NK細胞活性を調節するための組成物および方法
本発明は、被験体において、免疫応答を調節するための新規の組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、NK細胞の活性を調節し、哺乳動物被験体におけるNK細胞の細胞障害性の増強を可能にする特異的抗体に関する。本発明はまた、そのような抗体のフラグメントおよび誘導体、ならびにそれらを含んでなる薬学的組成物および特に治療において、被験体におけるNK細胞活性または細胞障害性を増加させるためのそれらの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、NK細胞の細胞表面上に存在する2つもしくはそれ以上の阻害受容体と交差反応し、哺乳動物被験体または生物学的サンプルにおけるNK細胞の細胞障害性を増強する抗体、抗体フラグメント、およびそれらの誘導体に関する。本発明はまた、そのような抗体、フラグメント、変異体、および誘導体;それらを含んでなる薬学的組成物の製造方法;ならびに特に治療において、被験体におけるNK細胞活性または細胞障害性を増加させるためのそのような分子および組成物の使用に関する。
【0002】
(背景技術)
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団である。NK細胞は、例えば、血液サンプル、細胞分離(cytapheresis)、コレクションなどから当該分野において公知の多様な技術によって入手することができる。
【0003】
NK細胞の特徴および生物学的特性として、CD16、CD56、および/またはCD57を含む表面抗原の発現;細胞表面上におけるα/βまたはγ/δTCR複合体の不在;特定の細胞溶解性酵素の活性化により、「自己の」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合し、死滅させる能力;腫瘍細胞またはNK活性化受容体−リガンドを発現する他の罹患した細胞を死滅させる能力;免疫応答を刺激または阻害するサイトカインを放出する能力;および複数回の細胞分裂を経て、親細胞と類似の生物学的特性を有する娘細胞を産生する能力が挙げられる。本発明では、「活性な」NK細胞は、生物学的に活性なNK細胞、より詳細には、標的細胞を溶解する能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、「自己の」MHC/HLA抗原(KIR不適合細胞)を発現することができない細胞を死滅させることが可能である。
【0004】
それらの生物学的特性に基づき、NK細胞の調節に依存する技術において、多様な治療およびワクチンストラテジーが提唱されている。しかし、NK細胞活性は、刺激および阻害シグナルの両方に関与する複雑な機構によって調節される。従って、有効なNK細胞仲介治療は、これらの細胞の刺激および阻害シグナルの中和の両方を必要とし得る。
【0005】
NK細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI特異的阻害型受容体によって負に調節される(カリー(Kaerre)ら、1986年;エーレン(Oehlen)ら、1989年)。これらの特異的受容体は、他の細胞上に存在するMHCクラスI分子またはHLAの多形性決定基に結合し、NK細胞溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と呼ばれる所定の数の受容体のファミリーがHLAクラスI対立遺伝子のグループを認識する。
【0006】
KIRは、NK細胞を含む所定のサブセットのリンパ球上に存在する受容体の大きなファミリーである。KIRの命名法は、細胞外ドメインの数(KIR2DもしくはKIR3D)および細胞質尾部が長いか(KIR2DLもしくはKIR3DL)または短いか(KIR2DSもしくはKIR3DS)に基づく。ヒトでは、所定のKIRの有無は、単一の個体に存在するNK集団内でもNK細胞によってばらつきがある。また、ヒト集団では、KIR分子の相対的に高いレベルの多形性が認められ、所定のKIR分子がいくつかには存在するが、すべての個体に認められるわけではない。所定のKIR遺伝子産物は、適切なリガンドに結合する場合、リンパ球活性の刺激を引き起こす。確認されているすべての刺激性KIRが、免疫刺激モチーフ(ITAM)を有するアダプター分子と会合する荷電した膜貫通残基を伴う短い細胞質尾部を有する。他のKIR遺伝子産物は、天然では阻害的である。確認されているすべての阻害型KIRは長い細胞質尾部を有し、KIRサブタイプに依存して、HLA抗原の異なるサブセットと相互作用するようである。阻害型KIRは、それらの細胞質内部分において、ホスファターゼを補充する1つもしくはいくらかの阻害型モチーフを示す。既知の阻害型KIR受容体は、KIR2DLおよびKIR3DLサブファミリーのメンバーを含む。2つのIgドメイン(KIR2D)を有するKIR受容体がHLA−Cアロタイプ:KIR2DL2(以前はp58.2と命名された)を同定するか、または緊密に関連する遺伝子産物KIR2DL3がグループ2のHLA−Cアロタイプ(Cw1、3、7、および8)と共有するエピトープを認識する一方、KIR2DL1(p58.1)が対抗グループ1のHLA−Cアロタイプ(Cw2、4、5、および6)と共有するエピトープを認識する。KIR2DL1による認識は、HLA−C対立遺伝子の80位のLys残基の存在によって決まる。KIR2DL2およびKIR2DL3の認識は、80位のAsn残基の存在によって決まる。重要なことに、最も大部分のHLA−C対立遺伝子は、80位にAsnまたはLysのいずれか一方の残基を有する。3つのIgドメインを伴う1つのKIR、KIR3DL1(p70)は、HLA−Bw4対立遺伝子と共有するエピトープを認識する。最後に、3つのIgドメインを伴うホモダイマーの分子KIR3DL2(p140)は、HLA−A3および−A11を認識する。
【0007】
阻害型KIRおよび他のクラスI阻害型受容体(モレッタ(Moretta)ら、1997;バリアンテ(Valiante)ら、1997a;ラニーア(Lanier)、1998)は、NK細胞によって同時発現され得るが、いかなる個体のNKレパートリーにも、単一のKIRを発現する細胞が存在し、従って、対応するNK細胞は、特定のクラスI対立遺伝子のグループを発現する細胞のみによって、阻止される。
【0008】
KIRが一致しないNK細胞集団またはクローン、即ち、宿主のHLA分子に適合しないKIRを発現するNK細胞の集団は、同種移植において認められる移植片抗白血病効果(graft anti−leukemia effect)の最も可能性の高いメディエーターであることが示されている(ルグゲリ(Ruggeri)ら、2002)。所定の個体においてこの効果を再現する1つの方法は、KIR/HLA相互作用を阻止する試薬を使用することである。
【0009】
KIR2DL1に特異的なモノクローナル抗体は、KIR2DL1のCw4(などの)対立遺伝子の相互作用を阻止することが示されている(モレッタ(Moretta)ら、1993)。KIR2DL2/3に対するモノクローナル抗体はまた、KIR2DL2/3のHLACw3(などの)対立遺伝子との相互作用を阻止することが記載されている(モレッタ(Moretta)ら、1993)。しかし、臨床現場でそのような試薬を使用するには、いかなる患者がクラス1またはクラス2HLA−C対立遺伝子を発現していたかどうかにかかわらず、すべての患者を処置するための2種の治療用mAbを開発することが必要である。さらに、どの治療用抗体を使用するかを決定する前に、それぞれの患者がどのHLAタイプを発現していたかを予め決定しなければならず、それ故、極めて高い処置費用が生じる。
【0010】
ヴァッツル(Watzl)ら、Tissue Antigens,56、240頁(2000年)は、KIRの複数のアイソタイプを認識する交差反応抗体を生成したが、それらの抗体はNK細胞活性の増強を示さなかった。G.M.スパギアラ(G.M.Spaggiara)ら、Blood,100、4098−4107頁(2002年)は、多様なKIRに対する多数のモノクローナル抗体を利用した実験を行った。それらの抗体のうちの1つNKVSF1がCD158a KIR2DL1)、CD158b(KIR2DL2)およびp50.3(KIR2DS4)の共通のエピトープを認識することが述べられた。NKVSF1がNK細胞活性を増強することができることは示唆されず、それが治療薬として使用し得ることを示唆するものは認められない。従って、NK細胞活性の調節における実践的および効果的アプローチは、これまで当該分野において利用されておらず、特定の試薬を使用するHLA対立遺伝子特異的介入がなお必要である。
【0011】
(発明の開示)
今回、本発明は、NK細胞活性化における現在の困難を克服する新規の抗体、組成物、および方法を提供し、さらなる有利な特徴および利益を提供する。1つの例示的態様では、本発明は、事実上すべてのヒトにおけるヒトNK細胞の活性化を容易にする単一の抗体を提供する。より具体的には、本発明は、多様な阻害型KIRグループと交差反応する新規の特異的抗体を提供して、それらの阻害シグナルを中和し、その結果、そのような阻害型KIR受容体を発現するNK細胞においてNK細胞の細胞障害性の増強を生じる。このような複数のKIR遺伝子産物と交差反応する能力は、被験体のHLAタイプを予め決定する負担または費用を伴うことなく、ほとんどのヒト被験体においてNK細胞活性を増加させるために本発明の抗体を効率的に使用することが可能である。
【0012】
第1の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、およびそのいずれかの誘導体を提供し、ここで、前記抗体、フラグメント、または誘導体は、NK細胞の表面上の少なくとも2つの阻害型KIR受容体と交差反応し、NK細胞の阻害シグナルを中和し、NK細胞の活性を増強する。より好ましくは、抗体はヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合する。さらにより具体的には、本発明の抗体は、少なくともKIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3受容体に結合する。本発明の目的のために、用語「KIR2DL2/3」は、KIR2DL2およびKIR2DL3受容体のいずれか一方または両方を指す。これらの2つの受容体は、極めて高い相同性を有し、おそらく同じ遺伝子の対立遺伝子形態であり、当該分野において交換可能であるとみなされている。従って、KIR2DL2/3は、本発明の目的のための単一の阻害型KIR分子、従って、KIR2DL2およびKIR2DL3とのみ交差反応する抗体であると考えられ、他の阻害型KIR受容体こそが本発明の範囲内にある。
【0013】
本発明の抗体は、少なくとも2つの阻害型KIR受容体へのMHCまたはHLA分子の結合を特異的に阻害し、NK細胞活性を容易にする。両方の活性は、本明細書において使用される用語「KIRの阻害活性を中和する」によって推察される。本発明において、本発明の抗体が「NK細胞活性を容易にする」、「NK細胞の細胞障害性を容易にする」、「NK細胞を容易にする」、「NK細胞活性を増強する」、「NK細胞の細胞障害性を増強する」または「NK細胞を増強する」能力とは、抗体が、表面上で阻害型KIR受容体を発現するNK細胞が、それらの表面上で、該特定の阻害型KIR受容体に対する対応するリガンド(例えば、特定のHLA抗原)を発現する細胞を溶解することができるようにすることを意味する。特定の態様では、本発明は、HLA−C分子のKIR2DL1およびKIR2DL2/3受容体への結合を特異的に阻害する抗体を提供する。別の特定の態様では、本発明は、インビボでNK細胞活性を容易にする抗体を提供する。
【0014】
KIR2DL1またはKID2DL2/3のうちの少なくとも1つは少なくとも約90%のヒト集団に存在するため、本発明のより好適な抗体は、HLA−Cアロタイプ会合細胞(それぞれグループ1HLA−Cアロタイプおよびグループ2HLA−Cアロタイプ)のほとんどに対するNK細胞活性を容易にすることが可能である。従って、本発明の組成物を使用して、ほとんどのヒト個体、典型的に約90%もしくはそれ以上のヒト個体において、NK細胞を効率的に活性化するかまたは増強することができる。従って、本発明の単一の抗体組成物を使用して、ほとんどのヒト被験体を処置することができ、対立遺伝子群を決定するまたは抗体カクテルを使用する必要がほとんどない。
【0015】
本発明は、はじめに、阻害型KIRに対する交差反応性および中和抗体を作製することができること、およびそのような抗体は、広範囲のヒトグループにおけるNK細胞の有効な活性化を可能にすることを実証する。
【0016】
従って、本発明の特定の目的は抗体にあって、ここで、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に特異的に結合し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転する。1つの実施形態では、抗体はハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200と競合する。場合により、抗体DF200と競合する前記抗体はDF200自体ではない。
【0017】
別の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体NKVSF1と競合し、場合により、ここで、抗体NKVSF1と競合する抗体は抗体NKVSF1ではない。
【0018】
別の実施形態では、抗体は抗体1−7F9と競合する。
【0019】
好ましくは、前記抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。
【0020】
特定のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)を指す場合の用語「と競合する」は、組換えKIR分子または表面発現KIR分子のいずれかを使用する結合アッセイにおいて、抗体がモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)と競合することを意味する。例えば、抗体が、結合アッセイにおけるDF200のKIR分子への結合を減少する場合、抗体はDF200と「競合」する。DF200と「競合」する抗体は、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体、またはKIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に対する結合について、DF200と競合し得る。
【0021】
好適な実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に結合する抗体を提供し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転し、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体、もしくはKIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に対する結合について、DF200、1−7F9、またはNKVSF1と競合する。場合により、前記抗体はNKVSF1ではない。場合により、前記抗体はキメラ、ヒト、またはヒト化抗体である。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に結合する抗体を提供するか、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転するか、KIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合するか、KIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合するか、またはKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6およびKIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183の両方と競合する。場合により、前記抗体はNKVSF1ではなく;場合により前記抗体はDF200ではない。場合により、前記抗体はキメラ、ヒト、またはヒト化抗体である。
【0023】
有利な態様では、本発明は、DF200と競合し、KIR分子上のモノクローナル抗体DF200と実質的にまたは本質的に同じか、あるいは同じエピトープもしくは「エピトープ部位」に対する免疫特異性を認識、結合、あるいは有する抗体を提供する。好ましくは、前記KIR分子はKIR2DL1ヒト受容体またはKIR2DL2/3ヒト受容体である。
【0024】
本発明の特定の目的は抗体にあって、ここで、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に存在する共通の決定基に結合し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転する。抗体は、ハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200またはハイブリドーマNKVSF1より産生される抗体NKVSF1と実質的に同じKIR上のエピトープにより特異的に結合し、ここで、抗体はNKVSF1ではない。
【0025】
好適な実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最も好適な抗体はハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200である。
【0026】
抗体DF200を産生するハイブリドーマは、識別番号「DF200」、登録番号CNCMI−3224としてCNCMカルチャー・コレクションに寄託され、2004年6月10日に登録されている(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur、25,Rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex15、仏国)。抗体NKVSF1はセロテック(Serotec)(Cergy Sainte−Christophe、仏国)、カタログ番号MCA2243より市販されている。NKVSF1は、本明細書ではpan2DmAbとも称される。
【0027】
本発明はまた、実質的に類似の抗原特異性および活性を有する本明細書に記載の抗体の機能的フラグメントおよび誘導体(例えば、親抗体と交差反応することができ、阻害型KIR受容体を発現するNK細胞の細胞障害性活性を増強する)を提供し、Fabフラグメント、Fab’2フラグメント、イムノアドヘシン、二重特異性抗体、CDR、およびScFvを含むが、これらに限定されない。さらに、本発明の抗体はヒト化、ヒト、またはキメラであってもよい。
【0028】
本発明はまた、毒素、放射性核種、検出可能な部分(例えば、フルーア(fluor))、もしくは固相支持体に共役または共有結合された本発明の抗体を含んでなる抗体誘導体を提供する。
【0029】
本発明はまた、上記で開示された抗体、そのフラグメント、またはそのいずれかの誘導体を含んでなる薬学的組成物を提供する。従って、本発明はまた、医薬品の製造のための方法における本明細書において開示される抗体の使用に関する。好適な実施形態では、前記医薬品あるいは薬学的組成物は、癌もしくは他の増殖性障害、感染の処置、または移植における使用のためのものである。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を含んでなる組成物であって、ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、ここで、前記抗体はリポソームに組み入れられる、組成物を提供する。場合により、前記組成物は、遺伝子治療用遺伝子の送達のための核酸分子;NK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸分子;またはNK細胞の標的化された死滅のための毒素もしくは薬物から選択される、前記リポソームにさらに組み入れられたさらなる物質を含んでなる。
【0031】
本発明はまた、ヒトNK細胞と有効量の本発明の抗体、そのような抗体のフラグメント、そのいずれかの誘導体、もしくはそのいずれかの少なくとも1つを含んでなる薬学的組成物と接触させることを含んでなる、ヒトNK細胞活性をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで調節する方法を提供する。好適な方法は、有効量の本発明の薬学的組成物の投与を含んでなり、癌、感染性疾患、もしくは免疫疾患を有する被験体においてヒトNK細胞の細胞障害性活性を、最も好ましくは、エクスビボまたはインビボで増加するときに指令される。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、(a)阻害型KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含んでなる抗原で免疫されている哺乳動物宿主(典型的に、非ヒト哺乳動物宿主)由来のB細胞と、(b)不死化細胞(例えば、骨髄腫細胞)とを融合する形で含んでなるハイブリドーマを提供し、ここで、前記ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体に結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を少なくとも実質的に中和することが可能である。場合により、前記ハイブリドーマはモノクローナル抗体NKVSF1を産生しない。好ましくは、前記抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3受容体に結合する。好ましくは、前記抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。好ましくは、前記ハイブリドーマは80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、KIR2DL1もしくはKIR2DL2/3のいずれか一方またはKIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方上のハイブリドーマDF200により産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する。そのようなハイブリドーマの例はDF200である。
【0033】
本発明はまた、複数のKIR2DL遺伝子産物と交差反応し、そのようなKIRの阻害活性を中和する抗体を産生させる方法を提供し、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
(a)非ヒト哺乳動物をKIR2DLポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
(b)前記免疫哺乳動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体は前記KIR2DLポリペプチドに結合する工程、
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交差反応する工程(b)の抗体を選択する工程、次いで
(d)NK細胞を増強する(c)の抗体を選択する工程。1つの実施形態では、前記非ヒト哺乳動物は、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物(例えば、XenomouseTM(アブゲニクス(Abgenix)−Fremont、カリフォルニア州、米国)などのヒト免疫グロブリン遺伝子座および生来の免疫グロブリン遺伝子欠損を含んでなる非ヒト哺乳動物またはHuMab−mouseTM(メダレックス(Medarex)−Princeton、ニュージャージー州、米国)などのヒトIgコード遺伝子の小座位(minilocus)を含んでなる非ヒト哺乳動物)である。場合により、方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞またはKIRポリペプチドに結合する抗体を選択することをさらに含んでなる。場合により、本発明は、抗体を評価する方法をさらに含んでなり、ここで、上記の方法に従って産生される抗体は、霊長類、好ましくは、カニクイザルに投与され、好ましくは、ここで、サルは、抗体の毒性の徴候の有無について観察される。
【0034】
本発明者らはまた、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法を提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)非ヒト哺乳動物を阻害KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体は前記KIRポリペプチドに結合する工程、
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程、ここで、工程(c)および(d)の順序は場合により逆にされ、工程の回数は、場合により1もしくはそれ以上の回数反復される。好ましくは、免疫のために使用される阻害KIRポリペプチドは、KIR2DLポリペプチドであり、工程(c)において選択される抗体は少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する。好ましくは、前記抗体は少なくとも2つの異なるKIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を認識する;最も好ましくは、前記KIRはKIR2DL1およびKIR2DL2/3である。場合により、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞またはKIRポリペプチドに結合する抗体を選択することをさらに含んでなる。場合により、本発明は、抗体を評価する方法をさらに含んでなり、ここで、上記の方法に従って産生される抗体は、霊長類、好ましくは、カニクイザルに投与され、好ましくは、ここで、サルは、抗体の毒性の徴候の有無について観察される。
【0035】
場合により、上記の方法において、工程c)またはd)において選択される抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、上記の方法の工程(b)において調製される抗体はモノクローナル抗体である。好ましくは、上記方法の工程(c)において選択される抗体は、80位でLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位でAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、上記の方法の工程(d)において選択される抗体は、NK細胞障害性の増強、例えば、任意の実質的な増強、またはNK細胞障害性の少なくとも5%、10%、20%、30%もしくはそれ以上の増強、例えば、標的NK細胞障害性の少なくとも約50%の増強(例えば、NK細胞の細胞障害性の(例えば、約65〜100%のような)少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の増強)を生じる。好ましくは、抗体は、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3上のモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。場合により、前記方法はまたもしくは代替的に、選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、(例えば、放射性核種、細胞障害性薬剤、レポーター分子などとのコンジュゲーションによって)選択されるモノクローナル抗体の誘導体を作製するか、またはそのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列から産生されるもしくは該配列を含んでなる抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。
【0036】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法をさらに提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
(a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントを選択する工程、次いで
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(a)の抗体を選択する工程。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。場合により、工程(b)において選択される前記抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、工程(b)において選択される抗体は80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、工程(b)において選択される抗体は、NK細胞障害性の増強、例えば、任意の実質的な増強、またはNK細胞障害性の少なくとも5%、10%、20%、30%もしくはそれ以上の増強、例えば、標的NK細胞障害性の少なくとも約50%の増強(例えば、NK細胞の細胞障害性の(例えば、約65〜100%のような)少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の増強)を生じる。好ましくは、抗体は、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3上のモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。場合により、方法は、選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、選択されるモノクローナル抗体の誘導体を作製するか、または選択されるモノクローナル抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法を提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)前記モノクローナル抗体の産生に許容される条件下で、本発明のハイブリドーマを培養する工程;次いで
b)前記ハイブリドーマから前記モノクローナル抗体を分離する工程。場合により、方法は、前記モノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、モノクローナル抗体の誘導体を作製するか、またはそのようなモノクローナル抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0038】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法もまた本発明によって提供され、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)本発明のハイブリドーマから前記モノクローナル抗体をコードする核酸を単離すること;
b)場合により、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体の免疫反応性フラグメント、またはそのような免疫反応性フラグメントを含んでなる融合タンパク質から選択される、モノクローナル抗体の機能的配列に対応するかもしくはそれに実質的に類似する(例えば、そのような配列に(約70〜99%のような)少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%同一である)アミノ酸配列を含んでなる修飾されたまたは誘導体化された抗体をコードする配列を含んでなる修飾された核酸が得られるように、前記核酸を修飾すること;
c)前記核酸もしくは修飾された核酸(または同じアミノ酸配列をコードする関連核酸)を発現ベクターに挿入することであって、ここで、前記発現ベクターが適切な条件下で増殖される宿主細胞内に存在する場合、前記コードされた抗体または抗体フラグメントは発現可能である;
d)宿主細胞を前記発現ベクターでトランスフェクトすることであって、ここで、さもなくば前記宿主細胞は免疫グロブリンタンパク質を産生しない;
e)前記抗体または抗体フラグメントの発現を生じる条件下で、前記トランスフェクト宿主細胞を培養すること;次いで
f)前記トランスフェクト宿主細胞より産生される抗体または抗体フラグメントを単離すること。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0039】
本発明はまた、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体(ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であって、前記抗体は、患者またはNK細胞を含んでなる生物学的サンプルにおいてNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度に増強するのに有効な量で存在する);および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含んでなる組成物を提供することが理解される。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。前記組成物は、場合により、たとえば、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤または補助化合物から選択される第2の治療剤をさらに含んでなり得る。有利な免疫調節剤は、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γから選択され得る。前記化学療法剤の例として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、他のビンカアルカロイド、およびそれらの誘導体またはプロドラックが挙げられる。ホルモン剤の例として、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミドアナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾールメドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤、および他のプロゲスターゲンが挙げられる。好ましくは、阻害KIR受容体に結合し、阻害する前記第二抗体は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する前記抗体により結合されるエピトープとは異なる阻害KIR受容体のエピトープに結合する抗体またはその誘導体もしくはフラグメントである。
【0040】
本発明は、NK細胞活性を、それを要する患者において検出可能な程度に増強する方法であって、前記患者に本発明の組成物を投与する工程を含んでなる、方法をさらに提供する。NK細胞活性増強を要する患者は疾患もしくは障害を有する任意の患者であり得、ここで、そのような増強は、治療効果を促進、増進、および/または誘導し得る(あるいは例えば、臨床治験によって決定され得るように、疾患もしくは障害および患者と実質的に類似の特徴を伴う患者の少なくとも実質的な割合において、そのような効果を促進、増進、および/または誘導し得る)。そのような処置を要する患者は、例えば、癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患い得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、阻害KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤もしくは補助化合物から選択される適切なさらなる治療剤を前記患者に投与するさらなる工程を含んでなり、ここで、前記のさらなる治療剤は、前記抗体と共に単回投与形態として、または個別の投与形態として、前記患者に投与される。抗体(または抗体フラグメント/誘導体)の投与およびさらなる治療剤の投与は、集合的に、NK細胞活性の増強を含んでなる患者において治療応答を検出可能な程度で誘導、促進、および/または増進するのに十分である。個別に投与される場合、抗体、フラグメント、または誘導体およびさらなる治療剤は、患者に対して検出可能な併用治療有益性が認められる(例えば、投与時期、回数などに関する)条件下で投与されることが所望される。
【0041】
非ヒト霊長類、好ましくは、サルNK細胞および/またはサルKIR受容体に特異的に結合することが可能である本発明の抗体も本発明にさらに包含される。また、候補医薬品である本発明の抗体の毒性、用量および/または活性あるいは効力を評価するための方法も包含される。1つの態様では、本発明は、NK細胞を有する非ヒト霊長類レシピエント動物に本発明の抗体を投与し、動物、または好ましくは標的組織に対する薬剤の任意の毒性、有毒もしくは有害作用を評価することによって、動物あるいは標的組織に対して毒性な抗体の用量を決定するための方法を包含する。別の態様では、本発明は、NK細胞を有する非ヒト霊長類レシピエント動物に本発明の抗体を投与し、動物、または好ましくは標的組織に対する薬剤の任意の毒性、有毒もしくは有害作用を評価することによって、動物あるいは標的組織に対して毒性な抗体を同定するための方法である。別の態様では、本発明は、感染、疾患もしくは癌の非ヒト霊長類モデルに本発明の抗体を投与し、感染、疾患もしくは癌、およびそれらの症状を改善する抗体を同定することによって、感染、疾患あるいは腫瘍の処置において効果的である抗体を同定するための方法である。好ましくは、本発明の前記抗体は、(a)ヒトNK細胞の表面で少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、(b)非ヒト霊長類のNK細胞またはKIR受容体と交差反応する抗体である。
【0042】
生物学的サンプルまたは生体生物におけるそれらの細胞表面上に阻害KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法が本発明にさらに包含され、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)前記生物学的サンプルまたは生体生物と本発明の抗体とを接触させる工程であって、ここで、前記抗体が検出可能な部分に共役または共有結合される工程;および
b)前記生物学的サンプルまたは生体生物において前記抗体の存在を検出する工程。
【0043】
本発明はまた、サンプルから細胞表面上に阻害KIRを有するNK細胞を精製する方法を提供し、以下の工程を含んでなる。
a)前記サンプルと本発明の抗体とを、細胞表面上に阻害KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合することを可能にする条件下で、接触させる工程であって、ここで、前記抗体が固相支持体(例えば、ビーズ、マトリックスなど)に共役または共有結合される工程;次いで
b)固相支持体に共役または共有結合した前記抗体から前記結合NK細胞を溶出させる工程。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいは図12において例示されるような抗体DF200あるいは抗体Pan2Dの軽鎖可変領域または1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。なお別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいはDF200またはPan2Dの軽鎖可変領域配列あるいはこれらの抗体の1つまたは両方の1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRのすべてまたは本質的にすべてに高度に類似する配列を含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいは図13において例示されるような抗体DF200の重鎖可変領域または1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。なお別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいはDF200の重鎖可変領域配列のすべてまたは本質的にすべてに高度に類似する配列を含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。
【0046】
本発明のこれらおよびさらなる有利な態様ならびに特徴については、本明細書の他の箇所においても説明され得る。
【0047】
(発明の詳細な記述)
抗体
本発明は、ヒト阻害型KIR受容体の共通の決定基、好ましくは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基に結合し、それらのKIR受容体うちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる新規の抗体およびフラグメントまたはそれらの誘導体を提供する。本発明は、はじめに、予想外の結果を提示し、特にヒト被験体における新規かつ効果的なNKに基づく治療に道を開くそのような交差反応かつ中和抗体を産生させることができることを開示する。好適な実施形態では、抗体はモノクローナル抗体NKVSF1ではない。
【0048】
本発明において、「共通の決定基」は、ヒト阻害型KIR受容体のいくらかの遺伝子産物によって共有される決定基またはエピトープを標示する。好ましくは、共通の決定基は、KIR2DL受容体グループの少なくとも2つのメンバーによって共有される。より好ましくは、決定基は、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3によって共有される。本発明の所定の抗体はまた、KIR2DLの複数の遺伝子産物を認識することに加えて、KIR3DL受容体グループの遺伝子産物のような他の阻害型KIR上に存在する決定基を認識することができる。決定基またはエピトープは、前記メンバーによって共有されるペプチドフラグメントもしくは構造依存性(conformational)エピトープを提示することができる。より特定の実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体DF200によって認識される実質的に同じエピトープに特異的に結合する。この決定基は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方に存在する。
【0049】
本発明において、共通の決定基に「結合する」抗体という用語は、特異性および/または親和性を伴う前記決定基に結合する抗体を標示する。
【0050】
本明細書で使用される用語「抗体」は、他に述べるかまたは文脈において明らかに矛盾しない限り、ポリクロナールおよびモノクローナル抗体、ならびに前記ポリクロナールおよびモノクローナル抗体のフラグメントおよび誘導体を指す。重鎖の定常ドメインのタイプに依存して、完全長の抗体は、典型的に、5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てられる。これらのうちのいくらかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのようなサブクラスまたはイソタイプに分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」および「μ」と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造が周知である。IgGおよび/またはIgMは生理学的状況において最も一般的な抗体であり、それらは実験施設において最も容易に作成されるため、それらは本発明において用いられる好適なクラスの抗体である。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の目的の1つは、NK細胞を枯渇させずに、阻害型KIRとその対応するHLAリガンドとのインビボでの相互作用を阻止することであるため、IgG4のような低いエフェクター機能を仲介するFc受容体に対応するアイソタイプが典型的に好適である。
【0051】
本発明の抗体は、様々な当該分野において公知の技術によって産生させることができる。典型的に、それらは、非ヒト動物、好ましくはマウスの阻害型KIRポリペプチド、好ましくはKIR2DLポリペプチド、より好ましくはヒトKIR2DLポリペプチドを含んでなる免疫原による免疫によって産生される。阻害型KIRポリペプチドは、ヒト阻害型KIRポリペプチドの全長配列、またはそのフラグメントもしくは誘導体、典型的に、免疫原性フラグメント、即ち、阻害型KIR受容体を発現する細胞の表面上に暴露されたエピトープを含んでなるポリペプチドの部分を含んでなり得る。そのようなフラグメントは、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも約7連続アミノ酸、さらにより好ましくは、その少なくとも約10連続アミノ酸を含有する。フラグメントは、典型的に、受容体の細胞外ドメインから本質的に誘導される。全長KIRDLポリペプチドのうち少なくとも1つ、より好ましくは両方の細胞外Igドメインを含み、KIR2DL受容体に存在する少なくとも1つの構造依存性(conformational)エピトープを模倣することが可能であるヒトKIR2DLポリペプチドがさらにより好適である。他の実施形態では、前記ポリペプチドは、KIR2DL1ポリペプチドのアミノ酸1〜224位(KIR遺伝子ファミリーについて記載しているPROWウェブサイト、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/prow/guide/1326018082.htmに従うアミノ酸番号付け)の細胞外Igドメインの少なくとも約8連続アミノ酸を含んでなる。
【0052】
最も好適な実施形態では、免疫原は、脂質膜、典型的に細胞表面の野生型ヒトKIR2DLポリペプチドを含んでなる。特定の実施形態では、免疫原は、無傷(intact)なNK細胞、特に、無傷なヒトNK細胞、場合により処置または溶解された細胞を含んでなる。
【0053】
マウスにおける抗体の産生を刺激するための分野において周知の任意の様式で、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫する工程を行うことができる(例えば、E.ハーロー(E.Harlow)およびD.レーン(D.Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual.,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988年)を参照のこと)。次いで、免疫原は、場合により完全フロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、緩衝液に懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプおよびアジュバントの量を決定するための方法は当該分野において周知であり、本発明に対する任意の方法において限定されない。これらのパラメータは異なる免疫原に対し異なり得るが、容易に説明される。
【0054】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫の場所および回数もまた、当該分野において周知である。典型的な免疫プロトコルでは、1日目に非ヒト動物に抗原が腹腔内に注入され、1週間後に再度注入される。これに続いて、場合により、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントを伴って、約20日目に抗原が再注入される。再注入は静脈内で実施され、数日間連続で反復され得る。これに続いて、静脈内または腹腔内のいずれかで、典型的にアジュバントを伴わずに、40日目に追加注入が行われる。このプロトコルにより、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が生じる。他のプロトコルもまた、それらが、免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞の産生を生じる限り、利用することができる。
【0055】
ポリクローナル抗体調製物では、免疫非ヒト動物から血清が得られ、それに存在する抗体が、周知の技術によって単離される。血清は、阻害型KIR受容体と反応する抗体が得られるように、固相支持体に連結された上記の任意の免疫原を使用して、アフィニティー精製することができる。
【0056】
代替的実施形態では、非免疫非ヒト哺乳動物由来のリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで、細胞培養において免疫原に暴露される。次いで、リンパ球を回収し、下記の融合工程を行う。
【0057】
モノクローナル抗体では、次の工程は、免疫非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離および抗体産生ハイブリドーマを形成させるための脾臓細胞と不死化細胞との以後の融合である。非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離は当該分野において周知であり、麻酔した非ヒト哺乳動物から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、単一の細胞懸濁液が生成されるように、脾包(splenic capsule)から圧搾により、セルストレーナーのナイロンメッシュを介して、脾臓細胞を、適切な緩衝液に取り出す。細胞を洗浄し、遠心分離し、任意の赤血細胞を溶解する緩衝液に再懸濁する。溶液を再度遠心分離し、ペレット内に残留するリンパ球を最終的に新鮮緩衝液に再懸濁する。
【0058】
一旦、単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、リンパ球を不死細胞系統に融合させることができる。これは、典型的にはマウス骨髄腫細胞系統であるが、ハイブリドーマを作製するのに有用な他の多くの不死細胞系統が当該分野において公知である。好適なマウス骨髄腫系統として、サルク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、San Diego、カリフォルニア州、米国より市販されているMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、Rockville、メリーランド州、米国より市販されているX63 Ag8653およびSP−2細胞由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して行う。次いで、得られるハイブリドーマを、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つもしくはそれ以上の物質を含有する選択培地で増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(HAT培地)(該物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨害する)。
【0059】
ハイブリドーマは、典型的にマクロファージのフィーダー層上で増殖される。マクロファージは、脾臓細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物の同腹仔由来であることが好ましく、典型的に、ハイブリドーマプレート化の数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激(prime)する。融合方法は、ゴーディング(Goding)「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(アカデミック・プレス(Academic Press)、1986年)に記載されており、この開示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0060】
コロニー形成および抗体産生に十分な時間、選択培地で細胞を増殖させる。これは、通常、約7〜約14日間の間である。次いで、ハイブリドーマコロニーを複数の阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する抗体の産生について、アッセイする。アッセイは、典型的に発色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖するウェルに適応することができるいずれのアッセイを用いてもよい。他のアッセイとしては、免疫沈降およびラジオイムノアッセイが挙げられる。所望の抗体産生に陽性のウェルを試験して、1つもしくはそれ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定する。1を超えるコロニーが存在する場合、細胞を再クローニングして、増殖させ、ただ単一の細胞が所望の抗体を産生するコロニーを生じていることを確実にする。明らかに単一のコロニーを伴う陽性ウェルを、典型的に再クローニングし、再アッセイし、ただ1つの抗体が検出され、産生されていることを保証する。抗体はまた、例えば、ウォード(Ward)ら、Nature,341(1989年)544頁に開示されているような免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって、産生させてもよい。
【0061】
本発明の抗体は、NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害;詳細には、KIR2DL受容体によって仲介される阻害およびより詳細には、少なくとも両KIR2DL1およびKIR2DL2/3阻害を中和することが可能である。従って、これらの抗体は、それらがMHCクラスI分子と相互作用する場合、それらが少なくとも部分的および検出可能な程度で、KIR受容体によって仲介される阻害シグナル伝達経路を阻止する意味で、「中和」または「阻害」抗体である。さらに重要なことに、この阻害活性は、これらの抗体が多様な被験体において高い効力で使用され得るように、いくらかのタイプの阻害型KIR受容体、好ましくは、いくらかのKIR2DL受容体遺伝子産物、およびより好ましくは、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方について示される。NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害の阻害は、結合または細胞アッセイのような多様なアッセイまたは試験によって、評価することができる。
【0062】
一旦、複数の阻害物質KIR受容体と交差反応する抗体が同定されると、無傷なNK細胞におけるこれらのKIR受容体の阻害効果を中和するその能力について、それを試験することができる。特定の変異体では、HLA−C陽性標的のKIR2DL陽性NKクローンにより、前記抗体が溶解を再構築する能力によって、中和活性を例示することができる。別の特定の実施形態では、抗体の中和活性は、HLA−C分子のKIR2DL1およびKIR2DL3(または緊密に関連するKIR2DL2)受容体への結合を阻害する抗体の能力によって規定され、抗体の能力が以下を改変する場合はさらに好ましい。
−Cw1、Cw3、Cw7、およびCw8から選択されるHLA−C分子(または80位にAsn残基を有するHLA−C分子)のKIR2DL2/3に対する結合;および
−Cw2、Cw4、Cw5およびCw6から選択されるHLA−C分子(または80位にLys残基を有するHLA−C分子)のKIR2DL1に対する結合。
【0063】
別の変異体では、本発明の抗体の阻害活性を、本明細書において提供される実施例に開示されるように、細胞に基づく細胞障害性アッセイで評価することができる。
【0064】
別の変異体では、本発明の抗体の阻害活性は、サイトカイン放出アッセイで評価することができ、ここで、NK細胞は、試験抗体およびNK集団のKIR分子によって認識される1つのHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞系統と共にインキュベートされ、NK細胞サイトカイン産生(例えば、IFN−γおよび/またはGM−CSF産生)が刺激される。例示的プロトコルでは、PBMCからのIFN−γ産生は、培養約4日後に、細胞表面および細胞質内染色ならびにフローサイトメトリーによる分析によって評価される。簡単に説明すると、培養の少なくとも約4時間、BrefeldinA(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))を、約5μg/mlの最終濃度で添加することができる。次いで、細胞を、透過化(IntraPrepTM;ベックマン・カルチャー(Beckman Coulter))およびPE−抗IFN−γまたはPE−IgG1(ファルミンゲン(Pharmingen))による染色の前に、抗CD3および抗CD56mAbと共にインキュベートすることができる。ELISA(GM−CSF:DuoSet Elisa、R&Dシステムズ(R&D Systems)、Minneapolis、ミネソタ州;IFN−γ:OptE1Aセット、ファルミンゲン(Pharmingen))を使用して、上清におけるポリクローナル活性型NK細胞からのGM−CSFおよびIFN−γ産生を測定することができる。
【0065】
本発明の抗体は、NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を部分的または完全に中和することができる。本明細書において使用する用語「NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和する」とは、それらのKIRによって阻止されないNK細胞またはNK細胞系統により同じ比率で得られる特異的溶解が、細胞障害性の古典的クロム遊離試験によって測定されるように、所定のKIRを発現するNK細胞集団が(NK細胞上で発現されるKIRによって認識される)同系のMHCクラスI分子を発現する標的細胞と接触される場合、抗体を伴わずに得られる特定の溶解のレベルと比較して、少なくとも約20%まで、好ましくは、少なくとも約30%まで、少なくとも約40%、少なくとも約50%もしくはそれ以上(例えば、約25〜100%)増加する能力を意味する。例えば、本発明の好適な抗体は、一致したまたはHLA適合性もしくは自家移植標的細胞集団、即ち、前記抗体の非存在下ではNK細胞により効果的に溶解されない細胞集団の溶解を誘導することが可能である。従って、本発明の抗体はまた、インビボでNK細胞活性を容易にすると規定することができる。
【0066】
あるいは、用語「KIR仲介阻害を中和する」は、1つもしくはいくらかの阻害型KIRを発現するNK細胞クローンまたはトランスフェクタントおよびNK細胞上のKIRのうちの1つによって認識されるただ1つのHLA対立遺伝子を発現する標的細胞を使用するクロムアッセイにおいて、抗体により得られる細胞障害性のレベルがW6/32抗MHCクラスI抗体などの既知の抑制型抗MHCクラスI分子で得られる細胞障害性の少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%(例えば、約25〜100%)、もしくはそれ以上であるべきであることを意味する。
【0067】
特定の実施形態では、抗体は、(ハイブリドーマDF200より産生される)モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。そのような抗体は、本明細書において「DF200様抗体」と称せられる。さらに好適な実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本発明の好適な「DF200様抗体」は、モノクローナル抗体NKVSF1以外の抗体である。(ハイブリドーマDF200より産生される)モノクローナル抗体DF200が最も好適である。
【0068】
目的の抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。一般に、目的のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、17F9)と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」抗体は、抗体が、さらなるKIR分子のいずれか1つ、好ましくは、KIR2DL1およびKIR2DL2/3よりなる群から選択されるKIR分子のために、前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。他の例では、KIR2DL1分子上にある目的の抗体と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL1に結合するため、目的の抗体と「競合する」。KIR2DL2/3分子上にある目的の抗体と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL2/3に結合するため、目的の抗体と「競合する」。
【0069】
目的の抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が、前記目的の抗体が特異的に結合する任意およびすべてのKIR分子のために、前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が、DF200が特異的に結合する任意およびすべてのKIR分子のために、DF200と「競合する」ことを意味する。例えば、モノクローナル抗体DF200またはNKVSF1と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DS1およびKIR2DS2への結合のために、それぞれ前記DF200またはNKVSF1と「競合する」。
【0070】
本明細書に記載のモノクローナル抗体と実質的または本質的に同じエピトープに結合する1つもしくはそれ以上の抗体の同定は、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイの1つを使用して、容易に決定することができる。多くのそのようなアッセイが日常的に実践され、当該分野において周知である(例えば、米国特許第5,660,827号明細書、1997年8月26日出願を参照のこと、該文献は、本明細書において具体的に参考として援用される)。本明細書に記載の抗体がどのエピトープに決定するかを実際に決定するのに、いずれの方法においても、本明細書に記載のモノクローナル抗体と同じか実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定する必要はないことが理解されよう。
【0071】
例えば、調べようとする試験抗体が異なる供給源動物から得られるか、または異なるIgアイソタイプである場合、コントロール(例えば、DF200)および試験抗体とを混合(または予め吸着)され、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方(それぞれはDF200により結合されることが公知である)を含有するサンプルに適用される簡便な競合アッセイを用いることができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティング、および(例えば、実施例のセクションにおいて記載のような)BIACORE分析の使用に基づくプロトコルは、そのような簡便な競合研究における使用に適切である。
【0072】
特定の実施形態では、阻害型KIR抗原サンプルに適用する前のある期間にコントロール抗体(例えば、DF200)と様々な量の試験抗体(例えば、約1:10または約1:100)とを予め混合し得る。他の実施形態では、コントロールおよび様々な量の試験抗体を、KIR抗原サンプルへの暴露中に簡便に混合することができる。(例えば、非結合型抗体を除去するための分離または洗浄技術を使用することによって)結合型と遊離型の抗体および(例えば、種特異的もしくはアイソタイプ特異的第二抗体を使用することによって、または検出可能な標識でDF200を特異的に標識することによって)DF200と試験抗体とを識別することができる限り、試験抗体がDF200の2つの異なるKIR2DL抗原への結合を減少するかどうかを決定し、試験抗体がDF200と実質的に同じエピトープを認識することを示すことができる。完全に関連のない抗体の非存在下での(標識された)コントロール抗体の結合は、コントロールの高値としての役割を果たし得る。コントロール低値は、標識された(DF200)抗体を正確に同じタイプ(DF200)の非標識抗体と共にインキュベートすることによって得ることができ、ここで、競合が生じ、標識された抗体の結合を減少する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識された抗体反応性の有意な減少は、実質的に同じエピトープ(即ち、標識された(DF200)抗体と交差反応するもの)を認識する試験抗体を示唆する。DF200のそれぞれのKIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原への結合を、約1:10〜約1:100の間のDF200:試験抗体の任意の比で、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、またはより好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65〜100%)減少する任意の試験抗体は、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体は、DF200のそれぞれのKIR2DL抗原への結合を少なくとも約90%(例えば、約95%)減少する。
【0073】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。そのような試験では、所定のKIRを有する細胞を、まず、例えば、DF200、次いで、蛍光色素またはビオチンで標識された試験抗体と共にインキュベートすることができる。飽和量のDF200とのプレインキュベーション時に得られる結合が、DF200とのプレインキュベーションを伴わない抗体によって得られる結合(蛍光の平均として測定される)の約80%、好ましくは約50%、約40%もしくはそれ未満(例えば、約30%)である場合、抗体はDF200と競合すると言われている。あるいは、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートした細胞上の標識された(蛍光色素またはビオチンによる)DF200により得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションを伴わずに得られる結合の約80%、好ましくは約50%、約40%、もしくはそれ未満(例えば、約30%)である場合、抗体はDF200と競合すると言われている。
【0074】
試験抗体を予め吸着させ、飽和濃度で濃度KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方が固定化された表面に適用する簡便な競合アッセイもまた、有利に用いることができる。簡便な競合アッセイにおける表面は、好ましくはBIACOREチップ(または表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)である。次いで、コントロール抗体(例えば、DF200)を、KIR2DL1およびKIR2DL2/3飽和濃度で表面と接触させ、コントロール抗体のKIR2DL1およびKIR2DL2/3表面結合を測定する。コントロール抗体のこの結合を、試験抗体非存在下のコントロール抗体のKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面への結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体存在下におけるコントロール抗体によるKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面の結合における有意な減少は、試験抗体がコントロール抗体と「交差反応する」ように、試験抗体がコントロール抗体と実質的に同じエピトープを認識することを示す。(DF200のような)コントロール抗体のそれぞれのKIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原への結合を少なくとも約30%またはより好ましくは約40%減少する任意の試験抗体は、コントロール(例えば、DF200)と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体とみなすことができる。好ましくは、そのような試験抗体は、コントロール抗体(例えば、DF200)のそれぞれのKIR2DL抗原への結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%もしくはそれ以上)減少する。コントロールおよび試験抗体の順序は逆にすることができることが理解されよう。即ち、コントロール抗体をはじめに、表面に結合させることができ、その後、試験抗体を、競合アッセイにおいて表面と接触させる。好ましくは、まず、KIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原により高い親和性を有する抗体をKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面に結合させると、予想されるとおり、第二抗体について認められる結合の減少(抗体が交差反応しているものとみなす)は、より大きな大きさになる。そのようなアッセイのさらなる例は、実施例および例えば、サウナル(Saunal)およびリゲンモーテル(Regenmortel)、(1995年)J.Immunol.Methods183:33−41(その開示内容は本明細書において参考として援用される)において提供される。
【0075】
例示の目的のためにDF200について記載する一方、上記の免疫学的スクリーニングアッセイもまた、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183、および本発明の他の抗体と競合する抗体を同定するために使用することができることが理解されよう。
【0076】
免疫化および脊椎動物または細胞における抗体の産生時において、特許請求の範囲に記載の抗体を単離するために、特定の選択工程を実施することができる。これに関して、特定の実施形態では、本発明はまた、そのような抗体を産生させる方法に関し、以下を含んでなる。
(a)非ヒト哺乳動物を阻害KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
(b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体が前記KIRポリペプチドに結合する工程、
(c)少なくとも2つの異なる阻害型KIR遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
(d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程。
【0077】
少なくとも2つの異なる阻害型KIR遺伝子産物と交差反応する抗体の選択は、例えば、上記のような2つもしくはそれ以上の異なる阻害型KIR抗原に対する抗体をスクリーニングすることによって、達成することができる。
【0078】
より好適な実施形態では、工程(b)において調製される抗体はモノクローナル抗体である。従って、本明細書において使用される用語「前記免疫動物から抗体を調製すること」は、免疫動物からB細胞を入手すること、およびそれらのB細胞を使用して、抗体を発現するハイブリドーマを産生させること、ならびに免疫動物の血清から直接抗体を入手することを含む。別の好適な実施形態では、工程(c)において選択される抗体は、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する抗体である。
【0079】
さらなる別の好適な実施形態では、工程(d)において選択される抗体は、標準的なクロム遊離アッセイにおいて測定されるように、同系のHLAクラスI分子を発現する標的細胞に対し、それらのKIRによって阻止されないNK細胞による同じエフェクター/標的比で得られる溶解または細胞障害性と比較して、抗体によって認識される少なくとも1つのKIRを示すNK細胞によって仲介される少なくとも約10%特異的溶解、およびより好ましくは少なくとも約40%特異的溶解、少なくとも約50%特異的溶解、またはより好ましくは、少なくとも約70%特異的溶解(例えば、約60〜100%特異的溶解)を生じる。あるいは、工程(d)において選択される抗体が1つもしくはいくらかの阻害型KIRを発現するNK細胞クローンおよびNKクローン上のKIRのうちの1つによって認識されるただ1つのHLA対立遺伝子を発現する標的細胞を用いるクロムアッセイにおいて使用される場合、抗体により得られる細胞障害性のレベルがW6/32抗MHCクラスI抗体などの抑制型抗MHCクラスImAbで得られる細胞障害性の少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、もしくはそれ以上であるべきである。
【0080】
すぐ上に記載した方法の工程(c)および(d)の順序は、変更することができる。場合により、方法はまたもしくは代替的に、モノクローナル抗体のフラグメントまたはモノクローナル抗体の誘導体あるいは例えば、本明細書において他に記載したようなフラグメントを作製するさらなる工程をさらに含んでなることができる。
【0081】
好適な実施形態では、本発明の適用可能な方法に従う抗体を産生するために使用される非ヒト動物は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物である。また、非ヒト哺乳動物を、遺伝子的に改変または操作して、XenomouseTM(アブゲニクス(Abgenix))またはHuMAb−MouseTM(メダレックス(Medarex))などの「ヒト」抗体を産生させてもよい。
【0082】
別の変異体では、本発明は、以下を含んでなる抗体を得るための方法を提供する。
(a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体のフラグメント、もしくはそれらのいずれかの誘導体を選択すること、次いで
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である(a)の抗体、フラグメント、または誘導体を選択すること。
【0083】
レパートリーは、場合により、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によって示される抗体またはそのフラグメントの任意の(組換え)レパートリーであってもよい。阻害型抗体の選択は、上記に開示されるように実施することができ、実施例においてさらに例示される。
【0084】
別の実施形態に従えば、本発明は、非ヒト宿主由来のB細胞を含んでなるハイブリドーマを提供し、ここで、前記B細胞は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基に結合する抗体を産生し、前記抗体は、前記受容体の阻害活性を中和することが可能である。より好ましくは、本発明のこの態様のハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生するハイブリドーマではない。本発明のこの態様に従うハイブリドーマは、免疫非ヒト哺乳動物由来の脾臓細胞と不死細胞系統との融合によって上記のように作製してもよい。この融合によって産生されるハイブリドーマは、本明細書において他で記載されるような交差反応する抗体の存在についてスクリーニングすることができる。好ましくは、ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、それらのKIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる抗体を産生する。さらにより好ましくは、ハイブリドーマは、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合し、NK細胞活性を増強する抗体を産生する。最も好ましくは、該ハイブリドーマは、モノクローナル抗体DF200を産生するハイブリドーマDF200である。
【0085】
本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマは、DMEMまたはRPMI−1640などの適切な培地において、より多量に培養させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0086】
所望されるモノクローナル抗体を産生させるのに十分な増殖後、モノクローナル抗体(または腹水液)を含有する増殖培地を細胞から分別し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、ゲル電気泳動、透析、タンパク質Aもしくはタンパク質G−Sepharose、またはアガロースもしくはSepharoseビーズのような固相支持体に連結された抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーによって、典型的に達成される(すべて、例えば、Antibody Purification Handbook、アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)、出版番号18−1037−46、EditionAC(その開示内容は参考として本明細書に援用される)に記載されている)。結合型抗体は、低pH緩衝液(グリシンまたはpH3.0もしくはそれ未満の酢酸緩衝液)を使用し、抗体を含有する画分を直ちに中和することによって、タンパク質A/タンパク質Gカラムから典型的に溶出される。これらの画分をプールし、透析し、必要であれば濃縮する。
【0087】
代替的実施形態に従えば、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基に結合する抗体をコードするDNAは、本発明のハイブリドーマから単離され、適切な宿主へのトランスフェクションのための適切な発現ベクターに配置される。次いで、宿主は、抗体、または該モノクローナル抗体のヒト化バージョン、抗体の活性フラグメント、もしくは抗体の抗原認識部分を含んでなるキメラ抗体のようなその変異体の組換え産生のために使用される。好ましくは、本実施形態において使用されるDNAは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、それらのKIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる抗体をコードする。さらにより好ましくは、DNAは、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合し、NK細胞活性を増強する抗体をコードする。最も好ましくは、該DNAはモノクローナル抗体DF200をコードする。
【0088】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)従来の手順を使用して、容易に単離され、配列決定される。一旦単離されたら、DNAを発現ベクターに配置することができ、次いで、それは大腸菌(E.coli)細胞、サル(simian)COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現は当該分野において周知である(例えば、スケラ(Skerra)ら、Curr.Opinion in Immunol.,5、256頁(1993年);およびプリュックサン(Pluckthun)、Immunol.Revs.、130、151頁(1992)を参照のこと)。
【0089】
モノクローナル抗体のフラグメントおよび誘導体
本発明の抗体のフラグメントおよび誘導体(多で述べるかまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明において使用される用語「抗体」または「複数の抗体」に包含される)、好ましくは、DF−200様抗体は、当該分野において周知である技術によって産生させることができる。「免疫反応性フラグメント」は、無傷な抗体の部分を含んでなり、一般に、抗体は結合部位または可変領域である。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;連続アミノ酸残基の1つの不断配列よりなる1次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書において「一本鎖抗体フラグメント」または「一本鎖ポリペプチド」と称される)が挙げられ、(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)関連重鎖部分を伴わない唯一の軽鎖可変ドメイン、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチドおよび(3)関連軽鎖部分を伴わない唯一の重鎖可変領域、または重鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むが、これらに限定されない。例えば、FabまたはF(ab’)2フラグメントは、従来の技術に従って、単離された抗体のプロテアーゼ消化によって、産生され得る。免疫反応性フラグメントは、例えば、インビボでのクリアランスを遅延させ、より所望される薬物動態プロフィールを得るための既知の方法を使用して、修飾することができ、フラグメントをポリエチレングリコール(PEG)で修飾してもよいことが理解されよう。PEGをFab’フラグメントにカップリングおよび部位特異的に共役するための方法は、例えば、レオング(Leong)ら、Cytokine16(3):106−119(2001年)およびデルガド(Delgado)ら、Br.J.Cancer73(2):175−182(1996年)に記載されており、それらの開示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0090】
特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のDF−200の軽鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のPan2Dの軽鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のDF−200の1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。さらに別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のPan2Dの1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。そのような配列の機能的変異体/類似体は、標準的な技術を使用して、これらの開示されたアミノ酸配列の適切な置換、付加、および/または欠失を行うことによって、作製することができ、配列の比較によって援助され得る。従って、例えば、Pan2DとDF−200との間で保存されているCDR残基は、そのような残基が本明細書において開示された他の抗体についてこれらの抗体が有する競合における異なるプロフィールに寄与し得ないような修飾のための適切な標的であり得(Pan2DおよびDF−200は競合するが)、それ故、それらの特定のそれぞれのエピトープに対するこれらの抗体の特異性に寄与し得ない。別の態様では、残基がこれらの抗体のうちの1つの配列に存在し、別の抗体の配列には存在しないような位置は、欠失、置換、および/または挿入に適切であり得る。
【0091】
特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図13に記載のDF−200の重鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図13に記載のDF−200の1つもしくはそれ以上の重鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。そのような配列の機能的変異体/類似体は、標準的な技術を使用して、これらの開示されたアミノ酸配列の適切な置換、付加、および/または欠失を行うことによって、作製することができ、配列の比較によって援助され得る。別の態様では、残基がこれらの抗体のうちの1つの配列に存在し、別の抗体の配列には存在しないような位置は、欠失、置換、および/または挿入に適切であり得る。
【0092】
あるいは、本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、本発明のフラグメントをコードするように修飾することができる。次いで、修飾されたDNAを発現ベクターに挿入し、適切な細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用し、次いで該細胞は所望されるフラグメントを発現する。
【0093】
代替的実施形態では、本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、発現ベクターへの挿入前に、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインのコーディング配列を置換することによって(例えば、モリソン(Morrison)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851頁(1984年))、または免疫グロブリンコーディング配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列のすべてもしくは一部を共有結合させることによって、修飾することができる。該様式では、本来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが、本発明の抗体の定常ドメインに対して置換される。
【0094】
それ故、別の実施形態に従い、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体はヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化」形態は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはマウス免疫グロブリンから誘導される最小配列を含有する(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合配列のような)それらのフラグメントである。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、本来の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられる一方、本来の抗体の所望される特異性、親和性、および能力は維持される。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基によって置き換えてもよい。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでなることができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために作製される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含んでなり、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが本来の抗体の該領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の該領域である。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的に、ヒト免疫グロブリンの部分を含んでなる。より詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321、522頁(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、Nature、332、323頁(1988年);およびプレスタ(Presta)、Curr.Op.Struct.Biol.,2、593頁(1992年)を参照のこと。
【0095】
本発明の抗体をヒト化するための方法は当該分野において周知である。一般に、本発明に従うヒト化抗体は、本来の抗体から該抗体に導入された1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらのマウスまたは他の非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」残基と称され、典型的に「インポート」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、ウィンター(Winter)および共同研究者ら(ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321、522頁(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、Nature、332、323頁(1988年);ベルホイエン(Verhoeyen)ら、Science,239、1534頁(1988年))の方法に従って、実施することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体(キャビリー(Cabilly)ら、米国特許第4,816,567号明細書)であって、ここで、実質的に無傷でないヒト可変ドメインが、本来の抗体由来の対応する配列によって置換されている。実際には、本発明に従うヒト化抗体は、典型的にヒト抗体であり、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が、本来の抗体における類似部位由来の残基によって置換される。
【0096】
ヒト化抗体を作製するのに使用すべきヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖の両方)の選択は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベスト−フィット」方法に従えば、本発明の抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(シムズ(Sims)ら、J.Immunol.,151、2296頁(1993年);チョチア(Chothia)およびレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.,196、901頁(1987年))。別の方法は、軽または重鎖の特定の亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくらかの異なるヒト化抗体に使用することができる(カーター(Carter)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89、4285頁(1992);プレスタ(Presta)ら、J.Immunol.,51、1993頁))。
【0097】
複数の阻害型KIR受容体に対する高い親和性および他の好適な生物学的特性を保持して抗体をヒト化することはさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従い、親配列の解析のプロセスならびに親およびヒト化配列の3次元モデルを使用する多様な概念上のヒト化産物によって、ヒト化抗体が調製される。3次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者に熟知している。選択された候補免疫グロブリン配列の見込まれる3次元コンフォメーション構造を例示および示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらの標示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基の可能な役割の解析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析を可能にする。この方法では、FR残基が選択され、標的抗原の増加した親和性などの所望される抗体の特徴が達成されるように、コンセンサスおよびインポート配列から合わせられる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に、直接的および最も実質的に関与する。
【0098】
「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫に使用するマウスとしてXenoMouse(登録商標)(アブゲニクス(Abgenix),Fremont、カリフォルニア州)を使用することである。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられるその免疫グロブリン遺伝子を有した本発明に従うマウス宿主である。従って、このマウスによりまたはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマにおいて産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号明細書において説明されており、該文献は本明細書においてその全体が参考として援用される。HuMAb−MouseTM(メダレックス(Medarex))を使用して、類似の方法を達成することができる。
【0099】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されている他のトランスジェニック動物を使用すること(ヤコブビッツ(Jakobovitz)ら、Nature362(1993年)255)、またはファージディスプレイ法を使用する抗体レパートリーの選択のような他の多様な技術に従って、産生させてもよい。そのような技術は当業者に公知であり、本出願において開示されるモノクローナル抗体から出発して遂行することができる。
【0100】
本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体はまた、それらが所望される生物学的活性を示す限り、重および/または軽鎖の部分が本来の抗体における対応する配列と同一かあるいは相同である一方、鎖の残りの部分は別の種から誘導されるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かあるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントに誘導体化され得る(キャビリー(Cabilly)ら、上掲;モリソン(Morrison)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.A.,81、6851頁(1984))。
【0101】
本発明の範囲内にある他の誘導体は、官能化抗体、即ち、リシン、ジフテリア毒素、アブリンおよびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素のような毒素;蛍光部分、放射性同位元素もしくは画像化剤のような検出可能な部分;またはアガロースビーズなどのような固相支持体に共役あるいは共有結合されている抗体を含む。他のこれらの薬剤の抗体へのコンジュゲーションまたは共有結合のための方法は、当該分野において周知である。
【0102】
毒素へのコンジュゲーションは、細胞表面上に交差反応性のKIR受容体の1つを示すNK細胞の標的死滅に有用である。一旦、本発明の抗体がそのような細胞の細胞表面に結合すると、それは内在化され、毒素が細胞内部に放出され、該細胞を選択的に死滅させる。そのような使用は、本発明の代替的実施形態である。
【0103】
検出可能な部分へのコンジュゲーションは、本発明の抗体が診断目的に使用される場合、有用である。そのような目的として、細胞表面上に交差反応性KIRを有するNK細胞の存在のために生物学的サンプルをアッセイすることおよび生体生物内に交差反応性KIRを有するNK細胞の存在を検出することが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなアッセイおよび検出方法もまた、本発明の代替的実施形態である。
【0104】
本発明の抗体の固相支持体へのコンジュゲーションは、生物学的液体のような供給源からの細胞表面上に交差反応性KIRを有するNK細胞のアフィニティー精製のためのツールとして有用である。この精製方法は、得られた精製されたNK細胞の集団であることから、本発明の別の代替的実施形態である。
【0105】
代替的実施形態では、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する抗体であって、ここで、NKVSF1を含む前記抗体は、本発明の前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞上のNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、単独でまたは動物への標的化された送達のための別の物質と共にリポソーム(「イムノリポソーム」)に組み入れられ得る。他のそのような物質として、遺伝子治療のための遺伝子の送達またはNK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸、あるいはNK細胞の標的化された死滅のための毒素または薬物が挙げられる。
【0106】
公開された結晶構造(マエナカ(Maenaka)ら(1999年)、ファン(Fan)ら(2001年)、ボイングトン(Boyington)ら(2000年))に基づくKIR2DL1、−2および−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1およびKIR2DL1−3交差反応性マウスモノクローナル抗体DF200とNKVSF1との間の相互作用における所定の領域またはKIR2DL1、−2および−3の関与を予測した。従って、1つの実施形態では、本発明は、アミノ酸残基(105、106、107、108、109、110、111、127、129、130、131、132、133、134、135、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、181、192)によって規定される領域内のKIR2DL1に排他的に結合する抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、残基(105、106、107、108、109、110、111、127、129、130、131、132、133、134、135、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、181、192)によって規定される領域以外のアミノ酸残基と相互作用せずに、KIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する抗体を提供する。
【0107】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R131がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R157がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R158がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1残基(131、157、158)に結合する抗体を提供する。
【0111】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DS3(R131W)に結合するが、野生型KIR2DS3には結合しない抗体を提供する。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方ならびにKIR2DS4に結合する抗体を提供する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方には結合するが、KIR2DS4には結合しない抗体を提供する。
【0114】
抗体が上記で規定されたエピトープ領域のうちの1つの内部に結合するかどうかの決定は、当業者に公知の方法で行うことができる。そのようなマッピング/特徴付け方法の1つの例として、抗KIR抗体に対するエピトープ領域は、KIR2DL1またはKIR2DL2/3タンパク質における暴露されたアミン/カルボキシルの化学修飾を使用するエピトープ「フット−プリンティング」によって決定することができる。そのようなフット−プリンティング技術の1つの特定の例は、HXMS(質量分析によって検出される水素−重水素交換)の使用であって、ここで、受容体およびリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合、および逆交換が生じ、ここで、タンパク質結合に参加している骨格アミド基は、逆交換から保護され、従って重水素化が保持される。関連領域は、このポイントで、ペプシンによるタンパク質分解、ファスト・マイクロボア(fast microbore)高速液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析によって同定することができる。例えば、エーリングH(Ehring H)、Analytical Biochemistry、第267巻(2)252−259頁(1999年)および/またはエンジェン,J.R.(Engen,J.R.)およびスミス,D.L.(Smith,D.L.)(2001年)Anal.Chem.73,256A−265Aを参照のこと。適切なエピトープ同定技術のもう1つの例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であって、ここで、典型的に、遊離の抗原および抗体のような抗原結合性ペプチドと複合体形成した抗原の2次元NMRスペクトルにおけるシグナルの位置が比較される。NMRスペクトルにおいて抗原に対応するシグナルのみが認められ、抗原結合性ペプチド由来のシグナルは認められないように、抗原は、典型的に、選択的に同位体の15Nで標識される。抗原結合性ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、遊離の抗原のスペクトルと比較して、典型的に複合体のスペクトルの位置をシフトし、該方法で、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。例えば、Ernst Schering Res Found Workshop.2004年;(44):149−67;ハング(Huang)ら、Journal of Molecular Biology、第281巻(1)61−67頁(1998);およびサイト(Saito)およびパターソン(Patterson)、Methods.1996年6月;9(3):516−24頁を参照のこと。
【0115】
エピトープマッピング/特徴付けもまた、質量分析方法を使用して実施することができる。例えば、ダウンワード,Jマス(Downward,J Mass)Spectrom.2000年4月;35(4):493−503頁ならびにキセラー(Kiselar)およびダウンワード(Downard)、Anal Chem.1999年5月1日;71(9):1792−801頁を参照のこと。
【0116】
プロテアーゼ消化技術もまた、エピトープマッピングおよび同定に関して有用であり得る。抗原性決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化、例えば、37℃およびpH7〜8での消化においてKIR2DL1またはKIR2DL2/3に対し約1:50の比でトリプシンを使用し、続いて、ペプチド同定のための質量分析(MS)によって、決定することができる。抗KIRバインダーによってトリプシン切断から保護されたペプチドは、その後、トリプシン消化に供されたサンプルと、抗体と共にインキュベーションし、次いで、例えば、トリプシンによる消化に供された(それによって、バインダーに対するフットプリントを示す)サンプルとの比較によって同定することができる。キモトリプシン、ペプシンなどのような他の酵素もまた、もしくは代替的に、類似のエピトープ特徴付け方法において使用することができる。さらに、酵素的消化は、表面に露出しておらず、従って、免疫原性/抗原性に最も関連しない可能性が最も高い抗KIRポリペプチドについて、潜在的抗原性決定基配列がKIR2DL1の領域内にあるかどうかを分析するための迅速な方法を提供することができる。類似の技術の考察については、例えば、マンカ(Manca)、Ann Ist Super Sanita.1991;27(1):15−9頁を参照のこと。
【0117】
カニクイザルとの交差反応
抗体NKVSF1もまた、カニクイザル由来のNK細胞に結合することを見出した。実施例7を参照のこと。従って、本発明は、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体がヒトNK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、さらに、カニクイザル由来のNK細胞に結合する。その1つの実施形態では、抗体は抗体NKVSF1ではない。本発明はまた、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体の毒性を試験する方法を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体は、ヒトNK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、ここで、方法は、カニクイザルの抗体を試験することを含んでなる。
【0118】
組成物および投与
本発明はまた、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体を含んでなる薬学的組成物を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体は、任意の適切なビヒクルにおいて、NK細胞を含んでなる患者または生物学的サンプルのNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度で増強するのに有効な量で、NK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型KIR受容体と交差反応し、それらの阻害シグナルを中和し、該細胞の活性を増強する。組成物は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含んでなる。そのようの組成物はまた、「本発明の抗体組成物」とも称される。1つの実施形態では、本発明の抗体組成物は、上記の抗体実施形態において開示される抗体を含んでなる。抗体NKVSF1は、本発明の抗体組成物に存在し得る抗体の範囲内に含まれる。
【0119】
本明細書において使用する用語「生物学的サンプル」として、生物学的液体(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の組成物は、患者または生物学的サンプルのNK細胞の活性を増強する方法において用いることができる。本方法は、前記組成物と前記患者または生物学的サンプルとを接触させる工程を含んでなる。そのような方法は、診断および治療目的の療法に有用である。
【0122】
生物学的サンプルと併せて(in conjunction with)使用するために、抗体組成物を、サンプルの性質(液体もしくは固体)に依存して、簡単にサンプルと混合するかまたは直接適用することによって、投与することができる。生物学的サンプルは、任意の適切なデバイス(プレート、ポーチ、フラスコなど)中の抗体と直接接触させてもよい。患者と併せて使用するためには、組成物は、患者への投与のために処方しなければならない。
【0123】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内にまたはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に投与される。
【0124】
本発明の無菌注入可能な形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方することができる。無菌注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口的な許容可能な希釈剤もしくは溶媒における無菌注入可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中溶液として)であってもよい。なかでも、用いられ得る許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来的に用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の低刺激不揮発性油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注入可能物の調製に有用であり、それらは、特に、ポリオキシエチレンバージョン(polyoxyethylated version)のオリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容可能な油である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的許容可能な剤形の処方において一般に使用される長鎖アルコール希釈液または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティーの増強剤もまた、処方の目的のために使用することができる。
【0125】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
【0126】
あるいは、本発明の組成物は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0127】
本発明の組成物は、特に、処置の標的が眼、皮膚、もしくは下部腸管の疾患を含む局所投与によって用意にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所的に投与することができる。適切な局所処方は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0128】
下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤処方(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方で行うことができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
【0129】
局所適用のために、組成物は、1つもしくはそれ以上のキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切な軟膏において処方してもよい。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとして、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容されたキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切なローションまたはクリームにおいて処方することができる。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベイト60(polysorbate60)、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
眼科用途のために、組成物を、等張性、pH調整した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液、または好ましくは、等張性、pH調整した食塩水中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤を伴うもしくは伴わずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途として、組成物を、ワセリン(petropatum)のような軟膏において処方してもよい。
【0131】
本発明の処方物はまた、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野に周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いる食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0132】
いくらかのモノクローナル抗体は、Rituxan(リツキシマブ(Rituximab))、Herceptin(トラツズマブ(Trastuzumab))またはXolair(オマリズマブ(Omalizumab))、ならびに類似の投与レジメン(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)が本発明の抗体と共に使用され得るような臨床的状況において効率的であることが示されている。本発明の薬学的組成物における抗体の投与のためのスケジュールおよび用量は、例えば、製造者に指示を使用して、これらの生成物のための既知の方法に従って決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物に存在する抗体は、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベイト(polysorbate)80、および注射用滅菌水において、静脈内投与のために処方される。pHは6.5に調整される。本発明の薬学的組成物における抗体のための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m2〜500mg/m2であり得る。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、至適スケジュールおよびレジメンは、臨床治験において決定されなければならない薬学的組成物における特定の抗体の親和性および忍容性を考慮して適応することができることが理解されよう。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、NK細胞を飽和する本発明の薬学的組成物における抗体の注入の量およびスケジュールは、抗体の親和性およびその薬物動態パラメータを考慮して決定される。
【0133】
別の実施形態に従えば、本発明の抗体組成物は、抗体が投与されている特定の治療目的に通常利用される薬剤を含む別の治療剤をさらに含んでなることができる。さらなる治療剤は、通常、処置されている特定の疾患または状態のための単剤治療における該薬剤に典型的に使用される量で組成物中に存在する。そのような治療剤として、癌の処置に試用される治療剤、感染性疾患を処置するために使用される治療剤、他の免疫療法において使用される治療剤、(IL−2またはIL−15のような)サイトカイン、他の抗体のおよび他の抗体のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
例えば、多くの治療剤が癌の処置のために利用可能である。本発明の抗体組成物および方法は、特定の疾患、特定の腫瘍、癌疾患、または患者が示す他の疾患もしくは他の障害の処置において一般に用いられる他の任意の方法と併用してもよい。特定の治療アプローチが、患者の状態自体に有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物における抗体の活性を有意に妨げない限り、その本発明との併用が考慮される。
【0135】
固形腫瘍の処置に関連して、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などのような古典的なアプローチと組み合わせて使用してもよい。従って、本発明は、本発明の薬学的組成物が手術または放射性処置と同時、前、または後に使用されるか;あるいは従来の化学療法、放射線治療剤もしくは抗血管新生剤または標的化された免疫毒素もしくはコアギュリガンド(coaguligand)と共に、前または後に患者に投与される併用療法を提供する。
【0136】
1つもしくはそれ以上の薬剤を、治療レジメンにおいて本発明の抗体含有組成物と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、それぞれの処置を個別に行う場合に観察される効果の相加を求める要件は存在しない。少なくとも相加的効果は一般に所望されるが、単回治療のうちの1つを超える増加した抗癌効果は、有益で得あり得る。また、併用処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。
【0137】
併用抗癌治療を実践するためには、動物に本発明の抗体組成物を、動物内において併用抗癌作用が生じる有効な様式で、別の抗癌剤と併用して、簡単に投与する。従って、薬剤は、腫瘍の脈管構造内においてそれらが組み合わされた形で存在し、腫瘍環境においてそれらが組み合わされて作用するのに有効な量ならびに有効な期間、提供される。この目的を達成するために、本発明の抗体組成物および抗癌剤は、単一の組み合わされた組成物、または異なる投与経路を使用する2つの異なる組成物としてのいずれか一方で、動物に同時に投与することができる。
【0138】
あるいは、本発明の抗体組成物の投与は、例えば、数分〜数週間および数箇月の範囲の間隔で、抗癌剤処置の前、または後に行うことができる。抗癌剤および本発明の抗体組成物における抗体は、癌に対し、有利に組み合わされた効果を発揮することが確実にされる。
【0139】
ほとんどの抗癌剤は、抗血管新生療法における本発明の阻害型KIR抗体組成物の前に、与えられる。しかし、抗体の免疫共役が本発明の抗体組成物において使用される場合、多様な抗癌剤を、同時またはその後に投与することができる。
【0140】
状況により、処置の期間の顕著に延長することさえ所望され得、ここで、数日間(2、3、4、5、6もしくは7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)または数箇月(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)が、抗癌剤または抗癌処置のそれぞれの投与と本発明の抗体組成物の投与との間に経過する。これは、抗癌処置が実質的に腫瘍を破壊する(手術または化学療法のように)ことを目的とし、本発明の抗体組成物の投与が微小転移または腫瘍の再成長を防止することを目的とする環境において有利である。
【0141】
本発明の阻害型KIR抗体に基づく組成物または抗癌剤のいずれかの1回を超える投与を利用することも想定される。これらの薬剤は、1日もしくは1週間おき;または本発明の阻害型KIR抗体組成物による処置のサイクルの後、抗癌剤療法のサイクルが続く形で、交換可能に投与することができる。いずれにせよ、併用療法を使用して腫瘍の抑制を達成するためには、必要なことは、投与時間にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに十分な組み合わされた量で両方の薬剤を送達することだけである。
【0142】
手術について、任意の外科的介入は、本発明と組み合わせて実践することができる。放射線療法に関して、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波および電子放射などのように、癌細胞内で局所的にDNA損傷を誘発する任意の機構が考慮される。放射性同位元素の癌細胞への指令された送達もまた考慮され、これは、標的化抗体または他の標的化手段とあわせて使用され得る。
【0143】
他の態様では、免疫調節化合物またはレジメンを、本発明の抗体組成物と組み合わせて、またはその部分として投与することができる。免疫調節化合物の好適な例はサイトカインを含む。そのような併用アプローチでは、多様なサイトカインを用いることができる。本発明によって考慮される組み合わせにおいて有用なサイトカインの例として、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γが挙げられる。本発明の併用処置または組成物において使用されるサイトカインは、患者の状態およびサイトカインの相対的毒性のような臨床適応に一致する標準的なレジメンに従って、投与される。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を含んでなる治療組成物は、化学療法もしくはホルモン治療剤と併用投与され得るか、または該化学療法もしくはホルモン治療剤をさらに含んでなり得る。様々なホルモン治療および化学療法剤は、本明細書において開示される併用処置方法において使用することができる。例示的に考えられる化学療法剤として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、ならびにそれらの誘導体およびプロドラックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
ホルモン剤としては、例えば、LHRHアゴニスト、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、およびブセレリン;抗エストロゲン、例えば、タモキシフェンおよびトレミフェン;抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、シプロテロンおよびビカルタミド;アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールおよびファドロゾール;ならびにプロゲスターゲン、例えば、メドロキシ、クロルマジノンおよびメゲストロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
当業者に理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、臨床治療においてすでに用いられている用量に近似し、ここで、化学療法剤は、単独か、または他の化学療法剤との併用で投与される。唯一の例として、シスプラチンのような薬剤、および他のDNAアルキル化剤を使用することができる。シスプラチンは癌を処置するために広範に使用されており、臨床適用において使用される有効量は20mg/m2であり、3週間ごとに5日間の投与を合計で3クール行う。シスプラチン経口的には吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内注入を介して送達されなければならない。
【0147】
さらに有用な化学療法剤として、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を妨害する化合物、ならびにポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を破壊する薬剤が挙げられる。併用治療のための多くの例示的化学療法剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Cに列挙されており、該薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参考として援用される。列挙されたそれぞれの薬剤は例示的であり、限定的ではない。当業者は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第33章、特に624〜652頁を参照されたい。用量の変動は、治療中の状態に依存して生じる可能性がある。処置を施行する医師は、個々の被験体に対する適切な用量を決定することが可能である。
【0148】
本発明の交差反応性阻害型KIR抗体組成物は、任意の1つもしくはそれ以上の他の抗血管新生療法をと組み合わせて使用され得るか、または抗血管新生剤をさらに含んでなり得る。そのような薬剤の例として、それぞれVEGFまたはVEGF受容体に対して指向される中和抗体、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi、RNAアプタマーおよびリボザイムが挙げられる(米国特許第6,524,583号明細書、その開示内容は本明細書において参考として援用される)。国際公開第98/16551号パンフレット(具体的に本明細書において参考として援用される)に記載されているように、拮抗特性を伴うVEGFの変異体もまた用いることができる。併用治療に関して有用であるさらなる例示的抗血管新生剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Dに列挙されており、薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参考として援用される。
【0149】
本発明の阻害型KIR抗体組成物はまた、アポトーシスを誘導する方法と組み合わせて有利に使用され得るか、またはアポトーシス誘導剤を含んでなり得る。例えば、アポトーシス、またはプログラムされた細胞死を阻害する多くの発癌遺伝子が同定されている。このカテゴリー内の例示的発癌遺伝子として、bcr−abl、bcl−2(bcl−1、サイクリン(cyclin)D1とは異なる;(GenBank)登録番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号明細書;および同第5,539,094号明細書;それぞれ、本明細書において参考として援用される)ならびにBcl−x1、Mcl−1、Bak、A1、およびA20を含むファミリーメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現はT細胞リンパ腫においてはじめて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax、アポトーシス経路におけるタンパク質に結合し、不活化することによって、機能する。bcl−2機能を阻害すると、Baxの不活化が防止され、アポトーシス経路を促進させることが可能である。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNAまたは小分子の化学化合物を使用するこのクラスの発癌遺伝子の阻害が、アポトーシスの増強を生じさせるための本発明での使用のために考慮される(米国特許第5,650,491号明細書;同第5,539,094号明細書;および同第5,583,034号明細書;それぞれは本明細書において参考として援用される)。
【0150】
本発明の阻害型KIR抗体組成物はまた、標的化タンパク質、例えば、標的細胞、例えば、標的腫瘍細胞の特異的マーカー(「ターゲット剤」)に指向される抗体、リガンド、もしくはそれらの共役を含んでなる分子を含んでなり得るかまたは該分子と組み合わせて使用され得る。一般的に言えば、本発明のこれらのさらなる態様における使用のためのターゲット剤は、好ましくは、腫瘍部位において好適または特異的に発現されるアクセス可能な腫瘍抗原を認識する。ターゲット剤は、一般に、腫瘍細胞の表面に発現された、表面にアクセス可能なまたは表面に局在した成分に結合する。ターゲット剤はまた、好ましくは、高い親和性の特性を示し;ヒト身体における心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、直腸、乳、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、あるいは他の生命を維持する器官または組織から選択される1つもしくはそれ以上の組織のような生命を維持する正常な組織に対して顕著なインビボでの副作用を発揮しない。本明細書で使用する用語「顕著な副作用を発揮しない」は、インビボで投与する場合、ターゲット剤が化学療法中に通常遭遇するような極僅かなまたは臨床的に管理可能な副作用しか生じないという事実を指す。
【0151】
腫瘍の処置では、本発明の抗体組成物は、補助化合物をさらに含んでなり得るかまたは該補助化合物との組み合わせで使用され得る。補助化合物はとしては、その例として、制吐剤、例えば、セロトニン拮抗薬および治療薬、例えば、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤およびカンナビノイド系薬剤;ビスホスホネート系薬剤、例えば、ゾレドロン酸およびパミドロン酸;ならびに造血成長因子、例えば、エリスロポエチンおよびG−CSF、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチムおよびダルベポエチンを挙げることができる。
【0152】
別の実施形態では、NKVSF1を含む異なる交差反応性を有する本発明の2つもしくはそれ以上の抗体は、できるだけ多くの阻害型KIR遺伝子産物の阻害効果を中和するように単一の組成物内に組み合わせてもよい。本発明の交差反応性阻害型KIR抗体、またはそれらのフラグメントもしくは誘導体の組み合わせを含んでなる組成物は、単一の交差反応性抗体によって認識される阻害型KIR遺伝子産物のそれぞれを欠き得るヒト集団が小さな百分率で存在する可能性があるため、さらに広範な有用性を可能にする。同様に、本発明の抗体組成物は、単一の阻害型KIRサブタイプを認識する1つもしくはそれ以上の抗体をさらに含んでなり得る。そのような組み合わせはさらに、治療設定において広範な有用性を提供する。
【0153】
本発明はまた、前記患者に本発明の組成物を投与する工程を含んでなる、NK細胞活性を、それを要する患者において増強する方法をさらに提供する。本発明は、より具体的には、NK細胞活性の増加が有益であるか、NK細胞による溶解に感受性である細胞に関与するか、影響を及ぼすか、もしくは該細胞によって生じるか、あるいは癌、別の増殖性障害、感染性疾患もしくは免疫障害のような不十分なNK細胞活性によって生じるかまたは特徴付けられる疾患を有する患者においてNK細胞活性を増加させることに関する。より具多的には、本発明の方法は、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺および扁平上皮癌を含む皮膚の癌種を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ球系統の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscaroma)、および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌種を含む他の腫瘍を含むがこれらに限定されない様々な癌ならびに他の増殖性疾患の処置のために利用される。
【0154】
本発明に従って処置することができる好適な障害は、リンパ球系統の造血器腫瘍、例えば、小細胞および大脳様細胞型を含むT細胞性前リンパ球性白血病(T−PLL)のようなT細胞障害を含むが、これらに限定されないT細胞ならびにB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/dT−NHL肝脾リンパ腫;末梢性/胸腺後段階T細胞リンパ腫(多形性もしくは免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻部)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞型リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)を含む。
【0155】
例えば、過形成、線維症(具体的には、肺、但し、腎線維症のような他のタイプの線維症も含む)、血管新生、乾癬、アテローム硬化症および狭窄または血管形成術後の再狭窄のような血管における平滑筋増殖を含む他の増殖性障害もまた、本発明に従って処置することが可能である。本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を使用して、好ましくは、ウイルス、細菌、原生動物、糸状菌もしくは真菌によって生じる任意の感染症を含む感染性疾患を処置または防止することができる。そのようなウイルス感染性生物体として、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−1)、2型単純ヘルペス(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルスまたはI型もしくは2型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
本発明に従って処置することができる細菌感染として、以下、スタフィロコッカス(Staphylococcus);化膿連鎖球菌(S.pyogenes)を含む連鎖球菌(Streptococcus);腸球菌(Enterococcl);炭疽菌(Bacillus anthracis)、およびラクトバチルス(Lactobacillus)を含むバチルス(Bacillus);リステリア(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);G.バギナリス(G.vaginalis)を含むガードネレラ(Gardnerella);ノカルディア(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponerna);カンピロバクター(Camplyobacter)、緑膿菌(Raeruginosa)を含むシュードモナス(Pseudomonas);レジオネラ(Legionella);淋菌(N.gonorrhoeae)および髄膜炎菌(N.meningitides)を含むナイセリア(Neisseria);F.メニンゴゼプチクム(F.meningosepticum)およびF.オドラタム(F.odoraturn)を含むフラボバクテリウム(Flavobacterium);ブルセラ(Brucella);百日咳菌(B.pertussis)および気管支敗血症菌(B.bronchiseptica)を含むボルデテラ(Bordetella);大腸菌(E.coli)を含むエシェリキア(Escherichia)、クレブシェラ(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、S.マルセッセンス(S.marcescens)およびS.リケファシエンス(S.liquefaciens)を含むセラチア(Serratia);エドワードシエラ(Edwardsiella);P.ミラビリス(P.mirabilis)およびP.ブルガリス(P.vulgaris)を含むプロテウス(Proteus);ストレプトバチルス(Streptobacillus);R.リケッチー(R.fickettsfi)を含むリケッチア科(Rickettsiaceae)、C.シッタキ(C.psittaci)およびC.トラコマチス(C.trachornatis)を含むクラミジア(Chlamydia);結核菌(M.tuberculosis)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、M.フォーチュイタム(M.folluiturn)、らい菌(M.laprae)、M.アビウム(M.avium)、ウシ型結核菌(M.bovis)、アフリカ型結核菌(M.africanum)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、およびM.レプレヌリアム(M.lepraernurium)を含むマイコバクテリウム(Mycobacterium);ならびにノカルディア(Nocardia)によって生じる感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
本発明に従って処置され得る原生動物感染として、リ−シュマニア(leishmania)、コクジジオア(kokzidioa)、およびトリパノソーマ(trypanosoma)によって生じる感染が挙げられるが、これらに限定されない。感染性疾患の完全なリストを、疾病対策センター(Center for Disease Control)(CDC)の国立感染症センター(National Center for Infectious Disease)(NCID)のウェブサイト(http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/)(本明細書において参考として援用される)上に見出すことができる。前記疾患のすべてが、本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を使用する処置のための候補である。
【0158】
多様な感染性疾患を処置するそのような方法は、単独かあるいは抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗生物質、抗寄生体剤および抗原生動物剤を含むそのような疾患を処置するのに他の公知の処置および/または治療剤との組み合わせのいずれかで、抗体組成物を用いることができる。これらの方法がさらなる治療剤でのさらなる処置に関与する場合、該薬剤は、本発明の抗体と共に、単一の剤形かまたは個別の複数の剤形のいずれかで投与することができる。個別の剤形として投与する場合、さらなる薬剤は、本発明の抗体の投与の前、同時、または後に投与することができる。
【0159】
本発明のさらなる態様および利点を、以下の実施例のセクションで開示するが、これは例示的であり、本出願の範囲を制限するものではないとみなすべきである。
【0160】
実施例1
PBLの精製およびポリクローンまたはクローンNK細胞系統の作製
PBLを、Ficoll Hypaque勾配およびプラスチック粘着細胞の枯渇によって、健常なドナーから誘導した。富化されたNK細胞を得るために、PBLを、抗CD3、抗CD4および抗HLA−DRmAb(4℃で30分間)、続いて、ヤギ抗マウス磁気ビーズ(ダイナル(Dynal))(4℃で30分間)と共にインキュベートし、当該分野において既知の方法(ペンデ(Pende)ら、1999年)によって免疫磁気選択を行った。CD3−、CD4−、DR−細胞を、照射したフィーダー細胞、100U/mlインターロイキン2(Proleukin、カイロン・コーポレーション(Chiron Corporation))および1.5ng/ml PhytohemagglutininA(ギブコBRL(Gibco BRL))上で培養し、ポリクローンNK細胞集団を得た。NK細胞を限界希釈によりクローニングし、NK細胞のクローンを細胞表面受容体の発現についてのフローサイトメトリーによって特徴付けた。
【0161】
使用したmAbは、JT3A(IgG2a、抗CD3)、EB6およびGL183(それぞれIgG1抗KIR2DL1およびKIR2DL3)、XA−141 IgM(EB6と同じ特異性を伴う抗KIR2DL1)、抗CD4(HP2.6)、ならびに抗DR(D1.12、IgG2a)であった。出願人らにより生成されたJT3A、HP2.6、およびDR1.12の代わりに、同じ特異性の市販のmAbを使用することもできる(ベックマン・コールター・インク(Beckman Coulter Inc.)、Fullerton、カリフォルニア州)。EB6およびGL183は市販されている(ベックマン・コールター・インク(Beckman Coulter Inc.)、Fullerton、カリフォルニア州)。XA−141は市販されていないが、EB6を、(モレッタ(Moretta)ら、1993)に記載のような溶解のコントロール再構築のための使用することができる。
【0162】
細胞を適切な抗体(4℃で30分間)、続いて、PEまたはFITC共役ポリクローナル抗マウス抗体(サザン・バイオテクノロジー・アソシエーツ・インク(Southern Biotechnology Associates Inc))で染色した。サンプルを、FACSAN装置(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、Mountain View、カリフォルニア州)上での細胞蛍光測定分析により分析した。
【0163】
以下のクローンを、本研究に使用した。CP11、CN5およびCN505はKIR2DL1陽性クローンであり、EB6((IgG1抗KIR2DL1)またはXA−141(EB6抗体と比較して同じ特異性を伴うIgM抗KIR2DL1)により染色される。CN12およびCP502はKIR2DL3陽性クローンであり、GL183抗体(IgG1抗KIR2DL3)により染色される。
【0164】
NKクローンの細胞障害活性を、標準的な4時間51Cr遊離アッセイによって評価し、ここで、エフェクターNK細胞を、NK細胞溶解に対する感受性について既知のCw3またはCw4陽性細胞系統に対して試験した。すべての標的を、マイクロ滴定プレートのウェルあたり5000個の細胞で使用し、エフェクター:標的比を図に示す(通常、標的細胞あたり4エフェクター)。細胞溶解アッセイを、示されたモノクローナル抗体の1/2希釈での懸濁液を伴うかまたは伴わすに実施した。手順は、本質的に(モレッタ(Moretta)ら、1993)の記載に同じであった。
【0165】
実施例2
新たなmAbの作製
mAbを、(モレッタ(Moretta)ら、1990)に記載のように、5週齢のBalbCマウスを活性型ポリクローンまたはモノクローンNK細胞系統で免疫することによって、作製した。異なる細胞融合後、はじめに、EB6およびGL183陽性NK細胞系統ならびにクローンとの交差反応する能力について、mAbを選択した。それぞれ、Cw4またはCw3陽性標的のEB6陽性もしくはGL183陽性NKクローンによって溶解を再構築する能力について、陽性モノクローナル抗体をさらにスクリーニングした。
【0166】
細胞染色は、以下の通りに行った。細胞を、抗体のパネル(1μg/mlまたは50μl上清、4℃で30分間)、続いて、PE−共役ヤギF(ab’)2フラグメント抗マウスIgG(H+L)またはPE共役ヤギF(ab’)2フラグメント抗ヒトIgG(Fcγ)抗体(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))で染色した。細胞蛍光測定分析を、EpicsXL.MCL装置(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))上で実施した。
【0167】
モノクローナル抗体のうちの1つであるDF200mAbが、KIR2DL1、KIR2DL2/3を含むKIRファミリーの多様なメンバーを交差反応することを見出した。KIR2DL1+およびKIR2DL2/3+NK細胞の両方を、DF200mAbで鮮明に染色した(図1)。
【0168】
これらのHLAクラスI特異的阻害型受容体のうちの1つもしくは別のもの(または両方)を発現するNKクローンを、1つもしくはそれ以上のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した。細胞障害性アッセイを、以下の通りに行った。YTS−KIR2DL1またはYTS−Eco細胞系統の細胞溶解活性を、標準的な4時間51Cr遊離アッセイによって評価した。エフェクター細胞を、HLA−Cw4陽性または陰性EBV細胞系統およびHLA−Cw4トランスフェクト721.221細胞に対して試験した。すべての標的は、マイクロ滴定プレートのウェルあたり3000個の細胞で使用した。エフェクター/標的比を図に示す。細胞溶解アッセイを、モノクローナルマウスまたはヒト抗体の示された全長もしくはF(ab’)2フラグメントを伴うあるいは伴わずに実施した。予想されるように、HLA−Cw4およびKIR2DL3+NKクローンを発現する標的細胞に対するいずれの細胞溶解活性もCw3陽性標的に対してほとんどもしくはまったく活性を示さない場合、KIR2DL1+NKクローンはほとんど示さなかった。しかし、DF200mAb(それらのKIR2DL受容体を遮蔽するために使用した)の存在下では、NKクローンは、それらのHLA−Cリガンドを認識することができなくなり、Cw3またはCw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。
【0169】
例えば、C1R細胞系統(CW4+EBV細胞系統、ATCC番号CRL1993)は、KIR2DL1+NKクローン(CN5/CN505)では死滅されなかったが、阻害は、DF200または従来の抗KIR2DL1mAbのいずれか一方の使用によって、効率的に反転させることができた。一方、KIR2DL2/3+KIR2DL1−表現型(CN12)を発現するNKクローンは、C1R細胞を効率的に死滅させ、この死滅は、DF200mAbの影響を受けなかった(図2)。Cw3陽性標的に対するKIR2DL2−またはKIR2DL3−陽性NKクローンによっても同様の結果が得られる。
【0170】
同様に、Cw4+221EBV細胞系統は、KIR2DL1+トランスフェクトNK細胞によって死滅されなかったが、阻害は、DF200、DF200Fabフラグメント、または従来の抗KIR2DL1mAbEB6もしくはXA141のいずれかの使用によって、効率的に反転させることができた。また、Cw3+221EBV細胞系統は、KIR2DL2+NK細胞によって死滅されなかったが、阻害は、DF200またはDF200Fabフラグメントのいずれかの使用によって、反転させることができた。最後に、Cw3+221EBV細胞系統は、KIR2DL3+NK細胞によって死滅されなかったが、この阻害は、DF200Fabフラグメントまたは従来の抗KIR2DL3mAbGL183もしくはY249のいずれかの使用によって、反転させることができた。結果を図3に示す。
【0171】
F(ab’)2フラグメントもまた、Cw4陽性標的の溶解を再構築する能力について試験した。DF200のF(ab’)2フラグメントおよびEB6Abは、両方とも、Cw4トランスフェクト221細胞系統およびCw4+TUBO EBV細胞系統のKIR2DL1−トランスフェクトNK細胞による溶解の阻害を反転することが可能であった。結果を図4に示す。
【0172】
実施例4
新たなヒトmAbの作製
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを組換えKIRタンパク質で免疫し、ヒトモノクローナル抗KIR Abを作製した。異なる細胞融合後、はじめに、固定化されたKIR2DL1およびKIR2DL2タンパク質と交差反応する能力について、mAbを選択した。1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1を含むいくらかのモノクローナル抗体がKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応することを見出した。
【0173】
陽性モノクローナル抗体を、Cw4陽性標的細胞のKIR2DL1を発現するEB6陽性NKトランスフェクタントによる溶解を再構築する能力について、さらにスクリーニングした。HLAクラスI特異的阻害型受容体を発現するNK細胞を、1つもしくはそれ以上のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した(図5および6)。細胞障害性アッセイを、上記の通りに行った。エフェクター/標的比を図に示し、抗体を10μg/mlまたは30μg/mlのいずれかで使用した。
【0174】
(予想されるように、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対するいずれの細胞溶解活性がそうである場合、KIR2DL1+NK細胞はほとんど示さなかった。)しかし、1−7F9 mAbの存在下では、NK細胞は、それらのHLA−Cリガンドを認識することができなくなり、Cw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。例えば、試験した2つの細胞系統(HLA−Cw4トランスフェクト721.221およびCW4+EBV細胞系統)は、KIR2DL1+NK細胞で死滅されなかったが、阻害は、Mab1−7F9または従来の抗KIR2DL1mAb EB6のいずれかの使用により効率的に反転された。AbDF200およびpanKIR(NKVSF1とも称される)を1−7F9と比較した。一方、抗体1−4F1、1−6F5および1−6F1は、Cw4陽性標的に対するNK細胞による細胞溶解を再構築することができなかった。
【0175】
実施例5
DF200 mAb/KIR2DL1およびDF200 mAb/KIR2DL3相互作用のBiacore分析
組換えタンパク質の産生および精製
KIR2DL1およびKIR2DL3組換えタンパク質を大腸菌(E.coli)において産生させた。KIR2DL1およびKIR2DL3の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、以下のプライマーを使用して、それぞれ、pCDM8クローン47.11ベクター(バイアソニ(Biassoni)ら、1993年)およびRSVS(gpt)183クローン6ベクター(ワグマン(Wagtman)ら、1995年)から、PCRによって増幅した。
センス:5’−GGAATTCCAGGAGGAATTTAAAATGCATGAGGGAGTCCACAG−3’
アンチセンス:5’−CGGGATCCCAGGTGTCTGGGGTTACC−3’
それらを、ビオチン化シグナルをコードする配列でフレームにおいて、pML1発現ベクター(ソウルクイン(Saulquin)ら、2003年)にクローニングした。
【0176】
タンパク質発現は、BL21(DE3)細菌株(インビトロジェン(Invitrogen))において実施した。トランスフェクト細菌を、OD600=0.6まで、37°C、アンピシリン(100μg/ml)を補充した培地中で増殖させ、発現を1mM IPTGで誘導した。
【0177】
タンパク質を、変性条件(8M尿素)下の封入体から回収した。組換えタンパク質のリフォールディングを、L−アルギニン(400mM、シグマ(Sigma))およびβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20mM Tris、pH7.8、NaCl 150mM緩衝液において、室温で、尿素濃度を、6段階の透析(それぞれ、4、3、2、1、0.5および0M尿素)で減少することによって、実施した。還元型および酸化型グルタチオン(それぞれ5mMおよび0.5mM、シグマ(Sigma))を、0.5および0M尿素の透析工程中に添加した。最後に、タンパク質を、10mM Tris、pH7.5、NaCl 150mM緩衝液に対して、広範に透析した。可溶性のリフォールドしたタンパク質を濃縮し、次いで、Superdex200サイズ排除カラム(ファルマシア(Pharmacia);AKTAシステム(AKTA system))上で精製した。
【0178】
表面プラズモン共鳴測定を、Biacore装置(バイアコア(Biacore))上で実施した。すべてのBiacore実験において、HBS緩衝液にランニング緩衝液としての役割を果たす0.05%サーファクタント(surfactant)P20を補充した。
【0179】
タンパク質の固定化
上記のように産生された組換えKIR2DL1およびKIR2DL3タンパク質をSensor Chip CM5(バイオコア(Biacore))上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合で固定化した。sensor chip表面をEDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド、バイアコア(Biacore))で活性化した。カップリング緩衝液(10mM酢酸、pH4.5)中タンパク質を注入した。残留する活性型基の失活を、100mMエタノールアミンpH8(バイアコア(Biacore))を使用して実施した。
【0180】
親和性測定
動態測定のため、多様な濃度の可溶性抗体(1×10−7〜4×10−10M)を固定化されたサンプル上に適用した。測定は、20μl/分連続流速で実施した。各サイクルについて、sensor chipの表面を、10mM NaOH pH11の5μl注入によって、再生した。BIAlogue動態評価プログラム(BIAlogue Kinetics Evaluation program)(BIAevaluation 3.1,バイアコア(Biacore))をデータ分析に使用した。可溶性分析物(多様な濃度での40μl)を、20μl/分の流速、HBS緩衝液において、それぞれ、KIR2DL1およびKIR2DL3の500または540反射率単位(RU)、および1000または700RUを含有するデキストラン層上で、注入した。データは、6つの独立した実験の代表値である。結果を以下の表1に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
実施例6
マウスおよびヒト抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
固定化されたKIR2DL1(900RU)、KIR2DL3(2000RU)およびKIR2DS1(1000RU)上、マウス抗KIR2D抗体DF200、Pan2D、gl183およびEB6、ならびにヒト抗KIR2D抗体1−4F1、1−6F1、1−6F5および1−7F9により、先に記載のようにエピトープマッピング分析を実施した(ガウトハイヤー(Gauthier)ら、1999年、サウナル(Saunal)およびバン・レゲンモルテル(van Regenmortel)1995年)。
【0183】
すべての実験は、5μl/分の流速、HBS緩衝液中、15μl/mlでの異なる抗体の2分間注入により、行った。各組の抗体について、2工程で競合結合分析を実施した。第1の工程では、第一のモノクローナル抗体(mAb)をKIR2D標的タンパク質に対して注入し、続いて、第二mAb(第一mAbは取り出さない)を注入し、第二mAbのRU値(RU2)をモニターした。第2の工程では、第二mAbを最初に裸のKIR2Dタンパク質上に直接注入し、mAbのRU値(RU1)をモニターした。第一のmabによる第二mAbのKIR2Dタンパク質への阻害パーセントは、100*(1−RU2/RU1)によって産出した。
【0184】
表2、3、および4に結果を示し、ここで、「第一抗体」と命名された抗体を垂直カラムに列挙し、「第二抗体」を水平カラムに列挙する。試験したそれぞれの抗体の組み合わせについて、抗体のチップに対する直接結合レベルの値(RU)を表に列挙し、ここで、第二抗体のKIR2Dチップへの直接結合を区画の頂部に列挙し、第一抗体が存在する場合の第二抗体のKIR2Dチップへの直接結合に対する値を区画の底部に列挙する。各区画の右側には、第二抗体結合の阻害百分率を列挙する。表2は、KIR2DL1チップに対する結合を示し、表3は抗体のKIR2DL3チップへの結合を示し、表4は、抗体のKIR2DS1チップへの結合を示す。マウス抗体DF200、NKVSF1およびEB6、ならびにヒト抗体1−4F1、1−7F9および1−6F1の固定化されたKIR2DL1、KIR2DL2/3およびKIR2DS1への競合結合を評価した。抗KIR抗体のKIR2DL1に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図7)は、(a)抗体1−7F9はEB6および1−4F1と競合的であるが、NKVSF1およびDF200とは競合的ではなく;(b)次いで、抗体1−4F1はEB6、DF200、NKVSF1および1−7F9と競合的であり;(c)NKVSF1はDF200、1−4F1およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1、1−4F1およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないことを示した。抗KIR抗体のKIR2DL3に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図8)は、(a)1−4F1はNKVSF1、DF200、gl183および1−7F9と競合的であり;(b)1−7F9はDF200、gl183および1−4F1とは競合的であるが、NKVSF1とは競合的ではなく;(c)NKVSF1はDF200、1−4F1およびGL183と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1、1−4F1および1−7F9と競合するが、GL183とは競合しないことを示した。抗KIR抗体のKIR2DS1に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図9)は、(a)1−4F1はNKVSF1、DF200および1−7F9と競合的であり;(b)1−7F9は1−4F1とは競合的であるが、DF200およびNKVSF1とは競合的ではなく;(c)NKVSF1はDF200および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないことを示した。
【0185】
実施例7
カニクイザルNK細胞による抗KIRmAb滴定
抗KIR抗体NKVSF1を、カニクイザル由来のNK細胞に結合する能力について試験した。抗体のサルNK細胞への結合を図10に示す。
【0186】
サル PBMCの精製およびポリクローンNK細胞バルクの作製
カニクイザル(Cynomolgus Macaque)PBMCを、クエン酸ナトリウムCPTチューブ(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)から調製した。NK細胞の精製を、ネガティブな枯渇によって実施した(MacaqueNK細胞富化キット、ステム・セル・テクノロジー(Stem Cell Technology))。NK細胞を、照射したヒトフィーダー細胞、300U/mlインターロイキン2(Proleukin、カイロン・コーポレーション(Chiron Corporation))および1ng/ml PhytohemagglutininA(インビトロジェン(Invitrogen)、ギブコ(Gibco))上で培養し、ポリクローンNK細胞集団を得た。
【0187】
カニクイザルNK細胞によるPan2DmAb滴定
カニクイザルNK細胞(NKバルク16日目)を、異なる数量のPan2DmAb、続いて、PE共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体F(ab’)2フラグメントと共にインキュベートした。陽性細胞の百分率は、アイソタイプコントロール(精製マウスIgG1)により決定した。サンプルを2回繰り返した。蛍光強度の平均値=MFI。
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
実施例8
KIR2DL1に対するDF200−およびpan2D−結合性のエピトープマッピング
公開された結晶構造(マエナカ(Maenaka)ら(1999年)、ファン(Fan)ら(2001年)、ボイングトン(Boyington)ら(2000年))に基づくKIR2DL1、−2および−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1およびKIR2DL1−3交差反応性マウスモノクローナル抗体(mAb)DF200とpan2Dとの間の相互作用におけるアミノ酸R1311の関与を予測した。これを確認するために、KIR2DL1の完全細胞外ドメイン(アミノ酸H1〜H224)、ヒトFc(hFc)に融合した野生型または点変異型(例えば、R131W2)のいずれかよりなる融合タンパク質を調製した。多様なKIR2DL1−hFc融合タンパク質を産生させ、評価するために使用される材料および方法については記載されている(ウィンター(Winter)およびロング(Long)(2000年))。簡単に説明すると、KIR2DL1(R131W)−hFcをコードするcDNAベクターを、CL42−Ig、野生型KIR2DL1−hFcの産生のための公開されたcDNAベクター(ワグマン(Wagtman)ら(1995年))のPCRに基づく変異誘発(QuickchangeII、プロメガ(Promega))によって、作製した。KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcをCOS7細胞において産生させ、本質的に記載(ワグマン(Wagtman)ら(1995年))のように組織培養培地から単離した。それらの正確なフォールディングを試験するために、KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcを、HLA−Cw3(KIR2DL1リガンドなし)またはHLA−Cw4(KIR2DL1リガンド)のいずれか一方を発現するLCL721.221細胞と共にインキュベートし、KIR−Fc融合タンパク質と細胞との間の相互作用を、細胞表面でのタンパク質相互作用の研究に標準的な方法を使用し、FACSにより分析した。独立した実験の例を図11、パネルAに示す。文献から予想されるように、KIR2DL1−hFc融合タンパク質のうちHLA−Cw3発現LCL721.221細胞に結合したものは認められなかった。対照的に、KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcの両方とも、HLA−Cw4発現LCL721.221細胞に結合し、それによって、それらの正確なフォールディングが確認された。
11文字アミノ酸コード
2KIR2DL1における(N末端からの)アミノ酸131位におけるWに対するRの置換
【0192】
KIR2DL1(R131W)−hFcおよびKIR2DL1−hFcのKIR特異的mAb(DF200、pan2D、EB6およびGL183)への結合について、ELISA、タンパク質相互作用を研究するための標準的な技術を使用して、研究した。簡単に説明すると、KIR2DL1(R131W)−hFcおよびKIR2DL1−hFcを、ヤギ抗ヒト抗体を介して、96ウェルに連結し、その後、KIR特異的mAbを多様な濃度(PBS中0〜1μg/ml)で添加した。KIR2DL1−hFc変異体とmAbとの間の相互作用を、TMB基質を変換するためのマウス抗体に特異的なペルオキシダーゼ結合第二抗体を使用して、分光側光法(450nm)によって可視化した。独立した実験の例を図11、パネルBに示す。KIR2DL2−3特異的mAbGL183がKIR2DL1−hFc融合タンパク質のいずれにも結合できなかった一方、KIR2DL1特異的mAbEB6、DF200およびpan2Dは、用量依存的様式でKIR2DL1−hFc変異体に結合した。単一の点変異(R131W)は、DF200およびpan2Dの結合に影響を及ぼし、mAbの最大濃度(1μg/ml)で、野生型と比較して約10%の結合の減少を伴ったことから、R131は、KIR2DL1の細胞外ドメイン2におけるDF200およびpan2Dの結合部位の部分であることが確認された。
【0193】
参考文献
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【0194】
本明細書において引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、あたかも各文献が個々におよび具体的に参考として援用されることが意図され、その全体が本明細書に記載されているかのごとく、本明細書において参考として援用される。
【0195】
すべての表題および副題は、簡便のためのみに本明細書において使用され、いかなる方法においても本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0196】
すべての可能なバリエーションにおける上記の要素のいかなる組み合わせも、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、本発明に包含される。
【0197】
本発明の説明に関して使用される用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象は、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈されるべきである。
【0198】
本明細書に記載の値の範囲の詳細な記載は、本明細書において他に示さない限り、範囲に当てはまる各個別の値について個々に言及する簡潔な表現方法としての役割を果たすことを単に目的としており、各個々の値は、あたかもそれが本明細書において個々に引用されているがごとく、本明細書に援用される。他に説明しない限り、本明細書において提供されるすべての正確な値は、対応するおおよその値の代表値である(例えば、特定の因子または測定について提供されるすべての正確な値もまた、対応するおおよその測定値を提供し、近似を示唆する「約」によって修飾される)。
【0199】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、任意の適切な順序で実施することができる。
【0200】
本明細書において提供される任意およびすべての例、または例示的語句(例えば、「のような(such as)」)は、単に本発明をより良好に例示することを目的としており、他に示さない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書における語句は、明白に説明しない限り、あらゆる要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきである。
【0201】
本明細書における特許明細書の引用および援用は、簡便のために行われており、そのような特許明細書の妥当性、特許可能性および/または施行可能性のあらゆる見解に反映しない。
【0202】
要素もしくは複数の要素に関する「含んでなる」、「有する」、「含む」または「含有する」などの用語を使用する本発明のあらゆる態様あるいは実施形態の本明細書における説明は、他に説明するかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、該特定の要素もしくは複数の要素「よりなる」、「より本質的になる」、または「実質的に含んでなる」本発明の類似の態様または実施形態への支持を提供することを目的とする(例えば、本明細書において特定の要素を含んでなるものとして説明される組成物は、他に説明するかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、該要素よりなる組成物をもまた説明しているものと理解すべきである)。
【0203】
本発明は、適用可能な法律によって許可された最大限の範囲で本明細書に記載の態様または特許請求の範囲に引用される主題事項のすべての修飾物および等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】多様なヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合しているモノクローナル抗体DF200を示す。
【図2】Cw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するモノクローナル抗体DF200を示す。
【図3】モノクローナル抗体DF200、DF200のFabフラグメントならびにCw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害およびCw3陽性標的細胞に対するKIR2DL2/3陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図4】DF200およびEB6抗体のF(ab’)2フラグメントの存在下におけるHLACw4陽性標的細胞のNKクローンによる細胞溶解物の再構築を示す。
【図5】モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1、ならびにCw4陽性標的細胞(Cw4トランスフェクト細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図6】モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1、ならびにCw4陽性標的細胞(EBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図7】KIR2DL1に対する抗KIR抗体による表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DL1に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DL1に対し、1−7F9はEB6および1−4F1に競合的であるが、NKVSF1およびDF200とは競合的ではないことを示す。次いで、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1、および1−7F9に競合的である。抗体NKVSF1は、KIR2DL1に対し、DF200、1−4F1、およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL1に対し、NKVSF1、1−4F1、およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図8】KIR2DL3に対する抗KIR抗体によるBIAcore(登録商標)分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DL3に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DL3に対し、1−4F1がNKVSF1、DF200、gl183、および1−7F9に競合的であることを示す。1−7F9は、KIR2DL3に対し、DF200、gl183、および1−4F1には競合的であるが、NKVSF1には競合的ではない。NKVSF1は、KIR2DL3に対し、DF200、1−4F1、およびGL183と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL3に対し、NKVSF1、1−4F1、および1−7F9と競合するが、GL183とは競合しない。
【図9】KIR2DS1に対する抗KIR抗体によるBIAcore(登録商標)分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DS1に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DS1に対し、抗体1−4F1がNKVSF1、DF200、および1−7F9に競合的であることを示す。抗体1−7F9は、KIR2DS1に対し、1−4F1には競合的であるが、DF200およびNKVSF1には競合的ではない。NKVSF1は、KIR2DS1に対し、DF200および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DS1に対し、NKVSF1および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図10】mAbのカニクイザルNK細胞への結合を実証するNKVSF1(pan2D)mAb滴定を示す。カニクイザルNK細胞(NKバルク16日目)を、異なる数量のPan2DmAb、続いて、PE共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体F(ab’)2フラグメントと共にインキュベートした。陽性細胞の百分率は、アイソタイプコントロール(精製マウスIgG1)により決定した。サンプルを2回繰り返した。蛍光強度の平均値=MFI。
【図12】抗体DF200およびPan2DmAbの軽鎖可変領域および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列の比較アラインメントを提供する。
【図13】抗体DF200の重鎖可変領域を提供する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、NK細胞の細胞表面上に存在する2つもしくはそれ以上の阻害受容体と交差反応し、哺乳動物被験体または生物学的サンプルにおけるNK細胞の細胞障害性を増強する抗体、抗体フラグメント、およびそれらの誘導体に関する。本発明はまた、そのような抗体、フラグメント、変異体、および誘導体;それらを含んでなる薬学的組成物の製造方法;ならびに特に治療において、被験体におけるNK細胞活性または細胞障害性を増加させるためのそのような分子および組成物の使用に関する。
【0002】
(背景技術)
ナチュラルキラー(NK)細胞は、従来にない免疫に関与するリンパ球のサブ集団である。NK細胞は、例えば、血液サンプル、細胞分離(cytapheresis)、コレクションなどから当該分野において公知の多様な技術によって入手することができる。
【0003】
NK細胞の特徴および生物学的特性として、CD16、CD56、および/またはCD57を含む表面抗原の発現;細胞表面上におけるα/βまたはγ/δTCR複合体の不在;特定の細胞溶解性酵素の活性化により、「自己の」MHC/HLA抗原を発現することができない細胞に結合し、死滅させる能力;腫瘍細胞またはNK活性化受容体−リガンドを発現する他の罹患した細胞を死滅させる能力;免疫応答を刺激または阻害するサイトカインを放出する能力;および複数回の細胞分裂を経て、親細胞と類似の生物学的特性を有する娘細胞を産生する能力が挙げられる。本発明では、「活性な」NK細胞は、生物学的に活性なNK細胞、より詳細には、標的細胞を溶解する能力を有するNK細胞を表す。例えば、「活性な」NK細胞は、NK活性化受容体−リガンドを発現し、「自己の」MHC/HLA抗原(KIR不適合細胞)を発現することができない細胞を死滅させることが可能である。
【0004】
それらの生物学的特性に基づき、NK細胞の調節に依存する技術において、多様な治療およびワクチンストラテジーが提唱されている。しかし、NK細胞活性は、刺激および阻害シグナルの両方に関与する複雑な機構によって調節される。従って、有効なNK細胞仲介治療は、これらの細胞の刺激および阻害シグナルの中和の両方を必要とし得る。
【0005】
NK細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI特異的阻害型受容体によって負に調節される(カリー(Kaerre)ら、1986年;エーレン(Oehlen)ら、1989年)。これらの特異的受容体は、他の細胞上に存在するMHCクラスI分子またはHLAの多形性決定基に結合し、NK細胞溶解を阻害する。ヒトでは、キラーIg様受容体(KIR)と呼ばれる所定の数の受容体のファミリーがHLAクラスI対立遺伝子のグループを認識する。
【0006】
KIRは、NK細胞を含む所定のサブセットのリンパ球上に存在する受容体の大きなファミリーである。KIRの命名法は、細胞外ドメインの数(KIR2DもしくはKIR3D)および細胞質尾部が長いか(KIR2DLもしくはKIR3DL)または短いか(KIR2DSもしくはKIR3DS)に基づく。ヒトでは、所定のKIRの有無は、単一の個体に存在するNK集団内でもNK細胞によってばらつきがある。また、ヒト集団では、KIR分子の相対的に高いレベルの多形性が認められ、所定のKIR分子がいくつかには存在するが、すべての個体に認められるわけではない。所定のKIR遺伝子産物は、適切なリガンドに結合する場合、リンパ球活性の刺激を引き起こす。確認されているすべての刺激性KIRが、免疫刺激モチーフ(ITAM)を有するアダプター分子と会合する荷電した膜貫通残基を伴う短い細胞質尾部を有する。他のKIR遺伝子産物は、天然では阻害的である。確認されているすべての阻害型KIRは長い細胞質尾部を有し、KIRサブタイプに依存して、HLA抗原の異なるサブセットと相互作用するようである。阻害型KIRは、それらの細胞質内部分において、ホスファターゼを補充する1つもしくはいくらかの阻害型モチーフを示す。既知の阻害型KIR受容体は、KIR2DLおよびKIR3DLサブファミリーのメンバーを含む。2つのIgドメイン(KIR2D)を有するKIR受容体がHLA−Cアロタイプ:KIR2DL2(以前はp58.2と命名された)を同定するか、または緊密に関連する遺伝子産物KIR2DL3がグループ2のHLA−Cアロタイプ(Cw1、3、7、および8)と共有するエピトープを認識する一方、KIR2DL1(p58.1)が対抗グループ1のHLA−Cアロタイプ(Cw2、4、5、および6)と共有するエピトープを認識する。KIR2DL1による認識は、HLA−C対立遺伝子の80位のLys残基の存在によって決まる。KIR2DL2およびKIR2DL3の認識は、80位のAsn残基の存在によって決まる。重要なことに、最も大部分のHLA−C対立遺伝子は、80位にAsnまたはLysのいずれか一方の残基を有する。3つのIgドメインを伴う1つのKIR、KIR3DL1(p70)は、HLA−Bw4対立遺伝子と共有するエピトープを認識する。最後に、3つのIgドメインを伴うホモダイマーの分子KIR3DL2(p140)は、HLA−A3および−A11を認識する。
【0007】
阻害型KIRおよび他のクラスI阻害型受容体(モレッタ(Moretta)ら、1997;バリアンテ(Valiante)ら、1997a;ラニーア(Lanier)、1998)は、NK細胞によって同時発現され得るが、いかなる個体のNKレパートリーにも、単一のKIRを発現する細胞が存在し、従って、対応するNK細胞は、特定のクラスI対立遺伝子のグループを発現する細胞のみによって、阻止される。
【0008】
KIRが一致しないNK細胞集団またはクローン、即ち、宿主のHLA分子に適合しないKIRを発現するNK細胞の集団は、同種移植において認められる移植片抗白血病効果(graft anti−leukemia effect)の最も可能性の高いメディエーターであることが示されている(ルグゲリ(Ruggeri)ら、2002)。所定の個体においてこの効果を再現する1つの方法は、KIR/HLA相互作用を阻止する試薬を使用することである。
【0009】
KIR2DL1に特異的なモノクローナル抗体は、KIR2DL1のCw4(などの)対立遺伝子の相互作用を阻止することが示されている(モレッタ(Moretta)ら、1993)。KIR2DL2/3に対するモノクローナル抗体はまた、KIR2DL2/3のHLACw3(などの)対立遺伝子との相互作用を阻止することが記載されている(モレッタ(Moretta)ら、1993)。しかし、臨床現場でそのような試薬を使用するには、いかなる患者がクラス1またはクラス2HLA−C対立遺伝子を発現していたかどうかにかかわらず、すべての患者を処置するための2種の治療用mAbを開発することが必要である。さらに、どの治療用抗体を使用するかを決定する前に、それぞれの患者がどのHLAタイプを発現していたかを予め決定しなければならず、それ故、極めて高い処置費用が生じる。
【0010】
ヴァッツル(Watzl)ら、Tissue Antigens,56、240頁(2000年)は、KIRの複数のアイソタイプを認識する交差反応抗体を生成したが、それらの抗体はNK細胞活性の増強を示さなかった。G.M.スパギアラ(G.M.Spaggiara)ら、Blood,100、4098−4107頁(2002年)は、多様なKIRに対する多数のモノクローナル抗体を利用した実験を行った。それらの抗体のうちの1つNKVSF1がCD158a KIR2DL1)、CD158b(KIR2DL2)およびp50.3(KIR2DS4)の共通のエピトープを認識することが述べられた。NKVSF1がNK細胞活性を増強することができることは示唆されず、それが治療薬として使用し得ることを示唆するものは認められない。従って、NK細胞活性の調節における実践的および効果的アプローチは、これまで当該分野において利用されておらず、特定の試薬を使用するHLA対立遺伝子特異的介入がなお必要である。
【0011】
(発明の開示)
今回、本発明は、NK細胞活性化における現在の困難を克服する新規の抗体、組成物、および方法を提供し、さらなる有利な特徴および利益を提供する。1つの例示的態様では、本発明は、事実上すべてのヒトにおけるヒトNK細胞の活性化を容易にする単一の抗体を提供する。より具体的には、本発明は、多様な阻害型KIRグループと交差反応する新規の特異的抗体を提供して、それらの阻害シグナルを中和し、その結果、そのような阻害型KIR受容体を発現するNK細胞においてNK細胞の細胞障害性の増強を生じる。このような複数のKIR遺伝子産物と交差反応する能力は、被験体のHLAタイプを予め決定する負担または費用を伴うことなく、ほとんどのヒト被験体においてNK細胞活性を増加させるために本発明の抗体を効率的に使用することが可能である。
【0012】
第1の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、およびそのいずれかの誘導体を提供し、ここで、前記抗体、フラグメント、または誘導体は、NK細胞の表面上の少なくとも2つの阻害型KIR受容体と交差反応し、NK細胞の阻害シグナルを中和し、NK細胞の活性を増強する。より好ましくは、抗体はヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合する。さらにより具体的には、本発明の抗体は、少なくともKIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3受容体に結合する。本発明の目的のために、用語「KIR2DL2/3」は、KIR2DL2およびKIR2DL3受容体のいずれか一方または両方を指す。これらの2つの受容体は、極めて高い相同性を有し、おそらく同じ遺伝子の対立遺伝子形態であり、当該分野において交換可能であるとみなされている。従って、KIR2DL2/3は、本発明の目的のための単一の阻害型KIR分子、従って、KIR2DL2およびKIR2DL3とのみ交差反応する抗体であると考えられ、他の阻害型KIR受容体こそが本発明の範囲内にある。
【0013】
本発明の抗体は、少なくとも2つの阻害型KIR受容体へのMHCまたはHLA分子の結合を特異的に阻害し、NK細胞活性を容易にする。両方の活性は、本明細書において使用される用語「KIRの阻害活性を中和する」によって推察される。本発明において、本発明の抗体が「NK細胞活性を容易にする」、「NK細胞の細胞障害性を容易にする」、「NK細胞を容易にする」、「NK細胞活性を増強する」、「NK細胞の細胞障害性を増強する」または「NK細胞を増強する」能力とは、抗体が、表面上で阻害型KIR受容体を発現するNK細胞が、それらの表面上で、該特定の阻害型KIR受容体に対する対応するリガンド(例えば、特定のHLA抗原)を発現する細胞を溶解することができるようにすることを意味する。特定の態様では、本発明は、HLA−C分子のKIR2DL1およびKIR2DL2/3受容体への結合を特異的に阻害する抗体を提供する。別の特定の態様では、本発明は、インビボでNK細胞活性を容易にする抗体を提供する。
【0014】
KIR2DL1またはKID2DL2/3のうちの少なくとも1つは少なくとも約90%のヒト集団に存在するため、本発明のより好適な抗体は、HLA−Cアロタイプ会合細胞(それぞれグループ1HLA−Cアロタイプおよびグループ2HLA−Cアロタイプ)のほとんどに対するNK細胞活性を容易にすることが可能である。従って、本発明の組成物を使用して、ほとんどのヒト個体、典型的に約90%もしくはそれ以上のヒト個体において、NK細胞を効率的に活性化するかまたは増強することができる。従って、本発明の単一の抗体組成物を使用して、ほとんどのヒト被験体を処置することができ、対立遺伝子群を決定するまたは抗体カクテルを使用する必要がほとんどない。
【0015】
本発明は、はじめに、阻害型KIRに対する交差反応性および中和抗体を作製することができること、およびそのような抗体は、広範囲のヒトグループにおけるNK細胞の有効な活性化を可能にすることを実証する。
【0016】
従って、本発明の特定の目的は抗体にあって、ここで、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に特異的に結合し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転する。1つの実施形態では、抗体はハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200と競合する。場合により、抗体DF200と競合する前記抗体はDF200自体ではない。
【0017】
別の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体NKVSF1と競合し、場合により、ここで、抗体NKVSF1と競合する抗体は抗体NKVSF1ではない。
【0018】
別の実施形態では、抗体は抗体1−7F9と競合する。
【0019】
好ましくは、前記抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。
【0020】
特定のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)を指す場合の用語「と競合する」は、組換えKIR分子または表面発現KIR分子のいずれかを使用する結合アッセイにおいて、抗体がモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183)と競合することを意味する。例えば、抗体が、結合アッセイにおけるDF200のKIR分子への結合を減少する場合、抗体はDF200と「競合」する。DF200と「競合」する抗体は、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体、またはKIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に対する結合について、DF200と競合し得る。
【0021】
好適な実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に結合する抗体を提供し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転し、KIR2DL1ヒト受容体、KIR2DL2/3ヒト受容体、もしくはKIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に対する結合について、DF200、1−7F9、またはNKVSF1と競合する。場合により、前記抗体はNKVSF1ではない。場合により、前記抗体はキメラ、ヒト、またはヒト化抗体である。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に結合する抗体を提供するか、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転するか、KIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6と競合するか、KIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183と競合するか、またはKIR2DL1ヒト受容体への結合についてEB6およびKIR2DL2/3ヒト受容体への結合についてGL183の両方と競合する。場合により、前記抗体はNKVSF1ではなく;場合により前記抗体はDF200ではない。場合により、前記抗体はキメラ、ヒト、またはヒト化抗体である。
【0023】
有利な態様では、本発明は、DF200と競合し、KIR分子上のモノクローナル抗体DF200と実質的にまたは本質的に同じか、あるいは同じエピトープもしくは「エピトープ部位」に対する免疫特異性を認識、結合、あるいは有する抗体を提供する。好ましくは、前記KIR分子はKIR2DL1ヒト受容体またはKIR2DL2/3ヒト受容体である。
【0024】
本発明の特定の目的は抗体にあって、ここで、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒト受容体の両方に存在する共通の決定基に結合し、これらのKIRによって仲介されるNK細胞の細胞障害性の阻害を反転する。抗体は、ハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200またはハイブリドーマNKVSF1より産生される抗体NKVSF1と実質的に同じKIR上のエピトープにより特異的に結合し、ここで、抗体はNKVSF1ではない。
【0025】
好適な実施形態では、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の最も好適な抗体はハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200である。
【0026】
抗体DF200を産生するハイブリドーマは、識別番号「DF200」、登録番号CNCMI−3224としてCNCMカルチャー・コレクションに寄託され、2004年6月10日に登録されている(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes,Institut Pasteur、25,Rue du Docteur Roux,F−75724 Paris Cedex15、仏国)。抗体NKVSF1はセロテック(Serotec)(Cergy Sainte−Christophe、仏国)、カタログ番号MCA2243より市販されている。NKVSF1は、本明細書ではpan2DmAbとも称される。
【0027】
本発明はまた、実質的に類似の抗原特異性および活性を有する本明細書に記載の抗体の機能的フラグメントおよび誘導体(例えば、親抗体と交差反応することができ、阻害型KIR受容体を発現するNK細胞の細胞障害性活性を増強する)を提供し、Fabフラグメント、Fab’2フラグメント、イムノアドヘシン、二重特異性抗体、CDR、およびScFvを含むが、これらに限定されない。さらに、本発明の抗体はヒト化、ヒト、またはキメラであってもよい。
【0028】
本発明はまた、毒素、放射性核種、検出可能な部分(例えば、フルーア(fluor))、もしくは固相支持体に共役または共有結合された本発明の抗体を含んでなる抗体誘導体を提供する。
【0029】
本発明はまた、上記で開示された抗体、そのフラグメント、またはそのいずれかの誘導体を含んでなる薬学的組成物を提供する。従って、本発明はまた、医薬品の製造のための方法における本明細書において開示される抗体の使用に関する。好適な実施形態では、前記医薬品あるいは薬学的組成物は、癌もしくは他の増殖性障害、感染の処置、または移植における使用のためのものである。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を含んでなる組成物であって、ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、ここで、前記抗体はリポソームに組み入れられる、組成物を提供する。場合により、前記組成物は、遺伝子治療用遺伝子の送達のための核酸分子;NK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸分子;またはNK細胞の標的化された死滅のための毒素もしくは薬物から選択される、前記リポソームにさらに組み入れられたさらなる物質を含んでなる。
【0031】
本発明はまた、ヒトNK細胞と有効量の本発明の抗体、そのような抗体のフラグメント、そのいずれかの誘導体、もしくはそのいずれかの少なくとも1つを含んでなる薬学的組成物と接触させることを含んでなる、ヒトNK細胞活性をインビトロ、エクスビボ、またはインビボで調節する方法を提供する。好適な方法は、有効量の本発明の薬学的組成物の投与を含んでなり、癌、感染性疾患、もしくは免疫疾患を有する被験体においてヒトNK細胞の細胞障害性活性を、最も好ましくは、エクスビボまたはインビボで増加するときに指令される。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、(a)阻害型KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含んでなる抗原で免疫されている哺乳動物宿主(典型的に、非ヒト哺乳動物宿主)由来のB細胞と、(b)不死化細胞(例えば、骨髄腫細胞)とを融合する形で含んでなるハイブリドーマを提供し、ここで、前記ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体に結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を少なくとも実質的に中和することが可能である。場合により、前記ハイブリドーマはモノクローナル抗体NKVSF1を産生しない。好ましくは、前記抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3受容体に結合する。好ましくは、前記抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。好ましくは、前記ハイブリドーマは80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する。好ましくは、前記ハイブリドーマは、KIR2DL1もしくはKIR2DL2/3のいずれか一方またはKIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方上のハイブリドーマDF200により産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する。そのようなハイブリドーマの例はDF200である。
【0033】
本発明はまた、複数のKIR2DL遺伝子産物と交差反応し、そのようなKIRの阻害活性を中和する抗体を産生させる方法を提供し、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
(a)非ヒト哺乳動物をKIR2DLポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
(b)前記免疫哺乳動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体は前記KIR2DLポリペプチドに結合する工程、
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交差反応する工程(b)の抗体を選択する工程、次いで
(d)NK細胞を増強する(c)の抗体を選択する工程。1つの実施形態では、前記非ヒト哺乳動物は、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物(例えば、XenomouseTM(アブゲニクス(Abgenix)−Fremont、カリフォルニア州、米国)などのヒト免疫グロブリン遺伝子座および生来の免疫グロブリン遺伝子欠損を含んでなる非ヒト哺乳動物またはHuMab−mouseTM(メダレックス(Medarex)−Princeton、ニュージャージー州、米国)などのヒトIgコード遺伝子の小座位(minilocus)を含んでなる非ヒト哺乳動物)である。場合により、方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞またはKIRポリペプチドに結合する抗体を選択することをさらに含んでなる。場合により、本発明は、抗体を評価する方法をさらに含んでなり、ここで、上記の方法に従って産生される抗体は、霊長類、好ましくは、カニクイザルに投与され、好ましくは、ここで、サルは、抗体の毒性の徴候の有無について観察される。
【0034】
本発明者らはまた、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法を提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)非ヒト哺乳動物を阻害KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体は前記KIRポリペプチドに結合する工程、
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程、ここで、工程(c)および(d)の順序は場合により逆にされ、工程の回数は、場合により1もしくはそれ以上の回数反復される。好ましくは、免疫のために使用される阻害KIRポリペプチドは、KIR2DLポリペプチドであり、工程(c)において選択される抗体は少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する。好ましくは、前記抗体は少なくとも2つの異なるKIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を認識する;最も好ましくは、前記KIRはKIR2DL1およびKIR2DL2/3である。場合により、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞またはKIRポリペプチドに結合する抗体を選択することをさらに含んでなる。場合により、本発明は、抗体を評価する方法をさらに含んでなり、ここで、上記の方法に従って産生される抗体は、霊長類、好ましくは、カニクイザルに投与され、好ましくは、ここで、サルは、抗体の毒性の徴候の有無について観察される。
【0035】
場合により、上記の方法において、工程c)またはd)において選択される抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、上記の方法の工程(b)において調製される抗体はモノクローナル抗体である。好ましくは、上記方法の工程(c)において選択される抗体は、80位でLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位でAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、上記の方法の工程(d)において選択される抗体は、NK細胞障害性の増強、例えば、任意の実質的な増強、またはNK細胞障害性の少なくとも5%、10%、20%、30%もしくはそれ以上の増強、例えば、標的NK細胞障害性の少なくとも約50%の増強(例えば、NK細胞の細胞障害性の(例えば、約65〜100%のような)少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の増強)を生じる。好ましくは、抗体は、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3上のモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。場合により、前記方法はまたもしくは代替的に、選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、(例えば、放射性核種、細胞障害性薬剤、レポーター分子などとのコンジュゲーションによって)選択されるモノクローナル抗体の誘導体を作製するか、またはそのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列から産生されるもしくは該配列を含んでなる抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。
【0036】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法をさらに提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
(a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントを選択する工程、次いで
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(a)の抗体を選択する工程。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。場合により、工程(b)において選択される前記抗体はNKVSF1ではない。好ましくは、工程(b)において選択される抗体は80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、工程(b)において選択される抗体は、NK細胞障害性の増強、例えば、任意の実質的な増強、またはNK細胞障害性の少なくとも5%、10%、20%、30%もしくはそれ以上の増強、例えば、標的NK細胞障害性の少なくとも約50%の増強(例えば、NK細胞の細胞障害性の(例えば、約65〜100%のような)少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、もしくは少なくとも約95%の増強)を生じる。好ましくは、抗体は、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3上のモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。場合により、方法は、選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、選択されるモノクローナル抗体の誘導体を作製するか、または選択されるモノクローナル抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。
【0037】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法を提供し、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)前記モノクローナル抗体の産生に許容される条件下で、本発明のハイブリドーマを培養する工程;次いで
b)前記ハイブリドーマから前記モノクローナル抗体を分離する工程。場合により、方法は、前記モノクローナル抗体のフラグメントを作製するか、モノクローナル抗体の誘導体を作製するか、またはそのようなモノクローナル抗体フラグメントの誘導体を作製するさらなる工程を含んでなる。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0038】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法もまた本発明によって提供され、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)本発明のハイブリドーマから前記モノクローナル抗体をコードする核酸を単離すること;
b)場合により、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体の免疫反応性フラグメント、またはそのような免疫反応性フラグメントを含んでなる融合タンパク質から選択される、モノクローナル抗体の機能的配列に対応するかもしくはそれに実質的に類似する(例えば、そのような配列に(約70〜99%のような)少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%同一である)アミノ酸配列を含んでなる修飾されたまたは誘導体化された抗体をコードする配列を含んでなる修飾された核酸が得られるように、前記核酸を修飾すること;
c)前記核酸もしくは修飾された核酸(または同じアミノ酸配列をコードする関連核酸)を発現ベクターに挿入することであって、ここで、前記発現ベクターが適切な条件下で増殖される宿主細胞内に存在する場合、前記コードされた抗体または抗体フラグメントは発現可能である;
d)宿主細胞を前記発現ベクターでトランスフェクトすることであって、ここで、さもなくば前記宿主細胞は免疫グロブリンタンパク質を産生しない;
e)前記抗体または抗体フラグメントの発現を生じる条件下で、前記トランスフェクト宿主細胞を培養すること;次いで
f)前記トランスフェクト宿主細胞より産生される抗体または抗体フラグメントを単離すること。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0039】
本発明はまた、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体(ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であって、前記抗体は、患者またはNK細胞を含んでなる生物学的サンプルにおいてNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度に増強するのに有効な量で存在する);および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含んでなる組成物を提供することが理解される。好ましくは、抗体はKIR2DL1およびKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。前記組成物は、場合により、たとえば、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤または補助化合物から選択される第2の治療剤をさらに含んでなり得る。有利な免疫調節剤は、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γから選択され得る。前記化学療法剤の例として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、他のビンカアルカロイド、およびそれらの誘導体またはプロドラックが挙げられる。ホルモン剤の例として、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミドアナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾールメドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤、および他のプロゲスターゲンが挙げられる。好ましくは、阻害KIR受容体に結合し、阻害する前記第二抗体は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する前記抗体により結合されるエピトープとは異なる阻害KIR受容体のエピトープに結合する抗体またはその誘導体もしくはフラグメントである。
【0040】
本発明は、NK細胞活性を、それを要する患者において検出可能な程度に増強する方法であって、前記患者に本発明の組成物を投与する工程を含んでなる、方法をさらに提供する。NK細胞活性増強を要する患者は疾患もしくは障害を有する任意の患者であり得、ここで、そのような増強は、治療効果を促進、増進、および/または誘導し得る(あるいは例えば、臨床治験によって決定され得るように、疾患もしくは障害および患者と実質的に類似の特徴を伴う患者の少なくとも実質的な割合において、そのような効果を促進、増進、および/または誘導し得る)。そのような処置を要する患者は、例えば、癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患い得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、阻害KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤もしくは補助化合物から選択される適切なさらなる治療剤を前記患者に投与するさらなる工程を含んでなり、ここで、前記のさらなる治療剤は、前記抗体と共に単回投与形態として、または個別の投与形態として、前記患者に投与される。抗体(または抗体フラグメント/誘導体)の投与およびさらなる治療剤の投与は、集合的に、NK細胞活性の増強を含んでなる患者において治療応答を検出可能な程度で誘導、促進、および/または増進するのに十分である。個別に投与される場合、抗体、フラグメント、または誘導体およびさらなる治療剤は、患者に対して検出可能な併用治療有益性が認められる(例えば、投与時期、回数などに関する)条件下で投与されることが所望される。
【0041】
非ヒト霊長類、好ましくは、サルNK細胞および/またはサルKIR受容体に特異的に結合することが可能である本発明の抗体も本発明にさらに包含される。また、候補医薬品である本発明の抗体の毒性、用量および/または活性あるいは効力を評価するための方法も包含される。1つの態様では、本発明は、NK細胞を有する非ヒト霊長類レシピエント動物に本発明の抗体を投与し、動物、または好ましくは標的組織に対する薬剤の任意の毒性、有毒もしくは有害作用を評価することによって、動物あるいは標的組織に対して毒性な抗体の用量を決定するための方法を包含する。別の態様では、本発明は、NK細胞を有する非ヒト霊長類レシピエント動物に本発明の抗体を投与し、動物、または好ましくは標的組織に対する薬剤の任意の毒性、有毒もしくは有害作用を評価することによって、動物あるいは標的組織に対して毒性な抗体を同定するための方法である。別の態様では、本発明は、感染、疾患もしくは癌の非ヒト霊長類モデルに本発明の抗体を投与し、感染、疾患もしくは癌、およびそれらの症状を改善する抗体を同定することによって、感染、疾患あるいは腫瘍の処置において効果的である抗体を同定するための方法である。好ましくは、本発明の前記抗体は、(a)ヒトNK細胞の表面で少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、(b)非ヒト霊長類のNK細胞またはKIR受容体と交差反応する抗体である。
【0042】
生物学的サンプルまたは生体生物におけるそれらの細胞表面上に阻害KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法が本発明にさらに包含され、前記方法は、以下の工程を含んでなる。
a)前記生物学的サンプルまたは生体生物と本発明の抗体とを接触させる工程であって、ここで、前記抗体が検出可能な部分に共役または共有結合される工程;および
b)前記生物学的サンプルまたは生体生物において前記抗体の存在を検出する工程。
【0043】
本発明はまた、サンプルから細胞表面上に阻害KIRを有するNK細胞を精製する方法を提供し、以下の工程を含んでなる。
a)前記サンプルと本発明の抗体とを、細胞表面上に阻害KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合することを可能にする条件下で、接触させる工程であって、ここで、前記抗体が固相支持体(例えば、ビーズ、マトリックスなど)に共役または共有結合される工程;次いで
b)固相支持体に共役または共有結合した前記抗体から前記結合NK細胞を溶出させる工程。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいは図12において例示されるような抗体DF200あるいは抗体Pan2Dの軽鎖可変領域または1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。なお別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいはDF200またはPan2Dの軽鎖可変領域配列あるいはこれらの抗体の1つまたは両方の1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRのすべてまたは本質的にすべてに高度に類似する配列を含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいは図13において例示されるような抗体DF200の重鎖可変領域または1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。なお別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、あるいはDF200の重鎖可変領域配列のすべてまたは本質的にすべてに高度に類似する配列を含んでなるそれらのいずれかの誘導体を提供する。
【0046】
本発明のこれらおよびさらなる有利な態様ならびに特徴については、本明細書の他の箇所においても説明され得る。
【0047】
(発明の詳細な記述)
抗体
本発明は、ヒト阻害型KIR受容体の共通の決定基、好ましくは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基に結合し、それらのKIR受容体うちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる新規の抗体およびフラグメントまたはそれらの誘導体を提供する。本発明は、はじめに、予想外の結果を提示し、特にヒト被験体における新規かつ効果的なNKに基づく治療に道を開くそのような交差反応かつ中和抗体を産生させることができることを開示する。好適な実施形態では、抗体はモノクローナル抗体NKVSF1ではない。
【0048】
本発明において、「共通の決定基」は、ヒト阻害型KIR受容体のいくらかの遺伝子産物によって共有される決定基またはエピトープを標示する。好ましくは、共通の決定基は、KIR2DL受容体グループの少なくとも2つのメンバーによって共有される。より好ましくは、決定基は、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3によって共有される。本発明の所定の抗体はまた、KIR2DLの複数の遺伝子産物を認識することに加えて、KIR3DL受容体グループの遺伝子産物のような他の阻害型KIR上に存在する決定基を認識することができる。決定基またはエピトープは、前記メンバーによって共有されるペプチドフラグメントもしくは構造依存性(conformational)エピトープを提示することができる。より特定の実施形態では、本発明の抗体は、モノクローナル抗体DF200によって認識される実質的に同じエピトープに特異的に結合する。この決定基は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方に存在する。
【0049】
本発明において、共通の決定基に「結合する」抗体という用語は、特異性および/または親和性を伴う前記決定基に結合する抗体を標示する。
【0050】
本明細書で使用される用語「抗体」は、他に述べるかまたは文脈において明らかに矛盾しない限り、ポリクロナールおよびモノクローナル抗体、ならびに前記ポリクロナールおよびモノクローナル抗体のフラグメントおよび誘導体を指す。重鎖の定常ドメインのタイプに依存して、完全長の抗体は、典型的に、5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのうちの1つに割り当てられる。これらのうちのいくらかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのようなサブクラスまたはイソタイプに分けられる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」および「μ」と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造が周知である。IgGおよび/またはIgMは生理学的状況において最も一般的な抗体であり、それらは実験施設において最も容易に作成されるため、それらは本発明において用いられる好適なクラスの抗体である。好ましくは、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本発明の目的の1つは、NK細胞を枯渇させずに、阻害型KIRとその対応するHLAリガンドとのインビボでの相互作用を阻止することであるため、IgG4のような低いエフェクター機能を仲介するFc受容体に対応するアイソタイプが典型的に好適である。
【0051】
本発明の抗体は、様々な当該分野において公知の技術によって産生させることができる。典型的に、それらは、非ヒト動物、好ましくはマウスの阻害型KIRポリペプチド、好ましくはKIR2DLポリペプチド、より好ましくはヒトKIR2DLポリペプチドを含んでなる免疫原による免疫によって産生される。阻害型KIRポリペプチドは、ヒト阻害型KIRポリペプチドの全長配列、またはそのフラグメントもしくは誘導体、典型的に、免疫原性フラグメント、即ち、阻害型KIR受容体を発現する細胞の表面上に暴露されたエピトープを含んでなるポリペプチドの部分を含んでなり得る。そのようなフラグメントは、典型的に、成熟ポリペプチド配列の少なくとも約7連続アミノ酸、さらにより好ましくは、その少なくとも約10連続アミノ酸を含有する。フラグメントは、典型的に、受容体の細胞外ドメインから本質的に誘導される。全長KIRDLポリペプチドのうち少なくとも1つ、より好ましくは両方の細胞外Igドメインを含み、KIR2DL受容体に存在する少なくとも1つの構造依存性(conformational)エピトープを模倣することが可能であるヒトKIR2DLポリペプチドがさらにより好適である。他の実施形態では、前記ポリペプチドは、KIR2DL1ポリペプチドのアミノ酸1〜224位(KIR遺伝子ファミリーについて記載しているPROWウェブサイト、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/prow/guide/1326018082.htmに従うアミノ酸番号付け)の細胞外Igドメインの少なくとも約8連続アミノ酸を含んでなる。
【0052】
最も好適な実施形態では、免疫原は、脂質膜、典型的に細胞表面の野生型ヒトKIR2DLポリペプチドを含んでなる。特定の実施形態では、免疫原は、無傷(intact)なNK細胞、特に、無傷なヒトNK細胞、場合により処置または溶解された細胞を含んでなる。
【0053】
マウスにおける抗体の産生を刺激するための分野において周知の任意の様式で、非ヒト哺乳動物を抗原で免疫する工程を行うことができる(例えば、E.ハーロー(E.Harlow)およびD.レーン(D.Lane)、Antibodies:A Laboratory Manual.,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Cold Spring Harbor、ニューヨーク州(1988年)を参照のこと)。次いで、免疫原は、場合により完全フロイントアジュバントなどのアジュバントと共に、緩衝液に懸濁または溶解される。免疫原の量、緩衝液のタイプおよびアジュバントの量を決定するための方法は当該分野において周知であり、本発明に対する任意の方法において限定されない。これらのパラメータは異なる免疫原に対し異なり得るが、容易に説明される。
【0054】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫の場所および回数もまた、当該分野において周知である。典型的な免疫プロトコルでは、1日目に非ヒト動物に抗原が腹腔内に注入され、1週間後に再度注入される。これに続いて、場合により、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントを伴って、約20日目に抗原が再注入される。再注入は静脈内で実施され、数日間連続で反復され得る。これに続いて、静脈内または腹腔内のいずれかで、典型的にアジュバントを伴わずに、40日目に追加注入が行われる。このプロトコルにより、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が生じる。他のプロトコルもまた、それらが、免疫に使用される抗原に対する抗体を発現するB細胞の産生を生じる限り、利用することができる。
【0055】
ポリクローナル抗体調製物では、免疫非ヒト動物から血清が得られ、それに存在する抗体が、周知の技術によって単離される。血清は、阻害型KIR受容体と反応する抗体が得られるように、固相支持体に連結された上記の任意の免疫原を使用して、アフィニティー精製することができる。
【0056】
代替的実施形態では、非免疫非ヒト哺乳動物由来のリンパ球が単離され、インビトロで増殖され、次いで、細胞培養において免疫原に暴露される。次いで、リンパ球を回収し、下記の融合工程を行う。
【0057】
モノクローナル抗体では、次の工程は、免疫非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離および抗体産生ハイブリドーマを形成させるための脾臓細胞と不死化細胞との以後の融合である。非ヒト哺乳動物からの脾臓細胞の単離は当該分野において周知であり、麻酔した非ヒト哺乳動物から脾臓を取り出し、それを小片に切断し、単一の細胞懸濁液が生成されるように、脾包(splenic capsule)から圧搾により、セルストレーナーのナイロンメッシュを介して、脾臓細胞を、適切な緩衝液に取り出す。細胞を洗浄し、遠心分離し、任意の赤血細胞を溶解する緩衝液に再懸濁する。溶液を再度遠心分離し、ペレット内に残留するリンパ球を最終的に新鮮緩衝液に再懸濁する。
【0058】
一旦、単離され、単一細胞懸濁液中に存在すると、リンパ球を不死細胞系統に融合させることができる。これは、典型的にはマウス骨髄腫細胞系統であるが、ハイブリドーマを作製するのに有用な他の多くの不死細胞系統が当該分野において公知である。好適なマウス骨髄腫系統として、サルク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター(Salk Institute Cell Distribution Center)、San Diego、カリフォルニア州、米国より市販されているMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、Rockville、メリーランド州、米国より市販されているX63 Ag8653およびSP−2細胞由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。融合は、ポリエチレングリコールなどを使用して行う。次いで、得られるハイブリドーマを、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つもしくはそれ以上の物質を含有する選択培地で増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的に、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(HAT培地)(該物質はHGPRT欠損細胞の増殖を妨害する)。
【0059】
ハイブリドーマは、典型的にマクロファージのフィーダー層上で増殖される。マクロファージは、脾臓細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物の同腹仔由来であることが好ましく、典型的に、ハイブリドーマプレート化の数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激(prime)する。融合方法は、ゴーディング(Goding)「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」、59〜103頁(アカデミック・プレス(Academic Press)、1986年)に記載されており、この開示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0060】
コロニー形成および抗体産生に十分な時間、選択培地で細胞を増殖させる。これは、通常、約7〜約14日間の間である。次いで、ハイブリドーマコロニーを複数の阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する抗体の産生について、アッセイする。アッセイは、典型的に発色ELISA型アッセイであるが、ハイブリドーマが増殖するウェルに適応することができるいずれのアッセイを用いてもよい。他のアッセイとしては、免疫沈降およびラジオイムノアッセイが挙げられる。所望の抗体産生に陽性のウェルを試験して、1つもしくはそれ以上の異なるコロニーが存在するかどうかを決定する。1を超えるコロニーが存在する場合、細胞を再クローニングして、増殖させ、ただ単一の細胞が所望の抗体を産生するコロニーを生じていることを確実にする。明らかに単一のコロニーを伴う陽性ウェルを、典型的に再クローニングし、再アッセイし、ただ1つの抗体が検出され、産生されていることを保証する。抗体はまた、例えば、ウォード(Ward)ら、Nature,341(1989年)544頁に開示されているような免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によって、産生させてもよい。
【0061】
本発明の抗体は、NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害;詳細には、KIR2DL受容体によって仲介される阻害およびより詳細には、少なくとも両KIR2DL1およびKIR2DL2/3阻害を中和することが可能である。従って、これらの抗体は、それらがMHCクラスI分子と相互作用する場合、それらが少なくとも部分的および検出可能な程度で、KIR受容体によって仲介される阻害シグナル伝達経路を阻止する意味で、「中和」または「阻害」抗体である。さらに重要なことに、この阻害活性は、これらの抗体が多様な被験体において高い効力で使用され得るように、いくらかのタイプの阻害型KIR受容体、好ましくは、いくらかのKIR2DL受容体遺伝子産物、およびより好ましくは、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方について示される。NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害の阻害は、結合または細胞アッセイのような多様なアッセイまたは試験によって、評価することができる。
【0062】
一旦、複数の阻害物質KIR受容体と交差反応する抗体が同定されると、無傷なNK細胞におけるこれらのKIR受容体の阻害効果を中和するその能力について、それを試験することができる。特定の変異体では、HLA−C陽性標的のKIR2DL陽性NKクローンにより、前記抗体が溶解を再構築する能力によって、中和活性を例示することができる。別の特定の実施形態では、抗体の中和活性は、HLA−C分子のKIR2DL1およびKIR2DL3(または緊密に関連するKIR2DL2)受容体への結合を阻害する抗体の能力によって規定され、抗体の能力が以下を改変する場合はさらに好ましい。
−Cw1、Cw3、Cw7、およびCw8から選択されるHLA−C分子(または80位にAsn残基を有するHLA−C分子)のKIR2DL2/3に対する結合;および
−Cw2、Cw4、Cw5およびCw6から選択されるHLA−C分子(または80位にLys残基を有するHLA−C分子)のKIR2DL1に対する結合。
【0063】
別の変異体では、本発明の抗体の阻害活性を、本明細書において提供される実施例に開示されるように、細胞に基づく細胞障害性アッセイで評価することができる。
【0064】
別の変異体では、本発明の抗体の阻害活性は、サイトカイン放出アッセイで評価することができ、ここで、NK細胞は、試験抗体およびNK集団のKIR分子によって認識される1つのHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞系統と共にインキュベートされ、NK細胞サイトカイン産生(例えば、IFN−γおよび/またはGM−CSF産生)が刺激される。例示的プロトコルでは、PBMCからのIFN−γ産生は、培養約4日後に、細胞表面および細胞質内染色ならびにフローサイトメトリーによる分析によって評価される。簡単に説明すると、培養の少なくとも約4時間、BrefeldinA(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))を、約5μg/mlの最終濃度で添加することができる。次いで、細胞を、透過化(IntraPrepTM;ベックマン・カルチャー(Beckman Coulter))およびPE−抗IFN−γまたはPE−IgG1(ファルミンゲン(Pharmingen))による染色の前に、抗CD3および抗CD56mAbと共にインキュベートすることができる。ELISA(GM−CSF:DuoSet Elisa、R&Dシステムズ(R&D Systems)、Minneapolis、ミネソタ州;IFN−γ:OptE1Aセット、ファルミンゲン(Pharmingen))を使用して、上清におけるポリクローナル活性型NK細胞からのGM−CSFおよびIFN−γ産生を測定することができる。
【0065】
本発明の抗体は、NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を部分的または完全に中和することができる。本明細書において使用する用語「NK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和する」とは、それらのKIRによって阻止されないNK細胞またはNK細胞系統により同じ比率で得られる特異的溶解が、細胞障害性の古典的クロム遊離試験によって測定されるように、所定のKIRを発現するNK細胞集団が(NK細胞上で発現されるKIRによって認識される)同系のMHCクラスI分子を発現する標的細胞と接触される場合、抗体を伴わずに得られる特定の溶解のレベルと比較して、少なくとも約20%まで、好ましくは、少なくとも約30%まで、少なくとも約40%、少なくとも約50%もしくはそれ以上(例えば、約25〜100%)増加する能力を意味する。例えば、本発明の好適な抗体は、一致したまたはHLA適合性もしくは自家移植標的細胞集団、即ち、前記抗体の非存在下ではNK細胞により効果的に溶解されない細胞集団の溶解を誘導することが可能である。従って、本発明の抗体はまた、インビボでNK細胞活性を容易にすると規定することができる。
【0066】
あるいは、用語「KIR仲介阻害を中和する」は、1つもしくはいくらかの阻害型KIRを発現するNK細胞クローンまたはトランスフェクタントおよびNK細胞上のKIRのうちの1つによって認識されるただ1つのHLA対立遺伝子を発現する標的細胞を使用するクロムアッセイにおいて、抗体により得られる細胞障害性のレベルがW6/32抗MHCクラスI抗体などの既知の抑制型抗MHCクラスI分子で得られる細胞障害性の少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%(例えば、約25〜100%)、もしくはそれ以上であるべきであることを意味する。
【0067】
特定の実施形態では、抗体は、(ハイブリドーマDF200より産生される)モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する。そのような抗体は、本明細書において「DF200様抗体」と称せられる。さらに好適な実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本発明の好適な「DF200様抗体」は、モノクローナル抗体NKVSF1以外の抗体である。(ハイブリドーマDF200より産生される)モノクローナル抗体DF200が最も好適である。
【0068】
目的の抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体がDF200と「競合する」ことを意味する。一般に、目的のモノクローナル抗体(例えば、DF200、NKVSF1、17F9)と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」抗体は、抗体が、さらなるKIR分子のいずれか1つ、好ましくは、KIR2DL1およびKIR2DL2/3よりなる群から選択されるKIR分子のために、前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。他の例では、KIR2DL1分子上にある目的の抗体と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL1に結合するため、目的の抗体と「競合する」。KIR2DL2/3分子上にある目的の抗体と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL2/3に結合するため、目的の抗体と「競合する」。
【0069】
目的の抗体と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が、前記目的の抗体が特異的に結合する任意およびすべてのKIR分子のために、前記目的の抗体と「競合する」ことを意味する。モノクローナル抗体DF200と「実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する」という用語は、抗体が、DF200が特異的に結合する任意およびすべてのKIR分子のために、DF200と「競合する」ことを意味する。例えば、モノクローナル抗体DF200またはNKVSF1と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KIR2DS1およびKIR2DS2への結合のために、それぞれ前記DF200またはNKVSF1と「競合する」。
【0070】
本明細書に記載のモノクローナル抗体と実質的または本質的に同じエピトープに結合する1つもしくはそれ以上の抗体の同定は、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイの1つを使用して、容易に決定することができる。多くのそのようなアッセイが日常的に実践され、当該分野において周知である(例えば、米国特許第5,660,827号明細書、1997年8月26日出願を参照のこと、該文献は、本明細書において具体的に参考として援用される)。本明細書に記載の抗体がどのエピトープに決定するかを実際に決定するのに、いずれの方法においても、本明細書に記載のモノクローナル抗体と同じか実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定する必要はないことが理解されよう。
【0071】
例えば、調べようとする試験抗体が異なる供給源動物から得られるか、または異なるIgアイソタイプである場合、コントロール(例えば、DF200)および試験抗体とを混合(または予め吸着)され、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方(それぞれはDF200により結合されることが公知である)を含有するサンプルに適用される簡便な競合アッセイを用いることができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウエスタンブロッティング、および(例えば、実施例のセクションにおいて記載のような)BIACORE分析の使用に基づくプロトコルは、そのような簡便な競合研究における使用に適切である。
【0072】
特定の実施形態では、阻害型KIR抗原サンプルに適用する前のある期間にコントロール抗体(例えば、DF200)と様々な量の試験抗体(例えば、約1:10または約1:100)とを予め混合し得る。他の実施形態では、コントロールおよび様々な量の試験抗体を、KIR抗原サンプルへの暴露中に簡便に混合することができる。(例えば、非結合型抗体を除去するための分離または洗浄技術を使用することによって)結合型と遊離型の抗体および(例えば、種特異的もしくはアイソタイプ特異的第二抗体を使用することによって、または検出可能な標識でDF200を特異的に標識することによって)DF200と試験抗体とを識別することができる限り、試験抗体がDF200の2つの異なるKIR2DL抗原への結合を減少するかどうかを決定し、試験抗体がDF200と実質的に同じエピトープを認識することを示すことができる。完全に関連のない抗体の非存在下での(標識された)コントロール抗体の結合は、コントロールの高値としての役割を果たし得る。コントロール低値は、標識された(DF200)抗体を正確に同じタイプ(DF200)の非標識抗体と共にインキュベートすることによって得ることができ、ここで、競合が生じ、標識された抗体の結合を減少する。試験アッセイでは、試験抗体の存在下における標識された抗体反応性の有意な減少は、実質的に同じエピトープ(即ち、標識された(DF200)抗体と交差反応するもの)を認識する試験抗体を示唆する。DF200のそれぞれのKIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原への結合を、約1:10〜約1:100の間のDF200:試験抗体の任意の比で、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、またはより好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65〜100%)減少する任意の試験抗体は、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体とみなされる。好ましくは、そのような試験抗体は、DF200のそれぞれのKIR2DL抗原への結合を少なくとも約90%(例えば、約95%)減少する。
【0073】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって評価することができる。そのような試験では、所定のKIRを有する細胞を、まず、例えば、DF200、次いで、蛍光色素またはビオチンで標識された試験抗体と共にインキュベートすることができる。飽和量のDF200とのプレインキュベーション時に得られる結合が、DF200とのプレインキュベーションを伴わない抗体によって得られる結合(蛍光の平均として測定される)の約80%、好ましくは約50%、約40%もしくはそれ未満(例えば、約30%)である場合、抗体はDF200と競合すると言われている。あるいは、飽和量の試験抗体と共にプレインキュベートした細胞上の標識された(蛍光色素またはビオチンによる)DF200により得られる結合が、抗体とのプレインキュベーションを伴わずに得られる結合の約80%、好ましくは約50%、約40%、もしくはそれ未満(例えば、約30%)である場合、抗体はDF200と競合すると言われている。
【0074】
試験抗体を予め吸着させ、飽和濃度で濃度KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方が固定化された表面に適用する簡便な競合アッセイもまた、有利に用いることができる。簡便な競合アッセイにおける表面は、好ましくはBIACOREチップ(または表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)である。次いで、コントロール抗体(例えば、DF200)を、KIR2DL1およびKIR2DL2/3飽和濃度で表面と接触させ、コントロール抗体のKIR2DL1およびKIR2DL2/3表面結合を測定する。コントロール抗体のこの結合を、試験抗体非存在下のコントロール抗体のKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面への結合と比較する。試験アッセイでは、試験抗体存在下におけるコントロール抗体によるKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面の結合における有意な減少は、試験抗体がコントロール抗体と「交差反応する」ように、試験抗体がコントロール抗体と実質的に同じエピトープを認識することを示す。(DF200のような)コントロール抗体のそれぞれのKIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原への結合を少なくとも約30%またはより好ましくは約40%減少する任意の試験抗体は、コントロール(例えば、DF200)と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合する抗体とみなすことができる。好ましくは、そのような試験抗体は、コントロール抗体(例えば、DF200)のそれぞれのKIR2DL抗原への結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%もしくはそれ以上)減少する。コントロールおよび試験抗体の順序は逆にすることができることが理解されよう。即ち、コントロール抗体をはじめに、表面に結合させることができ、その後、試験抗体を、競合アッセイにおいて表面と接触させる。好ましくは、まず、KIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原により高い親和性を有する抗体をKIR2DL1およびKIR2DL2/3含有表面に結合させると、予想されるとおり、第二抗体について認められる結合の減少(抗体が交差反応しているものとみなす)は、より大きな大きさになる。そのようなアッセイのさらなる例は、実施例および例えば、サウナル(Saunal)およびリゲンモーテル(Regenmortel)、(1995年)J.Immunol.Methods183:33−41(その開示内容は本明細書において参考として援用される)において提供される。
【0075】
例示の目的のためにDF200について記載する一方、上記の免疫学的スクリーニングアッセイもまた、NKVSF1、1−7F9、EB6、GL183、および本発明の他の抗体と競合する抗体を同定するために使用することができることが理解されよう。
【0076】
免疫化および脊椎動物または細胞における抗体の産生時において、特許請求の範囲に記載の抗体を単離するために、特定の選択工程を実施することができる。これに関して、特定の実施形態では、本発明はまた、そのような抗体を産生させる方法に関し、以下を含んでなる。
(a)非ヒト哺乳動物を阻害KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
(b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体が前記KIRポリペプチドに結合する工程、
(c)少なくとも2つの異なる阻害型KIR遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
(d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程。
【0077】
少なくとも2つの異なる阻害型KIR遺伝子産物と交差反応する抗体の選択は、例えば、上記のような2つもしくはそれ以上の異なる阻害型KIR抗原に対する抗体をスクリーニングすることによって、達成することができる。
【0078】
より好適な実施形態では、工程(b)において調製される抗体はモノクローナル抗体である。従って、本明細書において使用される用語「前記免疫動物から抗体を調製すること」は、免疫動物からB細胞を入手すること、およびそれらのB細胞を使用して、抗体を発現するハイブリドーマを産生させること、ならびに免疫動物の血清から直接抗体を入手することを含む。別の好適な実施形態では、工程(c)において選択される抗体は、少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する抗体である。
【0079】
さらなる別の好適な実施形態では、工程(d)において選択される抗体は、標準的なクロム遊離アッセイにおいて測定されるように、同系のHLAクラスI分子を発現する標的細胞に対し、それらのKIRによって阻止されないNK細胞による同じエフェクター/標的比で得られる溶解または細胞障害性と比較して、抗体によって認識される少なくとも1つのKIRを示すNK細胞によって仲介される少なくとも約10%特異的溶解、およびより好ましくは少なくとも約40%特異的溶解、少なくとも約50%特異的溶解、またはより好ましくは、少なくとも約70%特異的溶解(例えば、約60〜100%特異的溶解)を生じる。あるいは、工程(d)において選択される抗体が1つもしくはいくらかの阻害型KIRを発現するNK細胞クローンおよびNKクローン上のKIRのうちの1つによって認識されるただ1つのHLA対立遺伝子を発現する標的細胞を用いるクロムアッセイにおいて使用される場合、抗体により得られる細胞障害性のレベルがW6/32抗MHCクラスI抗体などの抑制型抗MHCクラスImAbで得られる細胞障害性の少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、もしくはそれ以上であるべきである。
【0080】
すぐ上に記載した方法の工程(c)および(d)の順序は、変更することができる。場合により、方法はまたもしくは代替的に、モノクローナル抗体のフラグメントまたはモノクローナル抗体の誘導体あるいは例えば、本明細書において他に記載したようなフラグメントを作製するさらなる工程をさらに含んでなることができる。
【0081】
好適な実施形態では、本発明の適用可能な方法に従う抗体を産生するために使用される非ヒト動物は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物である。また、非ヒト哺乳動物を、遺伝子的に改変または操作して、XenomouseTM(アブゲニクス(Abgenix))またはHuMAb−MouseTM(メダレックス(Medarex))などの「ヒト」抗体を産生させてもよい。
【0082】
別の変異体では、本発明は、以下を含んでなる抗体を得るための方法を提供する。
(a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体のフラグメント、もしくはそれらのいずれかの誘導体を選択すること、次いで
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である(a)の抗体、フラグメント、または誘導体を選択すること。
【0083】
レパートリーは、場合により、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によって示される抗体またはそのフラグメントの任意の(組換え)レパートリーであってもよい。阻害型抗体の選択は、上記に開示されるように実施することができ、実施例においてさらに例示される。
【0084】
別の実施形態に従えば、本発明は、非ヒト宿主由来のB細胞を含んでなるハイブリドーマを提供し、ここで、前記B細胞は、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基に結合する抗体を産生し、前記抗体は、前記受容体の阻害活性を中和することが可能である。より好ましくは、本発明のこの態様のハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1を産生するハイブリドーマではない。本発明のこの態様に従うハイブリドーマは、免疫非ヒト哺乳動物由来の脾臓細胞と不死細胞系統との融合によって上記のように作製してもよい。この融合によって産生されるハイブリドーマは、本明細書において他で記載されるような交差反応する抗体の存在についてスクリーニングすることができる。好ましくは、ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、それらのKIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる抗体を産生する。さらにより好ましくは、ハイブリドーマは、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合し、NK細胞活性を増強する抗体を産生する。最も好ましくは、該ハイブリドーマは、モノクローナル抗体DF200を産生するハイブリドーマDF200である。
【0085】
本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されるハイブリドーマは、DMEMまたはRPMI−1640などの適切な培地において、より多量に培養させることができる。あるいは、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0086】
所望されるモノクローナル抗体を産生させるのに十分な増殖後、モノクローナル抗体(または腹水液)を含有する増殖培地を細胞から分別し、そこに存在するモノクローナル抗体を精製する。精製は、ゲル電気泳動、透析、タンパク質Aもしくはタンパク質G−Sepharose、またはアガロースもしくはSepharoseビーズのような固相支持体に連結された抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーによって、典型的に達成される(すべて、例えば、Antibody Purification Handbook、アマシャム・バイオサイエンス(Amersham Biosciences)、出版番号18−1037−46、EditionAC(その開示内容は参考として本明細書に援用される)に記載されている)。結合型抗体は、低pH緩衝液(グリシンまたはpH3.0もしくはそれ未満の酢酸緩衝液)を使用し、抗体を含有する画分を直ちに中和することによって、タンパク質A/タンパク質Gカラムから典型的に溶出される。これらの画分をプールし、透析し、必要であれば濃縮する。
【0087】
代替的実施形態に従えば、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する決定基に結合する抗体をコードするDNAは、本発明のハイブリドーマから単離され、適切な宿主へのトランスフェクションのための適切な発現ベクターに配置される。次いで、宿主は、抗体、または該モノクローナル抗体のヒト化バージョン、抗体の活性フラグメント、もしくは抗体の抗原認識部分を含んでなるキメラ抗体のようなその変異体の組換え産生のために使用される。好ましくは、本実施形態において使用されるDNAは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、それらのKIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞の増強を生じる抗体をコードする。さらにより好ましくは、DNAは、DF200と実質的に同じエピトープまたは決定基に結合し、NK細胞活性を増強する抗体をコードする。最も好ましくは、該DNAはモノクローナル抗体DF200をコードする。
【0088】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、(例えば、マウス抗体の重および軽鎖をコードする遺伝に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)従来の手順を使用して、容易に単離され、配列決定される。一旦単離されたら、DNAを発現ベクターに配置することができ、次いで、それは大腸菌(E.coli)細胞、サル(simian)COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現は当該分野において周知である(例えば、スケラ(Skerra)ら、Curr.Opinion in Immunol.,5、256頁(1993年);およびプリュックサン(Pluckthun)、Immunol.Revs.、130、151頁(1992)を参照のこと)。
【0089】
モノクローナル抗体のフラグメントおよび誘導体
本発明の抗体のフラグメントおよび誘導体(多で述べるかまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明において使用される用語「抗体」または「複数の抗体」に包含される)、好ましくは、DF−200様抗体は、当該分野において周知である技術によって産生させることができる。「免疫反応性フラグメント」は、無傷な抗体の部分を含んでなり、一般に、抗体は結合部位または可変領域である。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;連続アミノ酸残基の1つの不断配列よりなる1次構造を有するポリペプチドである任意の抗体フラグメント(本明細書において「一本鎖抗体フラグメント」または「一本鎖ポリペプチド」と称される)が挙げられ、(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)関連重鎖部分を伴わない唯一の軽鎖可変ドメイン、または軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチドおよび(3)関連軽鎖部分を伴わない唯一の重鎖可変領域、または重鎖可変領域の3つのCDRを含有するそのフラグメントを含有する一本鎖ポリペプチド;ならびに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むが、これらに限定されない。例えば、FabまたはF(ab’)2フラグメントは、従来の技術に従って、単離された抗体のプロテアーゼ消化によって、産生され得る。免疫反応性フラグメントは、例えば、インビボでのクリアランスを遅延させ、より所望される薬物動態プロフィールを得るための既知の方法を使用して、修飾することができ、フラグメントをポリエチレングリコール(PEG)で修飾してもよいことが理解されよう。PEGをFab’フラグメントにカップリングおよび部位特異的に共役するための方法は、例えば、レオング(Leong)ら、Cytokine16(3):106−119(2001年)およびデルガド(Delgado)ら、Br.J.Cancer73(2):175−182(1996年)に記載されており、それらの開示内容は、本明細書において参考として援用される。
【0090】
特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のDF−200の軽鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のPan2Dの軽鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のDF−200の1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。さらに別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図12に記載のPan2Dの1つもしくはそれ以上の軽鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。そのような配列の機能的変異体/類似体は、標準的な技術を使用して、これらの開示されたアミノ酸配列の適切な置換、付加、および/または欠失を行うことによって、作製することができ、配列の比較によって援助され得る。従って、例えば、Pan2DとDF−200との間で保存されているCDR残基は、そのような残基が本明細書において開示された他の抗体についてこれらの抗体が有する競合における異なるプロフィールに寄与し得ないような修飾のための適切な標的であり得(Pan2DおよびDF−200は競合するが)、それ故、それらの特定のそれぞれのエピトープに対するこれらの抗体の特異性に寄与し得ない。別の態様では、残基がこれらの抗体のうちの1つの配列に存在し、別の抗体の配列には存在しないような位置は、欠失、置換、および/または挿入に適切であり得る。
【0091】
特定の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図13に記載のDF−200の重鎖可変領域配列を含んでなる抗体誘導体を提供する。別の態様では、本発明は、抗体、抗体フラグメント、および図13に記載のDF−200の1つもしくはそれ以上の重鎖可変領域CDRを含んでなるそれらの誘導体を提供する。そのような配列の機能的変異体/類似体は、標準的な技術を使用して、これらの開示されたアミノ酸配列の適切な置換、付加、および/または欠失を行うことによって、作製することができ、配列の比較によって援助され得る。別の態様では、残基がこれらの抗体のうちの1つの配列に存在し、別の抗体の配列には存在しないような位置は、欠失、置換、および/または挿入に適切であり得る。
【0092】
あるいは、本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、本発明のフラグメントをコードするように修飾することができる。次いで、修飾されたDNAを発現ベクターに挿入し、適切な細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用し、次いで該細胞は所望されるフラグメントを発現する。
【0093】
代替的実施形態では、本発明の抗体、好ましくは、DF−200様抗体を産生するハイブリドーマのDNAは、発現ベクターへの挿入前に、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重および軽鎖定常ドメインのコーディング配列を置換することによって(例えば、モリソン(Morrison)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851頁(1984年))、または免疫グロブリンコーディング配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列のすべてもしくは一部を共有結合させることによって、修飾することができる。該様式では、本来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。典型的に、そのような非免疫グロブリンポリペプチドが、本発明の抗体の定常ドメインに対して置換される。
【0094】
それ故、別の実施形態に従い、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体はヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化」形態は、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはマウス免疫グロブリンから誘導される最小配列を含有する(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、もしくは抗体の他の抗原結合配列のような)それらのフラグメントである。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、本来の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられる一方、本来の抗体の所望される特異性、親和性、および能力は維持される。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基によって置き換えてもよい。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでなることができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために作製される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含んでなり、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが本来の抗体の該領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の該領域である。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的に、ヒト免疫グロブリンの部分を含んでなる。より詳細については、ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321、522頁(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、Nature、332、323頁(1988年);およびプレスタ(Presta)、Curr.Op.Struct.Biol.,2、593頁(1992年)を参照のこと。
【0095】
本発明の抗体をヒト化するための方法は当該分野において周知である。一般に、本発明に従うヒト化抗体は、本来の抗体から該抗体に導入された1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらのマウスまたは他の非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「インポート」残基と称され、典型的に「インポート」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、ウィンター(Winter)および共同研究者ら(ジョーンズ(Jones)ら、Nature,321、522頁(1986年);ライヒマン(Reichmann)ら、Nature、332、323頁(1988年);ベルホイエン(Verhoeyen)ら、Science,239、1534頁(1988年))の方法に従って、実施することができる。従って、そのような「ヒト化」抗体はキメラ抗体(キャビリー(Cabilly)ら、米国特許第4,816,567号明細書)であって、ここで、実質的に無傷でないヒト可変ドメインが、本来の抗体由来の対応する配列によって置換されている。実際には、本発明に従うヒト化抗体は、典型的にヒト抗体であり、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が、本来の抗体における類似部位由来の残基によって置換される。
【0096】
ヒト化抗体を作製するのに使用すべきヒト可変ドメイン(軽鎖および重鎖の両方)の選択は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベスト−フィット」方法に従えば、本発明の抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(シムズ(Sims)ら、J.Immunol.,151、2296頁(1993年);チョチア(Chothia)およびレスク(Lesk)、J.Mol.Biol.,196、901頁(1987年))。別の方法は、軽または重鎖の特定の亜群のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくらかの異なるヒト化抗体に使用することができる(カーター(Carter)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,89、4285頁(1992);プレスタ(Presta)ら、J.Immunol.,51、1993頁))。
【0097】
複数の阻害型KIR受容体に対する高い親和性および他の好適な生物学的特性を保持して抗体をヒト化することはさらに重要である。この目的を達成するために、好適な方法に従い、親配列の解析のプロセスならびに親およびヒト化配列の3次元モデルを使用する多様な概念上のヒト化産物によって、ヒト化抗体が調製される。3次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者に熟知している。選択された候補免疫グロブリン配列の見込まれる3次元コンフォメーション構造を例示および示すコンピュータプログラムが利用可能である。これらの標示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能性における残基の可能な役割の解析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の解析を可能にする。この方法では、FR残基が選択され、標的抗原の増加した親和性などの所望される抗体の特徴が達成されるように、コンセンサスおよびインポート配列から合わせられる。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に、直接的および最も実質的に関与する。
【0098】
「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する別の方法は、免疫に使用するマウスとしてXenoMouse(登録商標)(アブゲニクス(Abgenix),Fremont、カリフォルニア州)を使用することである。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられるその免疫グロブリン遺伝子を有した本発明に従うマウス宿主である。従って、このマウスによりまたはこのマウスのB細胞から作製されたハイブリドーマにおいて産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号明細書において説明されており、該文献は本明細書においてその全体が参考として援用される。HuMAb−MouseTM(メダレックス(Medarex))を使用して、類似の方法を達成することができる。
【0099】
ヒト抗体はまた、免疫化のために、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されている他のトランスジェニック動物を使用すること(ヤコブビッツ(Jakobovitz)ら、Nature362(1993年)255)、またはファージディスプレイ法を使用する抗体レパートリーの選択のような他の多様な技術に従って、産生させてもよい。そのような技術は当業者に公知であり、本出願において開示されるモノクローナル抗体から出発して遂行することができる。
【0100】
本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体はまた、それらが所望される生物学的活性を示す限り、重および/または軽鎖の部分が本来の抗体における対応する配列と同一かあるいは相同である一方、鎖の残りの部分は別の種から誘導されるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列に同一かあるいは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体のフラグメントに誘導体化され得る(キャビリー(Cabilly)ら、上掲;モリソン(Morrison)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.A.,81、6851頁(1984))。
【0101】
本発明の範囲内にある他の誘導体は、官能化抗体、即ち、リシン、ジフテリア毒素、アブリンおよびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素のような毒素;蛍光部分、放射性同位元素もしくは画像化剤のような検出可能な部分;またはアガロースビーズなどのような固相支持体に共役あるいは共有結合されている抗体を含む。他のこれらの薬剤の抗体へのコンジュゲーションまたは共有結合のための方法は、当該分野において周知である。
【0102】
毒素へのコンジュゲーションは、細胞表面上に交差反応性のKIR受容体の1つを示すNK細胞の標的死滅に有用である。一旦、本発明の抗体がそのような細胞の細胞表面に結合すると、それは内在化され、毒素が細胞内部に放出され、該細胞を選択的に死滅させる。そのような使用は、本発明の代替的実施形態である。
【0103】
検出可能な部分へのコンジュゲーションは、本発明の抗体が診断目的に使用される場合、有用である。そのような目的として、細胞表面上に交差反応性KIRを有するNK細胞の存在のために生物学的サンプルをアッセイすることおよび生体生物内に交差反応性KIRを有するNK細胞の存在を検出することが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなアッセイおよび検出方法もまた、本発明の代替的実施形態である。
【0104】
本発明の抗体の固相支持体へのコンジュゲーションは、生物学的液体のような供給源からの細胞表面上に交差反応性KIRを有するNK細胞のアフィニティー精製のためのツールとして有用である。この精製方法は、得られた精製されたNK細胞の集団であることから、本発明の別の代替的実施形態である。
【0105】
代替的実施形態では、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する抗体であって、ここで、NKVSF1を含む前記抗体は、本発明の前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞上のNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、単独でまたは動物への標的化された送達のための別の物質と共にリポソーム(「イムノリポソーム」)に組み入れられ得る。他のそのような物質として、遺伝子治療のための遺伝子の送達またはNK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸、あるいはNK細胞の標的化された死滅のための毒素または薬物が挙げられる。
【0106】
公開された結晶構造(マエナカ(Maenaka)ら(1999年)、ファン(Fan)ら(2001年)、ボイングトン(Boyington)ら(2000年))に基づくKIR2DL1、−2および−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1およびKIR2DL1−3交差反応性マウスモノクローナル抗体DF200とNKVSF1との間の相互作用における所定の領域またはKIR2DL1、−2および−3の関与を予測した。従って、1つの実施形態では、本発明は、アミノ酸残基(105、106、107、108、109、110、111、127、129、130、131、132、133、134、135、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、181、192)によって規定される領域内のKIR2DL1に排他的に結合する抗体を提供する。別の実施形態では、本発明は、残基(105、106、107、108、109、110、111、127、129、130、131、132、133、134、135、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、181、192)によって規定される領域以外のアミノ酸残基と相互作用せずに、KIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する抗体を提供する。
【0107】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R131がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R157がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1に結合し、R158がAlaであるKIR2DL1の変異体には結合しない抗体を提供する。
【0110】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1残基(131、157、158)に結合する抗体を提供する。
【0111】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DS3(R131W)に結合するが、野生型KIR2DS3には結合しない抗体を提供する。
【0112】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方ならびにKIR2DS4に結合する抗体を提供する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方には結合するが、KIR2DS4には結合しない抗体を提供する。
【0114】
抗体が上記で規定されたエピトープ領域のうちの1つの内部に結合するかどうかの決定は、当業者に公知の方法で行うことができる。そのようなマッピング/特徴付け方法の1つの例として、抗KIR抗体に対するエピトープ領域は、KIR2DL1またはKIR2DL2/3タンパク質における暴露されたアミン/カルボキシルの化学修飾を使用するエピトープ「フット−プリンティング」によって決定することができる。そのようなフット−プリンティング技術の1つの特定の例は、HXMS(質量分析によって検出される水素−重水素交換)の使用であって、ここで、受容体およびリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合、および逆交換が生じ、ここで、タンパク質結合に参加している骨格アミド基は、逆交換から保護され、従って重水素化が保持される。関連領域は、このポイントで、ペプシンによるタンパク質分解、ファスト・マイクロボア(fast microbore)高速液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析によって同定することができる。例えば、エーリングH(Ehring H)、Analytical Biochemistry、第267巻(2)252−259頁(1999年)および/またはエンジェン,J.R.(Engen,J.R.)およびスミス,D.L.(Smith,D.L.)(2001年)Anal.Chem.73,256A−265Aを参照のこと。適切なエピトープ同定技術のもう1つの例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であって、ここで、典型的に、遊離の抗原および抗体のような抗原結合性ペプチドと複合体形成した抗原の2次元NMRスペクトルにおけるシグナルの位置が比較される。NMRスペクトルにおいて抗原に対応するシグナルのみが認められ、抗原結合性ペプチド由来のシグナルは認められないように、抗原は、典型的に、選択的に同位体の15Nで標識される。抗原結合性ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、遊離の抗原のスペクトルと比較して、典型的に複合体のスペクトルの位置をシフトし、該方法で、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。例えば、Ernst Schering Res Found Workshop.2004年;(44):149−67;ハング(Huang)ら、Journal of Molecular Biology、第281巻(1)61−67頁(1998);およびサイト(Saito)およびパターソン(Patterson)、Methods.1996年6月;9(3):516−24頁を参照のこと。
【0115】
エピトープマッピング/特徴付けもまた、質量分析方法を使用して実施することができる。例えば、ダウンワード,Jマス(Downward,J Mass)Spectrom.2000年4月;35(4):493−503頁ならびにキセラー(Kiselar)およびダウンワード(Downard)、Anal Chem.1999年5月1日;71(9):1792−801頁を参照のこと。
【0116】
プロテアーゼ消化技術もまた、エピトープマッピングおよび同定に関して有用であり得る。抗原性決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化、例えば、37℃およびpH7〜8での消化においてKIR2DL1またはKIR2DL2/3に対し約1:50の比でトリプシンを使用し、続いて、ペプチド同定のための質量分析(MS)によって、決定することができる。抗KIRバインダーによってトリプシン切断から保護されたペプチドは、その後、トリプシン消化に供されたサンプルと、抗体と共にインキュベーションし、次いで、例えば、トリプシンによる消化に供された(それによって、バインダーに対するフットプリントを示す)サンプルとの比較によって同定することができる。キモトリプシン、ペプシンなどのような他の酵素もまた、もしくは代替的に、類似のエピトープ特徴付け方法において使用することができる。さらに、酵素的消化は、表面に露出しておらず、従って、免疫原性/抗原性に最も関連しない可能性が最も高い抗KIRポリペプチドについて、潜在的抗原性決定基配列がKIR2DL1の領域内にあるかどうかを分析するための迅速な方法を提供することができる。類似の技術の考察については、例えば、マンカ(Manca)、Ann Ist Super Sanita.1991;27(1):15−9頁を参照のこと。
【0117】
カニクイザルとの交差反応
抗体NKVSF1もまた、カニクイザル由来のNK細胞に結合することを見出した。実施例7を参照のこと。従って、本発明は、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体がヒトNK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、さらに、カニクイザル由来のNK細胞に結合する。その1つの実施形態では、抗体は抗体NKVSF1ではない。本発明はまた、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体の毒性を試験する方法を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体は、ヒトNK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型ヒトKIR受容体と交差反応し、ここで、方法は、カニクイザルの抗体を試験することを含んでなる。
【0118】
組成物および投与
本発明はまた、抗体、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体を含んでなる薬学的組成物を提供し、ここで、前記抗体、フラグメントまたは誘導体は、任意の適切なビヒクルにおいて、NK細胞を含んでなる患者または生物学的サンプルのNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度で増強するのに有効な量で、NK細胞の表面における少なくとも2つの阻害型KIR受容体と交差反応し、それらの阻害シグナルを中和し、該細胞の活性を増強する。組成物は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含んでなる。そのようの組成物はまた、「本発明の抗体組成物」とも称される。1つの実施形態では、本発明の抗体組成物は、上記の抗体実施形態において開示される抗体を含んでなる。抗体NKVSF1は、本発明の抗体組成物に存在し得る抗体の範囲内に含まれる。
【0119】
本明細書において使用する用語「生物学的サンプル」として、生物学的液体(例えば、血清、リンパ、血液)、細胞サンプルまたは組織サンプル(例えば、骨髄)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
これらの組成物に使用され得る薬学的に許容可能なキャリアとして、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
本発明の組成物は、患者または生物学的サンプルのNK細胞の活性を増強する方法において用いることができる。本方法は、前記組成物と前記患者または生物学的サンプルとを接触させる工程を含んでなる。そのような方法は、診断および治療目的の療法に有用である。
【0122】
生物学的サンプルと併せて(in conjunction with)使用するために、抗体組成物を、サンプルの性質(液体もしくは固体)に依存して、簡単にサンプルと混合するかまたは直接適用することによって、投与することができる。生物学的サンプルは、任意の適切なデバイス(プレート、ポーチ、フラスコなど)中の抗体と直接接触させてもよい。患者と併せて使用するためには、組成物は、患者への投与のために処方しなければならない。
【0123】
本発明の組成物は、経口的、非経口的、吸入スプレーにより、局所的、直腸内、経鼻的、頬側的、膣内にまたはインプラントされたリザーバを介して投与することができる。本明細書で使用する「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注入または輸注技術を含む。好ましくは、組成物は、経口的、腹腔内または静脈内に投与される。
【0124】
本発明の無菌注入可能な形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当該分野において公知の技術に従って処方することができる。無菌注入可能な調製物はまた、非毒性の非経口的な許容可能な希釈剤もしくは溶媒における無菌注入可能な溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中溶液として)であってもよい。なかでも、用いられ得る許容可能なビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来的に用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の低刺激不揮発性油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注入可能物の調製に有用であり、それらは、特に、ポリオキシエチレンバージョン(polyoxyethylated version)のオリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学的に許容可能な油である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的許容可能な剤形の処方において一般に使用される長鎖アルコール希釈液または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤を含有してもよい。薬学的に許容可能な固体、液体、または他の剤形の製造に一般に使用される他の一般に使用される界面活性剤、例えば、Tween、Spanおよび他の乳化剤またはバイオアベイラビリティーの増強剤もまた、処方の目的のために使用することができる。
【0125】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むがこれらに限定されない任意の経口的な許容可能な剤形で経口的に投与することができる。経口使用のための錠剤の場合、一般に使用されるキャリアとして、乳糖およびトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態の経口投与のための有用な希釈剤として、乳糖および乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。経口用途に水性懸濁液が必要な場合、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わせられる。所望であれば、所定の甘味、風味付け、または着色剤もまた添加することができる。
【0126】
あるいは、本発明の組成物は、直腸内投与のための坐剤の形態で投与することもできる。これらは、薬剤と、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って、直腸内では融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することによって調製することができる。そのような材料として、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0127】
本発明の組成物は、特に、処置の標的が眼、皮膚、もしくは下部腸管の疾患を含む局所投与によって用意にアクセス可能な領域または器官を含む場合、局所的に投与することができる。適切な局所処方は、これらの領域または器官のそれぞれについて容易に調製される。
【0128】
下部腸管のための局所適用は、直腸用坐剤処方(上記を参照のこと)または適切な浣腸処方で行うことができる。局所用経皮パッチも使用することができる。
【0129】
局所適用のために、組成物は、1つもしくはそれ以上のキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切な軟膏において処方してもよい。本発明の化合物の局所投与のためのキャリアとして、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容されたキャリアに懸濁または溶解された有効成分を含有する適切なローションまたはクリームにおいて処方することができる。適切なキャリアとして、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベイト60(polysorbate60)、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
眼科用途のために、組成物を、等張性、pH調整した滅菌食塩水中の微粉化懸濁液、または好ましくは、等張性、pH調整した食塩水中の溶液として、塩化ベンジルアルコニウムのような保存剤を伴うもしくは伴わずに、処方してもよい。あるいは、眼科用途として、組成物を、ワセリン(petropatum)のような軟膏において処方してもよい。
【0131】
本発明の処方物はまた、経鼻エアゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、薬学的処方の分野に周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールもしくは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いる食塩水中の溶液として調製してもよい。
【0132】
いくらかのモノクローナル抗体は、Rituxan(リツキシマブ(Rituximab))、Herceptin(トラツズマブ(Trastuzumab))またはXolair(オマリズマブ(Omalizumab))、ならびに類似の投与レジメン(即ち、処方および/または用量および/または投与プロトコル)が本発明の抗体と共に使用され得るような臨床的状況において効率的であることが示されている。本発明の薬学的組成物における抗体の投与のためのスケジュールおよび用量は、例えば、製造者に指示を使用して、これらの生成物のための既知の方法に従って決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物に存在する抗体は、100mg(10mL)または500mg(50mL)の単回使用のバイアルのいずれかにおいて10mg/mLの濃度で供給することができる。生成物は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mLクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLポリソルベイト(polysorbate)80、および注射用滅菌水において、静脈内投与のために処方される。pHは6.5に調整される。本発明の薬学的組成物における抗体のための例示的に適切な用量範囲は、約10mg/m2〜500mg/m2であり得る。しかし、これらのスケジュールは例示的であること、至適スケジュールおよびレジメンは、臨床治験において決定されなければならない薬学的組成物における特定の抗体の親和性および忍容性を考慮して適応することができることが理解されよう。24時間、48時間、72時間または1週間もしくは1箇月間、NK細胞を飽和する本発明の薬学的組成物における抗体の注入の量およびスケジュールは、抗体の親和性およびその薬物動態パラメータを考慮して決定される。
【0133】
別の実施形態に従えば、本発明の抗体組成物は、抗体が投与されている特定の治療目的に通常利用される薬剤を含む別の治療剤をさらに含んでなることができる。さらなる治療剤は、通常、処置されている特定の疾患または状態のための単剤治療における該薬剤に典型的に使用される量で組成物中に存在する。そのような治療剤として、癌の処置に試用される治療剤、感染性疾患を処置するために使用される治療剤、他の免疫療法において使用される治療剤、(IL−2またはIL−15のような)サイトカイン、他の抗体のおよび他の抗体のフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
例えば、多くの治療剤が癌の処置のために利用可能である。本発明の抗体組成物および方法は、特定の疾患、特定の腫瘍、癌疾患、または患者が示す他の疾患もしくは他の障害の処置において一般に用いられる他の任意の方法と併用してもよい。特定の治療アプローチが、患者の状態自体に有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物における抗体の活性を有意に妨げない限り、その本発明との併用が考慮される。
【0135】
固形腫瘍の処置に関連して、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などのような古典的なアプローチと組み合わせて使用してもよい。従って、本発明は、本発明の薬学的組成物が手術または放射性処置と同時、前、または後に使用されるか;あるいは従来の化学療法、放射線治療剤もしくは抗血管新生剤または標的化された免疫毒素もしくはコアギュリガンド(coaguligand)と共に、前または後に患者に投与される併用療法を提供する。
【0136】
1つもしくはそれ以上の薬剤を、治療レジメンにおいて本発明の抗体含有組成物と組み合わせて使用する場合、組み合わされた結果が、それぞれの処置を個別に行う場合に観察される効果の相加を求める要件は存在しない。少なくとも相加的効果は一般に所望されるが、単回治療のうちの1つを超える増加した抗癌効果は、有益で得あり得る。また、併用処置が相乗効果を示すことを求める特定の要件は存在しないが、このことは間違いなく可能であり、有利である。
【0137】
併用抗癌治療を実践するためには、動物に本発明の抗体組成物を、動物内において併用抗癌作用が生じる有効な様式で、別の抗癌剤と併用して、簡単に投与する。従って、薬剤は、腫瘍の脈管構造内においてそれらが組み合わされた形で存在し、腫瘍環境においてそれらが組み合わされて作用するのに有効な量ならびに有効な期間、提供される。この目的を達成するために、本発明の抗体組成物および抗癌剤は、単一の組み合わされた組成物、または異なる投与経路を使用する2つの異なる組成物としてのいずれか一方で、動物に同時に投与することができる。
【0138】
あるいは、本発明の抗体組成物の投与は、例えば、数分〜数週間および数箇月の範囲の間隔で、抗癌剤処置の前、または後に行うことができる。抗癌剤および本発明の抗体組成物における抗体は、癌に対し、有利に組み合わされた効果を発揮することが確実にされる。
【0139】
ほとんどの抗癌剤は、抗血管新生療法における本発明の阻害型KIR抗体組成物の前に、与えられる。しかし、抗体の免疫共役が本発明の抗体組成物において使用される場合、多様な抗癌剤を、同時またはその後に投与することができる。
【0140】
状況により、処置の期間の顕著に延長することさえ所望され得、ここで、数日間(2、3、4、5、6もしくは7)、数週間(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)または数箇月(1、2、3、4、5、6、7もしくは8)が、抗癌剤または抗癌処置のそれぞれの投与と本発明の抗体組成物の投与との間に経過する。これは、抗癌処置が実質的に腫瘍を破壊する(手術または化学療法のように)ことを目的とし、本発明の抗体組成物の投与が微小転移または腫瘍の再成長を防止することを目的とする環境において有利である。
【0141】
本発明の阻害型KIR抗体に基づく組成物または抗癌剤のいずれかの1回を超える投与を利用することも想定される。これらの薬剤は、1日もしくは1週間おき;または本発明の阻害型KIR抗体組成物による処置のサイクルの後、抗癌剤療法のサイクルが続く形で、交換可能に投与することができる。いずれにせよ、併用療法を使用して腫瘍の抑制を達成するためには、必要なことは、投与時間にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに十分な組み合わされた量で両方の薬剤を送達することだけである。
【0142】
手術について、任意の外科的介入は、本発明と組み合わせて実践することができる。放射線療法に関して、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波および電子放射などのように、癌細胞内で局所的にDNA損傷を誘発する任意の機構が考慮される。放射性同位元素の癌細胞への指令された送達もまた考慮され、これは、標的化抗体または他の標的化手段とあわせて使用され得る。
【0143】
他の態様では、免疫調節化合物またはレジメンを、本発明の抗体組成物と組み合わせて、またはその部分として投与することができる。免疫調節化合物の好適な例はサイトカインを含む。そのような併用アプローチでは、多様なサイトカインを用いることができる。本発明によって考慮される組み合わせにおいて有用なサイトカインの例として、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γが挙げられる。本発明の併用処置または組成物において使用されるサイトカインは、患者の状態およびサイトカインの相対的毒性のような臨床適応に一致する標準的なレジメンに従って、投与される。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を含んでなる治療組成物は、化学療法もしくはホルモン治療剤と併用投与され得るか、または該化学療法もしくはホルモン治療剤をさらに含んでなり得る。様々なホルモン治療および化学療法剤は、本明細書において開示される併用処置方法において使用することができる。例示的に考えられる化学療法剤として、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、ならびにそれらの誘導体およびプロドラックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
ホルモン剤としては、例えば、LHRHアゴニスト、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、およびブセレリン;抗エストロゲン、例えば、タモキシフェンおよびトレミフェン;抗アンドロゲン、例えば、フルタミド、ニルタミド、シプロテロンおよびビカルタミド;アロマターゼ阻害剤、例えば、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールおよびファドロゾール;ならびにプロゲスターゲン、例えば、メドロキシ、クロルマジノンおよびメゲストロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
当業者に理解されるように、化学療法剤の適切な用量は、臨床治療においてすでに用いられている用量に近似し、ここで、化学療法剤は、単独か、または他の化学療法剤との併用で投与される。唯一の例として、シスプラチンのような薬剤、および他のDNAアルキル化剤を使用することができる。シスプラチンは癌を処置するために広範に使用されており、臨床適用において使用される有効量は20mg/m2であり、3週間ごとに5日間の投与を合計で3クール行う。シスプラチン経口的には吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内または腹腔内注入を介して送達されなければならない。
【0147】
さらに有用な化学療法剤として、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を妨害する化合物、ならびにポリヌクレオチド前駆体の合成および忠実度を破壊する薬剤が挙げられる。併用治療のための多くの例示的化学療法剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Cに列挙されており、該薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参考として援用される。列挙されたそれぞれの薬剤は例示的であり、限定的ではない。当業者は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第15版、第33章、特に624〜652頁を参照されたい。用量の変動は、治療中の状態に依存して生じる可能性がある。処置を施行する医師は、個々の被験体に対する適切な用量を決定することが可能である。
【0148】
本発明の交差反応性阻害型KIR抗体組成物は、任意の1つもしくはそれ以上の他の抗血管新生療法をと組み合わせて使用され得るか、または抗血管新生剤をさらに含んでなり得る。そのような薬剤の例として、それぞれVEGFまたはVEGF受容体に対して指向される中和抗体、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi、RNAアプタマーおよびリボザイムが挙げられる(米国特許第6,524,583号明細書、その開示内容は本明細書において参考として援用される)。国際公開第98/16551号パンフレット(具体的に本明細書において参考として援用される)に記載されているように、拮抗特性を伴うVEGFの変異体もまた用いることができる。併用治療に関して有用であるさらなる例示的抗血管新生剤が米国特許第6,524,583号明細書の表Dに列挙されており、薬剤および適応に関する開示内容は、具体的に、本明細書において参考として援用される。
【0149】
本発明の阻害型KIR抗体組成物はまた、アポトーシスを誘導する方法と組み合わせて有利に使用され得るか、またはアポトーシス誘導剤を含んでなり得る。例えば、アポトーシス、またはプログラムされた細胞死を阻害する多くの発癌遺伝子が同定されている。このカテゴリー内の例示的発癌遺伝子として、bcr−abl、bcl−2(bcl−1、サイクリン(cyclin)D1とは異なる;(GenBank)登録番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号明細書;および同第5,539,094号明細書;それぞれ、本明細書において参考として援用される)ならびにBcl−x1、Mcl−1、Bak、A1、およびA20を含むファミリーメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現はT細胞リンパ腫においてはじめて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax、アポトーシス経路におけるタンパク質に結合し、不活化することによって、機能する。bcl−2機能を阻害すると、Baxの不活化が防止され、アポトーシス経路を促進させることが可能である。例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNAまたは小分子の化学化合物を使用するこのクラスの発癌遺伝子の阻害が、アポトーシスの増強を生じさせるための本発明での使用のために考慮される(米国特許第5,650,491号明細書;同第5,539,094号明細書;および同第5,583,034号明細書;それぞれは本明細書において参考として援用される)。
【0150】
本発明の阻害型KIR抗体組成物はまた、標的化タンパク質、例えば、標的細胞、例えば、標的腫瘍細胞の特異的マーカー(「ターゲット剤」)に指向される抗体、リガンド、もしくはそれらの共役を含んでなる分子を含んでなり得るかまたは該分子と組み合わせて使用され得る。一般的に言えば、本発明のこれらのさらなる態様における使用のためのターゲット剤は、好ましくは、腫瘍部位において好適または特異的に発現されるアクセス可能な腫瘍抗原を認識する。ターゲット剤は、一般に、腫瘍細胞の表面に発現された、表面にアクセス可能なまたは表面に局在した成分に結合する。ターゲット剤はまた、好ましくは、高い親和性の特性を示し;ヒト身体における心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、直腸、乳、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、あるいは他の生命を維持する器官または組織から選択される1つもしくはそれ以上の組織のような生命を維持する正常な組織に対して顕著なインビボでの副作用を発揮しない。本明細書で使用する用語「顕著な副作用を発揮しない」は、インビボで投与する場合、ターゲット剤が化学療法中に通常遭遇するような極僅かなまたは臨床的に管理可能な副作用しか生じないという事実を指す。
【0151】
腫瘍の処置では、本発明の抗体組成物は、補助化合物をさらに含んでなり得るかまたは該補助化合物との組み合わせで使用され得る。補助化合物はとしては、その例として、制吐剤、例えば、セロトニン拮抗薬および治療薬、例えば、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤およびカンナビノイド系薬剤;ビスホスホネート系薬剤、例えば、ゾレドロン酸およびパミドロン酸;ならびに造血成長因子、例えば、エリスロポエチンおよびG−CSF、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチムおよびダルベポエチンを挙げることができる。
【0152】
別の実施形態では、NKVSF1を含む異なる交差反応性を有する本発明の2つもしくはそれ以上の抗体は、できるだけ多くの阻害型KIR遺伝子産物の阻害効果を中和するように単一の組成物内に組み合わせてもよい。本発明の交差反応性阻害型KIR抗体、またはそれらのフラグメントもしくは誘導体の組み合わせを含んでなる組成物は、単一の交差反応性抗体によって認識される阻害型KIR遺伝子産物のそれぞれを欠き得るヒト集団が小さな百分率で存在する可能性があるため、さらに広範な有用性を可能にする。同様に、本発明の抗体組成物は、単一の阻害型KIRサブタイプを認識する1つもしくはそれ以上の抗体をさらに含んでなり得る。そのような組み合わせはさらに、治療設定において広範な有用性を提供する。
【0153】
本発明はまた、前記患者に本発明の組成物を投与する工程を含んでなる、NK細胞活性を、それを要する患者において増強する方法をさらに提供する。本発明は、より具体的には、NK細胞活性の増加が有益であるか、NK細胞による溶解に感受性である細胞に関与するか、影響を及ぼすか、もしくは該細胞によって生じるか、あるいは癌、別の増殖性障害、感染性疾患もしくは免疫障害のような不十分なNK細胞活性によって生じるかまたは特徴付けられる疾患を有する患者においてNK細胞活性を増加させることに関する。より具多的には、本発明の方法は、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺および扁平上皮癌を含む皮膚の癌種を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫を含むリンパ球系統の造血器腫瘍;急性および慢性骨髄性白血病および前骨髄球性白血病を含む骨髄系統の造血器腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫および神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscaroma)、および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌および奇形癌種を含む他の腫瘍を含むがこれらに限定されない様々な癌ならびに他の増殖性疾患の処置のために利用される。
【0154】
本発明に従って処置することができる好適な障害は、リンパ球系統の造血器腫瘍、例えば、小細胞および大脳様細胞型を含むT細胞性前リンパ球性白血病(T−PLL)のようなT細胞障害を含むが、これらに限定されないT細胞ならびにB細胞腫瘍;好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/dT−NHL肝脾リンパ腫;末梢性/胸腺後段階T細胞リンパ腫(多形性もしくは免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻部)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞型リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性;およびリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)を含む。
【0155】
例えば、過形成、線維症(具体的には、肺、但し、腎線維症のような他のタイプの線維症も含む)、血管新生、乾癬、アテローム硬化症および狭窄または血管形成術後の再狭窄のような血管における平滑筋増殖を含む他の増殖性障害もまた、本発明に従って処置することが可能である。本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を使用して、好ましくは、ウイルス、細菌、原生動物、糸状菌もしくは真菌によって生じる任意の感染症を含む感染性疾患を処置または防止することができる。そのようなウイルス感染性生物体として、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−1)、2型単純ヘルペス(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルスまたはI型もしくは2型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
本発明に従って処置することができる細菌感染として、以下、スタフィロコッカス(Staphylococcus);化膿連鎖球菌(S.pyogenes)を含む連鎖球菌(Streptococcus);腸球菌(Enterococcl);炭疽菌(Bacillus anthracis)、およびラクトバチルス(Lactobacillus)を含むバチルス(Bacillus);リステリア(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);G.バギナリス(G.vaginalis)を含むガードネレラ(Gardnerella);ノカルディア(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponerna);カンピロバクター(Camplyobacter)、緑膿菌(Raeruginosa)を含むシュードモナス(Pseudomonas);レジオネラ(Legionella);淋菌(N.gonorrhoeae)および髄膜炎菌(N.meningitides)を含むナイセリア(Neisseria);F.メニンゴゼプチクム(F.meningosepticum)およびF.オドラタム(F.odoraturn)を含むフラボバクテリウム(Flavobacterium);ブルセラ(Brucella);百日咳菌(B.pertussis)および気管支敗血症菌(B.bronchiseptica)を含むボルデテラ(Bordetella);大腸菌(E.coli)を含むエシェリキア(Escherichia)、クレブシェラ(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、S.マルセッセンス(S.marcescens)およびS.リケファシエンス(S.liquefaciens)を含むセラチア(Serratia);エドワードシエラ(Edwardsiella);P.ミラビリス(P.mirabilis)およびP.ブルガリス(P.vulgaris)を含むプロテウス(Proteus);ストレプトバチルス(Streptobacillus);R.リケッチー(R.fickettsfi)を含むリケッチア科(Rickettsiaceae)、C.シッタキ(C.psittaci)およびC.トラコマチス(C.trachornatis)を含むクラミジア(Chlamydia);結核菌(M.tuberculosis)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、M.フォーチュイタム(M.folluiturn)、らい菌(M.laprae)、M.アビウム(M.avium)、ウシ型結核菌(M.bovis)、アフリカ型結核菌(M.africanum)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、およびM.レプレヌリアム(M.lepraernurium)を含むマイコバクテリウム(Mycobacterium);ならびにノカルディア(Nocardia)によって生じる感染が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
本発明に従って処置され得る原生動物感染として、リ−シュマニア(leishmania)、コクジジオア(kokzidioa)、およびトリパノソーマ(trypanosoma)によって生じる感染が挙げられるが、これらに限定されない。感染性疾患の完全なリストを、疾病対策センター(Center for Disease Control)(CDC)の国立感染症センター(National Center for Infectious Disease)(NCID)のウェブサイト(http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/)(本明細書において参考として援用される)上に見出すことができる。前記疾患のすべてが、本発明の交差反応性阻害型KIR抗体を使用する処置のための候補である。
【0158】
多様な感染性疾患を処置するそのような方法は、単独かあるいは抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗細菌剤、抗生物質、抗寄生体剤および抗原生動物剤を含むそのような疾患を処置するのに他の公知の処置および/または治療剤との組み合わせのいずれかで、抗体組成物を用いることができる。これらの方法がさらなる治療剤でのさらなる処置に関与する場合、該薬剤は、本発明の抗体と共に、単一の剤形かまたは個別の複数の剤形のいずれかで投与することができる。個別の剤形として投与する場合、さらなる薬剤は、本発明の抗体の投与の前、同時、または後に投与することができる。
【0159】
本発明のさらなる態様および利点を、以下の実施例のセクションで開示するが、これは例示的であり、本出願の範囲を制限するものではないとみなすべきである。
【0160】
実施例1
PBLの精製およびポリクローンまたはクローンNK細胞系統の作製
PBLを、Ficoll Hypaque勾配およびプラスチック粘着細胞の枯渇によって、健常なドナーから誘導した。富化されたNK細胞を得るために、PBLを、抗CD3、抗CD4および抗HLA−DRmAb(4℃で30分間)、続いて、ヤギ抗マウス磁気ビーズ(ダイナル(Dynal))(4℃で30分間)と共にインキュベートし、当該分野において既知の方法(ペンデ(Pende)ら、1999年)によって免疫磁気選択を行った。CD3−、CD4−、DR−細胞を、照射したフィーダー細胞、100U/mlインターロイキン2(Proleukin、カイロン・コーポレーション(Chiron Corporation))および1.5ng/ml PhytohemagglutininA(ギブコBRL(Gibco BRL))上で培養し、ポリクローンNK細胞集団を得た。NK細胞を限界希釈によりクローニングし、NK細胞のクローンを細胞表面受容体の発現についてのフローサイトメトリーによって特徴付けた。
【0161】
使用したmAbは、JT3A(IgG2a、抗CD3)、EB6およびGL183(それぞれIgG1抗KIR2DL1およびKIR2DL3)、XA−141 IgM(EB6と同じ特異性を伴う抗KIR2DL1)、抗CD4(HP2.6)、ならびに抗DR(D1.12、IgG2a)であった。出願人らにより生成されたJT3A、HP2.6、およびDR1.12の代わりに、同じ特異性の市販のmAbを使用することもできる(ベックマン・コールター・インク(Beckman Coulter Inc.)、Fullerton、カリフォルニア州)。EB6およびGL183は市販されている(ベックマン・コールター・インク(Beckman Coulter Inc.)、Fullerton、カリフォルニア州)。XA−141は市販されていないが、EB6を、(モレッタ(Moretta)ら、1993)に記載のような溶解のコントロール再構築のための使用することができる。
【0162】
細胞を適切な抗体(4℃で30分間)、続いて、PEまたはFITC共役ポリクローナル抗マウス抗体(サザン・バイオテクノロジー・アソシエーツ・インク(Southern Biotechnology Associates Inc))で染色した。サンプルを、FACSAN装置(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)、Mountain View、カリフォルニア州)上での細胞蛍光測定分析により分析した。
【0163】
以下のクローンを、本研究に使用した。CP11、CN5およびCN505はKIR2DL1陽性クローンであり、EB6((IgG1抗KIR2DL1)またはXA−141(EB6抗体と比較して同じ特異性を伴うIgM抗KIR2DL1)により染色される。CN12およびCP502はKIR2DL3陽性クローンであり、GL183抗体(IgG1抗KIR2DL3)により染色される。
【0164】
NKクローンの細胞障害活性を、標準的な4時間51Cr遊離アッセイによって評価し、ここで、エフェクターNK細胞を、NK細胞溶解に対する感受性について既知のCw3またはCw4陽性細胞系統に対して試験した。すべての標的を、マイクロ滴定プレートのウェルあたり5000個の細胞で使用し、エフェクター:標的比を図に示す(通常、標的細胞あたり4エフェクター)。細胞溶解アッセイを、示されたモノクローナル抗体の1/2希釈での懸濁液を伴うかまたは伴わすに実施した。手順は、本質的に(モレッタ(Moretta)ら、1993)の記載に同じであった。
【0165】
実施例2
新たなmAbの作製
mAbを、(モレッタ(Moretta)ら、1990)に記載のように、5週齢のBalbCマウスを活性型ポリクローンまたはモノクローンNK細胞系統で免疫することによって、作製した。異なる細胞融合後、はじめに、EB6およびGL183陽性NK細胞系統ならびにクローンとの交差反応する能力について、mAbを選択した。それぞれ、Cw4またはCw3陽性標的のEB6陽性もしくはGL183陽性NKクローンによって溶解を再構築する能力について、陽性モノクローナル抗体をさらにスクリーニングした。
【0166】
細胞染色は、以下の通りに行った。細胞を、抗体のパネル(1μg/mlまたは50μl上清、4℃で30分間)、続いて、PE−共役ヤギF(ab’)2フラグメント抗マウスIgG(H+L)またはPE共役ヤギF(ab’)2フラグメント抗ヒトIgG(Fcγ)抗体(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))で染色した。細胞蛍光測定分析を、EpicsXL.MCL装置(ベックマン・コールター(Beckman Coulter))上で実施した。
【0167】
モノクローナル抗体のうちの1つであるDF200mAbが、KIR2DL1、KIR2DL2/3を含むKIRファミリーの多様なメンバーを交差反応することを見出した。KIR2DL1+およびKIR2DL2/3+NK細胞の両方を、DF200mAbで鮮明に染色した(図1)。
【0168】
これらのHLAクラスI特異的阻害型受容体のうちの1つもしくは別のもの(または両方)を発現するNKクローンを、1つもしくはそれ以上のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した。細胞障害性アッセイを、以下の通りに行った。YTS−KIR2DL1またはYTS−Eco細胞系統の細胞溶解活性を、標準的な4時間51Cr遊離アッセイによって評価した。エフェクター細胞を、HLA−Cw4陽性または陰性EBV細胞系統およびHLA−Cw4トランスフェクト721.221細胞に対して試験した。すべての標的は、マイクロ滴定プレートのウェルあたり3000個の細胞で使用した。エフェクター/標的比を図に示す。細胞溶解アッセイを、モノクローナルマウスまたはヒト抗体の示された全長もしくはF(ab’)2フラグメントを伴うあるいは伴わずに実施した。予想されるように、HLA−Cw4およびKIR2DL3+NKクローンを発現する標的細胞に対するいずれの細胞溶解活性もCw3陽性標的に対してほとんどもしくはまったく活性を示さない場合、KIR2DL1+NKクローンはほとんど示さなかった。しかし、DF200mAb(それらのKIR2DL受容体を遮蔽するために使用した)の存在下では、NKクローンは、それらのHLA−Cリガンドを認識することができなくなり、Cw3またはCw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。
【0169】
例えば、C1R細胞系統(CW4+EBV細胞系統、ATCC番号CRL1993)は、KIR2DL1+NKクローン(CN5/CN505)では死滅されなかったが、阻害は、DF200または従来の抗KIR2DL1mAbのいずれか一方の使用によって、効率的に反転させることができた。一方、KIR2DL2/3+KIR2DL1−表現型(CN12)を発現するNKクローンは、C1R細胞を効率的に死滅させ、この死滅は、DF200mAbの影響を受けなかった(図2)。Cw3陽性標的に対するKIR2DL2−またはKIR2DL3−陽性NKクローンによっても同様の結果が得られる。
【0170】
同様に、Cw4+221EBV細胞系統は、KIR2DL1+トランスフェクトNK細胞によって死滅されなかったが、阻害は、DF200、DF200Fabフラグメント、または従来の抗KIR2DL1mAbEB6もしくはXA141のいずれかの使用によって、効率的に反転させることができた。また、Cw3+221EBV細胞系統は、KIR2DL2+NK細胞によって死滅されなかったが、阻害は、DF200またはDF200Fabフラグメントのいずれかの使用によって、反転させることができた。最後に、Cw3+221EBV細胞系統は、KIR2DL3+NK細胞によって死滅されなかったが、この阻害は、DF200Fabフラグメントまたは従来の抗KIR2DL3mAbGL183もしくはY249のいずれかの使用によって、反転させることができた。結果を図3に示す。
【0171】
F(ab’)2フラグメントもまた、Cw4陽性標的の溶解を再構築する能力について試験した。DF200のF(ab’)2フラグメントおよびEB6Abは、両方とも、Cw4トランスフェクト221細胞系統およびCw4+TUBO EBV細胞系統のKIR2DL1−トランスフェクトNK細胞による溶解の阻害を反転することが可能であった。結果を図4に示す。
【0172】
実施例4
新たなヒトmAbの作製
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを組換えKIRタンパク質で免疫し、ヒトモノクローナル抗KIR Abを作製した。異なる細胞融合後、はじめに、固定化されたKIR2DL1およびKIR2DL2タンパク質と交差反応する能力について、mAbを選択した。1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1を含むいくらかのモノクローナル抗体がKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応することを見出した。
【0173】
陽性モノクローナル抗体を、Cw4陽性標的細胞のKIR2DL1を発現するEB6陽性NKトランスフェクタントによる溶解を再構築する能力について、さらにスクリーニングした。HLAクラスI特異的阻害型受容体を発現するNK細胞を、1つもしくはそれ以上のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した(図5および6)。細胞障害性アッセイを、上記の通りに行った。エフェクター/標的比を図に示し、抗体を10μg/mlまたは30μg/mlのいずれかで使用した。
【0174】
(予想されるように、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対するいずれの細胞溶解活性がそうである場合、KIR2DL1+NK細胞はほとんど示さなかった。)しかし、1−7F9 mAbの存在下では、NK細胞は、それらのHLA−Cリガンドを認識することができなくなり、Cw4標的に対して強い細胞溶解活性を示した。例えば、試験した2つの細胞系統(HLA−Cw4トランスフェクト721.221およびCW4+EBV細胞系統)は、KIR2DL1+NK細胞で死滅されなかったが、阻害は、Mab1−7F9または従来の抗KIR2DL1mAb EB6のいずれかの使用により効率的に反転された。AbDF200およびpanKIR(NKVSF1とも称される)を1−7F9と比較した。一方、抗体1−4F1、1−6F5および1−6F1は、Cw4陽性標的に対するNK細胞による細胞溶解を再構築することができなかった。
【0175】
実施例5
DF200 mAb/KIR2DL1およびDF200 mAb/KIR2DL3相互作用のBiacore分析
組換えタンパク質の産生および精製
KIR2DL1およびKIR2DL3組換えタンパク質を大腸菌(E.coli)において産生させた。KIR2DL1およびKIR2DL3の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、以下のプライマーを使用して、それぞれ、pCDM8クローン47.11ベクター(バイアソニ(Biassoni)ら、1993年)およびRSVS(gpt)183クローン6ベクター(ワグマン(Wagtman)ら、1995年)から、PCRによって増幅した。
センス:5’−GGAATTCCAGGAGGAATTTAAAATGCATGAGGGAGTCCACAG−3’
アンチセンス:5’−CGGGATCCCAGGTGTCTGGGGTTACC−3’
それらを、ビオチン化シグナルをコードする配列でフレームにおいて、pML1発現ベクター(ソウルクイン(Saulquin)ら、2003年)にクローニングした。
【0176】
タンパク質発現は、BL21(DE3)細菌株(インビトロジェン(Invitrogen))において実施した。トランスフェクト細菌を、OD600=0.6まで、37°C、アンピシリン(100μg/ml)を補充した培地中で増殖させ、発現を1mM IPTGで誘導した。
【0177】
タンパク質を、変性条件(8M尿素)下の封入体から回収した。組換えタンパク質のリフォールディングを、L−アルギニン(400mM、シグマ(Sigma))およびβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20mM Tris、pH7.8、NaCl 150mM緩衝液において、室温で、尿素濃度を、6段階の透析(それぞれ、4、3、2、1、0.5および0M尿素)で減少することによって、実施した。還元型および酸化型グルタチオン(それぞれ5mMおよび0.5mM、シグマ(Sigma))を、0.5および0M尿素の透析工程中に添加した。最後に、タンパク質を、10mM Tris、pH7.5、NaCl 150mM緩衝液に対して、広範に透析した。可溶性のリフォールドしたタンパク質を濃縮し、次いで、Superdex200サイズ排除カラム(ファルマシア(Pharmacia);AKTAシステム(AKTA system))上で精製した。
【0178】
表面プラズモン共鳴測定を、Biacore装置(バイアコア(Biacore))上で実施した。すべてのBiacore実験において、HBS緩衝液にランニング緩衝液としての役割を果たす0.05%サーファクタント(surfactant)P20を補充した。
【0179】
タンパク質の固定化
上記のように産生された組換えKIR2DL1およびKIR2DL3タンパク質をSensor Chip CM5(バイオコア(Biacore))上のデキストラン層のカルボキシル基に共有結合で固定化した。sensor chip表面をEDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩およびN−ヒドロキシスクシンイミド、バイアコア(Biacore))で活性化した。カップリング緩衝液(10mM酢酸、pH4.5)中タンパク質を注入した。残留する活性型基の失活を、100mMエタノールアミンpH8(バイアコア(Biacore))を使用して実施した。
【0180】
親和性測定
動態測定のため、多様な濃度の可溶性抗体(1×10−7〜4×10−10M)を固定化されたサンプル上に適用した。測定は、20μl/分連続流速で実施した。各サイクルについて、sensor chipの表面を、10mM NaOH pH11の5μl注入によって、再生した。BIAlogue動態評価プログラム(BIAlogue Kinetics Evaluation program)(BIAevaluation 3.1,バイアコア(Biacore))をデータ分析に使用した。可溶性分析物(多様な濃度での40μl)を、20μl/分の流速、HBS緩衝液において、それぞれ、KIR2DL1およびKIR2DL3の500または540反射率単位(RU)、および1000または700RUを含有するデキストラン層上で、注入した。データは、6つの独立した実験の代表値である。結果を以下の表1に示す。
【0181】
【表1】
【0182】
実施例6
マウスおよびヒト抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
固定化されたKIR2DL1(900RU)、KIR2DL3(2000RU)およびKIR2DS1(1000RU)上、マウス抗KIR2D抗体DF200、Pan2D、gl183およびEB6、ならびにヒト抗KIR2D抗体1−4F1、1−6F1、1−6F5および1−7F9により、先に記載のようにエピトープマッピング分析を実施した(ガウトハイヤー(Gauthier)ら、1999年、サウナル(Saunal)およびバン・レゲンモルテル(van Regenmortel)1995年)。
【0183】
すべての実験は、5μl/分の流速、HBS緩衝液中、15μl/mlでの異なる抗体の2分間注入により、行った。各組の抗体について、2工程で競合結合分析を実施した。第1の工程では、第一のモノクローナル抗体(mAb)をKIR2D標的タンパク質に対して注入し、続いて、第二mAb(第一mAbは取り出さない)を注入し、第二mAbのRU値(RU2)をモニターした。第2の工程では、第二mAbを最初に裸のKIR2Dタンパク質上に直接注入し、mAbのRU値(RU1)をモニターした。第一のmabによる第二mAbのKIR2Dタンパク質への阻害パーセントは、100*(1−RU2/RU1)によって産出した。
【0184】
表2、3、および4に結果を示し、ここで、「第一抗体」と命名された抗体を垂直カラムに列挙し、「第二抗体」を水平カラムに列挙する。試験したそれぞれの抗体の組み合わせについて、抗体のチップに対する直接結合レベルの値(RU)を表に列挙し、ここで、第二抗体のKIR2Dチップへの直接結合を区画の頂部に列挙し、第一抗体が存在する場合の第二抗体のKIR2Dチップへの直接結合に対する値を区画の底部に列挙する。各区画の右側には、第二抗体結合の阻害百分率を列挙する。表2は、KIR2DL1チップに対する結合を示し、表3は抗体のKIR2DL3チップへの結合を示し、表4は、抗体のKIR2DS1チップへの結合を示す。マウス抗体DF200、NKVSF1およびEB6、ならびにヒト抗体1−4F1、1−7F9および1−6F1の固定化されたKIR2DL1、KIR2DL2/3およびKIR2DS1への競合結合を評価した。抗KIR抗体のKIR2DL1に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図7)は、(a)抗体1−7F9はEB6および1−4F1と競合的であるが、NKVSF1およびDF200とは競合的ではなく;(b)次いで、抗体1−4F1はEB6、DF200、NKVSF1および1−7F9と競合的であり;(c)NKVSF1はDF200、1−4F1およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1、1−4F1およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないことを示した。抗KIR抗体のKIR2DL3に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図8)は、(a)1−4F1はNKVSF1、DF200、gl183および1−7F9と競合的であり;(b)1−7F9はDF200、gl183および1−4F1とは競合的であるが、NKVSF1とは競合的ではなく;(c)NKVSF1はDF200、1−4F1およびGL183と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1、1−4F1および1−7F9と競合するが、GL183とは競合しないことを示した。抗KIR抗体のKIR2DS1に対する結合による実験由来のエピトープマッピング(図9)は、(a)1−4F1はNKVSF1、DF200および1−7F9と競合的であり;(b)1−7F9は1−4F1とは競合的であるが、DF200およびNKVSF1とは競合的ではなく;(c)NKVSF1はDF200および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合せず;(d)DF200はNKVSF1および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないことを示した。
【0185】
実施例7
カニクイザルNK細胞による抗KIRmAb滴定
抗KIR抗体NKVSF1を、カニクイザル由来のNK細胞に結合する能力について試験した。抗体のサルNK細胞への結合を図10に示す。
【0186】
サル PBMCの精製およびポリクローンNK細胞バルクの作製
カニクイザル(Cynomolgus Macaque)PBMCを、クエン酸ナトリウムCPTチューブ(ベクトン・ディキンソン(Becton Dickinson)から調製した。NK細胞の精製を、ネガティブな枯渇によって実施した(MacaqueNK細胞富化キット、ステム・セル・テクノロジー(Stem Cell Technology))。NK細胞を、照射したヒトフィーダー細胞、300U/mlインターロイキン2(Proleukin、カイロン・コーポレーション(Chiron Corporation))および1ng/ml PhytohemagglutininA(インビトロジェン(Invitrogen)、ギブコ(Gibco))上で培養し、ポリクローンNK細胞集団を得た。
【0187】
カニクイザルNK細胞によるPan2DmAb滴定
カニクイザルNK細胞(NKバルク16日目)を、異なる数量のPan2DmAb、続いて、PE共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体F(ab’)2フラグメントと共にインキュベートした。陽性細胞の百分率は、アイソタイプコントロール(精製マウスIgG1)により決定した。サンプルを2回繰り返した。蛍光強度の平均値=MFI。
【0188】
【表2】
【0189】
【表3】
【0190】
【表4】
【0191】
実施例8
KIR2DL1に対するDF200−およびpan2D−結合性のエピトープマッピング
公開された結晶構造(マエナカ(Maenaka)ら(1999年)、ファン(Fan)ら(2001年)、ボイングトン(Boyington)ら(2000年))に基づくKIR2DL1、−2および−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、KIR2DL1およびKIR2DL1−3交差反応性マウスモノクローナル抗体(mAb)DF200とpan2Dとの間の相互作用におけるアミノ酸R1311の関与を予測した。これを確認するために、KIR2DL1の完全細胞外ドメイン(アミノ酸H1〜H224)、ヒトFc(hFc)に融合した野生型または点変異型(例えば、R131W2)のいずれかよりなる融合タンパク質を調製した。多様なKIR2DL1−hFc融合タンパク質を産生させ、評価するために使用される材料および方法については記載されている(ウィンター(Winter)およびロング(Long)(2000年))。簡単に説明すると、KIR2DL1(R131W)−hFcをコードするcDNAベクターを、CL42−Ig、野生型KIR2DL1−hFcの産生のための公開されたcDNAベクター(ワグマン(Wagtman)ら(1995年))のPCRに基づく変異誘発(QuickchangeII、プロメガ(Promega))によって、作製した。KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcをCOS7細胞において産生させ、本質的に記載(ワグマン(Wagtman)ら(1995年))のように組織培養培地から単離した。それらの正確なフォールディングを試験するために、KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcを、HLA−Cw3(KIR2DL1リガンドなし)またはHLA−Cw4(KIR2DL1リガンド)のいずれか一方を発現するLCL721.221細胞と共にインキュベートし、KIR−Fc融合タンパク質と細胞との間の相互作用を、細胞表面でのタンパク質相互作用の研究に標準的な方法を使用し、FACSにより分析した。独立した実験の例を図11、パネルAに示す。文献から予想されるように、KIR2DL1−hFc融合タンパク質のうちHLA−Cw3発現LCL721.221細胞に結合したものは認められなかった。対照的に、KIR2DL1−hFcおよびKIR2DL1(R131W)−hFcの両方とも、HLA−Cw4発現LCL721.221細胞に結合し、それによって、それらの正確なフォールディングが確認された。
11文字アミノ酸コード
2KIR2DL1における(N末端からの)アミノ酸131位におけるWに対するRの置換
【0192】
KIR2DL1(R131W)−hFcおよびKIR2DL1−hFcのKIR特異的mAb(DF200、pan2D、EB6およびGL183)への結合について、ELISA、タンパク質相互作用を研究するための標準的な技術を使用して、研究した。簡単に説明すると、KIR2DL1(R131W)−hFcおよびKIR2DL1−hFcを、ヤギ抗ヒト抗体を介して、96ウェルに連結し、その後、KIR特異的mAbを多様な濃度(PBS中0〜1μg/ml)で添加した。KIR2DL1−hFc変異体とmAbとの間の相互作用を、TMB基質を変換するためのマウス抗体に特異的なペルオキシダーゼ結合第二抗体を使用して、分光側光法(450nm)によって可視化した。独立した実験の例を図11、パネルBに示す。KIR2DL2−3特異的mAbGL183がKIR2DL1−hFc融合タンパク質のいずれにも結合できなかった一方、KIR2DL1特異的mAbEB6、DF200およびpan2Dは、用量依存的様式でKIR2DL1−hFc変異体に結合した。単一の点変異(R131W)は、DF200およびpan2Dの結合に影響を及ぼし、mAbの最大濃度(1μg/ml)で、野生型と比較して約10%の結合の減少を伴ったことから、R131は、KIR2DL1の細胞外ドメイン2におけるDF200およびpan2Dの結合部位の部分であることが確認された。
【0193】
参考文献
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【0194】
本明細書において引用された刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、あたかも各文献が個々におよび具体的に参考として援用されることが意図され、その全体が本明細書に記載されているかのごとく、本明細書において参考として援用される。
【0195】
すべての表題および副題は、簡便のためのみに本明細書において使用され、いかなる方法においても本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0196】
すべての可能なバリエーションにおける上記の要素のいかなる組み合わせも、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、本発明に包含される。
【0197】
本発明の説明に関して使用される用語「a」および「an」および「the」および類似の指示対象は、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、単数および複数の両方を含むものと解釈されるべきである。
【0198】
本明細書に記載の値の範囲の詳細な記載は、本明細書において他に示さない限り、範囲に当てはまる各個別の値について個々に言及する簡潔な表現方法としての役割を果たすことを単に目的としており、各個々の値は、あたかもそれが本明細書において個々に引用されているがごとく、本明細書に援用される。他に説明しない限り、本明細書において提供されるすべての正確な値は、対応するおおよその値の代表値である(例えば、特定の因子または測定について提供されるすべての正確な値もまた、対応するおおよその測定値を提供し、近似を示唆する「約」によって修飾される)。
【0199】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において他に示すかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、任意の適切な順序で実施することができる。
【0200】
本明細書において提供される任意およびすべての例、または例示的語句(例えば、「のような(such as)」)は、単に本発明をより良好に例示することを目的としており、他に示さない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書における語句は、明白に説明しない限り、あらゆる要素が本発明の実施に必須であることを示すと解釈されるべきである。
【0201】
本明細書における特許明細書の引用および援用は、簡便のために行われており、そのような特許明細書の妥当性、特許可能性および/または施行可能性のあらゆる見解に反映しない。
【0202】
要素もしくは複数の要素に関する「含んでなる」、「有する」、「含む」または「含有する」などの用語を使用する本発明のあらゆる態様あるいは実施形態の本明細書における説明は、他に説明するかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、該特定の要素もしくは複数の要素「よりなる」、「より本質的になる」、または「実質的に含んでなる」本発明の類似の態様または実施形態への支持を提供することを目的とする(例えば、本明細書において特定の要素を含んでなるものとして説明される組成物は、他に説明するかまたは文脈において他に明らかな食い違いが認められない限り、該要素よりなる組成物をもまた説明しているものと理解すべきである)。
【0203】
本発明は、適用可能な法律によって許可された最大限の範囲で本明細書に記載の態様または特許請求の範囲に引用される主題事項のすべての修飾物および等価物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】多様なヒトKIR2DL受容体の共通の決定基に結合しているモノクローナル抗体DF200を示す。
【図2】Cw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するモノクローナル抗体DF200を示す。
【図3】モノクローナル抗体DF200、DF200のFabフラグメントならびにCw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害およびCw3陽性標的細胞に対するKIR2DL2/3陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図4】DF200およびEB6抗体のF(ab’)2フラグメントの存在下におけるHLACw4陽性標的細胞のNKクローンによる細胞溶解物の再構築を示す。
【図5】モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1、ならびにCw4陽性標的細胞(Cw4トランスフェクト細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図6】モノクローナル抗体DF200、NKVSF1(pan2D)、ヒト抗体1−7F9、1−4F1、1−6F5および1−6F1、ならびにCw4陽性標的細胞(EBV細胞)に対するKIR2DL1陽性NK細胞の細胞障害性のKIR2DL仲介阻害を中和するKIR2DL1またはKIR2DL2/3特異的な従来の抗体を示す。
【図7】KIR2DL1に対する抗KIR抗体による表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DL1に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DL1に対し、1−7F9はEB6および1−4F1に競合的であるが、NKVSF1およびDF200とは競合的ではないことを示す。次いで、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1、および1−7F9に競合的である。抗体NKVSF1は、KIR2DL1に対し、DF200、1−4F1、およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL1に対し、NKVSF1、1−4F1、およびEB6と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図8】KIR2DL3に対する抗KIR抗体によるBIAcore(登録商標)分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DL3に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DL3に対し、1−4F1がNKVSF1、DF200、gl183、および1−7F9に競合的であることを示す。1−7F9は、KIR2DL3に対し、DF200、gl183、および1−4F1には競合的であるが、NKVSF1には競合的ではない。NKVSF1は、KIR2DL3に対し、DF200、1−4F1、およびGL183と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DL3に対し、NKVSF1、1−4F1、および1−7F9と競合するが、GL183とは競合しない。
【図9】KIR2DS1に対する抗KIR抗体によるBIAcore(登録商標)分析によって得られる競合結合実験の結果を示すエピトープマップを示し、ここで、重複している円はKIR2DS1に対する結合における重複を標示する。結果は、KIR2DS1に対し、抗体1−4F1がNKVSF1、DF200、および1−7F9に競合的であることを示す。抗体1−7F9は、KIR2DS1に対し、1−4F1には競合的であるが、DF200およびNKVSF1には競合的ではない。NKVSF1は、KIR2DS1に対し、DF200および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。DF200は、KIR2DS1に対し、NKVSF1および1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しない。
【図10】mAbのカニクイザルNK細胞への結合を実証するNKVSF1(pan2D)mAb滴定を示す。カニクイザルNK細胞(NKバルク16日目)を、異なる数量のPan2DmAb、続いて、PE共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体F(ab’)2フラグメントと共にインキュベートした。陽性細胞の百分率は、アイソタイプコントロール(精製マウスIgG1)により決定した。サンプルを2回繰り返した。蛍光強度の平均値=MFI。
【図12】抗体DF200およびPan2DmAbの軽鎖可変領域および軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列の比較アラインメントを提供する。
【図13】抗体DF200の重鎖可変領域を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体であって、前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である、抗体。
【請求項2】
NKVSF1ではない、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
KIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
80位にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントである、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体DF200またはそのフラグメントである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、二重特異性抗体、一本鎖抗体フラグメント、または多くの異なる抗体フラグメントを含んでなる多特異性抗体から選択される抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項6に記載の抗体。
【請求項10】
a)下記(b)に融合した、阻害型KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含んでなる抗原で免疫されている非ヒト哺乳動物宿主由来のB細胞と、
b)不死化細胞
を含んでなるハイブリドーマであって、
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である、ハイブリドーマ。
【請求項11】
モノクローナル抗体NKVSF1を産生しない、請求項10に記載のハイブリドーマ。
【請求項12】
前記抗体がKIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する、請求項10に記載のハイブリドーマ。
【請求項13】
80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する、請求項12に記載のハイブリドーマ。
【請求項14】
ハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する、請求項12に記載のハイブリドーマ。
【請求項15】
DF200である、請求項14に記載のハイブリドーマ。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)非ヒト哺乳動物を阻害型KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体が前記KIRポリペプチドに結合し、
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程を含み、
ここで、工程(c)および(d)の順序は場合により逆にされる、方法。
【請求項17】
工程c)またはd)において選択される前記抗体がNKVSF1ではない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)において調製される抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
免疫のために使用される阻害型KIRポリペプチドがKIR2DLポリペプチドであり、工程(c)において選択される抗体が少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)において選択される前記抗体が、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(d)において選択される抗体がNK細胞障害性において少なくとも約50%の増強を生じる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体または抗体フラグメントがモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントを選択する工程、次いでがb)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(a)の抗体を選択する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項25】
工程b)において選択される前記抗体はNKVSF1ではない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(b)において選択される抗体が、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)において選択される抗体がNK細胞障害性において少なくとも50%の増強を生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)前記モノクローナル抗体の発現を生じる条件下で、請求項10〜15のいずれか一項に記載のハイブリドーマを培養する工程;次いで
b)前記ハイブリドーマから前記モノクローナル抗体を分離する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)請求項10〜15のいずれか一項に記載のハイブリドーマから前記モノクローナル抗体をコードするDNAを単離する工程;
b)ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体もしくは抗体の免疫反応性フラグメントから選択される修飾または誘導体化された抗体をコードするように、場合により前記DNAを修飾する工程;
c)前記DNAまたは修飾DNAを発現ベクターに挿入する工程であって、ここで、前記発現ベクターが適切な条件下で増殖される宿主内に存在する場合、前記抗体もしくは抗体フラグメントが発現可能である工程;
d)宿主細胞を前記発現ベクターでトランスフェクトする工程であって、ここで、さもなくば前記宿主細胞が免疫グロブリンタンパク質を産生しない工程;
e)前記抗体または抗体フラグメントの発現を生じる条件下で、前記トランスフェクト宿主細胞を培養する工程;次いで
f)前記トランスフェクト宿主細胞より産生される抗体または抗体フラグメントを単離する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項33】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体(ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であって、前記抗体は、患者またはNK細胞を含んでなる生物学的サンプルにおいてNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度に増強するのに有効な量で存在する);および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含んでなる薬学的組成物。
【請求項34】
免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤または補助化合物から選択される治療剤をさらに含んでなる、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記免疫調節剤が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、他のビンカアルカロイド、およびそれらの誘導体またはプロドラックから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記ホルモン剤が、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミド、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール、メドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤、および他のプロゲスターゲンから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記補助化合物が、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤、カンナビノイド系薬剤、ゾレドロン酸、パミドロン酸、エリスロポエチン、G−CSF、フィルグラスチム、レノグラスチム、ダルベポエチン、他の制吐剤、他のセロトニン拮抗薬、他のビスホスホネート系薬剤または他の造血成長因子から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
前記抗アポトーシス剤が、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNAまたはbcr−abl、bcl−2、Bcl−x1、Mcl−1、Bak、A1、もしくはA20から選択される遺伝子の発現を阻害する小分子化学化合物である、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗血管新生剤が、VEGFをコードする遺伝子、VEGF受容体をコードする遺伝子、VEGF、もしくはVEGF受容体に対する中和抗体、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi、RNAアプタマーまたはリボザイム;あるいはVEGFに対する拮抗特性を有するVEGFの変異体から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項41】
阻害型KIR受容体に結合し、阻害する前記第二抗体が、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する前記抗体により結合されるエピトープとは異なる阻害型KIR受容体のエピトープに結合する抗体であるか、またはその誘導体もしくはフラグメントである、請求項34に記載の組成物。
【請求項42】
NK細胞活性を、それを要する患者において増強する方法であって、前記患者に請求項33に記載の組成物を投与する工程を含んでなる、方法。
【請求項43】
前記患者が癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が扁平上皮癌、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性または急性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫、神経膠腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscaroma)、骨肉腫、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌種、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺もしくは皮膚の他の癌腫、リンパ球系統の他の造血器腫瘍、骨髄系統の他の造血器腫瘍、間葉起源の他の腫瘍、中枢または末梢神経系の他の腫瘍、または間葉起源の他の腫瘍を患っている、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記患者がリンパ球系統の造血器腫瘍を患っている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍が、小細胞および大脳様細胞型のT細胞性前リンパ球性白血病(T−PLL);T細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/dT−NHL肝脾リンパ腫;多形性もしくは免疫芽球性サブタイプの末梢性/胸腺後段階T細胞リンパ腫;血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻部)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞型リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性白血病;またはリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が、過形成、線維症、血管新生、乾癬、アテローム硬化症、狭窄または血管形成術後の再狭窄、および血管における平滑筋増殖により特徴付けられる他の疾患から選択される増殖性障害を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−1)、2型単純ヘルペス(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルスまたはI型もしくは2型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)から選択されるウイルスによって生じる感染性疾患を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、腸球菌(Enterococcl)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、G.バギナリス(G.vaginalis);ノカルディア(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponerna);カンピロバクター(Camplyobacter)、緑膿菌(Raeruginosa);レジオネラ(Legionella);淋菌(N.gonorrhoeae);髄膜炎菌(N.meningitides);F.メニンゴゼプチクム(F.meningosepticum);F.オドラタム(F.odoraturn);ブルセラ(Brucella);百日咳菌(B.pertussis);気管支敗血症菌(B.bronchiseptica);大腸菌(E.coli);クレブシェラ(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter);S.マルセッセンス(S.marcescens);S.リケファシエンス(S.liquefaciens);エドワードシエラ(Edwardsiella);P.ミラビリス(P.mirabilis);P.ブルガリス(P.vulgaris);ストレプトバチルス(Streptobacillus);R.リケッチー(R.fickettsfi);C.シッタキ(C.psittaci);C.トラコマチス(C.trachornatis);結核菌(M.tuberculosis)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、M.フォーチュイタム(M.folluiturn)、らい菌(M.laprae)、M.アビウム(M.avium)、ウシ型結核菌(M.bovis)、アフリカ型結核菌(M.africanum)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.イントラセルラール(M.intracellulare);M.レプレヌリアム(M.lepraernurium);ノカルディア(Nocardia)、他の連鎖球菌(Streptococcus)、他のバチルス(Bacillus)、他のガードネレラ(Gardnerella)、他のシュードモナス(Pseudomonas)、他のナイセリア(Neisseria)、他のフラボバクテリウム(Flavobacterium)、他のボルデテラ(Bordetella)、他のエシェリキア(Escherichia)、他のセラチア(Serratia)、他のプロテウス(Proteus)、他のリケッチア科(Rickettsiaceae)、他のクラミジア(Chlamydia)、他のマイコバクテリウム(Mycobacterium)、リ−シュマニア(leishmania)、コクジジオア(kokzidioa)、トリパノソーマ(trypanosome)、クラミジア(Chlamydia)もしくはリケッチア属(rickettsia)から選択される細菌、原生動物または寄生体により生じる感染性疾患を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤もしくは補助化合物から選択される適切なさらなる治療剤を前記患者に投与するさらなる工程を含んでなり、ここで、前記さらなる治療剤が、前記抗体と共に単回投与形態として、または個別の投与形態として、前記患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、毒素、検出可能な部分、もしくは固相支持体に共役または共有結合される、請求項1に記載の抗体。
【請求項52】
生物学的サンプルまたは生体生物におけるそれらの細胞表面上に阻害型KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法であって、以下の工程:
a)前記生物学的サンプルまたは生体生物と請求項51に記載の抗体とを接触させる工程、ここで、前記抗体は検出可能な部分に共役または共有結合され;次いで
b)前記生物学的サンプルまたは生体生物において前記抗体の存在を検出する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項53】
サンプルから細胞表面上に阻害型KIRを有するNK細胞を精製する方法であって、以下の工程:
a)前記サンプルと請求項51に記載の抗体とを、細胞表面上に阻害型KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合することを可能にする条件下で、接触させる工程、ここで、前記抗体は固相支持体に共役または共有結合され;次いで
b)固相支持体に共役または共有結合した前記抗体から前記結合NK細胞を溶出させる工程、
を含んでなる、方法。
【請求項54】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する抗体を含んでなる組成物であって、ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体の少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、ここで、前記抗体はリポソームに組み入れられる、組成物。
【請求項55】
遺伝子治療用遺伝子の送達のための核酸分子;NK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸分子;またはNK細胞の標的化された死滅のための毒素もしくは薬物から選択されるさらなる物質が前記リポソームにさらに組み入れられる、請求項54に記載の組成物。
【請求項1】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体であって、前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞におけるNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である、抗体。
【請求項2】
NKVSF1ではない、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
KIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
80位にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項4に記載の抗体。
【請求項6】
モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体のフラグメントである、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体DF200またはそのフラグメントである、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
Fab、Fab’、Fab’−SH、F(ab’)2、Fv、二重特異性抗体、一本鎖抗体フラグメント、または多くの異なる抗体フラグメントを含んでなる多特異性抗体から選択される抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項6に記載の抗体。
【請求項10】
a)下記(b)に融合した、阻害型KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含んでなる抗原で免疫されている非ヒト哺乳動物宿主由来のB細胞と、
b)不死化細胞
を含んでなるハイブリドーマであって、
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合するモノクローナル抗体を産生し、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能である、ハイブリドーマ。
【請求項11】
モノクローナル抗体NKVSF1を産生しない、請求項10に記載のハイブリドーマ。
【請求項12】
前記抗体がKIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する、請求項10に記載のハイブリドーマ。
【請求項13】
80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する抗体を産生する、請求項12に記載のハイブリドーマ。
【請求項14】
ハイブリドーマDF200より産生されるモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生する、請求項12に記載のハイブリドーマ。
【請求項15】
DF200である、請求項14に記載のハイブリドーマ。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)非ヒト哺乳動物を阻害型KIRポリペプチドを含んでなる免疫原で免疫する工程;
b)前記免疫動物から抗体を調製する工程であって、ここで、前記抗体が前記KIRポリペプチドに結合し、
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物と交差反応する(b)の抗体を選択する工程、次いで
d)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(c)の抗体を選択する工程を含み、
ここで、工程(c)および(d)の順序は場合により逆にされる、方法。
【請求項17】
工程c)またはd)において選択される前記抗体がNKVSF1ではない、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)において調製される抗体がモノクローナル抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
免疫のために使用される阻害型KIRポリペプチドがKIR2DLポリペプチドであり、工程(c)において選択される抗体が少なくともKIR2DL1およびKIR2DL2/3と交差反応する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)において選択される前記抗体が、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(d)において選択される抗体がNK細胞障害性において少なくとも約50%の増強を生じる、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体または抗体フラグメントがモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)ライブラリーまたはレパートリーから、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物と交差反応するモノクローナル抗体もしくは抗体フラグメントを選択する工程、次いでがb)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR2DL受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能な(a)の抗体を選択する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項25】
工程b)において選択される前記抗体はNKVSF1ではない、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
工程(b)において選択される抗体が、80位にLys残基を有するHLA−c対立遺伝子分子のヒトKIR2DL1受容体への結合、および80位にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子のヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
工程(b)において選択される抗体がNK細胞障害性において少なくとも50%の増強を生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がモノクローナル抗体DF200と実質的に同じエピトープに結合する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
選択されるモノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)前記モノクローナル抗体の発現を生じる条件下で、請求項10〜15のいずれか一項に記載のハイブリドーマを培養する工程;次いで
b)前記ハイブリドーマから前記モノクローナル抗体を分離する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体のフラグメントを作製するさらなる工程を含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体を産生させるための方法であって、ここで、前記抗体は前記少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、以下の工程:
a)請求項10〜15のいずれか一項に記載のハイブリドーマから前記モノクローナル抗体をコードするDNAを単離する工程;
b)ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体もしくは抗体の免疫反応性フラグメントから選択される修飾または誘導体化された抗体をコードするように、場合により前記DNAを修飾する工程;
c)前記DNAまたは修飾DNAを発現ベクターに挿入する工程であって、ここで、前記発現ベクターが適切な条件下で増殖される宿主内に存在する場合、前記抗体もしくは抗体フラグメントが発現可能である工程;
d)宿主細胞を前記発現ベクターでトランスフェクトする工程であって、ここで、さもなくば前記宿主細胞が免疫グロブリンタンパク質を産生しない工程;
e)前記抗体または抗体フラグメントの発現を生じる条件下で、前記トランスフェクト宿主細胞を培養する工程;次いで
f)前記トランスフェクト宿主細胞より産生される抗体または抗体フラグメントを単離する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項33】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物に結合する抗体(ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体のうちの少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であって、前記抗体は、患者またはNK細胞を含んでなる生物学的サンプルにおいてNK細胞の細胞障害性を検出可能な程度に増強するのに有効な量で存在する);および薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を含んでなる薬学的組成物。
【請求項34】
免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、およびアポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤または補助化合物から選択される治療剤をさらに含んでなる、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記免疫調節剤が、IL−1α、IL−1β、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−15、IL−21、TGF−β、GM−CSF、M−CSF、G−CSF、TNF−α、TNF−β、LAF、TCGF、BCGF、TRF、BAF、BDG、MP、LIF、OSM、TMF、PDGF、IFN−α、IFN−β、またはIFN−γから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記化学療法剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、細胞障害性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキサート、カンプトテシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン(系薬剤)、他のビンカアルカロイド、およびそれらの誘導体またはプロドラックから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記ホルモン剤が、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミド、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール、メドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤、および他のプロゲスターゲンから選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項38】
前記補助化合物が、フェノチアジン系薬剤、置換ベンズアミド系薬剤、抗ヒスタミン系薬剤、ブチロフェノン系薬剤、副腎皮質ステロイド、ベンゾジアゼピン系薬剤、カンナビノイド系薬剤、ゾレドロン酸、パミドロン酸、エリスロポエチン、G−CSF、フィルグラスチム、レノグラスチム、ダルベポエチン、他の制吐剤、他のセロトニン拮抗薬、他のビスホスホネート系薬剤または他の造血成長因子から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項39】
前記抗アポトーシス剤が、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNAまたはbcr−abl、bcl−2、Bcl−x1、Mcl−1、Bak、A1、もしくはA20から選択される遺伝子の発現を阻害する小分子化学化合物である、請求項34に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗血管新生剤が、VEGFをコードする遺伝子、VEGF受容体をコードする遺伝子、VEGF、もしくはVEGF受容体に対する中和抗体、アンチセンスRNA、siRNA、RNAi、RNAアプタマーまたはリボザイム;あるいはVEGFに対する拮抗特性を有するVEGFの変異体から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項41】
阻害型KIR受容体に結合し、阻害する前記第二抗体が、少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する前記抗体により結合されるエピトープとは異なる阻害型KIR受容体のエピトープに結合する抗体であるか、またはその誘導体もしくはフラグメントである、請求項34に記載の組成物。
【請求項42】
NK細胞活性を、それを要する患者において増強する方法であって、前記患者に請求項33に記載の組成物を投与する工程を含んでなる、方法。
【請求項43】
前記患者が癌、別の増殖性障害、感染性疾患または免疫障害を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が扁平上皮癌、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、慢性または急性骨髄性白血病、前骨髄球性白血病、線維肉腫、横紋筋肉腫;黒色腫、精上皮腫、奇形癌種、神経芽細胞腫、神経膠腫、星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫;線維肉腫、横紋筋肉腫(rhabdomyoscaroma)、骨肉腫、黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌、奇形癌種、膀胱、乳、直腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺もしくは皮膚の他の癌腫、リンパ球系統の他の造血器腫瘍、骨髄系統の他の造血器腫瘍、間葉起源の他の腫瘍、中枢または末梢神経系の他の腫瘍、または間葉起源の他の腫瘍を患っている、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記患者がリンパ球系統の造血器腫瘍を患っている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記腫瘍が、小細胞および大脳様細胞型のT細胞性前リンパ球性白血病(T−PLL);T細胞型の大顆粒リンパ球白血病(LGL);セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/dT−NHL肝脾リンパ腫;多形性もしくは免疫芽球性サブタイプの末梢性/胸腺後段階T細胞リンパ腫;血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻部)T細胞リンパ腫;未分化(Ki1+)大細胞型リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球性白血病;またはリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が、過形成、線維症、血管新生、乾癬、アテローム硬化症、狭窄または血管形成術後の再狭窄、および血管における平滑筋増殖により特徴付けられる他の疾患から選択される増殖性障害を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記患者が、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、I型単純ヘルペス(HSV−1)、2型単純ヘルペス(HSV−2)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス(echinovirus)、アルボウイルス、ハンタウイルス、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルスまたはI型もしくは2型ヒト免疫不全ウイルス(HIV−1、HIV−2)から選択されるウイルスによって生じる感染性疾患を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項49】
前記患者が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、腸球菌(Enterococcl)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、G.バギナリス(G.vaginalis);ノカルディア(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);好熱性放線菌(Thermoactinomyces vulgaris);トレポネーマ(Treponerna);カンピロバクター(Camplyobacter)、緑膿菌(Raeruginosa);レジオネラ(Legionella);淋菌(N.gonorrhoeae);髄膜炎菌(N.meningitides);F.メニンゴゼプチクム(F.meningosepticum);F.オドラタム(F.odoraturn);ブルセラ(Brucella);百日咳菌(B.pertussis);気管支敗血症菌(B.bronchiseptica);大腸菌(E.coli);クレブシェラ(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter);S.マルセッセンス(S.marcescens);S.リケファシエンス(S.liquefaciens);エドワードシエラ(Edwardsiella);P.ミラビリス(P.mirabilis);P.ブルガリス(P.vulgaris);ストレプトバチルス(Streptobacillus);R.リケッチー(R.fickettsfi);C.シッタキ(C.psittaci);C.トラコマチス(C.trachornatis);結核菌(M.tuberculosis)、M.イントラセルラール(M.intracellulare)、M.フォーチュイタム(M.folluiturn)、らい菌(M.laprae)、M.アビウム(M.avium)、ウシ型結核菌(M.bovis)、アフリカ型結核菌(M.africanum)、M.カンサシイ(M.kansasii)、M.イントラセルラール(M.intracellulare);M.レプレヌリアム(M.lepraernurium);ノカルディア(Nocardia)、他の連鎖球菌(Streptococcus)、他のバチルス(Bacillus)、他のガードネレラ(Gardnerella)、他のシュードモナス(Pseudomonas)、他のナイセリア(Neisseria)、他のフラボバクテリウム(Flavobacterium)、他のボルデテラ(Bordetella)、他のエシェリキア(Escherichia)、他のセラチア(Serratia)、他のプロテウス(Proteus)、他のリケッチア科(Rickettsiaceae)、他のクラミジア(Chlamydia)、他のマイコバクテリウム(Mycobacterium)、リ−シュマニア(leishmania)、コクジジオア(kokzidioa)、トリパノソーマ(trypanosome)、クラミジア(Chlamydia)もしくはリケッチア属(rickettsia)から選択される細菌、原生動物または寄生体により生じる感染性疾患を患っている、請求項42に記載の方法。
【請求項50】
免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、阻害型KIR受容体に結合し、阻害する第二抗体、抗感染剤、ターゲット剤もしくは補助化合物から選択される適切なさらなる治療剤を前記患者に投与するさらなる工程を含んでなり、ここで、前記さらなる治療剤が、前記抗体と共に単回投与形態として、または個別の投与形態として、前記患者に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、毒素、検出可能な部分、もしくは固相支持体に共役または共有結合される、請求項1に記載の抗体。
【請求項52】
生物学的サンプルまたは生体生物におけるそれらの細胞表面上に阻害型KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法であって、以下の工程:
a)前記生物学的サンプルまたは生体生物と請求項51に記載の抗体とを接触させる工程、ここで、前記抗体は検出可能な部分に共役または共有結合され;次いで
b)前記生物学的サンプルまたは生体生物において前記抗体の存在を検出する工程、
を含んでなる、方法。
【請求項53】
サンプルから細胞表面上に阻害型KIRを有するNK細胞を精製する方法であって、以下の工程:
a)前記サンプルと請求項51に記載の抗体とを、細胞表面上に阻害型KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合することを可能にする条件下で、接触させる工程、ここで、前記抗体は固相支持体に共役または共有結合され;次いで
b)固相支持体に共役または共有結合した前記抗体から前記結合NK細胞を溶出させる工程、
を含んでなる、方法。
【請求項54】
少なくとも2つの異なるヒト阻害型KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基に結合する抗体を含んでなる組成物であって、ここで、前記抗体は前記2つの異なるヒト阻害型KIR受容体の少なくとも1つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞障害性のKIR仲介阻害を中和することが可能であり、ここで、前記抗体はリポソームに組み入れられる、組成物。
【請求項55】
遺伝子治療用遺伝子の送達のための核酸分子;NK細胞において遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAiもしくはsiRNAの送達のための核酸分子;またはNK細胞の標的化された死滅のための毒素もしくは薬物から選択されるさらなる物質が前記リポソームにさらに組み入れられる、請求項54に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−500947(P2008−500947A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516606(P2006−516606)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002464
【国際公開番号】WO2005/003172
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506000184)イナート・ファルマ (15)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【出願人】(502174302)ウニヴェルシタ ディ ジェノヴァ (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DI GENOVA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002464
【国際公開番号】WO2005/003172
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506000184)イナート・ファルマ (15)
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA
【出願人】(502174302)ウニヴェルシタ ディ ジェノヴァ (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITA DI GENOVA
【Fターム(参考)】
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