説明

NK3アンタゴニストとしてのイソキノリン誘導体

一般式Ik’’のイソキノリン誘導体が提供される。該化合物はNK3アンタゴニストであり、例えば精神病および統合失調症の治療に有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療に、特に精神病の治療に有用な化合物、前記化合物を含む組成物、および前記化合物の投与を含む疾患を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在承認されている抗精神病薬は、脳内におけるドパミンシグナルを減少させるという共通の特徴を共有する。これは、ドパミンD2受容体アンタゴニスト作用または部分アゴニスト作用のいずれかを通して達成される。第一世代の抗精神病薬(「定型」とも称される)はしばしば錐体外路系副作用に結びつき、そのためにこれらの薬剤の使用は減少してきた。第二世代又は「非定型」抗精神薬は、D2受容体親和性に加えて、セロトニン受容体2A(5−HT2A)にも親和性を有する。さらに一部の非定型抗精神薬は、5−HT2c、5−HT又は5−HT受容体に対しても親和性を有する。非定型抗精神薬は、錐体外路系副作用を引き起こすことはより少ないが、体重増加とQT作用がなおも妨げとなっている。非定型抗精神薬の例は、クロザピン、オランザピン及びリスペリドンである。
【0003】
より最近になって、ニューロキニン受容体はCNS疾患のための標的として示唆されてきた(非特許文献1)。ニューロキニン(またはタキキニン)はニューロペプチドの一員であり、サブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)およびニューロキニンB(NKB)を含む。これらの物質の生理学的効果は、主に、3つのニューロキニン受容体NK1、NK2およびNK3への結合およびこれらの活性化を通してもたらされる。いくらかの交差反応性がおそらく存在するが、SPは最も高い親和性を有し、NK1の内因性リガンドであると考えられており、同様に、NKAはNK2の、NKBはNK3の内因性リガンドであると考えられている。
【0004】
NK3は、前頭、頭頂及び帯状皮質などの皮質領域;基底、中心及び外側核などの扁桃体の核;海馬;及び腹側被蓋野、黒質緻密部及び背側縫線核などの中脳構造を含む領域において中枢で主として発現される(非特許文献2)。NK3受容体はドパミン作動性ニューロン上で発現され、非特許文献2は、NK3アンタゴニストの抗精神病作用が、特に5−HT2A受容体でのセロトニン緊張の低下と結合した、特にD2受容体におけるドパミン緊張の阻害によって媒介されることを示唆している。
【0005】
2つの構造的に異なるNK3アンタゴニスト、すなわち、タルネタントおよびオサネタントが、抗精神病効果、特に抗統合失調症効果に関して臨床的に試験されてきた。
【0006】
【化1】

【0007】
オサネタントは、臨床試験において、特に精神病の陽性症状、すなわち妄想、幻覚およびパラノイアにおいて、プラセボより優れていることが証明された(非特許文献3)。同様に、タルネタントは、臨床試験において、統合失調症患者の認知行動を改善することが示されている(非特許文献4)。それでも、両化合物では、乏しい溶解性を含む乏しい薬物動態的および薬力学的特性、乏しいバイオアベイラビリティー、比較的高いクリアランス、および乏しい血液脳関門通過性が妨げになっている(非特許文献5)。これらの結果は、NK3受容体は、例えば精神病の治療のための見込みあるターゲットであるという見解を支持するものであるが、しかしながら、適切な薬物動態的および薬力学的特性を有する化合物を同定する必要性を強調するものである。
【0008】
特許文献1は、NK3アンタゴニストとしてのタルネタントを含む一連のキノリン誘導体を開示している。
【0009】
より最近では、特許文献2が以下のコア構造:
【0010】
【化2】

【0011】
を有する化合物を開示しており、この化合物はNK3アンタゴニストであると言われている;そして特許文献3および特許文献4は、さらなるキノリンカルボキサミド誘導体を開示しており、該誘導体はNK3アンタゴニストであると言われている。
【0012】
特許文献5は以下の式
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、RはN含有複素環、すなわち、ピラゾリル、トリアゾリルおよびテトラゾリルを表す]
で表される化合物を開示している。
特許文献6は以下の式
【0015】
【化4】

【0016】
で表されるイソキノリン誘導体がNK3アンタゴニストであることを開示している。
【0017】
最後に、非特許文献6には、以下のコア構造
【0018】
【化5】

【0019】
を有する化合物の合成に関する研究が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第95/32948号
【特許文献2】国際公開第2006/130080号
【特許文献3】国際公開第2006/050991号
【特許文献4】国際公開第2006/050992号
【特許文献5】国際公開第2005/014575号
【特許文献6】国際公開第2008/131779号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Albert, Expert Opin. Ther. Patents,14,1421−1433,2004
【非特許文献2】Spooren et al,Nature Reviews, 4, 967−975, 2005
【非特許文献3】Am.J.Psychiatry,161,2004,975−984
【非特許文献4】Curr.Opion.Invest.Drug,6,717−721,2005
【非特許文献5】Nature re views,4,967−975,2005
【非特許文献6】Ind.J.Chem. Section B, 18B, 304−306,1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明者等は驚くべきことに、あるイソキノリン誘導体が強力なNK3アンタゴニストであり、これは、そのようなものとして例えば精神病の治療に使用できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0023】
従って、1つの実施態様において、本発明は式Ik’’
【0024】
【化6】

【0025】
[式中、
はエチル、シクロプロピルまたはシクロブチルを表し;
12 はフルオロまたはクロロを表し;そして
13、 R14およびR15はそれぞれ個々に、水素、フルオロまたはクロロを表し、R13、 R14 およびR15 のうちの2つは水素を表す]
で表される化合物およびその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0026】
1つの実施態様において、本発明は、治療に使用するための式Ik’’の化合物およびその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0027】
1つの実施態様において、本発明は、式Ik’’の化合物およびその薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物に関する。
1つの実施態様において、本発明は、治療的有効量の式Ik’’の化合物およびその薬学的に許容可能な塩をそれを必要とする患者に投与することを含む、治療方法に関する。
1つの実施態様において、本発明は、薬剤の製造における、式Ik’’の化合物およびその薬学的に許容可能な塩の使用に関する。
1つの実施態様において、本発明は、疾患の治療において使用するための、式Ik’’の化合物およびその薬学的に許容可能な塩に関する。
【0028】
<定義>
本願において、薬学的に許容可能な塩には、薬学的に許容可能な酸付加塩、薬学的に許容可能な金属塩、アンモニウム塩およびアルキルアンモニウム塩が含まれる。酸付加塩には無機酸の塩ならびに有機酸の塩が含まれる。
【0029】
適当な無機酸の例には塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸などが含まれる。
【0030】
適当な有機酸の例にはギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、 桂皮酸、クエン酸、フマル酸、 グリコール酸、イタコン酸、乳酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、 リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、テオフィリン酢酸、ならびに8−ハロテオフィリン、例えば8−ブロモテオフィリンなどが含まれる。薬学的に許容可能な無機酸または有機酸付加塩の更なる例には、参照することにより本明細書に組み込まれる「J. Pharm. Sci. 1977,66,2 」に記載されている薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0031】
金属塩の例にはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などが含まれる。
【0032】
アンモニウム塩およびアルキルアンモニウム塩の例には、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ヒドロキシエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、n−ブチルアンモニウム塩、sec−ブチルアンモニウム塩、tert−ブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などが含まれる。
【0033】
本明細書中で使用する場合、化合物の「治療的有効量」は、前記化合物の投与を含む治療的介入において、所与の疾患およびその合併症の臨床症状を治癒、軽減または部分的に進行抑止するのに十分な量を意味する。これを達成するのに妥当な量を、「治療的有効量」と定義する。各目的にとっての有効量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象の体重および全身状態によって決まることになる。適切な投薬量の決定は、値のマトリックスを構成し、マトリックス中のさまざまな点を試験することにより日常的な実験を用いて達成でき、これらは全て、訓練を受けた医師の通常の技術の範囲内であることは理解されよう。
【0034】
本明細書中で使用する場合、用語「治療」および「治療する(こと)」は、疾患または障害などの状態に対抗する目的での患者の管理および看護を意味する。この用語は、症状もしくは合併症を軽減するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を軽減もしくは緩和するため、および/または、疾患、障害もしくは状態を治癒または排除するため、ならびに状態を防止するための活性化合物の投与など、患者が罹患している所与の状態の治療の全範囲を包含することを意図しており、この場合の防止は、疾患、状態または障害に対抗する目的での患者の管理および看護として、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を包含すると理解されたい。但し、予防的(防止的)および治療的(治癒的)な治療は、本発明の2つの別々の態様である。治療対象となる患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0035】
<本発明の詳細な説明>
1つの実施態様において、本発明の化合物は式I’’
【0036】
【化7】

【0037】
[式中、
はエチル、シクロプロピルまたはシクロブチルを表し;
12はフルオロまたはクロロを表し;そして
13、 R14 およびR15 はそれぞれ個々に、水素、フルオロまたはクロロであり、R13、 R14 およびR15 のうちの2つは水素を表す]、
およびその薬学的に許容可能な塩によって定義される。特に、前記化合物は本質的に、式I’’’
【0038】
【化8】

【0039】
[式中、
はエチルまたはシクロプロピルを表し;
12はフルオロまたはクロロを表し;そして
13、 R14 およびR15 はそれぞれ個々に、水素、フルオロまたはクロロを表し、R13、 R14 およびR15 のうちの2つは水素を表す]
で表されるようなSエナンチオマーである。
【0040】
1つの実施態様において、本発明の化合物は、以下のリスト、およびその薬学的に許容可能な塩から選択される:
1as 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(4-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1at 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1au 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(2-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1av 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(3-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1aw 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(3-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1ax 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(4-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1ay 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(3-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1ba 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(4-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bb 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(2-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1bd 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(2-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1be 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(2-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bh 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bi 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(4-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bl 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(R)-シクロプロピル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bo 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[シクロブチル-(2-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
7e 8-フルオロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
7h 8-フルオロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド。
【0041】
さらに、本発明の化合物は、例えば水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶剤に溶媒和された状態のみならず、非溶媒和の状態でも存在しうる。概して、本発明の目的においては溶媒和型は非溶媒型と同等であると考えられる。
【0042】
本発明の化合物は1つまたは2つ以上の不斉中心を有することができ、分離された、純粋な、もしくは部分的に精製された光学異性体またはラセミ混合物を含むその任意の混合物(すなわち、立体異性体の混合物)のような光学異性体(エナンチオマーまたはジアステレオマー)はどれも本発明の範囲内に含まれることが意図される。特に、カルボキサミドのNに結合する炭素は、2つの光学異性体(R体およびS体)を生じさせる光学中心である。1つの実施態様において、本発明の化合物はS形態を有する。
【0043】
ある特定の実施態様において、本発明の化合物はカルボキサミドのNに結合する炭素の周辺において以下の絶対配置を有する。
【0044】
【化9】

【0045】
これに関して、エナンチオマー形態を特定するとき、化合物はエナンチオマー過剰、例えば本質的に純粋な形態であることが理解される。従って、本発明の1つの実施態様は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも96%、好ましくは少なくとも98%のエナンチオマー過剰率を有する本発明の化合物に関する。
【0046】
ラセミ体は、公知の方法によって、例えば光学活性酸によるそのジアステレオ異性体塩の分離、及び塩基での処理による光学活性アミン化合物の遊離によって光学対掌体に分割することができる。ラセミ化合物を光学対掌体に分割するためのもう1つの方法は、光学活性マトリックスのクロマトグラフィーに基づく。本発明の化合物はまた、ジアステレオ異性体誘導体の形成によっても分割し得る。当業者に公知の、光学異性体の分割のさらなる方法も使用し得る。そのような方法は、「J. Jaques, A. Collet and S. Wilen in“Enantiomers, Racemates, and Resolutions”, John Wiley and Sons,New York (1981)」によって論じられているものを含む。光学活性化合物はまた、光学活性な出発物質から製造することもできる。
【0047】
さらに、回転が制限される結合を有する分子は幾何異性体を形成し得る。これらもまた、本発明の範囲内に包含されることが意図されている。
【0048】
NK3受容体アンタゴニストは、上記で論じた精神病及び統合失調症に加えて様々な疾患に関係づけられてきた。「Langlois et al in J.Pharm.Exp.Ther., 299, 712−717, 2001」は、NK3アンタゴニストがCNS疾患において一般に適用可能であり、特に不安及びうつ病において適用できると結論付けている。「Yip et al in Br.J.Phar.,122,715−722,1997」はさらに、NK3アンタゴニストを皮質プロセシング、学習及び記憶、神経内分泌及び行動の調節などの様々な脳機能に関係付けている。付加的な試験により、NKB及びNK3受容体が疼痛に関与すること、及びNK3アンタゴニストが抗侵害受容及び鎮痛作用を有することが示された(Fioramonti, Neurogastroenterol.Motil.,15, 363−369, 2003)。「Mazelin et al in Life Sci., 63, 293−304, 1998 」は、NK3アンタゴニストが腸炎症に影響を及ぼすことを示し、そのようなアンタゴニストは過敏性腸症候群(IBS)の治療において使用し得ると結論付けている。さらに、NK3アンタゴニストは、インビボモデルで、喘息、気道過敏性、咳及び気管支収縮などの気道関連疾患の治療において有用であることが明らかにされた(Daoui, Am.J.Respir.Crit.Care Med., 158, 42−48, 1998)。「Maubach et al in Neurosci., 83, 1047−1062, 1998」は、NKB及びNK3アゴニスト、センクチドがてんかん型放電の頻度と期間を上昇させることを示し、従ってNK3アンタゴニストが鎮痙薬としての潜在能を有すると推論している。最後に、「Kemel et al in J.Neurosci., 22,1929−1936, 2002」は、パーキンソン病の治療におけるNK3アンタゴニストの使用を示唆している。
【0049】
従って、臨床、前臨床、インビボおよびインビトロ試験は、NK3受容体アンタゴニストが精神病, 統合失調症,うつ病、不安、認知機能障害、肥満、アルツハイマー病、パーキンソン病、疼痛、痙攣、咳、喘息、気道過敏性、微小血管過敏症(microvascular hypersensitivity)、気管支収縮、腸炎症および炎症性腸症候群を含む種々の障害の治療または予防のために適切であることを支持するものである。
【0050】
統合失調症はサブグループに分類される。妄想型は、妄想及び幻覚、思考障害の不在、解体した行動、及び情動の平板化によって特徴づけられる。解体型は、ICDでは「破瓜型統合失調症」とも称され、思考障害と平坦な情動が同時に存在する。緊張型は、顕著な精神運動障害が明らかであり、症状は緊張病性昏迷及びろう屈症を含み得る。鑑別不能型は、精神病症状が存在するが、妄想型、解体型又は緊張型についての診断基準に合致しない。統合失調症の症状は、通常3つの広いカテゴリー、すなわち陽性、陰性及び認知症状として現れる。陽性症状は、幻覚及び妄想などの、通常の経験の「過剰」を示すものである。陰性症状は、患者が、快感消失及び社会的相互作用の欠如などの、通常の経験の欠如を患っているものである。認知症状は、持続的注意力の欠如及び意思決定の欠如などの、統合失調症における認知障害に関連する。現在の抗精神病薬は、陽性症状を治療する上ではかなりの成功を収めているが、陰性及び認知症状に関してははるかに不良である。それに対し、NK3アンタゴニストは統合失調症患者における陽性症状と陰性症状の両方を改善することが臨床で示され(Am.J.Psychiatry,161,975−984,204)、上記の考察によれば、認知症状にも効果を及ぼすことが期待される。
認知機能障害には、認知機能または認知領域、例えば、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決、例えば実行機能、処理スピードおよび/または社会的認知の低下が含まれる。特に、認知機能障害は、注意欠如、解体した思考、思考緩慢、理解困難、集中力欠如、問題解決障害、記憶力不足、思考表現困難、および/または、思考、感情および行動の統合困難、または無関係な思考の消去困難を指し得る。
【0051】
1つの実施態様において、本発明は、治療において使用するための本発明化合物に関する。
【0052】
1つの実施態様において、本発明は、治療的有効量の本発明化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む、精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症;気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症;および炎症性腸症候群から選択される疾患を治療する方法に関する。
【0053】
1つの実施態様において、本発明は、統合失調症の治療方法であって、治療的有効量の本発明化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む治療方法に関する。特に前記治療には、統合失調症の陽性、陰性および/または認知症状の治療が含まれる。
1つの実施態様において、本発明は、認知機能障害の治療方法であって、治療的有効量の本発明化合物をそれを必要とする患者に投与することを含む治療方法に関する。特に前記認知機能障害は、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決、例えば実行機能、処理スピードおよび/または社会的認知の低下として現れる。
【0054】
定型及び非定型抗精神病薬、特にD2アンタゴニストの抗精神病作用は、シナプス後D2受容体の阻害を通して発揮される。シナプス前D2自己受容体は、しかし、事実上抗精神病作用を妨げる、ドパミンニューロンの発火率上昇を生じさせるこれらの化合物の投与によっても影響される。発火率上昇は、典型的には定型又は非定型抗精神病薬による約3週間の慢性治療後に、シナプス前自己受容体の作用が遮断される(脱分極性遮断)まで継続する。このモデルは、D2アンタゴニスト治療が開始されたときに通常見られる、3週間までの臨床作用の遅延を説明する。NK3アンタゴニストは、D2アンタゴニストによってもたらされる、シナプス前D2自己受容体によって媒介されるドパミンニューロンの発火率の上昇を抑制すると思われ、NK3アンタゴニストとD2アンタゴニストの併用投与は臨床作用のより迅速な発現を生じさせると予想される。さらに、D2アンタゴニストはプロラクチンレベルを上昇させることが公知であり、これは骨粗しょう症などの重篤な副作用を生じさせ得る。NK3アゴニストはプロラクチンの上昇を引き起こすことが公知であり、そのことから、NK3アンタゴニストは高いプロラクチンレベルを低下させる、すなわちプロラクチンレベルを正常化すると推測され得る。NK3アンタゴニストとD2アンタゴニストの併用は、それ故、D2アンタゴニスト投与に関連する安全性の側面のいくつかに対処し得る。同様に、NK3アンタゴニストは、標的であるドパミンD2受容体、ドパミンD3受容体、ドパミンD4受容体、ホスホジエステラーゼPDE10、セロトニン5−HT1A受容体、セロトニン5−HT2A受容体、セロトニン5−HT受容体、アドレナリンα2受容体、カンナビノイド1型受容体、ヒスタミンH3受容体、シクロオキシゲナーゼ、ナトリウムチャネル又はグリシントランスポーターGlyT1のうちの1つまたは2つ以上のアンタゴニスト/インバースアゴニスト/負の調節因子/部分アゴニストと共に;又は標的であるセロトニン5−HT2C受容体、KCNQチャネル、NMDA受容体、AMPA受容体、ニコチンα7受容体、ムスカリンM1受容体、ムスカリンM4受容体、代謝型グルタミン酸受容体mGluR2、代謝型グルタミン酸受容体mGluR5、ドパミンD1受容体又はドパミンD5受容体のうちの1つまたは2つ以上のアゴニスト/正の調節因子/部分アゴニストと共に投与され得る。
【0055】
本発明の化合物とD2アンタゴニスト、D2部分アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニスト又はKCNQ4アンタゴニスト等の他の抗精神病化合物のそのような併用投与は、連続的又は同時であり得る。D2アンタゴニスト又は部分アゴニストの例には、ハロペリドール、クロルプロマジン、スルピリド、リスペリドン、ジプラシドン、オランザピン、クエチアピン及びクロザピンが含まれる。
【0056】
1つの実施態様において、本発明の化合物は1日当たり約0.001mg/kg体重〜約100mg/kg体重の量で投与される。特に1日あたりの投薬量は、1日当たり0.01mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲内であることができる。正確な投薬量は、投与の頻度および様式、治療される対象の性別、年齢、体重および全身状態、治療される状態の性質および重症度、ならびに、治療対象となる任意の随伴疾患、所望の治療効果、ならびに当業者には明白な他の要素によって決まることになる。
【0057】
成人用の典型的な経口投薬量は、本発明の化合物1〜1000mg/日(1〜500mg/日など)の範囲内である。
【0058】
1つの実施態様において、本発明は、精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症;気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症;および 炎症性腸症候群から選択される疾患の治療用薬剤の製造における、本発明化合物の使用に関する。
【0059】
1つの実施態様において、本発明は、統合失調症の治療用薬剤の製造における、本発明化合物の使用に関する。特に前記治療には、統合失調症の陽性、陰性および/または認知症状の治療が含まれる。
【0060】
1つの実施態様において、本発明は、認知機能障害の治療用薬剤の製造における、本発明化合物の使用に関する。特に前記認知機能障害は、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決、例えば実行機能、処理スピードおよび/または社会的認知の低下として現れる。
【0061】
1つの実施態様において、本発明は、精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症;気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症;および炎症性腸症候群から選択される疾患の治療において使用するための本発明化合物に関する。
【0062】
1つの実施態様において、本発明は、統合失調症の治療に使用するための本発明化合物に関する。特に前記治療には、統合失調症の陽性、陰性および/または認知症状の治療が含まれる。
【0063】
1つの実施態様において、本発明は、認知機能障害の治療に使用するための本発明化合物に関する。特に前記認知機能障害は、作業記憶、注意および警戒、言語の学習および記憶、視覚的な学習および記憶、推理および問題解決、例えば実行機能、処理スピードおよび/または社会的認知の低下として現れる。
【0064】
本発明の化合物は、純粋な化合物として単独で、または薬学的に許容可能な担体もしくは賦形剤と組み合わせて、単回投与または複数回投与のいずれかで投与できる。本発明による医薬組成物は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995」に開示されているものなど従来の手法に従い、薬学的に許容可能な担体または希釈剤、ならびに、他の任意の公知の佐剤および賦形剤を用いて製剤化できる。
【0065】
医薬組成物は具体的には、経口、経直腸、経鼻、経肺、局所(バッカルおよび舌下を含む)、経皮、槽内(intracisternal)、腹腔内、経膣および非経口(皮下、筋肉内、くも膜下腔内、静脈内および皮内を含む)経路など適当な任意の経路による投与用に製剤化できるが、経口経路が好ましい。好ましい経路が、治療されることになる対象の全身状態および年齢、治療されることになる状態の性質および選択された活性成分によって決まることになることは理解されよう。
【0066】
経口投与用の医薬組成物には、カプセル剤、錠剤、糖剤、丸剤、ロゼンジ、散剤および顆粒剤などの固形剤形が含まれる。適切な場合には、こうした医薬組成物は、コーティングを施して調製できる。
【0067】
経口投与用の液体剤形には、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。
【0068】
非経口投与用の医薬組成物には、水性および非水性の滅菌済み注射用液剤、分散剤、懸濁剤または乳剤、ならびに、使用に先立ち滅菌済みの注射用の液剤または分散剤に再構成される滅菌済み散剤が含まれる。
【0069】
他の適当な投与形態には、坐剤、噴霧剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤、皮膚パッチ、インプラントなどが含まれる。
【0070】
好都合には、本発明の化合物は、約0.1〜500mg(10mg、50mg、100mg、150mg、200mgまたは250mgなど)の本発明化合物の量の前記化合物を含有する単位投薬形態の形で投与する。
【0071】
静脈内、くも膜下腔内、筋肉内および類似の投与などの非経口経路の場合、典型的には、用量は、経口投与に用いる用量のほぼ約半分である。
【0072】
非経口投与の場合、滅菌済みの水溶液、水性プロピレングリコール、水性ビタミンEまたはゴマ油もしくはピーナッツ油中の本発明の化合物の溶液を使用することができる。そのような水溶液は、必要に応じ適切に緩衝すべきであり、液体希釈剤を十分な生理食塩水またはグルコースでまず等張性にすべきである。水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の投与に特に適している。使用される滅菌済みの水性媒体は全て、当業者に公知の標準的な手法により容易に入手できる。
【0073】
適当な医薬担体には、不活性な固体希釈剤または増量剤、滅菌済みの水溶液および種々の有機溶剤が含まれる。固形担体の例は、乳糖、白土、ショ糖、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびセルロースの低級アルキルエーテルである。液体担体の例は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンおよび水である。本発明の化合物と薬学的に許容可能な担体とを組み合わせることにより形成される医薬組成物は、そうすることで、開示する投与経路に適したさまざまな剤形で容易に投与される。
【0074】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含有し、適当な賦形剤を含んでいてもよいカプセル剤または錠剤などの個別の単位として提供されてもよい。さらに、経口摂取できる製剤は、散剤もしくは顆粒剤、水性もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁剤、または、水中油型もしくは油中水型の液体乳剤の形態であってもよい。
固形担体を経口投与用に使用する場合、調合品は、例えば、硬ゼラチンカプセルに入れた錠剤、散剤もしくは小丸剤の形態、またはトローチ剤もしくはロゼンジの形態であってよい。固形担体の量は変化させることができるが、普通は約25mg〜約1gであろう。
液体担体を使用する場合、調合品は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル、または水性もしくは非水性液体の懸濁剤または液剤など滅菌済みの注射用液剤の形態であってよい。
【0075】
錠剤は、活性成分を通常の佐剤および/または希釈剤と混合し、次いでこの混合物を慣用の打錠機中で圧縮することにより調製できる。佐剤または希釈剤の例には、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチン、乳糖、ゴムなどが含まれる。着色料、香味料、保存料などといった上記目的のために通常使用される他の任意の佐剤または添加剤を使用してもよいが、それらが活性成分と適合することが条件である。
【0076】
1つの実施態様において、本発明は、第二の抗精神病薬と一緒に本発明化合物を含む医薬組成物に関する。1つの実施態様において、前記第二の抗精神病薬は、標的であるD2受容体、ドパミンD3受容体、ドパミンD4受容体、ホスホジエステラーゼPDE10、セロトニン5−HT1A受容体、セロトニン5−HT2A受容体、セロトニン5−HT受容体、アドレナリンα2受容体、カンナビノイド1型受容体、ヒスタミンH3受容体、シクロオキシゲナーゼ、ナトリウムチャネル、またはグリシントランスポーターGlyT1のアンタゴニスト/インバースアゴニスト/負の調節因子/部分アゴニストから;あるいは、標的であるセロトニン5−HT2C受容体、KCNQチャネル、NMDA受容体、AMPA受容体、ニコチンα−7受容体、ムスカリンM1受容体、ムスカリンM4受容体、代謝型グルタミン酸受容体mGluR2、代謝型グルタミン酸受容体mGluR5、ドパミンD1受容体、またはドパミンD5受容体のアゴニスト/正の調節因子/部分アゴニストから選択される。1つの実施態様において、前記第二の抗精神病薬は、定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、D2アンタゴニスト、部分D2アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニスト、および特に非定型抗精神病薬、D2アンタゴニスト、部分D2アゴニストから選択される。このような抗精神病薬の特定の例には、ハロペリドール、クロルプロマジン、スルピリド、リスペリドン、ジプラシドン、オランザピン、クエチアピンおよびクロザピンが含まれる。
【0077】
1つの実施態様において、本発明は、本発明化合物を含む容器と抗精神病薬を含む別個の容器とを含む医薬用キットに関する。定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬、D2アンタゴニスト、部分D2アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニスト、および特に非定型抗精神病薬、D2アンタゴニスト、部分D2アゴニスト。このような抗精神病薬の特定の例には、ハロペリドール、クロルプロマジン、スルピリド、リスペリドン、ジプラシドン、オランザピン、クエチアピンおよびクロザピンが含まれる。
【0078】
刊行物、特許出願および特許を含め、本明細書中で引用する全ての参考文献は、参照によりその全体が、また、別々に記載された、本明細書中の別の箇所で成される特定の文書の組込みの有無にかかわらず、各参考文献が参照により組み込まれると個別かつ具体的に示されその全体が本明細書中に記載されている場合と同程度に(法で認められる最大程度に)、本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書中で他の形で示されるか、または文脈により明らかに矛盾することがない限り、本発明を説明する文脈における用語「a」および「an」および「the」および同様の指示語の使用は、単数および複数の両方に及ぶと解釈されたい。例えば、「化合物(the compound)」という語句は、特に指示がない限り、本発明の種々の「化合物」または特定の記載された態様を指すと理解されたい。
【0080】
特に指示がない限り、本明細書中に記載した厳密な値は全て、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子または測定に関して記載される例示的な厳密な値は全て、適切な場合には「約」により修飾して、対応する近似測定値も示すとみなすことができる)。
本明細書中で、1つまたは複数の要素に関し、「を含む」、「を有する」、「を包含する」または「を含有する」などの用語を用いる一切の態様または本発明の態様の説明は、特に明記するか、または文脈により明らかに矛盾しない限り、当該の特定の1つまたは複数の要素「から成る」、「から本質的に成る」または「を実質的に含む」同様の態様または本発明の態様を支持することを意図している(例えば、特定の要素を含むものとして本明細書中に記載の組成物は、特に明記するか、または文脈により明らかに矛盾しない限り、当該要素から成る組成物についても記載しているものとして理解されるべきである)。
【0081】
<合成経路>
本発明における化合物は、国際公開第2008/131779号に記載されるように製造することができる。便宜のため、例示の化合物名の前に太字で示した番号は、国際公開第2008/131779号における対応の実施例番号を参照している。
【実施例】
【0082】
実施例1 NK3受容体の効果及び効力アッセイ
ヒトNK3受容体を安定に発現するBHK細胞を、アッセイの当日に95〜100%の集密度を目指して、黒壁で透明な底面の96穴プレート(Costar)において培地100μlに播種した。FLIPRカルシウム4アッセイキット(Molecular Devices)に従ってアッセイを実施した。アッセイの当日に、培地を除去し、細胞をHBSS緩衝液(20mM Hepesを含むハンクスBSS緩衝液、pH 7.4)で1回洗浄した後、2.5mMプロベネシドを含むHBSS緩衝液に溶解したカルシウムアッセイ試薬の溶液100μlを細胞に添加した。プレートを34℃、10% COで60分間インキュベートした後、蛍光の検査のためにFLIPRにおいて使用した。
【0083】
1つの代表プレートを、NKBのEC50及びEC85を調べるため、ウェルに最初にHBSS緩衝液を添加し、15分後に様々な濃度のNKBを添加するという設定で、NKBに関する用量−反応曲線で検討した。NKBのために使用したすべての化合物プレートは、1%BSA溶液で前被覆し、その後HOで3回洗浄した。NKBを、0.1%BSAを含むHBSS緩衝液に希釈した。
【0084】
化合物の効果と効力の評価のため、試験の前にこれらをHBSS緩衝液に希釈した。アゴニスト活性の試験のために、希釈した化合物溶液25μlを添加し、プレートをFLIPRにおいて5分間分析した。アンタゴニスト活性の試験のために、プレートをさらに45分間インキュベートした後、上述したようにEC85濃度のNKB(約2nM)25μlを添加した。その後プレートを5分間分析した後、アッセイを終了した。各々のリガンド添加後のバックグラウンドと比較した蛍光の最大増加を測定した。S字形変数勾配曲線適合を用いてIC50値を算定し、NKBについてのEC85及びEC50を上述したように決定する等式(cIC50=IC50/(1+(EC85/EC50)))を用いてcIC50値を決定した。
【0085】
NK3受容体の効果及び効力アッセイにおいて特徴づけた本発明のすべてのイソキノリノンは、関連用量で認められる有意のアゴニスト活性を持たないアンタゴニストであった。本発明化合物は慨して500nM未満のKi値を有する。多くの化合物は実際に100nMを大きく下回るKi値を有する。表は、本発明の化合物に関して得られた親和性データ及び効力データを示す。
【0086】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ik’’
【化1】

[式中、
はエチル、シクロプロピルまたはシクロブチルを表し;
12はフルオロまたはクロロを表し;そして
13、 R14 およびR15 はそれぞれ個々に、水素、フルオロまたはクロロを表し、R13、 R14 およびR15 のうちの2つは水素を表す]
で表される化合物およびその薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
前記化合物が本質的に式Ik’’’
【化2】

[式中、
はエチルまたはシクロプロピルを表し;
12はフルオロまたはクロロを表し;そして
13、 R14 およびR15 はそれぞれ個々に、水素、フルオロまたはクロロを表し、R13、 R14 およびR15 のうちの2つは水素を表す]
で表されるSエナンチオマー、およびその薬学的に許容可能な塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
以下:
1as 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(4-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1at 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(4-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1au 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(2-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1av 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(3-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1aw 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(3-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1ax 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(4-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1ay 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(3-フルオロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1ba 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(4-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bb 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-1-(2-クロロ-フェニル)-プロピル]-アミド
1bd 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-(2-クロロ-フェニル)-シクロプロピル-メチル]-アミド
1be 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(2-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bh 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bi 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(4-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bl 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(R)-シクロプロピル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
1bo 8-クロロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[シクロブチル-(2-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
7e 8-フルオロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロプロピル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド
7h 8-フルオロ-3-メチル-1-オキソ-2-フェニル-1,2-ジヒドロ-イソキノリン-4-カルボン酸[(S)-シクロブチル-(3-フルオロ-フェニル)-メチル]-アミド、
およびこれらの化合物のうちのいずれかの薬学的に許容可能な塩、
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
治療において使用するための、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物の治療的有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症(microvascular hypersensitivity);気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症; および炎症性腸症候群から選択される疾患の治療方法。
【請求項6】
前記疾患が統合失調症である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記治療が統合失調症の陽性、陰性および/または認知症状の治療を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
D2アンタゴニスト、D2部分アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニストからなるリストから選択される化合物の治療的有効量の同時または連続的投与をさらに含む、請求項6または7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症;気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症;および炎症性腸症候群から選択される疾患の治療において使用するための、請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物。
【請求項10】
前記疾患が統合失調症である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
前記疾患が統合失調症の陰性、陽性および/または認知症状である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物の、精神病;統合失調症;統合失調症様障害;統合失調感情障害;妄想性障害;短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害;物質もしくは薬物誘発性精神病性障害(コカイン、アルコール、アンフェタミン等);分裂病質人格障害;統合失調症型人格障害;大うつ病、双極性障害、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病に関連する精神病もしくは統合失調症;大うつ病;全般性不安障害;双極性障害(維持療法、再発防止および安定化);躁病;軽躁病;認知機能障害;ADHD;肥満;食欲減退;アルツハイマー病;パーキンソン病;疼痛;痙攣;咳;喘息;気道過敏性;微小血管過敏症;気管支収縮;慢性閉塞性肺疾患;尿失禁;腸炎症;および炎症性腸症候群から選択される疾患の治療用薬剤の製造のための使用。
【請求項13】
前記疾患が統合失調症である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記疾患が統合失調症の陽性、陰性および/または認知症状である、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記製造がD2アンタゴニスト、D2部分アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニストからなるリストから選択される化合物の使用をさらに含む、請求項13または14のいずれか1つに記載の使用。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物、および1種または2種以上の薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項17】
D2アンタゴニスト、D2部分アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニストからなるリストから選択される化合物をさらに含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の化合物を、D2アンタゴニスト、D2部分アゴニスト、PDE10アンタゴニスト、5−HT2Aアンタゴニスト、5−HTアンタゴニストおよびKCNQ4アンタゴニストからなるリストから選択される化合物と一緒に含むキット。

【公表番号】特表2011−518801(P2011−518801A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505497(P2011−505497)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054806
【国際公開番号】WO2009/130240
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】