説明

NMDA受容体複合体に媒体されるニューロン障害の阻止方法

【課題】神経系疾患、特に、興奮性アミノ酸受容体複合体のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)サブタイプに媒介される疾患の治療の提供。
【解決手段】哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する、このような軽減を生じさせるのに効果的な濃度の、酸化窒素を発生する化合物、またはその化合物の生理学的に許容できる塩である薬物を開示している。哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する、このような軽減を生じさせるのに効果的な濃度の、ニトロプルシド、ニトログリセリン、またはこれらの化合物のうち一つの誘導体である薬物も開示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、神経系疾患、特に、興奮性アミノ酸受容体複合体のN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)サブタイプに媒介される疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、低酸素性虚血性脳障害、無酸素症、低血糖症、発作、外傷、及び、AIDS性痴呆複合症及びAIDSの他の神経性発現、ハンティングトン病及びパーキンソン病のような数種の変性神経疾患に関連する神経毒性において重要な因子であるとされてきた(Hahn, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6556, 1988; Choi, Neuron 1:623, 1988; Rothman et al., Trends Neurosci. 10:299, 1987; Meldrum et al., Trends Pharm. Sci. 11:379, 1990 )。多くの中枢ニューロンにおいて、この神経毒性の主な型は、グルタミン酸受容体のNMDAサブタイプの活性化及びそれに続く過剰なCa2+の流入に媒介されると思われる(Choi, ibid; Weiss et al., Science 247:1474, 1990)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の要旨
出願人は、ある化合物が、NMDA受容体に媒介されるニューロン障害からニューロンを防御することを発見した。特に、ニトログリセリン、ニトロプルシド及びそれらの派生体がこのような防御を行なう。このため本発明の態様の一つは、哺乳類におけるNMDA受容体複合体に媒介されるニューロン障害を軽減する薬物(上述の化合物の一つを含む)に関する。
【0004】
出願人は、本発明の第一の態様の化合物に関し、作用の特定の原理または機構に縛られたくない。しかし、NMDA受容体の酸化は、NMDA受容体に媒介されるニューロン障害に対して防御的作用を有することが知られている(例えば、PCT W091/02180参照)。ニトログリセリン及びニトロプルシドの活性種が酸化窒素(NO)であることも知られている(例えば、Garthwaite et al. (Trends in Neurosciences 14:60, 1991 )参照)。従って、出願人が発見した防御効果をもたらすと考えられる機構の一つは、酸化窒素に誘導されるNMDA受容体チャネル複合体の酸化である。
【0005】
従って、本発明の第二の態様は、酸化窒素を発生する化合物を以下のニューロン障害を軽減するのに効果的な濃度で投与することにより、NMDA受容体複合体に媒介されるニューロン障害を軽減するための薬物に関する。この本発明の第二の態様は、NOがNMDA受容体チャネル複合体について、NMDA受容体に媒介される障害から防御するよう作用するという前提に基づいている。
【0006】
本発明の両方の態様の好適な実施例において、哺乳類は、神経系に影響を及ぼすウイルス(例えば、麻疹またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染したヒトであることが望ましい。そしてヒトが、AIDS関連複合症または後天性免疫不全症候群の発現していることが望ましい。その他の場合として、低酸素症、虚血、低血糖症、外傷、発作または脳血栓発作、またはこれらにかかり易いと思われ、即ち予防的に治療することができる哺乳類でもよい。
【0007】
“NMDA受容体に媒介されるニューロン障害”とは、NMDA受容体チャネル複合体(哺乳類ニューロンのサブセット上に見られ、NMDAまたは類似のアゴニスト(以下参照)と相互作用することによりニューロン興奮を誘導する分子を含む受容体チャネル複合体)の刺激または共刺激(costimulation )に起因するいずれかの神経損傷を意味する。
【0008】
“酸化窒素を発生する化合物”とは、哺乳類に投与された場合、ニューロン障害または損傷の軽減するのに十分な量の酸化窒素を生産するいずれかの化合物を意味する。
【0009】
本発明の第二の態様において有用な化合物には、酸化窒素を発生するいかなる化合物も含まれる。特定の化合物がNMDA受容体自体を防御的に酸化することの確認は、当業者によく知られた過程である(例えば、PCT WO 91/02810参照)。さらに出願人は、ある種の型の細胞中で酸化窒素を生産する酵素(NOシンターゼ)が文献に記載されていることに注目しており、この酵素とその神経機能における役割については、例えば、Garthwaite et al. (Trends in Neurosciences 14:60, 1991 )及びHope et al. ( Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2811, 1991 )に考察されている。
【0010】
本発明の第一の態様における2種の好適な化合物(すなわち、ニトログリセリン及びニトロプルシド)は、ヒトへの投与(すなわち、心臓血管障害の治療に使用される)の安全性を証明する記録を有する利点がある。
【0011】
本発明の方法により治療することのできる疾患には、低酸素症、虚血、低血糖症、外傷、発作、脳血栓発作、AIDS性痴呆及びHIV(例えば、USSN571,949参照)又は神経系に影響を及ぼす他のウイルスのその他の神経性発現、及び、一般的に、パーキンソン病、アルツハイマー病、及びハンティングトン病を含むがこれに限定されない急性及び慢性神経変性疾患等がある。
【0012】
本発明の第二の態様の化合物に関して言えば、NOの、輸送される能力及び細胞膜を通過する能力が、本発明の療法を容易にする。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に記載する発明の詳細な説明及び特許請求の範囲により明白である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、化合物ニトロプルシド及びニトログリセリンがNMDA受容体複合体に媒介されるニューロン障害を軽減するという知見に基づいている(以下参照)。この障害の軽減は、NMDA受容体の酸化還元調節部位の酸化によるものと思われる。この軽減は、興奮性アミノ酸(例えば、NMDA)による、NMDA受容体によって作動されるチャネルの活性化の減少及びそれに付随する神経毒性につながる細胞内カルシウムの減少に関連する。
【0015】
一つまたはそれ以上のグルタミン酸関連化合物のレベルの上昇は、多くの神経変性疾患(例えば、上記に列記したもの)に関連している。グルタミン酸自体に加えて、アスパラギン酸、キノリン酸、ホモシステイン酸、システインスルフィン酸またはシステイン酸のような他の興奮性アミノ酸によるNMDA受容体チャネル複合体の刺激、又はN−アセチルアスパチルグルタミン酸のような興奮性ペプチドによる刺激によってもニューロン障害が起こることがある。
【0016】
ニトログリセリン(1,2,3−プロパントリオール三硝酸塩またはグリセリル三硝酸塩またはGTN)、ニトロプルシド及びNOを発生する、これら化合物のいずれか1つの誘導体は、本発明において特に有用であると見なされる。
【0017】
本発明の第二の態様の化合物(すなわち、酸化窒素を発生する化合物及びそれらの誘導体)は、以下に記載するアッセイ、即ち、NMDAに喚起されるイオン電流のアッセイ(例えば、PCT WO91/02810参照)、NMDAに喚起される細胞内Ca2+の増加(以下参照)アッセイ、またはニューロン細胞の死滅アッセイ(以下参照)を用いて、ニューロン障害の軽減における効力を指標に試験することができる。効果的な化合物は、イオン電流、細胞内Ca2+濃度、またはニューロン細胞の死滅をそれぞれ減少させる。本発明において最も好適な化合物は、NMDA受容体複合体により媒介される障害、例えば、NMDAによるNMDA受容体の刺激に起因する障害(以下参照)、または他の興奮性アミノ酸またはN−アセチルアスパチルグルタミン酸のような興奮性ペプチドによるNMDA受容体の刺激に起因する障害からニューロンを最も効果的に防御する化合物である。
【0018】
ニューロン細胞の機能及び死滅についてのアッセイ
化合物の、細胞毒性を阻止する能力を試験するために、以下の通りにニューロン細胞の死滅をアッセイすることができる。Snodgrass et al.(1980) Brain Res. 190:123-138;及び Rosenberg et al (1988) J. Neurosci. 8:2887-2899による一般的な方法を用いて新生児皮質ニューロンを調製した。100μM NMDAへの短時間(5分間)の表出、または5mM DTT(5分間)の後100μM NMDAへの表出(さらに5分間)を行ない、一晩(すなわち16時間〜24時間)インキュベーションして培養をモニターする。in vivo実験により、脳血栓発作の後、脳において一過性の還元状態が存在することが示されている;化学的還元剤DTTを導入することにより、このような環境を模倣し、in vitro アッセイをin vivo状態により近づけることができる。候補化合物は、DTT処理後でかつNMDA処理前に(例えば、0.1nM〜10mMの範囲の一連の濃度で)添加することにより、試験される。インキュベーションは、5%CO /95%空気の環境下で37℃で16〜24時間続ける。NMDA毒性はNMDAへの表出から数時間遅れることが多いため、一晩経過後にニューロン培養物の細胞生存率を計測する。生存の指標には、皮質ニューロンの、phase-bright appearance を維持する能力及びトリパンブルーを排除する能力を用いる(Rosenberg et al., Neurosci. Lett. 103:162-168, 1989 )。
【0019】
本発明の方法における化合物の有用性は、中枢神経系由来のいかなる型のニューロン細胞(その細胞が従来の技術により無傷で単離される限り)を使用して試験してもよい。上記においては皮質ニューロン培養物を使用したが、網膜神経節細胞ニューロン、脊髄ニューロン、小脳顆粒ニューロン、またはNMDA受容体を含有するいずれかのニューロン(例えば、皮質の他の領域由来のニューロン)も使用することができる。このようなニューロンは、出生前のものでも出生後のものでもよい。
【0020】
本発明の方法において有用な化合物の例及びニューロン障害の軽減におけるその化合物の有効性の説明を以下に記載する。この例は、本発明を説明するために提供するものであり、これに限定されるものと解釈すべきではない。
【0021】
ニトロプルシドがNMDA受容体に媒介される神経毒性を阻止する
化合物ニトロプルシドの、新生児皮質ニューロンの生存率を増加させる能力を、上述のアッセイを用いて試験した。5%CO 及び95%空気の、加湿環境下で、ニューロン細胞を37℃で16〜24時間インキュベートした。
【0022】
図1に示す通り、短時間(5分間)のNMDA(100μM)処理により、一晩インキュベーション後に顕著なニューロン細胞神経毒性(P<0.01、星印で示している)が認められた[図1、コラム1(無処理のコントロールニューロン)及びコラム2(NMDA処理したニューロン)を比較のこと)。0.5mM DTTに5分間表出する(NMDA処理に先立ち)ことにより、神経毒性はさらに増加した[図1、コラム2(NMDA処理したニューロン)及びコラム3(DTT処理の後NMDA処理したニューロン)を比較のこと]。付加的な培養において、培地にニトロプルシドを最終濃度1μM〜1mMで5分間(DTTへの表出後でNMDAへの表出前)添加した。ニトロプルシドは、NMDAとDTTの組み合わせに起因するニューロン細胞死滅を阻止した[図1、コラム3(DTT処理の後NMDA処理したニューロン)及びコラム4(DTT処理の後ニトロプルシド処理し、その後NMDA処理したニューロン)を比較のこと]。1mMニトロプルシドによるニューロン生存の増加(図1、コラム4)は、コントロール(図1、コラム1)と比較して、統計的に有意であった。変動(variance)の解析を、有意性試験に使用した;この解析の後、multiple comparison of meansのShaffe試験(Hahn et al., 1988, supra)を行なった。0.1nMという低い投与量のニトロプルシドでも、ニューロン防御効果を有すると期待される。
【0023】
細胞内Ca2+の測定
新生児皮質ニューロン中の細胞内遊離Ca2+([Ca2+]i)を、以下の通りに、Ca2+感受性蛍光染色液fura2を用いてデジタルイメージング顕微鏡により測定する。上記において使用したのと同じ皮質ニューロン培養物を使用する。特に記載しない限り、Ca2+の測定中のニューロンを浸している液体はハンクス塩溶液:137.6mM NaCl、1mM NaHCO 、0.34mM Na HPO 、0.44mM KH PO 、5.36mM KCl、1.25mM CaCl 、0.5mM MgSO 、0.5mM MgCl 、5mM Hepes NaOH、22.2mM グルコース、及びフェノールレッド指示薬(0.001% v/v);pH7.2である。NMDA及び他の物質は通常、この浸潤溶液で希釈した後に圧力噴出(presssure ejection)によりニューロンに供給される。ニューロンの[Ca2+]iは、すでに報告されている通り、fura2−アセトキシ−メチルエステル(AM)により解析する[Grynkiewicz, et al., J. Biol. Chem. 260:3440 (1985); Williams et al., Nature 318:558 (1985); Connor et al., J. Neurosci. 7:1384 (1987); Connor et al., Science 240:649 (1988); Cohan et al., J. Neurosci. 7:3588 (1987); Mattson, et al., ibid, 9:3728 (1989)]。10μMのfura2−AMを含有するイーグルス最小必須培地をニューロンに添加した後、培養物を5%CO2 /95%空気の、加湿チャンバー内で37℃で16〜24時間インキュベートし、洗浄する。安定な蛍光比率により決定される通り、色素が載せられ、取り込まれて、1時間以内に脱エステル化される。そして、[Ca2+]iに対するCa2+イオノホア -イオノマイシン(ionophore ionomycin )の効果を測定する。Ca2+イメージングの間、ハンクス塩溶液を含有するHepes緩衝生理食塩水中で細胞をインキュベートする。Zeiss Axiovert 35 顕微鏡上に搭載されたDAGE MTI 66 SIT またはQUANTEX QX-100 Intensified CCDカメラを用いて、350nm及び380nm光により励起された500nmの蛍光を測定することにより求めた比率イメージから、[Ca2+]iを計算する。各画面(picture )の表出時間は500msである。解析は、QUANTEX (Sunnyvale, CA )QX7-210 イメージプロセシングシステムにより行なう。細胞の紫外線への表出は、データ収集の間(通常、各細胞につき全体で20s以下)だけであるため、fura2の脱色は最小限である。
【0024】
ニトロプルシドは、NMDAに媒介される細胞内Ca2+濃度の上昇を減少させる NMDA受容体に媒介される神経毒性は、細胞内Ca2+濃度を上昇させることが示されている。[Ca2+]iの上昇は、以下の実験により証明された。細胞内Ca2+は、上述の通りに測定した。10μM NMDAの添加により、[Ca2+]iは顕著に上昇した[図2、コラム2〜5(b)]。NMDAを添加する前に求めたコントロールレベル[Ca2+=50nM コラム1(a)]と比較して、NMDA添加後のレベルは200nMに上昇した。これらの結果は、4回の実験において、6個の独立したニューロンについて2分毎に測定した[Ca2+]iの平均値を示している。同じニューロンを用いて、[Ca2+]iをコントロールのレベルまで戻した後、培養物をまず初めに5mM DTTにより5分間処理し(その後洗い流した)、次いで10μMのNMDAを繰り返して添加した。このDTT及びNMDAの組み合わせの処理により、NMDA処理のみの場合に観察されたよりもさらに大きく[Ca2+]iレベルが上昇した;特定的には、平均で400nMの遊離カルシウムイオン濃度が測定された。これらの結果は、コラム6〜8(c)に示されており、3回の実験において、同じ6個のニューロンについて2分毎に測定した値の平均値を示している。[Ca2+]iを再度、コントロールのレベルまで戻した後、5mM DTTによりあらかじめNMDA受容体を化学的に還元した同じニューロンについて、[Ca2+]iに対するニトロプルシドの効果を試験した。5mM ニトロプルシドにより5分間処理した後(その後洗い流した)では、10μM NMDAは大きなCa2+応答を引き起こさなかった。実際、遊離カルシウムイオン濃度は、コントロールの培養物において観察された値と非常に類似していた(3回の実験において、同じ6個のニューロンについて2分間隔で測定した値の平均値は約50nM)。これらの結果は、コラム9〜11(d)に示している。
【0025】
問題となっている効果がNMDA酸化還元部位を含むことは、以下の通りに証明することができる。
【0026】
ニトロプルシド処理に先立つ、0.5〜5mM ジチオトレイトール(DTT)による部位の最大化学的還元によりNMDA応答は増加する(すなわち、NMDAは、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ(部分的には、イオン電流を介して)、ニューロンを死滅させる)が、ニトロプルシド(0.3〜5mM)はこれらの効果を阻止する。強力な酸化剤である5−5−ジチオ−ビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB、0.1〜2mM、同様の実験においてDTTの代わりに投与する)は、NMDAそれ自体がある程度の効果を維持しているにもかかわらず、NMDAに喚起される最大[Ca2+]i上昇及びイオン電流上昇に対するニトロプルシドの効果を阻止する。換言すれば、DTNBによる最大化学的酸化は、ニトロプルシドの効果を排除し、これは、これらの条件下でニトロプルシドが同様の機序で作用する(すなわち、酸化剤として)ことを強く示唆している。なぜならば、NMDA受容体チャネル複合体の酸化還元調節部位をDTNBにより酸化した後には、さらなる効果が認められないからである。酸化還元調節部位は一度酸化または還元されると、その後酸化還元剤を洗い流しても、別の効果的な酸化還元剤を導入するまで部位はその状態を維持することは特筆すべきところである。
【0027】
療法
ニューロン障害を阻止するために、本発明の化合物は、NMDAに喚起されるイオン電流または[Ca2+]iの上昇、または神経毒性を減少させるのに十分な量をいかなる数の経路を経由しても投与することができる。化合物は、薬剤用担体(例えば、生理食塩水)を用いて製剤中に含有されることができる;治療薬混合物の正確な処方は、投与経路に依存する。化合物は経口または静脈注射により投与されることが好ましいが、舌下により、スプレーにより、経皮的絆創膏により、または軟膏により投与することもできる。好適な化合物、ニトログリセリンまたはそれらの誘導体(市販で購入可能なすべての調製物、例えば、Physician's Desk Reference(1991)に冠状動脈血管拡張薬またはニトログリセリンまたはニトログリセリン静脈注射として列記されているもの、イソソルビドモノニトレート、イソソルビドジニトレート、ニトログリセリン舌下薬、NT−1、Niotrocor 、Nitroderm 、Nitrodisc 、Nitro-dur 、Nitro-Dur II、Nitrofilm 、Nitrogard 、Nitroglin 、Nitropen、Tridil, 及び6−クロロ−2ピリジルメチル硝酸塩を含む)は、0.01〜1000mg/日を数回に分けて投与することができる。ニトロプルシドナトリウム(Na2 [Fe(CN)5 NO]−H2 O(Elkins-Sinn, Inc., Cherry Hill NJ より入手)またはNipride (Roche, Nutley, NJ より入手))は、0.5〜10μg/分で静脈注入により投与する。本発明中に記載したアッセイにより有用な神経防御薬物と決定した他の酸化窒素を発生する化合物は、経口、静脈注射、舌下、スプレー、または経皮的絆創膏または軟膏により、ニューロン障害、またはNMDAに喚起されたイオン電流または[Ca2+]iの上昇を減少させるのに適した用量で投与する。一般的にこのような化合物は、投与量0.1〜5mg/日を数回に分けて投与する。治療は、ニューロン障害を阻止または緩和するのに必要な回数繰り返すことができる。本発明の化合物は、グルタミン酸または関連化合物のレベルの上昇に起因する多くの神経毒性疾患から防御するために利用することができる。このような神経毒性疾患には、虚血、低酸素症、低血糖症、外傷、てんかん、ハンティングトン病、及びアルツハイマー病及び他の神経変性疾患が含まれる。本発明の方法は、AIDS性痴呆及びその他のAIDSウイルスの神経性発現の治療に特に好適である。本発明の方法は、神経系にダメージを与える他のウイルス感染に起因するニューロン障害の軽減にも使用することができる。
【0028】
その他の実施例
本発明に記載した方法は、NMDA受容体を有するいかなる哺乳類におけるニューロン障害の軽減に対しても有用である。ヒトにおけるニューロン障害の治療は好適な利用法である;しかしこの方法は、獣医学的目的についても効果的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ニトロプルシドが、NMDAに媒介される神経毒性を阻止することを示す棒グラフである。
【図2】図2は、(a)対象細胞(コントロール)、(b)NMDAのみ存在下、(c)ジチオトレイトール(DTT)の後にNMDA存在下、及び(d)DTT及びニトルプルシドの後にNMDA存在下における細胞内Ca2+濃度(すなわち、[Ca2+]i)の棒グラフである

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のような軽減を生じさせるのに効果的な濃度の、酸化窒素を発生する化合物、またはその化合物の生理学的に許容できる塩である、哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する薬物。
【請求項2】
以下のような軽減を生じさせるのに効果的な濃度の、ニトロプルシド、ニトログリセリン、またはこれらの化合物のうち一つの誘導体である哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する薬物。
【請求項3】
前記化合物がニトロプルシドまたはその酸化窒素を発生する誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の薬物。
【請求項4】
前記化合物がニトログリセリンまたはその酸化窒素を発生する誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の薬物。
【請求項5】
前記哺乳類が、ヒト免疫不全ウイルスに感染したヒトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬物。
【請求項6】
前記ヒトが、AIDS関連複合症または後天性免疫不全症候群の症状を発現していることを特徴とする請求項5に記載の薬物。
【請求項7】
前記哺乳類が、低酸素症、虚血、外傷、低血糖症、発作、神経障害性発作、アルツハイマー病、ハンティングトン病、またはパーキンソン病から成る群から選択された疾患を患っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化窒素を発生する化合物、またはその化合物の生理学的に許容できる塩を含む、哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する薬物。
【請求項2】
ニトロプルシド、ニトログリセリン、またはこれらの化合物のうち一つの誘導体を含む、哺乳類におけるNMDA受容体に媒介されるニューロン障害を軽減する薬物。
【請求項3】
前記化合物がニトロプルシドまたはその酸化窒素を発生する誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の薬物。
【請求項4】
前記化合物がニトログリセリンまたはその酸化窒素を発生する誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の薬物。
【請求項5】
前記哺乳類が、ヒト免疫不全ウイルスに感染したヒトであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬物。
【請求項6】
前記ヒトが、AIDS関連複合症または後天性免疫不全症候群の症状を発現していることを特徴とする請求項5に記載の薬物。
【請求項7】
前記哺乳類が、低酸素症、虚血、外傷、低血糖症、発作、神経障害性発作、アルツハイマー病、ハンティングトン病、またはパーキンソン病から成る群から選択された疾患を患っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−117693(P2006−117693A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362538(P2005−362538)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【分割の表示】特願平4−510067の分割
【原出願日】平成4年4月17日(1992.4.17)
【出願人】(505242884)ザ チルドレンズメディカルセンター コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】