説明

NPC1L1(NPC3)およびその使用方法

本発明は、ヒト、ラットおよびマウスのNPC1L1ポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。NPC1L1のアゴニストおよびアンタゴニストを検出するための方法もまた提供される。NPC1L1のインヒビターは、被験体において腸コレステロール吸収を阻害するために使用され得る。1つの実施形態において、内因性染色体NPC1L1のホモ接合性変異を含む、変異トランスジェニックマウスであって、マウスが、いかなる機能性NPC1L1タンパク質も産生しない、マウスが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年9月16日に出願した米国特許出願番号10/663,208の一部継続であり;その出願は、2003年8月22日に出願した米国特許出願番号10/646,301の一部継続であり;その出願は、2003年7月17日に出願した米国特許出願番号10/621,758の一部継続であり;その出願は、2002年7月19日に出願した米国仮特許出願番号60/397,442の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、NPC1L1ポリペプチドおよびそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、それらの使用方法とともに包含する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
先進国における主要死亡原因である脈管疾患の発症をもたらす要因は、血清コレステロールの増加である。20歳〜74歳のアメリカ人のうちの19%が、高い血清コレステロールを有すると推定される。脈管疾患の最も有力な形態は、動脈硬化症であり、これは、動脈壁の肥厚および硬化に関連する状態である。大きな脈管の動脈硬化症は、アテローム性動脈硬化症と呼ばれる。アテローム性動脈硬化症は、脈管障害(例えば、冠状動脈疾患、大動脈瘤、下肢の動脈疾患、および脳血管疾患)における優勢な原因因子である。
【0004】
コレステリルエステルは、アテローム性動脈硬化症病変の主要成分であり、動脈壁細胞におけるコレステロールの主要な貯蔵形態である。コレステリルエステルの形成はまた、食餌コレステロールの腸吸収における一段階である。従って、コレステリルエステル形成の阻害および血清コレステロールの減少は、アテローム性動脈硬化症病変形成の進行を阻害し得、動脈壁におけるコレステリルエステルの蓄積を減少し得、そして食餌コレステロールの腸吸収をブロックし得る。
【0005】
哺乳動物および動物における身体全体のコレステロールホメオスタシスの調節は、腸のコレステロール吸収の調節、細胞コレステロール輸送、食餌コレステロールおよびコレステロール生合成の調節、胆汁酸生合成、ステロイド生合成、およびコレステロール含有血漿リポタンパク質の異化を包含する。腸のコレステロール吸収の調節は、血清コレステロールレベルを調節するための有効な手段であることが証明されている。例えば、コレステロール吸収インヒビターであるエゼチミブ(ezetimibe)
【0006】
【化1】

は、この点に関して有効であることが示されている。エゼチミブを含有する薬学的組成物は、Merck/Schering−Plough Pharmaceuticals,Inc.から商品名Zetia(登録商標)として、商業的に入手可能である。エゼチミブが作用する遺伝子標的の同定は、コレステロール吸収プロセスを理解するため、および他の新規な吸収インヒビターの開発のために、重要である。本発明は、このエゼチミブの標的であるヒトNPC1L1(NPC3としても公知である;Genbank登録番号AF192522;Daviesら、(2000)Genomics 65(2):137〜45およびIoannou,(2000)Mol.Genet.Metab.71(1〜2):175〜81)のラットホモログおよびマウスホモログを提供することによって、この必要性に取り組む。
【0007】
NPC1L1は、YQRL(配列番号38)モチーフ(すなわち、形質膜輸送シグナルへのトランスゴルジネットワークである;Bosら、(1993)EMBO J.12:2219−2228;Humphreyら、(1993)J.Cell.Biol.120:1123−1135;Ponnambalamら、(1994)J.Cell.Biol.125:253−268およびRothmanら、(1996)Science 272:227−234を参照のこと)を含むNグリコシル化タンパク質であり、これは、限定的な組織分布および胃腸量を示す。また、ヒトNPC1L1プロモーターは、ステロール調節エレメント結合タンパク質1(SREBP1)結合コンセンサス配列を含む (Athanikarら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:4935−4940;Ericssonら、(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:945−950;Metherallら、(1989)J.Biol.Chem.264:15634−15641;Smithら、(1990)J.Biol.Chem.265:2306−2310;Bennettら、(1999)J.Biol.Chem.274:13025−13032、およびBrownら、(1997)Cell 89:331−340)。NPC1L1は、ヒトNPC1(Genbank登録番号AF002020)に対して42%のアミノ酸配列相同性を有し、このNPC1は、ニーマン−ピックC1疾患の原因となるレセプターである(Carsteaら、(1997)Science 277:228−231)。ニーマン−ピックC1疾患は、リソソーム中での低密度リポタンパク質(LDL)由来非エステル化コレステロールの蓄積を生じる、ヒトにおいて稀な遺伝性疾患である(Pentchevら、(1994)Biochim.Biophys.Acta.1225:235−243およびVanierら、(1991)Biochim.Biophys.Acta.1096:328−337)。さらに、npc1細胞のトランスゴルジネットワークにおけるコレステロール蓄積、および形質膜へのコレステロールの再配置および形質膜からのコレステロールの再配置が、遅れる。NPC1およびNPC1L1は、各々、13回膜貫通セグメントおよびステロール検知ドメイン(SSD)を保有する。いくつかの他のタンパク質(HMG−CoAレダクターゼ(HMG−R)、パッチド(Patched)(PTC)およびステロール調節エレメント結合タンパク質切断−活性化タンパク質(SCAP)を含む)は、おそらく直接的コレステロール結合を含む機構によるコレステロールレベルの検知に関与するSSDを含む(Gilら、(1985)Cell 41:249−258;Kumagaiら、(1995)J.Biol.Chem.270:19107−19113およびHuaら、(1996)Cell 87:415−426)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、配列番号2および配列番号12から選択されるアミノ酸配列の42個以上連続するアミノ酸を含む単離されたポリペプチドを包含し、好ましくは、配列番号2および配列番号12から選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを包含する。本発明はまた、配列番号4のアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを包含する。本発明はまた、配列番号2、配列番号4または配列番号12のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを包含し、好ましくは、配列番号1、配列番号3、配列番号5〜配列番号10、配列番号11および配列番号13から選択されるヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを包含する。本発明のポリヌクレオチドを含む組換えベクターもまた、そのベクターを含む宿主細胞とともに提供される。
【0009】
本発明はまた、NPC1L1(例えば、ラットNPC1L1、マウスNPC1L1もしくはヒトNPC1L1)に特異的に結合するか、またはNPC1L1に対して産生された単離された抗体、あるいはその任意の抗原性フラグメント(好ましくは、ラットNPC1L1、より好ましくは、配列番号39〜配列番号42から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド)に特異的に結合するか、または抗原性フラグメントに対して産生された単離された抗体を提供する。好ましくは、この抗体は、単離されたポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である。1つの実施形態において、この抗体は、ウサギから得られる。
【0010】
本発明はまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドを生成するための方法を包含し、この方法は、本発明の宿主細胞を、その細胞中にあるNPC1L1ポリペプチドをコードすする核酸が発現される条件下で培養する工程、を包含する。好ましくは、この方法は、上記ポリペプチドを、上記培養物から単離する工程を包含する。
【0011】
本発明は、NPC1L1のアゴニストもしくはアンタゴニストを同定するための方法を包含し、この方法は、
(a)配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能性フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞、またはCaco2細胞)を、既知量の検出可能に(例えば、H、14Cまたは125Iで)標識された置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)の存在下で、NPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストの存在について試験されるべきサンプルと接触させる工程;ならびに
(b)そのポリペプチドに特異的に結合した検出可能に標識された置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)の量を測定する工程;
を包含し、このサンプル中のNPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストは、そのようなアゴニストまたはアンタゴニストの非存在下で測定される結合と比較して、そのポリペプチドに対する検出可能に標識された置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)の実質的に減少した結合を測定することによって同定される。
【0012】
NPC1L1のアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための別の方法もまた、提供される。この方法は、
(a)水性懸濁物中に、蛍光剤(例えば、ケイ酸イットリウム、酸化イットリウム、ジフェニルオキサゾール、およびポリビニルトルエン)を浸漬させた複数の支持体粒子を配置する工程であって、その粒子に、配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能性フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞、またはCaco2細胞)が結合している、工程;
(b)その懸濁物に、(例えば、H、14Cまたは125Iによる)放射標識置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)と、アンタゴニストまたはアゴニストの存在について試験されるべきサンプルとを添加する工程であって、その放射標識は、その置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)がそのポリペプチドに結合した際にその蛍光剤を活性化して光エネルギーを生成可能な放射線エネルギーを発し、一方、そのポリペプチドに結合しない放射標識置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)は、概して、その放射エネルギーがその蛍光剤を活性化するのを可能にするにはその支持体粒子から離れすぎている、工程;ならびに
(c)その懸濁物においてその蛍光剤により発せられた光エネルギーを測定する工程;
を包含し、
そのサンプル中のNPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストは、そのようなアゴニストまたはアンタゴニストの非存在下で測定される光エネルギー放出と比較して、実質的に減少した光エネルギー放出を測定することによって同定される。
【0013】
NPC1L1のアゴニストまたはアンタゴニストを同定するための方法もまた、提供され、この方法は、
(a)配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能性フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞、またはCaco2細胞)を、(例えば、H、14Cまたは125Iで)検出可能に標識されたステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールと、およびアンタゴニストまたはアゴニストの存在について試験されるべきサンプルと、接触させる工程;ならびに
(b)その細胞における検出可能に標識されたステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの量を測定する工程;
を包含し、
そのサンプル中のNPC1L1アンタゴニストは、そのようなアンタゴニストの非存在下で測定される場合と比較して、その宿主細胞中の実質的に減少した検出可能に標識されたステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを測定することによって同定され、そしてそのサンプル中のNPC1L1アゴニストは、そのようなアゴニストの非存在下で測定される場合と比較して、その宿主細胞中の実質的に増加した検出可能に標識されたステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを測定することによって同定される。
【0014】
本発明は、本明細書中で記載されたスクリーニング方法によって同定された物質を被験体に投与する工程によって、被験体におけるNPC1L1媒介性腸ステロール(例えば、コレステロール)摂取または5α−スタノール摂取を阻害するための方法を包含する。そのような物質としては、化合物(例えば、エゼチミブ以外のNPC1L1の低分子アンタゴニスト)が挙げられる。抗NPC1L1抗体を投与する工程によって、NPC1L1媒介性ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収をアンタゴナイズするための方法もまた企図される。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのNPC1L1媒介性吸収もまた、生物におけるNPC1L1の発現を減少させる任意の方法によって、アンタゴナイズされ得る。例えば、NPC1L1発現は、生物の細胞中へのアンチセンスNPC1L1 mRNAの導入によって、または生物体におけるNPC1L1遺伝子の遺伝子変異によって(例えば、完全なノックアウト、破壊、短縮によって、または1つ以上の点変異の導入によって)減少され得る。
【0015】
変異トランスジェニック哺乳動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、ブタ、モルモット、ネコ、ウマ)、好ましくは、内因性の染色体NPC1L1のホモ接合性変異またはヘテロ接合性変異(例えば、破壊、短縮、1つ以上の点変異、ノックアウト)を含むマウスもまた、本発明に包含され、ここで、好ましくは、マウスは、任意の機能性NPC1L1タンパク質を生成しない。好ましくは、機能性NPC1L1を欠く変異マウスは、機能性NPC1L1を含む非変異マウスと比べて、減少したレベルの腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収もしくは5α−スタノール吸収および/または減少したレベルの血清ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールおよび/または減少したレベルの肝ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールを示す。好ましくは、変異マウスの染色体において、欠失されたNPC1L1の領域(配列番号45)は、ヌクレオチド790〜ヌクレオチド998である。1つの実施形態において、NPC1L1(配列番号11)は、ヌクレオチド767〜ヌクレオチド975を欠失される。遺伝したnpc1l1変異対立遺伝子を有する本発明の親NPC1L1変異マウス(すなわち、npc1l1)のいかなる子または子孫もまた、本発明の一部である。
【0016】
本発明の範囲はまた、腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収のアンタゴニストについてサンプルをスクリーニングするための方法も包含し、この方法は、
(a)ステロール(例えば、コレステロール)含有物質または5α−スタノール含有物質(例えば、放射標識したコレステロール(例えば、14C−コレステロールまたはH−コレステロール)を含む)を、機能性NPC1L1遺伝子を含む第1および第2のマウス、ならびに機能性NPC1L1を欠く第3の変異マウスに供給する工程;
(b)そのサンプルを、機能性NPC1L1を含む第1のマウスに投与するが、第2のマウスに投与しない工程;
(c)上記第1、第2および第3のマウスの腸におけるステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収の量を測定する(例えば、血清コレステロールを測定することによる)工程;ならびに
(d)各マウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収のレベルを比較する工程;
を包含し、ここで、そのサンプルは、第1のマウスおよび第3のマウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収のレベルが、第2のマウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収の量に満たない場合、腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収アンタゴニストまたは5α−スタノール吸収アンタゴニストを含むことが決定される。
【0017】
本発明はまた、キットを包含し、そのキットは、
(a)薬学的な投薬形態(例えば、10mgの置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ)を含む丸剤または錠剤)における置換アゼチジノン(例えば、エゼチミブ);および
(b)例えば、挿入物の形態において、NPC1L1がエゼチミブの標的であることを示す情報、
を包含する。そのキットはまた、薬学的な投薬形態(例えば、5mg、10mg、20mg、40mgまたは80mgのシンバスタチンを含む丸剤または錠剤)においてシンバスタチンを包含し得る。薬学的な投薬形態におけるシンバスタチンおよび薬学的な投薬形態におけるエゼチミブは、単一の丸剤または錠剤あるいは別々の丸剤または錠剤において関連付けられ得る。
【0018】
本発明はまた、機能性NPC1L1ポリペプチドをコードするか、または生成し得る遺伝子を欠く任意の単離された哺乳動物細胞(例えば、単離されたマウス細胞、単離されたラット細胞または単離されたヒト細胞)を提供する。変異マウスから単離され得る単離された細胞は、内因性の染色体NPC1L1のホモ接合性変異を含み、ここで、そのマウスは、任意の機能性NPC1L1タンパク質を生成しない。さらに、変異は、遺伝子中であり得、それは、変異されていない場合、配列番号12(例えば、配列番号11のヌクレオチド配列を含む)のアミノ酸配列をコードする。その細胞は、十二指腸、胆嚢、肝臓、小腸または胃の組織から単離または誘導され得る。その細胞は腸細胞であり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ラット、ヒトおよびマウス由来のNPC1L1ポリペプチドを、個々のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとともに包含する。好ましくは、ラットNPC1L1ポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み、ヒトNPC1L1は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、マウスNPC1L1ポリペプチドは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む。配列番号1または配列番号10のラットNPC1L1ポリヌクレオチドは、ラットNPC1L1ポリペプチドをコードする。配列番号3のヒトNPC1L1ポリヌクレオチドは、ヒトNPC1L1ポリペプチドをコードする。配列番号11または配列番号13のマウスNPC1L1ポリヌクレオチドは、マウスNPC1L1ポリペプチドをコードする。
【0020】
本発明は、以下の表1において言及されるヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を含む、任意の単離されたポリヌクレオチドまたは単離されたポリペプチドを包含する。
【0021】
【表1】

ヒトNPC1L1はまた、Genbank登録番号AF192522の下で開示される。下記に考察されるように、配列番号1に示されるラットNPC1L1のヌクレオチド配列は、ラット空腸細胞cDNAライブラリー由来の発現配列タグ(EST)から得られた。配列番号5〜7は、3つの独立したcDNAクローンの部分的ヌクレオチド配列を含む。配列番号5の下流配列EST(603662080F1)が、決定され;これらの実験からの配列決定データは、配列番号8に示される。上流配列もまた、決定され;これらのデータは、配列番号9に示される。
【0022】
配列番号43および44は、それぞれ、Genbank登録番号AF192522の下で開示されるヒトNPC1L1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である(Daviesら、(2000)Genomics 65(2):137−45を参照のこと)。
【0023】
配列番号45は、Genbank登録番号AK078947の下で開示されるマウスNPC1L1のヌクレオチド配列である。
【0024】
NPC1L1は、腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収を媒介する。患者におけるNPC1L1の阻害は、患者における腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収および血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを減少させるための有用な方法である。患者における腸ステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収および血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのレベルを減少させることは、アテローム性動脈硬化、特に食餌誘発のアテローム性動脈硬化の発生を処置または予防するために有用な方法である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「ステロール」としては、コレステロールおよびフィトステロール(シトステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびアベノステロール(avenosterol)が挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書中で使用される場合、用語「5α−スタノール」としては、コレスタノール、5α−カンペスタノールおよび5α−シトスタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
(分子生物学)
本発明に従って、当業者の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が使用され得る。そのような技術は、文献中に完全に説明される。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(本明細書中では「Sambrookら、1989」);DNA Cloning:A Practical Approach,第I巻および第II巻(D.N.Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985));Transcription And Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984));Animal Cell Culture(R.I.Freshney編(1986));Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照のこと。
【0028】
配列番号10および配列番号13の逆翻訳配列は、PCT Administrative Instruction in the Manual of Patent Examination Procedureの添付物2付属書Cの表1に示される1文字コードを使用する。
【0029】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」は、一本鎖形態、二本鎖形態、または他の形態である、リン酸エステルポリマー形態のリボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、もしくはシチジン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、もしくはデオキシシチジン(DNA分子」)、またはそれらの任意のホスホエステルアナログ(例えば、ホスホロチオエートおよびチオエステル)を指し得る。
【0030】
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は、核酸(例えば、DNAまたはRNA)中の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)であり、2つの以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。
【0031】
「コード配列」または発現生成物(例えば、RNA、ポリペプチド、タンパク質、もしくは酵素)を「コードする」配列は、発現された場合にその生成物の生成をもたらすヌクレオチド配列である。
【0032】
用語「遺伝子」とは、1つ以上のRNA分子、タンパク質、もしくは酵素のすべてもしくは一部を含むリボヌクレオチドもしくはアミノ酸の特定の配列をコードするかまたはその特定の配列に対応する、DNA配列を意味する。このDNA配列は、例えばその遺伝子が発現される条件を決定する調節DNA配列(例えば、プロモーター配列)を含んでもよいし、含まなくてもよい。遺伝子は、DNAからRNAへと転写され得、このRNAは、アミノ酸配列に翻訳されても翻訳されなくてもよい。
【0033】
本発明は、配列番号1、5〜11、または13のうちのいずれかの核酸フラグメントを包含する。核酸「フラグメント」とは、配列番号1、5〜11、または13のうちのいずれか由来の少なくとも30個(例えば、31、32、33、34個)、好ましくは少なくとも約35個(例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、もしくは34個)、より好ましくは少なくとも45個(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、もしくは44個)、そして最も好ましくは少なくとも約126個以上連続するヌクレオチド(例えば、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、1000または1200個)を含む。
【0034】
本発明はまた、配列番号1、5〜11、または13のうちのいずれか由来の少なくとも約7個(例えば、9、12、17、19個)、好ましくは少なくとも約20個(例えば、30、40、50、60個)、より好ましくは約70個(例えば、80、90、95個)、なおより好ましくは少なくとも約100個(例えば、105、110、114個)そしてなおより好ましくは少なくとも約115個(例えば、117、119、120、122、124、125、126個)連続するヌクレオチドからなる核酸フラグメントを包含する。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴヌクレオチド」は、一般的に約100個を越えない(例えば、30、40、50、60、70、80または90個)のヌクレオチドからなる核酸をいい、遺伝子、mRNA、cDNAまたは目的とする他の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子またはmRNA分子にハイブリダイズ可能であり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、32P−ヌクレオチド、H−ヌクレオチド、14C−ヌクレオチド、35S−ヌクレオチド、または標識(例えば、ビオチン)が共有結合されているヌクレオチドの取り込みにより、標識され得る。一つの実施形態において、標識されたオリゴヌクレオチドは、核酸の存在を検出するためのプローブとして使用され得る。別の実施形態において、(その一方、または両方が標識され得る)オリゴヌクレオチドは、全長遺伝子または遺伝子フラグメントをクローニングすること、または核酸の存在を検出することのいずれかのために、PCRプライマーとして使用され得る。一般的に、オリゴヌクレオチドは合成的に(好ましくは、核酸合成機にて)調製される。
【0036】
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」または「ポリペプチド配列」、あるいは「アミノ酸配列」は、タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドにおける一連の2つ以上のアミノ酸を指し得る。
【0037】
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の連続する列を含む。本発明の好ましいペプチドとしては、配列番号2または配列番号12のいずれかに示されるもの、ならびにそれらの改変体およびフラグメントが挙げられる。このようなフラグメントは、配列番号2または配列番号12のいずれか由来の、好ましくは、少なくとも約10個(例えば、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個または19個)、より好ましくは、少なくとも約20個(例えば、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、35個、40個)、そしてなおより好ましくは、少なくとも約42個(例えば、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個または130個)あるいはそれ以上の連続するアミノ酸残基を含有する。
【0038】
本発明はまた、配列番号2または配列番号12のいずれか由来の、少なくとも約7個(例えば、9個、10個、13個、15個、17個、19個)、好ましくは、少なくとも約20個(例えば、22個、24個、26個、28個)、なおより好ましくは、少なくとも約30個(例えば、32個、34個、36個、38個)、そしてなおより好ましくは、少なくとも約40個(例えば、41個、42個)の連続するアミノ酸からなるポリペプチド(好ましくは、抗原性ポリペプチド)を含む。
【0039】
本発明のポリペプチドは、インタクトなペプチドのタンパク質分解切断により、化学合成により、または組み換えDNA技術の適用により、産生され得、そしてタンパク質分解切断部位により切断されたポリペプチドに限定されない。上記のポリペプチドは、単独でか、またはそのポリペプチドをより免疫原性にするために架橋されるかもしくはキャリア分子に結合されて、抗体および抗体フラグメントの産生を惹起するための抗原として有用である。この抗体は、例えば、免疫親和性精製のためのイムノアッセイにおいて、またはNPC1L1の阻害のためなどに、使用され得る。
【0040】
用語「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたポリペプチド」は、細胞または組み換えDNA発現系において通常見出される他の成分から、部分的または完全に分離された、ポリヌクレオチド(例えば、RNA分子またはDNA分子、あるいは混合ポリマー)またはポリペプチドをそれぞれ含む。これらの成分としては、細胞膜、細胞壁、リボソーム、ポリメラーゼ、血清成分および外来性ゲノム配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、好ましくは、本質的に均質な分子組成であるが、いくらかの不均質性を含み得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、DNAの「増幅」は、DNA配列の混合物中の特定のDNA配列の濃度を増加させるための、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を意味し得る。PCRの説明については、Saikiら、Science(1988)239:487を参照のこと。
【0043】
用語「宿主細胞」は、その細胞による物質の産生(例えば、その細胞による遺伝子、DNA配列またはRNA配列、あるいはタンパク質の、発現または複製)のために、選択、改変、トランスフェクト、形質導入、増殖されるか、あるいは任意の方法で使用または操作される、任意の生物体の任意の細胞を含む。好ましい宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスマクロファージJ774細胞または任意の他のマクロファージ細胞株およびヒト腸上皮Caco2細胞が挙げられる。
【0044】
核酸のヌクレオチド配列は、当該分野において公知である任意の方法(例えば、化学的配列決定または酵素的配列決定)により、決定され得る。DNAの「化学的配列決定」としては、例えばMaxamおよびGilbert(1977)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:560)の方法のような方法が挙げられる(この方法ではDNAが、個々の塩基特異的な反応を使用してランダムに切断される)。DNAの「酵素的配列決定」としては、例えば、Sanger(Sangerら、(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463)の方法のような方法が挙げられる。
【0045】
本明細書中の核酸は、天然の調節(発現制御)配列により隣接され得るか、または異種配列(プロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)、および他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、サプレッサー、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−非コード領域および3’−非コード領域などを含む)に結合され得る。
【0046】
一般に、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞中でRNAポリメラーゼに(例えば、直接にか、または他のプロモーター結合タンパク質もしくはプロモーター結合物質を介して)結合可能であり、かつコード配列の転写を開始し得る、DNA調節領域である。プロモーター配列は、一般に、その3’末端で転写開始部位に結合しており、そして上流(5’方向)に延びて、任意のレベルで転写を開始するために必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含む。このプロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を用いるマッピングによって、簡便に規定される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が、見出され得る。このプロモーターは、他の発現制御配列(エンハンサー配列およびリプレッサー配列を含む)と、または本発明の核酸と、作動可能に結合され得る。遺伝子発現を制御するために使用され得るプロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号および同第5,168,062号)、SV40初期プロモーター領域(Benoistら、(1981)Nature 290:304−310)、ラウス肉腫ウイルスの3’の長い末端反復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、(1980)Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、(1982)Nature 296:39−42);原核生物発現ベクター(例えば、β−ラクタマーゼプロモーター)(Villa−Komaroffら、(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727−3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25))(Scientific American(1980)242:74−94の「Useful proteins from recombinant bacteria」もまた参照のこと);ならびに酵母もしくは他の真菌由来のプロモーターエレメント(例えば、Gal4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)またはアルカリホスファターゼプロモーター)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
コード配列は、細胞中の転写制御配列および翻訳制御配列が、そのコード配列のRNA(好ましくはmRNA)へのRNAポリメラーゼ媒介性転写に関し、次いでそのRNAが、(イントロンを含む場合には)RNAスプライシングされ得、そして必要に応じて、そのコード配列によりコードされるタンパク質へと翻訳され得る場合に、それらの転写制御配列よび翻訳制御配列「の制御下にある」か、「と機能的に結合している」か、または「と作動可能に結合している」。
【0048】
用語「発現する」および「発現」は、遺伝子、RNA配列もしくはDNA配列中の情報が明らかになるのを可能にすることまたはそれを引き起こすこと(例えば、対応する遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによって、タンパク質を生成すること)を意味する。DNA配列は、細胞中で、または細胞によって、「発現産物」(例えば、RNA(例えば、mRNA)またはタンパク質)を形成するように発現される。その発現産物自体もまた、その細胞によって「発現される」と言われ得る。
【0049】
用語「形質転換」とは、核酸を細胞中に導入することを意味する。導入される遺伝子または配列は、「クローン」と呼ばれ得る。その導入されるDNAまたはRNAを受ける宿主細胞は、「形質転換」されており、これは、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、任意の供給源由来であり得、この供給源は、宿主細胞と同じ属または種の細胞由来であっても、異なる属または種の細胞由来であってもよい。
【0050】
用語「ベクター」は、宿主を形質転換し、必要に応じて導入された配列の発現および/または複製を促進するように、DNA配列またはRNA配列を宿主細胞中に導入し得るビヒクル(例えば、プラスミド)を包含する。
【0051】
本発明において使用され得るベクターとしては、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、組込み可能なDNAフラグメント、および宿主ゲノム中への核酸の導入を促進し得る他のビヒクルが挙げられる。プラスミドは、最も一般的に使用される形態のベクターであるが、同様の機能を提供しかつ当該分野で公知であるかまたは公知となる他のすべての形態のベクターが、本明細書中での使用のために適切である。例えば、Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985および補遺、Elsevier,N.Y.ならびにRodriguezら(編)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses 1988,Buttersworth,Boston,MAを参照のこと。
【0052】
用語「発現系」とは、適切な条件下で、そのベクターにより保有されて宿主細胞中に導入されるタンパク質または核酸を発現し得る、宿主細胞および適合性ベクターを意味する。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物宿主細胞およびベクターが挙げられる。
【0053】
本発明のNPC1L1ポリペプチドをコードする核酸の発現は、原核生物細胞または真核生物細胞のいずれかにおいて従来の方法によって実行され得る。E.coli宿主細胞は、原核生物系において最も頻繁に使用されるが、他の多くの細菌(例えば、種々のPseudomonas株およびBacillus株)が、当該分野で公知であり、そして同様に使用され得る。NPC1L1ポリペプチドをコードする核酸を発現するために適切な宿主細胞としては、原核生物および高等真核生物が挙げられる。原核生物は、グラム陰性生物およびグラム陽性生物(例えば、E.coliおよびB.subtilis)の両方を包含する。高等真核生物は、動物細胞(非哺乳動物起源(例えば、昆虫細胞および鳥類)ならびに哺乳動物起源(例えば、ヒト、霊長類、および齧歯類)の両方)由来の樹立された組織培養細胞株を包含する。
【0054】
原核生物宿主−ベクター系は、多くの異なる種のための多種多様なベクターを包含する。DNA増幅のための代表的なベクターは、pBR322またはその誘導体の多く(例えば、pUC18もしくはpUC19)である。NPC1L1ポリペプチドを発現するために使用され得るベクターとしては、lacプロモーターを含むベクター(pUCシリーズ);trpプロモーターを含むベクター(pBR322−trp);Ippプロモーターを含むベクター(pINシリーズ);λ−pPプロモーターまたはλ−pRプロモーターを含むベクター(pOTS);あるいはハイブリッドプロモーター(例えば、ptac)を含むベクター(pDR540)が挙げられるが、これらに限定されない。Brosiusら、「Expression Vectors Employing Lambda−,trp−,lac−,and Ipp−derived Promoters」,RodriguezおよびDenhardt(編)Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,1988,Buttersworth,Boston,205〜236ページを参照のこと。多くのポリペプチドは、米国特許第4,952,496号、同第5,693,489号および同第5,869,320号、ならびにDavanloo,P.ら、(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:2035〜2039;Studier,F.W.ら、(1986)J.Mol.Biol.189:113−130;Rosenberg,A.H.ら、(1987)Gene 56:125−135;およびDunn,J.J.ら、(1988)Gene 68:259に開示されるようなE.coli/T7発現系において、高レベルで発現され得る。
【0055】
高等真核生物組織培養細胞もまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドの組換え体作製のために使用され得る。任意の高等真核生物組織培養細胞株(昆虫バキュロウイルス発現系が挙げられる)が使用され得るが、哺乳動物細胞が、好ましい。このような細胞の形質転換、トランスフェクションおよび増殖は、慣用的手順となっている。有用な細胞株の例としては、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、J774細胞、Caco2細胞、ラット乳児腎臓(BRK)細胞株、昆虫細胞株、鳥類細胞株、およびサル(COS)細胞株が挙げられる。そのような細胞株のための発現ベクターは、通常は、複製起点、プロモーター、翻訳開始部位、RNAスプライス部位(ゲノムDNAが使用される場合)、ポリアデニル化部位、および転写終結部位を含む。これらのベクターはまた、通常は、選択遺伝子または増幅遺伝子を含む。適切な発現ベクターは、例えば、アデノウイルス、SV40、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、またはサイトメガロウイルスのような供給源に由来するプロモーターを保有する、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスであり得る。発現ベクターの例としては、pCR(登録商標)3.1、pCDNA1、pCD(Okayamaら、(1985)Mol.Cell Biol.5:1136)、pMC1neo Poly−A(Thomasら、(1987)Cell 51:503)、pREP8、pSVSPORTおよびそれらの誘導体、ならびにバキュロウイルスベクター(例えば、pAC373またはpAC610)が挙げられる。本発明の1つの実施形態は、膜結合型NPC1L1を包含する。この実施形態において、NPC1L1は、真核生物細胞の細胞膜において発現され得、そしてその膜結合型タンパク質は、当該分野で公知の従来の方法によって、その細胞から単離され得る。
【0056】
本発明はまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドおよびNPC1L1ポリヌクレオチドと、第2ポリペプチド部分もしくは第2ポリヌクレオチド部分(「タグ」と呼ばれ得る)とを含む、融合物を包含する。本発明の融合物は、表1に示されるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドのいずれか、またはそれらの任意の部分配列もしくはフラグメント(上記に考察される)を含み得る。本発明の融合ポリペプチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを、発現ベクター中に挿入することによって、簡便に構築され得る。本発明の融合物は、精製または検出を容易にするタグを含み得る。そのようなタグとしては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、セルロース結合タンパク質(CBP)タグ、およびmycタグが挙げられる。検出可能なタグ(例えば、32P、35S、H、99mTc、123I、111In、68Ga、18F、125I、131I、113mIn、76Br、67Ga、99mTc、123I、111Inおよび68Ga)もまた、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを標識するために使用され得る。このような融合物を構築および使用するための方法は、非常に従来的であり、当該分野で周知である。
【0057】
ポリペプチドにおいて生じる改変(例えば、翻訳後修飾)は、しばしば、そのポリペプチドを作製する方法に関係するである。例えば、宿主においてクローン化遺伝子を発現することによって生成されるポリペプチドについて、その改変の性質および程度は、大部分は、宿主細胞の翻訳後修飾能力、およびそのポリペプチドのアミノ酸配列中に存在する修飾シグナルによって、決定される。例えば、周知であるように、グリコシル化は、しばしば、細菌宿主(例えば、E.coli)において生じない。従って、グリコシル化が望ましい場合、ポリペプチドは、グリコシル化する宿主(一般的には、真核生物細胞)において発現され得る。昆虫細胞は、しばしば、哺乳動物細胞と同様に翻訳後グリコシル化を行う。この理由のために、昆虫細胞発現系は、グリコシル化のネイティブパターンを有する哺乳動物タンパク質を効率的に発現するために開発されている。本発明において使用され得る昆虫細胞は、Insecta綱の生物に由来する任意の細胞である。好ましくは、その昆虫は、Spodoptera fruigiperda(Sf9もしくはSf2l)またはTrichoplusia ni(High 5)である。本発明によって、例えば、NPC1L1ポリペプチドを生成するために使用され得る昆虫発現系の例としては、Bac−To−Bac(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)またはGateway(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)が挙げられる。望ましい場合、脱グリコシル化酵素が、真核生物発現系における生成の間に結合した糖質を除去するために、使用され得る。
【0058】
他の改変としては、ポリペプチドカルボキシル末端への脂肪族エステルまたはアミドの付加もまた、挙げられ得る。本発明はまた、改変(例えば、非天然アミノ酸残基またはリン酸化アミノ酸残基(例えば、ホスホチロシン残基、ホスホセリン残基、もしくはホスホスレオニン残基)の取り込み)を含むNPC1L1ポリペプチドアナログを包含する。他の潜在的な改変としては、硫酸化、ビオチン化、または他の部分の付加が挙げられる。例えば、本発明のNPC1L1ポリペプチドは、被験体の身体においてそのペプチドの半減期を増加するポリマーを結合され得る。好ましいポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDa、および40kDaを有するPEG)、デキストラン、およびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられる。
【0059】
本発明のペプチドはまた、環化され得る。具体的には、NPC1L1ポリペプチドのアミノ末端残基もしくはカルボキシ末端残基、または本発明のNPC1L1ポリペプチドの2つの内部残基が、融合されて、環化ペプチドを生成し得る。ペプチドを環化するための方法は、従来的かつ当該分野において非常に周知である。例えば、Gurrathら、(1992)Eur.J.Biochem.210:911〜921を参照のこと。
【0060】
本発明は、本発明のポリペプチドに対応するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に対するあらゆる表面的な改変またはわずかな改変を企図する。特に、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の配列保存的改変体を企図する。ポリペプチド配列の「配列保存的改変体」は、所定のコドンの1つ以上のヌクレオチドの変化が、その位置においてコードされるアミノ酸の変化をもたらさない改変体である。本発明のポリペプチドの機能保存的改変体もまた、本発明によって企図される。「機能保存的改変体」は、タンパク質または酵素中の1つ以上のアミノ酸残基が、そのポリペプチドの全体的立体構造および機能を変化することなく変化された改変体であるが、アミノ酸を同様の特性を有するアミノ酸で置換することには、決して限定されない。同様の特性を有するアミノ酸は、当該分野で周知である。例えば、交換可能であり得る極性/親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、スレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられる;交換可能であり得る非極性/疎水性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる;交換可能であり得る酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられ、そして交換可能であり得る塩基性アミノ酸としては、ヒスチジン、リジンおよびアルギニンが挙げられる。
【0061】
本発明は、ラット、ヒトもしくはマウスのNPC1L1をコードするポリヌクレオチドおよびそのフラグメント、ならびにそれらのポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸を包含する。好ましくは、その核酸は、低ストリンジェンシー条件下で、より好ましくは中ストリンジェシー条件下で、最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下で、ハイブリダイズする。核酸分子は、その核酸分子の一本鎖形態が、適切な温度条件および溶液イオン強度条件(例えば、Sambrookら(前出)を参照のこと)下で他の核酸分子にアニーリングし得る場合に、別の核酸分子(例えば、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA)に対して「ハイブリダイズ可能である」。温度条件およびイオン強度条件が、そのハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。代表的な低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、55℃、5×SSC、0.1% SDS、0.25%ミルク、42℃のホルムアミドなし、;または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5% SDS、42℃である。代表的な中ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、そのハイブリダイゼーションが、40%ホルムアミド中で、5×SSCもしくは6×SSCを用いて42℃で実行されることを除いて、低ストリンジェンシー条件と同様である。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、このハイブリダイゼーション条件が、50%ホルムアミド、5×SSCもしくは6×SSC中で、必要に応じて、より高温(例えば、42℃より高温:57℃,59℃、60℃、62℃、63℃、65℃、または68℃)で実行されることを除いて、低ストリンジェンシー条件と同様である。一般に、SSCは、0.15M NaClおよび0.015Mクエン酸Naである。ハイブリダイゼーションは、その2つの核酸が、相補的配列を含むことが必要とするが、そのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに依存して、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、当該分野で周知の変数である、核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きい程、より高いストリンジェンシー下でそれらの核酸がハイブリダイズし得る。100ヌクレオチド長より長いハイブリッドについて、その融解温度を計算するための式が、誘導されている(Sambrookら(前出)9.50〜9.51を参照のこと)。より短い核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド)とのハイブリダイゼーションについて、ミスマッチの位置が、より重要になり、そのオリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrookら(前出)を参照のこと)。
【0062】
本発明にまた含まれるのは、BLASTアルゴリズムにより比較を実施した場合に、参照ラットNPC1L1ヌクレオチド配列(例えば、配列番号1または5〜10)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号2)、参照ヒトNPC1L1ヌクレオチド配列(例えば、配列番号3)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号4)または参照マウスNPC1L1ヌクレオチド(例えば、配列番号11または13)およびアミノ酸配列(例えば、配列番号12)に対して、少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、より好ましくは少なくとも約90%同一、そして最も好ましくは少なくとも約95%同一(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)である、ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドおよびそのようなアミノ酸配列を含むポリペプチドである。このBLASTアルゴリズムでは、このアルゴリズムのパラメーターは、個々の参照配列の長さ全体にわたって個々の配列間で最大の一致を生じるように選択される。BLASTアルゴリズムにより比較を実施した場合に、配列番号2の参照ラットNPC1L1アミノ酸配列、配列番号4の参照ヒトNPC1L1アミノ酸配列または配列番号12の参照マウスNPC1LCアミノ酸配列に対して、少なくとも約70%類似し、好ましくは少なくとも約80%類似し、より好ましくは少なくとも約90%類似し、そして最も好ましくは少なくとも約95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、100%)類似する、アミノ酸配列を含むポリペプチドもまた、本発明に包含される。ここで、このアルゴリズムのパラメーターは、個々の参照配列の長さ全体にわたって個々の配列間で最大の一致を生じるように選択される。
【0063】
配列同一性とは、比較されている2つの配列のヌクレオチド間またはアミノ酸間での正確な一致を指す。配列類似性とは、比較されている2つのポリペプチドのアミノ酸間での正確な一致、および同一でない生化学的に関連するアミノ酸間の一致の両方をさす。類似する特性を共有しており、かつ交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸は、上記に考察されている。
【0064】
BLASTアルゴリズムに関する以下の参考文献は、本明細書中で参考として援用される:BLASTアルゴリズム:Altschul,S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−410;Gish,W.ら、(1993)Nature Genet.3:266−272;Madden,T.L.ら、(1996)Meth.Enzymol.266:131−141;Altschul,S.F.ら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389−3402;Zhang,J.ら、(1997)Genome Res.7:649−656;Wootton,J.C.ら、(1993)Comput.Chem.17:149−163;Hancock,J.M.ら、(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67−70;アライメントスコアリングシステム:Dayhoff,M.O.ら、「A model of evolutionary change in proteins.」Atlas of Protein Sequence and Structure(1978)第5巻、補遺3、M.O.Dayhoff(編)、pp.345−352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.ら「Matrices for detecting distant relationships.」Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978)第5巻,補遺3.,M.O.Dayhoff(編),pp.353−358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991)J.Mol.Biol.219:555−565;States,D.J.ら、(1991)Methods 3:66−70;Henikoff,S.ら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919;Altschul,S.F.ら、(1993)J.Mol.Evol.36:290−300;アライメント統計学:Karlin,S.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−2268;Karlin,S.ら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877;Dembo,A.ら、(1994)Ann.Prob.22.2022−2039;およびAltschul,S.F.「Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.」Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai編),(1997)pp.1−14,Plenum,New York。
【0065】
(タンパク質精製)
本発明のタンパク質、ポリペプチド、および抗原性フラグメントは、標準的方法(塩沈もしくはアルコール沈殿、アフィニティクロマトグラフィ(例えば、上記で考察したようなタグ化NPC1L1ポリペプチドの精製と組み合わせて使用する)、調製用ディスクゲル電気泳動、等電点電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ゲル濾過、カチオン交換クロマトグラフィーおよびアニオン交換クロマトグラフィー、および分配クロマトグラフィー、ならびに向流分配が挙げられるが、これらに限定されない)によって、精製され得る。そのような精製方法は、当該分野で周知であり、例えば、「Guide to Protein Purification」Methods in Enzymology,第182巻,M.Deutscher編,1990,Academic Press,New York,NY.に開示される。
【0066】
精製工程の後には、下記に記載されるようなレセプター結合活性についてのアッセイの実行が行われ得る。NPC1L1ポリペプチドが細胞供給源もしくは組織供給源から単離される場合には特に、アッセイ系にタンパク質分解酵素の1つ以上のインヒビター(例えば、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、Pefabloc SC、ペプスタチン、ロイペプチン、キモスタチン、およびEDTA)を含むことが、好ましい。
【0067】
(抗体分子)
本発明のNPC1L1ポリペプチドの抗原性(免疫原性を含む)フラグメント(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12由来の42個以上連続するアミノ酸)は、本発明の範囲内にある。その抗原性ペプチドは、NPC1L1を認識する単離された抗体分子を調製するために、特に有用であり得る。単離された抗NPC1L1抗体分子は、有用なNPC1L1アンタゴニストである。
【0068】
抗原は、抗体に特異的に結合し得る任意の分子である。いくつかの抗原は、単独では、抗体生成を惹起し得ない。抗体生成を誘導し得る抗原は、免疫原である。
【0069】
好ましくは、抗NPC1L1抗体は、配列番号39〜42から選択されるアミノ酸配列を含む抗原性ペプチド(例えば、ラットNPC1L1由来の抗原)を認識する。より好ましくは、その抗体は、A0715、A0716、A0717、A0718、A0867、A0868、A1801、またはA1802である。
【0070】
用語「抗体分子」は、抗体およびそのフラグメント(好ましくは、抗原結合フラグメント)を包含するが、これらに限定されない。この用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント、Fv抗体フラグメント(例えば、VまたはV)、単鎖Fv抗体フラグメント、およびdsFv抗体フラグメントを包含する。さらに、本発明の抗体分子は、完全ヒト抗体、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。
【0071】
常に必要であるわけではないが、NPC1L1ポリペプチドが、免疫学的に適格な宿主において抗体生成を惹起するための抗原として使用される場合、より小さい抗原性フラグメントが、好ましくは、まず、架橋もしくはコンカテマー形成によってか、または免疫原性キャリア分子(すなわち、宿主動物において免疫学的応答を独立して惹起する特性を有する高分子(例えば、ジフテリア毒素または破傷風毒素))に結合体化することによって、より免疫原性にされる。架橋またはキャリア分子への結合体化が、必要とされ得る。なぜなら、小さいポリペプチドフラグメントは、時には、ハプテン(抗体に特異的に結合可能であるが抗体生成を惹起する能力はない(すなわち、免疫原性ではない)分子)として作用するからである。免疫原性キャリア分子にこのようなフラグメントを結合体化すると、そのようなフラグメントは、一般的には「キャリア効果」として既知であるものを介して、より免疫原性になる。
【0072】
キャリア分子としては、例えば、タンパク質、および天然ポリマー化合物または合成ポリマー化合物(例えば、ポリペプチド、多糖、リポ多糖など)が挙げられる。タンパク質キャリア分子が、特に好ましく、それには、キーホールリンペットヘモシアニンおよび哺乳動物血清タンパク質(例えば、ヒトガンマグロブリンもしくはウシガンマグロブリン、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、もしくはウサギ血清アルブミン、またはこのようなタンパク質のメチル化誘導体もしくは他の誘導体)が挙げられるが、これらに限定されない。他のタンパク質キャリアは、当業者にとって明らかである。好ましくは、このタンパク質キャリアは、そのフラグメントに対する抗体が惹起される宿主動物に対して、異物(foreign)である。
【0073】
このキャリア分子に対する共有結合は、当該分野で周知の方法を使用して達成され得、その正確な選択は、使用されるキャリア分子の性質によって示される。その免疫原性キャリア分子がタンパク質である場合、本発明のフラグメントは、例えば、水溶性カルボジイミド(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたはグルタルアルデヒド)を使用して、結合され得る。
【0074】
これらのようなカップリング剤はまた、別のキャリア分子を使用することなく、そのフラグメントをそのカップリング剤自体に架橋するために使用され得る。凝集物へのそのような架橋はまた、免疫原性を増加し得る。免疫原性はまた、既知のアジュバントを単独でかまたはカップリングもしくは凝集と組み合わせて使用することによって、増加され得る。
【0075】
動物のワクチン接種のためのアジュバントとしては、アジュバント65(落花生油、モノオレイン酸マンノイド(mannide)、およびモノステアリン酸アルミニウムを含有する);フロイント完全アジュバントもしくはフロイント不完全アジュバント;ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびミョウバン);界面活性剤(例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、リソレシチン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、N,N−ジオクタデシル−N’,N’−ビス(2−ヒドロキシメチル)プロパンジアミン、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニック(pluronic)ポリオール;ポリアニオン(例えば、ピラン、硫酸デキストラン、ポリIC、ポリアクリル酸、およびカルボポール);ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド、ジメチルグリシンおよびタフトシン(tuftsin);ならびに油乳濁物が挙げられるが、これらに限定されない。このポリペプチドはまた、リポソームまたは他のマイクロキャリア中に組み込まれた後に、投与され得る。
【0076】
アジュバントおよび免疫アッセイの種々の局面に関する情報は、例えば、P.Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,第3版,1987,Elsevier,New Yorkによるシリーズ中に開示される。ポリクローナル抗血清を調製するための方法を網羅する他の有用な参考文献としては、Microbiology,1969,Hoeber Medical Division,HarperおよびRow;Landsteiner,Specificity of Serological Reactions,1962,Dover Publications,New York,ならびにWilliamsら、Methods in Immunology and Immunochemistry,第1巻,1967,Academic Press,New Yorkが挙げられる。
【0077】
本発明の抗NPC1L1抗体分子は、ヒト、マウス、またはラットのNPC1L1を好ましくは認識するが、本発明は、任意の種(好ましくは、哺乳動物(例えば、ネコ、ヒツジ、またはウマ)由来のNPC1L1を認識する抗体分子を包含する。本発明はまた、本発明のNPC1L1ポリペプチドと抗NPC1L1抗体分子とを含む、複合体を包含する。そのような複合体は、抗体分子を、その同族ポリペプチドと単に接触することによって、生成され得る。
【0078】
種々の方法が、本発明の抗体分子を生成するために使用され得る。ヒト抗体は、例えば、米国特許第5,625,126号;同第5,877,397号;同第6,255,458号;同第6,023,010号および同第5,874,299号に開示される方法と同様の方法によって、生成され得る。
【0079】
モノクローナル抗NPC1L1抗体を生成するハイブリドーマ細胞は、当該分野で一般的に既知である方法によって生成され得る。これらの方法としては、Kohlerら、(1975)(Nature 256:495−497)によって元々開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術(Heringら、(1988)Biomed.Biochim.Acta.47:211−216およびHagiwaraら、(1993)Hum.Antibod.Hybridomas 4:15)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、(1983)Immunology Today 4:72およびCoteら、(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 80:2026−2030)、ならびにEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96,1985)が挙げられるが、これらに限定されない。ELISAは、ハイブリドーマ細胞が抗NPC1L1抗体を発現しているか否かを決定するために、使用され得る。
【0080】
本発明の抗NPC1L1抗体分子はまた、組換えにより(例えば、上記で考察したようなE.coli/T7発現系において)生成され得る。この実施形態において、本発明の抗体分子(例えば、VまたはV)をコードする核酸は、petベースのプラスミド中に挿入され得、そしてE.coli/T7系において発現され得る。組換え抗体を生成するために、当該分野で既知であるいくつかの方法が、存在する。抗体の組換え生成のための方法の例は、米国特許第4,816,567号に開示される。また、Skerra,A.ら、(1988)Science 240:1038−1041;Better,M.ら、(1988)Science 240:1041−1043およびBird,R.E.ら、(1988)Science 242:423−426もまた、参照のこと。
【0081】
用語「モノクローナル抗体」は、実質的な均質な抗体の集団から得られた抗体(すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、可能な天然に存在する変異以外は同一である)を包含する。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原性部位に対する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物(特に、他の免疫グロブリンによって汚染されていない)によって合成され得るという点で、有利である。修飾語「モノクローナル」とは、実質的な均質な抗体集団から得られたものとしてのその抗体の特徴を示し、特定の何らかの方法によるその抗体の生成を必要とするものとしては、解釈されるべきではない。本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって記載されるハイブリドーマ方法によって生成され得る。
【0082】
用語「ポリクローナル抗体」は、他の1つ以上の同一でない抗体とともにか、またはそのような抗体の存在下で、生成された抗体を包含する。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を生成した他のいくつかのBリンパ球の存在下でBリンパ球から生成される。代表的には、ポリクローナル抗体は、免疫された動物(例えば、ウサギ)から直接得られる。
【0083】
「二重特異性抗体」は、別個の抗原に結合する2つの異なる抗原結合領域を含む。二重特異性抗体、ならびにその抗体を生成する方法および使用する方法は、従来通りであり、当該分野で非常に周知である。
【0084】
抗イディオタイプ抗体または抗イディオタイプとは、別の抗体分子の抗原結合領域または可変領域(イディオタイプと呼ばれる)に対する抗体である。Jerne(Jerne,N.K.,(1974)Ann.Immunol.(Paris)125c:373およびJerne,N.K.ら、(1982)EMBO 1:234)により開示されるように、所定の抗原(例えば、NPC1L1)に対するパラトープ(抗原結合部位)を発現する抗体分子による免疫は、一群の抗抗体を生成し、その抗抗体のいくつかは、その抗原と、そのパラトープに対する相補的構造を共有する。その抗イディオタイプ抗体の部分集団による免疫は、その後、最初の抗原に対して反応性である抗体部分集団を生成するか、または免疫細胞サブセットを免疫する。
【0085】
用語「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。同様に、「マウス抗体」とは、マウス免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。
【0086】
「ヒト/マウスキメラ抗体」とは、ヒト定常領域に融合されたマウス可変領域(VおよおびV)を含む抗体をいう。
【0087】
「ヒト化」抗NPC1L1抗体もまた、本発明の範囲内にある。ヒト化形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、キメラ免疫グロブリンであり、これは、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む。多くは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域由来の残基が、望ましい特異性、親和性、および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例えば、マウス、ラット、またはウサギ)の相補性決定領域由来の残基で置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合、そのヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基もまた、対応する非ヒト残基によって置換される。
【0088】
「単鎖Fv」抗体フラグメントまたは「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVドメインおよび/またはVドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。一般に、sFvポリペプチドは、このVドメインとVドメインとの間に、そのsFvが抗原結合のために望ましい構造を形成可能であるようにするポリペプチドリンカーを、さらに含む。単鎖抗体の生成について記載された技術(米国特許第5,476,786号;同第5,132,405号および同第4,946,778号)は、抗NPC1L1特異的単鎖抗体を生成するために適合され得る。sFvの概説について、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,第113巻,RosenburgおよびMoore編,Springer−Verlag,N.Y.,pp.269−315(1994)を参照のこと。
【0089】
「ジスルフィド安定化Fvフラグメント」および「dsFv」は、ジスルフィド架橋によって連結された可変重鎖(V)および/または可変軽鎖(V)を有する分子を包含する。
【0090】
本発明の範囲内にある抗体フラグメントはまた、IgGの酵素(例えば、ペプシン)切断により生成され得るF(ab)フラグメントを包含する。Fabフラグメントは、例えば、ジチオスレイトールまたはメルカプトエチルアミンを用いるF(ab)の還元によって、生成され得る。
【0091】
Fvフラグメントは、V領域またはV領域である。
【0092】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、種々のクラスへと割当てられ得る。免疫グロブリンについて、少なくとも5つの主要なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。これらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3、およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2)へと分類され得る。
【0093】
本発明の抗NPC1L1抗体分子はまた、化学部分に結合体化され得る。この化学部分は、特に、ポリマー、放射性核種または細胞傷害性因子であり得る。好ましくは、この化学部分は、被験体の身体におけるその抗体分子の半減期を増加するポリマーである。適切なポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)(例えば、分子量2kDa、5kDa、10kDa、12kDa、20kDa、30kDa、または40kDaを有するPEG)、デキストランおよびモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)が挙げられるが、決してこれらに限定されない。米国特許第6,133,426号に記載されるPEG化抗IL−8抗体を生成するための方法は、本発明のPEG化抗NPC1L1抗体の生成に適用され得る。Leeら、(1999)(Bioconj.Chem.10:973−981)は、PEG結合体化単鎖抗体を開示する。Wenら、(2001)(Bioconj.Chem.12:545−553)は、放射性金属キレート剤(ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA))に結合されたPEGと抗体を結合体化することを開示する。
【0094】
本発明の抗体分子はまた、標識(例えば、99Tc、90Y、111In、32P、14C、125I、H、131I、11C、15O、13N、18F、35S、51Cr、57To、226Ra、60Co、59Fe、57Se、152Eu、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、234Th、40K、157Gd、55Mn、52Trまたは56Fe)と結合体化され得る。
【0095】
本発明の抗体分子はまた、蛍光標識または化学発光標識(フルオロフォア(例えば、希土類キレート、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、イソチオシアネート、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、フルオレサミン(fluorescamine)、152Eu、ダンシル、ウンベリフェロン(umbelliferone)、ルシフェリン、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、エクオリン(aequorin)標識、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ビオチン/アビジン、スピン(spin)標識、および安定なフリーラジカルを包含する)と結合体化され得る。
【0096】
この抗体分子はまた、細胞傷害性因子(例えば、ジフテリア毒素、Pseudomonas aeruginosa体外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiのタンパク質および化合物(例えば、脂肪酸)、ジアンシン(dianthin)タンパク質、Phytoiacca americanaタンパク質PAPI、PAPIIおよびPAP−S、momordica charantiaインヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、saponaria officinalisインヒビター、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシンおよびエノマイシン)に結合体化され得る。
【0097】
本発明の抗体分子を種々の部分に結合体化するための当該分野で既知の任意の方法が、使用され得、その方法としては、Hunterら、(1962)Nature 144:945;Davidら、(1974)Biochemistry 13:1014;Painら、(1981)J.Immunol.Meth.40:219;およびNygren,J.,(1982)Histochem.and Cytochem.30:407が挙げられる。
【0098】
抗体を結合体化するための方法は、従来通りであり、当該分野で非常に周知である。
【0099】
(スクリーニングアッセイ)
本発明は、種々の医学的状態(増加された血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを含む)の処置および管理において有用であり得る、NPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12)の選択的アゴニストおよびアンタゴニストの発見を可能にする。従って、本発明のNPC1L1は、アゴニストまたはアンタゴニストを同定するためにスクリーニング系において使用され得る。本質的には、これらの系は、NPC1L1を、適切な既知のリガンドまたは既知のアゴニストもしくはアンタゴニストに架橋するための方法を提供する。上記適切な既知のリガンドまたは既知のアゴニストもしくはアンタゴニストとしては、ステロール(例えば、コレステロール、フィトスレテロール(シトステロール、カンペステロール(campesterol)、スチグマステロール(stigmasterol)およびアヴェノステロール(avenosterol)が挙げられるが、これらに限定されない)、5α−スタノール(stanol)(コレスタノール、5α−カンペスタノールおよび5α−シトスタノールが挙げられるが、これらに限定されない)、コレステロール酸化生成物、置換されたアゼチジノン(例えば、エゼチミブ(ezetimibe))、BODIPY−エゼチミブ(Altmannら、(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77−93)もしくはDeNinnoら、(1997)(J.Med.Chem.40(16):2547〜54)(Merck;L−166,143)に記載されるような11−ケトチゴゲニンの4’’,6’’−ビス[(2−フルオロフェニル)カルバモイル]−β−D−セロビオシル誘導体、または、任意の置換されたアゼチジノン、およびNPC1L1アゴニストもしくはNPC1L1アンタゴニストの存在について試験されるべきサンプルが挙げられる。
【0100】
用語「特異的」は、例えばスクリーニングアッセイにおけるNPC1L1のリガンドもしくはNPC1L1のアンタゴニストの結合を記載するために使用される場合、上記リガンドまたはアンタゴニスト(例えば、検出可能に標識されて置換されたアゼチジノン、検出可能に標識されたエゼチミブ、検出可能に標識されたステロール(例えば、コレステロール)もしくは検出可能に標識された5α−スタノール)が、このアッセイ系において他のタンパク質の程度を超えて、優先的にNPC1L1に結合する程度をいう技術用語である。例えば、このアッセイにおいて生成され、このような結合を示すシグナルが、ネガティブコントロール実験におけるバックグランドのシグナルを任意の程度で凌ぐ場合(ここで、例えば、NPC1L1またはアンタゴニストもしくはリガンドが存在しない)、NPC1L1のアンタゴニストまたはリガンドは、NPC1L1に特異的に結合する。さらに、「特異的な結合」としては、アンタゴニストもしくはリガンドの、NPC1L1への直接的な結合、または、例えばNPC1L1がその一部である複合体における別の部分を介した間接的な結合のいずれかが挙げられる。NPC1L1のリガンドまたはアンタゴニストが結合する部分は、別のタンパク質またはNPC1L1の翻訳後の修飾(例えば、脂質鎖もしくは炭水化物鎖)であり得る。
【0101】
適切なアゼチジノンの非限定的な例としては、米国再発行特許発明第37,721号;同5,631,365号;同5,767,115号;同5,846,966号;同5,688,990号;同5,656,624号;同5,624,920号;同5,698,548号;および同5,756,470号ならびに米国特許出願公開番号2003/0105028に開示されるものが挙げられ、これらの各々は、本明細書中でその全体が参考文献として援用される。
【0102】
サンプルが、NPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストを含有するか否かを評価するための簡便な方法は、このサンプルが、既知のアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、エゼチミブ)とNPC1L1との間で結合に関して競合する物質を含有するか否かを決定することである。
【0103】
エゼチミブは、当業者に周知の種々の方法(例えば、米国特許第5,631,365号、同5,767,115号、同5,846,966号、同6,207,822号、米国特許出願公開番号2002/0193607およびPCT特許出願WO 93/02048に開示されている)により調製され得、上記の文献の各々は、本明細書中でその全体が参考文献として援用される。
【0104】
「サンプル」、「候補化合物」または「候補物質」とは、例えば、NPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号12)またはその機能性フラグメントをアゴナイズまたはアンタゴナイズするために結合する能力について、試験またはアッセイにおいて評価される組成物をいう。この組成物は、低分子、ペプチド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、亜原子粒子(例えば、α粒子、β粒子)、または抗体であり得る。
【0105】
使用され得る2つの基本的な型のスクリーニング系としては、標識−リガンド結合アッセイ(例えば、直接結合アッセイまたはシンチレーション近接アッセイ(SPA))および「ステロール(すなわち、コレステロール)または5α−スタノールの取り込み」アッセイが挙げられる。この結合アッセイにおける使用のための標識リガンドは、ステロール(すなわち、コレステロール)もしくは5α−スタノール、または既知のNPC1L1アゴニストもしくは既知のNPC1L1アンタゴニストを、測定可能な基(例えば、125IまたはH)で標識することによって、得られ得る。種々の標識形態のステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールが、市販されているか、または標準的な技術を使用して生成され得る(例えば、コレステロール−[1,2−H(N)]、コレステロール−[1,2,6,7−H(N)]またはコレステロール−[7−H(N)];American Radiolabeled Chemicals,Inc;St.Louis,MO)。好ましい実施形態において、エゼチマイブは、BODIPY基で蛍光標識される(Altmannら、(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77−93)か、または検出可能な基(例えば、125IまたはH)で標識される。
【0106】
(直接結合アッセイ)
代表的には、所定量の本発明のNPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12)またはNPC1L1を含む錯体が、漸増量の標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニスト(上記に考察される)と接触され、結合した標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの量が、未結合の標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストを洗浄により除去した後に、測定される。標識されたリガンドまたは既知アゴニストもしくは既知アンタゴニストの量が増加した場合、すべてのレセプター結合部位が占有されるかまたは飽和される点に、最終的に到達する。その標識されたリガンドまたは既知アゴニストもしくは既知アンタゴニストの特異的レセプター結合は、大過剰の標識されていないリガンドまたは既知アゴニストもしくは既知アンタゴニストによって、廃止される。
【0107】
好ましくは、レセプターに対する上記標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの非特異的結合が最小限であるアッセイ系が、使用される。非特異的結合は、代表的には、標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの全結合のうちの50%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満である。
【0108】
本発明のNPC1L1ポリペプチド(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12)をコードする核酸は、適切な宿主細胞中にトランスフェクトされ得、それにより、上記レセプターは、その細胞の膜に組み込まれる。次いで、膜画分が、その細胞から単離され得、アッセイのためにそのレセプターの供給源として使用され得る。あるいは、その細胞表面においてそのレセプターを発現する細胞全体が、アッセイにおいて使用され得る。好ましくは、トランスフェクトされていない宿主細胞/形質転換されていない宿主細胞に対するか、またはトランスフェクトされていない宿主細胞/形質転換されていない宿主細胞由来の膜画分に対する、上記の標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの特異的結合は、無視できる。
【0109】
原理的には、本発明の結合アッセイは、本発明の可溶性NPC1L1ポリペプチドを、例えば、E.coli発現系からの標準的方法による生成およびリフォールディングの後に使用して、実行され得る。生じたレセプター−標識リガンド複合体は、例えば、そのレセプターに対する抗体を使用して沈殿され得る。その後、その沈殿物は、洗浄され得、結合した標識されたリガンドまたはアンタゴニストもしくはアゴニストの量が、測定され得る。
【0110】
基本的結合アッセイにおいて、NPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストを同定するための方法は、
(a)NPC1L1(例えば、配列番号2または配列番号4または配列番号12)、その部分配列またはNPC1L1を含む複合体を、既知量の標識されたステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニスト(例えば、標識されたエゼチマイブ、または標識L−166,143)の存在下で、NPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストの存在について試験されるべきサンプルと接触させる工程;ならびに
(b)NPC1L1に直接的または間接的に結合した標識されたステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの量を測定する工程;
を包含する。
【0111】
サンプル中のNPC1L1アンタゴニストまたはNPC1L1アゴニストは、そのようなアンタゴニストまたはアゴニストの非存在下で測定される結合と比較して、NPC1L1に対する上記標識されたステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタノールまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの、実質的に減少した直接的な結合または間接的な結合を測定することによって、同定される。例えば、サンプルの存在下での[H]−コレステロールとNPC1L1との間における減少した直接的な結合または間接的な結合は、そのサンプルが、NPC1L1結合について[H]−コレステロールと競合している物質を含むことを示唆し得る。
【0112】
このアッセイは、任意のNPC1L1依存性リガンド(例えば、ステロール(例えば、コレステロールまたは5α−スタノール)結合を欠く、コントロール実験を含む得る。本アッセイにおいて、例えば、任意の機能的NPC1L1を欠く細胞全体または細胞膜(例えば、本発明のトランスジェニック変異体npc1l1マウスから単離されたか、または本発明のトランスジェニック変異体npc1l1マウスに由来する細胞あるいは細胞膜)は、リガンド結合についてアッセイされる。サンプルが、NPC1L1アンタゴニストの存在についてスクリーニングされる場合、試験されるサンプルの存在下において観察される結合のレベルを、本明細書中に記載されるようなコントロール実験の結合のレベル(これは、NPC1L1依存性結合を完全に欠く)と比較することは有用である。理想的には、必然的にではないが、アンタゴニストを含むサンプルの存在下で示される結合のレベルは、コントロール実験のレベルと類似している。
【0113】
あるいは、サンプルは、NPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12)に対する結合について直接試験され得る。この型の基本的アッセイは、以下の工程を包含し得る:
(a)NPC1L1(例えば、配列番号2または配列番号4または配列番号12)、その部分配列、またはNPC1L1を含む複合体を、標識候補化合物(例えば、[H]−エゼチマイブ)と接触する工程;および
(b)その標識候補化合物と、NPC1L1との間の直接的な結合または間接的な結合を検出する工程。
【0114】
さらに、これらの実験は、コントロール実験(ここで、NPC1L1依存性結合は、完全に欠いている)に沿って実行され得る。例えば、このアッセイは、任意の機能的NPC1L1を欠く細胞全体または細胞膜(例えば、本明細書中に記載されるようなトランスジェニック変異体npc1l1マウスに由来する細胞または細胞膜)を使用して実行され得る。
【0115】
NPC1L1に結合することが見出される候補化合物は、(例えば、ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの取り込みの阻害によって)NPC1L1のアゴニストまたはアンタゴニストとして機能し得る。
【0116】
(SPAアッセイ)
NPC1L1アンタゴニストまたはNPC1L1アゴニストはまた、シンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用して測定され得る。SPAアッセイは、従来的であり、当該分野で非常に周知である。例えば、米国特許第4,568,649号を参照のこと。SPAにおいて、目的の標的は、直径約5ミクロンの小さいミクロスフェアに固定される。このミクロスフェアは、代表的には、ポリヒドロキシフィルムでコートされた固体シンチラントコアを含み、これは次いで、カップリング分子を含み、このカップリング分子は、アッセイ設計のための遺伝的関連付けを可能にする。放射性同位体標識された分子がこのミクロスフェアに結合する場合、この放射性同位体は、シンチラントに非常に近接され、この同位体により発せられる電子からの有効なエネルギー移動が生じて、光の発生をもたらす。その放射性同位体が自由溶液中に残る間、その放射性同位体は、シンチラントからあまりにも遠すぎであり、そして電子は、水性媒体中にエネルギーを散逸し、従って、検出されないままである。シンチレーションは、シンチレーションカウンターを用いて検出され得る。一般に、H標識および125I標識が、SPAにとって十分に適切である。
【0117】
レセプター媒介結合事象のアッセイのために、レクチンの小麦胚芽レクチン(wheat germ agglutinin)(WGA)が、SPAビーズカップリング分子(Amersham Biosciences;Piscataway,NJ)として使用され得る。このWGA結合ビーズは、グリコシル化された細胞膜および糖タンパク質を捕捉する。このビーズは、広範な種類のレセプター供給源および培養細胞膜のために使用されている。このレセプターは、WGA−SPAビーズ上に固定され、シグナルが、同位体標識されたリガンドの結合に際して生成される。レセプター結合SPAアッセイのために有用であり得る他のカップリング分子としては、ポリ−L−リジンおよびWGA/ポリエチレンイミン(Amersham Biosciences;Piscataway,NJ)が挙げられる。例えば、Berry,J.A.ら、(1991)Cardiovascular Pharmacol.17(Suppl.7):S143−S145;Hoffman,R.ら、(1992)Anal.Biochem.203:70−75;Kienhusら、(1992)J.Receptor Research 12:389−399;Jing,S.ら、(1992)Neuron 9:1067〜1069を参照のこと。
【0118】
SPAビーズ中に含まれるシンチラントとしては、例えば、ジフェニルアントラシン(DPA)の固体溶媒として作用する、ケイ酸イットリウム(YSi)、酸化イットリウム(YOx)、ジフェニルオキサゾールまたはポリビニルトルエン(PVT)が挙げられ得る。
【0119】
SPAアッセイは、サンプルがNPC1L1アンタゴニストまたはNPC1L1アゴニストを含むか否かを分析するために使用され得る。これらのアッセイにおいて、細胞表面上にNPC1L1(例えば、配列番号2または配列番号4または配列番号12)を発現する宿主細胞またはその膜画分が、SPAビーズ(例えば、WGAコートYOxビーズ、またはWGAコートYSiビーズ)と共にインキュベートされ、SPAビーズによって捕獲される。NPC1L1を有するビーズは、標識された既知リガンドまたは標識された既知アゴニストもしくは標識された既知アンタゴニスト(例えば、H−コレステロール、H−エゼチマイブまたは125I−エゼチマイブ)とともにインキュベートされる。このアッセイ混合物は、試験されるべきサンプル、またはブランク(例えば、水)のいずれかをさらに含み得る。必要に応じたインキュベーションの後に、シンチレーションが、シンチレーションカウンターを使用して測定される。NPC1L1アゴニストまたはNPC1L1アンタゴニストが、そのようなアゴニストまたはアンタゴニスト(ブランク)の非存在下で測定される蛍光と比較して、実質的に減少した蛍光を測定することによって、サンプル中で同定され得る。実質的に減少した蛍光を測定することは、そのサンプルが、上記の既知リガンド、既知アゴニストまたは既知アンタゴニストとの直接的なNPC1L1結合または間接的なNPC1L1結合について競合する物質を含むことを、示唆し得る。
【0120】
あるいは、サンプルは、SPAアッセイにおいて結合を直接検出することによって、NPC1L1のアンタゴニストまたはアゴニストとして同定され得る。このアッセイにおいて、試験されるべき候補化合物の標識形態が、SPAビーズに結合された、NPC1L1を発現する宿主細胞またはその膜画分と接触するように配置され得る。その後、蛍光は、標識候補化合物と、NPC1L1を発現する宿主細胞または膜画分との間の複合体の存在、またはNPC1L1を含む複合体の存在を検出するためにアッセイされ得る。NPC1L1に直接的または間接的に結合する候補化合物は、NPC1L1アゴニスト活性またはNPC1L1アンタゴニスト活性を保有し得る。
【0121】
SPAアッセイは、任意のNPC1L1依存性結合を欠くコントロール実験に沿って実行され得る。このコントロール実験は、例えば、任意の機能的NPC1L1を欠く細胞または細胞膜(例えば、本明細書中に記載されるようなトランスジェニック変異体npc1l1マウスに由来する細胞または細胞膜)を用いて実行され得る。コントロール実験が実行される場合、アンタゴニストの存在について試験されるサンプルの存在下において観察される結合のレベルは、コントロール実験において観察されるレベルと比較され得る。
【0122】
NPC1L1を発現する宿主細胞は、本発明のNPC1L1をコードする核酸を適切な宿主細胞中に形質転換またはトランスフェクトし、それによりそのレセプターがその細胞の膜中に組み込まれることによって調製され得る。その後、膜画分が、その細胞から単離され得、そしてアッセイについてそのレセプター供給源として使用され得る。あるいは、その細胞表面上でそのレセプターを発現する細胞全体が、アッセイにおいて使用され得る。好ましくは、トランスフェクトされていない宿主細胞/形質転換されていない宿主細胞、またはランスフェクトされていない宿主細胞/形質転換されていない宿主細胞由来の膜画分に対する、上記の標識されたリガンドまたは標識された既知アンタゴニストもしくは標識された既知アゴニストの特異的結合は、無視できる。好ましい宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスマクロファージJ774細胞または他の任意のマクロファージ細胞株、およびヒト腸上皮Caco2細胞が挙げられる。
【0123】
(ステロール/5α−スタノールの取り込みアッセイ)
アッセイはまた、サンプルが、NPC1L1媒介性のステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの取り込みをアゴナイズまたはアンタゴナイズし得るか否かを決定するために実施され得る。これらのアッセイにおいて、(上記で考察された)細胞表面にNPC1L1(例えば、配列番号2または配列番号4または配列番号12)を発現する宿主細胞が、検出可能に標識されたステロール(例えば、H−コレステロールまたは125I−コレステロール)または5α−スタノールと、サンプルまたはブランクのいずれかとともに接触され得る。必要に応じたインキュベーションの後、その細胞は、吸収されていないステロールまたは5α−スタノールを除去するために洗浄され得る。ステロールまたは5α−スタノールの取り込みは、宿主細胞における標識ステロールまたは標識5α−スタノールの存在を検出することによって、決定され得る。例えば、アッセイされる細胞またはその溶解物もしくは画分(例えば、薄層クロマトグラフィーにより分離された画分)は、液体シンチラントと接触され得、そしてシンチレーションが、シンチレーションカウンターを使用して測定され得る。
【0124】
これらのアッセイにおいて、サンプル中のNPC1L1アンタゴニストは、そのようなアンタゴニストの非存在下で測定される取り込みと比較して、実質的に減少した標識ステロール(例えば、H−コレステロール)または5α−スタノールの取り込みを測定することによって同定され得、アゴニストは、そのようなアゴニストの非存在下で測定される取り込みと比較して、実質的に増加した標識ステロール(例えば、H−コレステロール)または5α−スタノールの取り込みを測定することによって同定され得る。
【0125】
取り込みアッセイは、任意のNPC1L1依存性取り込みを欠くコントロール実験に沿って実行さ得る。このコントロール実験は、例えば、任意の機能的NPC1L1を欠く細胞(例えば、本明細書中に記載されるようなトランスジェニック変異体npc1l1マウスに由来する細胞)を使用して、実行され得る。コントロール実験が実行される場合、アンタゴニストの存在について試験されるサンプルの存在下で観察される取り込みのレベルは、コントロール実験において観察される取り込みのレベルと比較され得る。
【0126】
(マウスアッセイ)
本発明は、任意の機能的NPC1L1を欠く変異体トランスジェニックマウスを含む。このマウスは、腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のインヒビター(好ましくは、NPC1L1のインヒビター)を同定するためのスクリーニングアッセイにおける従来のコントロール実験として役目を果たし得る。好ましくは、本発明のマウスアッセイは、以下の工程を包含する:
(a)ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを含む物質(例えば、放射標識コレステロール(例えば、14C−コレステロールまたはH−コレステロール)を含む)を、機能的NPC1L1遺伝子を含む第一のマウスおよび第二のマウス、および機能的NPC1L1を欠く第三の変異体マウスに与える工程;
上記ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを含む物質は、好ましくは、標識されたコレステロール(例えば、放射標識コレステロール(例えば、H標識コレステロールまたは14C標識コレステロール)を含む。上記ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを含む物質はまた、例えば、トウモロコシ油中のコールドの標識されていないステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールを含み得る。
【0127】
これらのアッセイにおいて、第三のnpc1l1変異体マウスは、低いレベルの腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収を示す(+)コントロール実験として役目を果たし、第二のマウスは、正常な阻害されていないレベルの腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収を示す(−)コントロール実験として役目を果たす。第二のマウスは、NPC1L1アンタゴニストについて試験されるサンプルを投与されていない。第一のマウスが、実験である。
【0128】
(b)機能的NPC1L1を含む第一のマウスにサンプルを投与するが、第二のマウスには投与しない工程;
(c)第一のマウス、第二のマウス、および第三のマウスの、腸におけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収の量を測定する工程;
腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収は、当該分野で公知の任意の方法によって測定され得る。例えば、腸吸収のレベルは、血清のステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのレベルを測定することによってアッセイされ得る。
【0129】
(d)各マウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のレベルを比較する工程;
ここで、上記サンプルは、第一のマウスおよび第三のマウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のレベルが、第二のマウスにおける腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収の量に満たない場合、腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のアンタゴニストを含むことが決定される。
【0130】
好ましくは、上記サンプルが、腸ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のインヒビター(例えば、NPC1L1インヒビター)を含む場合、第一のマウスにおけるステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収のレベルは、第三のnpc1l1変異体マウスの吸収のレベルと類似する。
【0131】
これらのスクリーニングアッセイにおいて使用され得る、代替的な(+)コントロール実験は、公知のNPC1L1のアンタゴニスト(例えば、エゼチマイブ)を投与された機能的NPC1L1を含むマウスである。
【0132】
(薬学的組成物)
例えば、上記のスクリーニング方法によって発見されたNPC1L1アゴニストおよびNPC1L1アンタゴニストは、NPC1L1の活性を刺激またはブロックするために治療的に(例えば、薬学的組成物中で)使用されて、それにより、NPC1L1により引き起こされるかまたは媒介される任意の医学的状態を処置し得る。加えて、本発明の抗体分子はまた、NPC1L1に結合するために治療的に(例えば、薬学的組成物中で)使用されて、それにより、NPC1L1がステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールに結合する能力をブロックし得る。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの結合をブロックすることは、(例えば、腸細胞(intestinal cell)(例えば、腸細胞(enterocyte))による)その分子の吸収を防止し得る。ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールの吸収をブロックすることは、被験体における血清ステロール(例えば、コレステロール)または5α−スタノールのレベルを低下させ、それによって、例えば、高脂血症、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈心疾患、脳卒中または動脈硬化症の発生を減少するために有用な方法であり得る。
【0133】
用語「被験体」または「患者」は、任意の生物(好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ウマ、霊長類、ネコ)、および最も好ましくはヒト)を包含する。
【0134】
用語「薬学的組成物」は、活性成分と薬学的に受容可能なキャリアおよび/またはアジュバントとを含む組成物をいう。
【0135】
本発明の組成物は、単純溶液中で投与され得るが、それらの組成物は、より代表的には、他の材料(例えば、キャリア、好ましくは薬学的に受容可能なキャリア)と組み合わせて使用される。有用な薬学的に受容可能なキャリアは、本発明の組成物を被験体に送達するために適切な、任意の適合性の非毒性物質であり得る。滅菌水、アルコール、脂肪、蝋、および不活性固体が、薬学的に受容可能なキャリア中に含まれ得る。薬学的に受容可能なアジュバント(緩衝剤、分散剤)はまた、薬学的組成物中に組み込まれ得る。
【0136】
好ましくは、本発明の薬学的組成物は、丸剤またはカプセル剤の形態である。丸剤およびカプセル剤を処方するための方法は、当該分野で非常に周知である。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与のために、活性薬物成分は、任意の経口非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリア(例えば、ラクトース、デンプン、ショ糖、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、滑石、マンニトール、エチルアルコール(液体形態)など)と合わされ得る。さらに、望ましい場合または必要な場合には、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤もまた、この混合物中に組み込まれ得る。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、トウモロコシ甘味料、天然ガムおよび合成ガム(例えば、アラビアゴム)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、および蝋が挙げられる。この滑沢剤の中には、これらの投薬形態での使用について言及され得るホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどがある。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、グアールーガムなどが挙げられる。甘味料および矯味矯臭剤および保存剤もまた、適切な場合に含まれ得る。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、第2の薬学的組成物または物質と組み合わせて投与され得る。好ましい実施形態において、この第2の組成物は、コレステロール低下薬物を含む。併用治療が使用される場合、両方の組成物が、同時送達のために単一組成物へと処方され得るか、または2つ以上の組成物(例えば、キット)へと別々に処方され得る。
【0138】
この処方物は、単位投薬形態で簡便に提示され得、そして薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る。例えば、Gilmanら(編)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics,第8版,Pergamon Press;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(前出),Easton,Penn.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York;Liebermanら(編)、(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;およびLiebermanら(編)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New Yorkを参照のこと。
【0139】
治療適用に関与する投薬レジメンは、治療物質の作用を改変し得る種々の要因(例えば、患者の状態、体重、性別および食事、任意の感染の重篤度、投与回数、ならびに他の臨床因子)を考慮して、医師によって決定され得る。多くの場合、処置投薬量は、低レベルから増量して、安全性および効力を最適にする。投薬量は、小さい分子サイズおよび投与後の半減期の減少の可能性(クリアランス時間)を計上するように調整され得る。
【0140】
本発明のアンタゴニストの「有効量」は、腸ステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタロールの吸収のレベルを検出可能に減少するか、またはその組成物を投与された被験体中の血清のステロール(例えば、コレステロール)もしくは5α−スタロールのレベルを検出可能に減少する量であり得る。
【0141】
そのような物質の治療投与のための代表的なプロトコルは、当該分野で周知である。本発明の薬学的組成物は、例えば、任意の腸管外経路または非腸管外経路によって、投与され得る。
【0142】
本発明の丸剤およびカプセル剤は、経口投与され得る。注射可能な組成物が、当該分野で公知の医療デバイスを用いて、例えば、皮下注射針を用いる注射によって、投与され得る。
【0143】
本発明の注射可能な薬学的組成物はまた、針なし皮下注射デバイス(例えば、米国特許第5,399,163号;同第5,383,851号;同第5,312,335号;同第5,064,413号;同第4,941,880号;同第4,790,824号;または同第4,596,556号に開示されるデバイス)を用いて、投与され得る。
【0144】
(アンチセンス)
本発明はまた、例えば配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12またはその部分配列により規定されるアミノ酸配列を有するNPC1L1をコードするmRNA(例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5〜配列番号11または配列番号13のいずれか)に特異的にハイブリダイズして、そのmRNAの翻訳を防止することが可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。さらに、本発明は、例えば配列番号2もしくは配列番号4もしくは配列番号12またはその部分配列により規定されるアミノ酸配列を有するNPC1L1をコードするゲノムDNA分子に特異的にハイブリダイズ可能なアンチセンスオリゴヌクレオチドを企図する。
【0145】
本発明はさらに、(a)NPC1L1媒介性ステロール(例えば、コレステロール)吸収またはNPC1L1媒介性5α−スタノール吸収を、細胞膜を通過してその細胞中のNPC1L1をコードするmRNAに特異的に結合してそのmRNAの翻訳を防止することによって減少するために有効な量のオリゴヌクレオチドと、(b)細胞膜を通過可能な薬学的に受容可能なキャリアとを含有する、薬学的組成物を提供する。一実施形態において、そのオリゴヌクレオチドは、mRNAを不活化する物質に結合されている。別の実施形態において、mRNAを不活化する物質は、リボザイムである。
【0146】
患者の細胞にアンチセンスNPC1L1 RNAを導入することによってNPC1L1の発現レベルを減少させることは、患者における腸のステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収および血清コレステロールを減少する有用な方法である。
【0147】
(キット)
本発明のキットは、より好ましくは薬学的投薬形態(例えば、丸剤、散剤、注射用液体、錠剤、分散顆粒、カプセル剤、カシェ剤(cachet)または坐剤)の薬学的処方物中に、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせたエゼチミブを含む。例えば、Gilmanら(編)(1990),The Pharmacological Bases of Therapeutics,第8版,Pergamon Press;ならびにRemington’s Pharmaceutical Sciences,(前出),Easton,Penn.;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications Dekker,New York;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets Dekker,New York;およびLiebermanら(編)(1990),Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems Dekker,New Yorkを参照のこと。好ましくは、上記投薬形態は、Zetia(登録商標)錠剤(Merck/Schering−Plough Corp.)である。エゼチミブは、任意の従来の形態で供給され得る。例えば、エゼチミブを含む錠剤は、30、90または500のビンで供給され得る。
【0148】
本発明のキットはまた、例えば、包装挿入物中の形態の情報を含み、これは、エゼチミブの標的が、NPC1L1(NPC3)であることを示す。用語「エゼチミブの標的」は、エゼチミブが、NPC1L1を拮抗することによって、直接的または間接的のいずれかで、腸のステロール(例えば、コレステロール)吸収または5α−スタノール吸収を低下させることを示す。上記挿入物の形態は、任意の形態(例えば、紙または電子媒体(例えば、磁気記録媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク(登録商標))またはCD−ROM)をとる。
【0149】
上記パッケージ挿入物はまた、上記キットの薬学的組成物および投薬形態に関する他の情報を含み得る。概して、このような情報は、患者および医師が、同封の薬学的組成物および投薬形態を有効かつ安全に使用するのに役立つ。例えば、エゼチミブ(例えば、Zetia(登録商標))および/またはシンバスタチン(例えば、Zocor(登録商標))に関する以下の情報が、上記挿入物に供給され得る:薬物速度論、薬力学、臨床研究、有効性パラメータ、適応および用法、禁忌、警告、注意、有害反応、過剰投薬、適切な用量および投与、供給方法、適切な保存条件、参照ならびに特許情報。
【0150】
本発明のキットはまた、より好ましくは薬学的投薬形態(例えば、丸剤、散剤、注射用液体、錠剤、分散顆粒、カプセル剤、カシェ剤または坐剤)の薬学的処方物中に、好ましくは薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせたシンバスタチン(
【0151】
【化2】

)を含む。好ましくは、シンバスタチンの投薬形態は、Zocor(登録商標)錠剤(Merck & Co.;Whitehouse Station,NJ)である。
【0152】
シンバスタチンを含む錠剤または丸剤は、任意の簡便な形態で供給され得る。例えば、5mgのシンバスタチンを含む錠剤または丸剤が、以下のとおり供給され得る:30、60、90、100または1000のビン。10mgのシンバスタチンを含む錠剤または丸剤が、以下のとおり供給され得る:30、60、90、100、1000または10,000のビン。20mgのシンバスタチンを含む錠剤または丸剤が、以下のとおり供給され得る:30、60、90、100、1000または10,000のビン。40mgのシンバスタチンを含む錠剤または丸剤が、以下のとおり供給され得る:30、60、90、100または1000のビン。80mgのシンバスタチンを含む錠剤または丸剤が、以下のとおり供給され得る:30、60、90、100、1000または10,000のビン。
【0153】
エゼチミブおよびシンバスタチンは、別々の組成物としてか、または単一の組成物に組み合わされて、キット中に供給され得る。例えば、エゼチミブおよびシンバスタチンは、別々の薬学的投薬形態(例えば、2つの別々の丸剤または錠剤)として、単一の通常の薬学的投薬形態(例えば、丸剤または錠剤)中で供給され得る。
【0154】
(npc1l1細胞)
本発明は、機能的なNPC1L1タンパク質をコードするか、産生し得るNPC1L1遺伝子を欠損する任意の単離された哺乳類細胞(例えば、単離されたマウス細胞、単離されたラット細胞または単離されたヒト細胞)を提供する。任意の調節エレメント(例えば、プロモーター)の遺伝子コード領域の、点変異、切断、欠失を含む変異npc1l1遺伝子は、本実施形態に含まれる。
【0155】
例えば、上記細胞は、内在性の染色体NPC1L1のホモ接合変異を含む変異マウスから単離され得、ここで、このマウスは、機能的NPC1L1タンパク質を産生しない(例えば、以下の実施例22に記載されるマウス)。さらに、本発明は、このような変異マウス(特に、機能的NPC1L1を産生しない変異、トランスジェニックマウス)に由来するか、または単離された、任意の細胞、組織、器官、流体、核酸、ペプチドまたは他の生物学的物質を包含し、ここで、このマウスで欠失された内在性の染色体NPC1L1の領域は、配列番号45に示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド790〜998に対応する。
【0156】
単離された細胞は、例えば、上記変異マウスの十二指腸、胆嚢、肝臓、小腸または胃から単離され得るか、または由来し得る。さらに、上記細胞は、腸細胞であり得る。
【0157】
npc1l1変異細胞は、例えば、スクリーニングアッセイ(例えば、前出を参照のこと)におけるコントロール実験での使用に有用である。なぜなら、npc1l1変異細胞は、ステロール、5α−スタノールもしくはエゼチミブのNPC1L1依存性の、取り込みまたは結合を欠如しているからである。スクリーニングアッセイにおいて、特定のサンプルによって引き起こされる阻害レベルは、上記変異細胞で達成されるアッセイの阻害レベルと比較され得る。理想的には、決して必ずではないが、例えば、本明細書中に記載されるようなスクリーニングアッセイにおいて、変異npc1l1細胞または変異npc1l1細胞膜単独との結合において観察されるのと同一量の結合が、アンタゴニストの存在下で、非変異細胞または非変異細胞膜によって観察される。
【実施例】
【0158】
以下の実施例は、本発明をより明確に記載するために提供されており、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。
【0159】
(実施例1:ラットNPC1L1、マウスNPC1L1およびヒトNPC1L1のクローニングおよび発現)
ラットNPC、マウスNPC1L1またはヒトNPC1L1は、全てポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して簡便に増幅され得る。このアプローチにおいて、ラットcDNAライブラリー、マウスcDNAライブラリーまたはヒトcDNAライブラリーからのDNAは、適切なプライマーおよび標準的PCR条件を使用して増幅され得る。プライマーの設計および最適な増幅条件は、当該分野で一般的に公知である標準的技術を構成する。
【0160】
増幅したNPC1L1遺伝子は、さらに、当該分野で一般的に公知である方法を使用して、簡便に発現され得る。例えば、NPC1L1は、pETベースのプラスミドベクター(Stratagene;La Joola,CA)中のT7 RNAポリメラーゼプロモーターの下流に挿入され得る。その後、このプラスミドは、T7発現系(例えば、BL21DE3 E.coli細胞)中に形質転換され得、液体培養中で増殖し得、そして(例えば、IPTGをその細菌培養物に添加することによって)誘導され得る。
【0161】
(実施例2:直接的結合アッセイ)
(膜調製)
NPC1L1(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号12)をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトしたCaco2細胞を、5mM EDTA/リン酸緩衝化生理食塩水中でインキュベートし、その後、繰返しピペッティングすることによって収集する。その細胞を、1000×gにて5分間遠心分離する。このEDTA/PBSを捨て、等容量の氷冷50mM Tris−HCl,pH7.5を添加し、細胞をPolytron(PT10チップ、設定5、30秒)で破壊する。核および未破壊の細胞を、1000×gにて10分間沈降させ、次いで、上清を50,000×gで10分間遠心分離する。その上清を捨て、ペレットをPolytronにより再懸濁し、サンプルをタンパク質アッセイ(ビシンコニニン酸(bicinchoninic acid),Pierce)用にとり、この組織を再度50,000×gで遠心分離する。ペレットを、−20℃にて凍結保存する。
【0162】
(結合アッセイ)
飽和結合のために、4種類の濃度の[H]−エゼチミブ(15Ci/mmol)を、10−5Mエゼチミブの有り無しで、総容量200μlの50mM Tris−HCl(pH7.5)中、50μgの膜タンパク質とともに、30℃にて30分間、3連でインキュベートする。サンプルをGF/Bフィルターにて濾過し、2mlの冷Tris緩衝液で3回洗浄する。フィルターを電子レンジ中で乾燥し、Meltilexワックスシンチラントに浸漬し、そして45%効率で計数する。競合結合アッセイのために、5種類の濃度のサンプルを、上記の条件下で18nM[H]−エゼチミブおよび70μgの膜タンパク質とともに3連でインキュベートする。曲線を、Prism(GraphPad Software)非線形最小二乗曲線フィットプログラムを用いてこのデータにフィットさせ、K値を、ChengおよびPrusoff(Cheng,Y.C.ら(1973)Biochem.Pharmacol.22:3099〜3108)に従ってIC50値から得る。
【0163】
(実施例3:SPAアッセイ)
96ウェルプレートの各ウェルについて、10μgのヒトNPC1L1−CHO過剰発現膜、マウスNPC1L1−CHO過剰発現膜またはラットNPC1L1−CHO過剰発現膜(Biosignal)と200μg/ウェルのYSi−WGA−SPAビーズ(Amersham)との反応混合物(100μl)を、NPC1L1アッセイ緩衝液(25mM HEPES(pH7.8)、2mM CaCl、1mM MgCl、125mM NaCl、0.1%BSA)中にて調製する。0.4nMのリガンド−[125I]−エゼチミブストックを、NPC1L1アッセイ緩衝液中で調製する。上記の溶液を、以下のように96ウェルアッセイプレートに添加する:50μlのNPC1L1アッセイ緩衝液、100μlの反応混合物、50μlのリガンドストック(最終リガンド濃度は、0.1nMである)。このアッセイプレートを、プレート振盪機にて5分間振盪し、その後、8時間インキュベートした後に、cpm/ウェルを、Microbeta Triluxカウンター(PerkinElmer)にて決定する。
【0164】
これらのアッセイは、[125I]−エゼチミブが、ヒトNPC1L1を発現する細胞膜、マウスNPC1L1を発現する細胞膜またはラットNPC1L1を発現する細胞膜に結合することを示す。同様の結果が、同じ実験を放射標識コレステロール(例えば、125I−コレステロール)を用いて実施した場合に得られる。
【0165】
(実施例4:コレステロール取り込みアッセイ)
SR−B1、またはラットNPC1L1の3種の異なるクローンもしくは1種のマウスNPC1L1クローンのいずれかを発現するCHO細胞を、無コレステロール培地中で一晩飢餓させ、その後、混合合成ミセルエマルジョン中の[H]−コレステロールを、10μMエゼチミブの非存在下または存在下で4分間、8分間、12分間、または24分間投与した。その細胞を採取し、脂質を有機的に抽出した。抽出した脂質を、薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート上にスポットし、有機蒸気相内で分離した。各アッセイについての遊離コレステロールのバンドを単離し、シンチレーションカウンターにて計数した。
【0166】
SR−B1発現細胞は、4分間程度の初期に[H]−コレステロール取り込みの増加を示した。この増加はまた、エゼチミブによって抑制された。これらの3種のラットクローンおよび1種のマウスクローンは、バックグラウンドレベルの[H]−コレステロール取り込みを生じるように見えた。この取り込みは、非形質転換CHO細胞の取り込みと同様であった。
【0167】
これらの実験は、CHO細胞が、より最適な実験条件が開発された場合には、マウスNPC1L1依存性、ラットNPC1L1依存性、およびヒトNPC1L1依存性の[H]−コレステロール取り込みを実施し得ることを示すデータを生じる。
【0168】
(実施例5:Wistarラット組織におけるラットNPC1L1の発現)
これらの実験において、いくつかのラット組織におけるラットNPC1L1 mRNAの発現を評価した。評価した組織は、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、近位結腸、遠位結腸、肝臓、膵臓、心臓、大動脈、脾臓、肺、腎臓、脳、筋肉、精巣、卵巣、子宮、副腎および甲状腺であった。全RNAサンプルを、少なくとも3種の雄動物および3種の雌動物から単離し、そしてプールした。その後、それらのサンプルを、標準的二重標識蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブを使用するTaqman分析を使用したリアルタイム定量PCRに供した。代表的なプローブの設計は、5’レポーター色素(例えば、6FAM(6−カルボキシフルオレセイン)またはVIC)および3’クエンチ色素(例えば、TAMRA(6−カルボキシテトラメチル−ローダミン))を組み込んだ。
【0169】
(ラットNPC1L1)
【0170】
【化3】

(ラットβ−アクチン)
【0171】
【化4】


【0172】
PCR反応を、各ウェル中に以下を含む25μl反応混合物を用いた96ウェル形式でで実行した:Platinum SuperMix(12.5μl)、ROX Reference Dye(0.5μl)、50mM塩化マグネシウム(2μl)、RT反応からのcDNA(0.2μl)。多重反応は、各々200nMの遺伝子特異的プライマー、および100nMのFAM標識プローブ、ならびに各々100nMの遺伝子特異的プライマー、および50nMのVIC標識プローブを含んだ。反応は、標準的な2段階サイクリングプログラム(95℃で15秒間および60℃で1分間を40サイクル)を用いて実行した。
【0173】
最高レベルの発現が、十二指腸、空腸、および回腸組織において観察された。これらのデータは、NPC1L1が、腸におけるコレステロール吸収において役割を果たすことを示す。
【0174】
(実施例6:マウス組織におけるマウスNPC1L1の発現)
これらの実験において、いくつかの組織におけるマウスNPC1L1 mRNAの発現を評価した。評価した組織は、副腎、BM、脳、心臓、ランゲルハンス島、LI、小腸、腎臓、肝臓、肺、MLN、PLN、筋肉、卵巣、下垂体、胎盤、パイアー斑、皮膚、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、子宮および気管であった。全RNAサンプルを、少なくとも3種の雄動物および3種の雌動物から単離し、そしてプールした。その後、それらのサンプルを、以下のプライマーおよびプローブを使用するTaqman分析を使用したリアルタイム定量PCRに供した:
(マウスNPC1L1)
【0175】
【化5】


【0176】
最高レベルの発現が、パイアー斑、小腸、胆嚢、および胃の組織において観察された。これらのデータは、消化系において生じるNPC1L1のコレステロール吸収の役割と一致する。
【0177】
(実施例7:ヒト組織におけるヒトNPC1L1の発現)
これらの実験において、46種の正常組織を示す2045種のサンプルにおけるヒトNPC1L1 mRNAの発現レベルを評価した。マイクロアレイベースの遺伝子発現分析を、Affymetrixの確立されたプロトコルに厳密に従って、塩基対4192〜5117(配列番号43)に対応するcRNAプローブを使用して、Affymetrix HG−U95 GeneChipにて実施した。GeneChipを、低光増幅管(PMT)下でスキャンし、データを、Affymetrix MAS 4.0アルゴリズムまたはMAS 5.0アルゴリズムのいずれかを使用して正規化した。さらに、ほとんどのサンプルについての「スパイクイン(spike in)」を使用して、Gene Logicアルゴリズムおよび手順に従って標準曲線を構築し、RNA濃度値を得た。これらの結果の要約が、以下の表2に示される。
【0178】
(表2.種々のヒト組織におけるNPC1L1 mRNAの発現レベル)
【0179】
【表2】

影を付けたデータは、最高レベルのNPC1L1 mRNAが検出された組織に対応する。「存在する」の欄は、NPC1L1 mRNAが検出された、評価された特定の組織サンプルの割合を示す。「存在せず」の欄は、NPC1L1 RNAが検出されなかった評価された特定の組織サンプルの割合を示す。「下位25%」の欄、「中間」の欄および「上位75%」の欄は、評価された各組織セットについて観察された相対的NPC1L1シグナル強度の統計的分布を示す。
【0180】
(実施例8:ラット小腸におけるラットNPC1L1 mRNA、ラットIBAT mRNA、またはラットSR−B1 mRNAの分布)
これらの実験において、ラット小腸の近位−遠位軸に沿ったラットNPC1L1 mRNAの分布を評価した。腸を、5匹の独立した動物から単離し、ほぼ等しい長さの10個の切片に分割した。全RNAを単離し、そしてラットNPC1L1 mRNA、ラットIBAT(回腸胆汁酸輸送体)mRNAまたはラットSR−B1 mRNAの局所発現レベルについて、Taqman分析を使用したリアルタイム定量PCRによって分析した。この分析において使用したプライマーおよびプローブは、以下である:
(ラットNPC1L1)
【0181】
【化6】

(ラットビリン(Villin))
【0182】
【化7】

(ラットSR−B1)
【0183】
【化8】

(ラットIBAT)
【0184】
【化9】


【0185】
各動物の小腸切片のmRNA発現レベルを、別個に分析し、その後、観察された発現レベルを、その小腸切片において観察されたビリンmRNAレベルに対して正規化した。その後、各切片について観察された、正規化したmRNA発現レベルを、平均化した。
【0186】
NPC1L1およびSR−B1の発現レベルは、より遠位の回腸切片と比較して、空腸(切片2〜5)において最高であった。空腸は、コレステロール吸収の部位であると考えられるので、これらのデータは、ラットNPC1L1についてのそのような役割を示唆する。回腸を好むIBAT分布が、十分に記録され、この実験についてのコントロールとして役立った。
【0187】
(実施例9:ラット空腸組織におけるラットNPC1L1 mRNAのインサイチュ分析)
ラットNPC1L1 mRNAの局在化を、ラット空腸連続切片のインサイチュハイブリダイゼーション分析によって特徴付けた。この分析において使用したプローブは、
(T7−センスプローブ)
【0188】
【化10】

(T7−アンチセンスプローブ)
【0189】
【化11】

であった。
【0190】
これらのRNAプローブを、ラットNPC1L1ヌクレオチドの3318〜3672(配列番号1)に対応するPCR増幅DNAフラグメントのT7 RNAポリメラーゼ増幅を使用して、合成した。センスジゴキシゲニン−UTP標識cRNAプローブおよびアンチセンスジゴキシゲニン−UTP標識cRNAプローブを、DIG RNA Labeling Kitを製造業者の指示に従って使用して、T7プロモーターから作製した。ラット空腸の連続凍結切片を、このセンスプローブおよびアンチセンスプローブとハイブリダイズさせた。ジゴキシゲニン標識を、先の方法に基づいてDIG Nucleic Acid Detection Kitを用いて検出した。ポジティブシグナルを、ハイブリダイゼーション部位における赤色反応産物の沈着によって特徴付ける。
【0191】
このアンチセンスプローブは、低倍率(40×)下で、陰窩−絨毛軸に沿って、上皮の強い染色を示した。観察されたラットNPC1L1 mRNA発現レベルは、絨毛先端よりも陰窩において、いくらか高かったようであり得る。高倍率(200×)下では、染色は、腸細胞において観察されたが、杯細胞では観察されなかった。センスプローブ(コントロール)で染色が観察されなかったことにより、NPC1L1アンチセンスシグナルの高い特異性が確認された。これらのデータは、腸コレステロール吸収におけるラットNPC1L1の役割のさらなる証拠を提供した。
【0192】
(実施例10:一過性トランスフェクトされたCHO細胞への蛍光標識エゼチミブの結合のFACS分析)
これらの実験において、BODIPY標識エゼチミブ(Altmannら(2002)Biochim.Biophys.Acta 1580(1):77〜93)がNPC1L1およびSR−B1に結合する能力を評価した。「BIODIPY」とは、BODIPY−エゼチミブを検出するために使用した蛍光基である。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、ラットNPC1L1 DNA(rNPC1L1/CHO)、マウスNPC1L1 DNA(mNPC1L1/CHO)、マウスSR−B1 DNA(mSRBI/CHO)またはEGFP DNA(EGFP/CHO)で一過性トランスフェクトした。EGFPとは、ポジティブコントロールとして使用した増強型緑色蛍光タンパク質である。次いで、トランスフェクトしたCHO細胞または非トランスフェクトCHO細胞を、100nM BODIPY標識エゼチミブで染色し、そしてFACSにより分析した。コントロール実験もまた実施し、その実験において、細胞を、BODIPY−エゼチミブで標識せず、非トランスフェクトCHO細胞を、BODIPY−エゼチミブで標識した。
【0193】
染色は、非トランスフェクトCHO細胞でも、rNPC1L1/CHO細胞でも、mNPC1L1/CHO細胞でも観察されなかった。蛍光を、ポジティブコントロールEGFP/CHO細胞において検出した。染色をまた、マウスSR−B1/CHO細胞において検出した。これらのデータは、試験した条件下で、BODIPY−エゼチミブが、SR−B1に結合可能であること、およびそのような結合は、蛍光BODIPY基の存在によって剥離されないことを示す。より好適な条件が決定された場合、BODIPY−エゼチミブは、rNPC1L1/CHO細胞およびmNPC1L1/CHO細胞を標識することが示される。
【0194】
(実施例11:抗FLAG抗体M2で標識した一過性トランスフェクトCHO細胞のFACS分析)
これらの実験において、CHO細胞におけるFLAGタグ化NPC1L1の発現を、評価した。CHO細胞を、マウスNPC1L1 DNA、ラットNPC1L1 DNA、FLAG−ラット NPC1L1 DNAまたはFLAG−マウスNPC1L1 DNAで一過性トランスフェクトした。使用した8アミノ酸FLAGタグは、DYKDDDDK(配列番号37)であり、このタグは、分泌シグナル配列直後のアミノ末端細胞外ループ上に挿入した。これらの細胞を、市販の抗FLAGモノクローナルマウス抗体M2とともにインキュベートし、その後、BODIPYタグ化抗マウス二次抗体とともにインキュベートした。次いで、処理した細胞を、FACSによって分析した。
【0195】
このM2抗体は、FLAG−ラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトしたCHO細胞、およびFLAG−マウスNPC1L1でトランスフェクトしたCHO細胞を染色した。マウスNPC1L1 DNAでトランスフェクトしたCHO細胞およびラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトしたCHO細胞においては、染色は観察されなかった。これらのデータは、ラットNPC1L1およびマウスNPC1L1が、何ら有意な固有の蛍光を有さず、抗FLAG抗体によって結合されないことを示した。これらの細胞の観察されたFLAG依存性標識は、このFLAG−マウスNPC1L1タンパク質およびFLAG−ラットNPC1L1タンパク質が、CHO細胞の細胞膜に局在化することを示した。
【0196】
(実施例12:一過性トランスフェクトされたCHO細胞におけるFLAG−ラットNPC1L1−EGFPキメラのFACS分析)
これらの実験において、CHO細胞におけるラットNPC1L1の表面および細胞質での局在化を評価した。CHO細胞を、FLAG−ラットNPC1L1 DNAまたはFLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAで一過性トランスフェクトした。これらの融合物において、そのFLAGタグは、ラットNPC1L1のアミノ末端にあり、EGFP融合物は、ラットNPC1L1のカルボキシ末端にある。次いで、これらの細胞を、M2抗FLAGマウス(一次)抗体で染色し、その後、BODIPY標識抗マウス抗体で二次染色した。コントロール実験において、細胞を、この二次抗体のみで染色し、上記一次抗体(M2)では染色しなかった。次いで、染色した細胞を、FACSにより分析した。
【0197】
コントロール実験において、FLAG−ラットNPC1L1でトランスフェクトした細胞を、BODIPY抗マウス二次抗体で染色したが、上記一次抗体では染色しなかった。そのデータは、その二次抗マウス抗体が、FLAG−ラットNPC1L1について何ら有意な特異性を有さないこと、およびFLAG−ラットNPC1L1自体が、何ら有意な蛍光を有さないことを示した。
【0198】
別のコントロール実験において、非標識FLAG−ラットNPC1L1−EGFP細胞を、FACS分析した。これらの実験において、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)の自己蛍光を、検出した。
【0199】
FLAG−ラットNPC1L1細胞を、抗FLAGマウス抗体M2およびBODIPY標識抗マウス二次抗体で染色し、そしてFACS分析した。この分析からのデータは、これらの細胞が、二次BODIPY標識抗体で標識されたことを示した。このことは、CHO細胞の表面上でのFLAG−ラットNPC1L1タンパク質の発現を示した。
【0200】
FLAG−ラットNPC1L1−EGFP細胞を、抗FLAGマウス抗体M2およびBODIPY標識抗マウス二次抗体で染色し、そしてFACS分析した。この分析からのデータは、上記キメラタンパク質の表面発現を示す、両方のマーカー(BODIPYおよびEGFP)が存在することを示した。このデータはまた、上記タンパク質の一部が、上記細胞内に位置し、輸送小胞と関連し得ることを示した。これらのデータは、コレステロール、または非細胞小器官(例えば、粗面小胞体)において発現したタンパク質の小胞輸送におけるラットNPC1L1の役割を支持した。
【0201】
(実施例13:クローン化CHO細胞株におけるFLAG−ラットNPC1L1−EGFPキメラのFACS分析および蛍光顕微鏡検査)
これらの実験において、ラットNPC1L1の細胞局在化を、FACS分析および免疫組織化学によって評価した。CHO細胞を、FLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAでトランスフェクトし、抗FLAGマウス抗体M2で染色し、次いで、BODIPY標識抗マウス二次抗体で染色した。この融合物において、FLAGタグは、ラットNPC1L1のアミノ末端にあり、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)タグは、ラットNPC1L1のカルボキシ末端にある。次いで、染色した細胞を、FACSおよび蛍光顕微鏡検査法によって分析した。
【0202】
FLAG−ラットNPC1L1−EGFP DNAでトランスフェクトした細胞を、抗FLAGマウス抗体M2で染色し、次いで、BODIPY標識抗マウス二次抗体で染色した。これらの細胞のFACS分析によって、上記キメラタンパク質の表面発現を示す両方のマーカーを検出した。
【0203】
FLAG−ラットNPC1L1−EGFPトランスフェクト細胞を、63×倍率で蛍光顕微鏡によって分析した。これらの細胞の蛍光顕微鏡分析は、有意な核周囲オルガネラ染色を伴う非核染色を示した。その画像を解像しても、小胞関連タンパク質の存在は確認し得なかった。これらのデータは、上記融合タンパク質が、CHO細胞の細胞膜上で発現されたことを示した。
【0204】
(実施例14:ポリクローナル抗ラットNPC1L1ウサギ抗体の作製)
アミノ末端システイン残基またはカルボキシ末端システイン残基を含む合成ペプチド(配列番号39〜42)を、ジスルフィド結合を介してキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)キャリアタンパク質に結合し、抗原として使用して、ニュージーランド白色ウサギ(3ヶ月齢〜9ヶ月齢の範囲)においてポリクローナル抗血清を惹起した。このKLH−ペプチドを、等容量のフロイントアジュバントと混合することによって乳化し、3箇所の皮下背面部位に注射した。16週間の免疫スケジュールの前に、免疫前血清サンプルを収集し、その後、0.25mg KLH−ペプチドを初回注射し、そして0.1mg KLH−ペプチドを3回、計画的にブースター注射した。動物の耳介動脈から採血し、その血液を凝固させ、その後、その血清を遠心分離によって収集した。
【0205】
抗ペプチド抗体力価を、固相において結合した遊離ペプチド(1μg/ウェル)を用いる酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)によって決定した。結果を、0.2のOD450を生じた血清希釈の逆数として表す。検出を、ビオチニル化抗ウサギIgG、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−ストレプトアビジン(HRP−SA)結合体、およびABTSを使用して得た。
【0206】
(実施例15:ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清を使用する、ラットNPC1L1 DNAで一過性トランスフェクトしたCHO細胞におけるラットNPC1L1発現のFACS分析)
これらの実験において、CHO細胞の表面におけるラットNPC1L1の発現を評価した。CHO細胞を、ラットNPC1L1 DNAでトランスフェクトし、次いで、ウサギ免疫前血清または上記実施例14に記載した10週間抗ラットNPC1L1血清(すなわち、A0715、A0716、A0867またはA0868)のいずれかとともにインキュベートした。次いで、一次抗血清で標識した細胞を、BODIPY改変抗ウサギ二次抗体で染色し、その後、FACS分析した。
【0207】
抗体表面標識は、免疫前血清サンプルのいずれについても観察されなかった。ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の特異的細胞表面標識が、A0715およびA0868の両方について観察された。抗血清A0716およびA0867は、このアッセイ様式におけるラットNPC1L1表面発現を認識しなかった。このことは、ネイティブの非融合ラットNPC1L1タンパク質が、CHO細胞において発現され、CHO細胞膜に局在化することを示す。NPC1L1の細胞表面発現は、腸コレステロール吸収における役割と一致する。
【0208】
(実施例16:ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清を使用する、FLAG−マウスNPC1L1 DNAで一過性トランスフェクトしたCHO細胞またはFLAG−ラットNPC1L1 DNAで一過性トランスフェクトしたCHO細胞または非トランスフェクト細胞のFACS分析)
これらの実験において、CHO細胞におけるFLAG−マウスNPC1L1およびFLAG−ラットNPC1L1の発現を評価した。CHO細胞を、FLAG−マウスNPC1L1 DNAまたはFLAG−ラットNPC1L1 DNAで一過性トランスフェクトした。このFLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞およびFLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞を、A0801血清、A0802血清、A0715血清、またはA0868血清(実施例14参照)または抗FLAG抗体M2のいずれかで標識した。次いで、これらの標識細胞を、BODIPY標識抗ウサギ二次抗体で染色し、そしてFACS分析した。非トランスフェクトCHO細胞を、上記のトランスフェクト細胞株と同じ様式で分析した。
【0209】
非トランスフェクトCHO細胞のポジティブ染色は、試験した抗血清のいずれについても観察されなかった。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の血清A0801依存性標識が観察されたが、FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞のそのような標識は、観察されなかった。FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞またはFLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の血清A0802依存性標識は、観察されなかった。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞の強い血清A0715依存性標識が観察され、FLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞の弱い血清A0715依存性標識が観察された。ラットNPC1L1トランスフェクト細胞およびマウスNPC1L1トランスフェクト細胞の弱い血清A0868依存性標識が、観察された。FLAG−ラットNPC1L1トランスフェクト細胞およびFLAG−マウスNPC1L1トランスフェクト細胞の強い抗FLAG M2抗体依存性標識が、観察された。この強いM2染色は、M2が、既知の濃度の親和性精製されたモノクローナル抗体であるという事実に起因する可能性がある。対照的に、個々の抗血清は、ポリクローナルであり、未精製であり、非特定濃度の抗ラットNPC1L1抗体を含有する。これらのデータは、FLAG−マウスNPC1L1タンパク質およびFLAG−ラットNPC1L1タンパク質が、CHO細胞において発現され、そしてCHO細胞膜に局在化されるというさらなる証拠を提供する。NPC1L1の細胞表面発現は、腸コレステロール吸収における役割と一致する。
【0210】
(実施例17:ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清A0715を用いるラット空腸組織の免疫組織化学分析)
これらの実験において、ラット空腸におけるラットNPC1L1の局在化を、免疫組織化学により分析した。ラット空腸を取り出し、すぐにO.C.T.化合物中に包埋し、そして液体窒素中に凍結した。切片(6μm)を、低温槽ミクロトームを用いて切断し、そしてスライドガラス上にマウントした。切片を室温で風乾し、その後、ブワン固定液中に固定した。ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ免疫染色を、Histostain−SPキットを使用して実行した。内因性組織ペルオキシダーゼ活性を、メタノール中の3%H中で10分間インキュベートしてブロックし、非特異的抗体結合を、10%非免疫ウサギ血清中で45分間インキュベートして最小にした。切片を、ウサギ抗ラットNPC1L1抗血清A0715またはA0868とともに1:500希釈にて4℃でインキュベートし、その後、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgGおよびストレプトアビジン−ペルオキシダーゼとともにインキュベートした。引き続いて、これらの切片を、アミノエチルカルバゾール(AEC)−H染色系において発色させ、ヘマトキシリンを用いて対比染色し、そして顕微鏡検査法により試験した。このプロトコルを使用する陽性反応を、抗原−抗体反応部位での赤色反応産物の沈着によって特徴付ける。核は、ヘマトキシリン対比染色物から青色を呈した。コントロールを、同じ組織ブロックからの近傍切片に対して同時に実施した。コントロール手順は、以下からなった:(1)一次抗体を免疫前血清で置換すること、(2)一次抗体を非免疫ウサギ血清で置換すること、(3)一次抗体をPBSで置換すること、(4)二次抗体をPBSで置換すること。
【0211】
本実施例は、低倍率(40×)および高倍率(200×)で分析した、抗ラットNPC1L1血清A0715または免疫前血清で染色した組織を示す。A0715染色組織は、低倍率で絨毛上皮層(腸細胞)の強い陽性染色を示した。A0715染色組織は、高倍率で腸細胞頂端膜の強い陽性染色を示した。免疫前血清のみで処理した組織において、染色は観察されなかった。同様の結果が、血清A0868を用いて得られた。これらのデータは、ラットNPC1L1が、ラット空腸において発現されることを示し、これは、腸コレステロール吸収における役割と一致する。
【0212】
(実施例18:標識コレステロール取り込みアッセイ)
本実施例において、ラットNPC1L1で安定にトランスフェクトしたCHO細胞が標識コレステロールを取り込む能力を、評価した。これらのアッセイにおいて、単一濃度におけるコレステロール取り込みを、パルスチェイス実験において評価した。これらの実験において生じたデータが、以下の表3において示される。
【0213】
(細胞)
A.ラットNPC1L1 cDNAで安定にトランスフェクトされたCHO細胞
B.CHOバックグラウンド(トランスフェクションなし)
細胞を、12ウェルプレート中に500,000細胞/ウェル(mL)で播種した。
【0214】
(手順)
すべての試薬および培養プレートを、特に記載しない限り、37℃で維持した。
【0215】
(飢餓)維持培地(F12 HAMS、1% Pen/Strep、10% FCS)を除去し、細胞を、無血清HAMS培地でリンスした。次いで、この無血清培地を、1mL「飢餓」培地(F12 HAMS、Pen/Strep、5%リポタンパク質欠損血清(LPDS))で置換した。
【0216】
各細胞株1プレートを、一晩飢餓させた。残りの2プレートを、「飢餓なし」と表記した(以下を参照のこと)。
【0217】
(プレインキュベーション) 培地をすべてのプレートから除去し、無血清HAMSでリンスし、そして飢餓培地で30分間置換した。
【0218】
H−コレステロールパルス) 以下を、各ウェルに直接添加した:
50μlの混合胆汁塩(bile salt)ミセル中の0.5μCi H−コレステロール(約1.1×10dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
これらは、超音波振動により「飢餓」培地中に分散される
最終の培地コレステロール濃度=5μg/mL。
【0219】
標識コレステロールパルスの時点は、0分、4分、12分、および24分であった。各処理について3連のウェルを調製した。
【0220】
(洗浄) 指定した時間に、培地を吸引し、そして細胞を、37℃でHobbs緩衝液A(50mM Tris、0.9% NaCl、0.2% BSA(pH7.4))で一回洗浄し、Hobbs緩衝液B(50mM Tris、0.9% NaCl(pH7.4)(BSAなし))で1回洗浄した。
【0221】
(処理/分析) 細胞を0.2N NaOH(2mL/ウェル)を用いて室温で一晩消化した。1.5mlアリコートを各ウェルから取り出し、中和し、そしてシンチレーション計数により放射能を計数した。すべてのウェルからの50μlアリコートさらに2つずつを、Pierce micro BCA法により総タンパク質についてアッセイした。この細胞において観察された標識コレステロールの量を、その細胞におけるタンパク質の量により正規化した。
【0222】
【表3】

dpm=1分間当たりの崩壊
sem=平均の標準誤差。
【0223】
(実施例19:コレステロール取り込みに対するエゼチミブの効果)
マウスNPC1L1またはラットNPC1L1またはマウスSR−B1で安定にトランスフェクトしたCHO細胞がH−標識コレステロールを取り込む能力に対するエゼチミブの効果を、パルスチェイス実験において評価した。1種類のマウスNPC1L1のcDNAクローン(C7)および3種類のラットNPC1L1クローン(C7、C17、およびC21)を、評価した。マウスSR−B1で安定にトランスフェクトしたCHO細胞、マウスNPC1L1で安定にトランスフェクトしたCHO細胞およびラットNPC1L1で安定にトランスフェクトした細胞が、エゼチミブの非存在下で標識コレステロールを取り込む能力もまた、パルスチェイス実験において評価した。これらの実験において生じたデータを、以下の表4および表5に示す。さらに、4種類の異なる非標識コレステロール濃度の存在下において、トランスフェクトCHO細胞および非トランスフェクトCHO細胞によって取り込まれる総コレステロール量もまた評価した。これらの実験からのデータを、以下の表6に示す。
【0224】
(細胞)
A.ラットまたはマウスNPC1L1 cDNAで安定にトランスフェクトされたCHO細胞
B.CHOバックグラウンド(トランスフェクションなし)
C.SR−B1トランスフェクトCHO細胞
細胞を、12ウェルプレート中に500,000細胞/ウェル(mL)で播種した。
【0225】
(手順)
全ての試薬および培養プレートを、他に記載しない限り、37℃で維持した。
【0226】
(飢餓)
維持培地(F12 HAMS、1%ペニシリン/ストレプトマイシ、10% FCS)を除去し、細胞を無血清HAMS培地でリンスした。次いで、この無血清培地を、1mLの「飢餓」培地(F12 HAMS、ペニシリン/ストレプトマイシ、5%リポタンパク質欠損血清(LPDS))と交換した。次いでこの細胞を、一晩飢餓状態においた。
【0227】
(予備インキュベーション/予備投薬)
培地を全てのプレートから除去し、新鮮な飢餓培地と交換し、30分間予備インキュベーションした。ウェルの半数を、エゼチミブ(EtOH中のストック溶液;最終濃度=10μM)含有培地を受けた。
【0228】
H−コレステロールパルス)
以下を各ウェルに直接添加した:
50μlの混合胆汁酸塩ミセル中の0.5μCi H−コレステロール (約1.1×10dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
超音波振動によって、「飢餓」培地中に分散させた
最終培地コレステロール濃度=5μg/mL
標識されたコレステロールパルス時点は、4分、12分、24分および4時間であった。
【0229】
各処理について、3つのウェルを調製した。
【0230】
(洗浄)
指定された時間に培地を吸引し、細胞を、37℃で、Hobbs緩衝液A(50mM Tris、0.9% NaCl、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)、pH7.4)で一度、そしてHobbs緩衝液B(50mM Tris、0.9% NaCl、pH7.4(BSAなし))で一度洗浄した。
【0231】
(処理/分析)
A.4分、12分、24分時点:細胞を、0.2N NaOH(2mL/ウェル)によって、室温で一晩消化した。1.5mLアリコートを各ウェルから除去し、中和し、そしてシンチレーションカウンタによって放射能を計算した。
B.4時間時点:消化した細胞を、薄層クロマトグラフィーによって分析し、細胞中のコレステロールエステルの含有量を決定した。
【0232】
抽出物を、TLCプレート上にスポットし、30分間2mlヘキサン:イソプロパノール(3:2)移動相で30分間泳動し、続いて1mlヘキサン:イソプロパノール(3:2)移動相で15分間第二泳動した。
C.細胞抽出物のタンパク質決定:細胞抽出物のサンプルを含有するプレートを、指示された時間、120rpmで回転振とう機上におき、次いで抽出物を12×75チューブ中でプールした。プレートを乾燥させ、NaOH(2ml/ウェル)を添加した。次いで、このサンプルのタンパク質含有量を決定した。全てのウェルからの2つのさらなる50μlアリコートを、PierceのマイクロBCA法によって、総タンパク質についてアッセイした。細胞中に観察された標識されたコレステロールの量を、細胞中のタンパク質量に対して正規化した。
【0233】
(表4.エゼチミブの存在下および非存在下における、トランスフェクトされたCHO細胞中の総コレステロール)
【0234】
【表4】

(表5.エゼチミブの存在下または非存在下における、CHO細胞中のコレステロールエステル)
【0235】
【表5】

(表6.増加した量の非標識コレステロールの存在下における、標識コレステロールの取り込み)
【0236】
【表6】

(実施例20:標識コレステロール取り込みアッセイ)
この実施例において、ラットNPC1L1またはマウスSR−B1によって一過性にトランスフェクトされたCHO細胞の、標識コレステロールを取り込む能力を評価した。
また、ラットNPC1L1の、マウスSR−B1でトランスフェクトされたCHO細胞が標識コレステロールを取り込む能力を増強する能力を、評価した。これらのアッセイにおいて、一つの濃度において、コレステロール取り込みを、パルス−チェイス実験において評価した。これらの実験において生じたデータを、下記の表7に示す。
【0237】
(細胞)
A.CHOバックグラウンド細胞(偽トランスフェクション)
B.マウスSR−B1によって一過性にトランスフェクトしたCHO細胞
C.ラットNPC1LI cDNAによって一過性にトランスフェクトしたCHO(n=8クローン)。
一過性にトランスフェクトした細胞を、12ウェルプレート中に300,000細胞/ウェル(mL)で播種した。
【0238】
(手順)
全ての試薬および培養プレートを、他に記載されない限り、37℃で維持した。
【0239】
(飢餓)
維持培地(F12 HAMS,1%ペニシリン/ストレプトマイシ、10% FCS)を細胞から除去し、1mLの「飢餓」培地(F12 HAMS、ペニシリン/ストレプトマイシ、5%リポタンパク質欠損血清(LPDS))と交換した。細胞を、一時間飢餓状態においた。
【0240】
H−コレステロールパルス)
以下を各ウェルに直接添加した:
50μlの混合胆汁酸塩ミセル中の0.5μCi H−コレステロール (約1.1×10dpm/ウェル)
4.8mMタウロコール酸ナトリウム(2.581mg/mL)
0.6mMオレイン酸ナトリウム(0.183mg/mL)
0.25mMコレステロール(0.1mg/mL)
超音波振動によって、「飢餓」培地中に分散させた
最終培地コレステロール濃度=5μg/mL
標識されたコレステロールパルス時点は、24分および4時間であった。各処理について3ウェル。
【0241】
(洗浄)
指定された時間に培地を吸引し、細胞を、37℃で、Hobbs緩衝液A(50mM Tris、0.9% NaCl、0.2% BSA、pH7.4)で一度、そしてHobbs緩衝液B(50mM Tris、0.9% NaCl、pH7.4(BSAなし))で一度洗浄した。
【0242】
(処理/分析)
A.24分時点:細胞を、0.2N NaOH(2mL/ウェル)によって、室温で一晩消化した。1.5mLアリコートを各ウェルから除去し、中和し、そしてシンチレーションカウンタによって放射能を計算した。
B.4時間時点:消化した細胞を、薄層クロマトグラフィーによって分析し、細胞中のコレステロールエステルの含有量を決定した。
【0243】
抽出物を、薄層クロマトグラフィー上にスポットし、2mlヘキサン:イソプロパノール(3:2)含有移動相で30分間泳動し、続いて1mlヘキサン:イソプロパノール(3:2)含有移動相で15分間第二泳動した。
C.細胞抽出物のタンパク質決定:細胞抽出物のサンプルを含有するプレートを、指示された時間、120rpmで回転振とう機上におき、次いで抽出物を12×75チューブ中でプールした。プレートを乾燥させ、NaOH(2ml/ウェル)を添加した。次いで、このサンプルのタンパク質含有量を決定した。全てのウェルからの2つのさらなる50μlアリコートを、PierceのマイクロBCA法によって、総タンパク質についてアッセイした。細胞中に観察された標識されたコレステロールの量を、細胞中のタンパク質量に対して正規化した。
【0244】
(表7.一過性にトランスフェクトしたCHO細胞における標識コレステロール取り込み)
【0245】
【表7】

(実施例21:ラット、マウスおよびヒトNPC1L1の発現)
この実施例において、NPC1L1を細胞に導入し、発現させた。種特異的NPC1L1発現構築物を、クローン特異的PCRプライマーを用いてプラスミドpCDNA3中にクローニングし、ベクターのポリリンカーに適合する適切な制限部位が隣接したORFを作製した。NPC1L1の3つの種全てについて、小腸総組織RNAを、オリゴdTをテンプレートプライマーとして用いた逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)のためのテンプレートとして使用した。ラットNPC1L1をEcoRIフラグメントとしてクローニングし、ヒトNPC1LIをXbaI/NotIフラグメントとしてクローニングし、そしてマウスNPC1L1をEcoRIフラグメントとしてクローニングした。各クローンのフォワード鎖およびリバース鎖配列決を実施し、配列完全性を確認した。標準的一過性トランスフェクション手順を、CHO細胞に用いた。6ウェルプレートのCHO細胞を、トランスフェクション前に1日、2×10細胞/ウェルの平板培養密度で平板培養した。翌日、細胞を2μgプラスミドDNAおよび6μLリポフェクタミンとともに、5時間インキュベートし、続いて新鮮培地に交換した。48時間後、細胞を、抗NPC1L1抗血清を用いて、FACSまたはウェスタンブロットのいずれかによって、NPC1L1発現について分析した。安定な長期細胞株を確立するため、ゲネシチン(G418、0.8mg/ml)の存在下で、製造元(Life Technologies)によって推奨されるように、トランスフェクトされたCHO細胞を選別した。培養物における選別の1ヶ月後、抗NPC1L1抗血清で細胞集団を染色し、FACSによって選別した。限界希釈による単離後、個々の陽性染色集団をクローニングし、次いで、ゲネシチン(0.5mg/ml)含有選択培地中に維持した。
【0246】
トランスフェクション手順に対してより感受性の低い他の細胞型は、アデノウイルスベクター系を用いて作製された。NPC1L1を発現するために使用されたこの系は、Ad5、C型アデノウイルスに由来する。この組み換え型複製欠損アデノウイルスベクターは、E1、E2およびE4領域の改変を介して欠損を作製する。このベクターはまた、E3領域にさらなる改変を有する。この改変は、一般に、E3b領域遺伝子RIDaおよびRIDbに影響を及ぼす。NPC1L1発現を、アデノウイルスのE3領域において置換された発現カセットとしてCMVプロモーターを用いて促進した。ラットおよびマウスのNPC1L1を、アデノウイルスベクターに適合する制限部位に隣接するクローン特異的プライマーを用いて増幅した。アデノウイルス感染性粒子を、5×1010P/mLの力価で293−D22細胞から産生した。ウイルス溶解物を使用して、標準的トランスフェクション法に抵抗性の細胞を感染させた。Caco2細胞(異種タンパク質発現に高抵抗性である)において、NPC1L1のアデノウイルス媒介性発現は、ウェスタンブロット分析によって、少なくとも感染後21日において持続していることが示された。
【0247】
(実施例22:NPC1L1ノックアウトトランスジェニックマウス)
NPC1L1ノックアウトマウスを、標的化突然変異誘発を介して構築した。この方法は、マウスNPC1L1遺伝子の特定領域を欠失するように設計された標的性構築物を利用した。標的プロセスの間、E.coliのlacZレポーター遺伝子を、内因性NPC1L1プロモーターの制御下で挿入した。NPC1L1(配列番号45)の欠失された領域は、ヌクレオチド790〜ヌクレオチド998に由来する。標的性ベクターは、ヌクレオチド789で終わる1.9kb 5’アームおよびヌクレオチド999で始まる3.2kb 3’アームに隣接するLacZ−Neoカセットを含む。組み換え胚性幹細胞株由来ゲノムDNAを、PCRを用いて相同組み換えについてアッセイした。増幅されたDNAフラグメントを、アガロースゲル電気泳動によって可視化した。試験PCRは、遺伝子特異的プライマーを利用した。このプライマーは、LacZ−Neoカセット配列に対して特異的な3つのプライマーのうちの1つと対合する、標的性ベクターアームの外部かまたはそれに隣接して位置する。5’PCR再確認のため、NPC1L1特異的オリゴヌクレオチドATGTTAGGTGAGTCTGAACCTACCC(配列番号46)を、そして3’PCR再確認のため、NPC1L1特異的オリゴヌクレオチドGGATTGCATTTCCTTCAAGAAAGCC(配列番号47)を用いた。F2マウスの遺伝子型決定を、マルチプレックスPCRによって実施した。マルチプレックスPCRには、NPC1L1特異的フォワードプライマーTATGGCTCTGCCCTCTGCAATGCTC(配列番号48)、LacZ−Neoカセット特異的フォワードプライマーTCAGCAGCCTCTGTTCCACATACACTTC(配列番号49)を、NPC1L1遺伝子特異的リバースプライマーGTTCCACAGGGTCTGTGGTGAGTTC(配列番号50)と組み合わせて用い、標的化対立遺伝子および内因性対立遺伝子の両方の決定を可能にした。アガロースゲル電気泳動によるPCR産物の分析は、野生型と、ヘテロ接合体と、ホモ接合体ヌルマウスとを互いに区別した。
【0248】
(実施例23:NPC1L1欠損マウスにおける急性コレステロール吸収)
NPC1L1がコレステロール吸収において役割を果たすか否かを決定するため、NPC1L1欠損マウスを研究した。
【0249】
NPC1L1(−/−)欠損マウスを、ヘテロ接合体マウス(+/)を交配することによって作製し、野生型(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)を得た。非絶食マウス(6.5〜9週齢、129およびC57BL/6バックグラウンドの混合)を計量し、グループ分けした(n=2の−/−およびn=4の+/+)。1μCi 14C−コレステロール(New England Nuclear、[4〜14C]コレステロール、NEC−018)および0.1mgキャリアコレステロール塊(carrier cholesterol mass)(Sigma;St.Louis,MO)を含有する0.1mlコーン油(Sigma;St.Louis,MO)を用いて、全ての動物を胃瘻栄養(給餌針、24G×1インチ、Popper and Sons,NY)した。2時間後、心臓穿刺によって血液を採取した。肝臓を取り出し、計量し、そして3サンプルを20ml計数バイアル中に配置した。組織を、1mlの1N NaOHで、60℃で一晩消化した。組織消化物を、液体シンチレーション計数(LSC)の前に、250μlの4N HClの添加によって酸性化した。微量遠心機における10,000rpmで5分間の遠心分離によって血漿を単離し、2つの100μl血漿アリコートをLSCにかけた。
【0250】
コレステロール吸収(この急性技術によって評価され、血漿中および肝臓中の放射性コレステロールの総量として表現される)は、野生型マウス(+/+)が平均11,773dpmの14C−コレステロールを吸収し、NPC1L1欠損マウスが992dpmの14C−コレステロールを吸収したことを示した。これらの結果は、NPC1L1欠損マウスが92%のコレステロール吸収の減少を有することを示す。これらのデータは、腸管コレステロール吸収におけるNPC1L1の役割を確証する。NPC1L1アンタゴニスト(例えば、エゼチミブ)を被験体に投与することによる、被験体におけるNPC1L1媒介性コレステロール吸収の阻害は、被験体において血清コレステロールレベルを低下させ、アテローム性動脈硬化症の発症を低減させる、有用な方法である。
【0251】
(実施例24:NPC1L1(NPC3)ノックアウトマウスにおけるコレステロール吸収(糞便比法(Fecal Ratio Method):コレステロール/シトスタノール))
この実施例においては、コレステロール吸収およびエゼチミブの活性を、NPC1L1ノックアウトマウス(−/−)、ヘテロ接合体マウス(+/−)、および年齢の対応する野生型マウス(+/+)において決定した。
【0252】
マウスにおけるコレステロール吸収を、Altmannら(Biochim.Biophys.Acta.1580(1):77−93(2002))によって記載されている二重糞便同位体比法(dual fecal isotope ratio method)によって決定した。マウス(n=4〜6/群)に、標準的げっ歯類用固形飼料を与え、そしていくつかの群においては、最大有効用量のエゼチミブで毎日処置した(10mg/kg)。マウスを、0.1mlコーン油中の14C−コレステロール(1μCi、0.1mg未標識コレステロール)およびH−シトスタノール(2μCi)を用いて胃瘻栄養した。2日間糞便を回収し、Packard Oxidizer中での燃焼によって糞便の14C−コレステロールレベルおよびH−シトスタノールレベルを決定した。吸収されたコレステロールの分画は、二重糞便同位体技術によって評価した場合、固形飼料を給餌された野生型(+/+)とヘテロ接合体マウス(+/−)とで同様であった。(ヘテロ接合体マウスは、14C−コレステロールの用量の46±5%を吸収し、そして年齢の対応する野生型マウスは、51±3%を吸収した。)NPC1L1ノックアウトマウス(−/−)は、14C−コレステロールの15.6±0.4%を吸収した。これは、最大有効用量のエゼチミブで処置された野生型マウス(16.1±0.3%)と同様であり、野生型マウスと比較して69%まで低下した(p<0.001)。10mg/kg/日でエゼチミブ処置されたNPC1L1ノックアウトにおいては、コレステロール吸収は、未処置ノックアウトマウスにおいて見られた吸収と同様であった(未処置ノックアウトでの15.6%±0.4%と比較して、エゼチミブ処置されたNPC1L1ノックアウトで16.2±0.6%)。したがって、コレステロール吸収の大部分はNPC1L1の存在に依存し、NPC1L1を欠損したマウスにおける残りのコレステロール吸収は、エゼチミブ処置に非感受性である。これらの結果は、NPC1L1が小腸腸細胞の取り込みおよびコレステロール吸収に関与すること、ならびにNPC1L1がエゼチミブ感受性経路にあることを示す。
【0253】
(実施例25:マウススクリーニングアッセイ(急性コレステロール吸収))
以下のスクリーニングアッセイは、サンプル中のNPC1L1アンタゴニストの存在を同定するために用いられる。
【0254】
ヘテロ接合体マウス(+/)を交配することによってNPC1L1欠損(−/−)マウスを作製し、野生型(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)を得る。
【0255】
第一の実験セットにおいて、非絶食マウス(6.5〜9週齢、129およびC57BL/6バックグラウンドの混合)を計量し、グループ分けした(n=1〜4の−/−およびn=1〜4の+/+)。1μCi 14C−コレステロール(New England Nuclear、[4〜14C]コレステロール、NEC−018)および0.1mgキャリアコレステロール塊(Sigma;St.Louis,MO)を含有する0.1mlコーン油(Sigma;St.Louis,MO)を用いて、全ての動物を胃瘻栄養(給餌針、24G×1インチ、Popper and Sons,NY)した。
【0256】
実験の別のセットにおいて、1〜4匹の野生型NPC1L1マウス(+/+)を、マウスが、NPC1L1アンタゴニストの存在について試験するためのサンプルをさらに与えられることを除いて、上記第一の実験セットにおけるマウスと同様に処置する。
【0257】
2時間後、各マウスから心臓穿刺によって血液を採取した。肝臓を取り出し、計量し、そして3サンプルを20ml計数バイアル中に配置した。組織を、1mlの1N NaOHで、60℃で一晩消化した。組織消化物を、液体シンチレーション計数(LSC)の前に、250μlの4N HClの添加によって酸性化した。微量遠心機における10,000rpmで5分間の遠心分離によって血漿を単離し、2つの100μl血漿アリコートをLSCにかけた。
【0258】
コレステロール吸収は、この急性技術によって評価され、血漿中および肝臓中の放射性コレステロールの総量として表現される。サンプルを与えられた野生型NPC1L1マウス(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)における(上記の方法によって測定される)コレステロール吸収レベルが、サンプルを与えられなかった野生型NPC1L1マウス(+/+)におけるコレステロール吸収量より低い場合、この試験されたサンプルは、NPC1L1アンタゴニストを含有すると決定される。
【0259】
(実施例26:マウススクリーニングアッセイ(糞便比法:コレステロール/シトスタノール)
以下のスクリーニングアッセイは、サンプル中のNPC1L1アンタゴニストの存在を同定するために用いられる。
【0260】
マウスにおけるコレステロール吸収を、Altmannら(Biochim.Biophys.Acta.1580(1):77−93(2002))によって記載されている二重糞便同位体比法によって決定する。
【0261】
マウスの3つの群(n=1〜6/群)を構築した。2つの別個の群は、野生型NPC1L1マウス(+/+)を含み、一つの群は、NPC1L1欠損マウス(−/−)を含む。
【0262】
各群に、標準的げっ歯類用固形飼料を与え、そしていくつかの群においては、毎日処置する。マウスを、0.1mlコーン油中の14C−コレステロール(1μCi、0.1mg未標識コレステロール)およびH−シトスタノール(2μCi)を用いて胃瘻栄養する。1群のマウス(野生型NPC1L1マウス(+/+)を含む)に、サンプルをさらに与え、NPC1L1アンタゴニストの存在について試験する。2日間糞便を回収し、Packard Oxidizer中での燃焼によって糞便の14C−コレステロールレベルおよびH−シトスタノールレベルを決定する。
【0263】
サンプルを与えられた野生型NPC1L1マウス(+/+)およびNPC1L1欠損マウス(−/−)における(上記の方法によって測定される)コレステロールおよび/またはシトスタノール吸収レベルが、サンプルを与えられなかった野生型NPC1L1マウス(+/+)におけるコレステロールおよび/またはシトスタノール吸収量より低い場合、試験されたサンプルは、NPC1L1アンタゴニストを含有すると決定される。
【0264】
本発明は、本明細書において記載される特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本発明の種々の改変が、本明細書において記載されるものに加えて、上記から当業者に明らかとなる。このような改変が添付の特許請求の範囲に含まれることが、意図される。
【0265】
特許、特許出願、刊行物、製品に関する文書、Genbank登録商標番号およびプロトコールは、本出願全体を通じて引用され、これらの開示は、本明細書において、あらゆる目的でその全体が参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性染色体NPC1L1のホモ接合性変異を含む、変異トランスジェニックマウスであって、該マウスが、いかなる機能性NPC1L1タンパク質も産生しない、マウス。
【請求項2】
請求項1に記載のマウスであって、前記マウスが、低下した血清ステロールレベルもしくは5α−スタノールレベル、低下した肝臓ステロールレベルもしくは5α−スタノールレベル、またはステロールもしくは5α−スタノールの腸吸収の低下したレベルを示す、マウス。
【請求項3】
請求項1に記載のマウスであって、前記欠失した内因性染色体NPC1L1の領域が、配列番号45に記載されるヌクレオチド配列のヌクレオチド790〜998に対応する、マウス。
【請求項4】
請求項1に記載のマウスの子または子孫であって、該子または子孫が、該マウスの変異NPC1L1対立遺伝子を受け継いでいる、子または子孫。
【請求項5】
腸ステロール吸収アンタゴニストまたは腸5α−スタノール吸収アンタゴニストについてサンプルをスクリーニングするための方法であって、以下:
(a)ステロールまたは5α−スタノールを含有する物質を、機能性NPC1L1遺伝子を含む第1のマウスおよび第2のマウス、ならびに請求項1に記載の第3の変異マウスに給餌する工程;
(b)該サンプルを該第1のマウスに投与するが、該第2のマウスに投与しない工程;
(c)該第1のマウス、第2のマウスおよび第3のマウスの腸におけるステロールまたは5α−スタノールの吸収の量を測定する工程;ならびに
(d)該第1のマウス、第2のマウスおよび第3のマウスにおける腸ステロール吸収または5α−スタノール吸収のレベルを比較する工程、
を包含し、ここで、該第1のマウスおよび第3のマウスにおける腸のステロール吸収または5α−スタノール吸収のレベルが、該第2のマウスにおける腸のステロール吸収または5α−スタノール吸収のレベルの量より少ない場合、該サンプルが、腸ステロールアンタゴニストまたは5α−スタノール吸収アンタゴニストを含むことが決定される、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記ステロールが、コレステロールである、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記コレステロールが、放射性標識されている、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、前記ステロールまたは5α−スタノールコレステロールの吸収のレベルは、前記マウスにおける血清ステロールまたは5α−スタノールのレベルを測定することによって決定される、方法。
【請求項9】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法によって同定された物質を被験体に投与することによって、被験体におけるNPC1L1媒介性ステロール摂取または5α−スタノール摂取を阻害するための方法であって、該同定するための方法が、以下:
(a)既知量の検出可能に標識されたエゼチミブの存在下で、細胞表面上に配列番号2、4および12またはそれらの機能的フラグメントから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する宿主細胞を、該アンタゴニストの存在について試験されるサンプルと接触させる工程;および
(b)該ポリペプチドに直接的または間接的に、特異的に結合された検出可能に標識されたエゼチミブの量を測定する工程、
を包含し、
ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に低下した、該ポリペプチドに対する検出可能に標識されたエゼチミブの直接的または間接的結合を測定することによって同定される、方法。
【請求項10】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法によって同定された物質を被験体に投与することによって、被験体におけるNPC1L1媒介性ステロール摂取または5α−スタノール摂取を阻害するための方法であって、該同定するための方法が、以下:
(a)蛍光剤を含浸した複数の支持粒子を水性懸濁液中に配置する工程であって、配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能的フラグメントを細胞表面に発現する宿主細胞が、該支持粒子に結合されている、工程;
(b)該懸濁液に、放射標識されたエゼチミブおよび該アンタゴニストの存在を試験されるサンプルを添加する工程であって、ここで、該放射標識が、該エゼチミブが該ポリペプチドに直接的または間接的に結合する際に、該蛍光剤を活性化し得る放射エネルギーを発して、光エネルギーを生成するが、該ポリペプチドに直接的にも間接的にも結合していない放射標識化エゼチミブが、一般的に、該支持粒子から離れすぎて、放射性エネルギーが該蛍光剤を活性化し得ない、工程;ならびに
(c)該懸濁液中で該蛍光剤によって発せられる該光エネルギーを測定する工程、
を包含し、ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に減少した光エネルギー放射を測定することによって同定される、
方法。
【請求項11】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法によって同定された物質を被験体に投与することによって、被験体におけるNPC1L1媒介性ステロール摂取または5α−スタノール摂取を阻害するための方法であって、該同定するための方法が、以下:
(a)配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能的フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞を、検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールと、そして該アンタゴニストの存在について試験されるサンプルと接触させる工程;ならびに
(b)該細胞中の検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールの量を測定する工程、
を包含し、ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、該宿主細胞において、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に減少した検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールを測定することによって同定される、方法。
【請求項12】
被験体に、請求項5に記載の方法によって同定された物質を投与することによって、該被験体におけるNPC1L1媒介性ステロール摂取または5α−スタノール摂取を阻害するための方法。
【請求項13】
キットであって、以下:
(a)薬学的投薬形態のエゼチミブ;および
(b)NPC1L1がエゼチミブの標的であることを示す情報、
を含む、キット。
【請求項14】
前記投薬形態が、10mgエゼチミブを含む錠剤である、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
薬学的投薬形態のシンバスタチンをさらに備える、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
前記薬学的投薬形態のシンバスタチンが、5mg、10mg、20mg、40mg、または80mgのシンバスタチンを含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記薬学的投薬形態のシンバスタチンおよび前記薬学的投薬形態のエゼチミブが、単一の丸剤または錠剤で結合されている、請求項15に記載のキット。
【請求項18】
被験体において腸のステロールまたは5α−スタノールのレベルを減少させるための方法であって、該被験体におけるNPC1L1の発現のレベルを減少させる工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記被験体が、マウス、ラットまたはヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法であって、前記被験体におけるNPC1L1の発現のレベルが、該被験体のNPC1L1を変異させることによって減少する、方法。
【請求項21】
前記ステロールが、コレステロールである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法であって、以下:
(a)既知量の検出可能に標識された置換アゼチジノンの存在下で、配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能的フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞を、該アンタゴニストの存在について試験されるサンプルと接触さる工程;ならびに
(b)該ポリペプチドに直接的または間接的に特異的に結合された、検出可能に標識された置換アゼチジノンの量を測定する工程、
を包含し、ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に減少した検出可能に標識された置換アゼチジノンの該ポリペプチドへの直接的または間接的結合を測定することによって同定される、方法。
【請求項23】
キットであって、以下:
(a)薬学的投薬形態の置換アゼチジノン;および
(b)NPC1L1が置換アゼチジノンの標的であることを示す情報、
を含む、キット。
【請求項24】
機能的NPC1L1タンパク質をコードする遺伝子を欠く、単離された哺乳動物細胞。
【請求項25】
内因性染色体NPC1L1のホモ接合性変異を含む変異マウスから単離された請求項24に記載の細胞であって、該マウスが、いかなる機能性NPC1L1タンパク質も産生しない、細胞。
【請求項26】
請求項25に記載の細胞であって、前記変異が、変異していない場合、配列番号12のアミノ酸配列をコードする遺伝子の変異である、細胞。
【請求項27】
十二指腸、胆嚢、肝臓、肝臓、小腸または胃の組織から単離されるかまたはこれらに由来する、請求項24に記載の細胞。
【請求項28】
腸細胞である、請求項27に記載の細胞。
【請求項29】
配列番号2および12から選択されたアミノ酸配列の42以上の連続したアミノ酸を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項30】
配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項31】
請求項29に記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項32】
配列番号1、3および11から選択されたヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項33】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクター。
【請求項34】
請求項33に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項35】
配列番号2および12から選択されたアミノ酸配列の42以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、または配列番号4のアミノ酸を含む単離されたポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体。
【請求項36】
配列番号39〜42から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体。
【請求項37】
ポリペプチドが発現される条件下で、請求項34に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、ポリペプチドを作製するための方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが培養物から単離される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法であって、以下:
(a)既知量の検出可能に標識されたエゼチミブの存在下で、細胞表面上に配列番号2、4および12またはそれらの機能的フラグメントから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する宿主細胞を、該アンタゴニストの存在について試験されるサンプルと接触させる工程;および
(b)該ポリペプチドに直接的または間接的に、特異的に結合された検出可能に標識されたエゼチミブの量を測定する工程、
を包含し、
ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に低下した、該ポリペプチドに対する検出可能に標識されたエゼチミブの直接的または間接的結合を測定することによって同定される、方法。
【請求項40】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法であって、以下:
(a)蛍光剤を含浸した複数の支持粒子を水性懸濁液中に配置する工程であって、配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能的フラグメントを細胞表面に発現する宿主細胞が、該支持粒子に結合されている、工程;
(b)該懸濁液に、放射標識されたエゼチミブおよび該アンタゴニストの存在を試験されるサンプルを添加する工程であって、ここで、該放射標識が、該エゼチミブを該ポリペプチドに直接的または間接的に結合する際に、該蛍光剤を活性化し得る放射エネルギーを発して、光エネルギーを生成するが、該ポリペプチドに直接的にも間接的にも結合していない放射標識化エゼチミブが、一般的に、該支持粒子から離れすぎて、放射性エネルギーが該蛍光剤を活性化し得ない、工程;ならびに
(c)該懸濁液中で該蛍光剤によって発せられる該光エネルギーを測定する工程、
を包含し、ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に減少した光エネルギー放射を測定することによって同定される、
方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法であって、前記蛍光剤が、イットリウムシリケート、イットリウムオキシド、ジフェニルオキサゾールおよびポリビニルトルエンから選択される、方法。
【請求項42】
前記エゼチミブが、Hおよび125Iから選択された放射標識で標識されている、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記エゼチミブが、Hおよび125Iから選択された放射標識で標識されている、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
NPC1L1のアンタゴニストを同定するための方法であって、以下:
(a)配列番号2、4および12から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその機能的フラグメントを細胞表面上に発現する宿主細胞を、検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールと、そして該アンタゴニストの存在について試験されるサンプルと接触させる工程;ならびに
(b)該細胞中の検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールの量を測定する工程、
を包含し、ここで、該サンプル中のNPC1L1アンタゴニストが、該宿主細胞において、このようなアンタゴニストの非存在下で測定された場合と比較して、実質的に減少した検出可能に標識されたステロールまたは5α−スタノールを測定することによって同定される、方法。
【請求項45】
前記ステロールまたは5α−スタノールが、H、14Cおよび125Iから選択された放射標識で検出可能に標識されている、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法であって、前記ステロールが、コレステロールである、方法。
【請求項47】
請求項39に記載の方法であって、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞およびCaco2細胞から選択される、方法。
【請求項48】
請求項40に記載の方法であって、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞およびCaco2細胞から選択される、方法。
【請求項49】
請求項44に記載の方法であって、前記宿主細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、J774細胞、マクロファージ細胞およびCaco2細胞から選択される、方法。

【公表番号】特表2007−523595(P2007−523595A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507939(P2005−507939)
【出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2003/040113
【国際公開番号】WO2005/015988
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】