロバクター菌(Camplyobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)(Raeruginosaを含む。);レジオネラ(Legionella);ナイセリア(Neisseria)(N.gonorrhoea及びN.meningitidesを含む。);フラボバクテリウム(Flavobacterium)(F. meningosepticum及びF. odoraturnを含む。);ブルセラ(Brucella);ボルデテラ(Bordetella)(B. pertussis及びB. bronchisepticaを含む。);エシェリキア属(Escherichia)(E. coliを含む)、クレブシエラ菌(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)(S. marcescens及びS. liquefaciensを含む。);エドワードシエラ属(Edwardsiella);プロテウス属(Proteus)(including P. mirabilis及びP. vulgarisを含む。);ストレプトバシラス属(Streptobacillus);リケッチア科(Rickettsiaceae)(R. fickettsfiを含む。)、クラミジア(Chlamydia)(C. psittaci及びC. trachornatisを含む。);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(M. tuberculosis, M. intracellulare、M. folluiturn、M. laprae、M. avium、M. bovis、M. africanum、M. kansasii、M. intracellulare及びM. lepraernuriumを含む。); 及びノカルジア(Nocardia)によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0153】
本発明に従って治療され得る原虫感染症には、リーシュマニア、コクジディオア(kokzidioa)及びトリパノソーマによって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。感染性疾患の完全なリストは、疾病対策センター(CDC)にある国立感染症センター(NCID)のホームページ上に記載されており(http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/)、このリストは、参照により、本明細書に組み込まれる。前記疾病の全てが、本発明の交叉反応性阻害的KIR抗体を用いた治療の候補である。
【0154】
様々な感染性疾患を治療するこのような方法は、単独で、又は他の処置及び/又はこのような疾病を治療することが知られている治療剤(抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗生物質、抗寄生虫剤及び抗原虫剤を含む。)と組み合わせて、本発明の抗体組成物を使用することができる。これらの方法が、追加の治療剤を用いた追加の処置を含む場合には、これらの治療剤は、単一剤形として、又は別個の複数剤形として、本発明の抗体とともに投与することができる。別個の剤形として投与されるときには、前記追加の治療剤は、本発明の抗体の投与の前、同時、後に投与することができる。
【0155】
本発明のさらなる側面及び利点は、以下の実験の部に開示されている。以下の実験の部は例示であり、本願の範囲を限定すると解釈してはならない。
【実施例】
【0156】
<実施例1>
PBLの精製及びポリクローナル又はクローナルNK細胞株の作製
PBLは、Ficoll Hypaqueグラジエント及びプラスチック接着細胞の枯渇によって、健康なドナーから得た。濃縮されたNK細胞を得るために、抗CD3、抗CD4及び抗HLA−DR mAb(4℃で30分)とともにPBLをインキュベートした後、ヤギ抗マウス磁気ビーズ(Dynal)(4℃で30分)とともにインキュベートし、当該技術で公知の方法によって免疫磁気選択を行った(Pende et al.,1999)。放射線照射された支持細胞、及び100U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1.5ng/mL フィトヘマグルチニンA(Gibco BRL)上でCD3−、CD4−、DR−細胞を培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。限界希釈によって、NK細胞をクローニングし、細胞表面受容体の発現について、フローサイトメトリーにより、NK細胞のクローンの特性を決定した。
【0157】
使用したmAbは、JT3A(IgG2a、抗CD3)、EB6及びGL183(それぞれ、IgG1抗KIR2DL1及びKIR2DL3)、XA−141 IgM(EB6と同一の特異性を有する抗KIR2DL1)、抗CD4(HP2.6)及び抗DR(D1.12、IgG2a)であった。出願人によって作製されたJT3A、HP2.6及びDR1.12の代わりに、同一の特異性を有する市販のmAbを使用することができる(Beckman Coulter Inc., Fullerton, CA)。EB6及びGL183は、市販されている(Beckman Coulter Inc., Fullerton,CA)。XA−141は市販されていないが、既述のように、溶解の対照再生用として、EB6を使用することができる(Moretta et al.,1993)。
【0158】
適切な抗体(4℃で30分)により、細胞を染色した後、PE又はFITC抱合ポリクローナル抗マウス抗体(Southern Biotechnology Associates Inc)によって染色した。FACSAN装置(Becton Dickinson, Mountain View, CA)での細胞蛍光測定分析によって、試料を分析した。
【0159】
本研究では、以下のクローンを使用した。CP11、CN5及びCN505は、KIR2DL1陽性クローンであり、EB6(IgG1抗KIR2DL1)又はXA−141(EB6抗体と比べて同一の特異性を有するIgM抗KIR2DL1)によって染色され、CN12及びCP502は、KIR2DL3陽性クローンであり、GL183抗体(IgG1抗KIR2DL3)によって染色される。
【0160】
NKクローンの細胞溶解活性は、NK細胞溶解に対して感受性があることが知られているCw3又はCw4陽性細胞株に対してエフェクターNK細胞を検査する、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。全ての標的は、マイクロタイタープレート中、5000細胞/ウェルで使用した。エフェクター:標的の比は、図に記されている(通常は、4エフェクター/標的細胞)。1/2希釈の表記モノクローナル抗体の上清を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。手順は、(Moretta et al.,1993)に記載されているものと実質的に同じであった。
【0161】
<実施例2>
新しいmAbの作製
(Moretta et al., 1990)に記載されているように、活性化されたポリクローナル又はモノクローナルNK細胞株で、5週齢のBalb Cマウスを免疫することによって、mAbを作製した。異なる細胞融合の後、まず、EB6及びGL183陽性NK細胞株及びクローンと交叉反応する能力について、MAbを選択した。さらに、それぞれ、Cw4又はCw3陽性標的のEb6陽性又はGL183陽性NKクローンによって、溶解を再生する能力について、陽性モノクローナル抗体のスクリーニングを行った。
【0162】
細胞の染色は、以下のように行った。抗体のパネル(1μg/mL又は50μL上清、4℃で30分)で細胞を染色し、続いて、PE抱合ヤギF(ab’)2断片抗マウスIgG(H+L)又はPE抱合ヤギF(ab’)2断片抗ヒトIgG(Fcγ)抗体(Beckman Coulter)で染色した。細胞蛍光測定分析は、Epics XL.MCL装置(Beckman Coulter)で行った。
【0163】
モノクローナル抗体のうちの一つ、DF200 mAbは、KIR2DL1、KIR2DL2/3を含む、KIRファミリーの様々なメンバーと反応することが明らかとなった。KIR2DL1+及びKIR2DL2/3+ NK細胞の両方が、DF200mAbで明るく染色された(図1)。
【0164】
これらのHLAクラスI特異的な阻害的受容体の一方又は他方(又は、ある場合には両方)を発現するNKクローンを、一または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した。細胞毒性アッセイは、以下のように行った。YTS−KIR2DL1又はYTS−Eco細胞株の細胞溶解活性は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。エフェクター細胞は、HLA−Cw4陽性又は陰性EBV細胞株及びHLA−Cw4をトランスフェクトされた721.221細胞に対して検査された。全ての標的は、マイクロタイタープレート中、3000細胞/ウェルで使用した。エフェクター/標的比は、図に記されている。モノクローナルマウス又はヒト抗体の表記完全長又はF(ab’)2断片を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。予想通り、KIR2DL1+ NKクローンは、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対して細胞溶解活性をほとんど示さず、KIR2DL3+ NKクローンは、Cw3陽性標的に対して、殆ど又は全く活性を示さなかった。しかしながら,DF200mAb(NKクローンのKIR2DL受容体を遮蔽するために使用された。)の存在下では、NKクローンはそれらのHLA−Cリガンドを認識することが不可能となり、Cw3又はCw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。
【0165】
例えば、C1R細胞株(CW4+ EBV細胞株、ATCCn°CRL 1993)は、KIR2DL1+ NKクローン(CN5/CN505)によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200又は従来の抗KIR2DL1 mAbのうち何れかの使用によって、効率的に元に戻すことができた。これに対して、KIR2DL2/3+ KIR2DL1−表現型を発現するNKクローン(CN12)は、C1R細胞を効率的に死滅させ、この死滅は、DF200mAbによって影響を受けなかった(図2)。Cw3陽性標的に対してKIR2DL2−又はKIR2DL3−陽性NKクローンを用いた場合にも、同様の結果が得られる。
【0166】
同様に、Cw4+221 EBV細胞株は、KIR2DL1+トランスフェクトNK細胞によって死滅されなかったが、DF200、DF200 Fab断片又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6若しくはXA141の何れかを使用することによって、効率的に阻害を元に戻すことができた。また、Cw3+221 EBV細胞株は、KIR2DL2+NK細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200又はDF200 Fab断片のうち何れかを使用することによって元に戻すことができた。最後に、後者のCw3+221EBV細胞株は、KIR2DL3+NK細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、DF200 Fab断片又は従来の抗KIR2DL3 mAb GL183若しくはY249の何れかを使用することによって、元に戻すことができた。結果を図3に示す。
【0167】
Cw4陽性標的の溶解を再生する能力について、F(ab’)2断片も検査した。DF200及びEB6 AbsのF(ab’)2断片は何れも、Cw4をトランスフェクトされた221細胞株及びCw4+TUBO EBV細胞株の、KIR2DL1−トランスフェクトNK細胞による溶解の阻害を回復させることができた。結果を図4に示す。
【0168】
<実施例4>
新しいヒトmAbの作製
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを、組換えKIRタンパク質で免疫することによって、ヒトモノクローナル抗KIR Abを作製した。異なる細胞融合の後、まず、固定されたKIR2DL1及びKIR2DL2タンパク質と交叉反応する能力について、MAbを選択した。1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1を含む数個のモノクローナル抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3と反応しないことが見出された。
【0169】
さらに、Cw4陽性標的細胞のKIR2DL1を発現するEB6陽性NK形質移入体による溶解を再生する能力について、陽性モノクローナル抗体のスクリーニングを行った。HLAクラスI特異的な阻害的受容体を発現するNK細胞を、一または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した(図5及び6)。細胞毒性アッセイは、上記のように行った。エフェクター/標的比は、図に記されており、抗体は10μg/mL又は30μg/mLの何れかで使用した。
【0170】
予想通り、KIR2DL1+ NK細胞は、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対する細胞溶解活性を殆ど示さなかった。しかしながら,1−7F9 mAbの存在下では、NK細胞はそれらのHLA−Cリガンドを認識することが不可能となり、Cw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。例えば、検査した2つの細胞株(HLA−Cw4トランスフェクト721.221及びCW4+EBV細胞株)は、KIR2DL1+ NKクローン細胞によって死滅しなかったが、この阻害は、Mab 1−7F9又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6のうち何れかを使用することによって、効率的に元に戻すことができた。Abs DF200及びpanKIR(NKVSF1とも表記される。)を1−7F9と比較した。これに対して、抗体1−4F1、1−6F5及び1−6F1は、Cw4陽性標的に対する、NK細胞による細胞溶解を再生することができなかった。
【0171】
<実施例5>
DF200 mAb/KIR2DL1及びDF200 mAb/KIR2DL3相互作
用のBiacore分析
組換えタンパク質の作製と精製
KIR2DL1及びKIR2DL3組換えタンパク質を、E.コリ中で作製した。以下のプライマーを用いて、それぞれ、pCDM8クローン47.11ベクター(Biassoni et al, 1993)及びRSVS(gpt)183クローン6 ベクター(Wagtman et al, 1995)から、KIR2DL1及びKIR2DL3の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、PCRによって増幅した。
【0172】
センス::5’−GGAATTCCAGGAGGAATTTAAAATGCATGAGGGAGTCCACAG−3’
アンチセンス:5’−CGGGATCCCAGGTGTCTGGGGTTACC−3’
ビオチン化シグナルをコードする配列とともに、それらをpML1発現ベクター中にイ
ンフレームにクローニングした(Saulquin et al, 2003)。
【0173】
タンパク質発現は、BL21(DE3)細菌株(Invitrogen)の中で行った。アンピシリン(100μg/mL)を補充した培地中にて、37℃で、OD600=0.6になるまで、トランスフェクトされた細菌を増殖させ、1mM IPTGで発現を誘導した。
【0174】
変性条件下(8M尿素)で、タンパク質を封入体から回収した。組換えタンパク質の再折り畳みは、6段階の透析で尿素濃度を減少させることによって(それぞれ、4、3、2、1、0.5 及び0Mの尿素)、室温で、L−アルギニン(400 mM, Sigma)及びβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20 mM Tris, pH 7.8、NaCl 150 mM緩衝液中において行った。0.5及び0Mの尿素透析工程の間に、還元されたグルタチオン及び酸化されたグルタチオン(それぞれ、5mM及び0.5mM、Sigma)を添加した。最後に、10 mM Tris, pH 7.5、NaCl 150 mM緩衝液に対して、タンパク質を徹底的に透析した。再折り畳みされた可溶性タンパク質を濃縮し、次いで、Superdex 200サイズ排除カラム(Pharmacia; AKTA system)上で精製した。
【0175】
表面プラズモン共鳴測定は、Biacore装置(Biacore)によって行った。全てのBiacore実験では、0.05%の界面活性剤P20を補充したHBS緩衝液が、ランニングバッファーとしての役割を果たした。
【0176】
タンパク質の固定
上記のように作製された組換えKIR2DL1及びKIR2DL3タンパク質を、Sensor Chip CM5(Biacore)上にあるデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合により固定した。センサーチップの表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド及びN−ヒドロキシスクシンイミド、Biacore)で活性化した。カップリング緩衝液(10mM 酢酸塩、pH4.5)中のタンパク質を注入した。残存する活性化された基の非活性化は、100mM エタノールアミン pH8(Biacore)を用いて実施した。
【0177】
親和性測定
速度論の測定のために、様々な濃度の可溶性抗体(1×10−7から4×10−10M)を、前記固定された試料上に与えた。測定は、20μL/分の継続的な流速で実施した。各サイクルについて、センサーチップの表面、5μL注入の10mM NaOH pH11によって再生した。データ解析には、BIAlogue Kinetics Evaluation program (BIAevaluation 3.1, Biacore)を使用した。可溶性検体(様々な濃度で40μL)を、20μL/分の流速で、HBS緩衝液中、それぞれ、500又は540反射ユニット(RU)及び1000又は700RUのKIR2DL1及びKIR2DL3を含有するデキストラン層上に注入した。データは、6つの独立した実験を代表するものである。結果を下表1に示す。
【0178】
表1 固定されたKIR2DL1及びKIR2DL3に結合するDF200 mAbの
BIAcore分析
【表1】
【0179】
KD:解離定数
【0180】
<実施例6>
マウス及びヒト抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
以前に記載されたとおりに(Gauthier et al 1999, Saunal and van Regenmortel 1995)、マウス抗KIR 2D抗体DF200、Pan2D、gl183及びEB6並びにヒト抗KIR2D抗体1−4F1、1−6F5及び1−7F9を用いて、固定されたKIR 2DL1(900 RU)、KIR 2DL3(2000 RU)及びKIR 2DS1(1000 RU)に対して、エピトープマッピング分析を行った。
【0181】
全ての実験は、15μg/mLで様々な抗体を2分間注入し、HBS緩衝液中、5μL/分の流速で行った。抗体の各対に対して、競合結合分析を2段階で実施した。第一段階では、KIR 2D標的タンパク質上に第一のモノクローナル抗体(mAb)を注入した後、(第一のmAbを除去せずに)第二のmAbを注入し、第二のmAbのRU値(RU2)をモニターした。第二段階では、まず、裸のKIR 2Dタンパク質上に第二のmAbを直接注入し、mAb RU値(RU1)をモニターした。第一のmabによる、KIR 2Dタンパク質への第二のmAbの結合のパーセント阻害を、100*(1−RU2/RU1)によって計算した。
【0182】
結果を表2、3及び4に示す。表2、3及び4において、「第一の抗体」と表記される抗体が縦の欄に列記されており、「第二の抗体」が横の欄に列記されている。検査した各抗体の組み合わせについて、チップへの抗体の直接結合レベル(RU)の値が表中に列記されている。表中では、第二の抗体のKIR2Dチップへの直接結合が欄の上部に列記されており、第一の抗体が存在する際の、KIR2Dチップへの第二の抗体の結合に対する値が欄の下部に列記されている。各欄の右側に列記されているのは、第二の抗体結合のパーセント阻害である。表2は、KIR2DL1チップ上への結合を示しており、表3は、KIR2DL3チップへの抗体の結合を示しており、表4は、KIR2DS1チップへの抗体の結合を示している。
【0183】
固定されたKIR2DL1、KIR2DL2/3及びKIR2DS1への、マウス抗体DF200、NKVSF1及びEB6並びにヒト抗体1−4F1、1−7F9及び1−6F1の競合結合を評価した。KIR2DL1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図7)は、(a)抗体1−7F9がEB6及び1−4F1と競合するが、NKVSF1及びDF200とは競合しないこと、(b)次に、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1及び1−7 F9と競合すること; (c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。KIR2DL3への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図8)は、(a)1−4F1がNKVSF1、DF200、gl183及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9がDF200、gl183及び1−4F1と競合するが、NKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びGL183と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及び1−7F9と競合するが、GL183とは競合しないことを、示した。KIR2DS1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(図9)は、(a)抗体1−4F1がNKVSF1、DF200及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9は、1−4F1と競合するが、DF200及びNKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。
【0184】
<実施例7>
カニクイザルNK細胞を用いた抗KIR mAb滴定
カイクイザルから得られたNK細胞への結合能について、抗KIR抗体NKVSF1を検査した。サルのNK細胞への抗体の結合が図10に示されている。
【0185】
サルPBMCの精製及びポリクローナルNK細胞バルクの作製
カニクイザルのPBMCを Sodium citrate CPTチューブ(Becton Dickinson)から調製した。NK細胞の精製は、陰性の枯渇によって行った(Macaque NK cell enrichment kit, Stem Cell Technology)。放射線照射されたヒト支持細胞、300U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1ng/mL フィトヘマグルチニンA(Invitrogen, Gibco)上でNK細胞を培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。
【0186】
カニクイザルNK細胞を用いたPan2D mAb滴定
カニクイザルNK細胞(NKバルク16日)を異なる量のPan2D mAbとともにインキュベートし、続いて、PE抱合されたヤギ(Fab’)2断片抗マウスIgG(H+L)抗体とともにインキュベートした。陽性細胞のパーセントは、アイソタイプ対照(精製されたマウスIgG1)を用いて決定した。試料は、二つ組みで行った。平均蛍光強度=MFI。
【表2】
【表3】
【表4】
【0187】
<実施例8>
KIR2DL1へのDF200及びpan2D結合のエピトープマッピング それらの公表されている結晶構造(Maenaka et. al. (1999), Fan et al. (2001), Boyington et al. (2000))に基づく、KIR2DL1、−2及び−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1及びKIR2DL1−3交叉反応性マウスモノクローナル抗体(mAb)DF200とpan2Dとの相互作用において、アミノ酸R1311が関与していることを予想した(1:一文字アミノ酸コード)。これを確かめるために、ヒトFc(hFc)に融合されたKIR2DL1(野生型又は点変異されたもの(例えば、R131W2))の完全な細胞外ドメイン(アミノ酸H1−H224)からなる融合タンパク質を調製した(2:KIR2DL1中の(N末端から)131位のアミノ酸におけるRのWへの置換)。様々なKIR2DL1−hFc融合タンパク質を作製し、評価するために使用した材料と方法は、既に記載されている(Winter and Long (2000))。要約すると、野生型KIR2DL1−hFcの作製用に公表されているcDNA−ベクターであるCL42−Ig(Wagtmann et al. (1995))を、PCRを用いて変異導入(Quickchange II,Promega)することによって、KIR2DL1(R131W)−hFcをコードするcDNAベクターを作製した。実質的に記載のとおり((Wagtmann et al.1995))、COS7細胞中でKIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcを産生させ、組織培地から単離した。それらが正しく折りたたまれたかどうかを調べるために、HLA−Cw3(KIR2DL1リガンドなし)又はHLA−Cw4(KIR2DL1リガンド)の何れかを発現するLCL721.221細胞とともに、KIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcをインキュベートし、KIR−Fc融合タンパク質と細胞間の相互作用をFACS(細胞表面でのタンパク質の相互作用を調べるための標準的な技術)によって分析した。独立した実験の例が、図11、パネルAに記されている。文献から予測されたように、KIR2DL1−hFc融合は何れも、LCL721.221細胞を発現するHLA−Cw3を結合しなかった。これに対して、KIR2DL1−hFc及びKIR2DL1(R131W)−hFcは何れも、LCL721.221細胞を発現するHLA−Cw4に結合し、これにより、それらの折り畳みが正しいことが確認された。
【0188】
KIR2DL1(R131W)−hFc及びKIR2DL1−hFcの、KIR特異的mAb(DF200、pan2D、EB6及びGL183)への結合は、タンパク質の相互作用を調べるための標準的な技術であるELISAを用いて調べた。要約すると、ヤギ抗ヒト抗体を介して、KIR2DL1(R131W)−hFc及びKIR2DL1−hFcを96ウェルプレートに連結した後、KIR特異的mAbを様々な濃度(PBS中、0−1μg/mL)で添加した。KIR2DL1−hFc変異形とmAb間の相互作用は、TMB基質を変換するためにマウス抗体に対して特異的なペルオキシダーゼ結合二次抗体を用いた、分光光度法(450nm)によって可視化した。独立した実験の例が、図11、パネルBに記されている。KIR2DL2−3特異的mAb GL183が、何れのKIR2DL1−hFc融合タンパク質にも結合できなかったのに対して、KIR2DL1特異的mAbであるEB6、DF200及びpan2Dは、用量依存的に、KIR2DL1−hFc変異形に結合した。単一の点変異(R131W)は、DF200及びpan2Dの結合に影響を及ぼし、最高濃度のmAb(1μg/mL)での、野生型の約10%と比べて、結合が減少しており、R131が、KIR2DL1の細胞外ドメイン2の中で、DF200及びpan2Dの結合部位の一部であることが確認された。
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Winter CC; Long EO. Natural Killer Cells Protocols (edited by Campbell KS and Colonna M). Human Press. pp. 219-238 (2000)。
【0190】
公報、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用された全ての参考文献は、各参考文献が個別的且つ具体的に参照により援用され、その全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0191】
本明細書で使用されている全ての見出し及び小見出しは、便宜的に使用されているものにすぎず、いかなる意味においても、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0192】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、考えられる全ての変形における上記要素のあらゆる組み合わせが、本発明によって包含される。
【0193】
本発明を記載する際に使用される「a」及び「an」及び「the」という用語及び類似の指示記号は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、単数及び複数の両方を包含するものと解釈しなければならない。
【0194】
本明細書において値の範囲を引用することは、当該範囲に含まれる各別の値を個別的に表すための簡略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、本明細書中に別段の記載がなければ、各個別の値は、本明細書に個別的に記載されている場合と同様に、明細書中に取り込まれる。別段の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての正確な値は、対応する近似値を代表している(例えば、具体的な因子又は測定に関して記載されている全ての正確な典型値は、適宜、「約」と修飾される、対応する近似的測定も表すと考えることができる。)。
【0195】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。
【0196】
本明細書に記載されている、全てのあらゆる例又は例示的言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をさらに明瞭にすることを意図したものにすぎず、別段の記載がなければ、本発明の範囲に限定を加えるものではない。明示の記載がなければ、本明細書中の言語は、何らかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示唆するものと解釈すべきでない。
【0197】
本明細書中の特許文書の引用及び援用は、便宜のために行っているものにすぎず、かかる特許文書の妥当性、特許性及び/又は法的効力の観点を反映するものではない。
【0198】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、ある要素に関して「含む」、「有する」、「含む」又は「含有する」などの用語を使用して、本発明の任意の側面又は実施形態を本明細書で記載することは、当該要素「からなる」、「実質的に〜からなる」、「実質的に〜を含む」本発明の類似の側面又は実施形態に対する支持を与えることを意図するものである(例えば、ある要素を含むと本明細書に記載されている組成物は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、その要素からなる組成物も記載するものとして理解すべきである。)。
【0199】
本発明は、本明細書に提示されている前記側面又は特許請求の範囲に記載されている主題のあらゆる修飾及び均等物を、適用法によって許容される最大限度まで含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のKIR2DL遺伝子産物と交叉反応し、かかるKIRの阻害活性を中和する抗体を作製する方法であって、
(a)KIR2DLポリペプチドを含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
(b)前記免疫された哺乳動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と、
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する、(c)の抗体を選択する工程と;
(e)霊長類のNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択する工程と;
を含む方法。
【請求項2】
工程(e)における霊長類がカニクイザルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法に従って作製された抗体が霊長類に投与される、抗体の毒性を評価する方法。
【請求項4】
前記霊長類がカニクイザルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
図12に示されている、DF−200の軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項6】
図12に示されている、Pan2Dの軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項7】
図12に示されている、DF−200の、一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項8】
図12に示されている、Pan2Dの、一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項9】
図13に示されている、DF−200の重鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項10】
図13に示されている、DF−200の、一又は複数の重鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項11】
アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域内において、KIR2DL1に専ら結合する抗体。
【請求項12】
アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域外のアミノ酸残基とは相互作用せずに、KIR2DL1及びKIR2DL2/3に結合する抗体。
【請求項13】
KIR2DL1に結合し、且つR131がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項14】
KIR2DL1に結合し、且つR157がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項15】
KIR2DL1に結合し、且つR158がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項16】
KIR2DL1残基(131,157,158)に結合する抗体。
【請求項17】
KIR2DS3(R131W)に結合し、野生型KIR2DS3に結合しない抗体。
【請求項18】
KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方並びにKIR2DS4に結合する抗体。
【請求項19】
KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方に結合するが、KIR2DS4に結合しない抗体。
【請求項1】
複数のKIR2DL遺伝子産物と交叉反応し、かかるKIRの阻害活性を中和する抗体を作製する方法であって、
(a)KIR2DLポリペプチドを含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
(b)前記免疫された哺乳動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と、
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する、(c)の抗体を選択する工程と;
(e)霊長類のNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択する工程と;
を含む方法。
【請求項2】
工程(e)における霊長類がカニクイザルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法に従って作製された抗体が霊長類に投与される、抗体の毒性を評価する方法。
【請求項4】
前記霊長類がカニクイザルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
図12に示されている、DF−200の軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項6】
図12に示されている、Pan2Dの軽鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項7】
図12に示されている、DF−200の、一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項8】
図12に示されている、Pan2Dの、一又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項9】
図13に示されている、DF−200の重鎖可変領域配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項10】
図13に示されている、DF−200の、一又は複数の重鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体誘導体。
【請求項11】
アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域内において、KIR2DL1に専ら結合する抗体。
【請求項12】
アミノ酸残基(105,106,107,108,109,110,111,127,129,130,131,132,133,134,135,152,153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163,181,192)によって規定される領域外のアミノ酸残基とは相互作用せずに、KIR2DL1及びKIR2DL2/3に結合する抗体。
【請求項13】
KIR2DL1に結合し、且つR131がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項14】
KIR2DL1に結合し、且つR157がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項15】
KIR2DL1に結合し、且つR158がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体。
【請求項16】
KIR2DL1残基(131,157,158)に結合する抗体。
【請求項17】
KIR2DS3(R131W)に結合し、野生型KIR2DS3に結合しない抗体。
【請求項18】
KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方並びにKIR2DS4に結合する抗体。
【請求項19】
KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方に結合するが、KIR2DS4に結合しない抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−176953(P2012−176953A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−87648(P2012−87648)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2006−515738(P2006−515738)の分割
【原出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【出願人】(505473891)
【出願人】(505473905)ユニバーシティー・オブ・ジェノア (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87648(P2012−87648)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2006−515738(P2006−515738)の分割
【原出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(509091848)ノヴォ ノルディスク アー/エス (42)
【出願人】(505473891)
【出願人】(505473905)ユニバーシティー・オブ・ジェノア (4)
【Fターム(参考)】
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