説明

NOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システム

【課題】選択的還元触媒を備え、アンモニアや尿素を供給しなくても、アンモニア生成制御でリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒でNOxをアンモニアに変換し、このアンモニアを下流側の選択還元型触媒で吸着し、この吸着したアンモニアで、アンモニア生成制御を行っていない時の排気ガス中のNOxを選択還元型触媒で還元浄化する場合において、選択還元型触媒に対してアンモニアを過不足なく安定して供給することができるNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システムを提供する。
【解決手段】アンモニア生成制御に際して、選択還元型触媒33で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量Atを算出し、アンモニア生成制御により第1触媒32で生成されるアンモニア生成量A4の積算値A3がアンモニア吸着目標量Atを下回る時にのみアンモニア生成制御を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側のリーンNOx触媒又は前記三元触媒でアンモニアを発生させ、発生したアンモニアを下流側の選択還元型触媒に吸着させて、排気ガス中のNOxを還元浄化するNOx浄化システムで、過不足無くアンモニアを発生することができるNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン用の選択還元型触媒(SCR触媒)を備えた排気ガス浄化システムでは、排気ガス通路に上流側から順に選択還元型触媒と酸化触媒(DOC)を備えた排気ガス装置を配置し、この排気ガス装置よりも上流側に配置されたアンモニア系溶液噴射装置から、尿素水等のアンモニアを発生するアンモニア系溶液Wを選択還元型触媒に供給して、排気ガス中のNOxとアンモニアを選択的に反応させてNOxを浄化している。
【0003】
これらの選択還元型触媒を備えた排気ガス浄化システムでは、排気ガス通路中に、無害の尿素水を供給し、触媒上で熱分解してアンモニアを生成させ、選択還元型触媒において、このアンモニアで排気ガス中のNOxを選択的に還元している。
【0004】
しかしながら、これらの尿素供給のNOx浄化システムでは、アンモニア発生源として尿素を供給するが、これらのNOx浄化システムを普及させた場合には、尿素を大量に供給する必要が生じるが、現状ではインフラの面で課題がある。
【0005】
そのため、選択還元型触媒の上流側にNOx吸着体(希薄NOxトラップ:LNT)又はアンモニア生成触媒を配置して、NOx吸着体の再生のため等で排気ガスを高温リッチ状態にする時に発生するアンモニアを選択還元型触媒に吸着させて、この吸着したアンモニアで高温リッチ状態を終了した後の通常運転における排気ガス中のNOxを還元する内燃機関用NOx後処理装置および方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0006】
このアンモニアは、排気ガス中のNOx、及び、リーンNOx触媒の一つであるNOx吸蔵還元型触媒等に吸蔵されたNOxと、排気ガス中の水(H2 O)、炭化水素(HC)により熱分解された水素(H)とが、低酸素(O2 )の還元状態で反応することにより発生する。
【0007】
しかしながら、このようなNOx浄化システムでは、アンモニアの生成は生成条件を確認して、定量的な制御を行ってアンモニアを安定的に供給しないと、アンモニア過多になってアンモニアが大気中に放出されたり、又は、アンモニア不足になってNOxが大気中に放出される。そのため、アンモニアを安定的に発生させることが必要であるという問題がある。
【特許文献1】特開2004−211679号公報
【特許文献2】特開2001−140630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、選択的還元触媒を備え、アンモニアや尿素を供給しなくても、アンモニア生成制御でリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒でNOxをアンモニアに変換し、このアンモニアを下流側の選択還元型触媒で吸着し、この吸着したアンモニアで、アンモニア生成制御を行っていない時の排気ガス中のNOxを選択還元型触媒で還元浄化する場合に、NOxの還元に用いるアンモニアを選択還元型触媒に対して過不足なく安定して供給することができるNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するためのNOx浄化システムの制御方法は、排気ガス通路に上流側からリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒と選択還元型NOx触媒を配置し、アンモニア生成制御を実施した時に前記第1触媒でアンモニアを生成させ、発生したアンモニアを前記選択還元型触媒に吸着させると共に、前記アンモニア生成制御を実施しない時では前記選択還元型触媒に吸着させたアンモニアで排気ガス中のNOxを還元するNOx浄化システムの制御方法において、前記アンモニア生成制御に際して、前記選択還元型触媒で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量を算出し、前記アンモニア生成制御により前記第1触媒で生成されるアンモニア生成量の積算値が前記アンモニア吸着目標量を下回る時にのみ前記アンモニア生成制御を実施することを特徴とする。
【0010】
つまり、上流側のリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される前段の第1触媒でアンモニアを発生させ、下流側の後段の選択還元型触媒に発生したアンモニアを吸着させて、排気ガス中のNOxを還元して無害化する場合に、アンモニアが過多になったり、不足になったりしないように、アンモニアを生成する制御では、この制御で生成するアンモニア生成量の積算値が、選択還元型触媒におけるアンモニアの吸着量の目標値を下回る時にだけアンモニアを発生させる。これにより、選択還元型触媒からのアンモニアの流出を防止することができる。
【0011】
上記のNOx浄化システムの制御方法で、前記アンモニア生成制御を実施しない時において、前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量を算出し、該アンモニア吸着量が所定のアンモニア生成開始量以下となった時に前記アンモニア生成制御を開始すると、選択還元型触媒で吸着したアンモニア不足による、選択還元型触媒からのNOxの流出を防止することができる。
【0012】
上記のNOx浄化システムの制御方法において、前記アンモニア吸着目標量を、前記選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量と、前記アンモニア生成制御開始時の前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量とから算出すると、比較的簡単に、適切なアンモニア吸着目標量を算出できる。なお、この選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着許容上限量は、選択還元型触媒の温度に依存するので、予め、試験などにより、この触媒温度とアンモニア吸着許容上限量を求めておき、このアンモニア吸着許容上限量に達するまでの余裕を持たせてアンモニア吸着上限量を設定し、予め、このNOx浄化システムを制御する装置に記憶させておく。
【0013】
上記のNOx浄化システムの制御方法において、前記アンモニア吸着目標量の算出に際して、前記第1触媒から流出するNOxの流出量のマップデータ、前選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量のマップデータの少なくとも一方を使用すると、算出が容易となる。NOx流出量は主にエンジン回転数や燃料噴射量(又は負荷)に関係し、アンモニア吸着上限量は、選択還元型触媒の温度に関係する。これらのNOx流出量マップデータと、アンモニア吸着上限量マップデータは予め試験等により求めておき、このNOx浄化システムを制御する装置に記憶させておく。なお、ここでは、マップデータにはパラメータが一つであるデータ(通常はテーブルと呼ばれるようなデータ)も含めている。
【0014】
上記のNOx浄化システムの制御方法で、前記アンモニア生成制御において、前記第1触媒の温度が所定の温度以上の時と、触媒温度上昇制御により前記第1触媒の温度が前記所定の温度以上になった時にのみ、排気ガスの空燃比を深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を行うと、効率よくアンモニアを生成することができる。これは、第1触媒の温度が低いとアンモニアが発生し難いため、無駄に空燃比状態を深いリッチ状態にしないようにするものである。これにより、燃費の悪化を抑制することができる。
【0015】
上記のNOx浄化システムの制御方法で、前記アンモニア生成制御に際して、前記第1触媒の温度と排気ガスの空燃比とをパラメータとするアンモニア生成量のマップデータに従って排気ガスの空燃比を制御すると、アンモニアの生成量を適切に調整することができる。従って、選択還元型触媒下流側へのアンモニア流出を回避しながら、より効率よく、例えば、燃費が少なくなるように、アンモニアを生成することができるようになる。
【0016】
上記のNOx浄化システムの制御方法で、前記アンモニア生成制御において、排気管内燃料噴射を実施し、触媒温度上昇、又は、アンモニア生成、又は、その両方を行うと、シリンダ内燃料噴射制御で排気通路中に燃料を添加する場合よりも、燃料噴射制御が単純化し、エンジンが発生するトルク変動も少なくすることができる。
【0017】
そして、上記のような目的を達成するためのNOx浄化システムは、排気ガス通路に上流側からリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒と選択還元型NOx触媒を配置し、アンモニア生成制御を実施した時に前記第1触媒でアンモニアを生成させ、発生したアンモニアを前記選択還元型触媒に吸着させると共に、前記アンモニア生成制御を実施しない時では前記選択還元型触媒に吸着させたアンモニアで排気ガス中のNOxを還元するNOx浄化システムにおいて、前記アンモニア生成制御に際して、前記選択還元型触媒で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量を算出し、前記アンモニア生成制御により前記第1触媒で生成されるアンモニア生成量の積算値が前記アンモニア吸着目標量を下回る時にのみ前記アンモニア生成制御を実施するNOx浄化制御装置手段を備えて構成される。これにより、選択還元型触媒からのアンモニアの流出を防止することができる。
【0018】
上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御を実施しない時において、前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量を算出し、該アンモニア吸着量が所定のアンモニア生成開始量以下となった時に前記アンモニア生成制御の開始であるとするアンモニア生成開始判断手段を有して構成されると、選択還元型触媒で吸着したアンモニア不足による、選択還元型触媒からのNOxの流出を防止することができる。
【0019】
上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア吸着目標量を、前記選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量と、前記アンモニア生成制御開始時の前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量とから算出するように構成されると、比較的簡単に、適切なアンモニア吸着目標量を算出できる。
【0020】
上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア吸着目標量の算出に際して、前記第1触媒から流出するNOxの流出量のマップデータ、前選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量のマップデータの少なくとも一方を使用するように構成されると、算出が容易となる。
【0021】
上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御において、前記第1触媒の温度が所定の温度以上の時と、触媒温度上昇制御により前記第1触媒の温度が前記所定の温度以上になった時にのみ、排気ガスの空燃比を深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を行うように構成されると、効率よくアンモニアを生成することができる。
【0022】
上記のNOx浄化システムにおいて、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御に際して、前記第1触媒の温度と排気ガスの空燃比とをパラメータとするアンモニア生成量のマップデータに従って排気ガスの空燃比を制御するように構成されると、アンモニアの生成量を適切に調整することができる。
【0023】
上記のNOx浄化システムで、前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御において、排気管内燃料噴射を実施し、触媒温度上昇、又は、アンモニア生成、又は、その両方を行うように構成されると、シリンダ内燃料噴射制御で排気通路中に燃料を添加する場合よりも、燃料噴射制御が単純化し、エンジンが発生するトルク変動も少なくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システムによれば、排気ガス通路に上流側からリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒と選択還元型NOx触媒を配置し、アンモニア生成制御を実施した時に第1触媒でアンモニアを生成させ、発生したアンモニアを選択還元型触媒に吸着させると共に、アンモニア生成制御を実施しない時では選択還元型触媒に吸着させたアンモニアで排気ガス中のNOxを還元する場合において、選択還元型触媒に対してアンモニアを過剰に供給することを回避でき、選択還元型触媒下流側へのアンモニアの流出を防止できる。
【0025】
また、アンモニア生成制御を実施しない時において、選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量を算出し、このアンモニア吸着量が所定のアンモニア生成開始量以下となった時にアンモニア生成制御を開始することにより、アンモニア生成制御を実施しない時に、第1触媒の下流に流出するNOxを還元するための選択還元型触媒で吸着したアンモニアが不足して、選択還元型触媒下流側へNOxが流出することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態のNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システムについて、ディーゼルエンジンの排気通路を通過する排気ガスのNOxを浄化するNOx浄化システムを例にして図面を参照しながら説明する。図1に、本発明の実施の形態のNOx浄化システム1の構成を示す。
【0027】
このNOx浄化システム1では、ディーゼルエンジン10の排気通路(排気ガス通路)11に、上流側から、ターボチャジャ12のタービン12aと、酸化触媒(DOC)31、リーンNOx触媒(LNT)32、選択還元型触媒(SCR触媒)33を有して構成されるNOx浄化装置30と、排気絞り弁13とが配置される。なお、この実施の形態では、リーンNOx触媒32が第1触媒となる。
【0028】
酸化触媒31は、コージェライトハニカム等の多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、ロジウム、酸化セリウム、白金、酸化アルミニウムを担持して形成される。この酸化触媒31は、排気ガス中に未燃燃料(炭化水素:HC)や一酸化炭素(CO)等があるとこれを酸化して、この酸化で発生する熱により排気ガスを昇温し、この昇温した排気ガスで下流側のリーンNOx触媒(第1触媒)32を昇温させることができる。なお、この酸化触媒31は、連続再生型ディーゼルパティキュレートフィルタ装置(連続再生型DPF装置)の一部として設けてもよい。
【0029】
リーンNOx触媒(LNT)32は、この実施の形態では、NOx吸蔵還元型触媒で形成される。このNOx吸蔵還元型触媒は、コージェライトハニカム等の多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、酸化アルミニウム(アルミナ)等で形成された多孔質の触媒コート層を設け、この触媒コート層に白金等の触媒貴金属と、NOx吸蔵機能を持つNOx吸蔵物質とを担持させる。このNOx吸蔵物質としては、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、バリウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ランタン、イットリウム等の希土類の中から、一つ又は幾つかの組合せを用いることができる。この構成により、排気ガス中の酸素濃度等によって、NOx吸蔵と、NOx放出・浄化の二つの機能を発揮する。
【0030】
選択還元型触媒33は、コージェライトや酸化アルミニウムや酸化チタン等で形成されるハニカム構造等の担持体に、チタニアーバナジウム、ゼオライト、酸化クロム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化タングステン等を担持して形成される。この構成により、アンモニアを吸着したり、NOxをアンモニアで還元浄化したりすることができる。
【0031】
また、酸化触媒31の上流側にアンモニア生成時の空気過剰率(λ)を制御するために、空燃比(A/F)センサ41を配置する。それと共に、各触媒31、32、33の温度を推定するために、第1の温度センサ42を酸化触媒31の上流側に、第2の温度センサ43を酸化触媒31とリーンNOx触媒32との間に、第3の温度センサ44をリーンNOx触媒32と選択還元型触媒33との間に、第4の温度センサ45を選択還元型触媒33の下流側に、それぞれ配置する。また、更に、選択還元型触媒33の下流側には、NOx又はλ(空気過剰率)センサ46を配置する。なお、排気管内燃料噴射を行う場合には、燃料噴射弁(排気管内燃料噴射装置)47を空燃比(A/F)センサ41よりも上流側の排気通路(排気管)11に設ける。
【0032】
また、吸気通路14には、エアフィルタ15、マスエアフローセンサ(MAFセンサ)16、ターボチャジャ12のコンプレッサ12b、インタークーラ17、吸気スロットル弁18が設けられている。更に、排気マニホールド10aと吸気マニホールド10bを連結するEGR通路19には、EGRクーラ20と、EGR弁21が設けられている。
【0033】
このエンジン10では、空気Aはエアフィルタ15で浄化された後、マスエアフローセンサ(MAFセンサ)16でその質量流量を計測され、コンプレッサ10bで加圧される。その後、空気Aはインタークーラ17で冷却され、更に流量調整を行う吸気スロットル弁18を通過して吸気マニホールド10bに入る。エンジン10のシリンダ内でこの空気A中に燃料を噴射して燃料を燃焼させる。この燃焼により生じた排気ガスGは、排気マニホールド10aから排気通路(排気ガス通路)11のタービン10aを駆動した後、NOx浄化装置30を通過して、浄化された排気ガスGcとなる。その後、浄化された排気ガスGcは、排気絞り弁13と図示しないマフラー(消音器)を通過して大気中に放出される。また、排気ガスGの一部はEGRガスGeとして、EGR通路19のEGRクーラ19で冷却された後、EGRガスGeの流量調整を行うEGR弁21を通過して吸気マニホールド10bに入り、空気Aと混合しシリンダ内に入る。
【0034】
また、これらのNOx浄化システム1の制御を行うためにNOx浄化制御装置40aが設けられる。このNOx浄化装置40aは、通常はエンジン全体を制御するエンジン制御装置(ECU)40に含まれた状態で構成される。このNOx浄化制御装置40aには、空燃比センサ41や第1〜第4の温度センサ42、43、44、45やNOx又はλセンサ46等からの入力の他に、エンジン回転数Ne、燃料噴射量(又は負荷)Q等が入力される。また、このNOx浄化制御装置40aはエンジン制御装置40と密接な関係を持ち、エンジン制御装置40を介して、シリンダ内燃料噴射、排気絞り弁13、吸気スロットル弁18、EGR弁21、燃料噴射弁47等を制御する。
【0035】
そして、このNOx浄化制御装置40aは、図2に示すように、NOx浄化制御手段C10を有し、このNOx浄化制御手段C10は、通常制御運転手段C11、アンモニア生成開始判断手段C12、アンモニア生成制御手段C13、アンモニア生成停止判断手段C14等を有して構成される。また、アンモニア生成制御手段C13は、第1触媒昇温制御手段C13aと排気ガス空燃比制御手段C13bとを有して構成される。
【0036】
この通常運転制御手段C11は、通常のエンジンの運転を行う手段、言い換えれば、アンモニア生成制御を行わない運転制御を行う手段であり、この通常運転では、排気ガス中のNOxはリーンNOx触媒32に吸蔵される。また、アンモニア生成開始判断手段C12は、アンモニア生成制御を開始するタイミングを判定する手段であり、選択還元型触媒33に吸着されているアンモニア吸着量A1を算出し、このアンモニア吸着量A1が所定のアンモニア生成開始量As以下となった時にアンモニア生成制御の開始と判断する。つまり、選択還元型触媒33に吸着されたアンモニアが通常運転時にリーンNOx触媒32から流出してくるNOxの還元に使用されて減少し、この選択還元型触媒33のアンモニア吸着量A1が所定のアンモニア生成開始量As以下になるとアンモニア生成制御の開始であると判断する。
【0037】
アンモニア生成制御手段C13は、アンモニア生成を行うための手段である。アンモニアの条件としては、リーンNOx触媒32の温度が高温(例えば400℃)で、かつ、排気ガスが深いリッチ状態(例えば、空気過剰率換算でλ≦0.85)であることが知られている。これは、触媒反応が早い高温時のリッチ状態では、リーンNOx触媒32に吸蔵されたNO2 が放出されて、2NO2 +CO+2HC→N2 +2CO2 +H2 Oとなるが、この反応時に酸素が不足していると、CO+H2 O→CO2 +H2 やC3 6 +3H2 0→3CO+6H2 でH2 が生成し、2NO+5H2 →2NH3 +2H2 Oや2NO2 +7H2 →2NH3 +4H2 O等でNH3 が生成し、窒素(N2 )の代わりにアンモニア(NH3 )が発生する。このアンモニアの生成を積極的に利用するために、リーンNOx触媒32の触媒温度Tlntと排気ガスの空燃比(又は空気過剰率λ)をパラメータとする図7に示すようなアンモニア生成量をマップデータとしてNOx浄化制御装置40aに予め記憶させておく。この具体的なマップデータは試験結果等により作成される。そして、この触媒温度Tlntと空燃比を制御要素とし、測定された触媒温度Tlntに対して適切なアンモニア生成量になるように予め設定された空燃比で、排気ガス空燃比制御を行う。この空燃比は通常は空気過剰率換算でλ=0.95〜0.85で、好ましくはλ=0.92〜0.87である。
【0038】
このアンモニア生成制御手段C13は、必要に応じて、第1触媒昇温制御手段C13aで排気ガス温度を昇温したり、電気ヒータで直接リーンNOx触媒(第1触媒)32を加熱したりして、リーンNOx触媒32をアンモニアが生成する所定の温度(例えば400℃)以上に昇温する。なお、既に、リーンNOx触媒32がアンモニアが生成する所定の温度以上である場合には、第1触媒昇温制御は行わない。
【0039】
また、排気ガス空燃比制御手段C13bで空燃比をアンモニアが予め設定された空燃比とする。この排気ガス空燃比制御中は、リーンNOx触媒32では吸蔵していたNOxが放出されると共に、放出されたNOxの一部は窒素(N2 )に分解されるが、残りの一部はアンモニアに変換される。また、排気ガス中のNOxもリーンNOx触媒32でアンモニアに変換される。このアンモニアが下流側の選択還元型触媒13に吸着される。
【0040】
これらの第1触媒昇温制御手段C13aや排気ガス空燃比制御手段C13bでは、シリンダ内燃料噴射でマルチ噴射(多段遅延噴射)とポスト噴射(後噴射)を用いたり、シリンダ内燃料噴射のマルチ噴射と排気管内燃料噴射を用いたりする。
【0041】
アンモニア生成停止判断手段C14は、選択還元型触媒33で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量Atを算出し、アンモニア生成制御中にリーンNOx触媒32で生成されるアンモニアの生成量A4の積算値A3がアンモニア吸着目標量Atに達した時にアンモニア生成制御の停止であると判断する。
【0042】
これらの制御を行うために、予め、リーンNOx触媒32のNOx流出量マップ(エンジン回転数Ne、燃料噴射量(又は負荷)QをパラメータとするNOx流出量N1のマップデータ:図4)、選択還元型触媒33のアンモニア吸着上限量テーブル(触媒温度Tscrをパラメータとするアンモニア吸着上限量Au:図6)、及び、リーンNOx触媒32で生成されるアンモニア生成量マップ(リーンNOx触媒32の触媒温度Tlntと空気過剰率λ(空燃比)をパラメータとするアンモニア生成量A4:図7)等を試験結果などにより作成し、NOx浄化制御装置40aに予め記憶させておく。
【0043】
次に、このNOx浄化システム1におけるNOx浄化システムの制御方法について説明する。この制御方法は図3に例示するような制御フローに従って行われる。この図3の制御フローはエンジンのスタートと共に、エンジン全般の制御を行うメインの制御フローから呼ばれてスタートし、エンジンキーのオフ等のエンジン運転の終了を検出すると、割り込みが発生して、メインの制御フローにリターンし、メインの制御フローの終了と共に終了する制御フローとして示してある。
【0044】
エンジンキーをオンにしてエンジン運転を開始すると、この図3の制御フローもメインの制御フローから呼ばれてスタートする。スタートすると、先ず、ステップS11で、選択還元型触媒13に吸着しているアンモニアの吸着量の推定値であるアンモニア吸着量A1の初期値A0を、NOx浄化制御装置40aの所定のメモリから入力し、アンモニア吸着量A1をその初期値A0に設定する(A1=A0)。
【0045】
この初期値A0は最初にエンジンを起動する場合には0(ゼロ)となるが、前回のエンジン運転で、既に、この図3の制御フローを実施している場合には、前回の終了時のアンモニア吸着量A1となる。つまり、前回運転終了時のアンモニア吸着量A1の値を初期値A0として保持する。
【0046】
次のステップS12で、ステップS12からステップS14を終了するまでの間の所定の時間の間に、言い換えれば、ステップS14のアンモニア吸着量のチェックのインターバルの間に発生する、リーンNOx触媒12から選択還元型触媒13へのNOx流出量(NOxスリップ量)N1を算出する。この算出に際しては、図4に示すようなエンジン回転数Neと燃料噴射量(又は負荷)QをパラメータとするNOx流出量マップデータや関数値N1=f1(Ne,Q)を使用する。つまり、エンジン回転数Neと燃料噴射量Qとから、NOx流出量マップデータを参照したり、関数f1(Ne,Q)で演算してNOx流出量N1を算出する。
【0047】
また、このNOx流出量N1からNOx還元に使用するアンモニア消費量A2、言い換えれば、このNOx流出量N1の還元に必要なアンモニア量A2を算出する。この算出では、NOx(NO,NO2 )−NH3 の当量比の計算を用いるが、図5に示すようなNOx流出量N1に対するアンモニア消費量A2を示すマップデータや関数値A2=f2(N1)を使用してもよい。なお、アンモニア消費量A2はNOxの還元効率を考慮して補正してもよい。更に、ステップS14終了後のアンモニア吸着量A1を、ステップS12以前のアンモニア吸着量A1からアンモニア消費量A2を引き算して算出する(A1=A1−A2)。
【0048】
次のステップS13で、選択還元型触媒13の触媒温度Tscrより、選択還元型触媒13に吸着可能なアンモニア量であるアンモニア吸着上限量Auを算出する。この算出では、図5に示すような触媒温度Tscrに対するアンモニア吸着上限量Auを示すマップデータや関数値Au=f3(Tscr)を使用する。なお、このアンモニア吸着上限量Auは物理的な吸着量の上限値そのままではなく、余裕を持たせた値とすることが好ましい。
【0049】
また、ステップS13では、アンモニア生成開始量Asを設定する。このアンモニア生成開始量Asは、選択還元型触媒13におけるアンモニア吸着量A1がこの値以下になったら、アンモニア生成制御を開始して、生成したアンモニアを選択還元型触媒13に吸着させるための値である。このアンモニア生成開始量Asは、試験結果等により予め設定され、NOx浄化制御装置40aの所定のメモリに記憶される。この記憶した値を読み出して、図3の制御フローにおけるアンモニア生成開始量Asを設定する。また、このアンモニア生成開始量Asを触媒温度Tscrを考慮して補正するように構成してもよい。このアンモニア生成開始量Asも、ステップS16の第1触媒昇温制御等で消費されるアンモニアの消費量A2を考慮した余裕のある値に設定することが好ましい。
【0050】
次のステップS14で、アンモニア吸着量A1をチェックし、アンモニア吸着量A1がアンモニア生成開始量As以下であるか否かを判定する。この判定により、アンモニア生成制御を開始するか否かを判定する。つまり、以下であれば、ステップS15以降のアンモニア生成制御に移行して、アンモニア生成制御を実施してアンモニアを生成して、選択還元型触媒13にアンモニアを吸着させる。また、以下でなければ、まだ、アンモニアを選択還元型触媒13に吸着させる必要がないので、ステップS12に戻る。
【0051】
このステップS15〜S20のアンモニア生成制御においては、先ず、ステップS15で、選択還元型触媒33で吸着するアンモニアに目標値であるアンモニア吸着目標量Atを算出する。このアンモニア吸着目標量Atは、今回のアンモニア生成制御で生成するアンモニアの生成量の目標値でもあり、アンモニア生成目標量ということもできる。このアンモニア吸着目標量Atは、アンモニア吸着上限量Auから現状(ステップS15の時点)のアンモニア吸着量A1を引き算して算出される(At=Au−A1)。また、アンモニア生成制御で生成するアンモニア量を積算するために、アンモニア生成累積量A3をゼロにリセットする(A3=0)。
【0052】
次のステップS16では、必要に応じて、第1触媒昇温制御を行う。つまり、リーンNOx触媒(第1触媒)32の触媒温度Tlntが所定の温度(例えば、350℃〜400℃)に達していれば、この第1触媒昇温制御を行わなわずに、次のステップS17に行くが、触媒温度Tlntがこの所定の温度に達していなければ、排気ガスを深いリッチ状態にせずに、吸気絞りやEGR制御やシリンダ内燃料噴射等により、排気ガスを昇温したり、排気管内燃料噴射可能な温度(例えば、200℃以上)になったら、排気管内燃料噴射をパルス的に実施したり、排気ガス中の未燃燃料を酸化触媒31で酸化したり、直接伝熱ヒータで加熱したりしてリーンNOx触媒12を暖め、昇温させる。そして、触媒温度Tlntが所定の温度に達してから、次のステップS17に行く。なお、この間の第1触媒昇温制御中は、図3の制御フローには図示していないが、ステップS12と同様な演算を行って、アンモニア消費量A2を考慮したアンモニア吸着量A1の算出を行う。
【0053】
ステップS17のアンモニア生成用の排気ガス空燃比制御は、吸気絞りやEGR制御やシリンダ内燃料噴射等により、排気ガスの空燃比を空気過剰率換算でλ=0.95〜0.85で、好ましくはλ=0.92〜0.87の深いリッチ状態をパルス的に増減して断続的なリッチ空燃比としてアンモニアを生成する。この時に排気管内燃料噴射も併用する場合があるが、排気管内燃料噴射の噴射量の目標値は、空気量とλセンサ値より目標空燃比(A/F)になる燃料流量を算出する。この制御により、リーンNOx触媒32に吸蔵されたNOxや排気ガス中のNOxがアンモニアに変換され、アンモニアが生成する。この生成したアンモニアは、下流側の選択還元型触媒33に吸着される。
【0054】
次のステップS18では、ステップS17からステップS19を終了するまでの間の所定の時間の間に、言い換えれば、ステップS19のアンモニア吸着量A1のチェックのインターバルの間に生成されるアンモニア生成量A4を算出する。この算出に際しては、図7に示すような触媒温度Tlntと空気過剰率λ(又は空燃比A/F)をパラメータとするNOx生成量マップデータや関数値A4=f4(Tlnt,λ)を使用する。つまり、触媒温度Tlntと空気過剰率λとから、マップデータを参照したり、関数演算してNOx生成量A4を算出する。
【0055】
また、このNOx生成量A4からステップS19終了後のアンモニア吸着量A1を、ステップS16以前のアンモニア吸着量A1にアンモニア生成量A4を足し算して算出する(A1=A1+A4)。更に、アンモニア生成制御の停止時期を判定するために、アンモニア生成累積量A3を算出する。この算出では、ステップS16以前のアンモニア生成累積量A3にアンモニア生成量A4を足し算して算出する(A3=A3+A4)。なお、選択還元型触媒33におけるアンモニアの吸着効率を考慮して生成累積量A3を補正してもよいが、このアンモニアの吸着効率を考慮して、アンモニア吸着目標量Atを算出する方が、制御を簡略化できる。
【0056】
なお、アンモニア生成累積量A3をリセットしてステップS17を通過した後で、リーンNOx触媒32の温度が所定の温度よりも低下して、再度、ステップS16の触媒昇温制御が行われる場合には、この間のアンモニア消費量A2を引き算しておく(A3=A3−A2)。
【0057】
ステップS19で、アンモニア生成累積量A3をチェックし、アンモニア生成累積量A3がアンモニア吸着目標量At以下であるか否かを判定する。この判定により、アンモニア生成制御を停止してよいか否かを判定する。つまり、以上であれば、もう、アンモニアを選択還元型触媒33に吸着させる必要がないので、ステップS20に行き、アンモニア生成制御を停止する。つまり、アンモニア生成のための第1触媒昇温制御や排気ガスを深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を停止して、ステップS12に戻る。以上でなければ、ステップS16に戻り、アンモニア生成制御を継続してアンモニアを生成して、選択還元型触媒33にアンモニアを更に吸着させる。
【0058】
そして、ステップS12〜ステップS20を繰り返し行いながら、アンモニア生成制御を行わない、通常のエンジン制御運転(ステップS11〜S14,S15)及び第1触媒昇温制御(ステップS16)では、排気ガスGはリーン状態となり、排気ガス中のNOxはリーンNOx触媒32で殆どが吸収され、リーンNOx触媒32から流出する残りのNOxは選択還元型触媒33で、この選択還元型触媒33に吸着されたアンモニアにより窒素に還元されて、排気ガスは浄化されたガスGcとなって大気中に放出される。
【0059】
また、選択還元型触媒33に吸着されたアンモニアの吸着量A1が低くなると、アンモニア不足により流出NOxが還元されずに、大気中に放出される可能性が生じるので、これを防ぐために、アンモニア吸着量A1がアンモニア生成開始量Asに達すると通常のエンジン制御運転からアンモニア生成制御に移行する。
【0060】
このアンモニア生成制御では、必要に応じて第1触媒昇温制御を行った後、アンモニア生成用の排気ガス空燃比制御(ステップS17〜S19)では、排気ガスを深いリッチ状態にして、リーンNOx触媒32に吸蔵されたNOxを放出させると同時に、これを低酸素状態で還元してアンモニアを生成する。この生成したアンモニアを選択還元型触媒33に吸着して、選択還元型触媒33に吸着しているアンモニア量A1を増加してアンモニア吸着上限量Auにまで回復する。そして、アンモニア吸着量A1がアンモニア吸着上限量Auに回復したら、アンモニア生成制御を停止して、再度、通常の運転に戻る。
【0061】
このステップS12〜S20を繰り返し実施するが、エンジンキーがオフされたりしてエンジン運転の終了操作が行われると、これを検知して、実施中のステップの途中において割り込みを発生させて、ステップS21の割り込みに行く。この割り込みにより、この制御フローの終了作業(図示しない)を行う。この終了作業としては、例えば、アンモニア吸着量A1を、次回のアンモニア吸着量A1の初期値A0として、NOx浄化制御装置30の所定のメモリに記憶したり、各種制御を停止したりする作業がある。
【0062】
上記の構成のNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システム1によれば、アンモニア生成制御に際して、選択還元型触媒33で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量Atを算出し、アンモニア生成制御により第1触媒32で生成されるアンモニア生成量A4の積算値A3がアンモニア吸着目標量Atを下回る時にのみアンモニア生成制御を実施する。これにより、選択還元型触媒33からのアンモニアの流出を防止することができる。
【0063】
また、アンモニア生成制御を実施しない時において、選択還元型触媒33に吸着されているアンモニア吸着量A1を算出し、このアンモニア吸着量A1が所定のアンモニア生成開始量As以下となった時にアンモニア生成制御を開始する。これにより、選択還元型触媒33で吸着したアンモニア不足による、選択還元型触媒33からのNOxの流出を防止することができる。
【0064】
また、アンモニア吸着目標量Atを、選択還元型触媒33に吸着可能なアンモニア吸着上限量Auと、アンモニア生成制御開始時の選択還元型触媒33に吸着されているアンモニア吸着量A1とから、At=Au−A1で算出する。とこれにより、比較的簡単に、適切なアンモニア吸着目標量を算出できる。
【0065】
また、アンモニア吸着目標量Atの算出に際して、第1触媒32から流出するNOxの流出量のマップデータと、選択還元型触媒33に吸着可能なアンモニア吸着上限量Auのマップデータの両方を使用する。これにより、アンモニア吸着目標量Atの算出が容易となる。
【0066】
また、アンモニア生成制御において、第1触媒32の温度Tlntが所定の温度以上の時と、第1触媒温度上昇制御により第1触媒32の温度Tlntが所定の温度以上になった時にのみ、排気ガスの空燃比を深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を行う。これにより、効率よくアンモニアを生成することができる。
【0067】
また、アンモニア生成制御に際して、第1触媒32の温度Tlntと排気ガスの空燃比とをパラメータとするアンモニア生成量A4のマップデータに従って排気ガスの空燃比を制御する。これにより、アンモニアの生成量を適切に調整することができる。
【0068】
また、場合によっては、アンモニア生成制御において、排気管内燃料噴射を実施し、触媒温度上昇、又は、アンモニア生成、又は、その両方を行うこともできる。これにより、ディーゼルエンジン10が発生するトルクの変動を避けることができる。
【0069】
従って、上記の構成のNOx浄化システムの制御方法及びNOx浄化システム1によれば、アンモニア生成制御を実施しない時に、第1触媒の下流に流出するNOxを還元するための選択還元型触媒で吸着したアンモニアが不足して、選択還元型触媒下流側へNOxが流出することを防止できる。また、それと共に、アンモニア生成時に選択還元型触媒33に対してアンモニアを過剰に供給することを回避でき、選択還元型触媒33の下流側へのアンモニアの流出を防止できる。
【0070】
なお、上記の実施の形態のNOx浄化システム1では、第1触媒として、リーンNOx触媒(LNT)32を用いたが、このリーンNOx触媒の代りに三元触媒を用いてもよい。この三元触媒を用いる場合には、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されてから放出されるNOxではなく、排気ガス中のNOxがアンモニアに変換される。
【0071】
また、リーンNOx触媒32としてNOx吸蔵還元型触媒を用いたが、このNOx吸蔵還元型触媒の代りに、直接還元型NOx触媒を用いてもよい。この直接還元型NOx触媒を用いる場合にも、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されてから放出されるNOxではなく、排気ガス中のNOxがアンモニアに変換される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のNOx浄化システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るNOx浄化システムのNO浄化制御手段の構成を示す図である。
【図3】本発明に係るNOx浄化システムの制御方法を示す制御フローの図である。
【図4】NOx流出量の算出方法を説明するための模式的な図である。
【図5】アンモニア消費量の算出方法を説明するための模式的な図である。
【図6】アンモニア吸着上限量の算出方法を説明するための模式的な図である。
【図7】アンモニア生成量の算出方法を説明するための模式的な図である。
【符号の説明】
【0073】
1 NOx浄化システム
10 ディーゼルエンジン
11 排気ガス通路
30 NOx浄化装置
31 酸化触媒(DOC)
32 リーンNOx触媒(LNT)
33 選択還元型触媒(SCR触媒)
40 エンジン制御装置(ECU)
40a NOx浄化制御装置
41 空燃比(A/F)センサ
42、43、44、45 温度センサ
A 空気
A1 アンモニア吸着量
A2 アンモニア消費量
A3 アンモニア生成蓄積量
A4 アンモニア生成量
As アンモニア生成開始量
At アンモニア吸着目標量
Au アンモニア吸着上限量
C10 NOx浄化制御手段
C11 通常運転制御手段
C12 アンモニア生成開始判断手段
C13 アンモニア生成制御手段
C13a 第1触媒昇温制御手段
C13b 排気ガス空燃比制御手段
C14 アンモニア生成停止判断手段
G 排気ガス
N1 NOx流出量
Ne エンジン回転数
Q 燃料噴射量(又は負荷)
Tlnt リーンNOx触媒の触媒温度
Tscr 選択還元型触媒の触媒温度
λ 空気過剰率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス通路に上流側からリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒と選択還元型NOx触媒を配置し、アンモニア生成制御を実施した時に前記第1触媒でアンモニアを生成させ、発生したアンモニアを前記選択還元型触媒に吸着させると共に、前記アンモニア生成制御を実施しない時では前記選択還元型触媒に吸着させたアンモニアで排気ガス中のNOxを還元するNOx浄化システムの制御方法において、
前記アンモニア生成制御に際して、前記選択還元型触媒で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量を算出し、前記アンモニア生成制御により前記第1触媒で生成されるアンモニア生成量の積算値が前記アンモニア吸着目標量を下回る時にのみ前記アンモニア生成制御を実施することを特徴とするNOx浄化システムの制御方法。
【請求項2】
前記アンモニア生成制御を実施しない時において、前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量を算出し、該アンモニア吸着量が所定のアンモニア生成開始量以下となった時に前記アンモニア生成制御を開始することを特徴とする請求項1記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項3】
前記アンモニア吸着目標量を、前記選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量と、前記アンモニア生成制御開始時の前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量とから算出することを特徴とする請求項1又は2記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項4】
前記アンモニア吸着目標量の算出に際して、前記第1触媒から流出するNOxの流出量のマップデータ、前選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量のマップデータの少なくとも一方を使用することを特徴とする請求項1、2又は3記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項5】
前記アンモニア生成制御において、前記第1触媒の温度が所定の温度以上の時と、触媒温度上昇制御により前記第1触媒の温度が前記所定の温度以上になった時にのみ、排気ガスの空燃比を深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項6】
前記アンモニア生成制御に際して、前記第1触媒の温度と排気ガスの空燃比とをパラメータとするアンモニア生成量のマップデータに従って排気ガスの空燃比を制御することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項7】
前記アンモニア生成制御において、排気管内燃料噴射を実施し、触媒温度上昇、又は、アンモニア生成、又は、その両方を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のNOx浄化システムの制御方法。
【請求項8】
排気ガス通路に上流側からリーンNOx触媒又は三元触媒で形成される第1触媒と選択還元型NOx触媒を配置し、アンモニア生成制御を実施した時に前記第1触媒でアンモニアを生成させ、発生したアンモニアを前記選択還元型触媒に吸着させると共に、前記アンモニア生成制御を実施しない時では前記選択還元型触媒に吸着させたアンモニアで排気ガス中のNOxを還元するNOx浄化システムにおいて、
前記アンモニア生成制御に際して、前記選択還元型触媒で吸着するアンモニアの目標値であるアンモニア吸着目標量を算出し、前記アンモニア生成制御により前記第1触媒で生成されるアンモニア生成量の積算値が前記アンモニア吸着目標量を下回る時にのみ前記アンモニア生成制御を実施するNOx浄化制御装置手段を備えたことを特徴とするNOx浄化システム。
【請求項9】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御を実施しない時において、前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量を算出し、該アンモニア吸着量が所定のアンモニア生成開始量以下となった時に前記アンモニア生成制御の開始であるとするアンモニア生成開始判断手段を有することを特徴とする請求項8記載のNOx浄化システム。
【請求項10】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア吸着目標量を、前記選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量と、前記アンモニア生成制御開始時の前記選択還元型触媒に吸着されているアンモニア吸着量とから算出することを特徴とする請求項8又は9記載のNOx浄化システム。
【請求項11】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア吸着目標量の算出に際して、前記第1触媒から流出するNOxの流出量のマップデータ、前選択還元型触媒に吸着可能なアンモニア吸着上限量のマップデータの少なくとも一方を使用することを特徴とする請求項8、9又は10記載のNOx浄化システム。
【請求項12】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御において、前記第1触媒の温度が所定の温度以上の時と、触媒温度上昇制御により前記第1触媒の温度が前記所定の温度以上になった時にのみ、排気ガスの空燃比を深いリッチ状態にする排気ガス空燃比制御を行うことを特徴とする請求項8、9、10又は11記載のNOx浄化システム。
【請求項13】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御に際して、前記第1触媒の温度と排気ガスの空燃比とをパラメータとするアンモニア生成量のマップデータに従って排気ガスの空燃比を制御することを特徴とする請求項8、9、10、11又は12記載のNOx浄化システム。
【請求項14】
前記NOx浄化制御手段が、前記アンモニア生成制御において、排気管内燃料噴射を実施し、触媒温度上昇、又は、アンモニア生成、又は、その両方を行うことを特徴とする請求項8、9、10、11、12又は13記載のNOx浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−286102(P2008−286102A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131675(P2007−131675)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】